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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】後方確認支援システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/04 20060101AFI20231225BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231225BHJP
   G03B 7/093 20210101ALI20231225BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20231225BHJP
   B60R 1/12 20060101ALI20231225BHJP
   B60R 1/20 20220101ALI20231225BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20231225BHJP
【FI】
B60R1/04 D
G03B15/00 V
G03B7/093
H04N7/18 J
B60R1/12 Z
B60R1/20 100
B60R1/26 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020078128
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021172243
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】谷口 敬大
(72)【発明者】
【氏名】工藤 信範
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-138838(JP,A)
【文献】特開2008-126804(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125465(WO,A1)
【文献】特開2013-147187(JP,A)
【文献】特開2008-217267(JP,A)
【文献】特開2013-235742(JP,A)
【文献】特開2018-127135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/04
B60R 1/00
G03B 15/00
G03B 7/093
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載された、当該自動車後方の映像を表示する後方確認支援システムであって、
前記自動車の後方を撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した映像を表示する表示ユニットと、
前記自動車の後続車を検出する後続車検出手段と、
後続車のヘッドライトに対する防眩を行う期間である対後続車防眩期間を設定し、当該対後続車防眩期間中、前記表示ユニットに表示される映像の明るさを低下する防眩制御手段と
当該自動車のピッチ角を検出するセンサを有し、
当該防眩制御手段は、前記センサが検出した自動車のピッチ角に基づいて、当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象の発生を検知し、当該事象が発生した地点を前記後続車検出手段により検出された後続車が通過することが予想される時点を含む期間を前記対後続車防眩期間として設定することを特徴とする後方確認支援システム。
【請求項2】
自動車に搭載された、当該自動車後方の映像を表示する後方確認支援システムであって、
前記自動車の後方のようすを映す、反射率を変更可能なミラーである防眩機能付ルームミラーと、
前記自動車の後続車を検出する後続車検出手段と、
後続車のヘッドライトに対する防眩を行う期間である対後続車防眩期間を設定し、当該対後続車防眩期間中、前記防眩機能付ルームミラーの反射率を低下する防眩制御手段と、
当該自動車のピッチ角を検出するセンサを有し、
当該防眩制御手段は、前記センサが検出した自動車のピッチ角に基づいて、当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象の発生を検知し、当該事象が発生した地点を前記後続車検出手段により検出された後続車が通過することが予想される時点を含む期間を前記対後続車防眩期間として設定することを特徴とする後方確認支援システム。
【請求項3】
自動車に搭載された、当該自動車後方の映像を表示する後方確認支援システムであって、
前記自動車の後方を撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した映像を表示する表示ユニットと、
前記自動車の後続車を検出する後続車検出手段と、
後続車のヘッドライトに対する防眩を行う期間である対後続車防眩期間を設定し、当該対後続車防眩期間中、前記表示ユニットに表示される映像の明るさを低下する防眩制御手段とを有し、
当該防眩制御手段は、当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が発生したときに、当該事象が発生した地点を前記後続車検出手段により検出された後続車が通過することが予想される時点を含む期間を前記対後続車防眩期間として設定し、
前記防眩制御手段は、前記自動車の上方に凸の段差を通過する動きを検出し、当該動きを検出したときに、当該段差において当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が発生したものとすることを特徴とする後方確認支援システム。
【請求項4】
自動車に搭載された、当該自動車後方の映像を表示する後方確認支援システムであって、
前記自動車の後方のようすを映す、反射率を変更可能なミラーである防眩機能付ルームミラーと、
前記自動車の後続車を検出する後続車検出手段と、
後続車のヘッドライトに対する防眩を行う期間である対後続車防眩期間を設定し、当該対後続車防眩期間中、前記防眩機能付ルームミラーの反射率を低下する防眩制御手段とを有し、
当該防眩制御手段は、当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が発生したときに、当該事象が発生した地点を前記後続車検出手段により検出された後続車が通過することが予想される時点を含む期間を前記対後続車防眩期間として設定し、
前記防眩制御手段は、前記自動車の上方に凸の段差を通過する動きを検出し、当該動きを検出したときに、当該段差において当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が発生したものとすることを特徴とする後方確認支援システム。
【請求項5】
請求項1または2記載の後方確認支援システムであって、
前記防眩制御手段は、前記センサが検出した自動車のピッチ角に基づいて、前記自動車の下り坂への侵入を検出し、当該侵入を検出したときに、当該下り坂への侵入前に当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が発生したものとして当該事象の発生を検知することを特徴とする後方確認支援システム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の後方確認支援システムであって、
前記防眩制御手段は、前記事象が発生した地点を前記後続車が通過することが予想される時点の前後の所定時間長の期間を前記対後続車防眩期間として設定することを特徴とする後方確認支援システム。
【請求項7】
請求項1、2、3、4または5記載の後方確認支援システムであって、
前記防眩制御手段は、当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が発生した時点から、当該時点以降に自動車が所定の距離の走行を完了するまでの期間を前記対後続車防眩期間として設定することを特徴とする後方確認支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の後方の映像をドライバーに提示する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の後方の映像をドライバーに提示する技術としては、ルームミラーに代えて、フロントウインドシールドの上部の位置にディスプレイを配置し、自動車後方を撮影するカメラで撮影した映像をディスプレイに表示する電子ミラーシステムが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、このような電子ミラーシステムとしては、ディスプレイとディスプレイの前面に配置したハーフミラーとを備えた表示ユニットを、フロントウインドシールドの上方の位置に配置し、表示ユニットを、後方の風景を映す鏡、または、自動車後方を撮影するカメラで撮影した映像を表示する後方モニタのいずれかとして選択的に機能させる電子ミラーシステムも知られている(たとえば、特許文献2)。
【0004】
また、このような電子ミラーシステムにおいて、カメラで撮影した映像を解析し、映像中の高輝度部分に対して明度を低くする画像処理を行い、画像処理を行った映像をディスプレイに表示することにより、防眩を図る技術も知られている(特許文献1)。
【0005】
また、自動車の後方の映像をドライバーに提示する技術としては、サイドミラーに代えて、自動車の左右側部に配置された後方を撮影する左右のカメラと、ドライバーの左右に配置されたディスプレイとを設け、左右のカメラで撮影した映像を、それぞれ左右のディスプレイに表示する電子ミラーシステムも知られている(たとえば、特許文献3)。
【0006】
また、自動車の後方の映像をドライバーに提示する技術としては、ルームミラーをミラーとミラーの反射面上に配置したエレクトロクロミック層より構成し、光電変換素子で検出した自動車後方よりの光の光量が自動車前方よりの光の光量より大きいときに、エレクトロクロミック層の光透過率を小さくしてルームミラーで反射する光量を低下することにより、防眩を図る自動防眩ミラー装置も知られている(たとえば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009- 35162号公報
【文献】特開2016- 22934号公報
【文献】特開2018-167633号公報
【文献】特開2016- 49813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した、カメラで撮影した映像を解析し画像処理を行って防眩を図った映像をディスプレイに表示する電子ミラーシステムによれば、映像の解析や画像処理に要する処理時間分、映像が遅延して表示されるため、後方確認の用途に求められるリアルタイムな映像表示を行うことができないという問題がある。
【0009】
また、上述した自動車後方よりの光の光量が自動車前方よりの光の光量より大きいときに、事後的にエレクトロクロミック層の透過率を小さくして防眩を図る自動防眩ミラー装置によれば、自動車後方よりの光の光量が自動車前方よりの光の光量より大きくなってからエレクトロクロミック層の透過率が小さくなるまでの間、ミラーで自動車後方よりの光が眩しく反射してしまい防眩を実現できないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、自動車の後方の映像をドライバーに提示する後方確認支援システムにおいて、後方の映像をリアルタイムに表示しつつ、より十全な防眩を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載された、当該自動車後方の映像を表示する後方確認支援システムに、前記自動車の後方を撮影するカメラと、前記カメラが撮影した映像を表示する表示ユニットと、前記自動車の後続車を検出する後続車検出手段と、後続車のヘッドライトに対する防眩を行う期間である対後続車防眩期間を設定し、当該対後続車防眩期間中、前記表示ユニットに表示される映像の明るさを低下する低下する防眩制御手段とを備えたものである。ここで、当該防眩制御手段は、当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が発生したときに、当該事象が発生した地点を前記後続車検出手段により検出された後続車が通過することが予想される時点を含む期間を前記対後続車防眩期間として設定する。
【0012】
ここで、このような後方確認支援システムは、前記防眩制御手段において、前記対後続車防眩期間中、前記カメラの露光時間とゲインとのうちの少なくとも一方を低下することにより、前記表示ユニットに表示される映像の明るさを低下することが好ましい。
【0013】
また、前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載された、当該自動車後方の映像を表示する後方確認支援システムに、前記自動車の後方のようすを映す、反射率を変更可能なミラーである防眩機能付ルームミラーと、前記自動車の後続車を検出する後続車検出手段と、後続車のヘッドライトに対する防眩を行う期間である対後続車防眩期間を設定し、当該対後続車防眩期間中、前記防眩機能付ルームミラーの反射率を低下する防眩制御手段とを備えたものである。ここで、当該防眩制御手段は、当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が発生したときに、当該事象が発生した地点を前記後続車検出手段により検出された後続車が通過することが予想される時点を含む期間を前記対後続車防眩期間として設定する。
【0014】
ここで、以上のような後方確認支援システムは、前記防眩制御手段において、前記自動車の上方に凸の段差を通過する動きを検出し、当該動きを検出したときに、当該段差において当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が発生したものとするようにしてもよい。
【0015】
また、以上のような後方確認支援システムは、前記防眩制御手段において、前記自動車の下り坂への侵入を検出し、当該侵入を検出したときに、当該下り坂への侵入前に当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が発生したものとしてもよい。
【0016】
また、以上のような後方確認支援システムは、前記防眩制御手段において、前記事象が発生した地点を前記後続車が通過することが予想される時点の前後の所定時間長の期間を前記対後続車防眩期間として設定するようにしてもよい。
【0017】
また、以上のような後方確認支援システムは、前記防眩制御手段は、当該自動車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が発生した時点から、当該時点以降に自動車が所定の距離の走行を完了するまでの期間を前記対後続車防眩期間として設定するようにしてもよい。
【0018】
このような後方確認支援システムによれば、後続車のヘッドライトの強い光がバックカメラに入射してしまう状況の発生を、自車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象の発生から予め予測して、当該状況の発生前に防眩を行うので、十全な防眩を、後方の映像の呈示のリアルタイム性を損なうことなく行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、自動車の後方の映像をドライバーに提示する後方確認支援システムにおいて、後方の映像をリアルタイムに表示しつつ、より十全な防眩を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る後方確認支援システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る後方確認支援システムの配置を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る防眩制御処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る要防眩状況を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る防眩制御処理の処理例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る後方確認支援システムの他の構成例を示すブロック図である。
図7】本発明の実施形態に係る防眩制御処理の他の例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態に係る後方確認支援システムの他の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに、本実施形態に係る後方確認支援システムの構成を示す。
後方確認支援システムは自動車に搭載されているシステムであり、図示するように、表示制御装置1、ナビゲーションシステム2、表示ユニット3、バックカメラ4、レーダ装置5、状態センサ6、DMS7(ドライバーモニタリングシステム7)、入力装置8を備えている。
【0022】
また、表示ユニット3は、ハーフミラー31、ディスプレイ32を有する。
ディスプレイ32は、バックライトを備えた透過型のディスプレイ32や自発光型のディスプレイ32等の表示面から映像光を出射する表示装置であり、表示面を表示ユニット3の前面に向けて配置されている。また、ハーフミラー31は、ディスプレイ32の表示面を覆う配置で設けられている。
【0023】
このような構成において、ディスプレイ32に画像を表示すると、表示された画像は、ハーフミラー31を透過し、ユーザによって視認可能となる。また、ディスプレイ32の表示面の全面の表示を真っ暗とすると、ハーフミラー31は表示ユニット3の前面を反射面とする鏡として機能する。
【0024】
そして、表示ユニット3は、図2aに示すように、フロントウインドシールドの上方の位置、すなわち、伝統的にルームミラーが配置されてきた位置に、表示面を自動車の後方に向けて配置されている。
【0025】
次に、バックカメラ4は、たとえば、図2bに示すように、自動車のルーフ後部に配置され自動車の後方のようすを撮影する。また、バックカメラ4は、ゲインや露光時間を変更可能なカメラであり、バックカメラ4のゲインや露光時間は表示制御装置1から制御することができる。
【0026】
また、レーダ装置5は、たとえば、図2bに示すように、自動車の後部に配置され、自動車の後方を走行する、自車に対して処理距離(たとえば、250m)以内にいる後続車の存在と、当該後続車の自車に対する相対位置を検出する。
【0027】
また、DMS7は、図2cに示すように、運転席に着座したドライバーの頭部をドライバーの前方より撮影する赤外線カメラ71で撮影した映像から、ドライバーの頭部の位置や向きなどを検出する。
【0028】
また、ナビゲーションシステム2は、衛星測位を行うGNSS受信機と地図データとを用いた現在位置の算出や、目的地までのルートの設定や、ナビゲーションシステム2が備えた表示装置への、現在位置やルートの案内を行うナビゲーション画面の表示などを行う。
【0029】
また、状態センサ6は、自車の車速、自動車の3次元の加速度、自動車のピッチ角やロール各やヨー角などの傾斜角などの自動車の各種状態を検出するセンサである。
表示制御装置1は、ユーザの入力装置8の操作に応じて、表示モードを、電子ミラーモードとミラーモードとの間で切り替え、表示モードが電子ミラーモードのときには、バックカメラ4で撮影した自動車の後方の映像を表示ユニット3のディスプレイ32に表示し、表示モードがミラーモードのときには表示ユニット3のディスプレイ32の表示を真黒として、表示ユニット3を後方の映像を映す鏡として機能させる。
【0030】
以下、表示制御装置1は、夜間である期間中、防眩のために行う防眩制御処理を行う。
ここで、現在夜間であるかどうかは、バックカメラ4で撮影した映像の全体的な輝度や、別途設けた照度センサで検出した外光の照度や、自動車のライトのオン/オフの状態などに応じて識別する。
【0031】
図3に、この防眩制御処理の手順を示す。
図示するように、夜間である期間中、表示制御装置1は防眩制御処理において、要防眩状況の発生が予測されるかどうかを調べる処理を、要防眩状況の発生が予測されるまで繰り返し行う(ステップ302)。
【0032】
ここで、要防眩状況とは、後続車のヘッドライトの光軸が、バックカメラ4と後続車のヘッドライトを結ぶ軸に近く、後続車のヘッドライトの強い光がバックカメラ4に入射してしまう状況であり、このような要防眩状況のときに、通常時と同様にバックカメラ4の撮影と表示ユニット3の表示を行うと、表示ユニット3の表示が眩しくドライバーを眩惑させてしまうことがあると共に、バックカメラ4で撮影される映像中の後続車のヘッドライト周辺の輝度が飽和(サチュレーション)してしまい、表示される映像から後方のようすを正しく識別できなくなることがある。
【0033】
そして、防眩制御処理のステップ302では、自車が前方の路面に対して相対的に上向きとなる事象が検出されたときに要防眩状況の発生を予測する。
より具体的には、たとえば、図4a1のように、自車Aの道路の上方に凸の段差401の乗り越えが検出されたときには、当該上方に凸の段差401に前輪が乗り上げたときに自車が前方の路面に対して相対的に上向きとなるので要防眩状況の発生を予測する。自車Aの道路の上方に凸の段差401の乗り越えは、センサで検出した自車Aのピッチ角の変化や、自車Aの縦方向の加速度の変化等から検出する。または、自車Aの道路の上方に凸の段差401の乗り越えは、DMS7で検出したドライバーの頭部の上下方向の移動から検出するようにしてもよい。
【0034】
ここで、このように自車Aの道路の上方に凸の段差401の乗り越えが検出されたときに要防眩状況の発生を予測するのは、図示するように後続車Bが存在する場合、その後、図4a2に示すように後続車Bが上方に凸の段差401に到達して上方に凸の段差401に乗り上げると、後続車Bのヘッドライトの光軸が上向きとなって、要防眩状況が発生するからである。
【0035】
また、防眩制御処理のステップ302では、たとえば、図4b1のように、自車Aの下り坂への侵入が検出されたときにも、下り坂への侵入前に自車が前方の下りの路面に対して上向きとなるので要防眩状況の発生を予測する。自車Aの下り坂への侵入は、センサで検出した自車Aのピッチ角の変化から検出する。ただし、ナビゲーションシステム2において、現在位置の地図上の下り坂への侵入を検知して、その旨を、表示制御装置1に通知し、当該通知から、表示制御装置1において、自車Aの下り坂への侵入を検出するようにしてもよい。
【0036】
ここで、自車Aの下り坂への侵入が検出されたときに、要防眩状況の発生を予測するのは、図示するように後続車Bが存在するときには、図4b2に示すように、下り坂の走行により自車Aが下向きとなるために後続車Bのヘッドライトの光軸が自車Aに対して相対的に上向きとなって、要防眩状況が発生するからである。
【0037】
図3に戻り、要防眩状況の発生が予測されたならば(ステップ302)、自車の後方に後続車が存在するかどうかを、後続車のヘッドライトによるバックカメラ4で撮影した映像中の高輝度の像の有無や、レーダ装置5による自車後方の他車の検出の有無などより調べ(ステップ304)、後続車が存在しなければステップ302の処理に戻る。
【0038】
一方、後続車が存在する場合には、(ステップ304)、対後続車防眩期間を設定する(ステップ306)。
ここで、ステップ302において、自車の道路の上方に凸の段差401の乗り越えの検出から要防眩状況の発生の予測を行っている場合、ステップ306では、後続車が上方に凸の段差401を通過する期間を含む期間を対後続車防眩期間として設定する。
【0039】
すなわち、たとえば、ステップ306では、自車が乗り越えた上方に凸の段差401とレーダ装置5で検出した後続車の相対位置より求まる後続車と上方に凸の段差401の距離と、自車の車速とレーダ装置5で検出した後続車の相対位置の推移から求まる後続車の車速とから算定される、後続車の上方に凸の段差401への到達時点の前後の所定時間長(たとえば、4秒)の期間を対後続車防眩期間として設定する。
【0040】
但し、自車の道路の上方に凸の段差401の乗り越えの検出から要防眩状況の発生の予測を行っている場合、ステップ306では、対後続車防眩期間は、自車が上方に凸の段差401を乗り越えた時点から、自車の車速より求まる自車が上方に凸の段差401を乗り越えた後に所定距離(たとえば、250m)の走行を完了するまでの期間として設定してもよい。
【0041】
また、ステップ302において、自車の下り坂への侵入の検出から要防眩状況の発生の予測を行っている場合、ステップ306では、自車が下り坂に侵入した時点を始点とし、自車が侵入した下り坂とレーダ装置5で検出した後続車の相対位置より求まる他車と下り坂の距離と、自車の車速とレーダ装置5で検出した後続車の相対位置の推移から求まる他車の車速とから算定される、後続車が下り坂への侵入を完了する時点を終点とする期間を対後続車防眩期間として設定する。なお、対後続車防眩期間の終点を、後続車が下り坂への侵入を完了する時点としているのは、図4b3に示すように、後続車Bが下り坂への侵入を完了すると、後続車Bも自車Aと同様に下向きとなって要防眩状況が解消するからである。
【0042】
但し、ステップ302において、自車の下り坂への侵入の検出から要防眩状況の発生の予測を行っている場合、ステップ306では、対後続車防眩期間は、自車が下り坂に侵入した時点から、自車の車速より求まる自車が下り坂に侵入した後に所定距離(たとえば、250m)の走行を完了するまでの期間として設定してもよい。
【0043】
そして、対後続車防眩期間が到来したならば(ステップ308)、バックカメラ4のゲインや露光時間をより小さな値に変更することにより、バックカメラ4で撮影される映像の明るさを低下させる(ステップ310)。
【0044】
次に、現在の表示モードが電子ミラーモードであるかどうかを調べ(ステップ312)、電子ミラーモードであれば、対後続車防眩期間の終了を待って(ステップ314)、バックカメラ4のゲインや露光時間をステップ310で変更する前の値に戻すことにより、バックカメラ4で撮影される映像の明るさを復帰し(ステップ316)、ステップ302の処理に戻る。
【0045】
一方、現在の表示モードが電子ミラーモードでなくミラーモードであるときには(ステップ312)、表示モードを電子ミラーモードに切り替えてバックカメラ4で撮影した映像の表示ユニット3のディスプレイ32への表示を開始する(ステップ318)。
【0046】
そして、対後続車防眩期間の終了を待って(ステップ320)、表示モードをミラーモードに復帰し(ステップ322)、表示ユニット3を鏡として機能する状態とすると共に、バックカメラ4のゲインや露光時間をステップ310で変更する前の値に戻すことにより、バックカメラ4で撮影される映像の明るさを復帰して(ステップ324)、ステップ302の処理に戻る。
【0047】
以上、表示制御装置1は、夜間である期間中に行う防眩制御処理について説明した。
さて、以上のような防眩制御処理を行わなかった場合、図5a1に示すように、自車Aの後方で後続車Bが上方に凸の段差401に乗り上げたり、図5a2に示すように自車が下り坂に侵入したために、後続車Bのヘッドライトの強い光がバックカメラ4に入射してしまう状況となると、表示ユニット3の表示は、図5b1に示すように、ドライバーを眩惑させてしまう眩しい表示となったり、後続車のヘッドライト周辺の輝度が飽和してしまい、後続車の二つのヘッドライトの像が合体してしまうなど、表示される映像から後方のようすを正しく識別できなくなる表示となることがある。
【0048】
しかし、本実施形態では、防眩制御処理によってこのような状況の発生を予測して、当該状況において、バックカメラ4のゲインや露光時間をより小さな値として、バックカメラ4で撮影される映像の明るさを低下するので、図5b2に示すように、後方の映像表示のリアルタイム性を損なうことなく、表示ユニット3の表示を、眩しくなく、輝度の飽和が抑制された表示とすることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、以上の実施形態は、表示ユニット3に代えて防眩機能を備えたルームミラーを備えた場合も同様に適用することができる。
すなわち、この場合には、図6に示すように、図1に示した後方確認支援システムにおいて、表示ユニット3に代えて防眩機能付ルームミラー9を設ける。
防眩機能付ルームミラー9は、フロントウインドシールドの上方の位置に配置されるルームミラーであり、ミラー91とミラー91の反射面上に配置したエレクトロクロミック層92より構成され、エレクトロクロミック層92の光透過率(着色量)は、表示制御装置1から制御することができる。
【0050】
また、このような防眩機能付ルームミラー9を用いる場合には、夜間である期間中、表示制御装置1は、図3に示した防眩制御処理に代えて、図7に示す防眩制御処理を実行する。
【0051】
すなわち、夜間である期間中、表示制御装置1は、要防眩状況の発生が予測されるかどうかを調べる処理を、要防眩状況の発生が予測されるまで繰り返し行い(ステップ702)、要防眩状況の発生が予測されたならば(ステップ702)、自車の後方に後続車が存在するかどうかを調べ(ステップ704)、後続車が存在しなければステップ702の処理に戻る。
【0052】
一方、後続車が存在する場合には、(ステップ704)、対後続車防眩期間を設定し(ステップ706)、対後続車防眩期間が到来したならば(ステップ708)、防眩機能付ルームミラー9のエレクトロクロミック層92の光透過率を低下させ、防眩機能付ルームミラー9で反射される映像の明るさを低下させる(ステップ710)。
【0053】
そして、対後続車防眩期間の終了を待って(ステップ712)、エレクトロクロミック層92の光透過率をステップ710で変更する前の値に復帰し、ステップ702の処理に戻る。
【0054】
また、以上の実施形態では、自動車後方の映像を表示する一つの表示ユニット3を用いる場合について示したが、本実施形態は、左後方の映像を表示する表示ユニットと、右後方の映像する表示ユニットとの二つの表示ユニットを用いる場合にも同様に適用することができる。
【0055】
すなわち、この場合には、たとえば、図8a1、a2に示すように、自動車のボディから左に突き出した位置から自動車の後ろ方向の映像を撮影する左サイドカメラ81と、自動車のボディから右に突き出した位置から自動車の後ろ方向の映像を撮影する右サイドカメラ82と、ダッシュボードの天板上の左端近くの位置に配置した左表示ユニット83と、ダッシュボードの天板上の右端近くの位置に配置した右表示ユニット84とを設け、左サイドカメラ81で撮影した自動車の左後方の映像を左表示ユニット83に表示し、右サイドカメラ82で撮影した自動車の左後方の映像を右表示ユニット84に表示する。なお、左表示ユニット83、右表示ユニット84にハーフミラーを備えておらず、常に電子ミラーモードで使用される。
【0056】
そして、表示制御装置1は、防眩制御処理において、上述のように設定した対後続車防眩期間が到来したならば、左サイドカメラ81と右サイドカメラ82のゲインや露光時間をより小さな値に変更することにより、左サイドカメラ81と右サイドカメラ82で撮影される映像の明るさを低下し、対後続車防眩期間が終了したならば、左サイドカメラ81と右サイドカメラ82のゲインや露光時間を元の値に復帰する。
【符号の説明】
【0057】
1…表示制御装置、2…ナビゲーションシステム、3…表示ユニット、4…バックカメラ、5…レーダ装置、6…状態センサ、7…DMS、8…入力装置、9…防眩機能付ルームミラー、31…ハーフミラー、32…ディスプレイ、71…赤外線カメラ、81…左サイドカメラ、82…右サイドカメラ、83…左表示ユニット、84…右表示ユニット、91…ミラー、92…エレクトロクロミック層、401…段差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8