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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20231225BHJP
   B60G 7/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
F16F15/08 C
B60G7/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020073111
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021169841
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】前田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】横田 泰孝
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-317843(JP,A)
【文献】特開平07-269632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
B60G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部及び振動受部の何れか一方に連結される第1部材と、
振動発生部及び振動受部の何れか他方に連結される第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材を連結し振動発生時に変形して振動を吸収する弾性体と、
前記第1部材と前記第2部材とに設けられ前記第1部材と前記第2部材との相対変位によって間隔が変化する一対の対向部分と、
前記一対の対向部分の一方に設けられ、少なくとも一部が弾性材料で形成されて前記一対の対向部分の他方に向けて突出する弾性突起部と、
前記一対の対向部分の一方における前記弾性突起部の頂部の基部側に設けられ前記一方から前記他方に向けて突出する突起と、
を有する防振装置であり、
さらに、前記防振装置は、複数の前記弾性突起部と、突出高さが異なる複数の前記突起と、を有する防振装置。
【請求項2】
前記一方は内筒であり、
前記他方は、前記内筒の外側に配置される外筒であり、
前記弾性体は、前記外筒と前記内筒との間に介在しており、
前記一対の対向部分の一方は、前記外筒の軸方向端部に形成される前記内筒の軸方向端部よりも軸方向外側に配置されるフランジ部であり、
前記一対の対向部分の他方は、前記フランジ部と対向して配置され前記内筒の軸方向端部に連結されるストッパ部材であり、
前記弾性突起部、及び前記突起は、前記フランジ部に設けられている、
請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記突起が設けられた前記第1部材または前記第2部材は、金属材料からなる鋳造品である、請求項1または請求項2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記突起は、前記対向部分の一部分を他の部分よりも厚くすることで構成している、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外筒と内筒との相対変位を抑制する構成を備えた防振装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-202722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一例として、特許文献1の図1~3に示す構造を有した防振装置では、外筒と内筒との過大な相対変位を抑制するために、ゴムからなる凸状のストッパ部材面(36,38)が設けられている。
【0005】
また、特許文献1の図12、13に示す構造を有した防振装置では、ストッパ部材用のゴム(68)と対向する位置に、凸状の被当接面(64,65)が設けられ、ストッパ部材用のゴム(68)には、凸状の被当接面(64,65)と対向する位置に、凹状のストッパ部材面(36,38)が設けられている。
【0006】
いずれの例においても、相対変位がある程度以上に大きくなった場合にストッパ部材用のゴムを圧縮させ、防振装置のばね定数を大きくすることで該相対変位が過大にならないように該相対変位を抑制している。
【0007】
しかしながら、特許文献1の図1~3に示す構造を有した防振装置のように、ストッパ部材面(36,38)のゴムだけでばね定数を高くするには、ストッパ部材面(36,38)の面積を大きくする必要があり、ストッパ部材面(36,38)を大きくするためのスペースが必要であり、防振装置の大型化につながるため改善の余地があった。
【0008】
また、図12、13に示す構造を有する防振装置では、防振装置組み立てる際に、凸状の被当接面(64,65)と凹状のストッパ部材面(36,38)とを位置合わせする必要があり、組立の作業性に改善に余地があった。
本発明は上記事実を考慮し、大入力時の高ばね化を図るにあたって、サイズが大型化することを抑制し、かつ組立時の作業性を改善することが可能な防振装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の防振装置は、振動発生部及び振動受部の何れか一方に連結される第1部材と、振動発生部及び振動受部の何れか他方に連結される第2部材と、前記第1部材と前記第2部材を連結し振動発生時に変形して振動を吸収する弾性体と前記第1部材と前記第2部材とに設けられ前記第1部材と前記第2部材との相対変位によって間隔が変化する一対の対向部分と、前記一対の対向部分の一方に設けられ、少なくとも一部が弾性材料で形成されて前記一対の対向部分の他方に向けて突出する弾性突起部と、前記一対の対向部分の一方における前記弾性突起部の頂部の基部側に設けられ前記一方から前記他方に向けて突出する突起と、を有する。
【0010】
請求項1に記載の防振装置では、振動により第1部材と第2部材とが相対変位すると、第1部材と第2部材との間に設けられた弾性体が弾性変形し、振動を吸収する。
第1部材と第2部材との相対変位が大きくなり、一対の対向部分の一方に設けられた弾性突起部の弾性材料が、一対の対向部分の他方に当接して弾性変形(ここでは圧縮変形)するようになると、防振装置のばね定数としては、第1部材と第2部材との間の弾性体のばね乗数と、弾性突起部のばね定数とが足されるため(ばねとしては並列接続)、弾性体のみが弾性変形する場合に比較して高くなる。
【0011】
このように、第1部材と第2部材との相対変位が大きくなると防振装置のばね定数を高くすることができ、これにより第1部材と第2部材との過大な相対変位を抑制することができる。
【0012】
ここで、弾性突起部のばね定数を高くする方法として、弾性突起部の接触面積を大きくすることが考えられるが、接触面積を大きくするには大きなスペースが必要であり、防振装置が大型化する。
【0013】
これに対し、請求項1の防振装置では、弾性突起部の頂部に下方に、突起が設けられているので、弾性突起部の圧縮方向に占める弾性材料の割合が少なくなり、全体を弾性材料で構成した場合に比較して、接触面積を大きくせずに、ばね定数を高くすることができる。即ち、突起の高さを高くすることでばね定数を高くすることができる。また、突起の高さを調整することで弾性突起部のばね定数を容易に調整することができる。
【0014】
また、一対の対向部の一方に設けられた弾性突起部は、第1部材と第2部材とが相対変位したときに、頂部が一対の対向部の他方に当たるように設けられていればよく、弾性突起部の位置に合わせて一対の対向部の他方を凹凸させる必要は無い。一例として、弾性突起部と対向する一対の対向部の他方表面に凹部等を設ける必要がない。したがって、弾性突起部と一対の対向部の他方に設けた凹部とを位置合わせする必要が無く、防振装置の組立作業は容易となる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の防振装置において、前記一方は内筒であり、前記他方は、前記内筒の外側に配置される外筒であり、前記弾性体は、前記外筒と前記内筒との間に介在しており、前記一対の対向部分の一方は、前記外筒の軸方向端部に形成される前記内筒の軸方向端部よりも軸方向外側に配置されるフランジ部であり、前記一対の対向部分の他方は、前記フランジ部と対向して配置され前記内筒の軸方向端部に連結されるストッパ部材であり、前記弾性突起部、及び前記突起は、前記フランジ部に設けられている。
【0016】
請求項2に記載の防振装置では、振動により内筒と外筒とが軸方向に相対変位することで、弾性体が弾性変形する。
【0017】
内筒と外筒との相対変位が大きくなり、外筒のフランジ部に設けられた弾性突起部が、内筒に設けられたストッパ部材に当接して弾性変形(ここでは圧縮変形)するようになると、防振装置のばね定数としては、内筒と外筒との間の弾性体のばね乗数と、弾性突起部のばね定数とが足されるため(ばね系としては並列接続)、弾性体のみが弾性変形する場合に比較して高くなる。
【0018】
このように、内筒と外筒との軸方向の相対変位が大きくなると防振装置のばね定数を高くすることができ、これにより内筒と外筒との軸方向の過大な相対変位を抑制することができる。
【0019】
また、弾性突起部は、内筒と外筒とが軸方向に相対変位したときに、頂部がストッパ部材に当たるように設けられていればよく、弾性突起部の位置に合わせてストッパ部材部を凹凸させる必要は無い。一例として、弾性突起部と対向するストッパ部材部の表面に凹部等を設ける必要がなく、弾性突起部とストッパ部材部に設けた凹部とを位置合わせする必要が無く、防振装置の組立作業は容易となる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の防振装置において、複数の前記弾性突起部と、突出高さが異なる複数の前記突起と、を有する。
【0021】
請求項3に記載の防振装置では、高さの異なる複数の突起が一対の対向部分の一方に設けられている。突起と重なっている弾性突起部において、突起の高さを高くすることで、弾性突起部のばね定数を高くすることができ、突起の高さを低くすることで、弾性突起部のばね定数を低くすることができる。このように、突起の高さを変更することで、弾性材料の硬さを変えたりすることなく、弾性突起部のばね定数を簡単にチューニングすることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の防振装置において、前記突起が設けられた前記第1部材または前記第2部材は、金属材料からなる鋳造品である。
【0023】
請求項4に記載の防振装置では、突起が設けられた第1部材または第2部材を金属材料からなる鋳造品とすることで、対向部、及び対向部に設けた突起を第1部材または第2部材に対して一体的に形成することができ、強度を必要とし、かつ複雑な形状とされた第1部材または第2部材を容易に形成することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の防振装置において、前記突起は、前記対向部分の一部分を他の部分よりも厚くすることで構成している。
【0025】
請求項5に記載の防振装置では、対向部分の一部分を他の部分よりも厚くすることで突起を構成しているので、突起を別部材として製造して対向部分に取り付ける場合に比較して、防振装置の組立作業が容易となり、かつ高い強度を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明に係る防振装置は、大入力時の高ばね化を図るにあたって、サイズが大型化することを抑制し、かつ組立時の作業性を改善することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る防振装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る防振装置を示す断面図(図3の2-2線断面図)である。
図3】本発明の実施形態に係る防振装置の弾性体、第1弾性突起部、及び第2弾性突起部を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る防振装置の外側部材を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る防振装置の第1弾性突起部、及び第2弾性突起部を示す断面図である。
図6】他の実施形態に係る第1弾性突起部、及び第2弾性突起部を示す断面図である。
図7】他の実施形態に係る防振装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施形態]
以下、図1図5を用いて、本発明の一実施形態としての防振装置10について説明する。
【0029】
ここで、図中矢印DAは防振装置10の装置軸方向を示し、矢印DRは防振装置10の装置径方向を示し、矢印DCは防振装置10の装置周方向を示す。
【0030】
本実施形態の防振装置10は、装置軸方向DAが車両(図示省略)の上下方向と略同一となるように車両に配置され、装置径方向DRが車両(図示省略)の車両前後方向や車幅方向を含む車両水平方向と略同一となるように車両に配置されている。
【0031】
一般に車両の走行時には、エンジン、モーター等の主機の回転や路面上の凹凸に起因する振動が発生する。このため、これらの振動が車体に伝わらないようにするため、防振装置10が車両に設けられている。
【0032】
図1、及び図2には、車体(図示省略)に取り付けるための金属製のブラケット14と、本体部16とを含んで構成された防振装置10が示されている。
防振装置10の本体部16は、ブラケット14と一体で形成された外側部材18と、本体部16の装置径方向の内側部分(中央部分)に配置された金属製の内筒20と、を備えている。また、防振装置10は、外側部材18の内側面と内筒20の外側面の間に、一例としてゴム等の弾性体22が介在している。なお、弾性体22は、外側部材18と内筒20とに加硫接着されている。
【0033】
本実施形態の内筒20は、一例として、鋼材等で形成されており、一定径の円筒形状である。
本実施形態の外側部材18を有するブラケット14は、一例として、アルミニウム合金からなるダイカストである。外側部材18は、一定径の円筒部18Aを備え、円筒部18Aの軸方向両端部には、径方外側へ延びるフランジ部18Bが一体的に形成されている。なお、このフランジ部18Bは、一対の対向部の一方の一例である。
【0034】
本実施形態の外側部材18を有するブラケット14は、アルミニウム合金等の材料からなるダイカストであるが、鋳造品であってもよく、また、用いる材料は鉄等のアルミニウム合金以外の金属材料であってもよい。
【0035】
図2に示されるように、防振装置10は、例えば、ブラケット14がエンジン、モーター等の主機(図示省略)に固定されると共に、本体部16が本体部16の下端側(車両下方側)に配置されたサスペンションメンバ28等の車体を構成する部材にボルト32で締結されている。なお、固定された防振装置10は、内筒20の軸方向が上下方向とされている。
【0036】
内筒20の上端側、及び下端側には、全体形状が平面視で円板状に形成されると共に径方向中央部に取付孔24Aを備え、内筒20の外側部材18に対する変位を規制する平板状のストッパ部材30が載置されている。なお、このストッパ部材30は、一対の対向部の一方の一例である。
【0037】
サスペンションメンバ28は、下側に配置されるストッパ部材30の装置下方側に配置され、上側のストッパ部材30側から装置軸方向に沿って上側のストッパ部材30の取付孔30A、内筒20の中空孔20A、及び下側のストッパ部材30の取付孔30Aへ挿通されたボルト32を介して本体部16とボルト締結されている。これにより、主機において生じた振動が本体部16の弾性体22で吸収(減衰)され、車体に伝達しないように構成されている。
【0038】
ボルト締結部26には、ボルト(図示省略)を挿通するための取付孔26Aが各々形成されている。また、ボルト締結部26には、取付孔26Aに挿通されるボルトの頭部を配置できるように窪み部26Bが形成されている。
【0039】
外側部材18と内筒20に介在された弾性体22は、内筒20の軸方向両側の一部分がフランジ部18Bの径方向外側端に向けて延設されている。
【0040】
(弾性突起部)
図4に示すように、フランジ部18Bの軸方向外側面には、外側部材18の軸方向外側へ向けて突出する複数個(本実施形態では4個)の突起34が、周方向に間隔を開けてフランジ部18Bと一体的に形成されている。なお、本実施形態の突起34は、外側部材18とは別部品として形成したものをネジ止め、溶接、ロー付け、その他の方法でフランジ部18Bに固着したものであってもよい。
【0041】
本実施形態の突起34は、頂面34Aが平坦に形成されている。また、本実施形態では、これら複数の突起34は、全てが同じ高さに形成されている。
【0042】
図1図3に示すように、フランジ部18Bの軸方向外側面には、第1弾性突起部36、及び第2弾性突起部38が設けられている。
【0043】
第1弾性突起部36は、弾性体22の一部の弾性材料が延設されて形成されたものであり、全体が弾性体22と同じ弾性材料で構成されている。
【0044】
第2弾性突起部38は、下側部分がフランジ部18Bと一体的に形成された突起34で構成され、その上側部分が弾性体22の一部の弾性材料が延設されて構成されている。即ち、第2弾性突起部38は、金属材料で形成された下側部分と弾性体22と同じ弾性材料で形成された上側部分とを有している。
【0045】
図5に示すように、防振装置10の組立前の状態では、第2弾性突起部38は、第1弾性突起部36よりも低い。
図2に示すように、防振装置10の組付け状態では、内筒20の軸方向両側に配置されたストッパ部材30が、ボルト32、ナット40を用いて内筒20の軸方向端部に固定されており、第1弾性突起部36の頂部はストッパ部材30に接触しており、第2弾性突起部38の頂部は、ストッパ部材30から離間している。言い換えれば、第2弾性突起部38の頂部とストッパ部材30との間に隙間Sが設けられている。
【0046】
(作用、効果)
次に、本実施形態に係る防振装置10の作用並びに効果について説明する。
本実施形態に係る防振装置10によれば、一例として主機が上下方向に振動すると、該振動は、ブラケット14の外側部材18、弾性体22、内筒20を介してサスペンションメンバ28に伝達され、また、ブラケット14の外側部材18、第1弾性突起部36、ストッパ部材30、内筒20を介してサスペンションメンバ28に伝達され、弾性体22、及び第1弾性突起部36が弾性変形して振動が吸収される。
【0047】
因みに、振動の振幅が比較的小さい、言い換えると外側部材18と内筒20との軸方向の相対変位が小さく、第2弾性突起部38がストッパ部材30に当接しない場合の防振装置10のばね定数は、弾性体22のばね乗数と、第1弾性突起部36のばね定数とが足されたばね定数(ばねとしては並列接続)となっている。
【0048】
振動の振幅が大きくなる、言い換えると、外側部材18と内筒20との軸方向の相対変位が大きくなり、ストッパ部材30に当接した第2弾性突起部38が弾性変形(圧縮変形)するようになると、防振装置10のばね定数は、弾性体22のばね乗数と、第1弾性突起部36のばね定数と、第2弾性突起部38のばね定数とが足されたばね定数となるため、防振装置10のばね定数は第2弾性突起部38が当たる前よりも高くなる。
【0049】
このようにして、本実施形態の防振装置10では、外側部材18と内筒20との軸方向の相対変位が大きくなることでばね定数を高めることができ、防振装置10に過大な荷重(力)が作用した場合の外側部材18と内筒20との過大な相対変位を抑制することができる。
【0050】
なお、第2弾性突起部38では、突起34の高さを変更することで、第2弾性突起部38のばね定数を変更することができる。例えば、突起34の高さを高くすると、相対的にゴム材料の部分の高さ寸法(ゴム材料が圧縮される軸方向の寸法)が小さくなり、第2弾性突起部38のばね定数は高くなる。一方、突起34の高さを低くすると、相対的にゴム材料の部分の高さ寸法が大きくなり、ばね定数は低くなる。
【0051】
このように、突起34の高さを変更して第2弾性突起部38のばね定数を変更することで、防振装置10のばね定数を変更すること、即ち、ばね定数のチューニングを行うことができる。したがって、第2弾性突起部38のばね定数を高めるために、第2弾性突起部38の弾性材料の接触面積を増やす必要がなく、これにより防振装置10を大型化させることなく、防振装置10のばね定数をチューニングすることができる。
【0052】
第2弾性突起部38は、外側部材18と内筒20とが軸方向に相対変位したときに、頂部がストッパ部材30に当たるように設けられていればよく、第2弾性突起部38の位置に合わせてストッパ部材30を凹凸させる必要は無い。一例として、第2弾性突起部38と対向するストッパ部材30の表面に凹部等を設ける必要がない。したがって、第2弾性突起部38とストッパ部材30に設けた凹部とを位置合わせする必要が無く、防振装置10の組立作業が容易となる。
【0053】
本実施形態の防振装置10では、外側部材18を備えたブラケット14をダイキャストとしているので、フランジ部18B、フランジ部18Bに設けた突起34等を一体的に形成することができ、強度を必要とし、かつ複雑な形状とされた外側部材18を備えたブラケット14を容易に形成することができる。
【0054】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0055】
以下に、防振装置10の上記実施形態とは異なるばね定数のチューニング方法の一例を説明する。
【0056】
上記実施形態では、フランジ部18Bに形成した突起34の高さが全て同じであったが、図6に示すように、高さの異なる複数の突起34が設けられていてもよい。
【0057】
上記実施形態では、フランジ部18Bに高さの異なる2種類の弾性突起部(第1弾性突起部36、第2弾性突起部38)を設けたが、本発明はこれに限らず、高さの異なる3種類以上の弾性突起部を設けてもよい。これによって、ばね定数を更に細かくチューニングすることができる。
【0058】
上記実施形態では、フランジ部18Bに高さの異なる2種類の弾性突起部を設けたが、本発明はこれに限らず、複数の弾性突起部の高さを全て同じにしてもよい。
【0059】
上記実施形態では、振動吸収用の弾性体22が外側部材18と内筒20とに加硫接着されていたが、本発明はこれに限らず、図7に示すように、弾性体22を内筒20と外筒42とに加硫接着した防振装置本体としてのアッセンブリを、ブラケット14に形成した孔44に挿入して固定した構成をとることもできる。なお、図7に示す防振装置10では、外筒42に形成されたフランジ部42Aに突起34が設けられている。
【0060】
なお、本発明の適用例として、エンジン等の主機の振動を吸収する防振装置10について説明したが、これに限らず、本発明は、車両以外に設けられた防振装置に適用されてもよい。
【0061】
本実施形態の防振装置10は、弾性体22のみで振動を吸収するタイプの防振装置であったが、液体封入式の防振装置等、他の構成の防振装置であってもよい。
【0062】
本実施形態の防振装置10は、筒状の外側部材18、内筒20、及び弾性体22等を含んで構成されているが、振動発生部及び振動受部の何れか一方に連結される第1部材と、振動発生部及び振動受部の何れか他方に連結される第2部材と、第1部材と第2部材とに設けられ、第1部材と第2部材との相対変位によって、間隔が変化する一対の対向部分と、一対の対向部分の一方に設けられ、少なくとも一部が弾性材料で形成されて一対の対向部分の他方に向けて突出する弾性突起部と、弾性突起部の頂部の下方に設けられ一方から他方に向けて突出する突起と、を備えていればよく、防振装置10を構成する部品の形状は、上記実施形態のものに限らない。また、防振装置10には、上記以外の構成が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
12…防振装置、18…外側部材(第1部材、又は第2部材)、18B…フランジ部(対向部分の他方)、20…内筒(第2部材、又は第1部材)、22…弾性体、28…サスペンションメンバ(振動受部)、30…ストッパ部材(対向部分の一方、又は対向部分の他方)、34…突起、38…第2弾性突起部、42…外筒、42A…フランジ部(対向部分の他方、又は対向部材の一方)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7