(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】洗堀抑制ユニット、水中植物再生方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/08 20060101AFI20231225BHJP
A01G 33/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
E02B3/08 301
A01G33/02
(21)【出願番号】P 2020112554
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】山木 克則
(72)【発明者】
【氏名】リン ブーン ケン
(72)【発明者】
【氏名】中村 華子
(72)【発明者】
【氏名】越川 義功
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 栄治
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-336134(JP,A)
【文献】特開2009-215819(JP,A)
【文献】特開平11-137117(JP,A)
【文献】特開2007-002637(JP,A)
【文献】特開2000-136537(JP,A)
【文献】特開2011-024541(JP,A)
【文献】特開2001-086888(JP,A)
【文献】特開2015-042168(JP,A)
【文献】特開2002-171854(JP,A)
【文献】特開2012-080797(JP,A)
【文献】特開2001-271322(JP,A)
【文献】実開平01-019623(JP,U)
【文献】国際公開第2018/004340(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0117739(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/08
A01G 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部を備えた収容体と、
前記収容体に収容される石又はコンクリートにより構成される複数の錘体と、
を備え、水中に設置されて水中の地面が洗堀されることを抑制する洗堀抑制ユニットであって、
植物の配偶体が付着され、かつ、洗堀抑制ユニット内でその個々の形状が保持される多孔質部材を複数備え、
前記多孔質部材は、前記錘体と共に前記収容体に収容されて
おり、
雄性配偶体及び雌性配偶体が1:1~1:2の群体数で一つの前記多孔質部材に付着されている、
洗堀抑制ユニット。
【請求項2】
複数の開口部を備えた収容体と、
前記収容体に収容される石又はコンクリートにより構成される複数の錘体と、
を備え、水中に設置されて水中の地面が洗堀されることを抑制する洗堀抑制ユニットであって、
植物の配偶体が付着され、かつ、洗堀抑制ユニット内でその個々の形状が保持される多孔質部材を複数備え、
前記多孔質部材は、前記錘体と共に前記収容体に収容されており、
前記多孔質部材は、雄性配偶体が主に付着された雄多孔質部材と、雌性配偶体が主に付着された雌多孔質部材と、の2種類が前記収容体に収容されてい
る、
洗堀抑制ユニット。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の洗堀抑制ユニットにおいて、
前記多孔質部材は、コンクリートブロックと、琉球石灰岩と、貝殻と、のうちの少なくとも一つであること、
を特徴とする洗堀抑制ユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれかに記載の洗堀抑制ユニットを用いる水中植物再生方法であって、
水中構造物を建設する工程と、
前記水中構造物の基礎付近に前記洗堀抑制ユニットを配置する工程と、
を備える水中植物再生方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の洗堀抑制ユニットを用いる水中植物再生方法において、
前記水中構造物の撤去後においても前記洗堀抑制ユニットを水中に設置した状態を維持すること、
を特徴とする水中植物再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗堀抑制ユニット、水中植物再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海底構造物設置等の施工後に環境保全や地域漁業振興の観点から積極的に海藻を増殖させることが望まれる場合が多い。その方法として、工事後に、海藻類の増殖が行われている。
【0003】
ここで、褐藻類の一般的な生活史の概要は、以下のとおりである。
まず、母藻から放出された遊走子は、基質(藻礁等)に着生した後に発芽し、配偶体(雌性又は雄性)を形成する。次いで、雄性配偶体の造精器から放出された精子が、雌性配偶体の生卵器の卵と受精して発芽すると芽胞体を形成し、芽胞体が生長することで、幼い胞子体を経て成体となる。
【0004】
藻場再生のための従来の方法としては、海域内への種苗(配偶体を糸等に付着させたもの)の移植や、海域内における遊走子等の拡散による方法が採用されてきた。
種苗の移植の場合は、通常、種苗を他海域で採取したり、陸上で生育したりした種苗を海域内へ導入する。この場合、資源の枯渇や種苗生産の手間がかかる等、コストが高くなるという課題があった。
また、遊走子等の拡散の場合は、袋状の構造体に入れた母藻から遊走子を海域内へ拡散させる。この場合、遊走子が得られる母藻の確保が難しいことや、海域内における遊走子の拡散の制御が難しいこと等の課題があった。
【0005】
また、従来の藻場造成手法は、工事後に別事業で行われるため、コストアップや、工期の長期化といった課題があった。また、特別な資材も必要であり、潜水作業を伴うことから安全面でも配慮する必要があった。特に、従来の藻場再生では、主に母藻の移植やプレート等の固定による方法が主であり、手間がかかると同時に、海藻増殖のための特別な器具(水中ボンド、プレート基盤、種付けロープ等)を使用する必要があった。
また、胞子を撒く方法も近年試みられているが、供給源となる母藻が磯焼け等により、枯渇しているためにより、地域・場所によって実施が難しい場合があった。
【0006】
特許文献1には、植物の種苗を保持体に保持させ、該保持体を重りに固定した状態で水中に沈める水中緑化方法が記載されている。しかし、特許文献1に記載の方法では、保持体が植物繊維であることから、この保持体を重りに固定することが必須であり、固定が不十分であると、保持体自体が流出してしまうおそれもあり、信頼性が低かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、簡便に藻場再生を実現できる洗堀抑制ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
(1) 複数の開口部を備えた収容体と、
前記収容体に収容される石又はコンクリートにより構成される複数の錘体と、
を備え、水中に設置されて水中の地面が洗堀されることを抑制する洗堀抑制ユニットであって、
植物の配偶体が付着され、かつ、洗堀抑制ユニット内でその個々の形状が保持される多孔質部材を複数備え、
前記多孔質部材は、前記錘体と共に前記収容体に収容されている洗堀抑制ユニット。
【0011】
(2) (1)に記載の洗堀抑制ユニットにおいて、
雌性配偶体及び雌性配偶体が1:1~1:2の群体数で一つの前記多孔質部材に付着されていること、
を特徴とする洗堀抑制ユニット。
【0012】
(3) (1)に記載の洗堀抑制ユニットにおいて、
前記多孔質部材は、
雄性配偶体が主に付着された雄多孔質部材と、
雌性配偶体が主に付着された雌多孔質部材と、
の2種類が前記収容体に収容されていること、
を特徴とする洗堀抑制ユニット。
【0013】
(4) (1)から(3)までのいずれかに記載の洗堀抑制ユニットにおいて、
前記多孔質部材は、コンクリートブロックと、琉球石灰岩と、貝殻と、のうちの少なくとも一つであること、
を特徴とする洗堀抑制ユニット。
【0014】
(5) (1)から(4)までのいずれかに記載の洗堀抑制ユニットを用いる水中植物再生方法であって、
水中構造物を建設する工程と、
前記水中構造物の基礎付近に前記洗堀抑制ユニットを配置する工程と、
を備える水中植物再生方法。
【0015】
(6) (5)に記載の洗堀抑制ユニットを用いる水中植物再生方法において、
前記水中構造物の撤去後においても前記洗堀抑制ユニットを水中に設置した状態を維持すること、
を特徴とする水中植物再生方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡便に藻場再生を実現できる洗堀抑制ユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による洗堀抑制ユニットの使用例を示す図である。
【
図2】洗堀抑制ユニット1の一つを拡大して示す図である。
【
図3】洗堀抑制ユニット1を作製する過程を示す図である。
【
図4】雌雄多孔質部材における雌性配偶体の被度の算出例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
【0019】
(洗堀抑制ユニットの構造)
図1は、本発明による洗堀抑制ユニットの使用例を示す図である。
図1に示す例では、洗堀抑制ユニット1は、海中に設置される風力発電装置100の基礎101付近に複数が密集して水面200より下において積み上げられて配置される。洗堀抑制ユニット1は、フィルターユニットとも呼称され、波等によって海中の地面が洗堀されることを抑制するために従来から広く用いられている。なお、図示しないが、基礎101と洗堀抑制ユニット1との間にマットが設置される場合もある。
【0020】
図2は、洗堀抑制ユニット1の一つを拡大して示す図である。
本実施形態の洗堀抑制ユニット1は、収容体10と、錘体20と、多孔質部材30とを備えている。
【0021】
収容体10は、開口部10aを備えた網を袋状に構成したものである。収容体の材料は、金属であってもよいし、植物繊維からなる縄であってもよい。収容体10は、その内部に、後述の錘体20及び多孔質部材30を収容した状態で封をされている。なお、収容体10は、網を用いた袋状の形態に限らず、例えば、開口部を有した箱状の形態等、他の形態であってもよい。
【0022】
錘体20は、従来から洗堀抑制ユニット(フィルターユニット)に用いられている岩石やコンクリート片等である。錘体20の大きさは、例えば、人頭大程度であり、収容体10の開口部10aを通らない程度の大きさとなっている。
【0023】
多孔質部材30は、微細な穴を多数備えている。多孔質部材30としては、例えば、コンクリートブロックを例示することができる。また、図では単なる長方形のコンクリートブロックとして示したが、建築用空洞コンクリートブロックを利用してもよい。なお、多孔質部材30としては、琉球石灰岩であってもよいし、貝殻であってもよい。
また、多孔質部材30は、洗堀抑制ユニット1内でその個々の形状が保持される。ここで、「洗堀抑制ユニット1内でその個々の形状が保持される」とは、洗堀抑制ユニットの施工開始、すなわち、収容体のクレーン等での吊り上げから、水底面に吊り下して設置を終了する間に渡って、活荷重や死荷重、衝撃荷重等の力が作用しても、個々の形状が維持されるという多孔質部材の物性を意味する。具体的には、単位面積当たりの圧縮強度が少なくとも4N/mm2程度以上の物性を有するものである。この条件を満たす多孔質部材としては、例えば、JIS A 5406に規定されている建築用コンクリートブロック(空洞ブロック)08(A種)を例示できるが、より強度の高い種別の空洞ブロックを用いてもよい。
【0024】
また、多孔質部材30には、植物の配偶体が付着されている。配偶体は雌性配偶体及び雌性配偶体のいずれか、又は両方であってもよい。本実施形態では、雌性配偶体及び雌性配偶体が一つの多孔質部材30に付着されている。
【0025】
図3は、洗堀抑制ユニット1を作製する過程を示す図である。
まず、錘体20と多孔質部材30とをそれぞれ用意する。多孔質部材30については、配偶体が含まれている培養液300に漬け込み、配偶体を多孔質部材30に含侵させる(
図3(a))。なお、多孔質部材30に対してホース等を用いて培養液300を上からかけて配偶体を多孔質部材30に含侵させてもよい。
このような含浸を行うことにより、配偶体を多孔質部材30に付着させることができる。
【0026】
配偶体が付着された多孔質部材30と錘体20とを、収容体10に収容する。ここで、多孔質部材30が占める重量の割合は、多孔質部材30と錘体20を合わせた重量に対して、10%以上、30%以下の重量が望ましい。多孔質部材30と錘体20とを収容体10に所定量収容した後、収容体10を閉じることにより、洗堀抑制ユニット1が作製される。
【0027】
海中に設置される風力発電装置等の各種水中構造物は、その役目を終えた後は、撤去される場合が多い。その場合に、従来の洗堀抑制ユニットについても、同様に不要なものとして撤去される場合が多かった。しかし、洗堀抑制ユニットを撤去するには、多くの労力と時間、そして、コストがかかる。
本実施形態の洗堀抑制ユニット1は、付着された配偶体を備えていることから海藻等が発芽し、その多くは、洗堀抑制ユニット1自体に着生する。よって、洗堀抑制ユニット1は、単に洗堀を抑制するだけでなく、構造物の建築時に失われた藻場の再生をするという作用を備えている。そして、その藻場は、洗堀抑制ユニット1上において繁茂することとなる。したがって、風力発電装置等の水中構造物を撤去する場合に、洗堀抑制ユニット1をそのまま残したり、基礎の撤去に必要な部分だけ一時的に位置をずらし、基礎の撤去が完了した後に、その場所へ戻したりすることが望ましい。
このように、水中構造物の撤去後においても洗堀抑制ユニット1を水中に設置した状態を維持することにより、再生された藻場を略そのまま残すことができる。また、洗堀抑制ユニット1の撤去が不要であることから、水中構造物の撤去工事の労力と時間、そして、コストの面でも非常に有益である。
【0028】
(植物の配偶体)
本発明において「植物の配偶体」とは、任意の植物の雄性配偶体又は雌性配偶体を意味する。
【0029】
配偶体の由来である植物としては特に限定されないが、配偶体による繁殖を行う多細胞生物のうち、海産植物である海藻が好ましい。海藻は、褐藻類、紅藻類、緑藻類に分類され、これらのうち褐藻類が特に好ましい。
【0030】
褐藻類のうち、コンブ目コンブ科、コンブ目チガイソ科、コンブ目レッソニア科、ヒバマタ目ホンダワラ科は、大型海藻として沿岸域の海藻群落を形成する重要な種であるため、本発明における植物の配偶体はこれらに由来することが好ましい。
より具体的には、本発明における植物の配偶体は以下に由来することが好ましい。
コンブ目コンブ科カラフトコンブ属のマコンブ(学名:Saccharina japonica)、リシリコンブ(学名:Saccharina japonica)、ホソメコンブ(学名: Saccharina japonica)、オニコンブ(学名:Saccharina japonica)、ミツイシコンブ(学名:Saccharina angustata)、ナガコンブ(学名:Saccharina longissima)、ガッガラコンブ(学名:Saccharina coriacea)、ネコアシコンブ(学名:Arthrothamnus bifidus)、ガゴメコンブ(学名:Saccharina sculpera)
コンブ目チガイソ科ワカメ属のワカメ(学名:Undaria pinnatifida)、ヒロメ(学名:Undaria undarioides)、アオワカメ(学名:Undaria peterseniana)
レッソニア科、カジメ属のカジメ(学名:Ecklonia cava)、クロメ(学名:Ecklonia kurome)、アラメ(学名:Eisenia bicyclis, syn. Ecklonia bicyclis)、ツルアラメ(学名:Ecklonia stolomifera)
【0031】
本発明において配偶体を単離する方法としては植物から配偶体を単離できる任意の方法を採用でき、特に限定されないが、例えば、藻類の配偶体を単離する場合、以下の方法が挙げられる。
まず、生殖器官(芽株、子嚢斑等)を切り出し、滅菌濾過海水等で洗浄した後、干出処理によって遊走子を滅菌濾過海水の容器に放出させる。次いで、遊走子が着底し配偶体を形成するまで培養する。培養後、実体顕微鏡による観察下、ピペット等で雌性配偶体(又は雄性配偶体)を1個体ずつ採取し、培養容器(マルチプレート等)等に収容して、雌性配偶体及び雄性配偶体を別々に培養することで、雌性配偶体及び雄性配偶体をそれぞれ得ることができる。
雌性配偶体及び雄性配偶体は、多孔質部材に付着させる前に、必要に応じて、生殖能力を確認する試験や、配偶体の成熟を促進させる処理等を行ってもよい。
【0032】
(配偶体が付着された多孔質部材)
本発明においては、配偶体が付着された多孔質部材を用いる。
一つの多孔質部材には、雄性配偶体及び雌性配偶体の両方が付着されていてもよく、雄性配偶体及び雌性配偶体のうちいずれかのみが付着されていてもよい。
【0033】
一つの多孔質部材に雄性配偶体及び雌性配偶体の両方が付着されている場合、このような多孔質部材を備える洗堀抑制ユニットによれば、配偶子(精子、卵)の受精が効率的に行われ、藻場再生を簡便に実現できる。
かかる場合、多孔質部材における雄性配偶体及び雌性配偶体の群体数は同等の割合(すなわち、雄性配偶体の群体数:雌性配偶体の群体数=1:1)に近いことが好ましい。好ましくは、雄性配偶体の群体数:雌性配偶体の群体数=1:1~1:2である。
なお、本発明において、一つの多孔質部材に雄性配偶体及び雌性配偶体の両方が、1:1~1:2の群体数で付着された多孔質部材を「雌雄多孔質部材」ともいう。
【0034】
一つの多孔質部材に雄性配偶体及び雌性配偶体が主に付着されている場合、洗堀抑制ユニットにおいて、雄性配偶体(又は雌性配偶体)が主に付着された多孔質部材の近傍に、雌性配偶体(又は雄性配偶体)が付着された多孔質部材を配置することで、配偶子(精子、卵)の受精が効率的に行われ、藻場再生を簡便に実現できる。
本発明において、「雄性配偶体(又は雌性配偶体)が主に付着された」とは、多孔質部材に存在する配偶体の個数のうち70%以上が雄性配偶体(又は雌性配偶体)であることを意味し、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%が雄性配偶体(又は雌性配偶体)であることを意味する。
なお、本発明において、雄性配偶体が主に付着された多孔質部材を「雄多孔質部材」ともいい、雌性配偶体が主に付着された多孔質部材を「雌多孔質部材」ともいう。
【0035】
本発明において、多孔質部材に付着された配偶体量(配偶体の群体数)は、「被度」として特定される。本発明において「被度」(単位:%)とは、多孔質部材の単位面積あたりの配偶体の付着面積の割合を意味する。被度は、例えば、後述するように、映像撮影装置(デジタルカメラ等)によって多孔質部材表面を撮影し、得られた画像を2価化処理し、画像において配偶体の画像が占める割合を算出することで特定される。
【0036】
(配偶体の付着方法)
雌雄多孔質部材、雄多孔質部材、及び雌多孔質部材の作製方法は特に限定されない。
例えば、多孔質部材を付着させようとする所望量の配偶体(すなわち、雄性配偶体及び/又は雌性配偶体)を含む溶媒と、多孔質部材とを接触させる任意の方法が挙げられる。
このような接触の方法としては、多孔質部材の一部又は全体を、配偶体を含む溶媒に漬け込んで含侵させる方法、多孔質部材の一部又は全体に、配偶体を含む溶媒を塗布又は噴霧する方法等が挙げられる。
【0037】
配偶体を入れる溶媒としては、配偶体の生育等を妨げないものであれば特に限定されないが、好ましくは培地、滅菌濾過海水が挙げられる。
培地としては、PESI培地、市販の植物用液体肥料、市販の植物栄養剤等が挙げられる。
滅菌濾過海水としては、固形物質(例えば、粒径1μm以上)が取り除かれ、任意の方法で滅菌処理された海水が挙げられる。用いる海水は、人工海水であってもよく、天然海水であってもよい。
【0038】
溶媒中の配偶体量は特に限定されないが、多孔質部材への配偶体の付着量が多いほど、配偶体が生きた状態で多孔質部材に付着されやすく、本発明の効果を奏しやすくなる。
例えば、多孔質部材への配偶体の付着量は、配偶体の被度が2~25%となるように溶媒中の配偶体量を調製することが好ましい。
【0039】
配偶体を含む溶媒と、多孔質部材とを接触させる際の温度は特に限定されないが、通常、水温16~24℃である。
【0040】
配偶体を含む溶媒と、多孔質部材とを接触させる際の時間は特に限定されないが、多孔質部材に充分に配偶体を付着させる観点から、通常1~6時間、最大12時間程度である。配偶体を含む溶媒と、多孔質部材とが上記時間接触した後に洗堀抑制ユニットを海域に投入することが好ましい。
【0041】
(被度の特定方法)
以下に、被度の特定方法の例を説明する。
2つの多孔質部材(コンクリートブロック)の全体を、異なる量の雌性配偶体を含むPESI培地にそれぞれ1時間漬け込み、雌雄多孔質部材を2つ得た。
次いで、デジタルカメラを用いて、多孔質部材表面をマクロモード(近接撮影)で撮影し、得られた画像を2価化処理した。その結果を
図4に示す。
各2価化画像から、画面全体に対する雌性配偶体の画像(黒色で示される部分)が占める割合を算出し、被度(1.94%又は24.23%)を算出した。
【符号の説明】
【0042】
10 収容体
10a 開口部
16 水温
20 錘体
24 水温
30 多孔質部材
100 風力発電装置
101 基礎
200 水面
300 培養液