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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】水素製造用触媒及び水素製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/46 20060101AFI20231225BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20231225BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20231225BHJP
   C01B 3/32 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B01J23/46 301M
B01J35/10 301G
B01J23/89 M
C01B3/32 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021195747
(22)【出願日】2021-12-01
(65)【公開番号】P2023081770
(43)【公開日】2023-06-13
【審査請求日】2023-07-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松澤 絵梨佳
(72)【発明者】
【氏名】窪田 裕次
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-138562(JP,A)
【文献】特開平05-345130(JP,A)
【文献】特開2001-009282(JP,A)
【文献】特開2021-023874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01B 3/00-6/34
C25B 1/00-9/77
13/00-15/08
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素担体と、前記炭素担体に担持された触媒金属粒子とを含む水素製造用触媒であって、
前記触媒金属粒子は、貴金属を含み、
窒素吸着法により得られるBJHミクロ孔容積に対するBJHメソ孔容積の比が、0.35以上、6.63以下であり、
窒素吸着法により得られるBJHマクロ孔面積に対する、BJHミクロ孔面積とBJHメソ孔面積との合計の比が、44以上、2272以下であ
窒素吸着法により得られるBJHマクロ孔面積に対するBJHミクロ孔面積の比が、18以上、1959以下であり、
窒素吸着法により得られるBJHマクロ孔面積に対するBJHメソ孔面積の比が、26以上、313以下であり、
窒素吸着法により得られるBJHメソ孔面積に対するBJHミクロ孔面積の比が、0.6以上、10.0以下であり、
窒素吸着法により得られるBJHミクロ孔面積に対するBET比表面積の比が、0.5以上、2.1以下であり、
窒素吸着法により得られるBJHメソ孔面積に対するBET比表面積の比が、1.4以上、10.0以下であり、
窒素吸着法により得られるBJHマクロ孔面積に対するBET比表面積の比が、30以上、1505以下である、
水素製造用触媒。
【請求項2】
X線光電子分光法により得られる炭素含有量(原子%)に対する窒素含有量(原子%)の比が、0.1以上である、
請求項1に記載の水素製造用触媒。
【請求項3】
ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて1600cm-1付近にピークトップを有するGバンドの強度に対する、1350cm-1付近にピークトップを有するDバンドの強度の比が、1.15以下である、
請求項1又は2に記載の水素製造用触媒。
【請求項4】
誘導結合プラズマ質量分析により得られる前記貴金属の含有量に対する、X線光電子分光法により得られる前記貴金属の含有量の重量比が、0.70以下である、
請求項1乃至のいずれかに記載の水素製造用触媒。
【請求項5】
前記触媒金属粒子は、非貴金属をさらに含む、
請求項1乃至のいずれかに記載の水素製造用触媒。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載の触媒を用いて水素を製造することを含む、
水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造用触媒及び水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、含酸素炭化水素の改質方法において、水と、含酸素炭化水素の全供給原料溶液の少なくとも20重量%を具える供給原料を、水素ガスを効率的に生成するような反応温度および反応圧力の条件下で改質触媒に接触させるステップを具え、前記含酸素炭化水素は、少なくとも1つの酸素を有し、前記改質触媒は、VIIB族の遷移金属およびVIII族の遷移金属を含むことを特徴とする含酸素炭化水素の改質方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、有機物と遷移金属とを含む原料の炭素化により得られる炭素触媒であって、炭化水素化合物及び/又は含酸素有機化合物の熱分解による水素生成に使用されることを特徴とする水素生成用炭素触媒が記載されている。
【0004】
特許文献3には、鉄を含み、窒素雰囲気下での熱重量分析において測定される200℃から1200℃までの重量減少率12.0重量%以下を示し、前記鉄のK吸収端のX線吸収微細構造分析において下記(a)及び/又は(b)を示す炭素構造を含む:(a)7110eVの規格化吸光度に対する7130eVの規格化吸光度の比が7.0以上である;、(b)7110eVの規格化吸光度に対する7135eVの規格化吸光度の比が7.0以上である;、炭素触媒が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-521387号公報
【文献】特開2012-115725号公報
【文献】国際公開第2019/013051号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来、水素製造用触媒において、触媒活性と耐久性とを両立させることは難しかった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、優れた触媒活性と優れた耐久性とを兼ね備えた水素製造用触媒及び水素製造方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る水素製造用触媒は、炭素担体と、前記炭素担体に担持された触媒金属粒子とを含む水素製造用触媒であって、前記触媒金属粒子は、貴金属を含み、窒素吸着法により得られるBJHミクロ孔容積に対するBJHメソ孔容積の比が、0.30以上、7.80以下であり、窒素吸着法により得られるBJHマクロ孔面積に対する、BJHミクロ孔面積とBJHメソ孔面積との合計の比が、30以上、3500以下である。本発明によれば、優れた触媒活性と優れた耐久性とを兼ね備えた水素製造用触媒が提供される。
【0009】
前記触媒は、窒素吸着法により得られるBJHマクロ孔面積に対するBJHミクロ孔面積の比が、10以上であることとしてもよい。また、前記触媒は、窒素吸着法により得られるBJHマクロ孔面積に対するBJHメソ孔面積の比が、10以上であることとしてもよい。また、前記触媒は、窒素吸着法により得られるBJHメソ孔面積に対するBJHミクロ孔面積の比が、0.1以上であることとしてもよい。また、前記触媒は、窒素吸着法により得られるBJHメソ孔面積に対するBJHミクロ孔面積の比が、15.0以下であることとしてもよい。
【0010】
また、前記触媒は、窒素吸着法により得られるBJHミクロ孔面積に対するBET比表面積の比が、2.5以下であることとしてもよい。また、前記触媒は、窒素吸着法により得られるBJHメソ孔面積に対するBET比表面積の比が、1.0以上であることとしてもよい。また、前記触媒は、窒素吸着法により得られるBJHメソ孔面積に対するBET比表面積の比が、10.0以下であることとしてもよい。また、前記触媒は、窒素吸着法により得られるBJHマクロ孔面積に対するBET比表面積の比が、20以上であることとしてもよい。
【0011】
また、前記触媒は、X線光電子分光法により得られる炭素含有量(原子%)に対する窒素含有量(原子%)の比が、0.1以上であることとしてもよい。また、前記触媒は、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて1600cm-1付近にピークトップを有するGバンドの強度に対する、1350cm-1付近にピークトップを有するDバンドの強度の比が、1.15以下であることとしてもよい。また、前記触媒は、誘導結合プラズマ質量分析により得られる前記貴金属の含有量に対する、X線光電子分光法により得られる前記貴金属の含有量の重量比が、0.70以下であることとしてもよい。また、前記触媒金属粒子は、非貴金属をさらに含むこととしてもよい。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る水素製造方法は、前記いずれかの触媒を用いて水素を製造することを含む。本発明によれば、効果的な水素製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた触媒活性と優れた耐久性とを兼ね備えた水素製造用触媒及び水素製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る実施例において金属担持触媒の特性を評価した結果の一例を示す説明図である。
図2】本実施形態に係る実施例において金属担持触媒の特性を評価した結果の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態で示す例に限られない。
【0016】
本実施形態に係る水素製造用触媒(以下、「本触媒」という。)は、炭素担体と、当該炭素担体に担持された触媒金属粒子とを含む、金属担持触媒である。本触媒は、主に炭素担体及び触媒金属粒子から構成されることが好ましい。本触媒の重量に対する、本触媒に含まれる炭素担体の重量と触媒金属粒子の重量との合計の割合は、例えば、90重量%以上(90重量%以上、100重量%以下)であってもよく、95重量%以上であることが好ましく、98重量%以上であることが特に好ましい。本触媒の重量に対する、本触媒に含まれる炭素担体の重量と触媒金属粒子の重量との合計の割合は、熱重量分析(TG)により得られる。
【0017】
本触媒に含まれる炭素担体は、主に炭素から構成される炭素材料である。炭素担体の炭素含有量は、例えば、70重量%以上(70重量%以上、100重量%以下)であってもよく、75重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、85重量%以上であることが特に好ましい。炭素担体の炭素含有量は、当該炭素担体の元素分析(燃焼法)により得られる。
【0018】
炭素担体は、多孔質の炭素材料である。炭素担体は、連通性を有する細孔を含むことが好ましい。炭素担体は、炭素化材料であることが好ましい。炭素化材料は、有機物を含む原料の炭素化により得られる。炭素化の原料における有機物の含有量は、例えば、5重量%以上であってもよく、10重量%以上であることが好ましい。また、炭素化の原料における有機物の含有量は、例えば、90重量%以下であってもよく、80重量%以下であることが好ましい。炭素化の原料における有機物の含有量は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0019】
原料に含まれる有機物は、本発明の効果が得られれば特に限られない。有機物に含まれる有機化合物は、ポリマー(例えば、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂)であってもよいし、及び/又は、より分子量が小さい有機化合物であってもよい。
【0020】
具体的に、有機物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル-ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリアクリル酸メチル共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸-ポリメタリルスルホン酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸メチル共重合体、フェノール樹脂、ポリフルフリルアルコール、フラン、フラン樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミン、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、窒素含有キレート樹脂(例えば、ポリアミン型、イミノジ酢酸型、アミノリン酸型及びアミノメチルホスホン酸型からなる群より選択される1種以上)、ポリアミドイミド樹脂、ピロール、ポリピロール、ポリビニルピロール、3-メチルポリピロール、アクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ビニルピリジン、ポリビニルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、ピラン、モルホリン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、キノキサリン、アニリン、ポリアニリン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ポリスルフォン、ポリアミノビスマレイミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ベンゾイミダゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、リグニン、キチン、キトサン、ピッチ、絹、毛、ポリアミノ酸、核酸、DNA、RNA、ヒドラジン、ヒドラジド、尿素、サレン、ポリカルバゾール、ポリビスマレイミド、トリアジン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリウレタン、ポリアミドアミン及びポリカルボジイミドからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0021】
炭素担体は、窒素を含むことが好ましい。すなわち、この場合、炭素担体は、その炭素構造に窒素原子を含む。窒素を含む炭素担体は、窒素を含む炭素化材料であることが好ましい。窒素含有炭素化材料は、窒素含有有機物を含む原料の炭素化により好ましく得られる。窒素含有有機物は、窒素含有有機化合物を含むことが好ましい。窒素含有有機化合物は、その分子内に窒素原子を含む有機化合物であれば特に限られない。また、炭素担体に含まれる窒素は、窒素ドープ処理により導入されたものであってもよい。すなわち、窒素含有炭素担体は、窒素ドープ処理が施された炭素担体(好ましくは炭素化材料)であることが好ましい。
【0022】
炭素担体の窒素含有量は、例えば、0.10重量%以上であってもよく、0.15重量%以上であることが好ましく、0.20重量%以上であることがより好ましく、0.25重量%以上であることがより一層好ましく、0.30重量%以上であることが特に好ましい。また、炭素担体の窒素含有量は、例えば、10.00重量%以下であってもよい。炭素担体の窒素含有量は、当該炭素担体の元素分析(燃焼法)により得られる。
【0023】
炭素化材料の製造における炭素化は、原料を加熱し、当該原料に含まれる有機物が炭素化される温度(以下、「炭素化温度」という。)で保持することにより行う。炭素化温度は、本発明の効果が得られれば特に限られず、例えば、300℃以上であってもよく、700℃以上であることが好ましく、900℃以上であることがより好ましく、1000℃以上であることが特に好ましい。
【0024】
さらに1000℃以上の炭素化温度としては、1100℃以上が好ましく、1200℃以上がより好ましく、1300℃以上が特に好ましい。また、炭素化温度は、例えば、3000℃以下であってもよい。炭素化温度までの昇温速度は、本発明の効果が得られれば特に限られず、例えば、0.5℃/分以上、300℃/分以下であってもよい。炭素化は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
【0025】
炭素化は、常圧(大気圧)下で行ってもよいが、加圧下(大気圧より大きい圧力下)で行うことが好ましい。加圧下で炭素化を行う場合、当該炭素化を行う雰囲気の圧力は、例えば、ゲージ圧で0.05MPa以上であってもよく、0.15MPa以上であることが好ましく、0.20MPa以上であることがより好ましく、0.40MPa以上であることがより一層好ましく、0.50MPa以上であることが特に好ましい。また、炭素化を行う雰囲気の圧力は、例えば、10.00MPa以下であってもよい。
【0026】
炭素担体は、金属を含むことが好ましい。この場合、炭素担体は、金属を含む炭素化材料であることが好ましい。炭素化材料に含まれる金属は、炭素化の原料に由来する金属(以下、「原料金属」ということがある。)であることが好ましい。原料金属を含む炭素化材料は、有機物及び当該金属を含む原料の炭素化により得られる。
【0027】
金属を含む炭素担体は、炭素化後に金属除去処理が施された炭素化材料であってもよい。金属除去処理は、炭素化材料に含まれる金属(原料金属)の量を低減する処理である。具体的に、金属除去処理は、例えば、酸による洗浄処理及び/又は電解処理であることが好ましい。
【0028】
炭素担体が金属を含む場合、当該炭素担体は、その骨格の内部に当該金属(原料金属)を含む炭素化材料であることが好ましい。すなわち、この場合、炭素担体は、例えば、有機物と金属とを混合して得られた原料の炭素化により製造されたことに由来して、その多孔質構造を構成する骨格の内部に金属(原料金属)を含む。
【0029】
なお、炭素担体が金属除去処理を経て製造された炭素化材料である場合においても、通常、当該炭素担体の骨格の内部に含まれる原料金属を完全に除去することは難しいため、当該炭素担体の骨格の内部には原料金属が残存する。
【0030】
炭素担体の骨格の内部の金属は、例えば、当該骨格に表面エッチング処理を行い、当該エッチング処理により露出した断面を分析することで検出される。すなわち、炭素担体の1つの粒子をエッチング処理すると、エッチング処理により露出した当該粒子の断面に金属が検出される。炭素担体に含まれる金属は、例えば、当該炭素担体の誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって検出することができる。
【0031】
未だ触媒金属粒子が担持されていない炭素担体(例えば、未だ触媒金属の担持処理が施されていない炭素担体)において、当該炭素担体に含まれる金属のうち、当該炭素担体の骨格の内部に含まれる金属の含有量は、当該炭素担体の骨格の表面に含まれる金属の含有量より大きいこととしてもよい。
【0032】
炭素担体は、触媒活性を示す炭素材料であることが好ましい。すなわち、炭素担体は、それ自身が単独で触媒活性を示す炭素触媒であることが好ましい。炭素触媒は、上述のように有機物と金属とを含む原料を炭素化することにより好ましく得られる、当該金属を含む炭素化材料であることが好ましい。
【0033】
炭素触媒が示す触媒活性は、例えば、還元活性及び/又は酸化活性であることが好ましく、酸素還元活性及び/又は水素解離活性であることがより好ましく、少なくとも水素解離活性であることが特に好ましい。
【0034】
有機物と金属とを含む原料の炭素化により得られる炭素触媒が示す触媒活性は、主に当該炭素化により形成された特異な炭素構造に含まれる活性点によるものと考えられる。このことは、例えば、炭素化により得られた炭素化材料に、その原料金属の含有量を低減する金属除去処理を施した場合においても、当該金属除去処理後の当該炭素化材料の触媒活性は、当該金属除去処理前のそれに比べて大きく低下しないことによって裏付けられる。
【0035】
原料金属は、遷移金属であることが好ましい。具体的に、原料金属は、周期表の3族から12族に属する遷移金属であってもよく、周期表の3族から12族の第4周期に属する遷移金属であることが好ましい。
【0036】
より具体的に、原料金属は、例えば、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ランタノイド(例えば、ガドリニウム(Gd))及びアクチノイドからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0037】
また、原料金属は、白金(Pt)以外の遷移金属であってもよい。原料金属は、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)及びPt以外の遷移金属であってもよい。原料金属は、貴金属(Ru、Pd、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、Pt、及び金(Au))以外の遷移金属であってもよい。
【0038】
また、原料金属は、例えば、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、Fe、Co、Ni、及びZnからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、Fe及びZnからなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。
【0039】
炭素担体は、粒子状であることが好ましい。この場合、炭素担体の粒子径は特に限られないが、例えば、炭素担体のメディアン径は、1.00μm以下であってもよく、0.80μm以下であることが好ましく、0.55μm以下であることがより好ましく、0.50μm以下であることがより一層好ましく、0.45μm以下であることが特に好ましい。また、炭素担体のメディアン径は、例えば、0.05μm以上であってもよい。炭素担体の粒子径は、当該炭素担体のレーザー回折法により得られる。
【0040】
本触媒に含まれる触媒金属粒子(すなわち、本触媒において炭素担体に担持された触媒金属粒子)は、貴金属を含む。触媒金属粒子に含まれる貴金属は、本発明の効果が得られれば特に限られず、Ru、Pd、Rh、Ag、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される1種以上であってもよく、Ru、Pd、Rh、Ir及びPtからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、Ru、Pd及びPtからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、Ru及びPdからなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。
【0041】
触媒金属粒子がRu、Pd及びPtからなる群より選択される1種以上を含む場合、当該触媒金属粒子は、Ru、Pd及びPt以外の貴金属(Rh、Ag、Os、Ir及びAu)を含まないこととしてもよい。この場合、本触媒は、Ru、Pd及びPtからなる群より選択される1種以上を含み、且つ、Ru、Pd及びPt以外の貴金属(Rh、Ag、Os、Ir及びAu)を含まないこととしてもよい。
【0042】
触媒金属粒子がRu及びPdからなる群より選択される1種以上を含む場合、当該触媒金属粒子は、Ptを含まないこととしてもよいし、Ru及びPd以外の貴金属(Rh、Ag、Os、Ir、Pt及びAu)を含まないこととしてもよい。この場合、本触媒は、Ru及びPdからなる群より選択される1種以上を含み、且つ、Ptを含まないこととしてもよいし、Ru及びPd以外の貴金属(Rh、Ag、Os、Ir、Pt及びAu)を含まないこととしてもよい。
【0043】
触媒金属粒子は、貴金属のみを含むこととしてもよい。すなわち、触媒金属粒子は、貴金属のみから構成される貴金属粒子であってもよい。貴金属粒子は、単一種類の貴金属から構成されてもよいし、複数種類の貴金属から構成されてもよい。
【0044】
具体的に、単一種類の貴金属から構成される貴金属粒子は、Ru、Pd、Rh、Ag、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される1種のみから構成されてもよく、Ru、Pd、Rh、Ir及びPtからなる群より選択される1種のみから構成されることが好ましく、Ru、Pd及びPtからなる群より選択される1種のみから構成されることがより好ましく、Ru及びPdからなる群より選択される1種のみから構成されることが特に好ましい。
【0045】
また、複数種類の貴金属から構成される貴金属粒子は、Ru、Pd、Rh、Ag、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される2種以上から構成されてもよく、Ru、Pd、Rh、Ir及びPtからなる群より選択される2種以上から構成されることが好ましく、Ru、Pd及びPtからなる群より選択される2種以上から構成されることがより好ましく、Ru及びPdから構成されることが特に好ましい。
【0046】
触媒金属粒子は、非貴金属(貴金属ではない金属、すなわち貴金属以外の金属)をさらに含むことが好ましい。触媒金属粒子が貴金属に加えて非貴金属を含む場合、触媒金属粒子が貴金属のみを含む場合に比べて、より効果的に触媒活性と耐久性との両立を達成することができる。
【0047】
すなわち、触媒金属粒子が非貴金属を含むことにより、特に耐久性が効果的に向上する。具体的に、触媒金属粒子が貴金属に加えて非貴金属を含む場合、当該非貴金属の存在により、加熱及び/又は化学反応中の当該貴金属の自己拡散が抑制され、当該貴金属の凝集が効果的に抑制される。
【0048】
触媒金属粒子に含まれる非貴金属は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、貴金属以外の遷移金属であってもよく、周期表の3族から12族に属する、貴金属以外の遷移金属であることが好ましく、周期表の3族から12族の第4周期に属する遷移金属であることが特に好ましい。
【0049】
具体的に、触媒金属粒子に含まれる非貴金属は、例えば、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn及びNbからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnからなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。
【0050】
触媒金属粒子がFe、Co、Ni、Cu、及びZnからなる群より選択される1種以上を含む場合、当該触媒金属粒子は、Fe、Co、Ni、Cu、及びZn以外の非貴金属を含まないこととしてもよい。この場合、本触媒は、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnからなる群より選択される1種以上を含み、且つ、Fe、Co、Ni、Cu、及びZn以外の非貴金属を含まないこととしてもよい。
【0051】
触媒金属粒子は、炭素担体に含まれる原料金属(例えば、炭素担体の骨格の内部に含まれる金属)と同一種の非貴金属(例えば、貴金属以外の遷移金属)を含んでもよいし、当該原料金属と同一種の非貴金属を含まないこととしてもよい。
【0052】
触媒金属粒子が貴金属及び非貴金属を含む場合、当該触媒金属粒子は、当該貴金属と当該非貴金属との合金(貴金属/非貴金属合金)、当該非貴金属との合金を形成していない当該貴金属、及び当該貴金属との合金を形成していない当該非貴金属からなる群より選択される1種以上を含んでもよい。
【0053】
また、触媒金属粒子は、貴金属と非貴金属との合金から構成される貴金属/非貴金属合金粒子、非貴金属との合金を形成していない貴金属のみから構成される貴金属粒子、及び、貴金属との合金を形成していない非貴金属のみから構成される非貴金属粒子からなる群より選択される1種以上を含んでもよい。
【0054】
触媒金属粒子が貴金属/非貴金属合金粒子を含む場合、当該触媒金属粒子は、さらに貴金属粒子を含んでもよく、及び/又は、さらに非貴金属粒子を含んでもよい。また、触媒金属粒子が貴金属/非貴金属合金粒子を含む場合、当該触媒金属粒子は、貴金属粒子を含まないこととしてもよく、及び/又は、非貴金属粒子を含まないこととしてもよい。また、触媒金属粒子が貴金属粒子を含む場合、当該触媒金属粒子は、貴金属/非貴金属合金粒子を含まないこととしてもよい。
【0055】
本触媒のICP-MSにより得られる貴金属の含有量(1種以上の貴金属の含有量の合計)(ICP貴金属含有量)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.500重量%以上であってもよく、1.500重量%以上であることが好ましく、2.000重量%以上であることがより好ましく、3.000重量%以上であることがより一層好ましく、4.000重量%以上であることが特に好ましい。
【0056】
また、本触媒のICP貴金属含有量は、例えば、40.000重量%以下であってもよく、30.000重量%以下であることが好ましく、25.000重量%以下であることがより好ましく、20.000重量%以下であることがより一層好ましく、15.000重量%以下であることが特に好ましい。さらに、本触媒のICP貴金属含有量は、例えば、12.000重量%以下であってもよく、10.000重量%以下であることが好ましく、9.000重量%以下であることがより好ましく、8.000重量%以下であることがより一層好ましく、7.000重量%以下であることが特に好ましい。本触媒のICP貴金属含有量は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0057】
本触媒が貴金属としてRu及びPdからなる群より選択される1種以上を含む場合、本触媒のICP貴金属含有量に対する、ICP-MSにより得られるPtの含有量の重量比は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.50以下(0.00以上、0.50以下)であってもよく、0.10以下であってもよく、0.05以下であってもよく、0.01以下であってもよい。
【0058】
また、本触媒が貴金属としてRu及びPdからなる群より選択される1種以上を含む場合、本触媒のICP-MSにより得られるPtの含有量は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.100重量%以下(0.000重量%以上、0.100重量%以下)であってもよく、0.010重量%以下であってもよい。
【0059】
本触媒が貴金属としてRu及びPdからなる群より選択される1種以上を含む場合、本触媒のICP貴金属含有量に対する、ICP-MSにより得られるRu及びPd以外の貴金属の含有量の重量比は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.50以下(0.00以上、0.50以下)であってもよく、0.10以下であってもよく、0.05以下であってもよく、0.01以下であってもよい。
【0060】
また、本触媒が貴金属としてRu及びPdからなる群より選択される1種以上を含む場合、本触媒のICP-MSにより得られるRu及びPd以外の貴金属の含有量(複数種類の場合は当該複数種類の含有量の合計)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.100重量%以下(0.000重量%以上、0.100重量%以下)であってもよく、0.010重量%以下であってもよい。
【0061】
本触媒のICP-MSにより得られる非貴金属の含有量(1種以上の非貴金属の含有量の合計)(ICP非貴金属含有量)(炭素担体が非貴金属である原料金属を含む場合、当該原料金属の含有量と、触媒金属粒子に含まれる非貴金属の含有量との合計)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.001重量%以上であってもよく、0.010重量%以上であることが好ましく、0.050重量%以上であることがより好ましく、0.100重量%以上であることがより一層好ましく、0.150重量%以上であることが特に好ましい。さらに、本触媒のICP非貴金属含有量は、例えば、0.500重量%以上であってもよく、2.000重量%以上であることが好ましく、5.000重量%以上であることがより好ましく、8.000重量%以上であることがより一層好ましく、10.000重量%以上であることが特に好ましい。
【0062】
また、本触媒のICP非貴金属含有量は、例えば、40.000重量%以下であってもよく、35.000重量%以下であることが好ましく、30.000重量%以下であることがより好ましく、25.000重量%以下であることがより一層好ましく、21.000重量%以下であることが特に好ましい。本触媒のICP非貴金属含有量は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0063】
本触媒のICP-MSにより得られる原料金属の含有量(1種以上の原料金属の含有量の合計)(ICP原料金属含有量)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.001重量%以上であってもよく、0.005重量%以上であってもよく、0.010重量%以上であってもよく、0.020重量%以上であってもよく、0.030重量%以上であってもよく、0.040重量%以上であってもよく、0.050重量%以上であってもよい。
【0064】
また、本触媒のICP原料金属含有量は、例えば、20.000重量%以下であってもよく、10.000重量%以下であることが好ましく、6.000重量%以下であることがより好ましく、0.800重量%以下であることがより一層好ましく、0.600重量%以下であることが特に好ましい。本触媒のICP原料金属含有量は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0065】
本触媒のICP-MSにより得られるFeの含有量(ICP-Fe含有量)(炭素担体が原料金属としてFeを含む場合、当該原料金属としてのFeの含有量と、触媒金属粒子としてのFeの含有量との合計)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.001重量%以上であってもよく、0.005重量%以上であってもよく、0.010重量%以上であってもよく、0.020重量%以上であってもよく、0.030重量%以上であってもよく、0.040重量%以上であってもよく、0.050重量%以上であってもよい。
【0066】
また、本触媒のICP-Fe含有量は、例えば、20.000重量%以下であってもよく、10.000重量%以下であることが好ましく、6.000重量%以下であることがより好ましく、3.000重量以下であることがより一層好ましく、1.000重量%以下であることが特に好ましい。さらに、本触媒のICP-Fe含有量は、例えば、0.800重量%以下であってもよく、0.500重量%以下であることが好ましく、0.400重量%以下であることがより好ましく、0.300重量%以下であることがより一層好ましく、0.200重量%以下であることが特に好ましい。本触媒のICP-Fe含有量は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0067】
本触媒のICP貴金属含有量に対するICP非貴金属含有量の重量比(ICP非貴金属/貴金属重量比)(本触媒に含まれる非貴金属の含有量(重量%)(2種以上の非貴金属が含まれる場合には、当該2種以上の非貴金属の含有量(重量%)の合計)を、本触媒に含まれる貴金属の含有量(重量%)(2種以上の貴金属が含まれる場合には、当該2種以上の貴金属の含有量(重量%)の合計)で除して算出される比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.010以上であってもよく、0.050以上であってもよく、0.100以上であってもよく、0.300以上であることが好ましく、0.500以上であることがより好ましく、0.700以上であることがより一層好ましく、0.900以上であることが特に好ましい。さらに、本触媒のICP非貴金属/貴金属重量比は、例えば、1.000以上であってもよく、1.500以上であることが好ましく、2.000以上であることがより好ましく、2.500以上であることがより一層好ましく、3.000以上であることが特に好ましい。
【0068】
また、本触媒のICP非貴金属/貴金属重量比は、例えば、40.000以下であってもよく、20.000以下であることが好ましく、15.000以下であることがより好ましく、10.000以下であることが特に好ましい。さらに、本触媒のICP非貴金属/貴金属重量比は、例えば、8.000以下であってもよく、7.000以下であることが好ましく、6.000以下であることがより好ましく、5.000以下であることがより一層好ましく、4.000以下であることが特に好ましい。本触媒のICP非貴金属/貴金属重量比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0069】
本触媒のICP-MSにより得られる非貴金属の含有量に対するFeの含有量の重量比(ICP-Fe/非貴金属重量比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、1.000以下であってもよく、0.800以下であることが好ましく、0.500以下であることがより好ましく、0.400以下であることがより一層好ましく、0.300以下であることが特に好ましい。さらに、本触媒のICP-Fe/非貴金属重量比は、例えば、0.250以下であってもよく、0.100以下であることが好ましく、0.035以下であることがより好ましく、0.020以下であることがより一層好ましく、0.010以下であることが特に好ましい。また、本触媒のICP-Fe/非貴金属重量比は、例えば、0.001以上であってもよく、0.002以上であることが好ましく、0.003以上であることがより好ましく、0.004以上であることが特に好ましい。本触媒のICP-Fe/非貴金属重量比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0070】
本触媒のXPSにより得られる貴金属の含有量(XPS貴金属含有量)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.10重量%以上であってもよく、0.15重量%以上であることが好ましく、0.20重量%以上であることがより好ましく、0.25重量%以上であることがより一層好ましく、0.30重量%以上であることが特に好ましい。
【0071】
また、本触媒のXPS貴金属含有量は、例えば、40.00重量%以下であってもよく、25.00重量%以下であることが好ましく、12.00重量%以下であることがより好ましく、5.00重量%以下であることがより一層好ましく、2.50重量%以下であることが特に好ましい。さらに、本触媒のXPS貴金属含有量は、例えば、2.00重量%以下であることが好ましく、1.50重量%以下であることがより好ましく、1.00重量%以下であることが特に好ましい本触媒のXPS貴金属含有量は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0072】
本触媒のXPSにより得られる非貴金属の含有量(XPS非貴金属含有量)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.10重量%以上であってもよく、0.30重量%以上であることが好ましく、0.50重量%以上であることがより好ましく、0.70重量%以上であることが特に好ましい。さらに、本触媒のXPS非貴金属含有量は、例えば、1.00重量%以上であることが好ましく、1.50重量%以上であることが好ましく、2.00重量%以上であることが特に好ましい。
【0073】
また、本触媒のXPS非貴金属含有量は、例えば、40.00重量%以下であってもよく、25.00重量%以下であることが好ましく、10.00重量%以下であることがより好ましく、6.50重量%以下であることがより一層好ましく、5.50重量%以下であることが特に好ましい。本触媒のXPS非貴金属含有量は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0074】
本触媒のXPS貴金属含有量に対するXPS非貴金属含有量の重量比(XPS非貴金属/貴金属重量比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.10以上であってもよく、0.80以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、3.00以上であることがより一層好ましく、3.50以上であることが特に好ましい。
【0075】
また、本触媒のXPS非貴金属/貴金属重量比は、例えば、30.00以下であってもよく、20.00以下であることが好ましく、10.00以下であることがより好ましく、8.00以下であることがより一層好ましく、7.50以下であることが特に好ましい。本触媒のXPS非貴金属/貴金属重量比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0076】
本触媒のICP貴金属含有量に対するXPS貴金属含有量の重量比(貴金属-XPS/ICP重量比)(XPSにより得られる本触媒における貴金属の含有量(重量%)を、ICP-MSにより得られる本触媒における貴金属の含有量(重量%)で除して得られる比)は、本発明による効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.70以下であってもよく、0.55以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましく、0.30以下であることがより一層好ましく、0.20以下であることが特に好ましい。
【0077】
また、本触媒の貴金属-XPS/ICP重量比は、例えば、0.01以上であってもよく、0.02以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましく、0.04以上であることがより一層好ましく、0.05以上であることが特に好ましい。本触媒の貴金属-XPS/ICP重量比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0078】
本触媒の貴金属-XPS/ICP重量比(例えば、当該貴金属がRuである場合にはRu-XPS/ICP重量比)は、本触媒に含まれる貴金属の総量に対する、本触媒の表面に含まれる貴金属の量の比に相当する。本触媒の表面に含まれる貴金属は、本触媒の内部に含まれる貴金属に比べて、本触媒の触媒活性に寄与する。一方、本触媒の内部に含まれる貴金属は、本触媒の表面に含まれる貴金属に比べて、凝集しにくいため、本触媒の耐久性に寄与する。したがって、本触媒の貴金属-XPS/ICP重量比が適切な範囲内であることは、本触媒の触媒活性と耐久性との効果的な両立に貢献する。
【0079】
本触媒のICP非貴金属含有量に対するXPS非貴金属含有量の重量比(非貴金属-XPS/ICP重量比)(XPSにより得られる本触媒における非貴金属の含有量(重量%)を、ICP-MSにより得られる本触媒における非貴金属の含有量(重量%)で除して得られる比)は、本発明による効果が得られれば特に限られないが、例えば、8.50以下であってもよく、0.70以下であることが好ましく、0.50以下であることがより好ましく、0.40以下であることがより一層好ましく、0.30以下であることが特に好ましい。
【0080】
また、本触媒の非貴金属-XPS/ICP重量比は、例えば、0.01以上であってもよく、0.05以上であることがより好ましく、0.07以上であることがより好ましく、0.10以上であることがより一層好ましく、0.11以上であることが特に好ましい。本触媒の非貴金属-XPS/ICP重量比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0081】
本触媒の非貴金属-XPS/ICP重量比は、本触媒に含まれる非貴金属の総量に対する、本触媒の表面に含まれる非貴金属の量の比に相当する。本触媒の表面に含まれる非貴金属は、本触媒の内部に含まれる非貴金属に比べて、本触媒の触媒活性に寄与する。一方、本触媒の内部に含まれる非貴金属は、本触媒の表面に含まれる非貴金属に比べて、凝集しにくいため、本触媒の耐久性に寄与する。したがって、本触媒の非貴金属-XPS/ICP重量比が適切な範囲内であることは、本触媒の触媒活性と耐久性との効果的な両立に貢献する。
【0082】
本触媒のXPSにより得られる炭素含有量(原子%)に対する窒素含有量(原子%)の比(XPS-N/C比)(本触媒のXPSにより得られる窒素含有量(原子%)を、本触媒のXPSにより得られる炭素含有量(原子%)で除して得られる比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.1以上であってもよく、0.3以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、1.5以上であることがより一層好ましく、1.8以上であることが特に好ましい。
【0083】
また、本触媒のXPS-N/C比は、例えば、15.0以下であってもよく、10.0以下であってもよく、7.0以下であってもよく、5.0以下であってもよく、3.0以下であってもよい。本触媒のXPS-N/C比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0084】
本触媒のXPSにより得られる炭素含有量(原子%)に対する酸素含有量(原子%)の比(XPS-O/C比)(本触媒のXPSにより得られる酸素含有量(原子%)を、本触媒のXPSにより得られる炭素含有量(原子%)で除して得られる比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.1以上であってもよく、1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがより一層好ましく、4.0以上であることが特に好ましい。
【0085】
また、本触媒のXPS-O/C比は、例えば、30.0以下であってもよく、20.0以下であることが好ましく、15.0以下であることがより好ましく、11.0以下であることが特に好ましい。本触媒のXPS-O/C比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0086】
本触媒において、X線回折法により得られる触媒金属粒子の個数平均粒子径(XRD-個数平均粒子径)は、例えば、50.0nm以下であってもよく、30.0nm以下であってもよく、20.0nm以下であることがより好ましく、15.0nm以下であることがより一層好ましく、10.0nm以下であることが特に好ましい。
【0087】
また、本触媒に含まれる触媒金属粒子のXRD-個数平均粒子径は、例えば、0.5nm以上であってもよく、1.0nm以上であってもよく、1.5nm以上であってもよい。触媒金属粒子のXRD-個数平均粒子径は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0088】
本触媒において、X線回折法により得られる触媒金属粒子の体積平均粒子径(XRD-体積平均粒子径)は、例えば、100.0nm以下であってもよく、80.0nm以下であってもよく、50.0nm以下であることがより好ましく、40.0nm以下であることがより一層好ましく、30.0nm以下であることが特に好ましい。
【0089】
また、本触媒に含まれる触媒金属粒子のXRD-体積平均粒子径は、例えば、1.0nm以上であってもよく、5.0nm以上であってもよく、10.0nm以上であってもよく、15.0nm以上であってもよい。触媒金属粒子のXRD-体積平均粒子径は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0090】
本触媒は、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて1600cm-1付近(例えば、1500cm-1以上、1700cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するGバンドの強度(すなわち、Gバンドのピークトップの強度)に対する、1350cm-1付近(例えば、1250cm-1以上、1450cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するDバンドの強度(すなわち、Dバンドのピークトップの強度)の比(ラマン-D/G強度比)が、特定の範囲内である炭素構造を含むことが好ましい。
【0091】
すなわち、本触媒のラマン-D/G強度比は、例えば、1.15以下であってもよく、1.09以下であることが好ましく、1.07以下であることがより好ましく、1.05以下であることがより一層好ましく、1.04以下であることが特に好ましい。
【0092】
また、本触媒のラマン-D/G強度比は、例えば、0.50以上であってもよく、0.65以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましく、0.85以上であることがより一層好ましく、0.90以上であることが特に好ましい。本触媒のラマン-D/G強度比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0093】
なお、ラマンスペクトルにおいて、Dバンドは、欠陥やエッジを含む湾曲構造由来の成分であり、Gバンドは、理想的な黒鉛構造由来の成分である。すなわち、本触媒のラマン-D/G強度比は、本触媒における欠陥やエッジを含む湾曲構造の量と理想的な黒鉛構造の量とのバランスを表している。そして、理想的な黒鉛構造は炭素構造の耐久性に寄与するため、本触媒のラマン-D/G強度比が小さくなるほど、本触媒における欠陥やエッジを含む湾曲構造に対する理想的な黒鉛構造の割合が増加し、本触媒の耐久性が向上し、炭素担体に担持された触媒金属粒子の凝集が抑制される。
【0094】
本触媒の窒素吸着法によるBET(Brunauer-Emett-Teller)比表面積は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、200m/g以上であってもよく、600m/g以上であることが好ましく、900m/g以上であることがより好ましく、1000m/g以上であることがより一層好ましく、1100m/g以上であることが特に好ましい。
【0095】
本触媒のBET比表面積は、例えば、3000m/g以下であってもよく、2000m/g以下であってもよく、1800m/g以下であってもよく、1700m/g以下であってもよい。本触媒のBET比表面積は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。なお、本触媒のBET比表面積は、具体的には、本触媒の77Kにおける窒素吸着等温線からBET法により得られる比表面積である。また、本実施形態において、数値の単位における「/g」は、金属担持触媒1gあたりの数値であることを示す。
【0096】
本触媒は、炭素担体に由来する多孔質構造を有する。本触媒は、直径が2nm未満の細孔であるミクロ孔、直径が2nm以上、50nm以下の細孔であるメソ孔、及び、直径が50nm超の細孔であるマクロ孔を含むことが好ましい。
【0097】
本触媒の窒素吸着法によるBJH(Barrett-Joyner-Halenda)ミクロ孔面積(ミクロ孔の細孔面積の総和)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、100m/g以上であってもよく、350m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることがより好ましく、1000m/g以上であることがより一層好ましく、1100m/g以上であることが特に好ましい。
【0098】
本触媒のBJHミクロ孔面積は、例えば、2500m/g以下であってもよく、2000m/g以下であることが好ましく、1800m/g以下であることがより好ましく、1700m/g以下であることがより一層好ましく、1500m/g以下であることが特に好ましい。本触媒のBJHミクロ孔面積は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。なお、本触媒のBJHミクロ孔面積は、具体的には、本触媒の77Kにおける窒素吸着等温線からBJH法により得られるミクロ孔の細孔面積である。
【0099】
本触媒の窒素吸着法によるBJHメソ孔面積(メソ孔の細孔面積の総和)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、100m/g以上であってもよく、150m/g以上であることが好ましく、200m/g以上であることがより好ましく、220m/g以上であることがより一層好ましく、250m/g以上であることが特に好ましい。
【0100】
本触媒のBJHメソ孔面積は、例えば、2000m/g以下であってもよく、1000m/g以下であることが好ましく、900m/g以下であることがより好ましく、850m/g以下であることが特に好ましい。本触媒のBJHメソ孔面積は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。なお、本触媒のBJHメソ孔面積は、具体的には、本触媒の77Kにおける窒素吸着等温線からBJH法により得られるメソ孔の細孔面積である。
【0101】
本触媒の窒素吸着法によるBJHマクロ孔面積(マクロ孔の細孔面積の総和)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.5m/g以上であってもよく、1.0m/g以上であることが好ましく、1.5m/g以上であることがより好ましく、2.0m/g以上であることがより一層好ましく、2.4m/g以上であることが特に好ましい。
【0102】
本触媒のBJHマクロ孔面積は、例えば、100.0m/g以下であってもよく、50.0m/g以下であることが好ましく、35.0m/g以下であることがより好ましく、20.0m/g以下であることがより一層好ましく、13.0m/g以下であることが特に好ましい。本触媒のBJHマクロ孔面積は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。なお、本触媒のBJHマクロ孔面積は、具体的には、本触媒の77Kにおける窒素吸着等温線からBJH法により得られるマクロ孔の細孔面積である。
【0103】
本触媒のBJHマクロ孔面積に対するBJHミクロ孔面積の比(ミクロ/マクロ細孔面積比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、10以上であってもよく、30以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、80以上であることがより一層好ましく、95以上であることが特に好ましい。
【0104】
また、本触媒のミクロ/マクロ細孔面積比は、例えば、3000以下であってもよく、1500以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、700以下であることがより一層好ましく、600以下であることが特に好ましい。本触媒のミクロ/マクロ細孔面積比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0105】
ミクロ/マクロ細孔面積比が小さすぎる場合、すなわち、ミクロ孔よりマクロ孔が多すぎる場合には、例えば、1つの細孔内に互いに隣接して担持される触媒金属粒子の数が増加する。この結果、細孔内で触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。
【0106】
一方、ミクロ/マクロ細孔面積比が大きすぎる場合、すなわち、マクロ孔よりミクロ孔が多すぎる場合には、例えば、炭素担体の細孔内に触媒金属粒子が担持されにくいため、当該炭素担体の表面に担持される触媒金属粒子の割合が多くなる。この結果、炭素担体の表面において触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。したがって、本触媒のミクロ/マクロ細孔面積比が適切な範囲内であることは、触媒金属粒子の凝集の抑制に貢献し、その結果、本触媒の高い耐久性の達成に寄与する。
【0107】
本触媒のBJHマクロ孔面積に対するBJHメソ孔面積の比(メソ/マクロ細孔面積比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、10以上であってもよく、20以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることがより一層好ましく、53以上であることが特に好ましい。
【0108】
また、本触媒のメソ/マクロ細孔面積比は、例えば、1000以下であってもよく、500以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、200以下であることがより一層好ましく、150以下であることが特に好ましい。本触媒のメソ/マクロ細孔面積比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0109】
メソ/マクロ細孔面積比が小さすぎる場合、すなわち、メソ孔よりマクロ孔が多すぎる場合には、例えば、1つの細孔内に互いに隣接して担持される触媒金属粒子の数が増加する。この結果、細孔内で触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。したがって、本触媒のメソ/マクロ細孔面積比が適切な範囲内であることは、触媒金属粒子の凝集の抑制に貢献し、その結果、本触媒の効果的な耐久性の達成に寄与する。
【0110】
本触媒のBJHメソ孔面積に対するBJHミクロ孔面積の比(ミクロ/メソ細孔面積比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.1以上であってもよく、0.6以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.3以上であることがより一層好ましく、1.5以上であることが特に好ましい。
【0111】
また、本触媒のミクロ/メソ細孔面積比は、例えば、15.0以下であってもよく、10.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることがより一層好ましく、4.5以下であることが特に好ましい。本触媒のミクロ/メソ細孔面積比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0112】
ミクロ/メソ細孔面積比が大きすぎる場合、すなわち、メソ孔よりミクロ孔が多すぎる場合には、例えば、炭素担体の細孔内に触媒金属粒子が担持されにくいため、当該炭素担体の表面に担持される触媒金属粒子の割合が多くなる。この結果、炭素担体の表面において触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。
【0113】
一方、ミクロ/メソ細孔面積比が小さすぎる場合、すなわち、ミクロ孔よりメソ孔が多すぎる場合には、例えば、1つの細孔内に互いに隣接して担持される触媒金属粒子の数が増加する。この結果、細孔内で触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。したがって、本触媒のミクロ/メソ細孔面積比が適切な範囲内であることは、触媒金属粒子の凝集の抑制に貢献し、その結果、本触媒の高い耐久性の達成に寄与する。
【0114】
本触媒のBJHマクロ孔面積に対する、BJHミクロ孔面積とBJHメソ孔面積との合計の比((ミクロ+メソ)/マクロ細孔面積比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、30以上であってもよく、70以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、130以上であることがより一層好ましく、150以上であることが特に好ましい。
【0115】
また、本触媒の(ミクロ+メソ)/マクロ細孔面積比は、例えば、3500以下であってもよく、2000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、800以下であることがより一層好ましく、700以下であることが特に好ましい。本触媒の(ミクロ+メソ)/マクロ細孔面積比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0116】
(ミクロ+メソ)/マクロ細孔面積比が小さすぎる場合、すなわち、ミクロ孔及びメソ孔よりマクロ孔が多すぎる場合には、1つの細孔内に互いに隣接して担持される触媒金属粒子の数が増加する。この結果、細孔内で触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。したがって、本触媒の(ミクロ+メソ)/マクロ細孔面積比が適切な範囲内であることは、触媒金属粒子の凝集の抑制に貢献し、その結果、本触媒の効果的な耐久性の達成に寄与する。
【0117】
本触媒のBJHミクロ孔面積に対するBET比表面積の比(比表面積/ミクロ孔面積比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.5以上であってもよく0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.9以上であることがより一層好ましく、1.0以上であることが特に好ましい。
【0118】
また、本触媒の比表面積/ミクロ孔面積比は、例えば、5.0以下であってもよく、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.5以下であることがより一層好ましく、1.2以下であることが特に好ましい。本触媒の比表面積/ミクロ孔面積比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0119】
比表面積/ミクロ細孔面積比が大きすぎる場合、すなわち、ミクロ孔以外の細孔が当該ミクロ孔より多すぎる場合(例えば、ミクロ孔より細孔径が大きい細孔が当該ミクロ孔より多すぎる場合)には、例えば、1つの細孔内に互いに隣接して担持される触媒金属粒子の数が増加する。この結果、細孔内で触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。
【0120】
一方、比表面積/ミクロ細孔面積比が小さすぎる場合、すなわち、ミクロ孔が当該ミクロ孔以外の細孔より多すぎる場合(例えば、ミクロ孔が当該ミクロ孔より細孔径が大きい細孔より多すぎる場合)には、例えば、炭素担体の細孔内に触媒金属粒子が担持されにくいため、当該炭素担体の表面に担持される触媒金属粒子の割合が多くなる。この結果、炭素担体の表面において触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。したがって、本触媒の比表面積/ミクロ孔面積比が適切な範囲内であることは、触媒金属粒子の凝集の抑制に貢献し、その結果、本触媒の効果的な耐久性の達成に寄与する。
【0121】
本触媒のBJHメソ孔面積に対するBET比表面積の比(比表面積/メソ孔面積比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、1.0以上であってもよく、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.7以上であることがより一層好ましく、1.8以上であることが特に好ましい。
【0122】
また、本触媒の比表面積/メソ孔面積比は、例えば、10.0以下であってもよく、8.0以下であることが好ましく、6.0以下であることがより好ましく、4.4以下であることがより一層好ましく、4.3以下であることが特に好ましい。本触媒の比表面積/メソ孔面積比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0123】
比表面積/メソ細孔面積比が大きすぎる場合、すなわち、メソ孔以外の細孔が当該メソ孔より多すぎる場合(例えば、メソ孔より小さい細孔が当該メソ孔より多すぎる場合)には、例えば、炭素担体の細孔内に触媒金属粒子が担持されにくいため、当該炭素担体の表面に担持される触媒金属粒子の割合が多くなる。この結果、炭素担体の表面において触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。
【0124】
一方、比表面積/メソ細孔面積比が小さすぎる場合、すなわち、メソ孔以外の細孔が当該メソ孔より少なすぎる場合(例えば、メソ孔より小さい細孔が当該メソ孔より少なすぎる場合)には、例えば、1つの細孔内に互いに隣接して担持される触媒金属粒子の数が増加する。この結果、細孔内で触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。したがって、本触媒の比表面積/メソ孔面積比が適切な範囲内であることは、触媒金属粒子の凝集の抑制に貢献し、その結果、本触媒の高い耐久性の達成に寄与する。
【0125】
本触媒のBJHマクロ孔面積に対するBET比表面積の比(比表面積/マクロ孔面積比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、20以上であってもよく、30以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましく、80以上であることがより一層好ましく、100以上であることが特に好ましい。
【0126】
また、本触媒の比表面積/マクロ孔面積比は、例えば、2300以下であってもよく、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1000以下であることがより一層好ましく、600以下であることが特に好ましい。本触媒の比表面積/マクロ孔面積比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0127】
比表面積/マクロ孔面積比が小さすぎる場合、すなわち、マクロ孔以外の細孔が当該マクロ孔より少なすぎる場合には、例えば、1つの細孔内に互いに隣接して担持される触媒金属粒子の数が増加する。この結果、細孔内で触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。したがって、本触媒の比表面積/マクロ孔面積比が適切な範囲内であることは、触媒金属粒子の凝集の抑制に貢献し、その結果、本触媒の効果的な耐久性の達成に寄与する。
【0128】
本触媒の窒素吸着法によるBJHミクロ孔容積(ミクロ孔の細孔容積の総和)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.05cm/g以上であってもよく、0.15cm/g以上であることが好ましく、0.30cm/g以上であることがより好ましく、0.35cm/g以上であることがより一層好ましく、0.37cm/g以上であることが特に好ましい。
【0129】
本触媒のBJHミクロ孔容積は、例えば、2.00cm/g以下であってもよく、1.00cm/g以下であることが好ましく、0.80cm/g以下であることがより好ましく、0.70cm/g以下であることがより一層好ましく、0.68cm/g以下であることが特に好ましい。本触媒のBJHミクロ孔容積は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。なお、本触媒のBJHミクロ孔容積は、具体的には、本触媒の77Kにおける窒素吸着等温線からBJH法により得られるミクロ孔の細孔容積である。
【0130】
本触媒の窒素吸着法によるBJHメソ孔容積(メソ孔の細孔容積の総和)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.10cm/g以上であってもよく、0.15cm/g以上であることが好ましく、0.20cm/g以上であることがより好ましく、0.25cm/g以上であることが特に好ましい。
【0131】
本触媒のBJHメソ孔容積は、例えば、2.00cm/g以下であってもよく、1.00cm/g以下であることが好ましく、0.90cm/g以下であることがより好ましく、0.80cm/g以下であることがより一層好ましく、0.74cm/g以下であることが特に好ましい。本触媒のBJHメソ孔容積は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。なお、本触媒のBJHメソ孔容積は、具体的には、本触媒の77Kにおける窒素吸着等温線からBJH法により得られるメソ孔の細孔容積である。
【0132】
本触媒の窒素吸着法によるBJHマクロ孔容積(マクロ孔の細孔容積の総和)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.01cm/g以上であってもよく、0.02cm/g以上であることが好ましく、0.03cm/g以上であることがより好ましく、0.04cm/g以上であることがより一層好ましく、0.05cm/g以上であることが特に好ましい。
【0133】
本触媒のBJHマクロ孔容積は、例えば、1.00cm/g以下であってもよく、0.80cm/g以下であることが好ましく、0.50cm/g以下であることがより好ましく、0.30cm/g以下であることがより一層好ましく、0.25cm/g以下であることが特に好ましい。本触媒のBJHマクロ孔容積は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。なお、本触媒のBJHマクロ孔容積は、具体的には、本触媒の77Kにおける窒素吸着等温線からBJH法により得られるマクロ孔の細孔容積である。
【0134】
本触媒のBJHミクロ孔容積に対するBJHメソ孔容積の比(メソ/ミクロ細孔容積比)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.30以上であってもよく、0.40以上であることが好ましく、0.45以上であることがより好ましく、0.50以上であることがより一層好ましく、0.55以上であることが特に好ましい。
【0135】
また、本触媒のメソ/ミクロ細孔容積比は、例えば、7.80以下であってもよく、6.50以下であることが好ましく、3.00以下であることがより好ましく、1.65以下であることがより一層好ましく、1.50以下であることが特に好ましい。本触媒のメソ/ミクロ細孔容積比は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0136】
メソ/ミクロ細孔容積比が小さすぎる場合、すなわち、ミクロ孔よりメソ孔が少なすぎる場合には、例えば、炭素担体の細孔内に触媒金属粒子が担持されにくいため、当該炭素担体の表面に担持される触媒金属粒子の割合が多くなる。この結果、炭素担体の表面において触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。
【0137】
一方、メソ/ミクロ細孔容積比が大きすぎる場合、すなわち、ミクロ孔よりメソ孔が多すぎる場合には、例えば、1つの細孔内に互いに隣接して担持される触媒金属粒子の数が増加する。この結果、細孔内で触媒金属粒子の凝集が起こりやすくなり、耐久性が低下する。したがって、本触媒のメソ/ミクロ細孔容積比が適切な範囲内であることは、触媒金属粒子の凝集の抑制に貢献し、その結果、本触媒の高い耐久性の達成に寄与する。
【0138】
本触媒は、水素製造用触媒である。すなわち、本触媒は、水素生成反応を効果的に触媒する優れた触媒活性を有する。また、さらに本触媒は、優れた耐久性も有する。すなわち、本触媒は、優れた触媒活性と優れた耐久性とを兼ね備える。したがって、本触媒を用いることにより、効果的な水素製造を実現することができる。
【0139】
本実施形態に係る水素製造方法(以下、「本方法」という。)は、上述した本触媒を用いて水素を製造する方法である。すなわち、本方法は、例えば、本触媒の存在下で、水素生成原料を改質、加水分解又は熱分解して水素を生成することを含む。水素生成原料は、改質、加水分解又は熱分解によって水素を生成する化合物(水素源化合物)であれば特に限られない。水素源化合物は、例えば、炭化水素化合物、含酸素有機化合物及び窒素-水素化合物からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0140】
炭化水素化合物は、改質又は熱分解によって水素を生成するものであれば特に限られないが、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。脂肪族炭化水素は、例えば、炭素数が1~20の脂肪族炭化水素であることが好ましく、炭素数が1~12の脂肪族炭化水素であることが特に好ましい。具体的に、脂肪族炭化水素は、例えば、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン及びブタンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。脂環式炭化水素は、例えば、炭素数が3~12の脂環式炭化水素であることが好ましい。具体的に、脂環式炭化水素は、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン及びシクロヘキサンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。芳香族炭化水素は、例えば、炭素数が5~16の芳香族炭化水素であることが好ましい。具体的に、芳香族炭化水素は、例えば、ベンゼン、トルエン,キシレン、エチルベンゼン及びテトラリンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0141】
含酸素有機化合物は、改質又は熱分解によって水素を生成するものであれば特に限られないが、例えば、アルコール類、エーテル類、エステル類及びケトン類からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。アルコール類は、例えば、炭素数が1~12のアルコール類であることが好ましい。具体的に、アルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。エーテル類は、例えば、炭素数が2~12のエーテル類であることが好ましい。具体的に、エーテル類は、例えば、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、オキサシクロペンタン及びクラウンエーテルからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。エステル類は、例えば、炭素数が2~12のエステル類であることが好ましい。具体的に、エステル類は、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、酪酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。ケトン類は、例えば、炭素数が3~6のケトン類であることが好ましい。具体的に、ケトン類は、例えば、プロパノン、ペンタノン、ブタノン及びシクロヘキサノンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0142】
窒素-水素化合物は、加水分解又は熱分解によって水素を生成するものであれば特に限られないが、例えば、アザン及びホウ素-窒素-水素化合物からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。具体的に、アザンは、例えば、アンモニア、ヒドラジン及びトリアザンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。ホウ素-窒素-水素化合物は、例えば、アンモニアボランであることが好ましい。
【0143】
本方法においては、本触媒の存在下で水素生成原料を改質、加水分解又は熱分解して水素を生成する。すなわち、本方法においては、水素生成原料と本触媒とを加熱下で接触させる。本触媒と接触させる水素生成原料の形態は、当該水素生成原料の改質、加水分解又は熱分解により水素が生成すれば特に限られず、例えば、気体状、液体状又は固体状の水素生成原料を本触媒と接触させることとしてもよい。
【0144】
本方法において水素生成原料を加熱する温度(すなわち、本触媒と水素生成原料とを接触させる温度)は、当該水素生成原料が改質、加水分解又は熱分解して水素が生成されれば特に限られず、例えば、30℃以上であってもよく、50℃以上であってもよく、100℃以上であってもよく、200℃以上であってもよく、250℃以上であってもよく、300℃以上であってもよい。また、本方法において水素生成原料を加熱する温度は、例えば、1000℃以下であってもよく、800℃以下であってもよい。本方法において水素生成原料を加熱する温度は、上述した下限値のいずれか一つと、上述した上限値のいずれか一つとを組み合わせて特定されてもよい。
【0145】
本方法において水素生成原料と接触させる本触媒の形態は、本発明の効果が得られれば特に限られず、例えば、本触媒を含む粉末、顆粒、ペレット、ハニカム構造体、又はフィルターであってもよい。
【0146】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例
【0147】
[炭素担体A]
3.7kgのポリアクリロニトリル(PAN)と、3.7kgの2-メチルイミダゾールと、16.2kgの塩化亜鉛(ZnCl)と、0.07kgの塩化鉄(III)六水和物(FeCl・6HO)と、56.2kgのジメチルホルムアミドとを混合した。得られた混合物から乾燥により溶媒を除去した。乾燥した混合物を大気中で加熱して、250℃で不融化を行った。
【0148】
不融化後の混合物を、窒素雰囲気中、0.90MPaのゲージ圧力下、1300℃で加熱することにより、炭素化を行った。炭素化により得られた炭素化材料に希塩酸を加え、撹拌した。その後、炭素化材料を含有する懸濁液を、ろ過膜を使用してろ過し、ろ液が中性になるまで蒸留水で炭素化材料を洗浄した。こうして酸洗浄による金属除去処理を行った。微粉砕機によって、金属除去処理後の炭素化材料を、その粒子径の中央値が1μm以下になるまで粉砕した。
【0149】
さらに、粉砕後の炭素化材料を、100%アンモニアガスを0.15L/分で流通させた雰囲気中、常圧下、900℃で1時間、加熱した。その後、アンモニアガスを窒素ガスに置換し、窒素雰囲気中、常圧下、炭素化材料を500℃で10分、加熱した。その後、窒素雰囲気中で自然放冷により炭素化材料を冷却した。こうして得られた粒子状の炭素化材料を炭素担体Aとして用いた。
【0150】
[炭素担体B]
6.0gのポリアクリロニトリル(PAN)と、6.0gの2-メチルイミダゾールと、26.0gの塩化亜鉛(ZnCl)と、0.11gの塩化鉄(III)六水和物(FeCl・6HO)と、300mLのジメチルホルムアミドとを用いた点以外は上述の炭素担体Aと同様にして得られた粒子状の炭素化材料を炭素担体Bとして用いた。
【0151】
[炭素担体C]
6.0gのポリアクリロニトリル(PAN)と、6.0gの2-メチルイミダゾールと、26.0gの塩化亜鉛(ZnCl)と、0.11gの塩化鉄(III)六水和物(FeCl・6HO)と、300mLのジメチルホルムアミドとを混合した。得られた混合物から乾燥により溶媒を除去した。乾燥した混合物を大気中で加熱して、250℃で不融化を行った。
【0152】
不融化後の混合物を、窒素雰囲気中、常圧下、1300℃で加熱することにより、炭素化を行った。炭素化により得られた炭素化材料に希塩酸を加え、撹拌した。その後、炭素化材料を含有する懸濁液を、ろ過膜を使用してろ過し、ろ液が中性になるまで蒸留水で炭素化材料を洗浄した。こうして酸洗浄による金属除去処理を行った。微粉砕機によって、金属除去処理後の炭素化材料を、その粒子径の中央値が1μm以下になるまで粉砕した。
【0153】
さらに、粉砕後の炭素化材料を、100%アンモニアガスを0.15L/分で流通させた雰囲気中、常圧下、900℃で1時間、加熱した。その後、アンモニアガスを窒素ガスに置換し、窒素雰囲気中、常圧下、炭素化材料を500℃で10分、加熱した。
【0154】
その後、鉄の担持量が1重量%となる条件にて、塩化鉄(III)六水和物(FeCl・6HO)を含む水溶液中に炭素化材料を含浸し、含浸後の当該炭素化材料を乾燥した。こうして得られた粒子状の炭素化材料を炭素担体Cとして用いた。
【0155】
[炭素担体D]
0.4gのポリビニルピリジンと、0.45gの塩化鉄(III)六水和物(FeCl・6HO)と、0.5gのケッチェンブラック(ECP600JD、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)と、を乳鉢に入れ、均一に混合した。得られた混合物を、窒素雰囲気中、常圧下、900℃で1時間加熱保持することにより、炭素化を行った。こうして得られた粒子状の炭素化材料を炭素担体Dとして用いた。
【0156】
[炭素担体E]
市販のケッチェンブラック(ECP600JD、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を炭素担体Eとして用いた。
【0157】
[炭素担体F]
市販のヤシ殻活性炭(YP-50F、株式会社クラレ製)を炭素担体Fとして用いた。
【0158】
[炭素担体G]
市販のヤシ殻活性炭(白鷺TC、大阪ガスケミカル株式会社製)を炭素担体Gとして用いた。
【0159】
[例1]
炭素担体Aを、ルテニウム前駆体である塩化ルテニウム(RuCl)を含むルテニウム水溶液(ルテニウムの目標担持量5wt%に相当する量の塩化ルテニウムを含有する水溶液)に加えて16時間、撹拌混合した。その後、得られた混合液を空気中100℃で5時間加熱して、乾燥させた。
【0160】
さらに、得られた固形物に対して、水素雰囲気(水素ガス100体積%)中、常圧下、500℃で60分の加熱処理(気相還元処理)を施した。こうして炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持されたルテニウムを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0161】
[例2]
まず炭素担体Aを、コバルト前駆体である塩化コバルト六水和物(CoCl・6HO)を含むコバルト水溶液(コバルトの目標担持量18wt%に相当する量の塩化コバルト六水和物を含有する水溶液)に加えて16時間、撹拌混合した。その後、得られた混合液を空気中100℃で5時間加熱して、乾燥させた。
【0162】
次いで、乾燥後の混合物を、ルテニウム前駆体である塩化ルテニウム(RuCl)を含むルテニウム水溶液(ルテニウムの目標担持量5wt%に相当する量の塩化ルテニウムを含有する水溶液)に加えて16時間、撹拌混合した。その後、得られた混合液を空気中100℃で5時間加熱して、乾燥させた。
【0163】
さらに、得られた固形物に対して、水素雰囲気(水素ガス100体積%)中、常圧下、500℃で60分の加熱処理(気相還元処理)を施した。こうして炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0164】
[例3]
炭素担体Aに代えて、炭素担体Bを用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Bと、当該炭素担体Bに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0165】
[例4]
炭素担体Aを、コバルト前駆体である塩化コバルト六水和物(CoCl・6HO)と、ルテニウム前駆体である塩化ルテニウム(RuCl)とを含むルテニウム/コバルト水溶液(コバルトの目標担持量18wt%に相当する量の塩化コバルト六水和物と、ルテニウムの目標担持量5wt%に相当する量の塩化ルテニウムとを含有する水溶液)に加えて16時間、撹拌混合した。その後、得られた混合液を空気中100℃で5時間加熱して、乾燥させた。
【0166】
さらに、得られた固形物に対して、水素雰囲気(水素ガス100体積%)中、常圧下、500℃で60分の加熱処理(気相還元処理)を施した。こうして炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0167】
[例5]
まず炭素担体Aを、ルテニウム前駆体である塩化ルテニウム(RuCl)を含むルテニウム水溶液(ルテニウムの目標担持量5wt%に相当する量の塩化ルテニウムを含有する水溶液)に加えて16時間、撹拌混合した。その後、得られた混合液を空気中100℃で5時間加熱して、乾燥させた。
【0168】
次いで、乾燥後の混合物を、コバルト前駆体である塩化コバルト六水和物(CoCl・6HO)を含むコバルト水溶液(コバルトの目標担持量18wt%に相当する量の塩化コバルト六水和物を含有する水溶液)に加えて16時間、撹拌混合した。その後、得られた混合液を空気中100℃で5時間加熱して、乾燥させた。
【0169】
さらに、得られた固形物に対して、水素雰囲気(水素ガス100体積%)中、常圧下、500℃で60分の加熱処理(気相還元処理)を施した。こうして炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0170】
[例6]
コバルト水溶液に代えて、銅前駆体である塩化銅二水和物(CuCl・2HO)を含む銅水溶液(銅の目標担持量18wt%に相当する量の塩化銅二水和物を含有する水溶液)を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持されたルテニウム及び銅を含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0171】
[例7]
コバルト水溶液に代えて、ニッケル前駆体である塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO)を含むニッケル水溶液(ニッケルの目標担持量18wt%に相当する量の塩化ニッケル六水和物を含有する水溶液)を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持されたルテニウム及びニッケルを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0172】
[例8]
コバルト水溶液に代えて、亜鉛前駆体である塩化亜鉛(ZnCl)を含む亜鉛水溶液(亜鉛の目標担持量18wt%に相当する量の塩化亜鉛を含有する水溶液)を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持されたルテニウム及び亜鉛を含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0173】
[例9]
コバルト水溶液に代えて、鉄前駆体である塩化鉄(III)六水和物(FeCl・6HO)を含む鉄水溶液(鉄の目標担持量1wt%に相当する量の塩化鉄(III)六水和物を含有する水溶液)を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持されたルテニウム及び鉄を含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0174】
[例10]
コバルト水溶液に代えて、鉄の目標担持量18wt%に相当する量の塩化鉄(III)六水和物を含有する鉄水溶液を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持されたルテニウム及び鉄を含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0175】
[例11]
ルテニウム水溶液に代えて、パラジウム前駆体であるジニトロジアンミンパラジウム(II)(Pd(NH(NO)を含むパラジウム水溶液(パラジウムの目標担持量5wt%に相当する量のジニトロジアンミンパラジウム(II)を含有する水溶液)を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持されたパラジウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0176】
[例12]
ルテニウム水溶液に代えて、パラジウムの目標担持量15wt%に相当する量のジニトロジアンミンパラジウム(II)を含有するパラジウム水溶液を用い、コバルト水溶液として、コバルトの目標担持量16wt%に相当する量の塩化コバルト六水和物を含有する水溶液を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持されたパラジウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0177】
[例13]
ルテニウム水溶液に代えて、白金前駆体である塩化白金酸(HPtCl)を含む白金水溶液(白金の目標担持量5wt%に相当する量の塩化白金酸を含有する水溶液)を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持された白金及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0178】
[例14]
ルテニウム水溶液に代えて、白金の目標担持量5wt%に相当する量の塩化白金酸を含有する白金水溶液を用い、コバルト水溶液として、コバルトの目標担持量16wt%に相当する量の塩化コバルト六水和物を含有する水溶液を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Aと、当該炭素担体Aに担持された白金及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0179】
[例15]
炭素担体Aに代えて、炭素担体Cを用い、ルテニウム水溶液として、ルテニウムの目標担持量1wt%に相当する量の塩化ルテニウムを含有する水溶液を用い、コバルト水溶液として、コバルトの目標担持量19wt%に相当する量の塩化コバルト六水和物を含有する水溶液を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Cと、当該炭素担体Cに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0180】
[例16]
炭素担体Aに代えて、炭素担体Cを用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Cと、当該炭素担体Cに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0181】
[例17]
炭素担体Aに代えて、炭素担体Cを用い、ルテニウム水溶液として、ルテニウムの目標担持量10wt%に相当する量の塩化ルテニウムを含有する水溶液を用い、コバルト水溶液として、コバルトの目標担持量17wt%に相当する量の塩化コバルト六水和物を含有する水溶液を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Cと、当該炭素担体Cに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0182】
[例18]
炭素担体Aに代えて、炭素担体Dを用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Dと、当該炭素担体Dに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0183】
[例19]
炭素担体Aに代えて、炭素担体Dを用い、ルテニウム水溶液として、ルテニウムの目標担持量9wt%に相当する量の塩化ルテニウムを含有する水溶液を用い、コバルト水溶液として、コバルトの目標担持量17wt%に相当する量の塩化コバルト六水和物を含有する水溶液を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Dと、当該炭素担体Dに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0184】
[例C1]
ルテニウム水溶液に代えて、ニッケル前駆体である塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO)を含むニッケル水溶液(ニッケルの目標担持量5wt%に相当する量の塩化ニッケル六水和物を含有する水溶液)を用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Eと、当該炭素担体Eに担持されたニッケル及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0185】
[例C2]
炭素担体Aに代えて、炭素担体Eを用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Eと、当該炭素担体Eに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0186】
[例C3]
炭素担体Aに代えて、炭素担体Fを用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Fと、当該炭素担体Fに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0187】
[例C4]
炭素担体Aに代えて、炭素担体Gを用いたこと以外は上述の例2と同様にして、炭素担体Gと、当該炭素担体Gに担持されたルテニウム及びコバルトを含む触媒金属粒子とを含む金属担持触媒を得た。
【0188】
[水素製造例]
含酸素有機化合物としてエタノールを使用し、上述したいずれかの金属担持触媒の存在下で、エタノールの水蒸気改質による水素の生成を実施した。具体的に、まず、金属担持触媒の前処理を行った。すなわち、まず8mgの金属担持触媒を石英製反応管に充填した。次いで、この反応管を触媒分析装置(マイクロトラック・ベル株式会社製)へ設置し、ヘリウムガス(ヘリウム流量=50mL/分)雰囲気下、10℃/分の昇温速度で600℃まで加熱することにより、金属担持触媒の前処理を行った。その後、反応管をヘリウムガス(ヘリウム流量=50mL/分)雰囲気下で100℃まで自然放冷した。
【0189】
次に、エタノールを含むガスを加熱下で金属担持触媒と接触させ、生成する水素の量を反応ガスを四重極型質量分析計(Quadrupole Mass Spectrometer:QMS)で測定した。すなわち、ヘリウムガスとエタノールと水蒸気との混合ガス(ヘリウム流量=50mL/分、エタノール流量=14mL/分、水蒸気流量=40mL/分)を流通させながら、10℃/分の昇温速度で加熱し、500℃で30分保持した。この500℃の保持の間、生成した水素を質量数2で検出し、得られたスペクトルに対して温度(横軸)と検出強度(縦軸)との相関関係を記録した。
【0190】
一方、水素ガスを標準ガスとして用いて、水素の生成量と、検出強度との相関関係を示す検量線を作成した。そして、測定により得た検出強度と、検量線とに基づいて定量した値(温度が500℃に到達した時点から1分が経過した時点の水素生成量(mmоl/min))を、測定に用いた金属担持触媒の重量で除することにより、金属担持触媒の500℃における水素生成速度(mmol/(min・g))(初期の水素生成速度)を得た。
【0191】
また、同様にして、温度を500℃に保持して30分後が経過した時点の水素生成速度(mmol/(min・g))を得た。そして、上述のようにして得られた初期の水素生成速度から、30分後の水素生成速度を減じて水素生成速度低下量を算出し、さらに、当該水素生成速度低下量を当該初期の水素生成速度で除して、100を乗じることにより、活性低下率(%)を得た。
【0192】
[比表面積、細孔面積及び細孔容積]
金属担持触媒の窒素吸着法による比表面積、細孔面積及び細孔容積を、比表面積・細孔分布測定装置(TriStar II 3020、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
【0193】
すなわち、まず、0.1gの金属担持触媒を、100℃、6.7×10-2Paで、3時間保持することにより、当該金属担持触媒に吸着している水分を取り除いた。次いで、BET法により、77Kにおける窒素吸着等温線を得た。この77Kにおける窒素吸着等温線は、77Kの温度で、窒素ガスの圧力の変化に伴う、金属担持触媒への窒素吸着量の変化を測定して得た。そして、温度77Kにおける窒素吸着等温線から、金属担持触媒の窒素吸着法によるBET比表面積(m/g)を得た。
【0194】
また、温度77Kにおける窒素吸着等温線から、BJH法により、ミクロ孔面積(m/g)、メソ孔面積(m/g)、マクロ孔面積(m/g)、ミクロ孔容積(cm/g)、メソ孔容積(cm/g)、及びマクロ孔容積(cm/g)を得た。
【0195】
[誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)]
ICP-MSにより、金属担持触媒の貴金属含有量及び非貴金属含有量を測定した。すなわち、まず100mgの金属担持触媒を、大気雰囲気下、800℃で、3時間加熱保持することにより、当該金属担持触媒中の非金属成分を取り除いた。
【0196】
次いで、金属担持触媒を塩酸5mL中に浸漬することにより、当該金属担持触媒に含まれている金属を溶解させた。さらに、全重量が50mLとなるように蒸留水を加えて希釈し、金属溶液を得た。
【0197】
なお、ルテニウム含有量の測定については、別途アルカリ融解法を用いた。すなわち、まず20mgの金属担持触媒と0.5gの過酸化ナトリウムとを、大気雰囲気下、800℃で、30分間加熱保持することにより、当該金属担持触媒中のルテニウムを溶解し、非金属成分を取り除いた。次いで、金属担持触媒を塩酸5mL中に浸漬することにより、当該金属担持触媒に含まれているルテニウムを溶液中に溶解させた。さらに、全重量が50mLとなるように蒸留水を加えて希釈し、金属溶液を得た。
【0198】
その後、得られた金属溶液の貴金属濃度及び非貴金属濃度を、シーケンシャル形プラズマ発光分析装置(ICPS-8100、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。そして、金属溶液の貴金属濃度(mg/mL)及び非貴金属濃度(mg/mL)に当該金属溶液の容量(50mL)を乗じることにより、金属担持触媒の貴金属含有量(mg)及び非貴金属含有量(mg)を得た。さらに、金属担持触媒の貴金属含有量(mg)及び非貴金属含有量(mg)を金属担持触媒の重量である100mgで除し100を乗じることにより、ICP貴金属含有量(重量%)及びICP非貴金属含有量(重量%)を得た。
【0199】
[X線光電子分光法(XPS)]
X線光電子分光装置(AXIS NOVA、KRATOS社製)を用いて、金属担持触媒の表面における貴金属原子(ルテニウム原子、パラジウム原子、及び白金原子)、非貴金属原子(鉄原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、及び銅原子)及び非金属原子(炭素原子、窒素原子、及び酸素原子)の内殻準位からの光電子スペクトルを測定した。X線源にはAlKα線(10mA、15kV、Pass energy 40eV)を用いた。得られた光電子スペクトルにおいては、炭素原子の1s軌道に由来するC1sピークのピークトップが284.5eVに位置するよう結合エネルギーの補正を行った。
【0200】
XPSワイドスキャン分析において、光電子スペクトルにおけるピーク面積と検出感度係数とから、金属担持触媒の表面における炭素原子、窒素原子及び酸素原子の原子濃度(原子%)を求めた。また、窒素原子濃度(原子%)を炭素原子濃度(原子%)で除して、XPSによるN/C比を算出した。また、酸素原子濃度(原子%)を炭素原子濃度(原子%)で除して、XPSによるO/C比を算出した。
【0201】
また、貴金属及び非貴金属のピーク面積、検出感度係数及び原子量から、金属担持触媒のXPSによる貴金属含有量(重量%)及び非貴金属含有量(重量%)を求めた。ここで、金属担持触媒には、製造に用いた貴金属原子及び非貴金属原子、炭素原子、窒素原子及び酸素原子以外の原子は含まれないものとして計算した。
【0202】
[ラマン分光法]
金属担持触媒をラマン分光法により解析した。ラマンスペクトルは、HORIBA顕微レーザーラマン分光測定装置(LabRAM、HORIBA Jobin Yvon)を用いて測定した。測定に用いたレーザーは532nmの励起波長で、出力が50mW、減光フィルターD3を介し、露光90秒×積算2回の条件で測定することにより、ラマンスペクトルを得た。
【0203】
得られたラマンスペクトルにおいて、ベースライン補正を施した。すなわち、ラマンシフト(cm-1)が600cm-1付近の散乱強度と、2000cm-1付近の散乱強度とを結ぶ直線をベースラインに決定し、散乱スペクトルの各強度から当該ベースラインを差し引くことでベースライン補正を行った。
【0204】
ベースライン補正後のラマンスペクトルにおいて、1600cm-1付近(具体的には、1500cm-1以上、1700cm-1以下の範囲内)のGバンド、及び1350cm-1付近(具体的には、1250cm-1以上、1450cm-1以下の範囲内)のDバンドをそれぞれ特定した。そして、Dバンドのピークトップの強度をGバンドのピークトップの強度で除することにより、ラマン-D/G強度比を算出した。
【0205】
[結果]
図1には、例1~例19及び例C1~例C4のそれぞれについて、金属担持触媒に含まれる炭素担体、当該炭素担体に担持された触媒金属(図中の「担持金属」)、金属担持触媒の性能(水素生成速度(mmol/(min・g))及び活性低下率(%)、窒素吸着法により得られたBET比表面積(m/g)、BJHミクロ孔面積(m/g)、BJHメソ孔面積(m/g)、BJHマクロ孔面積(m/g)、(ミクロ+メソ)/マクロ細孔面積比(-)、ミクロ/マクロ細孔面積比(-)、メソ/マクロ細孔面積比(-)、ミクロ/メソ細孔面積比(-)、比表面積/ミクロ孔面積比(-)、比表面積/メソ孔面積比(-)、比表面積/マクロ孔面積比(-)、BJHミクロ孔容積(cm/g)、BJHメソ孔容積(cm/g)、BJHマクロ孔容積(cm/g)、及びメソ/ミクロ細孔容積比(-)を示す。
【0206】
図1に示すように、水素生成速度は、例C1~C4において3.1mmol/(min・g)以下であったのに対し、例1~19では4.0mmol/(min・g)以上であり、例1~9、11、12、14,16、17及び19では5.0mmol/(min・g)以上であり、例11及び12では7.9mmol/(min・g)以上であった。
【0207】
金属担持触媒の活性低下率は、例C1~C4において39%以上であったのに対し、例1~19では34%以下であり、例1~9及び11~17では27%以下であり、例2~8及び11~13では17%以下であり、例2~8、11及び12では15%以下であった。
【0208】
金属担持触媒のBET比表面積は、例1~19において470m/g以上であり、例1~17において756m/g以上であり、例1~14において965m/g以上であった。また、金属担持触媒のBET比表面積は、例1~19において1696m/g以下であった。
【0209】
金属担持触媒のBJHミクロ孔面積は、例1~19において227m/g以上であり、例1~17において720m/g以上であり、例1~14において909m/g以上であった。また、金属担持触媒のBJHミクロ孔面積は、例1~19において1725m/g以下であった。
【0210】
金属担持触媒のBJHメソ孔面積は、例1~19において122m/g以上であり、例1~14、18及び19において285m/g以上であった。また、金属担持触媒のBJHメソ孔面積は、例1~19において779m/g以下であった。
【0211】
金属担持触媒のBJHマクロ孔面積は、例1~19において0.7m/g以上であり、例1~14、18及び19において2.4m/g以上であった。また、金属担持触媒のBJHマクロ孔面積は、例1~19において13.6m/g以下であった。
【0212】
金属担持触媒のミクロ/マクロ細孔面積比は、例1~19において18以上であり、例1~17において100以上であった。また、金属担持触媒のミクロ/マクロ細孔面積比は、例1~19において1959以下であり、例1~14において505以下であった。
【0213】
金属担持触媒のメソ/マクロ細孔面積比は、例1~19において26以上であり、例1~17において52以上であり、例1~14において54以上であった。また、金属担持触媒のメソ/マクロ細孔面積比は、例1~19において313以下であり、例2~14において119以下であった。
【0214】
金属担持触媒のミクロ/メソ細孔面積比は、例1~19において0.7以上であり、例1~17において1.8以上であった。また、金属担持触媒のミクロ/メソ細孔面積比は、例1~19において8.3以下であり、例1~14、17~19において4.3以下であった。
【0215】
金属担持触媒の(ミクロ+メソ)/マクロ細孔面積比は、例1~19において44以上であり、例1~17において154以上であった。また、金属担持触媒の(ミクロ+メソ)/マクロ細孔面積比は、例1~19において2272以下であり、例1~15、17~19において624以下であった。
【0216】
金属担持触媒の比表面積/ミクロ孔面積比は、例1~19において0.8以上であった。また、金属担持触媒の比表面積/ミクロ孔面積比は、例1~19において2.1以下であり、例1~17において1.1以下であった。
【0217】
金属担持触媒の比表面積/メソ孔面積比は、例1~19において1.4以上であり、例1~17において1.9以上であった。また、金属担持触媒の比表面積/メソ孔面積比は、例1~19において8.8以下であり、例1~14、18及び19において4.2以下であった。
【0218】
金属担持触媒の比表面積/マクロ孔面積比は、例1~19において38以上であり、例1~17において109以上であった。また、金属担持触媒の比表面積/マクロ孔面積比は、例1~19において1505以下であり、例1~15、17~19において496以下であった。
【0219】
金属担持触媒のBJHミクロ孔容積は、例1~19において0.08cm/g以上であり、例1~17において0.25cm/g以上であり、例1~16において0.34cm/g以上であった。また、金属担持触媒のBJHミクロ孔容積は、例1~19において0.65cm/g以下であった。
【0220】
金属担持触媒のBJHメソ孔容積は、例1~19において0.14cm/g以上であり、例1~14、18及び19において0.26cm/g以上であった。また、金属担持触媒のBJHメソ孔容積は、例1~19において0.75cm/g以下であった。
【0221】
金属担持触媒のBJHマクロ孔容積は、例1~19において0.01cm/g以上であり、例1~15、18及び19において0.05cm/g以上であった。
【0222】
金属担持触媒のメソ/ミクロ細孔容積比は、例1~19において0.35以上であった。また、金属担持触媒のメソ/ミクロ細孔容積比は、例1~19において6.63以下であり、例1~17において1.44以下であった。
【0223】
図2には、例1~例19及び例C1~例C4のそれぞれについて、金属担持触媒に含まれる炭素担体、当該炭素担体に担持された触媒金属(図中の「担持金属」)、金属担持触媒のICP-MSによる貴金属含有量(重量%)(図中では「wt%」)、非貴金属含有量(重量%)、原料金属(重量%)、非貴金属/貴金属重量比(-)、Fe含有量(重量%)、Zn含有量(重量%)、Co含有量(重量%)、Ni含有量(重量%)、Cu含有量(重量%)、及びFe/非貴金属重量比(-)、XPSによる貴金属含有量(重量%)、非貴金属含有量(重量%)、非貴金属/貴金属重量比(-)、Fe含有量(重量%)、Zn含有量(重量%)、Co含有量(重量%)、Ni含有量(重量%)、及びCu含有量(重量%)、貴金属-XPS/ICP重量比(-)、非貴金属-XPS/ICP重量比(-)、Fe-XPS/ICP重量比(-)、Zn-XPS/ICP重量比(-)、Co-XPS/ICP重量比(-)、Ni-XPS/ICP重量比(-)、Cu-XPS/ICP重量比(-)、XPS-N/C比、XPS-O/C比、及びラマン-D/G強度比を示す。
【0224】
図2に示すように、金属担持触媒のICP貴金属含有量は、例1~19において1.043重量%以上であった。また、金属担持触媒のICP貴金属含有量は、例1~19において22.046重量%以下であった。
【0225】
金属担持触媒のICP非貴金属含有量は、例1~19において0.128重量%以上であった。また、金属担持触媒のICP非貴金属含有量は、例1~19において29.330重量%以下であった。
【0226】
金属担持触媒のICP原料金属含有量は、例1~19において0.070重量%以上であった。また、金属担持触媒のICP原料金属含有量は、例1~19において8.545重量%以下であり、例1~17において0.983重量%以下であり、例1~14において0.492重量%以下であった。
【0227】
金属担持触媒のICP-Fe含有量は、例1~19において15.666重量%以上であり、例1~9、11~19において8.545重量%以下であり、例1~9、11~17において0.921重量%以下であり、例1~8、11~14において0.150重量%以下であった。
【0228】
金属担持触媒のICP非貴金属/貴金属重量比は、例1~19において0.028以上であり、例2~19において0.218以上であった。また、ICP非貴金属/貴金属重量比は、例1~19において18.824以下であった。
【0229】
金属担持触媒のICP-Fe/非貴金属重量比は、例1~19において0.004以上であった。また、金属担持触媒のICP-Fe/非貴金属重量比は、例1~19において0.996以下であり、例2~8、11~19において0.291以下であり、例2~8、11~17において0.047以下であり、例2~8、11~14において0.007以下であった。
【0230】
金属担持触媒のXPS貴金属含有量は、例1~19において0.18重量%以上であった。また、金属担持触媒のXPS貴金属含有量は、例1~19において13.40重量%以下であり、例1~10、15、16、18及び19において1.10重量%以下であり、例1~10、15及び18において0.77重量%以下であった。
【0231】
金属担持触媒のXPS非貴金属含有量は、例1~19において0.51重量%以上であった。また、金属担持触媒のXPS非貴金属含有量は、例1~19において11.06重量%以下であり、例1~16、18及び19において4.88重量%以下であった。
【0232】
金属担持触媒のXPS非貴金属/貴金属重量比は、例1~19において0.36以上であった。また、金属担持触媒のXPS非貴金属/貴金属重量比は、例1~19において12.09以下であった。
【0233】
金属担持触媒の貴金属-XPS/ICP重量比は、例1~19において0.04以上であった。また、金属担持触媒の貴金属-XPS/ICP重量比は、例1~19において0.61以下であり、例1~10、18及び19において0.17以下であった。
【0234】
金属担持触媒の非貴金属-XPS/ICP重量比は、例1~19において0.10以上であった。また、金属担持触媒の非貴金属-XPS/ICP重量比は、例1~例19において6.03以下であり、例2~19において0.63以下であり、例2~8、10~16、18及び19において0.36以下であった。
【0235】
金属担持触媒のXPS-N/C比は、例1~19において0.5以上であり、例1~17において1.9以上であった。また、金属担持触媒のXPS-N/C比は、例1~19において3.2以下であった。
【0236】
金属担持触媒のXPS-O/C比は、例1~19において4.7以上であった。また、金属担持触媒のXPS-O/C比は、例1~19において11.6以下であった。
【0237】
金属担持触媒のラマン-D/G強度比は、例1~19において0.92以上であった。また、金属担持触媒のラマン-D/G強度比は、例1~19において1.05以下であり、例1~17において1.03以下であった。
【0238】
[他の水素製造例]
上述の例では、水素生成原料としてエタノールを用い、加熱温度500℃にて水素の製造を実施したが、他の水素生成原料を用いて、及び/又は、他の加熱温度においても水素の製造を実施した。
【0239】
すなわち、例えば、300℃、400℃及び600℃の加熱温度にて、エタノールと例2の金属担持触媒とを接触させることによっても、水素が製造されることを確認した。また、300℃、400℃、500℃及び600℃の加熱温度にて、メタノールと例2の金属担持触媒とを接触させることによっても、水素が製造されることを確認した。さらに、400℃、500℃及び600℃の加熱温度にて、アンモニアと例2の金属担持触媒とを接触させることによっても、水素が製造されることを確認した。なお、いずれの場合も、加熱温度が高くなるにつれて、上述のようにして評価した水素生成速度(mmol/(min・g))が増加する傾向が確認された。

図1
図2