(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】プロバイオティクスを用いた肥満の治療、体脂肪減少用組成物、及びウエスト周囲径低減用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/745 20150101AFI20231225BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20231225BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20231225BHJP
A23L 33/135 20160101ALN20231225BHJP
【FI】
A61K35/745
A61P3/04
C12N1/20 E ZNA
A23L33/135
(21)【出願番号】P 2020509216
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2019013272
(87)【国際公開番号】W WO2019189408
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2018064982
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】IPOD FERM BP-11175
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】南 淳一
(72)【発明者】
【氏名】宣 旭
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107684567(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107760620(CN,A)
【文献】国際公開第2011/034166(WO,A1)
【文献】食品工業, (2012), 55, [4], p.54-58
【文献】Obesity, (2013), 21, [12], p.E607-E615
【文献】Dig. Dis., (2016), 34, [3], p.221-229
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/744,35/745,35/747
A23L 33/125
A61P 3/04
G01N 33/15,33/50
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を有効成分として含む、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が
1.3以上である腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者に用いられる、体脂肪減少用組成物。
【請求項2】
前記バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が、
1.5以上
、又は1.7以上である、請求項1に記載の体脂肪減少用組成物。
【請求項3】
前記肥満予備群又は肥満症患者は、BMI値が25kg/m
2
以上30kg/m
2
未満の肥満予備群又は肥満症患者である、請求項1又は2に記載の体脂肪減少用組成物。
【請求項4】
前記体脂肪減少用組成物は、2×10
10
CFU/日以上、かつ、12週間継続して投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の体脂肪減少用組成物。
【請求項5】
前記体脂肪減少用組成物が、体重、体脂肪量、体脂肪率、内臓脂肪面積、内臓脂肪/皮下脂肪比、総脂肪面積、及び空腹時血糖からなる群より選択されるいずれか1種以上を減少させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の体脂肪減少用組成物。
【請求項6】
前記ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)が、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の死菌体である、請求項1から5のいずれか一項に記載の体脂肪減少用組成物。
【請求項7】
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を有効成分として含む、
バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が1.3以上である腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者に用いられる、ウエスト周囲径低減用組成物。
【請求項8】
前記バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が、1.5以上、又は1.7以上である、請求項7に記載のウエスト周囲径低減用組成物。
【請求項9】
前記肥満予備群又は肥満症患者は、BMI値が25kg/m
2
以上30kg/m
2
未満の肥満予備群又は肥満症患者である、請求項7又は8に記載のウエスト周囲径低減用組成物。
【請求項10】
前記ウエスト周囲径低減用組成物は、2×10
10
CFU/日以上、かつ、12週間継続して投与される、請求項7から9のいずれか一項に記載のウエスト周囲径低減用組成物。
【請求項11】
前記ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)が、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の死菌体である、請求項7から10のいずれか一項に記載のウエスト周囲径低減用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、プロバイオティクスを用いた肥満の治療、体脂肪減少用組成物、及びウエスト周囲径低減用組成物に関する。より詳しくは、ビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクスを用いた肥満の治療において、効果的な手段、方法、及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満とは、肥満組織が通常以上に蓄積した身体状況として定義され、肥満になると、高血圧症、心血管障害、高脂血症、動脈硬化、糖尿病等の種々の疾病を引き起こし、血管障害、視力障害、神経障害、抵抗力低下等の合併症をも併発する。肥満の原因は、主に、消費エネルギーよりも摂取エネルギーの方が過剰となることであるが、腸内細菌叢(腸内フローラ)が、エネルギーの獲得や恒常性、脂肪組織の蓄積に関連することも報告されている(非特許文献1~3)。
【0003】
したがって、近年、腸内細菌叢と肥満との関連性について、明確にする必要性が高まっている。腸内細菌叢を標的とした肥満改善の取り組みとして、プロバイオティクスを用いた介入試験についてメタ解析した結果が非特許文献4で報告されており、プロバイオティクス摂取によって体重、BMI、体脂肪率がプラセボと比べて有意に減少する可能性が示唆されているが、同時にその効果量は小さいことも開示されている。また、非特許文献5には、3種類の食物繊維摂取による肥満改善試験において、被験者の腸内細菌叢の多様性によってレスポンダーとノンレスポンダーの存在が示唆されているが、これまでにプロバイオティクス摂取による肥満改善試験において、どのような被検者を対象とすべきかに関する知見や報告はなされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】M. Rosenbaum, R. Knight, and R. L. Leibel, “The gut microbiota in human energy homeostasis and obesity.,” Trends Endocrinol. Metab., vol. 26, no. 9, pp. 493-501, Sep. 2015.
【文献】F. Backhed et al., “The gut microbiota as an environmental factor that regulates fat storage.,” Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., vol. 101, no. 44, pp. 15718-23, Nov. 2004.
【文献】V. Tremaroli and F. Backhed, “Functional interactions between the gut microbiota and host metabolism.,” Nature, vol. 489, no. 7415, pp. 242-9, Sep. 2012.
【文献】H. Borgeraas et al., “Effects of probiotics on body weight, body mass index, fat mass and fat percentage in subjects with overweight or obesity: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.” Obes Rev. 19(2):219-232, Feb. 2018.
【文献】Salonen A, Lahti L, Salojarvi J, et al. Impact of diet and individual variation on intestinal microbiota composition and fermentation products in obese men. ISME J. 2014;8(11):2218-2230. doi:10.1038/ismej.2014.63.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の通り、腸内細菌叢と肥満との関連性については、既に報告がされているものの、プロバイオティクス摂取による肥満の治療効果は小さく、より効果的な肥満に対する治療手段を模索する上で更なる検討が望まれているという実情がある。
【0006】
そこで、本技術では、ビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクスを用いた肥満の治療において、効果的な手段、方法、及び組成物を提供することを主目的とする。また、体脂肪の減少効果のあるプロバイオティクス細菌を選別する方法、及び抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌に対するレスポンダーを選別する方法を提供することも主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本技術では、まず、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌を有効成分として含む、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者に用いられる、体脂肪減少用組成物を提供する。
本技術に係る体脂肪減少用組成物において、前記バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が、1.3以上であってもよい。
また、本技術に係る体脂肪減少用組成物において、前記ビフィドバクテリウム属細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・カテニュラタム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・アニマリス、及びビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティスからなる群のいずれか一種以上であってもよい。この場合、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベは、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)であってもよい。
更に、本技術に係る体脂肪減少用組成物において、前記乳酸菌は、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・デルビリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリクス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・サリバリウス、及びラクトバチルス・ラクチスからなる群のいずれか一種以上であってもよい。
【0008】
また、本技術では、(1)対象の腸内細菌叢の構成比率を門レベルでクラスター化し、(a)バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値であるグループ、及び(b)前記(a)のグループに属さないグループ、の各グループに分類する工程、
(2)前記工程(1)で分類されたそれぞれのグループに、プロバイオティクス細菌を投与する工程、
(3)それぞれのグループの体脂肪を測定する工程、
を少なくとも有し、前記(a)又は(b)のグループに対して抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を選別する方法も提供する。
更に、本技術では、(1)抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を対象に投与する工程、
(2)対象の腸内細菌叢の構成比率を門レベルでクラスター化し、(c)バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値であるグループ、及び(d)前記(c)のグループに属さないグループ、の各グループに分類する工程、
を少なくとも経て、前記抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌に対するレスポンダーを選別する方法も提供する。
本技術おいて、前記バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が、1.3以上であるグループであってもよい。
また、本技術において、前記プロバイオティクス細菌は、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌であってもよい。
更に、本技術において、前記ビフィドバクテリウム属細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・カテニュラタム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・アニマリス、及びビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティスからなる群のいずれか一種以上であってもよい。この場合、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベは、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)であってもよい。
加えて、本技術において、前記乳酸菌は、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・デルビリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリクス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・サリバリウス、及びラクトバチルス・ラクチスからなる群のいずれか一種以上であってもよい。
【0009】
更に、本技術では、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌を有効成分として含む、肥満予備群又は肥満症患者に用いられる、ウエスト周囲径低減用組成物も提供する。
本技術に係るウエスト周囲径低減用組成物は、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である肥満予備群又は肥満症患者に用いられるものであってもよい。
また、本技術に係るウエスト周囲径低減用組成物において、前記ビフィドバクテリウム属細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・カテニュラタム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・アニマリス、及びビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティスからなる群のいずれか一種以上であってもよい。この場合、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベは、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)であってもよい。
更に、本技術に係るウエスト周囲径低減用組成物において、前記乳酸菌は、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・デルビリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリクス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・サリバリウス、及びラクトバチルス・ラクチスからなる群のいずれか一種以上であってもよい。
【0010】
なお、本技術において、「肥満予備群」とは、BMI(Body Mass Index)値が25以上
30未満の軽度肥満のことをいい、「肥満症」とは、BMI値が30以上の肥満のことをいう。また、「プロバイオティクス細菌」とは、腸内で有益な働きをする細菌をいう。
更に、「レスポンダー」とは、抗肥満組成物を摂取することで体重、体脂肪、内臓脂肪などの肥満指標が摂取前又は対照よりも改善する者、或いは、臨床試験などで全体の解析と比べて肥満指標の改善が顕著な集団をいう。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、プロバイオティクスを用いた肥満の治療、体脂肪減少用組成物、及びウエスト周囲径低減用組成物を提供することができる。
なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】被検者を試験開始前(0週)の腸内細菌の構成比の類似度から階層的クラスタリングすることで得られた2グループの分類結果、及び各被検者の門レベルの腸内細菌構成を示す。
【
図2】
図1のグループ1(G1)及びグループ2(G2)の集団に特徴的な腸内細菌をLEfSeによって解析した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
<1.組成物>
本技術に係る体脂肪減少用組成物は、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌を有効成分として含み、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者に用いられることを特徴とする。また、本技術に係るウエスト周囲径低減用組成物は、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌を有効成分として含み、肥満予備群又は肥満症患者に用いられることを特徴とする。
【0015】
(1)ビフィドバクテリウム属細菌
ビフィドバクテリウム属細菌(「ビフィズス菌」とも称される)としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・カテニュラタム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・アニマリス、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティスなどが挙げられる。本技術では、ビフィドバクテリウム属細菌として、これらを用いることが好ましく、これらを、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、「菌」と表記した場合には、「菌株」の概念も含むものとする。
【0016】
本技術では、これらの中でも、ビフィドバクテリウム・ブレーベを用いることが特に好ましい。
【0017】
ビフィドバクテリウム・ブレーベとしては、例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V(NITE BP-02622)、UCC2003、YIT4010、YIT4064、BBG-001、BR-03、B632(DSMZ 24706)、C50、Bb99(DSM 13692)、R0070、ATCC15700、ATCC15698、DSM 24732等が挙げられるが、これらの中でも、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V(NITE BP-02622)を用いることが好ましい。
【0018】
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1 中央第6(現IPOD 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE-IPOD):日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室))に、2009年8月25日より、IPOD FERM BP-11175の受託番号で寄託されている。
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V(NITE BP-02622)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD):日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室に、2018年1月26日にNITE BP-02622の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。
【0019】
本技術では、ビフィドバクテリウム・ブレーベとして、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を用いることが特に好ましい。
【0020】
(2)乳酸菌
乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・デルビリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリクス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ラクチスなどが挙げられる。本技術では、乳酸菌として、これらを用いることが好ましく、これらを、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0021】
なお、上記例示した菌株名で特定される菌株には、当該菌株名で所定の機関に寄託や登録がなされている株そのもの(以下、説明の便宜上、「寄託株」ともいう)に限られず、それと実質的に同等な株(「派生株」又は「誘導株」ともいう)も包含される。すなわち、例えば、「ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)」には、MCC1274(FERM BP-11175)の寄託番号で上記寄託機関に寄託されている株そのものに限られず、それと実質的に同等な株も包含される。
【0022】
菌株について、「上記寄託株と実質的に同等の株」とは、上記寄託株と同一の種に属し、本技術の効果である体脂肪減少効果又はウエスト周囲径低減効果が得られる株を意味する。上記寄託株と実質的に同等の株は、例えば、当該寄託株を親株とする派生株であってよい。派生株としては、寄託株から育種された株や寄託株から自然に生じた株が挙げられる。
【0023】
実質的に同一の菌株、派生株には、例えば、下記のような株が挙げられる。
(i)RAPD法(Randomly Amplified Polymorphic DNA)、PFGE法(pulsed-field gel electrophoresis)法により同一の菌株と判定される菌株(Probiotics in food/Health and nutritional properties and guidelines for evaluation 85 Page43に記載)
(ii)当該寄託菌株由来の遺伝子のみ保有し、外来由来の遺伝子を持たず、DNAの同一性が95%以上である菌株
(iii)当該菌株から育種された株(遺伝子工学的改変、突然変異、自然突然変異を含む)であり、同一の形質を有する株
【0024】
(3)その他
本技術に用いられるビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌は、例えば、前述した細菌を培養することにより容易に取得できる。培養する方法は、これらの細菌が増殖できる限り特に限定されず、細菌の性質に応じた適当な条件下で培養を行うことができる。具体的には、例えば、培養温度は、通常25~50℃であり、35~42℃であることが好ましい。また、培養は嫌気条件下で行うことが好ましく、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養してもよい。使用するビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌は、生菌であることが好ましいが、死菌であってもよい。生菌の場合は、菌液凍結法、スプレードライ法、凍結乾燥法、オイルドロップ法で処理することが好ましい。死菌としては、加熱や凍結乾燥等により殺菌された死菌などが挙げられる。その他の死菌体の調製法として、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、レトルト殺菌法、凍結乾燥法、UHT殺菌法、加圧殺菌法、高圧蒸気滅菌法、乾熱滅菌法、流通蒸気消毒法、電磁波殺菌法、電子線滅菌法、高周波滅菌法、放射線滅菌法、紫外線殺菌法、酸化エチレンガス滅菌法、過酸化水素ガスプラズマ滅菌法、化学的殺菌法(アルコール殺菌法、ホルマリン固定法、電解水処理法)などが挙げられる。
【0025】
また、本菌体は、破砕物であってもよい。破砕物は、生菌を破砕したものでも死菌を破砕したものでもよく、破砕後に加熱や凍結乾燥等を施したものでもよい。また、破砕は、当技術分野で公知の方法及び機器を使用した、例えば、物理的破砕、酵素溶解処理、薬品処理、自己溶解処理などによる破砕を選択することができる。
【0026】
物理的破砕は、菌体懸濁液の状態での処理、菌体粉末の状態での処理のいずれによってもよい。物理的破砕の例として、超音波ホモジナイザー、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、ダイノミル、遊星ミル等を使用した撹拌による破砕、ジェットミル、フレンチプレス、細胞破砕機等を使用した圧力による破砕、フィルター濾過処理により菌体を損傷させることによる破砕を選択することができる。
酵素溶解処理としては、例えばリゾチームなどの酵素を用いて、乳酸菌菌体の細胞構造を破壊することができる。
薬品処理としては、ダイズリン脂質、グリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤を使用して、乳酸菌菌体の細胞構造を破壊することができる。
自己溶解処理としては、一部の乳酸菌自身の酵素により乳酸菌菌体を溶解することができる。
なお、本技術においては、他の薬品や化合物を添加する必要がないため、物理的破砕が好ましい。
【0027】
本技術に用いられるビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌を培養する培地としては、特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌の培養に、通常用いられる培地などを用いることができる。
【0028】
すなわち、炭素源としては、例えば、グルコース、ガラクトース、ラクトース、アラビノース、マンノース、スクロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜、グルコマンナン、グルコオリゴ糖などの糖類を資化性に応じて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄、クロムなどを用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキスなどの有機成分を用いてもよい。
【0029】
本技術に用いられるビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌は、培養後、得られた培養物をそのまま用いてもよく、希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。
【0030】
本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物が有効成分として含有するビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌は、一種単独としてもよいし、二種以上を任意に組み合わせてもよい。また、本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物は、前記有効成分のみからなるものであってもよく、前記有効成分と有効成分以外の任意成分とを配合した組成物であってもよい。任意成分としては、特に限定されず、通常医薬品や食品に配合されている添加剤を配合できる。
【0031】
(4)対象
本技術に係る体脂肪減少用組成物は、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者を対象とする。また、本技術に係るウエスト周囲径低減用組成物は、肥満予備群又は肥満症患者を対象としており、好ましくは、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である肥満予備群又は肥満症患者を対象とする。
【0032】
また、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である場合としては、特に限定されないが、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.7以上であることが更に好ましい。
【0033】
(5)用途
本技術に係る体脂肪減少用組成物は、体脂肪を減少させることにより、肥満型の腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者に対して有用であり、また、本技術に係るウエスト周囲径低減用組成物は、ウエスト周囲径を低減させることにより、肥満予備群又は肥満症患者に対して有用である。すなわち、これらの組成物は、肥満の予防、治療及び/又は改善として用いることが可能である。
【0034】
また、本技術に係る体脂肪減少用組成物により、皮下脂肪及び内臓脂肪の分解が促進され、皮下脂肪細胞及び内臓脂肪細胞への分化成熟が抑制されるので、肥満が予防又は改善される。さらに空腹時の血糖値も減少し、肥満に伴う種々の生活習慣病が予防又は改善される。したがって、これらの用途に基づく医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等の形態で用いることができる。
【0035】
本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物は、公知の医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等に本技術に係るこれらの組成物を添加して調製することもできるし、その原料中にこれらの組成物を混合して新たな医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等を製造することもできる。
【0036】
本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物を医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等として用いる際には、そのまま、又は濃縮してから、或いは固体状、顆粒状又は粉末状に加工してから用いてもよい。以下、各用途について、詳細に説明する。
【0037】
(5-1)医薬品、医薬部外品
本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物は、その優れた体脂肪減少効果又はウエスト周囲径低減効果を利用して、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品等の有効成分として、これらに配合して使用可能である。
【0038】
本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物は、公知の医薬品、医薬部外品等にこれらの組成物を添加して調製することもできるし、その原料中にこれらの組成物を混合して新たな医薬品、医薬部外品等を製造することもできる。
【0039】
本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物を医薬品、医薬部外品等として用いる際には、そのまま、又は濃縮してから、或いは固体状、顆粒状又は粉末状に加工してから用いてもよい。
【0040】
医薬品とする場合、該医薬品は、経口投与や非経口投与等の投与方法に応じて適宜所望の剤形に製剤化することができる。その剤形は特に限定されないが、経口投与の場合、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。非経口投与の場合、例えば、座剤、噴霧剤、吸入剤、軟膏剤、貼付剤、注射剤等に製剤化することができる。本技術では、経口投与の剤形に製剤化することが好ましい。
なお、製剤化は剤形に応じて、適宜、公知の方法により実施できる。
【0041】
製剤化に際しては、適宜製剤担体を配合する等して製剤化してもよい。また、本技術に係る体脂肪減少用組成物の他、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。更に、公知の又は将来的に見出される疾患や症状の予防、治療及び/又は改善の効果を有する成分を、適宜目的に応じて併用することも可能である。
【0042】
前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体を用いることができる。
固形製剤の場合の担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤などが挙げられる。
【0043】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体などが挙げられる。
【0044】
前記結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴールなどが挙げられる。
【0045】
前記崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体などが挙げられる。
【0046】
前記滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体などが挙げられる。
【0047】
前記安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸などが挙げられる。
【0048】
前記矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料などが挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤などが挙げられる。
【0049】
また、本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物は、公知の又は将来的に見出される体脂肪減少作用或いはウエスト周囲径低減作用を有する薬等と併用することも可能である。
【0050】
本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物を通じて、肥満(「肥満症」とも称する)の予防、治療及び/又は改善を行うことができる。さらに、本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物は、肥満に起因して発症する疾患の予防、治療及び/又は改善も行うことができる。そのような疾患としては、特に限定されないが、例えば、メタボリックシンドローム、糖尿病(2型糖尿病を含む)、高脂血症、高血圧症、動脈硬化症などが挙げられる。本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物は、これらの疾患、症状の予防、治療及び/又は改善に用いることが出来る。これにより、本技術はまた、上記疾患の予防、治療及び/又は改善用組成物を提供することもできる。
【0051】
ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌の含有量は特に制限されないが、1日当たりの投与量を無理なく摂取できる程度の量を含有することが好ましく、1×103~1×1012CFU/g含有することがより好ましい。また、1日当たりの投与量は、少なくとも1×103CFU/日以上、より好ましくは1×106CFU/日以上、より好ましくは1×108CFU/日以上、より好ましくは2×1010CFU/日以上、又はそれ以上であることが好ましい。
【0052】
なお、CFUは、コロニー形成単位:colony forming unitを表す。菌体が死菌の場合、cfu/g又はcfu/mlは、個細胞/g又は個細胞/mlと置き換えることができる。本菌体が破砕物の場合、破砕する前の菌数(個細胞/g)から重量換算で表示することが可能である。
【0053】
前記医薬品は、1日の投与量を1日1回から複数回に分けてもよい。投与対象は、通常ヒトであるが、本技術では、ヒト以外の哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ等のペット動物、ウシ、ヒツジ、ブタなどの家畜も含む。
【0054】
(5-2)飲食品
本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物は、その優れた体脂肪減少効果又はウエスト周囲径低減効果を利用して、ヒト若しくは動物用の、体脂肪減少用又はウエスト周囲径低減用等の用途をコンセプトとする健康食品、機能性食品、病者用食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、及び前述した用途等が表示された特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品等の有効成分として、これらに配合して使用可能である。
【0055】
飲食品とする場合、該飲食品は、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等の他、例えば、小麦粉製品、即席食品類、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料類、これら以外の市販食品などとすることが可能である。
【0056】
前記乳製品としては、例えば、発酵乳、乳飲料、乳酸菌飲料、加糖れん乳、脱脂粉乳、加糖粉乳、調整粉乳、クリーム、チーズ、バター、アイスクリーム類などが挙げられる。
前記小麦粉製品としては、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉などが挙げられる。
前記即席食品類としては、例えば、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食などが挙げられる。
前記農産加工品としては、例えば、農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)などが挙げられる。
前記水産加工品としては、例えば、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類などが挙げられる。
前記畜産加工品としては、例えば、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージなどが挙げられる。
前記油脂類としては、例えば、バター、マーガリン類、植物油などが挙げられる。
前記基礎調味料としては、例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢など等が挙げられる。
前記複合調味料・食品類としては、例えば、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料などが挙げられる。
前記冷凍食品としては、例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品などが挙げられる。
前記菓子類としては、例えば、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子などが挙げられる。
前記飲料類としては、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料などが挙げられる。
前記以外の市販食品としては、例えば、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのりなどが挙げられる。
【0057】
本技術において、「表示」行為には、需要者に対して上述した用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、体脂肪減少用等の用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
【0058】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(例えば、インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0059】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP(Point of purchase advertising)等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0060】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、病者用食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示なども挙げられる。これら中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、機能性表示食品制度、これらに類似する制度にて認可される表示などが挙げられる。より具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、機能性表示食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示などを挙げることができる。この中でも典型的な例としては、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に、保健の用途の表示)、食品表示法(平成25年法律第70号)に定められた機能性表示食品としての表示及びこれらに類する表示などが挙げられる。
【0061】
なお、上述したような表示を行うために使用する文言は、体脂肪減少用、ウエスト周囲径低減用等の文言のみに限られるわけではなく、それ以外の文言であっても、体脂肪の減少やウエスト周囲径の低減に関連する各種疾患や症状の予防、治療及び/又は改善の効果を表す文言であれば、本技術の範囲に包含されることは言うまでもない。そのような文言としては、例えば、「肥満気味の方へ」「お腹の脂肪が気になる方へ」「体重が気になる方へ」「体脂肪が気になる方へ」「ウエスト周囲径を減らす」「ウエスト周囲径の気になる方へ」等需要者に対して、体脂肪減少やウエスト周囲径低減の効果を認識させるような種々の用途に基づく表示も可能である。
【0062】
(5-3)飼料
本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物は、その優れた体脂肪減少効果又はウエスト周囲径低減効果を利用して、動物用の飼料の有効成分として、これに配合して使用可能である。
【0063】
前記飼料の原料としては、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦等の穀類;ふすま、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;脱脂粉乳、ホエー、魚粉、骨粉等の動物性飼料類;ビール酵母等の酵母類;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;アミノ酸類;糖類などが挙げられる。また、前記飼料の形態としては、例えば、愛玩動物用飼料(ペットフード等)、家畜飼料、養魚飼料などが挙げられる。
【0064】
本技術に係る飼料中のビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌の含有量は、本技術の効果を損なわない限り、体重等に応じて自由に設定することができる。
飼料組成物における本菌体の含有量は、剤形、用法、対象の年齢、性別、疾患や症候、症状又は障害の種類、その程度、及びその他の条件等により適宜設定されるが、通常、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌の含有量は特に制限されないが、1日当たりの投与量を無理なく摂取できる程度の量を含有することが好ましく、1×103~1×1012CFU/g含有することがより好ましい。また、1日当たりの投与量は、少なくとも1×103CFU/日以上、より好ましくは1×106CFU/日以上、より好ましくは1×108CFU/日以上、より好ましくは2×1010CFU/日以上、又はそれ以上であることが好ましい。
本菌体が死菌の場合、cfu/g又はcfu/mlは、個細胞/g又は個細胞/mlと置き換えることができる。本菌体が破砕物の場合、cfu/g若しくはcfu/ml又は個細胞/g若しくは個細胞/mlは、上記cfu/g若しくはcfu/ml又は個細胞/g若しくは個細胞/mlの生菌又は死菌の破砕物と置き換えることができる。
【0065】
<2.抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を選別する方法>
本技術に係る抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を選別する方法(以下、単に「本技術に係る選別方法A」とも称する)は、(1)対象の腸内細菌叢の構成比率を門レベルでクラスター化し、(a)バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値であるグループ、及び(b)前記(a)のグループに属さないグループ、の各グループに分類する工程(以下、単に工程(A-1)とも称する)、(2)前記工程(1)で分類されたそれぞれのグループに、プロバイオティクス細菌を投与する工程(以下、単に工程(A-2)とも称する)、(3)それぞれのグループの体脂肪を測定する工程(以下、単に工程(A-3)とも称する)、を少なくとも有し、前記(a)又は(b)のグループに対して抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を選別する。以下、各工程について詳細に説明する。
【0066】
(1)工程(A-1)
工程(A-1)では、対象の腸内細菌叢の構成比率を門レベルでクラスター化し、(a)バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値であるグループ、及び(b)前記(a)のグループに属さないグループ、の各グループに分類する。
【0067】
対象は、通常ヒトであるが、本技術では、ヒト以外の哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ等のペット動物、ウシ、ヒツジ、ブタなどの家畜も含む。
【0068】
腸内細菌叢の構成比率を門レベル(例えば、ファーミキューテス門、バクテロイデス門、アクチノバクテリア門(Actinobacteria)、フソバクテリア門(Fusobacteria)、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)の5門)でクラスター化する方法は特に限定されないが、例えば、MeV(Multiple ExperimentViewer) 4.9.0を用いて、ピアソンの相関係数に基づいて階層的クラスタリング解析により行う方法などが挙げられる。
【0069】
また、階層的クラスター解析の方法としては、MeVの他に、SAS、SPSS、Stata、R、Excel、又はその他の統計解析ソフト、或いは、インターネットで入手できる、又はインターネット上で解析できるデータ解析方法を用いて、クラスター間の距離を算出することができる。クラスター間の距離の測定方法には、ピアソンの相関係数の他に、最近隣法、最遠隣法、重心法、ウォード法などの選択肢が挙げられる。
【0070】
クラスターを分類する方法としては、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率の他に、バクテロイデテス門に対するルミノコッカス属細菌、又はプレボテラ属細菌の比率で分ける方法や、属レベルの解析でクロストリジウム属、エンテロコッカス属、ビフィドバクテリウム属、アッカーマンシア属の占有率で分ける方法、種レベルの解析でアッカーマンシア・ムシニフィラ種、バクテロイデス・テタイオタオミクロン種の占有率で分ける方法などが挙げられる。
【0071】
前記(a)のグループは、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値であれば特に限定されないが、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.7以上であることが更に好ましい。
【0072】
また、前記(a)のグループは、肥満型の腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者であることが好ましい。具体的には、<1.組成物>で列挙したものと同様である。
【0073】
(2)工程(A-2)
工程(A-2)では、前記工程(1)で分類されたそれぞれのグループに、プロバイオティクス細菌を投与する。
【0074】
プロバイオティクス細菌としては、特に限定されないが、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌が好ましい。
【0075】
また、本技術に係る選別方法Aでは、ビフィドバクテリウム属細菌として、<1.組成物>にて列挙したビフィドバクテリウム属細菌を用いることが好ましい。また、これらの中でも、ビフィドバクテリウム・ブレーベを用いることが特に好ましい。
【0076】
ビフィドバクテリウム・ブレーベとしては、具体的には、<1.組成物>で列挙したものと同様であり、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V(NITE BP-02622)を用いることが好ましい。
【0077】
本技術に係る選別方法Aでは、ビフィドバクテリウム・ブレーベとして、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を用いることが特に好ましい。
【0078】
また、本技術に係る選別方法Aでは、乳酸菌として、<1.組成物>にて列挙した乳酸菌を用いることが好ましい。
【0079】
投与方法は特に限定されず、経口投与や非経口投与等の方法を採用することができるが、本技術では、経口投与とすることが特に好ましい。また、投与形態も特に限定されず、例えば、プロバイオティクス細菌を10~300億個含有する、錠剤、カプセル、粉末、粉乳、オイルドロップ、発酵乳、乳製品、飲料、菓子、飼料等を1日1~3回に分けて投与する。
【0080】
(3)工程(A-3)
工程(A-3)では、それぞれのグループ(前記(a)及び(b)のグループ)の体脂肪を測定する。
【0081】
体脂肪の測定方法は特に限定されず、例えば、既存の体組成測定装置等を用いて測定する。
【0082】
本技術に係る選別方法Aでは、以上の工程(A-1)~(A-3)を行うことにより、前記(a)又は(b)のグループに対して抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を選別する。なお、ここでいう「抗肥満作用」とは、プロバイオティクス細菌の投与前と投与後で、体脂肪が減少する作用を意味する。また、本技術に係る選別方法Aでは、必要に応じてその他の工程を有していてもよい。
【0083】
本技術に係る選別方法Aでは、前記(a)又は(b)のいずれかグループにおいて、体脂肪が減少していることを選別することで、体脂肪を減少させることが可能なグループを見つけ出し、肥満の、予防、治療及び/又は改善に役立てることができる。
【0084】
本技術では、前記(a)のグループに対して抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を選別することが好ましい。前記(a)のグループは、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値であることから、肥満型の腸内細菌叢を保有しているといえ、当該グループに対して抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を選別することで、肥満の、予防、治療及び/又は改善に役立てることができるからである。
【0085】
<3.抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌に対するレスポンダーを選別する方法>
本技術に係る抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌に対するレスポンダーを選別する方法(以下、単に「本技術に係る選別方法B」とも称する)は、(1)抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を対象に投与する工程(以下、単に工程(B-1)とも称する)、(2)(c)体脂肪が有意に減少したグループ、及び(d)前記(c)のグループに属さないグループ、の各グループに分類する工程(以下、単に工程(B-2)とも称する)、を少なくとも経て、前記抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌に対するレスポンダーを選別する。以下、各工程について詳細に説明する。
【0086】
(1)工程(B-1)
工程(B-1)では、抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を対象に投与する。なお、ここでいう「抗肥満作用」とは、プロバイオティクス細菌を投与することで、体脂肪が当該プロバイオティクス細菌を投与しない場合と比較して、減少する作用を意味する。
【0087】
抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌としては、特に限定されないが、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌が好ましい。
【0088】
また、本技術に係る選別方法Bでは、ビフィドバクテリウム属細菌として、<1.組成物>にて列挙したビフィドバクテリウム属細菌を用いることが好ましい。また、これらの中でも、ビフィドバクテリウム・ブレーベを用いることが特に好ましい。
【0089】
ビフィドバクテリウム・ブレーベとしては、具体的には、<1.組成物>で列挙したものと同様であり、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V(NITE BP-02622)を用いることが好ましい。
【0090】
本技術に係る選別方法Bでは、ビフィドバクテリウム・ブレーベとして、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を用いることが特に好ましい。
【0091】
また、本技術に係る選別方法Bでは、乳酸菌として、<1.組成物>にて列挙した乳酸菌を用いることが好ましい。
【0092】
より具体的には、抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌として、Bifidobacterium breve MCC1274(FERM BP-11175)、Bifidobacterium longum BB536(ATCC BAA-999)Lactobacillus amylovorus CP1563、Lactobacillus gasseri SBT2055(LG2055)、Bifidobacterium lactis Bb-122(Bifidobacterium animalis subsp. lactis BB-12)、Lactobacillus casei Shirota、VSL#3、Lactobacillus rhamnosus GG(ATCC53103)、Lactobacillus rhamnosus CGMCC1.3724(LPR)、Lactobacillus gasseri BNR17、Bifidobacterium animalis ssp. lactis 420、Akkermansia muciniphila、Bacteroides uniformis CECT 7771、Bifidobacteria L66-5, L75-4, M13-4 and FS31-12、Bifidobacterium animalis subsp. lactis I-2494、Bifidobacterium animalis subsp. lactis LMG P-28149、Bifidobacterium breve CNCM I-4035、Bifidobacterium longum SPM 1207、Bifidobacterium pseudocatenulatum SPM 1204、Lactobacillus acidophilus L1、Lactobacillus acidophilus LA5、Lactobacillus acidophilus NCFM、Lactobacillus brevis OK56、Lactobacillus casei DN001、Lactobacillus casei NCDC 19、Lactobacillus coryniformis CECT5711、Lactobacillus curvatus HY7601、Lactobacillus fermentum PCC、Lactobacillus JBD301、Lactobacillus paracasei CNCM I-4034、Lactobacillus paracasei CNCM I-4270、Lactobacillus paracasei F19、Lactobacillus paracasei Lpc-37、Lactobacillus planetarium A7、Lactobacillus plantarum HAC01、Lactobacillus plantarum KY1034、Lactobacillus plantarum SN13T、Lactobacillus plantarum TENSIA、Lactobacillus reuteri NCIMB 30242、Lactobacillus reuteri SD5865、Lactobacillus reuteri strain NCIMB 30242、Lactobacillus rhamnosus CNCM、Lactobacillus rhamnosus I-3690、Lactobacillus rhamnosus LMG S-28148、Lactobacillus rhamnosus NCDC17、Lactobacillus salivarium UCC118、Lactobacillus salivarium33、Lactobacillus salivarius Ls-33、Lactobacillus salivarius UBL S22、Pediococcus pentosaceus LP28、Saccharomyces boulardii Biocodexなどを採用することができる。本技術では、これらを、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0093】
対象は、通常ヒトであるが、本技術では、ヒト以外の哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ等のペット動物、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなどの家畜も含む。
【0094】
投与方法は特に限定されず、経口投与や非経口投与等の方法を採用することができるが、本技術では、経口投与とすることが特に好ましい。また、投与形態も特に限定されず、例えば、プロバイオティクス細菌を10~300億個含有する、錠剤、カプセル、粉末、粉乳、オイルドロップ、発酵乳、乳製品、飲料、菓子、飼料等を1日1~3回に分けて投与する。
【0095】
(2)工程(B-2)
工程(B-2)では、(c)体脂肪が有意に減少したグループ、及び(d)前記(c)のグループに属さないグループ、の各グループに分類する。
【0096】
前記(c)のグループは、例えば、肥満型の腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者であることが好ましい。肥満型の腸内細菌叢としては、例えば、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である腸内細菌叢、バクテロイデス門に対するプレボテラ属の比率が高値である腸内細菌叢、バクテロイデス門(Bacteroidetes)に対するルミノコッカス属(Ruminococcus)属の比率が高値である腸内細菌叢、ファーミキューテス門が(Firmicutes) 多い腸内細菌叢、バクテロイデス門が少ない腸内細菌叢、ルミノコッカス属(Ruminococcus)が多い腸内細菌叢、クロストリジウム属が多い腸内細菌叢、エンテロコッカス属(Enterococcus)が多い腸内細菌、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)が少ない腸内細菌叢、アッカーマンシア属が少ない腸内細菌叢、アッカーマンシア・ムシニフィラ種(Akkermansia muciniphila)が少ない腸内細菌叢、バクテロイデス・テタイオタオミクロン種が少ない腸内細菌叢、或いは、chao1指数やshannon指数やshimpson指数などで評価される豊富さ又は多様性が低い腸内細菌叢などが挙げられる。
【0097】
本技術では、これらの中でも、肥満型の腸内細菌叢として、肥満予備群又は肥満症患者において、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である腸内細菌叢であることが好ましい。
【0098】
また、この場合、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.7以上であることが更に好ましい。これにより、効率的に前記抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌に対するレスポンダーを選別することができる。
【0099】
また、前記(c)のグループは、肥満型の腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者であることが好ましい。具体的には、<1.組成物>で列挙したものと同様である。
【0100】
本技術に係る選別方法Bでは、以上の工程(B-1)~(B-2)を行うことにより、前記抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌に対するレスポンダーを選別する。なお、本技術に係る選別方法Bにおいて、前記(c)のグループがレスポンダーであり、前記(d)のグループ(前記(c)のグループに属さないグループ)がノンレスポンダーである。また、本技術に係る選別方法Bでは、必要に応じて、対象の体脂肪を測定する工程等、その他の工程を有していてもよい。
【0101】
本技術に係る選別方法Bでは、前記抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌に対するレスポンダーを選別することで、体脂肪を減少させることが可能なグループを見つけ出し、肥満の、予防、治療及び/又は改善に役立てることができる。
【0102】
なお、本技術では、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕
ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌を有効成分として含む、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者に用いられる、体脂肪減少用組成物。
〔2〕
前記バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が、1.3以上である、〔1〕に記載の体脂肪減少用組成物。
〔3〕
前記ビフィドバクテリウム属細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・カテニュラタム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・アニマリス、及びビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティスからなる群のいずれか一種以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の体脂肪減少用組成物。
〔4〕
前記ビフィドバクテリウム・ブレーベは、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)である、〔3〕に記載の体脂肪減少用組成物。
〔5〕
バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者に用いられる、体脂肪減少用組成物への、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌の使用。
〔6〕
バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者に用いられる、体脂肪減少用組成物の製造のための、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌の使用。
〔7〕
ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌を有効成分とする、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値である腸内細菌叢を保有する肥満予備群又は肥満症患者の予防、治療及び/又は改善方法。
【0103】
〔8〕
(1)対象の腸内細菌叢の構成比率を門レベルでクラスター化し、(a)バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値であるグループ、及び(b)前記(a)のグループに属さないグループ、の各グループに分類する工程、
(2)前記工程(1)で分類されたそれぞれのグループに、プロバイオティクス細菌を投与する工程、
(3)それぞれのグループの体脂肪を測定する工程、
を少なくとも有し、前記(a)又は(b)のグループに対して抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を選別する方法。
〔9〕
(1)抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌を対象に投与する工程、
(2)対象の腸内細菌叢の構成比率を門レベルでクラスター化し、(c)バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高値であるグループ、及び(d)前記(c)のグループに属さないグループ、の各グループに分類する工程、
を少なくとも経て、前記抗肥満作用を有するプロバイオティクス細菌に対するレスポンダーを選別する方法。
〔10〕
前記バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が、1.3以上であるグループである、〔8〕又は〔9〕に記載の方法。
〔11〕
前記プロバイオティクス細菌は、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌である、〔8〕から〔10〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕
前記ビフィドバクテリウム属細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・カテニュラタム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・アニマリス、及びビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティスからなる群のいずれか一種以上である、〔11〕に記載の方法。
〔13〕
前記ビフィドバクテリウム・ブレーベは、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)である、〔12〕に記載の方法。
〔14〕
前記乳酸菌は、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・デルビリッキィ・サブスピーシーズ・ブルガリクス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・サリバリウス、及びラクトバチルス・ラクチスからなる群のいずれか一種以上である、〔11〕に記載の方法。
【0104】
〔15〕
肥満予備群又は肥満症患者に用いられる、ウエスト周囲径低減用組成物への、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌の使用。
〔16〕
肥満予備群又は肥満症患者に用いられる、ウエスト周囲径低減用組成物の製造のための、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌の使用。
【実施例】
【0105】
以下、実施例に基づいて本技術を説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0106】
<実施例1>
本実施例1では、ヒトに対する試験を実施して、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274の摂取による体脂肪減少作用及びウエスト周囲径低減作用を検証するとともに、各個人の腸内細菌叢と体脂肪の変動について検証した。
【0107】
1.試験方法
(1)被験者
本試験では、肥満1度(BMI値が25kg/m2以上30kg/m2未満)で年齢20~64歳の成人男女80名を対象として、ランダム化二重盲検プラセボ対照群間比較試験を実施した。被験者は、試験開始前に全例から本試験の参加に対する同意書を取得した。被験者は健常者で、下記の除外基準に該当しないことを確認した。
【0108】
[除外基準]
(i)重篤な疾患等(※1)の治療を受けている者又はこれらの重篤な既往歴のある者
(ii)胃腸疾患に罹患し、投薬を受けている者
(iii)生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)の薬物治療を受けている者
(iv)薬物アレルギーあるいは重篤な食物アレルギーの既往歴がある者
(v)妊娠している者、試験期間中妊娠の意思がある者、授乳中の者
(vi)ヘビースモーカー(※2)、多量飲酒者(※3)、生活習慣が不規則な者
(vii)被験者背景、身体所見、問診などの結果から、試験責任医師又は試験分担医師により被験者として不適当と判断された者
※1 脳血管疾患、心疾患、肝疾患、消化器疾患、内分泌代謝疾患、睡眠時無呼吸症候などの疾患。
※2 概ね1日21本以上の喫煙を指す。
※3 平均1日当たり日本酒に換算して3合(純アルコールで約60g)以上消費する者を指す。
【0109】
(2)割付の方法
被験者は、層別置換ブロック法により性別、年齢、BMI値、内臓脂肪面積が偏らないように考慮した上で、試験食品摂取群40名、対照食品摂取群40名に割り付けられた。
【0110】
(3)試験食品
試験食品摂取群には凍結乾燥したビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274を100億個含有するカプセルを毎食後2個摂取させ、対照食品摂取群ではビフィズス菌の凍結乾燥菌末の代わりにコーンスターチを配合したカプセルを摂取させた。試験開始前及び試験終了時には、試験食品と対照食品が識別不能であることを確認した。
【0111】
(4)試験概要
試験食品及び対照食品の摂取期間は12週間とし、試験は9月から12月(秋~冬)にかけて実施した。2群について、試験食品摂取開始日で当日分の試験食品及び対照食品の摂取前を0週とし、摂取開始日から4週目、8週目、12週時点に来院検査を行い、体組成の評価項目を測定した。
【0112】
体組成の評価項目としては、腹部の総脂肪面積、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、体重、体脂肪量、体脂肪率、BMI値、及び腹囲(ウエスト周囲径)を測定した。
腹部の総脂肪面積、内臓脂肪面積、及び皮下脂肪面積は、デュアルスキャン HDS-2000(オムロンヘルスケア社製)装置を用いて測定した。体重、体脂肪量、及び体脂肪率は、生体電気インピーダンス法による医用グレードの体組成測定装置In body770(インボディ社製)を用いて測定した。また、BMI値は、手動で測定した身長の値を用いてIn Body770によって自動的に計算された。
【0113】
0週と12週においては、体組成の測定に加え、採血と採便を行い、下記の血液検査及び腸内細菌叢の解析を実施した。
【0114】
また、血液検査として、血中の脂質(総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、トリグリセリド)、血糖関連(空腹時血糖、HbA1c、グリコアルブミン、空腹時インスリン)、肝機能(AST、ALT、γ-GTP、ALP)、炎症マーカー(高感度CRP、LPB;Lipopolysaccharide bindingprotein)濃度を測定した。
【0115】
[腸内菌叢解析]
以下の方法にて、便サンプルからDNAを抽出し、腸内細菌叢解析を行った。
【0116】
回収した便サンプル(テクノスルガ社製ブラシ型採便キット)から糞便懸濁液0.5mLを用いて、ビーズ破砕法を用いてDNAを抽出した。14,000xgで5分間遠心分離した後、400μLの上清をフェノール・クロロホルムで抽出し、250μLの上清をイソプロパノールで沈殿させ、DNAを回収した。
【0117】
抽出したDNAのうち細菌由来DNAの16S rRNA配列に含まれるV3-V4領域を、TaKaRa Ex Taq HS Kit(Takara社製)とTru357Fプライマー(5′-CGCTCTTCCGATCTCTGTACGGRAGGCAGCAG-3:配列番号1)、及びTru806Rプライマー(5′-CGCTCTTCCGATCTGACGGACTACHVGGGTWTCTAAT-3′:配列番号2)を使用したPCR法にて増幅させた。
【0118】
得られたDNAをQIAxcel system(QIAGEN社製)を用いて精製した後、IlluminaMiSeqで測定するためのバーコードプライマー Fwd:5′-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACNNNNNNNNACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTCTG-3′(配列番号3)とRev:5′-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATNNNNNNNNGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTGAC-3′(配列番号4)(Nはサンプル毎に異なるバーコード配列であり、A、C、G又はTである。)を用いてPCRを行った。QIAxcel system及びGeneRead Size Selection Kit(Qiagen社製)を用いて精製した後、Miseq v3 Reagent Kit(Illumina社製)を用いてMiseqでシーケンス解析を実施した。
【0119】
得られた配列情報から以下の除外基準を満たす配列を除去し、fastq-join(version.1.1.2-537)を用いて配列を接続したシーケンス情報を得た。
【0120】
[除外基準]
(i)ヒトゲノム配列及びコントロールに添加したPhiX 174配列
(ii)上記(i)で排除されない配列のうち、塩基配列3’側のPHREDクオリティスコア(以下Q)17以下の配列
(iii)上記(ii)で排除されない配列のうち、150bp以下になった配列、全体でQ25以下配列、ペアが形成されない配列
【0121】
シーケンスデータは、QIIME software バージョン1.8.0を用いて、各被験者について試験開始前(0週)及び試験終了時(12週)の腸内細菌叢の構成比を生物学的階級(門/Phylum/Division・綱/Class・目/Order・科/Family・属/Genus)毎に解析した。
【0122】
[統計解析]
体組成及び血液検査結果の統計解析に関して、群間比較は摂取後の各評価時点において摂取前値からの変化量を対応のないt検定で評価を行った。群内比較は、各評価時点での摂取前値からの変化を、対応のあるt検定で評価を行った。有意水準は5%未満とした。
【0123】
2.試験結果
本試験では、被験者のドロップアウトはなく、全被験者80名が12週間の対象食品の食品摂取及び4週毎の来院検査を完了した。従って、試験に参加した被験者全80名について有効性の解析を実施した。
【0124】
[体組成の変動]
対照食品群では、体脂肪率がベースライン(0週)と比べて摂取後4週、8週、12週で有意に増加した。試験食品群では、対照食品群と比べて、8週、12週で体脂肪率が有意に低減していた。また、体脂肪量も体脂肪率と同様に、摂取8週、12週において対照群と比べて有意に低減していた。
【0125】
主な体組成の変化量(12週-0週)を下記表1に示す。より具体的には、下記表1は、試験食品を12週間摂取した後の体重、体脂肪量、体脂肪率、内臓脂肪面積、総脂肪面積、内臓脂肪/皮下脂肪比、空腹時血糖、ウエスト周囲径の変化量(0週からの変動値)に関して、全体解析(80名)の結果と後述するグループ2(レスポンダー群)の結果を示している。
【0126】
【0127】
また、全体解析の結果と後述するグループ2(レスポンダー群)とに分けて、各測定項目について、プラセボ群との変化量の差をベースラインの0週値で割った変化率を下記表2に示す。
【0128】
【0129】
全被検者80名の解析では、体重、腹部内臓脂肪面積、腹部総脂肪面積、内臓脂肪/皮下脂肪比、ウエスト周囲径の摂取12週時点における変化量(ベースライン、0週との比較)は、試験群の値が対照群の値を下回っており、群間有意差が検出されたのは、これらの中でも、体脂肪率及び体脂肪量であった。
【0130】
[腸内細菌叢の解析及び類似集団の選別方法]
次に、試験食品による抗肥満作用が腸内細菌叢による影響を受けるか調べるために、以下の手順にて、被検者を腸内細菌叢の構成比の類似した集団に分け、部分集団解析を行った。
【0131】
全ての被験者を対象に試験食品摂取前(0週)の腸内細菌の構成比について、MeV(Multiple ExperimentViewer) 4.9.0を用いて、ピアソンの相関係数に基づいて階層的クラスタリング解析を行った結果、被験者が腸内菌叢の構成比の類似した2グループに分けられた。階層的クラスタリング、各被検者に付随する群情報(摂取群、対照群)、門レベルの腸内細菌構成比は
図1に示した。
【0132】
2グループについて部分集団解析を行い、それぞれの対照群と試験群の評価項目を比較した結果、グループ2において、試験食品摂取による抗肥満作用が顕著であった。すなわち、グループ2では、体脂肪率及び体脂肪量の群間差が全体解析で示された変化量の群間差(-0.6Kg、-0.7%)と比べて大きくなっていた(-1.4Kg、-1.0%)。更に、全体解析では群間有意差がなかった、体重、内臓脂肪面積、総脂肪面積、内臓脂肪/皮下脂肪比が、対照群と比べて、試験群で有意に低減していたことを見出した(上記表1参照)。また、上記表2に示すように、全体解析とレスポンダー群の解析における変化率の違いからも、肥満型の腸内細菌叢を保有するレスポンダーにプロバイオティクス細菌を摂取させた場合に、より顕著な体脂肪減少、内臓脂肪面積減少、ウエスト周囲径の低減などの抗肥満効果が得られることが明確に示された。
【0133】
また、体組成における顕著な抗肥満作用に加え、グループ2では全体解析で群間有意差のなかった空腹時血糖が対照群と比べて、試験群で有意に改善していた(上記表1参照)。更に、空腹時血糖の改善作用においても、全体解析とレスポンダー群の解析における変化率の違いから、肥満型の腸内細菌叢を保有するレスポンダーにプロバイオティクス細菌を摂取させた場合に、より顕著な血糖値の改善作用が得られることが示された。
【0134】
腸内細菌の類似度によって分けられた2グループは、腸内細菌の構成においてどのような特徴をもっていたか、LEfSe(Linear discriminant analysisEffect Size)法を用いて解析した結果、
図2に示すように、試験食品による抗肥満作用が顕著であったグループ2(レスポンダー群)では、バクテロイデス門が特徴的に多かったグループ1に対して、ファーミキューテス門が多いことが示された。
図1のグループ1及びグループ2のバクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率の基礎統計量を下記表3に示す。
【0135】
【0136】
3.結論
本実施例1では、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274を有効成分とする試験食品の摂取によって、健常成人において体脂肪率、体脂肪量、及びウエスト周囲径が低減することが示された。また、介入前の被験者の腸内細菌叢と抗肥満作用の関係について解析した結果、一般に肥満型の腸内細菌といわれるバクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が高い集団において、試験食品摂取による抗肥満作用が顕著に高いことが示された。更に、特に、バクテロイデス門に対するファーミキューテス門の比率が、1.3以上である場合(より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.7以上)に、抗肥満作用が顕著に高くなることが示唆された。
【0137】
<製造例1>
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274を蛋白質、アミノ酸、糖源を含有する培地に摂取し、32~41℃で5~24時間培養を行った後、培養液から遠心分離により菌体(湿菌体)を集菌した。凍結乾燥機(共和真空社製)を用いて、120時間の凍結乾燥を行い、凍結乾燥終了後の菌体塊を物理的に粉砕してビフィズス菌末を得た。なお、当該粉末には、通常医薬品や食品に配合されている添加剤などが含まれていてもよい。
【0138】
当該粉末は、サプリメントとして使用することができ、また、水と混合することで飲料とすることができる。更に、カブセル容器に充填又はカプセル皮膜することで、体脂肪減少用カプセル剤又はウエスト周囲径低減用カプセル剤とすることができる。加えて、圧縮成形することで、体脂肪減少用錠菓又はウエスト周囲径低減用錠菓とすることができる。当該粉末により、体脂肪減少効果及び/又はウエスト周囲径低減効果が期待できる。
【0139】
<製造例2>
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274を蛋白質、アミノ酸、糖源を含有する培地に摂取し、32~41℃で5~24時間培養を行った後、培養液から遠心分離により菌体(湿菌体)を集菌した。凍結乾燥機(共和真空社製)を用いて、120時間の凍結乾燥を行い、凍結乾燥終了後の菌体塊を物理的に粉砕して得られたビフィズス菌末を造粒し、該細菌の顆粒状(菌末)を得る。なお、当該顆粒には、通常医薬品や食品に配合されている添加剤などが含まれていてもよい。当該顆粒を、菌の摂取量が1×108~1×1010CFU/kg体重/日になるようにし、1週間毎日提供する。
【0140】
当該顆粒を、食前、食中又は食後に摂取する。当該顆粒を食事と一緒に摂取することで、体脂肪減少効果及び/又はウエスト周囲径低減効果が期待できる。
【0141】
<製造例3>
ミキサーを用いて脱脂濃縮乳、クリーム、蔗糖、及び常温水を混合し、70℃に加温して溶解した。次いで、ホモジナイザーにより15MPaの圧力で均質化した後、90℃で10分間の加熱殺菌を行い、40℃に冷却した。これにビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274及び市販の乳酸菌スターター(ストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバシラス・ブルガリクスの混合培養物)を添加・混合した後、紙カップに100gを充填した。38℃で発酵させてカードを形成させた後、10℃以下まで冷却して静置型発酵乳を得た。得られた発酵乳は、1×108CFU/g以上のビフィズス菌を含有していた。
【0142】
当該発酵乳を、食前、食中又は食後に摂取することで、体脂肪減少効果及び/又はウエスト周囲径低減効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本技術に係る体脂肪減少用組成物及びウエスト周囲径低減用組成物は、優れた体脂肪減少作用やウエスト周囲径低減作用を有することから、体脂肪減少用及び/又はウエスト周囲径低減用の、医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等の幅広い分野で用いることができる。
【配列表】