(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】現像装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20231225BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231225BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H01L21/30 569D
H01L21/304 648A
H01L21/304 643B
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2021172123
(22)【出願日】2021-10-21
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】芳川 典生
(72)【発明者】
【氏名】山下 永二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】秋岡 知輝
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 征也
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-174361(JP,A)
【文献】特開2010-232472(JP,A)
【文献】特開2016-167475(JP,A)
【文献】特開2017-100861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送しつつ
現像液により前記基板の上面に形成されたレジスト膜を現像する現像装置であって、
基板を水平な姿勢に支持しつつ、水平方向である搬送方向に基板を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送される基板の上面に前記
現像液を供給することにより、基板の上面に前記
現像液のパドルを形成する
現像液供給部と、
を備え、
前記搬送機構は、
前記搬送方向に間隔をあけて配列された複数の搬送ローラ
を有し、
前記搬送ローラは、外周面に部分的に形成された接触部を、基板の下面に接触させつつ、前記搬送方向に対して直交する水平方向である幅方向に延びる軸を中心として回転することにより、基板を前記搬送方向の下流側へ搬送し、
前記搬送ローラの外周面において、前記軸を中心とする周方向の位置に応じて、前記接触部の前記幅方向の位置が変化する、
現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の
現像装置であって、
前記接触部は、前記軸を中心とする螺旋状である、
現像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の
現像装置であって、
前記複数の搬送ローラは、
前記接触部が右巻きの螺旋状である複数の右巻き搬送ローラと、
前記接触部が左巻きの螺旋状である複数の左巻き搬送ローラと、
を含み、
前記右巻き搬送ローラと、前記左巻き搬送ローラとが、前記搬送方向に沿って交互に配列されている、
現像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の
現像装置であって、
前記搬送ローラは、前記幅方向に配列された複数の前記接触部を有し、
複数の前記接触部は、それぞれ、前記軸に対して傾斜した楕円状である、
現像装置。
【請求項5】
請求項4に記載の
現像装置であって、
前記搬送ローラは、
前記軸に沿って延びるシャフトと、
前記シャフトに固定された複数のローラ部材と、
を有し、
前記複数のローラ部材が、それぞれ、前記接触部を有する、
現像装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の
現像装置であって、
前記複数の搬送ローラは、
複数の第1搬送ローラと、
複数の第2搬送ローラと、
を含み、
前記第1搬送ローラと、前記第2搬送ローラとが、前記搬送方向に沿って交互に配列され、
前記幅方向において、前記第1搬送ローラの前記接触部と、前記第2搬送ローラの前記接触部とが、交互に配列されている、
現像装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の
現像装置であって、
前記
現像液供給部は、
前記
現像液を吐出するノズル
を有し、
前記搬送機構は、
前記ノズルによる前記
現像液の吐出位置から下流側に配置された1つ以上の円筒ローラ
をさらに有し、
前記円筒ローラは、前記幅方向に沿って延びる1本の円筒面を有し、前記円筒面を基板の下面に接触させつつ、前記幅方向に延びる軸を中心として回転することにより、基板を前記搬送方向の下流側へ搬送する、
現像装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の
現像装置であって、
基板の前記幅方向の端部に接触するガイドローラ
をさらに備える、
現像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を搬送しつつ処理液による処理を行う基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機ELパネル等の基板の製造工程では、基板を搬送しつつ、基板に対して処理液を供給する処理を行う基板処理装置が使用される。従来の基板処理装置については、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1の基板処理装置は、複数のローラにより、基板を水平な姿勢に支持しつつ搬送する。そして、搬送される基板の上面に現像液を供給することにより、基板の上面に、現像液のパドル(液だまり)を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の基板処理装置では、ローラに設けられた複数のコロが、基板の下面に接触する。複数のコロは、幅方向(基板の搬送方向に対して直交し、かつ、水平な方向)に間隔をあけて配列されている。このため、基板の下面に、コロが接触する部分と、接触しない部分とが生じる。これにより、基板に、局所的な温度差や、現像液の局所的な流れが生じる。その結果、基板の上面において、搬送方向に延びる筋状の処理ムラが発生する場合がある。
【0005】
このような処理ムラを抑制するためには、例えば、幅方向に延びる円筒状のベタローラを使用することが考えられる。ベタローラを使用すれば、基板の下面の幅方向の全体に、ローラが接触する。このため、搬送方向に延びる筋状の処理ムラを低減できる。
【0006】
ただし、ベタローラを使用すると、基板とローラとの接触面積が増加する。このため、基板の上面においてパドルを形成する処理液の一部が、表面張力によって、ローラの表面へ流出しやすくなる。そうすると、基板の上面に形成される処理液のパドルが薄くなり、現像処理が不均一になる場合がある。
【0007】
また、ローラの表面には、現像液の泡が付着することがあるが、ベタローラを使用する場合、基板とローラとの接触面積が大きいために、その泡が、ローラから基板の上面に乗り上がり易くなる。そうすると、基板の上面において、泡による処理ムラが生じてしまうという問題もある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、搬送ローラに起因する筋状の処理ムラを低減し、かつ、基板の上面においてパドルを形成する処理液の一部が搬送ローラの表面へ流出したり、搬送ローラに付着した泡が基板の上面へ乗り上げたりする問題も生じにくい、基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の第1発明は、基板を搬送しつつ現像液により前記基板の上面に形成されたレジスト膜を現像する現像装置であって、基板を水平な姿勢に支持しつつ、水平方向である搬送方向に基板を搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される基板の上面に前記現像液を供給することにより、基板の上面に前記現像液のパドルを形成する現像液供給部と、を備え、前記搬送機構は、前記搬送方向に間隔をあけて配列された複数の搬送ローラを有し、前記搬送ローラは、外周面に部分的に形成された接触部を、基板の下面に接触させつつ、前記搬送方向に対して直交する水平方向である幅方向に延びる軸を中心として回転することにより、基板を前記搬送方向の下流側へ搬送し、前記搬送ローラの外周面において、前記軸を中心とする周方向の位置に応じて、前記接触部の前記幅方向の位置が変化する。
【0010】
本願の第2発明は、第1発明の現像装置であって、前記接触部は、前記軸を中心とする螺旋状である。
【0011】
本願の第3発明は、第2発明の現像装置であって、前記複数の搬送ローラは、前記接触部が右巻きの螺旋状である複数の右巻き搬送ローラと、前記接触部が左巻きの螺旋状である複数の左巻き搬送ローラと、を含み、前記右巻き搬送ローラと、前記左巻き搬送ローラとが、前記搬送方向に沿って交互に配列されている。
【0012】
本願の第4発明は、第1発明の現像装置であって、前記搬送ローラは、前記幅方向に配列された複数の前記接触部を有し、複数の前記接触部は、それぞれ、前記軸に対して傾斜した楕円状である。
【0013】
本願の第5発明は、第4発明の現像装置であって、前記搬送ローラは、前記軸に沿って延びるシャフトと、前記シャフトに固定された複数のローラ部材と、を有し、前記複数のローラ部材が、それぞれ、前記接触部を有する。
【0014】
本願の第6発明は、第4発明または第5発明の現像装置であって、前記複数の搬送ローラは、複数の第1搬送ローラと、複数の第2搬送ローラと、を含み、前記第1搬送ローラと、前記第2搬送ローラとが、前記搬送方向に沿って交互に配列され、前記幅方向において、前記第1搬送ローラの前記接触部と、前記第2搬送ローラの前記接触部とが、交互に配列されている。
【0015】
本願の第7発明は、第1発明から第6発明までのいずれか1発明の現像装置であって、前記現像液供給部は、前記現像液を吐出するノズルを有し、前記搬送機構は、前記ノズルによる前記現像液の吐出位置から下流側に配置された1つ以上の円筒ローラをさらに有し、前記円筒ローラは、前記幅方向に沿って延びる1本の円筒面を有し、前記円筒面を基板の下面に接触させつつ、前記幅方向に延びる軸を中心として回転することにより、基板を前記搬送方向の下流側へ搬送する。
【0016】
本願の第8発明は、第1発明から第7発明までのいずれか1発明の現像装置であって、基板の前記幅方向の端部に接触するガイドローラをさらに備える。
【発明の効果】
【0018】
本願の第1発明~第8発明によれば、基板の下面に対する搬送ローラの接触位置が、搬送ローラの回転に伴い、幅方向に変化する。これにより、搬送ローラに起因する筋状の処理ムラを低減できる。また、搬送ローラの外周面に、基板と接触する接触部が、部分的に形成されている。これにより、基板の下面に対する搬送ローラの接触面積を低減できる。したがって、基板の上面においてパドルを形成する現像液の一部が、搬送ローラの表面へ流出したり、搬送ローラに付着した泡が基板の上面へ乗り上げたりする問題も、生じにくい。
【0019】
特に、本願の第2発明によれば、接触部を、幅方向に切れ目なく形成できる。これにより、接触部が存在しない幅方向の位置を減らすことができる。その結果、搬送ローラに起因する筋状の処理ムラを、より抑制できる。
【0020】
特に、本願の第3発明によれば、基板の下面に対する搬送ローラの接触位置を、より均一化できる。したがって、搬送ローラに起因する筋状の処理ムラを、より抑制できる。
【0021】
特に、本願の第4発明によれば、接触部を螺旋状ではなく、閉じた楕円状とする。これにより、搬送ローラの外周面に、接触部を容易に形成できる。
【0022】
特に、本願の第5発明によれば、接触部を有するローラ部材を複数作製し、それらローラ部材をシャフトに固定することで、搬送ローラを製造できる。これにより、複数の接触部を有する搬送ローラを、容易に製造できる。
【0023】
特に、本願の第6発明によれば、基板の下面に対する搬送ローラの接触位置を、より均一化できる。したがって、搬送ローラに起因する筋状の処理ムラを、より抑制できる。
【0024】
特に、本願の第7発明によれば、現像液の吐出位置の直後に円筒ローラを配置する。当該円筒ローラにより、基板を精度よく水平に支持しつつ、基板の上面に、現像液のパドルを良好に形成できる。
【0025】
特に、本願の第8発明によれば、基板が搬送方向に対して斜めに移動することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図4】第2実施形態に係る搬送機構の部分上面図である。
【
図5】第3実施形態に係る搬送機構の部分上面図である。
【
図6】第4実施形態に係る搬送機構の部分上面図である。
【
図7】第5実施形態に係る搬送機構の部分上面図である。
【
図8】第6実施形態に係る搬送機構の部分上面図である。
【
図9】第7実施形態に係る現像装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
<1.第1実施形態>
<1-1.基板処理装置の構成>
図1は、本発明に係る基板処理装置の一例となる現像装置1の側面図である。
図2は、現像装置1の上面図である。この現像装置1は、有機ELパネルの製造工程において、矩形状の基板9に対して、現像処理を行う装置である。現像装置1は、洗浄、レジスト液の塗布、乾燥、露光、現像等の処理を一貫して行う、いわゆるコータ・デベロッパの一部分として使用される。ただし、現像装置1は、コータ・デベロッパを構成する塗布装置や露光装置とは切り離されて、単独で使用されるものであってもよい。
【0029】
現像装置1に搬入される基板9の上面には、レジスト膜(フォトレジストの膜)が形成されている。また、当該レジスト膜は、前段の露光装置において、部分的に露光されている。現像装置1は、このような基板9を搬送しつつ、基板9の上面に現像液Lを供給する。これにより、レジスト膜の露光された部分が溶解(現像)される。
【0030】
図1および
図2に示すように、現像装置1は、チャンバ10、搬送機構20、処理液供給部30、および制御部40を備える。なお、以下では、搬送機構20による基板9の搬送方向の上流側を単に「上流側」と称し、搬送方向の下流側を単に「下流側」と称する。
【0031】
チャンバ10は、基板9の搬送方向に沿って延びる、略直方体状の筐体である。チャンバ10の内部には、基板9に対して現像処理を行うための空間が存在する。なお、チャンバ10の内部構造を明示するために、
図1および
図2では、チャンバ10を断面の状態で示している。チャンバ10の上流側の端部には、基板9を搬入するための搬入口11が設けられている。チャンバ10の下流側の端部には、基板9を搬出するための搬出口12が設けられている。また、チャンバ10の底面には、チャンバ10内で使用された現像液Lを外部へ排出するための排液孔13が設けられている。
【0032】
搬送機構20は、チャンバ10内において、基板9を搬送する機構である。搬送機構20は、基板9を水平な姿勢に支持しつつ、水平方向である搬送方向に沿って、基板9を搬送する。
図1および
図2に示すように、搬送機構20は、複数の搬送ローラ21を有する。複数の搬送ローラ21は、搬送方向に間隔をあけて配列されている。複数の搬送ローラ21は、モータ等により構成されるローラ駆動機構22に、接続されている。ローラ駆動機構22を動作させると、各搬送ローラ21は、幅方向(基板9の搬送方向に対して直交し、かつ、水平な方向)に延びる軸を中心として回転する。
【0033】
チャンバ10内に基板9が搬入されると、複数の搬送ローラ21は、基板9の下面に接触しつつ、回転する。これにより、基板9が水平な姿勢に支持されつつ、下流側へ搬送される。
【0034】
処理液供給部30は、搬送機構20により搬送される基板9の上面に、処理液としての現像液Lを供給する機構である。
図1に示すように、処理液供給部30は、ノズル31、給液配管32、および給液タンク33を有する。ノズル31は、チャンバ10内に配置されている。また、ノズル31は、搬送機構20による基板9の搬送経路の上方に、配置されている。ノズル31の下端部には、幅方向に延びるスリット状の吐出口が設けられている。吐出口は、搬送機構20により搬送される基板9の上面と、僅かな隙間を介して、上下方向に対向する。
【0035】
給液配管32の下流側の端部は、ノズル31に接続されている。給液配管32の上流側の端部は、給液タンク33に接続されている。また、給液配管32の経路上には、バルブ34およびポンプ35が設けられている。給液タンク33には、供給前の現像液Lが貯留されている。現像液Lは、例えば、常温の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)である。ただし、現像液Lは、TMAH以外の液体であってもよい。
【0036】
バルブ34を開放して、ポンプ35を動作させると、給液タンク33から給液配管32を通ってノズル31へ、現像液Lが供給される。そして、ノズル31の吐出口から、下方へ向けて、現像液Lが吐出される。基板9は、現像液Lを吐出するノズル31の下方を通過する。これにより、基板9の上面に、現像液Lのパドル(液だまり)が形成される。現像液Lは、その表面張力によって、基板9の上面に保持される。
【0037】
制御部40は、現像装置1の各部を動作制御するためのユニットである。制御部40は、CPU等のプロセッサ、RAM等のメモリ、およびハードディスクドライブ等の記憶部を有するコンピュータにより構成される。記憶部には、現像処理を実行するためのコンピュータプログラムおよび各種データが、記憶されている。また、
図1および
図2中に破線矢印で示したように、制御部40は、上述したローラ駆動機構22、バルブ34、およびポンプ35と、電気的に接続されている。制御部40は、コンピュータプログラムに従って動作することにより、上記の各部を動作制御する。これにより、現像装置1における基板9の搬送および現像処理が進行する。
【0038】
<1-2.搬送機構について>
続いて、上述した搬送機構20について、より詳細に説明する。
【0039】
図3は、搬送機構20の部分上面図である。上述の通り、搬送機構20は、複数の搬送ローラ21を有する。
図3に示すように、各搬送ローラ21は、シャフト51と、シャフト51に固定されたローラ部材52とを有する。
【0040】
シャフト51は、幅方向に延びる軸Aに沿って配置された、円柱状の部品である。シャフト51は、ローラ部材52よりも剛性が高い金属により形成される。シャフト51の両端部は、チャンバ10に対して静止したフレームに、ベアリングを介して、回転可能に支持される。また、シャフト51は、上述したローラ駆動機構22に接続されている。ローラ駆動機構22を動作させると、複数のシャフト51が、それぞれ、幅方向に延びる軸Aを中心として回転する。
【0041】
ローラ部材52は、上記の軸Aに沿って幅方向に延びる、円筒状の部品である。ローラ部材52は、例えば、シャフト51よりも剛性が低い樹脂により形成される。シャフト51は、ローラ部材52の内側に挿入されている。ローラ部材52は、シャフト51の外周面に固定されている。したがって、ローラ駆動機構22を動作させると、シャフト51とともにローラ部材52も、幅方向に延びる軸Aを中心として回転する。
【0042】
ローラ部材52は、その外周面に、接触部53と非接触部54とを有する。接触部53は、ローラ部材52の最外径を構成する。したがって、基板9の搬送時には、接触部53が、基板9の下面に接触する。本実施形態の接触部53は、上記の軸Aを中心とする螺旋状である。接触部53は、一条の螺旋状であってもよく、複数条の螺旋状であってもよい。接触部53は、上記の軸Aを中心とする円筒面の一部分となっている。
【0043】
非接触部54は、ローラ部材52の外周面のうち、接触部53以外の部分である。非接触部54は、接触部53よりも内側(軸Aを中心とする径方向の内側)へ凹んでいる。このため、基板9の搬送時にも、非接触部54は、基板9の下面に接触しない。すなわち、搬送ローラ21は、その外周面のうち、部分的に形成された接触部53のみを、基板9の下面に接触させつつ回転することにより、基板9を下流側へ搬送する。
【0044】
ローラ部材52の外周面における接触部53の幅方向の位置は、軸Aを中心とする周方向の角度位置に応じて、変化する。このため、基板9の下面に対するローラ部材52の接触位置は、搬送ローラ21の回転に伴い、幅方向に変化する。このようにすれば、基板9の下面のうち、幅方向の特定の位置のみに、搬送ローラ21が接触することを防止できる。これにより、幅方向の特定の位置に、現像液Lの温度変化や現像液Lの流れが集中することを、抑制できる。その結果、基板9の上面に形成されたレジスト膜に、搬送ローラ21との接触に起因する筋状のムラが生じることを、抑制できる。
【0045】
また、接触部53は、ローラ部材52の外周面に、部分的に形成されている。このため、ローラ部材52の外周面の全体を円筒状の接触部とする場合よりも、基板9との接触面積を低減できる。したがって、基板9の上面においてパドルを形成する現像液Lの一部が、表面張力によって、ローラ部材52の表面へ流出し、それにより、パドルの厚みが減少するという問題が生じにくい。また、ローラ部材52の外周面に付着した泡が、基板9の上面へ乗り上げるという問題も生じにくい。したがって、基板9の上面に形成される現像液Lのパドルを適切な厚みに維持しつつ、レジスト膜を均一に現像することができる。
【0046】
特に、本実施形態のように、接触部53を螺旋状とすれば、接触部53を、幅方向に切れ目なく形成できる。したがって、接触部53が存在しない幅方向の位置を低減できる。これにより、基板9の上面のレジスト膜に、搬送ローラ21との接触に起因する筋状のムラが生じることを、より抑制できる。
【0047】
また、
図3に示すように、本実施形態の搬送機構20は、複数のガイドローラ23を有する。各ガイドローラ23は、上下方向に延びる軸を中心として、回転可能となっている。複数のガイドローラ23のうち、搬送経路の右側に配置されたガイドローラ23は、基板9の右側の端縁部に接触する。複数のガイドローラ23のうち、搬送経路の左側に配置されたガイドローラ23は、基板9の左側の端縁部に接触する。このように、基板9の幅方向の両端縁部にガイドローラ23が接触することで、基板9の幅方向の移動を抑制できる。特に、本実施形態では、搬送ローラ21の接触部53が螺旋状であるため、搬送ローラ21から基板9に対して、斜め方向の力がかかりやすい。しかしながら、ガイドローラ23を設けることで、基板9が斜めに移動することを抑制し、基板9を搬送方向に精度よく搬送できる。
【0048】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について、説明する。なお、以下では、上述した実施形態との相違点を中心に説明する。上述した実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0049】
図4は、第2実施形態に係る搬送機構20の部分上面図である。
図4に示すように、本実施形態では、複数の搬送ローラ21が、複数の右巻き搬送ローラ21Aと、複数の左巻き搬送ローラ21Bとを含む。右巻き搬送ローラ21Aは、接触部53が右巻きの螺旋状となっている。すなわち、右巻き搬送ローラ21Aは、幅方向の一端から他端へ向かうにつれて、接触部53が時計回りの螺旋状に延びる。左巻き搬送ローラ21Bは、接触部53が左巻きの螺旋状となっている。すなわち、左巻き搬送ローラ21Bは、幅方向の一端から他端へ向かうにつれて、接触部53が反時計回りの螺旋状に延びる。
【0050】
右巻き搬送ローラ21Aと左巻き搬送ローラ21Bとは、搬送方向に沿って、交互に配列されている。このようにすれば、基板9の下面に対する搬送ローラ21の接触位置を、より均一化できる。したがって、基板9の上面のレジスト膜に、搬送ローラ21との接触に起因する筋状のムラが生じることを、より抑制できる。
【0051】
<3.第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態について、説明する。なお、以下では、上述した実施形態との相違点を中心に説明する。上述した実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0052】
図5は、第3実施形態に係る搬送機構20の部分上面図である。
図5に示すように、本実施形態では、ローラ部材52が、連続した螺旋状の接触部53ではなく、複数の孤立した接触部53を有する。複数の接触部53は、幅方向に沿って、等間隔に配列されている。各接触部53は、幅方向に延びる軸Aに対して傾斜した楕円状となっている。
【0053】
このような形態でも、ローラ部材52の外周面における接触部53の幅方向の位置は、軸Aを中心とする周方向の角度位置に応じて、変化する。このため、基板9の下面に対するローラ部材52の接触位置は、搬送ローラ21の回転に伴い、幅方向に変化する。したがって、基板9の下面のうち、幅方向の特定の位置のみに、搬送ローラ21が接触することを防止できる。これにより、基板9の上面のレジスト膜に、搬送ローラ21との接触に起因する筋状のムラが生じることを、抑制できる。
【0054】
また、接触部53を、閉じた楕円状とすることで、螺旋状の場合よりも、接触部53の加工が容易となる。すなわち、ローラ部材52の外周面に、接触部53を容易に形成できる。したがって、複数の接触部53を有するローラ部材52を、容易に製造できる。
【0055】
<4.第4実施形態>
続いて、本発明の第4実施形態について、説明する。なお、以下では、上述した実施形態との相違点を中心に説明する。上述した実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0056】
図6は、第4実施形態に係る搬送機構20の部分上面図である。
図6に示すように、本実施形態の搬送ローラ21は、1本の円筒状のローラ部材52ではなく、複数のローラ部材52を有する。複数のローラ部材52は、幅方向に沿って、等間隔に配列されている。各ローラ部材52は、シャフト51の外周面に固定されている。また、各ローラ部材52は、幅方向に延びる軸Aに対して傾斜した楕円状の接触部53を有する。
【0057】
本実施形態の構造では、接触部53を有する小型のローラ部材52を多数作製し、それらをシャフト51に固定することで、搬送ローラ21を製造できる。これにより、複数の接触部53を有する搬送ローラ21を、より容易に製造できる。
【0058】
なお、
図6の例では、1つのローラ部材52が、1つの楕円状の接触部53を有していた。しかしながら、1つのローラ部材52が、楕円状の接触部53を、複数有していてもよい。また、各ローラ部材52は、螺旋状の接触部53を有していてもよい。
【0059】
<5.第5実施形態>
続いて、本発明の第5実施形態について、説明する。なお、以下では、上述した実施形態との相違点を中心に説明する。上述した実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0060】
図7は、第5実施形態に係る搬送機構20の部分上面図である。
図7に示すように、本実施形態では、複数の搬送ローラ21が、複数の第1搬送ローラ21Cと、複数の第2搬送ローラ21Dとを含む。第1搬送ローラ21Cおよび第2搬送ローラ21Dは、それぞれ、第4実施形態と同様に、複数のローラ部材52を有する。複数のローラ部材52は、幅方向に沿って、等間隔に配列されている。各ローラ部材52は、幅方向に延びる軸Aに対して傾斜した楕円状の接触部53を有する。
【0061】
ただし、本実施形態では、幅方向において、第1搬送ローラ21Cの接触部53と、第2搬送ローラ21Dの接触部53とが、交互に配列されている。換言すると、第2搬送ローラ21Dの接触部53は、第1搬送ローラ21Cの隣り合う接触部53の間に相当する幅方向の位置に、配置されている。したがって、第1搬送ローラ21Cの接触部53の幅方向の中心位置と、第2搬送ローラ21Dの接触部53の幅方向の中心位置とは、軸方向に重ならない。
【0062】
第1搬送ローラ21Cと第2搬送ローラ21Dとは、搬送方向に沿って、交互に配列されている。このようにすれば、基板9の下面に対する搬送ローラ21の接触位置を、より均一化できる。したがって、基板9の上面のレジスト膜に、搬送ローラ21との接触に起因する筋状のムラが生じることを、より抑制できる。
【0063】
<6.第6実施形態>
続いて、本発明の第6実施形態について、説明する。なお、以下では、上述した実施形態との相違点を中心に説明する。上述した実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0064】
図8は、第6実施形態に係る搬送機構20の部分上面図である。本実施形態の搬送ローラ21は、上述した第4実施形態および第5実施形態と同様に、複数のローラ部材52を有する。ただし、本実施形態では、各ローラ部材52が、非接触部54に相当する部分をもたない、楕円形状の板となっている。このようにすれば、各ローラ部材52の形状が、より単純化される。したがって、複数のローラ部材52を,より容易に製造できる。
【0065】
<7.第7実施形態>
続いて、本発明の第7実施形態について、説明する。なお、以下では、上述した実施形態との相違点を中心に説明する。上述した実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0066】
図9は、第7実施形態に係る現像装置1の上面図である。
図9に示すように、本実施形態の搬送機構20は、複数の搬送ローラ21と、複数の円筒ローラ(ベタローラ)24とを有する。複数の円筒ローラ24は、ノズル31による現像液Lの吐出位置から下流側へ向かう所定範囲の領域に、搬送方向に間隔をあけて配列されている。複数の搬送ローラ21は、基板9の搬送経路のうち、円筒ローラ24が配置される上記領域以外の領域に、配置されている。複数の搬送ローラ21および複数の円筒ローラ24は、ローラ駆動機構22に接続されている。このため、ローラ駆動機構22を動作させると、複数の搬送ローラ21および複数の円筒ローラ24は、それぞれ、幅方向に延びる軸Aを中心として回転する。
【0067】
各円筒ローラ24のローラ部材の外周面は、幅方向に沿って延びる1本の円筒面となっている。円筒ローラ24は、その円筒面を、基板9の下面に接触させつつ回転することにより、基板9を下流側へ搬送する。
【0068】
円筒ローラ24は、基板9との接触面積が小さい搬送ローラ21よりも、基板9を、精度よく水平に支持できる。本実施形態では、このような円筒ローラ24が、処理液の吐出位置の直後に配置されている、これにより、基板9を精度よく水平に支持しつつ、基板9の上面に、処理液のパドルを形成できる。
【0069】
なお、
図9の例では、ノズル31による現像液Lの吐出位置の直後に、3本の円筒ローラ24が配置されている。しかしながら、円筒ローラ24の数は、1~2本であってもよく、4本以上であってもよい。
【0070】
<8.変形例>
上記の実施形態では、基板9の上面に処理液としての現像液Lを供給する現像装置1について説明した。しかしながら、本発明の基板処理装置は、現像装置1に限定されるものではない。例えば、基板処理装置は、基板の上面に処理液としてのレジスト液を塗布する塗布装置であってもよい。また、基板処理装置は、基板の上面に処理液としてのエッチング液を供給するエッチング装置であってもよい。また、基板処理装置は、基板の上面に処理液としての洗浄液を供給する洗浄装置であってもよい。
【0071】
また、上記の実施形態では、処理対象となる基板9が、有機ELパネル用の基板であった。しかしながら、本発明の基板処理装置において、処理対象となる基板は、液晶パネル用基板、プラズマディスプレイ用基板、太陽電池パネル用基板、光ディスク用基板、半導体ウェハ等の他の基板であってもよい。
【0072】
その他、上記の実施形態および変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 現像装置
9 基板
10 チャンバ
13 排液孔
20 搬送機構
21 搬送ローラ
21A 右巻き搬送ローラ
21B 左巻き搬送ローラ
21C 第1搬送ローラ
21D 第2搬送ローラ
22 ローラ駆動機構
23 ガイドローラ
24 円筒ローラ
30 処理液供給部
31 ノズル
40 制御部
51 シャフト
52 ローラ部材
53 接触部
54 非接触部
A 軸
L 現像液