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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】油添加剤を含むエアロゾル発生基体
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/32 20060101AFI20231225BHJP
   A24B 15/16 20200101ALI20231225BHJP
   A24B 15/14 20060101ALI20231225BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20231225BHJP
【FI】
A24B15/32
A24B15/16
A24B15/14
A24F40/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020528257
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018085991
(87)【国際公開番号】W WO2019122015
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】17209036.7
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】アジスクマール アヌ
(72)【発明者】
【氏名】デフォレル コリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ラング ゲルハルト
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特許第3118462(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/046420(WO,A1)
【文献】特表2015-536549(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133289(WO,A1)
【文献】特開平11-113552(JP,A)
【文献】ココナードMT,日本,花王株式会社,https://chemical.kao.com/ja/products/B0001699_ja/?region=jp
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/32
A24B 15/16
A24B 15/14
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入可能なエアロゾルを生成するための加熱式エアロゾル発生物品であって、前記加熱式エアロゾル発生物品が、エアロゾル発生基体のロッドを含み、前記エアロゾル発生基体のロッドが、一つ以上の均質化したたばこ材料のシートで形成され、前記均質化したたばこ材料が、たばこ材料の粒子の凝集により形成され、乾燥質量基準で1重量パーセント~10重量パーセントの中鎖トリグリセリド油を含み、前記中鎖トリグリセリド油が、摂氏18度未満の融点を有し、かつ6~12個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する一つ以上のトリグリセリドを含み、前記中鎖トリグリセリド油は、20未満のヨウ素価を有し、
前記一つ以上の均質化したたばこ材料のシートが、再構成たばこシートおよびキャストリーフから選択される、加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項2】
前記中鎖トリグリセリド油が2未満のヨウ素価を有する、請求項1に記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項3】
前記中鎖トリグリセリド油が摂氏15度未満の融点を有する、請求項1または2に記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項4】
前記中鎖トリグリセリド油が、8~10個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する、前記中鎖トリグリセリド油の重量を基準として少なくとも80重量パーセントの中鎖トリグリセリドを含む、請求項1~3のいずれかに記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項5】
前記均質化したたばこ材料中の前記中鎖トリグリセリド油の総含有量が、乾燥質量基準で1重量パーセント~5重量パーセントである、請求項1~4のいずれかに記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項6】
前記均質化したたばこ材料が、乾燥質量基準で少なくとも70重量パーセントのたばこを含む、請求項1~5のいずれかに記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項7】
前記均質化したたばこ材料が、一つ以上のエアロゾル形成体をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項8】
前記均質化したたばこ材料中のエアロゾル形成体の総含有量が、乾燥質量基準で5重量パーセント~20重量パーセントである、請求項7に記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項9】
前記均質化したたばこ材料が、乾燥質量基準で少なくとも約1重量パーセントの補強繊維をさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項10】
前記エアロゾル発生基体が、前記均質化したたばこ材料のシートの集合体から形成されるロッドである、請求項1~9のいずれか一項に記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項11】
前記均質化したたばこ材料が、乾燥質量基準で1重量パーセント~10重量パーセントの中鎖トリグリセリド油を含み、前記中鎖トリグリセリド油が、摂氏18度未満の融点を有し、かつ6~12個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する一つ以上のトリグリセリドを含み、前記中鎖トリグリセリド油は、20未満のヨウ素価を有する、請求項1~10のいずれかに記載の加熱式エアロゾル発生物品において使用するためのエアロゾル発生基体のロッド。
【請求項12】
エアロゾル発生システムであって、
発熱体を備えるエアロゾル発生装置と、
前記エアロゾル発生装置で使用するためのエアロゾル発生物品であって、エアロゾル発生基体のロッドを含む、エアロゾル発生物品と、を備え、前記エアロゾル発生基体のロッドが、一つ以上の均質化したたばこ材料のシートで形成され、前記均質化したたばこ材料が、乾燥質量基準で1重量パーセント~10重量パーセントの中鎖トリグリセリド油を含み、前記中鎖トリグリセリド油が、摂氏18度未満の融点を有し、かつ6~12個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する一つ以上のトリグリセリドを含み、前記中鎖トリグリセリド油は、20未満のヨウ素価を有し、
前記一つ以上の均質化したたばこ材料のシートが、再構成たばこシートおよびキャストリーフから選択される、エアロゾル発生システム。
【請求項13】
請求項1に記載のエアロゾル発生物品において使用するための均質化したたばこ材料を製造する方法であって、前記方法が、
たばこ材料、水、および、摂氏18度未満の融点を有し、かつ6~12個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する一つ以上のトリグリセリドを含む中鎖トリグリセリド油を含む、均質化したスラリーを形成する工程であって、前記中鎖トリグリセリド油は、20未満のヨウ素価を有する工程と、
前記均質化したスラリーを移動ベルトの上へとキャストする工程と、
前記大量のスラリーを乾燥させて均質化したたばこ材料のシートを形成する工程と、を含み、
前記方法が、前記スラリーの外部加熱なしに実行される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱式エアロゾル発生物品およびこうした物品で使用するための均質化した植物材料に関する。特に、本発明は、例えば「燃やさない加熱式」タイプの喫煙物品など、加熱式エアロゾル発生物品で使用するに適している均質化したたばこ材料に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ含有基体などのエアロゾル発生基体が燃焼されるのではなく加熱されるエアロゾル発生物品は、当業界で周知である。典型的に、こうした加熱式喫煙物品においてエアロゾルは、熱源からの熱を物理的に分離されたエアロゾル発生基体または材料に伝達することによって生成され、このエアロゾル発生基体または材料は熱源に接触して、または熱源の中に、または熱源の周囲に、または熱源の下流に位置していてもよい。エアロゾル発生物品の使用中、揮発性化合物は、熱源からの熱伝達によってエアロゾル発生基体から放出され、エアロゾル発生物品を通して引き出された空気中に混入される。放出された化合物は冷えるにつれて、凝縮してエアロゾルを形成する。
【0003】
多数の従来の技術の文書で、加熱式エアロゾル発生物品を消費または喫煙するためのエアロゾル発生装置が開示されている。こうした装置には、例えばエアロゾル発生装置の一つ以上の電気ヒーター要素から加熱式エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体への熱伝達によってエアロゾルが発生される、電気加熱式のエアロゾル発生装置が含まれる。こうした電気加熱式のエアロゾル発生装置の一つの利点は、副流煙を著しく減少させることである。
【0004】
均質化したたばこ材料は、エアロゾル発生物品のための基体を含むたばこ製品の製造においてしばしば使用される。この均質化したたばこ材料は典型的に、カットフィラーの製造にあまり適していないたばこ植物の部分(例えば、たばこ茎またはたばこダスト)から製造される。
【0005】
均質化したたばこ材料の最も一般的に使用される形態は、再構成たばこシートおよびキャストリーフである。均質化したたばこ材料シートを形成するプロセスは一般的に、たばこダストと結合剤を混合してスラリーを形成する工程を含む。その後、たばこウェブを作り出すためにスラリーが使用される。例えば、たばこウェブは、いわゆるキャストリーフを製造するために粘性のあるスラリーを移動する金属ベルトの上へとキャストすることによって形成されてもよい。別の方法として、粘度が低くかつ含水量が高いスラリーを使用して、製紙と似たプロセスで再構成たばこを作り出すことができる。
【0006】
「キャストリーフ」という用語は、たばこ粒子(単独で、またはその他の植物粒子との混合物で)および結合剤(例えば、グアーガムなど)を含むスラリーを支持表面(ベルトコンベアなど)の上へとキャストすること、スラリーを乾燥させること、および乾燥したシートを支持表面から取り外すことに基づくキャストプロセスによって形成される均質化したたばこ材料の形態を特に指す。キャストまたはキャストリーフプロセスの例は、例えば、キャストリーフたばこを作製するためのUS-A-5,724,998号に記載されている。キャストリーフプロセスでは、粒子状植物材料は、植物の一部を微粉砕、粉砕、または細分することよって生成される。一つ以上の植物体から生成された粒子は、液体成分、典型的には水と混合されてスラリーを形成する。スラリー中のその他の成分は、追加的な繊維、結合剤およびエアロゾル形成体を含みうる。粒子状植物材料は、結合剤の存在下で凝集されうる。スラリーを支持面の上へとキャストし、均質化したたばこ材料のシートへと乾燥させる。
【0007】
たばこ粒子は、望ましいシートの厚さおよびキャスティングギャップに応じて、平均粒子サイズが30~80マイクロメートルまたは100~250マイクロメートルである粒子を有するたばこダストの形態としうる。追加的な繊維には、たばこの幹材料、茎、または他のたばこ植物材料、および他のセルロース系繊維(低リグニン含量の木質繊維など)の粒子が含まれうる。繊維粒子のタイプおよびサイズは、キャストリーフの引張強さを調節する観点から選択されうる。さらに、薬草や竹を含む野菜繊維などの代替的な繊維が、上記の繊維と共に、または上記の繊維の代わりに使用されてもよい。
【0008】
再構成たばこのシートを形成するための適切なプロセスは、いわゆる製紙プロセスである。こうしたプロセスの第一の工程では、たばこ材料(単独で、または別の植物材料との混合物で)が水と混合されて、主に別個のセルロース繊維を含む希釈懸濁液を形成する。この第一の工程は、浸漬および熱の適用を伴いうる。懸濁液は、キャストプロセスで製造されるスラリーよりも粘度が低く、含水量が高い。次に、懸濁液は、固体の繊維成分を含む不溶性部分、および可溶性たばこ物質を含む液体または水性部分に分離されうる。不溶性繊維状部分内に残っている水は、シーブとして作用するスクリーンを通して排出されてもよく、ランダムに織り込まれた繊維のウェブが配置されてもよい。場合によっては吸引または真空による支援を受けてローラーで押し付けることにより、水はこのウェブからさらに除去されうる。大部分の水分が除去されると、概して平坦で、均一なたばこ繊維のシートが達成される。シートから除去された可溶性たばこ物質は濃縮されてもよく、そして濃縮されたたばこ物質がシートに戻されて添加されて、均質化したたばこ材料のシートをもたらしうる。このプロセスは、US3,860,012号に記載される通り、たばこ紙としても公知の再構成たばこ製品を作製するためにたばこで使用されてきた。
【0009】
均質化したたばこ材料シートの製造に適用されうるその他の公知のプロセスは、例えば、US-A-3,894,544号に記載されるタイプの軟塊再構成プロセス、ならびに例えばGB-A-983,928号に記載されるタイプの押出プロセスである。一般に、押出プロセスおよび軟塊再構成プロセスにより製造された均質化したたばこ材料の密度は、キャストプロセスにより製造された均質化したたばこ材料の密度よりも大きい。
【0010】
加熱式エアロゾル発生物品では、吸入可能なエアロゾルを形成するために、エアロゾル発生基体が比較的低い温度(例えば摂氏約350度)に加熱される。エアロゾルが形成されうるためには、均質化したたばこ材料は、高い割合のエアロゾル形成体および保湿剤(グリセリンまたはプロピレングリコールなど)を含むことが好ましい。均質化したたばこ材料はまた、ニコチンを含む。加熱式エアロゾル発生物品におけるエアロゾル発生基体としての使用に適している均質化したたばこ材料から形成されたロッドが、WO2012/164009号に開示されている。
【0011】
エアロゾルを作り出すには、エアロゾル形成体は、均質化したたばこ材料から放出されなければならない。これらのエアロゾル形成体は放出されるために、均質化したたばこ材料の物体内から均質化したたばこ材料の表面に移動しなければならない。ニコチンなどのその他の揮発性化合物も、エアロゾルに混入されるために、均質化したたばこ材料の物体内から移動しなければならない。加熱に伴いエアロゾル形成体が均質化したたばこ材料から放出される効率およびレートは改善されることが望ましいことがある。
【0012】
均質化したたばこ材料内でのエアロゾル形成体およびその他の揮発性化合物の移動は、拡散によって制限される。エアロゾル形成体が放出される効率およびレートを改善する一つの方法は、均質化したたばこ材料が加熱される温度を高めて、それによって拡散を改善することでありうる。ところが、温度の上昇は望ましくない化合物の放出を招きうるため、これは望ましくないことがある。温度の上昇はまた、例えばエアロゾルの温度やエアロゾルの液滴サイズなど、形成されるエアロゾルの物理的特性に悪影響を及ぼしうる。
【0013】
加熱に伴いエアロゾル形成体およびその他の揮発性化合物が放出される効率およびレートを改善する別の方法は、均質化したたばこ材料の単位体積あたりの表面積を増大させることでありうる。これは、均質化したたばこ材料の薄いシートの使用を必要としうる。ところが、均質化したたばこ材料は、高濃度のエアロゾル形成体のため、強度が不足している。均質化したたばこ材料の薄いシートは、取り扱いおよび加工が非常に困難である。
【0014】
ニコチンなどの揮発性化合物の改善された送達を提供するエアロゾル発生物品のための均質化した植物材料を提供することが望ましい。動作温度を低下させたときであっても、揮発性化合物の改善された送達を提供する均質化した植物材料を提供することが特に望ましい。既存の製造プロセスおよび装置を著しく変更する必要なく、効率的に製造できる均質化した植物材料を提供することがさらに望ましい。
【発明の概要】
【0015】
本発明の第一の態様によれば、吸入可能なエアロゾルを生成するための加熱式エアロゾル発生物品が提供されており、加熱式エアロゾル発生物品は、エアロゾル発生基体のロッドを含み、ここでエアロゾル発生基体のロッドは、再構成たばこシートおよびキャストリーフから選択される一つ以上の均質化したたばこ材料のシートで形成され、均質化したたばこ材料は、乾燥質量基準で少なくとも1重量パーセントの中鎖トリグリセリド油を含む。中鎖トリグリセリド油は、摂氏18度未満の融点を有し、かつ6~12個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する一つ以上のトリグリセリドを含む。
【0016】
本発明の第二の態様によれば、本発明の第一の態様による加熱式エアロゾル発生物品におけるエアロゾル発生基体として使用される均質化したたばこ材料が提供されており、均質化したたばこ材料は、乾燥質量基準で少なくとも1重量パーセントの中鎖トリグリセリド油を含む。中鎖トリグリセリド油は、摂氏18度未満の融点を有し、かつ6~12個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する一つ以上のトリグリセリドを含む。
【0017】
本発明の第三の態様によれば、発熱体を含むエアロゾル発生装置と、エアロゾル発生装置で使用するためのエアロゾル発生物品であって、エアロゾル発生基体のロッドを含む、エアロゾル発生物品とを備え、ここでエアロゾル発生基体のロッドは、再構成たばこシート、およびキャストリーフから選択される少なくとも一つの均質化したたばこ材料のシートで形成され、均質化したたばこ材料は、乾燥質量基準で少なくとも1重量パーセンの中鎖トリグリセリド油を含む、エアロゾル発生システムが提供されている。中鎖トリグリセリド油は、摂氏18度未満の融点を有し、かつ6~12個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する一つ以上のトリグリセリドを含む。
【0018】
本発明の第四の態様によれば、本発明の第二の態様による均質化した植物材料を作製する方法が提供されており、方法は、たばこ材料、水、および、摂氏18度未満の融点を有し、かつ6~12個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する一つ以上のトリグリセリドを含む中鎖トリグリセリド油を含む、スラリーを形成する工程と、スラリーを均質化する工程と、スラリーをキャストおよび乾燥して均質化したたばこ材料を形成する工程とを含む。この方法は、スラリーの外部加熱なしに実行される。
【0019】
本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体のロッドの好ましい特徴または態様に対する以下の任意の言及は、本発明のすべての態様に適用可能であると考えられる。
【0020】
本明細書で使用される「加熱式エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出するために、燃焼ではなく加熱されることが意図されるエアロゾル発生基体を含む、エアロゾル生成のためのエアロゾル発生物品を意味する。
【0021】
本明細書で使用される「エアロゾル発生基体」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を加熱時に放出する能力を有する基体を意味する。本明細書に記載のエアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体から発生されるエアロゾルは、可視または不可視であってもよく、またベイパー(例えば、室温で通常は液体または固体である物質の、気体状態にある物質の微粒子)ならびに気体および凝縮されたベイパーの液体の液滴を含んでもよい。
【0022】
本明細書で使用される「ロッド」という用語は、実質的に多角形の断面、および好ましくは円形、長円形または楕円形の概して円筒状の要素を指す。本明細書で使用される「シート」という用語は、その厚さより実質的に大きい幅および長さを有する層状要素を指す。
【0023】
本明細書で使用される「均質化したたばこ材料」という用語は、たばこ材料の粒子の、単独またはその他の植物材料との混合物での、凝集によって形成された任意のたばこ材料を包含する。例えば、均質化したたばこ材料のシートまたはウェブは、たばこ葉ラミナおよびたばこ葉茎の一方または両方を粉砕することによって、またはその他の方法で粉末化することによって得られた粒子状たばこ材料を凝集することによって形成されている。さらに、均質化したたばこ材料は、たばこの処理、取り扱い、および発送の間に形成された少量のたばこダスト、たばこ微粉、およびその他の粒子状たばこ副産物のうちの一つ以上を含んでもよい。
【0024】
均質化したたばこ材料は、上述したキャスト、押し出し、製紙プロセス、または当業界で公知のその他任意の適切なプロセスによって製造されうる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「中鎖トリグリセリド油」という用語は、一つ以上のトリグリセリドを含み、各トリグリセリドが、6~12個の炭素原子の鎖の長さを有する二つまたは三つの脂肪酸鎖を有する油を定義するために使用される。したがって、脂肪酸鎖は、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)およびラウリン酸(C12)のうちの一つ以上を含みうる。これらは、中鎖トリグリセリド油の必要な特性が得られる場合、任意の組み合わせおよび任意の相対量で、中鎖トリグリセリド油内に存在しうる。脂肪酸鎖の少なくとも二つが炭素原子の6~12個の鎖の長さを有する場合、中鎖トリグリセリド油中の各トリグリセリドについて、三つの脂肪酸鎖は、相互に同じ長さを有してもよく、異なる長さを有してもよい。各トリグリセリドについて、三つの脂肪酸鎖は同一であってもよく、または二つ以上の脂肪酸鎖が相互に異なっていてもよい。トリグリセリドは個々に飽和または不飽和の場合がある。
【0026】
ココナッツオイルおよびパーム核油などの特定の天然油は、適切な中鎖トリグリセリドを含み、本発明で使用される中鎖トリグリセリド油は、一部の場合では天然油の一部でありうる。
【0027】
本発明の態様のいずれかの均質化した植物材料に関する中鎖トリグリセリド油に対する任意の言及は、明記されていない限り、上記に定義する融点および脂肪酸鎖の長さを有する中鎖トリグリセリドを言及するものとする。
【0028】
本明細書で使用される場合、「融点」という用語は、中鎖トリグリセリド油の透明点、または完全な融点を指す。これは、油が、固体粒子を残すことなく、完全に液体かつ完全に透明である温度(摂氏)に対応する。当業界で公知の多くの方法、例えば、毛細管法またはStuart SMP50融点測定装置を使用して、油の透明点、融点を測定することができる。
【0029】
上述の通り、本発明のエアロゾル発生物品は、再構成たばこシートおよびキャストリーフから選択される一つ以上の均質化したたばこ材料のシートで形成されたエアロゾル発生基体を組み込み、均質化したたばこ材料は、摂氏18度未満の融点を有する中鎖トリグリセリド油の形態の油添加剤を含む。中鎖トリグリセリド油の融点は、油が室温(摂氏約22度)で常に完全に液体形態であるようなものである。したがって、均質化したたばこ材料は、たばこ材料の固体マトリクス内に分散された液体形態の油を含む。
【0030】
エアロゾル形成体およびニコチンなどの揮発性成分の拡散率は、固相よりも液相において大きい。したがって、液体中鎖トリグリセリド油は、均質化したたばこ材料内からその表面への揮発性成分の移動を促進するために作用しうる。従って、均質化したたばこ材料からエアロゾルへのこれらの揮発性成分の移動は、液体中鎖トリグリセリド油を含まない均質化したたばこ材料と比較して、促進されうる。中鎖トリグリセリド油は均質化したたばこ材料全体に均一に分散されることが好ましく、これは室温で別個に識別可能な油や植物材料の領域がないことを意味する。むしろ、油や粒子は完全に均質化されている。
【0031】
均質化したたばこ材料は、加熱式エアロゾル発生物品の最も高価な要素の一つである。本明細書に記載される通り、その中に組み込まれた中鎖トリグリセリド油を有する均質化したたばこ材料の使用により、定義される中鎖トリグリセリド油を含まない均質化したたばこ材料の使用と比較して、同等のニコチンまたはエアロゾルの生成量を提供する間に使用されるたばこが少なくなりうる。これによって、コストが節約されるとともに、消費者にはなおも同等の体験が提供されうる。
【0032】
また、その中に組み込まれた中鎖トリグリセリド油を有する均質化したたばこ材料の使用により、同量のたばこを有するが、定義される中鎖トリグリセリド油を含まない均質化したたばこ材料と比較して、ニコチンまたはエアロゾル生成量の増加が提供されうる。
【0033】
本明細書に記載する通り、その中に組み込まれた中鎖トリグリセリド油を有する均質化したたばこ材料の使用により、定義される中鎖トリグリセリド油を含まない均質化したたばこ材料の使用と比較して、低い温度で同等のニコチンまたはエアロゾル生成量が可能となりうる。実際に、驚くべきことに、本明細書に定義する中鎖トリグリセリドを有する均質化したたばこ材料の使用により、より高い温度で同一材料によって提供されるよりもより高いニコチンまたはエアロゾル生成量をより低い温度で提供しうることが見い出された。
【0034】
低い動作温度の潜在的な使用は、多くの利点を提供しうる。例えば、より低い動作温度は、電池の再充電を必要とせずに、より長い期間の使用を可能にしうる。さらなる例として、より低い動作温度は、より小さい電池の使用を可能にしうる。さらなる例として、より低い動作温度は、均質化したたばこ材料からの望ましくないエアロゾル成分の遊離を減少させうる。
【0035】
また、有利なことに、ニコチンおよびエアロゾルの送達の改善により、以下にさらに詳述するように、均質化したたばこ材料中の比較的低い割合の中鎖トリグリセリド油が提供されうることが見い出された。したがって、中鎖トリグリセリド油は、均質化したたばこ材料内のたばこおよびエアロゾル形成体などのその他の構成成分の量に著しく影響することなく、均質化したたばこ材料中に組み込まれうる。
【0036】
油が室温で液体であるように摂氏18度未満の融点を有する中鎖トリグリセリド油の使用はまた、均質化したたばこ材料の製造においても利点を提供する。特に、溶融するために油を加熱する必要がなく、さらに油を液体形態で保持するために、均質化したたばこ材料がそれから形成されるスラリーを加熱する必要がないため、均質化したたばこ材料中に中鎖トリグリセリド油を組み込むことが促進される。したがって、製造プロセスは、外部加熱を必要とすることなく実行されうる。これにより、製造プロセスのエネルギーコストが最小化され、さらに、プロセスの実行および制御が容易になる。さらに、均質化したたばこ材料を製造するプロセス中の外部加熱の欠如により、たばこ材料からの揮発性成分の損失を確実に最小化することができる。
【0037】
また、定義される中鎖トリグリセリドの使用により、均質化したたばこ材料の粘着性が減少することも見い出された。通常、均質化したたばこ材料のシートは比較的粘着性となりうる。これは、粘着性により材料を取り扱うことが困難となるため、均質化したたばこ材料の保管に関して大きな問題となる可能性がある。特に、ボビンの上へと巻かれた均質化したたばこ材料の保管の後、材料がそれ自体およびボビンに付着する傾向があるため、材料の粘着性により均質化したたばこ材料をボビンから巻き出すことが困難となる。これは、均質化したたばこ材料のシートを損傷する可能性があり、また、シートの有意な割合が使用することができずに廃棄物として廃棄されうることを意味する。この問題は通常、保管期間が増大するにつれて悪化する。
【0038】
対照的に、驚くべきことに、定義される中鎖トリグリセリド油が均質化したたばこ材料中に含まれる場合、粘着性が著しく減少し、その結果、シートを取り扱いしやすくなることが見い出された。したがって、廃棄される材料の割合は、本発明におけるように、中鎖トリグリセリド油が組み込まれる場合に著しく低くなることが見い出された。
【0039】
本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体に含まれる中鎖トリグリセリド油は、約20未満のヨウ素価を有することが好ましく、約15未満のヨウ素価を有することがより好ましく、約10未満のヨウ素価を有することがより好ましく、約5未満のヨウ素価を有することがより好ましく、約2未満のヨウ素価を有することが最も好ましい。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ヨウ素価」という用語は、中鎖トリグリセリド油中の飽和度を特徴付ける。ヨウ素価(iodine number)またはヨウ素指数としても知られるヨウ素価は、ウィイス溶液による処理である、塩化カリウムとの反応後のチオ硫酸ナトリウムによる滴定などの、当業界で公知の任意のヨウ素滴定技法によって測定される、100グラムの中鎖トリグリセリド油によって消費されるヨウ素の質量(グラム)に対応する。例えば、Firestone D(May-Jun 1994)“Determination of the iodine value of oils and fats:summary of collaborative study”J AOAC Int.77(3):674-6を参照されたい。ヨウ素価が低いほど、中鎖トリグリセリド油中に存在する炭素二重結合が少なくなり、したがって飽和度が高くなる。
【0041】
本発明の好ましい実施形態における中鎖トリグリセリド油の低いヨウ素価は、油が非常に高い飽和度を有することを示す。中鎖トリグリセリド油は実質的に完全に飽和されることが好ましい。非常に高い飽和度を有する中鎖トリグリセリド油の使用により、有利なことに、エアロゾル発生物品の使用中に油が加熱された時に生成される異臭が最小化されることが見い出された。従って、エアロゾル発生基体内の中鎖トリグリセリド油の存在は、基体から消費者に送達されるエアロゾルの風味に有害な影響を有さない。対照的に、低い飽和度を有し、従ってより不飽和であり、より高い度合いの炭素二重結合を有する油は、加熱に伴い、消費者にとって容認できない異臭を発生しうる。
【0042】
本発明によるエアロゾル発生物品は、エアロゾル発生基体を加熱するための内部ヒーター要素を有する電気加熱式のエアロゾル発生装置を備えるエアロゾル発生システムでの使用に適している。例えば、本発明によるエアロゾル発生物品は、エアロゾル発生基体のロッドの中に挿入されるように適合されている内部ヒーターブレードを有する電気加熱式エアロゾル発生装置を備えるエアロゾル発生システムにおいて特定の用途がある。このタイプのエアロゾル発生物品は、先行技術、例えば欧州特許第EP-A-0 822 670号に記載されている。
【0043】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体と相互作用してエアロゾルを発生するヒーター要素を備える装置を指す。
【0044】
別の方法として、本発明によるエアロゾル発生物品は、使用中にエアロゾル発生基体を加熱するための可燃性炭素熱源を備えうる。このタイプのエアロゾル発生物品は、先行技術、例えば国際特許出願第WO-A-2009/022232号に記載されている。
【0045】
上述の通り、本発明のエアロゾル発生物品は、特定の特性を有する中鎖トリグリセリド油を組み込むように修正された均質化した植物材料を含むエアロゾル発生基体を含む。中鎖トリグリセリドは、摂氏約18度未満の融点を有し、摂氏約17度未満の融点を有することが好ましく、摂氏約16度未満の融点を有することがより好ましく、摂氏約15度未満の融点を有することがより好ましく、摂氏約14度未満の融点を有することがより好ましく、摂氏約13度未満の融点を有することがより好ましく、摂氏約12度未満の融点を有することがより好ましく、摂氏約11度未満の融点を有することがより好ましく、摂氏約10度未満の融点を有することがより好ましい。特定の実施形態では、中鎖トリグリセリド油は、摂氏5度未満の融点を有してもよい。他の実施形態では、中鎖トリグリセリド油は、摂氏0度未満の融点を有してもよい。したがって、全ての実施形態で、中鎖トリグリセリド油は室温で液体であり、これは上記で詳細に説明した利点を提供する。
【0046】
中鎖トリグリセリド油は、上記に定義される通り、望ましい融点を達成するように選択された一つ以上の中鎖トリグリセリドを含む。一つ以上の中鎖トリグリセリドは、6~12個の炭素原子、より好ましくは6~10個の炭素原子、最も好ましくは8~10個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する。一つ以上のトリグリセリドは、6~12個の炭素原子、より好ましくは6~10個の炭素原子、最も好ましくは8~10個の炭素原子の鎖の長さを有する三つ全ての鎖を有することが好ましい。
【0047】
中鎖トリグリセリド油は、8~10個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する、少なくとも80重量パーセントのトリグリセリドを含むことが好ましい。中鎖トリグリセリド油は、8~10個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する、少なくとも90重量パーセントのトリグリセリドを含むことがより好ましい。中鎖トリグリセリド油は、8~10個の炭素原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する、約100重量パーセントのトリグリセリドを含むことが最も好ましい。
【0048】
中鎖トリグリセリド油において、8個の炭素原子の鎖の長さを有する脂肪酸鎖(C8)と10個の炭素原子の鎖の長さを有する脂肪酸鎖(C10)との比は約1:1であることが好ましい。中鎖トリグリセリド油が追加的に12個の炭素原子の鎖の長さ(C12)を有する脂肪酸鎖を含む場合、C8:C10:C12の比は約1:1:6~約1:1:16である。
【0049】
本発明で使用するための適切な中鎖トリグリセリド油は市販されている。例えば、適切な中鎖トリグリセリド油は、Danisco製のGrindsted(登録商標)MCT 60 Xである。Grindsted(登録商標)MCT 60 Xは、パーム由来のカプリル酸/カプリン酸および植物由来の天然グリセリンから作製されたグリセリルトリカプリル酸/カプリン酸に相当する。これは、18℃よりも有意に低い融点および0.5未満のヨウ素価を有する。Grindsted(登録商標)MCT 60 Xは、およそ1:1:16のC8:C10:C12比を有する。
【0050】
均質化したたばこ材料中の中鎖トリグリセリド油の総含有量は、乾燥質量に基づいて少なくとも約1重量パーセントであり、少なくとも約2重量パーセントであることが好ましい。別の方法としてまたは追加的に、均質化したたばこ材料中の中鎖トリグリセリド油の総含有量は、乾燥質量に基づいて約10重量パーセント未満であることが好ましく、約5重量パーセント未満であることがより好ましい。例えば、均質化したたばこ材料中の中鎖トリグリセリド油の総含有量は、乾燥質量に基づいて約1重量パーセント~約10重量パーセントであってもよく、約1重量パーセント~約5重量パーセントであることがより好ましい。
【0051】
均質化したたばこ材料中の中鎖トリグリセリド油の総含有量は、均質化したたばこ材料をまず挽き、その後液体溶媒中に抽出して液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)技法を用いて分析して、抽出物中に存在するトリグリセリドの性質を判定する、試験方法を使用して定量的に判定されうる。こうした試験方法の詳細な実施例は、以下の実施例において提供されている。
【0052】
本発明の任意の態様による均質化したたばこ材料は、一つ以上のエアロゾル形成体を含むことが好ましい。機能的には、エアロゾル形成体は、均質化したたばこ材料がエアロゾル形成体の特定の揮発温度を超えて加熱された時に揮発してエアロゾル中のニコチンおよび/または風味剤を運ぶことができる構成要素である。エアロゾル形成体は、使用時に、密度が高く安定したエアロゾルの形成を促進し、加熱式エアロゾル発生物品の動作温度で実質的に熱分解耐性のある、任意の適切な化合物または化合物の混合物としてもよい。異なるエアロゾル形成剤は異なる温度で気化する。それ故に、エアロゾル形成体は、室温またはその付近で安定性を保つが、より高い温度、例えば摂氏40~450度で揮発するその能力に基づいて選ばれてもよい。
【0053】
エアロゾル形成体はまた、均質化したたばこ材料中で望ましいレベルの水分を保つのに役立つ湿潤剤タイプの特性を有しうる。特に、一部のエアロゾル形成体は、湿潤剤として機能する吸湿性材料である。
【0054】
均質化したたばこ材料などの均質化した植物材料中に含有するのに適切なエアロゾル形成体が当業界で公知であり、それらには例えば、一価アルコール(メントールなど)、多価アルコール(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、およびグリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、グリセロールジアセテート、またはグリセロールトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチル、テトラデカン二酸ジメチル、エリスリトール、1,3-ブチレングリコール、テトラエチレングリコール、クエン酸トリエチル、プロピレンカーボネート、ラウリン酸エチル、トリアクチン(Triactin)、メソ-エリスリトール、ジアセチン混合物、スベリン酸ジエチル、クエン酸トリエチル、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、バニリン酸エチル、トリブチリン、酢酸ラウリル、ラウリン酸、ミリスチン酸、およびプロピレングリコールなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
以下により詳述するように、発熱体を有する電気的に作動するエアロゾル発生システムでの使用が意図されている均質化したたばこ材料の場合、エアロゾル形成体はグリセロール(グリセリン(glycerin)またはグリセリン(glycerine)としても知られる)またはプロピレングリコールとしうることが好ましい。
【0056】
均質化したたばこ材料中のエアロゾル形成体の総含有量は、乾燥質量基準で約5~約30重量パーセントであることが好ましく、乾燥質量基準で約5~約20重量パーセントであることがより好ましい。
【0057】
均質化したたばこ材料は、乾燥質量基準で少なくとも約70重量パーセントのたばこ材料を含むことが好ましく、約70重量パーセント~約80重量パーセントのたばこ材料を含むことがより好ましい。たばこ材料は、挽いたたばこ粉末の形態であることが好ましい。例えば、たばこ材料は特定の粒子サイズを有する粉末を形成するために挽いてもよい。均質化したたばこ材料は、平均粉末粒子サイズが約0.03ミリメートル~約0.12ミリメートル、例えば約0.05ミリメートル~約0.10ミリメートルのたばこ粉末を含みうる。
【0058】
均質化したたばこ材料は、挽いたたばこ粉末の形態でたばこ材料を含むことが好ましい。本発明に関連して本明細書で使用される「たばこ材料」という用語は、たばこ葉、たばこリブ、たばこ茎、たばこ幹、たばこダスト、膨化たばこ、再構成たばこ材料、および均質化したたばこ材料を含むが、それらに限定されないたばこを含む任意の材料を説明する。別の方法として、または追加的に、均質化したたばこ材料は、例えば、茶、またはペパーミントなどの薬草などの非たばこ植物材料を含んでもよい。
【0059】
任意の態様による均質化したたばこ材料はさらに、一つ以上の結合剤を含みうる。均質化したたばこ材料中の結合剤の総含有量は、乾燥質量基準で約1~約5重量パーセントであることが好ましい。均質化したたばこの場合、少なくとも、たばこスラリー中に、それ故にスラリーをキャストすることによって形成される均質化したたばこ材料中に存在しうる結合剤の量には事実上の限界がある。これは、水と接触した時に結合剤がゲルになる傾向に起因する。ゲル化はたばこスラリーの粘性に強く影響し、これがその後のウェブ製造プロセス(例えば、キャストのようなプロセス)のためのスラリーの重要なパラメータとなる。従って、均質化したたばこ材料の中に比較的少量の結合剤を有することが好ましい。
【0060】
結合剤は、たばこ材料(例えば、たばこ粉末)が均質化したたばこ材料を通して実質的に分散されたままになるのを確実にするのに役立ちうる。
【0061】
任意の結合剤を採用してもよいが、好ましい結合剤は、天然ペクチン(果実ペクチン、柑橘類ペクチン、またはたばこペクチンなど)、グアーガム(ヒドロキシエチルグアー、ヒドロキシプロピルグアーなど)、ローカストビーンガム(ヒドロキシエチルローカストビーンガム、ヒドロキシプロピルローカストビーンガムなど)、アルギネート、デンプン(変性デンプンまたは誘導体化デンプン(derivitized starches)など)、セルロース(メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、タマリンドガム、デキストラン、プラロン(pullalon)、コンニャク粉、キサンタンガム、およびこれに類するものである。特に好ましい結合剤はグアーである。
【0062】
特定の場合、上述の構成成分を含む均質化したたばこ材料は、加熱式エアロゾル発生物品のためのエアロゾル発生基体を形成するために取り扱いおよび処理するのに必要な強度を欠いていることがあり得る。これは特に、均質化したたばこ材料が高い割合のエアロゾル形成体を含む場合であり得、またはたばこが細かく挽いた粉末の形態である場合であり得る。より高い強度を達成するために、均質化したたばこ材料は、結合剤および補強材など一つ以上のさらなる構成成分を含みうる。
【0063】
本発明の任意の態様による均質化したたばこ材料はさらに、補強繊維を含みうる。補強繊維の繊維長さは平均0.2mm~4.0mmでありうる。補強繊維はセルロース繊維としうる。一部の実施形態において、均質化したたばこ材料は、乾燥質量基準で1重量パーセント~15重量パーセントの補強繊維、例えば乾燥質量基準で1.5重量パーセント~10重量パーセントの補強繊維を含みうる。
【0064】
均質化したたばこ材料中にセルロース繊維などの繊維を含めることで、材料の引張強さが増大する。従って、補強繊維を添加することで、均質化したたばこ材料のウェブの弾力性を増大させうる。これは、エアロゾル発生物品の製造中、均質化したたばこ材料の円滑な製造プロセスおよびその後の取り扱いを支援する。一方で、これはエアロゾル発生物品および他の喫煙物品を製造する上での製造効率、コスト効率、再現性、および生産速度の増加につながる可能性がある。
【0065】
均質化したたばこ材料に含めるセルロース繊維は当業界において公知であり、柔らかい木材繊維、堅い木材繊維、ジュート繊維、亜麻繊維、たばこ繊維、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。セルロース繊維は、パルプ化に加えて、精製、機械的パルプ化、化学的パルプ化、漂白、硫酸塩パルプ化、およびこれらの組み合わせなどの適切な加工に供されてもよい。
【0066】
繊維粒子は、たばこ茎材料、葉柄、または他のたばこ植物材料を含んでもよい。木材繊維などのセルロースベースの繊維はリグニン含有量が低いことが好ましい。別の方法として、植物繊維などの繊維を上記の繊維とともに、またはその代替として使用してもよく、これには大麻および竹が含まれる。
【0067】
補強繊維について考慮されるべき一つの関連要因は、繊維の長さである。繊維は短すぎる場合、結果として得られる均質化したたばこ材料の引張強さに効率的に貢献しないであろう。繊維は長すぎる場合、均質化したたばこ材料の均一性に影響しうる。平均サイズが約0.03ミリメートル~約0.12ミリメートルであり、かつ結合剤の量がスラリーの乾燥質量の約1パーセント~約3パーセントであるたばこ粉末を含む均質化したたばこ材料における繊維のサイズは、約0.2ミリメートル~約4ミリメートルであることが有利である。繊維の平均サイズは、約1ミリメートル~約3ミリメートルであることが好ましい。このさらなる低減が精製する工程によって得られることが好ましい。
【0068】
本明細書において、繊維の「サイズ」は繊維長さを意味し、すなわち繊維長さは繊維の主要寸法である。さらに、本発明によると繊維の量は、均質化したたばこ材料の総重量の乾燥質量基準で約1パーセント~約3パーセントを成すことが好ましい。均質化したたばこ材料の場合、エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体として均質化したたばこ材料が使用される時に、平均サイズが約0.2ミリメートル~約4ミリメートルである繊維は、細かく挽いたたばこ粉末からの物質の放出を著しく阻害しない。補強繊維は、たばこスラリーの中に、またその結果として均質化したたばこ材料の中に、バラバラの繊維として導入されてもよい。
【0069】
いずれかの態様による均質化したたばこ材料は、均質化したたばこ材料中に組み込まれた連続的な補強材の形態の補強材を含んでもよい。連続的な補強材は、均質化したたばこ材料の形成中に、たばこ材料のスラリーの中に組み込まれてもよい。連続的な補強材は多孔性の補強シートであることが好ましい。
【0070】
補強シートは、スラリーが乾燥する前にたばこ材料スラリーが多孔性補強シートの中へと透過し、それによって補強シートを均質化したたばこ材料の中へと組み込むために、十分に多孔性であるべきである。多孔性補強シートは、乾燥した均質化したスラリーの中に封入されて、均質化したたばこ材料を形成することが好ましい。多孔性補強シートは代わりに、多孔性補強マトリクスと呼ばれてもよい。多孔性補強シートは、多孔性セルロースシートもしくは紙シート、または多孔性織布などの多孔性繊維シートまたは多孔性繊維マトリクスであってもよい。
【0071】
セルロースから形成された多孔性補強シートは、好ましい連続的な補強材料でありうる。しかし、他の材料が使用されてもよい。例えば、多孔性補強シートは、多孔性繊維シートまたは多孔性繊維マトリクスとして記載することができるシートであってもよい。シートの繊維は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリフェニレンスルファイド、またはポリオレフィンなどの他の高分子材料から形成されてもよい。繊維は綿などの天然材料であってもよい。
【0072】
いずれかの態様による均質化したたばこ材料は、水を含みうる。いずれかの態様による均質化したたばこ材料は、メントールなどの風味剤を含んでもよい。
【0073】
上述の通り、エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体を形成するための、均質化したたばこ材料中への定義される中鎖トリグリセリド油の包含により、エアロゾル発生基体の加熱に伴うエアロゾル発生基体からのエアロゾルおよびニコチンの送達の著しい改善が提供されることが見いだされた。
【0074】
中鎖トリグリセリド油は、中鎖トリグリセリド油が同等の重量のエアロゾル形成体と置換されている、中鎖トリグリセリド油を含まない同等のエアロゾル発生基体と比較して、エアロゾル発生基体基体の加熱中に少なくとも10重量パーセントのニコチンの増加を提供することが好ましい。中鎖トリグリセリド油は、中鎖トリグリセリド油を含まない同等のエアロゾル発生基体と比較して、エアロゾル発生基体の加熱中に少なくとも15重量パーセントのニコチンの増加を提供することがより好ましい。こうした比較の目的で、中鎖トリグリセリド油を含む、および中鎖トリグリセリド油を含まないエアロゾル発生基体を含むエアロゾル発生物品を、以下に定義する加熱試験で加熱する。
【0075】
加熱試験において、エアロゾル発生物品は、エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体を加熱するための発熱体を備えるエアロゾル発生装置の中へと挿入される。エアロゾル発生物品の通常の使用をシミュレートするために、発熱体は摂氏約350度で360秒間エアロゾル発生基体を加熱するようにプログラムされる。エアロゾル発生物品から放出された気相成分が収集されるように、エアロゾル発生物品は加熱中、密封されたガラスバイアルの中に定置される。次に、バイアル内に収集された気相成分のサンプルが取り出され、上述の試験方法を使用して様々なトリグリセリドの濃度が判定される。加熱試験のために適切なエアロゾル発生装置は、市販のPhilip Morris International製のiQOS(登録商標)の加熱非燃焼式装置である。
【0076】
さらに、均質化したたばこ材料中への定義される中鎖トリグリセリド油の包含の効果は、低下した動作温度においてさらにより有意であることが見い出された。例えば、上記のものと同等であるが、発熱体がエアロゾル発生基体を摂氏300度で360秒間加熱するようにプログラムされている加熱試験では、中鎖トリグリセリド油は、中鎖トリグリセリド油を含まない同等のエアロゾル発生基体と比較して、エアロゾル発生基体の加熱中に少なくとも20重量パーセントのニコチンの増加を提供することが好ましい。
【0077】
均質化したたばこ材料は、エアロゾル発生基体内で任意の適切な形態をとりうる。特定の好ましい実施形態において、エアロゾル発生基体は、均質化したたばこ材料のシートの集合体を含むロッドを含む。
【0078】
本発明に関連して本明細書で使用される「ロッド」という用語は、実質的に円形、長円形または楕円形の断面の概して円筒状の要素を示す。
【0079】
本発明に関連して本明細書で使用される「シート」という用語は、その厚さよりもかなり大きい幅および長さを有する薄層状の要素を説明する。
【0080】
本発明に関連して本明細書で使用される「集合体」という用語は、巻き込まれ、折り畳まれ、またはその他の方法でエアロゾル発生物品の長軸方向軸に対して実質的に横断方向に圧縮され、または収縮したシートを説明する。
【0081】
エアロゾル発生基体は、均質化したたばこ材料のきめのあるシートの集合体を含むことが有利である。本発明に関連して本明細書で使用される「きめのあるシート」という用語は、捲縮された、型押しされた、デボス加工された、穿孔された、またはその他の方法で変形されたシートを説明する。
【0082】
均質化したたばこ材料のきめのあるシートの使用は有利なことに、均質化したたばこ材料シートの集合を容易にしてエアロゾル発生基体を形成してもよい。
【0083】
エアロゾル発生基体は、複数の間隔を置いたへこみ、突起、穿孔またはそれらの任意の組み合わせを含む均質化したたばこ材料のきめのあるシートの集合体を含んでもよい。
【0084】
特定の好ましい実施形態において、エアロゾル発生基体は、均質化したたばこ材料の捲縮したシートの集合体を含む。本発明に関連して本明細書で使用される「捲縮したシート」という用語は、複数の実質的に平行な隆起またはコルゲーションを有するシートを説明する。エアロゾル発生物品が組み立てられた時に、実質的に平行な隆起またはコルゲーションは、エアロゾル発生物品の長軸方向軸に沿って、またはそれと平行に延びることが有利である。これは均質化したたばこ材料の捲縮したシートの集合を容易にしてエアロゾル発生基体を形成する。
【0085】
しかし、本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体に含めるための均質化したたばこ材料の捲縮したシートは別の方法として、または追加的に、エアロゾル発生物品が組み立てられた時に、エアロゾル発生物品の長軸方向軸に鋭角または鈍角で配置されている複数の実質的に平行な隆起またはコルゲーションを有してもよいことが認識される。
【0086】
本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体に含めるための均質化したたばこ材料のシートは、約100マイクロメートル~約400マイクロメートルの厚さを有することが好ましく、約125マイクロメートル~約350マイクロメートルの厚さを有することがより好ましく、約150マイクロメートル~約300マイクロメートルの厚さを有することがより好ましく、約175マイクロメートル~約275マイクロメートルの厚さを有することがより好ましく、約200マイクロメートル~約250マイクロメートルの厚さを有することがより好ましく、約215マイクロメートルの厚さを有することが最も好ましい。
【0087】
均質化したたばこ材料のシートは、約150グラム/平方メートル(gsm)~約250グラム/平方メートル(gsm)の坪量を有することが好ましく、約170gsm~約220 gsmの坪量を有することがより好ましく、約180gsm~約210gsmの坪量を有することがより好ましく、約195gsm~約205gsmの坪量を有することがより好ましく、約200gsmの坪量を有することがより好ましい。
【0088】
均質化したたばこ材料のシートの厚さは、例えば、L&W-250-F(2kPaの測定圧力、0範囲)または同等のものなど、軟質の材料用の高精度のマイクロメーターなど、任意の適切な装置を使用して測定されうる。厚さは、多数のシートからなるスタックを使用して測定されてもよく、測定された値は次に、シートの数で割られ、例えば、三つのシートのスタックが測定されてもよい。均質化したたばこ材料のシートの坪量を測定するために、シートの定義されたサイズの重量は、精密な天秤、例えば、Mettler Toledo XP205(0.1mg精度)または同等のものなど、任意の適切な装置を使用して測定されうる。シートの寸法は、精密なルーラー、例えばHirlinger 1/10mmまたは同等のものを使用して測定されうる。次に、坪量が従来的な方法で算出されうる。
【0089】
上述の通り、均質化したたばこ材料シートの集合体の使用の代替として、エアロゾル発生基体は均質化したたばこ材料シートの複数の細片または断片で形成されうる。例えば、エアロゾル発生基体は、長軸方向に整列され、一緒にまとめて包まれてエアロゾル発生基体のロッドを形成する均質化したたばこ材料の複数の断片で形成されてもよい。
【0090】
均質化したたばこ材料の断片は、約10ミリメートル~約20ミリメートルの長さを有することが好ましく、約12ミリメートル~約18ミリメートルの長さを有することがより好ましく、約14ミリメートル~約16ミリメートルの長さを有することがより好ましく、約15ミリメートルの長さを有することがより好ましい。別の方法として、または追加的に、均質化したたばこ材料の断片は、約0.4ミリメートル~約0.8ミリメートルの幅を有することが好ましい。
【0091】
それから断片が形成される均質化したたばこ材料シートの密度は、約500~約1500ミリグラム/立方センチメートルであることが好ましく、約800~約1200ミリグラム/立方センチメートルであることがより好ましく、約900~約1100ミリグラム/立方センチメートルであることがより好ましく、約900~約970ミリグラム毎立方センチメートルであることが最も好ましい。
【0092】
エアロゾル発生基体内の均質化したたばこ材料の断片のかさ密度は、約0.4グラム/立方センチメートル~約0.8グラム/立方センチメートルであることが好ましく、約0.5グラム/立方センチメートル~約0.7グラム/立方センチメートルであることが好ましく、約0.65グラム/立方センチメートル~約0.67グラム/立方センチメートルであることが最も好ましい。
【0093】
上述のように、均質化したたばこ材料は、スラリーのキャストによって形成されうる。別の方法として、均質化したたばこ材料は、例えば、押出方法などの別の適切な方法によって形成されてもよい。
【0094】
エアロゾル発生基体は、ラッパーによって囲まれた均質化したたばこ材料のロッドを含むことが好ましく、ここでラッパーは均質化したたばこ材料の周りに、それと接触して提供される。ラッパーは、均質化したたばこ材料の周りに巻かれて、エアロゾル発生基体を形成する能力を有する任意の適切なシート材料から形成されうる。ラッパーは、多孔性であってもよく、非多孔性であってもよい。ラッパーは紙ラッパーであることが好ましいが、別の方法として、ラッパーは紙以外であってもよい。
【0095】
エアロゾル発生基体のロッドは、エアロゾル発生物品の外径にほぼ等しい外径を有することが好ましい。
【0096】
エアロゾル発生基体のロッドは、少なくとも5ミリメートルの外径を有することが好ましい。エアロゾル発生基体のロッドは、約5ミリメートル~およそ12ミリメートル、例えば約5ミリメートル~約10ミリメートル、または約6ミリメートル~約8ミリメートルの外径を有しうる。一つの好ましい実施形態において、エアロゾル発生基体のロッドは7.2ミリメートル±10パーセントの外径を有する。
【0097】
エアロゾル発生基体のロッドは、約7ミリメートル~約15mmの長さを有しうる。一つの実施形態において、エアロゾル発生基体のロッドは、約10ミリメートルの長さを有してもよい。一つの好ましい実施形態において、エアロゾル発生基体のロッドは、約12ミリメートルの長さを有する。
【0098】
エアロゾル発生基体のロッドは、ロッドの長さに沿って実質的に均一な断面を有することが好ましい。エアロゾル発生基体のロッドは、実質的に円形の断面を有することが特に好ましい。
【0099】
本発明によるエアロゾル発生物品は、エアロゾル発生基体のロッドに加えて一つ以上の要素を備えることが好ましく、ロッドおよび一つ以上の要素は基体ラッパー内に組み立てられる。例えば、本発明によるエアロゾル発生物品は、マウスピース、エアロゾル冷却要素、および中空のアセテート管などの支持要素のうちの少なくとも一つをさらに備えうる。例えば、一つの好ましい実施形態において、エアロゾル発生物品は直線の連続的な配設で、上述の通りのエアロゾル発生基体のロッドと、エアロゾル形成基体のすぐ下流に位置する支持要素と、支持要素の下流に位置するエアロゾル冷却要素と、ロッド、支持要素およびエアロゾル冷却要素を囲む外側ラッパーとを備える。
【0100】
本発明によるエアロゾル発生システムは、上記に詳細に記述される通り、喫煙中にエアロゾル発生物品の上流端を受け入れるように適合されたエアロゾル発生装置と組み合わせたエアロゾル発生物品を含む。エアロゾル発生装置は、使用中にエアロゾルを生成するためにエアロゾル発生基体を加熱するように適合された発熱体を備える。エアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置の中へと挿入された時に、発熱体はエアロゾル発生基体を貫通するように適合されることが好ましい。
【0101】
エアロゾル発生装置は、ハウジングと、発熱体に接続された電力供給源と、電源から発熱体への電力の供給を制御するように構成された制御要素とを追加的に備えることが好ましい。
【0102】
本発明のエアロゾル発生システムで使用する適切なエアロゾル発生装置は、国際特許公開公報第2013/098405号に記述されている。
【0103】
上記で詳細に説明した、本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体を形成するための均質化したたばこ材料は、上記に定義する通り、本発明の第四の態様による方法を使用して製造されうる。本発明による方法の第一の工程では、たばこ材料、中鎖トリグリセリド油および水を含む、均質化したスラリーが形成される。中鎖トリグリセリド油は、摂氏18度未満の融点を有し、かつ6~12個の原子の鎖の長さを有する少なくとも二つの脂肪酸鎖を有する一つ以上のトリグリセリドを含む。中鎖トリグリセリド油は、2未満のヨウ素価を有する。第二の工程では、均質化したスラリーが移動ベルトの上へとキャストされる。第三の工程では、キャストされた均質化したスラリーが乾燥されて均質化したたばこ材料のシートが形成される。キャスト工程および乾燥工程は、従来的な手順を使用して実行されうる。
【0104】
本発明によると、方法のすべての工程は、均質化したスラリーの外部加熱なしに実行される。上記でより詳細に説明するように、これは、中鎖トリグリセリド油は、室温で液体の形態であるため、油を加熱することを必要とせずに容易にスラリーに組み込むことができるために可能である。
【0105】
均質化したたばこ材料を形成するためのその他の構成成分は、スラリーのキャストの前に、必要に応じてスラリーに組み込まれうる。例えば、均質化したスラリーはさらに、エアロゾル形成体、結合剤および補強繊維のうち一つ以上を含みうる。
【0106】
均質化したたばこ材料シートの乾燥の後、シートは、後で使用されてエアロゾル発生基体のロッドを形成できるように、保管のためにボビンの上へと巻き付けられうる。上述の通り、均質化したたばこ材料のシートが後にボビンから巻き出されてエアロゾル発生基体のロッドを形成する時、均質化したたばこ材料の一定の割合はシートの損傷に起因して廃棄される。中鎖トリグリセリド油を組み込んだ、本発明による均質化したたばこ材料の廃棄の割合は、均質化したたばこ材料の40日間の保管後に、中鎖トリグリセリド油を含まない同等の均質化したたばこ材料の廃棄の割合よりも少なくとも約10パーセント低いことが好ましく、少なくとも約20パーセント低いことがより好ましく、少なくとも約30パーセント低いことが最も好ましい。
【0107】
上述のように、この廃棄レベルの低減は、定義される中鎖トリグリセリドが組み込まれた場合の均質化したたばこ材料の低減された粘着性の低減の有利な効果であると考えられる。
【0108】
ここで、例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながら本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1図1は本発明の実施形態によるエアロゾル発生物品の概略断面図を示す。
図2図2は、エアロゾル発生装置と、図1に図示した実施形態によるエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムの概略断面図である。
図3図3は、図2の電気加熱式エアロゾル発生装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
図1に示すエアロゾル発生物品10は、同軸に整列して配置された四つの要素、すなわちエアロゾル発生基体20、支持要素30、エアロゾル冷却要素40、およびマウスピース50を含む。四つの要素の各々は対応するプラグラップ(図示せず)によって囲まれている。これらの四つの要素は連続的に配置され、また外側ラッパー60によって囲まれて、エアロゾル発生物品10を形成する。エアロゾル発生10は、使用者が使用中に自分の口の中に挿入する近位端または口側端70と、口側端70に対してエアロゾル発生物品10の反対側の端に位置する遠位端80とを有する。
【0111】
使用においては、空気は、使用者によってエアロゾル発生物品を介して遠位端80から口側端70に吸い込まれる。エアロゾル発生物品の遠位端80はまた、エアロゾル発生物品10の上流端として記述されてもよく、エアロゾル発生物品10の口側端70はまた、エアロゾル発生物品10の下流端として記述されてもよい。口側端70と遠位端80の間に位置するエアロゾル発生物品10の要素を、口側端70の上流にあると記述することができ、または別の方法として、遠位端80の下流にあると記述することができる。
【0112】
エアロゾル発生基体20は、エアロゾル発生物品10の最遠の遠位端または上流端に位置する。図1に図示した実施形態において、エアロゾル発生基体20は、ラッパーによって囲まれた、捲縮した均質化したたばこ材料シートの集合体を含む。均質化したたばこ材料の捲縮したシートはエアロゾル形成体としてグリセリンを含む。エアロゾル発生基体20はまた、エアロゾル発生基体20の総乾燥質量に基づいて、少なくとも1重量パーセントの中鎖トリグリセリド油を含む。均質化したたばこ材料のための適切な製剤は、以下の表1に提供されている。
【0113】
支持要素30はエアロゾル発生基体20のすぐ下流に位置し、またエアロゾル発生基体20に当接する。図1に示す実施形態において、支持要素は中空のセルロースアセテートチューブである。支持要素30は、エアロゾル発生装置の発熱体によって貫通されることができるように、エアロゾル発生物品10の最遠の遠位端80にエアロゾル発生基体20を位置させる。下記にさらに記述するように、支持要素30は、エアロゾル発生装置の発熱体がエアロゾル発生基体20の中へと挿入される時に、エアロゾル発生基体20がエアロゾル冷却要素40に向かってエアロゾル発生物品10内で下流に押し込まれるのを防止するように作用する。支持要素30はまた、エアロゾル発生物品10のエアロゾル冷却要素40がエアロゾル発生基体20から間隙を介するためのスペーサーとして作用する。
【0114】
エアロゾル冷却要素40は支持要素30のすぐ下流に位置し、支持要素30に隣接する。使用時に、エアロゾル発生基体20から放出される揮発性物質は、エアロゾル発生物品10の口側端70に向かって、エアロゾル冷却要素40に沿って通過する。揮発性物質は、エアロゾル冷却要素40内で冷却されて、ユーザーが吸入するエアロゾルを形成してもよい。図1に図示した実施形態において、エアロゾル冷却要素は、ラッパー90によって囲まれたポリ乳酸の捲縮したシートの集合体を含む。ポリ乳酸の捲縮したシートの集合体は、エアロゾル冷却要素40の長さに沿って延びる複数の長軸方向経路を画定する。
【0115】
マウスピース50はエアロゾル冷却要素40のすぐ下流に位置し、エアロゾル冷却要素40に隣接する。図1に図示した実施形態において、マウスピース50は低濾過効率の従来の酢酸セルローストウフィルターを含む。
【0116】
エアロゾル発生物品10を組み立てるために、上述の四つの要素は外側ラッパー60内で整列され、しっかりと巻かれる。図1に図示した実施形態において、外側ラッパー60は従来の紙巻たばこ用紙である。図1に示す通り、穿孔の随意の列は、エアロゾル発生物品10の支持要素30を取り囲む外側ラッパー60の領域において提供される。エアロゾル発生物品10の外側ラッパー60の遠位端部分は、チッピングペーパーの帯によって取り囲まれる(図示せず)。
【0117】
図1に図示したエアロゾル発生物品10は、使用者によって消費されるために発熱体を含むエアロゾル発生装置と係合するように設計されている。使用時に、エアロゾル発生装置の発熱体は、エアロゾルを形成するのに十分な温度までエアロゾル発生物品10のエアロゾル発生基体20を加熱し、このエアロゾルがエアロゾル発生物品10を介して下流に引き出され、使用者によって吸入される。
【0118】
エアロゾル発生基体の加熱中、エアロゾル発生基体内の中鎖トリグリセリドは、以下の実施例に示す通り、エアロゾル発生基体内のたばこから放出されるニコチンを改善する役目を果たす。
【0119】
図2は、上述し図1に図示した実施形態によるエアロゾル発生装置110およびエアロゾル発生物品10を含むエアロゾル発生システム100の部分を図示する。
【0120】
エアロゾル発生装置110は発熱体120を含む。図2に示す通り、発熱体120は、エアロゾル発生装置110のエアロゾル発生物品受け入れチャンバー内に取り付けられている。使用時、使用者は、図2に示す通り発熱体120がエアロゾル発生物品10のエアロゾル発生基体20の中に直接挿入されるように、エアロゾル発生装置110のエアロゾル発生物品受け入れチャンバーの中にエアロゾル発生物品10を挿入する。図2に示した実施形態において、エアロゾル発生装置110の発熱体120は、ヒーターブレードである。
【0121】
エアロゾル発生装置110は、発熱体120を起動させることを可能にする電源および電子機器を含む(図3に示す)。このような起動は手動で行われてもよく、またはエアロゾル発生装置110のエアロゾル発生物品受け入れチャンバーの中に挿入されるエアロゾル発生物品10での使用者の吸い込みに応答して自動的に起こりうる。複数の開口部は、エアロゾル発生装置に提供されて空気がエアロゾル発生物品10に流れるのを可能にする(気流の方向は、図2に矢印によって図示されている)。
【0122】
エアロゾル発生物品10の支持要素40は、エアロゾル発生基体20の中へのエアロゾル発生装置110の発熱体120の挿入中に、エアロゾル発生物品10が経験する貫通力に抵抗する。これによって、エアロゾル発生物品10の支持要素40は、エアロゾル発生基体20の中へのエアロゾル発生装置110の発熱体120の挿入中に、エアロゾル発生物品10内のエアロゾル発生基体20の下流への移動に抵抗する。
【0123】
内部発熱体120がエアロゾル発生物品10のエアロゾル発生基体20の中に挿入され、発熱体120が起動されると、エアロゾル発生物品10のエアロゾル発生基体20は、エアロゾル発生装置110の発熱体120によっておよそ摂氏350度の温度に加熱される。この温度で揮発性化合物は、エアロゾル発生物品10のエアロゾル発生基体20から発生される。使用者がエアロゾル発生物品10の口側端70で吸い込むにつれ、エアロゾル発生基体20から発生された揮発性化合物は、エアロゾル発生物品10を介して下流に引き出されて凝縮し、エアロゾル発生物品10のマウスピース50を通って使用者の口の中に引き出されたエアロゾルを形成する。
【0124】
エアロゾルがエアロゾル冷却要素40を下流へと通過するにつれ、エアロゾルの温度は、エアロゾルからエアロゾル冷却要素40への熱エネルギーの伝達のため低下する。エアロゾルがエアロゾル冷却要素40に入る時、その温度はおよそ摂氏60度である。エアロゾル冷却要素40内での冷却のため、エアロゾルがエアロゾル冷却要素を出る時のエアロゾルの温度は、およそ摂氏40度である。
【0125】
図3において、エアロゾル発生装置110の構成要素は、簡略化された方法で示されている。特に、エアロゾル発生装置110の構成要素は、図3におけるスケールで描かれていない。実施形態の理解に関連しない構成要素は省略して図3を簡略化した。
【0126】
図3に示す通り、エアロゾル発生装置110はハウジング130を含む。発熱体120は、ハウジング130内のエアロゾル発生物品受け入れチャンバー内に取り付けられている。エアロゾル発生物品10(図3に破線で示す)は、発熱体120がエアロゾル発生物品10のエアロゾル発生基体20の中に直接挿入されるように、エアロゾル発生装置110のハウジング130内のエアロゾル発生物品受け入れチャンバーの中に挿入される。
【0127】
ハウジング130内には、電気エネルギー供給源140、例えば再充電可能なリチウムイオン電池がある。コントローラ150は、発熱体120、電気エネルギー供給源140、およびユーザーインタフェース160(例えばボタンまたはディスプレイ)に接続される。コントローラ150は、その温度を調節するために発熱体120に供給される電力を制御する。
【実施例
【0128】
上述の方法を使用して、以下の表1に示す組成物A~Dそれぞれに基づき、均質化したたばこシートを形成した。
【0129】
【表1】
【0130】
表1
シートB、C、およびDに使用されたMCT油は、Danisco製のGrindsted(登録商標)MCT 60 Xである。各たばこシートについて、たばこシートは、従来的な技法を使用してエアロゾル発生基体に形成された。次に、図1を参照して上述したエアロゾル発生物品が組み立てられた。シートB、CおよびDを組み込んだエアロゾル発生物品は、本発明によるものであり、均質化したたばこシート中に中鎖トリグリセリド油を含む。中鎖トリグリセリド油を含まないシートAを組み込んだエアロゾル発生物品は、比較の目的のための対照サンプルである。
【0131】
各エアロゾル発生物品を、摂氏350度および摂氏300度の両方で上記に定義される加熱試験に供した。各エアロゾル発生物品から送達されるエアロゾル中のニコチンレベルを測定し、その結果を以下の表2に示す。
【0132】
表2から分かる通り、対照サンプルに対して、均質化したたばこ材料中に中鎖トリグリセリドを組み込んだエアロゾル発生物品の大部分についてエアロゾル発生基体からのニコチン送達の増加が観察された。5重量パーセントの中鎖トリグリセリド油を含むシートDを組み込んだエアロゾル発生物品の場合、対照サンプルに対して、10パーセントを超えるニコチン送達の増加が観察された。温度が摂氏300度まで低下した時、対照サンプルに対するこのニコチンの増加は25パーセントに達した。
【0133】
【表2】
【0134】
表2
以下に説明する例示的な試験方法を使用して中鎖トリグリセリドの含有量を判定するために、上記の実施例により形成された均質化したたばこシート、またはその他の任意の均質化したたばこ材料を分析しうる。
【0135】
中鎖トリグリセリド含有量を判定するための例示的な試験方法
第一の工程で、液体窒素による低温粉砕を用いて均質化したたばこ材料を挽いてサイズを減少する。
【0136】
第二の工程で、均質化したたばこ材料をメタノール中に抽出する。この工程で、100mgの挽いたたばこ材料を、共にCDN Isotopes Incから入手可能な内部標準イソホロン-d8(10.62マイクログラム/ミリメートル)およびデカン酸-d19(20.52マイクログラム/ミリメートル)を含有する5ミリリットルのLC-MSグレードメタノールで希釈する。その後、液体抽出物を5分間攪拌し、そして液体抽出物を摂氏10度で5分間遠心分離して、固定粒子を液体抽出物から分離する。残りの液体抽出物200マイクロリットルは、800マイクロリットルのメタノールで希釈し、例えばThermoMixer(商標)において、摂氏5度かつ2000rpmで5分間混合する。
【0137】
第三の工程で、結果として得られるサンプルを、逆相分離を使用してクロマトグラフィー分析にかける。クロマトグラフィー分析を行うための適切な装置は、注入量1.5マイクロリットル、摂氏5度のオートサンプラ温度に維持された、摂氏50度で動作するUHPLC用ガードフィルターカートリッジ(10x2.1ミリメートル、0.2マイクロメートル、ThermoScientific,Waltham,MA,USAから入手可能)を備えたHypersil(商標)GOLD column(150x2.1ミリメートル、1.9マイクロメートル、ThermoScientific,Waltham,MA,USAから入手可能)である。
【0138】
第四の工程で、クロマトグラフィーカラムから分離された構成成分を、質量分析計、例えば、正のモードおよび負のモードで加熱式エレクトロスプレーイオン化(HESI)を使用して、フルスキャンおよびデータ依存型MS2モードの両方で動作するThermo QExactive(商標)質量分析計に移動する。
【0139】
最終工程で、質量分析検出からのデータを分析して、存在する化合物を同定する。化合物同定は、検出された成分を、実験的MS2フラグメンテーションデータベース内の基準化合物、および公開データベースからのインシリコの予測化学物質フラグメンテーションと比較する、半自動の段階的手法を使用して実施される。すべての推定ヒットは、Progenesis QI(商標)アルゴリズムを使用してスコア化される。化合物の半定量は、ピーク容量存在度を使用して実施されうる。
図1
図2
図3