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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/42 20070101AFI20231225BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20231225BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231225BHJP
【FI】
H02M1/42
H02M7/12 Q
H02M7/48 R
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020122267
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018864
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 慧
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-245349(JP,A)
【文献】特開2019-106843(JP,A)
【文献】特開2018-074650(JP,A)
【文献】国際公開第2014/125649(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0353138(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00 - 1/44
H02M 7/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流と直流とを変換可能な電力変換装置であって、
前記交流の電圧を切り替え可能とするスイッチング素子を含む電力変換器と、
前記スイッチング素子に動作指令を与える変換器制御部と、
を備え、
前記変換器制御部は、
前記交流の電圧である交流電圧と、前記電力変換器に流れる交流電流とのうち少なくとも一方における、前記交流電圧または前記交流電流の少なくとも基本波周波数に相当する成分を制御し、電圧指令信号を生成する基本周波数成分制御部と、
前記交流電圧または前記交流電流の高調波成分を検知する共振状態検知部と、
前記電圧指令信号を補正する補正信号を生成する補正部と、
補正された補正電圧指令信号を前記動作指令に変換する動作指令生成部と、
を備え、
前記共振状態検知部は、前記交流電圧または前記交流電流における所定の周波数範囲の中で高調波振幅が最大となる振動周波数または振動周波数帯域を検知する振動周波数検知部を備え、
前記基本周波数成分制御部は、前記交流電圧または前記交流電流の少なくとも一方を制御する際に、少なくとも前記振動周波数を含む周波数帯域の感度を低減させる感度低減部を備え、
前記補正部は、前記交流電圧または前記交流電流の少なくとも前記振動周波数を含む周波数帯域の検出値に基づき前記補正信号を生成する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記感度低減部は、
前記共振状態検知部によって検知された高調波振幅が第1閾値以上の場合に、前記感度を低減させることを有効化する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記補正部は、
前記共振状態検知部によって検知された高調波振幅が第1閾値以上の場合に、零ではない有効な信号を出力する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記感度低減部は、
前記感度を低減させることを有効化してから所定時間経過後に前記感度を低減させることを無効化する、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記感度低減部は、
前記感度を低減させることが有効化された状態において、前記交流の系統状態や負荷状態が変化した信号を外部から受信した際に前記感度を低減させることを無効化する、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
補正値が0となる電圧に基づく値を示す信号を入力する第1の入力端と前記補正部が出力する信号を入力する第2の入力端と出力端とが設けられ、前記出力端に接続される入力端を、前記第1の入力端と前記第2の入力端との間で切り替える切替スイッチをさらに備え、
前記切替スイッチは、前記補正部前記有効な信号を前記第2の入力端に出力してから所定時間経過後に、前記出力端に接続される入力端を、前記第2の入力端から前記第1の入力端に切り替える
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項7】
補正値が0となる電圧に基づく値を示す信号を入力する第1の入力端と前記補正部が出力する信号を入力する第2の入力端と出力端とが設けられ、前記出力端に接続される入力端を、前記第1の入力端と前記第2の入力端との間で切り替える切替スイッチをさらに備え、
前記切替スイッチは、前記補正部前記有効な信号を前記第2の入力端に出力している状態において、前記交流の系統状態や負荷状態が変化した信号を外部から受信した際に、前記出力端に接続される入力端を、前記第2の入力端から前記第1の入力端に切り替える
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記振動周波数検知部は、
フーリエ変換演算により、高調波振幅の大きな周波数成分を特定する、
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記感度低減部は、
前記振動周波数に応じて特性設定を変更するディジタルフィルタの処理によって実現される、
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記感度低減部は、
前記交流電圧の基本波周波数より高く、前記振動周波数より低いカットオフ周波数を有する低域通過フィルタの処理によって実現される、
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記感度低減部は、
前記振動周波数を含む周波数帯域を減衰させるノッチフィルタの処理によって実現される、
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記感度低減部は、
前記振動周波数より低いカットオフ周波数を有する低域通過フィルタと、前記振動周波数を含む周波数帯域を減衰させるノッチフィルタを組み合わせたフィルタの処理によって実現される、
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記補正部は、
前記交流電流の少なくとも前記振動周波数を含む周波数帯域の検出値に、仮想的なインピーダンス成分の特性を乗じた値を出力する、
請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記仮想的なインピーダンス成分の大きさは、前記振動周波数の増加に伴い増加する値である、
請求項13に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記補正部は、
前記振動周波数の増加に伴い増加する値を、前記振動周波数に比例した値を定数のインピーダンス振幅係数に乗じることにより得る、
請求項14に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記補正部は、
前記振動周波数の増加に伴い増加する値前記仮想的なインピーダンス成分の特性に位相進み補償を含めることにより得る、
請求項14に記載の電力変換装置。
【請求項17】
前記補正部は、
前記交流電流と、前記補正された動作指令に基づき出力される電力変換器の電圧成分との前記振動周波数における位相差が少なくとも90度以上となる場合に、前記仮想的なインピーダンス成分を零近傍の所定値以下とする、
請求項13から請求項16のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項18】
前記補正部は、
零でない有効な信号を出力しているとき、前記共振状態検知部によって検知された高調波振幅が第2閾値を超過した場合、前記仮想的なインピーダンス成分を零近傍の所定値以下とする、
請求項13から請求項17のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項19】
前記基本周波数成分制御部は、
前記交流電圧または前記交流電流を、前記交流電圧に同期した回転座標軸上に変換し、変換後の前記交流電圧または前記交流電流に基づき、前記電圧指令信号生成し、
前記補正部は、
固定座標軸上に変換された前記交流電圧または前記交流電流に基づき、前記補正信号生成する、
請求項1から請求項18のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項20】
前記基本周波数成分制御部および前記補正部は、
固定座標軸上に変換された前記交流電圧または前記交流電流に基づき、それぞれ前記電圧指令信号と前記補正信号生成する、
請求項1から請求項18のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項21】
前記変換器制御部は、
前記感度低減部または前記補正部の出力の有効と無効との切り替えから所定時間経過した後も、高調波成分が低減しない場合、前記電力変換器の運転を停止させる、
請求項2から請求項7のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
系統連系する電力変換装置では、系統側の配線や負荷等による系統インピーダンスと変換器制御との相互作用で電圧共振が発生し、運転が不安定化して運転継続できない場合がある。共振様相は、場所毎および時間毎に刻々と変化する未知な系統インピーダンス条件に依存するため、系統状態の変化によって共振周波数が変動する場合がある。このため、特定条件で安定な制御パラメータを適用した場合であっても、系統状態の変化によって系統連系運転が不安定化する恐れがある。
【0003】
系統インピーダンスを推定し、推定結果に基づき設定したノッチフィルタ等によって振動周波数帯域の制御感度を低下させる手法が提案されている。このような手法では、制御感度を低下させるのみでは十分な安定余裕を確保できず、わずかな外乱が加わるのみで共振が増幅する場合がある。なお、このような手法は、系統状態(系統インピーダンス)が安定運転にとって過酷条件である場合が考慮されていない。
【0004】
これに対し、振動周波数帯域の電圧、電流を積極的に制御して抑制するように構成した場合でも、系統状態が変化した際に十分な安定余裕を確保できない、もしくは、制御系の検出・演算遅延等に伴う位相遅れの影響等によって却って運転を不安定化させる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-106843号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】H. Saad、 Y. Fillion、 S. Deschanvres、 Y. Vernay and S. Dennetiere: “On Resonances and Harmonics in HVDC-MMC Station Connected to AC Grid” IEEE Trans. Pow. Del.、 vol. 32、 no. 3、 pp. 1565-1573 (2017-06)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、安定性を確保した信頼性の高い電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の電力変換装置は、電力変換器と、変換器制御部とを持つ。電力変換装置は、交流と直流とを変換可能である。電力変換器は、交流の電圧を切り替え可能とするスイッチング素子を含む。変換器制御部は、スイッチング素子に動作指令を与える。変換器制御部は、基本周波数成分制御部と、共振状態検知部と、補正部と、を持つ。基本周波数成分制御部は、交流の電圧である交流電圧と、電力変換器に流れる交流電流とのうち少なくとも一方における、交流電圧または交流電流の少なくとも基本波周波数に相当する成分を制御する。共振状態検知部は、交流電圧または交流電流の高調波成分を検知する。補正部は、動作指令を補正する補正信号を生成する。共振状態検知部は、振動周波数検知部を持つ。振動周波数検知部は、交流電圧または交流電流における所定の周波数範囲の中で高調波振幅が最大となる振動周波数または振動周波数帯域を検知する。基本周波数成分制御部は、感度低減部を持つ。感度低減部は、少なくとも振動周波数を含む周波数帯域の感度を低減させて制御する。補正部は、交流電圧または交流電流の少なくとも振動周波数を含む周波数帯域の検出値に基づき補正信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す図。
図2】第1の実施形態に係る電力変換装置と系統インピーダンスの一例を示す等価回路図。
図3】第1の実施形態に係る変換器制御部の構成の一例を示すブロック図。
図4】第1の実施形態に係る電力変換装置のインピーダンス特性図の一例を示す図。
図5】第1の実施形態に係る電力変換装置のインピーダンスのベクトル図の一例を示す図。
図6】第1の実施形態に係る変換器制御部が行う処理手順例を示すフローチャート 。
図7】第2の実施形態に係る変換器制御部の構成の一例を示すブロック図。
図8】第3の実施形態に係る変換器制御部の構成の一例を示すブロック図。
図9】第4の実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す図。
図10】第4の実施形態に係る変換器制御部が行う処理手順例を示すフローチャート。
図11】第5の実施形態に係る共振状態検知部の処理手順例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の電力変換装置を、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る電力変換装置10の構成の一例を示す図である。電力変換装置10は、交流系統と直流系統の連系点に設けられ、交流系統が供給する交流電力と、直流系統が供給する直流電力とを相互に変換する。交流系統は、交流電源ACVや交流負荷、直流系統は、直流電源DCVや直流負荷であってもよい。
【0012】
図1のように、電力変換装置10は、変換器制御部100、および電力変換器20を備える。変換器制御部100は、共振状態検知部110、感度低減部120、基本周波数成分制御部130、補正部150、加算部170、およびゲート指令生成部180を備える。共振状態検知部110は、振動周波数検知部111を備える。なお、系統インピーダンス30、連系インダクタLについては、図2を用いて後述する。
【0013】
変換器制御部100は、系統インピーダンスと連系インダクタLの間の系統連系点P1から得た系統連系点の交流の電圧である交流電圧Vsr、Vss、Vstと、連系インダクタと電力変換器20との間から計器用変流器CTによって得た交流電流Isr、Iss、Ist(等しい電流計測値が得られれば、CTは例えばP1や電力変換器内部にあってもよい)を用いて、電力変換器20を制御するためのゲート指令gateを生成する。
【0014】
共振状態検知部110は、例えば、交流電圧Vsr、Vss、Vstの検出値にフーリエ変換演算またはカウンタを用いて振動周期(周波数の逆数)を検出し、所定の周波数範囲の中で高調波振幅が最大となる振動周波数fres、もしくは、fresを含む振動周波数帯域を抽出する。周波数範囲は、感度低減部や補正部によって振動周波数成分の抑制対象とする範囲に、例えば利用者によって予め設定されている。周波数範囲は、例えば、規格等で規定される高調波規制対象範囲や事前解析にて共振発生リスクが高いことが判明している範囲である。なお、共振状態検知部110は、共振状態を検知した場合、感度低減部120に対して基本周波数成分制御部130に対する感度を低減させることを有効化する。以下の説明では、感度を低減させることを、感度低減ともいう。なお、共振状態検知部110は、交流電圧Vsr、Vss、Vstまたは交流電流Isr、Iss、Istの高調波成分を検知する。なお、本願でいう「AまたはB」とは、AとBのうちいずれか一方の場合に限定されず、AとBの両方の場合を含む。
【0015】
共振状態検知部110の振動周波数検知部111は、交流電圧Vsr、Vss、Vstまたは交流電流Isr、Iss、Istを検出し、所定の周波数範囲の中で高調波振幅が最大となる振動周波数または振動周波数帯域を検知する。なお、以下の説明において、振動周波数検知部111は、交流電圧に基づいて、高調波振幅が最大となる振動周波数または振動周波数帯域を検知するものとする。所定の周波数範囲の中で高調波振幅が最大となる振動周波数または振動周波数帯域を検知する。振動周波数検知部111は、フーリエ変換演算により、高調波振幅の大きな周波数成分を振動周波数として特定する。あるいは、交流の電圧または交流電流の振動周期を観測し、例えば振動周期の逆数を演算することで、振動周波数を得てもよい。
【0016】
感度低減部120は、少なくとも振動周波数を含む周波数帯域の感度を低減させて制御する。感度低減部120は、交流電流の感度を低減させた交流電流と、交流電圧の感度を低減させた交流電圧と、を基本周波数成分制御部130に出力する(以下、感度を低減させることを感度低減ともいう)。感度低減部120は、交流電圧Vsr、Vss、Vstと、交流電流Isr、Iss、Istとに対して、例えばディジタルフィルタ処理を行い、振動周波数fres帯域における成分を減衰させる。ディジタルフィルタは、振動周波数より低いカットオフ周波数を有する低域通過フィルタや、振動周波数を含む帯域を減衰させるノッチフィルタ、もしくはこれらの組み合わせであってもよい。低域通過フィルタとノッチフィルタを組み合わせた場合は、振動周波数帯域における減衰率を組み合わせない場合より高くすることができる。ディジタルフィルタの特性の一部または全部は、共振状態検知部によって抽出された振動周波数fres帯域を効果的に減衰させるように動的に調整される。なお、低域通過フィルタのカットオフ周波数については、少なくとも基本波周波数より高周波の値に固定されていてもよい。なお、感度低減部120は、基本周波数成分制御部130に対する感度低減特性を振動周波数fresに応じて動的に変化させる。
【0017】
基本周波数成分制御部130は、交流電圧と電力変換器20との間を流れる交流電流において、少なくとも交流電圧の基本波周波数に相当する成分を制御する。基本周波数成分制御部130は、少なくとも振動周波数を含む周波数帯域の感度を低減させて制御する。基本周波数成分制御部130は、感度低減部120が出力する系統連系点電圧や交流電流に、例えば比例積分制御などを行い、交流電流の特に系統の基本波周波数成分を所定の値に制御するための電圧指令値Vr1、Vs1、Vt1を生成する。
【0018】
なお、基本周波数成分制御部130aが、基本周波数成分制御部130と感度低減部120を備えていてもよい。
【0019】
補正部150は、電力変換器20に対する動作指令である電圧指令値Vr1、Vs1、Vt1を補正する補正電圧VRr、VRs、VRtを生成する。なお、実施形態において、補正電圧は、補正信号の一例である。補正部150は、交流電流の少なくとも振動周波数を含む周波数帯域の検出値に基づき補正電圧VRr、VRs、VRtを生成する。補正部150は、例えば、交流電流の検出値から基本波周波数成分を除去し、振動周波数fresを含む高調波成分のみになるように処理した値に比例した補正電圧VRr、VRs、VRtを生成する。基本波周波数成分を除去する手法は、例えば、基本波周波数を含む帯域を減衰させるノッチフィルタによる処理や、実質的に高調波成分を抽出する高域通過フィルタの機能を含むディジタル処理等である。なお、補正部150は、補正電圧を、例えば3相2相変換された固定座標軸上の交流電流に基づき演算する。なお、補正部150は、共振抑制を行う共振抑制制御部の一例である。
【0020】
加算部170は、基本周波数成分制御部130が生成した電圧指令値Vr1、Vs1、Vt1と、補正部150が生成した補正電圧VRr、VRs、VRtとを加算することで補正して、電圧指令値Vr2、Vs2、Vt2を出力する。具体的には、加算部170は、電圧指令値V(x)1(xはr、s、t)と補正電圧VR(x)とを加算して電圧指令値V(x)2を出力する。
【0021】
ゲート指令生成部180は、交流端子電圧出力指令値である電圧指令値Vr2、Vs2、Vt2を入力とし、交流端子に疑似的に電圧指令値が出力されるように電力変換器内部のスイッチング素子に与えるゲート指令gateを生成する。なお、ゲート指令生成部180は、r、s、tの各相に対応するゲート指令を生成する。
【0022】
変換器制御部100は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサが記憶部(不図示)に記憶されるプログラム(ソフトウェア)を実行することにより、共振状態検知部110と、感度低減部120と、基本周波数成分制御部130と、補正部150と、ゲート指令生成部180とを機能部として実現するようにしてもよい。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0023】
電力変換器20は、変換器制御部100の制御に基づいて、交流電力と直流電力とを相互に変換する。電力変換器20は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲート型バイポーラートランジスター)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor;金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などの自己消弧型スイッチング素子を用いて構成した回路である。
【0024】
次に、電力変換装置10と系統インピーダンスの一例を説明する。図2は、本実施形態に係る電力変換装置10と系統インピーダンスの一例を示す等価回路図である。図2のように、交流系統は、交流電源から系統連系点までの等価インダクタンスLgridと、系統連系点の等価キャパシタンスCgridから構成される。以下の説明では、系統連系点から交流電源側をみたインピーダンスを系統インピーダンスZgridと呼ぶ。電力変換器20は、連系インダクタLvscを介して系統連系点P1に接続される。以下の説明では、系統連系点P1から電力変換器20側をみたインピーダンスを変換器インピーダンスZvscと呼ぶ。Zvscは、Lvscに電力変換器の制御による特性が加算されたインピーダンスである。
【0025】
次に、実施形態の変換器制御部100の構成の一例を説明する。図3は、本実施形態の変換器制御部100の構成の一例を示すブロック図である。図3のように、変換器制御部100は、例えば、回転座標変換部101、回転座標変換部102、固定座標変換部103、および固定座標変換部104を更に備える。
【0026】
感度低減部120は、例えば、第1フィルタ演算部121、第1フィルタ演算部122、第1フィルタ演算部123、および第1フィルタ演算部124を備える。なお、第1フィルタ演算部121と第1フィルタ演算部122と第1フィルタ演算部123と第1フィルタ演算部124それぞれの特性は同じである。
【0027】
基本周波数成分制御部130は、例えば、1/Vs演算部131、1/Vs演算部132、ωs*Lvsc演算部133、ωs*Lvsc演算部134、演算部135、演算部136、PI演算部137、PI演算部138、演算部139、および演算部140を備える。
【0028】
補正部150は、例えば、第2フィルタ演算部151、第2フィルタ演算部152、補正電圧演算部153、および補正電圧演算部154を備える。なお、第2フィルタ演算部151と第2フィルタ演算部152それぞれの特性は同じである。
【0029】
次に、変換器制御部100の各構成要素の動作例を、図3を参照して説明する。回転座標変換部101は、交流電流Isr、Iss、Istを、系統連系点電圧から検出された検出位相θに同期した回転座標軸上の交流電流成分Isd、Isqに変換する。回転座標変換部102は、系統連系点の交流電圧Vsr、Vss、Vstを、検出位相θに同期した回転座標軸上の交流電圧成分Vsd、Vsqに変換する。
【0030】
感度低減部120の第1フィルタ演算部121は、回転座標変換部101が変換した交流電流成分Isdを入力とし、共振状態検知部110(図1)が検出した振動周波数fresに基づき、振動周波数fresの周波数帯域を減衰させるように設定されたフィルタ処理を行う。第1フィルタ演算部122は、回転座標変換部101が変換した交流電流成分Isqを入力とし、振動周波数fresに基づき、振動周波数fresの周波数帯域を減衰させるように設定されたフィルタ処理を行う。なお、第1フィルタ演算部121と第1フィルタ演算部122の出力は、電流に基づく値である。
【0031】
感度低減部120の第1フィルタ演算部123は、回転座標変換部102が変換した交流電圧成分Vsdを入力とし、振動周波数fresに基づき、振動周波数fresの周波数帯域を減衰させるように設定されたフィルタ処理を行う。第1フィルタ演算部124は、回転座標変換部102が変換した交流電圧成分Vsqを入力とし、振動周波数fresに基づき、振動周波数fresの周波数帯域を減衰させるように設定されたフィルタ処理を行う。なお、第1フィルタ演算部123と第1フィルタ演算部124の出力は、電圧に基づく値である。なお、第1フィルタ演算部(121~124)のフィルタの特性は、例えば利用者によって予め設定されている。
【0032】
補正部150の第2フィルタ演算部151は、回転座標変換部101が変換した交流電流成分Isdから、基本波周波数成分(回転座標軸上では直流成分)を除去するフィルタの処理を行う。第2フィルタ演算部152は、回転座標変換部101が変換した交流電流成分Isqから、基本波周波数成分を除去するフィルタの処理を行う。なお、第2フィルタ演算部151と第2フィルタ演算部152の出力は、電流に基づく値である。なお、第2フィルタ演算部(151、152)のフィルタの特性は、例えば利用者によって予め設定されている。
【0033】
補正部150の補正電圧演算部153は、第2フィルタ演算部151によって基本波周波数成分が除去された高調波成分に、振動周波数fresに応じて設定された特性値(仮想的なインピーダンス成分)を乗じる処理を行う。補正電圧演算部154は、第2フィルタ演算部152によって基本波周波数成分が除去された高調波成分に、振動周波数fresに応じて設定された特性値を乗じる処理を行う。なお、特性値は、例えば利用者によって予め設定されていてもよく、補正電圧演算部(153、154)が設定するようにしてもよい。補正電圧演算部153と補正電圧演算部154それぞれの出力は、交流電流の少なくとも振動周波数を含む周波数帯域の検出値に、仮想的なインピーダンス成分(後述する補正成分Zr)の特性値を乗じた値であり、電圧に基づく値である。なお、後述するように仮想的なインピーダンス成分の大きさは、振動周波数fresの増加に伴い増加する値である。なお、補正電圧演算部153と補正電圧演算部154それぞれは、補正電圧の電流に対する振幅比を、振動周波数の増加に伴い増加させるように動的に変化させる。
【0034】
固定座標変換部103は、補正電圧演算部153と補正電圧演算部154とによって演算された電圧量を固定座標軸上の変数に変換して、補正電圧VRr、VRs、VRtを生成する。なお、補正電圧VRr、VRs、VRtは、加算部170(図1)に入力される。
【0035】
基本周波数成分制御部130と固定座標変換部104は、比例積分制御(PI制御)をベースとした、回転座標軸上における非干渉電流制御を行い、固定座標軸上の変数に変換することで、電圧指令値Vr1、Vs1、Vt1を生成する。
【0036】
基本周波数成分制御部130の1/Vs演算部131は、例えば外部装置によって生成された有効電力指令値pに対して1/Vs演算を行う。なおVsは、系統電圧定格値(定数)である。1/Vs演算部132は、例えば外部装置によって生成された無効電力指令値qに対して1/Vs演算を行う。なお、1/Vs演算部131と1/Vs演算部132の出力は、電流に基づく値である。
【0037】
基本周波数成分制御部130の演算部135は、1/Vs演算部131の出力から、感度低減部120の第1フィルタ演算部121の出力を減算する。演算部136は、1/Vs演算部132の出力から、感度低減部120の第1フィルタ演算部122の出力を減算する。
【0038】
基本周波数成分制御部130のPI演算部137は、演算部135の出力に対して、比例積分演算処理を行う。PI演算部138は、演算部136の出力に対して、比例積分演算処理を行う。なお、PI演算部137とPI演算部138の出力は、電圧に基づく値である。
【0039】
基本周波数成分制御部130のωs*Lvsc演算部133は、感度低減部120の第1フィルタ演算部121の出力に対して、系統基本波角周波数ωsに連系インダクタのインダクタンス値Lvscを乗じる。ωs*Lvsc演算部134は、感度低減部120の第1フィルタ演算部122の出力に対して、ωsに連系インダクタのインダクタンス値Lvscを乗じる。なお、系統基本波角周波数ωsは定数である。なお、ωs*Lvsc演算部133とωs*Lvsc演算部134の出力は、電圧に基づく値である。
【0040】
基本周波数成分制御部130の演算部139は、感度低減部120の第1フィルタ演算部123の出力とωs*Lvsc演算部134の出力を加算し、PI演算部137の出力を減算する。演算部140は、感度低減部120の第1フィルタ演算部124の出力に対して、ωs*Lvsc演算部133の出力とPI演算部138の出力とを減算する。
【0041】
固定座標変換部104は、演算部139と演算部140が出力する電圧量を固定座標軸上の変数に変換して、電圧指令値Vr1、Vs1、Vt1を生成する。なお、電圧指令値Vr1、Vs1、Vt1は、加算部170(図1)に入力される。
【0042】
このように、変換器制御部100は、共振状態検知部110が、系統連系点電圧や交流電流の検出値から高調波振幅が最大となる振動周波数を抽出する。感度低減部120は、少なくとも系統の基本波周波数成分の交流電流を制御する基本周波数成分制御部130に対して、振動周波数における感度を十分に低減させる。補正部150は、少なくとも振動周波数を含む帯域の検出値に基づき、基本周波数成分制御部130の出力を補正する。
【0043】
次に、実施形態の電力変換装置のインピーダンス特性図の一例を、図2図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る電力変換装置のインピーダンス特性図の一例を示す図である。グラフg10は周波数に対する振幅の変化を示し、グラフg20は周波数に対する位相の変化を示す。グラフg10とg20の横軸は周波数[Hz]であり、グラフg10の縦軸は振幅[Ω]であり、グラフg20の縦軸は位相[度]である。
【0044】
グラフg10のように、系統インピーダンスZgridの振幅g11は、LgridとCgridの並列共振周波数である1/(2π√(Lgrid*Cgrid))にて最大となる。グラフg20のように、系統インピーダンスZgrid(g21)の位相は、周波数が1/(2π√(Lgrid*Cgrid))より低周波側でインダクタ相当の+90[度]になり、高周波側でキャパシタ相当の-90度になる。図4は、系統インピーダンスZgridがインダクタンスやキャパシタンス、抵抗の受動要素で構成される一般的な場合における位相範囲の上限と下限をとる系統状態の一例を示している。符号g12は、周波数に対する変換器インピーダンスZvsc、Zvsc’、Zvsc’’の振幅を示す。なお、Zvsc、Zvsc’、Zvsc’’は、互いにインピーダンスが異なる。なお、変換器インピーダンスZvsc’およびZvsc’’の振幅も変換器インピーダンスZvscから若干は変化するが、位相特性の変化ほど影響は大きくない。このため、グラフg10では、変換器インピーダンスZvsc’およびZvsc’’の振幅が変換器インピーダンスZvscの振幅にほぼ等しいものとして図示している。
【0045】
変換器インピーダンスZvscの振幅は、周波数が低くなると電流制御の効果で増加し、周波数が高くなると電流制御の効果は小さくなるが、連系インダクタLvscのリアクタンスωLvscが増加するため、周波数増加に伴いほぼ比例で増加していく。グラフg20のように、変換器インピーダンスZvscの位相は、高周波では、連系インダクタLvsc相当の+90度に近づくが、制御系の遅延時間等の影響によって、+90度を超過する周波数帯域も出現する。
【0046】
ナイキストの安定判別法を適用すると、系統インピーダンスZgridと変換器インピーダンスZvscの絶対値が等しい(グラフg10の交点g13)、かつ、グラフg20のように系統インピーダンスZgridと変換器インピーダンスZvscの位相差が180度に近い振動周波数fresで、不安定化し、共振現象が発生する可能性がある。
【0047】
系統インピーダンスZgridと変換器インピーダンスZvscの絶対値が等しいことは、システムのゲインが1であることに相当する。180度から周波数がfresにおける系統インピーダンスZgridと変換器インピーダンスZvscの位相差(度)を減算した値が、位相余裕φに相当する。一般に、システムは、位相余裕φ>0の場合に安定であり、位相余裕φ=0の場合に安定限界であり、位相余裕φ<0の場合は不安定となる。
【0048】
図4のように変換器インピーダンスがZvscの場合は、系統インピーダンスZgridと変換器インピーダンスZvscの位相差が180度を超過しているため、位相余裕はφ<0であり、不安定である。そして、変換器インピーダンスがZvscの場合は、振動周波数fresで共振が発生し、発散して制御不能になるリスクが高い。
【0049】
変換器インピーダンスZvsc’は、振動周波数fresに対する電流制御の感度を低減させた場合の変換器インピーダンスである。この場合は、系統インピーダンスZgridと変換器インピーダンスZvsc’の位相差が180度程度となるため、位相余裕がφ=0であり、安定限界となる。変換器インピーダンスZvsc’では、共振発生リスクが低減されるが、十分な安定余裕がないため、わずかな外乱が加わるだけで共振が増幅する場合がある。
【0050】
変換器インピーダンスZvsc’’は、振動周波数fresに対する電流制御の感度を低減させ、さらに共振抑制制御を有効化した場合の変換器インピーダンスである。この場合は、系統インピーダンスZgridと変換器インピーダンスZvsc’’の位相差が180度未満となるため、位相余裕はφ>0であり、安定である。変換器インピーダンスZvsc’’では、位相余裕φが十分な値になるように補正電圧を調整することで、共振発生を防止し、安定に運転継続できるようになる。このため、本実施形態では、共振の影響を低減するために、位相が±90[度]以内となり位相余裕を確保できるように制御する。
【0051】
系統インピーダンスZgridは多くの場合に±90度以内の位相をとる。このため、この例のように、高周波域においてその下限の-90度である状態は、変換器インピーダンスZvscの位相が+90度近くであることを考慮すると、安定運転にとって過酷条件(位相余裕φが小さい)となる。逆に、系統インピーダンスZgridの位相が、例えば、-60度程度となる系統状態の条件の場合は、振動周波数fresに対する電流制御の感度を低減させたのみの変換器インピーダンスZvsc′でも十分な位相余裕φを確保できる。
【0052】
次に、電力変換装置10のインピーダンスのベクトル、位相余裕等について図4図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る電力変換装置のインピーダンスのベクトル図の一例を示す図である。
【0053】
一例として、感度低減部120の作用によって、振動周波数fresに対する電流制御の感度が十分に低減し、変換器インピーダンスがほぼ連系インダクタンス相当し、変換器インピーダンスZvsc’≒ωres*Lvscとみなせる場合について説明する。なお、ωresは振動周波数fresに対応した角周波数(=2π*fres)である。振動周波数fresにおいては、系統インピーダンスZgridと変換器インピーダンスZvsc’の振幅が等しく、位相差が180度となる。すなわち、位相余裕はφ=0であり、安定限界となる。ここで、変換器インピーダンスZvsc’に振幅G*ωres*Lvsc、位相φの補正成分Zrを加えると、図4より、補正後の変換器インピーダンスZvsc’’の場合の振動周波数fresにおける位相余裕φは次式(1)で表せる。
【0054】
【数1】
【0055】
なお、式(1)において、Gは係数である。式(1)の右辺は、係数Gと位相φが定数であれば、振動周波数fresに無関係な値である。これは、補正成分Zrの振幅に振動周波数に対応した角周波数ωresが乗じられていることで、補正成分Zrの振幅が、振動周波数fresの増加に伴い比例して増加するように設定されているためである。これは、振動周波数fresが変化した場合も等しく安定性を改善する効果が得られることを意味する。仮に、そうではなく補正成分の振幅がG*ω*Lvsc(なおωは定数)であった場合、振動周波数fresにおける位相余裕は次式(2)で表せる。
【0056】
【数2】
【0057】
式(2)の右辺は、ωresが大きくなるほど小さくなるため、振動周波数fresが高くなるほど位相余裕は減少する。これは、振動周波数fres高くなるほど安定性を改善する効果が小さくなっていくことを意味する。
【0058】
変換器インピーダンスに補正成分Zrを加算するには、補正部150にて、交流電流の少なくとも振動周波数fres成分を含む検出値に補正成分Zrの振幅に相当する特性を乗じて補正電圧とすればよい。ただし、式(1)の右辺が-90度<φ<+90度の場合に正の値をとるため、位相余裕φ>0とするには、振動周波数fresにおける位相φが±90度以内となるように注意する必要がある。この位相φには、交流電流検出から補正電圧が最終的に出力されるまでの一連の位相特性が含まれる。
【0059】
ここで、補正成分Zrは、変換器制御上で実現される仮想的なインピーダンス成分と考えることができ、実部は仮想的な抵抗成分となる。位相φが±90度を超過すると実部は負値となり、補正成分Zrは振動を増幅する負性抵抗として機能する。このため、位相φが±90度を超過した場合は、共振抑制制御によってかえって不安定化を引き起こす場合がある。このため、本実施形態では、共振の影響を低減するために、位相が±90[度]以内となり位相余裕を確保できるように制御する。
【0060】
次に、変換器制御部100が行う処理手順例を説明する。図6は、本実施形態に係る変換器制御部100が行う処理手順例を示すフローチャートである。
【0061】
共振状態検知部110は、系統連系点電圧や交流電流の検出値から高調波振幅が最大となる振動周波数を抽出する(ステップS1)。
【0062】
感度低減部120は、少なくとも系統の基本波周波数成分の交流電流を制御する基本周波数成分制御部130に対して、振動周波数における感度を十分に低減させるように感度低減処理を行う(ステップS2)。
【0063】
基本周波数成分制御部130は、感度低減部120が出力する交流電圧と交流電流に、例えば比例積分制御等を行って、交流電流の特に系統の基本波周波数成分を所定の値に制御するための電圧指令値を生成する(ステップS3)。
【0064】
補正部150は、少なくとも振動周波数を含む帯域の検出値に基づき、基本周波数成分制御部130の出力を補正する(ステップS4)。
【0065】
ゲート指令生成部180は、補正部150によって補正された電圧指令値に基づいて、電力変換器に対するゲート指令を生成する(ステップS5)。処理後、ゲート指令生成部180は、ステップS1の処理に戻す。なお、上記一連の処理は、各ステップが順番に行われていてもよいし、各部分が異なる演算間隔で独立に並列動作し、その結果を組み合わせることでも同様の結果が得られる。
【0066】
以上のように、本実施形態は、少なくとも系統の基本波周波数成分の交流電流を制御する基本周波数成分制御部130に対し、振動周波数における感度を十分に低減させる。これにより、本実施形態によれば、系統状態(系統インピーダンス)が安定運転にとって過酷条件である場合も、システムの特性を不安定(位相余裕φ<0)から安定限界(φ≒0)まで改善できる。
【0067】
本実施形態では、安定限界(φ≒0)としたうえで、さらに補正部150が生成した補正電圧を用いて補正することで、効果的に十分な安定余裕(φ>0)を確保できる。なお、仮に安定限界(φ≒0)にせずに、補正部150で補正電圧を加算する場合は、補正部150の補正電圧のみで不安定(φ<0)から特性改善する(十分なφ>0を得るまでφを増加する)必要があり、十分な安定余裕を確保できない可能性がある。たとえば、十分な安定余裕を確保できない状況としては、補正部150の出力VRr*、VRs*、VRt*が事前に安定限界にしていない分だけ増加し、加算部170により得られた電圧指令値Vr2*、Vs2*、Vt2*が電力変換器20の出力可能電圧上限を超過することなどが考えられる。感度低減によって安定限界としていることで、補正部150の出力VRr*、VRs*、VRt*は小さく済む。そして、本実施形態によれば、電力変換器20の出力可能電圧上限以内でも十分な安定余裕を確保できる。
【0068】
本実施形態では、感度低減部120の処理特性を、共振状態検知部110にて抽出した振動周波数に応じて動的に変化させるようにした。これにより、本実施形態によれば、系統状態が変化し、振動周波数が変動した場合も十分に系統連系点電圧や交流電流の検出値の振動周波数帯域における成分を減衰させることができる。さらに、本実施形態によれば、制御感度を低減する周波数帯域が状態に応じて適切に限定されることで、共振現象に関係しない周波数帯域の制御感度を維持し、通常時や系統事故など異常時の運転に必要な電流制御性能を維持できる。
【0069】
本実施形態では、補正部150の補正電圧の電流に対する振幅比(インピーダンス補正成分)を、共振状態検知部110にて抽出した振動周波数に応じて動的に変化させる(振動周波数の増加に伴い増加させる)ようにした。これにより、本実施形態によれば、系統状態が変化し、振動周波数が変動した(振動周波数が増加した)場合も十分な位相余裕を確保することができる。
【0070】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。図7は、本実施形態に係る変換器制御部100Aの構成の一例を示すブロック図である。図7のように、変換器制御部100Aは、例えば、回転座標変換部101、回転座標変換部102、3相2相変換部105、2相3相変換部106、および固定座標変換部104を更に備える。なお、第1の実施形態の変換器制御部100(図3)と同様の機能を有する機能部については同じ符号を用いて説明を省略する。図3図7との差異は、補正部150の入力側に3相2相変換部105が設けられ、補正部150の出力側に固定座標変換部103の代わりに2相3相変換部106が設けられていることである。
【0071】
3相2相変換部105は、3相の交流電流Isr、Iss、Istを、2相の交流電流成分Isa、Isbに変換する。
【0072】
補正部150の第2フィルタ演算部(151、152)は、3相2相変換された固定座標軸上の交流電流成分Isa、Isbから基本波周波数成分を除去する処理を行う。補正電圧演算部(153、154)は、第2フィルタ演算部(151、152)が出力する高調波成分に、振動周波数fresに応じて設定された特性を乗じる処理を行う。
【0073】
2相3相変換部106は、補正電圧演算部153と補正電圧演算部154とによって演算された2相の電圧に基づく値を3相の電圧に基づく値に変換して、補正電圧VRr、VRs、VRtを生成する。
【0074】
なお、変換器制御部100Aの処理手順は、第1の実施形態の処理手順(図6)と同様である。
【0075】
これにより、本実施形態によれば、固定座標軸上の交流電流に基づき補正電圧を演算することで、系統電圧の検出位相θの検出遅延時間、検出誤差や回転座標変換演算に要する遅延時間の影響をなくし、より高周波の振動周波数に対しても安定に位相余裕を確保できる。これは、遅延時間は、式(1)の位相φを負値方向(位相遅れ)に増加させる作用があり、より低周波でも位相-90[度]を下回り、不安定化する(位相余裕が負値となる)ことにつながるためである。なお、3相2相変換は、単なる定数係数を乗じる演算のため、系統電圧の検出位相θの検出遅延時間、演算遅延時間の影響を排除できる。
【0076】
また、本実施形態によれば、3相2相変換することで、3相の交流電流に対して演算するよりも、必要な第2フィルタ演算部や補正電圧演算部の個数を低減し、演算負荷を軽減できる。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を説明する。図8は、本実施形態に係る変換器制御部100Bの構成の一例を示すブロック図である。図8のように、変換器制御部100Bは、感度低減部120、基本周波数成分制御部130B、補正部150、3相2相変換部105、2相3相変換部106、3相2相変換部107、2相3相変換部108、および2相3相変換部109を備える。なお、第2の実施形態の変換器制御部100A(図7)と同様の機能を有する機能部については同じ符号を用いて説明を省略する。第2の実施形態の構成と第3の実施形態の構成との差異は、基本周波数成分制御部130B、3相2相変換部107、2相3相変換部108、および2相3相変換部109である。
【0078】
基本周波数成分制御部130Bは、例えば、1/Vs演算部131、1/Vs演算部132、固定座標変換部141、演算部142、演算部143、PR演算部144、PR演算部145、演算部146、および演算部147を備える。
【0079】
3相2相変換部107は、3相の交流電流Isr、Iss、Istを、固定座標軸上の2相の交流電流成分Isa、Isbに変換する。3相2相変換部108は、3相の交流電圧Vsr、Vss、Vstを、固定座標軸上の2相の交流電圧成分Vsa、Vsbに変換する。
【0080】
基本周波数成分制御部130Bは、3相2相変換された固定座標軸上の交流電流成分Isa、Isb、および交流電圧成分Vsa、Vsbに基づき、系統の基本波周波数に対して感度が高くなるようにゲイン設定したPR制御をベースとした固定座標軸上における電流制御を行う。
【0081】
固定座標変換部141は、1/Vs演算部131によって演算された電流に基づく値を固定座標軸上の変数に変換して演算部142に出力する。固定座標変換部141は、1/Vs演算部132によって演算された電流に基づく値を固定座標軸上の変数に変換して演算部143に出力する。なお、固定座標変換部141の出力は、電流に基づく値である。
【0082】
演算部142は、固定座標変換部141が出力する有効電力指令値pに基づく値(電流に基づく値)から、交流電流成分Isaに対して第1フィルタ演算部121によって処理された電流に基づく値を減算する。演算部143は、固定座標変換部141が出力する無効電力指令値qに基づく値(電流に基づく値)から、交流電流成分Isbに対して第1フィルタ演算部122によって処理された電流に基づく値を減算する。
【0083】
PR演算部144は、演算部142の出力に対して、系統の基本波周波数に対して感度が高くなるようにゲイン設定したPR制御(比例共振制御)をベースとした固定座標軸上における電流制御を行う。PR演算部145は、演算部143の出力に対して、系統基本波周波数に対して感度が高くなるようにゲイン設定したPR制御をベースとした固定座標軸上における電流制御を行う。なお、PR演算部144とPR演算部145の出力は、電圧に基づく値である。
【0084】
演算部146は、交流電圧成分Vsaに対して第1フィルタ演算部123によって処理された電圧に基づく値から、PR演算部144が出力する電圧に基づく値を減算する。演算部147は、交流電圧成分Vsbに対して第1フィルタ演算部124によって処理された電圧に基づく値から、PR演算部145が出力する電圧に基づく値を減算する。
【0085】
2相3相変換部109は、演算部146と演算部147との2相の出力を3相の電圧量に変換して、電圧指令値Vr2、Vs2、Vt2を生成する。
【0086】
なお、変換器制御部100Bの処理手順は、第1の実施形態の変換器制御部100(図6)と同様である。
【0087】
これにより、本実施形態によれば、固定座標軸上の交流電流に基づき電圧指令値を演算することで、系統電圧の検出位相θの検出遅延時間、検出誤差や回転座標変換演算に要する遅延時間の影響をなくし、比較的安定に運転することができる。
【0088】
また、本実施形態によれば、3相2相変換することで、3相の交流電流に対して演算するよりも、必要な第1フィルタ演算部やPR演算部の個数を低減し、演算負荷を軽減できる。
【0089】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を説明する。図9は、本実施形態に係る電力変換装置10Cの構成の一例を示す図である。図9のように、電力変換装置10Cは、変換器制御部100C、および電力変換器20を備える。変換器制御部100Cは、例えば、共振状態検知部110C、感度低減部120、基本周波数成分制御部130、補正部150、加算部170、ゲート指令生成部180、第1SW、第2SW、および第3SWを備える。共振状態検知部110Cは、振動周波数検知部111を備える。
【0090】
第1SW、第2SW、および第3SWは、切り替え部であり、制御用のソフトウェアやハードウェアによって実現される切替スイッチである。
【0091】
第1SWの第1の入力端には、交流電流が入力され、第1SWの第2の入力端には、交流電流に対して感度低減部120が感度低減の処理を行った電流に基づく値が入力され、第1SWの出力端は、基本周波数成分制御部130に接続される。
【0092】
第2SWの第1の入力端には、交流電圧が入力され、第2SWの第2の入力端には、交流電圧に対して感度低減部120が感度低減の処理を行った電圧に基づく値が入力され、第2SWの出力端は、基本周波数成分制御部130に接続される。
【0093】
第3SWの第1の入力端は、補正値が0となる電圧に基づく値が入力され、第3SWの第2の入力端には、補正部150の出力(電圧に基づく値)が入力され、第3SWの出力端は、加算部170に接続されている。
【0094】
第1SW、第2SW、および第3SWそれぞれは、共振状態検知部110Cの制御によって、有効化の際に第2の入力端と出力端が接続されるように切り替わり、無効化の際に第1の入力端と出力端が接続されるように切り替わる。
【0095】
共振状態検知部110Cは、共振状態検知部110の機能に加えて、感度低減部120の機能を有効状態と無効状態とに切り替える切替信号g2を生成し、生成した切替信号g2を第1SWおよび第2SWに出力する。共振状態検知部110Cは、補正部150の機能を有効状態と無効状態とに切り替える切替信号g3を生成し、生成した切替信号g3を第3SWに出力する。
【0096】
共振状態検知部110Cは、例えば、振動周波数fresにおける高調波振幅や、少なくともfresを含む周波数域の合計高調波振幅を第1の閾値と比較し、高調波振幅が第1の閾値を超えた場合に共振状態であると判別する。そして、共振状態検知部110Cは、共振状態を検知した場合に感度低減を有効化し、共振状態を検知しなかった場合に感度低減を無効化する。感度低減が有効な場合、基本周波数成分制御部130には、感度低減部120によって処理された交流電圧と交流電流が入力される。感度低減が無効な場合、基本周波数成分制御部130には、感度低減部120の処理をバイパスした交流電圧と交流電流が入力される。
【0097】
共振状態検知部110Cは、例えば、振動周波数fresにおける、交流電流の検出から補正電圧が最終的に出力されるまでの一連の位相特性φが実質的に±90度以内となる場合に有効化し、他の場合に無効化する。例えば、予め各遅延時間やフィルタなどの位相特性から位相特性φの周波数特性を例えば利用者が求めておき、実質的に±90度以内となる周波数範囲fmin~fmaxを例えば利用者が確認する。なお、各遅延時間やフィルタなどの位相特性から位相特性φの周波数特性は、共振状態検知部110Cが予め求めるようにしてもよい。そして、共振状態検知部110Cは、抽出された振動周波数fresと、周波数幅(第3の閾値)とを比較し、振動周波数fresが周波数幅の範囲にある場合に有効化するようにしてもよい。共振抑制制御が有効な場合は、補正電圧が補正部150での演算量になる。共振抑制制御が無効な場合は、補正電圧が零近傍の所定値以下となる。共振状態検知部110Cは、さらに、共振抑制制御の有効化に条件を加え、例えば、振動周波数fresにおける高調波振幅や、少なくともfresを含む周波数域の合計高調波振幅を第1の閾値と比較し、高調波振幅が第1の閾値を超え、かつ、抽出された振動周波数fresと、周波数幅(第3の閾値)とを比較し、振動周波数fresが周波数幅の範囲にある場合に有効化し、他の場合に無効化するとしてもよい。
【0098】
なお、共振状態検知部110Cは、有効状態をタイマーによって一定時間継続させてもよい。または、共振状態検知部110Cは、電力系統が別の回線状態に切り替えられるまで、すなわち、系統インピーダンスが変化することが自明であるときまで継続させるようにしてもよい。その場合、共振状態検知部110Cは、有効状態から無効状態に切り替え、再び有効無効の切り替え判定(後述)を行うようにしてもよい。
【0099】
また、共振状態検知部110Cは、感度低減を有効化してから所定時間経過後に感度低減を無効化するようにしてもよい。また、共振状態検知部110Cは、感度低減を有効化された状態において、交流の系統状態や負荷状態が変化した信号を外部(例えば外部装置)から受信した際に感度低減を無効化するようにしてもよい。
【0100】
次に、本実施形態の処理手順例を説明する。図10は、本実施形態に係る変換器制御部100Cの処理手順例を示すフローチャートである。なお、第1の実施形態の処理手順(図6)と同様の処理には同じ符号を用いて、説明を省略する。
【0101】
共振状態検知部110Cは、振動周波数を抽出する(ステップS1)。共振状態検知部110Cは、例えば、振動周波数fresにおける高調波振幅や、少なくともfresを含む周波数域の合計高調波振幅を第1の閾値と比較して、高調波振幅が第1の閾値を超えた場合に共振状態を検出する(ステップS101)。
【0102】
共振状態検知部110Cは、共振状態を検出したか否かを判別する(ステップS102)。共振状態検知部110Cは、共振状態を検出しなかった場合、感度低減を無効化するように第1SWと第2SWを切り替え(ステップS103)、ステップS3の処理に進める。共振状態検知部110Cは、共振状態を検出した場合、感度低減を有効化するように第1SWと第2SWを切り替え(ステップS104)、感度低減の処理を行う(ステップS2)。ステップS2の処理後、共振状態検知部110Cは、ステップS3の処理に進める。
【0103】
基本周波数成分制御部130は、PI制御によって電圧指令値を生成する(ステップS3)。共振状態検知部110Cは、振動周波数fresと周波数範囲とを比較し(ステップS105)、振動周波数fresが周波数範囲内であるか否かを判別する(ステップS106)。共振状態検知部110Cは、振動周波数fresが周波数範囲内ではない場合、共振抑制制御を無効化するように第3SWを切り替え(ステップS107)、ステップS5の処理に進める。共振状態検知部110Cは、振動周波数fresが周波数範囲内である場合、共振抑制制御を有効化するように第3SWを切り替え(ステップS108)、基本周波数成分制御部130の出力を補正する(ステップS4)。ステップS4の処理後、共振状態検知部110Cは、ステップS5の処理に進める。
【0104】
ゲート指令生成部180は、補正部150によって補正された電圧指令値に基づいて、電力変換器に対するゲート指令を生成する(ステップS5)。処理後、ゲート指令生成部180は、ステップS1の処理に戻す。なお、上記一連の処理は、各ステップが順番に行われていてもよいし、各部分が異なる演算間隔で独立に並列動作し、その結果を組み合わせることでも同様の結果が得られる。
【0105】
これにより、本実施形態によれば、共振状態を検知した場合にのみ感度低減を有効化することで、系統状態が不安定になりにくい条件のときに、感度低減の副作用である電流制御応答性の低下を防止できる。
【0106】
また、本実施形態では、振動周波数と周波数範囲とを比較結果に基づいて電圧補正の有効化と無効化を切り替えるようにした。これにより、本実施形態によれば、検出・演算遅延等に伴う位相遅れの影響で、共振抑制制御を有効化するとかって不安定化する特に一定以上の高周波の周波数域において、共振抑制制御を無効化することで、不安定化を防止できる。
【0107】
また、本実施形態によれば、タイマーや系統状態に応じて、感度低減を再び無効化することで、系統状態が不安定になりにくい条件に変化したときにも、感度低減の副作用である電流制御応答性の低下を防止できる。
【0108】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態を説明する。変換器制御部100Cの構成例は、第4の実施形態の構成例の図9と同様である。
【0109】
共振状態検知部110Cは、所定の周波数以上の合計高調波成分振幅が第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上の場合に、共振抑制制御を無効化するように第3SWを切り替える。さらに、共振状態検知部110Cは、感度低減や共振抑制制御の有効無効の切り替え(第1SW、第2SW、第3SWの切り替え)から所定時間経過しても高調波成分振幅が低減しない場合、ゲート指令生成部180を制御して電力変換器20の運転を停止させる。
【0110】
次に、本実施形態の処理手順例を説明する。図11は、本実施形態に係る共振状態検知部110Cの処理手順例を示すフローチャートである。この処理は、第4の実施形態の処理とともに用いられる。
【0111】
共振状態検知部110Cは、所定の周波数以上の合計高調波成分の振幅を検出し、検出した合計高調波成分の振幅と第2の閾値とを比較し(ステップS201)、合計高調波成分の振幅が第2の閾値以上であるか否かを判別する(ステップS202)。
【0112】
共振状態検知部110Cは、合計高調波成分の振幅が第2の閾値以上である場合、共振抑制制御が有効ならば共振抑制制御を無効化するように第3SWを切り替える(ステップS203)。共振状態検知部110Cは、合計高調波成分の振幅が第2閾値未満である場合、第3SWの切替処理は行わない(有効なら有効のまま、無効なら無効のまま状態を保持する)(ステップS204)。
【0113】
さらに、前述の処理とは独立して、共振状態検知部110Cは、感度低減や共振抑制制御の有効無効の切り替え(第1SW、第2SW、第3SWの切り替え)を監視し、切り替えから所定時間経過後、合計高調波成分振幅が低減しているか否かを判別する(ステップS205)。共振状態検知部110Cは、合計高調波成分振幅が低減していない場合、ゲート指令生成部180を制御して電力変換器20の運転を停止させる(ステップS206)。共振状態検知部110Cは、合計高調波成分振幅が低減している場合、ゲート指令生成部180を制御して電力変換器20の運転を継続させる(ステップS207)。ステップS203、S204、S206、S207の処理後、共振状態検知部110Cは、処理を終了する。
【0114】
なお、図11の処理において、共振状態検知部110Cは、ステップS201~S204の処理と、ステップS205~S207の処理のうち、少なくとも1つの処理を行うようにしてもよい。
【0115】
これにより、本実施形態によれば、検出・演算遅延等に伴う位相遅れの影響で、共振抑制制御を有効化すると却って不安定化したことを検知した場合にその制御を無効化することで、不安定化を防止できる。
【0116】
また、本実施形態によれば、制御によって不安定化を防止できない場合、変換器運転を停止することで、より深刻な高調波の系統への拡大現象を防止できる。
【0117】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態を説明する。第6の実施形態では、第1の実施形態~第5の実施形態のうちいずれか1つにおいて、補正部150が、電力変換器20のインピーダンスの補正成分Zrに、次式(3)の位相進み補償の伝達関数Hを含める。
【0118】
【数3】
【0119】
なお、伝達関数Hは、周波数flowからfhighまで程度の位相特性を進める関数である。また、flowからfhighは、検出・演算遅延等に伴う位相遅れの影響を補正したい周波数域が含まれるように、例えば予め利用者によって設定されている。
【0120】
これにより、本実施形態によれば、共振抑制制御における検出・演算遅延等に伴う位相遅れの影響を低減し、より高周波まで共振抑制制御を安定動作させることができる。この結果、本実施形態によれば、より高周波数まで安定余裕を確保できる。
【0121】
ここで、位相進み補償は、高周波になるほどゲインが増加する効果があり、振動周波数fresの増加に伴い増加する仮想的なインピーダンス成分を実現することにも相当する。一方で、位相特性次第では不安定化するリスクが高くなることがある。このため、本実施形態によれば、第5の実施形態のように不安定化する場合にのみ共振抑制制御を無効化すればよく、これらの組み合わせによってさらに高周波までの安定性を確保できる。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0123】
10,10C…電力変換装置、100,100A,100B,100C…変換器制御部、20…電力変換器、110,110C…共振状態検知部、120…感度低減部、130,130a,130B…基本周波数成分制御部、150…補正部、170…加算部、180…ゲート指令生成部、111…振動周波数検知部、30…系統インピーダンス、L…連系インダクタ、101…回転座標変換部、102…回転座標変換部、103…固定座標変換部、104…固定座標変換部、121…第1フィルタ演算部、122…第1フィルタ演算部、122…第1フィルタ演算部、124…第1フィルタ演算部、131…1/Vs演算部、132…1/Vs演算部、133…ωs*Lvsc演算部、134…ωs*Lvsc演算部、135…演算部、136…演算部、137…PI演算部、138…PI演算部、139…演算部、140…演算部、151…第2フィルタ演算部、152…第2フィルタ演算部、153…補正電圧演算部、154…補正電圧演算部、105…3相2相変換部、107…3相2相変換部、108…3相2相変換部、106…2相3相変換部、109…2相3相変換部、141…固定座標変換部、142…演算部、143…演算部、144…PR演算部、145…PR演算部、146…演算部、147…演算部、第1SW、第2SW、第3SW…切り替え部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11