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特許7408636SnTiO3材料、その調製方法、強誘電体材料としてのその使用及び強誘電体材料を含むデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】SnTiO3材料、その調製方法、強誘電体材料としてのその使用及び強誘電体材料を含むデバイス
(51)【国際特許分類】
   C01G 19/00 20060101AFI20231225BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20231225BHJP
   C04B 35/46 20060101ALI20231225BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C01G19/00 A
C01G23/00 C
C04B35/46
H01B3/12 320
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021510538
(86)(22)【出願日】2019-05-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019061231
(87)【国際公開番号】W WO2019211372
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】18170903.1
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390040420
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ
【氏名又は名称原語表記】Max-Planck-Gesellschaft zur Foerderung der Wissenschaften e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ディール, レオ ピーター オットー
(72)【発明者】
【氏名】ロッチュ, ベティナ ヴァレスカ
(72)【発明者】
【氏名】ピエルンホーファー, フロリアン
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-029838(JP,A)
【文献】特開2003-146660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00-23/08
C04B 35/46
H01B 3/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層からなる結晶構造を有する式SnTiOの材料であって、
層は、Sn(II)イオン、Ti(IV)イオン及び陵共有O八面体を含み、
陵共有O八面体はサブレイヤーを形成し、
Ti(IV)イオンは、陵共有O八面体の2/3以内に配置されて、陵共有TiO八面体を形成し、
陵共有TiO八面体は、サブレイヤー内にハニカム構造を形成し、
ハニカム構造は、六角形内にTi(IV)空孔を持つ六角形を含み、
Sn(II)イオンは、サブレイヤーに対してTi(IV)空孔の上下に配置され、
Ti(IV)イオンはMで置換されていてもよく、
Mは、第4族及び第14族の元素から選択される一又は複数の元素であり、かつ
結晶構造は、次の特徴(i)及び(ii):
(i)Sn(II)イオンは、層の3つのOイオンと、層の3つのOイオンに対してアピカル位置にあるSn(II)イオンの孤立電子対を含む四面体配位圏を有する、
(ii)層は、各層が積層ベクトルS1又は積層ベクトルS2によって各隣接層に対して並進されるように積層される、
の少なくとも一つを満たし、
隣接する六角形の中心は、長さxを有する辺と長さyを有する辺を持つ平行四辺形を形成し、
積層ベクトルS1は、長さx×2/3xの辺と長さy×1/3yの辺に沿った複合並進であり、
積層ベクトルS2は、長さx×1/3xの辺と長さy×2/3yの辺に沿った複合並進であり、
かつ結晶構造は、積層ベクトルS1によって隣接層に対して並進される層と、積層ベクトルS2によって隣接層に対して並進される層とを含む、材料。
【請求項2】
積層ベクトルS2による隣接層に対する層の並進の反復に対する、積層ベクトルS1による隣接層に対する層の並進の反復の比が、0.1から9の範囲である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
サブレイヤー内の陵共有O八面体のOイオンが最密充填され、隣接層のOイオンと最密充填を形成しない、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
Ti(IV)空孔が6つの陵共有TiO八面体によって囲まれている、請求項1から3の何れか一項に記載の材料。
【請求項5】
材料が、式SnTi1-xを有し、xが0以上で0.25以下の範囲にあり、Mが請求項1に記載の通りである、請求項1から4の何れか一項に記載の材料。
【請求項6】
SnTiOの調製方法であって、
(1)アルカリ金属塩と酸化チタン(IV)を反応させて層状アルカリ金属チタン酸塩を得る工程;
(2)層状アルカリ金属チタン酸塩をスズ(II)塩とイオン交換して、スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を得る工程;
(3)スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を無酸素雰囲気で脱水し、続いてスズ(II)の不均化が起こる温度未満の無酸素雰囲気でアニーリングして、SnTiOを得る工程
を含み、酸化チタン(IV)のチタンは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であるMで置換されていてもよい、方法。
【請求項7】
工程1の反応が、400から800℃の範囲の温度で実施される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
次の特徴(i)から(iii):
(i)工程1で使用されるアルカリ金属塩はアルカリ金属炭酸塩である;
(ii)工程1で得られる層状アルカリ金属チタン酸塩はKTi又はLiTiOである;
(iii)工程2のイオン交換は、層状アルカリ金属チタン酸塩とスズ(II)塩とを混合することを含む
のうちの少なくとも一つを満たす、請求項又はに記載の方法。
【請求項9】
次の特徴(i)及び(ii):
(i)工程3の脱水は、250℃未満の温度で行われる;
(ii)工程3のアニーリングは、250から400℃の範囲の温度で行われる
のうちの少なくとも一つを満たす、請求項からの何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程3の脱水及びアニーリングが、工程2で得られたスズ交換アルカリ金属チタン酸塩を無酸素雰囲気中でアニーリング温度まで5℃/分以下の加熱速度で連続的に加熱することによって実施される、請求項からの何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
SnTiOを4GPa以上の圧力に曝露して、ペロブスカイト型構造を有するSnTiOを得る追加の工程を含む、請求項から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
強誘電体材料が、請求項1から5の材料の群から選択される、少なくとも一種の材料を含む、強誘電体材料を含むデバイス。
【請求項13】
強誘電体素子における請求項1からの何れか一項に記載の材料の使用。
【請求項14】
ハイk誘電体としての、請求項1からの何れか一項に記載の材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸スズである式SnTiO又はSnTi1-xMxO(ここで、M及びxはここに記載の通り)の材料、その調製方法、強誘電体素子におけるその使用、及び強誘電体材料を含むデバイスを対象とする。
【従来技術】
【0002】
チタン酸塩は、強誘電体や光触媒から熱電体や電池に至る用途を持つ、最も多様なクラスの材料の一つであることが分かっている。特に、SnTiOは有望な強誘電体材料である。
【0003】
一般に、Sn(II)のSn(0)及びSn(IV)への不均化温度が約350℃と低いため、固体化学の分野ではSn(II)の実装は依然として困難である。しかし、新規材料の調製は通常、高温における固体反応を介して行われる。従って、Sn(II)酸化物はほとんど成功裡には調製されていない。現在、バルクSnTiOを調製する方法は存在しない。
【0004】
Sirajudheen P.等,Chemical Science Journal6(2015)1において、著者は、共沈過酸化物法によってペロブスカイト型構造を有するSnTiOを調製したと主張している。その調製法では、沈殿物がマッフル炉において800℃で1時間か焼された。この温度は、Sn(II)の不均化温度と酸化温度をはるかに上回っている。而して、与えられた(酸化的)条件下で、Sn(II)はSn(IV)に酸化され、従って、Sn(II)を含む構造の形成が排除されうる。加えて、請求項記載の材料の形成は、X線又は電子回折法など、そこに記載されている分析方法によっては証明されていない。
【0005】
Kumada等,Materials Research Bulletin44(2009)1298は、式SnTiOのバルクのチタン酸Sn(II)の調製について記述している。Y.Hosogi等,Journal of Physical Chemistry C112(2008)17678は、固相反応による層状Sn交換アルカリ金属チタン酸塩及びニオブ酸塩の調製について記述している。
【0006】
より具体的には、R.Agarwal等,Physical Review B97(2018)054109とS.Chang等,Journal of Vacuum Science34(2016)01A119-2は、原子層堆積によるSnTiO薄膜の調製について記述し、堆積した薄膜の強誘電特性について報告している。Chang等は、X線回折パターンにおけるSnTiO膜の証拠となるピークの欠如が、SnTiO構造に関する明確な結論を引き出すことを妨げると述べている。Agarwal等は、Chang等の方法を使用し、得られたSnTiOが斜方晶系ペロブスカイト構造を有していることをX線回折パターンから導き出している。それでも、X線回折パターンとシミュレートされたパターンとのフィッティングでは、調製されたSnTiO材料の構造を明確に解明できない場合がある。
【0007】
T.Fix等 Crystal Growth & Design 11(2011)1422は、パルスレーザー堆積によるSnTiO組成の薄膜材料の調製について報告している。著者は、X線回折パターンとTEM画像から、材料が三斜晶系のイルメナイト型構造を有していることを導き出している。T.Fix等によって調製された材料は室温において強誘電性を示さない。そのようなイルメナイト型構造では、TiとSnの両方が1.456nmの格子定数cを持つ八面体配位圏を示し、1.408nmのcを持つイルメナイトFeTiO自体に匹敵する。従って、T.Fix等によって報告された構造は、層状構造、すなわち、層内の原子が隣接する層の原子までの距離と比較して短い距離を有する層からなる構造と考えることはできない。
【0008】
而して、本発明者の知る限りでは、式SnTiOの材料は、原子層堆積又はパルスレーザー堆積によって薄膜としてのみ調製されてきた。これらの技術の産業上の利用可能性は限られている。より具体的には、原子層堆積又はパルスレーザー堆積による厚膜の成長は、サイクル期間に応じて総反応時間と共に多数のサイクルを必要とするため、遅くかつ費用のかかるプロセスである。
【0009】
加えて、材料の構造は、その調製方法に強く依存する。より具体的には、原子層堆積によって得られる材料の結晶構造及び結晶化度は、堆積条件、反応物及び基体に強く影響されることが知られている。層の安定性は基体との相互作用に依存し、基体からの層の分離は、層の構造変化をもたらすか、又は完全に失敗することさえありうる。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、バルクSnTiOの調製方法を提供することを目的とする。この方法は好ましくはスケーラブルであり、産業用途を受け入れる余地がある。
【0011】
本発明者は、(i)層状アルカリ金属チタン酸塩を調製する工程、(ii)層状アルカリ金属チタン酸塩をスズ(II)塩とイオン交換して、スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を得る工程、及び(iii)スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を脱水し、続いて、スズ(II)の不均化が起こる温度未満の無酸素雰囲気中でスズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を脱水し、続いてスズ(II)の不均化が発生する温度未満の無酸素雰囲気中でアニーリングして、SnTiOを得る工程を含む、バルクSnTiOの新規調製方法を見出した。
【0012】
本発明の調製方法は、自立材料として高純度で得ることができる新しいバルクSnTiO材料へのアクセスを与える。驚くべきことに、本発明の方法は、イルメナイト型由来の層状構造及びペロブスカイト型構造などの、SnTiO及びSnTi1-x(ここでM及びxはここで定義される通り)の新しい構造の調製を可能にする。本発明者は、これらのバルクSnTiO材料を特徴付けた。バルクSnTiO材料は、強誘電性の前提条件である非中心対称対称性を有しうる。従って、本発明の材料は、強誘電性を示すことが期待される。
【0013】
而して、本発明はまたバルクSnTiO材料の提供と強誘電体素子としてのそれらの使用を対象とする。
本発明は、次の態様によって定まる。
【0014】
本発明の第一の態様は、層からなる結晶構造を有する式SnTiOの材料であって、
層は、Sn(II)イオン、Ti(IV)イオン及び稜共有O八面体を含み、
稜共有O八面体はサブレイヤーを形成し、
Ti(IV)イオンは、稜共有O八面体の2/3内に位置させられて、稜共有TiO八面体を形成し、
稜共有TiO八面体は、サブレイヤー内にハニカム構造を形成し、ハニカム構造は、六角形内にTi(IV)空孔を持つ六角形を含み、
Sn(II)イオンは、サブレイヤーに対してTi(IV)空孔の上下に位置させられ、
Ti(IV)イオンはMで置換されていてもよく、
Mは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であり、かつ
結晶構造は、次の特徴(i)及び(ii):
(i)Sn(II)イオンは、層の3つのOイオンと、層の3つのOイオンに対してアピカル位置にあるSn(II)イオンの孤立電子対を含む四面体配位圏を有する、
(ii)層は、各層が積層ベクトルS1又は積層ベクトルS2によって各隣接層に対して並進されるように積層される、
の少なくとも一つを満たし、
隣接する六角形の中心は、長さxを有する辺と長さyを有する辺を持つ平行四辺形を形成し、
積層ベクトルS1は、長さx×2/3xの辺と長さy×1/3yの辺に沿った複合並進(combined translation)であり、
積層ベクトルS2は、長さx×1/3xの辺と長さy×2/3yの辺に沿った複合並進であり、
かつ結晶構造は、積層ベクトルS1によって隣接する層に対して並進される層と、積層ベクトルS2によって隣接する層に対して並進される層とを含む、材料に関する。
【0015】
材料の好ましい実施態様は、従属請求項2から5に記載される。
【0016】
第二の態様では、本発明は、正方晶ペロブスカイト型結晶構造を有する式SnTiOの材料を対象とし、ここで、Ti(IV)イオンは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であるMで置換されていてもよい。
【0017】
本発明の第三の態様は、SnTiOの調製方法であって、
(1)アルカリ金属塩と酸化チタン(IV)を反応させて層状アルカリ金属チタン酸塩を得る工程;
(2)層状アルカリ金属チタン酸塩をスズ(II)塩とイオン交換して、スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を得る工程;及び
(3)スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を無酸素雰囲気で脱水し、続いてスズ(II)の不均化が起こる温度未満の無酸素雰囲気でアニーリングし、SnTiOを得る工程
を含み、ここで、酸化チタン(IV)のチタンは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であるMで置換されていてもよい、方法である。
【0018】
この方法の好ましい実施態様は、従属請求項8から12に記載される。
【0019】
第四の態様では、本発明は、本発明の第三の態様に係る調製方法によって得ることができる式SnTiOの材料を対象とし、ここで、Tiは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であるMで置換されていてもよい。
【0020】
本発明の第五の態様は、強誘電体材料を含むデバイスに関し、ここで、強誘電体材料が、本発明の第一の態様に係る材料と本発明の第二の態様に係る材料の群から選択される少なくとも一種の材料を含む。
【0021】
第六の態様では、本発明は、強誘電体素子における本発明の第一及び/又は第二の態様に係る材料の使用を更に対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1a-d】図1aは、本発明に係る材料としての赤いSnTiO粉末の写真である。図1bは、本発明の材料の走査型電子顕微鏡写真である(スケールバー200nm)。図1cは、挿入図(スケールバー2nm)及びチタン位置を示す強調されたコントラストの挿入図のような構造を有する本発明の材料の高解像度走査透過型電子顕微鏡写真(HR-STEM)である。図1dは、本発明の材料の高解像度走査透過型電子顕微鏡写真であり、それぞれの積層ベクトルが示されている(スケールバー3nm)異なる積層ポリタイプを示している。
図2図2は、周囲条件での本発明に係る材料の別個の積層順を表すSnTiOの5つのポリタイプを示している。
図3a-b】図3aは、本発明の材料の層状結晶構造における層を、層に直交する軸(c軸)に沿って示し、O八面体で形成されたハニカム構造、八面体内のTi(IV)イオンの位置及び六角形の上下のSn(II)の位置を示す充填図である。積層ベクトルS1及びS2、並びに積層ベクトルを定義するための基底ベクトルを図3aに示す。図3bは、本発明の材料の層状結晶構造における層を層に平行な軸に沿って示し、O八面体から形成されたサブレイヤーと、サブレイヤーの上下のSn(II)イオンを示す充填図である。Ti(IV)イオンの位置は小文字ギリシャ文字で示され、Sn(II)イオンの位置は太字の小文字ギリシャ文字で示され、Oイオンの位置は小文字のラテン文字で示される。層全体の位置は、大文字のラテン文字で示される。
図4a-b】図4aは、本発明に係る材料の結晶構造におけるSn(II)の配位圏を示す。図4bは、非中心対称対称性を示している、本発明に係る材料の結晶構造におけるTi(IV)の配位圏を示す。
図5a-b】図5aは、本発明のSnTiO材料におけるO価電子のシミュレートされた電子局在関数(0.85での等値面)を示す。図5bは、SnTiOのシミュレートされた電子局在関数(0.6の等値面)を示しており、Sn2+の孤立電子対を層間に向ける構造を示している。
図6図6は、異なる積層順を示すコヒーレント散乱ドメインを表すために、異なるポリタイプを用いる本発明に係るSnTiOの結晶構造の最終のリートベルド精密化を示している。30°2θより上の領域は、分かりやすくするために拡大されている(挿入図)。
図7図7は、SnTiOの積層順のシミュレートされたX線粉末回折パターンを、本発明の材料の測定されたX線粉末回折パターンと比較している。
図8図8は、2次の四重極相互作用を伴う2つの中央遷移を想定して、対応するフィッティングと共に静的固体エコー及び四重極Carr-Purcell-Meiboom-Gill(QCPMG)条件下での47,49Tiの21.1T高磁場固体状態核磁気共鳴スペクトルを示している。
図9図9は、下から上に、次のチタン酸塩:CdTiO、FeTiO、SnTiO、PbTiO、及びSrTiOの、Ti L2,3稜の電子エネルギー損失スペクトルを示す。
図10図10は、空気中の本発明のSnTiO材料の熱重量分析測定を示しており、約350℃の温度で開始して約5質量%の重量増加を示している。
図11図11は、基本的な積層型AB(a)、ABC(b)、ACB(c)、及び異なる範囲の双晶化:ABCACB(d)及びABCB(e)のSnTiOの結晶構造における仮想的な積層順を示している。
図12図12は、AB型積層セクションと、ABC-/ACB積層セクションの結晶学的連晶を示す積層欠陥SnTiOのシミュレートされたX線粉末回折パターンと、本発明の材料の測定されたパターンとの比較である。シミュレーションでは、ABC-/ACB積層ドメインの拡張は一定に保たれ、AB型積層セクションの拡張は徐々に増加した。ABC型からABC型への「変化」の確率は0.95(同じ積層型のままであることを意味する)であり、AB型からABC/ACB型への変化の確率はパラメーターxによって記述される。
図13a-b】図13は、c軸に沿って120°の双晶を示す積層欠陥のあるSnTiOのシミュレートされたX線粉末回折パターンと、本発明の材料の測定されたパターンとの比較である。シミュレーションでは、欠陥確率sは、それぞれ異なる範囲で徐々に増加した。0(a)、1(b)、2(c)及び3(d)層の範囲を適用した。言い換えれば、双晶の範囲が広いほど、より大きなコヒーレント散乱ドメインが誘導される。
図13c-d】同上
図14図14は、異なる基本的な積層型と双晶ドメインを表すSnTiOの5つのポリタイプを含む多相アプローチを使用することによる、本発明の材料の測定されたX線粉末回折パターンの最終のリートベルド精密化を示している(図11を参照)。SnOとKTi17もまた不純物相として含まれていた。明瞭にするために30°2θで始まるセクションを拡大している(挿入図)。計算されたパターンは、各相の寄与に分解される。上から下へ:精密化パターンと重ね合わせた計算パターン、AB型、ABC型、ACB型、ABCB型、ABCACB型、KTi17及びSnO
図15図15は、(i)KTi(上のパターン)及び(ii)LiTiO(下のパターン)から調製されたSnTiO材料の測定されたX線粉末回折パターンを示しており、26.6°2θ、33.9°2θ及び51.8°2θでの反射をSnO側相に割り当てることができる。
図16図16は、SnTiOの示差走査熱量測定を示しており、50から80℃の範囲での加熱中のSnTiOの相転移を示している。
図17図17は、室温20℃から、-50℃から-120℃(上から下)のステップで冷却されたSnTiO材料の温度依存X線粉末回折パターンを示しており、全ての(hk0)反射でピーク分裂を示している(例えば、約16°2θ、24°2θ又は28°2θ)。
図18図18は、SnTiO材料の詳細な温度依存X線粉末回折パターンを示しており、これは、相転移を示す293Kから143Kへの温度低下に伴う28°2θでのピークのピーク分裂を示している。
図19図19は、28°2θでのピークの見出されたピーク分裂を評価し(挿入図と図17を参照)、フィッティングにより、相転移が約340Kであると予測される。
図20図20は、SnTiOの温度依存ラマンスペクトルを示しており、これは、80℃を超える温度でのラマンバンドの消失を示しており(矢印で示される)、よってこの温度付近の相転移を示している。
図21図21は、本発明の第一の態様に係るSnTiO材料の選択された領域の電子回折を示しており、距離4.45Å≠4.36Å及びγ=119.2°のほぼ六方晶の結晶構造を示している。
図22図22は、SnTiOに適用された19の異なる構造モデルのDFT計算エネルギー対体積曲線を示しているが、実験的に観察された構造モデルがエネルギー的に好まれる。
図23図23は、19のモデル化構造タイプ全てのDFT計算エンタルピー対圧力図を示している。高圧でのイルメナイト型由来のABC/AB積層ポリタイプから正方晶ペロブスカイト構造型への相転移を予測することができる。
図24図24は、SnTiO材料のX線粉末回折パターンを示しており、Tiの0、1、5mol%がそれぞれZrで置換されており、Zr含有量の増加に伴い、約9.5°、13.5°、18.7°、20°及び21°の2θでのピーク強度の減少を示しており、同時に12.8°及び20.6°でのピーク強度が増加しており、よって積層順への影響を示している(図7もまた参照のこと)。
図25a-b】図25aは、層状構造を有する本発明の材料におけるOイオンの充填を示している。図25bは、従来のイルメナイト型構造におけるOイオンの充填を示している。本発明の材料では、層内のOイオンは最密充填されているが、c軸に沿った異なる層間のO-O距離は、層の最密充填内のO-O距離よりも大きいことは明らかである(図25a)。対照的に、イルメナイト型構造では、Oイオンもまた最密充填されており、より具体的には、3方向全てで六角形に最密充填されている(図25b)。
図26図26は、本発明の方法の工程を示すフローチャートであり、アルカリ金属塩と酸化チタン(IV)とを反応させる工程(1);層状アルカリ金属チタン酸塩をスズ(II)塩とイオン交換する工程(2);スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を無酸素雰囲気で脱水し(3a)、続いて無酸素雰囲気でアニーリングする工程(3b)を示す。
図27図27は、それぞれ最大圧力18.1GPa(実線)及び20.8GPa(破線)に曝露されたSnTiOの粉末X線回折パターンを示している。高圧データは、0.28Aのシンクロトロン放射線から得られた。測定は、圧力媒体としてネオンを使用して、ダイヤモンドアンビルセルにおいて実施された。圧力は周囲圧から最大圧力まで徐々に増加させた。約8.5°、9.75°及び13.75°での反射が、結晶化ネオンに割り当てられる。黒でマークされたピーク位置(垂直線)は、周囲圧での正方晶ペロブスカイトの予測強度とピーク位置を示している。X線粉末回折パターンは、少なくとも20GPaで、材料が高圧改質体に変化することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[式SnTiOの材料]
上述のように、本発明の第一の態様は、層からなる結晶構造を有する式SnTiOの材料であって、
層は、Sn(II)イオン、Ti(IV)イオン及び稜共有O八面体を含み、
稜共有O八面体はサブレイヤー、すなわち層の各々内にサブレイヤーを形成し、
Ti(IV)イオンは、稜共有O八面体の三分の二(2/3又は66.66%)内に位置させられて、稜共有TiO八面体を形成し、
稜共有TiO八面体は、サブレイヤー内にハニカム構造を形成し、ハニカム構造は、六角形内にTi(IV)空孔を持つ六角形を含み、
Sn(II)イオンは、サブレイヤーに対してTi(IV)空孔の上下に位置させられ、
Ti(IV)イオンはMで置換されていてもよく、
Mは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であり、かつ
結晶構造は、次の特徴(i)及び(ii):
(i)Sn(II)イオンは、層の3つのOイオンと、層の3つのOイオンに対してアピカル位置にあるSn(II)イオンの孤立電子対を含む(歪んだ)四面体配位圏を有する、
(ii)層は、各層が積層ベクトルS1又は積層ベクトルS2によって各隣接層に対して並進されるように積層される、
の少なくとも一つを満たし、
隣接する六角形の中心は、長さxを有する辺と長さyを有する辺を持つ平行四辺形を形成し、
積層ベクトルS1は、長さx×2/3xの辺と長さy×1/3yの辺に沿った複合並進であり、
積層ベクトルS2は、長さx×1/3xの辺と長さy×2/3yの辺に沿った複合並進であり、
かつ結晶構造は、積層ベクトルS1によって隣接する層に対して並進される層と、積層ベクトルS2によって隣接する層に対して並進される層とを含む、材料に関する。
【0024】
一般に、本発明の材料の結晶構造は、X線粉末回折(XRPD)によって決定することができる。より具体的には、Stoe STADI P回折計(Moκα1放射線、Ge(111)モノクロメーター、Mythen検出器)をDebye-Scherrerジオメトリの粉末回折測定に使用し、TOPAS6.0を構造の精密化に使用した。詳細については、「X線粉末回折(XRPD)」というタイトルのセクションを参照のこと。
【0025】
[対称性]
本発明の第一の態様に係る材料の結晶構造は、好ましくは三方晶対称性を有する。本発明の第一の態様に係る材料はまた非中心対称対称性を有しうる。
【0026】
a-b面は、本発明の第一の態様に係る材料の結晶構造の層及びサブレイヤーに平行な面である。c軸は、この面に直交する軸である。
【0027】
[ハニカム構造]
本発明の第一の態様に係る式SnTiOの材料において、結晶構造は層からなり、層は、Sn(II)イオン、Ti(IV)イオン及び稜共有O八面体を含む(図3aを参照)。次に、そのような層の構造を詳細に説明する。
【0028】
稜共有O八面体のそれぞれは、以下ではOイオンと呼ばれる、6つのO2-アニオンの八面体配列によって形成される。図3bに示されるように、稜共有O八面体は層内にサブレイヤーを形成する。サブレイヤーは、Sn(II)イオン、Ti(IV)イオン及びび稜共有O八面体を含む層の一部を形成し、それ自体が層である。稜共有O八面体は、好ましくは、O八面体の中心が面内にあるようにサブレイヤーに配置される。中心は、稜共有O八面体の幾何学的中心である。サブレイヤーに平行な面はa-b面と命名され、この面に直交する軸はc軸と命名される。
【0029】
図25aに示されるように、本発明の第一の態様に係る材料のサブレイヤー内の稜共有O八面体のOイオンは、最密充填されている。サブレイヤーは、最密充填Oイオンの2つの原子層を含む。サブレイヤーのOイオンは、隣接層のOイオンと最密充填を形成しない。特に、サブレイヤーのOイオンは、隣接層のOイオンと六方の最密充填を形成しない。従って、c方向に沿った異なる層のOイオン間の距離は、層内のOイオンの距離と比較して大きい。対照的に、イルメナイト型構造では、Oイオンは、3方向全てで最密充填、具体的には六方の最密充填である(図25b)。
【0030】
Ti(IV)イオンは、稜共有O八面体の三分の二(2/3又は66.66%)内にあり、稜共有TiO八面体を形成する(図3及び4bを参照)。図3aに示されるように、稜共有TiO八面体は、サブレイヤー内にハニカム構造を形成し、よってa-b面に平行になる。図3aを参照すると、ハニカム構造は、ここでは、稜共有TiO八面体から構成される構造として定義され、層内の稜共有TiO八面体は、c軸に沿って見たときに六角形を形成し、その結果、各稜共有TiO八面体は、層の3つの六角形の一部を形成する。言い換えると、Ti(IV)イオンで占有されていないサブレイヤーの各O八面体は、6つのTiO八面体に囲まれている。次では、Ti(IV)イオンで占有されていないO八面体の中心をTi(IV)空孔と示す。Ti(IV)イオンもまたa-b面に平行なハニカム構造を形成する。而して、稜共有O八面体のTi(IV)空孔は、a-b面内の隣接する稜共有O八面体の6つのTi(IV)イオンに囲まれている。
【0031】
稜共有TiO八面体は歪んでいる場合がある。例えば、稜共有TiO八面体は三角形に歪んでいる場合がある。三角形の歪は、TiO八面体の3倍軸に沿った歪であり、層内の全てのTiO八面体は、平行な3倍軸に沿って同じ方向に歪んでいる。
【0032】
[Ti(IV)の位置]
Ti(IV)イオンは、稜共有O八面体の三分の二(2/3又は66.66%)内、好ましくは稜共有O八面体の中心に位置し、よって稜共有TiO八面体を形成する(図4bを参照)。中心は、稜共有O八面体の幾何学的中心である。
【0033】
Ti(IV)イオンは、理想的な八面体配位圏又は歪んだ八面体配位圏を示しうる。例えば、Ti(IV)イオンは、三角形に歪んだ八面体配位圏を示しうる。三角形に歪んだ八面体配位圏は、上記のTiO八面体の三角形の歪に由来する。
【0034】
Ti(IV)イオンは、Mで置換することができ、ここで、Mは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素である。IUPAC命名法による第4族は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)の元素を含む周期表の元素群である。IUPAC命名法による第14族は、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、及び鉛(Pb)からなる周期表の元素群である。
【0035】
最大25モル%、好ましくは最大10モル%、最も好ましくは最大5モル%のチタンをMで置換することができる。Mは、好ましくは、Si、Ge、Zr及びHfの群から選択される一又は複数の元素であり、より好ましくは、Zr及びHfからなる群から選択される一又は複数の元素である。従って、本発明の第一の態様に係る材料は、xが0以上で0.25以下の範囲にある式SnTi1-xを有しうる。一般に、Ti(IV)の置換は、TiO八面体の歪を誘導しうる。而して、特にTiがZr及びHfの一方又は両方で置換されている場合、TiO八面体及び積層ポリタイプの歪は、Tiの置換の度合によって調整することができる。従って、Ti位のMによる置換は、本発明の材料の積層順に影響を与える。
【0036】
[Ti(IV)空孔]
上記のように、Ti(IV)イオンは、サブレイヤーの稜共有O八面体の2/3内に位置させられており、よって稜共有TiO八面体を形成する。稜共有O八面体の残りの1/3は、Ti(IV)イオンで占有されていない。Ti(IV)イオンで占有されていないサブレイヤーのO八面体は、6稜共有TiO八面体によって囲まれている。Ti(IV)イオンによって占有されていないO八面体の空間は、Ti(IV)空孔として示される。而して、Ti(IV)空孔は、稜共有TiO八面体によって形成されたハニカム構造の六角形内に位置する。Ti(IV)空孔は、好ましくは、Ti(IV)によって占有されていないO八面体の中心(幾何学的中心の意味で)に位置する。而して、Ti(IV)空孔は、好ましくは、層に直交する軸(c軸)に沿って見たときに、ハニカム構造の六角形の中心に位置する。更に、これらのTi(IV)空孔は、好ましくは、サブレイヤーの稜共有O八面体の中心によって形成される面(a-b面)に配置される。
【0037】
[Sn(II)の位置]
Sn(II)イオンは、サブレイヤーに直交する軸(c軸)に沿って六角形内のサブレイヤーに対して、Ti(IV)空孔の上下に位置させられる。Sn(II)イオンは、好ましくは、サブレイヤーに直交する軸(c軸)に沿ってハニカム構造の六角形の中心に位置させられ、サブレイヤーの上下に位置させられる。
【0038】
図4aに示されるように、Sn(II)イオンは、層の3つのOイオンを含む三角錐配位圏を持ち、Sn(II)イオンはアピカル位置にあり、隣接層の最も近いOイオンまでのSn(II)イオンの距離は、その三角錐配位圏の3つのOイオンの各々に対するSn(II)イオンの距離を1.5倍以上超えている。Sn(II)イオンの配位圏を図2に示す。アピカル位置は、3つのOイオンとSn原子によって形成される錐体の頂点の位置であり、錐体の底辺は3つのOイオンによって形成される。
【0039】
図4aは、Sn(II)イオンの配位圏が、層の3つのOイオンと、層の3つのOイオンによって形成される面に対してアピカル位置にあるSn(II)イオンの孤立電子対を含む四面体配位圏として記述できることを示している。従って、Sn(II)イオンの配位圏が四面体配位圏として記述される場合、孤立電子対はSn(II)の第4の配位子と考えられる。
【0040】
而して、本発明の材料におけるSn(II)配位は、Sn(II)イオンがOイオンの八面体配位圏を示す理想的なイルメナイト型構造とは区別される。
【0041】
[積層順]
本発明の第一の態様に係る式SnTiOの材料は、層からなり(図5aを参照)、層は互いに平行に配置され、O八面体によって形成されるサブレイヤーに直交する軸(c軸)に沿って積層される。
【0042】
層とその隣接層は、Sn(II)イオンの孤立電子対と隣接層の最も近いOイオンとの間に十分な距離を提供するように積層される(図5bを参照)。而して、SnTiOにおける層の積層順は、Sn(II)イオンの位置、特にそれらの電子孤立対によって決定される。層は、理想的な歪のない材料では、層のSn(II)イオンが、サブレイヤーに直交する軸(c軸)に沿って隣接層のTi原子と同じ位置になるように積層される。歪がある場合、これはもはや当てはまらない可能性があるため、そのような材料は、プロセス関連の特徴、すなわち、材料の調製方法に関する特徴によって更に記述されなければならない場合がある。
【0043】
上述のように、歪んだ構造とは対照的な理想的な歪のない材料では、層は、層のSn(II)イオンがサブレイヤーに直交する軸(c軸)に沿って隣接層のTi原子と同じ位置になるように積層される。層の積層は、2つの積層ベクトルS1及びS2によって記述できる。積層ベクトルは、隣接層に対するある層の並進を記述する。ハニカム構造モチーフによると、理論的には6つの積層ベクトルが可能であるが、ハニカムの三角形の対称性のため、それらの2つのみが非対称等価である。本発明の第一の態様に係る材料の結晶構造内の層は、各層が積層ベクトルS1又は積層ベクトルS2によって各隣接層に対して並進されるように積層される。
【0044】
積層ベクトルS1及びS2は、2つの基底ベクトルx及びyで記述される(図3aを参照)。基底ベクトルx及びyは、平行四辺形の辺によって定義される(図3aを参照)。平行四辺形は、ハニカム構造の隣接する六角形の中心(幾何学的中心)によって形成される。平行四辺形には、長さxの辺と長さyの辺がある。
【0045】
積層ベクトルS1は、長さx×2/3xの辺と長さy×1/3yの辺に沿った複合並進である。積層ベクトルS2は、長さx×1/3xの辺と、長さy×2/3yの辺に沿った複合並進である(図3aを参照)。而して、S2はS1に対して逆方向の並進を記述する。積層ベクトルS1及びS2は、c軸に沿って見たときのab面内の隣接層に対する並進を記述する。S1又はS2による並進は、c軸に沿って見たとき隣接層のTi(IV)イオンの上の(歪のない又は理想的な)位置を占有するように、層の各Sn(II)イオンの並進をもたらす。
【0046】
積層順は、層のシーケンス、例えばABCによっても記述することができ、ここで、A、B及びCは異なる個々の層である(図2を参照)。個々の層のシーケンスはまた積層順とも呼ばれる。異なる個々の層A、B及びCは、a-b面に直交する軸(c軸)に沿って見たときに、互いに並進される。同じ指数を有する全ての個々の層、例えばA、B又はCは、稜共有O八面体によって形成されるサブレイヤーに直交する軸(c軸)に沿って重ね合わされる。言い換えると、同じ指数を有する全ての個々の層は、x又はyに沿って互いに移動されるわけではない。
理想的なイルメナイト型構造では、S1又はS2の何れかの、一方向への積層ベクトルだけが存在する。従って、理想的なイルメナイト型構造では、全体的な積層順はABC(又はACB)に減少し、ここで、A、B及びCは3つの異なる個々の層である。対照的に、本発明の第一の態様に係る材料の結晶構造は、積層ベクトルS1によって隣接層に対して並進される層と、積層ベクトルS2によって隣接層に対して並進される層とを含む。而して、AB、ABCB及びABCACBなどの様々な更なる積層順を持つ結晶構造を得ることができる(図2及び11、並びに表2を参照)。このような別個の積層順は、ポリタイプとも呼ばれる。
【0047】
本発明の第一の態様に係る材料において、積層ベクトルS1による隣接層に対する層の並進の反復と、積層ベクトルS2による隣接層に対する層の並進の反復との比は、好ましくは0.1から9の範囲であり、より好ましくは0.25から4の範囲であり、更により好ましくは0.5から2の範囲であり、最も好ましくは0.8から1.3の範囲である。該比はまた1でありうる。その結果、異なる積層順によって特徴付けられる多数のポリタイプを得ることができる。
【0048】
言い換えると、理想的なイルメナイト型構造では、Oイオンは最密充填され、特に、全方向、つまりa、b、c方向に六角形に最密充填される(図25bを参照)。対照的に、図25aに示されるように、本発明の材料では、個々の層内のOイオンのみが最密充填され、隣接層のOイオンとは(六方の)最密充填を形成しない。従って、本発明の材料は、c方向においてOイオンの六方の最密充填を示さない。
【0049】
[自立材料]
本発明の第一の態様に係る材料は自立型である。本発明の意味で自立型ということは、本発明の第一の態様に係る材料の構造、特に結晶構造がそれ自体安定していることを意味する。換言すれば、本発明の第一の態様に係る材料の結晶構造及び巨視的構造は、基体又はそれを安定化もしくは支持する支持層の存在なしに維持することができる。従って、本発明の第二の態様に係る材料もまた自立型である。
【0050】
本発明の第一及び第二の態様に係る材料は、500nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは10nm以下、最も好ましくは0.5から5nmの厚さを有する薄層として提供されうる。
【0051】
[正方晶ペロブスカイト型結晶構造を有する式SnTiOの材料]
上述のように、第二の態様では、本発明は、正方晶ペロブスカイト型結晶構造を有する式SnTiOの材料を対象とし、ここで、Ti(IV)イオンは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であるMで置換されていてもよい。チタンの最大25モル%、好ましくは最大10モル%、より好ましくは最大5モル%がMで置換されうる。よって、本発明の第二の態様に係る材料は、式SnTi1-xを有し得、ここで、xは0以上で0.25以下の範囲にある。Mは、好ましくは、Si、Ge、Zr及びHfの群から選択される一又は複数の元素であり、より好ましくは、Zr及びHfからなる群から選択される一又は複数の元素である。一般に、Ti(IV)の置換は、特にTiがZrとHfの一方又は両方で置換されている場合、歪を引き起こす場合がある。
【0052】
[SnTiOの調製方法]
本発明の第三の態様は、SnTiOの調製方法であり、該方法は、
(1)アルカリ金属塩と酸化チタン(IV)を反応させて、層状アルカリ金属チタン酸塩を得る工程;
(2)層状アルカリ金属チタン酸塩をスズ(II)塩とイオン交換して、スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を得る工程;及び
(3)スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を無酸素雰囲気で脱水し、続いてスズ(II)の不均化が起こる温度未満の無酸素雰囲気でアニーリングし、よってSnTiOを得る工程
を含み、ここで、酸化チタン(IV)のチタンは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であるMで置換されていてもよい。
【0053】
本発明のSnTiOの調製方法は、アルカリ金属塩と酸化チタン(IV)とを反応させる工程(1);層状アルカリ金属チタン酸塩をスズ(II)塩とイオン交換する工程(2);スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を無酸素雰囲気で脱水し(3a)、続いて無酸素雰囲気でアニーリングする工程(3b)を示す、図26のフローチャートに示されている。
【0054】
[層状アルカリ金属チタン酸塩の調製]
本発明の方法の工程1において、アルカリ金属塩と酸化チタン(IV)との混合物を反応させて、層状アルカリ金属チタン酸塩を得る。アルカリ金属塩と酸化チタン(IV)は、好ましくは粉砕又はミリングによって混合される。反応温度は、好ましくは400から800℃の範囲、より好ましくは500から700℃、最も好ましくは550から650℃であり、混合物は、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも6時間、最も好ましくは12時間、加熱される。反応は、空気中又は無酸素雰囲気中、好ましくは空気中で実施されうる。一般に、反応温度は、使用される反応物と所望される標的層状チタン酸塩に依存する。KTiを形成するKCOと酸化チタン(IV)の反応は、好ましくは600℃で実施される。LiTiOを形成するLiCOと酸化チタン(IV)の反応は、好ましくは700℃で実施される。
【0055】
層状アルカリ金属チタン酸塩の調製のために工程1において使用されるアルカリ金属塩は、好ましくはアルカリ金属炭酸塩、より好ましくはKCO又はLiCO、最も好ましくはKCOである。
【0056】
層状アルカリ金属チタン酸塩の調製のために工程1において使用される酸化チタン(IV)は、ナノ粒子又は微粉末の形態であり得、ルチル及び/又はアナターゼを含みうる。アナターゼの含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%である。酸化チタン(IV)は、好ましくは酸化チタン(IV)ナノ粒子であり、より好ましくは、25nm以下の平均粒径を有する酸化チタン(IV)ナノ粒子である。酸化チタン(IV)は、Mで置換することができ、ここで、Mは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素である。チタンの最大25モル%、好ましくは最大10モル%、最も好ましくは最大5モル%がMで置換される。Mは、好ましくは、Si、Ge、Zr及びHfの群から選択される一又は複数の元素であり、より好ましくは、Zr及びHfからなる群から選択される一又は複数の元素である。
【0057】
層状アルカリ金属チタン酸塩は、好ましくはKTi又はLiTiOであり、より好ましくはKTiである。
【0058】
[イオン交換]
本発明の方法の工程2において、工程1において得られた層状アルカリ金属チタン酸塩は、スズ(II)塩とイオン交換されて、スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩が得られる。イオン交換は、層状アルカリ金属チタン酸塩の陽イオン交換である。より具体的には、イオン交換において、スズ(II)イオンが、層状アルカリ金属チタン酸塩のアルカリ金属イオンに完全に又は部分的に置換され、その結果、スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩が得られる。好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%のアルカリ金属イオンが、イオン交換においてスズ(II)に置き換えられる。
【0059】
スズ(II)塩は特に限定されず、好ましくは、ハロゲン化スズ(II)、硫酸スズ(II)、硝酸スズ(II)、リン酸スズ(II)、リン酸水素スズ(II)、酢酸スズ(II)、シュウ酸スズ(II)、炭酸スズ(II)、及び炭酸水素スズ(II)、より好ましくはハロゲン化スズ(II)、更により好ましくはハロゲン化スズ(II)水和物、最も好ましくは塩化スズ(II)二水和物の群から選択される一又は複数の塩である。
【0060】
工程2におけるイオン交換は、層状アルカリ金属チタン酸塩とスズ(II)塩とを、好ましくは60℃以下の温度で、より好ましくは0から50℃の範囲の温度で混合することによって実施することができる。空気中で60℃を超える温度で混合すると、望ましくないSnO又はSnOが形成される場合がある。0℃未満の温度で混合すると、イオン交換の反応速度が遅くなりすぎる場合がある。無酸素雰囲気での混合は、90℃以下、好ましくは70℃以下、最も好ましくは60℃以下の温度で実施することができる。混合は、層状アルカリ金属チタン酸塩とスズ(II)塩を粉砕又はミリングすることを含みうる。混合は、好ましくは、少なくとも黄色(特にレモンイエロー)の粉末が形成されるまで実施される。
【0061】
あるいは、工程2におけるイオン交換は、層状アルカリ金属チタン酸塩、スズ(II)塩、及び水性媒体を組み合わせ、層状アルカリ金属チタン酸塩とスズ(II)塩を分散させて、水性媒体中の分散液を得、そして70℃以下の温度で分散液を撹拌することによって、実施されうる。より高い温度では、望ましくないSnO又はSnOの形成が生じる場合がある。分散液は、好ましくは、少なくとも黄色(特にレモンイエロー)の粉末が形成されるまで撹拌される。
【0062】
[脱水とアニーリング]
本発明の方法の工程3において、本発明の方法の工程2において得られたスズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩は、無酸素雰囲気中で脱水され、続いて、酸素を含まない雰囲気中、スズ(II)の不均化が起こる温度未満でアニールされて、SnTiOが得られる。
【0063】
スズ(II)のスズ(0)及びスズ(IV)への不均化は約350℃で起こる。不均化温度は、圧力、反応媒体の酸素及び水分有量、及び不均化を触媒しうる他の物質の存在などの反応条件に依存する。而して、特定の反応条件下では、不均化温度はまた350℃を超える場合がある。
【0064】
脱水は、好ましくは、スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩に関して、5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の含水量が達成されるまで、実施される。
【0065】
無酸素雰囲気での脱水は、好ましくは真空下又は不活性ガス流中で行われる。適切な不活性ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、及びそれらの混合物、好ましくは窒素である。真空は好ましくは動的真空である。
【0066】
工程3における脱水は、好ましくは250℃未満、より好ましくは200℃未満の温度で行われる。脱水は、100から150℃の範囲の温度での第一脱水工程3aと、150を超え250℃未満の範囲、好ましくは150を超え200℃までの範囲の温度での次の第二脱水工程3bを含みうる。第一脱水工程3aは、好ましくは0.25から5時間、より好ましくは1から4時間、最も好ましくは2から3時間、実施される。第二脱水工程3bはまた好ましくは0.25から5時間、より好ましくは1から4時間、最も好ましくは2から3時間、実施される。
【0067】
脱水後、スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩は、無酸素雰囲気でアニールされる。無酸素雰囲気でのアニーリングは、好ましくは真空下又は不活性ガス流中で行われる。適切な不活性ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、及びそれらの混合物、好ましくは窒素である。真空は好ましくは動的真空である。
【0068】
アニーリングは、250から400℃の範囲、好ましくは250から350℃の範囲、最も好ましくは275から325℃の範囲のアニーリング温度で行われる。スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩は、好ましくは1から48時間、より好ましくは3から36時間、最も好ましくは6から24時間、アニーリング温度でアニールされる。
【0069】
工程3における脱水及びアニーリングは、工程2において得られたスズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を無酸素雰囲気中で5℃/分以下、好ましくは3℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下の加熱速度でアニーリング温度まで連続的に加熱することによって実施することができる。アニーリング温度は、好ましくは250から400℃の範囲、より好ましくは250から350℃の範囲、最も好ましくは275から325℃の範囲である。スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩は、好ましくは、1から48時間、より好ましくは3から36時間、最も好ましくは6から24時間、アニーリング温度でアニールされる。
【0070】
連続加熱により脱水とアニーリングが実施される場合、加熱温度は、好ましくは、加熱温度が250℃を超える前に十分な脱水が確実に行われるように調整される。従って、工程2において得られたスズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩をアニーリング温度まで連続的に加熱することにより脱水とアニーリングが実施される場合、水分含有量は、好ましくは、温度が250℃を超える前に、スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩に対して、1重量%未満であり、より好ましくは、温度が220℃を超える前に0.5重量%未満であり、最も好ましくは、温度が200℃を超える前に0.5重量%未満である。
【0071】
[洗浄と乾燥]
本発明の方法は、SnTiOを洗浄し乾燥させる追加の工程4を含みうる。洗浄は、アニーリング後、好ましくは60℃以下の温度に冷却した後に実施されうる。洗浄工程により、チタン酸アルカリ金属のアルカリ金属とスズ(II)塩の陰イオンから形成されたアルカリ金属塩を除去することができる。洗浄工程において使用される溶媒は、極性溶媒又は極性溶媒の混合物、好ましくは水、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びアセトンの群から選択される一又は複数種の溶媒、最も好ましくは水及び/又はエタノールである。洗浄工程は、工程3において得られたSnTiOを洗浄する一又は複数の工程を含み得、ここで、同じ又は異なる溶媒又は溶媒混合物が各工程において使用されうる。洗浄には、溶媒の添加後にSnTiOを濾過、懸濁、遠心分離、又はデカンテーションすることが含まれうる。
【0072】
洗浄後、SnTiOは続いて乾燥される。乾燥は、20から250℃の範囲、好ましくは50から150℃の範囲、最も好ましくは70から120℃の範囲の温度で行われうる。乾燥は、静的乾燥、ガス流での乾燥、又は真空下での乾燥でありうる。
【0073】
[相転移の誘導]
一般に、アニーリング後の温度及び冷却は、次に詳述するように、30から100℃の温度範囲における相転移点のために、本発明の材料の構造に影響を及ぼしうる。而して、相転移は、本発明のSnTiO材料のアニーリング後の、冷却中、洗浄中又は乾燥中に誘導されうる。相転移はまたアニーリング後に別個の後続の工程によって、例えば、材料を相転移点を超える温度に加熱し、その後冷却することによって、誘導されうる。
【0074】
相転移は、この温度範囲での相転移点のため、30から100℃の範囲、好ましくは35から80℃の範囲、最も好ましくは40から60℃の範囲で起こることが見出された。次の考慮事項では、低温相という用語は、相転移点より下の熱力学的に安定な相を指し、高温相という用語は、相転移点より上の熱力学的に安定な相を指す。
【0075】
高温相は低温相に比べて対称性が高いと考えられる。相転移を誘導することにより、非中心対称構造を有する低温相でのSnTiOの調製が可能になる。より具体的には、相転移を誘導することにより、非中心対称層からなる層状結晶構造を有するSnTiOの調製が可能になる。よって、強誘電性を示すSnTiO材料を得ることができることが期待される。
【0076】
相転移を誘導して低温相を形成するために、材料は、好ましくは、相転移点より高い温度から相転移より低い温度まで、0.1℃/分以下の冷却速度で冷却される。高温相の安定化のために、材料は、好ましくは、本発明の工程3のアニーリング温度から直接、又は相転移点よりも高い任意の他の温度から、1℃/分以上の速度で室温まで冷却され、これは急冷とも呼ばれる。高温相が別個の後続工程によって誘導される場合、本発明の材料は、例えば、相転移が完了するまで相転移点を超える温度でアニールされ得、その後、1℃/分以上の速度で室温に冷却されうる。相転移が誘導された後、洗浄及び乾燥を実施することもできる。
【0077】
一般に、本発明の材料の結晶構造は、X線粉末回折(XRPD)によって決定することができ、低温相と高温相を区別することができる。詳細については、「X線粉末回折(XRPD)」というタイトルのセクションを参照のこと。
【0078】
[高圧相転移]
本発明の方法は、ペロブスカイト型構造、特に正方晶ペロブスカイト型の結晶構造を有するSnTiOを得るために、SnTiOを4GPa以上、好ましくは6GPa以上、より好ましくは8GPa以上の圧力に曝露する追加の工程を含みうる。ペロブスカイト型構造を有するSnTiOは、強誘電性又は圧電性を示しうる。SnTiOを圧力に曝露するこの追加の工程では、圧力は更により好ましくは15GPa以上、最も好ましくは20GPa以上である。
【0079】
高圧への曝露によって得られたペロブスカイト型構造を有するSnTiOは、圧力が解放される前に急冷され得、圧力解放中及び解放後の相転移が抑制される。急冷は、好ましくは、ペロブスカイト型構造を有するSnTiOをアニーリング温度からペロブスカイト型構造が安定する温度まで1℃/秒以上の平均冷却速度、より好ましくは2℃/秒以上の冷却速度、最も好ましくは5℃/秒以上で冷却することにより実施される。本発明の文脈において、相が熱力学的に安定である場合、又は熱力学的により安定な相への相転移が速度論的に阻害される場合、相は安定であると考えられる。
【0080】
図27は、それぞれ18.1GPa(灰色の実線)と20.8GPa(破線)の最大圧力に曝露されたSnTiOの粉末X線回折パターンを示している。データセットは、0.28Aのシンクロトロン放射線から得た。測定は、圧力媒体としてネオンを使用して、ダイヤモンドアンビルセルで実施した。圧力は周囲圧から最大圧まで徐々に上昇させた。約8.5°、9.75°及び13.75°での反射が結晶化ネオンに割り当てられる。マークされたピーク位置(垂直の黒い実線)は、周囲圧での正方晶ペロブスカイトの予測強度とピーク位置を示している。
【0081】
二つの回折図は、比較的柔軟な材料の格子定数の圧縮によるピーク位置の典型的なシフトを示している。18.1GPaの最大圧に曝露されたSnTiOのX線粉末回折パターンは、図6の層状SnTiOの回折パターンと類似している。20.8GPaでのパターンの約6.1°での僅かに増加した強度は、本発明の第一の態様に係る層状SnTiOとは異なる相の形成を示している。高圧によるピークシフトが想定される場合、ピーク位置は、垂直線で示されているように、予測された正方晶ペロブスカイトの最高強度の反射に非常によくフィットしている。しかし、全体的な強度が非常に小さいため、取得したデータセットからそれ以上の反射を割り当てることはできない。而して、データは、材料が約20GPaの圧力で高圧改質体に転換することを示している。構造の(加圧)急冷はその場合、周囲条件で安定した正方晶改質体をもたらす可能性がある。
【0082】
[調製方法により得ることができる材料]
本発明の第三の態様に係る調製方法は、本発明の第一又は第二の態様、特に本発明の第一の態様に係る材料をもたらす。加えて、本発明の方法は、Ti(IV)イオン、Ti(IV)イオン及び/又はSn(II)イオンを部分的に置換しうるイオンMが、歪んだ配位圏を示し、及び/又は構造全体(例えば、それぞれ八面体及び六角形内)の中心位置を占有しない材料を生じうる。そのようなSnTiO及びSnTi1-x材料は、それぞれ、Oイオンの2つの原子層によって構成され、Oイオンの(サブ)層の八面体ボイドの2/3がTi(IV)イオンで満たされているOイオンの最密(サブ)層間にSn(II)イオンを示す。これらの材料それ自体が、本発明の別の態様である。それらは対称性の低い結晶構造を有しており、それらを製造する方法の観点以外では、上記の定義を超えてそれらの結晶構造を定義することは不可能である。それらの製造方法によって更に定まるそのような材料は、本発明の第四の態様の主題である。
【0083】
第四の態様では、本発明は、本発明の第三の態様に係る調製方法によって得ることができる式SnTiOの材料を対象とし、ここで、Tiは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であるMで置換されていてもよい。Mは、好ましくは、Si、Ge、Zr及びHfの群から選択される一又は複数の元素であり、より好ましくは、Zr及びHfからなる群から選択される一又は複数の元素である。而して、材料は、xが0以上で0.25以下の範囲にある式SnTi1-xを有しうる。
【0084】
本発明の第三の態様に係る調製方法によって得ることができる式SnTiOの材料は、非中心対称層からなる層状結晶構造を有しうる。従って、この材料は強誘電性を示すことが期待できる。
【0085】
[強誘電特性]
本発明の第一及び第二の態様に係る材料、並びに本発明の第三の態様に係る調製方法によって調製された材料は、非中心対称対称性を有し得、従って、強誘電性を示すことが期待できる。
【0086】
強誘電性は、材料の内部電気双極子と材料の格子との結合に基づいている。而して、格子の変化は自発分極の変化をもたらす。材料の格子寸法に影響を与える2つのパラメーターは、力と温度である。材料に外部応力が加えられたときに表面電荷が発生することを圧電性と呼ぶ。温度の変化に応じた材料の自発分極の変化を焦電性と呼ぶ。21の非中心対称クラスがあり、そのうち20は圧電性である。圧電クラスの中で、10は焦電性であり、つまり、温度と共に変化する自発電気分極性を有している。焦電材料の中には、強誘電性のものがある。強誘電性結晶は、強磁性結晶と同様に、幾つかの転移温度とドメイン構造ヒステリシスを示すことがしばしばある。
【0087】
本発明の第二の態様に係る材料はまた強誘電性を示しうる。
【0088】
本発明の材料の強誘電特性を増強するために、相転移を材料に誘導することができる。
【0089】
その潜在的な強誘電性のために、本発明の材料は、強誘電性素子又はデバイスにおいて強誘電性材料として使用することができる。
【0090】
[強誘電体材料を含むデバイス]
上述のように、本発明の第五の態様は、強誘電体材料を含むデバイスであって、強誘電体材料が、本発明の第一の態様に係る材料、本発明の第二の態様に係る材料、及び本発明の第四の態様に係る材料の群から選択される少なくとも一種の材料を含む、デバイスに関する。
【0091】
強誘電体材料を含むデバイスは、強誘電体コンデンサ、例えば強誘電体ランダムアクセスメモリ又はチューナブルキャパシタ、強誘電体トンネル接合素子(FTJ)、マルチフェロイック素子、超音波イメージング用圧電素子、アクチュエータ、データ記憶用途用の電気光学材料、サーミスタ、スイッチ、例えばトランスチャージャ又はトランスポラライザ、発振器、フィルタ、光偏向器、変調器、ディスプレイ等々の群から選択されるデバイスでありうる。
【0092】
強誘電体コンデンサは、強誘電体材料をベースにしたコンデンサである。対照的に、従来のコンデンサは誘電体材料に基づいている。強誘電体コンデンサは、デジタル電子機器においてデータストレージデバイスとして使用できる。より具体的には、強誘電体コンデンサは、強誘電体ランダムアクセスメモリ(強誘電体RAM)の部品として使用することができる。
【0093】
強誘電体ランダムアクセスメモリでは、誘電体層の代わりに強誘電体層を使用して、保存されたデータの不揮発性を実現し、電源を切っても情報は維持される。
【0094】
強誘電体コンデンサは、アナログ電子機器においてチューナブルキャパシタとしてもまた使用できる。例えば、強誘電体コンデンサは電圧制御コンデンサとして使用できる。
【0095】
強誘電体トンネル接合素子は、金属電極間に配置された強誘電体層を含み、強誘電体層の厚さはナノメートル範囲で、十分に小さく電子のトンネル現象を可能にする。
【0096】
マルチフェロイック素子は、材料内の磁気的及び強誘電的秩序化が合わせられた材料である。
【0097】
サーミスタは、抵抗が温度に依存する抵抗器であり、温度依存性は標準的抵抗器よりも大幅に顕著である。
【0098】
アクチュエータは、メカニズム又はシステムの移動と制御を担う機械の部品である。
【0099】
[強誘電体素子での使用]
本発明のこれらの態様は、強誘電体素子における本発明の第一及び第二の態様に係る材料及び本発明の第四の態様に係る材料の使用に関する。本発明の意味の強誘電体素子は、その機能が強誘電性に基づく任意の素子又は部品である。
【0100】
[ハイ-k誘電体としての使用]
最後の態様では、本発明は、ハイ-k誘電体としての本発明の第一及び第二の態様に係る材料並びに本発明の第四の態様に係る材料の使用に関する。
【0101】
ハイ-k誘電体という用語は、二酸化ケイ素と比較して誘電率κが高い材料を指す。ハイ-k誘電体は、半導体製造プロセスにおいて使用され、通常、二酸化ケイ素ゲート誘電体又はデバイスの別の誘電体層を置き換えるために使用される。
【0102】
高い誘電率には、広範囲の周波数での分極率が必要である。殆どの用途では、マイクロ波領域が最も興味深い。ここでは、価電子の結合が強くない材料(孤立電子対など)と、構造の歪みによる固有の双極子(歪んだTiO八面体など)が有利である。BaTiO及びPb(Zr,Ti)Oは、通常は相転移でピークに達するその高い誘電率のため、ハイ-k候補と考えられてきた。有望な相転移はまたSnTiOに見出された(図17及び19)。更に、SnTiOは、その顕著な二次元特性、つまりその層状構造により、薄膜処理に利点をもたらす。
【実施例
【0103】
実施例と計算
[調製]
上で紹介したように、Sn(II)のSn(0)とSn(IV)への不均化を回避することは実験的に困難である。このシナリオを迂回するために、層状チタン酸カリウム前駆体を合成して、カリウムからスズへの低温イオン交換反応を可能にした。最初に、KCO及びTiO-ナノ粒子(P25)の混合物を空気中で600℃まで12時間加熱した。次に、形成された層状チタン酸カリウム前駆体KTiを、レモンイエローの粉末が形成されるまで、SnCl・2HOと一緒に粉砕した。この粉末をアンプルに移し、130℃において2.5時間、次に動的真空下で200℃において更に2.5時間の二工程で脱水した。最終的に、粉末は、SnTiOが形成されるまで、静的真空下で300℃において24時間アニールした。KClを除去するために、得られたSnTiO粉末をHOで2回、エタノールで1回洗浄した。赤い均質な粉末が得られた(図1a)。横方向に数百ナノメートル、軸方向に数十ナノメートルの小さなプレートレットが形成された(図1b)。
【0104】
[特性評価]
[元素分析]
表1は、誘導結合プラズマ原子発光分光法を使用した、上述の調製方法によって得られた異なる洗浄バッチの材料の元素分析の結果を示している。元素分析では、VARIAN VISTA RL CCD Simultaneous ICP-AESを使用した。元素分析の結果は、化学量論的SnTiOを裏付ける。
【0105】
[熱重量分析]
上述の空気中での調製方法によって得られた材料の熱重量分析測定は、約350℃における材料の重量増加を示している(図10を参照)。而して、Snの酸化状態+IIは、空気中のSnTiOがSnOとTiOに酸化されることによって間接的に証明された。得られた約5重量%の重量増加は、約7重量%の理論値とまずまず一致する。僅かなずれは、部分的に酸化された表面種によって説明できる。
【0106】
[走査型透過電子顕微鏡(STEM)]
サンプルを、粉末サンプルと純粋エタノールの超音波処理混合物から調製した。この混合物を、穴の開いた炭素膜を備えた銅グリッド上に滴下して配した。低損失EELS取得及びCs補正STEM画像を、プローブ形成レンズシステム用の収差補正器、高輝度電界放出(XFEGTM)光源、モノクロメーター及び3000kVで動作する高分解能電子エネルギー損失分光計(Gatan966 GIF)を備えたFEI TitanThemis60-300で取得した。
EELSデータは、0.2eVのエネルギー分解能を特徴とする単色STEMスポットモードで取得した。スペクトル取得には0.1eVの分散を使用した。サブピクセルスキャンと短い取得時間を、サンプルの電子ビームにより誘発される損傷を回避するために使用した。
STEMは、肉眼で見えるプレートレット形態を裏付ける層状型構造を明らかにした(図1d)。構造は(2つの積層ベクトルS1とS2によって示されるように)重度の積層欠陥があり、通常のタイプの上部構造順序付けを示していないことは明らかである。
【0107】
[X線粉末回折(XRPD)]
Stoe STADI P回折計(Moκα1放射線、Ge(111)モノクロメーター、Mythen検出器)をデバイ・シェラー幾何学での粉末回折測定に、TOPAS6.0を構造精密化に使用した。
【0108】
重度の積層欠陥の性質(図1a及び1bのSTEM)のため、イルメナイト由来の対称性を使用した指数付けの試みと、S.Bette等,Journal of Applied Crystallography48(2015)1706によって記載されているようなX線粉末回折パターンの指数付け(LSI指数付け)のための特異値分解の反復使用は可能ではなかった。
【0109】
バルクSnTiOの初期構造モデルは、T.Fix等 Crystal Growth & Design 11(2011)1422により作成された予測から導き出した。その予測によれば、SnTiOはイルメナイト型構造で結晶化すると予想される。
【0110】
本発明の第一の態様に係る材料の回折パターンは、様々に積層された仮想のポリタイプの重ね合わせによって首尾よくモデル化された(表2を参照)。5つの異なる積層順を表す合計5通りの別個のポリタイプを検討した。
【0111】
5通りの結晶構造全てにおいて、層は2つのスズ席、2つのチタン席、及び6つの酸素席によって記述される。一ポリタイプ内と全てのポリタイプを通じて同一の層構成を維持するために、座標を実空間において精密化した。加えて、3つの酸素席のz座標もまた制約した。各ポリタイプに対して個別に精密化された唯一のパラメーターは、積層パターンの異なる相対頻度を説明するスケールファクターと、コヒーレント散乱ドメインの異なる拡張を説明する結晶サイズパラメーターであった。
【0112】
電子エネルギー損失分光法(EELS)と密度汎関数理論(DFT)によって更に裏付けられるように、SnTiO層の積層順序の変更は、層構成の変化も基本的な三方晶対称性からの逸脱も引き起こさないと想定した。SnTiOのリートベルド精密化は、プログラムTOPAS6.0 2017,Bruker AXSによって実行した。SnOとKTi17が少量の不純物相として生じ、精密化に含まれていた(図6を参照)。
【0113】
【0114】
従って、5つの仮想ポリタイプを、空間群P1と、A.Le Bail等,Materials Research Bulletin 23(1988)447によって記載されたLeBailフィットによって決定した、制約付き格子パラメーターを持つ疑三方セルで作製し、ピークプロファイルはR.W.Cheary等 Journal of Applied Crystallography 25(1992),109に記載されている基本的パラメーターアプローチによってモデル化した。
【0115】
一つの個々の層の精密化した原子座標を表3に示し、最終の関連したリートベルド精密化の結果を図6に示す。
【0116】
【0117】
SnTiOの結晶構造は、c軸に直交する稜共有TiO八面体の層からなる。z方向はc軸に対応する。層内では、Ti席の1/3が空であり、ハニカム状格子になる(図3a)。Sn2+イオンは、Ti-空隙の上下に直接位置させられる。原子間距離を表4に示す。
【0118】
【0119】
本発明の第一の態様に係る材料の積層を、M.M.J.Treacy等 Proceedings of the Royal Society of London.Series A:Mathematical and Physical Sciences 433(1991)499に記載されているように、DIFFaXプログラムを使用して更に研究した。再帰モードでDIFFaXルーチンを使用して、積層欠陥のあるSnTiOのXRPDパターンをシミュレートした。シミュレーションには、精密化した層構成を使用した。ピークプロファイルは、疑似フォークト関数を使用してシミュレートした。
【0120】
異なる組み合わせの積層ベクトルS1及びS2を使用する様々な欠陥モデルをシミュレートした。ABC型(積層ベクトル:S1)、ACB型(積層ベクトル:S2)及びAB型の積層(積層ベクトル:S1とS2を交互に)間の結晶学的連晶を、コヒーレント積層されたセクションの拡張について、可変パラメーターx及びyと共に4×4遷移確率行列(表5を参照)を使用してシミュレートした。
【0121】
【0122】
S1積層からS2積層への各遷移を、欠陥発生後には最小数の層が無欠陥であるはずであるように、所定の範囲を持ちうる欠陥と考えた追加のシミュレーションをまた実行した。これは、i-1が欠陥の範囲であり、可変パラメーターs(シャープネス)が最小欠陥範囲の後の追加の欠陥の確率である、2i×2i遷移確率行列(表6を参照)によって実現された。
【0123】
何れの場合も、一つのパラメーターのみを系統的に変化させた一群のシミュレーションを実施した。
【0124】
【0125】
基本的積層型ABC(図7)、ACB及びABのX線粉末回折パターンをシミュレートし、SnTiOの測定されたX線粉末回折パターンと比較した。明らかに、測定されたパターンは、各個々の基本的積層型よりも多くの反射を示す。しかし、3つの基本的積層型の重ね合わせは、測定されたパターン、特に12.5°、21°及び26°2θ付近の特徴的な「トリプレット」と良好な類似性を示す。「外側」の2つの反射(104)及び(015)はABC/ACB型の積層(S1又はS2のみ)と相関し、「中央」の反射(103)はそれぞれAB型の積層(S1及びS2)と相関する。シミュレートされたX線粉末回折パターン(図7)は、同じ位置で同じ数の反射を示し、所定の反射強度において異なるのみであるため、X線粉末回折パターンからのABC型とACB型の積層の区別は非常に難しいことに留意のこと。SnTiOの微細構造には、これらの積層型のそれぞれのコヒーレント散乱ドメインが存在すると結論付けることができる。
【0126】
更にDIFFaXシミュレーションを行うと、AB型の積層が積層欠陥の性質を完全には記述していないことが明らかになる(図13)。積層ベクトルS1からS2へとその逆の各遷移が双晶の観点から欠陥と考えられる場合、各双晶ドメインには所定の拡張がありうる。その結果、各欠陥には所定の範囲がある。異なる範囲を使用した双晶の様々なシミュレーションを実施した(図13)。範囲が0に設定されている場合、双晶化は純粋に統計的に発生するため、欠陥確率が高くなると、反射が大幅に広がる(図13a)。欠陥確率が更に増加すると、最終的にABC/ACB型のXRPDパターンがAB型のパターンに転換される。範囲を広げることにより、欠陥確率の増加によるピークの広がりはあまり目立たなくなる(図13b-d)。また、約9、12-14、20-21及び26-27°2θでの特徴的なピークトリプレットが、シミュレートされたパターンで発生する。測定されたXRPDパターンとシミュレートされたXRPDパターンの間の最大の類似性は、2の範囲で達成される(図13c)。よって、非常に小さいコヒーレント散乱ドメインのために、中心反射はかなり広いプロファイルを持ち、これは粉末パターンでは観察されない。ゼロより大きい双晶範囲とそれぞれの積層型(ABCB及びABCACB)を追加的に考慮することによってのみ、シャープな反射プロファイルを再現できる。
【0127】
DIFFaXシミュレーションは、均一な積層順序を示す、幾つかのコヒーレント散乱ドメインの存在を示唆しているため、サンプルの微細構造は、幾つかの相の重ね合わせによって記述できる。よって、リートベルド精密化(図14)では、測定されたXRPDパターンは、それぞれが異なる積層順序を表すSnTiOの分離相を使用して精密化した。各相に対して同一の層構成を使用した。個々に精密化された唯一のパラメーターは、コヒーレント散乱ドメインの拡大を記述するための結晶サイズパラメーターであった。リートベルド精密化では、基本的積層順序ABC、ACB及びABを記述するためのSnTiO相の他に、双晶ドメインを記述する2つの相、ABCB及びABCACBが使用される。加えて、SnOとKTi17の結晶構造を不純物相として含めた。
【0128】
結晶子サイズ、すなわち、AB型の積層コヒーレント散乱ドメインの拡大は、低い値に精密化された。従って、計算されたパターン(図14)を単一成分に分解すると、AB型の積層SnTiO相に対して幅広い反射が示される。これは系統的なDIFFaX研究と一致している。他のSnTiOポリタイプはむしろシャープな反射を示し、関連するコヒーレント散乱ドメインのより大きな拡大を示している。要約すると、考慮された全てのSnTiOポリタイプの計算されたパターンは、かなりの強度を取得し、これは、積層順序のそれぞれが微細構造に有意な量まで存在していることを意味する。測定されたパターン(図6)への不純物相の寄与は殆ど無視できる(SnOの計算された含有量:1.3(1)wt-%、KTi17:3.1(1)wt-%)。
【0129】
本発明の第一の態様に係る材料の測定されたX線粉末回折パターンは、多相アプローチによって十分に記述されている(R-wp=10.54%、ここで、R-wpは、加重プロファイルR因子であり、これは、リートベルドフィッティングの品質を判断するためのリートベルド精密化の食い違い指数である)。計算されたパターンと測定されたパターンの最大の違いは、110反射(約16°2θ)で観察でき、これは、別個の相による双晶ドメインサイズのモデリングでは完全には十分ではないことを示している。しかし、アプローチを更に多くの相に拡張すると、精密化の過剰パラメーター化につながる。110反射が欠陥の影響を受けていないため、精密化の結果は、SnTiOの微細構造の半定量的記述と考えることができる。
【0130】
[密度汎関数理論データ]
構造の積層欠陥の性質を更に解明するために、異なる積層型の相対的安定性に関するDFT計算を実施した:(1)ABC/ACB型、(2)AB型、(3)ABCB型、及び(4)ABCACB型。適用した交換相関汎関数(LDA、GGA、HSE06)とは関係なく、適用された全ての構造モデルの違いは僅か0.14kJ・mol-1未満である(LDA;PBE:0.06kJ・mol-1;HSE06:0.01kJ・mol-1)。これらの驚くほど近いエネルギー最小値は、有限温度で全ての積層モチーフが存在することをよく証明している。
【0131】
約77.5ÅのHSEハイブリッド汎関数(VFU)で得られた式単位当たりの体積は、リートベルド精密化の76.9Åと非常によく一致している。通常のイルメナイト型構造(例えばFeTiO)の約53Åから孤立電子対含有SnTiOへのVFUの増加は、SrTiOの約57ÅからPbTiOの63Åの観察された増加と一致している。PbTiOの孤立電子対は、2層の頂点共有TiO八面体内に閉じ込められているが、R.H.S.Winterton,11 Contemporary Physics(1970),559に記載されているように、SnTiO中の孤立電子対はファンデルワールスギャップを形成し、よってより多くの空間を占有する(図2のELFをまた参照)。
【0132】
[電子エネルギー損失分光法(EELS)]
図9は、異なるチタン酸塩のTi L2,3稜の電子エネルギー損失スペクトルを示している。Ti-L2,3稜は、八面体結晶場の特徴的な分裂を示しているため、主要な構造モチーフとしてTiO八面体が確認される。具体的には、eレベル(約460eV)は、PbTiOの正方晶歪に対して敏感であることが知られている。対照的に、コランダム型Tiや他のイルメナイト型材料におけるような三方晶歪は、eレベルに影響を与えない。SnTiOに対しては観察できるピーク分裂がないため、TiO八面体の潜在的な歪はD3d対称性に制約されていると結論付けることができる。従って、原子席のz座標のみを精密化することが合理的である。
【0133】
Ti-L2,3の詳細な分析により、1.9から2.5eVの結晶場分裂(CFS)が得られる。CFSは、e-分裂が減少したため、ピークCとDの間で測定された。興味深いことに、孤立対を導入すると、ペロブスカイト型構造では値がSrTiOの2.36eVからPbTiOの1.91eVに劇的に減少し、イルメナイト型由来構造ではFeTiOの約2.06eVからSnTiOの2.27eVに増加し、同時に、両方の構造型に対して、e-ピークが減少し、半値全幅(FWHM)が同様に増加する[40]。この広幅化は、関与する軌道の混成軌道が異なり、その結果、遷移確率が異なることによって説明されている[41]
【0134】
[高磁場固体核磁気共鳴分光法(ss-NMR)]
47,49Ti固体NMRスペクトルを、Bruker Avance II-900機器(磁場21.1T)で50.73MHzのラーモア周波数で得た。Brukerの4mm低γMASプローブとBrukerの7mmシングルチャネルMASプローブを使用した。47,49Tiスペクトルでの外部参照は、CCl中のTiClの1M溶液(0ppmに設定した49Tiからの高周波信号)を用い、固体SrTiOを二次参照として使用して達成した。非選択的π/2パルスを、液体参照サンプルの49Tiでキャリブレーションした。FIDは、E.L.Hahn,80 Physical Review(1950)580に記載されているようにSolid-Echo(π/2-τ-π/2-τ-acq)を、またF.H.Larsen等,Journal of Magnetic Resonance 131(1998)144に記載されているようにQCPMG(π/2-τ-(-τ-π)-τ-acq))を使用して収集した。リサイクル遅延は、サンプルに応じて1秒から6秒の範囲であり、シグナルの完全緩和を各サンプルに対して個々に試験した。サンプルに応じて、2000から20000のスキャンを取得した。スペクトルは、単一周波数オフセットで取得した。
【0135】
実験スペクトルの解析シミュレーションは、D.Massiot等,Magnetic Resonance in Chemistry 40(2002)70、及びF.A.Perras等,Solid State Nuclear Magnetic Resonance 45(2012)36に記載されているようにDMFit及びQUESTシミュレーションパッケージを用いて実行した。利用可能な場合、等方性化学シフトδisoを提供したMASスペクトル、四重極定数C及び四重極非対称性パラメーターηを最初にフィットさせた。これらのパラメーターを、その後、静的粉末パターンのシミュレーションにおいて使用し、スパンΩとsqew kを取得した。オイラー角は、通常、量子化学計算から取得されたものに設定される。
【0136】
チタン酸塩モデル中の47,49Ti電場勾配及び核磁気遮蔽テンソルの計算は、利用可能な結晶学的データを使用して達成した。平面波ベースの密度汎関数理論の計算は、J.R.Yates等 Physical Review B 76(2007)024401によって記述されたGauge Including Projector Augmented Wave(GIPAW)アルゴリズムを用い、Biovia Materials Studioシミュレーション及びモデリングパッケージ(バージョン2017)の一部であるCASTEP DFTコードのNMRモジュールを使用して実施した。この方法は、結晶性材料の拡張格子構造のために特別に設計されている。Perdew-Burke-Ernzerhof(PBE)汎関数を、J.P.Perdew等,Physical Review Letters 77(1996)3865、及びJ.P.Perdew等,Physical Review Letters 78(1997)1396に記載されているように、全ての計算に対して一般化勾配近似(GGA)と共に使用した。ジオメトリ最適化は、次のように設定した収束許容誤差パラメーターと共にPBE汎関数を使用して実施した:10-5eV/原子、最大力:0.03eV/A、最大応力:0.05GPa、最大変位:10-3Å。EFGテンソルPASをCSAテンソルPASに関連付けるオイラー角(α、β、γ)は、プログラムEFG-Shieldを使用して抽出した。
【0137】
高磁場固体NMR分光法により、TiO八面体の歪が確認される(図4及び表S7)。得られたSnTiOの四重極定数Cは7.29MHzであり、これはTi席での局所的な歪が働いていることを示唆している。しかし、CdTiO又はZnTiOなどのイルメナイト型構造を持つ対比される他の化合物(図S9及び表S7)は、幾つかが15MHzを超える極めて大きなCを示す。よって、歪のないSrTiOから歪のあるペロブスカイト型PbTiOに観察される強い増加[44]とは対照的に、EELSのCFSでも見られたように、孤立電子対の効果がSnTiOで逆転することは驚くべきことである。電場勾配(EFG)は胞体積の関数であるため、FeTiOからSnTiOへのVFUの大幅な増加は、孤立電子対の影響を潜在的に平準化する。η=0.0と共に実験的Cのなお比較的高い値は、Cよりも高い回転軸に沿った軸対称の歪を示唆している。周期構造DFTの計算では、Cには約6.04MHzの値が示唆される。計算値は実験値より1.2MHz小さいが、ここでの一致は他のモデルに対してよりもかなり良い。この不一致は、その八面体内のTi位置の大きな変動だけでなく、積層欠陥によって引き起こされる影響に関連しているはずである。21.1Tの非常に高い磁場でも、異なるTi席を区別することはできなかったことが分かる。
【0138】
[特定の実施態様]
次に、本発明の特定の実施態様をまとめる:
【0139】
(1) 層からなる結晶構造を有する式SnTiOの材料であって、
層は、Sn(II)イオン、Ti(IV)イオン及び稜共有O八面体を含み、
稜共有O八面体はサブレイヤー、すなわち層の各々内にサブレイヤーを形成し、
Ti(IV)イオンは、稜共有O八面体の2/3内に位置させられて、稜共有TiO八面体を形成し、
稜共有TiO八面体は、サブレイヤー内にハニカム構造を形成し、ハニカム構造は、六角形内にTi(IV)空孔を持つ六角形を含み、
Sn(II)イオンは、サブレイヤーに対してTi(IV)空孔の上下に位置させられ、
Ti(IV)イオンはMで置換されていてもよく、
Mは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であり、かつ
Sn(II)イオンは、層の3つのOイオンと、層の3つのOイオンに対してアピカル位置にあるSn(II)イオンの孤立電子対を含む四面体配位圏を有する、材料。
(2) 層からなる結晶構造を有する式SnTiOの材料であって、
層は、Sn(II)イオン、Ti(IV)イオン及び稜共有O八面体を含み、
稜共有O八面体はサブレイヤー、すなわち層の各々内にサブレイヤーを形成し、
Ti(IV)イオンは、稜共有O八面体の2/3内に位置させられて、稜共有TiO八面体を形成し、
稜共有TiO八面体は、サブレイヤー内にハニカム構造を形成し、ハニカム構造は、六角形内にTi(IV)空孔を持つ六角形を含み、
Sn(II)イオンは、サブレイヤーに対してTi(IV)空孔の上下に位置させられ、
Ti(IV)イオンはMで置換されていてもよく、
Mは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であり、かつ
層は、各層が積層ベクトルS1又は積層ベクトルS2によって各隣接層に対して並進されるように積層され、
隣接する六角形の中心は、長さxを有する辺と長さyを有する辺を持つ平行四辺形を形成し、
積層ベクトルS1は、長さx×2/3xの辺と長さy×1/3yの辺に沿った複合並進であり、
積層ベクトルS2は、長さx×1/3xの辺と長さy×2/3yの辺に沿った複合並進であり、
かつ結晶構造は、積層ベクトルS1によって隣接層に対して並進される層と、積層ベクトルS2によって隣接層に対して並進される層とを含む、材料。
(3) 層からなる結晶構造を有する式SnTiOの材料であって、
層は、Sn(II)イオン、Ti(IV)イオン及び稜共有O八面体を含み、
稜共有O八面体はサブレイヤー、すなわち層の各々内にサブレイヤーを形成し、
Ti(IV)イオンは、稜共有O八面体の2/3内に位置させられて、稜共有TiO八面体を形成し、
稜共有TiO八面体は、サブレイヤー内にハニカム構造を形成し、ハニカム構造は、六角形内にTi(IV)空孔を持つ六角形を含み、
Sn(II)イオンは、サブレイヤーに対してTi(IV)空孔の上下に位置させられ、
Ti(IV)イオンはMで置換されていてもよく、
Mは、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であり、かつ
Sn(II)イオンは、アピカル位置にSn(II)イオンを持つ層の3つのOイオンを含む三方錐配位圏を有し、隣接層の最も近いOイオンまでのSn(II)イオンの距離が、その三方錐配位圏の3つのOイオンの各々に対するSn(II)イオンの距離を1.5倍以上超える、材料。
(4) Ti(IV)イオンが面内にあるように、Ti(IV)イオンが稜共有O八面体の中心に位置させられる、第1項から第3項の何れか一項に記載の材料。
(5) 積層ベクトルS1による隣接層に対する層の並進の反復と、積層ベクトルS2による隣接層に対する層の並進の反復の比が、0.1から9の範囲、好ましくは0.25から4の範囲、より好ましくは0.5から2の範囲、最も好ましくは0.8から1.3の範囲である、第1項から第4項の何れか一項に記載の材料。
(6) 結晶構造が非中心対称である、第1項から第5項の何れか一項に記載の材料。
(7) サブレイヤー内の稜共有O八面体のOイオンが最密充填され、隣接層のOイオンと六方最密充填を形成していない、第1項から第6項の何れか一項に記載の材料。
(8) Ti(IV)空孔が6稜共有TiO八面体で囲まれている、第1項から第7項の何れか一項に記載の材料。
(9) 結晶構造が三方晶である、第1項から第8項の何れか一項に記載の材料。
(10) 材料が式SnTi1-xを有し、ここで、xが0以上で0.25以下の範囲にあり、Mが第1項に記載の通りである、第1項から第9項の何れか一項に記載の材料。
(11) Mが、Si、Ge、Zr、及びHfの群から選択される一又は複数の元素であり、好ましくは、Zr及びHfからなる群から選択される一又は複数の元素である、第1項から第10項の何れか一項に記載の材料。
(12) イルメナイト型由来の構造を有する、第1項から第11項の何れか一項に記載の材料。
(13) 材料が自立型である、第1項から第12項の何れか一項に記載の材料。
(14) Ti(IV)イオンが、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であるMで置換されていてもよい、正方晶ペロブスカイト型結晶構造を有する式SnTiOの材料。
(15) 材料が式SnTi1-xを有し、ここで、xが0以上で0.25以下の範囲にあり、Mが第14項に記載の通りである、第14項に記載の材料。
(16) Mが、Si、Ge、Zr、及びHfの群から選択される一又は複数の元素であり、好ましくは、Zr及びHfからなる群から選択される一又は複数の元素である、第14項又は第15項に記載の材料。
(17) SnTiOの調製方法であって、
(1)アルカリ金属塩と酸化チタン(IV)を反応させて層状アルカリ金属チタン酸塩を得る工程;
(2)層状アルカリ金属チタン酸塩をスズ(II)塩とイオン交換して、スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を得る工程;
(3)スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を無酸素雰囲気で脱水し、続いてスズ(II)の不均化が起こる温度未満の無酸素雰囲気でアニーリングして、SnTiOを得る工程
を含み、ここで、酸化チタン(IV)のチタンが、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であるMで置換されていてもよい、方法。
(18) SnTiOを洗浄し乾燥させる追加の工程4を含む、第17項に記載の方法。
(19) 工程1における反応が、400から800℃の範囲の温度、好ましくは500から700℃、最も好ましくは550から650℃で実施される、第17項又は第18項に記載の方法。
(20) 工程1において使用されるアルカリ金属塩がアルカリ金属炭酸塩、好ましくはKCOである、第17項から第19項の何れか一項に記載の方法。
(21) 工程1において使用される酸化チタン(IV)のチタンの25モル%までがMで置換される、第17項から第20項の何れか一項に記載の方法。
(22) Mが、Si、Ge、Zr及びHfの群から選択される一又は複数の元素であり、好ましくは、Zr及びHfからなる群から選択される一又は複数の元素である、第17項から第21項の何れか一項に記載の方法。
(23) 層状アルカリ金属チタン酸塩がKTi又はLiTiOである、第17項から第22項の何れか一項に記載の方法。
(24) 工程2におけるイオン交換が、好ましくは60℃以下の温度で、層状アルカリ金属チタン酸塩とスズ(II)塩を混合することを含む、第17項から第23項の何れか一項に記載の方法。
(25) 混合が、層状アルカリ金属チタン酸塩とびスズ(II)塩を粉砕し又はミリングすることを含む、第24項に記載の方法。
(26) 工程2におけるイオン交換が、
層状アルカリ金属チタン酸塩、スズ(II)塩、及び水性媒体を組み合わせること、
層状アルカリ金属チタン酸塩とスズ(II)塩を分散させて水性媒体中の分散体を得ること、及び
70℃以下の温度で分散体を撹拌すること
を含む、第17項から第25項の何れか一項に記載の方法。
(27) 工程3における脱水が、250℃未満、好ましくは200℃未満の温度で行われる、第17項から第26項の何れか一項に記載の方法。
(28) 工程3における脱水により、スズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩に関して5重量%未満、好ましくは3重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の含水量が得られる、第17項から第27項の何れか一項に記載の方法。
(29) 工程3における脱水が、100から150℃の範囲の温度での第一の脱水工程3aと、150を超え250℃未満、好ましくは150を超え200℃までの範囲の温度でのその後の第二の脱水工程3bを含む、第27項に記載の方法。
(30) 工程3におけるアニーリングが、250から400℃の範囲、好ましくは250から350℃の範囲、最も好ましくは275から325℃の範囲の温度で行われる、第17項から第29項の何れか一項に記載の方法。
(31) 工程3における脱水及びアニーリングが、工程2において得られたスズ交換されたアルカリ金属チタン酸塩を、無酸素雰囲気でアニーリング温度まで5℃/分以下、好ましくは3℃/分以下、より好ましくは1℃以下の加熱速度で、連続的に加熱することにより実施される、第17項から第30項の何れか一項に記載の方法。
(32) 材料が式SnTi1-xを有し、ここで、xが0以上で0.25以下の範囲にある、第17項から第31項の何れか一項に記載の方法。
(33) ペロブスカイト型構造を有するSnTiOを得るために、SnTiOを、4GPa以上、好ましくは6GPa以上、より好ましくは8GPa以上、更により好ましくは15GPa以上、最も好ましくは20GPa以上の圧力に曝露する追加の工程を含む、第17項から第32項の何れか一項に記載の方法。
(34) 圧力解放中及び圧力解放後の相転移が抑制されるように、圧力が解放される前にペロブスカイト型構造を有するSnTiOを急冷する追加の工程を含む、第33項に記載の方法。
(35) Tiが、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であるMで置換されていてもよい、第17項から第32項の調製方法によって得ることができる式SnTiOの材料。
(36) 材料が式SnTi1-xを有し、ここで、xが0以上で0.25以下の範囲にある、第35項に記載の材料。
(37) 材料が、Oイオンの2つの原子層によって構成されるOイオンの最密充填サブレイヤーを含み、
Ti(IV)イオンが、Oイオンの最密充填サブレイヤーの八面体ボイドの2/3に位置させられ、かつ
Sn(II)イオンが、Oイオンのそれぞれの隣接する最密充填サブレイヤー間に位置させられている、
第35項又は第36項に記載の材料。
(38) Tiが、第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であるMで置換されていてもよい、第33項又は第34項の調製方法によって得ることができる式SnTiOの材料。
(39) 材料が式SnTi1-xを有し、ここで、xが0以上で0.25以下の範囲にある、第38項に記載の材料。
(40) 強誘電体材料を含むデバイスであって、強誘電体材料が、第1項から第13項の材料及び第14項から第16項の材料の群から選択される少なくとも一種の材料を含むデバイス。
(41) 強誘電体材料が第14項から第16項の材料である、第40項に記載のデバイス。
(42) 強誘電体素子における第1項から第13項の何れか一項の材料の使用。
(43) 強誘電体素子における第14項から第16項の何れか一項の材料の使用。
(44) 強誘電体素子における第35項から第37項の何れか一項の材料の使用。
(45) 強誘電体素子における第38項又は第39項の材料の使用。
(46) Mが第4族及び第14族元素から選択される一又は複数の元素であり、xが0以上で0.25以下の範囲にある、式SnTiO又はSnTi1-xの材料であって、
材料は、Oイオンの2つの原子層によって構成される、Oイオンの最密充填層を含み、
Ti(IV)イオンが、Oイオンの最密充填層の八面体ボイドの2/3に位置させられ、かつ
Sn(II)イオンが、Oイオンのそれぞれの隣接する最密充填サブレイヤー間に位置させられている、材料。
(47) ハイ-k誘電体としての第1項から第13項の何れか一項の材料の使用。
(48) ハイ-k誘電体としての第14項から第16項の何れか一項の材料の使用。
(49) ハイ-k誘電体としての第35項から第37項の何れか一項の材料の使用。
(50) ハイ-k誘電体としての第38項又は第39項の材料の使用。
図1a-d】
図2
図3a-b】
図4a-b】
図5a-b】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a-b】
図13c-d】
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25a-b】
図26
図27