(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】可視化システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20231225BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20231225BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2021138825
(22)【出願日】2021-08-27
(62)【分割の表示】P 2020063626の分割
【原出願日】2020-03-31
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2019161365
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】千葉 勝久
(72)【発明者】
【氏名】田島 正憲
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真矢
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/003524(WO,A1)
【文献】特開2008-299762(JP,A)
【文献】特開2014-179060(JP,A)
【文献】特開2011-076131(JP,A)
【文献】特開2021-189702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製造工程を順に経て製造される製品の製造単位毎の各工程における開始時刻又は終了時刻を含む製造ログ情報を記憶する第1記憶部と、
製造工程において、品質特性に影響する要因となる複数の異なる工程特性要因の各経時履歴情報を記憶する第2記憶部と、
前記製造ログ情報の時間経過に同期させた工程特性要因の時間軸を生成するとともに、前記経時履歴情報に基づいて工程特性要因の状態又は変化を表す表示オブジェクトを生成して前記時間軸に配置し、複数の異なる工程特性要因別のタイムラインオブジェクトそれぞれを生成する
生成部と、
前記製造ログ情報の時間経過と同期させた複数の異なる工程特性要因それぞれの各タイムラインオブジェクトを上下に並列配置した工程特性要因タイムライン画面をディスプレイ装置に表示させる表示制御部と、を含
み、
前記生成部は、生成される工程特性要因別のタイムランオブジェクトの期間中に前記製造工程を経て製造された前記製品それぞれを表す製品表示オブジェクトを、前記工程特性要因の時間軸と同期した時間軸上にプロットした製品タイムラインオブジェクトを生成するとともに、各製品の検査結果から把握される良品及び不良品が区別されるように前記製品表示オブジェクトを生成し、
前記表示制御部は、上下に並列配置される複数の異なる工程特性要因の各タイムラインオブジェクトとともに前記製品タイムラインオブジェクトをさらに並列に配置した前記工程特性要因タイムライン画面をディスプレイ装置に表示させることを特徴とする可視化システム。
【請求項2】
工程特性要因は、各工程特性要因に属する1つ以上の項目を含み、
前記経時履歴情報は、前記項目別に蓄積されており、
前記表示制御部は、前記項目の項目選択画面を生成して前記ディスプレイ装置に表示させるとともに、選択される項目の前記経時履歴情報に基づいて、工程特性要因に属する前記項目の状態又は変化を表す項目別表示オブジェクトを生成して前記時間軸に配置し、工程特性要因のタイムラインオブジェクトを生成することを特徴とする請求項1に記載の可視化システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記ディスプレイ装置に表示された工程特性要因タイムライン画面において任意の時間範囲を指定可能に制御するとともに、指定された時間範囲の区画する補助線を表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の可視化システム。
【請求項4】
工程特性要因は、前記製造工程における機械・設備(Machine)、作業者(Man)、原料・材料(Material)、作業方法(Method)を少なくとも含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の可視化システム。
【請求項5】
複数の製造工程を順に経て製造される製品の製造単位毎の各工程における開始時刻又は終了時刻を含む製造ログ情報を記憶する第1記憶部と、
製造工程において、品質特性に影響する要因となる複数の異なる工程特性要因の各経時履歴情報を記憶する第2記憶部と、
前記製造ログ情報の時間経過に同期させた工程特性要因の時間軸を生成するとともに、前記経時履歴情報に基づいて工程特性要因の状態又は変化を表す表示オブジェクトを生成して前記時間軸に配置し、複数の異なる工程特性要因別のタイムラインオブジェクトそれぞれを生成する
生成部と、
前記製造ログ情報の時間経過と同期させた複数の異なる工程特性要因それぞれの各タイムラインオブジェクトを上下に並列配置した工程特性要因タイムライン画面をディスプレイ装置に表示させる表示制御部と、を含
み、
前記生成部は、生成される工程特性要因別のタイムランオブジェクトの期間中に前記製造工程を経て製造された前記製品それぞれを表す製品表示オブジェクトを、前記工程特性要因の時間軸と同期した時間軸上にプロットした製品タイムラインオブジェクトを生成するとともに、各製品の検査結果から把握される良品及び不良品が区別されるように前記製品表示オブジェクトを生成し、
前記表示制御部は、上下に並列配置される複数の異なる工程特性要因の各タイムラインオブジェクトとともに前記製品タイムラインオブジェクトをさらに並列に配置した前記工程特性要因タイムライン画面をディスプレイ装置に表示させることを特徴とする可視化装置。
【請求項6】
製品が複数の製造工程を順に経て製造される製造ラインで発生した工程特性要因の変化を表示する、コンピュータによって実行されるプログラムであって、
製品の製造単位毎の各工程における開始時刻又は終了時刻を含む製造ログ情報を記憶する第1機能と、
製造工程において、品質特性に影響する要因となる複数の異なる工程特性要因の各経時履歴情報を記憶する第2機能と、
前記製造ログ情報の時間経過に同期させた工程特性要因の時間軸を生成するとともに、前記経時履歴情報に基づいて工程特性要因の状態又は変化を表す表示オブジェクトを生成して前記時間軸に配置し、複数の異なる工程特性要因別のタイムラインオブジェクトそれぞれを生成する第3機能と、
前記製造ログ情報の時間経過と同期させた複数の異なる工程特性要因それぞれの各タイムラインオブジェクトを上下に並列配置した工程特性要因タイムライン画面をディスプレイ装置に表示させる第4機能と、をコンピュータに実現させ
、
前記第3機能は、生成される工程特性要因別のタイムランオブジェクトの期間中に前記製造工程を経て製造された前記製品それぞれを表す製品表示オブジェクトを、前記工程特性要因の時間軸と同期した時間軸上にプロットした製品タイムラインオブジェクトを生成するとともに、各製品の検査結果から把握される良品及び不良品が区別されるように前記製品表示オブジェクトを生成し、
前記第4機能は、上下に並列配置される複数の異なる工程特性要因の各タイムラインオブジェクトとともに前記製品タイムラインオブジェクトをさらに並列に配置した前記工程特性要因タイムライン画面をディスプレイ装置に表示させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、製造プロセスの工程特性要因を可視化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の製造工程を順に経て製造される製品の製造状況を可視化する技術として、ガントチャートがある。ガントチャートは、縦軸に時系列に連続する複数の製造工程を配置し、横軸に複数の製造工程毎に平行に伸びる時間軸を配置する。そして、製品の製造単位(ロット)毎に、各製造工程の時間軸上に開始時刻や終了時刻をプロットし、平行に並べられた各時間軸上の開始時刻や終了時刻同士を線分で結ぶことで、製造単位での製造状況を可視化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-025851号公報
【文献】特開2010-040007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造工程を経て製造される製品の製造状況に対し、製造状況のタイムラインと同期させて製造工程で発生した工程特性要因の変化を同じタイムライン上で視認可能に表示することができる可視化システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の可視化システムは、複数の製造工程を順に経て製造される製品の製造単位毎の各工程における開始時刻又は終了時刻を含む製造ログ情報を記憶する第1記憶部と、製造工程において、品質特性に影響する要因となる複数の異なる工程特性要因の各経時履歴情報を記憶する第2記憶部と、前記製造ログ情報の時間経過に同期させた工程特性要因の時間軸を生成するとともに、前記経時履歴情報に基づいて工程特性要因の状態又は変化を表す表示オブジェクトを生成して前記時間軸に配置し、複数の異なる工程特性要因別のタイムラインオブジェクトそれぞれを生成する生成部と、前記製造ログ情報の時間経過と同期させた複数の異なる工程特性要因それぞれの各タイムラインオブジェクトを上下に並列配置した工程特性要因タイムライン画面をディスプレイ装置に表示させる表示制御部と、を含む。前記生成部は、生成される工程特性要因別の前記タイムランオブジェクトの期間中に前記製造工程を経て製造された前記製品それぞれを表す製品表示オブジェクトを、前記工程特性要因の時間軸と同期した時間軸上にプロットした製品タイムラインオブジェクトを生成するとともに、各製品の検査結果から把握される良品及び不良品が区別されるように前記製品表示オブジェクトを生成する。前記表示制御部は、上下に並列配置される複数の異なる工程特性要因の各タイムラインオブジェクトとともに前記製品タイムラインオブジェクトをさらに並列に配置した前記工程特性要因タイムライン画面をディスプレイ装置に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の可視化システムの構成ブロック図である。
【
図2】第1実施形態の製造実績のデータ例を示す図である。
【
図3】第1実施形態の製造実績のデータ例であり、データモデルに蓄積されるデータ構造定義で整理された実績レコードの一例を示す図である。
【
図4】第1実施形態の設備管理実績データの一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態の工程特性要因のデータ例を示す図である。
【
図7】第1実施形態の製造状況の可視化例であり、製造工程別タイムチャートの一例を示す図である。
【
図8】第1実施形態のグラフ表示選択画面の一例を示す図である。
【
図9】第1実施形態の設備(工程)視点の5M1Eタイムラインチャートの一例である。
【
図10】第1実施形態の製造品視点の5M1Eタイムラインチャートの一例である。
【
図11】第1実施形態の強調表示例を示す図である。
【
図12】第1実施形態の製造状況表示例を示す図である。
【
図12A】第1実施形態の製造状況表示例の詳細を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、複数の製造工程を例に以下では説明するが、廃棄物を複数の工程を経て資源ゴミに生成するような廃棄物生成ラインや炉で燃焼させてゴミ処理するゴミ処理ライン、新聞等の印刷物を印刷する印刷ラインなど、複数の工程を経て結果物を得る仕組みをも「製造」の概念に包含することができ、本発明の対象となる。即ち、本発明における「製品」や「製造」は、物が生成されることに限定されない。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る可視化システム100の構成図である。可視化システム100は、制御装置110及び記憶装置120を含んで構成され、無線接続又は有線接続で表示装置300が接続される。表示装置300は、コンピュータ301やタブレット型コンピュータ302、多機能携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)等のディスプレイ装置を備える表示端末であり、適宜、データ通信機能及び演算機能(CPU等)を備えることができる。
【0009】
なお、本実施形態では、表示装置300が可視化システム100に個別に接続された一例を示しているが、これに限るものではない。例えば、可視化システム100にディスプレイ装置を接続することで、可視化システム100の機能を含む表示装置として、本実施形態の可視化システム100を構成することもできる。つまり、本実施形態の可視化システムは、1つの表示装置として構成することもできる。
【0010】
本実施形態の可視化システム100は、複数の製造工程を順に経て製造される製品の製造状況を可視化して、表示装置300に表示する可視化機能を提供する。記憶装置120には、製造計画121、製造実績122、及び工程特性要因123などの各履歴が、複数の製造工程毎に記憶されている。
【0011】
記憶装置120に記憶される各種情報は、
図1に示すように所定の製造管理システムから提供される情報である。製造管理システムは、主に、製造計画・基本情報から製造プロセスの実績情報までの各種情報を各データソースから収集して蓄積する。
【0012】
製造計画121の一例としては、生産計画、使用する装置/機器の情報、生産量計画値、製造ラインのタイムスケジュール計画値(製造ラインを構成する各工程のタイムスケジュール計画値を含む)などがある。
【0013】
製造実績122の一例としては、製品の製造単位毎に製造された製品に関する情報(製造ラインを構成する工程毎の開始時刻、終了時刻、処理時間など)、稼働している設備の状況、環境情報、検査結果、生産量実績、後述する品質管理に基づく変化履歴などの実績値(工程特性要因の変化ログ)などがある。製造実績122は、製品の製造ラインを構成する各製造工程における設備機器やセンサ機器などをデータソースとして収集される情報が時系列に記憶され、センサ機器から取得されるセンサ値を含むように構成することもできる。
【0014】
図2は、製造実績122のデータ例を示す図である。
図2の例では、生産の単位としての同一種類の製品の集まり(製品の製造単位:ロット)が、複数の各工程を流れる態様を示している。製造実績122は、製造ラインを構成する複数の各製造工程と、製造ラインを流れる製品のロットIDとが対応付けられ、ロットID毎に、各工程の開始時刻、終了時刻、処理時間(終了時刻-開始時刻)が対応付けられている。製造工程は、予め生産計画に基づいて決められた工程順に工程IDが連番で割り当てられている。
【0015】
ロットIDは、例えば、製造される製品の製品単位毎に一意に付される番号である。つまり、同一のロットIDで紐付く複数の製品が製造され、各製品には個別にユニークな製造番号が割り当てられる。一方、ロットは、生産の単位としての同一種類の製品の集まり、すなわち、同じ条件のもとに製造する製品の生産の最小単位であり、1以上の製品が含まれる。したがって、本実施形態の可視化システム100は、ロットだけではなくて生産の単位が「1」である場合の製造単位において適用可能である。
【0016】
図2に示す製造実績122において、ロットID「R001」に係る製品についての工程1が時刻「10:50:00」に開始され、時刻「11:05:00」に終了したことを示している。また、ロットID「R001」に係る製品は、後続の工程2が時刻「11:06:00」に開始され、時刻「11:11:00」に終了したことを示している。更に、ロットID「R002」に係る製品は、ロットID「R001」に引き続いて工程1に投入される。その際、ロットID「R002」についての工程1が時刻「11:05:05」に開始され、時刻「11:20:05」に終了したことを示している。また、ロットID「R002」に係る製品について、後続の工程2が時刻「11:21:05」に開始され、時刻「11:26:05」に終了したことを示している。
【0017】
図2で示した製造実績122の一例は、製品単位で複数の各工程の実績を抽出した一例であるが、製造実績122の他の例としては、所定のデータ構造定義を用いて構造化して蓄積することができる。例えば、「主体物(Who)」、「対象物(Whome)」、「事象(What)」、「時間(When)」、「場所(Where)」、「状況(How)」(5W1H)から構成されるデータ構造定義(テンプレート化されたデータモデル)を用い、データソースから収集された事実・実績データを蓄積することができる。
【0018】
図3に示すように、データソースの主体を「主体物」として、「主体物」がどの対象物に対して何をしたのか(「事象」)を整理し、蓄積することができる。例えば、MES(Manufacturing Execution System)を介してデータソースである設備1から情報を収集する。設備1は、製造計画に基づく製造プロセスで稼働しており、稼働実績がリアルタイムで製造管理システムに収集される。このとき、設備1における製造プロセスで行われた事実とそのときの状態、状況が、データ構造定義を使用して整理され、設備2が(主体物)、ある製造品番の製品を対象に(対象物)、組立(事象)を行った実績が生成される。データ構造定義に基づいて生成される実績レコードは、時系列にデータモデルに蓄積される。
【0019】
図3の上段は、製造・稼働実績データの一例を示している。また、製造・稼働実績データの対象物それぞれの詳細な実績は、
図3の2段目に示す製造レシピ実績データに格納されている。製造レシピ実績データにおいて、設備機器から収集及び蓄積される情報は、「対象物」、「時間」、及び「状況(製造パラメータ)」の実測値である。また、製造レシピ実績データには、「状況」において、リアルタイムに検出されるセンサ値が蓄積される。センサ値は、設備1に設けられたセンサ機器から出力されるセンサ情報や設備1とは個別に設けられた設備1の状況を把握するためのセンサ機器から出力されるセンサ情報である。
【0020】
センサ情報は、所定の時間間隔で時系列に検出されたセンサ値群を含んで構成される。センサ値群の各データは、各製造プロセスと対応付けて記憶されている。蓄積されるセンサ情報は、各製造プロセスで設備機器から出力されるセンサ値や製造や検査で必要なセンサ値を含んでおり、時系列の要素を含んでいる。
【0021】
なお、
図2に示す製造実績122は、このようなデータモデルを用いて蓄積された情報から抽出することもできる。つまり、「対象物」が各製品であり、「事象」又は「場所」が各製造工程に相当する。また、「事象」には、1つ又は複数の製造工程が含まれ、例えば、「場所:基板組立工程の基板組立第一ライン第三ステーション」では「事象」として基板組立が行われるが、
図3の製造レシピ実績データに示すように、「事象」には、CPU実装やメモリ実装など複数の工程が含まれることになる。したがって、
図3及び
図4の態様で蓄積された情報は、
図2に例示した製造実績122と同様の情報が含まれており、複数の各工程を流れる各製品の状況を把握することができる。
【0022】
また、
図3に示すように、製造・稼働実績データは、検査設備1による検査プロセスも含んでおり、製造品質検査データにおいて、設備機器から収集及び蓄積される情報は、「対象物」、「時間」、「状況(検査結果)」の実績値である。また、製造プロセスで使用される製品の受入検査実績データが格納される。このような受入検査実績をデータモデルとして蓄積しておくことで、製品を構成する各構成品の購入履歴及び購入した構成品の製造履歴を把握することができる。
【0023】
図4は、設備管理実績データの一例を示す図であり、設備管理実績データは、設備アラート履歴と設備メンテナンス履歴とを含んで構成されている。設備アラート履歴は、どの設備機器が、いつ異常が発生し、その異常はなんなのか、異常が発生した結果としてどのような措置が取られたかを規定している。設備メンテナンス履歴は、どの作業者が、どの設備機器に対して、どのようなメンテナンス(部品交換や修理など)をいつ行ったのか、そのメンテナンスで交換した部品の履歴(シリアルID)を規定したものである。これらもデータ構造定義を用いて整理され、実績レコードとして蓄積される。
【0024】
図1に示す工程特性要因123は、所定の品質管理ルールに基づく変化履歴である。例えば、「4M」、「5M」、「5M1E」、「6M」と呼ばれる製造工程における、品質特性に影響する要因となる工程特性要因(Process Characteristic Factor)がある。管理対象により異なるが、「4M」は機械加工の現場においては、人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、方法(Method)、また事故や災害の原因分析や対策検討においては、人(Man)、機械(Machine)、媒体・環境(Media)、管理(Management)の4要素を有する。「5M」は、工場の品質管理分類に用いられ、作業者(Man)、機械・設備(Machine)、原料・材料(Material)、作業方法(Method)、測定(Measurement)の5要素を有する。更に環境によって製造工程が安定しない場合があり、「5M」に環境(Environment)が加わった「5M1E」、や「5M」に、全体プロセスをコントロールするためのマネジメント(Management)が加わった「6M」により品質管理がなされる。これら「4M」、「5M」、「5M1E」、「6M」はそれぞれの各頭文字をとったものであり、各要因(ファクター)の属性(区分)を有する。
【0025】
作業者(Man)は、例えば、作業者の能力によって不良品の発生率が異なる場合があり、作業者の作業履歴や、変更履歴(担当者Aから担当者Bに交代した履歴)を工程特性要因の変化ログとして蓄積する。例えば、
図3に示す受入検査実績データが工程特性要因の人(Man)と紐付けられる。すなわち、製造・稼働実績データの対象物である構成品品番(D-001)、シリアルID(31235~)のマザーボードを(対象物)、2016年8月25日10:00に、受入検査担当者A(担当者シリアルID5555)が、A社から購入した実績が格納されており、受入検査担当者Aによる作業により、A社から購入した構成品が、A社のB工場で製造されたものであることを把握することができる。
【0026】
機械・設備(Machine)は、例えば、機械・設備によって製品の品質特性が違う場合があったり、機械・設備の入れ替えや調整などのメンテナンスを行うことで品質特定が違う場合があったりする。機械・設備の変更履歴(メンテナンス履歴)を蓄積することができる。
図3に示す製造・稼働実績データ、製造レシピ実績データ、製造品質検査データ、
図4に示す設備アラート履歴、設備メンテナンス履歴の各データが工程特性要因の機械・設備(Machine)と紐付けられる。
【0027】
原料・材料(Material)は、例えば、同じ原材料でも購入先や銘柄によって製品収率が異なる場合がある。原料・材料の変更履歴(調達先の変更や原材料の変化などの履歴)を蓄積することができる。例えば、
図3に示す調達実績データが工程特性要因の原料・材料(Material)と紐付けられる。
【0028】
作業方法(Method)は、例えば、作業方法が変わると作業効率が違ったり、複数の作業方法の手順が変わると作業効率が違ったりする。作業方法の変更履歴(手順や作業内容の変化)を蓄積することができる。例えば、
図3に示す製造レシピ実績データが工程特性要因の作業方法(Method)と紐付けられ、対象物に対して流量△△で半田が塗布されて半田付けされている状況を把握することができる。
【0029】
測定(Measurement)は、例えば、測定者、測定機器、測定方法などによって測定値が異なったり、安定しなかったりする場合がある。測定の変更履歴(測定者、測定機器、測定方法の変更、測定の有無、測定結果)を蓄積することができる。例えば、
図3に示す製造品質検査データが工程特性要因の測定(Measurement)と紐付けられ、対象物に対して検査が実施され、その結果に問題無しの実績(状況)が格納され、何に対してどのような確認(測定方法)を行ったかを把握することができる。
【0030】
環境(Environment)は、例えば、温度、湿度、季節、時間、振動、音、光などが変化すると、製造の工程(検査工程を含む)が安定しなかったりする場合がある。環境の変更履歴(製造の各工程の環境変化、例えば、センサ出力値)を蓄積することができる。上述した各製造プロセスと対応付けて時系列に記憶されているセンサ値群が工程特性要因の環境(Environment)と紐付けられる。
【0031】
なお、「5M1E」の各要因(ファクター)の属性について説明したが、「4M」、「5M」、「6M」についても同様に、各要素の変更履歴を変化ログとして蓄積することができる。尚、「4M」における媒体・環境(Media)は、作業環境、マニュアル、作業情報など、主に作業者(Man)と原料・材料(Material)の媒体となるものが関与した要因が該当する。「6M」におけるマネジメント(Management)は、例えば、他社との差別化、人材育成など、工場を将来どの方向に導いていくかのマネジメントを意味する。
【0032】
図5は、工程特性要因123のデータ例を示す図である。ここでは、「5M」を例に説明する。
図5に示すように、工程特性要因123は、変化点コード、変化属性区分(5M区分)、発生時刻、記録者情報、工程ID、発生ロットID、詳細(工程特性要因がどのように変化したかの説明)、センサ測定値などの項目が含まれる。工程特性要因123は、工程特性要因の変化が発生した場合に、発生した変化属性区分を特定し、かつ工程特性要因の変化が発生した工程及びそのとき処理していたロットIDを特定する情報である。
【0033】
工程特性要因123は、記録者情報に記憶された作業員が作成する作業日報に基づいて蓄積されたり、製造管理システムから収集された工程特性要因の変化を示す信号に基づいて自動的に工程特性要因123を生成して蓄積したりすることができる。また、作業員が操作するタブレット端末の操作・入力履歴や発話音声を収集して蓄積して活用することもできる。
図5の例において、Man属性の変化が工程1において発生し、作業員がAさんからBさんに交代し、その時のロットIDが「ZD1-150107」であることを示している。
【0034】
また、Measurement属性の変化が工程1において発生し、作業員Bさんが設備機器に対する所定の検査を実施し、その時のロットIDが「ZD1-150107」であることを示している。
【0035】
さらに、Machine属性の変化が工程1において発生し、作業員Bさんが設備機器に対する所定のメンテナンスを実施し、そのときのロットIDが「ZD1-150107」であることを示している。このとき、Machine属性変化は、3つの変化が生じており、温度設定の変更、アーム角度の変更及びアームスピードの変更の3つの変化が生じている。
【0036】
なお、記憶装置120に記憶される各種情報は、製造管理システムを介さずに直接各データソースから収集された情報が記憶されるように構成することもできる。この場合、可視化システム100の制御装置110は、各データソースから収集された情報を、編集・加工して、複数の製造工程を順に経て製造される製品の製造状況を可視化するための各種情報を生成する情報処理機能を備えることができる。
【0037】
また、工程特性要因123は、上述のように製造実績122に含まれて収集される場合もある。このため、製造管理システムから工程特性要因123として個別に受け取らなくても、可視化システム100側で、製造管理システムから受け取った情報に基づいて、製造実績122や工程特性要因123などの製造状況を可視化するための各種情報を生成する情報処理機能を備えるように構成することもできる。
【0038】
次に、本実施形態の可視化処理について説明する。
図6は、本実施形態の可視化機能の説明図であり、製造実績に基づく製造工程別タイムチャート(製造単位別製造状況チャート)と、工程特性要因に基づく5M1Eタイムラインチャートと、が含まれる。
【0039】
図7は、製造実績に基づく製造工程別タイムチャートの一例を示す図であり、複数の製造工程を順に経て製造される製品の製造状況を可視化した表示例である。横軸が時間、縦軸が時系列に連続する各製造工程である。このとき、各工程の時間軸T1~T6は、各製造工程に対してそれぞれ設けられ、製造工程毎に複数の時間軸T1,T2,T3,T4,T5,T6が平行に上から順に並べられている。時間軸T1は、Process1の開始時刻であり、「〇」で示した表示オブジェクトが、各製品を示している。時間軸T2は、Process2の開始時刻である。なお、説明の便宜上、Process1の終了時刻とProcess2の開始時刻が一致している態様を示しているが、Process1の終了時刻とProcess2の開始時刻とが異なっていてもよい。時間軸T3~T5についても同様である。また、時間軸T6は、Process5の終了時刻がプロットされる時間軸である。
【0040】
本実施形態の制御装置110は、生成部112を備えている。生成部112は、ロットID毎に、各製造工程の開始時刻を製造実績122から取得する。第1生成部112は、製品の製造単位(ロット)毎に、第1の工程1(Process1)の時間軸T1における当該第1の工程1の開始時刻と、第1の工程1に続く第2の工程2(Process2)の時間軸であって第1の工程1の時間軸T1と平行な時間軸T2における第2の工程2の開始時刻と、を結ぶ線分を生成する。このとき、各製造工程に対応するそれぞれの時間軸T1,T2上に開始時刻を示すマークをプロットし、プロットされた各時間軸T1,T2上のマークを工程間で結ぶ線分(開始時刻同士を工程1,2間で結ぶ線分)を生成する。同様に、第2の工程2の時間軸T2における当該第2の工程2の開始時刻と、第2の工程2に続く第3の工程3(Process3)の時間軸であって第2の工程2の時間軸T2と平行な時間軸T3における第3の工程3の開始時刻と、を結ぶ線分を生成する。第3の工程3に続く第4の工程4(Process4)及び第4の工程4に続く第5の工程5(Process5)の各時間軸T4,T5についても、同様に開始時刻を示すマーク及び線分の生成が行われる。
【0041】
このように、生成部112は、製造ラインにおける一の製造単位(製品又はロット)に関して時系列に連続する製造工程順に、各製造工程に対応するそれぞれの時間軸上の各開始時刻を製造工程間同士で結ぶ線分を生成し、製造工程別タイムチャートを作成する。これらの時間軸T1~T6は、縦軸方向において同じ時刻である。
【0042】
次に、5M1Eタイムラインチャートについて説明する。例えば、製造工程別タイムチャートにおいて複数の各製造工程のいずれか1つを選択可能に制御し、選択された1つの製造工程を対象とした5M1Eタイムラインチャートを生成・表示するように制御することができる。このとき、製造工程の選択制御と共に、タイムライン上の時間範囲も選択可能に制御することもできる。
【0043】
図6に示すように、横軸が時間、縦軸が各工程特性要因であり、時間軸上に各工程特性要因の変化ログが表示される。
図6の例は、ガントチャート形式の表示例である。上述のように工程特定要因123は、時系列に変化ログを蓄積しているので、Machine属性の変化ログをタイムラインで表すことができ、所定時間範囲内に「停止」の変化ログがある場合、「停止」の変化ログが発生している区間をタイムライン上に表示することができる。また、一例として、所定時間範囲内の「稼働」を示す稼働タイムラインオブジェクトと、「停止」を示す停止タイムラインオブジェクトを時系列に並べて表示し、「停止」の区間とそれ以外の区間(「稼働」している区間))とを区別可能に表示することができる。
【0044】
人(Man)、材料(Material)、方法(Method)の各工程特性要因についても同様であり、Man属性の変化ログ(例えば、交代)に基づいて、佐藤さんが作業又は担当していた時間範囲と、交代した田中さんが作業又は担当していた時間範囲とをそれぞれタイムライン上に表示することができる。材料(Material)は、その時間帯に製造されている製品に利用した材料のロットIDを、時系列にタイムライン上に表現することができる。
【0045】
方法(Method)は、例えば、その工程において実施される加工条件であり、センサαで示す値からセンサβで示す値に変更されたことを示すオブジェクトをタイムライン上に表現している。測定(Measurement)は、測定機器の精度、測定条件、測定方法に関する変化点を意味するが、検査値や結果に用途を拡大し、例えば、検査項目の結果(OK「〇」、NG「×」)を表すオブジェクトをタイムライン上にプロットして表示することができる。環境(Environment)は、例えば、センサ値の時間変化を表示することができ、センサ値を時系列の折れ線グラフで表現することができる。
【0046】
5M1Eタイムラインチャートの表示制御において、縦軸に表示する工程特性要因は、
図8に示すグラフ表示選択画面で選択することができる。工程特性要因は、上述のように、5M1Eの場合、機械・設備(Machine)、人(Man)、材料(Material)、方法(Method)、測定(Measurement)、環境(Environment)の各工程特性要因を含むと共に、各工程特性要因は、1つ又は複数の項目を含むように構成することができる。
【0047】
例えば、工程特性要因「設備(Machine)」は、設備稼働状態、設備イベント、製造作業(作った製造品、組付・使った部材)、加工条件(レシピ)、測定・検査結果、治工具・金型、設備メンテナンスなどの項目を含むことができる。工程特性要因「人(Man)」は、作業員名、音声、動作、状態などの各項目を含むことができる。工程特性要因「環境(Environment)」は、温度、湿度、濃度、外気温度、外気湿度、送気温度、送気湿度、振動などの項目を含むことができる。
【0048】
本実施形態では、
図6に示すように、5M1Eで構成される各工程特性要因の変化をそれぞれ異なるタイムラインで表現することができる。さらに、表示方法の工夫として、5M1Eの工程特性要因カテゴリを大分類として設定し、中項目として各工程特性要因カテゴリに表示させたい項目を設定可能に構成している。工程特性要因「人(Man)」の項目は、作業員名、音声、動作、状態などであり、人(Man)属性項目である。また、工程特性要因「環境(Environment)」の項目は、温度、湿度、濃度、外気温度、外気湿度、送気温度、送気湿度、振動などの「環境(Environment)」属性項目である。
【0049】
一方で、工程特性要因「設備(Machine)」の項目は、「設備(Machine)」属性の「設備稼働状態」や「設備イベント」、「設備メンテナンス」の他に、他の工程特性要因である材料(Material)に属する「組付・使った部材」、測定(Measurement)に属する「測定・検査結果(品質検査)」、方法(Method)に属する「加工条件(レシピ)、治工具・金型」などが、作った製造品にかかわる工程特性要因として選択可能に制御される。
【0050】
例えば、稼働状況やメンテナンス履歴の各項目を「設備(Machine)」として表示するだけでなく、「設備(Machine)」の視点から、他の工程特性要因の項目をまとめて表示することで、1つの工程特性要因の視点から他の工程特性要因のタイムライン上の状況(変化)を把握できるようにする。工程特性要因カテゴリ「設備(Machine)」のタイムラインと同期させて、工程特性要因「材料(Material)」に属する「組付・使った部材」、や「測定(Measurement)」に属する「測定・検査結果(品質検査)」、「方法(Method)」に属する「加工条件(レシピ)、治工具・金型」などを表示するように制御する。
【0051】
5M1Eタイムラインチャートを表示させるにあたり、事前に又はその都度、
図8に示すグラフ表示選択画面で、各工程特性要因カテゴリの視点において表示させたい各項目を選択することができる。また、予め設定した項目に対してさらに項目を追加したり、項目を削除(非表示)にしたりすることもでき、この場合においても
図8に示すグラフ表示選択画面で項目の追加・削除の各操作が行えるように制御する。
【0052】
本実施形態では、工程特性要因の状態及び変化が経時履歴情報として蓄積される。尚、これらの各工程特性要因は、属する1つ以上の項目を含んでいる。経時履歴情報は、これら各項目別に蓄積するように構成されている。表示制御部111は、グラフ表示選択画面を生成して表示装置300に表示させる。生成部112は、選択される項目の経時履歴情報に基づいて、工程特性要因に属する項目の状態又は変化を表す項目別表示オブジェクトを生成して時間軸に配置し、工程特性要因のタイムラインオブジェクトを生成する。表示制御部111は、時間軸上に配置された項目別表示オブジェクトそれぞれの各タイムラインオブジェクトを並列配置した5M1Eタイムラインチャート(工程特性要因タイムライン画面)を表示装置300に表示させる。
【0053】
次、本実施形態の5M1Eタイムラインチャートについて説明する。5M1Eタイムラインチャートは、
図9に示す設備視点の5M1Eタイムラインチャートと、
図10に示す製品視点の5M1Eタイムラインチャートと、がある。
【0054】
<設備視点の5M1Eタイムラインチャート>
設備視点の5M1Eタイムラインチャートは、例えば、良品、不良品の製品について比較をしたい場合に表示する。製造工程で、同じ設備を利用して製造された製品(同一製品、類似製品どちらの場合もあり)で良品と不良品が発生した場合に、設備に問題があるのか製品自体に問題があるのかを分析する必要がある。このようなときは、設備視点の5M1Eタイムラインチャートで、対象としている製品を当該設備で製造した際に設備に与えた条件や、設備からの測定結果(センサー情報等)といった情報を表示する。
【0055】
図9の例では、設備の稼働状況がタイムライン(時間軸)上に棒グラフで表示され、稼働状況が「稼働中」である場合と、「停止中である場合とで異なる色の棒グラフで表示されるようにしている。つまり、工程特性要因の履歴は、稼働中である時間帯と停止中である時間帯とがそれぞれ蓄積されており、表示する時間範囲内の変化ログに「停止」の履歴が存在する場合、その区間を稼働中の区間とは異なる態様で表示するように、タイムラインオブジェクト(時間軸)を生成して表示する。
【0056】
また、項目「設備メンテナンス」(表示上は「メンテナンス」)は、メンテナンスが行われた時間又は時間帯を示す表示マークをタイムライン上に表示している。項目「製造作業」(表示上は製品)は、そのタイムラインにおいて設備に投入された各製品を時間軸上にプロットしたものである。つまり、その設備で処理された各製品がプロットされる。このとき、各製品のプロットは、良品と不良品とを区別できるように表示することができる。良品と不良品の属性は、製品毎の検査結果から取得することができる。設備視点の5M1Eタイムラインチャートの表示項目として、
図8の画面で「製造作業」項目が選択された場合は、各製品の属性情報(ロットID、開始時刻、良品/不良品)を製造実績122から取得して、タイムライン上にプロットする。
【0057】
<製造品視点>
製造品視点の5M1Eタイムラインチャートは、1つの対象製品の視点から工程特定要因の変化を時系列にタイムライン上に表現したものである。例えば、設備視点の5M1Eタイムラインチャートで設備の状態を確認し、設備的には問題がないだろうと判断された場合に、対象製品に関する詳細情報を確認するために表示させることができる。
【0058】
このとき、良品、不良品の製品比較を行うこともできる。この場合は、それぞれ個別の製造品視点の5M1Eタイムラインチャートを一度に表示したり、切り替え表示したりすることもできる。例えば、設備視点の5M1Eタイムラインチャートにおいて、項目「製造作業」(表示上は「製品」)の不良品の製造品を選択すると、選択された不良の製造品を対象にした製造品視点の5M1Eタイムラインチャートを生成して表示するように構成することができる。なお、設備視点の5M1Eタイムラインチャートから製造品視点の5M1Eタイムラインチャートに切り替える態様について説明したが、対象製品を特定し、設備視点の5M1Eタイムラインチャートを介さずに(表示させずに)直接製造品視点の5M1Eタイムラインチャートを表示するように構成することも可能である。
【0059】
図10は、1つの製品が、複数の製造工程を順に流れる例を示している。したがって、項目「工程」のタイムラインは、複数の各工程の処理時間(実績値)に合わせてタイムライン上の工程それぞれを表現している。このとき、各工程の名称や処理内容などを表示するように構成することもできる。そして、項目「設備」では、設備の稼働状況や設備イベント、メンテナンス履歴が、対象製品を視点とするタイムライン上で同期して表現される。材料や測定の各項目についても同様である。製造品視点の5M1Eタイムラインチャートは、複数の各製造工程で使用した各設備について示される設備視点の5M1Eタイムラインチャートそれぞれを、1つの製造品の視点で編集したものと言える。
【0060】
ここで、5M1Eタイムラインチャートの使い方について詳細に説明する。例えば、設備視点の5M1Eタイムラインチャートを表示するまでの操作として、
図7に示した製造プロセス状況の表示画面において、不良品となった製品の所定時間における工程を選択する。このとき、デフォルトで、例えば8時間分など設定しておき、その時間範囲で5M1Eタイムラインチャートを生成し、表示させるように構成することができる。
【0061】
設備視点の5M1Eタイムラインチャートを選択すると、「グラフ表示選択」のポップアップ画面が表示される。ユーザは、表示したい工程特定要因の各項目を選択する。このとき、項目は、予め設定しておくことも可能であり、この場合は、グラフ表示選択処理をスキップすることができる。
図7でユーザが選択操作を行うと、選択した製品、設備(工程)に該当する情報のうち、表示範囲となる設備に関する所定時間分の情報を製造実績122及び工程特性要因123から抽出する。そして、グラフ表示選択画面において予め又はリアルタイムに選択された表示項目の情報を製造実績122及び工程特性要因123から抽出する。
【0062】
図9は、工程特定要因「設備(Machine)」のデフォルト項目の「設備稼動状態」、「設備イベント」に加え、「製造作業」が選択された場合の設備視点の5M1Eタイムラインチャート表示例である。画面表示では、「設備稼働状態」を「稼動」、「設備イベント」を「イベント」、「製造作業」を「製品」と称して表示している。また、工程特性要因「人(Man)」の情報として「音声」、「動作」の項目が表示されている。表示範囲は、起点となる時間(00:02)の前後2時間分の該当設備に関する情報を表示している。なお、最初に製造実績122及び工程特性要因123から抽出する情報は、デフォルト項目に関する情報となるが、ユーザ操作により表示項目に変更があった場合には、選択された項目の情報を、そのタイミングで取得して表示する。
【0063】
例えば、
図9に示す設備視点の5M1Eタイムラインチャートにおいて、特定の時間における、「製品」(項目名「製造作業」のタイムライン上にプロットされている製造品の表示オブジェクトを選択すると、
図10に示すような製造品視点の5M1Eタイムラインチャートに切り替わる。
【0064】
図11は、設備視点の5M1Eタイムラインチャートにおいて、「その時間で起きたもの」を見やすくするための機能を説明するための図であり、全体を見るよりも、どの時点を見ているかを分かりやすくしたものである。その手法としては、タイムラインの所定の区間を指定し、タイムラインを縦軸方向に線(補助線)Hで区切ったり、指定された区間を切り取りして拡大したポップアップ画面を生成して表示したりするように構成してもよい。
【0065】
図10に示す製造品視点の5M1Eタイムラインチャートでは、
図9に示す設備視点の5M1Eタイムラインチャートと同様、予め設定されたデフォルト項目を表示する。
図9には示していないが、デフォルト項目としては、「加工条件(レシピ)」、「計測結果」、「試験結果(良/不良)」、「設備イベント」などがある。表示する時間範囲(時間幅)についても、設備視点の5M1Eタイムラインチャートと同様、予め設定された時間分、または、設備視点の5M1Eタイムラインチャートにおいて製品を指定した場合、指定した製品の時刻の前後〇時間分などと設定しておくことができる。製造品視点の5M1Eタイムラインチャートも、設備視点の5M1Eタイムラインチャートと同様に、
図8のグラフ表示選択画面において、表示項目の選択が可能に制御される。
【0066】
このように本実施形態では、工程特定要因の5M1Eを同じ時間軸で見せることで、時系列に連続する工程に対して工程特性要因の変化との関係を直観的に把握することができる。つまり、複数の工程特性要因の各変化を製造状況のタイムラインと同期させた時間軸で表現することで、何が起きたのか(又は何も起こっていないのか)を直観的に把握し易くすることができる。
【0067】
製造の過程で起こりえる不良の原因は様々であるため、基本的には設備の状態(設備視点の5M1Eタイムラインチャート)から判断するのが一般的である。そこで本実施形態に示すように、2つの視点における各5M1Eタイムラインチャートを表示可能とすることで、製品の製造履歴も見ることができる。そのため、俯瞰的な見方にプラスして、主観的な見方の組み合わせにより、不良品の原因究明の精度を高めることができる。
【0068】
本実施形態の可視化システムは、複数の製造工程を順に経て製造される製品の製造単位毎の各工程における開始時刻又は終了時刻を含む製造ログ情報が製造実績122として記憶装置120に記憶されている。また、製造工程における機械・設備(Machine)、作業者(Man)、原料・材料(Material)、作業方法(Method)の各工程特性要因の経時履歴情報(工程特性要因の変化ログを含む時系列の状態把握)が工程特性要因123として記憶装置120に記憶されている。
【0069】
制御装置110は、表示制御部111と生成部112を含み、生成部112は、第1生成部及び第2生成部を含むように構成することができる。なお、第2生成部は、上述した製造工程別タイムチャート(製造タイムライン画面)の表示オブジェクトを生成する。
【0070】
第1生成部は、製造ログ情報の時間経過に同期させた工程特性要因の時間軸を生成する。それとともに、経時履歴情報に基づいて工程特性要因の状態又は変化を表す表示オブジェクトを生成して時間軸に配置し、工程特性要因のタイムラインオブジェクトを生成することができる。表示制御部111は、複数の工程特性要因それぞれの各タイムラインオブジェクトを並列配置した5M1Eタイムラインチャート(工程特性要因タイムライン画面)を表示装置300に表示させる。
【0071】
ここで、5M1Eタイムラインチャートは、設備(工程)視点と製造品視点の2つの表示態様を含むことができる。例えば、
図7に示す製造工程別タイムチャート(製造タイムライン画面)において、表示制御部111は、いずれかの製造工程を選択可能に制御する。そして、第1生成部は、製造タイムライン画面で選択された製造工程の時間経過に同期させた工程特性要因のタイムラインオブジェクトを生成する。表示制御部111は、製造タイムライン画面での製造工程の選択操作に応じて工程視点の工程特性要因タイムライン画面(設備視点の5M1Eタイムラインチャート)を表示させるように制御することができる。
【0072】
一方、
図7に示す製造工程別タイムチャート(製造タイムライン画面)において、表示制御部111は、いずれかの製品を選択可能に制御する。そして、第1生成部は、製造タイムライン画面で選択された製品が通過する複数の製造工程全体の時間経過と同期させた工程特性要因のタイムラインオブジェクトを生成する。表示制御部111は、製造タイムライン画面での製品の選択操作に応じて製造品視点の工程特性要因タイムライン画面(製造品視点の5M1Eタイムラインチャート)を表示させるように制御することができる。
【0073】
設備(工程)視点の5M1Eタイムラインチャートと製造品視点5M1Eタイムラインチャートは、連携した表示切替が可能である。一例として、表示制御部111は、
図7に示す製造工程別タイムチャート(製造タイムライン画面)において、いずれかの製造工程を選択可能に制御し、選択された設備視点の工程特性要因タイムライン画面(
図9)を表示させる。そして、表示制御部111は、設備視点の工程特性要因タイムライン画面において、いずれかの製品を選択可能に制御し、設備視点の工程特性要因タイムライン画面での製品の選択操作に応じて製造品視点の工程特性要因タイムライン画面(
図10)を表示させるように制御することができる。
【0074】
<活用事例>
a)まず、基本条件を入力するする。例えば、いつ、どこで作った製品を見たいかの観点で、所定の画面(不図示)を通じ、期間、製品、起点となる場所(ライン、工程、設備)を指定することができる。これらの基本条件に該当する実績データを抽出し、
図7に示すような製造プロセス状況画面(製造実績に基づく製造工程別タイムチャート)を表示する。
【0075】
例えば、指定した条件が期間と特定の製品の場合は、
図7の例示において、該当する特定の製品の線分のみが示され、他の製品の線分が表示されないように表示制御を行うことができる。一方、指定した条件が期間と起点となる場所(ライン、工程、設備)の場合は、指定した期間内の起点となる場所の製造全てが対象となり、
図7の例示のように、指定した期間内を流れる各製品に対応する複数の各線分を表示するように制御する。
【0076】
b)次に、
図7の製造プロセス状況画面において、特定の工程を指定すると、設備視点か製造品視点のどちらで表示するかを指定可能な選択画面が表示される。設備視点を指定した場合は、
図9に示す画面が表示される。このとき、最初は、デフォルト設定された項目を表示する。一方、製造品視点が指定された場合は、
図10に示す画面が表示される。このときも、最初は、デフォルト設定された項目を表示する。なお、設備視点か製造品視点のどちらで表示するかを指定可能に制御しているが、例えば、上記a)の基本条件入力操作後に、自動的に設備視点、製造品視点のどちらかが表示されるようにデフォルト設定するように構成してもよい。
【0077】
c)上述したように、
図9、
図10に示す画面において、
図8に示すグラフ表示選択画面を表示させるように制御することができる。
図8のグラフ表示選択画面で
図9、
図10に示す画面に表示する追加項目が選択されると、制御装置110は、選択された項目に該当する実績データを抽出し、項目表示追加および該当データを追加表示する。なお、項目の削除操作も可能であり、選択された削除項目以外の項目を含む設備(工程)視点の5M1Eタイムラインチャートや製造品視点5M1Eタイムラインチャートの更新処理を行う。
【0078】
d)画面の切り替えは、上述の基本条件設定に基づく製造プロセス状況画面からの選択のみならず、
図9に示す設備視点の5M1Eタイムラインチャート、
図10に示す製品視点の5M1Eタイムラインチャート内での操作に基づき設備視点、製造品視点の画面表示切り替えを行うこともできる。
図9の画面で製品が選択されると、選択により特定された製品の実績データを抽出し、
図10の製造品視点の画面を表示する。一方、
図10の画面で工程が選択されると、選択により特定された工程の実績データを抽出し、
図9の設備視点の画面を表示する。
【0079】
また、上記実施形態では、設備視点、製品視点のタイムラインチャート表示および、設備視点、製品視点の切り替え表示について説明したが、続いて設備視点の製造作業にフォーカスした表示について、
図12および
図12Aを参照して説明する。
【0080】
図12は、第1実施形態の製造状況表示例を示す図である。
図12Aは、第1実施形態の製造状況表示例の詳細を示す図である。
【0081】
上述の
図9に示す設備視点のタイムラインチャート表示は、良品、不良品の製品について比較する場合に有効な表示形態であるが、製造作業が比較的長い場合、
図9に示す現状の点(プロット)だけの表示だと各製品の作業期間がわかりづらく、5M1E変化点と製造作業との関連が把握しにくい課題がある。
【0082】
そこで、
図9に示す設備視点のタイムラインチャート上の製造作業(図中表示は製造)に表示された、時間軸上にプロットされた所定の点(起点)を指示(指定)すると(
図12の(a))、制御装置110の生成部112は、該当製品に関する、指定された時間を含む所定範囲の製造実績情報を記憶装置120の製造実績122から取得する。そして、取得した製造実績の開始時間および終了時間に基づく時系列データを生成する。表示制御部112は、生成部112で生成された時系列データを表示装置300にバー表示する(
図12の(b))。
【0083】
このバー表示は、
図12Aに示すように、生成部112が生成した、製品実績の各ロットIDの製造開始時間、終了時間に基づく各時系列データ(
図12Aの(c))を、同一の時間軸上に重ね合わせてバー表示している(
図12Aの(b))。そのため、所定の時間内に複数のロットが順次投入されている場合には、重なり具合に応じて、1つのロットのみが投入されている場合よりも濃い表示となる。
【0084】
続いて、製造状況表示に係る詳細な処理について説明する。
【0085】
表示制御部111により、
図9に示す設備視点のタイムラインチャートが表示された状態において、表示軸となっている工程特性要因の「製造作業(図中は製造)」にプロットされた特定の製品情報を示した点に係る詳細情報の参照指示がなされると、生成部112は該当製品および時間を含む製造実績情報を記憶部120に記憶されている製造実績122から取得する。
【0086】
図9は、ある製品の工程(Process2)に係る設備視点の情報を表示した画面であるが、例えばこの画面上の製品作業(図中表示は製造)の13:00にプロットされた点が参照指示されると、生成部112は、
図2に示す製造実績から該当製品の工程2(Process2)の情報を参照し、指定された時間の前後(所定時間分)の情報を取得する。
【0087】
具体的には、工程2のロットID「R011」の製造実績が指定されたことになるため、生成部112は、工程2の実績として記録されている、所定時間分に相当する情報として、該当するロットIDの開始時間および終了時間を取得する。ここでは、該当する情報の一部として、「R010」「R011」の2つの情報を利用して説明する。表示制御部111は、生成部112が取得した情報に基づき生成した時系列情報を利用して、順番に
図12Aの(b)のバー表示欄に表示する。すなわち、最初に「R010」の開始時間(12:58:30)から終了時間(13:01:30)の時間の長さ分のバーを表示する。続いて、「R011」の開始時間(12:59:00)から終了時間(13:02:00)の時間の長さ分のバーも同じ時間軸上に表示する。このとき、「R011」の開始時間が「R010」の終了時間よりも前の時間となっているので、それぞれの時間の長さ分のバーを同じ位置に表示するため重なりが生じ、表示画面では重なり部分の色が濃くなる。
【0088】
このように、製品の製造作業を製造実績情報に基づき1つの領域にバー表示することにより、各工程の作業が問題なく行われている場合は、製品の流れがスムーズになるため、重なり具合が均等となるが、何等かの事情で作業が滞留した場合には、重なり具体が不均等となり、滞留した部分が他の部分よりも色濃くなったり、薄くなったりするため、一目で作業の状況を把握することができる。また、バーで示された個々の製品の製造作業期間と5M1E変化点の関係も把握することができる。
【0089】
以上、本実施形態について説明したが、上述の可視化システム100を構成する各機能は、プログラムによって実現可能であり、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムが補助記憶装置に格納され、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出された該プログラムを制御部が実行することで、各部の機能を動作させることができる。
【0090】
また、上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された状態で、コンピュータに提供することも可能である。コンピュータ読取可能な記録媒体としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【0091】
なお、本発明の実施形態を説明したが、当該実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
100 可視化システム
110 制御装置
111 表示制御部
112 生成部
120 記憶装置
121 製造計画
122 製造実績
123 工程特性要因
300 表示装置