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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】作業ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20231225BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020105323
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021197068
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】布施 陽一
(72)【発明者】
【氏名】金子 和弘
(72)【発明者】
【氏名】中次 幸一
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-92401(JP,A)
【文献】特開2018-117564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00- 1/12
A01D 34/02-34/408
A47L 9/22- 9/32
A01B 69/00-69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業ロボットと、前記作業ロボットが作業を行う作業領域を設定する設定部とを備え、
前記作業ロボットは、
自律走行可能な走行部を備える機体と、
前記機体の走行経路に沿って作業を行う作業部と、
前記走行部と前記作業部を駆動する駆動部と、
前記駆動部の電源となるバッテリーとを備え、
前記設定部は、
設定入力された優先場所の位置情報に基づき、前記作業ロボットの作業能力を考慮して、作業完了可能な優先作業領域を区画する作業境界線を設定することを特徴とする作業ロボットシステム。
【請求項2】
前記作業能力が、前記バッテリーの充電に関することを特徴とする請求項1記載の作業ロボットシステム。
【請求項3】
前記作業能力が、処理可能面積であることを特徴とする請求項1記載の作業ロボットシステム。
【請求項4】
前記作業能力が、前記作業ロボットが備える内部メモリの容量に依存することを特徴とする請求項1記載の作業ロボットシステム。
【請求項5】
前記設定部は、非優先場所の位置情報が入力された場合に、前記非優先場所の周囲を前記優先作業領域から外すように、前記作業境界線を設定することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の作業ロボットシステム。
【請求項6】
前記優先場所の位置情報は、点情報として入力されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載の作業ロボットシステム。
【請求項7】
前記優先場所の位置情報は、線情報として入力されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載の作業ロボットシステム。
【請求項8】
前記優先場所の位置情報は、地図情報が表示された表示画面へのタッチ入力又はカーソル入力でなされることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項記載の作業ロボットシステム。
【請求項9】
前記設定部は、前記優先場所の位置情報が複数設定された場合に、1つの前記優先場所の位置情報によって設定された優先作業領域内の作業が終了した後に、他の前記優先場所の位置情報に対する優先作業領域を設定することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項記載の作業ロボットシステム。
【請求項10】
前記設定部は、前記作業ロボットに搭載されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項記載の作業ロボットシステム。
【請求項11】
前記設定部は、前記作業ロボットとネットワークを介して接続されたサーバーに設けられていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項記載の作業ロボットシステム。
【請求項12】
前記設定部は、前記バッテリーを充電する充電基地に設けられていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項記載の作業ロボットシステム。
【請求項13】
前記優先場所の位置情報をユーザーが仮の作業境界線によって入力した場合に、前記設定部は、前記仮の作業境界線を修正して前記作業境界線を設定することを特徴とする請求項1~12のいずれか1項記載の作業ロボットシステム。
【請求項14】
前記作業部は、鉛直軸周りに回転する草刈り刃を備えることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項記載の作業ロボットシステム。
【請求項15】
前記作業ロボットは、前記優先作業領域内で選択された作業モードで作業を行うことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項記載の作業ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行しながら草刈りなどの作業を行う作業ロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業領域内を自律走行しながら走行経路に沿って草刈りなどの作業を行う作業ロボットが知られている。作業ロボットは、GPSなどの衛星測位システムを活用するか、或いは作業現場に設置された電子タグやワイヤなどの基準位置を検知して、現在の作業ロボットの位置が設定された作業領域内に位置するように自律走行を行う。
【0003】
下記の特許文献1に記載された従来技術は、作業ロボットの制御装置が、予めユーザーが指定した仮想境界線を介して作業領域を複数領域に分割することで、作業領域内に優先作業領域を設定し、設定された優先作業領域内を機体が自律走行するように、機体の走行手段を制御するものであり、検出された機体の位置が仮想境界線に到達したと判断すると、機体を優先作業領域内に向けて旋回する制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5973608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術によると、ユーザーが優先作業領域を区画する仮想境界線を設定していることで、作業前にユーザーに対して大きな設定負担を強いる問題があった。また、ユーザーは、設定時に現在の作業ロボットの可能作業時間などを把握していない場合があり、区画された優先作業領域内での作業ロボットの作業が、中途半端な状態で止まってしまったり、区画された優先作業領域が広すぎて、所望の時間内に作業が完了できなかったりして、区画された優先作業領域内での作業を効率的に完了させることができない問題があった。
【0006】
また、作業前に複数の作業領域を設定して、その優先順位をスケジューリングすることが考えられるが、そのような場合には、前述した問題がより顕在化することになる。すなわち、1つの作業領域の作業を終了した時点での作業ロボットの作業能力は、複数の作業領域を設定する際には事前に把握することができないので、複数の作業領域の作業を優先順位に応じて進めるに際して、1つの作業領域内では作業が完了できたとしても、次の作業領域内での作業が完了できない事態が生じる問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、作業ロボットにおいて、作業前におけるユーザーの設定負担を軽減すること、設定された作業領域内での作業が完了しない事態を無くして、優先作業領域内での作業を効率的に完了させること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
作業ロボットと、前記作業ロボットが作業を行う作業領域を設定する設定部とを備え、前記作業ロボットは、自律走行可能な走行部を備える機体と、前記機体の走行経路に沿って作業を行う作業部と、前記走行部と前記作業部を駆動する駆動部と、前記駆動部の電源となるバッテリーとを備え、前記設定部は、設定入力された優先場所の位置情報に基づき、前記作業ロボットの作業能力を考慮して、作業完了可能な優先作業領域を区画する作業境界線を設定することを特徴とする作業ロボットシステム。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴による本発明によると、作業ロボットによる作業前に、優先作業領域を設定するユーザーの負担を軽減することができる。また、本発明によると、優先作業領域内での作業を効率的に完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】作業ロボットシステムの説明図。
図2】作業ロボットの説明図((a)が側面視、(b)が平面視の説明図)。
図3】作業ロボットシステムのブロック図。
図4】制御部の説明図。
図5】設定部の設定例を示した説明図((a)が優先場所の入力例(点入力の場合)、(b)が作業境界線の出力例)。
図6A】設定部の設定例を示した説明図((a)が優先場所の入力例(線入力の場合)、(b)が作業境界線の出力例)。
図6B】設定部の設定例を示した説明図((c)が優先場所の入力例(線入力方向ありの場合)、(d)が作業境界線の出力例)。
図7】設定部の設定例を示した説明図((a)が優先場所と非優先場所の入力例、(b)が作業境界線と非作業領域の出力例)。
図8】設定部の設定例を示した説明図((a)が第1,第2,第3優先場所の入力例と第1優先場所に対する優先作業領域の出力例、(b)が第2優先場所に対する優先作業領域の出力例)。
図9】制御部の制御フローの一例を示す説明図。
図10】作業モードの説明図((a)が作業境界線内のランダム走行、(b)が拡大作業境界線内のランダム走行)。
図11】作業モードの説明図(旋回ストライプの作業モード)。
図12】作業モードの説明図(平行ストライプの作業モード)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1に示すように、作業ロボットシステム1Sは、作業ロボット1とこの作業ロボット1を管理する管理設備によって構成されている。管理設備としては、サーバー101、ユーザーが所持する携帯情報端末102、充電基地103などがあり、各設備は、ネットワークNTを介して作業ロボット1との信号送受信が可能になっている。
【0013】
作業ロボット1は、機体10と自律走行可能な走行部2を備えており、機体10には、機体10の走行経路に沿って作業を行う作業部3が設けられている。また、作業ロボット1は、走行部2や作業部3を制御する制御部5を備えている。制御部5には、ネットワークNTを介して前述した管理設備と信号送受信を行うための通信部5Aが接続されている。
【0014】
また、制御部5には、一例として、GPSなどの衛星測位システム(GNSS;Global Navigation Satellite System)を活用して、機体10の現在位置を検知するために、GNSS衛星100から発信される電波信号を受信するGNSSセンサ6Aが接続されている。この場合に、RTK-GPSシステムを採用して、固定された充電基地103のような場所で電波信号を受信し、作業ロボット1の位置を決定すれば、移動する作業ロボット1の位置がより正確に測定可能である。
【0015】
図2に作業ロボット1の一構成例を示す。図示の作業ロボット1の走行部2は、前輪走行部2Aと後輪走行部2Bを備えており、図1に示すように、作業現場T内に設定される優先作業領域Waにおける任意の方向に向けて機体10を自律走行させることができるようになっている。ここでの優先作業領域Waは、作業ロボット1が地図情報上で認識することができる仮想の作業境界線Wbによって区画されている。
【0016】
作業ロボット1の機体10には、走行部2と作業部3を駆動する駆動部4が設けられている。図2に示した例では、駆動部4は、前輪駆動部4Aと後輪駆動部4Bをそれぞれ左右一対備えており、更に、作業部3を駆動する作業駆動部4Cを備えている。また、作業ロボット1は、駆動部4と制御部5などの電源となるバッテリー11を備えている。
【0017】
作業ロボット1の作業部3は、機体10の走行経路に沿って作業軌跡を形成するように、草刈り作業や散布作業や回収作業などの作業を行うものである。以下、草刈り作業を行う作業部3を例にして説明する。図2に示した例では、作業部3は、平面視で円形の作業範囲を有しており、図示省略した草刈り刃を鉛直軸周りに回転することで、作業部3の直下の草を刈払う。これにより、機体10を走行させながら作業部3を駆動すると、機体10の走行経路に沿って、作業部3における平面視の円形作業範囲の直径を横幅とする刈払い作業済みの作業軌跡が形成される。
【0018】
作業ロボット1の機体10には、センサ部6が設けられている。センサ部6には、走行部2を自律走行させるため、或いは作業部3の駆動を制御するために、前述したGNSSセンサ6A等、各種の検出手段が設けられている。センサ部6は機体10の前方に設けられており、センサ部6の検出信号は制御部5に送信される。
【0019】
作業ロボットシステム1Sの構成例(ブロック図)を図3に示す。作業ロボット1の制御部5には、前述した駆動部4とセンサ部6とバッテリー11が接続されていると共に、前述した通信部5A、制御部5に情報を入力する入力部5B、制御部5に入力された情報を記憶する記憶部5Cなどが接続されている。
【0020】
センサ部6には、前述したGNSSセンサ6Aが設けられると共に、機体10の進む方向を検出するための方位センサ6Bや、作業境界位置に設置された電子タグやワイヤを物理的に検知する境界検知センサ6Cなどが設けられている。
【0021】
サーバー101には、制御部50が設けられており、制御部50には、サーバー101をネットワークに接続するための通信部51と、制御部50に情報を入力するための入力部54、制御部50に入力された情報を記憶する記憶部52、制御部50或いは制御部5の制御状況等を表示する表示部53などが接続されている。なお、ユーザーが所持する携帯情報端末102は、サーバー101と同等の機能を有している。
【0022】
充電基地103は、バッテリー11に接続される充電装置103Aを備えている。充電装置103Aは、例えば、商用交流電力103Bを直流電力に変換してバッテリー11を充電する。また、充電基地103にも制御部60とこれに接続される通信部61を設けることができる。
【0023】
作業ロボット1の通信部5Aとサーバー101や携帯情報端末102の通信部51と充電基地103の通信部61がネットワークを介して接続されていることで、作業ロボット1に設けた制御部5とサーバー101や携帯情報端末102の制御部50と充電基地103に設けた制御部60は、互いに信号(情報)の送受信が可能な状態になっており、1つの統合された制御部5Uを構成している。
【0024】
作業ロボットシステム1Sの制御は、制御部5Uに、図4に示す機能のプログラムを組み込むことで実行される。制御部5Uが実行するプログラムは、作業ロボット1に搭載した制御部5にその一部又は全部を組み込むことができ、サーバー101や携帯情報端末102の制御部50にその一部又は全部を組み込むことができ、充電基地103に設けた制御部60にその一部又は全部を組み込むことができる。なお、サーバー101、携帯情報端末102、充電基地103などの管理設備において、作業ロボットシステム1Sに必須のプログラムが組み込まれていない設備は、適宜省略することができる。
【0025】
走行動作制御部P1は、後述する作業モードの選択を行って、設定された優先作業領域内で作業ロボット1を自律走行させる制御を行う。この際、センサ部6の出力によって作業ロボット1の現在位置を検知し、この現在位置が設定された作業境界線付近に到達したか否かの判断を行う。作業ロボット1の前進動作に対して、作業ロボット1が作業境界線付近に到達すると、機体10の前進方向が優先作業領域内に向くように機体10をターンさせ、その後再び前進走行を行う。
【0026】
作業動作制御部P2は、作業部3を駆動する作業駆動部4Cを制御して、所望の作業動作が得られるようにする。具体例としては、作業部3のON-OFF制御、作業部3における刈刃の回転速度制御、作業部3の動作の省エネモード制御などを行う。
【0027】
設定部P3は、基本的には、作業ロボット1が作業を行う作業領域を設定する。より具体的には、入力部54(5B)にて設定入力された優先作業場所の位置情報に基づき、作業ロボット1の作業能力を考慮して、作業完了可能な優先作業領域を区画する作業境界線を設定するための制御を行う。
【0028】
ここでの作業ロボット1の作業能力は、バッテリーの充電に関するもの、処理可能面積、作業ロボット1が備える内部メモリの容量に依存するものなどであり、設定部P3は、作業ロボット1の作業能力を把握して、予め決められた、バッテリー充電容量、作業可能面積容量、記憶部容量などにより、作業完了可能な優先作業領域を区画する作業境界線を設定する。
【0029】
記憶部容量は、バッテリー充電容量や作業可能面積容量により決められて、優先作業領域のマップを記憶する。作業ロボット1は、作業領域すべてのマップを記憶する必要がないので、記憶部5Cの容量は小さくて済む。例えば、充電基地103やサーバー101がすべてのマップを記憶しておいて、作業ロボット1は、優先作業領域のみのマップを記憶部5Cへ取り入れる。
【0030】
また、設定部P3は、入力部54(5B)にて設定入力された優先場所の位置情報に基づき、現時点の作業ロボット1の作業能力状況を考慮して、作業完了可能な優先作業領域を区画する作業境界線を設定するための制御を行う。
【0031】
設定部P3は、現時点での作業ロボット1の作業能力状況を把握するために、作業時間計時手段P10、バッテリー充電残量算出手段P11、単位時間当たり作業面積算出手段P12などを備えている。
【0032】
作業時間計時手段P10は、前段階で行われた作業の作業時間を計時して、設定された作業時間に対して残りの作業時間を算出する。
【0033】
バッテリー充電残量算出手段P11は、前段階で行われた作業の終了時等に、現時点でのバッテリー充電残量が何%になっているかを算出する。
【0034】
単位時間当たり作業面積算出手段P12は、前段階で行われた作業における作業面積(その際の優先作業領域の面積)と作業時間とから、単位時間当たりに作業できる作業面積を算出する。単位時間当たりの作業面積を算出することで、設定作業時間の残り時間に対する処理可能面積を、現時点での作業能力状況として把握することができる。
【0035】
単位時間当たりの作業面積は、走行動作制御部P1で設定される作業速度(走行速度)と作業動作制御部P2で設定される作業動作モード(省エネモード、ノーマルモード、パワーモードなど)によって異なるので、これらの設定が変えられた場合には、その設定変更に応じて算出値を補正する。
【0036】
作業境界線設定手段P13は、前述した各手段で作業ロボット1の現時点での作業能力状況を把握した上で、設定入力された優先作業場所の位置情報、非優先場所の位置情報、設定作業時間に対して、作業完了可能な優先作業領域を区画する作業境界線を設定する。
【0037】
作業領域設定手段P13の設定例を具体的に説明する。図5(a)に示すように、ユーザーは、作業現場Tの地図情報に対して優先的に作業を行いたい箇所を選択して優先場所を入力する。図5(a)に示した例では、優先場所は、地図情報上の点情報として入力されている。
【0038】
この際の入力方式としては、例えば、表示部53に対してタッチ入力或いはカーソル入力が可能な入力部54を設け、作業現場Tの地図情報が図5(a)に示すように表示されている表示画面へのタッチ入力又はカーソル入力によって、優先場所の位置情報を入力する。入力方式はこれに限らず、キーボード等によって位置情報の座標を数値入力するようにしてもよい。
【0039】
優先場所が入力されると、設定部P3は、例えば、現時点での作業ロボット1の作業能力状況を考慮して、作業完了可能な優先作業領域を設定し、その優先作業領域を区画する作業境界線を設定する。ここでの作業境界線は、作業ロボット1が認識できる地図情報上の仮想線である。
【0040】
作業境界線が設定されると、図5(b)に示すように、表示部53に表示している作業現場Tの地図情報上に、設定された作業境界線を重ねて表示するようにしてもよい。優先作業領域は、入力された優先場所の位置を含むように設定される。一例としては、入力された優先場所が領域の中心部になるように、優先作業領域が設定される。
【0041】
図6A(a)に示した例では、ユーザーが設定する優先場所が地図情報上の線情報として入力されている。この際の入力方式としては、表示部53に対してタッチ入力が可能な入力部54を設け、作業現場Tの地図情報が図6A(a)に示すように表示されている表示画面に、ユーザーが指等でトレースを行うことで、優先場所の位置情報を線として入力することができる。
【0042】
この際に入力される線の形態は、直線、曲線等、どのような線であってもよい。また、入力される線は、図6A(a)に示すような両端が開いた線であっても、両端が閉じられた囲み線であってもよい。図6A(a)に示すように優先場所が地図情報上の線情報として入力されると、それに応じて、図6A(b)に示すように、入力された優先場所を含むように、優先作業領域が設定され表示画面上に出力される。
【0043】
前述したように優先場所として囲み線が入力された場合には、ユーザーが仮の作業境界線を入力したことになるが、この場合、設定部P3は、ユーザーが入力した仮の作業境界線を修正して、作業完了可能な優先作業領域を区画する作業境界線を設定する。
【0044】
また、優先場所を地図情報上で線情報として入力する場合には、図6B(c)に示すように、入力された線の方向を認識して、ユーザーが指等でトレースした方向に沿って、図6B(d)に示すように、順次優先作業領域を設定するようにしてもよい。この際には、例えば、最初に設定された第1作業境界線に区画された1つの優先作業領域の作業が完了し、作業ロボット1が充電基地103に戻った際に、次の第2作業境界線に区画された優先作業領域が設定されるように、線の方向に沿って随時設定されていくようにすることができる。
【0045】
図7(a)に示した例では、入力部54(5B)から入力される位置情報として、優先場所に加えて、非優先場所を入力している。非優先場所は、今回の優先作業では作業を行わない場所を指している。設定部P3は、非優先場所の位置情報が入力された場合には、図7(b)に示すように、非優先場所の周囲を優先作業領域から外すように、作業境界線を設定する。
【0046】
この際入力される非優先場所の位置情報は、点入力であっても、線入力であっても、囲み線入力であってもよい。非優先場所の位置情報が入力されると、図7(b)に示すように、その周囲に非作業領域を設定して、設定された非作業領域を外すように、優先作業領域を区画する作業境界線を設定する。
【0047】
図8に示した例では、優先場所として複数の場所を設定入力している。このような場合には、設定部P3は、複数の優先場所の優先順位に従って順次優先作業領域を設定するが、1つの優先作業領域の作業が終了する毎に、現時点での作業ロボットの作業能力状況(例えば、バッテリー充電残量)は代わってくるので、1つの優先場所の位置情報によって設定された優先作業領域内の作業が終了した後に、他の優先場所の位置情報に対する優先作業領域を設定する。
【0048】
すなわち、図8(a)に示すように、3つの優先場所(第1優先場所,第2優先場所,第3優先場所)が設定入力された場合には、先ず、第1優先場所に対して優先作業領域を区画する作業境界線を出力して、その優先作業領域での作業を行う。そして、図8(b)に示すように、第1優先場所に対する優先作業領域の作業が完了した後に、第2優先場所に対して優先作業領域を区画する作業境界線を出力する。
【0049】
図9に、制御部5U(5,50,60)における制御フローの一例を示す。制御開始から、入力ステップS01,S02で、前述した優先場所、設定作業時間の入力がなされる。
【0050】
次に、ステップS03にて、現時点での作業ロボット1のバッテリー充電残量の確認がなされる。そして、ステップS04では、充電の要否判断が行われる。現時点での作業ロボット1のバッテリー充電残量が設定された閾値以下の場合には、充電要と判断され(ステップS04:YES)、作業ロボット1を充電基地103まで移動させる走行動作制御が実行される(ステップS20)。充電基地103での充電が終了すると、その時点でのバッテリー充電状態を確認する(ステップS21)。
【0051】
ステップS21の後、又は、ステップS04にて充電不要と判断された場合(ステップS04:NO)、現時点でのバッテリー充電残量を考慮に入れ、入力された優先場所のうち最優先の場所(第1優先場所)に対して、前述したように優先作業領域を設定し、それを区画する作業境界線を設定する(ステップS05)。
【0052】
その後、後述する作業モードの選択がなされ(ステップS06)、選択された作業モードを採用して、設定された作業領域内の作業を開始する(ステップS07)。作業中(ステップS08:NO)は、作業時間の計時を行う(ステップS22)。
【0053】
設定された1つの優先作業領域の作業が終了すると(ステップS08:YES)、作業を終了した優先作業領域の地図情報は記憶部52(5C)に記憶される。
【0054】
そして、作業した優先作業領域の面積を作業終了まで計時した作業時間で除して、単位時間当たりの作業面積を計算する(ステップS09)。また、入力された設定作業時間から計時した作業時間を差し引いて、残り作業時間を計算する(ステップS10)。ここで求めた残り作業時間と単位時間当たりの作業面積は、次の作業を行う際に、残り作業時間に対する処理可能面積を求めるための指標となる。
【0055】
ステップS01にて入力された優先場所に次の優先場所がある場合(ステップS11:YES)、ステップS03以下のステップを繰り返す。この際、次の優先場所に対する優先作業領域の設定に際しては、ステップS03におけるバッテリー充電残量の確認だけでなく、ステップS09で求めた単位時間当たりの作業面積やステップS10で求めた残り作業時間を考慮し、記憶部52(5C)に記憶された作業済みの優先作業領域を除いて、ステップS05における作業境界線の設定が行われる。ステップS11にて、次の優先場所が無い場合には、制御を終了する。
【0056】
図10図12は、前述した作業モードを例示している。図10に示した例は、ランダム走行の作業モードであり、作業ロボット1は、直進の前進走行を行って、設定された作業境界線Wb付近に到達すると、優先作業領域Wa内の任意の方向にターンして、再び直進の前進走行を行う。
【0057】
図10(a)に示す例は、作業ロボット1が作業境界線Wbに到達したと判断してターン動作を行っているが、図10(b)に示す例は、設定した作業境界線Wbの外側に拡大作業境界線Wb’を設定して、作業ロボット1が拡大作業境界線Wb’に到達したと判断してターン動作を行っている。図10(b)に示すように、拡大作業境界線Wb’を設定することで、作業境界線Wb内での作業残し(刈り残し)を無くすことができる。
【0058】
図11に示す例は、矩形状に設定した作業境界線Wbに対して、作業境界線Wbの周囲に沿って外側から内側に向けて旋回しながらストライプ状の作業軌跡を形成している。この際、図示の例では、作業ロボット1が作業境界線Wbに到達してターン動作を行う際に、作業境界線Wbを一部オーバーランする前進動作(a)と、後進動作(b)と、ターン角度90°のターン動作(c)を組み合わせた動作を行っている。これによって、平面視円形の作業範囲を有する作業部3において、ターン時に作業残し(刈り残し)が生じることを回避している。
【0059】
図12に示す例は、矩形状に設定した作業境界線Wbに対して、平行なストライプ状の作業軌跡を形成している。この際にも、図示の例では、作業ロボット1が作業境界線Wbに到達してターン動作を行う際に、作業境界線Wbを一部オーバーランする前進動作(a)と、後進動作(b)と、ターン角度90°のターン動作(c)を組み合わせた動作を行っている。これによって、平面視円形の作業範囲を有する作業部3において、ターン時に作業残し(刈り残し)が生じることを回避している。
【0060】
以上説明したように、本発明の実施形態にかかる作業ロボットシステム1Sによると、ユーザーは、優先場所を簡易に入力するだけで、作業に必要な優先作業領域の設定が可能になる。また、設定される優先作業領域は、作業ロボット1の現時点での作業能力状況が考慮されており、作業が完了できる領域が設定されるので、優先作業領域の作業が中途半端に止まることが無く、優先作業領域内での作業を効率的に完了させることができる。
【0061】
また、複数の優先場所が設定入力される場合には、1つの優先作業領域の作業が終了してから次の優先場所に対する優先作業領域を設定するので、作業が終了した領域を確実に除いて、次の優先作業領域を設定することができる。これによって、重複作業を排除することができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:作業ロボット,1S:作業ロボットシステム,
2:走行部,2A:前輪走行部,2B:後輪走行部,
3:作業部,
4:駆動部,4A:前輪駆動部,4B:後輪駆動部,4C:作業駆動部,
5,50,60,5U:制御部,5A,51,61:通信部,
5B,54:入力部,5C,52:記憶部,53:表示部,
6:センサ部,6A:GNSSセンサ,
6B:方位センサ,6C:境界検知センサ,
10:機体,11:バッテリー,
100:GNSS衛星,101:サーバー,102:携帯情報端末,
103:充電基地,103A:充電装置,103B:商用交流電力,
NT:ネットワーク,Wa:優先作業領域,Wb:作業境界線,
P1:走行動作制御部,P2:作業動作制御部,P3:設定部,
P10:作業時間計時手段,P11:バッテリー充電残量算出手段,
P12:単位時間当たり作業面積算出手段,
P13:作業境界線設定手段
図1
図2
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図5
図6A
図6B
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図12