(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】乗り物用シート及びトリムカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20231225BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20231225BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20231225BHJP
B68G 7/10 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B60N2/58
B68G7/05 B
A47C31/02 J
B68G7/10
(21)【出願番号】P 2020073127
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 昌和
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067162(JP,A)
【文献】特開平10-309218(JP,A)
【文献】実開昭62-116999(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58
B68G 7/05
A47C 31/02
B68G 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバックを備える乗り物用シートであって、
前記シートクッションのシートパッドと前記シートバックのシートパッドとを覆う袋状のトリムカバーを有し、
前記トリムカバーは、前記シートクッションの側面又は前記シートバックの側面を形成する第一カバー部材と、
前記シートクッションの座面又は前記シートバックの背もたれ面を形成する第二カバー部材と、前記第一カバー部材及び前記第二カバー部材の間に配置された少なくとも1つの
帯状の第三カバー部材と
が縫合部によって縫合されて形成されており、
前記第二カバー部材の縫い代の一部は、前記トリムカバーの内側に折り返された構成となっており、
前記第二カバー部材の縫い代のうちの前記第一カバー部材側に位置する部分を第二カバー非折り返し部とし、前記第二カバー部材の縫い代のうちの前記第一カバー部材と反対側に位置する部分を第二カバー折り返し部とし、
前記第三カバー部材は、前記トリムカバーの内側に両端が向く状態にて折り返された構成となっており、
前記第三カバー部材のうちの前記第一カバー部材側に位置する部分を第三カバー非折り返し部とし、前記第三カバー部材のうちの前記第二カバー部材側に位置する部分を第三カバー折り返し部とし、
前記縫合部は、
前記第三カバー非折り返し部と前記第一カバー部材の縫い代を縫合する第一シームと、
前記第三カバー非折り返し部、前記第三カバー折り返し部、前記第二カバー非折り返し部、及び前記第一カバー部材の縫い代を縫合する第二シームと、
前記第三カバー非折り返し部、前記第三カバー折り返し部、前記第二カバー非折り返し部、前記第二カバー折り返し部、及び前記第一カバー部材の縫い代を縫合する第三シームと、を含み、
前記第三カバー部材は、前記第一シームにおいて折り返されており、
前記第二カバー部材は、前記第二シームにおいて折り返されており、
前記第二シームは、前記第一シームよりも前記第一カバー部材の縫い代の縁側に設けられ、
前記第三シームは、前記第二シームよりも前記縁側に設けられて
おり、
前記第三カバー部材における前記第二シームよりも前記第一シーム側の部分は、前記縫合部に沿う空芯構造となっている乗り物用シート。
【請求項2】
請求項1記載の乗り物用シートであって、
前記縫合部は、前記第二シームよりも前記第一カバー部材の縫い代の縁側において、前記第三カバー非折り返し部及び前記第三カバー折り返し部と前記第一カバー部材とを縫合する第四シームを更に含む乗り物用シート。
【請求項3】
請求項2記載の乗り物用シートであって、
前記第三シームは、前記第二シームと前記第四シームの間にある乗り物用シート。
【請求項4】
請求項2又は3記載の乗り物用シートであって、
前記トリムカバーによって覆われるシートパッドと、
前記シートパッドの溝部に取り付けられる、前記トリムカバーに設けられた吊り込み部材と、を備え、
前記吊り込み部材は、前記第一カバー部材の縫い代における前記第三カバー部材側と反対側の面に、前記第二シーム、前記第三シーム、及び前記第四シームのいずれかによって縫合されている乗り物用シート。
【請求項5】
シートクッションとシートバックを備える乗り物用シートの、前記シートクッションのシートパッドと前記シートバックのシートパッドとを覆う袋状のトリムカバーの製造方法であって、
前記トリムカバーは、前記シートクッションの側面又は前記シートバックの側面を形成する第一カバー部材と、
前記シートクッションの座面又は前記シートバックの背もたれ面を形成する第二カバー部材と、前記第一カバー部材及び前記第二カバー部材の間に配置された少なくとも1つの
帯状の第三カバー部材と
が縫合部によって縫合されて形成されており、
前記第一カバー部材の縫い代に前記第三カバー部材を縫合して第一シームを形成し、前記第一シームにおいて前記第三カバー部材を前記縫い代の縁側に折り返す第一工程と、
前記第一シームよりも前記縫い代の縁側において、前記第三カバー部材の前記第一カバー部材側の部分である第三カバー非折り返し部と、前記第三カバー部材の前記第二カバー部材側の部分である第三カバー折り返し部と、前記第二カバー部材と、前記第一カバー部材の縫い代とを縫合して第二シームを形成し、前記第二シームにおいて前記第二カバー部材を前記縫い代の縁側に折り返す第二工程と、
前記第二シームよりも前記縫い代の縁側において、前記第三カバー非折り返し部と、前記第三カバー折り返し部と、前記第二カバー部材の前記第一カバー部材側の部分である第二カバー非折り返し部と、前記第二カバー部材の前記第一カバー部材側と反対側の部分である第二カバー折り返し部と、前記第一カバー部材の縫い代とを縫合して第三シームを形成する第三工程と、を備え、
前記第三カバー部材における前記第二シームよりも前記第一シーム側の部分は、前記縫合部に沿う空芯構造となっているトリムカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用シート及びトリムカバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、芯材を介してトリムカバー片の端末を縫製して形成されたトリムカバーでシートパッドを覆ってシートの表皮としたシートの表皮構造において、トリムカバー片が芯材を挟んで縫製された第1の縫製部と、トリムカバー片の端末を第1の縫製部でトリムカバー裏面に折り返し、重ねられた部分でトリムカバー片が縫製された第2の縫製部と、を備えたシートの表皮構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、3つ以上の部材(2枚のトリムカバー片と芯材)を同時に縫合する場合には、押さえ付けと位置合わせのための治具といった特殊な器具が必要になったり、縫合箇所毎に針の交換が必要になったりする等して、トリムカバーの製造工程が煩雑となる可能性がある。また、3つ以上の部材を縫合する際には、その縫合部における厚みを抑制して、縫合部付近に接触した際の感触を自然なもの(違和感のないもの)とすることが求められる。
【0005】
本発明の目的は、縫合作業を簡易なものとしながら、違和感のない感触を利用者に与えることのできる乗り物用シートとトリムカバーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の乗り物用シートは、複数のカバー部材が縫合されて形成されたトリムカバーを有する乗り物用シートであって、前記複数のカバー部材は、第一カバー部材と、第二カバー部材と、前記第一カバー部材及び前記第二カバー部材の間に配置された少なくとも1つの第三カバー部材と、を含み、前記第一カバー部材、前記第二カバー部材、及び前記第三カバー部材を縫合する縫合部を備え、前記第二カバー部材の縫い代の一部は、前記トリムカバーの内側に折り返された構成となっており、前記第二カバー部材の縫い代のうちの前記第一カバー部材側に位置する部分を第二カバー非折り返し部とし、前記第二カバー部材の縫い代のうちの前記第一カバー部材と反対側に位置する部分を第二カバー折り返し部とし、前記第三カバー部材は、前記トリムカバーの内側に両端が向く状態にて折り返された構成となっており、前記第三カバー部材のうちの前記第一カバー部材側に位置する部分を第三カバー非折り返し部とし、前記第三カバー部材のうちの前記第二カバー部材側に位置する部分を第三カバー折り返し部とし、前記縫合部は、前記第三カバー非折り返し部と前記第一カバー部材の縫い代を縫合する第一シームと、前記第三カバー非折り返し部、前記第三カバー折り返し部、前記第二カバー非折り返し部、及び前記第一カバー部材の縫い代を縫合する第二シームと、前記第三カバー非折り返し部、前記第三カバー折り返し部、前記第二カバー非折り返し部、前記第二カバー折り返し部、及び前記第一カバー部材の縫い代を縫合する第三シームと、を含み、前記第三カバー部材は、前記第一シームにおいて折り返されており、前記第二カバー部材は、前記第二シームにおいて折り返されており、前記第二シームは、前記第一シームよりも前記第一カバー部材の縫い代の縁側に設けられ、前記第三シームは、前記第二シームよりも前記縁側に設けられているものである。
【0007】
本発明の一態様のトリムカバーの製造方法は、複数のカバー部材が縫合されて形成されたトリムカバーの製造方法であって、前記複数のカバー部材は、第一カバー部材と、第二カバー部材と、前記第一カバー部材及び前記第二カバー部材の間に配置された少なくとも1つの第三カバー部材と、を含み、前記第一カバー部材の縫い代に前記第三カバー部材を縫合して第一シームを形成し、前記第一シームにおいて前記第三カバー部材を前記縫い代の縁側に折り返す第一工程と、前記第一シームよりも前記縫い代の縁側において、前記第三カバー部材の前記第一カバー部材側の部分である第三カバー非折り返し部と、前記第三カバー部材の前記第二カバー部材側の部分である第三カバー折り返し部と、前記第二カバー部材と、前記第一カバー部材の縫い代とを縫合して第二シームを形成し、前記第二シームにおいて前記第二カバー部材を前記縫い代の縁側に折り返す第二工程と、前記第二シームよりも前記縫い代の縁側において、前記第三カバー非折り返し部と、前記第三カバー折り返し部と、前記第二カバー部材の前記第一カバー部材側の部分である第二カバー非折り返し部と、前記第二カバー部材の前記第一カバー部材側と反対側の部分である第二カバー折り返し部と、前記第一カバー部材の縫い代とを縫合して第三シームを形成する第三工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、縫合作業を簡易なものとしながら、違和感のない感触を利用者に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の乗り物用シートの一実施形態である自動車用シート1の概略構成を示す外観模式図である。
【
図2】
図1に示す第一カバー部材21、第二カバー部材22、及び第三カバー部材23の縫合部の構成を模式的に示した斜視図である。
【
図3】
図1に示す第一カバー部材21、第二カバー部材22、及び第三カバー部材23の縫合部の構成を模式的に示した側面図である。
【
図4】
図1に示す第一カバー部材21、第二カバー部材22、及び第三カバー部材23の縫合工程を説明するための模式図である。
【
図5】
図1に示す第一カバー部材21、第二カバー部材22、及び第三カバー部材23の縫合工程を説明するための模式図である。
【
図6】
図1に示すトリムカバー20の第一変形例を示す模式図である。
【
図7】
図1に示すトリムカバー20の第二変形例を示す模式図である。
【
図8】
図1に示す自動車用シート1の変形例である自動車用シート1Aの概略構成を示す外観模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(乗り物用シートの構成)
図1は、本発明の乗り物用シートの一実施形態である自動車用シート1の概略構成を示す外観模式図である。
図1に示すように、自動車用シート1は、正規の姿勢で着座した利用者の臀部及び大腿部を支持するシートクッション2と、正規の姿勢で着座した利用者の腰部及び背部を支持するシートバック3と、を備える。
【0011】
シートクッション2は、図示省略のシートフレームと、スポンジ又はウレタン樹脂等で構成されたシートパッド24と、これらシートフレーム及びシートパッド24を覆うトリムカバー20と、を備える。
【0012】
シートバック3は、図示省略のシートフレームと、スポンジ又はウレタン樹脂等で構成されたシートパッド34と、これらシートフレーム及びシートパッド34を覆うトリムカバー30と、を備える。
【0013】
トリムカバー20とトリムカバー30は、それぞれ、複数のカバー部材が縫合されて形成された袋状のカバーである。カバー部材としては、例えば皮革(天然皮革、合成皮革)又は布帛(織物、編物、不織布)が用いられる。カバー部材は、皮革又は布帛の単層構造であってもよいし、皮革又は布帛を表地として、皮革又は布帛にワディング(例えば弾性変形可能な軟質ポリウレタンフォームなどの樹脂発泡体)が積層された多層構造であってもよい。
【0014】
トリムカバー20は、シートクッション2の側面を形成する第一カバー部材21と、シートクッション2の座面を形成する第二カバー部材22と、第一カバー部材21と第二カバー部材22の境界(以下、縫合ラインと記載)に沿って第一カバー部材21と第二カバー部材22の間に形成された第三カバー部材23と、を備え、これらが後述の縫合部50(
図2及び
図3参照)によって縫合されている。
【0015】
トリムカバー30は、シートバック3の側面を形成する第一カバー部材31と、シートバック3の背もたれ面を形成する第二カバー部材32と、第一カバー部材31と第二カバー部材32の境界に沿って第一カバー部材31と第二カバー部材32の間に形成された第三カバー部材33と、を備え、これらが縫合部によって縫合されている。
【0016】
第一カバー部材21、第二カバー部材22、第一カバー部材31、及び第二カバー部材32は、それぞれ、複数のカバー部材を縫合して形成したものであってもよいし、単一のカバー部材で形成されたものであってもよい。
【0017】
なお、第一カバー部材21、第二カバー部材22、及び第三カバー部材23の縫合部50の構成は、第一カバー部材31、第二カバー部材32、及び第三カバー部材33の縫合部の構成と同じである。このため、以下では、縫合部50の構成を説明して、第一カバー部材31、第二カバー部材32、及び第三カバー部材33の縫合部の構成の説明は省略する。
【0018】
(縫合部の構成)
図2及び
図3は、
図1に示す第一カバー部材21、第二カバー部材22、及び第三カバー部材23の縫合部50の構成を模式的に示した図である。
【0019】
第二カバー部材22の縫合ラインLL(
図2参照)側の端部には、縫合ラインLLに沿って、第一カバー部材21及び第二カバー部材22との縫合を行うための帯状の縫い代22A(
図3参照)が設けられている。同様に、第一カバー部材21の縫合ラインLL側の端部には、縫合ラインLLに沿って、第二カバー部材22及び第三カバー部材23との縫合を行うための帯状の縫い代21Aが設けられている。
図3の左右方向が、縫い代21A及び縫い代22Aの各々の幅方向である。
【0020】
第二カバー部材22の一方の面であるおもて面22aは、トリムカバー20の外表面を構成する面である。第二カバー部材22の他方の面であるうら面22bは、トリムカバー20の内表面(シートパッド24側の面)を構成する面である。第一カバー部材21の一方の面であるおもて面21aは、トリムカバー20の外表面を構成する面である。第一カバー部材21の他方の面であるうら面21bは、トリムカバー20の内表面を構成する面である。
【0021】
第二カバー部材22の縫い代22Aは、縁22Eがトリムカバー20の内側に向く状態にて第一カバー部材21側に折り返された構成、換言すると、縫合ラインLLに沿う折り返し線(後述の第二シームSM2に相当)を境に2つ折りされた構成となっている。第二カバー部材22の縫い代22Aは、第一カバー部材21側に位置する部分である非折り返し部22Bと、第一カバー部材21と反対側に位置する部分である折り返し部22Cと、を含む構成となっている。
【0022】
第三カバー部材23は、縫合ラインLLに沿って延びる帯状に構成された部材である。第三カバー部材23は、トリムカバー20の内側(シートパッド24が配置される領域側)に両端23Eが向く状態にて折り返された構成、換言すると、縫合ラインLLに沿う折り返し線(後述の第一シームSM1に相当)を境に2つ折りされた構成となっている。第三カバー部材23は、第一カバー部材21側に位置する部分である非折り返し部23Bと、第一カバー部材21と反対側に位置する部分である折り返し部23Aと、を含む構成となっている。
【0023】
縫合部50は、第一シームSM1と、第二シームSM2と、第三シームSM3と、第四シームSM4と、の4つのシームによって構成されている。各シームは、ミシン等によって縫合して得られた縫い目である。
【0024】
第一シームSM1は、第三カバー部材23の非折り返し部23Bと、第一カバー部材21の縫い代21Aと、を縫合している。
【0025】
第二シームSM2は、第二カバー部材22の非折り返し部22Bと、第三カバー部材23の折り返し部23A及び非折り返し部23Bと、第一カバー部材21の縫い代21Aと、を縫合している。
【0026】
第三シームSM3は、第三カバー部材23の折り返し部23A及び非折り返し部23Bと、第二カバー部材22の折り返し部22C及び非折り返し部22Bと、第一カバー部材21の縫い代21Aと、を縫合している。
【0027】
第四シームSM4は、第三カバー部材23の折り返し部23A及び非折り返し部23Bと、第一カバー部材21の縫い代21Aと、を縫合している。
【0028】
第一シームSM1は、第一カバー部材21の縫い代21Aの縁21E(トリムカバー20の内部側先端)から最も離れた位置に設けられている。第二シームSM2は、第一シームSM1よりも縁21E側に設けられている。第三シームSM3は、第二シームSM2よりも縁21E側に設けられている。第四シームSM4は、第三シームSM3よりも縁21E側に設けられている。
【0029】
図4及び
図5は、
図1に示す第一カバー部材21、第二カバー部材22、及び第三カバー部材23の縫合工程を説明するための模式図である。第一カバー部材21、第二カバー部材22、及び第三カバー部材23は、
図4に示す工程ST1、
図4に示す工程ST2、
図5に示す工程ST3、
図5に示す工程ST4の順番に工程が進むことで縫合される。
【0030】
(工程ST1)
工程ST1では、第一カバー部材21の縫い代21Aの縁21Eと、第三カバー部材23の一端とを合わせた状態で、第一カバー部材21のおもて面21aの上に第三カバー部材23を配置する。そして、縫い代21Aに第三カバー部材23を縫合して第一シームSM1を形成する。
図4の例では、第三カバー部材23の幅方向の中心にて第一シームSM1を形成している。
【0031】
(工程ST2)
第一シームSM1の形成後の工程ST2では、第一シームSM1において、第三カバー部材23の他端(縁21E側と反対側の端)を縫い代21Aの縁21E側に折り返す。これにより、略同じ幅の折り返し部23Aと非折り返し部23Bが重なって形成された状態となる。第三カバー部材23を折り返した後、第一シームSM1よりも縁21E側において、第三カバー部材23の非折り返し部23B及び折り返し部23Aと、縫い代21Aと、を縫合して第四シームSM4を形成する。
【0032】
(工程ST3)
第四シームSM4の形成後の工程ST3では、まず、第一カバー部材21の縫い代21Aの縁21Eと、第二カバー部材22の縫い代の縁22Eとを合わせた状態で、第三カバー部材23の折り返し部23Aの上に、第二カバー部材22を配置する。第二カバー部材22は、そのおもて面22aが第三カバー部材23に向く状態にて配置される。続いて、第一シームSM1と第四シームSM4の間の位置において、第三カバー部材23の非折り返し部23B及び折り返し部23Aと、第二カバー部材22の縫い代22Aと、第一カバー部材21の縫い代21Aと、を縫合して第二シームSM2を形成する。
【0033】
(工程ST4)
第二シームSM2の形成後の工程ST4では、第二シームSM2において、第二カバー部材22を縫い代21Aの縁21E側に折り返す。これにより、第二カバー部材22の縫い代22Aは、非折り返し部22Bと折り返し部22Cが重なった状態となる。その後、第二シームSM2と第四シームSM4の間の位置において、第三カバー部材23の折り返し部23A及び非折り返し部23Bと、第二カバー部材22の折り返し部22C及び非折り返し部22Bと、第一カバー部材21の縫い代21Aと、を縫合して、第三シームSM3を形成する。
【0034】
以上の工程を進めることで、第一カバー部材21と第二カバー部材22の間に第三カバー部材23が配置される状態にて、第一カバー部材21、第二カバー部材22、及び第三カバー部材23が縫合される。
【0035】
以上の工程は、1層目のカバー部材の上に2層目のカバー部材を載せて縫合を行う工程、その縫合によって形成したシームを折り返し線として2層目のカバー部材を折り返す工程、折り返した2層目のカバー部材の上に3層目のカバー部材を載せて縫合を行う工程、その縫合によって形成したシームを折り返し線として3層目のカバー部材を折り返す工程、折り返した3層目のカバー部材と、2層目のカバー部材と、1層目のカバー部材を縫合する工程、といった具合に、縫合と折り返しを繰り返すだけの簡易なものとなる。このため、作業に高い熟練度又は特殊な器具は不要となる。
【0036】
(実施形態の効果)
以上のように、自動車用シート1によれば、第一シームSM1と第二シームSM2の間において第三カバー部材23が所定の幅をもって外部に露出することになる。このため、例えば、第三カバー部材23の色又は材質或いはその両方を第一カバー部材21及び第二カバー部材22とは変える等することで、第三カバー部材23によって加飾の効果を得ることができ、シートの外観性能を向上させることができる。
【0037】
また、トリムカバー20の縫合部50付近における第一シームSM1及び第二シームSM2間の厚みは、第一カバー部材21と第三カバー部材23の折り返し部23A及び非折り返し部23Bとを合わせた厚みとなる。この厚みは、トリムカバー20の縫合部50付近における第二シームSM2及び第三シームSM3間の厚みよりも小さくなる。また、トリムカバー20の第一シームSM1よりも第二シームSM2側と反対側(
図3の左側)の厚みは、第一カバー部材21単体の厚みとなり、この厚みは第一シームSM1及び第二シームSM2間の厚みよりも小さくなる。このように、縫合部50付近においては、トリムカバー20の厚みが段階的に減少又は増加することになる。このため、この縫合部50付近に接触したときの感触を違和感のない自然なものとすることができる。また、特殊な器具を使用することなく、汎用的な装置のみで縫合部50の形成が可能である。このため、自動車用シート1の製造コストを下げることができる。
【0038】
また、自動車用シート1では、第三カバー部材23における第二シームSM2よりも第一シームSM1側の部分(外部に露出する部分)は空芯構造となっている。空芯構造とは、筒状に構成された部材の内部に、この部材よりも剛性の高い芯材等を含まない構造を言う。このように、第三カバー部材23の外部に露出する部分が空芯構造となっていることで、この部分に柔軟性を持たせることが可能である。この結果、トリムカバー20の縫合部50付近に接触したときの感触をより自然なものにすることができる。また、この部分が空芯構造となっていることで、この部分の厚みを小さくすることができる。このことからも、トリムカバー20の縫合部50付近に接触したときの感触をより自然なものとすることができる。
【0039】
なお、縫合部50において第四シームSM4は必須ではない。しかし、この第四シームSM4を形成することで、折り返した状態の第三カバー部材23を安定して第一カバー部材21に固定できる。このため、
図5の工程ST3において第二シームSM2を形成する際に、第二カバー部材22の位置合わせを容易にすることができる。また、
図5の工程ST3において第二シームSM2を形成する際に、第三カバー部材23の厚みが抑制されるため、縫合作業も容易に行うことができる。この結果、作業効率を高めて製造コストを下げることができる。
また、第四シームSM4を形成することで、第三カバー部材23の折り返し部23A及び非折り返し部23Bは、3箇所(第二シームSM2、第三シームSM3、第四シームSM4)において第一カバー部材21と縫合されることになる。このため、第三カバー部材23の露出部分の厚みをより小さくすることができ、より自然な感触を与えられるようになる。
【0040】
なお、折り返した状態の第三カバー部材23を安定して第一カバー部材21に固定できるという上記効果を高めるためには、
図3に示した距離L2を、距離L1の1/3以上且つ1/2以下の範囲とすることが好ましい。距離L2は、縫い代21Aの幅方向における、縁21Eからの距離である。距離L1は、縫い代21Aの幅方向における、縁21Eから第一シームSM1までの距離である。
【0041】
縫合部50において、第三シームSM3の位置は、第二シームSM2よりも縁21E側であればよい。例えば、第三シームSM3は、第四シームSM4よりも縁21E側に形成することも可能である。この構成を採用する場合には、第三シームSM3を形成すべき箇所の左右どちらかが自由端となった状態で第三シームSM3を形成することになる。一方、
図3に示したように、第三シームSM3が第二シームSM2と第四シームSM4の間に設けられていると、第三シームSM3を形成すべき箇所の左右が閉じられた状態となる。このため、最も多くの層を縫合する必要のある第三シームSM3の形成を容易に行うことができる。この結果、作業効率を高めて製造コストを下げることができる。
【0042】
また、自動車用シート1によれば、第三カバー部材23の外部に露出する部分の幅L3(
図3参照)と、第二カバー部材22の外部に露出する部分における第三シームSM3よりも第三カバー部材23側の部分の幅L4(
図3参照)を調整することでデザイン性を高めることができる。例えば、幅L3と幅L4を同じとすれば、同じ幅の段差が並ぶことによってデザイン性を向上できる。また、幅L3を幅L4より大きくすることで、装飾ラインを強調することができ、デザイン性を高めることができる。
【0043】
(実施形態の変形例)
ここまでは、トリムカバー20が、第一カバー部材21と第二カバー部材22の間に1つの第三カバー部材23を有する構成とした。しかし、第一カバー部材21と第二カバー部材22の間に複数の第三カバー部材23を設けてもよい。
【0044】
図6は、
図1に示すトリムカバー20の第一変形例を示す模式図である。
図6に示すトリムカバー20は、幅の異なる2つの第三カバー部材23が、第一カバー部材21と第二カバー部材22の間に設けられた構成である。
図6に示したトリムカバー20は次のようにして形成される。
【0045】
幅の大きい
図6中の下側の第三カバー部材23は、2つの第一シームSM1のうちの図中左側の第一シームSM1によって縫い代21Aと縫合された後、縁21E側に折り返されて、2つの第四シームSM4のうちの図中右側の第四シームSM4によって縫い代21Aと縫合される。
【0046】
幅の小さい
図6中の上側の第三カバー部材23は、2つの第一シームSM1のうちの図中右側の第一シームSM1によって下層の第三カバー部材23及び縫い代21Aと縫合された後、縁21E側に折り返されて、2つの第四シームSM4のうちの図中左側の第四シームSM4によって、下層の第三カバー部材23及び縫い代21Aと縫合される。
【0047】
その後、第二カバー部材22が、2つの第三カバー部材23及び縫い代21Aと第二シームSM2によって縫合された後、縁21E側に折り返され、第三シームSM3によって、2つの第三カバー部材23及び縫い代21Aと縫合される。
【0048】
以上の工程により、第二カバー部材22に近い側の第三カバー部材23と第一カバー部材21を縫合する第一シームSM1(
図6の右側の第一シームSM1)が、第二カバー部材22から遠い側の第三カバー部材23と第一カバー部材21を縫合する第一シームSM1(
図6の左側の第一シームSM1)よりも縁21E側に配置された構成となる。
【0049】
このように、第三カバー部材23を2つ設け、2つの第一シームSM1の位置を異なるものとすることで、トリムカバー20の縫合部50近傍における段差の数を
図3の構成に比べて多くできる。これにより、より魅力的な加飾を実現することができる。
【0050】
図7は、
図1に示すトリムカバー20の第二変形例を示す模式図である。
図7に示すトリムカバー20は、幅方向の長さの異なる3つの第三カバー部材23が、第一カバー部材21と第二カバー部材22の間に設けられた構成である。
図7に示したトリムカバー20は次のようにして形成される。
【0051】
幅の最も大きい
図7中の最下層(1層目)の第三カバー部材23は、3つの第一シームSM1のうちの最も左側の第一シームSM1によって縫い代21Aと縫合された後、縁21E側に折り返されて、3つの第四シームSM4のうちの最も右側の第四シームSM4によって縫い代21Aと縫合される。
【0052】
最下層の第三カバー部材23よりも幅が小さい2層目の第三カバー部材23は、3つの第一シームSM1のうちの真ん中の第一シームSM1によって最下層の第三カバー部材23及び縫い代21Aと縫合された後、縁21E側に折り返されて、3つの第四シームSM4のうちの真ん中の第四シームSM4によって、最下層の第三カバー部材23及び縫い代21Aと縫合される。
【0053】
幅が最も小さい
図7中の最上層(3層目)の第三カバー部材23は、3つの第一シームSM1のうちの最も右側の第一シームSM1によって下層の2つの第三カバー部材23及び縫い代21Aと縫合された後、縁21E側に折り返されて、3つの第四シームSM4のうちの最も左側の第四シームSM4によって、下層の2つの第三カバー部材23及び縫い代21Aと縫合される。
【0054】
その後、第二カバー部材22が、3つの第三カバー部材23及び縫い代21Aと第二シームSM2によって縫合された後、縁21E側に折り返され、第三シームSM3によって、3つの第三カバー部材23及び縫い代21Aと縫合される。
【0055】
このように、第三カバー部材23を3つ設け、3つの第一シームSM1の位置を異なるものとすることで、トリムカバー20の縫合部50近傍における段差の数を
図4の構成に比べて多くできる。これにより、より魅力的な加飾を実現することができる。
【0056】
図8は、
図1に示す自動車用シート1の変形例である自動車用シート1Aの概略構成を示す外観模式図である。
図9は、
図8に示す範囲Aの断面模式図である。自動車用シート1Aは、第二カバー部材22の一部が、カバー部材221とカバー部材222とこれらの間のカバー部材223とが縫合されて構成されたものとなっている。カバー部材221とカバー部材222とカバー部材223の縫合部の構成は、縫合部50と同様である。カバー部材221は、第一カバー部材21と同様の構成であり、カバー部材222は、第二カバー部材22と同様の構成であり、カバー部材223は、第三カバー部材23と同様の構成である。
【0057】
自動車用シート1Aのシートパッド24には、カバー部材223の近傍位置に、溝部240が形成されている。
図9に示すように、カバー部材221のうら面21bには、縫い代21Aにおいて、吊り込み部材25が縫合されている。吊り込み部材25は、例えば、
図4の工程ST2において、折り返された状態の第三カバー部材23に対応するカバー部材223と、第一カバー部材21に対応するカバー部材221とを縫合する際に、同時に、第四シームSM4によってカバー部材221のうら面21bに縫合される。
【0058】
吊り込み部材25は、トリムカバー20とシートパッド24との固定を行うために設けられた部材である。吊り込み部材25は、シートパッド24の溝部240に差し込まれ、溝部240の底に設けられた図示省略の支持部材と連結される。これにより、シートパッド24とトリムカバー20とのずれを抑制することができる。
【0059】
自動車用シート1Aによれば、シートパッド24とトリムカバー20との固定を行うための溝部240において、第三カバー部材(カバー部材223)による加飾効果を得ることができる。このため、外観性能を向上させることができる。また、吊り込み部材25は、第四シームSM4を形成する際に、第一カバー部材(カバー部材221)の第二カバー部材(カバー部材222)側と反対側の面(うら面21b)に縫合できる。このため、製造工程を複雑化することなく、外観性能を向上させることができる。
【0060】
なお、吊り込み部材25は、第二シームSM2を形成する際にカバー部材221に同時に縫合してもよいし、第三シームSM3を形成する際にカバー部材221に同時に縫合してもよい。
【0061】
以上の説明では、乗り物用シートの一実施形態として、自動車に搭載される自動車用シート1及び自動車用シート1Aを例にした。しかし、本発明は、自動車に搭載されるシートに限らず、自動車、電車、航空機、及び船舶等の乗り物に搭載されるシートであれば適用可能である。
【0062】
以上説明してきたように、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。
【0063】
(1)
複数のカバー部材が縫合されて形成されたトリムカバーを有する乗り物用シートであって、
前記複数のカバー部材は、第一カバー部材と、第二カバー部材と、前記第一カバー部材及び前記第二カバー部材の間に配置された少なくとも1つの第三カバー部材と、を含み、
前記第一カバー部材、前記第二カバー部材、及び前記第三カバー部材を縫合する縫合部を備え、
前記第二カバー部材の縫い代の一部は、前記トリムカバーの内側に折り返された構成となっており、
前記第二カバー部材の縫い代のうちの前記第一カバー部材側に位置する部分を第二カバー非折り返し部とし、前記第二カバー部材の縫い代のうちの前記第一カバー部材と反対側に位置する部分を第二カバー折り返し部とし、
前記第三カバー部材は、前記トリムカバーの内側に両端が向く状態にて折り返された構成となっており、
前記第三カバー部材のうちの前記第一カバー部材側に位置する部分を第三カバー非折り返し部とし、前記第三カバー部材のうちの前記第二カバー部材側に位置する部分を第三カバー折り返し部とし、
前記縫合部は、
前記第三カバー非折り返し部と前記第一カバー部材の縫い代を縫合する第一シームと、
前記第三カバー非折り返し部、前記第三カバー折り返し部、前記第二カバー非折り返し部、及び前記第一カバー部材の縫い代を縫合する第二シームと、
前記第三カバー非折り返し部、前記第三カバー折り返し部、前記第二カバー非折り返し部、前記第二カバー折り返し部、及び前記第一カバー部材の縫い代を縫合する第三シームと、を含み、
前記第三カバー部材は、前記第一シームにおいて折り返されており、
前記第二カバー部材は、前記第二シームにおいて折り返されており、
前記第二シームは、前記第一シームよりも前記第一カバー部材の縫い代の縁側に設けられ、
前記第三シームは、前記第二シームよりも前記縁側に設けられている乗り物用シート。
【0064】
(1)によれば、第一シームと第二シームの間において第三カバー部材が所定の幅をもって外部に露出することになる。このため、例えば、第三カバー部材の色又は材質を第一カバー部材及び第二カバー部材とは変える等することで、第三カバー部材によって加飾の効果を得ることができ、シートの外観性能を向上させることができる。また、トリムカバーの縫合部付近における第一シーム及び第二シーム間の厚みは、第一カバー部材と第三カバー折り返し部及び第三カバー非折り返し部とを合わせた厚みとなる。この厚みは、トリムカバーにおける第二シーム及び第三シーム間の厚みよりも小さくなる。また、第一シームよりも第二シーム側と反対側の厚みは、第一カバー部材の厚みとなり、この厚みは第一シーム及び第二シーム間の厚みよりも小さくなる。このように、縫合部付近においては、トリムカバーの厚みが段階的に減少又は増加することになる。このため、この縫合部に接触したときの感触を違和感のない自然なものとすることができる。また、これらの効果は、第一シーム、第二シーム、及び第三シームを形成するだけの簡易な工程で実現できる。つまり、特殊な器具を使用することなく、汎用的な装置のみで縫合部の形成が可能であり、製造コストを下げることができる。
【0065】
(2)
(1)記載の乗り物用シートであって、
前記第三カバー部材における前記第二シームよりも前記第一シーム側の部分は空芯構造となっている乗り物用シート。
【0066】
(2)によれば、第三カバー部材の外部に露出する部分が空芯構造となっている。このため、この部分に柔軟性を持たせることができ、縫合部に接触したときの感触をより自然なものとすることができる。また、この部分が空芯構造となっていることで、この部分の厚みを小さくすることができ、縫合部に接触したときの感触をより自然なものとすることができる。
【0067】
(3)
(1)又は(2)記載の乗り物用シートであって、
前記縫合部は、前記第二シームよりも前記第一カバー部材の縫い代の縁側において、前記第三カバー非折り返し部及び前記第三カバー折り返し部と前記第一カバー部材とを縫合する第四シームを更に含む乗り物用シート。
【0068】
(3)によれば、例えば、第二シームを形成する前に第三シームを形成する縫合工程を採用することで、第二シームを形成する際の作業を容易にすることができ、作業効率を高めて製造コストを下げることができる。
【0069】
(4)
(3)記載の乗り物用シートであって、
前記第三シームは、前記第二シームと前記第四シームの間にある乗り物用シート。
【0070】
(4)によれば、例えば、第三シームを形成する前に第二シーム及び第四シームを形成する縫合工程を採用することで、第三シームを形成する際の作業を容易にすることができ、作業効率を高めて製造コストを下げることができる。
【0071】
(5)
(3)又は(4)記載の乗り物用シートであって、
前記トリムカバーによって覆われるシートパッドと、
前記シートパッドの溝部に取り付けられる、前記トリムカバーに設けられた吊り込み部材と、を備え、
前記吊り込み部材は、前記第一カバー部材の縫い代における前記第三カバー部材側と反対側の面に、前記第二シーム、前記第三シーム、及び前記第四シームのいずれかによって縫合されている乗り物用シート。
【0072】
(5)によれば、シートパッドとトリムカバーとの固定を行うための溝部において、第三カバー部材による加飾効果を得ることができる。このため、外観性能を向上させることができる。また、吊り込み部材は、第二シーム、第三シーム、又は第四シームを形成する際に、第一カバー部材の第三カバー部材側と反対側の面に縫合できる。このため、製造工程を複雑化することなく、外観性能を向上させることができる。
【0073】
(6)
複数のカバー部材が縫合されて形成されたトリムカバーの製造方法であって、
前記複数のカバー部材は、第一カバー部材と、第二カバー部材と、前記第一カバー部材及び前記第二カバー部材の間に配置された少なくとも1つの第三カバー部材と、を含み、
前記第一カバー部材の縫い代に前記第三カバー部材を縫合して第一シームを形成し、前記第一シームにおいて前記第三カバー部材を前記縫い代の縁側に折り返す第一工程と、
前記第一シームよりも前記縫い代の縁側において、前記第三カバー部材の前記第一カバー部材側の部分である第三カバー非折り返し部と、前記第三カバー部材の前記第二カバー部材側の部分である第三カバー折り返し部と、前記第二カバー部材と、前記第一カバー部材の縫い代とを縫合して第二シームを形成し、前記第二シームにおいて前記第二カバー部材を前記縫い代の縁側に折り返す第二工程と、
前記第二シームよりも前記縫い代の縁側において、前記第三カバー非折り返し部と、前記第三カバー折り返し部と、前記第二カバー部材の前記第一カバー部材側の部分である第二カバー非折り返し部と、前記第二カバー部材の前記第一カバー部材側と反対側の部分である第二カバー折り返し部と、前記第一カバー部材の縫い代とを縫合して第三シームを形成する第三工程と、を備えるトリムカバーの製造方法。
【符号の説明】
【0074】
1A,1 自動車用シート
SM1 第一シーム
2 シートクッション
SM2 第二シーム
3 シートバック
SM3 第三シーム
SM4 第四シーム
20,30 トリムカバー
21A,22A 縫い代
21E,22E 縁
21,31 第一カバー部材
22,32 第二カバー部材
23,33 第三カバー部材
24,34 シートパッド
50 縫合部