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特許7408644N個のスイッチングセルを有するブーストコンバータを制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】N個のスイッチングセルを有するブーストコンバータを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
H02M3/155 P
H02M3/155 W
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021516479
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2019075225
(87)【国際公開番号】W WO2020069878
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】1858626
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルーハナ, ナジブ
(72)【発明者】
【氏名】マルーム, アブデルマーレク
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169393(JP,A)
【文献】特開2019-146369(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0057119(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nがゼロでない自然整数であるN個のスイッチングセルを伴うブーストコンバータ(2)を同期パルス幅変調モードで制御するための方法であって、前記コンバータが電圧源からDC電圧である入力電圧(Vin)を入力部で受電し、前記入力電圧(Vin)以上の出力電圧(Vout)を出力部で給電し、前記方法が、
- 前記ブーストコンバータ(2)の前記入力電圧(Vin)および前記出力電圧(Vout)を測定するためのステップと、
- 前記ブーストコンバータ(2)の連立方程式を全体的に線形化するように設計された出力ベクトル(y)を決定するためのステップと、
- 前記コンバータの前記出力部の電気的負荷内の電力変動
を計算するためのステップと、
- 前記出力ベクトル(y)の二次微分値
、前記電気的負荷内の前記電力の微分値
および前記測定した入力電圧(Vin)と出力電圧(Vout)との比率の関数として前記コンバータのN個のデューティサイクル(α)を決定するためのステップと、
- 前記決定したデューティサイクル(α)の関数として、前記コンバータ(2)の各々のスイッチングセル(k)を制御するためのステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記コンバータがN>1個のスイッチングセル(k)を備えるとき、前記N個のデューティサイクルを決定するための前記ステップが、各々のスイッチングセル(k)を通過するエネルギーの流れ
の計算を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記N個のデューティサイクルを決定するための前記ステップが、
- 下記の数式
の適用により第2のスイッチングセルから始めて前記スイッチングセルについての前記計算したエネルギーの流れ
の総和の関数として第1のスイッチングセル(k=1)に関する前記デューティサイクル(α)の計算
を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記N個のデューティサイクルを決定するための前記ステップが、下記の連立方程式、
の適用により前記エネルギーの流れ
の関数として、前記第1のもの以外の各々のスイッチングセル(k>1)の前記デューティサイクルの計算を含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記コンバータが単一のスイッチングセルを備えるときに、前記デューティサイクルを決定するための前記ステップが、下記の方程式、
の適用を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各々のスイッチングセルを制御するための前記ステップが、各々のスイッチングセルのための制御信号(PWM)の生成であって、前記制御信号が前記決定したデューティサイクル(αk=1,...,N)と前記コンバータ(2)にチョッピング周波数を課す高周波対称三角波キャリア信号(carrier)との間の論理的な比較の関数である、生成を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記比較が、
前記第1のスイッチングセル(k=1)に関して、
・α≧carrierであれば、PWM=1、
・そうでなければ、PWM=0、
他のスイッチングセル(k>1)に関して、
・α≧carrierであれば、PWM=1、
・そうでなければ、PWM=0、
ここでcarrierは2qπ/Nだけcarrierから位相シフトされ、ここではqは2の自然整数倍である
ことを含むことを特徴とする、請求項3に従属する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブーストコンバータ(2)が、各々のスイッチングセル用の、インダクタンス(L)を含み、前記出力ベクトル(y)がさらに、各々のインダクタンス(L)に関して測定される電流(i)の関数として計算されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項6または請求項7に従属するときに、各々のインダクタンス(L)について前記測定される電流(i)の平均値が、パワースイッチのチョッピングの生成のために使用されるN個のキャリアの各々の最小値または最大値におけるサンプリングにより求められることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
DC電源(1)と、N個のスイッチングセルを伴うブーストコンバータ(2)と、DC-AC電圧コンバータ(3)と、電気機械(4)と、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実行するように設計された前記ブーストコンバータを制御するためのデバイスとを備える、電気アセンブリ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N個のスイッチングセルを伴うブースト型コンバータを制御するための方法に関する。
【0002】
本発明は、昇圧DC電圧コンバータであるDC/DCブーストコンバータに関する。
【背景技術】
【0003】
ハイブリッド車両または電動車両の分野では、知られている解決策は、図1に示したような、電気駆動機械4を備える電気アセンブリ10内にブーストコンバータ2を採用することである。
【0004】
このような電気アセンブリ10では、ブーストコンバータ2は、電圧インバータ3および電気機械4の上流に設置され、続流電源と考えられる。
【0005】
ブーストコンバータ2は、しかしながら電源1および入力フィルタの下流に置かれる。
【0006】
ブーストコンバータ2は、DC-DC型のコンバータである。その目的は、これゆえ、入力部で測定されるDC電圧以上のDC電圧で電力を供給している負荷を給電することである。
【0007】
このタイプのコンバータは、非最小位相系である。実際、出力電圧を制御部につなげる伝達関数(H(s)と表記される)は、正の実数部を有する複素平面ではゼロを示す。
【0008】
所与の安定動作点についての小信号モデル開発および線形化によれば、伝達関数H(s)は、下記の形式を取る:
ここでz>0、p<0およびp<0であり、これらはそれぞれ、ゼロおよび伝達関数H(s)の極である。
【0009】
さらに、ブーストコンバータは、初期には入力の変動の逆数である出力応答を有する非最小位相系である。出力は、安定点に向けて収束する前に発散する傾向がある。これは出力電圧の不安定化フェーズと呼ばれる。さらに、一方で出力電圧の様々な状態と他方では制御との間の関係は非線形である。
【0010】
したがって、一般的な問題は、N個のスイッチングセルを伴うブーストコンバータの安定で高速な制御であり、ここではNはゼロでない自然整数である。
【0011】
特に、米国特許出願公開第2017/0257038(A1)号という文書は、N個の位相を伴うブーストコンバータを制御するための方法を記述する先行技術から知られており、ここでNはゼロでない自然整数である。この方法は、システムのチョッピング周波数を修正することを目的とし、DCバスの共鳴周波数を避けるために様々なセルの制御コマンド同士の間に位相シフトを加える。しかしながら、このような解決策は、同時に安定で、動的でそして高速である制御を得ることを可能にしない。
【発明の概要】
【0012】
したがって、良く知られている問題は、外部干渉効果に対する制御のダイナミックレンジを制限する傾向があるループを縦つなぎにすることを伴う制御を使用する代わりにこのようなブーストコンバータのより安定で高速な制御を得ることである。
【0013】
方法は、Nがゼロでない自然整数であるN個のスイッチングセルを伴うブーストコンバータを同期パルス幅変調を使用して制御するために提供され、上記コンバータが電源からDC電圧Vinを入力部で受電し、上記入力電圧Vin以上の出力電圧Voutを出力部に給電し、上記方法が、
- 前記ブーストコンバータの上記入力電圧Vinおよび上記出力電圧Voutを測定するためのステップと、
- 上記ブーストコンバータの連立方程式を全体的に線形化するように設計された出力ベクトルyを決定するためのステップと、
- 上記コンバータの上記出力部の電気的負荷内の電力の変動
を計算するためのステップと、
- 上記出力ベクトルyの二次微分値
、上記電気的負荷内の上記電力の微分値
および上記測定した入力電圧Vinと出力電圧Voutとの間の比率の関数として上記コンバータのN個のデューティサイクルを決定するためのステップと、
- 決定した上記デューティサイクルの関数として上記コンバータの各々のスイッチングセルを制御するためのステップとを含む。
【0014】
このように、全体的な線形化を介したN個のスイッチングセルを伴うコンバータの非線形制御および誤差の安定で漸近的な収束を保証する制御を通した非線形性の補償によって、制御方法を得ることができる。この手法は、出力電圧が電圧インバータの入力部のデカップリングキャパシタの端子同士をまたいで測定されるDC-DCコンバータの出力電圧がユーザにより設定された設定値電圧に調整され、一方で同時にシステムの総合的な安定性を保証しそして外部干渉効果に対する比較的良好な反応性および制御の動的な挙動を提供することを可能にする。
【0015】
有利なことにそして非限定的な方式で、上記コンバータがN>1個のスイッチングセルを備えるとき、上記N個のデューティサイクルを決定するための上記ステップが、各々のスイッチングセルを通過するエネルギーの流れ
の計算を含む。このように、計算を、コンバータの動的な挙動を考慮して行うことができる。
【0016】
有利なことにそして非限定的な方式で、上記N個のデューティサイクルを決定するための上記ステップが、
- 下記の数式
の適用により第2のスイッチングセルから始めて上記スイッチングセルについての計算した上記エネルギーの流れ
の総和の関数として第1のスイッチングセル(k=1)に関する上記デューティサイクル(α)の計算
を含む。
【0017】
有利なことにそして非限定的な方式で、上記N個のデューティサイクルを決定するための上記ステップが、下記の連立方程式、
の適用により上記計算したエネルギーの流れの関数として、第1のスイッチングセル以外の各々のスイッチングセルの上記デューティサイクルの上記計算を含む。
【0018】
有利なことにそして非限定的な方式で、上記コンバータが単一のスイッチングセルを備えるときに、上記デューティサイクルを決定するための上記ステップが、下記の方程式、
の適用を含む。
【0019】
このように、上記デューティサイクルを計算するためのより単純なステップを、上記コンバータが1つのスイッチングセルを含むだけのとき行うことができる。
【0020】
有利なことにそして非限定的な方式で、各々のスイッチングセルを制御するための上記ステップが、各々のスイッチングセルのための制御信号の生成を含み、上記制御信号は上記決定したデューティサイクルと上記コンバータにチョッピング周波数を課す高周波対称三角波キャリア信号との間の論理的な比較の関数である。有利なことにそして非限定的な方式で、上記比較が、
上記第1のスイッチングセル(k=1)に関して、
・α≧carrierであれば、PWM=1、
・そうでなければ、PWM=0、
他のスイッチングセル(k>1)に関して、
・α≧carrierであれば、PWM=1、
・そうでなければ、PWM=0、
ここでcarrierは2qπ/Nだけcarrierから位相シフトされ、ここではqは2の自然整数倍である、ことを含む。
【0021】
このように、上記制御ステップは、このステップの高速の実行を確実にする単純な論理的な比較に基づく。
【0022】
有利なことにそして非限定的な方式で、各々のスイッチングセルに関して、上記ブーストコンバータが、インダクタンスを含み、上記出力ベクトルが、さらに、各々のインダクタンスに関して測定される電流の関数として計算される。このように、上記出力ベクトルを、信頼性のある方式で計算することができる。
【0023】
有利なことにそして非限定的な方式で、各々のインダクタンスについて測定される上記電流の平均値が、最小値または最大値において、パワースイッチのチョッピングの生成のために使用されるN個のキャリアの各々をサンプリングすることにより求められる。
【0024】
本発明はまた、DC電源と、N個のスイッチングセルを伴うブーストコンバータと、DC-AC電圧コンバータと、電気機械と、これまでに記述したような方法を実行するように設計された前記ブーストコンバータを制御するためのデバイスとを備える電気アセンブリにも関する。
【0025】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例として与えられた添付した図面を参照して、本発明の1つの特有な実施形態の以降に提示される説明を読むと明確になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による電力供給装置の模式的回路図である。
図2】本発明の第1の実施形態に従って制御されるN相を伴うブーストコンバータの模式図であり、Nはゼロでない自然整数であり、ここでは3よりも大きい。
図3】本発明に従って、ブーストコンバータの出力部の電力の変動を計算するためのステップの模式図である。
図4】3個のインターレースされたスイッチングセルを伴う一例において、本発明の第1の実施形態に関する電流をサンプリングするためのステップの図式表示である。
図5】本発明の第1の実施形態による非線形制御方法の模式図である。
図6】本発明の第2の実施形態により制御される、単段ブーストコンバータの模式図である。
図7】本発明の第2の実施形態による非線形制御方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態では、図1から図5を参照して、「N個の」スイッチングセルを伴う昇圧コンバータの状態フィードバックを用いる正確な線形化による非線形制御方法が説明される。
【0028】
この方法は、システムにより示され制御することが望ましい非線形性が補償されることを可能にする。
【0029】
この補償の形式は、システムの構造に関連する。例として、減算により非線形項(θ(x)と表記される)を補償するために、システムの入力部の制御ベクトルuおよび非線形項θ(x)が、加算u+θ(x)の形式で一緒に現れなければならない。
【0030】
他方で、除算によってθ(x)を補償するために、制御ベクトルuおよび非線形項が、乗算u・θ(x)の形式で一緒に現れなければならない。
【0031】
N個のスイッチングセルを伴うブーストコンバータの方程式は、下記の通りである:
【0032】
方程式(1)を、下記のアフィン非線形方程式の一般的な形式に書くことができる:
【0033】
したがって、方程式(2)は次のようになる:
ここで、
システムの状態変数のベクトル、
はシステムへの入力として考えられる制御ベクトルを表し、αがk番目のスイッチングセルのスイッチSに適用されるデューティサイクルであり、1-αがk番目のスイッチングセルのスイッチ
に適用されるデューティサイクルである。
・f(X)およびg(X)は、不定微分可能非線形関数であり、
・(L,L,...,L)およびCoutは、それぞれ、各々のスイッチングセルのインダクタンスおよびブーストコンバータの出力部のキャパシタであり、
・i、i、...、iおよびVoutは、各々のインダクタンス内の電流およびブーストコンバータの出力部の電圧であり、
・Poutは、出力部でブーストコンバータに接続された動的負荷の電力である。
【0034】
本発明による方法の目的は、入力部の電圧源から出力部の負荷へのエネルギーの流れを制御し、一方で同時にブーストコンバータの出力部の電圧Vout
で表記される設定値に調整することである。
【0035】
方法の第1のステップは、システムの全体的な線形化を可能にするように、出力ベクトル(yと表記される)を選択することで構成される。
【0036】
下記の方程式(4)は、N個のアームを伴うコンバータのケースに関して、全体的に線形化されたシステムの出力ベクトルが、ゼロである内部動力学を用いて求められることを可能にする:
【0037】
方法の第2のステップは、制御ベクトルu(t)=αk=1,...,Nの出現まで出力ベクトルyの一連の連続した微分を含む:
【0038】
先ず最初に、方程式(4)についての一次の微分値は、下記の方程式を与える:
【0039】
この方程式は、ブーストコンバータにより生成される損失またはブーストコンバータのエネルギーバランスを表す。
【0040】
続いて、方程式(4)についての二次の微分値は、下記の方程式を与える:
【0041】
続いて、各々のスイッチングセルkを通過するエネルギーの流れ
を計算するためのステップが実行され、上記ステップは、方程式(6)を用いて、N個の未知数を伴うN個の方程式の体系が得られることを可能にし、上記体系を介してN個のセルを伴うブーストコンバータの各々のセルkに対して必要とされる制御αを決定することができる。
ここでは、k>1の状態で
である。
【0042】
前述の方程式(7)から始めて、下記が決定される:
・下記の方式のN個のアームを伴うブーストコンバータの第1のセルの制御に関する方程式:
・ブーストコンバータのN-1個のセルの制御に関する方程式:
【0043】
誤差の安定な漸近的トラッキングを求めるために、
ここでは、{k’,k’,k’}は方程式(10)のレギュレータの較正可能な利得であり、
そして
ここでは、{k’,k’}は方程式(11)のレギュレータの較正可能な利得であり、そして
Ψ=i-i、および
はk番目のセルの流れ設定点である。より一般的に、「ref」と添え字された変数は、対応する変数の設定値に関係する。
【0044】
このように、状態フィードバックによる制御を表す方程式(6)中の
の計算は、方程式(10)を参照して、下記を含む:
- 誤差
に作用する比例作用、
- yとyrefとの間の誤差に作用する比例作用、
- yとyrefとの間の誤差に作用する積分作用。
【0045】
ref、設定点出力ベクトル、およびその微分値
の計算は、下記の方程式により求められる:
そしてここでは:
ここでηが動作点に依存するシステムの効率を表し、Nがセルの数を表し、
そして:
【0046】
方程式(8)および(9)を再使用して、安定化されたレジームでは、N個のデューティサイクルαk=1,...,Nは、下記の最終値に向けて収束することが特筆される:
【0047】
上記表現は、ブーストコンバータの開ループ伝達関数(言い換えると、静的利得)に対応する。
【0048】
出力電力の微分値
を計算するために、図3を参照して、変数の下記の変更が行われる:
ここでは、
図3に示された推定した出力電力である。安定化されたレジームでは、下記を求めることが望ましい:
【0049】
また、図3を参照して、出力電力の変動は、下記の方程式により推定される:
ここで{k,k}は較正可能な利得である。
【0050】
このように、負荷内の電力の変動
は、少ない階層の観測器を通して求められる。
【0051】
続いて、方法は、図4を参照して、電流の平均値を求めるために電流をサンプリングするため、およびチョッピングの生成のためのステップを実行する。
【0052】
各々のスイッチングセルのチョッピングに専用化され、そしてPWMk=1,...,Nと表記された高周波信号は、αk=1,...,Nと表記された制御信号と電力コンバータのチョッピング周波数を課す高周波対称三角波信号(キャリアと呼ばれる)との間の論理的な比較を通して生成される。加えて、スイッチングセル当たり1つのキャリアが存在する。
【0053】
各々のキャリアは、2qπ/Nだけ他のものから位相シフトされ、ここでqは2の自然整数倍であり、Nはスイッチングセルの番号である。
【0054】
しかしながら、スイッチングセル番号1に関して、下記の論理に従う:
・α≧carrierであれば、PWM=1、
・そうでなければ、PWM=0。
スイッチングセル番号2に関して、下記の論理に従う:
・α≧carrierであれば、PWM=1、
・そうでなければ、PWM=0、
ここでは、carrierは2π/Nだけcarrierから位相シフトされる。
【0055】
スイッチングセル番号3に関して、下記の論理に従う:
・α≧carrierであれば、PWM=1、
・そうでなければ、PWM=0、
ここでは、carrierは4π/Nだけcarrierから位相シフトされる。
【0056】
スイッチングセル番号kに関して、下記の論理に従う:
・α≧carrierであれば、PWM=1、
・そうでなければ、PWM=0、
ここでは、carrierは2qπ/Nだけcarrierから位相シフトされる。
【0057】
このように、各々の電流の平均値(<i>と表記される)を、各々のキャリアの最小値(または最大値)におけるサンプリングを通して取り込むことができる。サンプリング信号(trigと表記される)は、この信号に対応するキャリアと同相である。
【0058】
この手法は、FPGA型のハードウェアターゲットが使用される枠組みにおいて適用可能であるに過ぎず、電流のフィルタリングを使用する手法が回避されることを可能にし、上記手法は、補償されることが必要であるはずの制御における遅延をもたらすはずである。
【0059】
インダクタンス内で測定される電流に関するサンプリング信号は、ローパスディジタルフィルタが使用されるケースにおいて実信号のフィルタリングに由来する何らかの遅延を加えることなく電流の平均成分を求めるために、キャリアの最小値または最大値において生じる。
【0060】
本発明の第2の実施形態では、単一のスイッチングセルを伴うブーストコンバータ(また単段ブーストコンバータとも呼ばれる)に関して、図1ならびに図6および図7を参照して、方法は、同じ主要な実行ステップを含むが、計算のモードを単純化することができる。
【0061】
単段ブーストコンバータに関する方程式は、下記のものである:
【0062】
方程式(19)を、下記のアフィン非線形方程式の一般的な形式に書くことができる:
【0063】
このように、方程式(20)は:
になり、ここで
システムの状態変数のベクトル、
はシステムへの入力として考えられる制御ベクトルを表し、αがスイッチングセルのスイッチSに適用されるデューティサイクルであり、1-αがスイッチングセルのスイッチ
に適用されるデューティサイクルである。
・f(X)およびg(X)は、不定微分可能非線形関数であり、
・LおよびCoutは、それぞれ、インダクタンスおよびブーストのキャパシタンスであり、
・iおよびVoutは、それぞれ、インダクタンス内の電流およびブーストの出力部の電圧であり、
・Poutは、出力部でブーストコンバータに接続された動的負荷内の電力である。
【0064】
この実施形態による方法の目的は、次いで、単一の調整ループを介して、入力部の電圧源から出力部の負荷に向かうエネルギーの流れを制御することであり、一方で同時にブーストコンバータの出力部の電圧Vout
と表記される設定値に調整することである。
【0065】
方法の第1のステップは、システムの全体的な線形化を可能にするように、出力ベクトルを選択することで構成される。
【0066】
連立方程式(21)が全体的に線形化されることを可能にする出力ベクトルを表す下記の方程式(22)は、単段ブーストコンバータのケースに関して、出力ベクトルが全体的に線形化されたシステムに対して求められることを可能にする:
【0067】
方法の第2のステップは、制御ベクトルu(t)=αk=1,...,Nの出現まで一連の連続する微分を通して、基準の変更を含む:
【0068】
先ず最初に、方程式(22)に関する一次の微分値は、下記の方程式を与える:
【0069】
この方程式は、ブーストコンバータにより生成される損失を表す。
【0070】
続いて、方程式(22)に関する二次の微分値は、下記の方程式を与える:
【0071】
上記から始めて、デューティサイクルαの方程式が演繹され、その結果:
ここで、
である。
【0072】
しかしながら、(一定電力における)安定化されたレジームでは、デューティサイクルαは、下記の最終値に向かって収束する:
【0073】
このように、(25)で動的に計算されたデューティサイクルは、安定化されたレジームでは方程式(26)に向けて漸近的にそして安定して収束する。
【0074】
この表現は、ブーストコンバータ2の開ループ伝達関数(言い換えると、静的利得)に対応する。
【0075】
漸近的指数関数的トラッキングを行うために、下記が持ち出される:
・制御ベクトルの二次微分値
の計算のために:
ここで
および
が以前に提示した方程式(23)により求められた。このように、第1のレギュレータの一般的な形式が:
のように決定され、ここでは、{k’,k’,k’}はレギュレータの較正可能な利得である。
【0076】
状態フィードバックによる制御に対応する
の計算は、方程式(28)を参照して、これゆえ下記を含む:
- 誤差
に作用する比例作用、
- yとyrefとの間の誤差に作用する比例作用、
- yとyrefとの間の誤差に作用する積分作用。
【0077】
さらに、yrefおよび
の計算は、下記の方式で実行される:
ここで
ここでは、ηは動作点に依存するシステムの効率を表す。
【0078】
加えて、
・および、出力の電力の微分値
の変動の推定に関して、変数の下記の変更が実行される:
そして、安定化されたレジームにおいて求めることが望ましい:
【0079】
ここから始めて、出力電力の変動が下記の方式で推定される:
ここでは、kおよびkは較正可能な利得である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7