IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-建設機械 図1
  • 特許-建設機械 図2
  • 特許-建設機械 図3
  • 特許-建設機械 図4
  • 特許-建設機械 図5
  • 特許-建設機械 図6
  • 特許-建設機械 図7
  • 特許-建設機械 図8
  • 特許-建設機械 図9
  • 特許-建設機械 図10
  • 特許-建設機械 図11
  • 特許-建設機械 図12
  • 特許-建設機械 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
E02F9/22 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020127549
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024770
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲平
(72)【発明者】
【氏名】清水 自由理
(72)【発明者】
【氏名】平工 賢二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏政
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-190443(JP,A)
【文献】特開2013-040487(JP,A)
【文献】特開2017-120039(JP,A)
【文献】特開2010-174980(JP,A)
【文献】特開2014-177969(JP,A)
【文献】特開2020-076223(JP,A)
【文献】特開2018-162860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両傾転ポンプと、
油圧アクチュエータと、
前記両傾転ポンプの第1吸吐出ポートと前記油圧アクチュエータの第1油室とを接続する第1流路と、
前記両傾転ポンプの第2吸吐出ポートと前記油圧アクチュエータの第2油室とを接続する第2流路と、
前記第1流路および前記第2流路を開閉可能な切換弁と、
前記両傾転ポンプの傾転角を制御するレギュレータと、
前記油圧アクチュエータの動作を指示するための操作レバーと、
前記操作レバーから入力される操作信号に基づいて前記切換弁を開閉制御し、前記操作信号に基づいて前記両傾転ポンプの目標傾転角を決定し、前記目標傾転角と前記レギュレータへ出力する傾転角制御信号とを対応付けた制御マップを元に前記目標傾転角を前記傾転角制御信号に変換し、前記傾転角制御信号を前記レギュレータへ出力するコントローラとを備えた建設機械において、
前記第1吸吐出ポートと前記第2吸吐出ポートとを接続する連通流路と、
前記連通流路に設けられ、前記コントローラからの制御信号に応じて開位置と閉位置との間で切り換えられるアンロード弁と、
前記両傾転ポンプの傾転角を検出する傾転角センサと、
前記両傾転ポンプの新規搭載時に操作される新規搭載スイッチとを備え、
前記コントローラは、前記新規搭載スイッチから信号が入力された場合に、前記切換弁へ閉信号を出力し、前記アンロード弁へ開信号を出力し、前記傾転角制御信号を所定のパターンに従って変化させつつ前記傾転角センサの検出値を取得し、前記検出値と前記傾転角制御信号とを対応付けた第1更新用マップを生成し、前記第1更新用マップで前記制御マップを更新する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記第1吸吐出ポートの圧力を検出する第1圧力センサと、
前記第2吸吐出ポートの圧力を検出する第2圧力センサと、
チャージ油圧源と、
前記チャージ油圧源に接続されたチャージ流路と、
前記チャージ流路から前記第1吸吐出ポートへの作動油の流れを許容する第1チェック弁と、
前記チャージ流路から前記第2吸吐出ポートへの作動油の流れを許容する第2チェック弁と、
前記第1吸吐出ポートの圧力が所定の圧力を超えたときに開き、前記第1吸吐出ポートから吐出された作動油を前記チャージ流路に排出する第1リリーフ弁と、
前記第2吸吐出ポートの圧力が所定の圧力を超えたときに開き、前記第2吸吐出ポートから吐出された作動油を前記チャージ流路に排出する第2リリーフ弁とを備え、
前記コントローラは、
前記新規搭載スイッチから信号が入力された場合は、前記第1更新用マップを生成した後に、前記アンロード弁へ閉信号を出力し、前記傾転角制御信号を前記所定のパターンに従って変化させつつ前記傾転角センサの検出値を取得し、前記検出値と前記傾転角制御信号とを対応付けた第2更新用マップを生成し、前記第1更新用マップおよび前記第2更新用マップで前記制御マップを更新し、
前記新規搭載スイッチから信号が入力されていない場合は、前記第1圧力センサおよび前記第2圧力センサで検出した前記第1吸吐出ポートと前記第2吸吐出ポートとの差圧に応じて前記第1更新用マップと前記第2更新用マップとを補間することにより、前記目標傾転角を前記傾転角制御信号に変換する。
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記アンロード弁は、前記開位置と前記閉位置との間で開度が制御可能であり、
前記コントローラは、前記第2更新用マップを生成する際に前記第1リリーフ弁または前記第2リリーフ弁が開いた場合は、前記第1圧力センサで検出した前記第1吸吐出ポートの圧力と前記第2圧力センサで検出した前記第2吸吐出ポートの圧力との差圧が一定となるように前記アンロード弁の開度を制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記両傾転ポンプを駆動するエンジンと、
前記エンジンの目標回転数を設定するエンジンコントロールダイヤルとを備え、
前記コントローラは、前記新規搭載スイッチから信号が入力された場合は、前記エンジンコントロールダイヤルの設定に関わらず、前記エンジンの回転数が最大回転数となるように制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記両傾転ポンプの交換時に操作されるメンテナンススイッチを備え、
前記コントローラは、前記メンテナンススイッチから信号が入力された場合に、前記新規搭載スイッチから信号が入力された場合と同様に前記両傾転ポンプの校正を行う
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械において、
前記コントローラによって制御されるディスプレイを備え、
前記コントローラは、前記新規搭載スイッチまたは前記メンテナンススイッチから信号が入力されていない場合に、前記目標傾転角と前記傾転角センサで検出した傾転角との差分が所定の閾値を超えたときは、前記両傾転ポンプの再校正が必要である旨のメッセージを前記ディスプレイに表示させる
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの建設機械に搭載された油圧ポンプの校正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベルやホイールローダなどの建設機械において、省エネ化が重要な開発項目になっている。建設機械の省エネ化には油圧システム自体の高効率化が重要であり、油圧ポンプにより油圧アクチュエータを閉回路接続して直接に制御する油圧閉回路システムの適用が検討されている。このシステムは、制御弁による圧損がなく、必要な流量のみを閉回路向けの両傾転ポンプが吐出するため、流量損失が小さい。また、アクチュエータの位置エネルギや減速時のエネルギを回生することもできる。このため高効率化が可能となる。
【0003】
建設機械の油圧ポンプの公知技術として、特許文献1に、建設機械の最大作業量のばらつきを抑制するため、油圧ポンプの最大負荷時の最大吐出流量を校正し、個体差によるばらつきを低減させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-40487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の建設機械の油圧回路では、油圧ポンプが一定の作動油を吐出して、制御弁でシリンダへの流入流量を調整して建設機械の作業速度を調整する。最高負荷での作業中におこるエンジン失速を抑制するために、油圧ポンプは、その吐出圧に応じて油圧ポンプの駆動軸に作用するトルク(吸収トルク)が一定以上増えないよう、自己の吐出流量を調整する機構を備えている。この調整機構は油圧ポンプの個体差によってばらつくため、建設機械ごとに最大負荷時の作業量がばらつく。そのため、エンジン回転数に応じた吸収トルク補正値を学習し、制御電流指令値へ反映する校正手段を備えている。
【0006】
しかし、油圧閉回路システムでは、シリンダへの流入流量を両傾転ポンプで制御するため、最高負荷時の作業量だけでなく、微操作から最高負荷時まですべての作業速度を両傾転ポンプが決定することになる。そのため、最高負荷時のポンプ吐出流量のばらつきだけでなく、すべての流量領域でばらつきを抑制しないと、操作者の操作に対する建設機械の挙動がばらつくことにより、作業性が低下するという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、両傾転ポンプの個体差による流量制御性のばらつきを抑制することにより、良好な作業性が得られる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、両傾転ポンプと、油圧アクチュエータと、前記両傾転ポンプの第1吸吐出ポートと前記油圧アクチュエータの第1油室とを接続する第1流路と、前記両傾転ポンプの第2吸吐出ポートと前記油圧アクチュエータの第2油室とを接続する第2流路と、前記第1流路および前記第2流路を開閉可能な切換弁と、前記両傾転ポンプの傾転角を制御するレギュレータと、前記油圧アクチュエータの動作を指示するための操作レバーと、前記操作レバーから入力される操作信号に応じて前記切換弁を開閉制御し、前記操作信号に基づいて前記両傾転ポンプの目標傾転角を決定し、前記目標傾転角と前記レギュレータへ出力する傾転角制御信号とを対応付けた制御マップを元に前記目標傾転角を前記傾転角制御信号に変換し、前記傾転角制御信号を前記レギュレータへ出力するコントローラとを備えた建設機械において、前記第1吸吐出ポートと前記第2吸吐出ポートとを接続する連通流路と、前記連通流路に設けられ、前記コントローラからの制御信号に応じて開度を変化させるアンロード弁と、前記両傾転ポンプの傾転角を検出する傾転角センサと、前記両傾転ポンプの新規搭載時に操作される新規搭載スイッチとを備え、前記コントローラは、前記新規搭載スイッチから信号が入力された場合に、前記切換弁へ開信号を出力し、前記アンロード弁へ開信号を出力し、前記傾転角制御信号を所定のパターンに従って変化させつつ前記傾転角センサの検出値を取得し、前記検出値と前記傾転角制御信号とを対応付けた第1更新用マップを生成し、前記第1更新用マップで前記制御マップを更新するものとする。
【0009】
以上のように構成した本発明によれば、両傾転ポンプの目標傾転角と傾転角との関係を校正し、両傾転ポンプの個体差による流量制御性のばらつきを抑制することにより、良好な作業性が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る建設機械によれば、両傾転ポンプの個体差による流量制御性のばらつきを抑制することにより、良好な作業性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルを示す側面図である。
図2】本発明の第1の実施例における油圧駆動装置の概略図である。
図3】本発明の第1または第3の実施例におけるコントローラの機能ブロック図である。
図4】本発明の第1の実施例における両傾転ポンプの制御に関わるコントローラの処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1の実施例における両傾転ポンプの校正時の傾転角制御信号および傾転角センサの検出値の変化の一例を示す図である。
図6】本発明の第1の実施例における両傾転ポンプの校正時に生成された制御マップの一例を示す図である。
図7】本発明の第2の実施例における油圧駆動装置の概略図である。
図8】本発明の第2の実施例におけるコントローラの機能ブロック図である。
図9】本発明の第2の実施例における両傾転ポンプの校正時の傾転角制御信号、傾転角センサの検出値、アンロード弁の制御信号、および圧力センサで検出した差圧の変化の一例を示す図である。
図10】本発明の第2の実施例における両傾転ポンプの校正時に生成された制御マップの一例を示す図である。
図11】本発明の第3の実施例におけるコントローラの機能ブロック図である。
図12】本発明の第4の実施例におけるコントローラの機能ブロック図である。
図13】本発明の第5の実施例におけるコントローラの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、建設機械として大型の油圧ショベルを例にとって、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。なお、本発明は、両傾転ポンプと油圧アクチュエータとが切換弁を介して閉回路状に接続された油圧閉回路を複数備えた建設機械全般に適用が可能であり、本発明の適用対象は油圧ショベルに限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルを示す側面図である。
【0014】
(油圧ショベル)
図1において、油圧ショベル100は、走行モータ101によって駆動されるクローラ式の走行装置を装備した下部走行体102と、下部走行体102上に旋回可能に取り付けられ、旋回モータ103によって駆動される上部旋回体104と、上部旋回体104の前部に上下方向に回動可能に取り付けられた作業装置105とを備えている。上部旋回体104上には、オペレータが搭乗するキャブ106が設けられている。
【0015】
作業装置105は、上部旋回体104の前部に上下方向に回動可能に取り付けられたブーム107と、ブーム107の先端部に上下または前後方向に回動可能に連結された作業部材としてのアーム108と、アーム108の先端部に上下または前後方向に回動可能に連結された作業部材としてのバケット109と、ブーム107を駆動する油圧アクチュエータであるブームシリンダ4と、アーム108を駆動する油圧アクチュエータであるアームシリンダ110と、バケット109を駆動する油圧アクチュエータであるバケットシリンダ111とを備えている。
【0016】
(油圧駆動装置)
図2は、油圧ショベル100に搭載された油圧駆動装置の一例を示す概略図である。図2において、油圧駆動装置200は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ4を閉回路で駆動する。なお、図2では、ブームシリンダ4以外の油圧アクチュエータの駆動に関わる部分は省略している。
【0017】
(エンジン)
エンジン1は、信号線を介してコントローラ6と接続されている。エンジン1の回転数は、コントローラ6によって制御される。エンジン1の目標回転数は、エンジンコントロールダイヤル18によって設定される。エンジンコントロールダイヤル18はキャブ106に配置されており、オペレータによって操作される。
【0018】
(両傾転ポンプ)
両傾転ポンプ2は、エンジン1から動力をから受けて駆動される。両傾転ポンプ2は一対の吸吐出ポート2a,2bを持つ傾転斜板機構、および斜板の角度(傾斜角)を調整して1回転当たりの吐出流量(押しのけ容積)を調整するレギュレータ3を備えている。レギュレータ3は、コントローラ6から制御信号線を介して受信した制御信号に従い、両傾転ポンプ2の吐出方向および吐出流量を制御する。
【0019】
(切換弁)
両傾転ポンプ2の2つ吸吐出ポート2a,2bは、流路30,31を介して切換弁5に接続されている。切換弁5は、流路32,33を介してブームシリンダ4に接続されている。切換弁5は、コントローラ6から受信した制御信号により開閉制御され、流路30,32および流路31,33を流通状態または遮断状態に切り換える。切換弁5が開状態のときは、両傾転ポンプ2の一方の吸吐出ポート2aが流路30,32を介してブームシリンダ4のボトム側油室4aと連通し、他方の吸吐出ポート2bが流路31,33を介してブームシリンダ4のロッド側油室4bと連通する。これにより、両傾転ポンプ2とブームシリンダ4とが閉回路状に接続される。
【0020】
(コントローラ)
コントローラ6は、各機器との間で信号を入出力する入出力インターフェースと、中央演算処理装置(CPU)およびその周辺回路等で構成され、所定のプログラムに従って各種演算を行う演算装置とを備え、ブームシリンダ4の駆動指示を与える操作レバー7と信号線で接続され、レギュレータ3および切換弁5と制御信号線で接続されている。コントローラ6は、演算装置が所定のプログラムを実行することにより、学習指令生成部6a、アンロード弁制御部6b、制御マップ生成部6c、ポンプ制御部6d、切換弁制御部6e、およびエンジン制御部6fの各機能を実現する。
【0021】
切換弁制御部6eは、操作レバー7の操作量を元に、両傾転ポンプ2と油圧アクチュエータ4との接続を決定する。例えば、操作レバー7が操作された場合、切換弁制御部6eは切換弁5へ開信号を出力し、両傾転ポンプ2を油圧アクチュエータ4と接続する。
【0022】
ポンプ制御部6dは、両傾転ポンプ2の目標傾転角を操作レバー7の操作量に応じた値に設定し、両傾転ポンプ2の吐出方向を操作レバー7の操作方向に応じた方向に設定する。ポンプ制御部6dは、目標傾転角を元にレギュレータ3へ傾転角制御信号を出力し、両傾転ポンプ2の吐出流量および吐出方向を制御する。
【0023】
エンジン制御部6fは、エンジンコントロールダイヤル18の操作量を元に目標回転数を演算し、エンジン1へ回転数制御指令を送信する。
【0024】
学習指令生成部6a、アンロード弁制御部6b、および制御マップ生成部6cの詳細については後述する。
【0025】
(その他)
ブームシリンダ4に接続された流路32,33は、フラッシング弁8を介してタンク9に接続されている。フラッシング弁8は、流路32,33の低圧側をタンク9に連通させ、閉回路内の作動油の過不足を解消する。両傾転ポンプ2に接続された流路30,31は、リリーフ弁10a,10bおよびチェック弁23a,23bを介してチャージ流路22に接続されている。チャージ流路22は、チャージ油圧源21に接続されている。リリーフ弁10a,10bは、両傾転ポンプ2の吐出圧力が一定以上の高圧に達したときに開き、両傾転ポンプ2から吐出された高圧の作動油をチャージ流路22へ排出する。すなわち、リリーフ弁10a,10bは、安全弁としての機能を有する。チェック弁23a,23bは、吸吐出ポート2a,2bの吸込み側における不足流量をチャージ流路22から補充する。
【0026】
(本発明に関わる構成)
次に、本実施例における本発明に関わる構成について説明する。
【0027】
(傾転角センサ)
両傾転ポンプ2には、斜板の角度(傾転角)を計測するための傾転角センサ14が設けられている。傾転角センサ14は、コントローラ6と信号線を介して接続されている。傾転角センサ14は、傾転角に応じた信号をコントローラ6へ出力する。
【0028】
(アンロード弁)
両傾転ポンプ2に接続された流路30,32は、連通流路34を介して接続されている。連通流路34には、アンロード弁12が設けられている。アンロード弁12は、コントローラ6と信号線を介して接続されており、コントローラ6からの制御信号に応じて開度を変化させる。
【0029】
(スイッチ類、ディスプレイ)
コントローラ6には、信号線を介して新規搭載スイッチ15、メンテナンススイッチ16、およびディスプレイ17が接続されている。新規搭載スイッチ15、メンテナンススイッチ16、およびディスプレイ17はキャブ106に配置されており、オペレータによって操作される。新規搭載スイッチ15は、建設機械が出荷される際に操作されるスイッチである。メンテナンススイッチ16は、両傾転ポンプ2が例えば寿命で交換される際などに操作されるスイッチである。ディスプレイ17は、コントローラ6から受信した情報を表示する。
【0030】
(コントローラ)
図3は、コントローラ6の機能ブロック図である。コントローラ6は、学習指令生成部6aと、アンロード弁制御部6bと、制御マップ生成部6cと、ポンプ制御部6dと、切換弁制御部6eと、エンジン制御部6fとを備えている。
【0031】
学習指令生成部6aは、新規搭載スイッチ15から信号が入力されると、両傾転ポンプ2の校正動作用の傾転角制御信号の波形(図5参照、以下、傾転角制御信号パターンと呼ぶ)を制御マップ生成部6c、ポンプ制御部6d、切換弁制御部6e、およびアンロード弁制御部6bへ出力する。
【0032】
ポンプ制御部6dは傾転角制御信号パターンを受信すると、傾転角制御信号パターンに従った傾転角制御信号をレギュレータ3へ出力する。アンロード弁制御部6bは傾転角制御信号パターンを受信すると、アンロード弁12へ開信号を出力する。切換弁制御部6eは傾転角制御信号パターンを受信すると、切換弁5へ閉信号を出力する。
【0033】
制御マップ生成部6cは、傾転角制御信号パターンと傾転角センサ14の検出値を取得および保存し、傾転角制御信号と傾転角との対応関係を示す制御マップを更新用マップとして生成する。制御マップ生成部6cは、生成した制御マップをポンプ制御部6dへ出力する。ポンプ制御部6dは、受信した制御マップで自身が記憶している制御マップを更新する。
【0034】
(校正時のポンプ動作)
本実施例における両傾転ポンプ2の校正時の動作を図4を用いて説明する。図4は、両傾転ポンプの制御に関わるコントローラの処理の一例を示すフローチャートである。建設機械100が起動するとスタートの状態S1となり、状態S2へ遷移すると両傾転ポンプ2が新規搭載されたか否かを新規搭載スイッチ15の信号を元に判定する。新規搭載スイッチ15が有効な場合は、状態S3へ遷移する。状態S3ではコントローラ6がアンロード弁12へ開信号を出力し、状態S4へ遷移するとコントローラ6は両傾転ポンプ2へ傾転角制御信号パターンに従った傾転角制御信号を出力する。レギュレータ3は受信した傾転角制御信号に応じて両傾転ポンプ2の傾転角を制御し、両傾転ポンプ2に作動油を吐出させる。両傾転ポンプ2の一方の吸吐出ポートから吐出された作動油は、アンロード弁12(図1参照)を介して他方の吸吐出ポートに吸入される。
【0035】
この時、状態S5ではコントローラ6は傾転角センサ14の検出値を取得する。この時の傾転角制御信号および傾転角センサ14の検出値の変化の一例を図5に示す。図5において、吸吐出ポート2a側傾転角制御信号は流路30(図2参照)への吐出指令であり、吸吐出ポート2b側傾転角制御信号は流路31(図2参照)への吐出指令である。傾転角センサ14で検出した傾転角は、吸吐出ポート2a側への吐出を正、吸吐出ポート2b側への吐出を負とした値として出力される。
【0036】
図4に戻り、状態S6へ遷移すると、コントローラ6は例えば図5の波形を元に図6のような制御マップ19を生成する。図6は横軸が傾転角制御信号、縦軸が傾転角センサ14の検出値である。図5は、両傾転ポンプ2の内部摩擦等で、制御マップ19の線形領域でヒステリシスが存在する場合の例を示している。
【0037】
状態S7へ遷移すると、生成した制御マップ19が妥当であるか否かを判定する。例えば、ヒステリシスが明らかに大きい場合や、最大傾転角まで動作しなかったなどである。制御マップ19が妥当であれば、状態S8へ遷移し、制御マップ19で図2のポンプ制御部6d内部の制御マップを更新する。一方で、状態S6で生成した制御マップ19が妥当でないと判定された場合、状態S9へ遷移し、図2のポンプ制御部6d内部の制御マップを、例えば設計情報を元に生成したバックアップ用制御マップで更新する。制御マップの更新が終了すると、状態S10へ遷移し、両傾転ポンプ2の校正が終了する。
【0038】
(通常時のポンプ動作)
一方、状態S2で新規搭載スイッチ15が無効と判定された場合、つまり建設機械100の起動が2回目以降の通常起動であった場合、状態S11へ遷移する。状態S11では、図2のポンプ制御部6dは、制御マップ19を用いて、操作レバー7から算出した目標傾転角を傾転角制御信号に変換する。この時、制御マップ19の縦軸である傾転角センサ14の検出値が目標傾転角に相当する。さらに、例えば目標傾転角の増減に対し、制御マップのヒステリシスを考慮した傾転角制御信号を算出する。傾転角制御信号を算出したのち、状態S12へ遷移し、図2のポンプ制御部6dは傾転角制御信号をレギュレータ3へ出力する。
【0039】
(効果)
本実施例では、両傾転ポンプ2と、油圧アクチュエータ4と、両傾転ポンプ2の第1吸吐出ポート2aと油圧アクチュエータ4の第1油室4aとを接続する第1流路30,32と、両傾転ポンプ2の第2吸吐出ポート2bと油圧アクチュエータ4の第2油室4bとを接続する第2流路31,33と、第1流路30,32および第2流路31,33を開閉可能な切換弁5と、両傾転ポンプ2の傾転角を制御するレギュレータ3と、油圧アクチュエータ4の動作を指示するための操作レバー7と、操作レバー7から入力される操作信号に基づいて切換弁5を開閉制御し、前記操作信号に基づいて両傾転ポンプ2の目標傾転角を決定し、前記目標傾転角とレギュレータ3へ出力する傾転角制御信号とを対応付けた制御マップを元に前記目標傾転角を前記傾転角制御信号に変換し、前記傾転角制御信号をレギュレータ3へ出力するコントローラとを備えた建設機械100において、第1吸吐出ポート2aと第2吸吐出ポート2bとを接続する連通流路34と、連通流路34に設けられ、コントローラ6からの制御信号に応じて開位置と閉位置との間で切り換えられるアンロード弁12と、両傾転ポンプ2の傾転角を検出する傾転角センサ14と、両傾転ポンプ2の新規搭載時に操作される新規搭載スイッチ15とを備え、コントローラ6は、新規搭載スイッチ15から信号が入力された場合に、切換弁5へ閉信号を出力し、アンロード弁12へ開信号を出力し、前記傾転角制御信号を所定のパターンに従って変化させつつ傾転角センサ14の検出値を取得し、前記検出値と前記傾転角制御信号とを対応付けた第1更新用マップ19を生成し、第1更新用マップ19で前記制御マップを更新する。
【0040】
以上のように構成した本実施例によれば、以下の効果が得られる。
【0041】
通常、両傾転ポンプ2には製造ばらつきがあるため、事前に正確な制御マップを用意することは困難である。そのため、本発明の校正なしに両傾転ポンプ2を制御すると、操作レバー7の操作に対し、両傾転ポンプ2の吐出流量はポンプによってばらつくため、油圧アクチュエータ4の速度もばらつく。その結果、建設機械100の操作性が低下する。
【0042】
一方、本実施例に係る建設機械100では、両傾転ポンプ2の校正によって制御マップを正確なものにすることができるため、操作レバー7に対する油圧アクチュエータ4の速度ばらつきが抑制され、建設機械100の操作性低下を抑制することができる。
【実施例2】
【0043】
本発明の第2の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0044】
(本実施例で解決しようとする課題)
一般的に斜板式の油圧ポンプである両傾転ポンプ2の吸吐出ポート2a,2bに高圧が作用すると、高圧の作動油によってポンプの内部構造部品が押されることで傾転角制御信号に対し、実際の傾転角が減少する。これを復帰モーメントによる制御誤差と呼ぶ。第1の実施例の閉回路では、両傾転ポンプ2の校正時は両傾転ポンプ2の一方の吸吐出ポートから吐出された作動油はそのままアンロード弁12を介して両傾転ポンプの他方の吸吐出ポートに吸い込まれるため、吐出圧力は低圧のままである。しかし、作業中の建設機械100における両傾転ポンプ2は、高圧作動油を吐出することになるため、両傾転ポンプ2に復帰モーメントが発生し、校正したにもかかわらず吐出流量に制御誤差が生じる場合がある。そのため、作業速度がばらつくという課題が発生する。
【0045】
(構成)
図7は、本実施例における油圧駆動装置の概略図である。図7において、両傾転ポンプ2に接続された流路30,31には、圧力センサ13a,13bがそれぞれ設けられている。コントローラ6は、圧力センサ13a,13bと信号線で接続されている。圧力センサ13a,13bは、吸吐出ポート2a,2bの圧力に応じた信号をコントローラ6へ出力する。
【0046】
図8は、本実施例におけるコントローラ6の機能ブロック図である。図8において、学習指令生成部6aは、新規搭載スイッチ15が有効になると、傾転角制御信号パターンを2回出力する。制御マップ生成部6cは、1回目の傾転角制御信号パターンに対して低圧時の制御マップを生成し、2回目の傾転角制御信号パターンに対して高圧時の制御マップを生成する。ポンプ制御部6dは、新たに生成された制御マップで現行の制御マップを更新する。ポンプ制御部6dは、通常動作時は、低圧時の制御マップと高圧時の制御マップを元に、目標傾転角を両傾転ポンプ2の吐出圧力(圧力センサ13a,13bで検出した差圧)に応じた傾転角制御信号に変換し、レギュレータ3へ出力する。
【0047】
アンロード弁制御部6bは、高圧時の制御マップを生成する際は、圧力センサ13a,13bの値の差(両傾転ポンプ2の吐出圧力)が一定となるようにアンロード弁12の開度を制御する。アンロード弁制御部6bは、圧力センサ13a,13bの値を用いて、例えば次式のようにアンロード弁12への制御信号を算出する。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、Pdは目標吐出圧力であり、ΔPは圧力センサ13a,13bの値の差分である。I0はアンロード弁12を閉じるときの制御信号である。Kは係数であり、例えば、設計値に基づくシミュレーションや実験から算出した値を用いる。Pdは、例えば、建設機械の油圧システムにおける高圧値(20~30MPa)に設定する。
【0050】
(動作)
図9は、本実施例における両傾転ポンプ2の校正時の傾転角制御信号、傾転角センサ14の検出値、アンロード弁12の制御信号、および圧力センサ13a,13bで検出した差圧の変化を示す図である。
【0051】
コントローラ6は、新規搭載スイッチ15が有効になると、図9に示すように、2回の傾転角制御信号パターンをレギュレータ3へ出力する。コントローラ6は、1回目の傾転角制御信号パターンを出力している間、アンロード弁12へ開信号を出力する。この時、圧力センサ13a,13bの値の差分は限りなく小さい。
【0052】
コントローラ6は、1回目の傾転角制御信号パターンを出力した後、アンロード弁12へ閉信号を出力し、2回目の傾転角制御信号パターンを出力する。この時、アンロード弁12が閉じているため、両傾転ポンプ2から吐出された作動油は逃げ場を失い、両傾転ポンプ2の吸吐出ポート2a,2bの一方の圧力がリリーフ弁10a,10bの設定圧力まで上昇し、リリーフ弁10a、10bの一方が開く。両傾転ポンプ2の吸吐出ポート2a,2bの一方から吐出された作動油は、チャージ流路22およびチェック弁23a,23bの一方を経由して両傾転ポンプ2の吸吐出ポート2a,2bの他方に吸入される。そのため、図9に示す圧力センサ13a,13bの値の差分はリリーフ弁10a,10bの設定圧力で決まる。
【0053】
ここで、リリーフ弁10a,10bのオーバライド特性によって、両傾転ポンプ2の吐出流量に比例して圧力がリリーフ弁10a,10bの設定圧力より大きくなる場合がある。この時、式(1)の目標吐出圧力Pdがリリーフ弁10a,10bの設定圧力と等しい値に設定されている場合、リリーフ弁10a,10bのオーバライド分の圧力上昇を低減するようにアンロード弁12の開度を調整して、両傾転ポンプ2の吐出圧力が目標吐出圧力Pdと一致するように、アンロード弁制御部6bが式(1)に基づき制御信号を出力する。その結果、圧力センサ13a,13bの値の差分は、両傾転ポンプ2の吐出流量によらず、リリーフ弁10a,10bの設定圧力に保たれる。
【0054】
2回の傾転角制御信号パターンと傾転角センサ14の検出値を元に、制御マップ生成部6cは図10に示す制御マップ20a,20bを更新用マップとして生成する。制御マップ20aは、アンロード弁12が開状態(両傾転ポンプ2吐出圧力が低い状態)で生成された制御マップ(低圧時の制御マップ)である。制御マップ20bは、アンロード弁12が閉状態(両傾転ポンプ2吐出圧力が高い状態で生成された制御マップ(高圧時の制御マップ)である。ポンプ制御部6dは、内部の制御マップを制御マップ20a,20bで更新する。新規搭載スイッチ15が無効になると、ポンプ制御部6dは、圧力センサ13a,13bで検出した差圧に応じて低圧時の制御マップ20aと高圧時の制御マップ20bとを補間することにより、目標傾転角を傾転角制御信号に変換し、レギュレータ3へ出力する。
【0055】
(効果)
本実施例では、チャージ油圧源21と、チャージ油圧源21に接続されたチャージ流路22と、チャージ流路22から第1吸吐出ポート2aへの作動油の流れを許容する第1チェック弁23aと、チャージ流路22から第2吸吐出ポート2bへの作動油の流れを許容する第2チェック弁23bと、第1吸吐出ポート2aの圧力が所定の圧力を超えたときに開き、第1吸吐出ポート2aから吐出された作動油をチャージ流路22に排出する第1リリーフ弁10aと、第2吸吐出ポート2bの圧力が所定の圧力を超えたときに開き、第2吸吐出ポート2bから吐出された作動油をチャージ流路22に排出する第2リリーフ弁10bとを備え、コントローラ6は、新規搭載スイッチ15から信号が入力され、第1更新用マップ20aを生成した後に、アンロード弁12の開度を第1更新用マップ20aの生成時よりも小さくし、前記傾転角制御信号を前記所定のパターンに従って変化させつつ傾転角センサ14の検出値を取得し、前記傾転角制御信号の値と前記検出値とを対応付けた第2更新用マップ20bを生成し、第1更新用マップ20aおよび第2更新用マップ20bで前記制御マップを更新し、新規搭載スイッチ15から信号が入力されていないときは、第1圧力センサ13aおよび第2圧力センサ13bで検出した第1吸吐出ポート2aと第2吸吐出ポート2bとの差圧に応じて第1更新用マップ20aと第2更新用マップ20bとを補間することにより、前記目標傾転角を前記傾転角制御信号に変換する。
【0056】
以上のように構成した本実施例によれば、両傾転ポンプ2に高圧が作用した時にも復帰モーメントによる制御誤差が小さくなり、両傾転ポンプ2の流量制御精度が向上するため、建設機械100の操作性低下を抑制することが可能となる。
【0057】
また、本実施例では、アンロード弁12は、開位置と閉位置との間で開度が制御可能であり、コントローラ6は、第2更新用マップ20bの生成時に第1リリーフ弁10aまたは第2リリーフ弁10が開いた場合は、第1圧力センサ13aで検出した第1吸吐出ポート2aの圧力と第2圧力センサ13bで検出した第2吸吐出ポート2bの圧力との差圧が一定となるようにアンロード弁12の開度を制御する。これにより、第2更新用マップ20b(高圧時の制御マップ)の生成時に、第1吸吐出ポート2aと第2吸吐出ポート2bとの差圧が一定に保持されるため、第2更新用マップ20b(高圧時の制御マップ)の精度を向上させることができる。
【実施例3】
【0058】
本発明の第3の実施例について、第2の実施例との相違点を中心に用いて説明する。
【0059】
(本実施例で解決しようとする課題)
図1において、両傾転ポンプ2はエンジン1によって駆動されており、両傾転ポンプ2の吐出流量はエンジン1の回転数に比例する。両傾転ポンプ2の内部構成部品の慣性力により、エンジン回転数に比例して復帰モーメントが増大する特性がある。そのため、校正時のエンジン回転数と実稼働時のエンジン回転数とが異なると、生成した制御マップに誤差が生じ、建設機械の操作性が低下する。
【0060】
(構成)
図11は、本実施例におけるコントローラ6の機能ブロック図である。図11において、コントローラ6のエンジン制御部6fは、新規搭載スイッチ15の値を取得し、新規搭載スイッチ15が有効になると、エンジンコントロールダイヤル18の操作に関わらず、エンジン1の目標回転数を最高回転数に設定し、エンジン1へ回転数制御指令を出力する機能を備える。
【0061】
(効果)
本実施例に係る建設機械100は、両傾転ポンプ2を駆動するエンジン1と、エンジン1の目標回転数を設定するエンジンコントロールダイヤル18とを備え、コントローラ6は、新規搭載スイッチ15からから信号が入力された場合は、エンジンコントロールダイヤル18の設定に関わらず、エンジン1の回転数が最大回転数となるように制御する。
【0062】
以上のように構成した本実施形態によれば、両傾転ポンプ2の校正時に、エンジンコントロールダイヤル18の設定に関わらず、エンジン1が最高回転数で駆動される。通常、建設機械100はエンジン回転数が最高回転数の状態で使用されるため、エンジン回転数が最高回転数の状態で生成された制御マップ19(図6に示す)によれば、復帰モーメントによる誤差が小さくなり、建設機械100の操作性低下を抑制することができる。
【実施例4】
【0063】
本発明の第4の実施例について、第3の実施例との相違点を中心に説明する。
【0064】
(本実施例で解決しようとする課題)
両傾転ポンプ2には製造ばらつきがあるため、両傾転ポンプ2を新規搭載した場合だけでなく、メンテナンスで両傾転ポンプ2を交換した際にも再度校正しないと、制御マップに誤差が生じる。
【0065】
(構成)
図12は、本実施例におけるコントローラ6の機能ブロック図である。図12において、コントローラ6は、メンテナンススイッチ16およびディスプレイ17と信号線を介して接続されている。コントローラ6は、表示生成部6gを更に備えている。メンテナンススイッチ16は、両傾転ポンプ2を交換する際にメンテナンス員によって操作される。メンテナンススイッチ16の信号は、学習指令生成部6a、表示生成部6g、およびエンジン制御部6fに入力される。
【0066】
表示生成部6gは、メンテナンススイッチ16が有効になると、ディスプレイ17に両傾転ポンプ2の再校正を行う旨のメッセージを表示させる。学習指令生成部6aは、メンテナンススイッチ16が有効になると、新規搭載スイッチ15が有効になったときの処理と同様に、両傾転ポンプ2の再校正を行う。エンジン制御部6fは、メンテナンススイッチ16が有効になると、新規搭載スイッチ15が有効になったときの処理と同様に、エンジン1の回転数が最大回転数となるように制御する。コントローラ6による両傾転ポンプ2の再校正については、第1~第3の実施例のいずれの校正方法を採用しても良い。
【0067】
(効果)
本実施例に係る建設機械は、両傾転ポンプ2の交換時に操作されるメンテナンススイッチ16を備え、コントローラ6は、メンテナンススイッチ16から信号が入力された場合に、新規搭載スイッチ15から信号が入力された場合と同様に両傾転ポンプ2の校正を行う。
【0068】
以上のように構成した本実施例によれば、両傾転ポンプ2がメンテナンスで交換された場合でも、新しい両傾転ポンプ2の校正を行い流量制御精度の良い制御マップを生成することで、建設機械100の操作性低下を抑制することができる。
【実施例5】
【0069】
本発明の第5の実施例について、第4の実施例との相違点を中心に説明する。
【0070】
(本実施例で解決しようとする課題)
両傾転ポンプ2が長時間稼働すると、内部部品の摩耗等によって新品と流量制御特性が変化する。そのため、制御マップに誤差が生じる。
【0071】
(構成)
図13は、本実施例におけるコントローラ6の機能ブロック図である。図13において、コントローラ6は、経年劣化推定部6hを更に備える。経年劣化推定部6hは、傾転角センサ14で検出した傾転角と、制御マップにおいて傾転角制御信号に対応する目標傾転角とを比較し、誤差を算出する。この誤差は、両傾転ポンプ2が経年劣化するにつれて大きくなる。
【0072】
経年劣化推定部6hは、誤差がある一定値以上大きくなると、制御マップの再校正が必要である旨を、表示生成部6gへ通知する。表示生成部6gは、再校正が必要である旨のメッセージをディスプレイ17に表示させる。オペレータは、ディスプレイ17に再校正が必要である旨のメッセージが表示された場合は、メンテナンススイッチ16を操作し、両傾転ポンプ2の再校正を実施する。
【0073】
(効果)
本実施例に係る建設機械100は、コントローラ6によって制御されるディスプレイ17を備え、コントローラ6は、新規搭載スイッチ15またはメンテナンススイッチ16の信号が入力されていない場合に、両傾転ポンプ2の目標傾転角と傾転角センサ14で検出した傾転角との差分が所定の閾値を超えたときは、両傾転ポンプ2の再校正が必要である旨のメッセージをディスプレイ17に表示させる。
【0074】
以上のように構成した本実施例によれば、両傾転ポンプ2が経年劣化で流量制御精度が低下した場合に、建設機械の操作者は再校正の必要性に気づき、再校正によって流量制御精度の良い制御マップを生成することで、建設機械の操作性低下を抑制することができる。
【0075】
(その他、全般に関して)
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…エンジン、2…両傾転ポンプ、2a…吸吐出ポート(第1吸吐出ポート)、2b…吸吐出ポート(第2吸吐出ポート)、3…レギュレータ、4…ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)、4a…ボトム側油室(第1油室)、4b…ロッド側油室(第2油室)、5…切換弁、6…コントローラ、6a…学習指令生成部、6b…アンロード弁制御部、6c…制御マップ生成部、6d…ポンプ制御部、6e…切換弁制御部、6f…エンジン制御部、6g…表示生成部、6h…経年劣化推定部、7…操作レバー、8…フラッシング弁、9…タンク、10a…リリーフ弁(第1リリーフ弁)、10b…リリーフ弁(第2リリーフ弁)、12…アンロード弁、13a…圧力センサ(第1圧力センサ)、13b…圧力センサ(第2圧力センサ)、14…傾転角センサ、15…新規搭載スイッチ、16…メンテナンススイッチ、17…ディスプレイ、18…エンジンコントロールダイヤル、19…制御マップ(第1更新用マップ)、20a…制御マップ(第1更新用マップ)、20b…制御マップ(第2更新用マップ)、21…チャージ油圧源、22…チャージ流路、23a…チェック弁(第1チェック弁)、23b…チェック弁(第2チェック弁)、30,32…流路(第1流路)、31,33…流路(第2流路)、34…連通流路、100…油圧ショベル(建設機械)、101…走行モータ(油圧アクチュエータ)、102…下部走行体、103…旋回モータ(油圧アクチュエータ)、104…上部旋回体、105…作業装置、106…キャブ、107…ブーム、108…アーム、109…バケット、110…アームシリンダ(油圧アクチュエータ)、111…バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)、200…油圧駆動装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13