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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/00 20220101AFI20231225BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20231225BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20231225BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20231225BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20231225BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B01D46/00 302
B01D39/20 D
F01N3/022 C
B01J35/04 301C
B01J35/04 301E
B01J35/04 301D
B01J35/04 301K
C04B38/00 303Z
B01D53/94 241
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 222
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020062588
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021159835
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】福代 浩司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道生
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 泰祟
(72)【発明者】
【氏名】板津 研
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-002972(JP,A)
【文献】実開平02-112919(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00-39/20
B01D46/00-46/90
B01D53/86-53/94
B01J21/00-38/74
C04B38/00-38/10
F01N3/02-3/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造体と、
複数の前記セルのうちの所定のセルの前記流入端面側の開口部に配設された流入側目封止部と、
複数の前記セルのうちの前記所定のセル以外の残余のセルの前記流出端面側の開口部に配設された流出側目封止部と、を備え、
前記流出側目封止部は、第一流出側目封止部及び第二流出側目封止部から構成され、
前記ハニカム構造体の前記流入端面から前記流出端面までの長さを全長L0とし、
前記第一流出側目封止部の前記流出端面からの長さを目封止長さL1とし、
前記第二流出側目封止部の前記流出端面からの長さを目封止長さL2とし、
前記第一流出側目封止部の目封止長さL1が、前記ハニカム構造体の全長L0に対して25~50%であり、
前記第二流出側目封止部の目封止長さL2が、前記ハニカム構造体の全長L0に対して10%未満である、ハニカムフィルタであって、
前記第一流出側目封止部の個数が、前記流出側目封止部の総個数のうちの25~35%であり、
前記ハニカム構造体の前記流出端面側において、複数の前記セルが一の方向に配列した方向を第一方向とし、当該第一方向に直交する方向を第二方向とし、前記第一方向に沿って隣接する前記セル及び前記第二方向に沿って隣接する前記セルのそれぞれは、前記流入側目封止部と前記流出側目封止部とによって交互に目封止され、
前記第一方向又は前記第二方向に沿って配置された前記流出側目封止部において、前記第一流出側目封止部と前記第二流出側目封止部とは、前記第一方向又は前記第二方向のいずれかで隣り合うように配置されているか、又は、
前記ハニカム構造体の前記流出端面側において、前記第一流出側目封止部と前記第二流出側目封止部が所定の繰り返し配列を有するように配置された配列パターンを有する、ハニカムフィルタ
【請求項2】
前記ハニカム構造体の長さL0が、100~350mmである、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記ハニカム構造体の前記流出端面側において、複数の前記セルが一の方向に配列した方向を第一方向とし、当該第一方向に直交する方向を第二方向とし、前記第一方向に沿って隣接する前記セル及び前記第二方向に沿って隣接する前記セルのそれぞれは、前記流入側目封止部と前記流出側目封止部とによって交互に目封止され、
前記第一方向又は前記第二方向に沿って配置された前記流出側目封止部において、前記第一流出側目封止部が連続して配置される個数が4個以下である、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記隔壁の気孔率が、30~70%である、請求項1~のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記流入側目封止部の前記流入端面からの長さを目封止長さL3とし、
前記流入側目封止部の目封止長さL3が、前記ハニカム構造体の全長L0に対して10%未満である、請求項1~のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、隔壁によって捕集除去された粒子状物質を燃焼除去するフィルタの再生操作において、燃焼時の最高温度を低くすることができるとともに、フィルタ内の温度分布を小さくすることが可能なハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関から排出される排ガスに含まれる粒子状物質や窒素酸化物は、人体や環境に対して有害であり、その排出が規制されている。そのため、排ガスが排出される流路には、粒子状物質を捕集するフィルタ、及び窒素酸化物を浄化するための触媒が搭載されている。粒子状物質を捕集するフィルタとしては、例えば、ハニカム構造体を用いたハニカムフィルタが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。以下、排ガスに含まれる粒子状物質を、「PM」ということがある。「PM」は、「particulate matter」の略である。
【0003】
ハニカム構造体は、コージェライトなどの多孔質セラミックスによって構成された隔壁を有し、この隔壁によって複数のセルが区画形成されたものである。ハニカムフィルタは、上述したハニカム構造体に対して、複数のセルの流入端面側の開口部と流出端面側の開口部とを交互に目封止するように目封止部を配設したものである。即ち、ハニカムフィルタは、流入端面側が開口し且つ流出端面側が目封止された流入セルと、流入端面側が目封止され且つ流出端面側が開口した流出セルとが、隔壁を挟んで交互に配置された構造となっている。そして、ハニカムフィルタにおいては、多孔質の隔壁が、排ガス中のPMを捕集するフィルタの役目を果たしている。
【0004】
現在、車両への搭載性や窒素酸化物の浄化性能を向上させるため、上述したようなハニカムフィルタに、窒素酸化物浄化用の触媒を担持させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2008/078799号
【文献】特開2010-115634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハニカムフィルタによって排ガス中のPMの除去を継続して行うと、ハニカムフィルタの内部にPMが堆積して、ハニカムフィルタの圧力損失が大きくなる。そこで、ハニカムフィルタを用いた浄化装置においては、自動又は手動操作により、ハニカムフィルタの内部に堆積したPMを燃焼させることで、ハニカムフィルタの圧力損失が過大になることを防いでいる。以下、ハニカムフィルタの内部に堆積したPMを燃焼させる操作を、ハニカムフィルタの「再生操作」ということがある。
【0007】
ハニカムフィルタの再生操作では、ハニカムフィルタの内部に堆積したPMを強制的に燃焼させるため、ハニカムフィルタの内部が高温状態となる。このため、燃焼により発生する熱により、ハニカムフィルタに担持された窒素酸化物浄化用触媒の劣化が促進されることがある。したがって、窒素酸化物浄化用触媒等を担持したハニカムフィルタは、触媒の劣化を考慮して、定期的な交換等のメンテンナンスが必要になるという問題があった。また、目標の浄化性能を得るためには、触媒の劣化を考慮して、予めより多くの触媒の担持が必要となり、ハニカムフィルタの製造コストが高くなるという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、隔壁によって捕集除去された粒子状物質を燃焼除去するフィルタの再生操作において、燃焼時の最高温度を低くすることができるとともに、フィルタ内の温度分布を小さくすることが可能なハニカムフィルタが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す、ハニカムフィルタが提供される。
【0010】
[1] 流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造体と、
複数の前記セルのうちの所定のセルの前記流入端面側の開口部に配設された流入側目封止部と、
複数の前記セルのうちの前記所定のセル以外の残余のセルの前記流出端面側の開口部に配設された流出側目封止部と、を備え、
前記流出側目封止部は、第一流出側目封止部及び第二流出側目封止部から構成され、
前記ハニカム構造体の前記流入端面から前記流出端面までの長さを全長L0とし、
前記第一流出側目封止部の前記流出端面からの長さを目封止長さL1とし、
前記第二流出側目封止部の前記流出端面からの長さを目封止長さL2とし、
前記第一流出側目封止部の目封止長さL1が、前記ハニカム構造体の全長L0に対して25~50%であり、
前記第二流出側目封止部の目封止長さL2が、前記ハニカム構造体の全長L0に対して10%未満である、ハニカムフィルタであって、
前記第一流出側目封止部の個数が、前記流出側目封止部の総個数のうちの25~35%であり、
前記ハニカム構造体の前記流出端面側において、複数の前記セルが一の方向に配列した方向を第一方向とし、当該第一方向に直交する方向を第二方向とし、前記第一方向に沿って隣接する前記セル及び前記第二方向に沿って隣接する前記セルのそれぞれは、前記流入側目封止部と前記流出側目封止部とによって交互に目封止され、
前記第一方向又は前記第二方向に沿って配置された前記流出側目封止部において、前記第一流出側目封止部と前記第二流出側目封止部とは、前記第一方向又は前記第二方向のいずれかで隣り合うように配置されているか、又は、
前記ハニカム構造体の前記流出端面側において、前記第一流出側目封止部と前記第二流出側目封止部が所定の繰り返し配列を有するように配置された配列パターンを有する、ハニカムフィルタ
【0012】
] 前記ハニカム構造体の長さL0が、100~350mmである、前記[1]に記載のハニカムフィルタ。
【0014】
] 前記ハニカム構造体の前記流出端面側において、複数の前記セルが一の方向に配列した方向を第一方向とし、当該第一方向に直交する方向を第二方向とし、前記第一方向に沿って隣接する前記セル及び前記第二方向に沿って隣接する前記セルのそれぞれは、前記流入側目封止部と前記流出側目封止部とによって交互に目封止され、
前記第一方向又は前記第二方向に沿って配置された前記流出側目封止部において、前記第一流出側目封止部が連続して配置される個数が4個以下である、前記[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0015】
] 前記隔壁の気孔率が、30~70%である、前記[1]~[]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0016】
] 前記流入側目封止部の前記流入端面からの長さを目封止長さL3とし、
前記流入側目封止部の目封止長さL3が、前記ハニカム構造体の全長L0に対して10%未満である、前記[1]~[]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカムフィルタは、隔壁によって捕集除去されたPMを燃焼除去するフィルタ再生において、燃焼時の最高温度を低くすることができるとともに、フィルタ内の温度分布を小さくすることができる。具体的には、本発明のハニカムフィルタは、流出端面側のセルの開口部に配設された流出側目封止部が、相対的に目封止長さが長い第一流出側目封止部と、相対的に目封止長さが短い第二流出側目封止部とによって構成されている。このため、ハニカムフィルタの内部に捕集されるPMの分布を分散させることができ、PM燃焼時の最高温度を低くすることができるとともに、フィルタ内の温度分布を小さくすることができる。また、相対的に目封止長さが長い第一流出側目封止部を設けることで、流出端面側の熱容量が増大し、上述した効果を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のハニカムフィルタの第一実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
図2図1に示すハニカムフィルタの流入端面側からみた平面図である。
図3図1に示すハニカムフィルタの流出端面側からみた平面図である。
図4図3のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
図5】本発明のハニカムフィルタの第二実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。
図6図5のB-B’断面を模式的に示す断面図である。
図7】本発明のハニカムフィルタの第三実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。
図8図7のC-C’断面を模式的に示す断面図である。
図9】本発明のハニカムフィルタの第四実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。
図10】本発明のハニカムフィルタの第五実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。
図11図10のD-D’断面を模式的に示す断面図である。
図12】本発明のハニカムフィルタの第六実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。
図13図12のE-E’断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
(1)ハニカムフィルタ(第一実施形態):
図1図4に示すように、本発明のハニカムフィルタの第一実施形態は、ハニカム構造体4と、目封止部5と、を備えた、ハニカムフィルタ100である。図1は、本発明のハニカムフィルタの第一実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。図2は、図1に示すハニカムフィルタの流入端面側からみた平面図である。図3は、図1に示すハニカムフィルタの流出端面側からみた平面図である。図4は、図3のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【0021】
ハニカム構造体4は、流入端面11から流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する柱状のものである。ハニカムフィルタ100において、ハニカム構造体4は、柱状を呈し、その外周側面に、外周壁3を更に有している。即ち、外周壁3は、格子状に配設された隔壁1を囲繞するように配設されている。
【0022】
目封止部5は、それぞれのセル2の流入端面11側又は流出端面12側の開口部に配設されている。ハニカムフィルタ100において、流入端面11側のセル2の開口部に配設された目封止部5を、流入側目封止部5aとする。また、流出端面12側のセル2の開口部に配設された目封止部5を、流出側目封止部5bとする。複数のセル2のうち、流入側目封止部5aが配設され、流出端面12側が開口した所定のセル2を、流出セル2bという。また、複数のセル2のうち、流出側目封止部5bが配設され、流入端面11側が開口した残余のセル2を、流入セル2aという。
【0023】
流出側目封止部5bは、第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbから構成されている。即ち、ハニカムフィルタ100は、流出側目封止部5bとして、以下のように構成された2種類の流出側目封止部5b(第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bb)を有している。
【0024】
ここで、第一流出側目封止部5baの流出端面12からの長さを目封止長さL1とする。第二流出側目封止部5bbの流出端面12からの長さを目封止長さL2とする。ハニカム構造体4の流入端面11から流出端面12までの長さを全長L0とする。本実施形態のハニカムフィルタ100は、第一流出側目封止部5baの目封止長さL1が、ハニカム構造体4の全長L0に対して25~50%である。そして、第二流出側目封止部5bbの目封止長さL2が、ハニカム構造体4の全長L0に対して10%未満である。
【0025】
上述したように、ハニカムフィルタ100は、流出端面12側に配設された流出側目封止部5bが、相対的に目封止長さL1が長い第一流出側目封止部5baと、相対的に目封止長さL2が短い第二流出側目封止部5bbとによって構成されている。このため、ハニカムフィルタ100の内部に捕集されるPMの分布を分散させることができ、PM燃焼時の最高温度を低くすることができるとともに、フィルタ内の温度分布を小さくすることができる。また、相対的に目封止長さL1が長い第一流出側目封止部5baを設けることで、流出端面12側の熱容量が増大し、上述した効果を更に高めることができる。したがって、ハニカムフィルタ100は、隔壁1によって捕集除去されたPMを燃焼除去するフィルタ再生において、燃焼時の最高温度を低くすることができるとともに、フィルタ内の温度分布を小さくすることができる。
【0026】
第一流出側目封止部5baの目封止長さL1が、ハニカム構造体4の全長L0に対して10%未満であると、ハニカムフィルタ100の内部に捕集されるPMの分布を分散させることが困難となり、上述した効果が得られない。一方、第一流出側目封止部5baの目封止長さL1が、ハニカム構造体4の全長L0に対して50%を超えると、第一流出側目封止部5baが配設された流入セル2aの流路が極端に短くなり、圧力損失などが増大してしまう。
【0027】
第二流出側目封止部5bbの目封止長さL2は、ハニカム構造体4の全長L0に対して10%未満であるが、第二流出側目封止部5bbの目封止長さL2の実質的な下限値としては、例えば、ハニカム構造体4の全長L0に対して1%とすることができる。このため、第二流出側目封止部5bbの目封止長さL2は、ハニカム構造体4の全長L0に対して1%以上、10%未満であることが好ましい。また、第二流出側目封止部5bbの目封止長さL2の具体的な下限値としては、例えば、4mmである。
【0028】
参考例として、第一流出側目封止部5baの目封止長さL1は、ハニカム構造体4の全長L0に対して10~50%であるが、ハニカム構造体4の全長L0に対して20~40%であることが好ましく、25~35%であることが特に好ましい。このように構成することにより、ハニカム構造体4の持つ熱容量に対する粒子状物質燃焼時の発熱温度とのバランス、及び圧力損失への影響の点でより好ましい。
【0029】
第一流出側目封止部5baの個数については、参考例として、第一流出側目封止部5baの個数が、流出側目封止部5bの総個数のうちの10~50%であり、本実施形態では、第一流出側目封止部5baの個数が、流出側目封止部5bの総個数のうちの25~35%である。以下、流出側目封止部5bの総個数に対する、第一流出側目封止部5baの個数の比の百分率(%)を、「第一流出側目封止部5baの個数割合(%)」ということがある。図1図4に示すハニカムフィルタ100は、第一流出側目封止部5baの個数割合が25%となっている。第一流出側目封止部5baの個数割合が10%未満又は50%超であると、ハニカムフィルタ100の内部に捕集されるPMの分布に偏りを生じることがある。また、第一流出側目封止部5baの個数割合が40%超であると、ハニカムフィルタ100の圧力損失が増大することがある。
【0030】
ハニカム構造体4の長さL0については特に制限はないが、例えば、ハニカム構造体4の長さL0は、100~350mmであることが好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタ100を、排ガス中のPMを捕集するフィルタとして好適に用いることができる。特に、車両への搭載性や窒素酸化物の浄化性能を向上させるために、窒素酸化物浄化用の触媒を担持したフィルタとして特に好適に用いることができる。
【0031】
流出側目封止部5bにおける、第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbの配置や配列については特に制限はないが、例えば、好ましい態様として、以下のような態様を挙げることができる。ここで、ハニカム構造体4の流出端面12側において、複数のセル2が一の方向に配列した方向を第一方向とし、当該第一方向に直交する方向を第二方向とする。例えば、図3に示すように、ハニカム構造体4の流出端面12側におけるセル2の形状が四角形の場合、紙面の左右方向を第一方向とし、紙面の上下方向を第二方向とすることができる。
【0032】
第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbの配置等の好ましい態様について説明する。まず、第一方向に沿って隣接するセル2及び第二方向に沿って隣接するセル2のそれぞれは、流入側目封止部5aと流出側目封止部5bとによって交互に目封止されていることが好ましい。即ち、ハニカム構造体4の流出端面12側において、流入セル2aと流出セル2bとが、隔壁1を挟んで交互に配置されていることが好ましい。そして、第一方向又は第二方向に沿って配置された流出側目封止部5bにおいて、第一流出側目封止部5baと第二流出側目封止部5bbとは、第一方向又は第二方向のいずれかで隣り合うように配置されていることが好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタ100の内部に捕集されるPMの分布を良好に分散させることができる。
【0033】
また、第一方向又は第二方向に沿って配置された流出側目封止部5bにおいて、第一流出側目封止部5baが連続して配置される個数は、4個以下であることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタ100の内部に捕集されるPMの分布をより良好に分散させることができる。例えば、第一方向又は第二方向において、第一流出側目封止部5baが5個以上連続して配置されていると、第一流出側目封止部5baが連続して配置された範囲において、十分なPMの分散が生じにくくなることがある。なお、ハニカム構造体4の流出端面12側において、第一流出側目封止部5baと第二流出側目封止部5bbが所定の繰り返し配列を有するように配置された配列パターンを有していることも好ましい態様の1つである。
【0034】
流入側目封止部5aの流入端面11からの長さ目封止長さL3については特に制限はないが、流入側目封止部5aの目封止長さL3は、ハニカム構造体4の全長L0に対して10%未満であることが好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタ100の圧力損失の過度の上昇を有効に抑制することができる。
【0035】
ハニカムフィルタ100は、隔壁1の気孔率が、30~70%であることが好ましく、40~70%であることが更に好ましい。隔壁1の気孔率は、水銀ポロシメーターを用いてJIS R1655:2003に準拠して水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の気孔率の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。気孔率の測定は、ハニカムフィルタ100から隔壁1の一部を切り出して試験片とし、このようにして得られた試験片を用いて行うことができる。また、隔壁1の気孔率は、圧力損失を低く抑えるという観点から30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。また、隔壁1の気孔率が70%を超えると、ハニカム構造体4の強度を確保するという観点から好ましくなく、68%以下であることがより好ましい。
【0036】
隔壁1の厚さについては特に制限はないが、例えば、200~390μmであることが好ましく、240~320μmであることが更に好ましい。隔壁1の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡又はマイクロスコープ(microscope)を用いて測定することができる。隔壁1の厚さが薄すぎると、捕集性能が低下する点で好ましくない。一方、隔壁1の厚さが厚すぎると、圧力損失が増大する点で好ましくない。
【0037】
ハニカム構造体4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。また、セル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと、八角形のセルと混在したものであってもよい。また、セル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。なお、本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0038】
隔壁1によって区画形成されるセル2のセル密度が、30~80個/cmであることが好ましく、40~70個/cmであることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタ100を、自動車のエンジンから排出される排ガスを浄化するためのフィルタとして好適に利用することができる。
【0039】
ハニカム構造体4の外周壁3は、隔壁1と一体的に構成されたものであってもよいし、隔壁1の外周側に外周コート材を塗工することによって形成した外周コート層であってもよい。例えば、図示は省略するが、外周コート層は、製造時において、隔壁と外周壁とを一体的に形成した後、形成された外周壁を、研削加工等の公知の方法によって除去した後、隔壁の外周側に設けることができる。
【0040】
ハニカム構造体4の形状については特に制限はない。ハニカム構造体4の形状としては、流入端面11及び流出端面12の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状を挙げることができる。
【0041】
ハニカム構造体4の大きさ、例えば、流入端面11から流出端面12までの長さや、ハニカム構造体4のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。ハニカムフィルタ100を、排ガス浄化用のフィルタとして用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。
【0042】
目封止部5の材質は、隔壁1の材質として好ましいとされた材質であることが好ましい。目封止部5の材質と隔壁1の材質とは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0043】
ハニカムフィルタ100は、複数のセル2を区画形成する隔壁1に排ガス浄化用の触媒が担持されていることが好ましい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁1に形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。このように構成することによって、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることができる。また、捕集したスス等のPMの酸化を促進させることができる。排ガス浄化用の触媒としては、スス等のPMの酸化を促進させるための酸化触媒や、窒素酸化物浄化用の窒素酸化物還元触媒を挙げることができる。
【0044】
(2)ハニカムフィルタ(第二実施形態~第六実施形態):
次に、本発明のハニカムフィルタのその他の実施形態について説明する。図5図6に示すように、本発明のハニカムフィルタの第二実施形態は、ハニカム構造体4と、目封止部5と、を備えた、ハニカムフィルタ200である。ここで、図5は、本発明のハニカムフィルタの第二実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。図6は、図5のB-B’断面を模式的に示す断面図である。
【0045】
図5図6に示すように、ハニカム構造体4は、流入端面11から流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する柱状のものである。ハニカム構造体4は、これまでに説明した図1図4に示すハニカムフィルタ100のハニカム構造体4と同様の構成を採用することができる。
【0046】
図5図6に示すように、目封止部5は、流入端面11側のセル2の開口部に配設された流入側目封止部5aと、流出端面12側のセル2の開口部に配設された流出側目封止部5bと、から構成されている。複数のセル2のうち、流入側目封止部5aが配設されたセル2が、流出セル2bであり、流出側目封止部5bが配設されたセル2が、流入セル2aである。
【0047】
図5図6に示すハニカムフィルタ200は、第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbの配置及び配列が、図1図4に示すハニカムフィルタ100と相違している。第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbの配置及び配列以外の個々の構成については、ハニカムフィルタ100と同様の構成を採用することができる。
【0048】
図5図6に示すハニカムフィルタ200は、第一流出側目封止部5baの個数割合(%)が33%となるように構成されている。第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbの配置は、ハニカム構造体4の流出端面12側において、一定の繰り返し単位を有するように構成されている。
【0049】
図7図8に示すように、本発明のハニカムフィルタの第三実施形態は、ハニカム構造体4と、目封止部5と、を備えた、ハニカムフィルタ300である。ここで、図7は、本発明のハニカムフィルタの第三実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。図8は、図のC-C’断面を模式的に示す断面図である。
【0050】
図7図8に示すハニカムフィルタ300は、第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbの配置及び配列が、図1図4に示すハニカムフィルタ100と相違している。第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbの配置及び配列以外の個々の構成については、ハニカムフィルタ100と同様の構成を採用することができる。
【0051】
図7図8に示すハニカムフィルタ300は、第一流出側目封止部5baの個数割合(%)が50%となるように構成されている。第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbの配置は、ハニカム構造体4の流出端面12側において、一定の繰り返し単位を有するように構成されている。
【0052】
また、図9に示すハニカムフィルタ400のように、図7図8に示すハニカムフィルタ300と同様に第一流出側目封止部5baの個数割合(%)を50%とした別の実施形態とすることもできる。図9は、本発明のハニカムフィルタの第四実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。図9に示すハニカムフィルタ400は、第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbの配置が、図7図8に示すハニカムフィルタ300と異なること以外は、ハニカムフィルタ300と同様の構成を採用することができる。
【0053】
図10図11に示すように、本発明のハニカムフィルタの第五実施形態は、ハニカム構造体4と、目封止部5と、を備えた、ハニカムフィルタ500である。また、図12図13に示すように、本発明のハニカムフィルタの第六実施形態は、ハニカム構造体4と、目封止部5と、を備えた、ハニカムフィルタ600である。ここで、図10は、本発明のハニカムフィルタの第五実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。図11は、図10のD-D’断面を模式的に示す断面図である。図12は、本発明のハニカムフィルタの第六実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。図13は、図12のE-E’断面を模式的に示す断面図である。
【0054】
図10図11に示すハニカムフィルタ500及び図12図13に示すハニカムフィルタ600は、第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbの配置及び配列が、図1図4に示すハニカムフィルタ100と相違している。第一流出側目封止部5ba及び第二流出側目封止部5bbの配置及び配列以外の個々の構成については、ハニカムフィルタ100と同様の構成を採用することができる。
【0055】
図10図11に示すハニカムフィルタ500は、第一流出側目封止部5baが、ハニカム構造体4の流出端面12における中央部分に偏って配置されている。また、図12図13に示すハニカムフィルタ600は、第一流出側目封止部5baが、ハニカム構造体4の流出端面12における外周部分に偏って配置されている。このように構成されたハニカムフィルタ500,600についても、隔壁1によって捕集除去されたPMを燃焼除去するフィルタ再生において、燃焼時の最高温度を低くすることができるとともに、フィルタ内の温度分布を小さくすることができる。但し、図1図9に示すハニカムフィルタ100,200,300,400のように、第一流出側目封止部5baは、ハニカム構造体4の流出端面12側において、局所的に偏在することなく、例えば、均等に分散して配置されていることが好ましい。特に、これまでに説明したように、ハニカム構造体4の流出端面12側の第一方向又は第二方向に沿って配置された流出側目封止部5bは、第一流出側目封止部5baが連続して配置される個数が、4個以下であることが好ましい。
【0056】
また、本発明のハニカムフィルタの更に他の実施形態として、ハニカムフィルタを構成するハニカム構造体が、複数個の柱状のハニカムセグメントの接合体からなるものを挙げることができる。複数個の柱状のハニカムセグメントは、互いの側面同士が接合層によって接合されることにより、1つのハニカム構造体を形成している。各ハニカムセグメントは、流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有している。隔壁によって区画されたセルの開口部には、これまでに説明した各実施形態と同様に、流入側目封止部又は流出側目封止部がそれぞれ配設されている。そして、流出側目封止部は、所望の目封止長さの第一流出側目封止部及び第二流出側目封止部から構成されている。以下、複数個のハニカムセグメントの接合体からなるハニカム構造体を、「ハニカムセグメント接合体」ということがある。また、このようなハニカム構造体を用いたハニカムフィルタを、「セグメント構造のハニカムフィルタ」ということがある。また、流入側目封止部又は流出側目封止部が配設されたハニカムセグメントを、「目封止付きハニカムセグメント」ということがある。
【0057】
(3)ハニカムフィルタの製造方法:
図1図4に示す本実施形態のハニカムフィルタの製造方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法により製造することができる。
【0058】
まず、ハニカムフィルタを作製する際には、ハニカム構造体を作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカム構造体を作製するための坏土は、従来公知のハニカムフィルタの製造方法に準じて調製することができる。
【0059】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁を囲繞するように配設された外壁を有する、ハニカム成形体を作製する。得られたハニカム成形体は、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥することが好ましい。
【0060】
得られたハニカム成形体のセルのいずれか一方の開口部に目封止材を充填し、セルの開口部を目封止する目封止部を作製する。目封止材は、例えば、ハニカム成形体の作製に用いた材料と同様の材料を用いて調製することができる。セルの開口部に目封止材を充填する際には、目封止材の充填深さが、ハニカム構造体の長さL0に対して10~50%となるものと、ハニカム構造体の長さL0に対して10%未満となるものとが混在するように調節する。目封止部を作製した後に、ハニカム成形体を更に乾燥してもよい。
【0061】
以下、本発明のハニカムフィルタの製造方法について、工程毎に更に詳細に説明する。以下に説明する製造方法における各工程は、セグメント構造のハニカムフィルタの製造方法に関するものである。
【0062】
(3-1)ハニカムセグメント作製工程:
ハニカムセグメントは、従来公知の方法を用いて作製することができる。より具体的には、炭化珪素と接合材とを含むハニカムセグメントの材質に、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等のバインダ、造孔材、界面活性剤、溶媒としての水等を添加して、混練することで可塑性の坏土を調製し、調製した坏土を柱状体に成形し、乾燥する。その後、焼成し、酸化処理を行う方法で作製することができる。
【0063】
混練方法、調製した坏土を柱状体に成形する方法、及び乾燥方法は特に制限はされるものではない。混練方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法がある。また、調製した坏土を柱状体に成形する方法としては、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形等の従来公知の成形法を用いることができる。これらの中でも、調製した坏土を、所望の外壁厚さ、隔壁厚さ、セル密度にするハニカムセグメント成形用口金を用いて押出成形する方法が好ましい。更に、乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。これらの中でも、全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法を用いることが好ましい。
【0064】
焼成方法としては、例えば、焼成炉において焼成する方法がある。焼成炉及び焼成条件は、ハニカムセグメントの形状、材質等に合わせて適宜選択することができる。焼成の前に仮焼成によりバインダ等の有機物を燃焼除去してもよい。
【0065】
酸化処理は、従来公知の方法により行うことができる。具体的には、炭化珪素を含む焼成されたハニカムセグメントを、酸素雰囲気下(例えば、酸素濃度15~20質量%)で900~1400℃に加熱することにより、ハニカムセグメントを構成する炭化珪素の一部を酸化させる方法を採用することができる。
【0066】
(3-2)目封止付きハニカムセグメント作製工程:
本工程は、ハニカムセグメント作製工程で作製したハニカムセグメントの所定のセルに目封止用スラリーを充填して、目封止部を備えるハニカムセグメント(目封止付きハニカムセグメント)を作製する。
【0067】
セルに目封止部を形成する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。より具体的には、ハニカムセグメントの端面にシートを貼り付けた後、このシートの目封止部を形成するセルに対応した位置に孔を開ける。このシートを貼り付けたままの状態で、該端面を目封止用スラリーに浸し、シートに開けた孔を通じて、目封止部を形成するセルの開口部内に目封止用スラリーを充填し、それを乾燥及び焼成する方法を用いることができる。なお、目封止用スラリーの材質は、炭化珪素を含むものである。このように炭化珪素を含む材料を用いることにより、目封止部が高温に曝された際に、この目封止部においてファイバー化が生じることになる。このファイバー化を確認することにより、ハニカムフィルタが高温に曝されたことを検知することができる。
【0068】
なお、本発明では、目封止部は、その表面に保護層が形成されていない暴露領域を有する必要があるため、目封止部を形成した後に酸化処理を行わないことが好ましいが、目封止部の表面に保護層(即ち、珪素が40質量%以上かつ酸素が40質量%以上存在して、厚さが0.5μm以上の層)が形成されない程度に更に酸化処理を行うことができる。
【0069】
(3-3)接合体作製工程:
本工程は、目封止付きハニカムセグメントを、接合用スラリーを用いて互いに接合させて接合体を作製する。接合用スラリーとしては、従来公知のものを適宜採用することができる。
【0070】
(3-4)その他の工程:
接合体については、外周部を切削加工して、所望の外周形状とすることができる。切削加工する方法は、特に限定されるものではなく従来公知の方法を用いることができる。
【0071】
上記のように、外周部を切削加工した接合体は、その外周に、外周コート材を塗布して外周コート層を形成してもよい。このようにして外周コート層付きのハニカムフィルタを得ることができる。外周コート層を形成することにより、ハニカムフィルタに外力が加わった際にハニカムフィルタが欠けてしまうことを防止できる。
【0072】
外周コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したものなどを挙げることができる。外周コート材を塗布する方法は、「切削された接合体」をろくろ上で回転させながらゴムへらなどでコーティングする方法等を挙げることができる。
【0073】
更に、外周コート層付きのハニカムフィルタを触媒用スラリーに浸漬させることで、外周コート層付きのハニカムフィルタの隔壁表面に触媒を担持させることができる。
【実施例
【0074】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
ハニカムセグメントの材質として、SiC粉末と金属Si粉末を80:20の質量の割合で混合したものを用い、造孔材として澱粉、発泡樹脂を加え、更に、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤、及び水を添加して、混練することで可塑性の坏土を調製した。
【0076】
次に、調製した坏土を押出成形した後、乾燥し、焼成した後、酸化処理して角柱状ハニカムセグメントを得た。なお、この角柱状ハニカムセグメントの表面には、保護層が形成されていた。その後、得られた角柱状ハニカムセグメントの所定のセルに目封止用スラリーを充填し、これを乾燥させて、目封止付き角柱状ハニカムセグメントを得た。目封止部の形成方法について例示的に説明する。目封止用スラリーを、貯留容器に貯留しておく。次いで、目封止部を形成すべきセルに対応する箇所に開口部を有するマスクを一方の底面に貼る。マスクを貼った底面を、貯留容器中に浸漬して、開口部に目封止用スラリーを充填して目封止部を形成する。流出側目封止部は、先ず、目封止長さL1がハニカム成形体の全長L0’に対して10%となるよう第一流出側目封止部にスラリーを充填して乾燥させた。その後、目封止長さL2がハニカム成形体の全長L0’に対して3.7%となるよう第二流出側目封止部に目封止用スラリーを充填して乾燥させ、第一流出側目封止部及び第二流出側目封止部からなる流出側目封止部を形成した。
【0077】
なお、目封止用スラリーは、坏土と同じ材質のものを採用した。目封止部は、一方の端面と他方の端面とが相補的な市松模様を呈するように配置した。また、角柱状ハニカムセグメントは、セル密度が46個/cmであり、隔壁の厚さが320μmであった。
【0078】
次に、得られた目封止付き角柱状ハニカムセグメントを16個、それぞれの外壁にペースト状の接合材を塗布し、セルの延びる方向に直交する断面において縦横に4個×4個となるように並べて組み付けた後、四方より加圧した。その後、接合材を乾燥させて接合体を得た。そして、この接合体について、外形が円柱状になるように外周部を切削加工し、その後、外周面上に外周コート材を塗布して円柱状のハニカムフィルタを作製した。
【0079】
得られたハニカムフィルタは、セルの延びる方向に直交する断面における直径が163mmであり、セルの延びる方向における長さが162mmであった。また、ハニカムフィルタは、接合層の厚さが1.0mmであった。また、ハニカムフィルタは、隔壁の厚さが320μmであり、セル密度が46個/cmであった。隔壁の気孔率は63%であった。隔壁の気孔率は、水銀圧入法によって測定された値である。
【0080】
実施例1のハニカムフィルタは、流出側目封止部の総個数に対する、第一流出側目封止部の個数割合が25%であった。その結果を、表1の「第一流出側目封止部の個数割合(%)」の欄に示す。また、流出端面側における第一流出側目封止部及び第二流出側目封止部の配置は、図3に示すハニカムフィルタ100のような配置とした。表1の「参照図」の欄には、各実施例における第一流出側目封止部及び第二流出側目封止部の配置を参照するための図面の番号を示す。
【0081】
実施例1のハニカムフィルタは、ハニカム構造体の全長L0に対する第一流出側目封止部の目封止長さL1の比率が10%であった。ハニカム構造体の全長L0に対する第二流出側目封止部の目封止長さL2の比率が3.7%であった。また、ハニカム構造体の全長L0に対する流入側目封止部の目封止長さL3の比率が3.7%であった。各結果を、表1の「目封止長さL1比率(%)」、「目封止長さL2比率(%)」及び「目封止長さL3比率(%)」の欄に示す。
【0082】
実施例1のハニカムフィルタは、後述する比較例1のハニカムフィルタに対して、熱容量の比率が102.4%となるものであった。表1の「熱容量比(%)」の欄に、比較例1のハニカムフィルタの熱容量に対する、各実施例のハニカムフィルタの熱容量の比の百分率(%)の値を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、粒子状物質燃焼時推定最高温度に関する評価を行った。結果を、表1に示す。
【0086】
[粒子状物質燃焼時推定最高温度(℃)]
各実施例及び比較例のハニカムフィルタに対して、エンジン試験及びシミュレーションに基づく、粒子状物質燃焼時推定最高温度(℃)の算出を行った。具体的には、まず、後述する比較例1のハニカムフィルタ(ハニカム構造体の容量3.4L)に7g/Lとなるように粒子状物質を堆積させた。そして、エンジン試験にて、比較例1のハニカムフィルタ内に堆積させた粒子状物質を燃焼させ、粒子状物質の燃焼時の比較例1のハニカムフィルタ内の温度分布及び最高温度(℃)を測定した。なお、粒子状物質の燃焼時の温度分布及び最高温度(℃)の測定は、フィルタ内の粒子状物質の燃焼温度が最も高くなる最悪条件でのものとした。上記測定時の温度データ、ハニカムフィルタの特性情報、エンジン運転条件を元に燃焼シミュレーション条件を設定し、比較例1のハニカムフィルタの情報を元に、その他の実施例及び比較例のハニカムフィルタについて、燃焼シミュレーションを行った。得られた各シミュレーション結果から、各実施例及び比較例のハニカムフィルタの推定温度データ及び推定最高温度(℃)を求めた。
【0087】
(実施例2~11)
第一流出側目封止部及び第二流出側目封止部の構成を、表1又は表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。以下、実施例1,4,7~11を、参考例1,4,7~11と読み替える。
【0088】
(比較例1~4)
比較例1~4においては、流出側目封止部の構成を、表1又は表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。具体的には、比較例1では、流出側目封止部の形成において、目封止長さL2がハニカム成形体の全長L0’に対して3.7%となる流出側目封止部のみを形成した。比較例1における流出側目封止部の構成については、表1における「第二流出側目封止部」に関する欄に記載している。また、比較例3では、流出側目封止部の形成において、目封止長さL1がハニカム成形体の全長L0’に対して27.3%となる流出側目封止部のみを形成した。比較例3における流出側目封止部の構成については、表2における「第一流出側目封止部」に関する欄に記載している。比較例2,4の流出側目封止部の構成については、表2に示す通りである。
【0089】
(結果)
実施例1~11のハニカムフィルタは、比較例1のハニカムフィルタに対して粒子状物質燃焼時推定最高温度が低いものとなることが分かった。特に、実施例8が最も温度が低くなった。
【0090】
実施例1~3、実施例4~6、及び実施例7~11のハニカムフィルタにおいて目封止長さL1比率が小さくなるほど、また大きくなるほど粒子状物質燃焼時推定最高温度が高いものとなることが分かった。例えば、実施例2は、実施例1,3よりも、粒子状物質燃焼時推定最高温度(℃)を下げるために粒子状物質を分散させる点に優れている。同様に、実施例5は実施例4,6よりも、また、実施例8は実施例7~11並びに比較例2~4よりも、粒子状物質燃焼時推定最高温度(℃)を下げるために粒子状物質を分散させる点に優れている。このため、目封止長さL1比率は、少なくとも10~50%、好ましくは20~40%の範囲内で粒子状物質燃焼時推定最高温度が低いものとなることが分かった。
【0091】
実施例8~10及び比較例3のハニカムフィルタにおいて、目封止長さL1を分散させた実施例8が、目封止長さL1と目封止長さL2が同じ比較例3や、目封止長さL1を偏在させた実施例9,10よりも低いものとなることが分かった。第一流出側目封止部の個数割合は25~50%の範囲内で、且つその配置が偏在しない時に粒子状物質燃焼時推定最高温度が低いものとなることが分かった。実施例8は、実施例8~10及び比較例3の中で第一流出側目封止部を偏在させないことで、粒子状物質が燃焼する際に発生した熱の移動(分散)を促す点に優れる。特に、実施例8は、目封止長さL1及び第一流出側目封止部の個数割合が粒子状物質の堆積分布を分散させる点、及び粒子状物質が燃焼する際の発熱と熱容量のバランスを取る点において他の実施例より優れる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のハニカムフィルタは、排ガスに含まれる微粒子等を除去するための捕集フィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、3:外周壁、4:ハニカム構造体、5:目封止部、5a:流入側目封止部、5b:流出側目封止部、5ba:第一流出側目封止部、5bb:第二流出側目封止部、11:流入端面、12:流出端面、100,200,300,400,500,600:ハニカムフィルタ、L0:全長(ハニカム構造体の全長)、L1:目封止長さ(第一流出側目封止部の目封止長さ)、L2:目封止長さ(第二流出側目封止部の目封止長さ)、L3:目封止長さ(流入側目封止部の目封止長さ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13