(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】貯槽
(51)【国際特許分類】
B65D 90/02 20190101AFI20231225BHJP
E04H 7/18 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B65D90/02 N
B65D90/02 Z
E04H7/18 A
(21)【出願番号】P 2020066226
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】野呂 好幸
(72)【発明者】
【氏名】北田 健介
(72)【発明者】
【氏名】山本 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】河野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松木 聡
(72)【発明者】
【氏名】南 浩郎
(72)【発明者】
【氏名】山沢 哲也
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-177061(JP,A)
【文献】特開昭62-271881(JP,A)
【文献】実公平02-012395(JP,Y2)
【文献】特開昭59-122642(JP,A)
【文献】山田 雅雄,下水処理におけるPCタンク Prestressed Concrete Tanks in a Sewage Water Treatment Facility,プレストレストコンクリート 第20巻第5号 JOURNAL OF JAPAN PRESTRESSED CONCREAT ENGINEERING ASSOCIATION ,第20巻,社団法人プレストレストコンクリート技術協会 山田 順治
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/02
E04H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂端および底端に向けて窄まる形状を有するコンクリート製の貯槽であって、
下部構造と、下部構造の上に設置される側壁部と、を有し、
前記側壁部は、前記側壁部を前記貯槽の周方向に分割した複数のプレキャストセグメントにより構成されたプレストレストコンクリート構造であり、
前記下部構造は、鉄筋コンクリート構造であ
り、
前記貯槽は、略卵形の鉛直断面を有し、
前記下部構造の天端は、外側に行くにつれ低くなる傾斜を有し、
前記側壁部の経線方向PC鋼材の下端部が前記下部構造において定着され、
前記側壁部の下端および前記下部構造の上端の内面が、前記天端の傾斜と直交するように傾斜することを特徴とする貯槽。
【請求項2】
前記下部構造は、地下部分の外面に上下複数段の段部を有し、前記段部の下面に杭が設けられることを特徴とする請求項1記載の貯槽。
【請求項3】
前記天端の外縁部に突起が設けられ、前記側壁部の下端の外面が前記突起に沿って配置されることを特徴とする請求項
1または請求項2記載の貯槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の貯槽に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥の嫌気性発酵消化槽として、プレストレストコンクリートによる卵形の貯槽の内部に撹拌機を設けたもの(以下、PC卵形消化槽という)があり、死水域ができにくく撹拌性が高い点などで優れている。
【0003】
PC卵形消化槽の基礎構造には直接基礎、杭基礎、ケーソン基礎などがあるが、地盤が弱い場所に設置されることが大半であるため、杭基礎が採用されることが多い。杭基礎を採用したPC卵形消化槽では、群杭上にリング基礎が築造され、下方に向かって窄まる消化槽の下部がリング基礎から引張られる構造になっており、係る構造を有する消化槽の下部およびリング基礎に適切なプレストレスを導入するためPC鋼材が複雑に配置されている。結果、消化槽の下部の工事費が当該下部の上に設けられる側壁部より割高となる。
【0004】
これに対し、特許文献1には、側壁部をプレストレストコンクリート構造とし、下部を鉄筋コンクリート構造とし、その中間部をプレストレスト鉄筋コンクリート構造とした卵形消化槽が記載されている。このように下部を鉄筋コンクリート構造とすることで施工が簡略化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の例では、卵形消化槽の下部だけでなく全体を場所打ちコンクリートで構築する。そのため、卵形消化槽を構築する際に型枠組立、配筋、コンクリート打設、脱型のサイクルを10以上のブロックに分けて下から順に実施する必要があり工期が長くなる。また卵形消化槽の側壁部は高さごとに曲線半径が異なり、型枠の転用ができないので、多数の型枠が必要となりコストがかさむ。
【0007】
さらに、消化槽の経線方向のPC鋼材は数ブロック分の長さで予め配筋するので、配筋作業が高所作業となり、またPC鋼材を長期間立ち上げた状態が続くので品質維持面でも課題がある。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、施工時の工期短縮および工費削減が可能な貯槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための本発明は、頂端および底端に向けて窄まる形状を有するコンクリート製の貯槽であって、下部構造と、下部構造の上に設置される側壁部と、を有し、前記側壁部は、前記側壁部を前記貯槽の周方向に分割した複数のプレキャストセグメントにより構成されたプレストレストコンクリート構造であり、前記下部構造は、鉄筋コンクリート構造であり、前記貯槽は、略卵形の鉛直断面を有し、前記下部構造の天端は、外側に行くにつれ低くなる傾斜を有し、前記側壁部の経線方向PC鋼材の下端部が前記下部構造において定着され、前記側壁部の下端および前記下部構造の上端の内面が、前記天端の傾斜と直交するように傾斜することを特徴とする貯槽である。
【0010】
本発明では、貯槽の側壁部の施工にプレキャストセグメントを用いることで、コンクリート打設のための各種工程の繰り返しを無くすとともに、型枠も不要となり、高所作業ならびに足場や支保工も最小限にすることができる。一方、下部構造では、鉄筋コンクリート構造を用いてPC鋼材の複雑な配筋をなくすことで、貯槽の施工が容易になり工期短縮および工費削減が可能になる。
【0011】
前記下部構造は、地下部分の外面に上下複数段の段部を有し、前記段部の下面に杭が設けられることが望ましい。
基礎となる下部構造を地下に埋設することにより、下部構造の気密性や水密性の機能を確保することができる。また下部構造の地下部分の外面に上下複数段の段部を設け、この段部に杭を設けることで、下部構造のコンクリート使用量を減らし合理的な形状とすることができる。
【0012】
前記貯槽は、略卵形の鉛直断面を有することにより、嫌気性発酵消化槽に適した卵形の貯槽を低コスト且つ短工期で施工できる。
【0013】
本発明において、前記下部構造の天端は、外側に行くにつれ低くなる傾斜を有する。また、前記天端の外縁部に突起が設けられ、前記側壁部の下端の外面が前記突起に沿って配置されることも望ましい。
下部構造の天端に上記の傾斜をつけることにより、天端に配置した側壁部のプレキャストセグメントが内側に倒れようとするのを抑えることができる。また、突起を設けることにより、当該突起を側壁部のプレキャストセグメントを設置する際の定規とできる。
【0014】
また本発明では、前記側壁部の経線方向PC鋼材の下端部が前記下部構造において定着され、前記側壁部の下端および前記下部構造の上端の内面が、前記天端の傾斜と直交するように傾斜することにより、経線方向PC鋼材により導入された圧縮力を貯槽の躯体に有効に働かせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、施工時の工期短縮および工費削減が可能な貯槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】セグメント31と下部構造4との接合箇所を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
(1.消化槽1)
図1は本発明の第1の実施形態に係る消化槽1を示す図であり、消化槽1の鉛直断面を見たものである。また
図2は消化槽1の躯体の概略を示す斜視図である。
【0020】
消化槽1は下水処理場等に設けられるコンクリート製の貯槽であり、内部に下水を貯留するものである。消化槽1では、下水の汚泥を嫌気性消化によって処理する。消化槽1の内部には汚泥の処理を効率的に行うために撹拌機(不図示)が設けられる。
【0021】
図1に示すように、消化槽1は、頂部2、側壁部3、下部構造4等を有する。
【0022】
消化槽1は、全体として略卵形の鉛直断面を有する卵形消化槽である。より詳細には、高さ方向の中間部が球面状に外側に膨らみ、頂端と底端に向けて直線状に窄まる。
【0023】
頂部2は、側壁部3の上に設置される円錐台状の部材であり、上方に向かって直線状に窄まる。頂部2は例えば一体のプレキャスト部材により構成される。頂部2の上端には開口21が設けられ、この開口21は図示しない鋼板等で閉塞される。当該鋼板には撹拌機が取付けられる。
【0024】
側壁部3は、下部構造4の上に設置される。側壁部3は、経線方向PC鋼材6により消化槽1の経線方向のプレストレスが導入され、周方向PC鋼材7により消化槽1の周方向のプレストレスが導入されたプレストレストコンクリート構造である。経線方向PC鋼材6は消化槽1の周方向に間隔を空けて複数本配置され、周方向PC鋼材7は消化槽1の経線方向に間隔を空けて上下複数段に配置される。
【0025】
側壁部3の下部は球面状に外側に膨らみ、上部に向かって曲線状に窄まる。側壁部3の上部は、上方に向かって直線状に窄まる円錐台状である。
【0026】
側壁部3の上端の内面は頂部2の下端の内面と同じ角度で傾斜し、側壁部3の内面と頂部2の内面は滑らかに連続する。
【0027】
側壁部3は、複数のプレキャストセグメント31(以下、セグメント31という)を消化槽1の周方向に並べて構成される。セグメント31は事前に製造されたプレキャストコンクリート部材であり、側壁部3を消化槽1の周方向に等分割した形状を有する。セグメント31は左右の幅(消化槽1の周方向の長さ)より上下の長さの大きい細長形状であり、その幅は上端に行くにつれ狭くなる。
【0028】
下部構造4は、場所打ちコンクリートにより構成された鉄筋コンクリート構造を有し、内部には図示しない補強筋が埋設される。下部構造4は下方に向かって直線状に窄まる円錐台状(すり鉢状)であり、上端部を除く略全体が地下に埋設される。
【0029】
下部構造4の地下部分の外面には上下複数段の段部42が形成され、各段部42の下面に消化槽1を支持する杭5が設けられる。これらの段部42は消化槽1の周方向に連続するように設けられ、各段部42において、消化槽1の周方向に間隔を空けて複数の杭5が配置される。
【0030】
下部構造4の内面は、上から順に3つの角度θ1、θ2、θ3(水平面に対する角度)で傾斜し、その角度は下方に行くにつれ小さくなる。下部構造4の上端の内面は側壁部3の下端の内面と同じ角度θ1で傾斜し、側壁部3の内面と下部構造4の内面は滑らかに連続する。
【0031】
図3はセグメント31の立面を示す図である。セグメント31には複数の経線方向PC鋼材6が埋設される。これら複数の経線方向PC鋼材6は、セグメント31の幅方向に間隔を空けて配置される。経線方向PC鋼材6は例えばアンボンドPC鋼材であり、その上端がデッドアンカー61によってセグメント31内に定着される。
【0032】
前記したように、セグメント31の幅は上端に行くにつれ狭くなるので、セグメント31の上部において経線方向PC鋼材6が過密にならないよう、経線方向PC鋼材6の上端は、セグメント31の幅方向の中央部において高く、幅方向の両側にゆくにつれ低い位置となるように分散して配置される。経線方向PC鋼材6の下端部は、セグメント31の下面から突出している。
【0033】
図4はセグメント31の下部構造4への接合箇所を示す図である。
図4に示すように、セグメント31は下部構造4の天端43上に載置されるが、この天端43は、外側にゆくにつれ低くなるような傾斜を有する。天端43の傾斜は、側壁部3のセグメント31下端および下部構造4の上端の内面の傾斜に対し直交するように設定される。
【0034】
また、天端43の外縁部には上方に突出する突起431が設けられており、セグメント31の下端の外面は、この突起431に沿って配置される。
【0035】
下部構造4の地上部分の外面には凹部44が形成される。下部構造4の内部では、凹部44から天端43に達するシース管45が設けられており、セグメント31の下面から突出する経線方向PC鋼材6の下端部は、このシース管45に通して緊張され、定着体62によって凹部44で定着される。
【0036】
セグメント31の上部は内側に屈曲した形状である(
図1参照)ので、内側に倒れようとするモーメントが働くが、上記のように天端43に傾斜を設け、その上にセグメント31を配置することで、このようなモーメントに好適に抵抗できる。また上記の突起431によってセグメント31を位置決めでき、セグメント31を天端43上に精度良く設置できる。
【0037】
また、側壁部3のセグメント31下端および下部構造4の上端の内面は、天端43の傾斜と直交するように傾斜するので、経線方向PC鋼材6によって導入された圧縮力を、消化槽1の躯体に有効に働かせることができる。経線方向PC鋼材6は、側壁部3のセグメント31と下部構造4との接合箇所で、天端43の傾斜と直交するように配置される。
【0038】
消化槽1を施工する際は、下部構造4および杭5を構築した後、下部構造4の天端43に側壁部3のセグメント31を据え付け、経線方向PC鋼材6の下端部を下部構造4の凹部44で緩く定着する。
【0039】
セグメント31の据え付け時は、例えば、下部構造4の上に設置した足場(不図示)に設けた支保材(不図示)の一端で1つのセグメント31を内部から支持して天端43上に配置した後、当該セグメント31に対し消化槽1の平面中心を挟んで対称となる位置のセグメント31を、支保材(不図示)の他端で支持して天端43上に配置する。この工程を繰り返してセグメント31を消化槽1の周方向に順に据え付けてゆくことで、施工時の安定性を高めることができる。
【0040】
全てのセグメント31を据え付けたら、側壁部3の外周に沿って周方向PC鋼材7を配置し、緊張する。本実施形態では周方向PC鋼材7を外ケーブルとしているが、セグメント31の内部に埋設して内ケーブルとしてもよい。
【0041】
次に、経線方向PC鋼材6の下端部を緊張して凹部44に定着し、必要に応じて周方向PC鋼材7の緊張を行う。これにより側壁部3に周方向と経線方向のプレストレスが適切に導入される。その後、頂部2等の必要な部材を設置することで、消化槽1が完成する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、消化槽1の側壁部3の施工にプレキャストセグメント31を用いることで、コンクリート打設のための各種工程の繰り返しを無くすとともに、型枠も不要となり、高所作業ならびに足場や支保工も最小限にすることができる。一方、下部構造4は鉄筋コンクリート構造とすることで、下部構造4をプレストレストコンクリート構造とする場合に必要となるPC鋼材の複雑な配筋をなくすことができる。
【0043】
このように、本実施形態では、場所打ち工法では施工に手間がかかる側壁部3にセグメント31を用い、プレストレストコンクリート構造では施工に手間がかかる下部構造4を鉄筋コンクリート構造とすることで、消化槽1の施工が容易になり、工期短縮および工費削減が可能になる。
【0044】
また、セグメント31は、天候に左右されず作業環境を良好に維持できる工場で製作されるので、高品質のコンクリート部材が安定的に得られる。経線方向PC鋼材6をあらかじめセグメント31に仕込むことにより、現場での配筋作業が不要になり、経線方向PC鋼材6が長期に亘る曝露により品質低下する懸念もなくなる。
【0045】
消化槽1では、側壁部3に周方向および経線方向のプレストレスが導入されることで、側壁部3を薄厚としつつ、消化槽1の液圧等の内圧に抵抗させ、消化槽1からの液漏れ等を好適に防ぐことができる。基礎となる下部構造4は鉄筋コンクリート構造であるが、液圧は大きくなく、また下部構造4を地下に埋設することにより、下部構造4の気密性や水密性の機能を液体容器構造に適する程度に確保することができる。
【0046】
また、下部構造4の地下部分の外面に上下複数段の段部42を設け、この段部42に杭5を設けることで、下部構造4のコンクリート使用量を減らし合理的な形状とすることができる。
【0047】
また、下部構造4の天端43に前記した傾斜をつけることにより、天端43に配置した側壁部3のセグメント31が内側に倒れようとするのを抑えることができ、周方向PC鋼材7の緊張による側壁部3の内側への圧縮も阻害されない。また、天端43の外縁部に突起431を設けることにより、その突起431を定規としてセグメント31を位置決めでき、セグメント31を天端43上に精度良く設置できる。
【0048】
さらに、側壁部3のセグメント31下端および下部構造4の上端の内面が、天端43の傾斜と直交するように傾斜することで、経線方向PC鋼材6により導入された圧縮力を消化槽1の躯体に有効に働かせることができる。
【0049】
また本実施形態の消化槽1は、略卵形の鉛直断面を有しており、死水域ができにくく撹拌性が高い、スカム等の除去が容易であるなどの利点を有する。
【0050】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限らない。例えば本実施形態では頂部2にプレストレスを導入していないが、必要に応じて頂部2にプレストレスを導入してもよい。
【0051】
また、本実施形態では経線方向PC鋼材6の下端部を下部構造4において定着したが、両端部をセグメント31に定着した経線方向PC鋼材6によりセグメント31にプレストレスを予め導入し、このセグメント31を下部構造4の天端43に接合してもよい。
【0052】
また、本実施形態では貯槽として消化槽の例を説明したが、本実施形態は消化槽に限らず各種の貯槽に適用可能である。また貯槽は頂端および底端に向けて窄まる形状を有していればよく、卵形に限らず例えば全体として球形となっていてもよい。
【0053】
以下、本発明の別の例を第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
【0054】
[第2の実施形態]
図5は本発明の第2の実施形態に係る消化槽1aを示す図であり、消化槽1aの鉛直断面を見たものである。また
図6は消化槽1aの躯体の概略を示した斜視図である。
【0055】
この消化槽1aも第1の実施形態と同様、頂端と底端に向けて窄まる形状を有するが、全体として亀甲型の鉛直断面を有する亀甲型消化槽である点で第1の実施形態と主に異なる。
【0056】
消化槽1aは頂部2、側壁部3a、下部構造4a等を有する。
【0057】
側壁部3aは、第1の実施形態と同様、経線方向PC鋼材6により消化槽1aの経線方向のプレストレスが導入され、周方向PC鋼材7により消化槽1aの周方向のプレストレスが導入されたプレストレストコンクリート構造であるが、筒状部30aの上に円錐台部30bを設けた構成となっている点で第1の実施形態と異なる。
【0058】
筒状部30aは鉛直方向に沿って設けられる円筒状の部材であり、円錐台部30bは上方に向かって直線状に窄まる円錐台状の部材である。
【0059】
筒状部30aと円錐台部30bは、それぞれ複数のセグメント31a、31bを消化槽1aの周方向に並べて構成される。セグメント31a、31bは、それぞれ筒状部30aと円錐台部30bを消化槽1aの周方向に等分割した形状を有する。
【0060】
側壁部3aでは、筒状部30aの上部および円錐台部30bの下部が内側に向かって増厚され、筒状部30aの増厚部311の内面と円錐台部30bの増厚部315の内面が同じ傾斜で滑らかに連続する。また円錐台部30bの上端の内面と頂部2の下端の内面も、同じ傾斜で滑らかに連続する。
【0061】
下部構造4aは、第1の実施形態と同様、場所打ちコンクリートにより構成された鉄筋コンクリート構造であり、下方に向かって窄まる円錐台状(すり鉢状)となっている。ただし、天端43a付近の内面41は鉛直方向に沿ったものとなっており、筒状部30aの下端の内面と滑らかに連続する。天端43a付近よりも下方では、下部構造4の内面が、上から順に2つの角度θ4、θ5(水平面に対する角度)で傾斜し、その角度は下方に行くにつれ小さくなる。
【0062】
セグメント31a、31bには、第1の実施形態と同様、セグメント31a、31bの幅方向に間隔を空けて配置された複数本の経線方向PC鋼材6が予め埋設される。
【0063】
セグメント31aの経線方向PC鋼材6の下端部は、第1の実施形態と同様、下部構造4aの上端部に埋設したシース管(不図示)に通して緊張され、下部構造4aの地上部分の外面に設けた凹部44で定着体62によって定着される。一方、セグメント31aの経線方向PC鋼材6の上端は、セグメント31aの天端312において定着体63により定着される。
【0064】
セグメント31bの経線方向PC鋼材6の下端部は、セグメント31aの上端部に埋設したシース管(不図示)に通して緊張され、当該上端部の外面に設けた凹部313で定着体62によって定着される。一方、セグメント31bの経線方向PC鋼材6の上端は、デッドアンカー61によりセグメント31bの内部で定着される。セグメント31bの上部の幅は下部の幅より狭いので、経線方向PC鋼材6の上端は、
図3の例と同様に高さ方向の位置をずらして配置される。
【0065】
なお、下部構造4aの天端43aは略水平であり、セグメント31aは当該天端43aの上に設置される。セグメント31aの天端312も略水平であるが、その外縁部には上方に突出する突起3121が設けられており、セグメント31bを当該天端312の上に載せた時に、セグメント31bの下端の外面が当該突起3121に沿って配置される。なお前記の定着体63はこの突起3121の位置で設けられている。
【0066】
この第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様、施工時の工期短縮および工費削減が可能となる。なお本実施形態ではセグメント31aの経線方向PC鋼材6の上端が定着体63により天端312で定着されるが、第1の実施形態と同様、デッドアンカー61によりセグメント31aの内部で定着されていてもよい。あるいは、経線方向PC鋼材6をU字状に配置し、その折曲部分が下部構造4aに埋設され、両端部がセグメント31aの天端312において定着されるようにしてもよい。
【0067】
また、第2の実施形態においても、セグメント31a、31bとして、両端部をセグメント31a、31bに定着した経線方向PC鋼材6によりプレストレスを予め導入したものを用いてもよい。また周方向PC鋼材7をセグメント31a、31bの内部に埋設して内ケーブルとしてもよい。
【0068】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0069】
1、1a:消化槽
2:頂部
3、3a:側壁部
4、4a:下部構造
5:杭
6:経線方向PC鋼材
7:周方向PC鋼材
30a:筒状部
30b:円錐台部
31、31a、31b:プレキャストセグメント
42:段部
43、43a、312:天端
44、313:凹部
45:シース管
61:デッドアンカー
62、63:定着体
431、3121:突起