(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】飲料抽出機
(51)【国際特許分類】
A47J 31/44 20060101AFI20231225BHJP
A47J 31/057 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A47J31/44 190
A47J31/057
A47J31/44 120
(21)【出願番号】P 2020089297
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591261602
【氏名又は名称】サーモス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】小檜山 篤
(72)【発明者】
【氏名】石田 宗弘
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-105010(JP,U)
【文献】実開昭54-063777(JP,U)
【文献】特開2004-329633(JP,A)
【文献】実開昭55-025888(JP,U)
【文献】実開昭62-192338(JP,U)
【文献】実開昭58-014820(JP,U)
【文献】実開平06-018481(JP,U)
【文献】特開2014-195723(JP,A)
【文献】特開2007-313005(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02321179(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00-31/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出粉を収容するドリッパーと、
湯を前記ドリッパー内へ注湯する給湯ユニットと、を備え、
前記給湯ユニットは、
湯が吐出される吐出部と、
前記吐出部から吐出された湯が前記ドリッパーに向けて通過する注湯口を有し、前記吐出部及び前記ドリッパーの間に位置し、前記ドリッパーに向けて膨らむ略半球状に形成されるドーム部と、を備え、
前記ドーム部は、前記ドーム部における前記ドリッパーに対向する下面に形成され、前記注湯口から前記ドーム部の頂点に向けて非直線状に沿って延び、前記注湯口を通過した湯を前記注湯口から前記ドーム部の前記頂点に向けて導きつつ前記ドリッパーに向けて滴下させる案内路を備える、
飲料抽出機。
【請求項2】
複数の前記案内路は、前記ドーム部の前記頂点を中心とした渦巻き状に形成される、
請求項1に記載の飲料抽出機。
【請求項3】
前記案内路は、前記案内路に沿って延び、前記ドーム部の前記下面に凸状に形成される案内リブを備える、
請求項1又は2に記載の飲料抽出機。
【請求項4】
前記案内リブの表面粗さは、前記ドーム部の前記下面の表面粗さよりも大きく設定されている、
請求項3に記載の飲料抽出機。
【請求項5】
前記案内路は、前記案内路に沿って延び、前記ドーム部の前記下面に凹状に形成される案内溝を備える、
請求項1から4の何れか1項に記載の飲料抽出機。
【請求項6】
前記ドーム部は、前記ドーム部の前記下面に凸状に形成され、前記ドーム部の前記頂点の周囲に形成される中央リブを備える、
請求項1から5の何れか1項に記載の飲料抽出機。
【請求項7】
前記注湯口は、前記案内路と同数の穴部からなる、
請求項1から6の何れか1項に記載の飲料抽出機。
【請求項8】
前記注湯口は、前記ドーム部の前記頂点を中心とした同一の仮想円弧上に配置される、
請求項1から7の何れか1項に記載の飲料抽出機。
【請求項9】
前記給湯ユニットは、前記ドーム部の前記下面の反対側の上面における前記注湯口を含む範囲に形成され、前記吐出部からの湯を前記注湯口に沿って前記ドーム部の前記頂点を中心に周回させる周回水路を備える、
請求項8に記載の飲料抽出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料抽出機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コーヒー粉を収容するフィルターに向けて注湯することによりコーヒーを抽出するコーヒー抽出器が知られている。例えば、特許文献1に記載のコーヒー抽出器の注湯機構は、コーヒー粉に向けて注湯する注湯パイプを有し、注湯パイプをX軸方向に揺動する第1モータと同じくY軸方向に揺動する第2モータとから構成し、第1、第2モータを作動し注湯パイプが「の」の字を描きながら注湯する。このように、注湯パイプが「の」の字を描きながら注湯することにより、コーヒー粉の全域に湯が浸透しやすく、香りはもとより風味のある美味しいコーヒーが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成では、注湯パイプを揺動させる第1モータ及び第2モータが必要となるため、構造が複雑となる。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、抽出粉の全域に湯を浸透させることを可能としつつ、簡易な構造を実現することができる飲料抽出機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る飲料抽出機は、抽出粉を収容するドリッパーと、湯を前記ドリッパー内へ注湯する給湯ユニットと、を備え、前記給湯ユニットは、湯が吐出される吐出部と、前記吐出部から吐出された湯が前記ドリッパーに向けて通過する注湯口を有し、前記吐出部及び前記ドリッパーの間に位置し、前記ドリッパーに向けて膨らむ略半球状に形成されるドーム部と、を備え、前記ドーム部は、前記ドーム部における前記ドリッパーに対向する下面に形成され、前記注湯口から前記ドーム部の頂点に向けて非直線状に沿って延び、前記注湯口を通過した湯を前記注湯口から前記ドーム部の前記頂点に向けて導きつつ前記ドリッパーに向けて滴下させる案内路を備える。
【0007】
また、複数の前記案内路は、前記ドーム部の前記頂点を中心とした渦巻き状に形成される、ようにしてもよい。
【0008】
また、前記案内路は、前記案内路に沿って延び、前記ドーム部の前記下面に凸状に形成される案内リブを備える、ようにしてもよい。
【0009】
また、前記案内リブの表面粗さは、前記ドーム部の前記下面の表面粗さよりも大きく設定されている、ようにしてもよい。
【0010】
また、前記案内路は、前記案内路に沿って延び、前記ドーム部の前記下面に凹状に形成される案内溝を備える、ようにしてもよい。
【0011】
また、前記ドーム部は、前記ドーム部の前記下面に凸状に形成され、前記ドーム部の前記頂点の周囲に形成される中央リブを備える、ようにしてもよい。
【0012】
また、前記注湯口は、前記案内路と同数の穴部からなる、ようにしてもよい。
【0013】
また、前記注湯口は、前記ドーム部の前記頂点を中心とした同一の仮想円弧上に配置される、ようにしてもよい。
【0014】
また、前記給湯ユニットは、前記ドーム部の前記下面の反対側の上面における前記注湯口を含む範囲に形成され、前記吐出部からの湯を前記注湯口に沿って前記ドーム部の前記頂点を中心に周回させる周回水路を備える、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、飲料抽出機において、抽出粉の全域に湯を浸透させることを可能としつつ、簡易な構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る飲料抽出機の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る給湯蓋ユニットを開けてドリッパーを取り出した状態の飲料抽出機の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る飲料容器を取り外した状態の飲料抽出機の
図1のA-A線断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る上蓋部を取り外した状態の飲料抽出機の斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る給湯蓋ユニットを開けた状態の飲料抽出機の正面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るドーム部の上面に形成される周回水路の平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るドーム部の斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る案内路及び注湯口の斜視図である。
【
図11】本発明の変形例に係る(a),(b)はドーム部の底面図である。
【
図12】本発明の変形例に係る(a)は給湯蓋ユニットの断面図であり、(b)は給湯蓋ユニットの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る飲料抽出機について図面を参照して詳細に説明する。
図1及び
図2に示すように、飲料抽出機1は、飲料であるコーヒーを生成するコーヒーメーカーである。
具体的には、飲料抽出機1は、飲料抽出機本体2と、飲料抽出機本体2に着脱自在に設けられたドリッパー3と、飲料抽出機本体2に着脱自在に設けられる飲料容器4と、を備える。以下、飲料抽出機本体2、ドリッパー3及び飲料容器4の構成について説明した後、飲料抽出機1の動作について説明する。
【0018】
(飲料抽出機本体2)
飲料抽出機本体2は、コーヒー粉が収容されるドリッパー3に注湯することによりコーヒーを抽出し、抽出したコーヒーを飲料容器4に注ぐ。
詳しくは、飲料抽出機本体2は、ベース部6と、ノーズ部5と、中間部7と、水タンク11と、を備える。
ベース部6は、設置面に設置される板状をなす。ベース部6の上面には飲料容器4が設置される。ノーズ部5は、ベース部6に設置された飲料容器4をベース部6との間で挟みこむように設けられる。中間部7は、ベース部6に設置された飲料容器4の側方に設けられ、ベース部6及びノーズ部5の間を連結する。水タンク11は中間部7の上部に設けられ、飲料抽出機本体2から着脱可能に構成される。水タンク11内には水が溜められる。飲料抽出機本体2は、ベース部6、ノーズ部5及び中間部7により正面から見て略コの字形状に形成される。
図3に示すように、ノーズ部5と中間部7はともに中空形状を有している。
【0019】
(中間部7)
中間部7は、
図2に示すように、中間部7の表面に位置する飲料抽出機本体2の電源を投入する際に操作されるプッシュスイッチである主電源ボタン7aと、コーヒーの抽出を開始する際に操作されるタッチパネル式のスイッチである抽出スイッチ7bと、
図3に示すように、飲料容器4がベース部6に設置されることによりドリッパー3の後述する開弁部材14を開操作するレバー20と、を備える。レバー20は、レバー本体21と、ドリッパー検知部22と、容器検知部23と、検知スイッチ25と、スイッチ収容部24と、回動軸27と、を備える。
レバー本体21は高さ方向に延びる棒状をなし、レバー本体21の略中央に位置する回動軸27を中心に揺動可能に支持される。回動軸27は高さ方向に直交する方向に延びる。
容器検知部23は、レバー本体21の下端に位置し、ベース部6に設置される飲料容器4に押されるように飲料容器4に向けて突出する略円柱状をなす。
ドリッパー検知部22は、レバー本体21の上端に位置し、ドリッパー3の後述する開弁部材14に向けて突出する略円柱状をなす。
検知スイッチ25は、ドリッパー検知部22の背面に位置し、ドリッパー検知部22が押し込まれたことを検出する。
スイッチ収容部24は、レバー本体21の上端に位置し、ドリッパー検知部22及び検知スイッチ25を収容する収容ケースである。スイッチ収容部24は、ドリッパー検知部22を弾性的に移動可能に支持する。
レバー20の動作については後述する。
【0020】
(ノーズ部5)
図2及び
図4に示すように、ノーズ部5は、ドリッパー3が着脱可能に収容されるドリッパーホルダー17と、ドリッパーホルダー17及び水タンク11それぞれの開口部を開閉する給湯蓋ユニット9と、を備える。
図4に示すように、ドリッパーホルダー17は、ベース部6に近づくにつれて小径となる略円錐カップ状をなす。ドリッパーホルダー17の下端には連通孔19が形成されている。連通孔19はベース部6に設置される飲料容器4の後述する注ぎ口42の直上に位置する。
【0021】
(ドリッパー3)
図4に示すように、ドリッパー3は、下端に近づくにつれて小径となる略円錐カップ状をなし、ドリッパーホルダー17内に収容可能なサイズに形成される。ドリッパー3内にはコーヒー粉を収容可能である。
ドリッパー3は、突設部12と抽出口13と、開弁部材14と、を備える。
突設部12はドリッパー3の内周面の下部が凹むように形成される。
図3に示すように、抽出口13は、突設部12の底面に形成され、ベース部6に設置される飲料容器4の後述する注ぎ口42に向けて開口する孔である。開弁部材14は、抽出口13を開閉する部材であり、断面略C型又はL型形状をなす。開弁部材14は、開弁部材14の上端に位置する接触部16と、開弁部材14の下端に位置する弁部15と、接触部16及び弁部15の間に位置し、開弁部材14の回転中心となる回動軸18と、を備える。
図5に示すように、開弁部材14は、飲料容器4がベース部6に設置されていないとき、開弁部材14の弁部15がドリッパー3の抽出口13を閉じるようにコイルバネ等の弾性部材29により付勢されている。
開弁部材14の動作については後述する。
【0022】
(給湯蓋ユニット9)
図2に示すように、給湯蓋ユニット9は、ドリッパーホルダー17及び水タンク11それぞれの開口部を開閉する蓋としての機能に加えて、給湯蓋ユニット9が閉じた状態でドリッパー3に給湯する機能を有する。給湯蓋ユニット9は給湯蓋ユニット9の後側の縁部に沿って延びる蓋回転軸(図示せず)を中心に開閉する。
図6に示すように、給湯蓋ユニット9は、上蓋部91と、ドーム部94及び周回水路99を有する下蓋部92と、吐出部93と、を備える。
上蓋部91は、給湯蓋ユニット9の上部に位置する板状をなす。上蓋部91は、ドーム部94に対向する部分に形成され、球面状に上側に膨らむ膨張部91bを備える。膨張部91bには、給湯蓋ユニット9内の湯気を外部に排出するための複数の通気孔91aが形成されている。下蓋部92は、上蓋部91に対面するように給湯蓋ユニット9の下部に位置する。
吐出部93及び周回水路99は、それぞれ、下蓋部92の上面に設けられる。周回水路99は、ドーム部94の上面の外周に形成され、吐出部93からの湯を周回させつつ注湯口95(
図8参照)を通過させる。
【0023】
図6及び
図8に示すように、周回水路99は、内壁99aと、外壁99bと、底面99cと、を備える。
内壁99aと外壁99bは、底面99cに対して交わる方向に延びる。外壁99bは吐出部93が設けられた部分が途切れた円環リング壁状に形成される。内壁99aは、外壁99b内に位置し、外壁99bよりも径の小さい円環リング壁状に形成される。外壁99bは、ドーム部94の上面の外周縁部に位置し、ドーム部94の外周縁と同一の径を有する。外壁99b及び内壁99aは、外壁99b及び内壁99aの径方向において互いに対面することにより円環状の隙間が形成される。底面99cは、外壁99b及び内壁99aのそれぞれの下端を連結するように形成される。周回水路99は略半球状のドーム部94の上面に設けられているので、底面99cは、外壁99b側から内壁99a側に向かって下方向(重力方向)に傾斜している。
図8に示すように、内壁99aには外壁99bに向けて凹む複数の凹部99dが形成されている。複数の凹部99dは、湾曲した半円筒状に形成され、内壁99aが立設する高さ方向に沿って延びている。注湯口95は、凹部99d内の底面99cに形成されている。複数(本例では6つ)の凹部99dは、内壁99aに等角度間隔(本例では60°間隔)に配置されている。凹部99dは、周回水路99に沿って周回する湯の一部を内部空間に溜めて注湯口95に導く機能を有する。
吐出部93は、水タンク11からの水が加熱手段(図示せず)によって加熱された湯を吐出するノズルである。吐出部93は、外壁99bの途切れた部分に位置し、外壁99b及び内壁99aの接線方向に沿って延び、外壁99b、内壁99a及び底面99cの間に当該接線方向に沿う湯を吐出する。
【0024】
図3に示すように、ドーム部94は、給湯蓋ユニット9が閉じられた状態で、ドリッパーホルダー17に収容されるドリッパー3に向けて膨らむ半円球殻状をなす。ドーム部94の頂点はドリッパー3の中央に位置する。
図9に示すように、ドーム部94には、ドーム部94の厚さ方向に貫通した円形の穴部からなる注湯口95が形成されている。注湯口95は、ドーム部94の頂点を中心とした同一の仮想円弧C(
図7参照)上に配置される。本例では6つの注湯口95がドーム部94の周方向に等角度間隔(本例では60°間隔)で配置される。各注湯口95は、ドーム部94の頂点の法線方向に沿う高さ方向に沿って延びる。ドーム部94の頂点にはドーム部94の厚さ方向に貫通する水抜き孔94aが形成されている。
【0025】
図9に示すように、ドーム部94は、ドーム部94の下面に形成される複数の案内路96及び中央リブ98を備える。ドーム部94の下面94bは、ドリッパー3に対向する面である。
中央リブ98は、ドーム部94の頂点を中心として円形に沿って延びるリブとして形成される。中央リブ98は、ドーム部94の下面94bに対して突出するように形成される。中央リブ98は、中央リブ98の径方向に切断した横断面矩形状に形成される。
複数の案内路96は、注湯口95に対応して設けられ、注湯口95からドーム部94の頂点に向けて非直線状の一例である曲線状部を含み、注湯口95を通過した湯を頂点に向けて導きつつドリッパー3に滴下させる。なお、注湯口95からドーム部94の頂点に向けて非直線状とは、注湯口95からドーム部94の頂点に向けて一直線上とならないことをいう。湯を導く案内路96が非直線状に形成されることにより案内路96の経路が長くなり、ドリッパー3内の広範囲に水滴を滴下することができる。案内路96は、ドーム部94の下面94bに沿って、注湯口95からドーム部94の頂点に近づくにつれて下側に向かう勾配を有する。
図7に示すように、複数の案内路96は、ドーム部94の頂点を中心とした渦巻き状に形成される。例えば、複数の案内路96は、周回水路99に沿って湯が周回する方向に回転する渦巻き状に形成される。案内路96における注湯口95とドーム部94の頂点の間で曲率が最大となり、案内路96における注湯口95付近と案内路96における中央リブ98付近において曲率がゼロに近づき直線状となる。
【0026】
図9に示すように、複数の案内路96は、それぞれ、案内路96に沿って延びる案内リブ96a及び案内溝96bを備える。
案内リブ96aは、ドーム部94の下面94bに対して突出するように形成される。案内リブ96aは、案内路96が延びる方向に対して直交する方向に切断した横断面矩形状に形成される。案内リブ96aにおけるドーム部94の頂点に近い端部は中央リブ98の外周面に連結されている。
図10に示すように、案内リブ96aの注湯口95に近い端面96cは、注湯口95の周面に沿って曲面状又は傾斜面状に形成されている。これにより、注湯口95を通過した湯が案内リブ96aに伝わりやすい。
【0027】
図9に示すように、案内リブ96a及び中央リブ98には、湯が効果的に伝うようシボ加工が施されている。すなわち、案内リブ96a及び中央リブ98の表面粗さは、案内リブ96a及び中央リブ98以外のドーム部94の下面94bの表面粗さよりも大きく(粗く)設定されている。これにより、案内リブ96a及び中央リブ98に湯の密着効果が生じ、湯が注湯口95からドーム部94の下面94bに流れていくことが抑制される。
【0028】
図10に示すように、案内溝96bは、湯が通るようにドーム部94の下面94bに凹状に形成される。例えば、案内溝96bは、案内リブ96aよりも短く形成され、案内リブ96aにおける注湯口95に近い領域に沿って形成される。すなわち、案内溝96bの一端は注湯口95の一部に繋がり、案内溝96bの他端は案内リブ96aの途中で途切れている。案内溝96bは、湯を導く機能に加えて、案内溝96bに隣接する案内リブ96aの高さを高くする機能を有する。案内溝96bの深さはドーム部94の頂点に近づくにつれて徐々に浅くなるように形成される。これにより、案内溝96bとドーム部94の下面94bの間に段差が形成されることが抑制され、この段差部分で集中的に湯が滴下することが抑制される。案内溝96bは、案内路96が延びる方向に対して直交する方向に切断した横断面矩形状に形成される。
注湯口95の径D1の幅は、案内溝96bの幅W1と案内リブ96aの幅W2の合計の長さと略同一、または幅W1と幅W2の合計の長さよりも幅狭となることが望ましい。
【0029】
(飲料容器4)
図3に示すように、飲料容器4は、容器本体41と、注ぎ口42と、ハンドル43と、を備える。
容器本体41は、コーヒーが収容可能に中空体で形成される。容器本体41は、例えば、ステンレス鋼等の金属製の内容器及び外容器からなる二重構造を備える。
ハンドル43はユーザの手で把持される部分である。ハンドル43は容器本体41の上部に上下反転したL字状で形成される。
注ぎ口42は、容器本体41の上部の周縁においてハンドル43と反対側に形成され、容器本体41の径方向外側に向けて延びる。飲料容器4は、ベース部6とノーズ部5の間の収納スペース26(
図5参照)に挿入可能に形成される。
図3に示すように、飲料容器4が収納スペース26に挿入されると、注ぎ口42がドリッパーホルダー17に収容されたドリッパー3の抽出口13の略真下に配置される。すなわち、注ぎ口42は、カップへコーヒーを注ぐための機能に加えて、飲料抽出機本体2から滴下するコーヒーを受けて容器本体41内に導く機能も有する。
【0030】
(動作)
次に、飲料抽出機1の動作について説明する。
図5に示すように、飲料容器4が収納スペース26に収納されていない状態では、開弁部材14の弁部15がドリッパー3の抽出口13を閉じた状態に開弁部材14が弾性部材(図示せず)により付勢されている。
この飲料容器4が収納スペース26に収納されていない状態から、まず、ユーザは、
図2に示すように、給湯蓋ユニット9を開き、コーヒー粉が収容されたドリッパー3をドリッパーホルダー17内にセットし、水を溜めた水タンク11を飲料抽出機本体2にセットする。そして、給湯蓋ユニット9を閉じる。
次に、ユーザは、飲料容器4のハンドル43を持って、飲料容器4を収納スペース26に挿入する。これにより、
図3及び
図5に示すように、レバー20の容器検知部23が飲料容器4により後方に押されて、レバー20が
図5の矢印A1で示すように回動軸27を中心に揺動する。すると、
図3に示すように、ドリッパー検知部22が開弁部材14の接触部16を押すことにより、開弁部材14の弁部15がドリッパー3の抽出口13を開放するように開弁部材14が回動軸18を中心に回転する。検知スイッチ25は、ドリッパー検知部22が開弁部材14の接触部16を押す際にスイッチ収容部24の後方へ移動することにより押されてオン状態となる。
【0031】
飲料抽出機本体2は、検知スイッチ25がオン状態のとき、主電源ボタン7a(
図1参照)が押された後、抽出スイッチ7b(
図1参照)が操作されたことを認識すると、水タンク11からの水を加熱手段(図示せず)によって加熱する。加熱された水の沸騰による内圧の上昇に伴い、
図8に示すように、湯が吐出部93から周回水路99に放出される。
【0032】
底面99cは外壁99b側から内壁99a側に向かうにつれて重力方向に傾斜している。そのため、吐出部93から吐出された湯は、
図8の矢印B1に示すように内壁99aに近づいた状態で周回水路99に沿って周回する。この際、湯の一部が凹部99dに留められて
図8の矢印B2に示すように注湯口95を通過する。
湯は注湯口95を通過し成長した水滴の自重が水滴の表面張力により付着維持できなくなった時点でドリッパー3に落下する。このため、吐出部93から放出された湯の勢いが強かったり、湯の量が多かったりした場合は、注湯口95から直接ドリッパー3に落下する。また一部の湯は注湯口95を通過して
図9の矢印Y1のように案内リブ96a及び案内溝96bを伝いながら、
図9の矢印Y2のように湯が少しずつドリッパー3内に向けて滴下する。
湯は案内リブ96aの中央リブ98に近い端部に到達すると案内リブ96aから中央リブ98に伝わる。中央リブ98に伝わる湯は
図9の矢印Y3のように中央リブ98に沿って周回しながら、水滴の自重が水滴の表面張力を超えると、
図9の矢印Y4のように湯が少しずつドリッパー3内に向けて滴下する。以上のように、案内リブ96a、案内溝96b及び中央リブ98により、湯が滴下する箇所を分散化することができる。
【0033】
吐出部93から放出された湯の水蒸気が給湯蓋ユニット9の上蓋部91の下面に付着したうえで内壁99aの内側に滴下した場合、この滴下した湯はドーム部94の水抜き孔94aを通過してドリッパー3内に滴下する。
【0034】
ドリッパー3内に滴下された湯はドリッパー3内のコーヒー粉を経てコーヒーとなり、このコーヒーがドリッパー3の抽出口13から飲料容器4の注ぎ口42に供給される。このように飲料容器4内にコーヒーが供給され、飲料容器4内へのコーヒーの供給が完了すると、ユーザは、飲料容器4のハンドル43を持って、飲料容器4を収納スペース26から取り出す。これにより、
図5に示すように、レバー20の容器検知部23が前方に戻り、ドリッパー検知部22が開弁部材14の接触部16から離れて、開弁部材14の弁部15がドリッパー3の抽出口13を閉じる。また、検知スイッチ25は、ドリッパー検知部22が開弁部材14の接触部16に押されなくなって開弁部材14側に移動するため、オフ状態に戻る。飲料抽出機本体2は、検知スイッチ25がオフ状態のとき、主電源ボタン7a及び抽出スイッチ7bが押されても動作しない。
以上で、飲料抽出機1の動作の説明を終了する。
【0035】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)飲料抽出機1は、抽出粉の一例であるコーヒー粉を収容するドリッパー3と、湯を前記ドリッパー3内へ注湯する給湯ユニットの一例である給湯蓋ユニット9と、を備える。給湯蓋ユニット9は、湯が吐出される吐出部93と、吐出部93から吐出された湯がドリッパー3に向けて通過する注湯口95を有し、吐出部93及びドリッパー3の間に位置し、ドリッパー3に向けて膨らむ略半球状に形成されるドーム部94と、を備える。ドーム部94は、ドーム部94におけるドリッパー3に対向する下面94bに形成され、注湯口95からドーム部94の頂点に向けて非直線状に沿って延び、注湯口95を通過した湯を注湯口95からドーム部94の頂点に向けて導きつつドリッパー3に向けて滴下させる案内路96を備える。
この構成によれば、吐出部93から吐出された湯が注湯口95を通過した後、注湯口95から直接にドリッパー3内に滴下したり、注湯口95から非直線状の案内路96を伝いつつ滴下したりする。これにより、ドリッパー3内に湯が滴下する箇所を分散化することができる。このため、ドリッパー3内のコーヒー粉の全域に湯を浸透させることができ、コーヒーの香り及び味がよくなる。
また、特許文献1に記載の注湯機構と異なりモータ等が不要となるため、簡単な構造を実現することができる。これにより、コストが削減でき、電力消費を抑制することができる。
【0036】
(2)複数の案内路96は、ドーム部94の頂点を中心とした渦巻き状に形成される。
この構成によれば、ドリッパー3内のコーヒー粉に滴下される湯は渦巻き状に滴下される。これにより、ドリッパー3内のコーヒー粉に満遍なく注湯が可能となり、コーヒーの香り及び味がよくなる。
【0037】
(3)案内路96は、案内路96に沿って延び、ドーム部94の下面94bに凸状に形成される案内リブ96aを備える。
この構成によれば、案内リブ96aを形成するだけで、簡単に案内路96を形成することができる。
また、湯が案内路96を効果的に伝うため案内路96と下面94bと高低差を生じさせることが好ましい。案内リブ96aを形成することにより、案内溝96bを深くする必要がなくなり、ドーム部94が肉厚となることを抑制できる。
【0038】
(4)案内リブ96aの表面粗さは、ドーム部94の下面94bの表面粗さよりも大きく設定されている。
この構成によれば、案内リブ96aに湯の密着効果が生じ、湯が注湯口95からドーム部94の下面94bに流れていくことが抑制される。仮に湯がドーム部94の下面94bに流れていくとドリッパー3内のコーヒー粉に適切に滴下されづらくなるが、上記構成によれば、これを抑制することができ、ドリッパー3内のコーヒー粉に湯が適切に滴下される。
【0039】
(5)案内路96は、案内路96に沿って延び、ドーム部94の下面94bに凹状に形成される案内溝96bを備える。
この構成によれば、案内溝96bを形成するだけで、簡単に案内路96を形成することができる。
【0040】
(6)ドーム部94は、ドーム部94の下面94bに凸状に形成され、ドーム部94の頂点の周囲に形成される中央リブ98を備える。
この構成によれば、注湯口95を通過した湯が案内路96に沿ってドーム部94の頂点に近づき中央リブ98に到達すると、湯が中央リブ98で周回しつつドリッパー3内に滴下する。これにより、注湯口95を通過した湯がドーム部94の頂点の1箇所で集中的に滴下することが抑制される。
【0041】
(7)注湯口95は、案内路96と同数の穴部からなる。
この構成によれば、注湯口95を案内路96に対応させることができ、注湯口95を通過した湯を確実に対応する案内路96に伝わせることができる。
【0042】
(8)注湯口95は、ドーム部94の頂点を中心とした同一の仮想円弧C上に配置される。
この構成によれば、注湯口95を通過した湯がドーム部94の案内路96に沿って均等に広がる。このため、ドリッパー3内のコーヒー粉に満遍なく注湯することが可能となり、コーヒーの香り及び味がよくなる。
【0043】
(9)給湯蓋ユニット9は、ドーム部94の下面94bの反対側の上面における注湯口95を含む範囲に形成され、吐出部93からの湯を注湯口95に沿ってドーム部94の頂点を中心に周回させる周回水路99を備える。
この構成によれば、注湯口95から均等に湯を案内路96に伝えることができる。このため、ドリッパー3内のコーヒー粉に満遍なく注湯が可能となり、コーヒーの香り及び味がよくなる。
【0044】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0045】
(変形例)
上記実施形態における中央リブ98は省略されてもよい。
また、上記実施形態における中央リブ98に代えて、ドーム部94の頂点の周囲に形成される溝部が形成されてもよい。この溝部は、中央リブ98と同様の作用効果を有する。
【0046】
上記実施形態においては、案内溝96bは、案内リブ96aにおける注湯口95に近い領域に沿って形成されていたが、これに限らず、案内リブ96aの全域に沿って形成されてもよい。
【0047】
上記実施形態においては、案内路96は、案内リブ96a及び案内溝96bを備えていたが、案内リブ96a及び案内溝96bの何れか一方が省略されてもよい。
上記実施形態における中央リブ98は一重の円形に沿って形成されていたが、これに限らず、2重の円形に沿って形成されてもよい。
また、上記実施形態においては、1つの案内路96は、1つの案内リブ96aを備えていたが、これに限らず、互いに平行に延びる複数の案内リブ96aを備えていてもよい。この複数の案内リブ96aは、案内溝96bを挟み込むように配置されてもよい。
【0048】
上記実施形態においては、案内路96の数は6個であったが、これに限らず、5個以下又は7個以上であってもよい。また、ドーム部94の径方向に対する案内路96の角度は、上記実施形態よりも大きく又は小さくしてもよい。
また、上記実施形態においては、複数の案内路96は、それぞれ、注湯口95からドーム部94の頂点に向けて曲線状に沿って延びていたが、注湯口95からドーム部94の頂点に向けて一直線上にならない非直線状であればどのような形状であってもよい。例えば、
図11(a)に示すように、複数の案内路196は、注湯口95からドーム部94の頂点に向けて非直線状の一例として「へ」又は「L」の字状に形成されていてもよい。また、
図11(b)に示すように、複数の案内路296は、注湯口95からドーム部94の頂点に向けて正弦波状に形成されてもよい。
【0049】
上記実施形態における注湯口95の数は6つであったが、これに限らず、全体として1つとしてもよい。
例えば、
図12(a),(b)に示すように、注湯口195は内壁99aの外周を囲む円周形状をなしていてもよい。言い換えると、内壁99aが側周面を形成し、ドーム部94が端面を形成する略円柱状をなし、この略円柱状の部材が上蓋部91の下面に固定される。この略円柱状の部材の周囲には注湯口195である隙間を持って外壁99b及び底面99cを有する部材が設けられる。
図12(b)に示すように、注湯口195には、案内路96と連設する切り欠き部195aと、切り欠き部195aを繋ぐ連結部195bとが設けられている。吐出口93から湯が放出されると、湯は切り欠き部195a、連結部195bへと流れる。切り欠き部195aを設けることで湯は切り欠き部195aに集中して流れ、案内路96へと伝っていく。なお、切り欠き部195aは、案内路96と同数が望ましい。複数の切り欠き部195aの間を連結する連結部195bの幅W4は、切り欠き部195aの幅W3よりも小さく設定されている。連結部195bの幅W4が小さく設定されることにより、切り欠き部195aに比べ連結部195bから湯は落下しづらくなる。これにより、周回水路99を流れる湯が切り欠き部195aを優先的に通過し落下する。切り欠き部195aから落下する湯が少なくなると、連結部195bの湯は切り欠き部195aに流れ、切り欠き部195aから落下する。
また、注湯口の数を1つとする変形例は、
図12(a),(b)の構成に限らず、例えば、上記実施形態における6組の注湯口95及び案内路96のうち5組の注湯口95及び案内路96が省略されてもよい。
【0050】
上記実施形態における案内リブ96a及び中央リブ98は、それぞれ横断面が矩形状で形成されているが、これに限らず、例えば、平行四辺形、台形、半円柱状、三角形又は五角以上の多角形であってもよい。また、案内リブ96a及び中央リブ98の一部に溝が形成されてもよい。
さらに、案内溝96bの横断面も矩形状に限らず、例えば、平行四辺形、台形、半円柱状、三角形又は五角以上の多角形であってもよい。
上記実施形態において案内溝96bの内面の表面粗さが、案内リブ96aと同様に、ドーム部94の下面94bの表面粗さよりも大きく設定されてもよい。
上記実施形態においては案内リブ96a及び案内溝96bは、それぞれ幅W1,W2に沿う方向に2列に並んでいたが、これに限らず、案内路96が延びる方向に1列に並んでいてもよい。
【0051】
上記実施形態では、飲料抽出機1は飲料容器4を備えていたが、これに限らず、飲料容器4は省略されてもよい。この場合、飲料抽出機1は、ユーザが所有する容器、カップ又は使い捨てカップ等に抽出したコーヒーを注ぐように構成されてもよい。
【0052】
上記実施形態においては、飲料抽出機1は、コーヒーを抽出するためのものであったが、コーヒー以外のお茶等の飲料を抽出してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…飲料抽出機、2…飲料抽出機本体、3…ドリッパー、4…飲料容器、5…ノーズ部、6…ベース部、7…中間部、7a…主電源ボタン、7b…抽出スイッチ、9…給湯蓋ユニット、11…水タンク、12…突設部、13…抽出口、14…開弁部材、15…弁部、16…接触部、17…ドリッパーホルダー、18…回動軸、19…連通孔、20…レバー、21…レバー本体、22…ドリッパー検知部、23…容器検知部、24…スイッチ収容部、25…検知スイッチ、26…収納スペース、27…回動軸、29…弾性部材、41…容器本体、42…注ぎ口、43…ハンドル、91…上蓋部、91a…通気孔、91b…膨張部、92…下蓋部、93…吐出部、94…ドーム部、94a…水抜き孔、94b…下面、95,195…注湯口、96,196,296…案内路、96a…案内リブ、96b…案内溝、96c…端面、98…中央リブ、99…周回水路、99a…内壁、99b…外壁、99c…底面、99d…凹部、195a…切り欠き部、195b…連結部、C…仮想円弧、D1…径