(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】優れた耐熱性および溶媒への溶解性を有するポリエステル樹脂、ならびにこれを含有するコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 63/672 20060101AFI20231225BHJP
C09D 167/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C08G63/672
C09D167/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021129718
(22)【出願日】2021-08-06
(62)【分割の表示】P 2018538105の分割
【原出願日】2017-01-05
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2016-0014425
(32)【優先日】2016-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-キ・シム
(72)【発明者】
【氏名】ソン-キ・キム
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-190349(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163400(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/093453(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0037182(US,A1)
【文献】特開2013-189507(JP,A)
【文献】特開2003-119259(JP,A)
【文献】特表2013-504650(JP,A)
【文献】国際公開第2011/031112(WO,A1)
【文献】特表2006-506485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0092703(US,A1)
【文献】特表2014-507531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0295306(US,A1)
【文献】特表2013-510919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0226014(US,A1)
【文献】特表2018-536073(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0362707(US,A1)
【文献】特開2013-228697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/672
C09D 167/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)二価酸成分;ならびに
(b)イソソルビド、脂環式ジオールおよびネオペンチルグリコールを含むジオール成分、
を共重合させることによって得られる繰り返し単位を含むポリエステル樹脂であって、
前記ポリエステル樹脂が、80℃以上のガラス転移温度を有し、前記脂環式ジオールが、トリシクロC
7~14アルカンの1つ以上のジオール誘導体であり、前記ジオール成分中の前記イソソルビドおよび前記脂環式ジオールの合計と前記ネオペンチルグリコールのモル比が、0.5~2.5:1であ
り、前記ジオール成分が、前記ジオール成分の総モル数に基づいて、20~45モル%の前記イソソルビドを含み、前記二価酸成分が、テレフタル酸、イソフタル酸、これらの誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含む、ポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記ジオール成分が、前記ジオール成分の総モル数に基づい
て20~
30モル%の前記脂環式ジオールを含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記脂環式ジオールが、トリシクロ[3.2.1.0
2,6]オクタン、トリシクロ[4.2.1.0
2,6]ノナン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、トリシクロ[6.2.1.0
2,6]ウンデカン、トリシクロ[7.2.1.0
2,6]ドデカン、トリシクロ[4.2.1.1
2,5]デカン、トリシクロ[4.3.1.1
2,5]デカン、トリシクロ[4.4.1.1
2,5]デカン、トリシクロ[2.2.1.0
2,6]ヘプタン、トリシクロ[2.2.2.0
2,6]オクタン、トリシクロ[3.2.2.0
2,6]ノナン、トリシクロ[3.3.1.1
3,6]デカン、トリシクロ[3.2.1.1
3,7]ノナン、トリシクロ[4.2.2.2
2,5]ドデカン、トリシクロ[4.3.2.2
2,5]トリデカン、トリシクロ[4.4.2.2
2,5]テトラデカン、トリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン、トリシクロ[4.4.1.1
1,5]ドデカン、トリシクロ[6.2.1.0
2,7]ウンデカン、トリシクロ[5.2.2.0
2,6]ウンデカン、トリシクロ[6.2.2.0
2,7]ドデカン、トリシクロ[4.3.2.0
2,5]ウンデカン、トリシクロ[4.2.2.0
2,5]デカンおよびトリシクロ[5.5.1.0
3,11]トリデカンからなる群から選択される化合物のジオール誘導体、またはこれらの混合物である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
前記二価酸成分が、前記テレフタル酸、前記イソフタル酸またはこれらの混合物を、前記二価酸成分の総モル数に基づいて、1~100モル%の量で含む、請求項
1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂が、2,000~20,000の数平均分子量、2~60mgKOH/gのヒドロキシル価、および0.1~20mgKOH/gの酸価を有する、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂が、80~150℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂;および
有機溶媒
を含む、コーティング組成物。
【請求項8】
前記有機溶媒が、芳香族炭化水素溶媒、グリコールエステル溶媒、グリコールエーテル溶媒、ケトン溶媒、アルコール溶媒、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項
7に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記コーティング組成物が、10~40重量%の前記ポリエステル樹脂、および60~90重量%の前記有機溶媒を含む、請求項
7に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記コーティング組成物が、架橋剤、硬化触媒、スリップ性のための添加剤、平滑剤、消泡剤、顔料、レベリング剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される成分をさらに含む、請求項
7に記載のコーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱性および溶媒溶解性を有するポリエステル樹脂、ならびにこれを含むコーティング組成物であって、優れた、耐熱性、硬度、耐薬品性、耐汚損性および耐加水分解性を有するコーティング膜を形成することが可能なコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂を含有するコーティング組成物は、コーティング膜の形成において良好な加工性を有し、バインダー、たとえば、アルキド樹脂、ビニル樹脂およびシリコーン樹脂の代わりに使用することが考えられる。直鎖型の線状構造を有するポリエステル樹脂は、良好な加工性を有するが、コーティング膜の低い耐熱性(低いTg範囲)および低い硬度を有し、これらの使用の制限をもたらす。このような欠陥を改善するために、硬い分子構造を有する、環状分子構造を有するモノマー、たとえば、イソソルビドを共重合することによって得られるポリエステル樹脂が、研究されている。
【0003】
韓国特許第10-1058974号は、イソソルビドの均一な水溶液を使用する、ポリエステルを調製する方法を開示している。このポリエステルを調製する方法は、イソソルビドの均一な水溶液を使用し、イソソルビドの取り扱いが容易であるという効果を達成することができる。
【0004】
しかしながら、モノマー、たとえば、イソソルビドの共重合によって得られるポリエステル樹脂バインダーを使用すると、ポリマー構造は、硬くなって、溶媒溶解性が低下し、したがって、これらの工業的な応用は限られていた。
【発明の開示】
【0005】
[技術的課題]
【0006】
したがって、本発明の目的は、80℃以上のガラス転移温度を伴う高い耐熱性、および工業的に広く使用されている溶媒への良好な溶解性を有するポリエステル樹脂を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、優れた耐熱性および溶媒溶解性を有し、良好な硬度を有するコーティング膜を形成することが可能なポリエステル樹脂を含むコーティング組成物を提供することである。
[課題の解決手段]
【0008】
本発明の1つの側面によれば、
(a)二価酸成分;ならびに
(b)イソソルビドおよび脂環式ジオールを含むジオール成分
を共重合させることによって得られる繰り返し単位を含むポリエステル樹脂であって、
ポリエステル樹脂が、80℃以上のガラス転移温度を有する、ポリエステル樹脂が提供される。
【0009】
本発明の別の側面によれば、上記に記載のポリエステル樹脂および有機溶媒を含むコーティング組成物が提供される。
【発明の有利な効果】
【0010】
本発明によれば、80℃以上のガラス転移温度を伴う高い耐熱性、および工業的に広く使用されている溶媒への良好な溶解性を有する、イソソルビドを含むポリエステル樹脂を調製することが可能である。加えて、本発明は、イソソルビドを含有する従来のポリエステル樹脂の低い溶媒溶解性の限界を克服する、改善された溶解性を示すポリエステル樹脂を含むコーティング組成物を提供する。コーティング組成物は、缶、電子製品、建造物の外装材、および膜のためのコーティング材料として、ならびに接着材料として、有用に使用されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリエステル樹脂は、(a)二価酸成分;ならびに(b)イソソルビドおよび脂環式ジオールを含むジオール成分を共重合させることによって得られる繰り返し単位を含み、このポリエステル樹脂は、80℃以上のガラス転移温度を有する。
【0012】
ジオール成分は、硬い分子構造を有し、高い耐熱性を示すイソソルビド、ならびに樹脂の耐熱性および溶媒溶解性を改善するための脂環式ジオールを含む。たとえば、ジオール成分は、ジオール成分の総モル数に基づいて、1~50モル%のイソソルビドおよび1~80モル%の脂環式ジオールを含んでいてもよい。特に、ジオール成分は、ジオール成分の総モル数に基づいて、10~50モル%のイソソルビドおよび10~50モル%の脂環式ジオールを含んでいてもよい。より特に、ジオール成分は、ジオール成分の総モル数に基づいて、20~45モル%のイソソルビドおよび20~30モル%の脂環式ジオールを含んでいてもよい。
【0013】
脂環式ジオールは、少なくとも1つのトリシクロC7~14アルカンのジオール誘導体、たとえば、トリシクロオクタン、トリシクロノナン、トリシクロデカン、トリシクロウンデカン、トリシクロドデカン、トリシクロヘプタン、トリシクロトリデカンおよびトリシクロテトラデカンからなる群から選択される化合物のジオール誘導体またはこれらの混合物であってもよい。
【0014】
特に、脂環式ジオールは、トリシクロ[3.2.1.02,6]オクタン、トリシクロ[4.2.1.02,6]ノナン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[6.2.1.02,6]ウンデカン、トリシクロ[7.2.1.02,6]ドデカン、トリシクロ[4.2.1.12,5]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]デカン、トリシクロ[4.4.1.12,5]デカン、トリシクロ[2.2.1.02,6]ヘプタン、トリシクロ[2.2.2.02,6]オクタン、トリシクロ[3.2.2.02,6]ノナン、トリシクロ[3.3.1.13,6]デカン、トリシクロ[3.2.1.13,7]ノナン、トリシクロ[4.2.2.22,5]ドデカン、トリシクロ[4.3.2.22,5]トリデカン、トリシクロ[4.4.2.22,5]テトラデカン、トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン、トリシクロ[4.4.1.11,5]ドデカン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカン、トリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカン、トリシクロ[6.2.2.02,7]ドデカン、トリシクロ[4.3.2.02,5]ウンデカン、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカンおよびトリシクロ[5.5.1.03,11]トリデカンからなる群から選択される化合物のジオール誘導体またはこれらの混合物であってもよい。より特に、脂環式ジオールは、トリシクロ[7.2.1.02,6]ドデカン、トリシクロ[4.2.2.22,5]ドデカン、トリシクロ[4.4.1.11,5]ドデカンおよびトリシクロ[6.2.2.02,7]ドデカンからなる群から選択される化合物のジメタノール誘導体またはこれらの混合物であってもよい。
【0015】
加えて、ジオール成分は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびテトラメチルシクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を、イソソルビドおよび脂環式ジオールを除く残りの量で、たとえば、ジオール成分の総モル数に基づいて、19~80モル%の量で、追加で含んでいてもよい。たとえば、プロパンジオールは、1,2-プロパンジオールまたは1,3-プロパンジオールであってもよい。加えて、ヘキサンジオールは、1,6-ヘキサンジオールであってもよい。特に、ジオール成分は、ネオペンチルグリコールを追加で含んでいてもよく、ジオール成分中のイソソルビドおよび脂環式ジオールの合計とネオペンチルグリコールのモル比は、0.5~2.5:1であってもよい。より特に、ジオール成分中のイソソルビドおよび脂環式ジオールの合計とネオペンチルグリコールのモル比は、0.5~1.8:1、0.5~1.5:1、または0.5~1.3:1であってもよい。
【0016】
二価酸成分は、少なくとも1つのC8~C14芳香族ジカルボン酸を含んでいてもよく、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、これらの誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸を、芳香族ジカルボン酸に代えて、二価酸成分として使用すると、ガラス転移温度が低下し、したがって、高い耐熱性を有するポリエステル樹脂を調製することは困難である。たとえば、ナフタレンジカルボン酸は、2,6-ナフタレンジカルボン酸であってもよい。特に、二価酸成分は、テレフタル酸、イソフタル酸およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物を、二価酸成分の総モル数に基づいて、1~100モル%、50~100モル%、70~100モル%、70~99モル%、または70~95モル%の量で、含んでいてもよい。二価酸成分のうちのテレフタル酸および/またはイソフタル酸の量が上記の範囲内にあると、これ故に、ポリエステル樹脂の低すぎるガラス転移温度を防止することができ(80℃以上のTgが可能である)、コーティング後の硬度の低下を防止することができる。
【0017】
二価酸成分は、テレフタル酸およびイソフタル酸を除く、他の芳香族または脂肪族ジカルボン酸を残りの量で含んでいてもよい。本開示において、「テレフタル酸」という用語は、テレフタル酸、ならびにエステル、たとえば、そのアルキルエステル(モノメチル、モノエチル、ジメチル、ジエチルまたはジブチルエステルを含む、C1~C4低級アルキルエステル)およびその酸無水物を形成するための誘導体成分を意味する。加えて、テレフタル酸は、ジオール成分と反応して、テレフタロイル部分を形成する。
【0018】
加えて、本開示において、二価酸部分およびジオール部分は、二価酸成分およびジオール成分の一般的なポリエステル重合反応によって、水素、ヒドロキシル基またはアルコキシ基が除かれた後に残る残基を意味する。
【0019】
二価酸成分とジオール成分とのモル比は、1:1.05~3.0であってもよい。二価酸成分とジオール成分とのモル比が、上記の範囲内にある場合、未反応の二価酸成分は、重合反応後に残らない。したがって、樹脂の生産性を喪失することなく、得られる樹脂の透明性が増加し、重合反応速度は、減少しない。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂は、二価酸成分およびジオール成分に加えて、三価酸および/または第3級アルコール成分の追加の共重合によって調製されてもよい。これらの添加量は、たとえば、総反応成分の総モル数に基づいて、0~10モル%、特に、0.1~10モル%であってもよい。
【0021】
ポリエステル樹脂は、2,000~20,000の数平均分子量、2~60mgKOH/gのヒドロキシル価、および0.1~20mgKOH/gの酸価を有していてもよい。特に、ポリエステル樹脂は、5,000~15,000の数平均分子量、5~50mgKOH/gのヒドロキシル価、および1~5mgKOH/gの酸価を有していてもよい。ポリエステル樹脂の数平均分子量が上記に記載の範囲内にある場合、コーティング膜の物理的性質の低下が防止される。加えて、ポリエステル樹脂のヒドロキシル価および酸価が上記に記載の範囲内にある場合、熱処理による突然の硬化が防止され、欠陥の出現およびポッピング現象が回避される。
【0022】
加えて、ポリエステル樹脂は、80℃以上のガラス転移温度を有する。特に、ポリエステル樹脂は、80~150℃、80~130℃、または80~120℃のガラス転移温度を有していてもよい。ポリエステル樹脂のガラス転移温度が上記に記載の範囲内にある場合、コーティング膜の耐薬品性および耐加水分解性が改善され、コーティング膜の硬度は低下しない。
【0023】
ポリエステル樹脂は、o-クロロフェノール(OCP)に、1.2g/dlの濃度で溶解した後に、35℃で測定された場合に、0.15dl/g以上、特に、0.3dl/g以上の固有粘度を有していてもよい。
【0024】
ポリエステル樹脂は、当該技術分野において公知の方法によって、上記に記載の成分を使用して調製されてもよい。たとえば、本発明のポリエステル樹脂(バインダー)は、(i)(a)二価酸成分、ならびに(b)イソソルビドおよび脂環式ジオールを含むジオール成分のエステル化反応またはエステル交換反応を行う工程と;(ii)エステル化反応生成物またはエステル交換反応生成物の重縮合反応を行う工程とを含む調製方法によって調製されてもよい。特に、重縮合反応の最終真空度は、2.0mmHg未満であり、エステル化反応および重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。加えて、重縮合反応は、目的とする固有粘度に達するまで、必要な期間、行ってもよい。
【0025】
工程(i)は、0.1~3.0kgf/cm2の加圧条件下、200~300℃の温度で、100~600分の平均保持時間で、行ってもよい。特に、工程(i)は、0.2~2.0kgf/cm2の加圧条件下、240~270℃の温度で、120~500分の平均保持時間で、行ってもよい。工程(i)の反応条件は、使用される二価酸成分およびジオール成分のモル比に従って、変更してもよい。
【0026】
加えて、適切な触媒を、反応時間を減少させるために、工程(i)および(ii)において、追加で使用してもよい。
【0027】
さらに、工程(ii)の重縮合反応を開始する前に、重縮合触媒、安定剤、着色剤などを、工程(i)の反応生成物に添加してもよい。重縮合触媒としては、たとえば、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウムおよびスズ系化合物の中から1つ以上の化合物を、適切に選択および使用してもよい。ゲルマニウム化合物を重縮合触媒として使用する場合、優れた色およびポリエステル樹脂の反応性が得られる。加えて、リン系化合物、たとえば、リン酸、リン酸トリメチルおよびリン酸トリエチルを安定剤として使用してもよく、これらの添加量は、リンの原子量に基づいて、最終のポリエステル樹脂の重量に関して、10~200ppmであってもよい。安定剤の添加量が上記に記載の範囲内にある場合、反応生成物の安定化効果は良好であり、黄色へのポリエステル樹脂の色の変化が、防止され、高い重合度を有する所望のポリエステル樹脂が、得られる。加えて、着色剤(たとえば、酢酸コバルト)を、ポリエステル樹脂の色を改善するために添加してもよい。
【0028】
工程(ii)は、0.1~2.0mmHgの減圧条件下、240~300℃の温度で、所望の固有粘度に達するのに必要な平均保持時間(たとえば、1~10時間)で、行ってもよい。特に、工程(ii)は、0.1~2.0mmHgの減圧条件下、250~290℃、または260~270℃の温度で、1~10時間の平均保持時間で、行ってもよい。減圧条件は、重縮合反応の副生成物であるジオール成分を除去するために必要である。
【0029】
本発明は、言及したポリエステル樹脂および有機溶媒を含む、溶媒系のコーティング組成物を提供する。
【0030】
コーティング組成物は、取り扱い、コーティングの作業性などを考慮して有機溶媒を含み、ポリエステル樹脂および他の成分を分散させ、容易に除去できる限り、どんな制限もなく、任意の溶媒を有機溶媒として使用することができる。特に、溶媒は、芳香族炭化水素溶媒、グリコールエステル溶媒、グリコールエーテル溶媒、ケトン溶媒、アルコール溶媒、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0031】
芳香族炭化水素溶媒は、たとえば、トルエン、キシレン、SK Energy Co. Ltd.製のKocosol(製品名:#100または#150)などを含んでいてもよい。グリコールエステル溶媒は、たとえば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシブチルアセテートなどを含んでいてもよい。グリコールエーテル溶媒は、たとえば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどを含んでいてもよい。ケトン溶媒は、たとえば、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを含んでいてもよい。アルコール溶媒は、たとえば、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノールなどを含んでいてもよい。
【0032】
加えて、有機溶媒は、クロロホルム、クレゾール、ヘキサン、テトラヒドロフラン、イソホロン、二塩基性エステルなどを含んでいてもよい。
【0033】
溶媒は、コーティング組成物の総量に基づいて、60~90重量%、特に、60~80重量%の量で含まれていてもよい。溶媒の量がこの範囲内では、このようにして形成されるコーティング膜の接着性は、良好であり、コーティング膜の形成プロセスにおける乾燥時間が短縮される。
【0034】
コーティング組成物は、コーティング組成物の総量に基づいて、10~40重量%、特に、20~40重量%のポリエステル樹脂を含んでいてもよい。
【0035】
加えて、コーティング組成物は、架橋剤、硬化触媒、スリップ性のための添加剤、平滑剤、消泡剤、顔料、レベリング剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される成分を、追加で含んでいてもよい。
【0036】
架橋剤は、ポリエステル樹脂と一緒に添加されて、コーティング膜を形成してもよく、従来の架橋剤を、制限なく、使用可能である。たとえば、メラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、エポキシ系またはフェノール系の架橋剤を使用してもよい。
【0037】
メラミン系架橋剤は、アミノ基またはブトキシ基を含有するメラミン樹脂、およびメトキシ基を含有するメラミン樹脂(以下で、「メトキシメラミン樹脂」と称する)であってもよい。アミノ基またはブトキシ基を含有するメラミン樹脂は、コーティング膜の硬度を増加させるのに好適であるが、酸触媒を使用する場合、メトキシメラミン樹脂と比較して、高温でのベーキング(熱処理による硬化)中の反応速度および加工性が低下し得る。反対に、メトキシメラミン樹脂を酸触媒と一緒に使用すると、硬化反応速度は速く、コーティング膜の加工性は良好である。しかしながら、コーティング膜の硬度は、相対的に劣り得る。したがって、コーティング膜の硬度および加工性の間のバランスを維持するために、本発明において、アミノ基またはブトキシ基を含有するメラミン樹脂およびメトキシメラミン樹脂の混合物を、0.3~0.5:1の量比で使用してもよい。混合重量比が上記に記載の範囲内にある場合、加工性およびコーティング膜の表面硬度の低下が、防止可能であり、組成物の保管中の粘度は、過度に上昇しない。
【0038】
加えて、メトキシメラミン樹脂は、たとえば、CYTEC製のCYMEL 303およびCYMEL 301、BIP製のBE 3747およびBE 3745、MONSANTO製のRESIMENE 745などを含んでいてもよい。アミノ基またはブトキシ基を含有するメラミン樹脂は、CYTEC製のCYMEL 325およびCYMEL 327、BIP製のBE 3748およびBE 3040、MONSANTO製のRESIMENE 717などを含んでいてもよい。
【0039】
架橋剤の添加量は、コーティング組成物の総量に基づいて、3~13重量%であってもよい。架橋剤の添加量が上記に記載の範囲内にある場合、コーティング膜の物理的性質、たとえば、耐溶媒性および硬度の低下が、防止され得る。特に、コーティング組成物は、メトキシメラミン樹脂(メチルエーテル化メラミン樹脂)を2~8重量%の量で、およびアミノ基またはブトキシ基を含有するメラミン樹脂を1~5重量%の量で、含んでいてもよい。
【0040】
硬化触媒は、コーティング膜の硬化を促進するために添加されてもよく、従来の任意の硬化触媒を、制限なく、使用可能である。たとえば、スルホン酸系、アミン系またはスズ系の硬化触媒を使用してもよく、特に、スルホン酸、たとえば、p-トルエンスルホン酸(p-TSA)、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)およびフルオロスルホン酸が、アミンまたはエポキシを使用して中和され、次いで、使用されてもよい。アミンまたはエポキシによって中和された硬化触媒を使用すると、コーティング組成物の保管中の粘度の上昇およびコーティング膜の物理的性質の低下が、防止され得る。市販の硬化触媒の例は、KING製の、p-トルエンスルホン酸として、NACURE2500、NACURE2510およびNACURE 2530、DNNSAとして、NACURE1323、NACURE1419、NACURE1557およびNACURE1953、DNNDSAとして、NACURE3525およびNACURE3527、フルオロスルホン酸として、3M製のFC520を含んでいてもよい。硬化触媒は、第3級アミンで中和されたp-トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)などを、補助的な硬化触媒として、さらに含んでいてもよい。
【0041】
アミンまたはエポキシは、硬化触媒の反応を妨げるために添加され、アミンは、たとえば、第1級アミン、第2級アミンおよび第3級アミンを含んでいてもよい。一般に、第1級アミンは、黄色へのコーティング膜の色の変化を誘発し得、第3級アミンは、過剰の使用量によりコーティング膜の表面の収縮を発生させ得る。したがって、第2級アミンが好ましい。第2級アミンは、たとえば、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-セカンダリー-ブチルアミン、ジアリルアミン、ジアミルアミン、N-エチル-1,2-ジメチルプロピルアミン、N-メチルヘキシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ピぺリジン、2-ピぺコリン、3-ピぺコリン、4-ピぺコリン、モルホリンなどを含んでいてもよい。加えて、これらの有効量を、硬化触媒と混合し、コーティング組成物に添加することによって、コーティング膜の耐汚損性が向上する。
【0042】
硬化触媒は、コーティング組成物の総量に基づいて、0.1~2.5重量%の量で添加されてもよい。特に、硬化触媒は、コーティング組成物の総量に基づいて、0.5~2.3重量%の量で添加されてもよい。硬化触媒の添加量が上記に記載の範囲内にある場合、十分な硬度を有するコーティング膜が製造され得る。
【0043】
スリップ性のための添加剤は、作業者による成形中のひっかき傷、または使用者の爪によるひっかき傷などの発生を防止するために添加されてもよく、任意のスリップ性のための添加剤を、制限なく、使用可能である。たとえば、ポリエチレン(PE)系ワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系ワックス、PTFE/PE混合ワックスなどを使用してもよい。その一方で、シリコーン油を、スリップ性のための添加剤として添加すると、シリコーン油の表面張力が低すぎることがあり、連続的なロールコーティングの作業性が劣ることになり得る。
【0044】
PEワックスは、良好な表面配向を有するが、スリップ性が劣り、PTFEワックスは、良好なスリップ性を有るが、表面配向が劣るので、PTFE/PE混合ワックスが好ましい。PTFE/PE混合ワックスを使用すると、それぞれのより良好な物理的性質の組み合わせが可能になり得る。PTFE/PE混合ワックスは、PTFEワックスが、低い密度を有するPEワックスの周囲に付着した生成物が得られるように(すなわち、PTFEワックスは、大きな粒子径を有するPEワックスの周囲に、静電力によって、付着する)、高速分散装置を使用して、調製される。PTFE/PE混合ワックスを使用するコーティング膜は、良好な硬度および十分なスリップ性を有し得る。PTFE/PE混合ワックスの平均粒子径は、3μm以下であってもよく、平均粒子径が3μmより大きい場合、コーティング膜の外観が劣ることになり得る。
【0045】
スリップ性のための添加剤の量は、コーティング組成物の総量に基づいて、0.3~10重量%であってもよい。上記に記載の範囲内で、コーティング膜の光沢の低下は、防止され得、コーティング膜は、十分なスリップ性を有し得る。
【0046】
スリップ性のための市販の添加剤は、Micro Powder製のMPI-31およびF-600XF、BYK製のCeraflour 995および996、ならびにDaniel Product製のSL-524およびSL-409を含んでいてもよい。
【0047】
加えて、コーティング組成物の作業性を改善するために、添加剤、たとえば、クレイ、アミドワックスおよびヒュームドシリカを、追加で添加してもよく、これらの添加量は、コーティング組成物の総量に基づいて、0.1~1重量%であってもよい。
【0048】
平滑剤は、コーティング層の表面の欠陥、たとえば、へこみ現象、ピンホール、およびコーティングの染みを制御する役割を果たす。市販の平滑剤は、たとえば、BYK-350、BYK-354、BYK-355などを含んでいてもよい。
【0049】
平滑剤は、コーティング組成物の総量に基づいて、0.1~1.0重量%の量で含まれていてもよい。
【0050】
レベリング剤および/または消泡剤は、コーティング組成物のコーティング膜の滑らかさを維持するため、およびコーティングプロセスの実施中の消泡性を改善するために、添加されてもよい。レベリング剤は、一般的な、アクリル系、ビニル系またはシリコーン系のレベリング剤であってもよい。市販のレベリング剤は、Kusumoto Chemicals製のdisparion L-1980、disparion L-1984およびdisparion AP-30を含んでいてもよく、市販の消泡剤は、BYK製のBYK356およびBYK410を含んでいてもよい。
【0051】
レベリング剤は、コーティング組成物の総量に基づいて、0.5~1.0重量%の量で添加されていてもよい。加えて、消泡剤は、コーティング組成物の総量に基づいて、0.5~1.0重量%の量で添加されていてもよい。
【0052】
加えて、本発明のコーティング組成物は、任意の顔料を含有していない透明なコーティング組成物であってもよく、または顔料を含有する色付きのコーティング組成物であってもよい。顔料は、制限なく、コーティング組成物の分野において使用されてもよい、任意の顔料であってよい。たとえば、有機顔料、たとえば、シアニンブルーおよびシアニングリーン;無機顔料、たとえば、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、クロムイエローおよび様々な焼成顔料;ならびに、ふるい顔料、たとえば、タルク、クレイ、シリカ、マイカおよびアルミナを使用してもよい。
【0053】
顔料は、コーティング組成物の総量に基づいて、0~40重量%の量で添加されていてもよい。
【0054】
コーティング組成物は、金属または非金属フィラーを追加で含んでいてもよい。
【0055】
本発明において、80℃以上のガラス転移温度を伴う高い耐熱性、および工業的に広く使用されている溶媒への良好な溶解性を有する、イソソルビドおよび脂環式ジオールを含むポリエステル樹脂を調製してもよい。加えて、本発明は、イソソルビドを含む従来のポリエステル樹脂の低い溶媒溶解性の限界を克服する、改善された溶解性を有するコーティング組成物を提供する。コーティング組成物は、缶、電子製品、建造物の外装材、および膜のためのコーティング材料として、ならびに接着材料として、有用に使用され得る。
本発明の態様
以下において、本発明を、例および比較例によって、詳細に説明する。以下の例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明をさらに説明することを目的とする。
【実施例】
【0056】
以下の例および比較例において、TPAは、テレフタル酸を意味し、IPAは、イソフタル酸を意味し、ISBは、イソソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドログルシトール)を意味し、EGは、エチレングリコールを意味し、NPGは、ネオペンチルグリコールを意味し、TCDDMは、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-4,8-ジメタノールを意味する。
【0057】
例1:ポリエステル樹脂の調製
二価酸成分として、157gのTPAおよび157gのIPA、ならびにジオール成分として、59gのNPG、9gのEG、82gのTCDDMおよび194gのISBを、1Lの三ツ口フラスコに添加し、0.10gの酢酸亜鉛をそこに添加し、続いて、1kgf/cm2の加圧条件下、260℃で、240分間、エステル化反応を行った。110gの水が、エステル化反応中に、系から流出した時に、0.2gの二酸化ゲルマニウム触媒および0.05gのトリエチルホスホノアセテート安定剤を、大気圧下、添加し、重縮合反応を行った。重縮合反応を、1.0mmHgの減圧条件下、270℃で行い、重合反応を、粘度が一定値(固有粘度の0.36dl/g)に達したときに、終了し、目的のポリエステル樹脂を得た。
【0058】
例2~5および比較例1~3
以下の表1に列挙する成分および量を使用する以外は、例1の記載と同様の手順を行うことによって、ポリエステル樹脂を調製した。
【0059】
【0060】
実験例1:ポリエステル樹脂の性能の評価
上記の例および比較例で調製したポリエステル樹脂の性能の評価方法は以下の通りである。
(1)成分((TCDDM+ISB)/NPGの成分比)
核磁気共鳴(NMR、600MHz)分析を利用した。ポリエステル樹脂を、クロロホルム-Dに溶解し、プロトンNMRを測定して、(TCDDM+ISB)モル%/NPGモル%の成分比(モル比)を確認した。
(2)固有粘度(IV)
ポリエステル樹脂を、o-クロロフェノールに、150℃で、1.2g/dlの濃度で溶解し、固有粘度(dl/g)を、35℃の恒温槽中、ウベローデ粘度計を使用して測定した。
(3)耐熱性:ガラス転移温度(Tg)
ガラス-ゴムの転移温度(Tg)として、二次スキャニング中の昇温速度10℃/分で、Tg温度(℃)を測定した。
(4)数平均分子量(Mn)
数平均分子量を、ポリエステル樹脂をテトラヒドロフランに溶解後、ポリスチレン標準を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した。
(5)溶媒溶解性
ポリエステル樹脂を、沸点により工業的に広く使用されている溶媒の中から、Kocosol-100(K-100)、シクロヘキサノン、トルエンおよびメチルエチルケトン(MEK)の典型的な4つの溶媒を選択することによって、以下の表2に列挙する溶媒成分中に、40重量%の濃度で溶解すること、および樹脂が完全に溶解したか否かを観察することによって、溶媒溶解性を得た。樹脂が完全に溶解して、透明な状態になった場合、〇で示し、不溶の樹脂が残っているか、または不透明な状態/層分離が経時的に観察された場合、×で示した。
【0061】
物理的性質の測定結果を、以下の表2に示す。
【0062】
【0063】
表2に示すように、脂環式ジオールであるTCDDMを使用していない比較例1および2と比較すると、例1~5のすべてのポリエステル樹脂は、80℃以上の高いガラス転移温度を有し、各種の溶媒へのこれらの溶解性は、良好であった。
【0064】
さらに、同様のガラス転移温度を有する比較例1と比較すると、例2および5のポリエステル樹脂は、トルエンおよびMEKの混合溶媒に溶解し、改善された溶媒溶解性を示した。
【0065】
加えて、(TCDDN+ISB)/NPG成分比(モル比)が、0.5未満であった比較例3において、ガラス転移温度は、80℃未満であり、耐熱性が低かった。さらに、(TCDDN+ISB)/NPG成分比(モル比)が、2.5以上であった場合、反応時間は、急速に増加し、欠陥、たとえば、ポリマーの合成の困難さ、コスト上昇および溶解性の減少を示した(結果は示さない)。
【0066】
例6~10および比較例4~6:コーティング組成物の調製
シクロヘキサノン/ソルベントナフサ100(ソルベントナフサ100の製造者:SK Energy、製品名:Kocosol-100)の混合溶媒(重量比で50/50)中に、例1~5および比較例1~3のポリエステル樹脂のそれぞれを、40重量%の濃度で溶解し、樹脂溶液を調製した。208gの樹脂溶液、100gのTiO2(ルチル型)、および1.5gの湿潤剤(製造者:BYK、製品名:BYK-110)を混合して、分散混合物(ミルベース)を調製した。
【0067】
0.6gの樹脂溶液、30gの分散混合物、1.4gの架橋剤(製造者:CYTEC、製品名:CYMEL-303)、0.8gの硬化触媒(製造者:King Industries、製品名:Nacure1953)、3gの混合溶媒、および0.2gの平滑剤(製造者:BYK、製品名:BYK-355)を混合して、コーティング組成物を調製した。
【0068】
実験例2:コーティング組成物の物理的性質の評価
例6~10および比較例4~6で調製したコーティング組成物の性能の評価方法は以下の通りである。
(6)光沢
0.5mmの厚さの亜鉛めっき鋼板を、コーティング組成物でコーティングし、熱風乾燥機を使用して、230℃で5分間、乾燥して、コーティング膜の厚さが20μmのコーティング鋼板を製造した。コーティング鋼板の60°の表面の光沢を、BYK製の光沢計を使用して、測定した。
(7)MEKラビング
上記(6)において使用されたものと同じコーティング鋼板を、MEKを十分に浸したガーゼを使用して擦り、耐薬品性を測定し、ラビング数を測定した。
(8)振り子硬度
上記(6)において使用されたものと同じコーティング鋼板に関して、振り子硬度を、ケーニッヒ測定法およびISO 1522 (2005)による、T.Q.Cの振り子硬度試験機を使用して、測定した。特に、振り子(重量:200g)を、コーティング鋼板の表面上に置き、振り子が停止した状態を、0°にセットした。次いで、振り子を、6°の角度に引っ張り、振り子運動を開始し、角度が3°になるまでの時間間隔を、3回測定した。
(9)鉛筆硬度
上記(6)において使用されたものと同じコーティング鋼板に関して、コーティング膜のひっかき硬度を、三菱鉛筆を使用して、測定した。様々な硬度の鉛筆を、45度の角度で、試験試料に立てかけた。次いで、表面を、750gの加重でひっかき、コーティング膜の硬度を、表面の損傷度に従って、測定した。上記に記載の条件下、表面を、特定の硬度を有する鉛筆を使用してひっかき、表面上にひっかき傷が発生しない最大硬度値を記録した。
【0069】
物理的性質の測定結果を、以下の表3に列挙する。
【0070】
【0071】
表3に示すように、本発明のコーティング組成物は、良好な硬度、光沢およびひっかき耐性を有するコーティング膜をもたらす。