IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】シャッタ装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20210101AFI20231225BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20231225BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231225BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20231225BHJP
   H04N 23/65 20230101ALI20231225BHJP
【FI】
G03B9/36 C
G03B7/091
G03B15/00 H
H04N23/55
H04N23/65
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020054405
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021156945
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】今井 連太郎
(72)【発明者】
【氏名】川浪 淳
(72)【発明者】
【氏名】足立 圭祐
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112734(JP,A)
【文献】国際公開第2015/071988(WO,A1)
【文献】特開2012-215795(JP,A)
【文献】特開2010-206520(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147256(WO,A1)
【文献】特開2011-158890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
G03B 7/091
G03B 15/00
H04N 23/55
H04N 23/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光用の開口を開閉する先羽根群および後羽根群と、
前記開口の開放位置と閉鎖位置との間で前記先羽根群および前記後羽根群をそれぞれ駆動する先駆動部材および後駆動部材と、
前記先駆動部材および前記後駆動部材をそれぞれチャージする先カムギアおよび後カムギアと、
前記先カムギアおよび前記後カムギアとそれぞれ連結して回動させる先駆動源および後駆動源と、
前記先羽根群および前記後羽根群の駆動を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、撮影条件に基づいて、前記先羽根群および前記後羽根群の駆動タイミングを変更するように前記先駆動源および前記後駆動源を制御し、
前記先カムギアおよび前記後カムギアは、前記先駆動部材および前記後駆動部材とそれぞれ接触してカムボトム位置からカムトップ位置へのセット動作を行い、
前記制御手段は、
前記先駆動源および前記後駆動源のそれぞれに通電することで、前記セット動作を制御し、
前記セット動作の際に、前記先駆動源および前記後駆動源に対して第一の時間差で通電する第一のモードと、前記先駆動源と前記後駆動源とを前記第一の時間差よりも長い第二の時間差で通電する第二のモードと、を撮影条件に基づいて切り替えることを特徴とするシャッタ装置。
【請求項2】
前記先カムギアおよび前記後カムギアは、前記先駆動部材および前記後駆動部材の順に前記セット動作を行うことを特徴とする請求項に記載のシャッタ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第二のモードにおいて、前記先駆動部材の前記セット動作の最大負荷部を越えた後に、前記後駆動源への通電を行うことを特徴とする請求項またはに記載のシャッタ装置。
【請求項4】
前記先カムギアの回転位相を検出する位相検出手段を更に有し、
前記制御手段は、前記第二のモードにおいて、前記位相検出手段が前記先カムギアの前記セット動作の最大負荷部を越えた位相を検出した後に、前記後駆動源への通電を行うことを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のシャッタ装置。
【請求項5】
前記先駆動源への通電電圧は、前記第一のモードと前記第二のモードのそれぞれにおいて異なることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のシャッタ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第二のモードにおいて、前記先駆動源への通電電圧を、前記後駆動源への通電開始の際に低下させることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のシャッタ装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
撮像素子の電荷の読出し完了後に前記先駆動源への通電を行う第三のモードを更に有し、
前記第一のモードと前記第二のモードと前記第三のモードとを前記撮影条件に基づいて切り替えることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のシャッタ装置。
【請求項8】
前記撮影条件は、撮像装置の撮影モード、前記撮像装置の温度、撮像レンズの種類、電源の種類、または、電池残量を含むことを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
露光用の開口を開閉する先羽根群および後羽根群と、
前記開口の開放位置と閉鎖位置との間で前記先羽根群および前記後羽根群をそれぞれ駆動する先駆動部材および後駆動部材と、
前記先駆動部材および前記後駆動部材をそれぞれチャージする先カムギアおよび後カムギアと、
前記先カムギアおよび前記後カムギアとそれぞれ連結して回動させる先駆動源および後駆動源と、
前記先羽根群および前記後羽根群の駆動を制御する制御手段と、
前記先カムギアに前記先駆動源からの駆動力を伝達する先減速ギアと、
前記後カムギアに前記後駆動源からの駆動力を伝達する後減速ギアと、を有し、
前記制御手段は、撮影条件に基づいて、前記先羽根群および前記後羽根群の駆動タイミングを変更するように前記先駆動源および前記後駆動源を制御し、
前記開口の短辺方向において、前記先カムギアの回転軸および前記後カムギアの回転軸は、前記先減速ギアの回転軸および前記後減速ギアの回転軸よりも、前記先駆動部材の回転軸からの距離と前記後駆動部材の回転軸からの距離とが等しい開口中心線の近くに配置されていることを特徴とするシャッタ装置。
【請求項10】
前記先駆動部材の前記回転軸と前記後駆動部材の前記回転軸は、前記開口中心線に関して対称な位置に配置され、
前記先カムギアの前記回転軸と前記後カムギアの前記回転軸は、前記開口中心線に関して対称な位置に配置され、
前記先減速ギアの前記回転軸と前記後減速ギアの前記回転軸は、前記開口中心線に関して対称な位置に配置されていることを特徴とする請求項に記載のシャッタ装置。
【請求項11】
記先駆動部材は、前記先羽根群を露光動作方向に駆動し、
前記先カムギアは、前記先駆動部材を前記露光動作方向とは逆方向に回転させて待機位置にチャージし、
前記後駆動部材は、前記後羽根群を前記露光動作方向に駆動し、
前記後カムギアは、前記後駆動部材を前記露光動作方向とは逆方向に回転させて待機位置にチャージし、
前記制御手段は、前記後駆動部材の前記待機位置へのチャージが完了した際に、前記先羽根群の前記露光動作方向への駆動を開始することを特徴とする請求項1に記載のシャッタ装置。
【請求項12】
露光用の開口を開閉する先羽根群および後羽根群と、
前記開口の開放位置と閉鎖位置との間で前記先羽根群および前記後羽根群をそれぞれ駆動する先駆動部材および後駆動部材と、
前記先駆動部材および前記後駆動部材をそれぞれチャージする先カムギアおよび後カムギアと、
前記先カムギアおよび前記後カムギアとそれぞれ連結して回動させる先駆動源および後駆動源と、
前記先羽根群および前記後羽根群の駆動を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、撮影条件に基づいて、前記先羽根群および前記後羽根群の駆動タイミングを変更するように前記先駆動源および前記後駆動源を制御し、
前記先駆動部材は、前記先羽根群を露光動作方向に駆動し、
前記先カムギアは、前記先駆動部材を前記露光動作方向とは逆方向に回転させて待機位置にチャージし、
前記後駆動部材は、前記後羽根群を前記露光動作方向に駆動し、
前記後カムギアは、前記後駆動部材を前記露光動作方向とは逆方向に回転させて待機位置にチャージし、
前記制御手段は、前記後駆動部材の前記待機位置へのチャージが完了した際に、前記先羽根群の前記露光動作方向への駆動を開始し、
前記制御手段は、連写のコマ間において、撮像素子の出力信号に基づいてライブビュー表示を行うことを特徴とするシャッタ装置。
【請求項13】
露光用の開口を開閉する先羽根群および後羽根群と、
前記開口の開放位置と閉鎖位置との間で前記先羽根群および前記後羽根群をそれぞれ駆動する先駆動部材および後駆動部材と、
前記先駆動部材および前記後駆動部材をそれぞれチャージする先カムギアおよび後カムギアと、
前記先カムギアおよび前記後カムギアとそれぞれ連結して回動させる先駆動源および後駆動源と、
前記先羽根群および前記後羽根群の駆動を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、撮影条件に基づいて、前記先羽根群および前記後羽根群の駆動タイミングを変更するように前記先駆動源および前記後駆動源を制御し、
前記先駆動部材は、前記先羽根群を露光動作方向に駆動し、
前記先カムギアは、前記先駆動部材を前記露光動作方向とは逆方向に回転させて待機位置にチャージし、
前記後駆動部材は、前記後羽根群を前記露光動作方向に駆動し、
前記後カムギアは、前記後駆動部材を前記露光動作方向とは逆方向に回転させて待機位置にチャージし、
前記制御手段は、前記後駆動部材の前記待機位置へのチャージが完了した際に、前記先羽根群の前記露光動作方向への駆動を開始し、
前記制御手段は、撮像素子を用いた電子先幕撮影による連写を行うことを特徴とするシャッタ装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記後駆動部材の前記待機位置へのチャージの完了または撮影により撮像素子に蓄積された電荷の読出し完了のいずれか遅い方に基づいて、前記先羽根群の前記露光動作方向の駆動を開始することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載のシャッタ装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載のシャッタ装置と、
被写体像を光電変換して画像信号を出力する撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先羽根と後羽根とを備えたシャッタ装置、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォーカルプレンシャッタ等のシャッタ装置の一連の動作としては、先羽根群および後羽根群の露光走行に先立って、まず、先羽根用の電磁石と後羽根用電磁石に通電し、その後、撮像時の露光時間に基づく出力信号によって、順次、各電磁石への通電を断つ。そして、先羽根用および後羽根用の各駆動ばねの付勢力によって、先羽根群と連結した先駆動部材および後羽根群と連結した後駆動部材を回転させることにより、先羽根群と後羽根群に露光走行を行わせる。
【0003】
また、先駆動部材と後駆動部材を露光走行後にセット位置までセットする動作(所謂チャージ動作)は、駆動源の動力を伝達部材(ギア)とカムギアで伝達し、先駆動部材および後駆動部材を各駆動ばねの付勢力に抗してセット位置まで回転させることで行われる。特許文献1には、1つのモータにより先駆動部材および後駆動部材をチャージするシャッタ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6536729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているシャッタ装置では、1つのモータ(駆動源)により各駆動部材をチャージするため、撮影条件が変化してもシャッタ装置の駆動による消費電力のピークタイミングをずらすことは困難である。このため、撮影条件が変化しても電源の許容消費電力を満足するようにシャッタ装置の駆動を制御する必要があり、連続撮影速度(所謂連写のコマ速)が制限され、またシャッタ装置や電池が大型化する。
【0006】
そこで本発明は、大型化することなく駆動効率の低下を抑制することが可能なシャッタ装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのシャッタ装置は、露光用の開口を開閉する先羽根群および後羽根群と、前記開口の開放位置と閉鎖位置との間で前記先羽根群および前記後羽根群をそれぞれ駆動する先駆動部材および後駆動部材と、前記先駆動部材および前記後駆動部材をそれぞれチャージする先カムギアおよび後カムギアと、前記先カムギアおよび前記後カムギアとそれぞれ連結して回動させる先駆動源および後駆動源と、前記先羽根群および前記後羽根群の駆動を制御する制御手段と、を有する。前記制御手段は、撮影条件に基づいて、前記先羽根群および前記後羽根群の駆動タイミングを変更するように前記先駆動源および前記後駆動源を制御し、前記先カムギアおよび前記後カムギアは、前記先駆動部材および前記後駆動部材とそれぞれ接触してカムボトム位置からカムトップ位置へのセット動作を行い、前記制御手段は、前記先駆動源および前記後駆動源のそれぞれに通電することで、前記セット動作を制御し、前記セット動作の際に、前記先駆動源および前記後駆動源に対して第一の時間差で通電する第一のモードと、前記先駆動源と前記後駆動源とを前記第一の時間差よりも長い第二の時間差で通電する第二のモードと、を撮影条件に基づいて切り替える。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大型化することなく駆動効率の低下を抑制することが可能なシャッタ装置および撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施例態におけるシャッタ装置が搭載された撮像装置の斜視図である。
図2】本実施形態における撮像装置のブロック図である。
図3(a)】本実施形態におけるシャッタ装置の分解斜視図である。
図3(b)】本実施形態におけるシャッタ装置の分解斜視図である。
図4】本実施例における撮影待機状態でのシャッタ装置の平面図である。
図5】本実施形態における駆動部材およびカムギアの斜視図である。
図6】本実施形態における第一のセット動作モードでのシャッタ装置および撮像素子の動作を示すタイミングチャートである。
図7】本実施形態における走行待機状態でのシャッタ装置の平面図である。
図8】本実施形態における露光動作中のシャッタ装置の平面図である。
図9】本実施形態におけるセット動作直前のシャッタ装置の平面図である。
図10】本実施形態における第一のセット動作モードでのセット動作中のシャッタ装置の平面図である。
図11】本実施形態におけるセット動作中の先駆動部材の走行直前のシャッタ装置の平面図である。
図12】本実施形態における第二のセット動作モードでのシャッタ装置および撮像素子の動作を示すタイミングチャートである。
図13】本実施形態における第二のセット動作モードおよび第三のセット動作モードでの先駆動部材のセット動作中のシャッタ装置の平面図である。
図14】本実施形態における第二のセット動作モードおよび第三のセット動作モードでの後駆動部材のセット動作中のシャッタ装置の平面図である。
図15】本実施形態における第三のセット動作モードでのシャッタ装置および撮像素子の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
まず、図1および図2を参照して、本実施形態におけるシャッタ装置(フォーカルプレンシャッタ)202を備えた撮像装置100について説明する。図1は、撮像装置100の斜視図である。撮像装置100の上面には、電源ボタン110、レリーズボタン130、および、ストロボ装置などの撮影アクセサリを取り付けるアクセサリーシュー140が設けられている。レンズマウント150は、撮像レンズ(不図示)の取り付け部である。撮像装置100は、レフレックスミラーが無いミラーレスタイプの撮像装置であり、ライブビュー表示のため撮影待機の状態においてシャッタ幕が開いている。このため、図1に示されるように、撮像レンズを取り外した状態において撮像素子203の撮像面は露出している。
【0013】
図2は、撮像装置100のブロック図である。シャッタ装置202は、撮影光路上において被写体からの光を結像する撮像レンズ201とCMOSイメージセンサ等の撮像素子203との間に設けられている。シャッタ装置200は、撮像素子203の電子先幕動作と連動して撮像素子203を露光する時間を調節する。撮像素子203は、撮像レンズ201により結像された被写体像を光電変換して画像信号(アナログ画像信号)を出力する。撮像素子203から出力されたアナログ画像信号は、AFE(Analog Front End)204によりデジタル信号に変換される。AFE204から出力されたデジタル画像信号に対しては、DSP(Disital Signal Processer)205により各種画像処理や圧縮・伸張処理などが行われる。記録媒体206は、DSP205により処理された画像データを記録する。表示部207は、液晶ディスプレイ(LCD)等が使用され、撮影した画像や各種メニュー画面などを表示する。TG(Timing Generator)208は、撮像素子203に駆動信号を供給する。RAM210は、DSP205に接続され、画像データなどを一時的に記憶する。シャッタ駆動回路211は、シャッタ装置202を駆動する。CPU209は、AFE204、DSP205、TG208、およびシャッタ駆動回路211の制御を行う。レンズ制御手段212は、撮像レンズ201の焦点距離、絞り径、瞳径、および瞳と撮像素子203の距離等のレンズ情報をCPU209に出力するとともに、CPU209による制御に応じて絞りやレンズ等を駆動する。
【0014】
次に、図3乃至図5を参照して、本実施形態におけるシャッタ装置202について説明する。図3(a)はシャッタ装置202を撮像素子203が取り付けられる側(撮像素子側)から見た分解斜視図、図3(b)はシャッタ装置202を撮像レンズ201が取り付けられる側(被写体側)から見た分解斜視図である。図4(a)はシャッタ装置202を撮像素子側から見た撮影待機状態の平面図、図4(b)はシャッタ装置202を被写体側から見た平面図である。図5(a)は先駆動部材7および先カムギア22の斜視図、図5(b)は後駆動部材8および後カムギア23の斜視図である。
【0015】
シャッタ地板1の被写体側には、仕切り板2とカバー板3がそれぞれ所定の間隔をあけて順に取り付けられている。シャッタ地板1、仕切り板2、およびカバー板3の三つの板部材には、類似した形状のアパーチャ(開口)1a、2a、3aが形成されており、これら3つのアパーチャを重ね合わせた長方形の露光用の開口が、シャッタを通過する光束を規定している。また、これら三つの板部材の間に二つの羽根室を形成し、それらの羽根室内には遮光羽根と羽根アームからなるシャッタ羽根が、先羽根群4および後羽根群5として個別に配置される。先羽根群4および後羽根群5は、露光用の開口(1a~3a)を開閉する。
【0016】
シャッタ地板1の強度向上のため、また、各種金属軸を加締めるため、金属で形成された補助地板6が、シャッタ地板1とビスによって締結されている。補助地板6には、撮像素子側に複数の軸6a、6b、6c、6d、6e、6fが立設されている。軸6a、6b、6c、6dには、先駆動部材7、後駆動部材8、先係止部材9、および後係止部材10がそれぞれ回転可能に取り付けられている。また、補助地板6の被写体側には、DCモータなどの先駆動源24および後駆動源25がそれぞれビスにより締結されている。
【0017】
先駆動部材7および後駆動部材8は、開口1aの開放位置と閉鎖位置との間で先羽根群4および後羽根群5をそれぞれ駆動する。先カムギア22および後カムギア23は、先駆動部材7および後駆動部材8をそれぞれチャージする。先駆動源24および後駆動源25は、先カムギア22および後カムギア23とそれぞれ連結して回動させる。先駆動源24および後駆動源25は、シャッタ駆動回路211を用いて制御手段(CPU209)により制御される。
【0018】
補助地板6の被写体側には、ギア地板26がビスにより締結されている。先カムギア22および後カムギア23は、ギア地板26の撮像素子側に立設された軸26a、26bにそれぞれ回転可能に取り付けられている。ギア地板26の撮像素子側の軸26c、26eには先減速ギア27が、軸26d、26fには後減速ギア28がそれぞれ回転可能に軸支されている。先駆動源24の出力軸24aと先減速ギア27と先カムギア22、および、後駆動源25の出力軸25aと後減速ギア28と後カムギア23とは、それぞれ係合している。先減速ギア27は、先カムギア22に先駆動源24からの駆動力を伝達する。後減速ギア28は、後カムギア23に後駆動源25からの駆動力を伝達する。このような構成により、先駆動源24および後駆動源25のトルクを先カムギア22および後カムギア23にそれぞれ伝達することができる。先駆動源24および後駆動源25は、正転および逆転とも使用可能に構成されている。本実施形態では、図4(a)において先カムギア22および後カムギアが反時計方向に回転する方向を正転と定義する。
【0019】
ここで、図4(a)中の線A-Aは、開口の中心を通る線であり、先駆動部材7の回転軸(軸6a)からの距離と後駆動部材8の回転軸(軸6b)からの距離とが等しい開口中心線である。先羽根群4を駆動する部品として、線A-Aに近い順に、先カムギア22の回転軸である軸26a、先駆動部材7の回転軸である軸6a、先減速ギア27の回転軸である軸26c、および先駆動源24の出力軸24aが配置されている。一方、後羽根群5を駆動する部品として、線A-Aに近い順に、後カムギア23の回転軸である軸26b、後駆動部材8の回転軸である軸6b、後減速ギア28の回転軸である軸26d、および後駆動源25の出力軸25aが配置されている。すなわち開口1aの短辺方向において、先カムギア22および後カムギア23の回転軸(軸26a、26b)は、先減速ギア27および後減速ギア28の回転軸(軸26c、26d)よりも、開口中心線(線A-A)の近くに配置されている。
【0020】
好ましくは、先駆動部材7の回転軸(軸6a)と後駆動部材8の回転軸(軸6b)は、開口中心線に関して対称(略対称)な位置に配置されている。同様に、先カムギア22の回転軸(軸26a)と後カムギア23の回転軸(軸26b)は、開口中心線に関して対称(略対称)な位置に配置されている。同様に、先減速ギア27の回転軸(軸26c)と後減速ギア28の回転軸(軸26d)は、開口中心線に関して対称(略対称)な位置に配置されている。
【0021】
このような配置は、シャッタ装置202を先駆動源24と後駆動源25の二つの駆動源で動作させ、先羽根群4の駆動に必要なトルクと後羽根群5の駆動に必要なトルクとを分散し、先カムギア22および後カムギア23を小型化することにより可能となる。これにより、シャッタ装置202の全体を小型化することができる。
【0022】
先駆動部材7および後駆動部材8はそれぞれ、先駆動ばね12および後駆動ばね13の付勢力により、撮像素子側から見て反時計方向に付勢されている。一方、先駆動部材7および後駆動部材8は、先カムギア22および後カムギア23により、先駆動ばね12および後駆動ばね13の付勢力に抗して時計方向に回転させられる。そして、セット位置では、先駆動部材7および後駆動部材8に設けられた係止部7a、8aと、係止部材9、10の係止部9a、10aとが係合することにより、先駆動部材7および後駆動部材8が係止される。また、先駆動部材7および後駆動部材8には駆動ピン7b、8bがそれぞれ設けられている。これらは、シャッタ地板1と補助地板6とカバー板3の3組の長孔である長孔1bと長孔1c、長孔6gと長孔6h、および長孔3bと長孔3cを貫通しつつ、羽根アーム4a、5aの長孔4c、5cと係合している。先駆動部材7には、ローラ14、ローラ15が、回転可能に取り付けられている。後駆動部材8には、ローラ16、ローラ17が、回転可能に取り付けられている。ローラ14、15を介して先カムギア22による先駆動部材7のセット動作が、ローラ16、17を介して後カムギア23による後駆動部材8のセット動作が、それぞれ好適に行われる。
【0023】
ここで、本実施形態の構成では、先カムギア22にはカム面22a、22bが、後カムギア23にはカム面23a、23bがそれぞれ形成されている。そして、先駆動部材7および後駆動部材8に取り付けられた各2つのローラ14、15、16、17が、二つのカム面に順次接触してセット動作が行われる構成になっている。これにより、先駆動部材7および後駆動部材8と先カムギア22および後カムギア23とのセット動作時の回転量が均されるため、セット動作時の最大負荷を低減することが可能となっている。ところで、関係部品の許容公差によっては、先駆動部材7および後駆動部材8を許容範囲内のセット位置にもたらせないものができてしまうことがある。その際には、ローラ15、17を交換することで、先駆動部材7および後駆動部材8のセット位置を調整することができる。
【0024】
羽根位相検出手段29、30および位相検出手段(カム位相検出手段)31、32は、非接触の光学式位相検出手段であり、補助地板6の撮像素子側に配置された押さえ地板11に取り付けられている。本実施形態では、羽根位相検出手段29、30および位相検出手段31、32として、フォトインタラプタを使用している。羽根位相は、先駆動部材7および後駆動部材8の被検出部7f、8fによる羽根位相検出手段29、30の遮光状態を判定することで、位相が検出される。カム位相は、先カムギア22および後カムギア23の被検出部22c、23cによる位相検出手段31、32の遮光状態を判定することで、位相が検出される。本実施例では、位相検出手段31、32として、それぞれ2つずつのフォトインタラプタを使用して位相を判定する。
【0025】
本実施形態の先羽根群4と後羽根群5は、それぞれ、二組の羽根アーム4a、4b、5a、5bと、4組の遮光羽根4d、4e、4f、4g、5d、5e、5f、5gとで構成されている。先羽根群4は、二つの羽根アーム4a、4bが、補助地板6の被写体側において、軸6i、6jに回動自在に枢着されている。4枚の羽根4d、4e、4f、4gは、羽根アーム4a、4bに対して連結軸33を介して枢支されている。前述したように、羽根アーム4aには、長孔4cが形成されており、長孔4cに先駆動部材7の駆動ピン7bが係合している。
【0026】
後羽根群5において、二つの羽根アーム5a、5bは、補助地板6の被写体側で軸6k、6lに回動自在に枢着されている。そして、4枚の遮光羽根5d、5e、5f、5gが、羽根アーム5a、5bに対して連結軸33を介して枢支されている。また、前述したように、羽根アーム5aには長孔5cが形成されており、長孔5cに後駆動部材8の駆動ピン8bが係合している。
【0027】
次に、図4乃至図15を参照して、本実施形態の連写撮影時の撮影動作について説明する。なお、本実施形態のセット動作は、撮影時の条件(撮影条件)に応じて3つのモードに分かれている。ただし、動作が異なるのは、一連の撮影動作中のセット動作のみである。図6は、第一のセット動作モード(第一のモード)におけるシャッタ装置202および撮像素子203の動作を示すタイミングチャートである。図12は、第二のセット動作モード(第二のモード)におけるシャッタ装置202および撮像素子203の動作を示すタイミングチャートである。図15は、第三のセット動作モード(第三のモード)におけるシャッタ装置202および撮像素子203の動作を示すタイミングチャートである。図6中の(1)~(13)、図12中の(1)~(13)、図15中の(1)~(13)はそれぞれ、以降に説明するそれぞれの各動作状態に対応している。
【0028】
図4は、シャッタ装置202を撮像素子側(図4(a))および被写体側(図4(b))から見た撮影待機状態を示す平面図である。図7は、シャッタ装置202を撮像素子側(図7(a))および被写体側(図7(b))から見た後幕セット解除後の走行待機状態を示す平面図である。図8は、シャッタ装置202を撮像素子側(図8(a))および被写体側(図8(b))から見た露光動作中の後羽根走行途中の状態を示す平面図である。図9は、シャッタ装置202を撮像素子側(図9(a))および被写体側(図9(b))から見た後羽根走行完了後のセット動作直前の状態を示す平面図である。図10は、シャッタ装置202を撮像素子側(図10(a))および被写体側(図10(b))から見た第一のセット動作モードにおけるセット動作中の状態を示す平面図である。図11は、シャッタ装置202を撮像素子側(図11(a))および被写体側(図11(b))から見たセット動作中の先羽根走行直前の状態を示す平面図である。図13は、シャッタ装置202を撮像素子側(図13(a))および被写体側(図13(b))から見た第二のセット動作モードおよび第三のセット動作モードにおける先駆動部材のセット動作中の状態を示す平面図である。図14は、シャッタ装置202を撮像素子側(図14(a))および被写体側(図14(b))から見た第二のセット動作モードおよび第三のセット動作モードにおける後駆動部材のセット動作中の状態を示す平面図である。
【0029】
図6(1)の撮影待機状態では、図4(a)に示されるように、先駆動部材7は走行完状態、後駆動部材8は後カムギア23のカムトップ位置に保持され、後駆動部材8の係止部8aと後係止部材10の係止部10aの間に隙間を有するオーバーチャージ状態である。先羽根群4および後羽根群5は、露光開口から退避しているため、被写体光束は露光開口を通過する。撮像装置100では、ライブビュー撮像動作が行われ、撮像素子203に入射した被写体像が表示部207に表示される。
【0030】
撮像装置100のレリーズボタン130が押されると、レリーズ動作が開始(図6(2))され、後駆動部材8のセット解除動作が行われる。後駆動源25が正転方向に通電され、後減速ギア28を介して後カムギア23が図4(a)において反時計方向に回動される。後ローラ17は後カムギア23のカム面23bから離れ、後駆動部材8は後羽根群5と一体となって、図4(a)において反時計方向にわずかに回転してオーバーチャージ状態が解除される。後駆動部材8の係止部8aと後係止部材10の係止部10aの間の隙間が無くなり、後駆動部材8の係止部8aが後係止部材10の係止部10aに係合することによって、後駆動部材8が走行開始位置で停止する。後カムギア23が後駆動部材8の走行範囲から退避(カムボトム)した後、位相検出手段32の停止位相を検出して後駆動源25を停止させ、図7の走行待機状態となる(図6(3))。
【0031】
撮像素子203の全画素をリセット状態にした(図6(4))後、電子先幕走査が開始される(図6(5))。電子先幕走査は、後羽根群5の走行特性に合わせた走査パターンとなっている。設定されたシャッタ秒時に対応する時間が経過した後、不図示の係止解除部材が後係止部材10の押動部10bにぶつかることで、後係止部材10を軸6dの周りに図7(a)中の反時計回りに回転させ、後駆動部材8の係止部8aの係合を解除する(図6(6))。すると、図6に示される走行待機状態から、後駆動部材8が後駆動ばね13の付勢力により、軸6bの周りに図7(a)において反時計方向へ急速に回転させられる。これにより、後駆動ピン8bが後羽根アーム5aを図7(b)において時計方向へ回動させるため、後羽根群5が相互の重なり量を小さくさせつつ、露光開口を覆っていく(図8)。露光動作が続けられ、後羽根群5の遮光羽根5dのスリット形成縁5hが露光開口の下方へ退いた段階で、後駆動ピン8bが不図示の停止部材に当接し、後駆動部材8が停止させられる。図9は、このように行われた羽根走行完了状態を示している。後羽根群5の走行が終了し、撮像素子203が完全に遮光されると、電荷の読出し走査が開始される(図6(7))。
【0032】
後羽根群5の走行完了から所定時間が経過した後、セット動作が行われる(図6(8))。前述したように、本実施形態のセット動作は、撮影時の条件(撮影条件)に応じて3つのモードに分かれている。まず、第一のセット動作モードについて説明する。
【0033】
後羽根群5の走行完了から所定時間後、先駆動源24が正転方向に通電され(図6(8))、先カムギア22が軸26aの周りに図9(a)において反時計方向へ回動される。それに伴い、先駆動部材7が先カムギア22と接触し、先駆動ばね12の付勢力に抗しながら軸6aの周りに図9(a)において時計方向へ回動される。先駆動源24の通電開始から所定時間後、先駆動部材7が先カムギア22のカムトップ位置に到達する前に、後駆動源25が正転方向に通電され(図6(9))、後カムギア23が軸26bの周りに図9(a)において反時計方向へ回動される。それに伴い、後駆動部材8が後カムギア23と接触し、後駆動ばね13の付勢力に抗しながら軸6bの周りに図9(a)において時計方向へ回動される。図10はそのようにして行われたセット動作途中の状態を示したものである。先駆動部材7が先カムギア22のカムトップ位置を通過して回動を続けると、先駆動部材7の係止部7aが先係止部材9の係止部9aに係合することによって、先駆動部材7が走行開始位置で停止する。その後、先カムギア22が先駆動部材7の走行範囲から退避(カムボトム)した後、位相検出手段31の停止位相を検出して先駆動源24を停止させる。後駆動部材8も同様に、後カムギア23のカムトップ位置を通過して回動を続け、後駆動部材8の係止部8aが後係止部材10の係止部10aに係合することによって、後駆動部材8が走行開始位置で停止する。その後、後カムギア23が後駆動部材8の走行範囲から退避(カムボトム)した後、位相検出手段32の停止位相を検出して後駆動源25を停止させる。
【0034】
一方、このときの先羽根群4および後羽根群5の動きについては、以下の通りである。先駆動部材7の駆動ピン7bによって、先羽根アーム4aが図9(b)において反時計方向へ回動して、先遮光羽根4d、4e、4f、4gは相互の重なりを小さくしつつ上方へ移動していく。また、後駆動部材8の駆動ピン8bによって、後羽根アーム5aが図9(b)において反時計方向へ回動して、後遮光羽根5d、5e、5f、5gは相互の重なりを大きくしつつ上方へ移動していく。そして、先羽根群4が展開されて露光開口を完全に覆い、後羽根群5が重畳されて露光開口の上方位置へ収納されると、先駆動部材7および後駆動部材8の回動が停止する。このとき、撮像素子203は電荷の読出し走査の途中であるため、露光開口は必ず遮光しておかなければならない。そこで、先羽根群4と後羽根群5のセット動作中の重なり量が十分確保できるように、先駆動源24と後駆動源25の通電開始の時間差を設定する必要がある。例えば、先駆動源24と後駆動源25の通電開始の時間差を十分確保するように構成しても良い。または、例えば、羽根位相検出手段29の検出結果に基づいて先羽根群4が所定の位置まで移動したことをトリガーとして、後駆動源25への通電を開始するように構成しても良い。これにより、撮像素子203の電荷の読出し走査中に再露光してしまうリスクを回避しつつ、連写コマ速を向上させることができる。
【0035】
さらに、連写コマ速を向上させるには、できるだけ早く撮像素子203のライブビュー撮像動作を開始することが好ましい。そこで本実施形態では、前述のセット動作の中で、先駆動部材7のカムボトム到達、後駆動部材8のカムトップ到達、および撮像素子203の電荷の読出し完了の3つの条件を満たしたタイミングで、先羽根群4の走行を開始させる。図11は、このように行われる先羽根群4の走行直前の状態(図6(10))を示している。
【0036】
ここで、先羽根群4の走行の詳細は、以下の通りである。不図示の係止解除部材が先係止部材9の押動部9bにぶつかることで、先係止部材9を軸6cの周りに図11(a)中の反時計回り方向に回転させ、先駆動部材7の係止部7aの係合を解除する。その結果、先駆動部材7が先駆動ばね12の付勢力により、軸6aの周りに図11(a)中の反時計回り方向に急速に回転する。これにより、先駆動ピン7bが先羽根アーム4aを図11(b)中の時計回り方向に回動させるため、先羽根群4が相互の重なり量を大きくさせつつ、露光開口を開いていく。先羽根群4の遮光羽根4dのスリット形成縁4hが露光開口の下方へ退いた段階で、先駆動ピン7bが不図示の停止部材に当接し、先駆動部材7が停止させられ、先羽根群4の走行が完了し、図7の走行待機状態となる。
【0037】
なお、先羽根群4の走行に際して、後駆動部材8のカムトップ到達を待つのは、先羽根群4の走行動作と後羽根群5のセット動作という逆方向の動作が同時に行われることで、先羽根群4と後羽根群5とが接触して破損することを避けるためである。図6のタイミングチャートでは、撮像素子203の電荷の読出し完了、先駆動部材7のカムボトム到達、後駆動部材8のカムトップ到達の順番になっているが、この順番に限定されるものではない。順番に関わらず、先駆動部材7のカムボトム到達、後駆動部材8のカムトップ到達、および撮像素子203の電荷の読出し完了、の3つの条件を満たしたタイミングで先羽根群4の走行を開始させる構成であれば、同様の効果を得ることができる。
【0038】
先羽根群4の走行が完了すると、撮像素子203はライブビュー撮像動作を開始し、次のコマの撮影準備が行われる(図6(11))。次のコマの撮影準備が終わったところ(図6(12))で図6(4)に戻り、以降は図6(4)から図6(12)までの一連の撮影動作が繰り返される。
【0039】
前述のように、本実施形態では、撮像素子203を用いた電子先幕撮影による連写のコマ間に、撮像素子203の出力信号に基づいてライブビュー撮像動作(ライブビュー表示)を行う場合について説明したが、これに限定されるものではない。連写のコマ間にライブビュー撮像動作を行わず、すぐに次のコマの撮影に移る場合においても、セット動作中に先羽根群4を走行させることで、次の撮影における電子先幕走査の開始タイミングを早められるため、同様に連写コマ速を向上させることができる。
【0040】
最終コマのセット動作が終了すると、最後にカム保持動作が行われる。このとき、シャッタ装置202は、図7に示されるように、先駆動部材7は走行完状態、後駆動部材8は後係止部材10の係止部10aに係合された状態である(図6(12))。後駆動源25が逆転方向に通電され、後カムギア23が軸26bの周りに図7(a)において時計方向へ回動される。それに伴い、後駆動部材8が後カムギア23と接触し、後駆動ばね13の付勢力に抗しながら軸6bの周りに図7(a)において時計方向へわずかに回動される。後駆動部材8が後カムギア23のカムトップ位置に到達し、位相検出手段32のカムトップ位相を検出したところで、後駆動源25を停止させる(図6(13))。後駆動部材8は係止部8aと後係止部材10の係止部10aに隙間を有するオーバーチャージ状態となり、図4の撮影待機状態となる。これにより、後駆動部材8が後係止部材10に係合された不安定な状態から、後カムギア23で後駆動部材8を安定的に保持する状態にできるため、振動や衝撃によって不用意に係止が解除されてしまうリスクを無くす効果がある。
【0041】
次に、図12乃至図14を参照して、第二のセット動作モードについて説明する。後羽根群5の走行完了から所定時間後に、先駆動源24が正転方向に通電され(図12(8))、先カムギア22が軸26aの周りに図9(a)において反時計方向へ回動される。それに伴い、先駆動部材7が先カムギア22と接触し、先駆動ばね12の付勢力に抗しながら軸6aの周りに図9(a)において時計方向へ回動される。図13は、このように行われた先駆動部材7のセット動作途中の状態を示している。第一のセット動作モードのセット動作途中の状態を示す図10とは異なり、まず先駆動部材7のみがセット動作を行う構成となっている。先駆動部材7が先カムギア22のカムトップ位置に到達し、位相検出手段31のカムトップ位相を検出すると、後駆動源25が正転方向に通電される(図12(9))。以降の動作は、第一のセット動作モードと同様となる。図14は、このように行われた後駆動部材8のセット動作途中の状態を示している。このように、第二のセット動作モードでは、先駆動部材7がカムトップ位置に到達し、先駆動源24の消費電力のピークを過ぎた後に、後駆動源25の通電を開始する。このため、先駆動源24と後駆動源25の消費電力ピークをずらすことで、1コマのセット動作中の消費電力ピークを、第一のセット動作モードに対して低減することができる。一方、セット動作に要する時間は、第一のセット動作モードよりも第二のセット動作モードの方が長くなるため、連写コマ速としては第一のセット動作モードに対しては落ちる。
【0042】
ここで、第一のセット動作モードでは、先駆動部材7ができるだけ早くセット位置に到達し先羽根群4の走行を完了すること、および、後駆動部材8ができるだけ早くセット位置に到達すること、それぞれが連写コマ速を律速している。しかし、第二のセット動作モードでは、先駆動部材7がカムトップ位置に到達して後駆動部材8のセット動作が始まると、以降の先駆動部材7のセット動作は連写コマ速を律速するものではなくなる。このため、第二のセット動作モードでは、先駆動部材7がカムトップ位置に到達すると、先駆動源24への印加電圧を下げることができる。これにより、先駆動源24と後駆動源25の消費電力ピークをさらに低減することができる。
【0043】
最後に、図15を参照して、第三のセット動作モードについて説明する。後羽根群5の走行完了後、撮像素子203の電荷の読出しが完了すると、先駆動源24が正転方向に通電される(図15(8))。以降の動作は、第二のセット動作モードと同様である。これにより、第三のセットモードでは、撮像素子203と先駆動源24と後駆動源25のそれぞれの消費電力ピークをずらすことで、1コマのセット動作中の消費電力ピークを、第二のセット動作モードに対して低減することができる。一方、セット動作に要する時間は、第二のセット動作モードよりも第三のセット動作モードの方が長くなるため、連写コマ速としては第二のセット動作モードよりもさらに落ちる。ここで、第三のセット動作モードでは、撮像素子203の電荷の読出しが完了してからセット動作を行うため、セット動作中に再露光することはない。このため、次のコマの撮影準備としては、後駆動部材8のセット動作のみでも構成できるが、本実施形態では先駆動部材7のセット動作も合わせて実施している。これにより、先羽根群4と先駆動部材7周りの先幕系と、後羽根群5と後駆動部材8周りの後幕系の耐久によるダメージを揃えることができる。
【0044】
以上のように、本実施形態において、制御手段は、撮影条件に応じて、先羽根群7および後羽根群8の駆動タイミングを変更するように先駆動源24および後駆動源25を制御する。好ましくは、先カムギア22および後カムギア23は、先駆動部材7および後駆動部材8とそれぞれ接触してカムボトム位置からカムトップ位置へのセット動作を行う。制御手段は、先駆動源24および後駆動源25のそれぞれに通電することでセット動作を制御する。制御手段は、撮影条件に基づいて、第一のモード(第一のセット動作モード)と第二のモード(第二のセット動作モード)とを切り替える。ここで、第一のモードは先駆動源24および後駆動源25を第一の時間差で通電するモードであり、第二のモードは先駆動源24および後駆動源25を第一の時間差よりも長い第二の時間差で通電するモードである。
【0045】
好ましくは、制御手段は、先駆動源24および後駆動源25のそれぞれに通電することでセット動作を制御する。そして制御手段は、セット動作の際に、先駆動源24および後駆動源25に対して第一の時間差で通電する第一のモードと、第一の時間差よりも長い第二の時間差で通電する第二のモードとを撮影条件に基づいて切り替える。より好ましくは、先カムギア22および後カムギア23は、先駆動部材7および後駆動部材8の順にセット動作を行う。
【0046】
好ましくは、制御手段は、第二のモードにおいて、先駆動部材7のセット動作の最大負荷部を越えた後に、後駆動源25への通電を行う。また好ましくは、シャッタ装置202は、先カムギア22の回転位相を検出する位相検出手段31を有する。制御手段は、第二のモードにおいて、位相検出手段31が先カムギア22のセット動作の最大負荷部を越えた位相を検出した後に、後駆動源25への通電を行う。
【0047】
好ましくは、先駆動源24への通電電圧は、第一のモードと第二のモードのそれぞれにおいて異なる。好ましくは、制御手段は、第二のモードにおいて、先駆動源24への通電電圧を、後駆動源25への通電開始の際に低下させる。また好ましくは、制御手段は、撮像素子203の電荷の読出し完了後に先駆動源24への通電を行う第三のモード(第三のセット動作モード)を有し、第一のモードと第二のモードと第三のモードとを撮影条件に基づいて切り替える。
【0048】
好ましくは、先駆動部材7は先羽根群4を露光動作方向に駆動し、先カムギア22は先駆動部材7を露光動作方向とは逆方向に回転させて待機位置にチャージする。また、後駆動部材8は後羽根群5を露光動作方向に駆動し、後カムギア23は後駆動部材8を露光動作方向とは逆方向に回転させて待機位置にチャージする。制御手段(CPU209)は、後駆動部材8の待機位置へのチャージが完了した際に、先羽根群4の露光動作方向への駆動を開始する。より好ましくは、制御手段は、後駆動部材8の待機位置へのチャージの完了または撮影により撮像素子203に蓄積された電荷の読出し完了のいずれか遅い方に基づいて、先羽根群4の露光動作方向の駆動を開始する。
【0049】
このように本実施形態では、消費電力ピークを順次下げることが可能な3つのモード(第一、第二、第三のセット動作モード)を有し、撮像装置100の撮影条件に応じて自動で切り替わる。これにより、各撮影条件に対して最大限の連写コマ速を発揮させつつ、かつ、容量に制限のある電源電池を有効に活用することができる。ここで撮影条件とは、撮像装置100の撮影モード、撮像装置100の温度(環境温度)、撮像レンズの種類、電源の種類(撮像装置100に装填される電池を使用するか、外部電源を使用するかなど)、または電池残量などの少なくとも一つを含む。ただし、撮影条件はこれらに限定されるものではない。
【0050】
本実施形態によれば、大型化することなく駆動効率の低下を抑制することが可能なシャッタ装置および撮像装置を提供することができる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
4 先羽根群
5 後羽根群
7 先駆動部材
8 後駆動部材
22 先カムギア
23 後カムギア
24 先駆動源
25 後駆動源
202 シャッタ装置
209 CPU(制御手段)
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15