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特許7408661改良されたフードのエラストマー合わせ目を有する防護服
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】改良されたフードのエラストマー合わせ目を有する防護服
(51)【国際特許分類】
   A62B 17/04 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
A62B17/04 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021532226
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2019062155
(87)【国際公開番号】W WO2020117468
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】62/776,192
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】アレイン ロベルタ エスピノザ
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/115550(WO,A1)
【文献】特表2006-526436(JP,A)
【文献】米国特許第5653225(US,A)
【文献】特表2004-520995(JP,A)
【文献】特表2004-523277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0304106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 17/00,18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面領域を有するフードを含む防護服であって、前記顔面領域は、エラストマー合わせ目を備え、前記エラストマー合わせ目は、全面マスク又は全面レスピレータを前記フードと係合させ、且つ着脱可能に密着させるための開口部を有し、
前記開口部は、前額縁部、顎縁部並びに第1及び第2の頬縁部を有し、
前記前額縁部及び前記顎縁部は、前記開口部の中心に対して内側に湾曲した縁部であり、且つ前記2つの頬縁部は、前記開口部の前記中心に対して外側に湾曲した縁部であり、
前記開口部は、前記第1及び第2の頬縁部間における中心線水平寸法と、前記前額縁部と前記顎縁部との間における中心線垂直寸法とを更に有し、
前記中心線水平寸法は、前記中心線垂直寸法よりも長く、中心線垂直寸法に対する中心線水平寸法のアスペクト比は、1.5以上である、
ことを特徴とする防護服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別々の全面マスク又は全面レスピレータでの使用に適した防護服に関する。防護服は、レスピレータをフードと係合させ、且つ着脱可能に密着させるためのガスケット付きフェイス開口を有するフードを有する。更に、防護服は、着用者が全面マスク又は全面レスピレータを依然として着用している間に脱がれ得る。本明細書で用いる「ガスケット付きフェイス開口」、「エラストマーガスケットを備えた顔面領域」、「フードの顔面領域のゴムタイプカフ」及び「表面ガスケット」という語句は、言い換え可能に用いられ、NFPA1994が指定するように防護服のフードの「エラストマー合わせ目」を指すものと理解されたい。
【背景技術】
【0002】
化学及び/又は生物的防護服の分野において、透明なフェイスシールド又はレンズ、すなわち実際に製造されて防護服のフードに密着されたレンズのフェイスシールドと一体化された防護服が知られている。これらの防護服の設計は、フードの顔面領域が使用中に密着されていることを着用者に保証する。しかし、特別なマスク及び/又はレスピレータを必要とするものを含む多くの異なる化学及び/又は生物的脅威及び状況がある。従って、全面マスク又は全面レスピレータと係合してある程度密着するように設計されたフードの顔面領域のゴムタイプカフを含む、フード付きの化学及び/又は生物的防護服が開発されている。例えば、DuPont Tychem(登録商標)スタイルBR611、TF611T等のフェイスマスクと係合するための円形又は楕円形の開口部を有する防護服が知られている。同様に、DuPont Tychem(登録商標)スタイルTF611、TB-Safety Case One(登録商標)B及びMicrochem(登録商標)4000 151の商標で販売されている防護服は、フェイスマスクと係合するための三楕円形の開口部を有するフェイスのエラストマー合わせ目を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特定の全面マスク又は全面レスピレータを用いる場合、フードの密着性の改良が望ましいことが分かっている。具体的には、使用中にゴム製フードガスケット、すなわちエラストマー合わせ目と全面マスク又は全面レスピレータとの良好な密着を維持することが前額領域及び顎領域域で困難な場合があることが見出された。特に、いくつかの例では、着用者が頭部を激しく上下に動かした場合又は頭部の反復的な上下運動後、ゴム製フードガスケットが全面マスク又は全面レスピレータからすべり落ちる恐れがある。必要とされているのは、全面マスク又は全面レスピレータの外形とより良好に合わさる改良されたフード密着エラストマー合わせ目である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、フードの着用者の顔面を覆う顔面領域を有するフードを含む防護服であって、顔面領域は、エラストマー合わせ目を備え、エラストマー合わせ目は、全面マスク又は全面レスピレータをフードと係合させ、且つ着脱可能に密着させるための開口部を有し、開口部は、前額縁部、顎縁部並びに第1及び第2の頬縁部を有し、前額縁部及び顎縁部は、開口部の中心に対して内側に湾曲した縁部であり、且つ2つの頬縁部は、開口部の中心に対して外側に湾曲した縁部であり、開口部は、第1及び第2の頬縁部間における中心線水平寸法と、前額縁部と顎縁部との間における中心線垂直寸法とを更に有し、中心線水平寸法は、中心線垂直寸法よりも長く、中心線垂直寸法に対する中心線水平寸法のアスペクト比は、1.5以上である、防護服に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】全面マスク又は全面レスピレータをフードと係合させ、且つ着脱可能に密着させるための開口部を有するエラストマー合わせ目を備えた顔面領域を有する1種類の防護服、具体的には耐化学品全身密封スーツの前面の図である。この図は、エラストマー合わせ目が全面マスク又は全面レスピレータと係合する前、すなわち着用者が全面マスク又は全面レスピレータも着用していない場合のスーツの外観を示す。
図2図1の耐化学品全身密封スーツのフードの、エラストマー合わせ目が全面レスピレータと係合する前に示される詳細図である。
図3】開口部を有するエラストマー合わせ目のそれぞれ前面図である。
図4】開口部を有するエラストマー合わせ目のそれぞれ側面図である。
図5】開口部を有するエラストマー合わせ目の特定の構造特徴の詳細図である。
図6】全面レスピレータをフードに着脱可能に密着させるエラストマー合わせ目を備えた顔面領域を有するフードを含む1種類の防護服、具体的には耐化学品全身密封スーツのそれぞれ前面図である。この図は、エラストマー合わせ目が全面レスピレータを係合した後、すなわち着用者が全面レスピレータ、次いでスーツを既に着用しており、更にエラストマー合わせ目の開口部を通して全面レスピレータを装着していた場合のスーツの外観を示す。換言すれば、分離式全面レスピレータと共に着用された場合のこの防護服の外観である。
図7】全面レスピレータをフードに着脱可能に密着させるエラストマー合わせ目を備えた顔面領域を有するフードを含む1種類の防護服、具体的には耐化学品全身密封スーツのそれぞれ側面図である。この図は、エラストマー合わせ目が全面レスピレータを係合した後、すなわち着用者が全面レスピレータ、次いでスーツを既に着用しており、更にエラストマー合わせ目の開口部を通して全面レスピレータを装着していた場合のスーツの外観を示す。換言すれば、分離式全面レスピレータと共に着用された場合のこの防護服の外観である。
図8】エラストマー合わせ目によりスーツに着脱可能に密着された分離式全面レスピレータを備えたスーツの顔面領域のそれぞれである。換言すれば、分離式全面レスピレータが着用されてエラストマー合わせ目と係合された場合のスーツの顔面領域の外観である。
図9】エラストマー合わせ目によりスーツに着脱可能に密着された分離式全面レスピレータを備えたスーツの顔面領域のそれぞれ上面図である。換言すれば、分離式全面レスピレータが着用されてエラストマー合わせ目と係合された場合のスーツの顔面領域の外観である。
図10】エラストマー合わせ目によりスーツに着脱可能に密着された分離式全面レスピレータを備えたスーツの顔面領域のそれぞれ底面図である。換言すれば、分離式全面レスピレータが着用されてエラストマー合わせ目と係合された場合のスーツの顔面領域の外観である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
防護服は、全面マスク又は全面レスピレータをフードと係合させ、且つ着脱可能に密着させるための開口部を有するエラストマー合わせ目を備えた顔面領域を有するフードを含む。
【0007】
フードを備えた防護服は、好適には、防護服生地を含む。用語「防護服生地」は、広範な種類の防護服生地、バリア生地、ラミネート及びフィルムを含むものとする。用語「防護衣生地」は、不織布及び/又は織布並びにそのような材料のフィルム又は多層フィルムとの積層品も含む。いくつかの実施形態において、外側フード防護生地は、耐化学品を有する外側層を含む。いくつかの好適な実施形態において、防護服生地、従って服材料は、多層フィルムと不織布との積層である。いくつかの実施形態において、防護服材料は、不織布、例えば液体及び/又は微粒子の貫通に耐性を有するTyvek(登録商標)スパンボンドポリエチレン等の不織布である。他の有用な防護服生地は、広範な種類の脅威を防ぎ、例えば米国特許第5,626,947号明細書(Hauer他)、同第4,855,178号明細書(Langley)、同第4,272,851号明細書(Goldstein)、同第4,772,510号明細書(McClure)、同第5,035,941号明細書(Blackburn)、同第4,214,321号明細書(Nuwayser)、同第4,920,575号明細書(Bartasis)、同第5,162,148号明細書(Boye)、同第4,833,010号明細書(Langley)に開示されているものを含むが、これらに限定されない。
【0008】
いくつかの実施形態において、防護服は、フードである。いくつかの実施形態において、防護服は、フード付きのカバーオール又はフードを有するジャケットである。他のいくつかの実施形態において、防護服は、耐化学品全身密封スーツである。いくつかの好適な実施形態において、防護服は、レベルA、B、C又はD防護服である。レベルAの防護服は、最高レベルの皮膚、呼吸及び眼球防護を必要とする状況で用いられ、一般に完全密封蒸気防護服である。レベルBの防護服は、最高レベルの呼吸防護を必要とするが、皮膚防護に必要なレベルより低い状況で用いられる。レベルCの防護服は、皮膚が露出していても、大気汚染、液はね及び他の直接的接触が悪影響を与えないか又は吸収される状況で用いられる。レベルDの防護服は、汚染が不快感に過ぎない状況で用いられる。A、B、C又はDレベルに格付けされる防護服を組み合わせて用いるいくつかの例があり得る。
【0009】
図1は、全面マスク又は全面レスピレータを装着する前の耐化学品全身密封スーツ1の形式の防護服を示し、図2は、そのスーツのフードの詳細図である。防護服は、破線で示すように、レスピレータをフードと係合させ、且つ着脱可能に密着させるための開口部5を有するエラストマー合わせ目4を備えた顔面領域3を有するフード2を含む。このスーツは、任意選択的なグローブ6及びブーツ7並びに防護服の着用箇所を覆うフラップ8と共に更に示されている。
【0010】
図3及び図4は、それぞれ開口部5を有するエラストマー合わせ目4を有する顔面領域の前面及び側面図である。本明細書で用いる「顔面領域」は、着用者の顔面を覆うフードの前面部分であるフード内の領域である。
【0011】
エラストマー合わせ目は、エラストマー材料で製造され、本明細書で用いる「エラストマー材料」は、伸縮性を有する任意の材料も含むものとする。いくつかの好適な実施形態において、このような材料は、人造又は天然ゴムを含む。いくつかの実施形態において有用なエラストマー材料は、ASTM標準D1418-06「ゴム及びゴムラテックスの標準技法」に従って以下の命名を有するものを含む。EPDM(側鎖にジエンの不飽和残基を有するエチレン、プロピレン及びジエンの三元重合体)、IR(合成イソプレン)、BIIR(ブロモイソブテンイソプレン)、BR(ブタジエン)、CIIR(クロロイソブテンイソプレン)、CR(クロロプレン)、CSM(クロロスルホニルポリエチレン)、ECO(酸化エチレン(オキシレン)及びクロロメチルオキシレン(エピクロルヒドリン共重合体))、EPM(エチレン及びプロピレンの共重合体)、FKM(コモノマーとしてフッ化ビニリデンを利用し、(反応性ペンダント基を有する)硬化部位モノマーの有無に関わらず、フルオロ、アルキル、ペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルコキシ基を置換基としてポリマー鎖に有するポリエチレンタイプのフルオロゴム)、FVMQ(フッ素、ビニル及びメチル置換基をポリマー鎖上に有するシリコンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリルブタジエン)、IIR(イソブタンイソプレン)、VMQ(ポリマー鎖にメチル及びビニル置換基の両方を有するシリコンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエン)、PU(ポリウレタン)、SBR(スチレンブタジエン)、SEBS(ポリ[スチレン(ブロック)エテンコブタン(ブロック)スチレン])、SIR(スチレンイソプレンゴム)、XNBR(カルボン酸アクリロニトリルブタジエン)。他の有用な材料は、ネオプレンゴム、ブチルゴム、木材ゴム及びゴム状物質の一般的名称を有する。他の有用な材料は、Viton(登録商標)、BunaS(登録商標)、Hypalon(登録商標)、Silastic(登録商標)、Kalrez(登録商標)、Chemraz(登録商標)、Technoflon(登録商標)等の商標で知られる。いくつかの実施形態において、エラストマー材料は、防護服に用いる防護服生地の貯蔵寿命に少なくとも等しく、好適には上回る有効貯蔵寿命を有し、これは、現行のASTM標準に基づいて典型的には少なくとも10年である。
【0012】
図5は、伸縮可能な開口部5を有するエラストマー合わせ目4の特定の構造的特徴の詳細図である。「伸縮可能」とは、エラストマー合わせ目が全面マスク又は全面レスピレータのレンズ又はシールドの取り付け部位と係合されるか又はそれに被せて引き伸ばされた場合に伸長することを意味する。開口部は、前額縁部11、顎縁部12並びに第1及び第2の頬縁部14を有する。エラストマー合わせ目が全面マスク又は全面レスピレータと係合した場合、これらの伸縮可能な縁部部(前額縁部、顎縁部並びに第1及び第2の頬縁部)は、全て伸びてフェイスピース周縁部の周りの接触領域の輪郭に沿う。前額縁部11及び顎縁部12の両方は、開口部の中心15に対して内側に湾曲した縁部である。本明細書で用いる「内側に湾曲した縁部」は、典型的には、開口部15の中心に向かって内側に湾曲した縁部として定義される。2つの頬縁部14は、開口部の中心から外側に湾曲した縁部である。本明細書で用いる「外側に湾曲した縁部」は、典型的には、開口部15の中心から外側に、すなわち遠ざかる方向に湾曲した縁部として定義される。前額縁部が開口部の最上部に位置しており、全面マスク又は全面レスピレータに係合した際に着用者の概ね前額領域に被せて配置されることを理解されたい。同様に、顎縁部が開口部の底部に位置しており、全面レスピレータと係合した際に着用者の概ね顎部領域に被せて配置されることを理解されたい。更に、各々の頬縁部が開口部の両側に位置しており、全面マスク又は全面レスピレータと係合した際に頭部の両側に概ね頬から耳にわたる領域域に被せて配置されることを理解されたい。
【0013】
図5に示すように、全面マスク又は全面レスピレータと係合する前に、前額縁部、顎縁部並びに第1及び第2の頬縁部は、好適には、開口部周囲の滑らかな曲線を辿り、顔面の両側の前額縁部/頬縁部境界線は、頬縁部の外側に湾曲した縁部が前額縁部の内側に湾曲した縁部となる変曲点20である。同様に、顔面の両側の顎縁部/頬縁部の境界は、頬縁部の外側に湾曲した縁部が前額の内側に湾曲した縁部となる変曲点21である。これにより開口部が形成され、前額縁部と顎縁部とが滑らかに湾曲して、開口部内に伸長して丸いタブ又は「唇」が開口部に形成されると共に、より狭いネックが形成されて、水平方向の2つの丸いローブが分離される。従って、開口部は、自らの側に位置する砂時計の形状と同様の外観をなす。この形状は、「犬の骨」状とも称されるが、図示するように、犬の骨は、各終端で単一の丸いローブを有する。
【0014】
図5に更に示すように、開口部は、破線30で示すように、第1及び第2の頬縁部間における中心線水平寸法と、破線31で示すように、前額縁部と顎縁部との間における中心線垂直寸法を更に有する。いくつかの実施形態において、引き伸ばされていない開口部の中心線垂直寸法は、2~4インチ、好適には2.2~3.5インチである。いくつかの実施形態において、引き伸ばされていない開口部の中心線水平寸法は、5~6.5インチ、好適には5.5~6.0インチである。
【0015】
定義により、中心線水平寸法30及び中心線垂直寸法31は、開口部15の中心で交わる。図5に示すように、破線31は、開口部について中心線垂直対称軸も形成し、第1及び第2の頬縁部を形成する2つの丸いローブの各々がその軸の周りで対称である。更に、中心線水平寸法は、フードを全面レスピレータと係合する前に中心線垂直寸法よりも長く、中心線垂直寸法に対する中心線水平寸法のアスペクト比は、1.5以上である。いくつかの好適な実施形態において、アスペクト比は、1.7以上である。より大きいアスペクト比では、エラストマー合わせ目がめくれ得ることが分かっているため、ベストパフォーマンスを得るには、最大アスペクト比が3以下であることが望ましいと考えられる。図5から分かるように、中心線垂直寸法31は、開口部の最小垂直寸法でもあり、第1及び第2の頬縁部を形成する2つの対称な丸いローブの中心における垂直寸法は、開口部15の中心におけるものよりも大きい。いくつかの実施形態において、破線30は、開口部について中心線水平対称軸も形成する。
【0016】
図4は、エラストマー合わせ目を備える顔面領域を有するフードの側面図であり、エラストマー合わせ目がどのように全面マスクか又は全面レスピレータと係合して、レスピレータをフードに着脱可能に密着させるかを示す。
【0017】
図6及び図7は、それぞれフードに全面レスピレータ41を着脱可能に密着させるエラストマー合わせ目を備えた顔面領域を有するフードを含む一種類の防護服、特に耐化学品全身密封スーツ40の前面図及び側面図である。エラストマー合わせ目42は、全面レスピレータ41のフェイスピースに被せて引き伸ばされている。この図は、エラストマー合わせ目が全面レスピレータを係合した後、すなわち着用者が全面レスピレータ、次いでスーツを既に着用しており、更にエラストマー合わせ目の開口部を通して全面レスピレータを装着していた場合のスーツの外観を示す。換言すれば、分離式全面レスピレータと共に着用された場合のこの防護服の外観である。スーツを任意選択的なグローブ45及びブーツ46と共に更に示す。
【0018】
図8図9及び図10は、それぞれエラストマー合わせ目52によりスーツに着脱可能に密着された分離式全面レスピレータ51を有するスーツの顔面領域50の側面図、上面図及び底面図である。換言すれば、分離式全面レスピレータが着用されてエラストマー合わせ目と係合された場合のスーツの顔面領域の外観である。
【0019】
本明細書における全面マスク又は全面レスピレータは、以下を含むものとする。全面レンズ又はシールドを有する頭部着用マスク又は追加的なフィルタリングの有無に関わらず、内部又は外部空気発生源のいずれかにより着用者の呼吸を追加的に支援する全面レンズ又はシールドを有する頭部着用マスク。典型的には、全面マスク又は全面レスピレータは、更にフェイスピースに接続されたハウジングに載置された、透明な、成形された、全面レンズ及び全面マスク又はレスピレータを頭部に固定するための各種のクランプ及びストラップを含む多数の部分を有する。フェイスピースは、頭部との合わせ目であって、一般に堅牢な高分子材から作られ、全面マスク又はレスピレータと着用者の頭部前面、典型的には着用者の顔面との間に密着を形成するために周縁部の周りに自らのエラストマー材料を有する。
【0020】
防護服は、エラストマー合わせ目の開口部が全面マスク又は全面レスピレータの筐体に被せて引き伸ばされた際、エラストマー合わせ目が合わさって、全面マスク又は全面レスピレータと係合するために被さることができるフェイスピースの周縁部の周りに接触領域を有する任意の全面マスク又はレスピレータマスクと合わせて使用するのに適していると考えられる。一般に、このような全面マスク又は全面レスピレータのヘッドストラップは、全面レンズが載置された筐体の外面ではなく、フェイスピースに取り付けられる。防護服と合わせて使用できる適当な市販の全面マスク又は全面レスピレータとして、興研(株)の全面マスクモデル、ScottモデルAV3000及びAV3000Sure Seal、DraegarモデルPPS 7000、FPS 7000、Futura及びP Nova、MSAモデルG1 Facepiece、Ultra Elite Facepiece及びAdvantage 1000、Avon Deltair(商標)互換マスク及び3M 6800シリーズ並びにFF400シリーズモデルが含まれる。
【0021】
「レスピレータをフードと係合させ、且つ着脱可能に密着させる」とは、全面レスピレータの着用者が防護服を着用する際、フェイスピースの周縁部の周りのエラストマー合わせ目と接触領域との表面摩擦により、好適には接触領域内でフェイスピースの周縁部と1~2センチメートル程度重なることによりレスピレータと「係合する」ように、エラストマー合わせ目がフェイスピースに被せて引き伸ばされて、フードをレスピレータに密着させることを意味する。更に、エラストマー合わせ目は、レスピレータに永久的に密着されず、フードは、レスピレータを取り外すことなく、レスピレータから取り外す、すなわち「脱がせる」ことができる。
【0022】
上述のように、前額縁部、顎縁部及び2つの頬縁部を有し、且つ中心線垂直寸法に対する中心線水平寸法のアスペクト比が1.5以上であるエラストマー合わせ目開口部は、全面マスク又は全面レスピレータへの密着性がより優れているため、防護服と全面マスク又は全面レスピレータとの十分な密着を維持しながら、着用者がより広い範囲で頭部を動かすことができるフード付きの防護服を提供すると考えられる。
次に本発明の好ましい態様を示す。
1.顔面領域を有するフードを含む防護服であって、前記顔面領域は、エラストマー合わせ目を備え、前記エラストマー合わせ目は、全面マスク又は全面レスピレータを前記フードと係合させ、且つ着脱可能に密着させるための開口部を有し、
前記開口部は、前額縁部、顎縁部並びに第1及び第2の頬縁部を有し、
前記前額縁部及び前記顎縁部は、前記開口部の中心に対して内側に湾曲した縁部であり、且つ前記2つの頬縁部は、前記開口部の前記中心に対して外側に湾曲した縁部であり、
前記開口部は、前記第1及び第2の頬縁部間における中心線水平寸法と、前記前額縁部と前記顎縁部との間における中心線垂直寸法とを更に有し、
前記中心線水平寸法は、前記中心線垂直寸法よりも長く、中心線垂直寸法に対する中心線水平寸法のアスペクト比は、1.5以上である、
ことを特徴とする防護服。
2.前記アスペクト比は、1.7以上である、
上記1に記載の防護服。
3.前記アスペクト比は、3以下である、
上記1又は2に記載の防護服。
4.フード付きカバーオールの形式である、
上記1~3のいずれかに記載の防護服。
5.フードを有するジャケットの形式である、
上記1~3のいずれか1に記載の防護服。
6.耐化学品全身スーツの形式である、
上記1~3のいずれか1に記載の防護服。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10