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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】自動化された単孔式多器具手術ロボット
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20231225BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B17/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021531374
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 US2019064531
(87)【国際公開番号】W WO2020123236
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】16/219,697
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521234906
【氏名又は名称】ウゴチュク,イフェアニ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウゴチュク,イフェアニ
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0095299(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0086927(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0118756(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0290855(US,A1)
【文献】国際公開第2017/006377(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
A61B 17/34
F16H 19/02
B25J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再配置可能な手術用具の手術部位に対する導入及び後退を提供する低侵襲手術処置を実施する、ロボット手術装置であって、
円筒状であり、近位端及び遠位端を有する主シャフト(40)であって、その長手方向軸に沿ってキー溝スロット(88)を含む平滑な外面を有する主シャフト(40)と、
近位端及び遠位端を有し、近位セグメント(114)及び遠位セグメント(116)をさらに備える主アーム(32)であって、主アーム(32)の前記近位端が、主シャフト(40)の遠位端に取り付けられ、主アーム(32)の前記遠位端に手術用具(44)が解除可能に取り付けられる、主アーム(32)と、
主シャフト(40)の前記外面と動作可能に係合する摩擦車(72)を駆動して、前記摩擦車(72)による回転運動により主シャフト(40)がその長手方向軸に沿って並進するようにするモータ(70)と、
主シャフト(40)の周囲の第2歯車(84)と係合する第1歯車(82)を駆動するモータ(80)であって、第2歯車(84)が、キー溝スロット(88)内のキー(86)により主シャフト(40)と係合し、それにより、第2歯車(84)の回転によって主シャフト(40)がその長手方向軸を中心に回転するとともに、主シャフト(40)が第2歯車(84)を通ってその長手方向軸に沿って並進することができる、モータ(80)と、
複数の手術用具(44)を保管する機構であって、
第1端部及び第2端部を有し、第1端部が主シャフト(40)に近接している、主シャフト(40)に対して垂直な支持アーム(60)と、
複数のグリップ(64)を有する保管システムを制御するモータを収容するハウジング(66)であって、各グリップ(64)が手術用具(44)を保持することができ、前記ハウジング(66)が支持アーム(60)の長さを横切る、ハウジング(66)と、
支持アーム(60)の第2端部に取り付けられ、ハウジング(66)が支持アーム(60)の前記長さに沿って横切るようにハウジング(66)と係合するアクチュエータ(68)と、をさらに備える機構と、
主アーム(32)に取り付けられた手術用具(44)を手術部位で展開することができるように、主シャフト(40)が通過することができる少なくとも1つの開口部(28)を有する、切開部に取り付けられるイントロデューサ(22)と、を備える手術装置。
【請求項2】
前記保管システムは、ハウジング(66)内の前記モータによって回転させることができるカルーセル(62)を備え、前記カルーセル(62)が複数のグリップ(64)を有し、各グリップ(64)が手術用具(44)を保持することができる、請求項1に記載の手術装置。
【請求項3】
主アーム(32)の前記遠位端にある手術用具(44)をグリップ(64)内にある手術用具(44)と交換するコンピュータ制御方法をさらに含み、前記コンピュータ制御方法が、
主アーム(32)を真っ直ぐにするステップと、
主シャフト(40)がイントロデューサ(22)から離れて、主アーム(32)の遠位端に取り付けられた手術用具(44)にカルーセル(62)上のグリップ(64)が係合することができるような高さまで移動するように、摩擦車(72)を回転させるように、モータ(70)を作動させるステップと、
空のグリップ(64)が主アーム(32)の遠位端に取り付けられた手術用具(44)と対向するように、カルーセル(62)を回転させるように、ハウジング(66)内のモータを作動させるステップと、
カルーセル(62)上の空のグリップ(64)が、主アーム(32)の遠位端に取り付けられた手術用具(44)と係合しそれを回収するように、ハウジング(66)を主アーム(32)に向かって移動させるように、アクチュエータ(68)を作動させるステップと、
ハウジング(66)を主アーム(32)から離れるように移動させるように、アクチュエータ(68)を作動させるステップと、
所望の手術用具(44)を保持するグリップ(64)が主アーム(32)と対向するように、カルーセル(62)を回転させるように、ハウジング(66)内のモータを作動させるステップと、
前記所望の手術用具(44)を保持するグリップ(64)が主アーム(32)の遠位端と係合し且つそこに手術用具(44)を取り付けるように、ハウジング(66)を主アーム(32)に向かって移動させるように、アクチュエータ(68)を作動させるステップと、
主アーム(32)から離れるようにハウジング(66)を移動させるように、アクチュエータ(68)を作動させるステップと、
主アーム(32)の遠位端に取り付けられた手術用具(44)を手術部位で展開することができるように、主シャフト(40)がイントロデューサ(22)内に且つイントロデューサ(22)を通って移動するように、摩擦車(72)を回転させるように、モータ(70)を作動させるステップと、
前記手術部位で手術用具(44)を展開するステップと、を含む、請求項2に記載の手術装置。
【請求項4】
前記保管システムは、ハウジング(66)内の前記モータによって並進させることができるレール(63)を備え、前記レール(63)が複数のグリップ(64)を有し、各グリップ(64)が手術用具(44)を保持することができる、請求項1に記載の手術装置。
【請求項5】
主アーム(32)の前記遠位端にある手術用具(44)をグリップ(64)内にある手術用具(44)と交換するコンピュータ制御方法をさらに含み、前記コンピュータ制御方法が、
主アーム(32)を真っ直ぐにするステップと、
主シャフト(40)がイントロデューサ(22)から離れて、主アーム(32)の遠位端に取り付けられた手術用具(44)にレール(63)上のグリップ(64)が係合することができるような高さまで移動するように、摩擦車(72)を回転させるように、モータ(70)を作動させるステップと、
空のグリップ(64)が主アーム(32)の遠位端に取り付けられた手術用具(44)と対向するように、レール(63)を並進させるように、ハウジング(66)内のモータを作動させるステップと、
レール(63)上の空のグリップ(64)が、主アーム(32)の遠位端に取り付けられた手術用具(44)と係合しそれを回収するように、ハウジング(66)を主アーム(32)に向かって移動させるように、アクチュエータ(68)を作動させるステップと、
ハウジング(66)を主アーム(32)から離れるように移動させるように、アクチュエータ(68)を作動させるステップと、
所望の手術用具(44)を保持するグリップ(64)が主アーム(32)の遠位端と対向するように、レール(63)を並進させるように、ハウジング(66)内のモータを作動させるステップと、
前記所望の手術用具(44)を保持するグリップ(64)が主アーム(32)の遠位端と係合し且つそこに手術用具(44)を取り付けるように、ハウジング(66)を主アーム(32)に向かって移動させるように、アクチュエータ(68)を作動させるステップと、
主アーム(32)から離れるようにハウジング(66)を移動させるように、アクチュエータ(68)を作動させるステップと、
主アーム(32)の遠位端に取り付けられた手術用具(44)を手術部位で展開することができるように、主シャフト(40)がイントロデューサ(22)内に且つイントロデューサ(22)を通って移動するように、摩擦車(72)を回転させるように、モータ(70)を作動させるステップと、
前記手術部位で手術用具(44)を展開するステップと、を含む、請求項4に記載の手術装置。
【請求項6】
1つ又は複数の二次シャフト(38)をさらに備え、二次シャフト(38)が、円筒状であり、主シャフト(40)に隣接し且つ平行であり、近位端及び遠位端を有し、前記二次シャフト(38)の近位部分の表面が前記二次シャフトの前記長手方向軸に対して平行なスプラインの構成を含み、
二次シャフト(38)が、各々、
近位端及び遠位端を有する二次アーム(30)であって、二次アーム(30)の前記近位端が二次シャフト(38)の遠位端に取り付けられ、二次アーム(30)の前記遠位端に手術用具(44)が解除可能に取り付けられる、二次アーム(30)と、
遠位部分二次シャフト(38)の表面と動作可能に係合する摩擦車(35)を駆動して、摩擦車(35)による回転運動により二次シャフト(38)がその長手方向軸に沿って並進するようにするモータ(34)と、
前記スプラインと係合する歯車(37)を駆動して、歯車(37)がモータ(36)によって回転すると、前記二次シャフト(38)が回転するようにするモータ(36)と、を備え、
前記イントロデューサ(22)が、二次アーム(32)に取り付けられた手術用具(44)を手術部位で展開することができるように、二次シャフト(38)が通過することができる追加の開口部(26)をさらに有する、請求項1に記載の手術装置。
【請求項7】
主シャフト(40)の直径がいかなる二次シャフト(38)の直径よりも大きい、請求項6に記載の手術装置。
【請求項8】
再配置可能な手術用具の手術部位に対する導入及び後退を提供する低侵襲手術処置を実施するロボット手術装置であって、
複数の主シャフト(40)であって、各主シャフト(40)が、
円筒状であり、
近位端及び遠位端を有し、
その長手方向軸に沿ってキー溝スロット(88)を含む平滑な外面を有し、
主シャフト(40)の前記外面と動作可能に係合する摩擦車(72)を駆動して、摩擦(72)車による回転運動により主シャフト(40)がその長手方向軸に沿って並進するようにするモータ(70)を有し、
主シャフト(40)の周囲の第2歯車(84)と係合する第1歯車(82)を駆動するモータ(80)であって、第2歯車(84)が、キー溝スロット(88)内のキー(86)により主シャフト(40)と係合し、それにより、第2歯車(84)の回転によって主シャフト(40)がその長手方向軸を中心に回転するとともに、主シャフト(40)が第2歯車(84)を通ってその長手方向軸に沿って並進することができる、モータ(80)を有し、
近位端及び遠位端を有する主アーム(32)であって、主アーム(32)の前記近位端が、前記主シャフト(40)の遠位端に取り付けられ、前記主アーム(32)の前記遠位端に手術用具(44)が解除可能に取り付けられる、主アーム(32)を有し、
複数の手術用具(44)を保管する機構であって、
第1端部及び第2端部を有し、第1端部が主シャフト(40)に近接している、主シャフト(40)に対して垂直な支持アーム(60)と、
カルーセル(62)を回転させるモータを収容するハウジング(66)であって、カルーセル(62)が1つ又は複数のグリップ(64)を有し、各グリップ(64)が手術用具(44)を保持することができ、ハウジング(66)が前記支持アーム(60)の長さを横切る、ハウジング(66)と、
支持アーム(60)の第2端部に取り付けられ、ハウジング(66)が支持アーム(60)の前記長さに沿って横切るようにハウジング(66)と係合するアクチュエータ(68)と、
をさらに備える機構を有する、
複数の主シャフトと、
主アーム(32)に取り付けられた手術用具(44)を手術部位で展開することができるように、主シャフト(40)が通過することができる開口部(28)を有する、切開部に取り付けられるイントロデューサ(22)と、を備える手術装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[02] 本出願は、2017年12月28日に出願された米国仮特許出願第62/611,444号に対する優先権を主張する。この先願の開示全体が、添付の明細書の開示の一部であるとみなされ、参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
[03] 本開示は、概して、手術システム、装置及び方法に関し、より詳細には、単一切開部を通して手術部位に複数の手術用具を展開することができる、低侵襲手術(Minimally Invasive Surgery)(MIS)処置を実施するために使用される装置に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
[04] MISは、ますます望ましくなってきており、それは、この種の外科的処置が、手術中の組織損傷及び失血を最小限にするように、患者の身体の複数の小さい切開部を通して、且つ、これらの小さい切開部を通して、切開部内に配置されたイントロデューサを介して手術部位まで通される、細く且つ剛性のある器具を用いて手術を行うことにより、実施されるためである。患者の痛みを軽減するとともに回復時間を短縮するという点での、さまざまなMIS処置の成功により、より低侵襲性の外科的処置が実施されるのを可能にする装置及び処置を開発する傾向が促進されてきた。
【0004】
[05] MIS処置の成功の大部分は、使用される器具の進歩によって推し進められた。当初は、MIS処置は、1つの切開部において小さい内視鏡カメラを用いるとともに、他の切開部を通して手術部位まで放出されるいくつかの長く、細く且つ剛性のある器具を用いることにより、実施された。器具を操作するためのより広い空間を外科医に与えるために、手術部位に何度も送気が行われる。一例として、典型的な腹腔鏡下胆嚢摘出術(胆嚢除去)処置では、腹部に針が挿入され、腹部内にCO2ガスを圧送することにより、腹部に送気される。腹部に送気されると、臍部位の周囲の切開部内に挿入されたイントロデューサを通して、腹部内に内視鏡カメラが挿入され、それにより、外科医は手術部位を見ることができる。そして、内視鏡切開部の右側及び左側に形成された切開部内に挿入されたイントロデューサを通して、腹部内にさらなる器具が挿入される。これらの器具は、長く且つ剛性のあるロッドの外観を有し、ロッドの遠位端に取り付けられた、鉗子及び剪刀等の手術用具と、器具の近位端に取り付けられた、手術用具を操作する制御部を備えるハンドルとを備えている。外科医は、ハンドルを握って器具をさらに挿入するか若しくは引き抜き、又は、器具の角度的アプローチを変更することにより、手術用具を位置決めする。ロッド内に機械的接続部が設けられており、それにより、外科医は、器具の遠位端の手術用具を、ハンドルに存在する制御部を通して操作することができる。例に戻ると、外科医は、切開部を通して必要な器具を挿入し、不要になった器具を引き抜いて他の器具と交換して、胆嚢をその周囲の組織から切断し、血管を封止し、腹部から胆嚢を取り除くことができる。
【0005】
[06] 患者の痛みを軽減すること及び回復時間を短縮すること等、MIS処置によってもたらされる利点にも関わらず、この技法は、外科医に対していくつかの不都合をもたらす。第1の不都合は、器具は長く且つ剛性があるため、多大な苦労と忍耐とがなければ、切開部はそこを通過する2つ以上の器具を支持することができないということである。その結果、追加の切開部が必要とされ、患者に対してさらなる痛み及び外傷がもたらされ、患者の回復時間が延長される。第2の不都合は、幾分か扱いにくい長く且つ剛性のある器具を腹腔鏡の「眼」を通して適切に操作することが困難であり、外科医による視覚と手の協調(hand-eye coordination)問題がもたらされるということである。この問題は、手術が長くなると、外科医の腕に疲労が現れるため悪化する。
【0006】
[07] これらの不都合及び他の不都合を回避するために、外科医は、手によって操作される器具の代わりに、ヒューマンマシンインタフェース(Human Machine Interface)(HMI)を介して外科医によって制御される、コンピュータによって操作される一組のロボットアームに基づく第1世代MISシステムを使用し始めた。HMIは、人間と機械との相互作用を処理することができるシステムのコンポーネントである。このインタフェースは、ユーザ入力が機械用の信号として翻訳されるようにするハードウェア及びソフトウェアからなり、それにより機械は、ユーザに必要な結果を提供する。したがって、外科医は、器具と器具の遠位端にある手術用具とを保持するロボットアームを制御する信号に翻訳される、手及び指のジェスチャを使用して、コンソールにおいて患者からリモートに手術を実施することができる。これにより、HMIは、外科医の手及び指のジェスチャと器具の端部の手術用具の位置及び動作との、空間的な差分を補償することができるため、外科医の視覚と手の協調の問題が軽減されるとともに、より長いか又は高度の技能を要する手術の間に外科医が感じる疲労の量が低減する。
【0007】
[08] より新しい第2世代MISシステムは、第1世代のシステムに対する多数の改善に焦点を当てた。これらの改善には、とりわけ、単一の切開部を通して挿入することができる器具の数を増加させることと、腹腔からの器具の除去を自動化することと、器具の遠位端に取り付けられた手術用具の交換のプロセスを自動化することとが挙げられる。本開示の手術装置は、単一の切開部を通して腹腔内に導入することができる器具の数を最大限にするような設計であり、腹腔からのこれらの器具の除去を自動化し、少なくとも1つの器具の遠位端における手術用具の自動化された交換を可能にする。
【0008】
[09] 第2世代MISシステムの一例は、Theodore Khaliliの米国特許出願公開第2005/0096502号に見られる。Kahliliの開示は、単一の切開部のみがあるMIS処置を実施するように構成されたロボット手術装置を示す。ロボット手術装置は、手術の目的で腹腔内において展開される複数のロボットアームを収容する、小さい切開部を通して患者の体内に挿入される長尺状本体を備える。装置のオペレータに視覚的フィードバックを提供するために、長尺状本体の遠位部分に又はロボットアームのうちの1つに、画像検出器を位置決めすることができる。別の変形では、ロボットアームの各々が2つ以上の継手を備え、オペレータが、装置の遠位端の周囲の領域内でロボットアームを協働するように操作することができるようにする。しかしながら、Kahliliの開示では、腹腔内に3つのロボットアームしか導入することができない。機能性として、第一に、ロボットアームに自由度が追加され、そのため、追加される機能性に適応するためにアームの直径が増大せざるを得ない。切開部を可能な限り小さくすることが望ましいことを考慮すると、追加される各機能性により、アームは、切開部によって提供される空間のより多くの部分を占有し、事実上、切開部を通過することができるロボットアームの数が制限される。ここで、すべてのロボットアームが同様の機能性を有するため、それらの直径は等しく、3つしか切開部を通過することができない。さらに、Kahliliの開示のアームは、図5に示すように腹腔から手動で引き抜かなければならず、3つの別個のロボットアーム84、86及び88が、展開導管82を通して腹腔内に、ユーザが展開導管にロボットアームを手動で押し通すことにより挿入される。最後に、Kahliliの開示の図6に示すように、手術用具は手動で交換しなければならず、実施すべき手術の特定の必要性に基づいてロボットアームに異なる手術用具104を外科医が取り付けることができるように、個々のロボットアームの遠位端102は、交換アダプタを有することができる。
【0009】
[010] 第2世代MISシステムの別の例は、Se Gon Rohらの米国特許出願公開第2014/0309659号に見られる。Rohは、腹腔内の手術部位において手術を実施する複数のロボットアームを含む手術装置を開示している。これらロボットアームは、アームを単一の孔から第1手術部位まで移動させる手術位置調節器を含む。単孔式手術ロボットは、多孔式手術のようにさまざまな手術部位において同時手術を有効に実施することができる。Rohは、単一の切開部を通して複数、すなわち4つのロボットアームを腹腔内に導入するように意図された手術装置を開示している。Rohの開示では、4つのロボットアームのみを腹腔内に導入することができる。機能性として、第一に、ロボットアームに自由度が追加され、そのため、追加される機能性に適応するためにアームの直径が増大せざるを得ない。切開部を可能な限り小さくすることが望ましいことを考慮すると、追加される各機能性により、アームは、切開部によって提供される空間のより多くの部分を占有し、事実上、切開部を通過することができるロボットアームの数が制限される。ここで、すべてのロボットアームが同様の機能性を有するため、それらの直径は等しく、4つしか切開部を通過することができない。Rohの装置のアームは、高い自由度を有するが、それらが腹腔内に入ると、その遠位端の手術用具を交換するために単一アームのみを取り除くことができない。4つのアームすべてがまとまって入り、腹腔からまとまって出なければならない。Rohの開示に提供されている、5つ以上の用具を必要とするMIS処置を達成することは可能ではなく、異なる手術部位に異なる用具の組が必要である場合、腹腔から装置全体を引き抜かなければならず、手術が中断する。
【0010】
[011] 上述したように、MIS処置は、患者の身体における切開部がより小さいことにより、手術中の組織損傷及び失血が最小限になり、患者が受ける痛みの量が低減し、回復に必要な時間の量が低減するため、好ましい。その結果、外科医は、単孔とも称する、1つの切開部のみが必要であるように、且つ、複数のロボットアームが1つの切開部を通過することができ、手術中の組織損傷及び失血をさらに低減させるように、MIS処置を改善するように求めている。従来技術は、単孔を通過する複数のロボットアームを備えた手術装置を開示している。しかしながら、従来技術は、複数のロボットアームのうちの1つを取り除く自動化された手段も、ロボットアームの遠位端の手術用具を交換する自動化された手段も開示していない。さらに、従来技術は、各アームに同じ機能性を与え、各アームが同様の複雑性とアームの機能性に比例する直径とを有することを必要とする。より多くのアームが切開部を通過することができるために、ロボットアームの直径を最小限に維持することが重要であるが、アームのすべてに同じ機能性を与えることにより、手術装置のコストが増大するとともに、切開部を同時に通過することができるアームの数が制限される。本開示の手術装置は、これらの問題に対処しようとするものである。
【発明の概要】
【0011】
発明の簡単な概要
[012] 本明細書では、単一の切開部を通して患者の体内でさまざまな能力を有する複数のロボットアームを展開及び利用する、手術装置を開示する。概して、単一の主アームが、残りのアームには見られない、さらなる自由度、能力、取り付けられた手術用具の自律交換等、いくつかの能力を有するが、こうしたアームは、残りのより能力の低いアームよりも大きい直径を有する。好ましい実施形態では、装置は、1つの主アームと4つの二次アームとを、それらのアームを外科医によって制御されるコンピュータによって生成される信号により上昇させ、下降させ、回転させ、他の方法で操作することができるようにアームを制御する機構とともに備える。アームは、複数の円筒状セグメントから構成され、装置に近接する第1セグメントは、最長であり、大部分が身体の外側に存在する。残りの円筒状セグメントは、はるかに短く、患者の体内で動作する。最後に、各アームの遠位端に、限定されないが、解剖器具、カメラ、照明、把持器、剪刀(焼灼対応又は焼灼非対応)、ステープラ、持針器、電気焼灼フック、開創器、クリップアプライヤ、焼灼器又はイリゲーションチューブ等の手術用具がある。主アーム上の手術用具は、手術装置上にあるカルーセル上に存在する複数の用具のうちの任意の1つと自律的に交換することができ、一方で、二次アームのうちの任意のものの上の手術用具は、手術用具を露出させるようにアームを自律的に持ち上げて、それにより外科医が手動で交換することができることにより、交換することができる。
【0012】
[013] 従来技術では、ロボットアームの各々は、サイズ、自由度、自律制御、電力消費、並びにアクチュエータ及びサーボの強度に関して同じである。しかしながら、カメラ又は照明等、いくつかの手術用具は、解剖器具又は剪刀等の他の手術用具ほどの自律制御が不要である。したがって、アームの複雑さ又は強度を低減させるとき、アームの直径を最小限にすることができ、二次アームと称するこうしたアームのより多くが、単一の切開部を通ることができる。逆に、アームの複雑さ又は強度を増大させるとき、アームの直径も増大し、単一の切開部を通ることができる、主アームと称するこうしたアームの数が制限される。外科医が、処置の必要性に従ってアームの能力を選択することができることが有利である。いくつかの処置では、外科医は、多くの二次アームと1つの主アームのみとを使用することが有益であると判断する場合がある。他の処置は、複数の主アームと単一の二次アームのみとを使用することから利益を得る。上述したように、本発明の手術装置の主アームは、二次アームには見られない追加の能力を有し、その結果、二次アームの直径よりも大きい直径を有する。主アームは、より高い自由度を有し、より大きいアクチュエータ及びモータを収容することができ、その遠位端にある用具を別の用具と自律的に交換することができる。二次アームは、それらの動きの範囲がより制限されており、主アームの強度がなく、その遠位端にある用具を手動で交換する必要がある。より直径の大きい主アームを使用して、患者の身体から切断された身体部分を除去することができる。
【0013】
[014] 主アーム及び二次アームの両方を、患者の身体の外部でアームに対して動作する機構により、上昇、下降又は回転させることができる。さらに、主アームは、複数のグリップを含む回転カルーセルと相互作用し、各グリップは、主アームによって使用される手術用具を保持することができる。カルーセルと相互作用するように位置決めされると、目下主アームに取り付けられている手術用具を、カルーセルにある手術用具と交換することができる。二次アームに取り付けられた用具を交換するために、外科医は、二次アームを患者の体内から出るように上昇させ、その用具を所望の用具と手動で交換する。主アーム又は二次アームの手術用具を再配置するために、残りのアームのいずれもまた手術部位から引き抜かなければならない必要はない。
【0014】
[015] 手術装置は、外科医からHMIによって受信される入力に応じてさまざまな機構に適切な電力及び信号を提供するコンピュータシステムによって制御される。任意の数のHMIを使用して、外科医によって提供される人間のジェスチャを、コンピュータシステムによりさまざまな機構に送信される信号に変換することができる。コンピュータシステム及び関連するマンマシンインタフェースは、本開示の一部ではない。
【0015】
図面の簡単な説明
[016] 本発明は、詳細な説明及び添付図面からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の手術装置の側面図を示す。
図2A】主アーム用の単一の大きい開口部と、二次アーム用の4つの小さい開口部とを含むイントロデューサの好ましい実施形態の等角図を示す。
図2B】主アーム用の単一の大きい開口部と、二次アーム用の3つの小さい開口部とを含むイントロデューサの代替実施形態の等角図を示す。
図2C】主アーム用の単一の大きい開口部と、二次アーム用の2つの小さい開口部とを含むイントロデューサの代替実施形態の等角図を示す。
図2D】3つの主アームを収容する3つの大きい開口部を含むイントロデューサの代替実施形態の等角図を示す。
図2E】2つの主アームを収容する異なる直径の2つの大きい開口部と、二次アーム用の2つの小さい開口部とを含むイントロデューサの代替実施形態の等角図を示す。
図3】手術装置の上方部分の等角図を示す。
図4】主アームを回転させるために使用されるキー及びキー溝スロットの詳細図を示す。
図5】主アーム上の用具をカルーセル上に存在する用具と交換するために手術装置によって使用されるプロセスを示すフローチャートを示す。
図6】手術装置の上面図を示す。
図7】手術装置の中間部分の等角図を示す。
図8】二次アームを上昇、下降又は回転させる機構を説明するために、二次アームの1つを除くすべてが取り除かれている、中間部分の等角図を示す。
図9】手術装置の下方部分の等角図を示す。
図10】イントロデューサを通過している単一の二次アームの等角図を示す。
図11】二次アームを操作する機構を示すために二次アームの切欠き図を示す。
図12】イントロデューサを通過している主アームの等角図を示す。
図13】主アームを操作する機構を示すために主アームの切欠き図を示す。
図14】本発明の手術装置の組合せを含む一実施形態を示す。
図15】本発明の手術装置の代替実施形態を示す。
図16】本発明の手術装置の代替実施形態を示す。
図17】本発明の手術装置の代替実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
[038] 好ましい実施形態の以下の説明は、本質的に単に例示的なものであり、本発明、その応用又は使用を限定するようには決して意図されていない。
【0018】
[039] 図1は、手術装置10の好ましい実施形態の側面図を示し、その外側ハウジングが、ハウジング内の部材及び機構を見せるために取り除かれている。さらに、図1は、目下手術を受けている患者の腹壁12も示し、手術装置10の下方部分16は、大部分、腹腔14内にある。図示しない手術装置のハウジングは、上方部分20及び中間部分18を封入し、腹腔14内に延在しておらず、そのため、主アーム32とともに二次アーム30は、腹腔14内で自由に動くことができる。二次アーム30は、円筒状の二次シャフト38に取り付けられており、主アーム32は、円筒状の主シャフト40に取り付けられている。主シャフト40及び二次シャフト38両方の近位端は、腹腔14から最も遠い端部であり、遠位端は、腹腔14に最も近い端部である。主アーム32の近位端は、主シャフト40の遠位端に取り付けられた端部であり、主アーム32の遠位端は、手術用具(「用具」)を保持する端部である。二次アーム30の近位端は、二次シャフト38の遠位端に取り付けられた端部であり、二次アーム30の遠位端は、用具を保持する端部である。これらのシャフトは、互いに独立して、腹腔14から持ち上げるか又は腹腔14内に下降させるとともに、それらの長手方向軸を中心に回転させることができる。好ましい実施形態では、図2Aに示すように、5つのシャフトすべてがイントロデューサ22を通過する。イントロデューサ22は、5つの開口部、すなわち、二次アーム30用の4つの開口部26と主アーム32用の1つの開口部28とを有するディスク24を備える。二次アーム開口部26は、ディスク24の縁部の辺りに位置決めされ、主アーム開口部28の周囲に間隔を空けて配置されている。図2B図2Eに、イントロデューサ22の代替実施形態を示し、そこでは、開口部の数は、図2の好ましい実施形態に見られる5つから変化している。
【0019】
[040] 主シャフト40及び二次シャフト38は、ともに概観が円筒状であり、且つともにシャフトを上昇及び下降させるようにモータに取り付けられた摩擦車を使用するという点で、同様である。しかしながら、2つのシャフトを回転させるために異なる機構が使用される。主シャフト40を回転させるためには、図3及び図4に示すように、キーを有する歯車が、主シャフト40の長手方向軸とともに見られるキー溝スロットと嵌合する。歯車を回転させることにより、主シャフト40が回転する。二次シャフト38については、近位側半分の表面が、歯車と相互作用するスプラインの構成を含む。歯車を回転させることにより、図7及び図8に示すように二次シャフト38が回転する。
【0020】
[041] 主アーム32及び二次アーム30は、ともに、互いにヒンジ式に取り付けられている2つの円筒状セグメントから構成されているという点で、同様である。アームの近位端はシャフトの遠位端にヒンジ式に取り付けられ、アームの遠位端は用具に取り付けられている。二次アーム30は、複数の特徴において主アーム32とは異なる。最も著しい相違は、手術装置10が、主アーム32の遠位端に取り付けられている用具を自律的に交換することができる一方で、二次アーム30の遠位端に取り付けられている用具は手動で交換しなければならない、ということである。図5において、主アーム32の遠位端に取り付けられた用具を自律的に交換するプロセスについて説明する。二次アーム上の用具を手動で交換するためには、用具を露出させるように関連するシャフトが上昇する。このとき用具にアクセスすることができる外科医は、用具を所望の用具と交換することができる。用具が交換された後、関連するシャフトは下降して、腹腔14内に戻すようにアームを再導入する。別の相違は、主アーム32が、より高い自由度とより強力なアクチュエータ及びロータとを有して、二次アームよりも複雑であるということである。最後の相違は、主アーム32が、より強力なモータ、より大型且つ高性能の手術用具を収容するとともに、任意の切断された器官又は組織を引き抜くためのより大きい孔を提供するように、二次アーム30よりも大きい直径を有するということである。主アーム32は、5~12ミリメートルの範囲の直径を有することができるが、好ましくは、約10ミリメートルの直径を有する。二次アーム30は、3~5ミリメートルの範囲の直径を有することができるが、好ましくは約5ミリメートルの直径を有する。主アーム32及び二次アーム30の直径は、それらが取り付けられるシャフトの直径と一致する。
【0021】
[042] 手術の前に、外科医は、その手術にいずれの用具が必要となるかの決定を行う。二次アーム30の遠位端には、主アーム32に存在する巧緻性のレベルを必要としない用具が取り付けられる。主アーム32に存在する巧緻性のレベルを必要とする用具は、カルーセル62にあるか又は主アーム32の遠位端に取り付けられたグリップ64に位置決めされる。二次アーム30の遠位端に取り付けることができる用語に例としては、限定されないが、照明、カメラ及び把持器が挙げられる。主アーム32又は二次アーム30のいずれかに取り付けることができる用具としては、限定されないが、解剖器具、剪刀、ステープラ、持針器、クリップアプライヤ、焼灼器、吸引/イリゲーションチューブ等が挙げられる。
【0022】
[043] イントロデューサ22の上方に且つ手術装置10の中間部分18内に、二次アーム30が取り付けられている二次シャフト38に対して長手方向及び回転移動を提供するために使用されるモータ及び機構がある。各シャフトは、2つのモータによって操作される。モータ36は、シャフトがその長手方向軸を中心に回転するようにし、モータ34は、シャフトの長手方向移動を可能にする。シャフトを回転させるために、歯車を回転させる対応するモータ36に電力が印加される。歯車は、シャフトの表面にある一致するスプラインと係合し、したがってシャフトを回転させる。シャフトの長手方向移動を可能にするために、ホイールを回転させる対応するモータ34に電力が印加される。ホイールは、シャフトの表面(この箇所が平滑である)と係合し、ホイールの表面とシャフトとの間に存在する摩擦によりシャフトを上昇又は下降させる。
【0023】
[044] 手術装置10の上方部分20は、主アーム32が取り付けられている主シャフト40に長手方向及び回転移動を提供するために使用されるモータ及び機構とともに、主アーム32の遠位端に取り付けられた主用具44が、カルーセル62によって保持される用具のインベントリにあり得る別の用具と交換されるようにするモータ及び機構がある。主アーム32が取り付けられている主シャフト40は、2つのモータによって操作される。モータ80により、主シャフト40はその長手方向軸を中心に回転し、図1では可視ではないモータ70により、主シャフト40の長手方向移動がもたらされる。
【0024】
[045] 主シャフト40を回転させるために、主シャフト40上にある一致する歯車84と係合する歯車82を回転させるように、モータ80に電力が印加される。歯車84は、歯車82に対してその位置を維持しなければならないため、1つ又は複数のキー/キー溝スロットによってその長手方向軸に沿って移動する際、主シャフト40に沿って摺動する。長手方向移動を可能にするために、ホイール72を回転させるようにモータ70に電力を印加することができる。ホイール72は、回転する際、主シャフト40の表面と摩擦係合し、シャフトがその長手方向軸に沿って移動するようにする。主用具44を別の用具と交換するために、主シャフト40は、主用具44がカルーセル62と対向するように移動する。ハウジング66内のモータが、空のグリップ64が主アーム32と対向するように、カルーセル62を回転させる。次いで、アクチュエータ68がハウジング66を主用具44に向かって押し、それにより、グリップ64は、主用具44と係合し、主用具44が主アーム32から取り除かれるようにすることができる。次いで、アクチュエータ68はハウジング66を後退させ、それにより、ハウジング66内部のモータは、カルーセル62を回転させ、適切な用具を含むグリップを主アーム32に対向して位置決めすることができる。次いで、アクチュエータ68は、ハウジング66を前進させ、それにより、グリップ64は、所望の主用具44と係合し、主用具44が主アーム32に取り付けられるようにすることができる。最後に、アクチュエータ68は、再度ハウジング66を後退させ、それにより、主シャフト40は、その長手方向軸に沿って移動して、主アーム32を腹腔14内の手術部位に展開することができる。
【0025】
[046] ここまで、手術装置10の機構について概略的に説明し、重要な構成要素について特定した。以下の段落は、上述した機構のさらなる詳細を提供する。
【0026】
[047] 図2A図2B図2C図2D及び図2Eは、イントロデューサ22のさまざまな実施形態を示す。イントロデューサ22は、手術装置10と手術を受けている患者との間のインタフェースとしての役割を果たす。典型的には、イントロデューサ22は、直径が20~25ミリメートル、好ましくは20ミリメートルであり、外科医が作成した切開部を介して腹壁12を貫通して挿入されるトロカール内にある。トロカールは、ガスによる腹腔14の送気のため、二次開口部26及び主開口部28のための孔とともに、封止機能を提供する。二次開口部26は、典型的には、3~5ミリメートルの範囲の相対的に小さい直径を有し、主開口部28は、5~12ミリメートルの範囲の相対的に大きい直径を有する。行われる外科的処置のタイプに応じて、必要な二次アーム30が少なくなる可能性がある。図2Aは、4つの二次開口部26と1つの主開口部28とを有するイントロデューサ22の好ましい実施形態を示す。図2Bは、3つの二次開口部26と1つの主開口部28とを有するイントロデューサ22の代替実施形態を示す。図2Cは、2つの二次開口部26と、図2A及び図2Bのイントロデューサの主開口部28よりも大きい1つの主開口部28とを有するイントロデューサ22の別の代替実施形態を示す。図2Dは、3つの主開口部28を有し二次開口部26のないイントロデューサを示す。最後に、図2Eは、異なる直径の2つの主開口部28と2つの二次開口部26とを有するイントロデューサを示す。二次開口部26及び主開口部28の位置決めは、本発明の趣旨から逸脱することなく、イントロデューサ22の直径を低減させるように、図示するものから変更することができる。それらのそれぞれの開口部を通過するシャフト及びアームの直径は、開口部自体の直径よりもわずかに小さくなる。
【0027】
[048] 図3は、カルーセル62及び主シャフト40を制御する機構が見える、手術装置10の上方部分20の等角図を示す。カルーセル62は、主アーム32の遠位端に取り付けることができる種々の用具のためのプレースホルダとしての役割を果たす。カルーセル62は、こうした用具を保持する4つのグリップ64があるように示されており、概して、二次アーム30もまたそれらに取り付けられた用具を有するということが必然的に想起されるため、これで十分である。手術の前に、外科医は、手術に必要となる用具をグリップ64上に手で搭載する。外科医はまた、手術中にグリップ上の用具を別の用具と交換することができる。カルーセル62は、図では、4つのグリップを有するように示されているが、図に示す4つを超える追加のグリップを収容することができる。カルーセル62は、カルーセル62をその中心軸を中心に回転させるモータを内部に収容するハウジング66に取り付けられている。ハウジング66は、アクチュエータ68により、支持アーム60に沿って主シャフト40に近づくか又は主シャフト40から後退するように移動することができる。
【0028】
[049] カルーセル62に加えて、上方部分20は、主アーム32を上昇、下降及び回転させる機構も含む。モータ70は、主シャフト40の垂直移動を可能にするように使用され、モータ80は、主シャフト40を回転させるように使用される。主アーム40を上昇又は下降させるために、主シャフト40と摩擦係合するホイール72を回転させるように、モータ70に電力が印加される。ホイール72が、図3の向きから右回りに回転すると、ホイール72と主シャフト40との摩擦係合により、主シャフト40が上昇する。ホイール72が、図3の向きから左回りに回転すると、ホイール72と主シャフト40との摩擦係合により、主シャフト40は下降する。ホイール74は、自由に回転し、主に、ホイール72と主アーム40との間の摩擦力を促進するために使用される。モータ80は、主シャフト40の回転移動を可能にするために使用される。主シャフト40を回転させるために、図4の詳細図に示す歯車84を介して主シャフト40を間接的に回転させる歯車82を回転させるように、モータ80に電力が提供される。歯車82を図3の向きから右回りに回転させることにより、主シャフト40は左回りに回転する。逆に、歯車82を左回りに回転させることにより、主シャフト40は右回りに回転する。主シャフト40が垂直に移動し、モータ80が静止しているとき、歯車84は、図4に示すように1つ又は複数のキー86が対応するキー溝88内にある状態で主シャフト40と相互作用するため、歯車82に隣接してその位置を維持する。主シャフト40がその長手方向に沿って移動する際、歯車84は、キー86及びキー溝88の相互作用を介して回転の目的で主シャフト40と依然として係合しながら、主シャフト40が歯車84を通って摺動することができるようにすることにより、静止した歯車82と係合し続ける。
【0029】
[050] 図5は、カルーセル62及び主シャフト40が主用具44を別の用具と交換するためにいかに協働するかを示すフローチャートを示す。手術中、カルーセル62がいかなる機能も実施していないとき、それが取り付けられているハウジング66は、アクチュエータ68に隣接して位置決めされる。同様に、手術中、主シャフトは、主アーム32が手術部位において主用具44を位置決めするように腹腔内にあるように、位置決めされる。外科医が、手術の状況により、主用具44の代わりに別の用具を用いる必要がある場合、第1ステップ200は、モータ70を作動させ、ホイール72を図3に示すように右回り方向に回転させて主シャフト40を上昇させる。主シャフト40が上昇している際、主アーム32は、イントロデューサ22の開口部28を通って移動するように真っ直ぐにされる。モータ70は、主アーム32がカルーセル62と対向するまで、主シャフト40を上昇させ続ける。次に、又はステップ200と同時に、ハウジング66内のモータは、ステップ202に示すように、空のグリップ64が主シャフト40と面しているようにカルーセル62を回転させる。主用具44がカルーセル62と対向すると、アクチュエータ68は、ハウジング66を支持アーム60に沿って主用具44に向かって移動させ(ステップ204)、それにより、グリップ64は、主用具44と係合しそれを取り除くことができる(ステップ206)。主用具44が取り除かれた後、ステップ208に示すように、アクチュエータ68はハウジング66を後退させ、そのためカルーセルはハウジング66内のモータにより自由に回転することができる。この時点で、ステップ210に示すように、ハウジング66内のモータは、所望の用具を含むグリップが主アーム32と対向するように、カルーセル62を回転させる。このとき、アクチュエータ68は、再度、ハウジング66を主アーム32に向かって移動させ(ステップ212)、所望の用具を主アーム32に取り付ける(ステップ214)。所望の用具が主アーム32に取り付けられると、アクチュエータ68は、ハウジング66がアクチュエータ68に隣接するように、ハウジング66を完全に後退させる(ステップ216)。ステップ216と同時に又はそれとは無関係に、モータ70は、ホイール72を作動させ、図3に示すように左回り方向に回転させて、主シャフト40を下降させ、したがって、主用具44が手術部位に位置決めされるまで、主アーム32をイントロデューサ22の開口部28を通して下降させる。
【0030】
[051] 図6は、読者に別の視点を提供するように手術装置10の上面図を示す。支持アーム60が可視であり、支持アーム60は、その長手方向軸に沿ってハウジング66を誘導するように、且つアクチュエータ68の取付台として使用される。ハウジング66は、内部に、カルーセル62を回転させるように使用されるモータを収容する。上面図から、主シャフト40を上昇又は下降させるように使用されるモータ70と、主シャフト40を回転させるように使用されるモータ80ともまた、明確に可視である。
【0031】
[052] 図7は、手術装置10の中間部分18の等角図を示し、そこでは、二次シャフト38を制御する機構が見られる。各二次シャフト38は、二次アーム30を回転させるか又は二次アーム30を上昇若しくは下降させるように、二次アーム30に取り付けられている。図7は、4つの二次シャフト38を示し、したがって、この特定の実施形態は、図2Aに示すイントロデューサ22を利用する。図2Bに示すイントロデューサ22が利用される場合、3つの二次シャフト38のみが、主シャフト40を中心に等しく間隔を空けて存在する。図2Cに示すイントロデューサ22が利用される場合、2つの二次シャフト38のみが、主シャフト40の傍らに存在する。この同じ論理は、図2D及び図2Eに示す残りのイントロデューサに続く。各二次シャフト38は、シャフトを回転させるか又は垂直に並進させるために、同じ電動手段を利用する。図7には、主シャフト40と、主シャフト40が歯車84を通って移動するのを可能にするキー溝88ともまた可視である。キー溝88に、歯車84上にあるキー86が係合し、それにより、歯車84に作用する力によって主シャフト40を回転させることができる。
【0032】
[053] 図8は、二次シャフト38がいかに、その長手方向軸を中心に回転するか又はその長手方向軸に沿って垂直に並進するかの開示を簡略化するように、1つの二次シャフト38のみとその関連する機構とを示す、中間部分18の等角図を示す。各二次シャフト38は、2つの別個のセクション、すなわち、平滑面を含む下部セクション及びスプラインからなる面を含む上部セクションから構成されている。二次シャフト38aを回転させるために、二次シャフト38aのスプラインセクションと係合する歯車37を回転させるように、モータ36aに電力が印加される。歯車37を回転させることにより、モータ36aは、二次シャフト38aによって実施される回転の右回り又は左回りの方向、回転の速度、及び回転の量を制御することができる。モータ36aは、図示せず且つ本開示の一部ではない、手術装置10の周囲の枠組に取り付けられている。二次シャフト38aをその長手方向軸に沿って垂直に並進させるために、二次シャフト38aの平滑セクションと摩擦係合するホイール35を回転させるために、モータ34aに電力が印加される。ホイール35を回転させることにより、モータ34aは、垂直並進の上方又は下方の方向及び垂直並進の速度とともに、垂直並進の量を制御することができる。ホイール35の反対側に、可視ではない別のホイールがあり、それは、電力が供給されず、ホイール35によって二次シャフト38aに対して加えられる力に対して反力を提供して、二次シャフト38aに対するホイール35による摩擦係合の適切なレベルを確保する。モータ34aは、図示せず且つ本開示の一部ではない手術装置10の周囲の枠組に取り付けられている。本明細書に記載する二次シャフト38aを回転させるか又は垂直に並進させる手段は、他の残りの二次シャフトを回転させるか又は垂直に並進させるようにも利用される。
【0033】
[054] 図9は、イントロデューサ22を含む下方部分16の等角図を示し、イントロデューサ22は、図示しないがイントロデューサ22と同じ平面に存在する腹壁12の位置の境界を画定する。イントロデューサ22の下方に存在する手術装置10の部分は腹腔14内にあり、イントロデューサ22の上方に存在する部分は腹腔14の外側にある。図9は、5つの開口部、すなわち、二次シャフト38用の4つの開口部及び主シャフト40用の1つの開口部を提供する、図2Aに特定するイントロデューサ22を備える手術装置10の好ましい実施形態を示す。好ましくは、主シャフト40は直径が5~12ミリメートルの範囲となり、二次シャフト38は直径が3~5ミリメートルの範囲となる。主アーム32及び二次アーム30の直径は、それらが取り付けられるシャフトの直径と一致する。他の実施形態は、主シャフト40及び二次シャフト38の種々の構成を支持する、図2B図2Eに示すイントロデューサ22を利用する。二次シャフト38は、図7及び図8に記載する機構によって回転させるか又は垂直に並進させることができる。
【0034】
[055] 図10は、二次アームとその関連するシャフトとの可視部分をよりよく開示するように、イントロデューサ22とともに、1つのみの二次シャフト38とその関連するアーム30とを示す、下方部分16の等角図を示し、イントロデューサ22は、図示しないがイントロデューサ22と同じ平面に存在する腹壁12の位置の境界を画定する。ここでの考察は、残りの二次シャフトとそれらの関連するアームとにも適用される。イントロデューサ22を通って延在するとともにヒンジ継手98を介して二次アーム30に接続する二次シャフト38の遠位部分が示されている。二次アーム30は、2つのセグメント、すなわちヒンジ継手100によって接続されている近位セグメント94及び遠位セグメント96から構成されている。遠位セグメント96のヒンジ継手100とは反対側に、図示しない用具が取り付けられる。図11に、近位セグメント94及び遠位セグメント96を操作する機構を示し、この機構は、2つのアクチュエータから構成されている。第1アクチュエータ、すなわちアクチュエータ90は、一方の端部が二次シャフト38に枢支連結され、反対の端部が近位セグメント94に枢支連結されている、リニアアクチュエータである。制御コンピュータから電気信号を受信すると、アクチュエータ90は、その全長を増減させ、したがって、ヒンジ継手98を中心に近位セグメント94を回転させることができる。第2アクチュエータ、すなわちアクチュエータ92もまた、一方の端部が近位セグメント94に枢支連結され、反対の端部が遠位セグメント96に枢支連結されている、リニアアクチュエータである。制御コンピュータから電気信号を受信すると、アクチュエータ92は、その全長を増減させ、したがって、ヒンジ継手100を中心に遠位セグメント96を回転させることができる。
【0035】
[056] 図12は、主アーム32及び主シャフト40の可視部分をよりよく開示するように、図示しないがイントロデューサ22と同じ平面に存在する腹壁12の部分の境界を画定するイントロデューサ22とともに、1つのみの主シャフト40と主アーム32とを示す、下方部分16の等角図を示す。イントロデューサ22を通って延在するとともにヒンジ継手118を介して主アーム32に接続する主シャフト40の遠位部分が示されている。主アーム32は、2つのセグメント、すなわちヒンジ継手120によって接続されている近位セグメント114及び遠位セグメント116から構成されている。遠位セグメント116のヒンジ継手120とは反対側に、主用具44が取り付けられている。図13に、近位セグメント114及び遠位セグメント116を操作する機構を示し、この機構は、2つのアクチュエータとロータとから構成されている。第1アクチュエータ、すなわちアクチュエータ110は、一方の端部が主シャフト40に枢支連結され、反対の端部が近位セグメント114に枢支連結されている、リニアアクチュエータである。制御コンピュータから電気信号を受信すると、アクチュエータ110は、その全長を増減させ、したがって、ヒンジ継手118を中心に近位セグメント114を回転させることができる。第2アクチュエータ、すなわちアクチュエータ112もまた、一方の端部が近位セグメント114に枢支連結され、反対の端部が遠位セグメント116に枢支連結されている、リニアアクチュエータである。制御コンピュータから電気信号を受信すると、アクチュエータ112は、その全長を増減させ、したがって、ヒンジ継手120を中心に遠位セグメント116を回転させることができる。主用具44を右回り又は左回りに回転させることができるように、主アーム32に、ロータ112を介してさらなる自由度が与えられる。
【0036】
[057] 外科医が、いかなる二次アームもなしにより能力の高い主アームのみを使用して手術をより適切に実施すると判断した場合、本発明の手術装置を集合体として使用することができる。こうしたシナリオでは、主シャフト40のみを残して一体化されるように、各手術装置10から二次シャフト38が取り除かれる。主シャフト40の長さを延長することにより、各手術装置の上方部分20は、残りの手術装置10の動作を干渉することなく、主シャフト40を回転させ且つ垂直に並進させるとともに、主アーム32の遠位端の手術用具を交換するように動作することができる。この構成を図14に示し、そこでは、各々が主アーム32a、32b及び32cとともに対応する主シャフト40a、40b及び40cを有する、3つの手術装置140a、140b及び140cの集合体が、図2Dに示すイントロデューサ22と結合されている、手術装置10の第2実施形態140。外科医は、より少ない数のアームで作業することになるが、主アームを使用することにより、より強力なモータ及びアクチュエータ、さらなる自由度、並びに各アームの遠位端の手術用具を自律的に交換する能力等、追加の能力が外科医に提供される。
【0037】
[058] 図15は、本発明の手術装置の代替実施形態142を示す。ここでは、手術装置142の上方部分20は、カルーセル62が、一方の側に沿って複数のグリップ64を支持するレール63に置き換えられているという点で、手術装置10の好ましい実施形態とは異なる。ハウジング66内のモータは、トラック65と係合する歯車を回転させ、レール63がトラック65に沿って横方向に移動することができるようにする。外科医が、手術の状況により、主用具44の代わりに別の用具を用いることが必要である場合、基本的には図5に示すものと同じ方法に従うが、ここでは、レール63が、アクチュエータ68により主シャフトに向かって又は主シャフトから離れるように移動し、一方、ハウジング66内のモータは、所望のグリップ64を主シャフト40と対向して位置決めするようにレール63を横方向に移動させる。
【0038】
[059] 図16は、本発明の手術装置の代替実施形態144を示す。ここでは、手術装置144の上方部分20は、手術装置10と比較して、カルーセル62及びモータ66が支持アーム60上に垂直に取り付けられているという点で、手術装置10の好ましい実施形態とは異なる。アクチュエータ68は、支持アーム60に沿ってモータ66を移動させるように依然として機能し、一方、ハウジング66内のモータは、グリップ64を主シャフト40と対向して位置決めすることができるようにカルーセル62を回転させる。主シャフト40をグリップ64と位置合せするために、支持アーム60に水平オフセットを適用しなければならない。図3に示すようにプレート76に支持アーム60を取り付けるのではなく、この実施形態では、支持アーム60は後部プレート78に取り付けられる。外科医が、手術の状況により主用具44の代わりに別の用具を用いる必要がある場合、図5に示すものと同じ方法に従う。
【0039】
[060] 図17は、本発明の手術装置の代替実施形態146を示し、そこでは、図2Eに示すイントロデューサ22とともに複数の主アーム32及び二次アーム30が使用される。二次アーム30b並びに対応するモータ36b及び38bは、主シャフト40a及び40bの後方にあるため可視ではない。この実施形態では、二次アーム30aはカメラを支持することができ、二次アーム30bは照明を支持することができ、これは、これらの手術用具はそれほどの精度が不要であるためであり、一方、主アーム40a及び40bは、使用中により高い精度を必要とする手術用具を支持することができる。
【0040】
[061] 本発明について説明し、本発明の具体的な例について描写した。本発明について、特定の変形及び例示的な図に関して説明したが、当業者であれば、本発明が、記載した変形又は図に限定されないことを理解するであろう。さらに、上述した方法及びステップは、ある特定の順序で発生しているいくつかの事象を示すが、当業者であれば、いくつかのステップの順序を変更することができることと、こうした変更形態が本発明の変形によることとを理解するであろう。さらに、ステップのうちのいくつかを、可能な場合は並列プロセスで同時に実施することができるとともに、上述したように逐次実施することができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17