(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】原子力プラントの給水設備
(51)【国際特許分類】
G21C 9/00 20060101AFI20231225BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20231225BHJP
G21C 19/07 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G21C9/00
G21C15/18 T
G21C19/07 200
(21)【出願番号】P 2020070990
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100195718
【氏名又は名称】市橋 俊規
(72)【発明者】
【氏名】池尻 智史
(72)【発明者】
【氏名】久島 和夫
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-029303(JP,A)
【文献】特開平06-230177(JP,A)
【文献】特開2004-132779(JP,A)
【文献】特開2020-012768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/00
G21C 15/18
G21C 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済燃料貯蔵プールに給水する燃料プール補給水系と、原子炉の冷却水を供給する残留熱除去系と、を有する原子力プラントの給水設備において、
非常用水源に貯留された水を前記使用済燃料貯蔵プール及び/又は前記原子炉に給水するために設けられた複数系統の非常用水源出口配管と、前記非常用水源出口配管にそれぞれ設けられた給水ポンプと、前記非常用水源出口配管に接続され使用済燃料貯蔵プールに水を供給するプール給水配管と、前記非常用水源出口配管に接続され原子炉へ冷却水を供給する原子炉注水配管と、前記プール給水配管に接続され前記非常用水源の水を当該非常用水源に戻す試験配管と、全交流動力電源喪失事象が発生した場合に前記給水ポンプに給電する直流電源と、を有
し、
前記原子炉注水配管に原子炉注水流量計を設けるとともに、当該原子炉注水流量計の下流側と前記非常用水源を接続する原子炉注水流量計の試験配管を設けたことを特徴とする原子力プラントの給水設備。
【請求項2】
前記プール給水配管、前記原子炉注水配管
、前記非常用水源に戻す試験配管及び前記
原子炉注水流量計の試験配管に、前記直流電源により開閉駆動される電動弁を設けたことを特徴とする請求項1記載の原子力プラントの給水設備。
【請求項3】
前記原子炉の冷却水を供給する流路及び前記使用済燃料貯蔵プールに給水する流路を、前記複数系統の非常用水源出口配管にそれぞれ設けられた給水ポンプに対し、相互に独立して接続可能とする手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の原子力プラントの給水設備。
【請求項4】
前記複数系統の非常用水源出口配管の下流側に接続されたプール給水配管の間に前記直流電源により開閉駆動される電動弁を設けるとともに、当該電動弁の上流側に前記原子炉注水配管を接続したことを特徴とする請求項1乃至3
のいずれかに記載の原子力プラントの給水設備。
【請求項5】
使用済燃料貯蔵プールに給水する燃料プール補給水系と、原子炉の冷却水を供給する残留熱除去系と、を有する原子力プラントの給水設備において、
非常用水源に貯留された水を前記使用済燃料貯蔵プール及び/又は前記原子炉に給水するために設けられた複数系統の非常用水源出口配管と、前記非常用水源出口配管にそれぞれ設けられた給水ポンプと、前記非常用水源出口配管に接続され使用済燃料貯蔵プールに水を供給するプール給水配管と、前記非常用水源出口配管に接続され原子炉へ冷却水を供給する原子炉注水配管と、前記プール給水配管に接続され前記非常用水源の水を当該非常用水源に戻す試験配管と、全交流動力電源喪失事象が発生した場合に前記給水ポンプに給電する直流電源と、を有し、
前記プール給水配管に給水ポンプ流量計を設けるとともに、当該給水ポンプ流量計の下流側に前記原子炉注水配管を接続し、前記給水ポンプ流量計の上流側と前記非常用水源を接続する給水ポンプ最小流量配管を設けたことを特徴とする原子力プラントの給水設備。
【請求項6】
前記プール給水配管、前記原子炉注水配管及び前記非常用水源に戻す試験配管に、前記直流電源により開閉駆動される電動弁を設けたことを特徴とする請求項5記載の原子力プラントの給水設備。
【請求項7】
前記原子炉の冷却水を供給する流路及び前記使用済燃料貯蔵プールに給水する流路を、前記複数系統の非常用水源出口配管にそれぞれ設けられた給水ポンプに対し、相互に独立して接続可能とする手段を有することを特徴とする請求項5又は6記載の原子力プラントの給水設備。
【請求項8】
前記複数系統の非常用水源出口配管の下流側に接続されたプール給水配管の間に前記直流電源により開閉駆動される電動弁を設けるとともに、当該電動弁の上流側に前記原子炉注水配管を接続したことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の原子力プラントの給水設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は燃料プール補給水系と残留熱除去系を備えた原子力プラントの給水設備に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントでは、通常電源喪失時や地震発生時等の非常時において使用済燃料貯蔵プールの水位が蒸発等により低下した場合に補給水を供給する燃料プール補給水系、及び非常時に原子炉に直接冷却水を供給する残留熱除去系を設けている。
【0003】
従来の燃料プール補給水系は、
図6に示すように、復水貯蔵槽1の水を、復水貯蔵槽出口配管2、給水ポンプ3A、3B、逆止弁4A、4B、プール給水配管5、給水ポンプ流量計6、電動弁8を介して使用済燃料貯蔵プール9に供給する。
【0004】
この燃料プール補給水系は、通常時に給水ポンプ3A、3B及び給水ポンプ流量計6の機能を確認できるよう、給水ポンプ用の試験配管10、オリフィス11、電動弁12を介して復水貯蔵槽1の水を循環運転できる構成となっている。そして、通常電源喪失時や地震発生時等の非常時には、非常用ディーゼル発電機13A、13Bから給水ポンプ3A、3Bに給電することで、使用済燃料貯蔵プール9に水を供給する。
【0005】
また、従来の残留熱除去系は、
図6に示すように、サプレッションプール14の水を、配管15、残留熱除去系ポンプ16、逆止弁17、流量計19、原子炉注水配管20、電動弁21、逆止弁22を介して原子炉23に注水する。
【0006】
また、残留熱除去系は、配管24、手動止め弁25、26を介して、サプレッションプール14の水を残留熱除去系ポンプ16によって使用済燃料貯蔵プール9に供給することができる。
【0007】
さらに、残留熱除去系は、通常時に残留熱除去系ポンプ16、流量計19の機能を確認できるよう、残留熱除去系ポンプ用の試験配管27、オリフィス28、電動弁29を介してサプレッションプール14の水を循環運転できる構成となっている。
【0008】
また、残留熱除去系は残留熱除去系ポンプ16を運転状態のまま待機できるよう、最小流量配管45、逆止弁46、オリフィス47、電動弁48を介してサプレッションプール14の水を残留熱除去系ポンプ16の必要最小流量で循環運転できる構成となっている。
【0009】
そして、通常電源喪失時や地震発生時等の非常時には、非常用ディーゼル発電機13Aから残留熱除去系ポンプ16に給電することにより、サプレッションプール14の水を原子炉23又は使用済燃料貯蔵プール9に注水する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、大震災等の大災害時に、非常用ディーゼル発電機13A、13Bが動作しない全交流動力電源喪失事象が発生したケースがある。このため、交流動力電源に依存しない使用済燃料貯蔵プールへの給水設備や原子炉への注水設備が必要となっている。
【0012】
交流動力電源に依存せずにポンプや電動弁を駆動させるためには、蓄電池等の直流電源から給電する方法があるが、ポンプのような比較的必要電力の大きい機器へ長期間蓄電池から給電する場合、直流電源の必要容量を大きくする必要がある。しかしながら、既設の原子力プラントに対して直流電源を増設することは、大規模な設計変更や付帯工事が必要となるため、工事が極めて困難となるという課題がある。
【0013】
また、使用済燃料貯蔵プールへの給水設備又は原子炉注水設備として、新規に給水系統を追加する場合、従来の使用済燃料貯蔵プール補給水設備又は原子炉注水設備と同様にポンプ、補給配管、試験配管、最小流量配管等を設けることが望ましい。しかしながら、既設の原子力プラントに対し、そのような改造をすることは大規模な設計変更や付帯工事をともなうため、工事が極めて困難となるという課題もある。
【0014】
本発明の実施形態は上記課題を解決するためになされたもので、現有設備を最大限活用し、全交流動力電源喪失事象の発生時に使用済燃料貯蔵プールへの給水や原子炉への注水を可能とする原子力プラントの給水設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本実施形態に係る原子力プラントの給水設備は、使用済燃料貯蔵プールに給水する燃料プール補給水系と、原子炉の冷却水を供給する残留熱除去系と、を有する原子力プラントの給水設備において、非常用水源に貯留された水を前記使用済燃料貯蔵プール及び/又は前記原子炉に給水するために設けられた複数系統の非常用水源出口配管と、前記非常用水源出口配管にそれぞれ設けられた給水ポンプと、前記非常用水源出口配管に接続され使用済燃料貯蔵プールに水を供給するプール給水配管と、前記非常用水源出口配管に接続され原子炉へ冷却水を供給する原子炉注水配管と、前記プール給水配管に接続され前記非常用水源の水を当該非常用水源に戻す試験配管と、全交流動力電源喪失事象が発生した場合に前記給水ポンプに給電する直流電源と、を有し、前記原子炉注水配管に原子炉注水流量計を設けるとともに、当該原子炉注水流量計の下流側と前記非常用水源を接続する原子炉注水流量計の試験配管を設けたことを特徴とする。
また、本実施形態に係る原子力プラントの給水設備は、使用済燃料貯蔵プールに給水する燃料プール補給水系と、原子炉の冷却水を供給する残留熱除去系と、を有する原子力プラントの給水設備において、非常用水源に貯留された水を前記使用済燃料貯蔵プール及び/又は前記原子炉に給水するために設けられた複数系統の非常用水源出口配管と、前記非常用水源出口配管にそれぞれ設けられた給水ポンプと、前記非常用水源出口配管に接続され使用済燃料貯蔵プールに水を供給するプール給水配管と、前記非常用水源出口配管に接続され原子炉へ冷却水を供給する原子炉注水配管と、前記プール給水配管に接続され前記非常用水源の水を当該非常用水源に戻す試験配管と、全交流動力電源喪失事象が発生した場合に前記給水ポンプに給電する直流電源と、を有し、前記プール給水配管に給水ポンプ流量計を設けるとともに、当該給水ポンプ流量計の下流側に前記原子炉注水配管を接続し、前記給水ポンプ流量計の上流側と前記非常用水源を接続する給水ポンプ最小流量配管を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本実施形態によれば、現有設備を最大限活用し、全交流動力電源喪失事象の発生時に使用済燃料貯蔵プールへの給水や原子炉への注水を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る原子力プラントの給水設備の構成図。
【
図2】第2実施形態に係る原子力プラントの給水設備の構成図。
【
図3】第3実施形態に係る原子力プラントの給水設備の構成図。
【
図4】第4実施形態に係る原子力プラントの給水設備の構成図。
【
図5】第5実施形態に係る原子力プラントの給水設備の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る原子力プラントの給水設備の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る原子力プラントの給水設備について、非常用水源として復水貯蔵槽を用いた例を
図1により説明する。
なお、従来の給水設備と同一又は類似の構成には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0020】
(構成)
第1の実施形態に係る原子力プラントの給水設備は、全交流動力電源喪失事象が発生した際に用いられる蓄電池等からなる直流電源30を設けた構成としている。
【0021】
本実施形態に係る原子力プラントの給水設備は、従来と同様に使用済燃料貯蔵プール9の水位を保持する燃料プール補給水系と、原子炉に冷却水を供給する残留熱除去系から構成される。
【0022】
燃料プール補給水系は、
図1に示すように、復水貯蔵槽1と、2系統の復水貯蔵槽出口配管2と、各復水貯蔵槽出口配管2に設けられた給水ポンプ3A、3B及び逆止弁4A、4Bと、使用済燃料貯蔵プール9と、使用済燃料貯蔵プール9と復水貯蔵槽出口配管2を接続するプール給水配管5と、プール給水配管5に設けられた給水ポンプ流量計6及び電動弁8と、プール給水配管5と復水貯蔵槽1を接続する給水ポンプ3A、3Bの試験配管10と、試験配管10に設けられたオリフィス11及び電動弁12と、から構成される。
【0023】
残留熱除去系は、原子炉23と、原子炉23に接続された原子炉注水配管20、31と、原子炉注水配管20に設けられた電動弁21及び逆止弁22と、原子炉注水配管31に設けられた原子炉注水流量計32、電動弁33及び逆止弁34と、電動弁21をバイパスする電動弁36及びバイパス配管35と、から構成される。
【0024】
蓄電池等から構成される直流電源30は、全交流動力電源喪失事象が発生した際に、給水ポンプ3A、3B及び電動弁8、12、33及び36に直流電源を供給する。
【0025】
(作用)
残留熱除去系
全交流動力電源喪失事象の発生直後に原子炉23に注水する場合は、直流電源30により給水ポンプ3A、3Bの両方に直流を給電して動作させるとともに、電動弁33、36に直流を給電して開操作し、給水ポンプ3A、3Bから原子炉注水配管31、20を介して原子炉23に至る流路を確立し、復水貯蔵槽1内の水を原子炉23に移送する。
【0026】
全交流動力電源喪失事象の発生から数時間が経過し、原子炉への必要注水量が減少した後、給水ポンプの運転台数を2台から1台に減らしてもよい。原子炉への注水流量は、原子炉注水流量計32で監視する。
【0027】
燃料プール補給水系
全交流動力電源喪失事象の発生時に使用済燃料貯蔵プール9に給水する場合は、直流電源30より、給水ポンプ3A又は3Bに直流を給電して動作させるとともに、電動弁8を直流電源30により開操作し、給水ポンプ3A又は3Bから復水貯蔵槽出口配管2、プール給水配管5を介して使用済燃料貯蔵プール9に至る流路を確立し、復水貯蔵槽1内の水を使用済燃料貯蔵プール9に給水する。使用済燃料貯蔵プール9への給水流量は給水ポンプ流量計6で監視する。
【0028】
最小流量運転モード
全交流動力電源喪失時に、給水ポンプ3A、3Bを運転状態のまま待機させる場合は(最小流量運転モード)、直流電源30により、給水ポンプ3A、3Bの両方又はいずれかに直流を給電して動作させるとともに、電動弁12を直流電源30により開操作し、給水ポンプ3A、3Bからプール給水配管5、試験配管10を経由して復水貯蔵槽1へ至る流路を確立し、復水貯蔵槽1内の水を循環運転する。
循環運転の際に、給水ポンプ3A、3Bの流量が大きくなりすぎないよう、オリフィス11で流量を制限する。
【0029】
なお、試験配管10は、プラント通常運転時に給水ポンプ3A、3Bの動作試験を行う際に用いられるもので、上述した最小流量運転モードと同様な流路で復水貯蔵槽1内の水を循環運転する。最小流量運転モードはこの給水ポンプ用の試験配管10を利用して全交流動力電源喪失時に給水ポンプの待機運転を行うものである。
【0030】
(効果)
本実施形態によれば、全交流動力電源喪失事象の発生時において、ポンプや電動弁へ直流電源30から給電することで、原子炉23への注水及び使用済燃料貯蔵プールへの給水を可能とし、原子力プラントの安全性及び信頼性を向上させることができる。
【0031】
さらに、復水貯蔵槽出口配管2を複数系統とし、それぞれに給水ポンプ3A、3Bを設けることで、必要な給水流量に応じて運転する給水ポンプの台数を適宜増減することが可能となる。これにより直流電源30の消費電力を軽減することができる。
なお、本実施形態では復水貯蔵槽出口配管2及び給水ポンプ3A、3Bを2系統としているが、3系統以上としてもよい。
【0032】
また、原子炉23への注水時と使用済燃料貯蔵プール9への給水時に独立した給水ポンプ流量計6と原子炉注水流量計32を用いるので、それぞれへの流量の変化や積算流量を独立して計測、管理することができる。
【0033】
さらに、既存のポンプ用の試験配管10を最小流量運転モードに用いるので、既存施設を効率的に活用することが可能となり、新たな機器の追加や付帯工事等を最小限にすることができる。
【0034】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る原子力プラントの給水設備について、
図2を用いて説明する。
なお、上記実施形態に係る給水設備と同一又は類似の構成には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0035】
(構成)
第2の実施形態に係る原子力プラントの給水設備は、2系統の復水貯蔵槽出口配管2の下流側であって逆止弁4Aと逆止弁4Bの出口側に接続されたプール給水配管5の流路上に直流電源30により開閉駆動される電動弁37を設けるとともに、電動弁37の上流側に原子炉注水配管31を接続する構成としている。
【0036】
(作用)
全交流動力電源喪失事象の発生直後に原子炉23に注水する場合は、電動弁37を開状態にしたまま、給水ポンプ3A、3Bの両方で原子炉注水配管31を介して原子炉23へ注水する。
【0037】
その後、例えば全交流動力電源喪失事象が発生して数時間が経過し、原子炉23への必要注水量が減少した後に、原子炉23と使用済燃料貯蔵プール9に同時に水を供給する場合に、直流電源30により電動弁37を閉操作することで、給水ポンプ3Aを使用済燃料貯蔵プール9への給水に、給水ポンプ3Bを原子炉23への注水に独立して用いる。
【0038】
使用済燃料貯蔵プール9への注水流量は、プール給水配管5に設けられた給水ポンプ流量計6で監視し、原子炉23への注水流量は、原子炉注水配管31に設けられた原子炉注水流量計32で監視する。
【0039】
(効果)
全交流動力電源喪失事象発生時に給水ポンプ3A、3Bで原子炉23へ給水する際は、原子炉23の圧力を高圧から低圧へ下げる操作を伴うため、使用済燃料貯蔵プール9へ給水する流路と原子炉23へ注水する流路が独立していない場合、給水ポンプ3A、3Bからの流量が原子炉23の圧力によって変動する恐れがある。
【0040】
しかしながら、本第2の実施形態によれば、使用済燃料貯蔵プール9へ給水する流路と原子炉23へ注水する流路を独立させることができるとともに、それぞれの流量を給水ポンプ流量計6と原子炉注水流量計32で別々に監視することができるため、電動弁33もしくは電動弁36の開度を調整することで原子炉23の圧力に応じて給水ポンプ3Bの流量を制御することや、電動弁8の開度を調整することで使用済燃料貯蔵プール9への給水量を制御することを容易に行うことができる。
【0041】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る原子力プラントの給水設備について、
図3を用いて説明する。
なお、上記実施形態に係る給水設備と同一又は類似の構成には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0042】
(構成)
第3の実施形態に係る原子力プラントの給水設備は、原子炉注水流量計32の下流と復水貯蔵槽1を接続する原子炉注水流量計32の試験配管38を設けるとともに、試験配管38にオリフィス39と電動弁40を設けた構成としている。
【0043】
(作用)
上記のように構成された第3の実施形態において、プラント通常運転時に、原子炉注水流量計32の試験をする場合、給水ポンプ3A、3Bの両方に直流電源30より給電して動作させるとともに、電動弁40を開操作し、給水ポンプ3A、3Bから復水貯蔵槽1への流路を確立し、復水貯蔵槽1内の水を循環運転する。循環運転の際に、給水ポンプ3A、3Bの流量が最大許容流量を超えないよう、オリフィス39で流量を制限する。
【0044】
(効果)
本第3の実施形態によれば、プラント通常運転時に、原子炉注水流量計32の試験を給水ポンプ3A、3Bの2台の定格流量で実施する場合、復水貯蔵槽1やサプレッションプール14の水位管理を行うことなく、復水貯蔵槽1の水を原子炉注水流量計32の試験配管38により循環運転させることで、原子炉注水流量計32の試験を簡便に実施することができる。
【0045】
なお、第1の実施形態においても、復水貯蔵槽1の水を給水ポンプ3A、3Bの2台でサプレッションプール14に移送することで、原子炉注水流量計32の試験を定格流量で実施することは可能であるが、復水貯蔵槽1及びサプレッションプール14の水位管理が必要となるため、試験工程や準備作業が複雑となる。
【0046】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る原子力プラントの給水設備について、
図4を用いて説明する。
なお、上記実施形態に係る給水設備と同一又は類似の構成には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0047】
(構成)
第4の実施形態に係る原子力プラントの給水設備は、原子炉注水配管31を給水ポンプ流量計6の下流側に接続するとともに、給水ポンプ流量計6の上流側と復水貯蔵槽1を接続する給水ポンプ最小流量配管42と、給水ポンプ最小流量配管42にオリフィス43及び直流電源30により開閉駆動される電動弁44と、電動弁8、36の開閉状態を検出し給水ポンプ流量計6で測定した流量を積算する積算流量計41を設けた構成としている。
【0048】
(作用)
全交流動力電源喪失事象の発生時に原子炉23に注水する場合は、給水ポンプ3A、3Bの流量を給水ポンプ流量計6で監視し、原子炉23に注水していることを電動弁33、36の開閉状態より判断し、給水ポンプ流量計6で測定した流量を積算流量計41により積算する。
【0049】
また、全交流動力電源喪失事象の発生時に原子炉23に注水した後に使用済燃料貯蔵プール9に給水する場合は、直流電源30によって電動弁36を閉操作し、電動弁8を開操作して、給水ポンプ3A、3Bから使用済燃料貯蔵プール9までの流路を確立し、復水貯蔵槽1内の水を使用済燃料貯蔵プール9に給水する。
【0050】
その際、給水ポンプ3A、3Bの流量を給水ポンプ流量計6で監視し、原子炉23に注水していないことを電動弁33、36の開閉状態より確認し、積算流量計41の積算機能を停止する。
【0051】
さらに、全交流動力電源喪失時に、給水ポンプ3A、3Bを最小流量運転する場合は、直流電源30により、給水ポンプ3A、3Bの両方又はいずれかを直流電源30により動作させるとともに、電動弁44を直流電源30により開操作し、給水ポンプ3A、3Bから復水貯蔵槽1への流路を確立し、復水貯蔵槽1内の水を循環運転する。循環運転の際に、給水ポンプ3A、3Bの流量が大きくなりすぎないよう、オリフィス43で流量を制限する。
【0052】
また、プラント通常運転時に、給水ポンプ3A、3Bの動作試験をする場合は、給水ポンプ3A、3Bのいずれかを直流電源30により動作させるとともに、電動弁12を開操作して給水ポンプ3A、3Bから復水貯蔵槽1への流路を確立し、復水貯蔵槽1内の水を循環運転する。循環運転の際に、給水ポンプ3A、3Bの流量が大きくなりすぎないよう、オリフィス11で流量を制限する。
【0053】
(効果)
本実施形態によれば、全交流動力電源喪失事象の発生時に原子炉23に注水する場合も、使用済燃料貯蔵プール9に給水する場合も、同じ既設の給水ポンプ流量計6を用いることから、新規な機器の増設や付帯工事をなくすことができるため、既設の原子力プラントの改造範囲を最小限にすることができる。
また、プラント通常運転時の既設の給水ポンプ3A、3Bの動作試験の際は、直流電源以外の駆動源も期待できるため、電動弁12を直流で駆動させる必要がなくなる。
【0054】
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係る原子力プラントの給水設備について、
図5を用いて説明する。
なお、上記実施形態に係る給水設備と同一又は類似の構成には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0055】
(構成)
第5の実施形態に係る原子力プラントの給水設備は、原子炉注水配管31の下流側を電動弁21の下流側に接続する構成としている。
【0056】
(作用)
全交流動力電源喪失事象の時に原子炉23に注水する場合、直流電源30により給水ポンプ3A、3Bの両方又はいずれかを動作させるとともに、電動弁33を開操作することで、給水ポンプ3A、3Bから原子炉23までの流路を確立し、復水貯蔵槽1内の水を原子炉23に移送する。
【0057】
(効果)
本実施形態によれば、新設する電動弁の個数を一つ削減できるので、既設の原子力プラントの改造範囲を低減できる。
なお、上述した説明において非常用水源として復水貯蔵槽を用いた例について説明しているが、建屋内に設けるプール式の水源である復水貯蔵槽以外に、屋外にタンクで設ける水源である復水貯蔵タンク等においても同様に非常用水源として活用することが可能である。
【0058】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
1…復水貯蔵槽(非常用水源)、2…復水貯蔵槽出口配管(非常用水源出口配管)、3A、3B…給水ポンプ、4A、4B…逆止弁、5…プール給水配管、6…給水ポンプ流量計、8…電動弁、9…使用済燃料貯蔵プール、10…試験配管、11…オリフィス、12…電動弁、13A、13B…非常用ディーゼル発電機、14…サプレッションプール、15…配管、16…残留熱除去系ポンプ、17…逆止弁、19…流量計、20…原子炉注水配管、21…電動弁、22…逆止弁、23…原子炉、24…配管、25、26…手動止め弁、27…試験配管、28…オリフィス、29…電動弁、30…直流電源(蓄電池)、31…原子炉注水配管、32…原子炉注水流量計、33…電動弁、34…逆止弁、35…バイパス配管、36、37…電動弁、38…試験配管、39…オリフィス、40…電動弁、41…積算流量計、42…給水ポンプ最小流量配管、43…オリフィス、44…電動弁、45…最小流量配管、46…逆止弁、47…オリフィス、48…電動弁