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特許7408577ショットブラスト耐性のある識別子を備えた金属ワークピース、そのような識別子をレーザマーキングするための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ショットブラスト耐性のある識別子を備えた金属ワークピース、そのような識別子をレーザマーキングするための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20231225BHJP
【FI】
B23K26/00 B
【請求項の数】 43
(21)【出願番号】P 2020565802
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 CA2019050707
(87)【国際公開番号】W WO2019222855
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】62/676,550
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/745,009
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520302394
【氏名又は名称】レーザラックス インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレーザー アレックス
(72)【発明者】
【氏名】マルテ ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】プリュノー ゴドメール グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ランドリー ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】デシェーヌ ジャン ミシェル
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529548(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107755890(CN,A)
【文献】A. Fraser, J. Maltais, M. Hartlieb, C. Frayssinous, R.Valle and X. P. Godmaire,Review oftechnologies for identification of die casting parts,NADCA Die Casting Congress proceedings,2016,米国,laserax,https://www.laserax.com/sites/default/files/public/assets/technical-paper/files/review of technologies for identification of die casting parts.pdf
【文献】WOLDARCZYK, K,Laser microsculpting for the generation of robust dffractive security markings on the surfice of metals,Journal of Materials Processing Technology,2015年08月,https://doi.org/10.1016/j_jmatprotec.2015.03.001
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と、前記表面にマーキングされた識別子と、を含む、金属ワークピースであって、
前記識別子は、各セルが、対応するセルを有する複数のセルを有し、
前記識別子は、第1の2進数値に対応する複数の明セルと、前記第1の2進数値とは異なる第2の2進数値に対応する複数の暗セルと、を有し、
前記複数の暗セルの各々は、前記表面に対して相対的に陥凹している中央部分を含み、それにより、前記対応する暗セル内の外周壁によって境界付けられた陥凹を残し、
前記陥凹は、少なくとも100ミクロンの深さを有し、かつ400ミクロン~1750ミクロンの範囲の幅を有する開口部を有し、前記陥凹の幅は、前記対応するセルの30パーセント~99パーセントに相当し、そのため、前記対応する暗セルは、光学リーダに対して暗く見え、
前記対応する暗セルの前記深さ、前記幅、および前記対応するセルは、レーザマーキングされた識別子にショットブラスト耐性を提供する、
金属ワークピース。
【請求項2】
前記明セルの各々は、前記金属ワークピースが以前にショットブラストされたことを示すテクスチャを有し、前記識別子は、前記光学リーダによって読み取り可能である、請求項1に記載の金属ワークピース。
【請求項3】
前記陥凹の前記深さは、少なくとも150ミクロンである、請求項1に記載の金属ワークピース。
【請求項4】
前記陥凹の前記深さは、少なくとも300ミクロンである、請求項1に記載の金属ワークピース。
【請求項5】
前記開口部の前記幅は、前記対応するセルの60パーセント~95パーセントの範囲である、請求項1に記載の金属ワークピース。
【請求項6】
前記開口部の前記幅は、前記対応するセルの70パーセント~89パーセントの範囲である、請求項1に記載の金属ワークピース。
【請求項7】
前記幅に対する前記深さのアスペクト比は、0.2~2の範囲である、請求項1に記載の金属ワークピース。
【請求項8】
前記アスペクト比は、0.3~1.5の範囲である、請求項7に記載に金属ワークピース。
【請求項9】
前記開口部の前記幅は、600ミクロン~850ミクロンの範囲である、請求項1に記載の金属ワークピース。
【請求項10】
前記識別子は、データマトリックスの形態で提供される、請求項1に記載の金属ワークピース。
【請求項11】
前記開口部は、四角形の形状を有する、請求項1に記載の金属ワークピース。
【請求項12】
前記金属ワークピースは、アルミニウム製である、請求項1に記載の金属ワークピース。
【請求項13】
生産ラインに沿って金属ワークピースにショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングする方法であって、前記方法は、
前記生産ラインに沿って金属ワークピースを受け取ることと、
前記受け取られた金属ワークピースにレーザマーキングされる識別子を示す識別子データを取得することであって、前記識別子は、各セルが、対応するセルを有する複数のセルを有し、前記複数のセルは、第1の2進数値に対応する複数の明セルと、第2の2進数値に対応する複数の暗セルと、を有する、取得することと、
前記識別子データに基づいて、前記複数の暗セルの各々について、前記対応する暗セルの中央部分においてのみ前記金属ワークピースの表面から金属をレーザ除去し、それにより、前記対応する暗セル内の外周壁によって境界付けられた陥凹を残すことによって、前記受け取られた金属ワークピースの前記表面上の前記識別子をレーザマーキングすることであって、前記陥凹は、少なくとも100ミクロンの深さを有し、かつ400ミクロン~1750ミクロンの範囲の幅を有する開口部を有し、前記陥凹の幅は、前記対応するセルの30パーセント~99パーセントに相当し、そのため、前記対応する暗セルは、光学リーダに対して暗く見え、前記対応する暗セルの前記深さ、前記幅、および前記対応するセルは、前記レーザマーキングされた識別子にショットブラスト耐性を提供する、レーザマーキングすることと、を含む、方法。
【請求項14】
前記レーザマーキングすることの後に、前記レーザマーキングされたショットブラスト耐性のある識別子をショットブラストすることを含む、前記金属ワークピースをショットブラストすることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザマーキングすることおよび前記ショットブラストすることの後に、前記光学リーダを使用して前記識別子を読み取ることと、前記読み取りに基づいて前記金属ワークピースを追跡することと、をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記受け取ることは、ロボットアームを使用してワーク製造ステーションから他の場所に前記金属ワークピースを操作することを含み、前記レーザマーキングは、前記ロボットアームによる前記操作中および前記操作後のうち少なくとも一方において実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記レーザ除去することは、レーザマーキングビームの焦点を、前記複数の暗セルのうちの少なくとも1つの前記中央部分を包含するラスタ経路に沿って方向付けることを含み、前記ラスタ経路は、前記レーザマーキングビームの前記焦点の寸法よりも小さく、10ミクロン~100ミクロンの範囲の線間隔を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記レーザ除去することは、前記ラスタ経路に沿って前記レーザマーキングビームの前記焦点を所与の回数前記方向付けることを繰り返すことを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記所与の回数が、少なくとも2回である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
表面と、前記表面にマーキングされた識別子と、を含む、金属ワークピースであって、前記識別子は、各セルが、対応するセルを有する複数のセルを有し、前記識別子は、第1の2進数値に対応する複数の明セルと、前記第1の2進数値とは異なる第2の2進数値に対応する複数の暗セルと、を有し、前記複数の暗セルの各々は、前記表面に対して相対的に陥凹している中央部分を含み、それにより、前記対応する暗セル内の外周壁によって境界付けられた陥凹を残し、前記陥凹が有する底壁は、前記底壁の総面積に対する前記底壁の暗領域の比率Rが50%を超えるような深さdで、幅wを有し、前記暗領域は、直径Dを有するショットでは到達不可能な前記底壁の領域を定義する、金属ワークピース。
【請求項21】
前記比率は、60%を超える、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項22】
前記比率は、70%を超える、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項23】
前記比率は、80%を超える、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項24】
前記底壁が正方形の形状を有するとき、前記深さdは、前記直径Dの半分以上であり、前記幅wは、前記直径D以上であり、前記幅wは、以下の不等式:
【数1】
を満たす、請求項20~23のいずれか一項に記載の金属ワークピース。
【請求項25】
前記底壁が正方形の形状を有するとき、前記深さdは、前記直径Dの半分未満であり、前記幅wは、2√(Dd-d)以上であり、前記幅wおよび前記深さdは、ともに以下の不等式:
【数2】
を満たす、請求項20~23のいずれか一項に記載の金属ワークピース。
【請求項26】
前記陥凹の前記深さdは、少なくとも100ミクロンである、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項27】
前記陥凹の前記深さdは、少なくとも150ミクロンである、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項28】
前記陥凹の前記深さdは、少なくとも300ミクロンである、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項29】
前記陥凹は、400ミクロン~1750ミクロンの範囲の陥凹開口幅を有する、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項30】
前記陥凹は、600ミクロン~850ミクロンの範囲の陥凹開口幅を有する、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項31】
前記陥凹は、前記対応するセルの30パーセント~99パーセントに相当する凹部開口幅を有する、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項32】
前記陥凹は、前記対応するセルの60パーセント~95パーセントに相当する凹部開口幅を有する、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項33】
前記陥凹は、前記対応するセルの70パーセント~89パーセントに相当する凹部開口幅を有する、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項34】
前記陥凹は、陥凹開口幅に対する前記深さの、0.2~2の範囲のアスペクト比を有する、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項35】
前記陥凹は、前記陥凹開口幅に対する前記深さの、0.3~1.5の範囲のアスペクト比を有する、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項36】
前記識別子は、データマトリックスの形態で提供される、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項37】
前記金属ワークピースは、アルミニウム製である、請求項20に記載の金属ワークピース。
【請求項38】
生産ラインに沿って金属ワークピースにショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングする方法であって、前記方法は、
前記生産ラインに沿って金属ワークピースを受け取ることと、
以前に取得した識別子データに基づいて、前記金属ワークピースの表面に識別子をレーザマーキングすることであって、前記識別子は、各セルが、対応するセルcを有する複数のセルを有し、前記複数のセルは、第1の2進数値に対応する複数の明セルと、第2の2進数値に対応する複数の暗セルと、を有する、レーザマーキングすることと、を含み、
前記レーザマーキングすることが、前記複数の暗セルの各々について、前記対応する暗セルの中央部分においてのみ前記金属ワークピースの前記表面から金属を除去し、それにより、前記対応する暗セル内の外周壁によって境界付けられた陥凹を残すことを含み、前記陥凹が有する底壁は、前記底壁の総面積に対する前記底壁の暗領域の比率Rが50%を超えるような深さdで、幅wを有し、前記暗領域は、直径Dを有するショットでは到達不可能な前記底壁の領域を定義する、方法。
【請求項39】
前記比率は、60%を超える、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記比率は、70%を超える、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記比率は、80%を超える、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記底壁が正方形の形状を有するとき、前記深さdは、前記直径Dの半分以上であり、前記幅wは、前記直径D以上であり、前記幅wは、以下の不等式:
【数3】
を満たす、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記底壁が正方形の形状を有するとき、前記深さdは、前記直径Dの半分未満であり、前記幅wは、2√(Dd-d)以上であり、前記幅wおよび前記深さdは、ともに以下の不等式:
【数4】
を満たす、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連参照の相互参照
本出願は、2018年5月25日に出願された米国特許仮出願第62/676,550号、および2018年10月12日に出願された米国特許仮出願第62/745,009号の両方の優先権を主張し、それらの各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の改善点は、概して、金属ワークピースのマーキングに関するものであり、より具体的には、そのような金属ワークピースにショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングすることに関連する。
【背景技術】
【0003】
金属ワークピースは、いくつか例を挙げると、鋳造または鍛造を含む多数の異なる技術によって生産され得る。例えば、一般に図1を参照すると、ダイキャストは、一般に、高圧下で溶融金属を金型キャビティに圧入し、ダイキャストステーション12を使用して金属鋳造物10を形成することを伴う。典型的に、金型キャビティは、所望の形状に機械加工された2つの硬化された工具鋼型を有する。金属鋳造物10が作製されるとき、鋼型のうちの1つが移動され、金属鋳造物10を他の鋼型のうちの1つに残し、そこから金属鋳造物10が射出され得る。
【0004】
図示のように、射出された金属鋳造物10は、ダイキャストステーション12から離されて、生産ライン16に沿ってさらなる変形のために、ロボットアーム14を使用して操作される。このような生産ライン16は、金属鋳造物10がトリミングされるトリミングステーション18、金属鋳造物10がショットブラストされるショットブラストステーション20、金属鋳造物10が機械加工される機械加工ステーション22、および金属鋳造物10が通常高温で識別される識別ステーション24を含むことができ、その後、変形された金属鋳造物10が流通され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生産ライン16に沿って金属鋳造物10を識別することにより、変形および流通網を辿ったある時点で、金属鋳造物10の1つに不良が発生した場合に、不良の原因を追跡し、それに応じて対応することが可能になる。金属鋳造物または他の金属ワークピースを識別するための既存の技術は、ある程度満足できるものであったが、改善の余地が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
生産ライン16に沿って可能な限り早期に金属鋳造物10を識別することは、金属鋳造物10が、ダイキャストステーション12と識別ステーション24との間で操作されるときに起こり得る識別エラーを回避することに寄与することができる。さらに、所与の金属鋳造物10が誤って識別される確率は、ダイキャストステーション12と識別ステーション24との間で、所与の金属鋳造物10の操作回数とともに増加するように見える。例えば、生産ライン16では、鋼型の1つから排出されると、金属鋳造物10は、しばしば以下の順序で変形され、金属鋳造物は、ダイキャストステーション12からトリミングステーション18まで操作され、金属鋳造物10は、トリミングステーション18からショットブラストステーション20まで操作され、金属鋳造物10は、ショットブラストステーション20から機械加工ステーション22まで操作され、金属鋳造物10は、機械加工ステーション22から識別ステーション24まで操作され、そこで金属鋳造物10は、データマトリックスなどの専用の識別子で識別される。
【0007】
したがって、本実施例では、所与の金属鋳造物10は、ダイキャストステーション12と識別ステーション24との間で少なくとも3回操作される。これらの操作中に、所与の金属鋳造物10を別の鋳造物10に置き換えられ得、その場合、1つ以上の金属鋳造物10が誤って識別され得、すなわち、所与の金属鋳造物10が、別の異なる金属鋳造物10に属する識別子で代わりに識別される。したがって、これらの状況では、金属鋳造物10が変形および流通網に沿って追跡され得る精度が損なわれる可能性がある。
【0008】
したがって、生産ラインに沿って可能な限り早期に金属鋳造物を識別するために、金属鋳造物は、好ましくは、金属鋳造物がまだダイキャストステーションの鋼型のうちの1つにあるとき、ロボットアームが金属鋳造物をダイキャストステーションの鋼型のうちの1つから離して操作するとき、および/またはダイキャストステーションの直後にある識別ステーションを使用するとき、専用の識別器で識別されるべきである。しかしながら、以前にマーキングされた識別子が損傷、かつさらに消去する可能性がある後続のショットブラストステーションを含む生産ラインでは、このようにして進むことは一般的に好ましくないことである。したがって、本発明者らは、ショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングするための方法およびシステムを本明細書に記載しているが、これは、生産ラインにおいて、可能な限り早期に金属鋳造物の識別を可能にし、かつショットブラストされた後でも依然として読み取り可能にする。いずれにしても、好ましくは、そのようなシステムの精度および効率性の恩恵を受けるために、識別子は、レーザマーキングシステムを使用してマーキングされるべきである。このようなショットブラスト耐性のある識別子を有する金属鋳造物についても記載されている。
【0009】
したがって、金属鋳造物または任意の他の金属ワークピースにショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングする必要がある。
【0010】
一態様によれば、生産ラインに沿った金属ワークピースにショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングする方法が提供され、方法は、生産ラインに沿って金属ワークピースを受け取ることと、受け取られた金属ワークピースにレーザマーキングされる識別子を示す識別子データを取得することであって、識別子は、対応するセルサイズを各々有する複数のセルを有し、複数のセルは、第1の2進数値に対応する複数の明セルと、第2の2進数値に対応する複数の暗セルと、を有する、取得することと、識別子データに基づいて、複数の暗セルの各々について、対応する暗セルの中央部分においてのみ金属ワークピースの表面から金属をレーザ除去し、それにより、対応する暗セル内の外周壁によって境界付けられた陥凹を残すことによって、受け取られた金属ワークピースの表面上の識別子をレーザマーキングすることであって、陥凹は、少なくとも100ミクロンの深さを有し、かつ400ミクロン~1750ミクロンの範囲の幅を有する開口部を有し、かつ対応するセルサイズの30パーセント~99パーセント未満に相当し、そのため、対応する暗セルは、光学リーダに対して暗く見え、対応する暗セルの深さ、幅、および対応するセルサイズは、レーザマーキングされた識別子にショットブラスト耐性を提供する、レーザマーキングすることと、を含む。
【0011】
別の態様によれば、生産ラインに沿って金属ワークピースにショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングするためのシステムが提供され、システムは、レーザマーキングシステムであって、レーザマーキングビームを生成するように構成されており、かつコントローラを使用して制御可能であり、コントローラが、レーザマーキングビームを使用して、金属ワークピースにレーザマーキングされる識別子を示す識別子データを取得する工程であって、識別子は、対応するセルサイズを各々有する複数のセルを有し、複数のセルは、第1の2進数値に対応する複数の明セルと、第2の2進数値に対応する複数の暗セルと、を有する、取得する工程と、識別子データに基づいて、複数の暗セルの各々について、対応する暗セルの中央部分においてのみ金属ワークピースの表面から金属をレーザ除去し、それにより、対応する暗セル内の外周壁によって境界付けられた陥凹を残すことによって、金属ワークピースの表面上の識別子をレーザマーキングするための命令を送信する工程であって、陥凹は、少なくとも100ミクロンの深さを有し、かつ400ミクロン~1750ミクロンの範囲の幅を有する開口部を有し、かつ対応するセルサイズの30パーセント~99パーセントに相当し、そのため、対応する暗セルは、光学リーダに対して暗く見え、対応する暗セルの深さ、幅、および対応するセルサイズは、レーザマーキングされた識別子にショットブラスト耐性を提供する命令を送信する工程と、を実施するように構成されている、レーザマーキングシステムを含む。
【0012】
別の態様によれば、表面と、当該表面にマーキングされた識別子と、を含む、金属ワークピースが提供され、識別子は、対応するセルサイズを各々有する複数のセルを有し、識別子は、第1の2進数値に対応する複数の明セルと、第1の2進数値とは異なる第2の2進数値に対応する複数の暗セルと、を有し、複数の暗セルの各々は、表面に対して相対的に陥凹している中央部分を含み、それにより、対応する暗セル内の外周壁によって境界付けられた陥凹を残し、陥凹は、少なくとも100ミクロンの深さを有し、かつ400ミクロン~1750ミクロンの範囲の幅を有する開口部を有し、かつ対応するセルサイズの30パーセント~99パーセントに相当し、そのため、対応する暗セルは、光学リーダに対して暗く見え、対応する暗セルの深さ、幅、および対応するセルサイズは、レーザマーキングされた識別子にショットブラスト耐性を提供する。
【0013】
別の態様によれば、表面と、当該表面にマーキングされた識別子と、を含む、金属ワークピースが提供され、識別子は、対応するセルサイズを各々有する複数のセルを有し、識別子は、第1の2進数値に対応する複数の明セルと、第1の2進数値とは異なる第2の2進数値に対応する複数の暗セルと、を有し、複数の暗セルの各々は、表面に対して相対的に陥凹している中央部分を含み、それにより、対応する暗セル内の外周壁によって境界付けられた陥凹を残し、対応する暗セルの深さ、幅、および対応するセルサイズは、レーザマーキングされた識別子にショットブラスト耐性を提供する。いくつかの実施形態では、対応する暗セルが、光学リーダに対して暗く見えるように、幅は、400ミクロン~1750ミクロン、好ましくは600ミクロン~850ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態では、各陥凹は、少なくとも100ミクロン、好ましくは少なくとも150ミクロン、および最も好ましくは300ミクロンを超える深さを有する。いくつかの他の実施形態では、各陥凹の開口部の幅は、対応するセルサイズの30パーセント~99パーセント、好ましくは対応するセルサイズの60~95パーセント、および最も好ましくは対応するセルサイズの70~89パーセントの範囲である。
【0014】
別の態様によれば、生産ラインに沿って金属ワークピースにショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングするための方法が提供され、方法は、生産ラインに沿って金属ワークピースを受け取ることと、以前に取得した識別子データに基づいて、当該金属ワークピースの表面に識別子をレーザマーキングすることであって、当該識別子は、対応するセルサイズcを各々有する複数のセルを有し、複数のセルは、第1の2進数値に対応する複数の明セルと、第2の2進数値に対応する複数の暗セルと、を有する、レーザマーキングすることと、を含み、当該レーザマーキングすることが、複数の暗セルの各々について、対応する暗セルの中央部分においてのみ金属ワークピースの表面から金属を除去し、それにより、対応する暗セル内の外周壁によって境界付けられた陥凹を残すことを含み、陥凹が有する底壁は、当該底壁の総面積に対する当該底壁の暗領域の比率Rが約50%を超えるような深さdで、幅wを有し、当該暗領域は、直径Dを有するショットでは到達不可能な当該底壁の領域を定義する。
【0015】
別の態様によれば、生産ラインに沿って金属ワークピースにショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングするためのシステムが提供され、システムは、レーザマーキングシステムであって、レーザマーキングビームを生成するように構成されており、かつコントローラを使用して制御可能であり、コントローラが、生産ラインに沿って金属ワークピースを受け取る工程と、以前に取得した識別子データに基づいて、当該金属ワークピースの表面に識別子をレーザマーキングする工程であって、当該識別子は、対応するセルサイズcを各々有する複数のセルを有し、複数のセルは、第1の2進数値に対応する複数の明セルと、第2の2進数値に対応する複数の暗セルと、を有する、レーザマーキングする工程と、を実施するように構成されている、レーザマーキングシステムを含み、当該レーザマーキングすることが、複数の暗セルの各々について、対応する暗セルの中央部分においてのみ金属ワークピースの表面から金属を除去し、それにより、対応する暗セル内の外周壁によって境界付けられた陥凹を残すことを含み、陥凹が有する底壁は、当該底壁の総面積に対する当該底壁の暗領域の比率Rが約50%を超えるような深さdで、幅wを有し、当該暗領域は、直径Dを有するショットでは到達不可能な当該底壁の領域を定義する。
【0016】
別の態様によれば、表面と、当該表面にマーキングされた識別子と、を含む、金属ワークピースが提供され、識別子は、対応するセルサイズを各々有する複数のセルを有し、識別子は、第1の2進数値に対応する複数の明セルと、第1の2進数値とは異なる第2の2進数値に対応する複数の暗セルと、を有し、複数の暗セルの各々は、表面に対して相対的に陥凹している中央部分を含み、それにより、対応する暗セル内の外周壁によって境界付けられた陥凹を残し、陥凹が有する底壁は、当該底壁の総面積に対する当該底壁の暗領域の比率Rが約50%を超えるような深さdで、幅wを有し、当該暗領域は、直径Dを有するショットでは到達不可能な当該底壁の領域を定義する。いくつかの実施形態では、幅は、400ミクロン~1750ミクロン、および好ましくは600ミクロン~850ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態では、各陥凹は、少なくとも100ミクロン、好ましくは少なくとも150ミクロン、および最も好ましくは300ミクロンを超える深さを有する。いくつかの他の実施形態では、各陥凹の開口部の幅は、対応するセルサイズの30パーセント~99パーセント、好ましくは対応するセルサイズの60~95パーセント、および最も好ましくは対応するセルサイズの70~89パーセントの範囲である。いくつかの実施形態では、幅に対する深さのアスペクト比は、0.2~2、および好ましくは0.3~1.5の範囲である。識別子は、データマトリックスの形態で提供され得る。開口部の形状は、四角形を有し得る。
【0017】
本明細書で使用される「コンピュータ」という表現は、限定的な様式で解釈されるべきではないことが理解されよう。むしろ、広義に使用され、一般に、1つ以上の処理ユニットのいくつかの形態と、処理ユニット(複数可)によってアクセス可能なメモリシステムのいくつかの形態との組み合わせを指す。同様に、本明細書で使用される「コントローラ」という表現は、限定的な様式で解釈されるものではなく、一般的な意味のデバイス、または、例えば、電子デバイスのような1つ以上のデバイスを制御する機能(複数可)を実施する2つ以上のデバイスを有する一般的な意味のシステムを意味する。
【0018】
コンピュータまたはコントローラの様々な機能は、ハードウェアによって、またはハードウェアとソフトウェアの両方の組み合わせによって実施され得ることが理解されよう。例えば、ハードウェアには、プロセッサのシリコンチップの一部として含まれる論理ゲートを含めることができる。ソフトウェアは、メモリシステムに記憶されたコンピュータ可読命令などのデータの形態であり得る。コンピュータ、コントローラ、処理ユニット、またはプロセッサチップに関して、「構成されている」という表現は、関連付けられた機能を実施するように動作可能なハードウェアまたはハードウェアとソフトウェアの組み合わせの存在に関する。
【0019】
本発明の改善点に関する多くのさらなる特徴およびその組み合わせは、本開示を読めば、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来技術による、ショットブラストステーションの下流に識別ステーションを設けた、例示的な生産ラインの概略図である。
図2】1つ以上の実施形態による、ショットブラストステーションの上流に識別ステーションを設けた、生産ラインの一例の概略図である。
図3】1つ以上の実施形態による、コントローラを有するレーザマーキングシステムを示す、図2の識別ステーションの一例の概略図である。
図4】1つ以上の実施形態による、図3のコントローラのコンピューティングデバイスの一例の概略図である。
図5】1つ以上の実施形態による、図3のコントローラのソフトウェアアプリケーションの一例の概略図である。
図6】1つ以上の実施形態による、第1および第2の2進数値を含むデータマトリックスの形態で提供される、識別子を示す例示的な識別データの概略図である。
図7】1つ以上の実施形態による、暗セルおよび明セルを含むデータマトリックスの形態で提供される、識別子を示す識別データの別の例の概略図である。
図8】ショットブラスト前を示す、その表面に図7の識別子がマーキングされた金属鋳造物の概略図である。
図8A】ショットブラスト後を示す、図8の金属鋳造物の識別子の概略図である。
図9】1つ以上の実施形態による、ショットブラスト前を示す、その表面にマーキングされたショットブラスト耐性のある識別子を有する金属鋳造物の概略図である。
図9A】1つ以上の実施形態による、図9のショットブラスト耐性のある識別子の暗セルの概略図である。
図9B】1つ以上の実施形態による、図9Aの9B-9B線による、図9Aの暗セルの断面図である。
図9C】1つ以上の実施形態による、ショットブラスト後を示す、図9の金属鋳造物のショットブラスト耐性のある識別子の概略図である。
図10A】1つ以上の実施形態による、暗セルの陥凹の外周壁の内面でショットが跳ね返る様子を示す、図9Aの暗セルの断面図である。
図10B】1つ以上の実施形態による、暗セルの陥凹の外周壁の上面でショットが跳ね返る様子を示す、図9Aの暗セルの断面図である。
図11A】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11B】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11C】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11D】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11E】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11F】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11G】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11H】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11I】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11J】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11K】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11L】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、その表面にレーザマーキングされた複数のショットブラスト耐性のある識別子を有する金属ワークピースの上面立面図である。
図11M】いくつかの実施形態による、レーザマーキング時間の関数として、図11A図11Lの識別子のコントラストを示すグラフである。
図12A】1つ以上の実施形態による、暗セルの陥凹の外周壁の上面でショットがバウンドする様子を示す、識別子の暗セルの断面図である。
図12B】1つ以上の実施形態による、ショットブラスト後を示す、図12Aの識別子の暗セルの概略図である。
図13】いくつかの実施形態による、ショットブラスト後を示す、ショットブラスト耐性を欠く複数の識別子がレーザマーキングされた金属鋳造物の概略図である。
図14A】1つ以上の実施形態による、円形の形状を有する開口部を示す、暗セルの一例の概略図である。
図14B】1つ以上の実施形態による、三角形の形状を有する開口部を示す、暗セルの一例の概略図である。
図14C】1つ以上の実施形態による、角が丸みを帯びた正方形の形状を有する開口部を示す、暗セルの一例の概略図である。
図15A】1つ以上の実施形態による、バーコードとして示される、ショットブラスト耐性のある識別子の一例の概略図である。
図15B】1つ以上の実施形態による、クイックレスポンス(QR)コードとして示される、ショットブラスト耐性のある識別子の別の例の概略図である。
図16】1つ以上の実施形態による、明セルと暗セルとを有するショットブラスト耐性のある識別子の別の例の概略図であり、そのような暗セルのうちの任意の1つは、図9Aに示されるもののような複数のより小さな暗セルを含み得ることを示す。
図17A】1つ以上の実施形態による、平均直径Dが0.430mmのショットでのショットブラスト後を示す、幅wが0.5mmで、深さdが0.60mmの陥凹を有する刻印された暗セルを有する金属ワークピースの上面立面図である。
図17B】1つ以上の実施形態による、平均直径Dが0.430mmのショットでのショットブラスト後を示す、幅wが0.75mmで、深さdが0.60mmの陥凹を有する刻印された暗セルを有する金属ワークピースの上面立面図である。
図17C】1つ以上の実施形態による、平均直径Dが0.430mmのショットでのショットブラスト後を示す、幅wが1.6mmで、深さdが0.60mmの陥凹を有する刻印された暗セルを有する金属ワークピースの上面立面図である。
図18A】1つ以上の実施形態による、ショットの直径Dよりも小さく、深さdがショットの直径Dの半分よりも大きい、幅wの陥凹を有する暗セルの断面図である。
図18B】1つ以上の実施形態による、ショットの直径Dよりも大きく、深さdがショットの直径Dの半分よりも大きい、幅wの陥凹を有する暗セルの断面図である。
図18C】1つ以上の実施形態による、2√(Dd-d)よりも大きく、深さdがショットの直径Dの半分よりも小さい、幅wの陥凹を有する暗セルの断面図である。
図18D】1つ以上の実施形態による、2√(Dd-d)よりも小さく、深さdがショットの直径Dの半分よりも小さい、幅wの陥凹を有する暗セルの断面図である。
図19A】1つ以上の実施形態による、図18Aまたは図18Dの暗セルの上面立面図である。
図19B】1つ以上の実施形態による、図18Bまたは図18Cの暗セルの上面立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで図2を参照すると、本開示は、生産ライン116に沿って可能な限り早期に、金属鋳造物110などの金属ワークピースを識別することに関する。示されるように金属鋳造物110は、好ましくは、金属鋳造物110がまだダイキャストステーション12にあるとき、ロボットアーム14が金属鋳造物110をダイキャストステーション12の鋼型のうちの1つから離して操作するとき、および/またはダイキャストステーション12の直後に位置決めされた識別ステーション124を使用するとき、専用の識別器で識別されるべきである。
【0022】
図3は、生産ライン116に沿ったレーザマーキングシステム126の一例を示す。レーザマーキングシステム126は、本開示の一実施形態によって、金属鋳造物110などの金属ワークピース110´にショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングするために使用され得る。本実施例では、金属鋳造物110はアルミニウム鋳造物である。しかしながら、金属鋳造物110は、非鉄金属、具体的には亜鉛、銅、アルミニウム、マグネシウム、鉛、ピュータ、および/またはスズ系合金などのような、これらに限定されない他の任意の好適な鋳造金属で作製され得る。
【0023】
本実施例に示されるように、レーザマーキングシステム126は、図2の生産ライン116の複数の変形ステーションのうちの1つである識別ステーション124の一部であり、レーザマーキングシステム126を含む識別ステーション124は、ダイキャストステーション12の下流およびショットブラストステーション20の上流に位置決めされている。
【0024】
図3に戻ると、この特定の実施形態では、レーザマーキングシステム126は、ショットブラストステーション20でのショットブラストの前に、金属鋳造物110がダイキャストステーション12から生産ライン116の別の変形ステーションに操作されている間に、レーザマーキングを行うように構成されている。この例では、金属鋳造物110は、ロボットアーム14を使用して操作されており、レーザマーキングは、ロボットアーム14による操作中に実施される。しかしながら、金属鋳造品110は、代替的に、ロボットアーム14による操作の後にレーザマーキングされ得る。例えば、ロボットアーム14を使用して、ダイキャストステーションから識別ステーション124の支持面まで金属鋳造物110を操作することができ、そこで金属鋳造物110がレーザマーキングされ得る。金属鋳造物110はまた、1人以上の操作者によって、またはコンベヤ、車両などを使用して操作され得ることが理解されよう。上で考察されるように、生産ライン116において可能な限り早期に金属鋳造物110に識別子をレーザマーキングすることは、生産ライン116によって作製された金属鋳造物10のトレーサビリティを構成し得る識別エラーの低減に寄与し得る。
【0025】
本実施例に示すように、レーザマーキングシステム126は、レーザビーム生成器128と、ビームエキスパンダ130と、1つ以上の走査ヘッド(以下、「走査ヘッド132」という)と、レンズ134と、少なくともレーザビーム生成器128と走査ヘッド132とに通信的に結合されたコントローラ136と、を有する。
【0026】
本実施例では、レーザビーム生成器128は、光路に沿ってレーザビーム136を生成するように構成される。ある特定の実施形態では、レーザビーム生成器128は、ファイバレーザである。例えば、ファイバレーザは、1.06ミクロン(すなわち、μm10-6、m)の動作波長、約100Wの最大平均出力、約100nsのパルス持続時間、約100kHzのパルス繰り返し速度、約1mJのパルスエネルギー、およびビーム品質係数M2≒1.6を有するパルスレーザビームを提供するQスイッチパルスファイバレーザであり得る。このようなファイバレーザの例は、IPG Photonicsによって販売されるYLPシリーズを含む。しかしながら、用途に応じて、任意の他の好適なレーザビーム生成器を使用することができる。
【0027】
そのような動作波長は、アルミニウムが、その動作波長で良好な吸収を可能にするので、アルミニウム鋳物などの金属鋳造物110をレーザマーキングするのに好適であり得る。異なる金属のタイプの場合には、レーザビーム生成器のタイプおよび/またはレーザビーム生成器の動作波長は、金属鋳造物110の金属のタイプに基づいて選択され得る。
【0028】
示されるように、ビームエキスパンダ130は、レーザビーム136のビーム径を、拡張ビーム径に拡張するために使用される。拡張されたビーム径の例は、約10mm(1/e幅)を含み得る。より具体的には、ビームエキスパンダ132は、レーザビーム生成器128からレーザビーム136を受光し、そのビーム径を拡張ビーム径に拡張し、拡張レーザビーム138を走査ヘッド132に向けて提供するように構成される。理解され得るように、ビームエキスパンダ130は、レンズ134の焦点距離131が比較的長いときに、良好な小さな寸法の焦点を実現するように使用される。しかしながら、ビームエキスパンダ130は、他の実施形態では省略され得る。
【0029】
走査ヘッド132は、ビームエキスパンダ130から入射した拡張レーザビーム138を受光し、集束レーザビーム140として金属鋳造物110に向けてそれを方向転換させるために使用され得る。したがって、レンズ134は、拡張レーザビーム138を金属鋳造物110の表面142に集束させるために使用される。より具体的には、走査ヘッド132およびレンズ134は、金属鋳造物110に対して所望の場所に集束レーザビーム140の焦点144を方向付けるように構成される。
【0030】
レンズ134は、約100mm~約500mm、好ましくは約200mm~約350mm、および最も好ましくは約250mmの焦点距離を有することができる。焦点距離が250mmのレンズは、典型的に、焦点距離が160mmのレンズを使用する従来のレーザマーキングシステムと比較して、レーザマーキングへの金属鋳造物110の位置決めに関してより許容範囲が広いであろう。
【0031】
本実施例に示すように、コントローラ136は、レーザビーム生成器128および走査ヘッド132に通信可能に結合される。レンズ134が可変焦点距離を有する実施形態では、コントローラ136は、レンズ134にさらに通信可能に結合され得る。コントローラ136とレーザビーム生成器128、走査ヘッド132とレンズ134との間の通信は、有線、無線、または両方の組み合わせであり得る。理解され得るように、コントローラ136は、実施形態に応じて、レーザビーム生成器128、走査ヘッド132、およびレンズ134の動作を制御するように構成される。
【0032】
コントローラ136は、ハードウェア構成要素およびソフトウェア構成要素の組み合わせとして提供され得る。ハードウェア構成要素は、コンピューティングデバイス200の形態で実装され得、その例は、図4を参照して説明される。さらに、コントローラ136のソフトウェア構成要素は、ソフトウェアアプリケーション300の形態で実装することができ、その例は、図5を参照して説明される。
【0033】
図4を参照すると、コンピューティングデバイス200は、プロセッサ202、メモリ204、およびI/Oインターフェース206を有し得る。金属鋳造物にショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングするための命令208は、メモリ204に記憶され、プロセッサ202によってアクセス可能であり得る。
【0034】
プロセッサ202は、例えば、汎用マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ、デジタル信号処理(DSP)プロセッサ、集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、再構成可能なプロセッサ、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0035】
メモリ204は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CDROM)、電気光学メモリ、磁気光学メモリ、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)および電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、または強誘電体RAM(FRAM(登録商標))などのような、内部または外部のいずれかに配置される任意のタイプのコンピュータ読み取り可能なメモリの好適な組み合わせを含むことができる。
【0036】
各I/Oインターフェース206は、コンピューティングデバイス200が、生産ライン116の管理システムなどの1つ以上の入力デバイス、またはレーザビーム生成器128、走査ヘッド132および/またはレンズ134などの1つ以上の出力デバイスと相互接続することを可能にする。
【0037】
各I/Oインターフェース206は、コントローラ136が、インターネット、イーサネット、プレーンオールドテレフォンサービス(POTS)回線、公衆交換電話網(PSTN)、統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)、デジタル加入者回線(DSL)、同軸ケーブル、光ファイバ、衛星、モバイル、無線(例えば、Wi-Fi(登録商標)、WiMAX(登録商標))、SS7シグナリングネットワーク、固定回線、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、およびこれらの任意の組み合わせを含む他のものを含む、データを運ぶことができるネットワーク(または複数のネットワーク)に接続して、他の構成要素と通信し、データを交換し、ネットワークリソースにアクセスして接続し、アプリケーションにサービスを提供し、他のコンピューティングアプリケーションを実施することを可能にする。
【0038】
ここで図5を参照すると、ソフトウェアアプリケーション300は、金属鋳造品110にレーザマーキングされる識別子を示す識別データ302を受信するように構成される。ソフトウェアアプリケーション300は、例えば、生産ライン116の管理システムから識別データ302を受信し、識別データ302を処理する際に命令306を判定する。命令306を判定することは、いくつかの実施形態では、1つ以上のデータベース308から情報を受信することを含み得る。いくつかの実施形態では、ソフトウェアアプリケーション300は、メモリ204に記憶され、コンピューティングデバイス200のプロセッサ202によってアクセス可能である。
【0039】
上記のコンピューティングデバイス200およびソフトウェアアプリケーション300は、例示に過ぎないことを意図している。当業者には明らかであるように、コントローラ136の他の好適な実施形態も提供され得る。例えば、いくつかの実施形態では、コントローラの少なくとも一部は、USBスキャナコントローラモデルUSC-2(SCAPS社(ドイツ)製品)を備え、ソフトウェアプログラムSAMLight(SCAPS社(ドイツ)製品)の使用を伴う。
【0040】
識別子データ302の一例を図6に示す。図示のように、識別子データ302は、セルの一部が第1の2進数値(例えば、0または1)に対応し、残りのセルが第2の2進数値(例えば、1または0)に対応する多数のセルを有する。識別子データ302の別の例を図7に示す。例えば、この実施形態では、識別子データは、それぞれが対応するセルサイズを有する複数のセルを有する。セルは、2進数値0に対応する明セルと、2進数値1に対応する暗セルと、を含む。本実施例では、識別子データはデータマトリックスの形態で提供され、セルは共通のセルサイズcを有する。
【0041】
本発明者らは、金属鋳造物に識別子をレーザマーキングするための既存の技術が、典型的には、暗セルの各々の面積全体で金属鋳造物の表面から金属をレーザ除去することを含むことを見出した。
【0042】
図8および図8Aは、それぞれ、ショットブラストの前後の、既存の技術によって、金属鋳造物10の表面42にレーザマーキングされた識別子50を示す。理解され得るように、光学リーダは明セル54を暗セル56から区別することができるので、図8の識別子50のセル52は読み取り可能である可能性があり、ショットブラスト後を示す、図8Aの識別子50´の場合はそうではない可能性がある。実際、示されているように、暗セル56´で隔てられたものは、光学リーダにはまだ暗く見えるかもしれない。しかしながら、おそらく暗セル56´に隣接するセルは、光学リーダによって良好な読み取りが可能であると予測されるほど暗くは見えない。したがって、図8の識別子50´は、一旦ショットブラストされた後、暗セルは暗く見えず、実際には明セルとほぼ同じくらい明るく見えるため、ショットブラスト耐性があるとは言うことはできない。識別子50´に近接する表面42´がショットブラストを示すテクスチャ58´を示すので、表面42´は以前にショットブラストされたものとして識別され得ることが理解される。示されるように、明セルは、識別子50´が以前にショットブラストされたことを示すテクスチャ58´を有する。
【0043】
この現象を説明する1つの理論は、暗セル56の暗い外観が、レーザマーキングによって引き起こされる表面粗さによるものであるという考えに基づいている。表面粗さは、入射光を捕捉し得、光がその上で反射されるのを防止するので、暗い外観になると考えられている。実際、ショットブラストは、ショットの流れ、すなわち、300ミクロン~800ミクロンの範囲の直径を有する小粒子を高圧下で金属鋳造物10の表面42に対して強制的に噴射することを伴うので、暗セル56の表面粗さは、より滑らかになり、したがって、光の反射を可能にし、したがって、より明るい外観を得ることができると考えられている。さらに、暗セル全体をレーザマーキングすると、そのような識別子をマーキングするのに要する時間を長くすることもできる。
【0044】
次に、図9図9A、および図9Bを参照して、金属鋳造品110の表面142にショットブラスト耐性のある識別子150をレーザマーキングするための方法の実施例を説明する。より具体的には、図9は、セル152を有するレーザマーキングされたショットブラスト耐性のある識別子150を備えた金属鋳造物110の上面図を示し、セルの一部は明セル54であり、残りは暗セル156であり、図9Bは、図9のショットブラスト耐性のある識別子150の暗セル156のうちの1つの上面図であり、図9Cは、図9Bの9C-9C線による図9Bの暗セル156の断面図である。
【0045】
この方法では、レーザマーキングすることは、暗セル156の各々について、対応する暗セル156の中央部分160においてのみ金属鋳造物110の表面142から金属をレーザ除去し、それにより、対応する暗セル156の外周壁164によって境界付けられた陥凹162を残すことを含む。暗セル156の各々について、陥凹162は、少なくとも100ミクロンの深さdを有し、450ミクロン~1200ミクロンの範囲で、幅w(「陥凹開口幅w」とも呼ばれる)を備えた開口部166を有し、これは、対応するセルサイズcの40パーセント~99パーセントに相当する。各暗セル156の深さd、幅w、および対応するセルサイズcは、対応する暗セルが光学リーダに対して暗く見えるようなものであることが意図されている。陥凹162の寸法および外周壁164の寸法は、レーザマーキングされた識別子150に対してショットブラスト耐性を提供することに留意されたい。本開示では、ショットブラスト耐性は、ショットブラストされた後でも光学リーダ(例えば、レーザリーダ、カメラ)を使用して読み取られ得る任意の識別子150を包含するように広く定義される。
【0046】
このようにして、隔てられたセルおよび隣接するセルを含む暗セル156の各々は、図9Cに示されるようにショットブラスト後、光学リーダには暗く見える。ここでも、表面142´は、識別子150´に近接した表面142´または明セルの表面142´がショットブラストを示すテクスチャ158´を示すように、以前にショットブラストされたものとして識別され得ることが理解される。当業者によって理解されるように、図8Aに示される識別子50´とは対照的に、図9Aに示されるショットブラスト耐性のある識別子150´は、ショットブラスト後であっても、光学リーダなどの光学リーダが、識別子150´を正常に読み取り、次に、読み取り値に基づいて金属鋳造物110を追跡することを可能にし得る。
【0047】
ここで特に図9Bを参照すると、本発明者らは、暗セル156の暗い外観は、陥凹162の外周壁164の内面170の粗さ168によって捕捉されている入射光に起因し、光が反射されるのを防止すると考える。陥凹162のプロファイルは、実施形態ごとに異なり得ることが想定される。例えば、陥凹162は、陥凹162の深さdが増加するにつれて、表面142の平面内の開口部166の寸法が減少するような、実施形態に応じて異なるテーパープロファイル171を有することができる。
【0048】
実施形態に応じて、深さdは、少なくとも100ミクロン、好ましくは少なくとも150ミクロン、および最も好ましくは少なくとも300ミクロンであり得る。いくつかの実施形態では、陥凹162の深さdは、100ミクロン~1000ミクロン、好ましくは200ミクロン~800ミクロン、および最も好ましくは300ミクロン~700ミクロンの範囲であり得る。陥凹162の開口部166の幅wは、400ミクロン~1750ミクロン、好ましくは600ミクロン~850ミクロンの範囲であり得、したがって、対応するセルサイズcの30%~99%、好ましくは対応するセルサイズcの60%~95%、およびより好ましくは対応するセルサイズcの70%~89%に相当し得る。外周壁164の厚さtは、2ミクロン~360ミクロン、好ましくは50ミクロン~300ミクロン、および最も好ましくは100ミクロン~200ミクロンの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、各陥凹162は、幅wに対する深さdのアスペクト比r、すなわちr=d/wを有し、0.2~5、好ましくは0.2~2、および最も好ましくは0.3~1.5の範囲である。実施形態に応じて、陥凹の面積は、対応する暗セルの面積の99%未満、好ましくは90%未満、および最も好ましくは50%未満であり得る。
【0049】
図10Aに示すように、暗セル156の陥凹162の深さd、幅wおよびアスペクト比rは、ショット172が、外周壁164の内面170の粗さ168全体に直接アクセスすることを防止することができる。さらに、外周壁164の内面170でのショット172が跳ね返ることは、その運動エネルギーを低減することができ、したがって、ショット172のその後の跳ね返りにおける内面170の粗さ168の平滑化を制限し得る。代替的に、または追加的に、陥凹162が図10Aに示されるような実質的にテーパ-の形状を有する場合、ショット172は、陥凹162の底部174にさえアクセスできない場合がある。
【0050】
図10Bに示されるように、暗セル156の陥凹162の外周壁164が存在することで、ショットが暗セル156に損傷を与えるのを防止することができる。実際、外周壁164は、ショットブラスト中に崩壊しないように、その形状を実質的に維持するのに十分な厚さである。
【0051】
このようなショットブラスト耐性のある識別子が、金属ワークピースにレーザマーキングされた例を図11A図11Lに示す。理解されるように、これらの図に示される識別子は、レーザマーキングされた後、ショットブラストされ、続いて、暗セルの平均グレーレベルと明セルの平均グレーレベルとの間のコントラストを判定するためのコントラスト特性評価が行われる。コントラスト0は、光学リーダを使用して識別子が読み取られ得ず、その識別子にはショットブラスト耐性がないことを意味する。しかしながら、コントラストが0より大きい場合は、ショットブラスト後に識別子が読み取られ得ることを意味する。さらに、コントラストが300より大きい場合は、任意のタイプのリーダを使用して読み取られ得る、良好なショットブラスト耐性(例えば、グレード4の)を有する識別子として識別され得る。
【0052】
【表1-1】
【表1-2】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0055】
上記の結果は、最適なレーザマーキングパラメータについて評価されただけでなく、コードの可読性がnullに近い外側の境界の分析についても評価されたと解釈される。10%のSiを含むアルミニウム合金製のワークに合計195個のマーキングを行った。これらのマーキングは、100WのレーザマーキングシステムLXQ-100を使用して行われた。レーザマーキングパラメータは、一定に保たれ、有効な異なる変数を削減する。マーキングされた識別子は、情報「123456」を含む10x10の2Dマトリックスコードである。レーザマーキング速度は、ワークの平面のx軸とy軸の両方で100kHzの周波数と0.03mmの線間隔で500mm/sに設定された。これらの識別子は、任意の白い背景にマーキングされ、5000m/s、周波数100kHz、線間隔0.05mmでマーキングされた。
【0056】
幅wおよび深さdは、ある所与の識別子から別の識別子へと変化させた2つのパラメータである。深さdは、「時間またはパスの数」と呼ばれるパラメータを介して変換され、焦点は、所定のラスタ経路に沿って方向付けられた。整数値で表されるこのパラメータは、レーザスポットが任意の所与の領域をレーザマーキングするために費やす時間の数を示す。したがって、5に等しい時間の数を有する所与の識別子は、レーザスポットが1回ではなく、同じ領域のラスタ経路に沿って5回方向付けられるため、1の値を有する識別子よりも、その陥凹がワークピースに深くエッチングされることになる。パスの数は、マーキングごとに1~5まで変化される。Dektakなどの深度測定システムが使用され、「パスの数」の値を深さdの値に変換する。これらの値は、様々な識別子と比較され、上記の表に示されている深度値に外挿される。
【0057】
CognexのカメラDM262Xを使用して、ショットブラスト処理前後のコントラストについて195個のマーキングが分析される。コントラスト値は、次の式を使用してISO29158に従って計算される:
【0058】
【数1】
【0059】
ここで、Aは255のグレースケールでの明セルの平均強度であり、Aは255のグレースケールでの暗セルの平均強度である。上記の表では、コントラストCCは、表中の所望の範囲になるように100が掛けられている。
【0060】
これらの結果は、コグネックスカメラDM262Xを使用した特定の実験設定に依存するため、この実験で得られたコントラストは例としてのみ提供されていることに留意されたい。実際、他のタイプのリーダを含む他の実験設定では、上記の表において不十分と記載されていても、上記の所与の識別子のコントラストは依然として良好なものである可能性がある。例えば、上記のnullコントラストによって特性評価された識別子A8、B66、C13、C14、C15、C16、C21、D12、D14、D15、およびE47は、例えばCognexリーダを使用して良好に読み取られる。したがって、本発明者らは、ショットブラスト耐性のある識別子を生成することができる値の範囲は、上記の表にリストされたものに限定されないと仮定しても差し支えないと考える。
【0061】
上記の表は、幅w、識別子のレーザマーキングに必要な時間、深さd、およびアスペクト比d/wなどの様々なパラメータに関連するコントラストの分析を提供するために分析され得る。ISO29158によると、コントラスト値が0.300以上(上記の表では300)であれば、この規格では最も高いグレード4になる。
【0062】
対応するセルサイズcの50%未満の幅wを有する暗セルは、グレード4のコントラストを実現できないこと(まだ読み取り可能である場合でも)が留意されていた。これは、ショットブラストによって平滑化された外周壁の余分な表面が、カメラによる読みやすさとコントラストの評価に影響を与える可能性があるという事実によって説明され得る。
【0063】
図11Mは、コントラストとレーザマーキングに必要な時間との間の関係を示しており、これにより、マーキング時間とコントラストとの間に実現され得る妥協点があることが理解され得る。
【0064】
図11Mのグラフでは、3つの異なるセクションが識別された。セクション1は、コントラストに関して、ISO29158に準拠したグレード4を保証し、理想的であると考えられ、また最小時間枠内でマーキングされ得る。セクション2は、非常に短い時間枠でグレード2または3を提供するか、より長い時間枠でグレード4のコントラスト値を提供する識別子をグループ化する。セクション3は、グレード3または4を実現するために非常に長い時間を必要とする識別子をグループ化する。
【0065】
コントラストCCと深さdの関係は、ほぼ線形であり得ることが分かった。暗セルの陥凹が深くなるほど、暗く見えるため、コントラストの値が高くなることが予想された。注意すべき重要な情報として、1回目、2回目、および3回目のパスの間にコントラストが大幅に増加していることが挙げられる。パス1からパス2またはパス2からパス3の間では、パス3からパス4またはパス4からパス5と比較して、コントラストがより高くなることが期待され得る。したがって、深さdが0.3mm~0.4mmであれば、十分に高いコントラストが得られると予想されるであろう。
【0066】
アスペクト比に関しては、セルの深さが、直線状における最終的なコントラストに大きく影響するというのが当初の想定であった。セルの深さとコントラストとの間の線形関係を特性評価する勾配は、非常に急であると予想された。しかしながら、アスペクト比は、セルのサイズに対するセルの深さとして定義され、セルの深さは、セルのサイズほどコントラストに影響を与えないため、深さの項で考察されるように、この勾配は、非常に滑らかであった。このように、アスペクト比に関しては、いかなる指標を与えることもやや難しくなり得る。実際、コントラストの高い値は0.5~0.75のセクションに集中しているが、データのほとんどがそうである。
【0067】
理解され得るように、マーキングに必要な幅wおよび時間は、商業的に良好なショットブラスト耐性のある識別子に関連する指標である。実際、上記の表を考慮すると、上記のような良好な値の範囲を得ることが可能である。
【0068】
図8Aを参照して説明したように、開口部が大きすぎる陥凹を有することは、ショットが暗セルの内面の粗さを滑かにし得る。しかしながら、開口部が狭すぎる陥凹を有することは避けるべきである。実際、図12Aおよび図12Bに最もよく示されるように、そのような暗セル156上で、高速で方向付けられたショット172は、外周壁の崩壊を引き起こす可能性があり、それにより、光173を捕捉するのではなく、光173を反射する比較的滑らかな表面76を提供し得る。したがって、陥凹162の開口部166の幅wは、ショットブラスト耐性のある識別子150を実現する上で鍵となる。
【0069】
このような識別子が金属鋳造物にレーザマーキングされた例を図13に示す。図に示すように、各暗セルの外周壁がショットブラスト時に崩壊して、光を反射する比較的滑らかな表面76を提供し、それゆえ明るい外観を提供するので、暗セルは暗く見えない。これらの例では、識別子G11~G32からである。
【0070】
図9Aおよび図9Bに戻って参照すると、暗セル156のレーザマーキングは、暗セル156の少なくとも1つの中央部分を包含するラスタ経路178に沿ってレーザマーキングビームの焦点144を方向付けることを含むことに留意されたい。示されるように、焦点の寸法に対応する線間隔を提供することを伴う典型的なレーザマーキング技術とは対照的に、本発明者らは、レーザマーキングビームの焦点144の寸法よりも小さい線間隔sによって定義されるラスタ経路178を使用することを提案する。実際、そのような小さな線間隔sで金属鋳造物110の表面142から金属をレーザ除去することにより、表面142から金属をよりよく除去することができ、結果として生じる陥凹の162の外周壁164の内面170の粗さ168を潜在的に増加させることさえも可能にし得る。線間隔sは、実施形態に応じて約10ミクロン~100ミクロンの範囲であり得、好ましくは約30ミクロンであり得る。
【0071】
この実施形態では、暗セルに関連付けられたラスタ経路178の一部のみが示される。実際、ラスタ経路178は、暗セルのすべての中央部分のレーザマーキングするための所与の方向に沿った第1の一連のパスと、暗セルのすべての中央部分のレーザマーカを完成するための所与の方向に垂直な方向に沿った第2の一連のパスと、を含み得る。いくつかの実施形態では、レーザマーキングは、ラスタ経路178に沿ってレーザマーキングビームの焦点144を所与の回数当該方向付けることを繰り返すことを含む。例えば、方向付けることが実施される追加の時間ごとに、暗セルの陥凹の深さdが次第に深くなり得る。しかしながら、ラスタ経路に沿った焦点144を方向付けることが実施される回数が増えることにより、識別子がレーザマーキングされる時間がより長くかかることができることが理解されよう。代替の実施形態では、焦点144の深さは、方向付けることが実施されるたびに漸進的に増加させられ得る。
【0072】
上記の実施形態では、陥凹162の開口部166は、正方形の形状180を有する。しかしながら、いくつかの他の実施形態では、陥凹162の開口部166は、他の任意の好適な形状を有し得る。例えば、その形状は、図14Aに示されるような円形であり得、その形状は、図14Bに示されるような三角形であり得、その形状は、図14Cに示されるような角が丸みを帯びた正方形であり得る。より具体的には、図14Aの暗セル156は、いずれも円形である開口部166と陥凹152とを形成する外周壁164を有し、図14Bの暗セル156は、いずれも三角形である開口部166と陥凹162とを形成する外周壁164を有し、図14Cの暗セル156は、いずれも四角形である開口部166と陥凹162とを形成する外周壁164を有する。
【0073】
理解され得るように、上で考察されるショットブラスト耐性のある識別子150は、データマトリックスの形態で提供されるが、識別子150は、図15Aに示されるようなバーコードの形態で、図15Bに示されるようなQRコード(登録商標)の形態で、任意の好適なコードバーの形態で、または任意の適切な1次元(1D)もしくは任意の好適な二次元(2D)データコードの形態で提供され得る。これらの例では、QRコード(登録商標)またはコードバーの暗特性の少なくとも一部またはすべては、それぞれの外周壁154および対応する陥凹162を有する1つ以上の暗セル156によって形成される。
【0074】
図16に示されるように、より大きな識別子150の暗セル56は、その中に複数のより小さな暗セル156を含み得ることが意図されている。しかしながら、理解され得るように、小さい方の暗セルのセルサイズc、それらの開口部の幅w、およびそれらの陥凹の深さdは、より大きい識別子にショットブラスト耐性を提供するように、本明細書に記載の良好な範囲で選択される。
【0075】
上で簡潔に考察されるように、レーザ照射下での金属表面の暗色化は、暗領域の局所的な表面粗さの増加に起因し得ることが、以前の研究から知られており、例えば、Maltais,J.,Brochu,V.,Frayssinous,C.,Vallee,R.,Godmaire,X.,Fraser,A.”Surface analysis study of laser marking of aluminum”,ICSCOBA2016で考察されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。より具体的には、光からの高レベルの拡散反射を引き起こすことにより、明領域がその表面粗さを低減することによって、表面にレーザマーキングされ得ることがその文献において教示される。反対に、表面の暗領域は、表面内で高レベルの吸収を引き起こすことによって、その表面粗さを増加させることによって、表面にレーザマーキングされ得ることが教示される。レーザパラメータを調整することにより、必要に応じて明領域と暗領域がレーザマーキングされ得る。
【0076】
ショットブラスト中、所与の直径Dを有するショットが、金属ワークピースの表面にレーザマーキングされた識別子に対して、高速で投影される。したがって、より高い表面粗さを有する暗領域は、そのようなショットの衝突時に、より低い表面粗さを有する明るい領域に向かって移動し得る。表面粗さのこの平坦化は、少なくともいくつかの状況で、ショットブラスト後に明セルと暗セルの間のコントラストが減少する傾向がある理由を正当化することができる。
【0077】
上記の金属ワークピースのさらなる分析により、本発明者らは、レーザでマーキングされた識別子をショットブラスト耐性にし得る要件をよりよく理解し、特性評価ができるようになった。図17A図17Bおよび図17Cに示されるように、本発明者らは、暗セル156´の外観がサイズセルcの関数として変化することに気づいた。より具体的には、図17Aのショットブラストされた暗セル156´は完全に暗く見えるが、図17Bおよび図17Cのショットブラストされた暗セル156´は、暗い周辺部186によって囲まれた明るい中央域184を有する。しかしながら、これらの暗セル156´がその中に明るい中央域184を有していたとしても、これらの後者のショットブラストされた暗セル156´は光学リーダには依然として暗く見え得るので、良好なショットブラスト耐性のあるレーザマーキングされた識別子を提供することが見出された。
【0078】
本発明者らは、レーザマーキングされる暗セル156の各々について、対応する暗セル156の中央部分160においてのみ金属ワークピース110の表面142から金属を除去し、それにより、対応する暗セル156の外周壁164によって境界付けられた陥凹162を残すべきであることを見出した。したがって、陥凹162には、深さdで幅wを有する底壁188が残される。ここで、ショットブラスト耐性のある暗セル156´が得られるためには、各暗セル156は、直径Dを有するショットによって到達不能であると定義される十分な量の暗領域Adarkを残されるべきであることが見出された。さらに、レーザマーキングされた識別子にショットブラスト耐性を提供するために、底壁188の総面積Atotに対する暗領域Adarkの比率Rは、約50%を超えるべきであることが見出された。いくつかの実施形態では、比率Rは、約60%、好ましくは約70%、および最も好ましくは約80%を超える。
【0079】
図18A図18Dは、直径Dのショットに対して相対的に示された異なる寸法でショットブラストされた暗セル156´の断面図である。示されるように、図18Aおよび図18Bの暗セル156´は、ショット172の直径Dの半分以上の深さdを有しているのに対し、図18Cおよび図18Dの暗セル156´は、ショット172の直径Dの半分よりも小さい深さdを有している。
【0080】
より具体的には、図18Aにおいて、幅wは、ショット172の直径Dよりも小さい。したがって、暗セル156´の外周壁164がショットブラストによって生じ得る機械的変形に耐性があることを考慮すると、ショット172が底壁188の暗領域Adarkに到達することが防止され、底壁188の暗領域Adarkがショットブラスト後であっても暗さを維持し得る。図19Aに示されるように、暗セル156´が幅wの正方形の陥凹を有する場合、暗領域Adarkは、Ldark (または同等にwに)に対応し、および底壁の総面積ATOTは、Ldark (または同等にwに)に対応し、したがって、比率Rは次式のように与えられる:
【0081】
R=Adark/Atot=w/w=1 (2)
【0082】
上記のショットブラスト耐性の要件を満たす。
【0083】
ここで図18Bを参照すると、幅wは、ショット172の直径D以上である。したがって、ショット172は、底壁188の中央域の表面粗さを平坦化して、ショットブラストの間に明るい中央域184になり得る(図17Bおよび図17Cに示されるように)。図19Bに示されるように、暗セル156´が幅wの正方形の陥凹を有する場合、暗領域Adarkは、Adark=Atot-Abright=w2-(w-2Ldark)2に対応し、底壁188の総面積ATOTはATOT=w2に対応する。図18Bから理解され得るように、寸法Ldarkは、ショットの直径Dの半分(すなわち、D/2)に相関させられ得、したがって、比率Rは次式のように与えられる:
【0084】
R=Adark/Atot=(w-(w-2Ldark)2)/w=(w(w-D))/w (3)
【0085】
したがって、この実施形態においては、幅wが以下の不等式を満たす場合に、ショットブラスト耐性のある識別子が取得され得る。
【0086】
【数2】
【0087】
図18Cにおいて、Ldarkは、円方程式を使用して簡単に導き出し得る√(Dd-d)に対応する。したがって、明るい中央域184´が発現するには、暗セル156´の陥凹の幅wは、寸法Ldarkの2倍以上、すなわち2×√(Dd-d)である。図18Bの実施形態と同様に、ショット172は、底壁188の中央域の表面粗さを平坦化して、ショットブラストの間に明るい中央域184になり得る(図17Bおよび図17Cに示されるように)。図19Bに示されるように、暗セル156´が幅wの正方形の陥凹を有する場合、暗領域Adarkは、Adark=Atot-Abright=w-(w-2Ldark)2に対応し、底壁188の総面積ATOTはATOT=w2に対応する。図18Bから理解され得るように、寸法Ldarkは、√(Dd-d)に相関させられ得、したがって、比率Rは次式のように与えられる:
【0088】
【数3】
【0089】
したがって、この実施形態においては、幅wと深さdとがともに以下の不等式を満たす場合に、ショットブラスト耐性のある識別子が取得され得る。
【0090】
【数4】
【0091】
ここで図18Dを参照すると、幅wは、寸法Ldarkの2倍以上である。したがって、暗セル156´の外周壁164がショットブラストによって生じ得る機械的変形に耐性があることを考慮すると、ショット172が底壁188の暗領域Adarkに到達することが防止され、底壁188の暗領域Adarkがショットブラスト後であっても暗さを維持し得る。図19Aに示すように、暗セル156´が幅wの正方形の陥凹を有する場合、暗領域Adarkは、Ldark (またはwに)に対応し、および底壁の総面積ATOTは、Ldark (またはwに)に対応し、したがって、比率Rは次式のように与えられる:
【0092】
R=Adark/Atot=w/w=1 (7)
【0093】
上記のショットブラスト耐性の要件を満たす。
【0094】
さらなる試験が実施され、少なくともいくつかの状況では、以下の寸法の組み合わせが良好あることが見出された。しかしながら、理解され得るように、パラメータの他の組み合わせでも良好な結果が得られる可能性がある。
【0095】
上記の実施形態では、正方形の形状を有するセルを伴うが、セルは、円形、三角形などを含むが、これらに限定されない他の任意の好適な形状を有し得る。
【0096】
【表4】
【0097】
さらなる詳細については、本開示に添付された添付資料Aを参照されたい。添付資料Aに記載されているセルサイズSは、本明細書で使用されているセルサイズcとは異なることが理解されよう。より具体的には、添付資料Aに記載されているセルサイズSは、本明細書で定義されている幅wに対応する。
【0098】
理解され得るように、上記で説明され、図示された例は、例示的なものであることのみを意図している。例えば、図は、金属鋳造物にショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングするための方法およびシステムを参照して記載されているが、本明細書に記載された方法およびシステムは、任意の好適な鋳造技術(例えば、ダイキャスト、砂型鋳造、石膏型鋳造、シェルモールド鋳造、インベストメント鋳造、石膏の廃型鋳造、消失模型鋳造、ロストフォーム鋳造、フルモールド鋳造、非膨張型鋳造、永久鋳型鋳造、半固形金属鋳造、連続鋳造)によってワーク製造ステーションで製造された金属鋳造物、任意の好適な鍛造技術(例えば、温度鍛造、落とし鍛造、自由鍛造、インプレッションダイ鍛造、プレス鍛造、据込鍛造、自動熱間鍛造、ロール鍛造、ネット成形およびニアネット成形鍛造、冷間鍛造、誘導鍛造、降温多軸鍛造、等温鍛造)、それらの組み合わせ、および/または他の任意の好適な金属ワークピース製造技術によって生産された金属鍛造品を含むが、これらに限定されない、任意のタイプの金属ワークピースにショットブラスト耐性のある識別子をレーザマーキングするために使用され得ることが理解されよう。また、表現の中央部分は、中央部分が対応するセルの正確な中心に位置していない状況を包含するような広い意味で解釈されることが意図されている。上記で提供された実施例に鑑み、本発明者らは、セルサイズc、陥凹深さd、および開口幅w、ならびに比率Rの有限数の組み合わせが、良好な結果、すなわち、ショットブラスト耐性のある識別子を提供する様式で試験されたが、当業者であれば想到し得る他の組み合わせは、本出願によって包含されることが意図される。実際、本発明者らは、暗セルが、明領域に対して十分な量の暗領域を提供する様式でレーザマーキングされるとすぐに、本明細書に記載された実験結果によって支持されるように、対応する暗セルはショットブラスト耐性を帯びると見なされ得ると考える。範囲は、添付の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8A
図9
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H
図11I
図11J
図11K
図11L
図11M
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16
図17A-17C】
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B