(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】化粧品及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20231225BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20231225BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20231225BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231225BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20231225BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20231225BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20231225BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/81
A61K8/92
A61Q1/04
A45D34/04 555
(21)【出願番号】P 2020535914
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031613
(87)【国際公開番号】W WO2020032247
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2018151980
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】中田 博子
(72)【発明者】
【氏名】千葉 桐子
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-236716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0030713(US,A1)
【文献】米国特許第05096319(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0147318(US,A1)
【文献】特開2015-199708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 33/00-40/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)~(c)を含む口唇用化粧料と、
前記化粧料が充填されているソフト容器と、を備える化粧品であって、
該ソフト容器は、前記化粧料を収容する容器本体と、前記化粧料の少なくとも一部を前記容器本体の中から取り出し、塗布するための化粧具と、を有し、
前記化粧料と接している前記容器本体の少なくとも一部は、手で変形させることができるような可撓性を有し、
下記方法で測定した前記化粧料の硬度は、せん断応力を掛けて硬度を低下させた状態における第1の硬度が10gf未満であり、せん断応力を掛けた後に化粧料を静置させた後の状態における第2の硬度が前記第1の硬度よりも高く、かつ7gf以上である、化粧品;
(a)ワックス 5~50質量%;
(b)デキストリン脂肪酸エステル 0.1~5質量%;及び
(c)極性油分 40~90質量%;
(硬度測定方法)
サン科学社製レオメータを用い、負荷重:2kg、針の径:11.3φ、針入深度:3mm、上昇速度:20mm/min、測定温度:25℃で測定する。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧品において、ソフト容器がパウチ状またはチューブ状である、化粧品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化粧品において、(a)成分がマイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、ミツロウ、合成ワックス、カルナウバロウから選択される1種または2種以上である、化粧品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧品において、
前記化粧料が粉末を
さらに含む、化粧品。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品において、
前記化粧具は、使用者に前記化粧料を塗布するための塗布部と、使用者が把持するための把持部と、前記把持部と前記塗布部とを連結する支持部と、を有する、化粧品。
【請求項6】
請求項5に記載の化粧品において、前記塗布部が前記容器本体内に存在している状態において、前記容器本体は、前記塗布部に接触している前記化粧料に前記容器本体の外部からせん断応力を加えられる、化粧品。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の化粧品において、
前記化粧具は、前記容器本体に着脱可能に取り付け可能であり、
前記把持部は、前記化粧具を前記容器本体に取り付けた状態において前記容器本体の開口からの前記化粧料の漏出を防止する蓋部を兼用する、化粧品。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか一項に記載の化粧品において、
前記塗布部を前記化粧料内で保管する、化粧品。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか一項に記載の化粧品において、前記容器本体の外部から前記化粧料にせん断応力を掛けてから前記化粧具で前記化粧料を前記容器本体から取り出して使用する、化粧品。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の化粧品の使用方法であって、
前記化粧料に前記容器本体外部からせん断応力を掛ける第1の工程と、
前記せん断応力によって粘度が低下した前記化粧料の少なくとも一部を前記化粧具で前記容器本体外部に取り出す第2の工程と、を含む、化粧品の使用方法。
【請求項11】
請求項10に記載の使用方法において、前記第1の工程後に第2の工程を行い、
前記第1の工程において、前記化粧具の一部が前記容器本体内に入っている状態において、前記化粧具に接触している前記化粧料に前記容器本体外部からせん断応力を掛ける、化粧品の使用方法。
【請求項12】
請求項10に記載の使用方法において、前記化粧具の一部が前記容器本体内に入っていない状態において前記第1の工程を行い、
前記第1の工程後、前記化粧具の一部を前記容器本体内部に入れることによって前記第2の工程を行う、化粧品の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本発明は、日本国特許出願:特願2018-151980号(2018年8月10日出願)の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本書に組み込み記載されているものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、化粧品及びその使用方法に関し、特にソフト容器に充填され、ワックスを高配合していてもうまく塗布でき、好ましい使用感に調節可能な化粧品及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
化粧料の充填されている容器は多様化してきており、消費者の嗜好もさまざまである。これらのうち、パウチ状やチューブ状等のソフトな容器で排出口より直接化粧料を塗布することも可能な化粧品が存在する。
【0004】
特許文献1には、化粧用具を使用する非固形状の口唇化粧料が開示されている。特許文献2には、中味内蔵型の紅筆タイプ口紅に適したペースト状口紅組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-34522号公報
【文献】特開昭61-236716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
塗布容易性を高めるために流動性を高めた(粘度ないし硬度を低くした)化粧料は、安定性に改善の余地があるものであった。また、一般的に、流動性が高いだけの化粧料は、化粧後に化粧移り(化粧落ち)及び化粧崩れしやすいという問題がある。したがって、特許文献1に記載の口唇化粧料において化粧用具で化粧料を取りやすくするために単に化粧料の流動性を低くするだけでは同様の問題が生ずる。一方、固化剤を化粧料に多く配合して化粧移り及び化粧崩れを抑制することが一般的に行われている。しかしながら、固化剤を多く配合するだけでは化粧料の粘度ないし硬度が高くなり、塗布しにくい化粧料となってしまう。すなわち、一般的に、化粧容易性と化粧もちとはトレードオフの関係がある。
【0007】
特許文献2に記載の中味内蔵型紅筆タイプ口紅においては、紅筆の部分に塗布に適した低粘度ないし低硬度の化粧料を供給することが困難である。また、化粧後紅筆に残存した化粧料が乾燥及び固化すると次回の化粧時に紅筆に化粧料を供給することが困難となるため、化粧のたびに紅筆の洗浄が必要となる。
【0008】
そこで、化粧時には塗布しやすく、化粧後には化粧もちがよく、さらに化粧具の利便性の高い化粧品が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが前述の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、(a)ワックス、(b)デキストリン脂肪酸エステル、(c)極性油分を特定量含み、硬度が70~3500gfであることにより、安定性が高く、好ましい使用感に調節可能な化粧品を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明にかかる化粧品は、次の(a)~(c)を含み、下記硬度を有する化粧料と、該化粧料が充填されているソフト容器と、を備える化粧品である。
該ソフト容器は、前記化粧料を収容する容器本体と、前記化粧料の少なくとも一部を前記容器本体の中から取り出し、塗布するための化粧具と、を有する。
該化粧料は、(a)ワックス 5~50質量%、
(b)デキストリン脂肪酸エステル 0.1~5質量%、及び
(c)極性油分 40~90質量%
を含有する。
下記方法で測定した化粧料の硬度は、せん断応力を掛けて硬度を低下させた状態における第1の硬度が10gf未満である。下記方法で測定した化粧料の硬度は、せん断応力を掛けた後に化粧料を静置させた後の状態における第2の硬度が第1の硬度よりも高く、かつ7gf以上である。
(硬度測定方法)
サン科学社製レオメータを用い、負荷重:2kg、針の径:11.3φ、針入深度:3mm、上昇速度:20mm/min、測定温度:25℃で測定する。
【0011】
本開示の化粧品の使用方法は、該化粧料に容器本体外部からせん断応力を掛ける第1の工程と、せん断応力によって粘度が低下した化粧料の少なくとも一部を化粧具で容器本体外部に取り出す第2の工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ソフト容器に充填され、ワックスを高配合していてもうまく塗布でき、好ましい使用感に調節可能な化粧品を得ることができる。
【0013】
本開示の化粧料は、化粧に適した流動性を有しているにも関わらず、化粧持ちが優れている。
【0014】
本開示の化粧品は、化粧料と化粧具が一体的であると共に、化粧具の洗浄が不要であるので、高い利便性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1におけるII-II線に沿った本開示の化粧品の概略断面図。
【
図5】使用時における本開示の化粧品の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記化粧品において、ソフト容器がパウチ状またはチューブ状であることが好適である。
【0017】
前記化粧品において、(a)成分がマイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、ミツロウ、合成ワックス、カルナウバロウから選択される1種または2種以上であることが好適である。
【0018】
前記化粧品において、化粧料は粉末をさらに含むことが好適である。
【0019】
前記化粧品において、化粧具は、使用者に化粧料を塗布するための塗布部と、使用者が把持するための把持部と、把持部と塗布部とを連結する支持部と、を有することが好適である。
【0020】
前記化粧品において、塗布部が容器本体内に存在している状態において、容器本体は、塗布部に接触している化粧料に容器本体の外部からせん断応力を加えられることが好適である。
【0021】
前記化粧品において、化粧具は、容器本体に着脱可能に取り付け可能であり、把持部は、化粧具を容器本体に取り付けた状態において容器本体の開口からの化粧料の漏出を防止する蓋部を兼用することが好適である。
【0022】
前記化粧品において、塗布部は化粧料内で保管される。
【0023】
前記化粧品において、容器本体の外部から化粧料にせん断応力を掛けてから化粧具で化粧料を容器本体から取り出して使用することが好適である。
【0024】
前記使用方法は、化粧料に容器本体外部からせん断応力を掛ける第1の工程と、せん断応力によって粘度が低下した化粧料の少なくとも一部を化粧具で容器本体外部に取り出す第2の工程と、を含むことが好適である。
【0025】
前記使用方法において、第1の工程後に第2の工程を行い、第1の工程において、化粧具の一部が容器本体内に入っている状態において、化粧具に接触している化粧料に容器本体外部からせん断応力を掛けることが好適である。
【0026】
前記化粧品の使用方法において、化粧具の一部が容器本体内に入っていない状態において第1の工程を行い、第1の工程後、化粧具の一部を容器本体内部に入れることによって第2の工程を行うことが好適である。
【0027】
以下の説明において、図面参照符号は発明の理解のために付記しているものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。また、図面は、本開示の化粧品についての理解を助けるためのものであって、図示の形状、寸法、縮尺等図面の形態に化粧品を限定することを意図するものではない。各実施形態において、同じ要素には同じ符号を付してある。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明にかかる化粧品は、次の(a)~(c)を含む化粧料が、ソフト容器に充填されている化粧品である:
(a)ワックス 5~50質量%;
(b)デキストリン脂肪酸エステル 0.1~5質量%;及び
(c)極性油分 40~90質量%;
下記方法で測定した前記化粧料の硬度は、せん断応力を掛けて硬度を低下させた状態における第1の硬度が10gf未満であり、せん断応力を掛けた後に硬度を回復させた状態における第2の硬度が第1の硬度よりも高く、かつ7gf以上である。
(硬度測定方法)
サン科学社製レオメータを用い、負荷重:2kg、針の径:11.3φ、針入深度:3mm、上昇速度:20mm/min、測定温度:25℃で測定する。
【0029】
((a)ワックス)
ワックスは、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。
【0030】
(a)成分としては、例えば、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、ミツロウ、合成ワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、セレシン、シュガーワックス等が挙げられる。
【0031】
これらのうち、(a)成分がマイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、ミツロウ、カルナウバロウから選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0032】
(a)成分の配合量は、化粧料の質量に対して5~50質量%である。また、10質量%以上であることが好ましい。(a)成分の配合量が少なすぎると、安定性や化粧もちに劣る場合がある。また、(a)成分の配合量は、化粧料の質量に対して40質量%以下であることが好ましい。(a)成分の配合量が多すぎると、硬度が高くなりすぎる場合がある。
【0033】
((b)デキストリン脂肪酸エステル)
デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンまたは還元デキストリンと高級脂肪酸とのエステルであり、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用できる。
【0034】
(b)成分としては、例えば、パルミチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン等が挙げられる。
【0035】
(b)成分の配合量は、化粧料の質量に対して0.1~5質量%である。また、(b)成分の配合量は、0.5質量%以上であることが好ましい。(b)成分の配合量が少なすぎると、使用時に揉んでも硬度を下げることができず、容器からうまく出して塗布することができない場合がある。また、(b)成分の配合量は、化粧料の質量に対して3質量%以下、好ましくは2質量%以下であることが好ましい。(b)成分の配合量が多すぎると、固化せず、容器からうまく出して塗布することができない場合がある。
【0036】
((c)極性油分)
極性油分としては、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0037】
これらのうち、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、リンゴ酸ジイソステアリルを用いることが好ましい。
【0038】
(c)成分の配合量は、化粧料の質量に対して40~90質量%である。また、(c)成分の配合量は、50質量%以上であることが好ましい。(c)成分の配合量が少なすぎると、硬度が高くなりすぎる場合がある。また、(c)成分の配合量は、化粧料の質量に対して85質量%以下であることが好ましい。(c)成分の配合量が多すぎると、固化しない場合がある。
【0039】
本開示の化粧料はチキソトロピー性(揺変性)を有する。本開示の化粧料は、外力(せん断応力)を加えることによって、硬度ないし粘度を低下させることができる。その後せん断応力が例えば1週間以上加わらなければ、化粧料の硬度ないし粘度は、低下した硬度ないし粘度よりも高くなる。
【0040】
本発明の化粧料は、化粧料を調製後せん断応力を加えていない状態における、下記測定方法で測定した第3の硬度が70~3500gfである。調製直後の化粧料は、例えば、100gf以上又は200gf以上の第3の硬度を有することができる。調製直後の化粧料は、例えば、3000gf以下、2000gf以下、1000gf以下、800gf以下、500gf以下、400gf以下、又は300gf以下の第3の硬度を有することができる。第3の硬度が70gf未満であると、安定性および化粧もちに劣る場合がある。第3の硬度が3500gfを超えると、使用時に手で揉んでも硬度を下げることができず、容器からうまく出して塗布することができない場合がある。
【0041】
本開示の化粧料は、化粧料にせん断応力を加えて硬度を下げた状態(例えば、硬度が最も低くした状態)における、下記測定方法で測定した第1の硬度が10gf未満である。せん断応力を掛けた直後の化粧料は、例えば、1gf以上、2gf以上、又は3gf以上の第1の硬度を有することができる。せん断応力を掛けた直後の化粧料は、例えば、8gf以下、6gf以下、又は5gf以下の第1の硬度を有することができる。これにより、化粧料を化粧具で容器から取りやすくすると共に、塗布しやすくすることができる。
【0042】
本開示の化粧料は、せん断応力を掛けて硬度を下げた後に、(容器を密閉した状態で、又は化粧料を乾燥させない状態で)1週間以上静置した状態における、下記測定方法で測定した化粧料の第2の硬度は第1の硬度よりも高く、かつ7gf~100gfである。せん断応力を掛けて第1の硬度まで下げた後に硬度が回復した化粧料は、例えば、10gf以上の第2の硬度を有することができる。せん断応力を掛けて硬度を下げた後に硬度が回復した化粧料は、例えば、80gf以下、又は60gf以下の第2の硬度を有することができる。これにより、化粧料に再度手でせん断応力を掛けやすい状態にすることができる。
【0043】
なお、せん断応力によって硬度が低下した化粧料は、例えば、製造時と同様に加熱して冷却することによって調製直後の硬度と同等の硬度(第3の硬度)に戻すことができる。
【0044】
(硬度測定方法)
測定用の容器に充填された前記化粧料を1時間静置した後、サン科学社製レオメータを用い、負荷重:2kg、針の径:11.3φ、針入深度:3mm、上昇速度:20mm/min、測定温度:25℃で測定する。
【0045】
本発明の化粧品は、使用時に容器を揉んで用いるものである。容器を手で揉んでシェアをかけることで、ワックスが高配合されている、そのままではうまく容器から出すことのできない化粧料の硬度を下げ、容易に塗布することが可能になる。
すなわち、手で揉んでシェアをかけた後(塗布時)の化粧料は、上記方法で測定した硬度が1~9gfであることが好ましい。
なお、本願の化粧料はワックスが高配合されているため、皮膚上の凹凸へのにじみが出ることがなく、化粧もちが良好で、膜厚を出すことが可能である。
【0046】
図1に、本開示の化粧品の概略平面図を示す。
図2に、
図1におけるII-II線に沿った概略断面図を示す。
図3に、化粧具の概略平面図を示す。
図1~
図3に示す形態は一例である。
【0047】
本開示の化粧品1は、本開示の化粧料2と、化粧料2が収容されたソフト容器3と、を備える。
【0048】
本発明の化粧料が充填されているソフト容器3は、化粧料2を収容する容器本体11、及び化粧料2の少なくとも一部を容器本体11の中から取り出し、皮膚に塗布するための化粧具20を有する。容器3としては、例えば、パウチ容器、チューブ状容器等が挙げられる。これらのうち、充填の容易性からパウチ容器を用いることが好ましい。
【0049】
容器本体11は、収容している化粧料2にせん断応力を加えられるような可撓性を有する。すなわち、容器本体11は、化粧料2と接している少なくとも一部が使用者によって変形させることができるような可撓性を有する。また、容器本体11は、化粧料2を取り出すための開口11aを有する。
【0050】
化粧具20は、容器本体11の内部から化粧料2を保持し、使用者に化粧料2を塗布するための塗布部23、使用者が化粧具20を把持して、操作するための把持部21と、塗布部23と把持部21とを連結する支持部22と、を有する。化粧具20は、容器本体11に着脱可能に取り付けることができる。化粧具20は、化粧具20を容器本体11に取り付けた状態において化粧料2がソフト容器3から漏出することを防止する機能を有すると好ましい。化粧具20は、化粧具20を容器本体11に取り付けた状態において、容器本体11内の化粧料2が乾燥することを防止する機能を有すると好ましい。例えば、把持部21が容器本体11の開口11aと嵌合及び/又は螺合し、容器本体11の蓋部を兼用することができる。
【0051】
塗布部20を容器本体11に取り付けた状態において、塗布部23は、容器本体11の内部にある化粧料2と接触可能な位置にあると好ましい。特に、塗布部23は、塗布部23に接触している化粧料2及び/又は塗布部23の周囲にある化粧料2に対して、容器本体11の外部からせん断応力を掛けやすい位置にあると好ましい。これにより、容器本体11を揉んで化粧料2の粘度ないし硬度を低下させた化粧料2を塗布部23で容器本体11の外へ取り出すことができる。塗布部23は、塗布可能な量の化粧料2を付着できるものが好ましい。塗布部23は、例えば、チップ、パフ、スポンジ、綿、筆等の形態をとることができる。化粧具20は、容器本体11内の塗布部23の位置を変えることができるような機構を有してもよい。例えば、化粧具20は、軸部22の長さを調節可能な機構を有してもよい。
【0052】
容器本体11は、内部に、開口11aと連結された筒状のスリーブ(不図示)を有することができる。例えば、軸部22が樹脂等の折れやすい材料で形成されている場合に、化粧具20が容器本体11に取り付けられている状態において、スリーブは軸部22の折れ曲がり等の破損を抑制することができる。スリーブは、塗布部23と接触した化粧料に容器本体11外部からせん断応力を掛けられるように、塗布部23をスリーブ内に収容しないような長さを有すると好ましい。
【0053】
容器本体11と化粧具20とを一体的に取り扱うことができるようにすることにより、化粧具と化粧料とを別個に持ち運ぶ必要がなくなり、携帯性及び利便性を高めることができる。また、塗布部23を化粧料2中で保管することにより、塗布部23の乾燥を抑制することができる。これにより、化粧具20使用後の塗布部23の洗浄作業を省略でき、使用者の利便性を高めることができる。
【0054】
本発明にかかる化粧料は、粉末を含むことが好ましい。粉末としては、通常化粧料に使用されるものを用いることができる。
【0055】
粉末としては、例えば、セリサイト、マイカ、合成マイカ、タルク、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、N-アシルリジン等の有機粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン等の複合粉体類等が挙げられる。
【0056】
本発明にかかる粉末には、色材を配合しても良い。色材は、製剤を着色することを目的に配合されるものである。色材としては、顔料、パール顔料、これらをレーキ化したものなど、化粧料に通常配合されるものを使用することができる。
【0057】
色材としては、例えば、無機白色系顔料(二酸化チタン、酸化亜鉛)、無機赤色系顔料(酸化鉄(べンガラ)、チタン酸鉄)、無機褐色系顔料(γ-酸化鉄)、無機黄色系顔料(黄酸化鉄、黄土)、無機黒色系顔料(黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン)、無機紫色系顔料(マンゴバイオレット、コバルトバイオレット)、無機緑色系顔料(酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト)、無機青色系顔料(群青、紺青)、パール顔料(酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔)、金属粉末顔料(アルミニウムパウダー、カッパーパウダー)、有機顔料(赤色202号、赤色205号、赤色220号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号)、ジルコニウム、バリウム、アルミニウムレーキの有機顔料(赤色3号、赤色104号、赤色227号、赤色401号、橙色205号、黄色4号、黄色202号、緑色3号、青色1号)、天然色素(クロロフィル、カルチノイド系(β-カロチン)、カルサミン、コチニール、カルコン、クルクミン、ベタニン、フラボノール、フラボン、アントシアニジン、アントラキノン、ナフトキノン)、機能性顔料(窒化ホウ素、フォトクロミック顔料、合成フッ素金雲母、鉄含有合成フッ素金雲母、微粒子複合粉体(ハイブリッドファインパウダー))等が挙げられる。
【0058】
本発明にかかる化粧料には、上記必須成分以外に、通常化粧料に使用される成分、例えば、極性油分以外の油性成分、界面活性剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、保湿剤、紫外線吸収剤、美容成分、繊維、香料、水等を必要に応じて配合できる。
【0059】
極性油分以外の油性成分としては、例えば、液体油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油等が挙げられる。
【0060】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0061】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0062】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0063】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)、アクリルシリコーン類等が挙げられる。
【0064】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体等のポリオキシエチレン系界面活性剤、オクチルポリグリコシド等のアルキルポリグリコシド類、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル等のポリグリセリン系界面活性剤、マルチトールヒドロキシアルキルエーテル等の糖アルコールヒドロキシアルキルエーテル類、脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
また、高級脂肪酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、リン酸エステル類、アルキル硫酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤、アミノ酸類、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアミンオキサイド等のカチオン性界面活性剤、その他の界面活性剤を配合することもできる。
【0065】
天然の水溶性高分子としては、例えば、植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸);微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等);動物系高分子(例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等)等が挙げられる。
【0066】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等が挙げられる。
【0067】
合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000等);アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等);ポリエチレンイミン;カチオンポリマー等が挙げられる。
【0068】
増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0069】
皮膜剤としては、例えば、シリコーン化プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、ジメチルアミノメタクリレート4級化塩、ビニルピロリドン・メタクリル酸-N,N-ジメチル-エチルアンチニオエチル塩共重合体、シリコーン/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリルアルキル)コポリマー、デキストリン、(ビニルピロリドン/VA)コポリマー、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エチル、(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸プロピルトリメチコン)コポリマー、ポリ酢酸ビニル、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー、ポリエーテルグラフトアクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、フロロ変成シリコーンレジン等が挙げられる。
【0070】
保湿剤としては、例えば、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
【0071】
紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等が挙げられる。
【0072】
その他の配合可能成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等);美白剤(例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);血行促進剤(ニコチン酸、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸β-ブトキシエステル、ミノキシジル又はその類縁体、ビタミンE類、γ-オリザノール、アルコキシカルボニルピリジンN-オキシド、塩化カルプロニウム、及びアセチルコリン又はその誘導体等);各種抽出物(例えば、ショウガ、ウバク、オウレン、シコン、バーチ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、ボタン、海藻等)、賦活剤(例えば、パンテニールエチルエーテル、ニコチン酸アミド、ビオチン、パントテン酸、ローヤルゼリー、コレステロール誘導体等);抗脂漏剤(例えば、ピリドキシン類、チアントール等)等が挙げられる。
【0073】
本開示の化粧品の使用方法について説明する。
図4に、本開示の化粧品の使用方法を示すフローチャートを示す。
図5に、第1の工程における本開示の化粧品の概略断面図を示す。
【0074】
まず、ソフト容器3内部の化粧料2に、容器本体11の外部からせん断応力を加える(第1の工程;S1)。例えば、容器本体11内の化粧料2が変形するように、容器本体11を手で揉むことによって化粧料2にせん断応力を加えることができる。これより、化粧料2のチキソトロピー性によって化粧料2の粘度ないし硬度を低下させることができる。
【0075】
次に、せん断応力によって粘度ないし硬度が低下した化粧料の少なくとも一部を化粧具20で容器本体11の外部に取り出す(第2の工程;S2)。使用者は、取り出した化粧料で直接的に化粧することができる。これにより、低粘度の化粧料で化粧することができるので、化粧が容易となる。一方で、本開示の化粧料は固化剤を多く含有しており、化粧移り及び化粧崩れが抑制されている。
【0076】
第1の工程は、化粧具20をソフト容器3に取り付けた状態において行うと好ましい。塗布部23が容器本体11の内部にある場合、
図5に示すように、塗布部23の近辺にある化粧料2にせん断応力が加わるように容器本体11を揉むと好ましい。これにより、塗布部23周囲の化粧料2の粘度ないし硬度を低下させることができる。把持部21が蓋の機能を果たす場合には、ソフト容器3を揉んでいる際に化粧料2の漏出も防止することができる。
【0077】
塗布部23が容器本体11内に入っていない状態において化粧料2にせん断応力を加えた場合には、化粧料2の粘度ないし硬度を低下させた後に、塗布部23を容器本体11に入れて、化粧料2を取り出すことができる。
【0078】
本発明の化粧品は、口紅、リップグロス、下地用のリップベース、口紅オーバーコート、リップクリームなどの唇用化粧品、アイシャドー、頬紅、ファンデーション、アイライナー等のメーキャップ化粧料、スキンケア化粧料、毛髪化粧料などに応用できる。
【0079】
本開示の化粧品及びその使用方法によれば、使用時には化粧料の粘度が低いので、化粧が容易になっている。一方、化粧後には、化粧時には低粘度であるにもかかわらず、化粧移り(化粧落ち)及び化粧崩れが抑制されている。
【0080】
本開示の化粧品は、化粧具を備えており、携帯性に優れている。
【0081】
化粧具の塗布部は化粧料内で保管することができる。これにより、使用毎の化粧具の洗浄が不要であるので、本開示の化粧品は利便性に優れている。また、塗布部がある部分のみに力を加えればよいので、使用容易性にも優れている。
【実施例】
【0082】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する重量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた評価試験方法について説明する。
【0083】
評価(1):硬度測定試験
調製直後の試料を充填固化した後の(せん断応力を加えていない状態の)「硬度」(第3の硬度)と、試料を容器に充填固化後、手で30回揉み、容器から出した後の「圧縮後の硬度」(第1の硬度)を、以下の方法で測定した。
なお、圧縮後の硬度は、5回の平均値を記載した。
(硬度測定方法)
サン科学社製レオメータを用い、負荷重:2kg、針の径:11.3φ、針入深度:3mm、上昇速度:20mm/min、測定温度:25℃で測定する。
【0084】
評価(2):圧縮のしやすさ
専門パネル10名が手で30回揉んだ際の圧縮のしやすさを評価した。
S:10人中8人以上が良好であると回答した。
A:10人中6人以上が良好であると回答した。
B:10人中4人以上が良好であると回答した。
C:10人中4人未満が良好であると回答した。
【0085】
評価(3):安定性
試料を調製し、40℃で30日間保管後の安定性について評価した。
A:問題なく、良好であった。
B:分離するなどの性状に変化があり不合格であった。
【0086】
評価(4):使用感(化粧もち、塗布時の膜厚感)
専門パネル10名が唇に試料を塗布し、塗布時の使用感(化粧もち、塗布時の膜厚感)を評価した。なお、試料は、手で30回揉んだ後に唇に塗布された。
S:10人中8人以上が良好であると回答した。
A:10人中6人以上が良好であると回答した。
B:10人中4人以上が良好であると回答した。
C:10人中4人未満が良好であると回答した。
【0087】
本発明者らは、下記表1および表2に示す化粧料(唇用化粧料)を常法により製造し、ソフト容器(パウチ状容器)に充填し、上記評価方法にて測定した。結果を表1および表2に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
試験例1-1の評価結果より、ワックスのみを多く含む化粧料は、使用時に硬度が高すぎることがわかる。このため、容器を手で揉んでも、硬すぎてうまく容器から出して塗布できなかった。
これに対して、試験例1-1にデキストリン脂肪酸エステルを添加した試験例1-2は、使用時に手で揉むことで硬度が下がり、塗布しやすいものであった。
また、試験例1-2においてデキストリン脂肪酸エステルを増量した試験例1-5は、液状となってしまい、化粧もち及び膜厚感に劣っていた。
デキストリン脂肪酸エステルが配合されていない試験例1-6は、硬度は問題なかったが、容器を手で揉んでも、硬すぎてうまく容器から出して塗布できなかった。
【0091】
ワックスが配合されておらず、デキストリン脂肪酸エステルが多く配合されている試験例1-3及び1-4は圧縮後の硬度が低くならなかった。
【0092】
これらのことから、本発明の化粧品は、(a)ワックス 5~50質量%、(b)デキストリン脂肪酸エステル 0.1~5質量%、(c)極性油分 40~90質量%を含み、上記方法で測定した硬度が70~3500gfである化粧料が、ソフト容器に充填されている化粧品である。
【0093】
次に、本発明者らは、本願発明等の化粧品の安定性や使用感について検討した。本発明者らは、下記表3に示す化粧料(唇用化粧料)を常法により製造し、ソフト容器(パウチ状容器)に充填し、上記評価方法にて評価した。結果を表3に示す。
【0094】
【0095】
ワックスが配合されておらず、デキストリン脂肪酸エステルが多く配合された試験例2-1は、硬度が50と低く、シェアをかけなくても容易にチューブより出すことができ、安定性も試験例1-2と同等であったが、化粧持ちが劣っていた。
デキストリン脂肪酸エステルが配合されていない試験例2-2は、液状となってしまい、化粧もち及び塗布時の膜厚感に劣っていた。
【0096】
次に、ワックスの種類について検討を行った。
本発明者らは、下記表4に示す化粧料(唇用化粧料)を常法により製造し、ソフト容器(パウチ状容器)に充填し、上記評価方法にて測定した。結果を表4に示す。
【0097】
【0098】
表4の評価結果より、本願発明の化粧料は、さまざまな種類のワックスで調製可能であることが明らかになった。
【0099】
次に、ワックスの配合量について検討を行った。
本発明者らは、下記表5に示す化粧料(唇用化粧料)を常法により製造し、ソフト容器(パウチ状容器)に充填し、上記評価方法にて測定した。結果を表5に示す。
【0100】
【0101】
表5の評価結果より、試験例4-1は、ワックスの量が多すぎたため硬度が高くなりすぎ、シェアをかけてもチューブ容器に充填して使用するのに適した化粧料を得ることができないことがわかった。また、試験例4-4は、ワックスの量が少なすぎたため液状となり、化粧もち及び塗布時の膜厚感に劣っていた。
【0102】
したがって、本発明にかかる化粧品は、ワックスの配合量が5~50質量%、第3の硬度は70~3500gfであることを特徴とする。
【0103】
試験例1-2の化粧料について、圧縮後の硬度(第1の硬度)を測定した後、容器を密閉した状態で4週間静置して硬度を回復させた第2の硬度を測定した。硬度の測定方法は上記と同じである。結果を表6に示す。
【0104】
【0105】
圧縮(せん断応力)により低下した硬度は、静置することによって第1の硬度よりも高くなることが確認された。回復した第2の硬度は、調製直後の第3の硬度よりも低く、揉みやすい硬度であった。また、硬度が回復した化粧料に再度せん断応力を掛けると、また使用に適した第1の硬度まで下げることができた。
【0106】
唇用化粧料とした上記試験例1-2の化粧料を本開示のチューブ状ソフト容器入れた、
図1~
図3に示すような形態を有する化粧品と、該化粧料を一般的なチューブ容器に入れた化粧品との使用性を比較した。使用した一般的なチューブは、歯磨き粉等に多用されているチューブであり、化粧具はチューブとは別個の用具となっている。
【0107】
本開示の化粧品において、化粧具をチューブ状ソフト容器に取り付けた状態において、チップ(塗布部)に対応する位置のみを数回揉んだ後に、チップを容器本体から取り出した。チップに付着した化粧料は粘度が低く、塗布しやすい状態にあった。
【0108】
一方、一般的なチューブにおいては、開口から化粧料を出しやすくするためには、チューブを全体的に揉む必要があり、揉む回数及び揉んだ箇所は本開示の化粧品よりも多くなった。また、一般的なチューブの開口部分は、キャップで覆われており、また手で変形不可能な硬度を有していたので、開口部分は揉むことができなかった。すなわち、開口内に存在していた化粧料にはせん断応力を加えることができなかった。このため、一般的なチューブから最初に押し出された開口部分に存在していた化粧料は、粘度が高く、塗布しにくいものであった。また、塗布に使用したチップに付着した化粧料は、放置すると硬化ないし固化してしまうため、洗浄する必要があった。これより、本開示の化粧品によれば、化粧の容易性及び利便性を高めることができることが分かった。
【符号の説明】
【0109】
1 化粧品
2 化粧料
3 ソフト容器
11 容器本体
11a 開口
20 化粧具
21 把持部
22 支持部
23 塗布部