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特許7408571優れた柔軟性と熱風溶接性を備えたプロピレン系ポリマー組成物
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  • 特許-優れた柔軟性と熱風溶接性を備えたプロピレン系ポリマー組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】優れた柔軟性と熱風溶接性を備えたプロピレン系ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/10 20060101AFI20231225BHJP
   C09J 123/10 20060101ALI20231225BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B29C65/10
C09J123/10
C08J5/18 CES
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020561899
(86)(22)【出願日】2019-05-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019030319
(87)【国際公開番号】W WO2019213345
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】62/666,290
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ウルチェ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ミーシュ、カロリーヌ ロール マリー
(72)【発明者】
【氏名】フー、ユイシャン
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527458(JP,A)
【文献】特開2015-187232(JP,A)
【文献】特開2013-028652(JP,A)
【文献】特開2016-074824(JP,A)
【文献】特開2007-161791(JP,A)
【文献】特表2016-511702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0288225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/00
C08L 23/12
C08L 23/14
C08L 23/08
C08J 5/18
B29C 65/10
C09J 123/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風溶接される膜で使用するための組成物であって、以下の成分、
A)I2≦30g/10分を有するオレフィンマルチブロックコポリマーと、
B)プロピレン系組成物であって、
a)プロピレン系ポリマー、ならびに
b)プロピレン/α-オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、およびエチレン/α-オレフィンインターポリマーのうちの少なくとも1つ、
を含み、
前記プロピレン系組成物は、Tm(最高融点)≧130℃を有し、成分Aに対する成分Bの重量比は1.5~25.0である、プロピレン系組成物と、
を含む組成物。
【請求項2】
成分C)少なくとも1つの難燃剤をさらに含み、成分B)の小成分b)は、プロピレン/α-オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、またはエチレン/α-オレフィンインターポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分Bは前記組成物の重量に基づいて≧25重量%の量で存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分Aの前記オレフィンマルチブロックコポリマーはエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーである、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分Aは0.5~30g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kg)を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分Aは0.860~0.890g/ccの密度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
成分Bは≦10g/10分のメルトフローレート(230℃、2.16kg)を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
成分Bは0.870~0.910g/ccの密度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
成分Bについて、小成分aはポリプロピレンホモポリマーであり、小成分bはプロピレン/エチレンコポリマーである、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
成分Bはリアクタ内ブレンドまたはアロイである、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
成分Bはインパクトコポリマーポリプロピレンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、ISO527-3に準拠した14.5MPa以上100MPa以下の引張弾性率、およびISO527-3に準拠した7MPa以上14.6MPa以下の引張強度をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物から形成される少なくとも1つの成分を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月3日に出願された米国仮特許出願第62/666,290号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
「カタロイ(catalloy)プロセス」PPコポリマー(HIFAX)は、TPO屋根材膜および防水膜に広く使用されているエラストマーである。しかしながら、そのような膜の(PVCおよびEPDM膜と比較して)高い剛性および充填剤使用量の減少は、より厚い膜厚、柔軟性、熱風溶接性、および良好な耐火性能(本明細書に記載)の点でこれらのエラストマーに制限を加える欠点である。良好な柔軟性、良好な溶接性、および良好な耐火性能を備えた、ハロゲンフリーでより厚い膜を形成するために使用できる新しいエラストマー組成物が必要とされている。
【0003】
エラストマー用途向けのプロピレン系ポリマーおよび/またはエチレン系のポリマーを含む配合物は、以下の参考文献に記載されている:US7592397、US7741397、US9669600、US9260577、US2015/0314511、US2017/0247536、WO2005/023889、WO2006/101924、WO2014/040914、WO2013/134083、WO2009/097565、WO2016/127164、WO2016/127169、US7741397、およびJP2013/194077A(要約)。しかしながら、上記のように、良好な柔軟性、良好な溶接性、および良好な耐火性能を備えたハロゲンフリーの膜および物品を形成するために使用できる新しいエラストマー組成物が依然として必要とされている。この必要性は、以下の発明によって満たされている。
【発明の概要】
【0004】
組成物であって、以下の成分、
A)I2≦30g/10分を有するオレフィンマルチブロックコポリマーと、
B)プロピレン系組成物であって、
a)プロピレン系ポリマー、ならびに
b)プロピレン/α-オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、およびエチレン/α-オレフィンインターポリマーのうちの少なくとも1つを含むプロピレン系組成物と、
C)少なくとも1つの難燃剤と、を含み、
当該プロピレン系組成物は、Tm(最高融点)≧130℃を有する、組成物。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】溶接試験用のサンプル調製を示している。
図2】溶接試験用のストリップ(試験サンプル)の切断を示している。
図3】溶接試験用の試験サンプルの試験(ペンチで引っ張る)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
出願人は、良好な柔軟性、良好な溶接性、および難燃性を備えた新しいエラストマー組成物を発見し、これは特に難燃性屋根材配合物に適している。ランダムなエチレン/α-オレフィンインターポリマーまたはエチレンスチレンゴムを含む典型的なエラストマー組成物は、20重量%以上のプロピレン系ポリマーとブレンドした場合、熱風溶接特性が不十分であるため、これは予想外の発見である。本明細書に記載の組成物は、E弾性率(200mm/分の延伸速度でISO527-3に従って測定される)を、例えば、約100MPaから約10MPaへ減少することを可能にすることが発見され、これは、屋根材膜に良好な柔軟性を提供する。また、これらの新しい組成物は、組成物の重量に基づいて、例えば、最大50重量%の高い充填剤および難燃剤使用量を可能にする。
【0007】
さらに、これらの組成物は、優れた熱風溶接性、EN11952-2に準拠した良好な耐火性を示し、従来の混合、押し出し、熱成形、または射出成形プロセスで非常に簡単に加工できる。これらの組成物はまた、一般的なフェノール、ホスホネート、ヒンダードアミン、または二酸化チタン、カーボンブラックなどの適切な着色顔料を配合した場合、良好な耐候性能を示すはずである。また、例えばASTM D 746-98に準拠して、良好な低温性能を示す。
【0008】
上記のように、以下の成分、
A)I2≦30g/10分、または≦20g/10分、または≦15g/10分、または≦10g/10分、または≦5.0g/10分を有するオレフィンマルチブロックコポリマーと、
B)プロピレン系組成物であって、
a)プロピレン系ポリマー、ならびに
b)プロピレン/α-オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、およびエチレン/α-オレフィンインターポリマーのうちの少なくとも1つ、を含み、
当該プロピレン系組成物は、Tm(最高融点)≧130℃、または≧135℃、または≧140℃、または≧145℃、または≧150℃を有するプロピレン系組成物と、を含む組成物が提供される。本明細書で使用される場合、Tmは、DSCによって決定される最高溶融温度である。
【0009】
本発明の組成物は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0010】
本発明の組成物の各成分は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0011】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、プロピレン系組成物は、140℃~170℃、または145℃~165℃、または150℃~160℃のTm(最高融点)を有する。
【0012】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、組成物は、さらに少なくとも1つの難燃剤を含む。
【0013】
一実施形態では、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aに対する成分Bの重量比は≧1.00、または≧1.20、または≧1.30、または≧1.40、または≧1.50、または≧1.55、または≧1.60、または≧1.65、または≧1.70、または≧1.75、または≧1.80、または≧1.85、または≧1.90である。
【0014】
一実施形態では、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aに対する成分Bの重量比は、≧1.95、または≧2.00、または≧2.05、または≧2.10、または≧2.15、または≧2.20、または≧2.25、または≧2.30、または≧2.35、または≧2.40、または≧2.45、または≧2.50である。
【0015】
一実施形態では、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aに対する成分Bの比率は、≧2.55、または≧2.60、または≧2.65、または≧2.70、または≧2.75、または≧2.80、または≧2.85、または≧2.90、または≧2.95、または≧3.00である。
【0016】
一実施形態では、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aに対する成分Bの重量比は≧3.05、または≧3.10、または≧3.15、または≧3.20、または≧3.25、または≧3.30、または≧3.35、または≧3.40、または≧3.45、または≧3.50である。
【0017】
一実施形態では、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aに対する成分Bの重量比は、≦30、または≦25、または≦20、または≦15、または≦10である。
【0018】
一実施形態では、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aに対する成分Bの重量比は、≦8.0、または≦7.0、または≦6.0、または≦5.0である。
【0019】
一実施形態では、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aに対する成分Bの重量比は、1.00~25.0、または1.50~25.0、または1.90~25.0である。
【0020】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aに対する成分Bの重量比は、1.90~25.0、または1.80~22.0、または1.70~20.0、または1.60~16.0、または1.50~12.0、または1.40~10.0、または1.30~9.00、または1.20~8.00、または1.10~7.00、または1.00~5.00である。
【0021】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bは、組成物の重量に基づいて、≧25重量%、または≧35重量%、または≧45重量%、または≧50重量%、または≧55重量%、または≧60重量%、または≧65重量%の量で存在する。
【0022】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aのオレフィンマルチブロックコポリマーは、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーである。さらなる実施形態では、α-オレフィンは、C3~C8α-オレフィンである。
【0023】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aは、≧0.5g/10分、または≧1.0g/10分、または≧1.5g/10分、または≧2.0g/10分、または≧2.5g/10分、または≧3.0g/10分、または≧3.5g/10分、または≧4.0g/10分、または≧4.5g/10分、または≧5.0g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kg)を有する。
【0024】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aは、≦30g/10分、または≦20g/10分、または≦15g/10分、または≦12g/10分、または≦10g/10分、または≦8.0g/10分、または≦6.0g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kg)を有する。
【0025】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aは、0.5~6.0g/10分、または1.0~6.0g/10分、または1.5~6.0g/10分、または2.0~6.0g/10分、または2.5~6.0g/10分、または3.0~6.0g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kg)を有する。
【0026】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aは、≧0.856g/cc、または≧0.858g/cc、または≧0.860g/cc、または≧0.862g/cc、または≧0.864g/cc、または≧0.866g/cc(1cc=1cm)の密度を有する。
【0027】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aは≦0.900g/cc、または≦0.895g/cc、または≦0.890g/cc、または≦0.885g/cc、または≦0.880g/cc、または≦0.875g/cc、または≦0.870g/cc(1cc=1cm)の密度を有する。
【0028】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aは、0.859~0.900g/cc、または0.860~0.890g/cc、0.862~0.885g/cc、または0.864~0.880g/cc、0.866~0.875g/cc(1cc=1cm)の密度を有する。
【0029】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aは、DSCで測定したとき、溶融温度(T)≧100℃、または≧105℃、または≧110℃、または≧115℃を有する。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aは、DSCで測定したとき、溶融温度(T)≦170℃、または≦16℃、または≦150℃、または≦140℃、または≦130℃、または≦120℃を有する。
【0030】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分AのTに対する成分BのTmhの比率は、≧1.05、または≧1.10、または≧1.15、または≧1.20、または1.05~1.50である。
【0031】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aは、1.2~3.0、さらに1.5~3.0、さらに1.7~3.0の分子量分布(Mw/Mn)を有する。
【0032】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Aは、組成物の重量に基づいて、2.0~40重量%、または5.0~40重量%、または5.0~35重量%、または5.0~30重量%、または5.0~25重量%の量で存在する。
【0033】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、組成物の重量に基づいて、本組成物は、成分AおよびBを、≧40重量%、または≧45重量%、または≧50重量%、または≧55重量%、または≧60重量%含む。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、組成物の重量に基づいて、本組成物は、成分AおよびBを、≧98重量%、または≧95重量%、または≧90重量%、または≧85重量%、または≧80重量%含む。
【0034】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bは、≧0.2g/10分、または≧0.3g/10分、または≧0.4g/10分、または≧0.5g/10分、または≧0.6、または≧0.7g/10分、または≧0.8g/10分のメルトフローレート(230℃、2.16kg)を有する。
【0035】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bは、≦10g/10分、または≦8.0g/10分、または≦6.0g/10分、または≦4.0g/10分のメルトフローレート(230℃、2.16kg)を有する。
【0036】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bは、≦4.0g/10分、または≦3.5g/10分、または≦3.0g/10分、または≦2.5g/10分、または≦2.0g/10分、または≦1.5g/10分、または≦1.0g/10分のメルトフローレート(230℃、2.16kg)を有する。
【0037】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bは、≧0.860g/cc、または≧0.865g/cc、または≧0.870g/cc、または≧0.875g/cc、または≧0.880g/cc(1cc=1cm)の密度を有する。
【0038】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bは、≦0.910g/cc、または≦0.905g/cc、または≦0.900g/cc、または≦0.895g/cc(1cc=1cm)の密度を有する。
【0039】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bは、0.865~0.900g/cc、または0.875~0.895g/cc、または0.870~0.890g/ccの密度を有する。
【0040】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bの小成分aと小成分bとの重量比は、5~40、または10~35、または15~30である。
【0041】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bは、a)プロピレン系ポリマー(「小成分a」)、およびb)プロピレン/α-オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、およびエチレン/α-オレフィンインターポリマー(「小成分b」)のうちの少なくとも1つを含む。
【0042】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bは、a)プロピレン系ポリマー(「小成分a」)、およびb)プロピレン/α-オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、またはエチレン/α-オレフィンインターポリマー(「小成分b」)を含む。
【0043】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bの「小成分a」は、ポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマーである。
【0044】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせにおいて、成分Bの「小成分b」は、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、プロピレン/エチレンコポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマー、およびエチレン/α-オレフィン/α-オレフィンターポリマーのうちの1つ以上を含む。
【0045】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bは、リアクタ内ブレンドである。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、成分Bは、カタロイプロセスに基づいて調製することができる。成分Bの好適な例には、商品名HIFAX、INSPIRE(商標)、ADFLEX、およびDaplen(商標)で入手可能なプロピレン系組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は、組成物の重量に基づいて、≦0.10重量%、または≦0.05重量%、または≦0.02重量%の架橋剤を含む。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は架橋剤を含まない。
【0047】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は、組成物の重量に基づいて、≦0.10重量%、または≦0.05重量%、または≦0.02重量%の発泡剤を含む。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は発泡剤を含まない。
【0048】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせにおいて、成分Cは、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、ハンタイト、酸化アルミニウム、ポリホスホネート、ポリホスフェート、ヒンダードアミン、シアヌレートのような金属水酸化物系の難燃剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0049】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせにおいて、成分Cは、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ポリホスホネート、ポリホスフェート、ヒンダードアミン、またはシアヌレートのうちの少なくとも1つを含む。
【0050】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は、組成物の重量に基づいて、2.0重量パーセント未満、さらに1.0重量パーセント未満、さらに0.5重量パーセント未満、およびさらに0.1重量パーセント未満の油を含む。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は油を含まない。
【0051】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、組成物の重量に基づいて、本組成物は、≦1.00重量%、または≦0.50重量%、または≦0.20重量%、または≦0.10重量%、または≦0.05重量%のスチレンブロックコポリマーまたはターポリマー(例えば、SES、SBS、SEPなど)を含む。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は、スチレンブロックコポリマーまたはターポリマー(例えば、SES、SBS、SEPなど)を含まない。
【0052】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は、組成物の重量に基づいて≦1.00重量%、または≦0.50重量%、または≦0.20重量%、または≦0.10重量%、または≦0.05重量%のポリスチレンを含む。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物はポリスチレンを含まない。
【0053】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は、組成物の重量に基づいて、≦50重量%、または≦40重量%、または≦30重量%、または≦20重量%、または≦10重量%のEVAを含む。
【0054】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は、組成物の重量に基づいて、≦1.00重量%、または≦0.50重量%、または≦0.20重量%、または≦0.10重量%、または≦0.05重量%のEVAを含む。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は、EVAを含まない。
【0055】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は、組成物の重量に基づいて≦1.00重量%、または≦0.50重量%、または≦0.20重量%、または≦0.10重量%、または≦0.05重量%のポリアミドを含む。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物はポリアミドを含まない。
【0056】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物は、組成物の重量に基づいて、5重量パーセント未満、さらに2重量パーセント未満、およびさらに1重量パーセント未満のアジド化合物を含む。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、本組成物はアジド化合物を含まない。
【0057】
本発明の組成物は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0058】
本発明はまた、本明細書に記載の本発明の組成物から形成された少なくとも1つの成分を含む物品を提供する。
【0059】
本発明はまた、発泡体を形成するためのプロセスを提供し、当該プロセスは、本明細書に記載の本発明の組成物を押し出し加工することを含む。
【0060】
本発明の組成物は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0061】
本発明の物品は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0062】
オレフィンマルチブロックコポリマー(成分A)
一実施形態では、オレフィンマルチブロックコポリマーは、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーであり、ポリマーの重量に基づいて、過半量の重合エチレンを含む。
【0063】
用語「オレフィンマルチブロックコポリマー」は、例えば、エチレンおよび1つ以上の共重合性α-オレフィンコモノマーを重合形態で含み、化学的または物理的特性において異なる2つ以上の重合モノマー単位の複数のブロックまたはセグメントによって特徴付けられる。コポリマー中の「エチレン」または「コモノマー」の量に言及する場合、これは、その重合単位を意味すると理解される。いくつかの実施形態では、マルチブロックコポリマーは、以下の式によって表すことができる:
(AB)
式中、nは、少なくとも1であり、好ましくは1より大きい整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上であり、「A」は、ハードブロックまたはセグメントを表し、「B」は、ソフトブロックまたはソフトセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、実質的に分岐状または実質的に星形の様式とは対照的に、実質的に線状の様式で連結される。他の実施形態では、AブロックおよびBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。言い換えれば、ブロックコポリマーは、通常、以下のような構造を有していない。
AAA-AA-BBB-BB
【0064】
さらに他の実施形態では、ブロックコポリマーは、異なるコモノマー(複数可)を含む第3のタイプのブロックを通常有さない。なお他の実施形態では、ブロックAおよびブロックBの各々は、ブロック内に実質的にランダムに分布したモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、残りのブロックとは実質的に異なる組成を有する先端セグメントなどの別個の組成の2つ以上のサブセグメント(またはサブブロック)を含まない。
【0065】
好ましくは、エチレンは、ブロックコポリマー全体の大部分のモル分率を構成し、すなわち、エチレンは、ポリマー全体の少なくとも50モルパーセントを構成している。より好ましくは、エチレンは少なくとも60モルパーセント、少なくとも70モルパーセント、または少なくとも80モルパーセントを構成し、ポリマー全体の実質的な残部は、好ましくは3個以上の炭素原子を有するα-オレフィンである、少なくとも1つの他のコモノマーを含む。いくつかの実施形態において、オレフィンブロックコポリマーは、50モル%~90モル%、または60モル%~85モル%、または65モル%~80モル%のエチレンを含んでもよい。多くのエチレン/オクテンブロックコポリマーについて、好ましい組成物は、ポリマー全体の80モルパーセントを超えるエチレン含有量、およびポリマー全体の10~15モルパーセント、好ましくは15~20モルパーセントのオクテン含有量を含む。
【0066】
オレフィンマルチブロックコポリマーは、さまざまな量の「ハード」および「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、エチレンが、ポリマーの重量に基づいて、95重量パーセント超、または98重量パーセント超、最大100重量パーセントの量で存在する重合単位のブロックである。言い換えれば、ハードセグメント中のコモノマー含有量(エチレン以外のモノマー含有量)は、ポリマーの重量に基づいて、5重量パーセント未満、または2重量パーセント未満であり、最低でゼロになり得る。いくつかの実施形態では、ハードセグメントは、エチレンに由来するすべてまたは実質的にすべての単位を含む。「ソフト」セグメントは、コモノマー含有量(エチレン以外のモノマー含有量)が、ポリマーの重量に基づいて、5重量パーセント超、または8重量パーセント超、10重量パーセント超、または15重量パーセント超の重合単位のブロックである。いくつかの実施形態では、ソフトセグメント中のコモノマー含有量は、20重量パーセント超、25重量パーセント超、30重量パーセント超、35重量パーセント超、40重量パーセント超、45重量パーセント超、50重量パーセント超、または60重量パーセント超であり得、最大100重量パーセントであってもよい。
【0067】
ソフトセグメントは、OBC中に、OBCの総重量の1重量パーセント~99重量パーセント、または5重量パーセント~95重量パーセント、10重量パーセント~90重量パーセント、15重量パーセント~85重量パーセント、20重量パーセント~80重量パーセント、25重量パーセント~75重量パーセント、30重量パーセント~70重量パーセント、35重量パーセント~65重量パーセント、40重量パーセント~60重量パーセント、またはOBCの総重量の45重量パーセント~55重量パーセント存在し得る。逆に、ハードセグメントは、同様の範囲で存在し得る。ソフトセグメントの重量割合およびハードセグメントの重量割合は、DSCまたはNMRから得たデータに基づいて計算することができる。そのような方法および計算は、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Colin L.P.Shan,Lonnie Hazlitt,et al.の名で2006年3月15日出願され、Dow Global Technologies Incに譲渡された、「エチレン/α-オレフィンブロックインターコポリマー」と題された米国特許第7,608,668号に開示されている。特に、ハードセグメントおよびソフトセグメントの重量割合ならびにコモノマー含有量は、US7,608,668の第57欄~第63欄に記載されるように決定されてもよい。
【0068】
オレフィンブロックコポリマーは、好ましくは線状方式で接合された、2つ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわち、ペンダントまたはグラフト様式ではなく、重合エチレン性官能基に関して端部と端部とが接合している化学的に区別された単位を含むポリマーである。一実施形態では、ブロックは、組み込まれたコモノマーの量またはタイプ、密度、結晶化度の量、そのような組成のポリマーに起因する結晶子サイズ、立体規則性のタイプまたは程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、部位規則性もしくは部位不規則性、分岐(長鎖分岐もしくは超分岐を含む)の量、均一性、または他の任意の化学的もしくは物理的特性が異なる。逐次モノマー付加、流動性触媒、またはアニオン重合技術によって生成されたインターポリマーを含む先行技術のブロックインターポリマーと比較して、本発明のOBCは、一実施形態においては、それらの調製に使用される複数の触媒と組み合わせたシャトル剤(複数可)の効果のために、両ポリマー多分散性(PDIまたはMw/MnまたはMWD)の唯一の分布、ブロック長分布、および/またはブロック数分布によって特徴付けられる。
【0069】
一実施形態において、OBCは連続プロセスで製造され、1.7~3.5、または1.8~3、または1.8~2.5、または1.8~2.2の多分散指数、PDI(またはMWD)を有する。バッチまたは半バッチプロセスで生成される場合、OBCは、1.0~3.5、または1.3~3、または1.4~2.5、または1.4~2のPDIを有する。
【0070】
加えて、オレフィンブロックコポリマーは、ポアソン分布ではなくシュルツ-フローリー分布に適合するPDIを有する。本発明のOBCは、多分散ブロック分布ならびにブロックサイズの多分散分布の両方を有する。これにより、改善された区別可能な物理的特性を有するポリマー生成物が形成される。多分散ブロック分布の理論的利点は、Potemkin,Physical Review E (1998)57(6),pp.6902-6912、およびDobrynin,J.Chem.Phvs.(1997)107(21),pp9234-9238において以前にモデル化され、考察されている。
【0071】
一実施形態では、本オレフィンブロックコポリマーは、ブロック長の最も確かな分布を有する。一実施形態では、オレフィンブロックコポリマーは、以下のものを有すると定義される。
(A)1.7~3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(摂氏)、および密度d(グラム/立方センチメートル)、ここで、Tmおよびdの数値は、以下の関係に対応し、Tm>-2002.9+4538.5(d)-2422.2(d)、ならびに/または
(B)1.7~3.5のMw/Mn、J/gでの融解熱ΔH、および最高DSCピークと最高結晶化温度分析分留(「CRYSTAF」)ピークとの間の温度差として定義される、摂氏でのデルタ量ΔTによって特徴付けられ、ここで、ΔTおよびΔHの数値は、以下の関係を有し、
ΔHがゼロより大きく、最大130J/gの場合、ΔT>-0.1299ΔH+62.81、
ΔHが130J/gを超える場合、ΔT≧48℃、
CRYSTAFピークが、累積ポリマーのうちの少なくとも5パーセントを使用して決定され、ポリマーのうちの5パーセント未満が識別可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は30℃であり、ならびに/または
C)エチレン/α-オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムで測定した、300%歪みおよび1サイクルでの弾性回復率Re(パーセント)、ならびに密度d(グラム/立方センチメートル)、ここでエチレン/α-オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に有しない場合、Reおよびdの数値は以下の関係を満たす:
Re>1481-1629(d)、ならびに/または
(D)TREFを使用して分画したときに40℃~130℃で溶出する分子画分を持ち、画分が(-0.2013)T+20.07以上の量、より好ましくは(-0.2013)T+21.07以上の量のモルコモノマー含有量を有することを特徴とする(ここでTは、TREF画分のピーク溶出温度(℃で測定される)の数値である)、ならびに/または、
(E)25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)、および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を有し、G’(25℃)のG’(100℃)に対する比率は、1:1~9:1の範囲にある。
オレフィンブロックコポリマーはまた、以下を有してもよい。
(F)画分が、少なくとも0.5かつ最大1のブロックインデックスおよび1.3超の分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする、TREFを使用して分画したときに40℃~130℃で溶出する分子画分、ならびに/または
(G)ゼロ超かつ最大1.0の平均ブロックインデックスおよび1.3超の分子量分布Mw/Mn。オレフィンブロックコポリマーは、特性(A)~(G)のうちの1つ、いくつか、全て、または任意の組み合わせを有してもよいことが理解される。ブロックインデックスは、その目的のために本明細書に参照によって組み込まれる米国特許第7,608,668号に詳述されるように決定され得る。特性(A)~(G)を決定するための分析方法は、例えば、その目的のために、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,608,668号、第31欄26行目~第35欄44行目に記載されている。
【0072】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックインターポリマー、およびさらなるコポリマーは、特性(A)~(G)のうちのいずれか1つを含んでもよく、または(A)~(G)のうちの2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
【0073】
本OBCの調製に使用するのに好適なモノマーには、エチレンおよびエチレン以外の1つ以上の付加重合性モノマーが含まれる。好適なコモノマーの例としては、3~30個、好ましくは3~20個の炭素原子の直鎖または分岐α-オレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセン;3~30個、好ましくは3~20個の炭素原子のシクロオレフィン、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、および2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-ナフタレン;ジ-オレフィンおよびポリオレフィン、例えば、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、および5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン;ならびに3-フェニルプロペン、4-フェニルプロペン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、および3,3,3-トリフルオロ-1-プロペンが挙げられる。好ましいα-オレフィンとしては、C3~C20α-オレフィン、好ましくはC3~C10α-オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。より好ましいα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンが挙げられ、より好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンが挙げられる。
【0074】
オレフィンブロックコポリマーは、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第7,858,706号に記載されているような鎖シャトリングプロセスを介して生成され得る。具体的には、好適な鎖シャトリング剤および関連情報については、第16欄39行目~第19欄44行目に列挙されている。好適な触媒については、第19欄45行目~第46欄19行目に、好適な共触媒については、第46欄20行目~第51欄28行目に記載されている。プロセスについては文書全体で、具体的には第51欄29行目~第54欄56行目に記載されている。プロセスについてはまた、例えば、次の米国特許第7,608,668号、同第7,893,166号、および同第7,947,793号にも記載されている。
【0075】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、0.910g/cc以下、さらに0.905g/cc以下、さらに0.900g/cc以下、さらに0.885g/cc以下の密度を有する。
【0076】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、0.882g/cc以上、さらに0.885g/cc以上、さらに0.887g/cc以上の密度を有する。密度は、ASTM D-792-08の手順によって測定される。
【0077】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、90℃を超え、さらに100℃を超える融点を有する。融点は、参照によって本明細書に組み込まれる、米国公開第2006/0199930号(WO2005/090427)に記載される示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。
【0078】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、ASTMD-1238(190℃、負荷2.16kg)を用いて決定されるとき、0.1g/10分以上、さらに0.5g/10分以上、さらに1g/10分以上のメルトインデックス(I2)を有する。
【0079】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、ASTMD-1238(190℃、負荷2.16kg)を用いて決定されるとき、50g/10分以下、さらに20g/10分以下、さらに10g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有する。
【0080】
オレフィンマルチブロックコポリマーは、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0081】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0082】
各種実施形態
a)組成物であって、以下の成分、
A)I2≦30g/10分を有するオレフィンマルチブロックコポリマーと、
B)プロピレン系組成物であって、
a)プロピレン系ポリマー、ならびに
b)プロピレン/α-オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、およびエチレン/α-オレフィンインターポリマーのうちの少なくとも1つ、を含み、
当該プロピレン系組成物は、Tm(最高融点)≧130℃を有するプロピレン系組成物と、を含む組成物。
b)成分C)少なくとも1つの難燃剤をさらに含み、小成分b)がプロピレン/α-オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、またはエチレン/α-オレフィンインターポリマーである上記a)の組成物。
c)成分Aに対する成分Bの重量比が≧1.00または≧1.50である、上記a)またはb)の組成物。
d)成分Aに対する成分Bの重量比が1.00~25.0、または1.50~25.0、または1.50~15.0、または1.50~10.0、または1.50~8.0、または1.50~6.0、または1.50~5.0、または1.50~4.0である、上記a)~c)のいずれか1つの組成物。
e)成分Bが組成物の重量に基づいて≧25重量%、または≧30重量%の量で存在する、上記a)~d)のいずれか1つの組成物。
f)成分Aのオレフィンマルチブロックコポリマーがエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーである、上記a)~e)のいずれか1つの組成物。
g)α-オレフィンがC3-C8のα-オレフィンである、上記f)の組成物。
h)成分Aが0.5~30g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kg)を有する、上記a)~g)のいずれか1つの組成物。
i)成分Aが0.5~8.0g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kg)を有する、上記a)~h)のいずれか1つの組成物。
j)成分Aが0.860~0.890g/ccの密度を有する、上記a)-i)のいずれか1つの組成物。
k)成分Aが、DSCで測定したとき、溶融温度(T)≧100℃を有する、上記a)~j)のいずれか1つの組成物。
l)成分AのTに対する
成分BのTmhの比率が≧1.05、または≧1.10、または≧1.15である、上記a)-k)のいずれか1つの組成物。
m)成分AのTに対する成分BのTmhの比率が≦2.00、または≦1.75、または≦1.50である、上記a)-l)のいずれか1つの組成物。
n)成分Bがメルトフローレート(230℃、2.16kg)≦10g/10分、または≦8.0g/10分、または≦6.0g/10分、または≦4.0g/10分、または≦2.0g/10分、または≦1.5g/10分、または≦1.0g/10分を有する、上記a)~m)のいずれか1つの組成物。
o)成分Bが0.870~0.910g/ccの密度を有する、上記a)-n)のいずれか1つの組成物。
p)成分Bについて、
小成分aはポリプロピレンホモポリマーであり、小成分bはプロピレン/エチレンコポリマーである、上記a)-o)のいずれか1つの組成物。
q)成分Bがリアクタ内ブレンドまたはアロイである、上記a)~p)のいずれか1つの組成物。
r)成分Bがインパクトコポリマーポリプロピレンである、上記a)~p)のいずれか1つの組成物。
s)組成物が、組成物の重量に基づいて≦0.1重量%の架橋剤を含む、上記a)-r)のいずれか1つの組成物。
t)組成物が、組成物の重量に基づいて≦0.10重量%の発泡剤を含む、上記a)-s)のいずれか1つの組成物。
u)成分Cが、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ポリホスホネート、ポリホスフェート、ヒンダードアミン、またはシアヌレートのうちの少なくとも1つを含む、上記a)~t)のいずれか1つの組成物。
v)組成物が、ISO527-3に準拠した引張弾性率≦100MPaをさらに含む、上記a)~u)のいずれか1つの組成物。
w)組成物が、ISO527-3に準拠した引張強度≧7MPaをさらに含む、上記a)~v)のいずれか1つの組成物。
x)組成物が、ISO527-3に準拠した、20~100MPaの引張弾性率および7MPaを超える引張強度をさらに含む、上記a)~w)のいずれか1つの組成物。
y)組成物が、本明細書に記載の方法に従って良好な溶接性をさらに含む、上記a)~x)のいずれか1つの組成物。
z)上記a)~y)のいずれか1つの組成物から形成された少なくとも1つの成分を含む物品。
【0083】
添加剤
一実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1つの添加剤を含む。適切な添加剤には、充填剤、酸化防止剤、UV安定剤、難燃剤、着色剤または顔料、酸化亜鉛、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、離型剤、加工助剤、機能性繊維、難燃剤助剤、接着促進剤、表面改質剤、帯電防止剤、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、ビスフェノール、およびチオビスフェノール;置換ヒドロキノン;トリス(アルキルフェニル)ホスファイト;ジアルキルチオジプロピオン酸塩;フェニルナフチルアミン;置換ジフェニルアミン;ジアルキル、アルキルアリール、およびジアリール置換p-フェニレンジアミン;モノマーおよびポリマーのジヒドロキノリン;2-(4-ヒドロキシ-3,5-t-ブチルアニリン)-4,6-ビス(オクチルチオ)1,3,5-トリアジン;ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル-s-トリアジン;2,4,6-トリス(n-1,4-ジメチルペンチルフェニレンジアミノ)-1,3,5-トリアジン;ならびにトリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートが含まれるがこれらに限定されない。
【0085】
用途
本発明はまた、本発明の組成物から形成された少なくとも1つの成分を含む物品を提供する。物品には、屋根材、ウェザーストリップ、ベルト、ホース、ワイヤーおよびケーブルジャケット、チューブ、床材、ガスケット、成形品、シート、および押し出し部品が含まれるが、これらに限定されない。追加の物品には、履物用部品、スポーツ用品、自動車部品(例えば、ダッシュボードやウィンドウシール)、コンピューター部品、家庭用電化製品、および玩具が含まれる。
【0086】
本組成物は、多くの従来のプロセスおよび装置のうちのいずれか1つによって完成品に形成することができる。例示的なプロセスには、押し出し、カレンダー加工、射出成形、圧縮成形、および当技術分野で知られている他の典型的なプロセスが含まれるが、これらに限定されない。例えば、物品は、射出成形、押し出しに続く熱成形、低圧成形、圧縮成形、バンフォームプロセスなどによって作製することができる。
【0087】
定義
相反する記載、文脈から暗示的、または当該技術分野において慣習的でない限り、全ての部およびパーセントは重量に基づくものであり、全ての試験方法は本開示の出願日現在のものである。
【0088】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、組成物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を含む、材料の混合物を含む。
【0089】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、同じ種類または異なる種類に限らず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下に、1つの種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指す)、および以下に定義されるインターポリマーという用語を包含する。例えば、触媒残渣などの微量の不純物が、ポリマー中および/またはポリマー内に組み込まれ得る。
【0090】
本明細書で使用される「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合により調製されるポリマーを指す。したがってインターポリマーという総称には、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すのに用いられる)、および3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されたポリマー、ターポリマーなどが含まれる。
【0091】
本明細書で使用される「オレフィン系ポリマー」という用語は、50重量%または過半量のオレフィンモノマー、例えば、エチレンまたはプロピレン(ポリマーの重量に基づいて)を重合形態で含むポリマーを指し、任意に1種以上のコモノマーを含み得る。
【0092】
本明細書で使用される「エチレン系ポリマー」という用語は、重合形態で、50重量%または過半量のエチレンモノマー(ポリマーの重量に基づいて)を含むポリマーを指し、任意に1種以上のコモノマーを含んでもよい。
【0093】
本明細書で使用される「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、重合形態で、(インターポリマーの重量に基づいて)50重量%または過半量のエチレンモノマーおよび少なくとも1つのα-オレフィンを含むインターポリマーを指す。本開示の文脈で使用される場合、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、エチレン/α-オレフィンマルチブロックインターポリマーを除外する。
【0094】
本明細書で使用される「エチレン/α-オレフィンコポリマー」という用語は、重合形態で、50重量%または過半量のエチレンモノマー(コポリマーの重量に基づいて)と、α-オレフィンとを2種類のみのモノマーとして含むコポリマーを指す。本開示の文脈で使用される場合、エチレン/α-オレフィンコポリマーは、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーを除外する。
【0095】
本明細書で使用される「プロピレン系ポリマー」という用語は、重合形態で、過半量のプロピレンモノマー(ポリマーの重量に基づいて)を含むポリマーを指し、任意に1種以上のコモノマーを含んでもよい。
【0096】
本明細書で使用される場合、「プロピレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、重合形態で、(インターポリマーの重量に基づいて)過半量のプロピレンモノマーおよび少なくとも1つのα-オレフィンを含むインターポリマーを指す。
【0097】
本明細書で使用される「プロピレン/α-オレフィンコポリマー」という用語は、重合形態で、過半量のプロピレンモノマー(コポリマーの重量に基づいて)と、α-オレフィンとを2種類のみのモノマーとして含むコポリマーを指す。
【0098】
本明細書で使用される場合、「プロピレン/エチレン-オレフィンインターポリマー」という用語は、重合形態で、(インターポリマーの重量に基づいて)過半量のプロピレンモノマーおよびエチレンを含むインターポリマーを指す。
【0099】
本明細書で使用される「プロピレン/エチレンコポリマー」という用語は、重合形態で、過半量のプロピレンモノマー(コポリマーの重量に基づいて)と、エチレンとを2種類のみのモノマーとして含むコポリマーを指す。
【0100】
本明細書で使用される「プロピレン系ポリマー組成物」という用語は、過半量のプロピレン系ポリマーを含む組成物を指す。
【0101】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、任意の追加の構成要素、ステップ、または手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。疑念を避けるために、「含む」という語の使用を通じて請求項に記載されるすべての組成物は、相反する記載がない限り、重合されているかどうかに関わらず、追加の添加剤、助剤、または化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、任意の続く列挙の範囲から任意の他の成分、ステップ、または手順を除外する。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていない任意の成分、ステップ、または手順を排除する。
【0102】
試験方法
密度
ポリマー密度は、ASTM D-792に従って測定された。
【0103】
メルトインデックス
エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I2)をASTM D-1238、条件190℃/2.16kgに従って測定する。エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I5)をASTM D-1238、条件190℃/5.0kgに従って測定する。エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I10)をASTM D-1238、条件190℃/10.0kgに従って測定する。エチレン系ポリマーの高荷重メルトインデックス(I21)をASTM D-1238、条件190℃/21.0kgに従って測定する。プロピレン系ポリマーのメルトフローレート(MFR)は、ASTM D-1238、条件230℃/2.16kgに従って測定される。
【0104】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)は、エチレン系(PE)試料およびプロピレン系(PP)試料の結晶化度を測定するために使用される。約5~8mgのフィルム試料を秤量し、DSC皿の中に入れる。蓋を皿に圧着し、密閉雰囲気を確保する。試料皿をDSCセルの中に入れ、次いで、約10℃/分の速度で、PEの場合180℃(PPの場合230℃)の温度まで加熱する。試料をこの温度で3分間保持する。次いで、試料を10℃/分の速度でPEの場合-60℃(PPの場合-40℃)に冷却し、その温度で3分間等温に保持する。次に、試料を、完全に溶融するまで10℃/分の速度で加熱する(第2の加熱)。第2の熱曲線から決定した融解熱(H)を、PEの場合292J/gの理論融解熱(PPの場合165J/g)で除算し、この量に100を乗算することによって、結晶化度パーセントを計算する(例えば、結晶化度%=(H/292J/g)×100(PEの場合))。
【0105】
別段の記載がない限り、各ポリマーの融点(複数可)(T)は、第2の熱曲線から決定され、結晶化温度(T)は、第1の冷却曲線から決定される。
【0106】
ゲル浸透クロマトグラフィー
クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL-210またはPolymer Laboratories ModelPL-220のいずれかで構成されていた。カラムおよびカルーセル区画を140℃で操作した。カラムは3つのPolymer Laboratories、10ミクロンMixed-Bカラムであった。使用した溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであった。試料を、「50ミリリットルの溶媒に0.1グラムのポリマー」の濃度で調製した。試料の調製に使用した溶媒は、「200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)」を含有していた。試料は、160℃で2時間、軽く撹拌することによって調製された。注入量は100マイクロリットルであり、流速は、1.0ミリリットル/分であった。
【0107】
GPCカラムセットの較正は、個々の分子量間に少なくとも一桁の間隔を有する、6つの「カクテル」混合物中に配置された、580~8,400,000の範囲の分子量を有する21個の「狭い分子量分布ポリスチレン標準物質」で行われた。標準物質は、Polymer Laboratories(シュロップシャー州、英国)から購入した。ポリスチレン標準液は、分子量が1,000kg/mol以上の場合は「50ミリリットルの溶媒に0.025グラム」、分子量が1,000kg/mol未満の場合は「50ミリリットルの溶媒に0.05グラム」で調製した。ポリスチレン標準液を、穏やかに撹拌しながら、摂氏80度で30分間溶解した。狭い標準混合物を最初に較正し、劣化を最小限に抑えるよう「最高分子量」成分を減少させる順で較正した。ポリスチレン標準物質ピーク分子量を、以下の式を使用してポリエチレン分子量に変換した:Mポリエチレン=Ax(Mポリスチレン、式中、Mが分子量であり、Aが0.431の値を有し、Bが1.0に等しい(Williams and Ward,J.Polym.Sc.、Polym. Let.、6、621(1968年)に記載)。ポリエチレン等価分子量計算は、Viscotek TriSECソフトウェアバージョン3.0を使用して行った。
【0108】
機械的性質の評価
各高分子膜の物理的強度は、ISO527-3に準拠した引張試験により、5Aパンチ試験片を使用して200mm/分の延伸速度で評価した。各膜は、縦方向と横方向(それぞれ、MDとCD)で試験され、5つのサンプルの平均が報告された。
【0109】
熱風溶接特性の評価(溶接試験)
高分子膜は、LeisterTriac-S手持ち式熱溶接機で熱溶接された。膜を8cm重ね、幅20mmのダイノズルを使用して、溶接機の設定温度230℃で、次の方法を使用して熱溶接した。膜を固定するための3点溶接と、1回目の溶接と、より時間をかけた2回目の溶接。サンプルを周囲条件で24時間保管し、「1cm」の試験片を溶接継ぎ目上で垂直に切断し、ペンチを使用して引張試験を実施した。
【0110】
サンプルは、0(溶接不良:溶接継ぎ目で発生する破損)から5(溶接継ぎ目の外側で発生する破損を伴う非常に良好な溶接)で評価された。各膜は溶接され、引張試験が2回行われた。溶接試験方法の説明を次のように図1図3に示す。図1は、溶接試験のサンプル調製を示している。図2は、溶接試験用のストリップ(試験サンプル)の切断方法を示している。図3は、サンプルが破損するまでペンチで引き裂くという、溶接品質の試験方法を示している。
【0111】
耐火性能の評価
難燃性の耐火性能は、EN11952-2(スモールバーナー試験)、ユーロクラスDに準拠した端部着火モード(30秒の火炎適用および合計試験時間60秒)に従って試験した。各配合物は5回試験され、平均が報告された。
【0112】
実験
材料
この試験で使用される材料を以下の表1に示す。PE安定剤マスターバッチの組成を以下の表2に示す。
【表1】
【表2】
【0113】
実施例セット1
実施例Comp1~Comp-5およびInv-1~Inv-8の配合(組成)を表3に示す。
【0114】
比較組成物1ならびに本発明の組成物1および2はそれぞれ、着色剤安定剤マスターバッチおよび38.2重量%のMg(OH)難燃剤を含む、北米規格に準拠した屋根材配合物を表す。比較組成物1は、「HIFAX CA10A」参照組成物である。本発明の組成物1および2は、それぞれ、HIFAX CA10AおよびINFUSE 9507の80/20および60/40ブレンドから作られている。
【0115】
比較組成物2ならびに本発明の組成物3および4はそれぞれ、着色剤安定剤マスターバッチ、39.0重量%のMg(OH)難燃剤、および9.8重量%の炭酸カルシウムを含む、ヨーロッパの屋根材配合物を表す。比較組成物2は、「HIFAX CA10A」参照組成物である。本発明の組成物3および4は、それぞれ、HIFAX CA10AとINFUSE 9507の80/20および60/40ブレンドから作られている。
【0116】
本発明の組成物5および6は、それぞれ、着色剤安定剤マスターバッチおよび38.2重量%のMg(OH)難燃剤を含む、HIFAX CA10AおよびINFUSE 9507の70/30および96/4ブレンドから作られている。本発明の組成物7は、着色剤安定剤マスターバッチのみを含みMg(OH)を含まない、HIFAX CA10A/INFUSE 9507の60/40ブレンドから作られている。比較組成物3は、着色剤安定剤マスターバッチおよび38.2重量%のMg(OH)難燃剤を含む、HIFAX CA10A/INFUSE 9507の40/60ブレンドから作られている。本発明の組成物8は、着色剤安定剤マスターバッチおよび38.2重量%のMg(OH)難燃剤を含む、HIFAX CA10A/INFUSE 9900の70/30ブレンドから作られている。
比較組成物4および5は、HIFAX CA10AとENGAGE8842の60/40ブレンドから作られている。
【表3】
【0117】
各配合物は、「ZE25mm」直接押し出しライン上で混合され、「幅300mm」のフラットスリットと3段階のカレンダーを通して「厚さ1mm」のシートに成形された。実施例Comp-1~Comp-5およびInv-1~Inv-8の混合、押し出し、および成形条件を表4に示す。
【表4】
【0118】
表5に、実施例のComp-1~Comp-5およびInv-1~Inv-8の引張特性と溶接性の結果を示す。引張試験用の試験サンプルは、ISO-527-3に従って、周囲条件下でそれぞれ200mm/分で引っ張った。
【表5】
【0119】
表5に示すように、HIFAXCA10AにINFUSE9507(MI30、密度0.866g/cm)を添加することにより、柔軟性が向上する(弾性率が低下)。2つのHIFAXCA10A系の比較例(Comp-1およびComp-2)の引張弾性率は、それぞれ105および132MPaである。本発明の実施例(Inv-1~Inv-8)はすべて、20~100MPaの範囲の著しく低い引張弾性率を有する。本発明の組成物では引張強度が低下しているが、引張強度は依然として一般的な膜要件である7MPAを上回っている。本発明の実施例(Inv-1~Inv-8)のHIFAX CA10AとOBCの比率は、96/4~80/20、70/30、および60/40である。比較例のComp-3に示すように、HIFAX CA10AとOBCの比率が40/60になると(つまり、ブレンド内のINFUSE OBCが増えると)、引張弾性率(12MPa)と引張強度(6MPa)が非常に低くなる。本発明の組成物Inv-8は、HIFAX CA10Aとのブレンド成分として、異なるOBC(INFUSE 9900、MI30、密度0.880g/cm)を使用している。この実施例は、柔軟性(低い弾性率<100MPa)の改善と良好な引張強度(>7MPa)も示している。本発明の組成物については、破断時の伸びもまた、HIFAX CA10A系の比較例(Comp-1およびComp-2)と比較して改善されている。HIFAXCA10Aとエチレン/オクテンランダムコポリマーENGAGE8842のブレンドから作られた比較例(Comp-4とComp-5)も、柔軟性が向上し(それぞれ引張弾性率31と16MPa)、良好な引張強度(それぞれ12.2と16.1MPa)を有している。ただし、溶接性試験は不合格である(次の考察を参照されたい)。
【0120】
各完成膜の「熱風溶接性」は、LEISTER TRIAC 5、手持ち式、300℃、25mmノズルを用いて、溶接速度約20cm/分で溶接することによって評価した。溶接継ぎ目の品質は、室温で24時間後に、再び請負業者の基準に従って、ペンチで10mmのストリップを引っ張ることによって試験した。溶接試験の「合格」(良好な溶接性)の指標は、溶接されたストリップを引っ張っている間は継ぎ目は無傷のままであるが、膜は伸展し、最終的に継ぎ目の外側で破損することである。この種類の破損の仕方は、強い溶接性を示しており、溶接試験に合格したと見なされる。溶接試験の「不合格」の指標は、継ぎ目での層間剥離という、望ましくない破損の仕方に関連し、2つの膜の溶接性が低いことを示している。本発明の実施例はすべて溶接性試験に合格し、いずれの場合もサンプルの破損は継ぎ目の外側である。いくつかの比較例(Comp-1~Comp-3)も溶接性試験に合格しているが、望ましい柔軟性(引張弾性率<100MPa)と良好な引張強度(>7MPa)がない。HIFAX CA10Aとエチレン/オクテンランダムコポリマーENGAGE8842のブレンドから作られた比較例(Comp-4とComp-5)は、引っ張られると継ぎ目が層間剥離を示すため、溶接性試験に不合格である。
【0121】
要約すると、HIFAX CA10AとINFUSE OBCに関連する本発明の実施例は、良好な柔軟性(<100MPa)、良好な引張強度(>7MPa)、および良好な溶接性を有し、HIFAX CA10AとOBCの比率は1.5~25(すなわち、96/4~60/40)である。良好な柔軟性(<100MPa)、良好な引張強度(>7MPa)、および良好な溶接性の3つの特性すべてが、PP系のポリオレフィンとOBCの1.5~25(つまり、96/4~60/40)の比率範囲を超えることは予想されていなかったため、これは驚くべきことである。実際、PP系のポリオレフィンとOBCとの比率においてOBCの量が増加すると、当業者であれば、引張強度の低下および/または溶接性の低下を予想するだろう。
【0122】
難燃性化合物の耐火性能は、EN11952-2に従って、ユーロクラスBの要件に準拠した小型バーナー試験で評価された(合計試験時間60秒で30秒の火炎暴露、端部着火でクラスB)。表6に、試験結果(150mmマークに到達するまでの秒単位の時間と観測値)を示す。
【0123】
本発明の配合物は、比較サンプルと同じ耐火性能レベルを有する。厚さ約1mmの単層シートの場合、150mmまで燃焼する時間は40~50秒の範囲であり、すべてのサンプルで燃焼液滴が見られた。したがって、このような耐火性能を備えた配合物は、「厚さ1.5mm」の布で補強された屋根材膜に加工された場合、EN1187屋根材膜システム試験に合格するはずである。
【表6】
【0124】
実施例セット2
実施例Comp-6~Comp-10、Inv-9は、INFUSE OBC(INFUSE 9507)とのブレンド成分としてさまざまな種類のPP材料に広げた。実施例Comp-6~Comp-10およびInv-9の配合(組成)を表7に示す。
【0125】
比較組成物6~9は、ブレンド成分としてホモポリマーPP(INSPIRE215)を使用している。Comp-6、Comp-7、およびComp-8は、着色剤安定剤マスターバッチと38.2重量%のMg(OH)難燃剤を含み、INSPIRE215とOBCの比率がそれぞれ80/20、60/40、および40/60である。Comp-9のINSPIRE215とOBCの比率は60/40で、着色剤安定剤マスターバッチのみを含み、難燃剤は含んでいない。比較組成物10および本発明の組成物9は、ブレンド成分としてインパクトコポリマーPP(INSPIRE137)を使用している。Comp-10は、着色剤安定剤マスターバッチと38.2重量%のMg(OH)難燃剤を含み、INSPIRE137とOBCの比率が40/60である。Inv-9のINSPIRE137とOBCの比率は60/40で、着色剤安定剤マスターバッチのみを含み、難燃剤は含んでいない。
【表7】
【0126】
各配合物は、「ZE25mm」直接押し出しライン上で混合され、「幅300mm」のフラットスリットと3段階のカレンダーを通して「厚さ1mm」のシートに成形された。実施例Comp-6~Comp-10およびInv-9の混合、押し出し、および成形条件を表8に示す。
【表8】
【0127】
表9に、実施例Comp-6~Comp-10およびInv-9の引張特性と溶接性の結果を示す。試験条件は、前の実施例で説明したものと同じである。ホモPPであるINSPIRE215に基づく比較例では、Comp-6、Comp-7、およびComp-9の引張弾性率がはるかに高く(>100MPa)、これは柔軟性が低いことを意味している。Comp-8は低い弾性率(49.3MPa)を示しているが、5.3MPaの引張強度は所望よりも低い。さらに、Comp-8およびComp-9は、シールの一部の継ぎ目が溶接不良モードを示すため、溶接性試験に不合格である。これらの実施例は、ホモPPがブレンド成分として適切な候補ではないことを示している。
【0128】
Comp-10は低い弾性率(49.3MPa)を示すが、5.5MPaの引張強度は所望よりも低い。対照的に、Inv-9は、低い弾性率(58.4MPa)および良好な引張強度(7.7MPa)、ならびに良好な溶接性を示す。インパクトコポリマーPPは、良好な柔軟性(<100MPa)、良好な引張強度(>7MPa)、および良好な溶接性を付与するために、OBCにブレンドするのに適切な候補となりうる。インパクトコポリマーPPとOBCの比率が1.5(60/40)の組成物は、良好な柔軟性(<100MPa)、良好な引張強度(>7MPa)、および良好な溶接性の3つの特性すべてを備えているとは予想されていなかったため、これは驚くべきことである。実際、当業者であれば、OBCの量がそえほど多いと、引張強度の低下および/または溶接性の低下を予想するであろう。
【表9】


本出願の発明の例として、以下のものが挙げられる。
[1] 組成物であって、以下の成分、
A)I2≦30g/10分を有するオレフィンマルチブロックコポリマーと、
B)プロピレン系組成物であって、
a)プロピレン系ポリマー、ならびに
b)プロピレン/α-オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、およびエチレン/α-オレフィンインターポリマーのうちの少なくとも1つ、を含み、
前記プロピレン系組成物は、Tm (最高融点)≧130℃を有する、プロピレン系組成物と、を含む組成物。
[2] 成分C)少なくとも1つの難燃剤をさらに含み、成分B)の小成分b)は、プロピレン/α-オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、またはエチレン/α-オレフィンインターポリマーである、上記[1]に記載の組成物。
[3] 成分Aに対する成分Bの重量比は≧1.0である、上記[1]または[2]に記載の組成物。
[4] 成分Aに対する成分Bの重量比は1.5~25.0である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5] 成分Bは前記組成物の重量に基づいて≧25重量%、または≧30重量%の量で存在する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6] 成分Aの前記オレフィンマルチブロックコポリマーはエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーである、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7] 成分Aは0.5~30g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kg)を有する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の組成物。
[8] 成分Aは0.860~0.890g/ccの密度を有する、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9] 成分Bは≦10g/10分のメルトフローレート(230℃、2.16kg)を有する、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[10] 成分Bは0.870~0.910g/ccの密度を有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の組成物。
[11] 成分Bについて、小成分aはポリプロピレンホモポリマーであり、小成分bはプロピレン/エチレンコポリマーである、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の組成物。
[12] 成分Bはリアクタ内ブレンドまたはアロイである、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の組成物。
[13] 成分Bはインパクトコポリマーポリプロピレンである、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の組成物。
[14] 前記組成物は、ISO527-3に準拠した≦100MPaの引張弾性率、ISO527-3に準拠した≧7MPaの引張強度、および良好な溶接性をさらに備える、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の組成物。
[15] 上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の組成物から形成される少なくとも1つの成分を含む物品。
図1
図2
図3