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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】電気外科器具およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20231225BHJP
   A61B 17/285 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B17/285
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020089751
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2020203079
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】19176751
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス・ボブ
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01153578(EP,A1)
【文献】特開平10-258063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0250066(US,A1)
【文献】特表2011-523874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 17/285
A61B 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科器具(10)であって、
第1のブランチ(11)と、前記第1のブランチ(11)が枢動可能に支持される枢動軸(S)を規定する支持ピン(24)を備える第2のブランチ(12)と、
外部電気接続(30)のための電気接続デバイス(29)であって、第1の導体(31)を介して前記第1のブランチ(11)が有する第1の顎(14)内の第1の組織接触表面(17)と電気的に接続され、第2の導体(32)を介して前記第2のブランチ(12)が有する第2の顎(15)内の第2の組織接触表面(18)と電気的に接続される電気接続デバイス(29)とを有し、
前記第1のブランチ(11)および前記第2のブランチ(12)は、前記第1の組織接触表面(17)と前記第2の組織接触表面(18)との間で組織をクランプまたは保持し、
前記第2の導体(32)は、一体的に形成され、その遠位端(43)に少なくとも1つの接触部(45)を有する接触セクション(44)を備え、前記少なくとも1つの接触部(45)は、前記支持ピン(24)の円周面(46)である導電性領域の外面との電気的回転接続が確立されるように、前記支持ピン(24)の前記導電性領域の外面に当接し、
前記接触セクション(44)は、前記支持ピン(24)の前記円周面(46)に向かって弾性的に付勢される少なくとも1つの保持部(48)を含み、
前記少なくとも1つの接触部(45)の1つの接触部(45)または複数の接触部(45)は、各保持部(48)に配置されることを特徴とする、
電気外科器具。
【請求項2】
前記電気接続デバイス(29)は、前記第1のブランチ(11)に配置されることを特徴とする、
請求項1に記載の電気外科器具。
【請求項3】
前記第1の導体(31)と前記第2の導体(32)との間に電気的絶縁中間層(55)が配置されることを特徴とする、
請求項1または2に記載の電気外科器具。
【請求項4】
各ブランチ(11、12)は、導電性コア(33)と、前記コア(33)を少なくとも部分的に囲む電気的絶縁外層(34)とを有することを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項5】
前記第2の導体(32)と前記第1のブランチ(11)の前記コア(33)との間に電気的絶縁中間層(55)が配置されることを特徴とする、
請求項4に記載の電気外科器具。
【請求項6】
前記電気的絶縁中間層(55)は、前記第2の導体(32)上に固定して付着された層によって形成されることを特徴とする、
請求項3または5に記載の電気外科器具。
【請求項7】
前記第2の導体(32)は、長方形の断面を有する、前記接触セクション(44)に隣接する導体セクション(42)を備えることを特徴とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項8】
前記第2の導体(32)は、前記電気接続デバイス(29)との電気接続を生成する接続セクション(41)を備え、
前記導体セクション(42)は、前記接続デバイス(29)と電気的に接続されることを特徴とする、
請求項7に記載の電気外科器具。
【請求項9】
前記接触セクション(44)は、前記枢動軸(S)の円周方向に前記支持ピン(24)を完全に取り囲むことを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項10】
前記接触セクション(44)は、少なくとも1つの支持部(47)を備え、前記接触セクション(44)が、前記支持ピン(24)の前記円周面(46)の外側で前記少なくとも1つの支持部(47)によって前記第1のブランチ(11)に支持されることを特徴とする、
請求項1からのいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項11】
前記少なくとも1つの支持部(47)と前記少なくとも1つの接触部(45)との間に、前記接触セクション(44)を完全に貫通して延びる貫通孔(49)が設けられ、前記貫通孔(49)は、前記少なくとも1つの保持部(48)の弾性変形を可能にする隙間を提供することを特徴とする、
請求項10に記載の電気外科器具。
【請求項12】
前記支持ピン(24)は、前記接触セクション(44)の前記少なくとも1つの接触部(45)が当接する円錐断面を含むことを特徴とする、
請求項1から11のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項13】
前記少なくとも1つの接触部(45)上で前記枢動軸(S)に平行な軸方向力を生成する押圧部(51)が設けられることを特徴とする、
請求項12に記載の電気外科器具。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の電気外科器具(10)を製造するための方法であって、
第1の導体(31)をプレート(39)から分離し、第2の導体(32)をプレート(39)から分離するステップと、
前記第1の導体(31)を第1の組織接触表面(17)に電気的に接続するステップと、
前記第1の組織接触表面(17)、前記第1の導体(31)、および前記第2の導体(32)を第1のダイ内に配置し、注入可能な硬化性材料を前記第1のダイに挿入して、前記第2の導体(32)の接触セクション(44)の前記少なくとも1つの接触部(45)が第1のブランチ(11)の支持空洞(25)内に配置されるように前記第1のブランチ(11)を製造するステップと、
導電性支持ピン(24)および前記支持ピン(24)と電気的に接続された第2の組織接触表面(18)を第2のダイ内に配置し、注入可能な硬化性材料を前記第2のダイ内に挿入することによって第2のブランチ(12)を製造するステップと、
前記2つのブランチ(11、12)をヒンジ式の形で互いに配置するために、前記第2のブランチ(12)の前記支持ピン(24)を前記第1のブランチ(11)の前記支持空洞(25)内に挿入するステップと
を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱溶融または凝固に使用することができる電気外科器具、ならびに電気外科器具の製造方法に関する。電気外科器具は、2つのブランチを有し、そのそれぞれが、顎部を有し、各顎部は組織接触表面を含む。例えば、組織をシールするために、組織接触表面を介して、間にクランプされた生体組織に電流を流すことができる。
【背景技術】
【0002】
そのような電気外科器具が、知られている。例えば、欧州特許第1372512号明細書は、一般に、2つのブランチを互いにヒンジ式に支持するための、絶縁され成形されたヒンジを有するそのような器具を記載している。
【0003】
欧州特許第2436328号明細書および豪国特許出願公告第2014205809号明細書は、双極性電気外科器具およびそれぞれの器具を通して導線をルーティングする方法を開示している。支持ピンは、少なくとも1本の導線が枢動ピンの隙間を通過できるように、隙間のある2つの部分からなる形態を有する。
【0004】
欧州特許第1595509号明細書は、絶縁部を備えた電気外科器具に関するものであり、枢動ピンは、絶縁部の電気的絶縁スリーブを貫通して延びている。絶縁部のスリーブの周りに窪みが形成され、その中に導体の湾曲した端部が配置される。この導体端は、結合リングを介して、ブランチの顎および組織接触表面に軸方向に電気的に接続される。
【0005】
米国特許第8771270号明細書は、2つの可動に支持された顎を備えた電気外科器具に関するものである。顎は、支持部によって枢動ピンの周りに枢動可能に配置される。支持部は、枢動ピンの周りに円周方向に延びる弧状の接触表面を有し、この接触表面において、ばね接触部がそれぞれ当接する。このようにして、顎または組織接触表面を電気的に接続することができる。
【0006】
電気外科器具では、2つの組織接触表面の電気接続を1箇所のみ、特にブランチの1つのみに提供することが望まれる。多くの器具では、一方のブランチ内の導体の1つと、その上に枢動可能に配置された他方のブランチとの電気的接続を確立する必要がある。このような電気接続は、1アンペアを超え、最大5または6アンペアの電流も確実に流せなければならない。電気接続は、電気外科器具および枢動接合部の取り扱いに影響を与えてはならない。さらに、電気接続は安全な取り扱いができるように構成しなければならず、再利用可能な器具において容易に洗浄できなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第1372512号明細書
【文献】欧州特許第2436328号明細書
【文献】豪国特許出願公告第2014205809号明細書
【文献】欧州特許第1595509号明細書
【文献】米国特許第8771270号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記で述べた要件を満たし、容易かつ安価に製造することができる電気外科器具を提供することであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する電気外科器具、および請求項15の特徴を有するその製造方法によって解決される。
【0010】
本発明の電気外科器具は、第1のブランチと、第2のブランチとを有する。第2のブランチには、枢動軸を規定する支持ピンが配置される。第1のブランチは、この支持ピン上で枢動可能に支持される。各ブランチは、枢動軸から見て遠位領域内の顎と、枢動軸から見て、電気外科器具の近位端までの操作部とを有する。外部ケーブル用の電気接続デバイスが、例えば、第1のブランチまたは単一の他の場所に配置される。接続デバイスは、第1の導体を介して第1のブランチの第1の組織接触表面と電気的に接続され、第2の導体を介して第2のブランチの第2の組織接触表面と電気的に接続される。2つの導電体および2つの組織接触表面は、異なる電位を2つの組織接触表面に印加できるように互いに電気的に絶縁される。
【0011】
例えば、各ブランチは、電気的絶縁プラスチック材料で少なくとも部分的に囲まれた導電性コアを有することができる。電気的絶縁プラスチック材料は、電気的絶縁外層を形成することができ、例えば射出成形プロセスによってコア上に付着させることができる。
【0012】
第2の導体は、一体的に形成され、その遠位端に少なくとも1つの接触部を有する接触セクションを有する。少なくとも1つの接触部は、支持ピンの導電性領域の外面、例えば、半径方向外側に向けられた円周面または軸方向に向けられたリング面と当接する。特に、少なくとも1つの接触部は、支持ピンの円周面に対して半径方向に付勢される。そうすることで、支持ピンと少なくとも1つの接触部との間に導電性回転接合が、確立される。このようにして、第1のブランチ内の第2の導体と第2のブランチ内の第2の組織接触表面との間の電気的接続を確立することができる。したがって、支持ピンは、第2の導体と第2の組織接触表面との間の電気的接続の一部を形成する。第2のブランチでは、支持ピンは、第2の組織接触表面と、例えば、第2のブランチの導電性コアを介して接続することができる。第2のブランチ内の支持ピンと第2の組織接触表面との間の接続は、さらなる導電体によって、または別の形で実現することもできる。
【0013】
少なくとも1つの接触部と支持ピンとの間の半径方向の摺動接触接続は、信頼できる電気接続を形成し、非常に容易に確立することができる。接触セクションを含む第2の導体は、接触セクションおよび少なくとも1つの接触部を備えた第2の導体プレートを、例えば、パンチングによって、レーザの使用による分離によって、ウォータージェット切断によって、またはエッチングプロセスによって分離することによって非常に容易に生成することができる。第2の導体は、プレートから分離した後でさらに加工する必要はないが、オプションとして加工することもできる。好ましくは、第2の導体は、第1の延長平面に完全に沿ってまたはその内部で第1のブランチの内部に延びる。
【0014】
少なくとも部分的に、2つの導体は、ストリップ導体の形態または形状を有することができる。第2の導体と同様に、第1の導体を一体的に構成することができる。また、延長平面に沿って、または延長平面内で完全に延長することもできる。
【0015】
第1の導体および第2の導体が第1のブランチ内の共通の開口部内に配置される場合、有利である。代替として、2つの導体は、互いに分離されたそれぞれの開口部内に配置することもできる。例えば、2つの導体は、第2のブランチを製造するために導電性コアと一緒にした形で置くことができ、例えば射出成形プロセスによって、プラスチックでオーバーモールドすることができ、またはプラスチックに挿入成形することができる。
【0016】
電気的絶縁中間層が、第1の導体と第2の導体との間に配置される場合、好ましい。中間層は、2つの導体の間にサンドイッチ様の形で配置される。電気的絶縁中間層を、例えば、フォームフィッティングまたはオーバーモールディングによって第1の導体および/または第2の導体上に生成してから、続いて2つの導体を互いに相互に接続して、第2のブランチを形成することができる。
【0017】
第2の導体と第1のブランチの導電性コアとの間に電気的絶縁中間層が配置される場合、さらに有利である。この中間層は、第2の導体と第1の導体との間に電気的絶縁中間層を同時に形成することもできる。
【0018】
電気的絶縁中間層が、例えば、射出成形プロセスによって第2の導体上に固定して付着される場合、好ましい。電気的絶縁中間層は、接着剤または他の方法によって第2の導体と接合することもできる。第2の導体、その上に付着された中間層、および第1の導体の間の接合は、好ましくは、第1のブランチの製造中にのみ確立される。
【0019】
一実施形態では、第2の導体は、接触セクションに隣接する長方形断面の導体セクションを有する。好ましい実施形態では、断面は、そのサイズおよび/または形状に関して一定である。
【0020】
また、第2の導体が導体セクションに隣接する接続セクションを含み、接続セクションが、接続デバイスと電気的に接続されているか、または接続デバイスの一部を形成する場合も有利である。1つの実施形態では、接続セクションは、導体セクションのプレート形状の延長部とすることができる。
【0021】
好ましくは、第1の導体および/または第2の導体は、その延長部に沿った各場所に長方形断面を有する。
【0022】
1つの実施形態では、接触セクションは、枢動軸の円周方向に支持ピンを完全に取り囲む。別の実施形態では、接触セクションは、支持ピンを円周方向に部分的にのみ、例えば円周の約少なくとも50%または少なくとも60%または少なくとも70%を取り囲むことができる。
【0023】
好ましい実施形態では、支持ピンに向かって弾性的に付勢される少なくとも1つの保持部が、接触セクションに形成され、各保持部には、接触部または複数の接触部またはすべての接触部が配置される。保持部が第2の導体と一体的に形成されるため、接触部を支持ピンの円周面に対して付勢するための追加の付勢手段を省略することができる。
【0024】
さらに、接触セクションは、少なくとも1つの支持部を含むことができる。支持部によって、接触セクションを第1のブランチで、半径方向外側で支持することができ、半径方向外側は、支持ピンと反対に距離を置いて配置される。例えば、支持部を、電気的絶縁中間層を介して第2のブランチの導電性コアにおいて支持することができる。
【0025】
少なくとも1つの支持部と少なくとも1つの接触部との間に、接触セクションを完全に貫通する貫通孔が存在する場合、有利である。そうする際、接触部を支持ピンに対してばね弾性的に付勢するために、支持部と接触部との間に隙間が生成される。貫通孔は、接触セクションの支持部および/または保持部によって取り囲まれるか、または一箇所で開くことができる。
【0026】
一実施形態では、支持ピンは、円筒状の円周面を有する。少なくとも支持ピンの導電性領域は、円筒外板表面によって形成される。別の実施形態では、支持ピンまたは支持ピンの導電性領域は、円錐台の外板表面によって形成することができる。したがって、支持ピンは、少なくとも1つの円錐セクションを有することができるか、または完全に円錐状に構成することができる。
【0027】
支持ピンが少なくとも1つの円錐断面を含む場合、少なくとも1つの接触部上に、枢動軸に平行な軸方向力を生成する押圧部を設けることができる。枢動軸に対して斜めに配置された支持ピンの導電性表面により、少なくとも1つの接触部と支持ピンとの間の半径方向の押圧力もそれによって生成される。
【0028】
上記で説明した電気外科器具は、次のステップを行うことによって製造することができる:
-第1の導体をプレートから分離し、第2の導体をプレートから分離するステップ、
-第1の導体を第1の組織接触表面と電気的に接続するステップ、
-第1の組織接触表面、第1の導体および第2の導体を第1のダイ内に配置し、第2の導体の接触セクションの少なくとも一つの接触部が第1のブランチの支持空洞内に配置されるように第1のダイ内に注入可能な硬化性材料を挿入することによって第1のブランチを生成するステップ、
-導電性支持ピンおよび支持ピンと電気的に接続された第2の組織接触表面を第2のダイ内に配置し、注入可能な硬化性材料を第2のダイに挿入することによって第2のブランチを生成するステップ、および
-第2のブランチの支持ピンを第1のブランチの支持空洞内に挿入して、2つのブランチのヒンジ式接合を互いに確立するステップ。
【0029】
電気外科器具の別の態様は、ヒンジの構成と、ナイフガイド空洞内に任意選択で提供されるナイフの案内とに関する。電気外科器具のこの構成は、電流供給の上記で述べた特徴とは独立して実現することができる。
【0030】
電気外科器具のこのさらなる発明の態様において、ここでも枢動軸を規定する支持ピンが、第2のブランチ内に存在する。支持空洞が第1のブランチに設けられ、第1のブランチ内で支持ピンが延びてヒンジを形成する。そうすることで、2つのブランチは、互いに枢動可能に支持される。
【0031】
第2のブランチには、ナイフガイド空洞が設けられており、この空洞内で、ナイフは、移動方向に案内される形で移動可能に支持されている。ナイフガイド空洞は、枢動軸または支持ピンのそばを通り過ぎる移動方向に延び、電気外科器具の遠位端領域の第2の顎に入る。これにより、支持ピンは、ナイフガイド空洞に隣接する一方の側で枢動軸に平行な横断方向に配置される。ナイフガイド空洞の反対側では、第2のブランチは、支持ピン無しで、支持空洞無しで構成され、ヒンジ部材を備えない。したがって、ヒンジは、ナイフガイド空洞に関して片側にのみ存在するのに対して、それぞれの反対側は、ヒンジ無しで形成される。したがって、ナイフガイド空洞は、ヒンジを通り過ぎるような形で延び、ヒンジのヒンジ部を貫通して延びる必要はない。
【0032】
この構成により、ナイフは、枢動軸のレベルで移動方向に配置することができ、枢動軸に対して案内される形で偏心的に支持される必要はない。枢動軸は、ナイフガイド空洞を貫通して延びる。しかし、ヒンジは、非常に簡単な形で構成することができる。ヒンジ構造は必要なく、その場合、ナイフを支持ピンを通してガイドする必要がある。また、枢動軸に沿った2つの別個のヒンジの配置を省略することもできる。
【0033】
したがって、使用後に電気外科器具を洗浄できるようにするために、ヒンジおよびナイフガイド空洞の非常に単純な製造および良好なアクセス性が、保証される。
【0034】
好ましくは、1つの単一の支持ピンおよび1つの単一の支持空洞のみが存在し、1つの単一のヒンジ、したがって1つの単一の支持位置を形成する。
【0035】
一実施形態では、第1のブランチは、支持空洞がその内部に開く第1の当接面を含む。第2のブランチは、支持ピンがそこから延びる第2の当接面を含むことができる。2つの当接面は互いに向き合い、好ましくは互いに当接する。
【0036】
第1の当接面および/または第2の当接面が分離平面を形成する場合、有利である。2つのブランチは、横断方向に分離平面の片側に存在するヒンジを介して互いにヒンジで接続されるのみである。分離平面は、好ましくは平面内に延びる。
【0037】
ナイフガイド空洞が第2の当接面に向かって開いている場合、有利である。そうすることで、器具の使用後のナイフガイド空洞またはナイフの洗浄が、単純化される。好ましくは、ナイフガイド空洞は、ナイフの移動方向に見て、枢動軸または支持ピンの両側で第2の当接面に向かって開いている。
【0038】
好ましい実施形態では、横断方向に延びる横断空洞を第2のブランチ内に設けることができる。横断空洞は、ナイフガイド空洞の一端で開き、第2のブランチの外側の横断方向の反対側の他端で開く。第2のブランチの外側は、好ましくは、第1のブランチとは反対側を向いている。枢動軸は、好ましくは、横断空洞を通って延びる。一実施形態では、横断空洞は、スロット穴として構成することができる。スロット穴は、少なくとも支持ピンの直径と同じ長さのナイフの移動方向の長さを有することができる。
【0039】
横断空洞により、支持ピンの領域におけるナイフガイド空洞のアクセス性が、例えば洗浄目的に関して改善される。
【0040】
支持ピンは、軸方向端面で直接ナイフガイド空洞に隣接することができる。特に、支持ピンは、貫通開口部を有さず、この貫通開口部は、ナイフを通過させるのに適しており、支持ピンを通ってその2つの軸方向端面間を延びるものである。支持ピンは、ナイフガイド空洞を、特に最大において3つの側面において制限する。
【0041】
好ましい実施形態では、パージ開口部が、第1のブランチ内に設けられる。パージ開口部は、一端において支持空洞内に、反対側の他端において第1のブランチの外側に開く。パージ開口部は、その2つの端部の間で、枢動軸に実質的に直交する延長方向に延びる。パージ開口部は、好ましくは、第2のブランチに面する側で開いている。一実施形態では、パージ開口部は、第1のブランチの狭い側で開いている。
【0042】
パージ開口部は、ブランチの所定の開いた位置で、ナイフガイド空洞のセクションに沿った2つのポートの間に配置される。この開いた位置では、パージ開口部は、ナイフガイド空洞の断面に沿って特に完全に延びる。パージ開口部により、ナイフガイド空洞へのアクセスがさらに改善され、器具のクリーニングが単純化される。所定の開放位置は、例えば、ブランチの2つの顎間の最大開放角度でブランチが完全に開いた位置である。
【0043】
上記で説明してきた電気外科器具の実施形態のすべてにおいて、器具は、使い捨て器具または再利用可能な器具として構成することができる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、説明および図面から得られる。以下、本発明の好ましい実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。図は次のもので構成される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】電気外科器具の実施形態の概略側面図である。
図2】電気外科器具の別の実施形態の斜視図である。
図3】電気外科器具の実施形態の側面図ならびに電気接続のブロック図のような図である。
図4図3の電気外科器具の第1のブランチおよび第2のブランチの概略側面図である。
図5】電気外科器具の遠位端セクションの斜視部分図である。
図6】電気外科器具の遠位端セクションの概略上面図である。
図7】互いに枢動可能に支持された電気外科器具の2つのブランチのヒンジを通る断面図であり、ブランチは分解図で示されている。
図8図5の電気外科器具の遠位端セクションを通り、枢動軸に沿った断面の部分斜視図である。
図9】ブランチの開いた位置にある電気外科器具の2つのブランチの概略斜視部分図である。
図10】第1のブランチ内に配置された第2の導体の接触セクションを示す、枢動軸に直交するセクションの部分斜視図である。
図11図10の第2の導電体の側面図である。
図12】第2の導体の接触セクションと支持ピンの導電性円周領域との間の電気的接続を示す基本的なスケッチ図である。
図13】第2の導体の接触セクションと支持ピンの導電性円周領域との間の別の電気的接続を示す基本的なスケッチ図である。
図14】第2の導体の接触セクションの別の実施形態の概略図である。
図15】第2の導体の接触セクションの接触部の構成の概略的な基本図である。
図16】第2の導体の接触セクションの接触部の別の構成の概略的な基本図である。
図17】第2の導体の接触セクションの接触部の別の構成の概略的な基本図である。
図18】第2の導体の接触セクションの接触部の別の構成の概略的な基本図である。
図19】第2の導体の接触セクションの接触部の別の構成の概略的な基本図である。
図20】第1のブランチにおける第2の導体の接触セクションと第2のブランチにおける支持ピンとの間の電気的接続の構成を有する電気外科器具の実施形態の概略断面図である。
図21】第1のブランチにおける第2の導体の接触セクションと第2のブランチにおける支持ピンとの間の電気的接続の構成を有する電気外科器具の別の実施形態の概略断面図である。
図22】第1のブランチにおける第2の導体の接触セクションと第2のブランチにおける支持ピンとの間の電気的接続の構成を有する電気外科器具の別の実施形態の概略断面である。
図23】第1のブランチにおける第2の導体の接触セクションと第2のブランチにおける支持ピンとの間の電気的接続の構成を有する電気外科器具の別の実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1図4のそれぞれは、例による双極性器具として構成される電気外科器具10の実施形態を示す。電気外科器具は、ヒンジ13によって互いに枢動軸Sの周りに枢動可能に配置された第1のブランチ11および第2のブランチ12を有する。枢動軸Sは、横断方向Qに延びる。
【0047】
図1に示す実施形態では、遠位領域内の枢動軸Sまたはヒンジ13を起点としてブランチ11、12から延びる顎14、15が、実質的に示されている。第1の顎14および/または第2の顎15は、枢動可能に支持され得る。顎14、15を開閉するために、器具10は、それぞれの操作ユニット16を備える。操作ユニット16により、例えば、さらなる動作を実行することもできる。例えば、第1の顎14内の第1の組織接触表面17と第2の顎15内の第2の組織接触表面18との間に電圧を印加するか、または組織接触表面17、18間にクランプされるか、または保持される組織内に電流を流し始める。追加的にまたは代替的に、例えば、顎14、15の間にクランプされるか、または保持された組織を分離するために、ナイフをナイフガイド空洞内で顎14、15に沿って遠位端まで移動させることもできる。ナイフおよびナイフの案内については、後でより詳細に説明される。
【0048】
それぞれはさみのような形で構成された電気外科器具の追加の実施形態を図2図4に示す。図から明らかなように、第1のブランチ11は、枢動軸Sを起点として遠位端の方向に向かう第1の顎14と、枢動軸Sを起点として近位端の方向に向かう第1の操作部19とを有する。この実施形態によると、第2のブランチ12は、枢動軸Sを起点として遠位端の方向に向かう第2の顎15と、枢動軸Sを起点として近位端の方向に向かう第2の操作部20とを有する。
【0049】
ヒンジ13を形成するために、枢動軸Sを規定する支持ピン24が、第2のブランチ12に存在し、支持ピン24は、第1のブランチ11に形成された支持空洞25内に係合する。支持ピン24の外径は、技術的に必要な遊びを除いて、支持空洞25の内径に対応する。支持ピン24は、支持空洞25内に延び、したがって、ヒンジ13を形成する。例えば図7~9に概略的に示すように、支持ピン24と支持空洞25との間の接合は、支持ピン24の自由端24aと接続することができるロック部26によって固定することができる。ロック部26は、プレート形状を有することができ、好ましくは円形の外側輪郭を有する。
【0050】
図7および図8に特に示すように、接続が確立される場合、ロック部26は、第1のブランチ11に設けられた窪み27に配置され、窪み27は、第1のブランチ11から外方を向く第2のブランチ12の側で支持空洞25を拡張させ、それにより、その際、支持空洞25から窪み27への移行部内にリングショルダ28が、生成される。接続が確立されると、ロック部26は、リングショルダ28と当接する。ロック部26は、例によれば、第1のブランチ11に対して窪み27内で摺動式に移動可能に支持され、第2のブランチ12と、また例によれば、支持ピン24と、耐トルク接続される。
【0051】
電気接続を確立するために、器具10は、外部電気接続30(図3および4)と接続されるように構成された接続デバイス29を備える。電気接続は、例えば、接続デバイス29を外部電気接続30に差し込むことによって確立することができる。必要に応じて、電気的接続の意図しない接続解除を回避するために、機械的ロック手段を設けることができる。
【0052】
図2図4に示す電気外科器具10の実施形態では、電気接続デバイス29は、ブランチの1つに、そして例によれば、第1のブランチ11に提供される。電気接続デバイス29は、第1の操作部19の近位端に配置される。電気接続デバイス29は、少なくとも2つの極で構成され、1つの極は、第1の導体31によって第1の組織接触表面17と電気的に接続され、第2の極は、第2の導体32によって第2の組織接触表面18と電気的に接続される。電気接続を、特に図3および図4に示す。第1の導体31は、電気接続デバイス29と第1の組織接触表面17との間の電気接続の少なくとも一部を形成する。この第1の導体31は、実際、接続デバイス29を起点として第1の組織接触表面17まで延びることができるが、第1のブランチ11の他の導電性構成要素を使用して、特に第1のブランチ11の第1の顎14内で電気接続の一部を確立することもできる。
【0053】
第2の導体32は、接続デバイス29を起点としてヒンジ13まで延びている。ヒンジ13によって、第2の導体32と第2のブランチ12との間の電気的接続が、確立される。ヒンジ13と第2の組織接触表面18との間のさらなる電気的接続は、第2のブランチ12の第2の顎15内で確立される。
【0054】
図8の斜視切断図に非常に概略的に示すように、第1のブランチ11および第2のブランチ12は、少なくとも第1の顎14および第2の顎15において、導電性コア33を有することができ、この導電性コア33は、電気的絶縁外層34によって少なくとも部分的に囲まれる。外層34は、外部への電気的接続が確立されるものではないそれぞれのブランチ11、12の領域内に設けられる。好ましくは、外層34は、ヒンジ13の外側およびそれぞれの組織接触表面17、18の外側のどこにでも設けられる。そうする際、接触保護が生成され、ブランチ11、12の導電部間、特にそれぞれの導電性コア33間の短絡が、回避される。
【0055】
図2図4に示すように、2つの導体31、32は、第1のブランチ11内に配置される。これらの導体は、第1のブランチ11内の共通の開口部38内に配置することができる(図2および10)。この実施形態では、2つの導体31、32はそれぞれ、1つの一体部品によって形成される。各導体31は、枢動軸Sに対して直角に配向された個別または共通の延長平面に沿って延びる。導体31、32は、第2の導体32について図11に概略的に示すように、プレート39からの分離によって生成することができる。分離は、パンチング、レーザービーム切断、ウォータージェット切断、エッチング、または前述の手順の組み合わせ、または任意の他の分離方法によって行うことができる。
【0056】
第1の導体31および第2の導体32は、横断方向Qに互いに隣接して配置され、少なくとも部分的に位置合わせされた形で延びることができる。図2に示すように、導体31、32は、例によれば少なくとも接続デバイスから、第1の操作部19の領域に沿って、主に位置合わせされた形で第1の操作部19を通って延びる。第1の操作部19および第2の操作部20は、横断方向Qと直交する高さ方向Hに互いに隣接して配置される。ヒンジ領域では、2つの導体31、32は少なくとも、部分的に、横断方向Qに見て位置合わせされた形で延びるか、または別の形で互いを区別する延長部を有することができる。
【0057】
図4に概略的に示すように、第1の導体31は、支持空洞25の領域内の接続場所40において、例えば 溶接、はんだ付け、接着によってコア33と接続することができる。第1の接続場所40と第1の組織接触表面17との間の電気的接続は、第1のブランチ11または第1の顎14の導電性コア33によって生成される。この実施形態の代替として、第1の導体31は、第1の組織接触表面17まで連続的に延びることもできる。さらなる実施形態では、接続場所40および第1の操作部19を、支持空洞25からさらに離して配置することもできる。これは、導電性コア33が、第1の顎14から近位端または電気接続デバイス29に向かう方向に第1のブランチ11内でどれだけ延びるかによる。
【0058】
第1の導体31および第2の導体32はそれぞれ、実質的に長方形の輪郭を有することができる接続セクション41を有する。これの代替策として、接続セクション41はまた、丸みのある、特に円形の断面を有することもできる。接続セクション41は、第1のブランチ11の外側から少なくとも部分的にアクセス可能であり、電気接続デバイス29との電気接続を生成する役割を果たす。接続セクション41は、電気接続デバイス29の一部であることができる。
【0059】
導体セクション42は、第1の導体31および第2の導体32内の電気接続セクション41に隣接し、導体セクション42は、ストリップ導体の形状を有する。導体セクション42は、長方形の断面を有する。横断方向Qにおいて、導体セクション42の厚さは、その高さ方向Hにおける幅よりも小さい。
【0060】
既に説明したように、第1の導体31の導体セクション42は、接続場所40において第1のブランチ11のコア33に電気的に接続することができる。第2の導体32の導体セクション42は、その接続セクション41の反対側の端部であるその遠位端43において接触セクション44を有する。接触セクション44は、少なくとも1つ、例によれば、複数の接触部45を含む。少なくとも1つの接触部45を有する接触セクション44は、支持ピン24の導電性領域との電気的接続を確立するように構成される。このために、少なくとも1つの接触部45は、支持ピン24の導電性領域の外面、および例によれば円周面46と接触する。この実施形態では、支持ピン24は、第2のブランチ12の導電性コア33の一部であり、したがって全体として導電性である。支持ピン24は、その円周面において電気的絶縁外層34から少なくとも部分的に自由であり、それにより、接触セクション44の少なくとも1つの接触部45との電気接続を確立することができる。
【0061】
接触セクション44の実施形態を図10および11に示す。この実施形態では、接触セクション44は、枢動軸S周りの円周方向に支持ピン24を完全に取り囲む。接触部45は、例によれば、枢動軸Sを中心とする円周方向に互いに距離を置いて配置され、特に規則的に分配される。この実施形態の代替として、接触セクション44は、枢動軸Sの周りで円周方向に、好ましくは円周の少なくとも約50%または少なくとも60%または少なくとも70%で、支持ピン24を部分的にのみ取り囲むことができる。したがって、接触セクション44は、例示した実施形態の代替としてフォーク様に構成することができる。
【0062】
支持ピン24の円周面46と少なくとも1つの接触部45との間の電気的接触の原理を、図12および13に示す。図12に典型的に示すように、各接触部45は、枢動軸Sに平行に支持ピン24の円周面46と実質的に線状に接触することができる。このような線状の接触は、特に接触部45が、円周面46に面する側に、円周面46の曲率に対応せず、凸面または平面の形で構成することができる曲率を含む場合に生成される。この代替として、各接触部45は、円周面46に面する側に、枢動軸Sの周りで円周方向の円周面46の曲率に対応する凹面曲率を含むことができ、それにより、接触部45と円周面46との間に、実質的に二次元の接触が生成される(図13)。
【0063】
さらに、ブロック図様の概略の形で図12および図13に示すように、少なくとも1つの接触部45は、支持ピン24の円周面46に対して、枢動軸Sに向かって半径方向に付勢される。これは、例えば、接触セクション44の少なくとも一部の弾性変形によって達成することができる。この例によれば、支持ピン24に対して少なくとも1つの接触部45を半径方向に付勢するための別個の付勢手段は設けられていないが、半径方向の付勢力は、接触セクション44自体によって生成される。
【0064】
このため、接触セクション44は、少なくとも1つの支持部47を備え、この支持部47は、第1のブランチ11において、または開口部38と境を接する第1のブランチ11の壁において間接的または直接的に支持される。図10図13に示すように、支持部47は、枢動軸Sの周りにリング状に延びることができる。
【0065】
図10および図11に示す実施形態では、接触セクション44は、少なくとも1つの保持部48をさらに備え、この保持部48には、設けられた接触部45の1つ、複数、またはすべてが配置される。保持部48は、支持ピン24に向かう方向に弾性的に付勢される。この付勢は、保持部48に配置された少なくとも1つの接触部45が、支持ピン24の円周面46に当接し、またそのようにする際、静止位置から出て枢動軸Sから離れるように偏向される場合に、保持部48の弾性変形によって、生成される。少なくとも1つの接触部45は、保持部48が弾性変形されない場合に静止位置を取る。少なくとも1つの保持部48の変形により、その上に配置された1つまたは複数の接触部が、円周面46に対して半径方向の付勢力で押しつけられることが達成される。
【0066】
保持部48は、図12および図13ではばねとして概略的に示している。保持部48の構造的構成は、変えることができる。
【0067】
図10および図11に示す実施形態では、枢動軸Sに対して半径方向に見て少なくとも1つの支持部47と各保持部48との間に、貫通孔49が設けられる。貫通孔49は、横断方向Qに接触セクション44を完全に貫通して延びている。この例によれば、貫通孔49は、枢動軸Sを中心とする円周方向に円弧状を有する。図示する実施形態では、3つの保持部48と、それに隣接する3つの貫通孔49とが、設けられる。貫通孔49は、枢動軸Sの周りで円周方向に互いに距離を置いて配置される。この例によれば、保持部48はそれぞれ、枢動軸Sの周りで円周方向の中央領域内で、1つの接触部45を支持する。この例によれば、接触部45は、円筒状の輪郭を有する。したがって、各保持部48は、一種の板ばねを形成し、それぞれの隣接する貫通孔49は、それぞれの保持部48の弾性変形を可能にする半径方向の隙間を提供する。
【0068】
図15の基本的な図に示すように、円筒状の輪郭を有する接触部45の代わりに、異なる構成の接触部45を各保持部48に配置することができる。図16は、枢動軸Sの周りで円周方向に、支持ピン24の円周面46に当接する2つの隣接する凸状曲面セクションが設けられた、接触部45の実施形態を示す。
【0069】
図17による実施形態における接触部45は、支持ピン24の円周面46と接触する表面セクションを有し、その曲率は、円周面46の曲率と実質的に一致する。
【0070】
保持部48のための別の実施形態を図18および19に示す。これらの実施形態では、保持部48は、1回または複数回曲げられ、例えば、L字型(図18)またはS字型(図19)の構成を有することができ、それにより、少なくとも1つの接触部45と支持部47との間に半径方向の隙間50、または複数のそのような隙間50が、生成される。したがって、少なくとも1つの接触部45は、枢動軸Sに対して半径方向にばね弾性式に移動可能に配置される。
【0071】
接触セクション44のさらなる構成の可能性を図14に示す。この実施形態では、複数の支持部47が、枢動軸S周りの円周方向に互いに距離を置いて配置される。直接隣接する2つの支持部47は、1つのウェブ状の保持部48によって互いに接合される。少なくとも1つの接触部45が、保持部48に設けられるか、または保持部48によって形成される。この実施形態では、ウェブ状の保持部48は、枢動軸Sに向かって弧状に湾曲され、支持ピン24の円周面46において2つの隣接する支持部47間のそれぞれの中心領域に当接し、この位置で接触部45を形成する。
【0072】
これまでに説明した実施形態では、支持ピン24の円周面46は、枢動軸Sと同軸にある円筒外板表面に従って構成される。図20図23では、支持ピン24の代替の実施形態が概略的に示され、特にその外面は、接触部45との当接のための異なる輪郭および/または配向を含む。支持ピン24は、全体として円錐状であるか(図20および図21)、または少なくとも円錐断面を含むことができる(図22)。円錐状形状は、支持ピン24が少なくとも部分的にロック部26に向かって先細になるように提供される。これらの実施形態では、接触セクション44の少なくとも1つの接触部45が当接する領域は、円錐状に構成される。接触部45または接触セクション44を、図20および図22に非常に概略的にのみ示す。これまでに説明した実施形態と同様に、接触部45または接触セクション44は、異なる構成を有することができる。
【0073】
この構成では、ロック部26に押圧部51が設けられ、この押圧部51は、少なくとも1つの接触部45を、枢動軸Sに平行な軸方向に、支持ピン24の円錐断面の円周面46に押しつける。押圧部51は、ロック部26に配置することができ、ロック部26において支持される個別部を形成するか、またはロック部26と一体的に形成することができる。少なくとも1つの接触部45上の軸方向力により、枢動軸Sに対して斜めに延びる支持ピン24の円周面によって半径方向の力も生成され、半径方向の力は、少なくとも1つの接触部45を円周面46に対して付勢する。この実施形態では、半径方向に弾力作用で弾性的に支持される接触セクション44内の保持部48を省略することができる。
【0074】
図23に示す実施形態では、支持ピン24の外面は、少なくとも1つの接触部45が当接することができるリング面52を含む。リング面52は、軸方向に配向され、例によれば、枢動軸Sに対して直角に配向された平面内に延びる。例えば、リング面52は、支持ピン24の段によって形成することができ、この段は、互いに隣接する支持ピン24のセクション間の移行場所を形成する。支持ピン24のより大きな直径を有するセクションは、第2のブランチ12に隣接する。この実施形態においても、ロック部26に押圧部51を設けることができ、この押圧部51は、少なくとも1つの接触部45を、枢動軸Sに平行な方向に軸方向に、支持ピン24のリング面52に押しつける。
【0075】
上記で説明したように、第1の導体31および第2の導体32は、第2のブランチ12の開口部38内を延びる。2つの導体31、32の互いの電気的接触を回避するために、この実施形態では、2つの導体31、32の間に、電気的絶縁中間層55が配置される(図2)。電気的絶縁中間層55は、好ましくは、導体の1つと、そして例によれば、第2の導体32と固定的に接続することができる。例えば、電気的絶縁中間層55は、フォームフィット接続および/または接着接続を生成することにより、第2の導体32上に接続することができる。一実施形態では、中間層55を、第2の導体32上にフォームフィット接続するか、もしくはオーバーモールドすることができ、または射出成形によって第2の導体32と接続することができる。
【0076】
第2の導体32内の中間層55は、例によれば、第2の導体32と第1のブランチ11の導電性コア33との間の電気的絶縁を確実にする役割も果たす。中間層55は、図10に概略的に示すように、1つまたは複数の側で第2の導体32を囲むことができる。例えば、少なくとも1つの支持部47を、第1のブランチ11のところの開口部38内の中間層55によって支持することができる。
【0077】
上記で説明した実施形態による電気外科器具10は、以下のように製造することができる。
【0078】
2つの導体31、32は、1つのプレート39から、または異なるプレート39から、スタンピング、レーザービーム切断、ウォータージェット切断、エッチングなどによって分離される。次に、好ましくは、電気的絶縁中間層55が、例えば第2の導体32をダイに挿入し、第2の導体32を少なくとも部分的に電気的絶縁中間層55とオーバーモールドすることによって、第2の導体32上に付着される。
【0079】
続いて、中間層55によって分離された2つの導体31、32は、通常、第1の組織接触表面を含む電極と共に第1のダイ内に置かれる。注入可能な硬化性材料を第1のダイに挿入し、その後硬化させることにより、第1の組織接触表面17および2つの導体31、32を備える第1のブランチ11が、生成される。第1のブランチ11は、支持空洞25が生成されるように第1の形態で製造される。
【0080】
導電性支持ピン24および第2の組織接触表面18を有する導電性電極が、第2のダイ内に配置され、その内部に、注入可能な硬化性材料が挿入される。第2のブランチ12が、材料を硬化させることによって生成される。2つのブランチ11、12の製造後、これらのブランチは、支持ピン24を支持空洞25に挿入することによってヒンジ式に互いに接合される。ヒンジ式接合の生成中、接触セクション44の少なくとも1つの接触部45は、導電性支持ピン24の円周面と接触し、それにより、第2の導体32と支持ピン24との間および第2の導体32と支持ピン24を介した第2の組織接触表面18との間の導電性接触が、確立される。
【0081】
好ましい実施形態では、電気外科器具10は、1つの単一の支持ピン24を有する1つの単一のヒンジ13と、支持ピン24が内部に延びる1つの単一の支持空洞25とを有するだけである。
【0082】
支持空洞25は、ロック部26の反対側で第1の当接面56に開く。第1の当接面56は、枢動軸Sに直交する平面内を延びる。第1の当接面56は、第1のブランチ11のコア33を取り囲む電気的絶縁外層34の領域の外側に設けることができる(図8)。
【0083】
第2の当接面57が第2のブランチ12に設けられ、そこから支持ピン24が、その自由端24aまで延びる。第2の当接面57は、好ましくは、枢動軸Sに直交する平面内を延びる。第2の当接面57は、第2のブランチ12のコア33の周りの電気的絶縁外層34の領域の外側によって形成することができる(図8)。
【0084】
第1の当接面56および/または第2の当接面57は、分離平面Tを形成し、例によれば、平面状の分離平面を形成する(図7)。2つの当接面56、57は、互いに当接するか、または互いに向かい合い、互いに隣接して配置される。好ましくは、2つの当接面56、57は、互いに直接当接する。変更された実施形態では、代替的にスライドリングなどを2つの当接面56、57の間に配置することができる。
【0085】
支持ピン24と支持空洞25とによって形成されるヒンジ13は、横断方向Qに見て、好ましくは平面状の分離平面Tの片側のみに配置される。ヒンジまたはヒンジの場所は、それぞれの反対側には存在しない。
【0086】
第2の当接面57によって形成される分離平面Tは、ヒンジ13周りの円周領域において第1のブランチ11によって貫通されない。この場合の分離平面Tはまた、ヒンジ13のヒンジ領域内に、そこを通って第1のブランチ11が延びない制限平面も形成する。
【0087】
電気外科器具10の実施形態は、ナイフ60を備え、このナイフ60は、横断方向Qに直交する移動方向Bに案内される形で移動可能に支持される。移動方向Bは、第2のブランチ12の延長方向に平行に延びる。移動方向Bは、顎14、15の構成に応じて、少なくとも部分的に湾曲して延びることができる。
【0088】
ナイフ60を案内するために、例によれば、長方形の断面を含むナイフガイド空洞61が、第2のブランチ12内に存在する。ナイフ60は、ナイフガイド空洞61の壁の側面で支持することができる。ナイフガイド空洞61は、ガイドセクション62を有し、このガイドセクション62は、ヒンジ13のヒンジ領域、したがって支持ピン24の領域内で移動方向Bに延びる。このガイドセクション62に沿って、第2のブランチ12には横断空洞63が設けられ、この横断空洞63は、横断方向Qに延び、枢動軸Sが貫通している。横断空洞63は、一端において、ナイフガイド空洞61のガイドセクション62内に開き、それぞれ他端において横断方向Qに、第2のブランチ12の外側64内に開く。この例によれば、この外側64は、第1のブランチ11から外方を向いている。
【0089】
この実施形態では、横断空洞63は、移動方向Bに延びるスロット穴65として構成される。ナイフガイド空洞61のガイドセクション62に沿った移動方向Bにおける横断空洞63またはスロット穴65の長さは、少なくとも支持ピン24の外径と同じであり、例によれば支持ピンの外径よりも長い。横断空洞63を介して、ナイフガイド空洞61へのアクセス性が保証され、このアクセス性は、横断方向Qにおける他方の側では、少なくとも部分的に支持ピン24の軸方向端面24bによって制限される。この実施形態では、軸方向端面24bは、ナイフガイド空洞61のガイドセクション62に直接隣接している。
【0090】
支持ピン24は、軸方向端面24bから自由端24aまで横断方向Qに延びる。例によれば、枢動軸Sに直交して、支持ピン24は、貫通開口部を有さずに構成される。少なくとも支持ピン24は、その軸方向端面24bとその自由端24aとの間でナイフガイド空洞61と整列する貫通開口部を有さない。そうではなく、この支持ピン24は、ナイフガイド空洞61から横断方向Qにずらされる。
【0091】
移動方向Bで見ると、ナイフガイド空洞61は、支持ピン24の軸方向端面24bの両側で、第2の当接面57に、したがって第1の当接面56にも開く。顎14、15が組織接触表面17、18の領域内で互いに当接する場合にブランチ11、12が閉じている場合、ナイフガイド空洞61は、第1の当接面56によって、支持ピン24の軸方向端面24bに隣接する移動方向Bに制限される。
【0092】
図7から特に明らかであるように、支持ピン24の軸方向端面24bは、例によれば、第2の当接面57と同じ平面内を延びる。軸方向端面24bは、第2の当接面57を基準にしてずらして配置することもできる。それぞれの場合において、ナイフガイド空洞61は、支持ピン24によって、多くとも3つの側において支持ピン24の軸方向端面24bに隣接する領域内に制限される。
【0093】
枢動軸Sを通るナイフガイド空洞61の延長により、ナイフ60の偏心配置が、回避される。したがって、ナイフ60は、ブランチ11、12の互いに対する枢動運動中においても、枢動軸Sの周りに偏心運動を実行しない。ヒンジ13は、ナイフガイド空洞61を基準にして片側のみに配置されるので、電気外科器具10の簡単かつ安価に製造可能な構成が達成され、この構成は、空洞への良好なアクセス性を可能にし、したがって、有利な洗浄または殺菌も可能にする。
【0094】
好ましい実施形態では、さらに、枢動軸Sに実質的に直交して延びるパージ開口部70が、第1のブランチ11内に設けられる。パージ開口部70は、一端において、支持空洞25内に開き、それぞれの反対側の端部上では、第1のブランチ11の外側71内に開く。パージ開口部70は、高さ方向Hに枢動軸Sに対してずらして配置される。このパージ開口部70は、実質的に半径方向に枢動軸Sまで延びる。
【0095】
2つのブランチ11、12の互いに対する枢動運動中、パージ開口部70は、枢動軸Sの周りで枢動運動を実行する。所定の開位置において、2つの組織接触表面17、18が互いに距離を置いて配置される場合、パージ開口部70の延長方向は、ナイフ60の移動方向Bに平行に配向され、パージ開口部70は、図9に概略的に示すようにナイフガイド空洞61の一セクションに沿って延びる。そうする際、ナイフガイド空洞61およびその中に案内される形で配置されたナイフ60へのアクセスは、特に、使用後の器具10の洗浄に関して改善される。
【0096】
上記で説明した電気外科器具10の実施形態は、互いに組み合わせることができるか、または互いに独立して実現することができる。特に、ナイフ60を案内するナイフガイド空洞61をヒンジ13の側部にずらして配置することを、2つの導体31、32を介した組織接触表面17、18の電気的接触とは無関係に実現することができる。これらの態様は、互いに別個に実現することができる。
【0097】
本発明は、第1のブランチ11および第2のブランチ12を有する電気外科器具10であって、第2のブランチ12の支持ピン24によってこれらのブランチを互いに枢動可能に支持する、電気外科器具に関する。第1のブランチ11は、第1の組織接触表面17を有し、第2のブランチ12は、第2の組織接触表面18を有する。2つの組織接触表面17、18は、第1のブランチ11において電気接続デバイス29と電気的に接続される。電気的接続は、少なくとも部分的に、第1のブランチ11の上またはその内部を延びるそれぞれの導体31または32を介して確立される。第2の導体32、およびオプションとして第1の導体31もまた、それぞれ、例えばプレート39からの分離によって生成することができる1つの単一の本体によって一体形成される。第2の導体32は、少なくとも1つの接触部45を有する接触セクション44を有し、この接触部45は、支持ピン24の導電性円周面46と接触し、それにより、接触セクション44と支持ピン24との間に電気的回転接続が、確立される。このようにして、第1のブランチ11内に配置された第2の導体32は、支持ピン24を介して第2のブランチ12と、さらに第2の組織接触表面18との電気接続を確立することができる。
【符号の説明】
【0098】
10 電気外科器具
11 第1のブランチ
12 第2のブランチ
13 ヒンジ
14 第1の顎
15 第2の顎
16 操作ユニット
17 第1の組織接触表面
18 第2の組織接触表面
19 第1の操作部
20 第2の操作部
24 支持ピン
24a 支持ピンの自由端
24b 支持ピンの軸方向端面
25 支持空洞
26 ロック部
27 窪み
28 リングショルダ
29 電気接続デバイス
30 外部電気接続
31 第1の導体
32 第2の導体
33 コア
34 外層
38 開口部
39 プレート
40 接続場所
41 接続セクション
42 導体セクション
43 第2の導体の遠位端
44 接触セクション
45 接触部
46 円周面
47 支持部
48 保持部
49 貫通孔
50 隙間
51 押圧部
52 リング面
55 中間層
56 第1の当接面
57 第2の当接面
60 ナイフ
61 ナイフガイド空洞
62 ガイドセクション
63 横断空洞
64 第2のブランチの外面
65 スロット穴
70 パージ開口部
71 第1のブランチの外面
B 移動方向
Q 横断方向
S 枢動軸
T 分離平面
図1
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