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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ルーフレジスタ
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
B60H1/34 631
B60H1/34 651Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020051425
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146994
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】308016242
【氏名又は名称】豊和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】奥岡 佑多
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 正晃
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-276428(JP,A)
【文献】特開2015-033905(JP,A)
【文献】特開2016-153295(JP,A)
【文献】特開2017-214052(JP,A)
【文献】登録実用新案第3176607(JP,U)
【文献】国際公開第2014/192317(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0375601(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に通風路を設け、上流部と下流部を開口した方形枠状のリテーナと、
該リテーナの前部に取り付けられ、前面に方形の空気吹出口を設けたベゼルと、
該リテーナ内に配置され、複数の後フィンを縦方向に、回動可能に並設した後フィン組付体と、
該後フィン組付体の下流側に装着され、該後フィンと直交する前フィンが横方向に、回動可能に設けられた前フィン組付体と、
該前フィンに、長手方向に摺動可能に取り付けられ、係合アームを介して該後フィンと係合するスライドノブと、
を備えたルーフレジスタであって、
該前フィン組付体の該前フィンは、閉鎖位置への回動操作時、該空気吹出口の前面と略平行状態まで回動して、該空気吹出口の前面を閉鎖する形状に形成され、
該スライドノブは、操作するノブ操作部と、該前フィンの裏面に設けたガイドレールに係合して摺動する摺動部と、該ノブ操作部と該摺動部とを連結する連結部と、該摺動部の端部に傾動可能に軸支され、該後フィン組付体の後フィンに設けた係合部に係合する1対の係合アームと、を備え、
操作荷重を付与する荷重付与部材が、該連結部の内側に、該前フィンの前縁部に接触して配設され、
該スライドノブは、該前フィンの裏面の該ガイドレールに、該摺動部を係合させ、該ノブ操作部を該前フィンの前方に突出させるとともに、該連結部及び該摺動部を、該前フィンの前部から裏面に通して取り付けられたことを特徴とするルーフレジスタ。
【請求項2】
前記スライドノブの前記ノブ操作部の背面に凹部が設けられたことを特徴とする請求項1記載のルーフレジスタ。
【請求項3】
前記スライドノブの連結部の外面に、円弧曲面が設けられ、該円弧曲面にセレーションが設けられたことを特徴とする請求項1記載のルーフレジスタ。
【請求項4】
前記前フィン組付体における、前記スライドノブを装着した前フィンと隣接する隣接前フィンの背面に、切欠凹部が該前フィンの長手方向に沿って設けられ、該前フィンを閉鎖する際、該スライドノブの該連結部が該切欠凹部内に進入することを特徴とする請求項1記載のルーフレジスタ。
【請求項5】
前記スライドノブのノブ操作部の短手方向の幅寸法は、前記前フィンの短手方向の幅と略同じ寸法とされることを特徴とする請求項1記載のルーフレジスタ。
【請求項6】
前記スライドノブの上流側に設けた、1対の係合アームの先端に、環状接触片が設けられ、前記後フィンの一部に、該スライドノブの該係合アームが係合する係合部が設けられ、該係合部に水平板部が設けられ、該環状接触片は、該スライドノブを該前フィンの短手方向に回動操作したとき、該水平板部に接触することを特徴とする請求項1記載のルーフレジスタ。

【請求項7】
前記後フィンの水平板部には、下流に開くように傾斜した傾斜部が設けられたことを特徴とする請求項6記載のルーフレジスタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車室内の換気や空調の空気吹出に使用されるレジスタに関し、特に、クロスフィン型の前フィン及び後フィンを備え、車室の天井部に装着して使用するルーフレジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車室内の天井部に、設置されるルーフレジスタとして、下記特許文献1に記載されるレジスタが知られている。ルーフレジスタは、インストルメントパネル部などに装着されるレジスタに比して、天井パネル内の比較的薄い空間内に設置するため、レジスタの奥行き寸法をできるだけ小さくする必要がある。
【0003】
このため、下記特許文献1に記載されるルーフレジスタは、横長で矩形枠状のリテーナ内に、同様の横長で矩形枠状のバレルを、両側長手方向に突設した支軸を介して軸支し、バレルをリテーナ内で前後短手方向に回動可能とする。さらに、このルーフレジスタは、バレル内に、多数の回動フィンを、バレルの長手方向と直角の短手方向に並設し、回動フィンを上下短手方向の支軸を介して軸支し、回動フィンを長手方向にシャット位置まで回して、空気吹出口を閉鎖する構造である。これにより、リテーナの上流側に配設するダンパプレートをなくし、ルーフレジスタの奥行き寸法を短くしている。
【0004】
バレル型のルーフレジスタは、バレル内に多数の回動フィンを並設しており、使用時には、バレルの軸方向と直角方向に回動フィンを回動操作して、風向を長手方向に変え、バレルを前後短手方向に回動操作して、風向を短手方向に変える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-118884号公報
【文献】特開2005-8050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この従来のルーフレジスタは、リテーナの通風路内に、多数の回動フィンを有したバレルが、回動可能に軸支され、バレルが両側の支軸を介して前後短手方向に回動する構造のため、バレルによって生じる通風路内の空気抵抗が比較的大きくなる。また、バレル内の回動フィンの略中央部にノブが突出して設けられているため、ノブに起因する空気抵抗も大きく、送風時の指向性及び送風量が悪くなり、車室内の乗員が希望する部位まで、送風が到達しにくい課題があった。
【0007】
そこで、例えば、上記特許文献2に記載されるレジスタのように、前フィンと後フィンを直交して前後に配置した、クロスフィン型のレジスタを、ルーフレジスタに採用することが検討された。
【0008】
しかし、この従来のレジスタは、送風の停止時に、前フィンを全閉状態として、送風を止める構造を有しているものの、送風時に前フィンと後フィンを回動操作するための、スライドノブが前フィン上に装着される。このため、操作性を良くするために、スライドノブの形状を大形にした場合、空気抵抗が増大し、送風時の指向性及び送風量が悪くなり、送風が乗員の希望する位置まで到達しにくい課題があった。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、操作性良く、風向調整と送風停止を行うことができ、指向性の向上を可能としたルーフレジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明のルーフレジスタは、
内側に通風路を設け、上流部と下流部を開口した方形枠状のリテーナと、
該リテーナの前部に取り付けられ、前面に方形の空気吹出口を設けたベゼルと、
該リテーナ内に配置され、複数の後フィンを縦方向に、回動可能に並設した後フィン組付体と、
該後フィン組付体の下流側に装着され、該後フィンと直交する前フィンが横方向に、回動可能に設けられた前フィン組付体と、
該前フィンに、長手方向に摺動可能に取り付けられ、係合アームを介して該後フィンと係合するスライドノブと、
を備えたルーフレジスタであって、
該前フィン組付体の該前フィンは、閉鎖位置への回動操作時、該空気吹出口の前面と略平行状態まで回動して、該空気吹出口の前面を閉鎖する形状に形成され、
該スライドノブは、操作するノブ操作部と、該前フィンの裏面に設けたガイドレールに係合して摺動する摺動部と、該ノブ操作部と該摺動部とを連結する連結部と、該摺動部の端部に傾動可能に軸支され、該後フィン組付体の後フィンに設けた係合部に係合する1対の係合アームと、を備え、
操作荷重を付与する荷重付与部材が、該連結部の内側に、該前フィンの前縁部に接触して配設され、
該スライドノブは、該前フィンの裏面の該ガイドレールに、該摺動部を係合させ、該ノブ操作部を該前フィンの前方に突出させるとともに、該連結部及び該摺動部を、該前フィンの前部から裏面に通して取り付けられたことを特徴とする。
【0011】
なお、上記前または前部は、レジスタの正面側であって通風路の下流側(下流部)を意味し、上記後または後部は、レジスタの背面側であって通風路の上流側(上流部)を意味する。また、前フィンの裏面とは、前フィンの閉鎖時に通風路側を向く面である。
【0012】
この発明のルーフレジスタによれば、スライドノブの連結部及び摺動部を、前フィンの前部から裏面に通しているため、空気抵抗が小さくなり、且つ前フィン閉鎖時のレジスタ正面の見栄えを良くすることができる。さらに、ノブ操作部を薄く、連結部及び摺動部を小形にすることにより、容易に空気抵抗を低減することができる。
【0013】
また、相互に直交配置された前フィンと後フィンを持つクロスフィン型のルーフレジスタは、バレルタイプのレジスタに比して、指向性の優れた送風を行うことができ、スライドノブの空気抵抗の低減によっても、指向性を向上させ、乗員が希望する部位に、十分な風量の送風を行うことができる。さらに、荷重付与部材が、スライドノブの連結部の内側に、前フィンの前縁部に接触して配設されるため、使用者がノブ操作時にスライドノブを押さえたとき、適度な弾力性が生じやすく、操作フィーリングを向上させることができる。
【0014】
ここで、上記スライドノブのノブ操作部の背面に凹部が設けられた構造とすることが好ましい。これによれば、スライドノブを前フィンの短手方向に操作して前フィンを閉鎖する際、凹部に指を掛けて容易に前フィンを回動操作することができ、操作性が向上する。
【0015】
またここで、上記スライドノブの連結部の外面に、円弧曲面が設けられ、円弧曲面にセレーションを設けることが好ましい。連結部の外面に円弧曲面を設けているので、連結部との干渉を回避するために、隣接する前フィンに設ける切欠凹部の形状を小形にし、送風の指向性を改善することができる。また、スライドノブの操作時、円弧曲面のセレーションにも指を当て、スライドノブを容易に操作することができる。
【0016】
またここで、上記前フィン組付体における、該スライドノブを装着した前フィンと隣接する隣接前フィンの背面に切欠凹部が、前フィンの長手方向に沿って設けられ、前フィンを閉鎖する際、スライドノブの連結部が切欠凹部内に進入する構造とすることが好ましい。これによれば、前フィンを閉じたとき、スライドノブの連結部が、隣接する前フィンの切欠凹部に進入し、スライドノブは、そのノブ操作部が前フィンの前面に沿った目立たない位置に静止し、前フィン閉鎖時の外観を改善することができる。
【0017】
またここで、上記スライドノブのノブ操作部の短手方向の幅寸法は、上記前フィンの短手方向の幅と略同じ寸法にすることが好ましい。これによれば、前フィンを閉鎖したとき、スライドノブの意匠を前フィンの意匠に溶け込ませることができ、さらに見栄えが向上する。
【0018】
また、ここで、上記スライドノブの上流側に設けた、1対の係合アームの先端に、環状接触片が設けられ、上記一部の後フィンに、スライドノブの係合アームが係合する係合部が設けられ、係合部に水平板部が設けられ、環状接触片は、スライドノブを前フィンの短手方向に回動操作したとき、水平板部に接触する構造とすることが好ましい。これによれば、スライドノブを例えば上下に振ったとき、係合アームの先端の環状接触片が後フィンの係合部の水平板部に接触し、異音の発生を防止することができる。
【0019】
またここで、上記後フィンの水平板部には下流に開くように傾斜した傾斜部を設けることが好ましい。これによれば、係合アームと水平板部の干渉を回避しながら、スライドノブを大きく回動操作して前フィンを大きく振ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のルーフレジスタによれば、操作性良く、風向調整と送風停止を行うことができ、送風の指向性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態を示すルーフレジスタの正面図である。
図2】前フィン閉鎖時の同ルーフレジスタの正面図である。
図3】ルーフレジスタの斜視図である。
図4】前フィン組付体の分解斜視図である。
図5】ルーフレジスタ全体の分解斜視図である。
図6】前フィン組付体の正面図である。
図7】前フィン組付体の左側面図である。
図8】前フィン閉鎖時の前フィン組付体の正面図である。
図9】前フィン閉鎖時の前フィン組付体の左側面図である。
図10】前フィン閉鎖時の前フィン組付体の背面図である。
図11】Aは、前フィン開放時の、前フィン組付体の背面側から見た斜視図、Bは、そのリンクバーと軸支部材を示す側面図である。
図12】Aは、前フィン閉鎖時の、前フィン組付体の背面側から見た斜視図、Bは、そのリンクバーと軸支部材を示す側面図である。
図13】前フィン組付体の分解斜視図である。
図14】Aは前フィン、後フィン及びスライドノブの係合状態を示す正面図、Bはその平面図、Cはその左側面図、Dはその底面図である。
図15】Aは前フィンの正面図、Bはその平面図、Cはその底面図、Dはその底面側から見た斜視図、Eは見る角度を変えた同斜視図である。
図16】Aは隣接前フィンの平面図、Bはその背面から見た斜視図である。
図17】Aはスライドノブの正面図、Bはその平面図、Cはその左側面図、Dはその背面から見た斜視図である。
図18】Aはスライドノブの分解斜視図、Bはその背面から見た分解斜視図、Cはその分解左側面図である。
図19図1のA-A断面図である。
図20図2のB-B断面図である。
図21】前フィンを上に振ったときのA-A断面図である。
図22図1のC-C断面図である。
図23】後フィンを左に振ったときのC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。車室内の天井部に装着して使用されるルーフレジスタは、図1図6に示すように、内側に通風路6を設け、上流部と下流部を開口した方形枠状のリテーナ4と、リテーナ4の前部に取り付けられ、前面に方形の空気吹出口7を設けたベゼル5と、リテーナ4内に配置され、複数の後フィン20~22を縦方向に、回動可能に並設した後フィン組付体2と、後フィン組付体2の下流側に装着され、後フィン20~22と直交する前フィン30~32が横方向に、回動可能に設けられた前フィン組付体3と、前フィン30に、長手方向に摺動可能に取り付けられ、係合アーム13を介して後フィンと係合するスライドノブ1と、から構成される。
【0023】
なお、この明細書で、前または前部は、レジスタの正面側または通風路6の下流側であり、後または後部は、レジスタの背面側または通風路6の上流側である。また、ルーフレジスタの説明上、便宜的に、図面上の上下または左右を、ルーフレジスタの上下左右として説明しているが、ルーフレジスタは、天井部に略下向きに或いは斜め下向きに取り付けられるため、その上下左右は実施形態に限定されない。
【0024】
ルーフレジスタの基部を形成するリテーナ4は、図5に示す如く筒状(ダクト状)に形成され、後部上流部に空気の導入口8を有し、前部下流部を開口し、内部に通風路6(図19)が設けられる。図5に示すように、リテーナ4内に、後フィン組付体2と前フィン組付体3を組み付けた状態で、ベゼル5が前方から組み付けられる。そのために、リテーナ4内の前上部と前下部に、後フィン組付体2の上下の軸支部材28を、密に嵌入可能に、横嵌合凹部48が形成され、リテーナ4内の前部両側には、前フィン組付体3の両側の軸支部材33、34を嵌入するために、縦嵌合凹部49が両側縦方向に形成される。
【0025】
縦嵌合凹部49の縁部に、縦嵌合リブ47が前部に突き出して形成され、リテーナ4の前部に、ベゼル5を組み付けたとき、ベゼル5の枠部5aの左右に設けた後係合リブが、縦嵌合リブ47の外側に嵌合する。これにより、ベゼル5は、リテーナ4の前部に、隙間なく密に嵌着される。
【0026】
後フィン組付体2は、リテーナ4の通風路6内の上流側に、前方から挿入して組み付けられる、後フィン組付体2は、水平横方向に配設した上下の軸支部材28間に、例えば5枚の後フィン20~22を縦方向に、左右に間隔をあけて並設し、各後フィンを左右方向に回動可能に軸支して構成される。後フィンは3枚、4枚或いは6枚とすることもできる。
【0027】
図4に示すように、各後フィン20~22の上部と下部に、支軸23が突設され、これらの支軸23が、上部と下部の軸支部材28に設けた軸孔28aに嵌入され、後フィン20~22は回動可能に軸支される。図14Cに示すように、中央の後フィン21には、係合部26が設けられ、スライドノブ1の上流側に軸支された1対の係合アーム13が係合する。
【0028】
図4に示す如く、後フィン21の両側に後フィン20が並設され、さらに両側の後フィン20の外側に、曲りフィン部22aを上流側に設けた後フィン22が並設される。それらの各後フィン20~22の上部に連結軸24が突設され、1本のリンクバー25がそれらの連結軸24に連結され、各後フィン20~22はリンクされ、同期して回動する。
【0029】
スライドノブ1の係合アーム13と係合する、後フィン21の係合部26には、上部と下部に水平板部27が平行に間隔をおいて設けられ、水平板部27間に、係合アーム13の先端の環状接触片18が、図14Cのように挿入され、係合する。スライドノブ1の上下の回動操作に応じて、環状接触片18が水平板部27に接触したとき、緩衝作用を発揮し、異音の発生や衝撃を防止する。また、下側の水平板部27の前部に、傾斜部27aが設けられ、前フィン30~32を上に振ったとき、係合アーム13と水平板部27との干渉を回避する。
【0030】
図19に示すように、後フィン組付体2の下流側の通風路6内に、前フィン組付体3が組み付けられる。前フィン組付体3は、図13に示すように、両側に縦に配置された板状の軸支部材33、34間に、例えば5枚の前フィン30~32を、水平横方向に、上下に間隔をおいて平行に配設して構成される。前フィンは3枚、4枚或いは6枚とすることもできる。
【0031】
各前フィン30~32の両側端部に支軸37が突設され、各支軸37は軸支部材33、34に設けた軸孔33a,34aに各々嵌入され軸支される。各前フィン30~32の後端部に、連結軸38が設けられ、1本のリンクバー40がそれらの連結軸38間に連結される。これにより、5枚の前フィン30~32は、支軸37を軸に、同期して上下に回動する。
【0032】
図13に示すように、左側の軸支部材34に、円弧状のガイド溝34bが設けられ、中央の前フィン30の左端部に設けたガイド軸39がガイド溝34bに係合する。ガイド溝34bとガイド軸39の係合により、前フィン30の回動角度範囲が決定される。図7に示すように、ガイド溝34bの縁部に、クリック感を出すための、凸部34cが設けられ、前フィン30が閉鎖位置まで回動したとき、ガイド軸39が凸部34cを乗り越え、クリック感を発生させる。
【0033】
図14に示すように、中央の前フィン30上に、スライドノブ1が摺動可能に取り付けられ、その摺動をガイドするために、前フィン30の裏面に、図15D,Eに示す如く、ガイドレール35が長手方向に沿って設けられる。ガイドレール35は鉤型断面を有して前フィン30の裏面に一体成形される。
【0034】
スライドノブ1の摺動部11にも、その鉤型断面に対応した形状の係合溝11bが形成され、スライドノブ1の係合溝11bがガイドレール35に係合し、スライドノブ1が前フィン30に保持される。また、図15Eに示すごとく、ガイドレール35の右側端部は内側が閉鎖され、スライドノブ1の摺動部11をガイドレール35に係合させ、一方の端部まで摺動させたとき、摺動部11の係合部がその端部に当接し、右側への移動が停止する。
【0035】
また、ガイドレール35の近傍の裏面に、凸部35aが設けられ、スライドノブ1の摺動部11をガイドレール35に嵌め込む際、この凸部35aを乗り越えて、摺動部11がレールに係合し、係合状態で、凸部35aは左側のストッパとなる。さらに、前フィン30の表面(上面)と裏面に、摺動部11に係合して、摺動をガイドするガイドリブ36が設けられる。一方、図13に示す如く、前フィン30の下側に隣接する前フィン31に、切欠凹部31aが設けられる。
【0036】
この前フィン31の切欠凹部31aは、図16に示すように、フィンの中央に位置し、図12に示す如く、スライドノブ1を回動操作して前フィン30~32を閉鎖したとき、スライドノブ1の連結部12が切欠凹部31aに進入し、スライドノブ1の閉鎖回動が前フィン31に干渉せずに可能となる。また、中央の前フィン30に隣接する前フィン31に切欠凹部31aを設けることにより、図8図10に示す如く、スライドノブ1を下側に操作して、前フィン30~32を閉鎖したとき、スライドノブ1のノブ操作部10の突出量が最少となるようにし、前フィン閉鎖時のルーフレジスタの見栄えを良くしている。
【0037】
スライドノブ1は、図17に示すように、指などで操作するノブ操作部10と、前フィン30のガイドレール35に係合し、前フィンの裏面を摺動する摺動部11と、ノブ操作部10と摺動部11とを連結する連結部12と、摺動部11の後部に軸支された係合アーム13とから構成される。
【0038】
ノブ操作部10は、図17に示す如く、その形状が正面視で横長に形成され、その厚さは比較的薄く、図8に示すように、その前後方向の幅W1は、前フィン30~32の短手方向の幅W2と略同一に形成され、ルーフレジスタの正面からの見栄えを良くしている。
【0039】
また、ノブ操作部10の背面には、図17Dに示すように、凹部16が設けられ、前フィン30~32を閉鎖するとき、この凹部16に指を掛けて、ノブ操作部10の下側への回動操作を容易にする。ノブ操作部10の前面にはセレーションが設けられ、ノブ操作部10に続く連結部12には円弧曲面17が正面側に設けられ、円弧曲面17にも、セレーションが設けられる。これにより、スライドノブ1を持ちやすくし、前フィンや後フィンの回動操作性を良好にしている。連結部12の内側には、図18Bに示す如く、収納室12aが開口して設けられ、収納室12aには、熱可塑性エラストマなどからなる荷重付与部材15が収納される。
【0040】
荷重付与部材15は、図19に示すように、前フィン30の前縁部に接触し、スライドノブ1の摺動操作時、操作荷重を付与する。また、スライドノブ1の連結部12に設けた収納室12aに荷重付与部材15が収納され、前フィン30の前縁部に荷重付与部材15が当接するため、スライドノブ1を持って操作する際に、押さえたとき、適度な弾性が得られ、良好なフィーリング感を生じさせることができる。
【0041】
図14Cに示すように、スライドノブ1は、その連結部12から摺動部11にかけて、前フィン30の裏面(底面)側を通し、上流側に係合アーム13を出すように、摺動部11の係合溝11bを、前フィン30のガイドレール35に係合させて、取り付けられる。スライドノブ1の連結部12と摺動部11が前フィン30の裏面を通ることにより、前フィン30の上面にガイドレール35などを露出させずに、閉鎖時などの、前フィン30の外観を良好にしている。また、連結部12から摺動部11にかけて、形状の小型化が可能となり、空気抵抗を低減している。
【0042】
一方、前フィン30~32は、図1図11のニュートラル状態から、その前縁部を回動端まで下に回動させたとき、図2図8図20に示す如く、前面の空気吹出口7を閉鎖可能な形状に形成されている。また、図12のように、前フィン30~32を全閉状態にしたとき、スライドノブ1の連結部12と摺動部11が前フィン30の裏面に現れ、スライドノブ1と前フィン30の干渉を回避して、前フィンを全閉状態とすることができる。
【0043】
図18に示すように、摺動部11の内側に、凸部11cが設けられ、摺動部11を前フィン30底面のガイドレール35に係合させるとき、凸部11cが前フィン30底面の凸部35a(図15)を乗り越えて、摺動可能に嵌合するようになっている。さらに、摺動部11の後部両側に、係合アーム13用の軸支部が突設され、軸孔11aが軸支部に設けられ、図18に示す如く、1対の係合アーム13の元部両側に設けた支軸13aが、その軸孔11aに嵌合する。これにより、係合アーム13は、スライドノブ1の摺動部11の後部に、支軸13aを介して上下に回動可能に支持される。
【0044】
図5に示すように、ベゼル5は、長方形の枠状に形成され、正面に開口する空気吹出口7を有し、背面側周囲に枠部5aを設けて構成され、リテーナ4の正面からその上下左右側面の前部を、枠部5aで覆うように、リテーナ4の前部に嵌着される。
【0045】
上記構成のルーフレジスタを組み立てる場合、先ず、後フィン組付体2及び前フィン組付体3を組み立てる。後フィン組付体2は、図4のように、縦に並設した5枚の後フィン20~22の上下の支軸23を、上下の軸支部材28の軸孔28aに嵌合させて組み付け、各後フィン20~22の上部の連結軸24にリンクバー25を連結する。その後フィン組付体2の上下の軸支部材28を、リテーナ4の通風路6内の上流側に、嵌め込み、後フィン組付体2をリテーナ4内に組み付ける。
【0046】
前フィン組付体3は、図13に示す如く、水平横方向に平行に配置した、5枚の前フィン30~32の左右の支軸37を、左右の軸支部材33、34の軸孔33a,34aに嵌合させて組み付け、前フィン30~32の連結軸38にリンクバー40を連結する。中央の前フィン30には、予め、スライドノブ1が摺動可能に取り付けられる。スライドノブ1は、図17のように、係合アーム13を軸支した状態で、その摺動部11の係合溝11bを、前フィン30の底面のガイドレール35に、側方からスライドさせて嵌合させる。このとき、摺動部11の内側の凸部11cが前フィン30の底面の凸部35aを乗り越え、スライドノブ1の摺動部11が前フィン30上に、所定の移動範囲で摺動可能に嵌合される。
【0047】
次に、前フィン組付体3が、リテーナ4の通風路6内の下流側、後フィン組付体2の前部に組み付けられる。このとき、両側の軸支部材33、34が、リテーナ4の前部の縦嵌合リブ47の内側に嵌入され、前フィン組付体3は、通風路6内の前部定位置に取り付けられる。このとき、前フィン30に組み付けたスライドノブ1の1対の係合アーム13が、図14Cの如く、後フィン21の係合部26に係合する状態となる。
【0048】
次に、ベゼル5を、リテーナ4の前部に嵌着する。このとき、ベゼル5は、その枠部5aの後部が、リテーナ4の前部を覆うように、嵌め込まれ、所定位置まで、嵌め込まれると、枠部5aの上部と下部の被係止部が、リテーナ4の上部と下部の係止部に係止され、嵌着される。最後にベゼル5の枠部5aの両側に設けた固定孔から、リテーナ4の側部に設けた固定孔に固定ネジ9を捻じ込み、ルーフレジスタの組み立てが完了する。
【0049】
次に、上記構成のルーフレジスタの動作を説明する。ルーフレジスタは、自動車の車室内の天井部に取り付けられ、図22に示すように、リテーナ1の背面の導入口8に空調用ダクトDが接続される。図19図22に示すように、後フィン20~22及び前フィン30~32がニュートラルの状態で、空気吹出口7からの送風は、正面方向に向けて送風される。
【0050】
図22に示す例では、右側から延びる空調用ダクトDの先端がリテーナ1の導入口8に接続されるが、この場合、左側端部に、曲りフィン部22aを上流側に設けた後フィン22が配置されるので、右側から入る送風を、効率良く導入口8から通風路6内に導入し、送風することができる。
【0051】
スライドノブ1を、上に傾動させると、図21のように、前フィン30~32が支軸37を中心に上側に回動し、送風方向が上方に向けて送風される。このとき、スライドノブ1の係合アーム13は、スライドノブ1の回動を許容して、支軸13aを軸に上側に傾動し、前フィン21の係合部26との係合を保持する。係合アーム13の先端の環状接触片18は、係合部26の水平板部27に適度に接触し緩衝する。
【0052】
一方、スライドノブ1を前フィン30上で例えば左側に摺動操作すると、図23のように、スライドノブ1が係合アーム13とともに左側に移動し、後フィン20~22がその支軸23を中心に左に回動し、送風方向が左側に変わる。一方、スライドノブ1を下側に回動端まで回動操作すると、図20に示すように、前フィン30~32が回動端まで下側に回動し、それにより、前フィン30~32が空気吹出口7の全体を閉鎖して、通風路6が全閉状態となり、送風は停止される。前フィン30~32を全閉としたとき、図2及び図20に示すように、スライドノブ1のノブ操作部10が、中央の前フィン30からその下側に隣接する前フィン31に沿って現れ、閉鎖時におけるフールレジスタの見栄えを良くしている。
【0053】
このように、上記ルーフレジスタは、スライドノブ1の連結部12及び摺動部11を、前フィン30の前部から裏面に通しているため、空気抵抗が小さくなり、且つ前フィン閉鎖時のレジスタ正面の見栄えが良好となる。さらに、ノブ操作部10を薄く、連結部12及び摺動部11を小形にすることにより、送風時の空気抵抗を低減することができる。
【0054】
また、相互に直交配置された前フィン30~32と後フィン20~22を持つクロスフィン型のルーフレジスタは、バレルタイプのレジスタに比して、指向性の優れた送風を行うことができ、スライドノブ1の空気抵抗の低減によっても、指向性を向上させ、車室内の乗員が希望する部位に、十分な風量の送風を行うことができる。さらに、荷重付与部材15が、スライドノブ1の連結部12の内側に、前フィン30の前縁部に接触して配設されるため、使用者がノブ操作時にスライドノブ1を押さえたとき、適度な弾力性が生じやすく、操作フィーリングを向上させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 スライドノブ
2 後フィン組付体
3 前フィン組付体
4 リテーナ
5 ベゼル
5a 枠部
6 通風路
7 空気吹出口
8 導入口
9 固定ネジ
10 ノブ操作部
11 摺動部
11a 軸孔
11b 係合溝
11c 凸部
12 連結部
12a 収納室
13 係合アーム
13a 支軸
15 荷重付与部材
16 凹部
17 円弧曲面
18 環状接触片
20 後フィン
21 後フィン
22 後フィン
22a 曲りフィン部
23 支軸
24 連結軸
25 リンクバー
26 係合部
27 水平板部
27a 傾斜部
28 軸支部材
28a 軸孔
30 前フィン
31 前フィン
31a 切欠凹部
33 軸支部材
33a 軸孔
34 軸支部材
34b ガイド溝
34c 凸部
35 ガイドレール
35a 凸部
36 ガイドリブ
37 支軸
38 連結軸
39 ガイド軸
40 リンクバー
47 縦嵌合リブ
48 横嵌合凹部
49 縦嵌合凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23