(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】コーティングされたガラス容器などのコーティングされたガラス製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/32 20060101AFI20231225BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20231225BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20231225BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231225BHJP
B32B 17/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C03C17/32 A
B05D3/02 Z
B05D7/00 E
B05D7/24 303A
B32B17/00
(21)【出願番号】P 2021510365
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 US2019047437
(87)【国際公開番号】W WO2020046665
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-17
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ニウ,ウェイジュン
(72)【発明者】
【氏名】スゥン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー,フレデリック クリスティアン
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/178584(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/075435(WO,A1)
【文献】特開2008-221201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C17/00-17/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされたガラス製品の製造方法であって、
ガラス製品の第1の面の少なくとも一部に水性コーティング混合物を施与するステップであって、前記水性コーティング混合物は、
前記水性コーティング混合物の少なくとも
60質量%の量の水、
前記水と混和するか前記水とエマルジョンを形成する、ポリマーまたはポリマー前駆体、および
前記水と混和するか前記水とエマルジョンを形成する金属酸化物前駆体
を含有するものとするステップと、
前記水性コーティング混合物を加熱して、前記ガラス製品の前記第1の面上に金属酸化物とポリマーとを含むコーティングを形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記コーティングされたガラス製品が、ガラス容器である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コーティングされたガラス容器が、医薬品包装である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記水性コーティング混合物の前記ポリマーが、フルオロポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記金属酸化物前駆体が、有機チタン酸塩を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記金属酸化物前駆体が、有機金属キレートを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングの前記金属酸化物が、チタニアを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
有機溶媒が存在する場合、有機溶媒対水の質量比が、
1未満:10である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングの前記ポリマーが、少なくとも
250℃の温度で実質的に分解しない、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記コーティングが、
0.7以下の摩擦係数を有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記水性コーティング混合物の前記ポリマーが、ポリイミド、ポリイミドアミド、またはポリアミック酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
コーティングされた医薬品包装の製造方法であって、
ガラス容器の第1の面の少なくとも一部に水性コーティング混合物を施与するステップであって、前記水性コーティング混合物は、
前記水性コーティング混合物の少なくとも
60質量%の量の水、
前記水と混和するか前記水とエマルジョンを形成する、ポリマーまたはポリマー前駆体、および
前記水と混和するか前記水とエマルジョンを形成する金属酸化物前駆体
を含有するものとするステップと、
前記水性コーティング混合物を加熱して、前記ガラス容器の前記第1の面上に金属酸化物とポリマーとを含むコーティングを形成するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記水性コーティング混合物の前記ポリマーが、フルオロポリマーを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記金属酸化物前駆体が、有機チタン酸塩を含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記金属酸化物前駆体が、有機金属キレートを含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記コーティングの前記金属酸化物が、チタニアを含む、請求項12記載の方法。
【請求項17】
有機溶媒が存在する場合、有機溶媒対水の質量比が、
1未満:10である、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記コーティングの前記ポリマーが、少なくとも
250℃の温度で実質的に分解しない、請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記コーティングが、
0.7以下の摩擦係数を有する、請求項12記載の方法。
【請求項20】
前記水性コーティング混合物の前記ポリマーが、ポリイミド、ポリイミドアミド、またはポリアミック酸を含む、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第120条のもと、2018年8月31日に出願された米国仮出願第62/725500号明細書の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本明細書の1つ以上の実施形態は、概して、ガラス製品、より具体的にはガラス表面にコーティングを設けるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
歴史的に、ガラスは、その気密性、光学的透明性、および他の材料と比較した優れた耐薬品性ゆえ、医薬品を包装するための好ましい材料として使用されてきた。具体的には、医薬品包装において使用されるガラスは、中に収容される医薬組成物の安定性に影響を及ぼさないように、十分な耐薬品性を有していなければならない。適切な耐薬品性を有するガラスとしては、耐薬品性についての実績を有するASTM規格「タイプ1B」の範囲のガラス組成物が挙げられる。
【0004】
しかしながら、そのような用途でのガラスの使用は、ガラスの機械的性能によって制限される。製薬業界では、破損した包装および/または包装の内容物が最終使用者に怪我をさせるおそれがあることから、ガラスの破損は最終使用者にとって安全上の懸念事項である。さらに、完全な破壊ではない破損(すなわちガラスに亀裂が入っているが割れてはいない場合)は、内容物の無菌状態が失われるおそれがあり、ひいてはコストのかかる製品リコールが発生するおそれがある。
【0005】
具体的には、ガラス製の医薬品包装の製造および充填に利用される高い処理速度は、包装が処理装置、取扱い装置、および/または他の包装と接触する際に、摩耗などの包装表面の機械的損傷を生じさせるおそれがある。この機械的損傷により、ガラス製医薬品包装の強度が大幅に下がり、ガラスに亀裂が発生するおそれが高くなり、包装の中に収容される医薬品の無菌状態が損なわれたり、包装が完全に破損したりするおそれがある。
【0006】
ガラス包装の機械的耐久性を改善するための1つの手法は、ガラス包装を熱および/または化学強化することである。熱強化は、成形後の急冷中に表面圧縮応力を誘発することによってガラスを強化する。この技術は、平坦な形状のガラス製品(窓など)、約2mmを超える厚さを有するガラス製品、および大きい熱膨張を有するガラス組成物でよく効果を発揮する。しかしながら、医薬品のガラス包装は、典型的には複雑な形状(バイアル、管状、アンプルなど)を有しており、薄肉(場合によっては約1~1.5mm)であり、また低膨張ガラスから製造されるため、ガラス製の医薬品包装は、従来の熱強化による強化には不適切である。化学強化も、表面圧縮応力の導入によってガラスを強化する。応力は、物品を溶融塩の浴の中に沈めることによって導入される。ガラス由来のイオンが溶融塩由来のより大きなイオンに置き換わるのに伴って、ガラス表面に圧縮応力が生じる。化学強化の利点は、複雑な形状や薄いサンプルに使用可能であり、ガラス基材の熱膨張特性の影響を比較的受けにくいことである。
【0007】
しかしながら、前述した強化技術は、鈍い衝撃に耐えるよう強化ガラスの能力を改善するものの、これらの技術は、製造、出荷、および取扱い中に発生するおそれがある擦り傷などの摩耗に対するガラスの耐久性の改善にはさほど有効ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、機械的損傷に対する耐久性が改善された代替のガラス製品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、ガラス容器などのガラス製品用のコーティングが記述される。一実施形態によれば、コーティングされたガラス製品は、ガラス製品の第1の面の少なくとも一部に水性コーティング混合物を施与するステップと、水性コーティング混合物を加熱して、ガラス製品の第1の面上にコーティングを形成するステップとを含む方法によって製造することができ、このコーティングは、金属酸化物とポリマーとを含む。水性コーティング混合物は、水性コーティング混合物の少なくとも50質量%の量の水と、ポリマーまたはポリマー前駆体と、金属酸化物前駆体とを含み得る。ポリマーまたはポリマー前駆体は、水と混和することができ、あるいは水とエマルジョンを形成することができる。金属酸化物前駆体は、水と混和することができ、あるいは水とエマルジョンを形成することができる。
【0010】
別の実施形態によれば、コーティングされたガラス容器は、ガラス容器の第1の面の少なくとも一部に水性コーティング混合物を施与するステップと、水性コーティング混合物を加熱して、ガラス容器の第1の面上にコーティングを形成するステップとを含む方法によって製造することができ、このコーティングは、金属酸化物とポリマーとを含む。水性コーティング混合物は、水性コーティング混合物の少なくとも50質量%の量の水と、ポリマーまたはポリマー前駆体と、金属酸化物前駆体とを含み得る。ポリマーまたはポリマー前駆体は、水と混和することができ、あるいは水とエマルジョンを形成することができる。金属酸化物前駆体は、水と混和することができ、あるいは水とエマルジョンを形成することができる。
【0011】
ガラス製品のコーティングに使用され得るコーティング、コーティングされたガラス製品、およびこれを製造するための方法およびプロセスの追加の特徴および利点は、以降の発明を実施するための形態に記載されており、一部は本明細書から当業者には明らかであり、あるいは以降の発明を実施するための形態、特許請求の範囲、および添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0012】
前述の一般的な説明および以降の詳細な説明の両方が様々な実施形態を説明しており、特許請求の範囲に記載の主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供が意図されていることを理解すべきである。添付の図面は、様々な実施形態を深く理解するために含められており、本明細書に組み込まれており、また本明細書の一部を構成する。図面は、本明細書に記載の様々な実施形態を示しており、説明と共に、特許請求の範囲に記載の主題の原理および操作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書に示されており説明されている1つ以上の実施形態による、コーティングを有するガラス容器の概略的な断面図である。
【
図2】本明細書に示されており説明されている1つ以上の実施形態による、単層コーティングを有する
図1のガラス容器の概略的な拡大断面図である。
【
図3】本明細書に示されており説明されている1つ以上の実施形態による、2つの表面間の摩擦係数を決定するための試験治具の概略図である。
【
図4】本明細書に示されており説明されている1つ以上の実施形態による、コーティングされたガラス容器の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図5】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、コーティングされたバイアルおよびコーティングされていないバイアルの光透過率データである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以降でコーティング、コーティングを有するガラス製品、およびそれらの製造方法の様々な実施形態について詳しく言及し、それらの例を図面において概略的に示す。本明細書に記載のコーティングおよびコーティングされた物品は、水性コーティング混合物を利用するプロセスによって製造することができる。水性コーティング混合物は、医薬品包装のようなガラス容器の外面などのガラス基材に施与することができ、次いで水性コーティング混合物を加熱することができる。加熱ステップは、水性コーティング混合物の水を逃がし、水性コーティング混合物の1つ以上の成分を反応させることによって、ガラス基材上に固体コーティングを形成することができる(本明細書では「硬化」と呼ぶ場合もある)。例えば、水性コーティング混合物は、ポリマーまたはポリマー前駆体、および接着促進剤として利用され得る有機チタン酸塩を含み得る。ポリマーまたはポリマー前駆体および有機チタン酸塩のそれぞれは、水性コーティング混合物中で混和することができ、あるいはエマルジョンを形成することができる。いくつかの従来のコーティングの場合のような有機溶媒ではなく水を利用することにより、複数の利点が存在し得る。例えば、そのような有機溶媒、特に大規模製造で必要とされる大量の有機溶媒は、処分が困難な場合があるため、および/または製造施設における労働者に有害な状態を引き起こすおそれがあるため、水性コーティング混合物はより「環境に優しい」ものとすることができる。さらに、水性コーティング混合物の使用では環境中の水分は問題とはならないため、水性コーティング混合物の使用は有機溶媒系のコーティング混合物に対して改善され得る。例えば、環境中の水分は、従来の有機溶媒系のコーティング系に影響を及ぼす場合がある。そのため、本明細書では、比較的大量の有機溶媒を利用するコーティング系に対して1つ以上の利点を有し得る水性コーティングを利用する、コーティングされたガラス容器などのコーティングされたガラス製品の製造方法が記述される。
【0015】
そのようなコーティングされたガラス製品は、限定するものではないが医薬品包装などの様々な包装用途における使用に適したガラス容器とすることができる。コーティングされたガラス製品は、本開示に記載のコーティングされた医薬品包装を指す場合があることを理解する必要がある。1つ以上の実施形態では、コーティングおよび/またはコーティングされた医薬品包装は、最初のコーティングの施与および硬化の後、それらが本開示の以降で説明されるパイロジェン除去プロセスまたは凍結乾燥中に利用されるものなどの周囲温度ではない温度(熱的処理または熱処理と呼ぶ場合もある)にさらされた場合に熱的に安定である。例えば、本明細書に記載のコーティングされたガラス製品は、熱処理後のそれらの低い摩擦係数を十分に保持することができ、そのような熱処理後の色が実質的に黄色ではないようにすることができる。これらの医薬品包装には、医薬組成物が含まれていてもいなくてもよい。
【0016】
コーティング、コーティングを有するガラス製品、およびそれらの形成方法の様々な実施形態は、添付の図面を具体的に参照しつつ本明細書でさらに詳しく説明される。本明細書に記載のコーティングの複数の実施形態はガラス容器の外面に設けられるが、本記載のコーティングは、非ガラス物質を含む多種多様な材料上のコーティングとして、およびガラスディスプレイパネルなどを含むがこれに限定されない容器以外の基材上のコーティングとして、使用され得ることを理解すべきである。
【0017】
通常、コーティングは、医薬品包装として使用され得る容器などのガラス製品の表面に設けることができる。コーティングは、摩擦係数の低下および耐損傷性の改善などの、コーティングされたガラス製品に有利な特性を付与することができる。摩擦係数の低下は、ガラスへの摩擦による損傷を軽減することにより、ガラス製品に改善された強度および耐久性を付与することができる。さらに、コーティングは、例えばパイロジェン除去、凍結乾燥、オートクレーブ処理などの医薬品の包装に利用される包装および包装前のステップ中に経るものなどの高温およびその他の条件にさらされた後に前述した改善された強度および耐久性を維持することができる。したがって、コーティングおよびコーティングを有するガラス製品を熱的に安定にすることができる。
【0018】
図1は、コーティングされたガラス製品、具体的にはコーティングされたガラス容器100の断面を概略的に示している。コーティングされたガラス容器100は、ガラス本体102およびコーティング120を含む。ガラス本体102は、外面108(すなわち第1の面)と内面110(すなわち第2の面)との間に延在するガラス容器壁104を有する。ガラス容器壁104の内面110は、コーティングされたガラス容器100の内部容積106を規定する。コーティング120は、ガラス本体102の外面108の少なくとも一部の上に配置される。本明細書において、コーティングは、基材とその基材の上に配置されたコーティングとの間に中間層が存在する場合など、基材と直接接触していない状態で基材の「上に配置」される場合がある。いくつかの実施形態では、コーティング120は、ガラス本体102の実質的に外面108全体の上に配置され得る。
図1に示されているものなどのいくつかの実施形態では、コーティング120は外面108でガラス本体102に付着することができる。コーティング120は、外面122、およびガラス本体102とコーティング120との界面のガラス本体接触面124を有する。
【0019】
一実施形態では、コーティングされたガラス容器100は医薬品包装である。例えば、ガラス本体102は、バイアル、アンプル、ボトル、フラスコ、薬瓶、ビーカー、バケツ、カラフ、バット、注射器本体などの形状とすることができる。コーティングされたガラス容器100は、任意の組成物を収容するために使用することができ、一実施形態では、医薬組成物を収容するために使用することができる。医薬組成物としては、疾患の医学的診断、治療、処置、または予防において使用することを目的とした任意の化学物質を挙げることができる。医薬組成物の例としては、限定するものではないが、薬剤、薬物、治療薬、処方薬、医薬品などが挙げられる。医薬組成物は、液体、固体、ゲル、懸濁液、粉末などの形態であってよい。
【0020】
ここで
図1および
図2を参照すると、一実施形態では、コーティング120は、本明細書で「モノレイヤー」構造と呼ばれることもある単層構造を含み得る。例えば、コーティング120は、1種以上の金属酸化物と混合された1種以上のポリマーの実質的に均一な組成物を有し得る。別の実施形態では、混合物は、混合されてはいるものの完全に均一ではない。例えば、1つ以上の実施形態では、混合物の1つ以上の化学成分は、コーティング120の界面(例えばガラス本体102または外面122との界面)に偏る場合がある。そのような実施形態では、化学成分の局所濃度は、コーティング120の異なる領域で異なる場合がある。しかしながら、本明細書で使用される「混合」という用語は、少なくとも2種の化学成分の少なくともある程度の分散性を有する層を指し、完全には均一ではない層を含むと理解すべきである。通常、混合層は、水性コーティング混合物中に含まれる2種以上の化学成分の混合物として堆積される。本明細書に記載の一部のコーティングでは、コーティングが単一の水性コーティング混合物において施与されたとしても2つの別個の層が形成され得ることが想定されている。例えば、いくつかのコーティングは、ガラス本体102と接触する金属酸化物の内層を形成することができ、ポリマーを内層の上方の層に配置することができる。
【0021】
本明細書に記載のように、コーティング120は、少なくとも金属酸化物とポリマーとを含有する混合組成物を含み得る。通常、ポリマーは、少なくとも約250℃、少なくとも約260℃、少なくとも約280℃、さらには少なくとも約300℃で約30分間などのパイロジェン除去に適した温度にさらされた際にほとんどまたは全く分解しない熱的に安定なポリマーとすることができる。いくつかの実施形態では、金属酸化物は、TiO2(チタニア)、ZrO2(ジルコニア)、Al2O3(アルミナ)、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。
【0022】
コーティング120は、1種以上の金属酸化物前駆体と、1種以上のポリマーまたはポリマー前駆体とを含む水性コーティング混合物においてガラス本体102に施与することができる。「水性コーティング混合物」とは、ガラス本体102に施与される金属酸化物前駆体およびポリマー(またはポリマー前駆体)を含有する液体混合物を指す。本明細書に記載の水性コーティング混合物は、水性コーティング混合物の少なくとも50質量%の量の水を含む。複数の実施形態では、水性コーティング混合物中の水の量は、水性コーティング混合物の総質量を基準として少なくとも60質量%、少なくとも70質量%、少なくとも80質量%、さらには少なくとも90質量%とすることができる。通常、有機溶媒は水性コーティング混合物に存在しないか、比較的少量で存在する。例えば、水性コーティング混合物が何らかの有機溶媒を含有する場合、それらは、1:10未満、1:25未満、1:50未満、さらには1:100未満の有機溶媒:水の質量比で存在し得る。そのようなコーティング混合物は、コーティング混合物中に既に水が存在するため空気中の水分の影響を受けないことから有利な場合がある。加えて、有機溶媒の量が最小限であるか存在しないことにより、廃棄および/または空気の品質の維持を容易にすることができる。例えば、フードおよびまたは換気を必要としないようにすることができ、あるいはこれらを減らすことができる。1つ以上の実施形態では、水性コーティングは、5質量%未満、1質量%未満、さらには0.1質量%未満の、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、アセトン、ブタノール、ジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、ジメトキシエタン、ジメルカプトコハク酸、またはn-メチル-2-ピロリドンなどの1種以上の有機溶媒を含み得る。そのような有機溶媒は、望ましくはコーティング混合物に含まれないようにすることができ、あるいは少量含まれてよい。
【0023】
水性コーティング混合物は、通常金属酸化物前駆体およびポリマー(またはポリマー前駆体)と共に少なくとも水を含有する。本明細書で使用される「前駆体」は、コーティングされた物品100への施与および加熱後にコーティング120の構成要素となる材料を含む化学成分を指す。すなわち、前駆体の原子のうちの少なくとも一部は、形成されるコーティングの原子になる。例えば、金属酸化物前駆体は、加熱中に混合物から生じる可能性がある有機部位と共に、金属酸化物の化学成分(すなわち金属原子および酸素原子)を含み得る。加熱により、金属酸化物前駆体が部分的にまたは完全に加水分解されて金属酸化物が生じ得る。ポリマー前駆体は、熱または別の適切な硬化環境下での硬化時に部分的にまたは完全に重合するか、その他の反応を行う非重合性の化学成分を含み得る。例えば、ポリアミック酸は、熱による硬化中にイミド化してポリイミドを形成するため、ポリマー前駆体とみなされる。加熱により、より短い鎖のポリマーが架橋するか、他の形で互いに結合する場合もある。本明細書において、「完全には重合されていない」前駆体材料は、ポリマー状態で存在し得るが、イミド化などの特定の高分子結合を形成するための追加の処理を必要とする場合がある。様々な実施形態において、水性コーティング混合物中に2種以上の金属酸化物前駆体が含まれ得ることを理解する必要がある。同様に、様々な実施形態において、2種以上のポリマー、ポリマー前駆体、またはその両方が、水性コーティング混合物に含まれ得る。さらに、様々な金属酸化物前駆体材料が、オリゴマーまたは加水分解物として水性コーティング混合物中に存在し得ることを理解する必要がある。明細書に開示の全ての金属酸化物前駆体材料について、それらのオリゴマーおよび加水分解物形態が適切な金属酸化物前駆体として想定されていることを理解する必要がある。
【0024】
1つ以上の実施形態では、コーティング120の金属酸化物は、チタニア、ジルコニウム、アルミナ、またはそれらの組み合わせを含み得る。しかしながら、その他の金属酸化物が本明細書では想定される。そのような金属酸化物は、ガラスとポリマーとの間の接着を促進することができ、それに加えて擦り傷または他の摩耗による欠陥を防止する比較的硬い材料とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、金属酸化物前駆体が水性コーティング混合物中に含まれていない場合には、ポリマーはガラスから剥離し易い場合がある。1つ以上の実施形態では、コーティング120の金属酸化物は、水性コーティング混合物中の金属酸化物前駆体に由来する。金属酸化物前駆体は、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、または有機アルミニウム化合物などの有機金属であってよい。本明細書に記載の金属酸化物前駆体は、水性コーティング混合物中の水と混和することができ、あるいは水とエマルジョンを形成することができる。本明細書に記載の水と混和可能な物質は、水性コーティング混合物の水に溶解するか、あるいは完全に均一な混合物を形成する物質である。さらに、本明細書に記載の水とエマルジョンを形成する物質は、水性コーティング混合物の水とエマルジョンを形成するものである。金属酸化物前駆体化合物は、水中での全ての濃度で混和性であるわけではなく、あるいはエマルジョンを形成するわけではないことを理解する必要がある。どちらかといえば、水性コーティング混合物中に存在する水とある濃度で混和するかエマルジョンを形成すれば十分である。例えば、水中で非常に高濃度では水との混和性を有さない材料が、水性コーティング混合物中に存在するその濃度で水と混和性であった場合には、やはり水性コーティング混合物の水と混和性であるとみなされるであろう。
【0025】
1つ以上の実施形態では、金属酸化物前駆体は、チタンキレートであってよい。例えば、金属酸化物前駆体は、キレート剤として乳酸(アンモニウム塩)を有するチタンキレート、例えば、チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシド(Dorf KetalからTYZOR LAとして市販)とすることができる。追加の実施形態によれば、金属酸化物前駆体は、チタン(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシド(Dorf KetalからTYZOR TEとして市販)とすることができる。追加の実施形態では、水性コーティング混合物への配合には有機チタン酸塩Ti(OCH(CH3)2)4(Dorf KetalからTyzor 131として市販)が適している場合がある。追加の実施形態では、金属酸化物は、ジルコニウム含有金属酸化物前駆体から形成されたジルコニアとすることができる。追加の実施形態では、金属酸化物は、アルミニウム含有金属酸化物前駆体から形成されたアルミナとすることができる。本明細書では、水中で混和性であるかエマルジョンを形成する他の金属酸化物前駆体が想定されることを理解する必要がある。何らかの特定の理論に拘束されるものではないが、より多くの数の酸素原子および/もしくは窒素原子ならびに/またはより大きい電荷を含む配位子を含む金属酸化物前駆体は、水性コーティング混合物中で混和することができる、あるいはエマルジョンを形成することができると考えられる。そのため、金属酸化物前駆体の複数の実施形態は、そのような酸素原子(1分子あたり2つ以上など)、窒素原子(1分子あたり少なくとも1つなど)、および/または大きい電荷(2+以上など)を含み得る。
【0026】
上述したように、1つ以上の実施形態では、コーティング120は、金属酸化物に加えてポリマー成分も含む。そのようなポリマーは、水性コーティング混合物中に含まれるか、水性コーティング混合物中のポリマー前駆体から誘導される。水性コーティング混合物のポリマーおよび/またはポリマー前駆体は、水性コーティング混合物の水中で混和することができ、あるいはエマルジョンを形成することができる。1つ以上の実施形態では、コーティングのポリマー(例えば加熱後にポリマー前駆体から誘導されるポリマー)は、少なくとも約250℃、少なくとも約260℃、少なくとも約280℃、さらには少なくとも約300℃などの高温で実質的に分解しない任意のポリマーまたはポリマーの組み合わせとすることができる。本明細書においては、ポリマーは、その質量の少なくとも約5%を失っていない場合には、「実質的に分解」していない。例えば、所定の温度でポリマーが実質的に分解するか否かを調べるために、TGA試験を利用することができる。ポリマーは、初期硬化後の熱処理で実質的に分解しないはずであり、硬化処理は、コーティングまたはポリイミドなどのコーティング材料の熱安定性を確認するために利用される熱処理を構成しないことを理解する必要がある。例えば、コーティング120中に含まれ得るポリマーとしては、ポリイミド、フルオロポリマー、および/またはポリアミドイミドを挙げることができる。
【0027】
1つ以上の実施形態では、水性コーティング混合物は、フルオロポリマーまたはフルオロポリマーの前駆体を含む。限定するものではないが、ポリテトラフルオロエチレンが水性コーティング混合物に入れるための適切なポリマーであると見込まれる。追加の実施形態では、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)およびテトラフルオロエチレン-パーフルオロプロピレン(FEP)を水性コーティング混合物の中に配合することができる。
【0028】
追加の実施形態では、ポリマーは、水中で部分的にまたは完全にイミド化されたポリイミドとして水性コーティング混合物中に存在するポリイミドとすることができる。例えば、いくつかのフッ素化エマルジョン形成ポリイミドを水中で使用することができ、これは、イミド化状態で水性コーティング混合物中に存在し得る。
【0029】
別の実施形態では、ポリマーはポリマー前駆体から形成することができる。例えば、一部のポリイミドはポリイミド形態の溶液中で構造的に安定ではない場合があり、代わりに例えばジアミンモノマーと二無水物モノマーとから形成され得る非環化ポリイミド前駆体の場合があるポリアミック酸として溶液中でまたは水中のエマルジョンとして存在する。一般的に、ポリアミック酸は、イミド化された化学種になるために硬化されなければならない。そのような硬化は、ポリアミック酸を300℃で約30分以下、または300℃より高い温度、例えば少なくとも320℃、340℃、360℃、380℃、または400℃で加熱することを含み得る。より高い硬化温度はより短い硬化時間と対になり得ることが見込まれる。理論に拘束されるものではないが、硬化ステップは、カルボン酸部位とアミド部位との反応によってポリアミック酸をイミド化してポリイミドを形成すると考えられる。
【0030】
限定するものではないが、有機または無機充填剤を含むまたは含まないポリベンズイミダゾール、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリフェニル、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリビスチアゾール、およびポリ芳香族ヘテロ環ポリマーなどの他のポリマーが、水性コーティング混合物中での使用に適している場合がある。あるいは、これらのポリマーの前駆体が水性コーティング混合物の中に含まれ得る。
【0031】
1つ以上の実施形態では、水性コーティング混合物中の金属酸化物前駆体対ポリマーまたはポリマー前駆体(またはそれらの組み合わせ)の質量比は、50:1~1:1とすることができる。例えば、金属酸化物前駆体対ポリマーまたはポリマー前駆体(またはそれらの組み合わせ)の比は、20:1~5:1、15:1~10:1、または例えば約13:1とすることができる。これらの材料の量には、水と組み合わせて水性コーティング混合物を形成する前に材料が中に存在し得る溶媒が含まれないことを理解する必要がある。水と、金属酸化物前駆体、ポリマー、およびポリマー前駆体(固体)との質量比は、いくつかの実施形態では、少なくとも5:1、少なくとも7.5:1、さらには少なくとも10:1とすることができる。例えば、水性コーティング混合物は、少なくとも50質量%の水、少なくとも60質量%の水、少なくとも70質量%の水、少なくとも80質量%の水、少なくとも90質量%の水、またはさらには少なくとも95質量%の水を含み得る。水性コーティング混合物中の固形分の質量パーセントは、異なる厚さを有するコーティングを可能にするために変更できると考えられる。例えば、より大きい質量パーセントの水性コーティング混合物ほど、コーティング120をより厚く堆積させることができる。水は、金属酸化物を形成するための金属酸化物前駆体の加水分解を助けることによって、コーティング系にさらに寄与することができる。
【0032】
再度
図1および
図2を参照すると、水性コーティング混合物は、単一の堆積ステップで施与することができる。例えば、堆積は、浸漬プロセスによるものであってよく、あるいは水性コーティング混合物は噴霧または他の適切な手段によって施与することができ、任意選択的に乾燥される。本明細書に記載のコーティング120の適切な堆積方法の説明は、「Glass Articles with Low-Friction Coatings」という表題の米国特許出願公開第13/780,740号明細書の中で見ることができ、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。追加の実施形態では、複数回の堆積を利用することができる。例えば、複数の層の水性コーティング混合物の堆積を行ってから硬化させることができ、あるいは硬化した層の上に水性コーティング混合物の第2のコーティングが設けられるように硬化を各堆積ステップの後に行うことができる。
【0033】
水性コーティング混合物の堆積に続いて、水性コーティング混合物は、加熱などによって乾燥することができる。受動的な乾燥ステップによって、または制御された空気の流れまたは高温などの能動的な乾燥ステップによってのいずれかで、加熱により水性コーティング混合物の水の少なくとも一部を放出させることができる。コーティングされたガラス容器100は、その後、熱にさらすことによって硬化させることができる。本明細書に記載の「硬化」とは、水性コーティング混合物の材料を中間体または最終材料に変化させる任意のプロセス(通常は加熱による)を指す。例えば、いくつかの実施形態は、金属酸化物前駆体から構成成分を遊離させて金属酸化物を形成する加熱による硬化を利用する。本明細書に記載の硬化は、ポリマーの架橋またはポリマーの重合を伴う必要はない。例えば、ポリイミドと金属酸化物前駆体とを含有する前駆体組成物は、加熱により硬化して金属酸化物前駆体から一部の質量を放出して、金属酸化物を形成することができる。このような硬化は、コーティングされたバイアルを300℃で約30分以下、または300℃より高い温度、例えば少なくとも320℃、340℃、360℃、380℃、または400℃の温度で加熱することを含み得る。硬化条件は、使用する前駆体材料の種類に依存し得る。理論に拘束されるものではないが、硬化ステップは、金属酸化物前駆体の水有機成分を遊離させ、チタニア、アルミナ、またはジルコニアなどの金属酸化物を形成すると考えられる。さらに、硬化ステップは、ポリアミック酸のイミド化など、ポリマー前駆体を部分的にまたは完全に重合することができる。また、硬化ステップは、水性コーティング混合物の水などの残りの溶媒も遊離させる。
【0034】
ガラス本体102に施与されるコーティング120は、約100μm以下、約10μm以下、約8μm以下、約6μm、約4μm以下、約3μm以下、約2μm以下、さらには約1μm以下の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、コーティング120の厚さは、約800nm以下、約600nm以下、約400nm以下、約300nm以下、約200nm以下、さらには約100nm以下の厚さとすることができる。別の実施形態では、コーティング120は、約90nm未満の厚さ、約80nm未満の厚さ、約70nm未満の厚さ、約60nm未満の厚さ、約50nm未満、さらには約25nm未満の厚さとすることができる。複数の実施形態では、コーティング120は、少なくとも約10nm、少なくとも約15nm、少なくとも約20nm、少なくとも約25nm、少なくとも約30nm、少なくとも約35nm、少なくとも約40nm、さらには少なくとも約45nmの厚さを有し得る。例示的な実施形態は、約20nm~約50nm、約25nm~約45nm、または約30nm~約40nmの厚さを有し得る。理論に拘束されるものではないが、比較的薄いコーティング(すなわち20nm未満)ではガラスが十分に保護されないおそれがあり、バイアル間の接触中にガラス表面が浅割れすると考えられる。さらに、そのような比較的薄いコーティングは、パイロジェン除去プロセスに耐えられないおそれがある。他方で、比較的厚いコーティング(すなわち1マイクロメートル超)は、より損傷を受けやすい場合があり、コーティング内の摩耗痕がバイアル間の接触によって現れるおそれがある。比較的厚いコーティングの場合には、摩耗痕はガラスではなくコーティングの変形であると考えられることに留意する必要がある。本明細書に記載の摩耗痕は、コーティングの摩耗によって引き起こされる目に見える跡であり、跡または擦り傷を残す。いくつかの実施形態では、摩耗痕は、ガラスの浅割れおよび/または比較的高い摩擦係数(例えば0.7超)を意味し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、コーティング120は、ガラス本体102全体にわたって均一な厚さでなくてよい。例えば、コーティングされたガラス容器100は、コーティング120を形成する1つ以上のコーティング溶液とガラス本体102との接触プロセスに起因して、一部の領域でより厚いコーティング120を有し得る。いくつかの実施形態では、コーティング120は、不均一な厚さを有し得る。例えば、コーティングの厚さは、コーティングされたガラス容器100の異なる領域にわたって変化させることができ、これにより選択された領域での保護を促進することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、コーティングの中のポリマーと金属酸化物との組み合わせは、コーティングの少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%、少なくとも約95質量%、少なくとも約96質量%、少なくとも約97質量%、少なくとも約98質量%、少なくとも約99質量%、少なくとも約99.5質量%、少なくとも約99.8質量%、さらには少なくとも約99.9質量%含まれ得る。他の構成成分が存在しないいくつかの実施形態では、組み合わせのコーティング120は、金属酸化物とポリマーとの組み合わせから構成することができる。
【0037】
コーティング120が施与され得るガラス容器(例えば医薬品包装)などのガラス製品は、様々な異なるガラス組成物から形成することができる。ガラス製品の具体的な組成は、望まれる物理的特性の組み合わせをガラスが有するように具体的な用途に応じて選択することができる。1つ以上の実施形態によれば、ガラスは、アルカリホウケイ酸ガラスなどの耐薬品性および低い熱膨張性を示すことが知られている組成物とすることができる。別の実施形態によれば、ASTM規格E438-92によるタイプI、クラスBのガラスから形成することができる。
【0038】
ガラス容器は、約25×10-7/℃~80×10-7/℃の範囲の熱膨張係数を有するガラス組成物から形成することができる。例えば、本明細書に記載のいくつかの実施形態では、ガラス本体102は、イオン交換による強化を行いやすいアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物から形成される。そのような組成物は、一般に、SiO2、Al2O3、少なくとも1種のアルカリ土類酸化物、ならびにNa2Oおよび/またはK2Oなどの1種以上のアルカリ酸化物の組み合わせを含む。これらの実施形態のいくつかでは、ガラス組成物は、ホウ素およびホウ素含有化合物を含まなくてよい。いくつかの別の実施形態では、ガラス組成物は、例えばSnO2、ZrO2、ZnO、TiO2、As2O3などのような少量の1種以上の追加の酸化物をさらに含み得る。これらの成分は、清澄剤として、および/またはガラス組成物の耐薬品性をさらに高めるために添加することができる。別の実施形態では、ガラス表面は、SnO2、ZrO2、ZnO、TiO2、As2O3などを含む金属酸化物コーティングを含み得る。
【0039】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、ガラス本体102は、本明細書で「イオン交換ガラス」と呼ばれる、イオン交換強化などによって強化される。例えば、ガラス本体102は、約300MPa以上、さらには約350MPa以上の圧縮応力を有し得る。いくつかの実施形態では、圧縮応力は、約300MPa~約900MPaの範囲であってよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、ガラスの圧縮応力は、300MPa未満であってよく、あるいは900MPaを超えてよいことを理解する必要がある。いくつかの実施形態では、ガラス本体102は、20μm以上の層深さを有し得る。これらの実施形態のいくつかでは、層深さは、50μm超であってよく、さらには75μm以上であってよい。さらに別の実施形態では、層深さは、最大100μmまたは100μmを超えてよい。イオン交換強化は、約350℃~約500℃の温度に維持された溶融塩浴の中で行うことができる。望まれる圧縮応力を達成するために、ガラス容器(未コーティング)を塩浴中に約30時間未満、さらには約20時間未満浸漬することができる。例えば、一実施形態では、ガラス容器は450℃の100%のKNO3塩浴に約8時間浸漬される。
【0040】
一実施形態では、ガラス本体102は、Corning, Incorporatedに譲渡された「Glass Compositions with Improved Chemical and Mechanical Durability」という表題の係属中の出願である2012年10月25日出願の米国特許出願公開第13/660894号明細書の中に記載されているイオン交換可能なガラス組成物から形成することができる。
【0041】
しかしながら、本明細書に記載のコーティングされたガラス容器100は、限定するものではないが、イオン交換可能なガラス組成物およびイオン交換不可能なガラス組成物を含む他のガラス組成物から形成され得ることを理解する必要がある。例えば、いくつかの実施形態では、ガラス容器は、例えばショットタイプ1Bホウケイ酸ガラスなどのタイプ1Bのガラス組成物から形成することができる。
【0042】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、ガラス製品は、USP(米国薬局方)、EP(欧州薬局方)、およびJP(日本薬局方)などの規制機関によって記載されている耐加水分解性に基づいた医薬品ガラスの基準を満たすガラス組成物から形成することができる。ホウケイ酸ガラスは、USP660およびEP7によるタイプIの基準を満たし、非経口包装用に日常的に使用されている。ホウケイ酸ガラスの例としては、限定するものではないが、Corning(登録商標) Pyrex (登録商標)7740、7800、ならびにWheaton 180、200、および400、Schott Duran、Schott Fiolax、KIMAX(登録商標) N-51A、 Gerrescheimer GX-51 Flintなどが挙げられる。ソーダライムガラスはタイプIIIの基準を満たし、これは、溶液または緩衝液を製造するために後に溶解される乾燥粉末の包装に許容される。タイプIIIのガラスも、アルカリの影響を受けにくいことが分かっている液体製剤の包装に適している。タイプIIIのソーダライムガラスの例としては、Wheaton800および900が挙げられる。脱アルカリソーダライムガラスは、高レベルの水酸化ナトリウムと酸化カルシウムを有しており、タイプIIの基準を満たしている。これらのガラスは、タイプIのガラスよりも浸出に対する耐久性が低いものの、タイプIIIのガラスよりも耐久性を有している。タイプIIのガラスは、有効保存期間の間pH7未満のままである製品に使用することができる。例としては、硫酸アンモニウムで処理されたソーダライムガラスが挙げられる。これらの医薬品ガラスは様々な化学組成を有しており、20~85×107/℃の範囲の線熱膨張係数(CTE)を有している。
【0043】
本明細書に記載のコーティングされたガラス製品がガラス容器である場合、コーティングされたガラス容器100のガラス本体102は様々な異なる形態をとることができる。例えば、本明細書に記載のガラス本体は、バイアル、アンプル、カートリッジ、注射器本体、および/または医薬組成物を貯蔵するための他の任意のガラス容器などのコーティングされたガラス容器100を形成するために使用することができる。さらに、ガラス容器の機械的耐久性をさらに改善するために、コーティングする前にガラス容器を化学的に強化する能力を利用することができる。したがって、少なくとも1つの実施形態では、ガラス容器は、コーティングの施与前にイオン交換強化され得ることが理解されるべきである。あるいは、コーティングする前にガラスを強化するために、米国特許第7,201,965号明細書に記載されている熱強化、火炎研磨、およびラミネートなどの他の強化方法を使用することができるであろう。
【0044】
コーティングされたガラス容器の様々な特性(すなわち摩擦係数、水平圧縮強度、4点曲げ強度)は、コーティングされたガラス容器がコーティングされたままの状態で(すなわち該当する場合には硬化以外の追加の処理なしでコーティングの施与後に)、または限定するものではないが洗浄、凍結乾燥、パイロジェン除去、オートクレーブ処理などの医薬品充填ラインで行われる処理と同様または同一の処理などの1つ以上の加工処理の後に測定することができる。
【0045】
パイロジェン除去は、材料からパイロジェンが除去されるプロセスである。医薬品包装などのガラス製品のパイロジェン除去は、サンプルを高温に一定時間加熱するサンプルに対する熱処理によって行うことができる。例えば、パイロジェン除去は、限定するものではないが、ガラス容器を20分、30分、40分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、および72時間などの約30秒~約72時間の時間、約250℃~約380℃の温度まで加熱することを含み得る。熱処理後、ガラス容器は室温まで冷却される。製薬業界で一般的に採用されている従来のパイロジェン除去条件の1つは、約250℃の温度で約30分間の熱処理である。ただし、より高い温度が利用される場合には熱処理の時間が短縮され得ることが見込まれる。本明細書に記載のコーティングされたガラス容器は、一定期間、高温にさらすことができる。本明細書に記載の高温および加熱時間は、ガラス容器のパイロジェン除去に十分であってもなくてもよい。しかしながら、本明細書に記載の加熱の温度および時間のいくつかは、本明細書に記載のコーティングされたガラス容器などのコーティングされたガラス容器のパイロジェン除去に十分であることを理解する必要がある。例えば、本明細書に記載のように、コーティングされたガラス容器は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度に30分間さらされ得る。パイロジェン除去プロセスは30分以外の時間を有する場合があり、例えば規定されたパイロジェン除去条件への曝露後の摩擦係数試験などの比較目的のために、パイロジェン除去温度と共に本開示を通じて30分が使用されることが認識される。
【0046】
本明細書において、凍結乾燥条件(すなわち凍結乾燥)とは、サンプルをタンパク質含有液体で満たし、次いで-100℃などの低温で凍結し、その後真空下で-15℃などの温度で20時間などの時間水を昇華させるプロセスを指す。
【0047】
本明細書において、オートクレーブ処理条件とは、100℃で10分間などの時間サンプルを蒸気パージし、続いてサンプルが121℃の環境に曝される20分間の休止時間の後、121℃で30分間の熱処理を行うことを指す。
【0048】
コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数(μ)は、同じガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス容器の表面よりも低い摩擦係数を有し得る。摩擦係数(μ)は、2つの表面間の摩擦の定量的測定値であり、表面粗さなどの第1の面および第2の面の機械的および化学的特性、ならびに限定するものではないが温度や湿度のような環境条件などの関数である。本明細書において、コーティングされたガラス容器100の摩擦係数の測定値は、第1のガラス容器の外面(外径約16.00mm~約17.00mm)と、第1のガラス容器と実質的に同一である第2のガラス容器の外面との間の摩擦係数として報告され、これらの第1および第2のガラス容器は、同じ本体および同じコーティング組成(有する場合)を有し、製造前、製造中、および製造後に同じ環境に曝されたものである。本明細書において別段の記載がない限り、摩擦係数とは、本明細書に記載の通りにバイアルオンバイアル試験治具上で測定される30Nの垂直荷重を用いて測定された最大摩擦係数を指す。ただし、特定の加えられた荷重において最大摩擦係数を示すコーティングされたガラス容器は、より少ない荷重においても同じまたはよりよい(すなわちより低い)最大摩擦係数を示すことを理解する必要がある。例えば、コーティングされたガラス容器が50Nの印加荷重で0.5以下の最大摩擦係数を示す場合、コーティングされたガラス容器は25Nの印加荷重でも0.5以下の最大摩擦係数を示す。試験の開始時またはその付近の最大値は静的摩擦係数を表すことから、最大摩擦係数を測定するためには、試験開始時またはその付近の極大値は除外される。本明細書の複数の実施形態に記載の摩擦係数は、互いに対する容器の速度が約0.67mm/秒の際に測定した。
【0049】
本明細書に記載の複数の実施形態では、ガラス容器(コーティングありとなしの両方)の摩擦係数は、バイアルオンバイアル試験治具上で測定される。試験治具200は
図3に概略的に示されている。治具に配置された2つのガラス容器間の摩擦力を測定するために同じ装置を使用することもできる。バイアルオンバイアル試験治具200は、交差の構成(すなわち互いに対して垂直)で配置された第1のクランプ212と第2のクランプ222とを含む。第1のクランプ212は、第1の基部216に取り付けられた第1の固定アーム214を含む。第1の固定アーム214は、第1のガラス容器210に取り付けられており、第1のクランプ212に対して静止した状態で第1のガラス容器210を保持する。同様に、第2のクランプ222は、第2の基部226に取り付けられた第2の固定アーム224を含む。第2の固定アーム224は、第2のガラス容器220に取り付けられており、第2のクランプ222に対して静止した状態で第2のガラス容器220を保持する。第1のガラス容器210は第1のクランプ212上に配置され、第2のガラス容器220は、第1のガラス容器210の長軸と第2のガラス容器220の長軸とが、互いに対して約90°の角度の位置で、かつx-y軸によって規定される水平面上に配置されるように、第2のクランプ222上に配置される。
【0050】
第1のガラス容器210は、接触点230で第2のガラス容器220と接触して配置される。垂直力は、x-y軸によって規定される水平面に対して直交する方向に加えられる。垂直力は、静止している第1のクランプ212上で第2のクランプ222に加えられる静的な重りまたは他の力によって加えることができる。例えば、重りを第2の基部226の上に配置し、第1の基部216を安定面に配置し、その結果接触点230で第1のガラス容器210と第2のガラス容器220との間に測定可能な力が生じるようにすることができる。あるいは、力は、UMT装置(ユニバーサルメカニカル試験機)などの機械的装置を用いて加えることができる。
【0051】
第1のクランプ212または第2のクランプ222は、第1のガラス容器210および第2のガラス容器220の長軸に対して45°の角度の方向に、他方に対して動くことができる。例えば、第1のクランプ212は静止状態で保持することができ、第2のクランプ222は、第2のガラス容器220が第1のガラス容器210を横切ってx軸方向に移動するように動かすことができる。同様の構成は、R. L. De Rosaらによる“Scratch Resistant Polyimide Coatings for Alumino Silicate Glass surfaces” in The Journal of Adhesion, 78: 113-127, 2002の中に記載されている。摩擦係数を測定するためには、第2のクランプ222を動かすために必要とされる力、ならびに第1および第2のガラス容器210、220に加えられる垂直力がロードセルを用いて測定され、摩擦係数は、摩擦力を垂直力で割った商として計算される。治具は、25℃かつ相対湿度50%の環境で操作される。
【0052】
本明細書に記載の1つ以上の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分は、同様にコーティングされたガラス容器に対して約0.7以下の、上述したバイアルオンバイアル治具を用いて決定される摩擦係数を有する。別の実施形態では、摩擦係数は、約0.6以下、さらには約0.5以下とすることができる。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分は、約0.4以下、さらには約0.3以下の摩擦係数を有する。摩擦係数が約0.7以下のコーティングされたガラス容器は、通常、摩擦による損傷に対する改善された耐久性を示し、結果として改善された機械的特性を有する。例えば、従来のガラス容器(コーティングなし)は0.7を超える摩擦係数を有し得る。
【0053】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、同じガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス容器の表面の摩擦係数よりも少なくとも20%小さい。例えば、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、同じガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス容器の表面の摩擦係数よりも少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、さらには少なくとも50%小さくすることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度に30分間さらされた後に、約0.7以下の摩擦係数を有し得る。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度に30分間さらされた後に、約0.7以下(すなわち約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、さらには約0.3以下)の摩擦係数を有し得る。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、約250℃(または約260℃)の温度に30分間さらされた後に、約30%を超えて増加しないようにすることができる。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度に30分間さらされた後に、約30%を超えて(すなわち約25%、約20%、約15%、さらには約10%)増加しないようにすることができる。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度に30分間さらされた後に、約0.5を超えて(すなわち約0.45、約0.4、約0.35、約0.3、約0.25、約0.2、約0.15、約0.1、さらには約0.05)増加しないようにすることができる。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度に30分間さらされた後に全く増加しないようにすることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分は、約70℃の温度の水浴に10分間沈めた後に、約0.7以下の摩擦係数を有し得る。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分は、約70℃の温度の水浴に5分、10分、20分、30分、40分、50分、さらには1時間沈めた後に、約0.7以下(すなわち約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、さらには約0.3以下)の摩擦係数を有し得る。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、約70℃の温度の水浴に10分間沈めた後に、約30%を超えて増加しないようにすることができる。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、約70℃の温度の水浴に5分、10分、20分、30分、40分、50分、さらには1時間沈めた後に、約30%(すなわち約25%、約20%、約15%、さらには約10%)を超えて増加しないようにすることができる。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、約70℃の温度の水浴に5分、10分、20分、30分、40分、50分、さらには1時間沈めた後に全く増加しないようにすることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分は、凍結乾燥条件への曝露後に約0.7以下の摩擦係数を有し得る。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分は、凍結乾燥条件への曝露後に約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、さらには約0.3以下)の摩擦係数を有し得る。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に約30%を超えて増加しないようにすることができる。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に約30%(すなわち約25%、約20%、約15%、さらには約10%)を超えて増加しないようにすることができる。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に全く増加しないようにすることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分は、オートクレーブ処理条件への曝露後に約0.7以下の摩擦係数を有し得る。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分は、オートクレーブ処理条件への曝露後、約0.7以下(すなわち約0.6以下、約0.5以下、さらには約0.4以下、さらには約0.3以下)の摩擦係数を有し得る。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、オートクレーブ処理条件への曝露後に約30%を超えて増加しないようにすることができる。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、オートクレーブ処理条件への曝露後に約30%(すなわち約25%、約20%、約15%、さらには約10%)を超えて増加しないようにすることができる。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングされた部分の摩擦係数は、オートクレーブ処理条件への曝露後に全く増加しないようにすることができる。
【0058】
本明細書に記載のコーティングされたガラス容器は、水平圧縮強度を有する。本明細書に記載の水平圧縮強度は、ガラス容器の長軸に対して平行に配向された2枚の平行なプラテン間に、コーティングされたガラス容器100を水平に配置することによって測定される。次いで、ガラス容器の長軸に対して垂直な方向に、コーティングされたガラス容器100にプラテンを用いて機械的な負荷がかけられる。ガラス容器は、プラテン内に配置される前に、2インチ(約5.08センチメートル)のテープで包まれ、はみ出している部分は切り取られるか、容器の底部の周りに巻き付けられる。テープは、バイアルが破損した場合にガラス片を留めるために準備され、試験により決定される結果に影響を与えない。その後、容器は、試験体の周りにステープラーで留められたインデックスカード内に配置される。バイアル圧縮の荷重速度は0.5in(約12.7mm)/分である。これは、プラテンが0.5in(約12.7mm)/分の速度で互いに向かって移動することを意味する。水平圧縮強度は、25℃±2℃および50%±5%の相対湿度で測定される。いくつかの実施形態では、医薬品充填ラインの状態をシミュレートするために、パイロジェン除去の後1時間以内(および24時間以内)に水平圧縮試験を行うことが望ましい。水平圧縮強度は、破損時点の荷重の測定値であり、水平圧縮強度の測定値は、選択された垂直圧縮荷重における破損確率として示すことができる。本明細書における破損は、水平圧縮下でサンプルの少なくとも50%においてガラス容器が破裂した場合に発生する。したがって、水平圧縮はサンプルのグループに対して行われる。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器は、コーティングされていないバイアルよりも少なくとも10%、20%、または30%大きい水平圧縮強度を有し得る。
【0059】
ここで
図1および3を参照すると、水平圧縮強度測定は、摩耗したガラス容器に対しても行われ得る。具体的には、試験治具200の操作は、コーティングされたガラス容器100の強度を弱める表面の擦り傷や摩耗など、コーティングされたガラス容器の外面122に損傷を形成し得る。ガラス容器は、その後、上述した水平圧縮処置を受け、その際、容器は擦り傷をプラテンに対して平行に外側に向けるようにして2枚のプラテンの間に配置される。擦り傷は、バイアルオンバイアル治具によって加えられる選択された垂直方向の圧力と擦り傷の長さとによって特徴付けることができる。別段の指定がない限り、水平圧縮処置用の摩耗したガラス容器の擦り傷は、30Nの垂直荷重によって形成される20mmの擦り傷の長さによって特徴付けられる。プラテンに対して90°±5°の角度の擦り傷を有することが望ましいであろう。
【0060】
コーティングされたガラス容器は、熱処理後の水平圧縮強度について評価することができる。熱処理では、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度に30分間曝露することができる。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器の水平圧縮強度は、上述したような熱処理を行ってから上述した通りに摩耗させた後、約20%、30%、さらには40%を超えて低下しない。一実施形態では、コーティングされたガラス容器の水平圧縮強度は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度で30分間の熱処理を行ってから摩耗させた後、約20%を超えて低下しない。
【0061】
本明細書に記載のコーティングされたガラス製品は、パイロジェン除去、凍結乾燥、および/またはオートクレーブ処理などの熱処理への曝露後に熱的に安定にすることができ、その結果、熱処理への曝露後のコーティングされたガラス製品の機械的特性への影響は、あったとしても最小限のみである。例えば、そのような熱処理への曝露は、少なくとも250℃(または260℃、または280℃、または300℃)の温度に30分間加熱することを含み得る。本明細書で使用される「熱的に安定」という語句は、ガラス製品に施与されたコーティングが、熱処理(高温など)に曝露された後、ガラス製品表面で実質的に無傷のまま残り、その結果、曝露後のコーティングされたガラス製品の機械的特性、特に摩擦係数および水平圧縮強度への影響が、あったとしても最小限のみであることを意味する。これは、コーティングが高温にさらされた後にガラス表面に付着したままであり、摩耗や衝撃などの機械的損傷からガラス製品を保護し続けることを示す。
【0062】
本明細書に記載の複数の実施形態では、コーティングされたガラス製品は、規定の温度に加熱されてその温度で規定の時間維持された後、摩擦係数の基準と水平圧縮強度の基準との両方を満たす場合に、熱的に安定であるとみなされる。摩擦係数の基準を満たしているか否かを調べるために、第1のコーティングされたガラス製品の摩擦係数は、
図3に示されている試験治具および30Nの印加荷重を使用して、そのままの状態で(すなわち熱暴露の前に)決定される。第2のコーティングされたガラス製品(すなわち第1のコーティングされたガラス製品と同じガラス組成および同じコーティング組成を有するガラス製品)は、所定の条件下で熱に暴露され、室温まで冷却される。その後、第2のガラス製品の摩擦係数は、約20mmの長さの摩耗(すなわち「擦り傷」)が得られる30Nの印加荷重を用いて、コーティングされたガラス製品を摩耗させるための
図3に示されている試験治具を使用して決定される。第2のコーティングされたガラス製品の摩擦係数が0.7未満であり、かつ摩耗領域における第2のガラス製品のガラス表面が観察可能な損傷を有さない場合には、摩擦係数の基準は、コーティングの熱安定性を決定する目的にかなう。本明細書で使用される「観察可能な損傷」という用語は、LEDまたはハロゲン光源を備えた100倍の倍率のノマルスキーまたは微分干渉(DIC)分光顕微鏡で観察した場合に、ガラス製品の摩耗領域におけるガラスの表面が摩耗領域の長さ0.5cmあたり6個未満のガラスの浅割れを含むことを意味する。ガラスの浅割れまたはガラスのチェッキングの標準的な定義はG. D. Quinn, “NIST Recommended Practice Guide: Fractography of Ceramics and Glasses,” NIST special publication 960-17 (2006)に記載されている。
【0063】
水平圧縮強度の基準が満たされているか否かを調べるためには、第1のコーティングされたガラス製品は、20mmの擦り傷を形成するための
図3に示されている試験治具において30Nの荷重下で摩耗される。その後、第1のコーティングされたガラス製品は、本明細書に記載の水平圧縮試験にかけられ、第1のコーティングされたガラス製品の残留強度が決定される。第2のコーティングされたガラス製品(すなわち第1のコーティングされたガラス製品と同じガラス組成および同じコーティング組成を有するガラス製品)は、所定の条件下で熱に暴露され、室温まで冷却される。その後、第2のコーティングされたガラス製品は、
図3に示されている試験治具において30Nの荷重下で摩耗される。その後、第2のコーティングされたガラス製品は、本明細書に記載の水平圧縮試験にかけられ、第2のコーティングされたガラス製品の残留強度が決定される。第2のコーティングされたガラス製品の残留強度が第1のコーティングされたガラス製品と比較して約20%を超えて減少しない場合(すなわち破壊までの荷重が20%を超えて減少しない場合)には、水平圧縮強度の基準は、コーティングの熱安定性を決定する目的にかなう。
【0064】
本明細書に記載のコーティングされたガラス容器は、4点曲げ強度を有する。ガラス容器の4点曲げ強度を測定するためには、コーティングされたガラス容器100の前駆体であるガラス管が測定に利用される。ガラス管は、ガラス容器と同じ直径を有するが、ガラス容器の基部またはガラス容器の口を含まない(すなわち管をガラス容器へと形成する前である)。その際、ガラス管に対して4点曲げ応力試験を行い、機械的な損傷を誘発する。試験は、外側の接触部材を9インチ(約22.9センチメートル)離し、内側の接触部材を3インチ(約7.62センチメートル)離して、10mm/分の荷重速度で相対湿度50%にて行われる。
【0065】
4点曲げ応力測定は、コーティングして摩耗させた管に対しても行われ得る。試験治具200の動作は、摩耗したバイアルの水平圧縮強度の測定において記載されているように、管の強度を弱める表面擦り傷などの管表面上の摩耗を形成することができる。次に、ガラス管に対して4点曲げ応力試験を行い、機械的な損傷を誘発する。試験は、試験中に張力下で擦り傷がつくように管を配置して、9インチ(約22.9センチメートル)離された外側プローブと3インチ(約7.62センチメートル)離された内側接触部材とを使用して、10mm/分の荷重速度で、25℃および相対湿度50%で行われる。
【0066】
いくつかの実施形態では、コーティングを有するガラス管の摩耗後の4点曲げ強度は、同じ条件下で摩耗したコーティングされていないガラス管の機械的強度よりも平均で少なくとも10%、20%、さらには50%高い機械的強度を示す。
【0067】
いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器100を30Nの垂直力で同一のガラス容器によって摩耗させた後、コーティングされたガラス容器100の摩耗した領域の摩擦係数は、同じ地点で30Nの垂直力で同じガラス容器により別の摩耗が発生した後に約20%を超えて増加しないか、全く増加しない。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器100を30Nの垂直力で同一のガラス容器によって摩耗させた後、コーティングされたガラス容器100の摩耗した領域の摩擦係数は、同じ地点で30Nの垂直力で同じガラス容器によって別の摩耗が生じた後に約15%、さらには10%を超えて増加しないか、全く増加しない。ただし、コーティングされたガラス容器100の全ての実施形態がそのような特性を示す必要があるわけではない。
【0068】
コーティングされた容器の透明性および色は、分光光度計を使用して400~700nmの波長範囲内で容器の光透過率を測定することによって評価することができる。測定は、光線が容器の壁に対して垂直に向けられて、光線が容器に入るときの1回目とその後これから出るときの、2回、コーティングを通過するように行われる。いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器を通る光の透過率は、約400nm~約700nmの波長について、コーティングされていないガラス容器を通る(容器の2つの壁を通過する)光の透過率の約50%以上とすることができる。本明細書に記載の光透過率は、熱処理の前、または本明細書に記載の熱処理などの熱処理の後に測定することができる。例えば、約400nm~約700nmの各波長について、光透過率は、コーティングされていないガラス容器を通る光の透過率の約50%以上とすることができる。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器を通る光の透過率は、約400nm~約700nmの波長について、コーティングされていないガラス容器を通る光の透過率の約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、さらには約90%以上である。
【0069】
本明細書に記載の光透過率は、本明細書に記載の熱処理などの環境処理の前に、または環境処理の後に測定することができる。例えば、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、もしくは約400℃で30分間の熱処理の後に、または凍結乾燥条件への暴露の後に、またはオートクレーブ処理条件への暴露後に、コーティングされたガラス容器を通る光の透過率は、約400nm~約700nmの波長について、コーティングされていないガラス容器を通る光の透過率の約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%以上、さらには約90%以上である。
【0070】
いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器100は、任意の角度で見られた際に人間の肉眼に無色透明であると知覚され得る。いくつかの別の実施形態では、コーティング120は、コーティング120が有色ポリマーを含む場合など、知覚可能な色合いを有し得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、コーティングされたガラス容器100は、粘着ラベルを貼り付けることができるコーティング120を有し得る。すなわち、粘着ラベルがしっかりと貼り付くように、コーティングされたガラス容器100のコーティングされた表面上に粘着ラベルを貼ることができる。しかしながら、粘着ラベルが貼り付けられる能力は、本明細書に記載のコーティングされたガラス容器100の全ての実施形態についての要件というわけではない。
【実施例】
【0072】
コーティングを有するガラス製品の製造方法の様々な実施形態は、以下の実施例によってさらに明らかになるであろう。実施例は本質的に例示的であり、本開示の主題を限定するものと理解すべきではない。
【0073】
実施例1
23mLの水を2mLのTyzor TE(アルコール溶媒中の80質量%の有機チタン酸塩)と混合し、次いでその混合物を0.2mLのPTFEエマルジョン溶液(H2O中の60質量%分散液、Sigma 665800)と混合することによって、コーティング混合物を製造した。形成された溶液を振とうすることにより十分に混合した。このコーティング混合物は、未被覆のガラスバイアルを360℃で15分間置き、バイアルを室温まで冷却し、200mm/分の速度でバイアルをコーティング混合物で浸漬コーティングすることを含むプロセスによってガラスバイアルに施与した。その後、コーティング混合物が施与されたバイアルを、75℃で30分間、次いで420℃で30分間加熱した。加熱後、コーティングされたバイアルを室温まで冷却した。
【0074】
実施例2
実施例1のコーティングされたバイアルを、本明細書に記載の試験手順によって摩擦係数(COF)について試験した。6つのサンプル(サンプル1~6)は追加の加熱なしで試験し、6つの追加のサンプル(サンプル7~12)は335℃で6時間加熱した後(420℃で30分間硬化した後)に試験し、そして6つの追加のサンプル(サンプル13~18)は335℃で16時間加熱した後(420℃で30分間硬化した後)に試験した。この摩擦係数試験の結果は表1に示されている。コーティングされたバイアルの製造後に熱処理を受けたサンプルであっても、COFは比較的低い。
【0075】
【0076】
実施例3
実施例1のコーティングされたバイアルを、走査型電子顕微鏡法によって観察した。バイアルを切断する(例えば割る)ことにより、断面図を示した。コーティングは約57.6nmの厚さを有していた。SEMは
図4として示されている。
【0077】
実施例4
実施例1のコーティングされたバイアルを通して光透過率を測定した。コーティングされたバイアルを通る光の透過率は
図5の線420として示されており、コーティングなしのバイアルの透過率は
図5の線410として示されている。
【0078】
ここで、望ましい熱特性および/または比較的低い摩擦係数を有し得るコーティングを有するガラス容器が、有機溶媒を利用する従来のコーティング混合物ではなく、水性コーティング混合物を利用する方法によって製造され得ることを理解すべきである。これらのコーティングのため、ガラス容器は、本水性コーティング混合物よりも環境によくない場合のある大量の有機溶媒を利用せずに、医薬品包装を含むがこれに限定されない様々な用途において使用することによく適している。
【0079】
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨および範囲から逸脱することなしに、本明細書に記載の実施形態に対して様々な修正および変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載の様々な実施形態の修正形態および変形形態を網羅することが意図されているが、そのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある。
【0080】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0081】
実施形態1
コーティングされたガラス製品の製造方法であって、
ガラス製品の第1の面の少なくとも一部に水性コーティング混合物を施与するステップであって、前記水性コーティング混合物は、
前記水性コーティング混合物の少なくとも50質量%の量の水、
前記水と混和するか前記水とエマルジョンを形成する、ポリマーまたはポリマー前駆体、および
前記水と混和するか前記水とエマルジョンを形成する金属酸化物前駆体
を含有するものとするステップと、
前記水性コーティング混合物を加熱して、前記ガラス製品の前記第1の面上に金属酸化物とポリマーとを含むコーティングを形成するステップと
を含む、方法。
【0082】
実施形態2
前記コーティングされたガラス製品が、ガラス容器である、実施形態1記載の方法。
【0083】
実施形態3
前記コーティングされたガラス容器が、医薬品包装である、実施形態2記載の方法。
【0084】
実施形態4
前記水性コーティング混合物の前記ポリマーが、フルオロポリマーを含む、実施形態1記載の方法。
【0085】
実施形態5
前記金属酸化物前駆体が、有機チタン酸塩を含む、実施形態1記載の方法。
【0086】
実施形態6
前記金属酸化物前駆体が、有機金属キレートを含む、実施形態1記載の方法。
【0087】
実施形態7
前記コーティングの前記金属酸化物が、チタニアを含む、実施形態1記載の方法。
【0088】
実施形態8
有機溶媒が存在する場合、有機溶媒対水の質量比が、約1:10未満である、実施形態1記載の方法。
【0089】
実施形態9
前記コーティングの前記ポリマーが、少なくとも約250℃の温度で実質的に分解しない、実施形態1記載の方法。
【0090】
実施形態10
前記コーティングが、約0.7以下の摩擦係数を有する、実施形態1記載の方法。
【0091】
実施形態11
前記水性コーティング混合物の前記ポリマーが、ポリイミド、ポリイミドアミド、またはポリアミック酸を含む、実施形態1記載の方法。
【0092】
実施形態12
コーティングされた医薬品包装の製造方法であって、
ガラス容器の第1の面の少なくとも一部に水性コーティング混合物を施与するステップであって、前記水性コーティング混合物は、
前記水性コーティング混合物の少なくとも50質量%の量の水、
前記水と混和するか前記水とエマルジョンを形成する、ポリマーまたはポリマー前駆体、および
前記水と混和するか前記水とエマルジョンを形成する金属酸化物前駆体
を含有するものとするステップと、
前記水性コーティング混合物を加熱して、前記ガラス容器の前記第1の面上に金属酸化物とポリマーとを含むコーティングを形成するステップと
を含む、方法。
【0093】
実施形態13
前記水性コーティング混合物の前記ポリマーが、フルオロポリマーを含む、実施形態12記載の方法。
【0094】
実施形態14
前記金属酸化物前駆体が、有機チタン酸塩を含む、実施形態12記載の方法。
【0095】
実施形態15
前記金属酸化物前駆体が、有機金属キレートを含む、実施形態12記載の方法。
【0096】
実施形態16
前記コーティングの前記金属酸化物が、チタニアを含む、実施形態12記載の方法。
【0097】
実施形態17
有機溶媒が存在する場合、有機溶媒対水の質量比が、約1:10未満である、実施形態12記載の方法。
【0098】
実施形態18
前記コーティングの前記ポリマーが、少なくとも約250℃の温度で実質的に分解しない、実施形態12記載の方法。
【0099】
実施形態19
前記コーティングが、約0.7以下の摩擦係数を有する、実施形態12記載の方法。
【0100】
実施形態20
前記水性コーティング混合物の前記ポリマーが、ポリイミド、ポリイミドアミド、またはポリアミック酸を含む、実施形態12記載の方法。