(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】トレーサガスを拡散するための方法、及びメンブレンの漏れ試験のための方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20231225BHJP
F17C 13/02 20060101ALI20231225BHJP
B65D 90/06 20060101ALI20231225BHJP
B65D 90/48 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G01M3/20 W
F17C13/02 302
B65D90/06 A
B65D90/48 Z
(21)【出願番号】P 2020550697
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 FR2019050622
(87)【国際公開番号】W WO2019180372
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】フレイス ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ハスラー デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ジンベール シャルル
(72)【発明者】
【氏名】デルトレ ブルーノ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-036734(JP,A)
【文献】特開昭57-208429(JP,A)
【文献】実開昭57-063245(JP,U)
【文献】特開昭60-222741(JP,A)
【文献】特開昭57-192837(JP,A)
【文献】特開平04-040334(JP,A)
【文献】特表2016-503368(JP,A)
【文献】米国特許第04413503(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00~ 3/40
B65D 88/00~90/66
F17C 1/00~13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア構造体(4)に取り付けられた複数のタンク壁(9,10,11,12,13,14,15,16,17)により画定された多面体形状を有する耐漏性の断熱タンクの断熱空間内へトレーサガスを注入するための方法であって、
各タンク壁は断熱バリア(2,6)を備えており、
前記断熱バリア(2,6)は、前記キャリア構造体(4)に固定された断熱要素(3,7)
を備えており、
各タンク壁は、前記断熱バリア(2,6)の前記断熱要素(3,7)に対して設けられているメンブレン(5,8)
を備えており、
各タンク壁の前記断熱バリア(2,6)は他のタンク壁(9,10,11,12,13,14,15,16,17)の前記断熱バリア(2,6)と繋がって共に前記断熱空間を画定し、
前記複数のタンク壁は底壁(11)を含み、
前記注入方法は、
トレーサガスを注入するための少なくとも1つの装置(19,28)を前記底壁(11)の前記メンブレン(5,8)に
設けられた孔(20)に貫通させて前記底壁(11)の前記断熱バリア(2,6)に入れて用いることにより、トレーサガスを前記断熱空間に注入して、前記
断熱タンクの内部空間から前記断熱空間へ導入して輸送するステップ
を含み、
前記トレーサガスを注入するための少なくとも1つの装置(19)を用いてトレーサガスを注入するステップの前に、
前記メンブレン(5,8)に設けられた孔(20)に持上具(25)を通して導入し、前記底壁(11)の前記メンブレン(5,8)と前記断熱バリア(2,6)との間に当該持上具(25)を挟むように配置することにより、
前記メンブレンにおける領域であって前記トレーサガスを注入するための装置(19)
が貫通する前記孔(20)が設けられた領域において前記断熱バリア(2,6)から前記メンブレン(5,8)を離す
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記トレーサガスは、ヘリウム、アンモニア、及び窒素と水素分子との混合気から選択されたものである、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記底壁(11)は2つの対称軸を有する矩形の形状を有し、前記2つの対称軸は前記底壁を4つの領域に区切り、
前記トレーサガスは、前記トレーサガスを注入するための少なくとも4つの各装置(19,28)を前記底壁(11)の前記メンブレン(5,8)に通して当該底壁(11)の前記断熱バリアに入れて用いることにより注入され、前記底壁の4つの各領域に、前記トレーサガスを注入するための少なくとも4つの装置(19,28)が1つずつ備え付けられる、
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記トレーサガスを注入するための装置又は前記トレーサガスを注入するための各装置(19,28)は連結部材(22,31)を備えており、
前記連結部材(22,31)は、前記底壁(11)の前記メンブレン(5,8)に形成された
前記孔(20,29)の周部において当該メンブレン(5,8)に耐漏性に溶接されており、前記連結部材(22,31)は、トレーサガスの供給源に接続された管(18)と組み合わされている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記連結部材(22)と前記メンブレン(5,8)に形成された前記孔(20)とに前記持上具(25)を通して導入し、当該持上具(25)のフック(27)が前記底壁(11)の前記メンブレン(5,8)と前記断熱バリア(2,6)との間に挿入されるように当該持上具(25)を位置決めする、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
キャリア構造体(4)に取り付けられた複数のタンク壁(9,10,11,12,13,14,15,16,17)により画定された多面体形状を有する耐漏性の断熱タンクのメンブレンの耐漏性を試験するための方法であって、
各タンク壁は断熱バリア(2,6)を備えており、
前記断熱バリア(2,6)は、前記キャリア構造体(4)に固定された断熱要素(3,7)と、前記断熱バリア(2,6)の前記断熱要素(3,7)に対して設けられているメンブレン(5,8)と、を備えており、
前記タンク壁の前記断熱バリア(2,6)は互いに繋がって共に前記断熱空間を画定し、
前記複数のタンク壁は底壁(11)を含み、
前記耐漏性を試験するための方法は、
-請求項1から5までのいずれか1項記載のトレーサガスを注入するための方法を実施して前記断熱空間にトレーサガスを注入するステップと、
-前記メンブレン(5,8)と共に耐漏性の検出チャンバ(61)を画定するように構成された検出フード(55)と、耐漏性の前記検出チャンバ(61)に結合されると共に分析装置(56)に結合される真空ポンプ(57)と、を備えた漏れ検出装置(54)を準備するステップと、
-耐漏性の前記検出チャンバ(61)が溶接ビードの試験対象の部分(62)と対向配置されるように前記検出フード(55)を前記メンブレン(5,8)の前記断熱空間に対向する面に対して配置するステップと、
-前記真空ポンプ(57)を用いて前記検出チャンバ(61)を負圧下におくステップと、
-前記検出チャンバ(61)内に存在する気相を前記分析装置(56)に向かって移送するステップと、
-前記分析装置(56)を用いて前記気相を分析し、当該気相中のトレーサガスの濃度を表す変数を出力するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
前記検出フード(55)は中央コア部(59)と耐漏性シール(60)とを備えており、
前記
中央コア部(59)と前記耐漏性シール(60)とは互いに取り付けられており、前記メンブレン(5,8)と共に前記検出チャンバ(61)を画定するように配置されている、
請求項6記載のメンブレンの耐漏性を試験するための方法。
【請求項8】
前記耐漏性シール(60)は、前記中央コア部(59)に取り付けられたケーシング(63)と、前記ケーシング(63)を延在する周囲耐漏性リップ(64)と、を備えている、
請求項7記載のメンブレンの耐漏性を試験するための方法。
【請求項9】
前記周囲耐漏性リップ(64)は前記検出フード(55)の外側に向かって曲げられ、前記検出チャンバ(61)が負圧下におかれたときに前記周囲耐漏性リップ(64)が前記メンブレン(5,8)に対して撓んで押さえ付けられるように構成されている、
請求項
8記載のメンブレンの耐漏性を試験するための方法。
【請求項10】
前記溶接ビードの前記部分(62)は、前記メンブレンの少なくとも1つのコルゲーションによって横切られ、前記周囲耐漏性リップ(64)は当該コルゲーションの幾何学的形態にフィットする形状である、
請求項
8又は9記載のメンブレンの耐漏性を試験するための方法。
【請求項11】
前記メンブレン(8)の前記少なくとも1つのコルゲーションは前記タンクの内部に向かって突出し、
前記周囲耐漏性リップ(64)は、当該コルゲーションの形状に対応する形状を有する少なくとも2つの凹み(65)を有し、前記検出フード(55)は、前記凹み(65)が当該コルゲーションを跨ぐように前記メンブレン(8)に対して配置される、
請求項10記載のメンブレンの耐漏性を試験するための方法。
【請求項12】
前記メンブレン(5,8)の前記少なくとも1つのコルゲーションは、前記タンクの外部に向かって突出し、
前記周囲耐漏性リップ(64)は、当該コルゲーションの形状に対応する形状を有する少なくとも2つの突出領域(69)を有し、前記検出フード(55)は、当該突出領域が当該コルゲーションに挿入されるように前記メンブレン(5)に対して配置される、
請求項10記載のメンブレンの耐漏性を試験するための方法。
【請求項13】
前記耐漏性シール(60)は20~50のショアA硬さを有するエラストマ材料から成る、
請求項7から12までのいずれか1項記載のメンブレンの耐漏性を試験するための方法。
【請求項14】
前記検出フード(55)には、前記周囲耐漏性リップ(64)を前記メンブレン(8)に押さえ付けることができる挟持システム(66)が備えられており、
前記検出チャンバ(61)の耐漏性を保証するため、前記検出チャンバ(61)を負圧下におく前に前記挟持システム(66)を作動させる、
請求項
8から
12までのいずれか1項記載のメンブレンの耐漏性を試験するための方法。
【請求項15】
前記検出チャンバ(61)は絶対圧力値が最大50~1000Paの負圧下におかれる、
請求項6から14までのいずれか1項記載のメンブレンの耐漏性を試験するための方法。
【請求項16】
前記漏れ検出装置はさらに均質化チャンバ(70)を備えており、
前記均質化チャンバ(70)は前記検出チャンバ(61)と前記分析装置(56)との間に配置されており、
前記検出フード(55)は、バルブを備えたガス流入口(71)を備えており、
前記均質化チャンバ(70)と前記ガス流入口(71)とは、前記検出チャンバ(61)の両端に結合されており、
前記検出チャンバ(61)を負圧下におく間、前記ガス流入口(71)の前記バルブは閉弁され、
前記検出チャンバ内(61)に存在する気相を移送するステップは、
-前記ガス流入口(71)の前記バルブを開弁し、前記検出チャンバ(61)内に存在する気相を前記均質化チャンバ(70)へ移送するステップと、
-前記均質化チャンバ(70)から前記気相を前記分析装置(56)へ向かって移送するステップと、
を有する、
請求項6から15までのいずれか1項記載のメンブレンの耐漏性を試験するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば低温流体等の流体を貯蔵及び/又は輸送するための耐漏性の断熱メンブレンタンクの分野に関する。
【0002】
本発明は具体的には、トレーサガスを使用してタンクの耐漏性メンブレンの耐漏性を試験するための方法と、トレーサガスを拡散するための方法と、に関する。
【背景技術】
【0003】
KR1020100050128に、LNGを貯蔵するための耐漏性の断熱タンクのメンブレンの耐漏性を試験するための方法が開示されている。このタンクは多層構造を有し、外側から内側に向かって順に、二次断熱空間と、二次耐漏性メンブレンと、一次断熱空間と、タンクに入っている液化天然ガスと接触する一次耐漏性メンブレンと、を備えている。この方法は具体的には、一次耐漏性メンブレンのメタルシートを耐漏性で接続するための溶接ビードを通る漏れの検出をターゲットとしている。この方法は、一次断熱空間内にトレーサガスを注入し、その後、トレーサガス分析器を備えた検出装置をタンク内で、一次耐漏性メンブレンの溶接ビードに沿って動かす。このようにして、検出装置がトレーサガスの存在を検出した場合、一次耐漏性メンブレンの耐漏性に欠陥が存在すると判断することができる。かかる検出方法は、トレーサガスが一次断熱空間内全体に均質に拡散した場合にしか高信頼性の結果を保証できないので、上述の方法では一次断熱空間内へのトレーサガスの注入が重要となる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の基礎となる思想は、断熱空間全体におけるトレーサガスの高信頼性の拡散を達成できるトレーサガスの拡散方法を提供することである。
【0005】
一実施形態では本発明は、キャリア構造体に取り付けられた複数のタンク壁により画定された多面体形状を有する耐漏性の断熱タンクの断熱空間内へトレーサガスを注入するための方法を提供し、各タンク壁は断熱バリアを備えており、断熱バリアは、キャリア構造体に固定された断熱要素と、断熱バリアの断熱要素に対して設けられているメンブレンと、を備えており、各タンク壁の断熱バリアは他のタンク壁の断熱バリアと繋がって共に前記断熱空間を画定し、複数のタンク壁は底壁を含み、前記注入方法は、トレーサガスを注入するための少なくとも1つの装置を底壁のメンブレンに貫通させて底壁の断熱バリアに入れて用いることにより、トレーサガスを断熱空間に注入することを含む。
【0006】
有利には、トレーサガスを注入するための少なくとも1つの装置を用いてトレーサガスを注入する工程の前に、メンブレンに設けられた孔に持上具を通して導入し、底壁のメンブレンと断熱バリアとの間に当該持上具を挟むように配置することにより、トレーサガスを注入するための装置の領域において断熱バリアからメンブレンを離す。
【0007】
本発明の1つの有利な特徴は、トレーサガスが容器の内部空間から上記の断熱空間へ導入されて輸送されることである。
【0008】
「容器の内部空間」との文言は、容器の機能的領域、すなわち低温流体等の流体の貯蔵空間を意味し、容器の外側領域あるいは外部領域の反対である。
【0009】
伝統的にはトレーサガスは、タンクの外側ゾーンあるいは外部ゾーンによって、又はこれを介して、断熱空間内へ輸送及び導入され、これは、上記で示した欠点を含む一定数の欠点となる。これらの欠点は、特にタンクに含まれている流体が断熱空間に流入するおそれがないことを保証するために上記のメンブレンの漏れ試験を行おうとする場合に問題となる。
【0010】
トレーサガスの蒸気密度は空気の蒸気密度より低いので、トレーサガスは断熱空間内で上昇する。それゆえ、底部を介して底壁のメンブレンからトレーサガスを注入すると、トレーサガスが断熱空間内に拡散するのを保証することができ、この拡散は、従来技術で実践されているようにタンクの天井壁に形成されたドームを通過する管にトレーサガスを通して導入する場合よりも高速で均質となる。
【0011】
複数の実施形態では、トレーサガスを注入するための上記方法は、下記の特徴のうち1つ又は複数を含むことができる。
【0012】
一実施形態では、注入方法の実施中、各壁はタンクの外側から内側に向かって、キャリア構造体に対して設けられた二次断熱バリアと、二次断熱バリアに対して設けられた二次メンブレンと、オプションとして、二次メンブレンに対して設けられた一次断熱バリアと、一次断熱バリアに対して設けられた一次メンブレンであってタンクに入った液化ガスと接触する一次メンブレンと、を備えている。
【0013】
一実施形態では、タンク壁の二次断熱バリアは互いに繋がって共に二次断熱空間を画定し、トレーサガスを注入するための少なくとも1つの装置を底壁の二次メンブレンに貫通させて底壁の二次断熱バリアに入れて用いることにより、トレーサガスを二次断熱空間に注入する。
【0014】
他の一実施形態では、タンク壁の一次断熱バリアは互いに繋がって共に一次断熱空間を画定し、トレーサガスを注入するための少なくとも1つの装置を底壁の一次メンブレンに貫通させて底壁の一次断熱バリアに入れて用いることにより、トレーサガスを一次断熱空間に注入する。
【0015】
一実施形態では、底壁のメンブレンに貫通して底壁の断熱バリアに入れたトレーサガスを注入するための装置のみを用いて、トレーサガスを注入する。
【0016】
一実施形態では、トレーサガスを断熱空間に注入する工程の前に、断熱空間を負圧下におく。これにより、第一にトレーサガスのより良好な拡散を行うことができ、第二に、トレーサガスの濃度をより迅速に十分なレベルにすることができる。
【0017】
一実施形態では断熱空間は、最大で-40kPa~-80kPaの設定負圧、例えば-60kPaのオーダの設定負圧の負圧下におく。
【0018】
一実施形態ではトレーサガスは、前記断熱空間内部の圧力が周囲圧より若干高くなるまで、例えば相対圧で1~6kPa、有利には相対圧で2kPaのオーダ高くなるまで、断熱空間に注入される。これにより、メンブレンの耐漏性の試験の有効性を向上すべく、メンブレンの欠陥のある溶接部を通るトレーサガスの移動を促進するために断熱空間を過剰圧力下におくことができると共に、メンブレンの破損を防止するためにメンブレンに許容できる最大過剰圧力より低い過剰圧力範囲内を維持することができる。
【0019】
一実施形態では、トレーサガスの蒸気密度は空気の蒸気密度より低い。
【0020】
一実施形態では、トレーサガスはヘリウム、アンモニア、及び窒素と水素分子との混合気から選択されたものである。
【0021】
一実施形態ではトレーサガスは、空気及び/又は窒素をさらに含む混合気の形態で注入される。
【0022】
一実施形態では、底壁は2つの対称軸を有する矩形の形状を有し、これら2つの対称軸は底壁を4つの領域に区切り、トレーサガスは、トレーサガスを注入するための少なくとも4つの各装置を底壁のメンブレンに通して底壁の断熱バリアに入れて用いることにより注入され、底壁の4つの各領域に、トレーサガスを注入するための少なくとも4つの装置が1つずつ備え付けられる。
【0023】
一実施形態では、4つの各注入装置は、底壁の各対応する領域の中心付近において耐漏性のメンブレンを貫通する。
【0024】
一実施形態では、トレーサガスを注入するための各装置は連結部材を備えており、連結部材は、底壁のメンブレンに形成された孔の周部において当該メンブレンに耐漏性に溶接されており、連結部材は、トレーサガスの供給源に接続された管と組み合わされている。
【0025】
一実施形態では、連結部材は筒状の連結部と、金属リングとを備えており、連結部は、トレーサガスの供給源に接続された前記管と組み合わされており、金属リングは、底壁のメンブレンに形成された孔の周部において当該メンブレンに耐漏性に溶接されていると共に、筒状の連結部に耐漏性に溶接されている。
【0026】
一実施形態では、少なくとも1つの注入装置を用いてトレーサガスを注入する工程の前に、連結部材とメンブレンに形成された孔とに持上具を通して導入し、当該持上具のフックが底壁のメンブレンと断熱バリアとの間に挿入されるように当該持上具を位置決めすることにより、トレーサガスを注入するための装置の領域において断熱バリアからメンブレンを離す。
【0027】
一実施形態では、少なくとも1つの注入装置を用いてトレーサガスを注入する工程の間、フックが底壁のメンブレンと断熱バリアとの間に挿入される位置に持上具を保持する。
【0028】
一実施形態では、各注入装置はさらに、前記メンブレンに形成された孔に耐漏性に接続されている少なくとも1つの注入管を備えており、当該注入管はメンブレンのコルゲーションの内側に延在すると共に、当該注入管が延在するコルゲーションと、垂直方向のコルゲーションと、の各交差部に少なくとも1つのドリル孔を有する。
【0029】
本発明の基礎となる他の1つの思想は、高信頼性であり迅速に実施できるメンブレンの耐漏性を試験するための方法を提供することである。
【0030】
一実施形態では本発明は、キャリア構造体に取り付けられた複数のタンク壁により画定された多面体形状を有する耐漏性の断熱タンクのメンブレンの耐漏性を試験するための方法を提供し、各タンク壁は断熱バリアを備えており、断熱バリアは、キャリア構造体に固定された断熱要素と、断熱バリアの断熱要素に対して設けられているメンブレンと、を備えており、タンク壁の断熱バリアは互いに繋がって共に前記断熱空間を画定し、耐漏性を試験するための方法は、
-断熱空間にトレーサガスを注入するステップと、
-メンブレンと共に耐漏性の検出チャンバを画定するように構成された検出フードと、検出チャンバに結合されると共に分析装置に結合される真空ポンプと、を備えた漏れ検出装置を準備するステップと、
-検出チャンバが溶接ビードの試験対象の部分と対向配置されるように検出フードをメンブレンの断熱空間に対向する面に対して配置するステップと、
-真空ポンプを用いて検出チャンバを負圧下におくステップと、
-検出チャンバ内に存在する気相を分析装置に向かって移送するステップと、
-分析装置を用いて前記気相を分析し、当該気相中のトレーサガスの濃度を表す変数を出力するステップと、
を有する。
【0031】
一実施形態では本発明は、耐漏性の断熱タンクのメンブレンの耐漏性を試験するための漏れ検出装置を提供し、漏れ検出装置は、メンブレンと共に耐漏性の検出チャンバを画定するように構成された検出フードと、検出チャンバに結合されると共に分析装置に結合される真空ポンプと、を備えている。
【0032】
複数の実施形態では、メンブレンの耐漏性を試験するための方法及び/又は漏れ検出装置は、以下の特徴のうち1つ又は複数を備えることができる。
【0033】
一実施形態では、トレーサガスを断熱空間に注入することは、トレーサガスを注入するための上記の方法を使用して実施される。しかし他の一実施形態では、トレーサガスを断熱空間に注入することは、他の方法により実施することもできる。
【0034】
一実施形態では、分析装置は質量分析計である。
【0035】
一実施形態では、検出フードは細長い形状を有する。
【0036】
一実施形態では、検出フードは中央コア部と耐漏性シールとを備えており、これらは互いに取り付けられており、試験対象のメンブレンと共に検出チャンバを画定するように配置されている。
【0037】
一実施形態では耐漏性シールは、中央コア部に取り付けられたケーシングと、ケーシングを延在する周囲耐漏性リップと、を備えている。
【0038】
一実施形態では耐漏性シールのケーシングは、中央コア部の上面を覆う底部と、中央コア部の周部と一致する周壁と、を備えている。
【0039】
一実施形態では、周囲耐漏性リップは検出フードの外側に向かって曲げられ、検出チャンバが負圧下におかれたときに周囲耐漏性リップがメンブレンに対して撓んで押さえ付けられるように構成されている。
【0040】
一実施形態では、溶接ビードの前記部分はメンブレンの少なくとも1つのコルゲーションによって横切られる。
【0041】
一実施形態では、周囲耐漏性リップは前記少なくとも1つのコルゲーションの幾何学的形態にフィットする形状である。
【0042】
一実施形態では溶接ビードの前記部分は、メンブレンに対して平行な少なくとも2つのコルゲーションによって、例えば3つのコルゲーションによって横切られ、周囲耐漏性リップは当該少なくとも2つのコルゲーションの幾何学的形態にフィットする形状である。
【0043】
一実施形態では周囲耐漏性リップは、タンク内部に向かって突出するメンブレンのコルゲーションの形状に対応する形状を有する少なくとも2つの凹みを有し、前記凹みは当該コルゲーションを跨ぐように形成されている。
【0044】
一実施形態では、メンブレンの前記少なくとも1つのコルゲーションはタンク内部に向かって突出し、検出フードは、凹みが当該コルゲーションを跨ぐようにメンブレンに対して配置されている。
【0045】
一実施形態では周囲耐漏性リップは、タンク外部に向かって突出するメンブレンのコルゲーションの形状に対応する形状を有する少なくとも2つの突出領域を備えている。
【0046】
一実施形態では検出フードは、前記突出領域がコルゲーションに挿入されるようにメンブレンに対して配置されている。
【0047】
一実施形態では、耐漏性シールは20~50のショアA硬さを有するエラストマ材料から成る。
【0048】
一実施形態では耐漏性シールのエラストマ材料は、ポリウレタンエラストマ、シリコーン、ニトリル及びヴィトン(Viton、登録商標)から選択されたものである。
【0049】
一実施形態では検出フードには、周囲耐漏性リップを試験対象のメンブレンに押さえ付けることができる挟持システムが備えられている。
【0050】
一実施形態では、検出チャンバの耐漏性を保証するため、検出チャンバを負圧下におく前に挟持システムを作動させる。
【0051】
一実施形態では、耐漏性シールが少なくとも2つの凹みを有し、当該凹みが、タンク外部に向かって突出して溶接ビードの前記部分を横切るメンブレンのコルゲーションの形状に対応する形状を有する場合、挟持システムは凹みごとにクランプを有し、各クランプは2つの分岐部を有し、これらの分岐部は凹みの両側にそれぞれ配置され、メンブレンのコルゲーションに周囲耐漏性リップを挟み付ける労力を加えるように構成されている。
【0052】
一実施形態では、検出チャンバは絶対圧力値が最大50~1000Pa、例えば絶対値で100Paのオーダの圧力値の負圧下におかれる。
【0053】
一実施形態では、気相は5秒以上の時間にわたって分析される。
【0054】
一実施形態では、前記気相中のトレーサガスの濃度を表す変数は閾値と比較され、前記気相中のトレーサガスの濃度を表す変数が当該閾値を上回る場合、溶接ビードの前記部分の耐漏性に欠陥があると判断する。
【0055】
一実施形態では、漏れ検出装置はさらに均質化チャンバを備えており、均質化チャンバは検出チャンバと分析装置との間に配置されており、検出フードは、バルブを備えたガス流入口を備えており、均質化チャンバとガス流入口とは、検出チャンバの両端に結合されている。
【0056】
一実施形態では、検出チャンバを負圧下におく間、ガス流入口のバルブは閉弁され、検出チャンバ内に存在する気相を移送する工程は、
-ガス流入口のバルブを開弁し、検出チャンバ内に存在する気相を均質化チャンバへ移送するステップと、
-均質化チャンバから気相を分析装置へ向かって移送するステップと、
を有する。
【0057】
一実施形態では本発明は、断熱空間内へのトレーサガスの拡散をモニタリングするための方法を提供する。
【0058】
一実施形態では、トレーサガスの拡散をモニタリングするための方法は、耐漏性を試験するための上記の方法を行う間に実施される。しかし他の一実施形態では、上記の方法とは関係なく実施することもできる。
【0059】
一実施形態では、断熱空間内へのトレーサガスの拡散のモニタリングは、
-それぞれ1つのタンク壁のメンブレンを横切る複数のサンプリング装置を用いて、断熱空間内に存在するガスをサンプリングするステップと、
-サンプリングしたガスを例えば質量分析計等の分析装置へ移送するステップと、
を有する。
【0060】
一実施形態では、サンプリング装置は有利には、2つ又は3つのタンク壁のジャンクションに形成された角領域付近に配置される。
【0061】
一実施形態では、各ガスサンプリング装置はカバープレートを備えており、カバープレートは、メンブレンの2つの要素のジャンクションにある溶接が無いメンブレンの領域を包囲するパテビード(cordon de mastic)を用いて、当該メンブレンに結合され、カバープレートは孔と、分析装置に接続された管に結合される連結部と、を備えており、当該連結部は、カバープレートの孔の周囲に耐漏性に溶接されている。
【0062】
一実施形態では、ガスサンプリング装置は連結部材を備えており、連結部材は、分析装置に接続された管に耐漏性に結合されるジョイント片と、肩部と、当該肩部から突出するねじ付き下部ロッドと、を備えており、ねじ付き下部ロッドは二次メンブレンを貫通して、断熱バリアに取り付けられたプレートに形成されたねじ孔に螺入され、ガスサンプリング装置はさらに環状の耐漏性シールを備えており、環状の耐漏性シールは下部ロッドに螺合されて二次メンブレンと肩部との間に挟まれ、連結部材はドリル孔を有し、ドリル孔はジョイント片と断熱空間とにおいて開口している。
【0063】
添付図面を参照した本発明の複数の具体的な実施形態についての以下の説明より、本発明をより良好に理解することができ、また、本発明の他の目的、詳細、特性及び利点がより明らかとなる。これら複数の具体的な実施形態は例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】メンブレンタンクの壁の多層構造の概略図である。
【
図2】タンクの底壁のメンブレンを貫通するように配置されたトレーサガスを注入するための装置を示す耐漏性の断熱タンクの概略的な部分図である。
【
図3】タンクの底壁のメンブレンを貫通する孔の細部斜視図である。
【
図4】第1の実施形態のトレーサガスを注入するための装置の細部斜視図である。
【
図5】
図4のトレーサガスを注入するための装置と、断熱層からメンブレンを離すために注入装置に通されて導入された持上具の断面図である。
【
図6】一実施形態のトレーサガスを注入するための装置の斜視図である。
【
図7】第2の実施形態のトレーサガスを注入するための装置の配置を示すタンクの概略的な斜視図である。
【
図8】第2の実施形態のトレーサガスを注入するための装置の開口と、筒状の連結部と、多経路分配部材と、を示す細部平面図である。
【
図9】第2の実施形態の注入装置の開口及び筒状の連結部を示す断面図である。
【
図10】第2の実施形態のトレーサガスを注入するための装置の注入管の部分図である。
【
図11】メンブレンの2つのコルゲーションの交差領域における
図10の注入管の断面図である。
【
図12】第1の実施形態のガスサンプリング装置を受けるメンブレンの2つのシートのジャンクションにある無溶接領域の平面図である。
【
図13】
図12に示されている無溶接領域に配置されるガスサンプリング装置の平面図である。
【
図14】第2の実施形態のガスサンプリング装置の断面図である。
【
図15】第1の実施形態の漏れ検出装置の概略図である。
【
図16】
図15の漏れ検出装置の検出フードの横断面図である。
【
図17】第1の実施形態の耐漏性シールの斜視図である。
【
図18】検出フードに挟持システムが備え付けられた他の代替形態の漏れ検出装置の概略図である。
【
図19】第2の実施形態の耐漏性シールの斜視図である。
【
図20】メンブレンの2つの隣り合うコルゲート状のメタルシート間で耐漏性を保証する溶接ビードの一部に検出フードを対向配置する概略図である。
【
図21】第2の実施形態の漏れ検出装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下説明する耐漏性を試験するための方法は具体的には、耐漏性の断熱メンブレンタンクのメンブレンの耐漏性の試験をターゲットとする。例えばかかるメンブレンタンクは、特にWO14057221及びFR2691520に記載されており、前者はMark V技術、後者はMark III技術に関するものである。
【0066】
メンブレンタンクは複数の壁を有し、これら複数の壁は、例えば
図1に示されているような多層構造を呈する。各壁1は、タンクの外側から内側に向かって、キャリア構造体4に固定された二次断熱パネル3を有する二次断熱バリア2と、二次断熱バリア2に対して設けられた二次メンブレン5と、二次メンブレン2に対して設けられると共にキャリア構造体4又は二次断熱パネル3に固定された一次断熱パネル7を有する一次断熱バリア6と、一次断熱バリア6に対して設けられた一次メンブレン8であって、タンクに入っている液化ガスと接触する一次メンブレン8と、を備えている。
【0067】
タンクの全体的な形状は多面体である。
図2に示されている実施形態では、タンクは前壁9と、図示されていない後壁とを備えており、これらは本実施形態では八角形である。タンクはまた、天井壁10と底壁11と側壁11,12,13,14,15,16,17とを備えており、これらはタンクの縦方向において前壁9と後壁との間に延在する。
【0068】
タンク壁の二次断熱バリア2は互いに繋がって、キャリア構造体4と二次メンブレン5との間に二次断熱空間を形成する。この二次断熱空間は耐漏性である。タンク壁の一次断熱バリア6も同様に、互いに繋がって二次メンブレン5と一次メンブレン8との間に一次断熱空間を形成し、この一次断熱空間は耐漏性である。
【0069】
一次メンブレン8及び二次メンブレン5のうち少なくとも1つは複数のメタルシートを有し、これら複数のメタルシートは互いに溶接されている。下記で説明する耐漏性試験方法は具体的には、メタルシートを互いに結合できる溶接部の耐漏性の試験をターゲットとする。一実施形態では試験対象のメンブレンは、タンク内に貯蔵されている流体により生じる熱的応力及び機械的応力の作用を受けて曲げ変形できるコルゲーションを有する。こうするためには、例えば
図20に示されているように、各メタルシートは、互いに垂直な2つのコルゲーション列を有する。
【0070】
耐漏性試験方法は、
-耐漏性試験を行おうとしているメンブレン5,8により覆われた断熱空間内へトレーサガスを拡散する工程と、
-断熱空間内へのトレーサガスの拡散をモニタリングする工程と、
-メンブレン5,8の溶接部の耐漏性をチェックする工程と、
の3つの工程を有し、これらの各工程については以下にて詳細に説明する。
【0071】
<トレーサガスの拡散>
トレーサガスは、耐漏性チェックを行おうとしているメンブレン5,8により覆われた断熱空間内へ注入される。二次メンブレン5の耐漏性をチェックしたい場合には、トレーサガスは二次断熱空間内へ注入される。この場合、耐漏性試験方法は、一次断熱バリア7と一次メンブレン8とが設置される前に実施される。一次メンブレン8の耐漏性をチェックしたい場合には、トレーサガスは一次断熱空間内へ注入される。
【0072】
トレーサガスは例えば、ヘリウム、アンモニア、及び窒素と水素分子との混合気から選択される。一実施形態ではトレーサガスは、さらに空気及び/又は窒素を含む混合気の形態で注入される。
【0073】
有利には、断熱空間内へのトレーサガスの拡散を促進するため、断熱空間は事前に、-40kPa~-80kPaの設定負圧、例えば-60kPaの設定負圧に達するまで、負圧下におかれる。
【0074】
こうするためには断熱空間は、当該断熱空間内に存在するガスを吸入して当該断熱空間外へ排出することができる不図示の真空ポンプに接続される。断熱空間にはさらに、当該断熱空間内の圧力を表す信号を出力できる1つ又は複数の圧力センサが備えられており、これにより真空ポンプの制御を保証することができる。
【0075】
その後、断熱空間内の圧力が設定負圧に達した場合、当該断熱空間内の圧力が周囲圧より若干高くなるまで、例えば相対圧で1~6kPa、有利には相対圧で2kPaのオーダ高くなるまで、トレーサガスが断熱空間に注入される。
【0076】
図2は、耐漏性の断熱タンクと、断熱空間にトレーサガスを注入するためのシステムと、を概略的に示す図である。
【0077】
この注入システムは複数の管18を備えており、これらの管18は、不図示のトレーサガスの供給源に接続されていると共に、トレーサガスを注入するための装置19に接続されており、管18によって、耐漏性試験対象のメンブレン5,8にトレーサガスを通して注入するための通路が形成される。具体的には、トレーサガスを注入するための装置19は、底壁11のメンブレンを貫通するトレーサガスの通路を形成する。かかる配置構成は、トレーサガスの蒸気密度が空気の蒸気密度より低く、断熱空間内で上昇する傾向にあるため、特に有利である。よって、底部から、底壁11の試験対象のメンブレン5,8にトレーサガスを通して注入することにより、断熱空間内へのトレーサガスの迅速かつ均質な拡散を保証することができる。
【0078】
図2に示されている実施形態では、底壁11には、トレーサガスを注入するための装置19が少なくとも4つ備え付けられており、これらは底壁11の表面に均等に分布している。底壁11は矩形の形状を有するので、その2つの対称軸x及びyによって、等しい表面積の4つの領域に分割することができる。これら4つのトレーサガスを注入するための装置19はそれぞれ、上記の4つの領域のうち1つに配置されている。この図示されている具体的な実施形態では、トレーサガスを注入するための各装置19は、各自の領域の中心付近に配置されている。具体的な一実施形態では、トレーサガスを注入するための各装置は、隣の縦辺からLの1/4の距離に、かつ隣の横辺からBの1/4の距離に配置される。ここで、Lは底壁11の縦寸法であり、Bは底壁11の横寸法である。
【0079】
図3~5は、例えばMark III型又はMark V型等のコルゲート状の一次メンブレンからトレーサガスを注入するための装置19の細部図である。本事例では、一次メンブレン8のコルゲーションはタンクの内側の方向に突出する。トレーサガスを注入するための各装置19は、
図3に示されている孔20を有し、この孔20は一次メンブレン8を貫通するよう形成されている。孔20は一次メンブレンの平坦領域21に形成されており、この平坦領域21は、底壁11の縦方向に沿った2つのコルゲーションと、当該底壁11の横方向に沿った2つのコルゲーションと、によって区切られたものである。その開口部は有利には、前記平坦領域21の中心に配置される。
【0080】
図4に示されているように、一次メンブレン8の孔20の周部に連結部材22が耐漏性に溶接されている。この連結部材22は、トレーサガスの供給源に接続された管18に連結される筒状の連結部23を備えている。こうするためには、筒状の連結部23はねじ付き端部を有し、これは、トレーサガスの供給源に接続された管18の相補的な連結部を受けるように構成されている。筒状の連結部23は金属リング24に耐漏性に溶接されており、この金属リング24自体は、トレーサガスを注入するための装置19の耐漏性を保証するように、一次メンブレン8の孔20の周囲全体に耐漏性に溶接されている。
【0081】
一実施形態では、
図5に示されているように、一次メンブレン8が設けられている一次断熱パネル7のトレーサガスの注入領域からこの一次メンブレン8を離すため、持上具25が使用される。これにより、一次断熱空間内へのトレーサガスの拡散が促進される。持上具25の全体的な形状はL字形であり、持上具25はハンドル26と、当該ハンドル26の端部に配置されたフック27とを有し、フック27は当該ハンドル26に対して垂直に延在する。持上具25は連結部材22に通されて導入され、一次メンブレン8と、当該一次メンブレン8を支持する一次断熱パネル7の表面と、の間にフック27を挿入するように配置される。これにより、トレーサガスの拡散を促進するために前記一次メンブレン8を離すことができる。
【0082】
持上具25は、トレーサガスの供給源に接続された管18が連結部材22に連結される前に、定位置におかれる。また有利には、トレーサガスの供給源に接続された管18に連結部材22を連結するときと、トレーサガスを注入するための装置19にトレーサガスを介してトレーサガスを一次断熱空間内に導入するときに、持上具を定位置に保持する。
【0083】
図6は、例えばMark V型等のコルゲート状の二次メンブレン5を貫通するように形成されたトレーサガスを注入するための装置19を示す図である。このコルゲート状の二次メンブレン5が、
図3~5に示されている一次メンブレン8と特に相違する点は、コルゲーションがタンクの外側に向かって突出していることであり、それに対して
図3~5では、コルゲーションはタンクの内側の方向に突出していた。先の実施形態と同様に、トレーサガスを注入するための各装置19はメンブレンの平坦領域21に配置されており、この平坦領域21は、底壁11の縦方向に沿った2つのコルゲーションと、当該底壁11の横方向に沿った2つのコルゲーションと、によって区切られたものである。さらに、トレーサガスを注入するための各装置19は、
図3~5を参照して図示及び記載されているものと同一の構造を有する。さらに、二次メンブレン5が設けられている二次断熱パネル3のトレーサガスの注入領域からこの二次メンブレン5を離すため、持上具25を使用することもできる。
【0084】
図7~11は、他の一実施形態のトレーサガスを注入するための装置28を示す図である。同図は、
図2~5を参照して図示及び記載した構造より複雑な構造を示しているが、これらのトレーサガスを注入するための装置の利点は、トレーサガスの拡散を促進するため、例えばアンモニア等の高粘度を有するトレーサガスの注入に特に適していることである。
【0085】
本実施形態では、トレーサガスを注入するための各装置28は、
図7及び
図8に示されている孔29を有し、これは一次メンブレン8に形成されている。図示の実施形態では、孔29は金属プレート30を貫通するように形成されており、この金属プレート30は一次断熱バリア6の一次断熱パネル7に取り付けられており、金属プレート30には一次メンブレン8のコルゲート状のメタルシートが耐漏性に溶接されている。
図9に示されているように、孔29の周部には、トレーサガスの供給源に接続された管18に連結される連結部材31が、耐漏性に溶接されている。さらに、孔29は多経路分配部材32にも耐漏性に結合されており、この多経路分配部材32は、一次断熱パネル7に形成された収容部内に配置されており、開口29から1つ又は複数の注入管33に向かってトレーサガスを移送できるものである。例えば
図9では、多経路分配部材32は2つの整列した注入管33に結合されている。
【0086】
図10及び
図11に示されているように、各注入管33はそれぞれ、一次断熱バリア6の1つ又は複数の一次断熱パネル7に取り付けられており、タンクの内部の方向に突出する一次メンブレン8の1つのコルゲーションの内側に延在する。各注入管33は、当該注入管33を収容するコルゲーションと、当該コルゲーションに対して垂直なコルゲーションと、の各交差部にある1つ又は2つのドリル孔34を有する。ドリル孔34の向きは、注入管33を収容するコルゲーションに対して垂直なコルゲーションの方向となっていることにより、横切られるコルゲーションに対して垂直なコルゲーションの列に向かってトレーサガスを移送することができる。このようにしてトレーサガスは、一次メンブレン8のコルゲーション網を通じて一次断熱空間内に拡散される。
【0087】
図10では、一実施形態の底壁11の一次断熱バリアにおける注入管33の配置が観察される。矢印は、注入管に形成されたドリル孔34を通るトレーサガスの注入方向を表している。底壁11の各辺に沿って1つ又は複数の注入管33が配置されており、注入管33は2つのコルゲーションの各交差部に、隣のタンク壁を向いている少なくとも1つのドリル孔を有する。このようにしてこれらの注入管33により、底壁11から他のタンク壁の方向にトレーサガスを拡散させることができる。
【0088】
同図の実施形態ではさらに、底壁11の断熱バリアは注入管33の1つ又は2つの列を有し、この各列は、向きがタンクの縦方向である底壁11の一次メンブレンのコルゲーションであって底壁11の中央領域に配されているコルゲーション内に配置されている。上記の注入管33は、当該注入管33を収容するコルゲーションと、当該コルゲーションに対して垂直なコルゲーションと、の各交差部に、2つのドリル孔34を有し、これら2つのドリル孔34の向きは互いに逆方向になっている。
【0089】
<トレーサガスの拡散のモニタリング>
有利には、トレーサガスを断熱空間全体に拡散完了した際に、断熱空間内へのトレーサガスの拡散をモニタリングする。
【0090】
こうするためには、断熱空間を覆うメンブレンに通されて設置された複数のガスサンプリング装置を用いて、トレーサガスを注入した断熱空間内に存在するガスをサンプリングする。各サンプリング装置は、トレーサガスの存在を確認して断熱空間の該当する領域におけるトレーサガスの濃度を確認できる質量分析計等の分析装置に接続されている。
【0091】
有利には、各タンク壁9,10,11,12,13,14,15,16に少なくとも1つのガスサンプリング装置が配置されている。ガスサンプリング装置は有利には、タンク壁間の角領域付近に配置される。というのも、かかる領域における断熱バリアの構造は特殊であるため、当該領域はトレーサガスの接近が最も困難な領域だからである。
【0092】
図12及び
図13を参照して、一次メンブレン8を介して一次断熱空間内のガスをサンプリングできるガスサンプリング装置について説明する。
【0093】
図12に示されているように、一次メンブレン8は2つの隣り合うメタルシート38,39のジャンクションに無溶接領域40を有する。ガスサンプリング装置35は、
図13に示されているカバープレート41を備えており、これは耐漏性のパテビード42を用いて一次メンブレン8と組み合わされている。パテビード42は無溶接領域40を包囲する。カバープレート41は孔43を有し、当該孔43の周囲で耐漏性に溶接された筒状の連結部44を支持する。筒状の連結部44は、分析装置に接続された管に連結されるものである。
【0094】
図14及び
図15を参照して、二次メンブレン5を介して二次断熱空間内のガスをサンプリングできるガスサンプリング装置45について説明する。かかるガスサンプリング装置45は、二次メンブレン5のうち、二次メンブレン5に通されて一次断熱バリア6の一次断熱パネル7を二次断熱バリア2に取り付けるのを保証する固定部材に横切られる領域に配置される。サンプリング装置45は連結部材46を備えており、連結部材46は、分析装置に接続された管に耐漏性に連結されるジョイント片47を有する。連結部材はねじ付き下部ロッド48も有し、ねじ付き下部ロッド48はねじ孔49に螺入される。このねじ孔49はその後、一次断熱バリア6を設置する際に一次断熱バリア6の一次断熱パネル7の固定部材を受ける。ねじ孔49は例えば、二次断熱パネル3に取り付けられる金属プレート50に形成される。さらに連結部材45は、下部ロッド48に螺合される環状の耐漏性シール52と、肩部51と、を備えており、肩部51は、ガスサンプリング装置45の耐漏性を保証すべく二次メンブレン5の下面に向かって環状の耐漏性シール52を押さえ付けるように構成されている。連結部材46もドリル孔53を有し、これはジョイント片47と二次断熱空間とにおいて開口している。
【0095】
各サンプリング領域においてトレーサガスの濃度が最小濃度閾値に達した場合、溶接部の耐漏性をチェックする工程を行うことができる。
【0096】
さらに一実施形態では、溶接部の耐漏性のチェック中、トレーサガスの濃度が最小濃度閾値を下回るか否かを判断するため、サンプリング領域におけるトレーサガスの濃度を定期的にモニタリングする。かかる場合、トレーサガスの濃度を上記の最小濃度閾値より再び高くするため、トレーサガスを断熱空間に再注入することができる。
【0097】
<溶接部の耐漏性のチェック>
メンブレン5,8の溶接ビードの耐漏性を確認するためには、
図15に示されているように漏れ検出装置54を使用する。
【0098】
漏れ検出装置54は検出フード55を備えており、これは、溶接ビードの試験対象部分を向くようにメンブレン5,8の内面に対向配置される。
【0099】
検出フード55は細長い形状を有し、0.5~3mの長さ、例えば1mのオーダの長さを有する。
【0100】
図16に示されているように、検出フード55は剛性の中央コア部59と可撓性の耐漏性シール60とを備えており、これらは互いに取り付けられ、試験対象のメンブレン5,8と共に、溶接ビードの試験対象部分62側に配される耐漏性の検出チャンバ61を画定するように配置される。
【0101】
図15を再び参照すると、漏れ検出装置54は分析装置56も備えているのが観察され、これは検出チャンバ61に結合されてトレーサガスの検出を行うためのものである。分析装置56が閾値を上回る量のトレーサガスを検出した場合、溶接ビードの試験対象部分62の耐漏性に欠陥があると判断することができる。一実施形態では、分析装置56は質量分析計である。
【0102】
漏れ検出装置54は真空ポンプ57も備えており、これは分析装置56と組み合わされる。真空ポンプ57は、検出フード55の検出チャンバ内に負圧を生じることができるように当該検出チャンバに連結されると共に、検出チャンバ61内に存在するガスを分析装置56に向けて移送するために分析装置56に連結されている。
【0103】
真空ポンプ57は管58を介して検出フード55に接続されており、この管58は好適には可撓性である。管58は、中央コア部59内に形成され検出チャンバ61に開通する流路に連結される。
【0104】
図16及び
図17に示されているように耐漏性シール60は、中央コア部59の形状と一致するケーシング63と、ケーシング63の下方に延在する周囲耐漏性リップ64と、を有する。ケーシングは、中央コア部59の上表面を覆う底部と、中央コア部59の周部と一致する周壁74と、を有する。底部は少なくとも1つの不図示の孔を有し、真空ポンプ57に接続される管58がこの孔に耐漏性に連結される。
【0105】
周囲耐漏性リップ64は検出フード55の外側に向かって曲げられて、耐漏性のチャンバ61が負圧下におかれたときにメンブレン5,8に対して撓んで押さえ付けられるように構成されている。換言すると周囲耐漏性リップ64は、全体的な形状がL字形の部分を有する。
【0106】
周囲耐漏性リップ64の外側に向かって曲げられた部分の幅は、15~40mmのオーダである。周囲耐漏性リップ64は、試験対象の溶接ビードに沿ってメンブレン5,8の幾何学的形態にフィットする形状である。よって、
図17では周囲耐漏性リップ64は、検出フード55が溶接ビードの試験対象部分62に対して配置されたときに跨ぐメンブレン5,8のコルゲーションの形状に一致する形状を有する凹み65を有することとなる。
【0107】
耐漏性シール60は有利には、20~50のショアA硬さを有するエラストマ材料から成る。耐漏性シールは例えば、ポリウレタンエラストマ、シリコーン、ニトリル又はヴィトン(Viton、登録商標)から成る。
【0108】
図18に概略的に示されている実施形態では、検出フード55にはさらに挟持システム66が備え付けられており、挟持システム66は、検出チャンバ61の耐漏性を保証するため、試験対象のメンブレン8に周囲耐漏性リップ64を押さえ付けることができる。挟持システム66は本事例では、周囲耐漏性リップ64の各凹み65にクランプ67を備えている。各クランプ67は2つの分岐部を有し、これらの分岐部は凹み65の両側にそれぞれ配置され、各クランプ67は周囲耐漏性リップ64をメンブレン8に挟み付ける労力を加えるように構成されている。有利には分岐部は、コルゲーションのふもと付近で周囲耐漏性リップ64を耐漏性のメンブレンに挟み付けるように構成されている。
【0109】
さらに図示の実施形態では、挟持システム66は検出フード55の長手方向の各端部に可動のフィンガ68を備えており、この各フィンガ68は、周囲耐漏性リップ64の長手方向の端部のうち一方をメンブレン8に押さえ付けるように構成されている。
【0110】
図19は、他の代替的な一実施形態の耐漏性シール60を示す。耐漏性シール60は、コルゲーションがタンクの外側に向かって突出するメンブレン5にフィットする形状となっている。かかるメンブレンは例えば、
図6に示されているようなMark V技術の二次メンブレン5である。よって、周囲耐漏性リップ64はメンブレン5のコルゲーションの内側に挿入される突出領域69を有する。
【0111】
溶接ビードの耐漏性欠陥を検出するための手順は、以下の通りである。
【0112】
第1のステップでは、
図20に示されているように検出フード55を溶接ビードの試験対象部分62に対向配置する。
【0113】
周囲耐漏性リップ64の曲げ部分の2つの側方部分が溶接ビード62の両側に配置されるように、検出フード55を溶接ビード62に対して適切に確実にセンタリングすることが好ましい。
【0114】
その後、真空ポンプ57を始動して検出チャンバ61を負圧下におき、トレーサガスが溶接ビード62の欠陥領域を通って移動するのを促進する。
【0115】
検出チャンバ61内部の圧力が圧力閾値Ptを下回ると直ちに、検出チャンバ61からガス流を分析装置56に向けて移送し、トレーサガスの漏れ流量φを最小時間Tmにわたって測定する。その後、漏れ流量φを閾値φtと比較する。
【0116】
漏れ流量φが閾値φtを下回る場合には、溶接ビードの試験対象部分62は耐漏性欠陥を有しないと判断する。この場合にはその後、検出フード55を溶接ビードの隣の一部62に対向配置し、連続して試験される2つの一部分の間に重なりが出るようにして、当該溶接ビード62の全長にわたって溶接ビード62の耐漏性の試験が完了することを保証する。
【0117】
他方、漏れ流量φが閾値φt以上である場合には、溶接ビード62の試験対象部分が耐漏性欠陥を有すると判断する。その場合には、欠陥を修正するために修正溶接措置を行う。
【0118】
例えば、断熱空間内のヘリウム濃度が20%のオーダである場合、測定漏れ流量の圧力閾値は絶対圧で50~1000Pa、例えば絶対圧で100Paのオーダであり、漏れ流量の測定の最小持続時間は5秒であり、閾値φtは1.0×10-6Pa・m3・s-1のオーダである。
【0119】
図21は、他の一実施形態の漏れ検出装置54を示す。本実施形態が上記の実施形態と相違する点は、さらに均質化チャンバ70を備えていることと、検出フード55がガス流入口71を備えていることであり、均質化チャンバ70は検出チャンバ61と分析装置56との間に配置されている。
【0120】
ガス流入口71には、検出チャンバ61に向かう周囲空気の流れを確立又は遮断するためのバルブが備え付けられている。均質化チャンバ70は検出チャンバ61の一端に結合されていると共に、ガス流入口71は検出チャンバ61の他端に結合されている。
【0121】
漏れ検出装置の動作態様は、以下の通りである。
【0122】
検出フード55を溶接ビードの試験対象部分62に向けて配置するときは、検出チャンバ61を負圧下におくため、ガス流入口71のバルブを閉弁して真空ポンプ57を始動する。検出チャンバ61内部の圧力が圧力閾値Ptを下回ると直ちに、ガス流入口71のバルブが開弁して、この耐漏性のチャンバ内に存在していたガスの全部が均質化チャンバ70に向かって移送される。均質化チャンバ70の容積は検出チャンバ61の容積より大きく、均質化チャンバ70は例えば、検出チャンバ61内に存在するガスの全部を正確に吸い上げるのを可能にするピストンシステムを備えている。
【0123】
その後、トレーサガスの漏れ流量φを求めるため、均質化チャンバ70内に存在するガスを分析装置56の方向に移送する。
【0124】
かかる実施形態の有利な点は、検出フード55の内側におけるトレーサガスの拡散時間を短縮することができ、これにより最小測定時間を短縮できることである。これが特に有利となるのは、検出フード55が非常に長いためトレーサガスが検出フード55の一端から他端へ移動する時間が長くなる可能性がある場合、及び/又は、検出チャンバ61内部の負圧が不十分である場合である。
【0125】
複数の特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されることはなく、ここで記載されている手段の技術的均等態様及びその組み合わせが本発明の範囲に属する場合には、これらも全て本発明に含まれることが非常に明らかである。
【0126】
動詞「備える」又は「含む」及びその活用形を使用した場合には、請求項に記載された要素又は工程以外の他の要素又は工程の存在を排除するものではない。
【0127】
請求項において、括弧内のいかなる符号も、当該請求項を限定するものと解釈すべきものではない。