(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】端子付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 4/2466 20180101AFI20231225BHJP
【FI】
H01R4/2466
(21)【出願番号】P 2021048008
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-172621(JP,A)
【文献】特開2016-001551(JP,A)
【文献】特開平01-225084(JP,A)
【文献】特開平08-115756(JP,A)
【文献】特開2011-146332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02、4/24、4/26
H01R 43/02、43/28
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の素線から成る芯線が被覆で覆われた電線と、
前記電線に組み付けられる端子金具と、
を備え、
前記端子金具は、前記芯線に対して物理的且つ電気的に接続させる芯線接続体を有し、
前記芯線接続体は、底部と、前記底部から立設させ、かつ、互いに間隔を空けて対向配置させた一対の片持ちの側壁部と、前記一対の
片持ちの側壁部の間で互いに間隔を空けて対向配置させ、かつ、前記一対の
片持ちの側壁部におけるそれぞれの自由端の間の開口から差し入れられた前記電線の前記被覆を切り裂いて前記芯線の最外層の前記素線に圧接させる少なくとも1組の一対の圧接体と、を有し、
前記芯線は、前記電線の末端部の軸線方向における端面まで前記被覆で覆って、その端面で露出面を露出させ、
前記電線には、
前記露出面を含む前記末端部の前記芯線の全ての素線同士
を溶着させた溶着部を設け、
前記一対の圧接体は、前記芯線における前記溶着部の位置しない場所の最外層の前記素線に圧接させることを特徴とした端子付き電線。
【請求項2】
前記溶着部は、前記芯線の前記露出面へのレーザ照射によって全ての素線同士を溶着させたレーザ溶着部であることを特徴とした請求項1に記載の端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数本の素線から成る芯線が被覆で覆われた電線と、この電線に組み付けられる端子金具と、を備えた端子付き電線が知られている。例えば、この端子付き電線においては、端子金具に設けた一対の圧接体を芯線に圧接させることによって、その芯線と端子金具とを物理的且つ電気的に接続させる。この種の端子付き電線については、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来の端子付き電線においては、芯線に対して外表面側から一対の圧接体を圧接させるので、この芯線を成す素線の本数が多くなるほど、圧接体に直接接触している素線(接触素線)の本数に対して、圧接体に直接接触していない素線(非接触素線)の本数が増えてくる。そして、その芯線においてが、圧接体に対して、非接触素線が接触素線を介して間接的に電気接続される。このため、従来の端子付き電線においては、芯線の素線間で電気抵抗が高くなり、この芯線と端子金具との間の接続部分での電気抵抗の上昇を招いてしまう虞がある。よって、従来の端子付き電線は、芯線と端子金具の電気的な接続安定性を向上させる上で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、芯線と端子金具の電気的な接続安定性を向上させることが可能な端子付き電線を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、複数本の素線から成る芯線が被覆で覆われた電線と、前記電線に組み付けられる端子金具と、を備え、前記端子金具は、前記芯線に対して物理的且つ電気的に接続させる芯線接続体を有し、前記芯線接続体は、底部と、前記底部から立設させ、かつ、互いに間隔を空けて対向配置させた一対の片持ちの側壁部と、前記一対の片持ちの側壁部の間で互いに間隔を空けて対向配置させ、かつ、前記一対の片持ちの側壁部におけるそれぞれの自由端の間の開口から差し入れられた前記電線の前記被覆を切り裂いて前記芯線の最外層の前記素線に圧接させる少なくとも1組の一対の圧接体と、を有し、前記芯線は、前記電線の末端部の軸線方向における端面まで前記被覆で覆って、その端面で露出面を露出させ、前記電線には、前記露出面を含む前記末端部の前記芯線の全ての素線同士を溶着させた溶着部を設け、前記一対の圧接体は、前記芯線における前記溶着部の位置しない場所の最外層の前記素線に圧接させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る端子付き電線の芯線においては、全ての素線が溶着部で直接接続されるので、素線間の電気抵抗の上昇を抑えることができる。従って、本発明に係る端子付き電線は、芯線と芯線接続体との間の接続部分での電気抵抗の上昇を抑制できるので、芯線と端子金具の電気的な接続安定性を向上させることができる。
【0008】
また、電線においては、素線がアルミニウム又はアルミニウム合金で成形されている場合、その素線の表面に酸化皮膜が形成される。しかしながら、芯線においては、溶着部が形成される際に、その酸化皮膜が取り除かれた状態で全ての素線同士が溶着される。このため、この芯線においては、素線がアルミニウム又はアルミニウム合金で成形されている場合でも、素線間の電気抵抗の上昇を抑えることができる。そして、一対の圧接体は、電線が押し込まれている最中に、芯線の最外層の素線の表面を擦りながら当該素線の酸化皮膜を削り取っていく。よって、芯線接続体は、一対の圧接体を芯線の最外層の素線に対して酸化皮膜を介在させることなく接触させることができる。従って、本発明に係る端子付き電線は、素線がアルミニウム又はアルミニウム合金で成形されている場合でも、芯線と芯線接続体との間の接続部分での電気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0009】
このように、本発明に係る端子付き電線は、芯線と芯線接続体との間の接続部分で電気抵抗の上昇が抑えられるので、芯線と端子金具の電気的な接続安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態の端子付き電線を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の端子付き電線を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態の端子付き電線を端子金具の開口側から見た平面図である。
【
図5】
図5は、溶着部の形成工程の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、溶着部の形成工程の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る端子付き電線の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
[実施形態]
本発明に係る端子付き電線の実施形態の1つを
図1から
図6に基づいて説明する。
【0013】
図1から
図4の符号1は、本実施形態の端子付き電線を示す。この端子付き電線1は、電線10と当該電線10に組み付けられる端子金具20とを備えており、これらが物理的且つ電気的に接続されている。
【0014】
この端子付き電線1は、電線10の端末に端子金具20が接続されたものであってもよく、電線10の両端部の間の一部分に端子金具20が接続されたものであってもよい。また、この端子付き電線1は、1本の電線10に少なくとも1つの端子金具20が接続されたものであってもよく、複数本の電線10が少なくとも1つの端子金具20で接続され、その端子金具20を介して複数本の電線10を電気的に接続させるものであってもよい。例えば、端子金具20は、相手方端子金具への嵌合接続によって当該相手方端子金具に対して物理的且つ電気的に接続させるものとして、又は、相手方の電気接続部との間での螺子止め固定によって当該電気接続部に対して物理的且つ電気的に接続させるものとして形成される場合、少なくとも1本の電線10の端末に接続される。また、例えば、端子金具20は、複数本の電線10を電気的に接続させるジョイント端子として形成される場合、電線10の端末又は電線10の両端部の間の一部分に接続される。この場合の端子金具20は、複数本の電線10を物理的且つ電気的に接続し、自身を介して全ての電線10を電気的に接続させるジョイント端子であってもよく、複数本の電線10の内の少なくとも2本を1つの組み合わせにして物理的且つ電気的に接続させるジョイント端子であり、その組み合わせ毎に設けたものであってもよい。ここで示す端子付き電線1においては、相手方端子金具に嵌合接続させる1つの端子金具20が1本の電線10の端末に接続されている。
【0015】
電線10は、複数本の素線11aから成る芯線11と、この芯線11を覆う被覆12と、を備える(
図1、
図3及び
図4)。ここで示す電線10は、導電性の金属の線材から成る素線11aが円柱状に複数本束ねられた芯線11と、この芯線11を同心上で外表面側から覆う円筒状の被覆12と、を備えている。素線11aは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金で成形される。
【0016】
その芯線11は、互いの軸線方向を合わせた複数本の素線11aが円柱状に束ねられたものであってもよく、その円柱状に束ねた複数本の素線11aを撚り合わせた撚り線であってもよい。更に、その撚り線としての芯線11は、円柱状に束ねた全ての素線11aを一緒に撚り合わせたものであってもよく、1本の素線11aを中心に置き、この1本の素線11aの周りに残りの複数本の素線11aを巻き付けたものであってもよく、複数本の素線11aを撚り合わせた素線群を複数本形成し、この複数本の素線群を円柱状に束ねて一緒に撚り合わせたものであってもよい。芯線11は、これらの如き如何様な形態を採るものであったとしても、最外層に複数本の素線11aが配置され、かつ、この最外層の複数本の素線11aの内側に複数本の素線11aが配置される。
【0017】
端子金具20は、金属等の導電性材料で成形される。ここで示す端子金具20は、金属板を母材にしたプレス成形によって形作られている。この端子金具20は、相手方端子金具の端子接続体(図示略)に対して物理的且つ電気的に接続させる端子接続体21と、電線10の端末の芯線11に対して物理的且つ電気的に接続させる芯線接続体22と、電線10の端末の被覆12に対して物理的に接続される被覆接続体23と、を有する(
図1から
図3)。
【0018】
例えば、端子金具20の端子接続体21と相手方端子金具の端子接続体は、その内の一方が雌端子形状に形成され、かつ、その内の他方が雄端子形状に形成されて、互いに挿入嵌合させられる。この例示では、端子金具20の端子接続体21が雌端子形状に形成され、相手方端子金具の端子接続体が雄端子形状に形成されている。
【0019】
芯線接続体22は、底部22aと、この底部22aから立設させ、かつ、互いに間隔を空けて対向配置させた一対の片持ちの側壁部22b,22bと、を有する(
図1、
図2及び
図4)。電線10の端末は、その底部22aと一対の側壁部22b,22bとで囲まれた空間内に収容される。ここで示す芯線接続体22においては、一対の矩形の側壁部22b,22bが矩形の底部22aの両端から垂設されている。この芯線接続体22においては、底部22aと一対の側壁部22b,22bとで囲まれた空間内に、その一対の側壁部22b,22bにおけるそれぞれの自由端22b
1,22b
1の間の開口22cから電線10の端末が差し入れられる(
図1、
図2及び
図4)。
【0020】
更に、この芯線接続体22は、一対の側壁部22b,22bの間で互いに間隔を空けて対向配置させ、かつ、開口22cから差し入れられた電線10の被覆12を切り裂いて芯線11の最外層の素線11aに圧接させる一対の圧接体24,24を少なくとも1組有する(
図1から
図4)。ここで示す芯線接続体22は、その一対の圧接体24,24を2組有している。この2組の一対の圧接体24,24は、芯線接続体22に組み付けられた電線10の軸線方向にて、互いに間隔を空けて配置される。
【0021】
この一対の圧接体24,24は、底部22aから開口22cに向けて各々突出させたものであってもよく、一方の側壁部22bから他方の側壁部22bに向けて突出させたものと他方の側壁部22bから一方の側壁部22bに向けて突出させたものであってもよい。ここで示す圧接体24は、側壁部22bからその一部分を90度折り曲げた片体として形成されている。
【0022】
この一対の圧接体24,24は、一対の側壁部22b,22bの対向配置方向で互いに間隔を空けて対向配置させ、その間に電線10を圧入させる圧接端部24a,24aを有する(
図4)。この一対の圧接体24,24においては、そのそれぞれの圧接端部24a,24aで芯線11を挟み込み、かつ、その芯線11の最外層の素線11aに対してそれぞれの圧接端部24a,24aから押圧力を作用させることによって、その最外層の素線11aに対して物理的且つ電気的に接続させる。このため、この一対の圧接体24,24においては、それぞれの圧接端部24a,24aの間隔を芯線11の直径よりも狭めている。圧接端部24aは、電線10の開口22cからの挿入方向に沿う平面として形成されたものであってもよく、刃形の圧接刃として形成されたものであってもよい。ここで示す圧接端部24aは、母材の板厚分の厚さを有する平面として形成されている。
【0023】
また、この一対の圧接体24,24は、開口22c側の端部に、それぞれの圧接端部24a,24aの間に電線10を圧入させる際の挿入開始点であり、それぞれの圧接端部24a,24aの間隔よりも間口の広い芯線導入部を有している。例えば、この一対の圧接体24,24は、各々、開口22c側の端部に、圧接端部24a,24aに連なり、かつ、この圧接端部24a,24aとの境界から開口22c側に向かうほど互いの間隔が拡がる傾斜部24b,24bを有している(
図4)。芯線導入部は、そのそれぞれの傾斜部24b,24bによって形成される。傾斜部24bは、母材の板厚分の厚さを有する平面として形成されたものであってもよく、刃形の圧接刃として形成されたものであってもよい。ここで示す傾斜部24bは、圧接刃として形成されている。
【0024】
電線10は、開口22cから底部22aと一対の側壁部22b,22bとで囲まれた空間内へと差し入れられていく。これに伴い、一対の圧接体24,24は、押し込まれた電線10の被覆12をそれぞれの傾斜部24b,24bによって切り裂き、その被覆12の中の芯線11における最外層の素線11aを露出させる。電線10は、更に奥へと押し込まれることによって、剥き出しになった芯線11の最外層の素線11aがそれぞれの圧接端部24a,24aに沿って擦られながら、それぞれの圧接端部24a,24aの間に圧入されていく。これにより、この電線10においては、それぞれの圧接端部24a,24aの間で芯線11が圧接状態になり、それぞれの圧接端部24a,24aを介して芯線11の最外層の素線11aが端子金具20に物理的且つ電気的に接続される。
【0025】
このように、芯線接続体22は、芯線11の最外層の素線11aに対して一対の圧接体24,24を直接接触させるものである(
図4)。このため、この芯線接続体22は、原則として、芯線11における最外層よりも内側の素線11aに対して直接接触させることができない。更に、この芯線接続体22は、最外層の複数本の素線11aの全てに一対の圧接体24,24を直接接触させるものではない。つまり、芯線11においては、圧接体24に直接接触して電気接続される最外層の素線(以下、「接触素線」という。)11aと、この接触素線11aを介して圧接体24に間接的に電気接続される残りの素線(以下、「非接触素線」という。)11aと、に大別される。そして、この芯線11においては、素線11aの本数が増えたとしても、その増加分の全てが圧接体24に直接接触する訳ではなく、素線11aの本数が増えるほど、接触素線11aの増加率よりも非接触素線11aの増加率の方が高くなり、これに伴い、芯線11の素線間の電気抵抗が高くなる。
【0026】
そこで、この端子付き電線1においては、芯線11の素線間の電気抵抗を低下させることによって、芯線11と端子金具20の電気的な接続安定性を向上させる。ここでは、芯線11の全ての素線同士を物理的且つ電気的に接続させることによって、この芯線11の素線間の電気抵抗を低下させる。このために、電線10には、芯線11の全ての素線同士を溶着させた溶着部11bを設ける(
図1から
図3及び
図5)。
【0027】
これにより、芯線11においては、全ての素線11aが溶着部11bで直接接続されるので、素線間の電気抵抗の上昇を抑えることができる。従って、本実施形態の端子付き電線1は、芯線11と芯線接続体22との間の接続部分での電気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0028】
また、電線10においては、素線11aがアルミニウム又はアルミニウム合金で成形されている場合、その素線11aの表面に酸化皮膜が形成される。しかしながら、芯線11においては、溶着部11bが形成される際に、その酸化皮膜が取り除かれた状態で全ての素線同士が溶着される。このため、この芯線11においては、素線11aがアルミニウム又はアルミニウム合金で成形されている場合でも、素線間の電気抵抗の上昇を抑えることができる。そして、一対の圧接体24,24は、電線10が押し込まれている最中に、それぞれの圧接端部24a,24aで芯線11の最外層の素線11aの表面を擦りながら当該素線11aの酸化皮膜を削り取っていく。よって、芯線接続体22は、一対の圧接体24,24を芯線11の最外層の素線11aに対して酸化皮膜を介在させることなく接触させることができる。従って、本実施形態の端子付き電線1は、素線11aがアルミニウム又はアルミニウム合金で成形されている場合でも、芯線11と芯線接続体22との間の接続部分での電気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0029】
具体的に、溶着部11bは、電線10の端末に設けてもよく、電線10の両端部の間に設けてもよい。また、溶着部11bは、芯線11が被覆12によって覆われた状態で形成してもよく、被覆12で覆われる前の芯線11に対して形成してもよい。例えば、この溶着部11bは、電線10の端末に設ける場合、この電線10の端末の末端部10aにおける芯線11の露出部分に設ける。この場合、溶着部11bは、芯線11が被覆12によって覆われた状態のまま、この芯線11の露出部分に形成される。また、例えば、この溶着部11bは、電線10の両端部の間に設ける場合、この被覆12で覆われる前の芯線11に対して形成される。
【0030】
この溶着部11bは、例えば、芯線11における束ねられた全ての素線11aの一部分に対してレーザを照射し、このレーザ照射で芯線11の全ての素線同士を溶着させることによって形成される。
【0031】
ここで示す溶着部11bは、電線10の末端部10aにおける芯線11の露出部分に設けている(
図5)。例えば、ここで示す芯線11は、電線10の末端部10aの軸線方向における端面10bまで被覆12で覆われている。そして、この芯線11は、その電線10の末端部10aの端面10bで露出させた露出面11cを有している(
図5の上図及び中図)。従って、ここで示す溶着部11bは、その芯線11の露出面11cに対してレーザを照射し、この芯線11の露出面11cへのレーザ照射によって全ての素線同士を溶着させることによって形成される(
図5の中図及び下図)。つまり、この溶着部11bは、その芯線11の露出面11cへのレーザ照射によって形成されたレーザ溶着部である。そのレーザ照射は、例えば、治具に配置した1本の電線10に対して行うものであってもよく、治具に並べて配置した複数本の電線10に対して順番に行うものであってもよい。
【0032】
被覆接続体23は、底部23aと、この底部23aの両端から突出させた一対のバレル片部23b,23bと、によって構成される(
図1及び
図2)。この被覆接続体23においては、例えば、それぞれのバレル片部23b,23bにおける自由端23b
1,23b
1の間の開口23c(
図1)から電線10の端末が差し入れられ、その被覆12が底部23aの内壁面(底面)に載せ置かれる。この被覆接続体23は、例えば、それぞれのバレル片部23b,23bを加圧して変形させながら電線10の端末の被覆12に巻き付けていく。
【0033】
以上示したように、本実施形態の端子付き電線1は、芯線11と芯線接続体22との間の接続部分で電気抵抗の上昇が抑えられるので、芯線11と端子金具20の電気的な接続安定性を向上させることができる。
【0034】
ところで、ここで示した電線10においては、溶着部11bを形成する際に、被覆12を部分的に剥ぎ取ることなく、末端部10aの端面10bの露出面11cに対してレーザを照射させる。このため、この端子付き電線1においては、被覆12の剥き取り作業を必要としないので、作業工程の増加を抑えることができる。
【0035】
しかしながら、電線10においては、末端部10aの被覆12を剥ぎ取ることによって、この末端部10aで芯線11を柱状に露出させることがある(
図6の上図及び中図)。本実施形態の端子付き電線1は、このような柱状の芯線11の露出部分を有する電線10にも適用できる。例えば、この電線10においては、端子金具20に組み付ける前に、治具に配置し、柱状の芯線11の露出部分に外周部側からレーザを照射して、全ての素線同士を溶着させる(
図6の中図及び下図)。また、例えば、この電線10においては、端子金具20に組み付けた後で、この端子金具20を治具として利用し、柱状の芯線11の露出部分に外周部側からレーザを照射して、全ての素線同士を溶着させてもよい。
【0036】
尚、本発明に係る端子金具は、複数本の電線10を接続する場合、例えば、一対の圧接体24,24のそれぞれの圧接端部24a,24aの長さを接続対象となる電線10の本数に応じて長くして、少なくとも1組の一対の圧接体24,24に複数本の電線10を接続してもよい。また、本発明に係る端子金具は、複数本の電線10を接続する場合、例えば、少なくとも1組の一対の圧接体24,24を電線10毎に設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 端子付き電線
10 電線
10a 末端部
10b 端面
11 芯線
11a 素線
11b 溶着部
11c 露出面
12 被覆
20 端子金具
22 芯線接続体
22a 底部
22b 側壁部
22b1 自由端
22c 開口
24 圧接体