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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
   G04C 10/00 20060101AFI20231225BHJP
   G04G 19/00 20060101ALI20231225BHJP
   H02N 1/08 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G04C10/00 C
G04G19/00 Y
H02N1/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020096868
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021189106
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊成
(72)【発明者】
【氏名】伊原 隆史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】瀬▲崎▼ 章吾
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-70846(JP,A)
【文献】特開2002-323578(JP,A)
【文献】特開昭60-211387(JP,A)
【文献】特開2010-103671(JP,A)
【文献】特開2001-188636(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114176(WO,A1)
【文献】特開2019-174454(JP,A)
【文献】特開2009-11149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00-99/00
G04B 1/00-99/00
G04G 3/00-99/00
G06F 1/26-1/3296
H02N 1/00-1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一蓄電部と、
前記第一蓄電部から供給される電力によって駆動されて動力を発生する静電誘導変換器と、
第二蓄電部と、
第一電圧の電力を発電する静電誘導型の第一発電器を有し、前記第一発電器で発電された前記第一電圧の電力を前記第一蓄電部に蓄電する第一発電部と、
前記第一電圧よりも低圧の第二電圧の電力を発電し、前記第二電圧の電力を前記第二蓄電部に蓄電する第二発電部と、
を備えることを特徴とする時計。
【請求項2】
発振回路を有し、
前記発振回路は、前記第二蓄電部から供給される電力により動作する
請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記第二発電部が前記第一発電部と同軸上に配置されている
請求項1または2に記載の時計。
【請求項4】
前記第二発電部は、前記第二電圧の電力を発電する静電誘導型の第二発電器を有し、
前記第一発電器は、回転体に配置された第一帯電膜を有し、
前記第二発電器は、回転体に配置された第二帯電膜を有し、
周方向に沿った前記第二帯電膜の幅は、周方向に沿った前記第一帯電膜の幅よりも狭い
請求項1から3の何れか1項に記載の時計。
【請求項5】
前記第二発電部は、前記第二電圧の電力を発電する静電誘導型の第二発電器を有し、
前記第一発電器は、回転体に配置された第一帯電膜と、前記第一帯電膜に対向する第一固定電極と、を有し、
前記第二発電器は、回転体に配置された第二帯電膜と、前記第二帯電膜に対向する第二固定電極と、を有し、
軸方向に沿った前記第二帯電膜と前記第二固定電極との間の距離は、軸方向に沿った前記第一帯電膜と前記第一固定電極との間の距離よりも大きい
請求項1から3の何れか1項に記載の時計。
【請求項6】
前記第一帯電膜および前記第二帯電膜は、同じ回転体に配置されている
請求項4または5に記載の時計。
【請求項7】
前記第二発電部は、電磁変換により発電する磁気発電部であって、前記第一発電部と同軸上に配置されたロータを有する
請求項1から3の何れか1項に記載の時計。
【請求項8】
前記磁気発電部は、前記ロータと、ステータと、コイルと、を有し、
前記ロータと前記ステータとの間で作用する磁力により、軸方向において前記ロータを位置決めする
請求項7に記載の時計。
【請求項9】
前記磁気発電部は、前記ロータと、前記ロータが挿通される孔部を有するステータと、コイルと、を有し、
前記磁気発電部は、前記ロータの外周面と前記孔部の内周面との隙間が周方向に沿って一様となるように構成されている
請求項7または8に記載の時計。
【請求項10】
ぜんまいの力によって回転し、指針を回転させる香箱を備え、
前記第一発電部および前記第二発電部は、前記香箱から伝達される動力により発電する
請求項1から9の何れか1項に記載の時計。
【請求項11】
前記第一発電部および前記第二発電部に対して連結された運動体を備え、
前記第一発電部および前記第二発電部は、前記運動体から供給される動力によって発電する
請求項1から9の何れか1項に記載の時計。
【請求項12】
前記静電誘導変換器は、前記第一蓄電部から供給される電力により指針の速度を調速する
請求項1から11の何れか1項に記載の時計。
【請求項13】
前記静電誘導変換器は、指針を駆動する静電モータである
請求項1から11の何れか1項に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電誘導型の発電装置や駆動装置がある。特許文献1には、第1帯電膜及び第1対向電極間で発生した電力を出力する静電誘導発電器が開示されている。特許文献2には、複数の誘導電極を有する誘導体と、複数の導電部材を有する被誘導体と、を備える静電誘導アクチュエータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-186424号公報
【文献】特開2015-70717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電誘導型の駆動装置において高トルクを得るためには、高電圧駆動が必要である。一方、時計は、発振回路等の低電圧で動作する回路を含んでいる。各装置に応じた電圧を供給するために降圧や昇圧を行なうと、電力効率の低下を招くという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、電力効率を向上させることができる時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の時計は、第一蓄電部と、前記第一蓄電部から供給される電力を動力に変換する静電誘導変換器と、第二蓄電部と、第一電圧の電力を発電する静電誘導型の第一発電器を有し、前記第一発電器で発電された前記第一電圧の電力を前記第一蓄電部に蓄電する第一発電部と、前記第一電圧よりも低圧の第二電圧の電力を発電し、前記第二電圧の電力を前記第二蓄電部に蓄電する第二発電部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る時計は、第一発電器で発電された第一電圧の電力を第一蓄電部に蓄電する第一発電部と、第一電圧よりも低圧の第二電圧の電力を発電し、第二電圧の電力を第二蓄電部に蓄電する第二発電部と、を備える。本発明に係る時計によれば、昇圧や降圧による損失を抑制し、電力効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る時計の概略構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る時計の動力伝達経路を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る発電部および静電誘導変換器の断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る静電誘導変換器の帯電膜を示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係る発電部の帯電膜を示す図である。
図6図6は、第1実施形態に係る静電誘導変換器の電極を示す図である。
図7図7は、第1実施形態に係る発電部の電極を示す図である。
図8図8は、第1実施形態に係る時計のブロック図である。
図9図9は、第1実施形態のブレーキ制御を説明する図である。
図10図10は、第1実施形態の第一発電部の図である。
図11図11は、第1実施形態の第二発電部の図である。
図12図12は、第2実施形態に係る時計の要部を示す図である。
図13図13は、第2実施形態にかかるステータの平面図である。
図14図14は、第二発電部の構成例を示す図である。
図15図15は、第二発電器を示す平面図である。
図16図16は、第二発電器を示す平面図である。
図17図17は、第3実施形態に係る時計の断面図である。
図18図18は、第3実施形態に係る静電誘導変換器を示す図である。
図19図19は、第3実施形態に係るモータ駆動部を示す図である。
図20図20は、第3実施形態に係る時計のブロック図である。
図21図21は、実施形態の変形例に係る発電部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る時計につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[第1実施形態]
図1から図11を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、時計に関する。図1は、第1実施形態に係る時計の概略構成を示す図、図2は、第1実施形態に係る時計の動力伝達経路を示す図、図3は、第1実施形態に係る発電部および静電誘導変換器の断面図、図4は、第1実施形態に係る静電誘導変換器の帯電膜を示す図、図5は、第1実施形態に係る発電部の帯電膜を示す図、図6は、第1実施形態に係る静電誘導変換器の電極を示す図、図7は、第1実施形態に係る発電部の電極を示す図、図8は、第1実施形態に係る時計のブロック図、図9は、第1実施形態のブレーキ制御を説明する図、図10は、第1実施形態の第一発電部の図、図11は、第1実施形態の第二発電部の図である。
【0011】
図1から図3に示すように、本実施形態に係る時計1は、ぜんまい15を運針の動力源とする機械式時計である。時計1は、香箱2、指針10、増速輪列20、静電誘導変換器3、第一発電部4、および第二発電部5を有する。指針10は、秒針11、分針12、および時針13を有する。秒針11、分針12、および時針13は、増速輪列20を介して香箱2と連結されており、香箱2の回転と連動して回転する。
【0012】
図3に示す静電誘導変換器3は、指針10の回転速度を調速する調速装置である。静電誘導変換器3、第一発電部4、および第二発電部5は、同軸上に配置されている。
【0013】
図2に示すように、香箱2の内部には、ぜんまい15が収容されている。ぜんまい15は、指針10を回転させる動力源である。ぜんまい15の一端は香箱真14に接続され、ぜんまい15の他端は香箱2に接続されている。香箱真14は、時計1の筐体によって回転不能に支持されている。香箱2は、香箱真14を回転中心として香箱真14に対して相対回転する。香箱2は、巻き上げられたぜんまい15が発生する動力によって回転する。香箱2の外周面には、歯車が設けられている。
【0014】
増速輪列20は、第一回転軸21、第二回転軸22、および第三回転軸23を有する。第一回転軸21には、二番車24が固定されている。第二回転軸22には、カナ25および三番車26が固定されている。第三回転軸23には、カナ27および四番車28が固定されている。静電誘導変換器3、第一発電部4、および第二発電部5は、回転軸31を共有している。回転軸31には、カナ32、および回転体33が固定されている。
【0015】
第一回転軸21の二番車24は、香箱2の歯車およびカナ25と噛み合っている。二番車24およびカナ25によって、第一回転軸21の回転が増速されて第二回転軸22に伝達される。第二回転軸22の三番車26は、カナ27と噛み合っている。三番車26およびカナ27によって、第二回転軸22の回転が増速されて第三回転軸23に伝達される。第三回転軸23の四番車28は、カナ32と噛み合っている。四番車28およびカナ32によって、第三回転軸23の回転が増速されて回転軸31に伝達される。
【0016】
分針12は、第一回転軸21に連結されている。分針12は、例えば、第一回転軸21に固定されており、第一回転軸21の回転速度と同じ速度で回転する。秒針11は、第三回転軸23に連結されている。秒針11は、例えば、第三回転軸23に固定されており、第三回転軸23の回転速度と同じ速度で回転する。なお、図示しないが、時針13は、減速輪列を介して第一回転軸21と連結されている。
【0017】
図3に示すように、静電誘導変換器3は、基板34、固定電極35、および帯電膜36を有する。帯電膜36は、回転体33の第一面33aに配置されている。回転体33は、シリコン基板、帯電用の電極面が設けられたガラスエポキシ基板、あるいはアルミ板などの基板材料により形成された円盤形状の部材である。第一面33aは、例えば、時計1の前面側を向く面である。基板34は、回転体33の第一面33aと対向して配置されている。固定電極35は、基板34に配置されており、回転軸31の軸方向において帯電膜36と対向している。
【0018】
第一発電部4は、基板40、第一固定電極41、および第一帯電膜42を有する。第一固定電極41および第一帯電膜42は、静電誘導型の第一発電器4Aを構成している。第一帯電膜42は、回転体33の第二面33bに配置されている。第二面33bは、例えば、時計1の背面側を向く面である。基板40は、回転体33の第二面33bと対向して配置されている。第一固定電極41は、基板40に配置されており、回転軸31の軸方向において第一帯電膜42と対向している。
【0019】
第二発電部5は、基板40、第二固定電極51、および第二帯電膜52を有する。第二固定電極51および第二帯電膜52は、静電誘導型の第二発電器5Aを構成している。第二帯電膜52は、回転体33の第二面33bに配置されている。第二固定電極51は、基板40に配置されており、回転軸31の軸方向において第二帯電膜52と対向している。
【0020】
静電誘導変換器3の帯電膜36、第一帯電膜42、および第二帯電膜52は、エレクトレット材料で構成されている薄膜である。本実施形態の帯電膜36,42,52は、マイナスの電位に帯電している。
【0021】
図4に示すように、静電誘導変換器3は、複数の帯電膜36を有する。複数の帯電膜36は、回転軸31を中心とする周方向に沿って等間隔で配置されている。隣接する二つの帯電膜36の間には、隙間37が設けられている。隙間37の幅は、例えば、帯電膜36の幅よりも大きい。
【0022】
図5に示すように、第一発電部4は、複数の第一帯電膜42を有する。第一帯電膜42は、第二面33bの外側領域33cに配置されている。外側領域33cは、第二面33bのうち、半径方向の外側に位置する領域である。複数の第一帯電膜42は、回転軸31を中心とする周方向に沿って等間隔で配置されている。隣接する二つの第一帯電膜42の間には、隙間43が設けられている。隙間43の幅は、例えば、第一帯電膜42の幅よりも大きい。
【0023】
第二発電部5は、複数の第二帯電膜52を有する。第二帯電膜52は、第二面33bの内側領域33dに配置されている。内側領域33dは、第二面33bのうち、半径方向の内側に位置する領域である。つまり、第二帯電膜52は、第一帯電膜42よりも半径方向の内側に配置されている。複数の第二帯電膜52は、回転軸31を中心とする周方向に沿って等間隔で配置されている。隣接する二つの第二帯電膜52の間には、隙間53が設けられている。隙間53の幅は、例えば、第二帯電膜52の幅よりも大きい。
【0024】
第二帯電膜52の幅W2は、第一帯電膜42の幅W1よりも狭い。幅W1,W2は、周方向に沿った幅である。第一帯電膜42の幅W1は、例えば、半径方向における第一帯電膜42の中心位置の幅であってもよい。この場合、比較対象とする第二帯電膜52の幅W2は、半径方向における第二帯電膜52の中心位置の幅である。
【0025】
第一帯電膜42の幅W1は、第一帯電膜42における幅の平均値であってもよい。言い換えると、第一帯電膜42の幅W1は、下記式(1)で算出されてもよい。幅W1aは、第一帯電膜42の最内周の辺42aの長さである。例示された最内周の辺42aの形状は、円弧形状である。幅W1bは、第一帯電膜42の最外周の辺42bの長さである。例示された最外周の辺42bの形状は、円弧形状である。
W1=(W1a+W1b)/2 (1)
【0026】
第一帯電膜42の幅W1が幅の平均値である場合、比較対象とする第二帯電膜52の幅W2は、第二帯電膜52における幅の平均値である。この場合、第二帯電膜52の幅W2は、下記式(2)で算出されてもよい。幅W2bは、第二帯電膜52の最外周の辺52bの長さである。例示された第二帯電膜52の形状は、扇形状である。つまり、第二帯電膜52の最内周では、幅が実質的に0である。例示された最外周の辺52bの形状は、円弧形状である。
W2=W2b/2 (2)
なお、図示しないが、第二帯電膜52の最内周は、ある程度の幅を有していてもよい。その場合、第二帯電膜52の幅W2は、下記式(3)で算出されてもよい。幅W2aは、第二帯電膜52の最内周の辺の長さである。
W2=(W2a+W2b)/2 (3)
【0027】
なお、第一帯電膜42の幅W1は、第一帯電膜42の最外周の辺42bの長さであってもよい。この場合、比較対象とする第二帯電膜52の幅W2は、第二帯電膜52の最外周の辺52bの長さである。
【0028】
図6に示すように、静電誘導変換器3の固定電極35は、複数の第一電極35aおよび複数の第二電極35bを有する。第一電極35aおよび第二電極35bは、基板34に形成されている。第一電極35aおよび第二電極35bは、回転軸31を中心とする周方向に沿って交互に、かつ等間隔で配置されている。各第一電極35aは、配線G1を介して駆動回路8に接続されている。各第二電極35bは、配線G2を介して駆動回路8に接続されている。駆動回路8は、第一蓄電部6から供給される電力によって第一電極35aおよび第二電極35bに対する駆動信号を生成する回路である。
【0029】
図7に示すように、第一発電部4の第一固定電極41および第二発電部5の第二固定電極51は、基板40の同じ面に配置されている。より詳しくは、第一固定電極41は、基板40の外側領域40aに配置され、第二固定電極51は、基板40の内側領域40bに配置されている。外側領域40aは、基板40のうち半径方向の外側の領域である。内側領域40bは、基板40における外側領域40aよりも半径方向の内側の領域である。
【0030】
第一固定電極41は、複数の第一電極41aおよび複数の第二電極41bを有する。第一電極41aおよび第二電極41bは、回転軸31を中心とする周方向に沿って交互に、かつ等間隔で配置されている。各第一電極41aは、配線G3を介して整流回路16に接続されている。各第二電極41bは、配線G4を介して整流回路16に接続されている。整流回路16は、第一電極41aと第二電極41bとの間の電位差により発生する電流を整流して第一蓄電部6に蓄電する。
【0031】
第二固定電極51は、複数の第一電極51aおよび複数の第二電極51bを有する。第一電極51aおよび第二電極51bは、回転軸31を中心とする周方向に沿って交互に、かつ等間隔で配置されている。各第一電極51aは、配線G5を介して整流回路17に接続されている。各第二電極51bは、配線G6を介して整流回路17に接続されている。整流回路17は、第一電極51aと第二電極51bとの間の電位差により発生する電流を整流して第二蓄電部7に蓄電する。
【0032】
図8は、実施形態に係る時計1のブロック図である。図8に示すように、第一蓄電部6は、駆動回路8に電力を供給する。第二蓄電部7は、歩進制御部9に電力を供給する。歩進制御部9は、時計1の歩進制御を行なう制御回路である。歩進制御部9は、発振回路9aを有し、発振回路9aから出力される発信信号に基づいて指針10の回転速度を制御する。発振回路9aは、第二蓄電部7から供給される低圧の電力によって動作する。歩進制御部9は、例えば、回転体33の回転速度に同期した周波数信号を整流回路16または整流回路17から取得する。歩進制御部9は、周波数信号と、発振回路9aから取得した発信信号との比較結果に基づいて駆動回路8に対してブレーキ信号を出力する。
【0033】
歩進制御部9は、例えば、周波数信号が基準周波数よりも高い周波数を示している場合にブレーキ信号を出力する。また、歩進制御部9は、周波数信号と基準周波数との差分が大きいほど、ブレーキ力を大きくさせるブレーキ信号を駆動回路8に対して出力する。
【0034】
駆動回路8は、ブレーキ信号に応じて、静電誘導変換器3によってブレーキ力を発生させる。駆動回路8は、例えば、図9に示す構成を有する。図9に例示された駆動回路8は、第一スイッチ81および第二スイッチ82を有する。第一スイッチ81は、第一蓄電部6の正極と第一電極35aとの間に介在するスイッチである。第二スイッチ82は、第一蓄電部6の負極と第二電極35bとの間に介在するスイッチである。
【0035】
駆動回路8は、ブレーキ力を発生させる場合、例えば、図9に示すように第一スイッチ81および第二スイッチ82をONとする。これにより、第一電極35aと帯電膜36との間には吸引力F1が発生し、第二電極35bと帯電膜36との間には反発力F2が発生する。この状態で回転体33が回転すると、コギングトルクが発生し、回転体33に対してブレーキ力が作用する。
【0036】
駆動回路8は、ブレーキ信号に応じて、発生させるブレーキ力の大きさを調節することができる。例えば、ブレーキ信号には、発生させるブレーキ力の指令値が含まれる。駆動回路8は、例えば、指令値に応じてブレーキ制御のデューティ比を変化させる。デューティ比は、単位時間のうち、ブレーキ力を発生させる時間の割合である。駆動回路8は、デューティ比に応じて第一スイッチ81および第二スイッチ82のON/OFFを切り替える。
【0037】
なお、駆動回路8は、第一蓄電部6の正極に接続する電極を帯電膜36の回転位置に応じて切り替えてもよい。例えば、駆動回路8は、図9に示すように第一電極35aが帯電膜36と対向しているときは、第一電極35aを第一蓄電部6の正極に接続する。この場合、駆動回路8は、第二電極35bを第一蓄電部6の負極に接続してもよい。一方、駆動回路8は、帯電膜36に対して第二電極35bが対向している場合、第二電極35bを第一蓄電部6の正極と接続する。この場合、駆動回路8は、第一電極35aを第一蓄電部6の負極に接続してもよい。このような制御により、回転体33に作用させるブレーキ力の増加を図ることができる。
【0038】
駆動回路8は、第一電極35aと第二電極35bとを電気的に遮断することでブレーキ力を発生させてもよい。第一電極35aと第二電極35bとが遮断されたオープン状態となることで、第一電極35aの電位と第二電極35bの電位との間に電位差が生じる。よって、コギングトルクにより回転体33にブレーキ力が作用する。このような制御により、消費電力を抑制しつつブレーキ力を発生させることができる。なお、オープン状態では、第一蓄電部6から固定電極35に電圧を印加する場合と比較して、第一電極35aと第二電極35bとの間の電位差は小さい。つまり、オープン状態では、小さなブレーキ力を発生させることができる。
【0039】
本実施形態の時計1は、第二発電器5Aの発電電圧である第二電圧V2が、第一発電器4Aの発電電圧である第一電圧V1よりも低圧である。つまり、第二蓄電部7に蓄電される電圧は、第一蓄電部6に蓄電される電圧よりも低圧である。第二蓄電部7は、発振回路9aを含む歩進制御部9に電力を供給する低圧系の蓄電装置である。第二蓄電部7から歩進制御部9に供給する電圧は、例えば、2[V]程度である。この場合、第二発電器5Aは、例えば、第二電圧V2が2[V]以上5[V]以下となるように構成される。
【0040】
第一蓄電部6は、上記のように、静電誘導変換器3に対して電力を供給する高圧系の蓄電装置である。第一蓄電部6から静電誘導変換器3に供給する電圧は、例えば、30[V]程度である。この場合、第一発電器4Aは、例えば、第一電圧V1が30[V]となるように構成される。なお、第一発電器4Aの発電電圧および第二発電器5Aの発電電圧の値は、例えば、実効電圧の値である。第一電圧V1および第二電圧V2は、時計1の動作状態等に応じて変動する場合がある。
【0041】
本実施形態では、以下に図10および図11を参照して説明するように、第一電圧V1が所望の電圧となるように第一帯電膜42の幅W1が設定され、第二電圧V2が所望の電圧となるように第二帯電膜52の幅W2が設定されている。図10には、第一帯電膜42と第一固定電極41との間に発生する電気力線が矢印Ar1で示されている。図11には、第二帯電膜52と第二固定電極51との間に発生する電気力線が矢印Ar2で示されている。
【0042】
上述したように、第二帯電膜52の幅W2は、第一帯電膜42の幅W1よりも狭い。従って、第一帯電膜42と第二帯電膜52とを比較した場合、第二帯電膜52の方が電気力線が少なくなる。その結果、第二発電器5Aは、相対的に低圧な第二電圧V2で発電し、第一発電器4Aは、相対的に高圧の第一電圧V1で発電する。なお、例示された第一発電器4Aでは、第一固定電極41の幅は、第一帯電膜42の幅W1と同様である。また、例示された第二発電器5Aでは、第二固定電極51の幅は、第二帯電膜52の幅W2と同様である。
【0043】
このように、本実施形態の時計1は、発電電圧が異なる二つの発電部4,5、および蓄電電圧が異なる二つの蓄電部6,7を有している。よって、降圧や昇圧による損失を低減させることができる。例えば、静電誘導変換器3におけるブレーキ力を増加させるためには、静電誘導変換器3に印加する電圧を高電圧とすることが有効である。この場合、一つの蓄電部から歩進制御部9および静電誘導変換器3の両方に対して電力を供給しようとする場合、降圧回路または昇圧回路の何れかが必要となる。これに対して、本実施形態の時計1は、静電誘導変換器3に対しては第一蓄電部6から高電圧を供給し、歩進制御部9に対しては第二蓄電部7から低電圧を供給することで、エネルギー損失を低減させることができる。
【0044】
また、本実施形態の第一発電器4A及び第二発電器5Aは、香箱2から伝達される動力により発電する。つまり、第一発電器4A及び第二発電器5Aは、常時発電を行なうことができる。従って、第一蓄電部6及び第二畜電部7として小容量の蓄電装置を用いることができる。言い換えると、第一蓄電部6及び第二畜電部7を高容量とする必要がないため、小型でリークの少ない蓄電池を用いることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る時計1は、第一蓄電部6と、静電誘導変換器3と、第二蓄電部7と、第一発電部4と、第二発電部5と、を有する。静電誘導変換器3は、第一蓄電部6から供給される電力を動力に変換する変換器である。第一発電部4は、第一電圧V1の電力を発電する静電誘導型の第一発電器4Aを有する。第一発電部4は、第一発電器4Aで発電された第一電圧V1の電力を第一蓄電部6に蓄電する。第二発電部5は、第一電圧V1よりも低圧の第二電圧V2の電力を発電し、第二電圧V2の電力を第二蓄電部7に蓄電する。本実施形態の時計1は、昇圧や降圧による損失を抑制し、時計1の電力効率を向上させることができる。
【0046】
本実施形態の時計1は、発振回路9aを有する。発振回路9aは、第二蓄電部7から供給される電力により動作する。低圧の第二蓄電部7から発振回路9aに電力を供給することで、時計1の電力効率が向上する。
【0047】
本実施形態の時計1では、第二発電部5が第一発電部4と同軸上に配置されている。これにより、時計1の小型化が実現される。
【0048】
本実施形態の第二発電部5は、第二電圧V2の電力を発電する静電誘導型の第二発電器5Aを有する。第一発電器4Aは、回転体33に配置された第一帯電膜42を有する。第二発電器5Aは、回転体33に配置された第二帯電膜52を有する。周方向に沿った第二帯電膜52の幅W2は、周方向に沿った第一帯電膜42の幅W1よりも狭い。よって、第二発電器5Aにおける発電電圧を第一発電器4Aにおける発電電圧よりも低圧とすることができる。
【0049】
本実施形態の第一帯電膜42および第二帯電膜52は、同じ回転体33に配置されている。一つの回転体33に二つの帯電膜42,52が配置されることで、軸方向の小型化が実現される。
【0050】
本実施形態の時計1は、ぜんまい15の力によって回転し、指針10を回転させる香箱2を有する。第一発電部4および第二発電部5は、香箱2から伝達される動力により発電する。第一発電部4が常時発電を行なうため、第一蓄電部6として小容量の蓄電装置を用いることができる。
【0051】
本実施形態の静電誘導変換器3は、第一蓄電部6から供給される電力により指針10の速度を調速する。本実施形態の静電誘導変換器3は、高圧の電力により高い調速能力で調速を行なうことができるため、よりトルクの大きなブレーキ力で回転体33の回転速度の制御を行うことが出来る。
【0052】
[第2実施形態]
図12から図16を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図12は、第2実施形態に係る時計の要部を示す図、図13は、第2実施形態にかかるステータの平面図、図14は、第二発電部の構成例を示す図、図15および図16は、第二発電器を示す平面図である。第2実施形態の時計1において、上記第1実施形態と異なる点は、例えば、第二発電部5として磁気発電部を有する点である。
【0053】
図12および図13に示すように、第2実施形態に係る第二発電部5は、電磁変換により発電する磁気発電部である。第2実施形態の第二発電部5は、第二発電器5Bを有する。第二発電器5Bは、ロータ54と、ステータ55と、コイル56と、を有する。ロータ54は、例えば、永久磁石を有する回転体である。例示されたロータ54の形状は、円環形状であり、回転軸31に固定されている。ロータ54は、N極54aおよびS極54bを有する。
【0054】
回転軸31は、受石38a,38bによって回転自在に支持されている。一方の受石38aは、回転軸31の一端に配置されており、他方の受石38bは、回転軸31の他端に配置されている。受石38a,38bは、例えば、回転軸31の端部が挿入される凹部を有する。受石38a,38bの凹部の内径は、回転軸31の外径よりも大きい。
【0055】
ステータ55は、磁性材料によって環状に形成されている。ステータ55は、ロータ54によって発生した磁界をコイル56に誘導する部材である。ステータ55は、ロータ54が挿入される孔部55aを有する。図13に示すように、孔部55aの形状は、円形である。第二発電器5Bは、ロータ54の静的安定点が生じないように構成されている。例えば、例示された第二発電器5Bは、ロータ54とステータ55との隙間Gp1が周方向に沿って一様となるように構成されている。隙間Gp1は、ロータ54の外周面と孔部55aの内周面との隙間である。隙間Gp1の大きさが周方向に沿って一様とされていることで、ロータ54の静的安定点が存在しない。その結果、ロータ54の回転負荷が軽減され、第二発電器5Bの発電効率が向上する。
【0056】
コイル56は、ステータ55に巻き付けられている。コイル56は、例えば、整流回路17を介して第二蓄電部7に接続される。香箱2から伝達される動力により回転軸31が回転すると、ロータ54がステータ55に対して相対回転し、電磁誘導による発電がなされる。
【0057】
図12に示すように、第一発電部4は、上記第1実施形態の第一発電器4Aと類似した第一発電器4Bを有する。第一発電器4Bは、第一固定電極41および第一帯電膜42を有する。第一帯電膜42は、回転体33の第二面33bに配置されている。第2実施形態の第二面33bには、第二帯電膜52は設けられていない。第一固定電極41は、基板40に配置されている。第2実施形態の基板40には、第二固定電極51は設けられていない。第一固定電極41は、整流回路16を介して第一蓄電部6に接続されている。
【0058】
第一発電器4Bは、第一電圧V1で発電するように構成されている。第一発電部4は、第一発電器4Bで発電された第一電圧V1の電力を第一蓄電部6に蓄電する。第二発電器5Bは、第一電圧V1よりも低圧の第二電圧V2で発電するように構成されている。第二発電部5は、第二発電器5Bで発電された第二電圧V2の電力を第二蓄電部7に蓄電する。なお、第一発電部4は発電電圧が高電圧となる静電誘導変換器で、第二発電部5はロータ54、ステータ55、コイル56を用いた電磁誘導による発電であるため、第二発電部5の第二電圧V2は第一発電器4Bの第一電圧V1よりも低い電圧となる。
【0059】
第2実施形態の時計1では、第二発電器5Bによって軸方向Xにおける回転軸31の位置決めがなされる。軸方向Xは、回転軸31の中心軸線の方向である。第二発電器5Bでは、ロータ54とステータ55との間に磁力による引力が作用する。この引力は、軸方向Xにおいてロータ54を位置決めすることができる。第二発電器5Bは、例えば、受石38a,38bの何れに対しても軸方向Xにおいて回転軸31を浮かせた状態とするように構成される。言い換えると第二発電器5Bは、回転軸31の先端を受石38a,38bの何れにも当接させないように構成される。このような構成により、回転軸31と受石38a,38bとの間の摺動摩擦が低減される。
【0060】
なお、第二発電部5は、図14から図16に示すように構成されていてもよい。図14に示すように、第二発電部5は、二つの第二発電器5C,5Dを有する。二つの第二発電器5C,5Dは、回転体33を挟んで軸方向Xの両側に配置されている。
【0061】
図14および図15に示すように、一方の第二発電器5Cは、ロータ54、ステータ55、およびコイル56を有する。ロータ54は、回転軸31に対して固定されており、かつ回転体33に対して受石38aの側に配置されている。軸方向視した場合のロータ54の形状は、円環形状である。ステータ55は、ロータ54が挿入される孔部55aを有する。図15に示すように、ステータ55の磁極55b,55cは、第一方向Y1において対向している。第一方向Y1は、回転軸31の軸方向Xに対して直交する方向である。第二発電器5Cは、受石38a、38bによって第一方向Y1、第二方向Y2が位置決めされるため、ロータ54とステータ55との隙間Gp1が周方向に沿って一様となるように構成されている。
【0062】
図14および図16に示すように、他方の第二発電器5Dは、ロータ57、ステータ58、およびコイル59を有する。ロータ57は、回転軸31に対して固定されており、かつ回転体33に対して受石38bの側に配置されている。軸方向視した場合のロータ57の形状は、円環形状である。ステータ58は、ロータ57が挿入される孔部58aを有する。図16に示すように、ステータ58の磁極58b,58cは、第二方向Y2において対向している。第二方向Y2は、回転軸31の軸方向Xおよび第一方向Y1のそれぞれに対して直交する方向である。第二発電器5Cと同様に第二発電器5Dは、ロータ57とステータ58との隙間Gp2が周方向に沿って一様となるように構成されている。
【0063】
上記のように第二発電器5Cの磁極55b,55cの対向方向と、第二発電器5Dの磁極58b,58cの対向方向とが直交している。これにより、第二発電部5は、第一方向Y1および第二方向Y2において回転軸31を位置決めすることができる。その結果、回転軸31の外周面と受石38a,38bとの間の摺動摩擦が低減される。
【0064】
以上説明したように、第2実施形態に係る第二発電部5は、電磁変換により発電する磁気発電部である。磁気発電部である第二発電器5Bは、ロータ54と、ステータ55と、コイル56と、を有する。第二発電器5Bは、ロータ54とステータ55との間で作用する磁力により、軸方向Xにおいてロータ54を位置決めする。よって、回転軸31の摺動摩擦を低減させることができる。
【0065】
本実施形態の第二発電器5B,5C,5Dは、ロータ54,57の外周面と孔部55a,58aの内周面との隙間Gp1,Gp2が周方向に沿って一様となるように構成されている。これにより、静的安定点が無くなることで、ロータ54,57の回転負荷が軽減される。
【0066】
[第3実施形態]
図17から図20を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記第1実施形態および第2実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図17は、第3実施形態に係る時計の断面図、図18は、第3実施形態に係る静電誘導変換器を示す図、図19は、第3実施形態に係るモータ駆動部を示す図、図20は、第3実施形態に係る時計のブロック図である。第3実施形態の時計1において、上記各実施形態と異なる点は、例えば、第一発電部4および第二発電部5が回転錘68から供給される動力によって発電する点である。
【0067】
図17に示すように、回転軸31は、地板64および受け板65によって支持されている。地板64および受け板65は、時計1の外装ケース18に対して固定されている。外装ケース18の前面は、透明な風防19によって閉塞されている。地板64は、回転軸31の一端を支持する受石64aを有する。受け板65は、回転軸31の他端を支持する受石65aを有する。
【0068】
回転体33は、回転軸31に対して固定されている。回転体33の一面には、第一帯電膜42および第二帯電膜52が配置されている。第一帯電膜42および第二帯電膜52の形状および回転体33に対する配置は、上記第1実施形態における形状および配置と同様である。基板40は、地板64に対して固定されており、回転体33と対向している。基板40には、第一固定電極41および第二固定電極51が配置されている。第一固定電極41は、第一帯電膜42と対向しており、第二固定電極51は、第二帯電膜52と対向している。なお、第一帯電膜42および第二帯電膜52は、回転体33の異なる面に配置されてもよい。
【0069】
回転軸31には、歯車66aが固定されている。歯車66aは、回転軸67の歯車66bと噛み合っている。回転軸67は、受け板65の軸受65bによって回転自在に支持されている。回転錘68は、回転軸67に対して固定されており、回転軸67と一体回転する運動体である。回転錘68は、ユーザの腕の動きなどを捉えて回転する錘である。回転錘68の形状は、例えば、扇形状または半円形状である。
【0070】
回転錘68が回転すると、その回転運動が歯車66bから歯車66aに伝達される。歯車66bから歯車66aに伝達された回転トルクにより、回転体33が基板40に対して相対回転する。第一発電部4では、第一固定電極41に対して第一帯電膜42が相対回転することにより発電がなされる。第二発電部5では、第二固定電極51に対して第二帯電膜52が相対回転することにより発電がなされる。
【0071】
本実施形態の静電誘導変換器3は、指針10を運針させる静電モータである。図17および図18に示すように、静電誘導変換器3は、回転軸75、回転体70、帯電膜76、第一電極71、第二電極72、第三電極73、および基板78を有する。回転軸75は、地板64等によって回転自在に支持されている。回転体70は、回転軸75に対して固定されており、回転軸75と一体回転する。帯電膜76は、回転体70の一面に、周方向に沿って等間隔で配置されている。
【0072】
基板78は、回転体70と対向して配置されている。基板78には、複数の電極群74が配置されている。電極群74は、軸方向において帯電膜76と対向するように、周方向に沿って配置されている。一つの電極群74は、第一電極71、第二電極72、および第三電極73を一つずつ有する。第一電極71、第二電極72、および第三電極73は、この順序で回転体70の回転方向に沿って並んでいる。
【0073】
静電誘導変換器3は、図19に示すモータ駆動部80によって駆動される。モータ駆動部80は、静電誘導変換器3に対する駆動信号を出力する駆動回路である。モータ駆動部80は、第一駆動部80a、第二駆動部80b、および第三駆動部80cを有する。
【0074】
第一駆動部80aは、トランジスタP1およびトランジスタN1を有する。トランジスタP1は、接地電位VDDと第一電極71との間に介在している。トランジスタP1は、ゲート端子Gに供給される制御信号に応じて第一電極71と接地電位VDDとを接続し、あるいは第一電極71と接地電位VDDとを遮断する。
【0075】
トランジスタN1は、電源VSSと第一電極71との間に介在している。電源VSSの電位は、例えば、接地電位VDDよりも低い負の電位である。トランジスタN1は、ゲート端子Gに供給される制御信号に応じて第一電極71と電源VSSとを接続し、あるいは第一電極71と電源VSSとを遮断する。第一駆動部80aは、第一電極71の状態を接地電位VDDと接続された接地状態、電源VSSと接続された印加状態、または接地電位VDDおよび電源VSSの何れとも遮断されたオープン状態、の何れかに切り替える。
【0076】
第二駆動部80bは、接地電位VDDと第二電極72との間に介在するトランジスタP2、および電源VSSと第二電極72との間に介在するトランジスタN2を有する。第二駆動部80bは、第二電極72の状態を接地状態、印加状態、またはオープン状態、の何れかに切り替える。
【0077】
第三駆動部80cは、接地電位VDDと第三電極73との間に介在するトランジスタP3、および電源VSSと第三電極73との間に介在するトランジスタN3を有する。第三駆動部80cは、第三電極73の状態を接地状態、印加状態、またはオープン状態、の何れかに切り替える。モータ駆動部80は、第一電極71、第二電極72、および第三電極73に対して順次駆動パルスを出力することで、回転体70を回転させる。
【0078】
図20に示すように、第一発電部4は、整流回路16を介して第一蓄電部6に接続されている。第一発電部4は、発電した第一電圧V1の電力を第一蓄電部6に蓄電する。第一蓄電部6は、モータ駆動部80に対して電力を供給する。
【0079】
第二発電部5は、整流回路17を介して第二蓄電部7に接続されている。第二発電部5は、発電した第二電圧V2の電力を第二蓄電部7に蓄電する。第二蓄電部7は、制御部84に対して電力を供給する。制御部84は、時計1を制御する制御回路である。制御部84は、発振回路84aを有しており、発振回路84aから出力される発信信号に基づいて指針10の運針制御を行なう。発振回路84aは、第二蓄電部7から供給される低圧の電力によって動作する。制御部84は、発信信号に基づいて内部時刻を算出し、モータ駆動部80に対して運針指令を出力する。
【0080】
静電誘導変換器3は、輪列90を介して指針10に接続されている。輪列90は、例えば、回転軸75の回転を減速して指針10に伝達する減速輪列である。時計1は、静電誘導変換器3によって、秒針11、分針12、および時針13の全てを運針させることができる。時計1は、指針10の一部、例えば秒針11のみを静電誘導変換器3で運針させてもよい。この場合、時計1は、分針12および時針13を運針させる電磁モータを有していてもよい。
【0081】
[実施形態の変形例]
上記各実施形態の変形例について説明する。図21は、実施形態の変形例に係る発電部の断面図である。第二発電部5の発電電圧を第一発電部4の発電電圧よりも低圧とする手段として、第二固定電極51と第二帯電膜52との距離が大きくされてもよい。例えば、図21に示すように、第二固定電極51と第二帯電膜52との距離Gp4が第一固定電極41と第一帯電膜42との距離Gp3よりも大きくされてもよい。なお、距離Gp3,Gp4は、軸方向Xの距離である。
【0082】
第一発電部4と第二発電部5は、別軸上に配置されてもよい。例えば、第一発電部4は、香箱2から伝達される動力によって発電し、第二発電部5は、回転錘68から伝達される動力によって発電してもよい。
【0083】
上記の各実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 時計
2 香箱
3 静電誘導変換器
4:第一発電部、 4A,4B:第一発電器
5:第二発電部、 5A,5B,5C,5D:第二発電器
6 第一蓄電部
7 第二蓄電部
8 駆動回路
9:歩進制御部、 9a:発振回路
10 指針
11:秒針、 12:分針、 13:時針
14 香箱真
15 ぜんまい
16,17:整流回路、 18:外装ケース、 19:風防
20 増速輪列
21:第一回転軸、 22:第二回転軸、 23:第三回転軸、 24:二番車、
25:カナ、 26:三番車、 27:カナ、 28:四番車
31:回転軸、 32:カナ、 33:回転体、 33a:第一面、 33b:第二面
33c:外側領域、 33d:内側領域
34:基板、 35:固定電極、 35a:第一電極、 35b:第二電極
36:帯電膜、 37:隙間、 38a,38b:受石
40:基板、 40a:外側領域、 40b:内側領域、 41:第一固定電極
42:第一帯電膜、 42a:最内周の辺、 42b:最外周の辺、 43:隙間
51:第二固定電極、 52:第二帯電膜
52b:最外周の辺、 53:隙間、 54:ロータ、 55:ステータ
55a:孔部、 56:コイル
64:地板、 65:受け板、 66a,66b:歯車、 67:回転軸、 68:回転錘
70回転体、 71:第一電極、 72:第二電極、 73:第三電極
75:回転軸、 76:帯電膜、 77:貫通孔、 78:基板
80:モータ駆動部、 80a:第一駆動部、 80b:第二駆動部、 80c:第三駆動部
84:制御部、 84a:発振回路
V1:第一電圧、 V2:第二電圧
W1:第一帯電膜の幅、 W2:第二帯電膜の幅
X 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21