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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】置換キサンタン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 473/06 20060101AFI20231225BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C07D473/06 CSP
A61K31/522
A61P43/00 111
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/28
A61P25/00
A61P25/20
A61P25/16
A61P25/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021533341
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2019084373
(87)【国際公開番号】W WO2020120449
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】18212059.2
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】520011186
【氏名又は名称】ハイドラ・バイオサイエンシーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Hydra Biosciences, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】ゲルラッハ カイ
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513717(JP,A)
【文献】国際公開第2018/146485(WO,A1)
【文献】特表2017-523229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I
【化1】
(式中、
1は、エチル、イソプロピル、イソブチル、シクロブチルを表し;
2は、下記基
【化2】
を表し;
3は、水素、フルオロ、任意に1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいC1-C3-アルキルを表し;
4は、水素又はフルオロを表し;
5は、下記基
【化3】
【化4】
を表し;
これらの基は、任意に1個以上のフッ素原子及び/又は1個以上のフッ素原子でフッ素化された1つ以上のC1-C3-アルキルで置換されていてもよい)
の化合物。
【請求項2】
式中、
1が、エチル、イソプロピルを表し;
2が、下記基
【化5】
を表し;
3が、水素、メチルを表し;
4が、水素を表し;
5が、下記基
【化6】
を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記化合物
【化7】
から成る群より選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物の医薬的に許容される塩。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物、又は請求項4に記載の医薬的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項6】
対象のTRPC5介在性障害の治療方法において使用するための、請求項5に記載の医薬組成物
【請求項7】
前記TRPC5介在性障害が、精神性、神経性又は神経変性状態である、請求項に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記精神性、神経性又は神経変性状態が、感情処理調節不全と関連する疾患(例えば情緒不安定性パーソナリティ障害又はうつ病性障害、例えば大うつ病、大うつ病性障害、精神性うつ病、気分変調症、及び産後うつ病、並びに双極性障害)、不安及び恐怖関連障害(例えば外傷後ストレス障害、パニック障害、広場恐怖症、社会恐怖症、全般不安症、パニック障害、社交不安症、強迫性障害、及び分離不安症)、記憶障害(例えばアルツハイマー病、健忘症、失語症、脳損傷、脳腫瘍、慢性疲労症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、解離性健忘症、遁走健忘症、ハンチントン病、学習障害、睡眠障害、多重パーソナリティ障害、疼痛、外傷後ストレス障害、統合失調症、スポーツ損傷、脳卒中、及びウェルニッケ・コルサコフ症候群)、衝動制御不全及び嗜癖と関連する障害並びにアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、及び外傷又は加齢を含めた他の傷害に起因する他の脳障害から成る群より選択される、請求項に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、置換キサンタン誘導体、それらを含有する医薬組成物及び療法、特にTRPC5含有イオンイオンチャネルとの関連性を有する状態の治療又は予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
細胞膜を横断するイオン流動を媒介するために種々多様のイオンチャネルタンパク質が存在する。イオンチャネルタンパク質の正常な発現及び機能は、細胞機能の維持、及び細胞内情報伝達のために不可欠である。多くの疾患は、膜電位の誤制御又は異常なカルシウム調節の結果である。細胞内の膜電位及びイオン流動の調節におけるイオンチャネルの中心的な重要性を考慮すると、特定のイオンチャネルを促進又は阻害できる薬剤の同定は、研究手段として及び可能な治療薬として非常に興味深い。
一過性受容体電位(TRP)カチオンチャネルサブファミリーCメンバー5(TRPC5)等のカチオンチャネルは、細胞膜を横断するカルシムイオン及びナトリウムイオンの流動を調節する。これは、電位依存性イオンチャネルが活性化に必要な閾値に達する可能性を高める。結果として、非選択的カチオンチャネルの活性化は電気的興奮性を高め、電位依存性事象の頻度を増やす可能性がある。電位依存性事象としては、限定するものではないが、ニューロン活動電位、心筋活動電位、平滑筋収縮、心筋収縮、及び骨格筋収縮が挙げられる。
TRPC5等の非選択的カチオンチャネルの活性化に起因するカルシウム流入も細胞内の遊離カルシウム濃度を変える。カルシウムは、細胞内に広範に分布するセカンドメッセンジャーであり、細胞内カルシウムレベルの変化は、シグナル伝達及び遺伝子発現に顕著な影響を与える。従って、TRPC5等の非選択的カチオンチャネルの活性化は、遺伝子発現及び細胞の表現型の変化をもたらす可能性がある。遺伝子発現事象としては、限定するものではないが、細胞表面受容体をコードするmRNA、イオンチャネル、及びキナーゼの産生が挙げられる。遺伝子発現のこれらの変化は、当該細胞に興奮性亢進をもたらす可能性がある。
【0003】
ホモマーTRPC5イオンチャネルは、優勢にニューロンに発現されるシグナル伝達依存性Ca2+透過性チャネルである。TRPC5は、ホモマルチマー構造、例えばテトラマー(すなわち、TRPC5ホモモルチマー)及びヘテロマルチマー構造、例えばテトラマー(すなわち、TRPC5-TRPC1ヘテロマルチマー)を形成する。明示的に別段の定めをした場合を除き、本明細書で用語TRPC5を使用するとき、例えば、TRPC5のモジュレーター、例えばTRPC5アゴニストを特定するとき、用語TRPC5は、一般的にTRPC5ホモマルチマー若しくはテロマルチマー(例えばTRPC5-TPRC1若しくはTRPC5-TRPC4ヘテロマルチマー)のどちらか又は両方を含めるように使用する。文献記載のTRPC5の例としては以下のものが挙げられる:Nature 2008 Jan. 3; 451 (7174):69-72; Mol Pharmacol. 2008 Jan.; 73 (1):42-9; J Biol Chem. 2007 Nov. 16; 282 (46):33868-78; Biochem Biophys Res Commun. 2008 Jan. 11; 365 (2):239-45; J Biol Chem. 2006 Nov. 3; 281 (44):33487-96; Eur J Pharmacol. 2005 Mar. 14; 510 (3):217- 22; J Biol Chem. 2006 Feb. 24; 281 (8):4977-82; Biochem Soc Trans. 2007 February; 35 (Pt.1):101-4; Handb Exp Pharmacol. 2007; (179):109-23; J Biol Chem. 2005 Mar. 25; 280 (12):10997-1006; J Physiol. 2006 Jan. 15; 570 (Pt 2):219-35; and Nat Neurosci. (2003) 6: 837-45。
【0004】
TRPC5タンパク質の機能の調節は、カルシウム恒常性、ナトリウム恒常性、膜分極、及び/又は細胞内カルシウムレベルを調節する手段を与え、かつTRPC5機能を調節できる化合物は、限定するものではないが、カルシウム恒常性の維持、細胞内カルシウムレベルの調節、膜分極の調節、並びにカルシウム及び/又はナトリウムの恒常性又は恒常性不全と関連する疾患、障害、又は状態の治療又は予防といった多くの局面で有用である。
TRPC5含有イオンチャネルを阻害する化合物は、例えば、一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーCメンバー5(TRPC5)の活性を調節することによって、精神神経性障害、神経変性障害、腎症、及び発作性障害等の状態を治療するのに役立ち、TRPC5は、ホモマルチマー形並びにTRPC1又はTRPC3等の他のイオンチャネルとのヘテロヘテロマルチマー形(すなわちTRPC5-TRPC1及びTRPC1-TRPC3-TRPC5)で存在し得る。WO2014/143799は、TRPC5を阻害するキサンチン誘導体を開示している。それらは、TRPC5介在性イオン流動を阻害するか、或いはTRPC5によって媒介される内向き電流、外向き電流、又は両電流を阻害することによってTRPC5の機能を調節する。
【発明の概要】
【0005】
発明の詳細な説明
本発明は、下記式I
【化1】
(式中、
R1は、エチル、イソプロピル、イソブチル、シクロブチルを表し;
【0006】
R2は、下記基
【化2】
を表し;
R3は、水素、フルオロ、任意に1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいC1-C3-アルキルを表し:
R4は、水素又はフルオロを表し;
【0007】
R5は、下記基
【化3】
【化4】
を表し、
これらの基は、任意に1個以上のフッ素原子及び/又は1個以上のフッ素原子でフッ素化された1つ以上のC1-C3-アルキルで置換されていてもよい)
の新規置換キサンタン誘導体
又はその生理学的許容される塩を提供する。
【0008】
別の実施形態では、一般式I中、
R1が、エチル、イソプロピルを表し;
R2が、下記基
【化5】
を表し;
R3が、水素、メチルを表し;
R4が、水素を表し;
【0009】
R5が、下記基
【化6】
を表す、
新規置換キサンタン誘導体
又はその生理学的許容される塩を提供する。
【0010】
本発明の化合物は、強力なTRPC5阻害薬である。それらはWO 2014/143799に開示されている構造的に密接な化合物とは、本発明の化合物のキサンチンのC8位が、フェニル基ではなく2-ピラジニル基で置換されている点で異なる。
本発明の化合物は、TRPC5介在性イオン流動を阻害することによって又はTRPC5によって媒介される内向き電流、外向き電流、若しくは両電流を阻害することによってTRPC5の機能を調節する。それらは、WO 2014/143799に記載の最も近い先行技術の化合物に比べて、TRPC5の阻害に関する高い効力を特徴とする。
従って、本発明は、TRPC5介在性障害の治療に使用するための化合物を提供する。
本発明はさらに、ヒト対象のTRPC5介在性障害の治療方法であって、本発明の化合物又は本発明の化合物若しくはその医薬的に許容される塩の組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0011】
一態様では、本発明は、TRPC5介在性電流及び/又はTRPC5介在性イオン流動を阻害する本明細書に記載の化合物のようなTRPC5拮抗薬を投与することによって、TRPC5活性低下が状態の重症度を軽減できる状態を治療する方法に関する。本明細書には、TRPC5の阻害について5ナノモル濃度以下の測定値IC50を有するTRPC5拮抗薬である化合物について述べる。特定実施形態では、TRPC5拮抗薬である本明細書に記載の化合物は、内向き及び外向きの一方又は両方のTRPC5介在性電流を5ナノモル濃度以下のIC50で阻害する。特定実施形態では、本明細書に記載の化合物は、5ナノモル濃度以下で投与されると、TRPC5介在性電流又はTRPC5介在性イオン流動の少なくとも95%を阻害する。
別の態様では、TRPC5拮抗薬である本明細書に記載の化合物を用いて、TRPC5の機能、例えばTRPC5介在性電流及び/又はTRPC5介在性イオン流動を阻害することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物を用いて、インビトロで、例えば培養中の細胞内で、TRPC5介在性電流を阻害することができる。他の実施形態では、本明細書に記載の化合物を用いて、インビボでTRPC5介在性電流を阻害することができる。特定実施形態では、本明細書に記載の化合物は、内向き及び外向きの両TRPC5介在性電流を阻害する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書で具体的に定義しない用語には、本開示及び文脈を考慮して当業者がそれらに与えるであろう意味を与えるべきである。
本明細書では、用語「拮抗薬」及び「阻害薬」を互換的に用いて、TRPC5等のイオンチャネルの活性を抑圧するような、生物学的活性を軽減又は抑制する薬剤を指す。本明細書に記載のTRPC5イオンチャネルにはホモマルチマー及びヘテロマルチマー構造体(例えばホモマルチマーTRPC5及びヘテロマーTRPC5-TRPC1又はTRPC5-TRPC4)が含まれる。TRPC5拮抗薬には、本明細書で開示する構造的及び/又は機能的特性の任意の組み合わせを有する阻害薬が含まれる。
主題の阻害又は治療方法に関して、例えばTRPC5拮抗薬の「有効量」は、望ましい投与計画の一部として適用されると、望ましい臨床結果又は機能結果をもたらす、製剤中の拮抗薬の量を指す。理論に束縛されるものではないが、本発明の方法に使用するためのTRPC5拮抗薬の有効量には、TRPC5チャネルの1つ以上のインビトロ又はインビボ機能を軽減するのに有効なTRPC5拮抗薬の量が含まれる。例となる機能としては、限定するものではないが、膜分極(例えば拮抗薬は細胞の過分極を促進し得る)、イオン流動、細胞内のイオン濃度、外向き電流、及び内向き電流が挙げられる。TRPC5機能を弱める化合物には、TRPC5のインビトロ又はインビボ機能活性を弱める化合物が含まれる。インビトロアッセイで特定の機能活性だけを容易に観察できるとき、化合物が当該インビトロアッセイでTRPC5機能を阻害する能力は、当該化合物の活性に対して妥当なプロキシ(proxy)として働く。特定実施形態では、有効量は、TRPC5介在性電流を阻害するの十分な量及び/又はTRPC5介在性イオン流動を阻害するのに十分な量である。
【0013】
本発明の方法に使用するためのTRPC5拮抗薬は、1つ以上の他のイオンチャネルに対するそれらの活性、又は活性の欠如を特徴とし得る。他のイオンチャネルに言及するとき、このような他のイオンチャネルの機能の阻害は同様に定義される。例えば、イオンチャネル又はイオンチャネルの活性の阻害とは、拮抗薬が他のイオンチャネルの1つ以上の機能活性を阻害することを意味する。該機能としては、特定のイオンチャネルによって媒介される電流、イオン流動、又は膜分極が挙げられる。
用語「化合物」及び「薬剤」を互換的に用いて本発明の阻害薬/拮抗薬を指す。
本明細書に記載の化合物は不斉である(例えば、1つ以上の立体中心を有する)可能性がある。別段の指示がない限り、全ての立体異性体、例えばエナンチオマー及びジアステレオマーを意図する。不斉置換炭素原子を含有する本発明の化合物は、光学活性形又はラセミ形で単離可能である。例えばラセミ混合物の分割によって又は立体選択的合成によってのような、光学活性な出発物質から光学活性形を調製する方法は技術上周知である。
【0014】
化合物のラセミ混合物の分割は、技術上周知の多くの方法のいずれによっても行なうことができる。方法例としては、光学活性な塩形成有機酸である「キラル分割酸」を用いる分別再結晶がある。分別再結晶法に適した分割酸は、例えば、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸のD型及びL型等の光学活性酸又は種々の光学活性カンファースルホン酸、例えばβ-カンファースルホン酸である。分別結晶法に適した他の分割剤としては、α-メチルベンジルアミンの立体異性的に純粋な形態(例えば、S型及びR型、又はジアステレオマー的に純粋な形態)、2-フェニルグリシノール、ノルエフェドリン、エフェドリン、N-メチルエフェドリン、シクロヘキシルエチルアミン、及び1,2-ジアミノシクロヘキサンが挙げられる。
ラセミ混合物の分割は、光学活性な分割剤(例えば、ジニトロベンゾイルフェニルグリシン)を詰めたカラム上での溶出によって行なうこともできる。当業者なら適切な溶出溶媒組成を決定することができる。本発明の化合物には、互変異性形、例えばケト-エノール互変異性体も含まれる。
【0015】
特に指示しない限り、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、所与の化学式又は化学名は、その互変異性体並びに全ての立体異性体、光学異性体及び幾何異性体(例えばエナンチオマー、ジアステレオマー、E/Z異性体)及びラセミ体のみならず、別個のエナンチオマーの異なる比率の混合物、ジアステレオマーの混合物、又は該異性体及びエナンチオマーが存在する前述の形態のいずれの混合物をも包含するものとする。
本発明の化合物は、中間体又は最終化合物中に存在する原子の全ての同位体をも包含し得る。例えば、本発明の化合物は、例えばトリチウム(3H)又は炭素14(14C)等の放射性同位体で放射標識し得る。放射性の有無に関わりなく、全ての同位体のバリエーションが本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0016】
本明細書で使用する場合、「医薬的に許容される塩」は、親化合物が酸又は塩基と塩を形成する、開示化合物の誘導体を指す。
塩基性部分を含有する親化合物と医薬的に許容される塩を形成する酸の例としては、鉱物酸又は有機酸、例えばベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、4-メチル-ベンゼンスルホン酸、リン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸又は酒石酸が挙げられる。アルギナート等のアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸のような有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al., “Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19参照)。
酸性部分を含有する親化合物と医薬的に許容される塩を形成するカチオン及び塩基の例としては、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、NH4 +、L-アルギニン、2,2’-イミノビスエタノール、L-リシン、N-メチル-D-グルカミン又はトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンが挙げられる。
従来の方法で塩を塩基又は酸と接触させ、親化合物を単離することによって本発明の化合物の中性形態を再生するのが好ましい。化合物の原型は、特定の物理的特性、例えば極性溶媒中の溶解度が種々の塩形態と異なるが、その他の点では塩は、本発明の目的にとって化合物の原型と等価である。
本出願を通して用語「TRPC5」、「TRPC5タンパク質」、及び「TRPC5チャネル」を互換的に使用する。特に明示的に別段の定めをしない限り、用語TRPC5にはホモマルチマー構造体(例えばホモマルチマーTRPC5)及びヘテロマルチマー構造体(例えばヘテロマルチマーTRPC5-TRPC1)が含まれる。
【0017】
生物学的アッセイ
下記方法によって化合物の生物学的活性を決定する。
アッセイA:TRPC5阻害の決定
パッチクランプ実験は、細胞株におけるTRPC5チャネルを通る電流の検出を可能にする。通常の全細胞パッチクランプ記録法では、ガラス電極を単一細胞と接触させ、細胞膜と高抵抗(ギガオーム)シールを確立する。次に膜を破壊して、電極に取り付けた増幅器を用いて、細胞膜の電圧の制御及び膜を横断して流れる電流の測定を可能にし、結果として細胞質のピペット溶液との交換を可能にする全細胞構成を達成する。灌流システムは、電流のブロッカー及びアクチベーターの添加を含め、細胞外溶液の制御を可能にする。ピペット(細胞内)溶液中1.4μMの遊離Ca2+、及び細胞外溶液中80μMのLaCl3を含めることによって電流を活性化することができる。
【0018】
TRPC5細胞を20~24時間誘導し、増殖プレートから除去し、測定のためガラスカバースリップ上に低密度で(単一細胞の良好な物理的分離を達成するため)再播種した。場合によっては、細胞をガラスカバースリップ上で一晩低密度で増殖させた。全細胞モードで-40mVの保持電位を用いてパッチクランプ記録を行なった。5秒毎に、-120から+100mVまで、400msの持続時間電圧ランプを適用した。誘導された電流を-80mV及び+80mVで数値化した。内部溶液は、140mMのアスパラギン酸セシウム、10mMのHEDTA、2mMのCaCl2、2.27mMのMgCl2及び10mMのHEPES、pH7.2から成り、遊離Ca2+の計算値は1,400nMであった。外部溶液は、150mMのNaCl、4.5mMの15 KCl、1mMのMgCl2、2mMのCaCl2、10mMのHEPES、10mMのグルコース、1mMのEGTA、pH7.4から成った。LaCl3を添加すると、TRPC5発現細胞においてのみTRPC5電流が誘導され、HEK293 TREx親細胞では誘導されなかった。LaCh刺激の除去がほとんどの電流を消失させる。可能性のあるブロッカーを内向き及び外向きの両電流を遮断する能力についてLaCl3の持続的存在下で試験した。
500nMの化合物を試験することによって、本発明の化合物のIC50を推定した。500nMの化合物が遮断を示さないとき、IC50を>1μMと推定した。500nMで50%以上遮断する化合物は、複数濃度で再試験し、5/6点濃度反応実験を利用して、遮断%を標準方程式にフィットさせてIC50を正確に決定する。
【0019】
生物学データ
表1:アッセイA(上記)で判定されたWO2014/143799の最近先行技術化合物のインビトロ効力
【表1】
【0020】
本発明の化合物は、驚いたことに、同アッセイ(アッセイA)で測定したときのTRPC5阻害において最近先行技術化合物(WO2014/143799の実施例#441及び#465)よりずっと高い効力を示す。
本発明の化合物は、WO2014/143799の実施例441及び465、すなわち最近先行技術化合物とは、本請求項に係る化合物のキサンチンのC8位が、WO2014/143799の実施例441及び465におけるフェニル基ではなく、2-ピラジニルで置換されているという点で構造的に異なる。さらに、本請求項に係る化合物のヘテロアリール基は、WO2014/143799の実施例441及び465におけるメトキシ基ではなく、シクロアルキル-O-基で置換されている。これらの構造の違いは、予想外に、TRPC5阻害の効力の顕著な増加をもたらす(表1及び2)。
これらの結果は、TRPC5阻害において本発明の化合物が、WO2014/143799に開示された構造的に最も類似する例(最近先行技術化合物)より予想外に優れていることを実証している。その結果として、本発明の化合物は、ヒト用途のためにより実効可能である。
【0021】
表2:アッセイA(上記)で判定した本発明の化合物のインビトロ効力
【表2】
【0022】
治療での使用/使用方法
本発明は、一過性受容体電位カチオンチャネルTRPC5の活性の阻害が治療効果である疾患、障害及び状態の治療に役立つ化合物に関する。これには、限定するものではないが、精神性状態、神経性又は神経変性状態、疼痛、発作、非神経性状態、及び癌の治療及び/又は予防が含まれる。
精神性状態としては、感情処理調節不全と関連する疾患(例えば情緒不安定性パーソナリティ障害又はうつ病性障害、例えば大うつ病、大うつ病性障害、精神性うつ病、気分変調症、及び産後うつ病、並びに双極性障害)、不安及び恐怖関連障害(例えば外傷後ストレス障害、パニック障害、広場恐怖症、社会恐怖症、全般不安症、パニック障害、社交不安症、強迫性障害、及び分離不安症)、記憶障害(例えばアルツハイマー病、健忘症、失語症、脳損傷、脳腫瘍、慢性疲労症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、解離性健忘症、遁走健忘症(fugue amnesia)、ハンチントン病、学習障害、睡眠障害、多重パーソナリティ障害、疼痛、外傷後ストレス障害、統合失調症、スポーツ損傷、脳卒中、及びウェルニッケ・コルサコフ症候群)、衝動制御不全及び嗜癖と関連する障害が挙げられる。
神経性又は神経変性状態としては、例えばアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び外傷又は加齢を含めた他の傷害に起因する他の脳障害が挙げられる。
【0023】
疼痛障害としては、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、癌性疼痛、及び神経障害性疼痛(例えば癌性疼痛、骨関節炎性疼痛、関節リウマチ痛、帯状疱疹後神経痛、熱傷、及び他の徴候が原因の疼痛)が挙げられる。疼痛は慢性又は急性であり得る。
発作は、種々の起源の興奮毒性によって誘発されることがある。一般に過剰なニューロン発火が発作活動を駆り立て得る。関連ニューロン集団の興奮性亢進を抑える化合物は、発作活動の低減に顕著な可能性を有する。TRPC5を阻害する本発明の化合物は、興奮性亢進を抑え、ひいては発作活動を軽減することができる。
非神経性状態には、腎症、タンパク尿性腎疾患、肝疾患、例えば胆汁うっ滞と関連する肝脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)[WO2018/146485]、そう痒、心血管-血管系の機能不全又は血管透過性と関連する障害(例えば肺動脈性肺高血圧症、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、非適応性心臓リモデリング、不適応な血圧コントロールと関連する障害、例えば高血圧症又は低血圧症、及び他の医学的状態、例えば糖尿病、インスリン抵抗性、代謝症候群及び肥満症が含まれる。非神経性状態の治療のための使用は、美容的減量の使用に拡張することもできると予想される(WO2018/146485)。
【0024】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の化合物(又はその医薬的に許容される塩)の有効量、及び1種以上の医薬的に許容される賦形剤を含む、ヒト患者に用いるための医薬組成物に関する。本発明はさらに、本明細書に記載の任意の疾患又は状態の症状を治療又は軽減するための薬物又は医薬組成物の製造における本明細書に記載の化合物の使用を企図する。本明細書に記載の化合物は、特定の疾患又は状態を治療するために使用可能であり、かつ特定の疾患又は状態に適した経路を介した投与用に製剤化することができる。
本発明の化合物の適用可能な1日の用量は、0.1から2000mgまで変動し得る。実際の医薬的に有効な量又は治療用量は、患者の年齢と体重、投与経路及び疾患の重症度等の当業者に既知の要因によって決まることになる。いずれの場合も、患者の状態に適した医薬的に有効な量を送達できる用量及び様式で原薬を投与すべきである。
【0025】
医薬組成物
本発明の化合物の投与に適した組成物は当業者には明白であり、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、ロレンジ剤、トローチ剤、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、サシェ剤、注射剤、吸入剤、及び散剤が挙げられる。医薬的に活性な化合物の含量は、全体として組成物の0.1~95wt.-%、好ましくは5.0~90wt.-%の範囲で変動し得る。
適切な錠剤は、例えば、本発明の化合物を既知の賦形剤、例えば不活性な希釈剤、担体、崩壊剤、アジュバント、界面活性剤、結合剤及び/又は潤沢剤と混合し、結果として生じる混合物を打錠することによって得ることができる。
【0026】
併用療法
本発明の化合物は単独で又は他の活性医薬成分と組み合わせて使用することができる。特に、本発明の化合物は、その治療が本発明の焦点にある任意の適応症の治療に関連して当技術分野で使用できることが知られている他の治療オプションと併用可能である。
本発明の化合物及び治療との併用に適すると考えられるこのような活性医薬成分又は治療オプションは抗うつ薬、気分安定薬、定型及び非定型抗精神病薬、抗不安薬、抗てんかん薬、催眠薬、向知性薬、刺激薬、追加の向精神薬、抗炎症薬、鎮痛薬、化学療法薬並びに代謝障害、肝疾患及び腎疾患の治療に使用されるか又は役立つ可能性のある活性医薬成分であり、後者の活性医薬成分にはTRPC3及び/又はTRPC6の阻害薬候補も含まれる。
【0027】
実験セクション
略語リスト:
ACN アセトニトリル
conc 濃縮された
d 日
DCM ジクロロメタン
DIPEA N-エチル-ジイソプロピルアミン
DMAP 4-ジメチルアミノピリジン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
g グラム
h 時間
HOAc 酢酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
MeOH メタノール
min 分
mg ミリグラム
mL ミリリットル
N 規定
rt 室温
RT 保持時間
SFC 超臨界液体クロマトグラフィー
THF テトラヒドロフラン
TFA トリフルオロ酢酸
μL マイクロリットル
【0028】
HPLC法:
方法名:A
カラム:XBridge BEH C18_2.1×30mm、1.7μm
カラム供給業者:Waters
【表3】
【0029】
方法名:B
カラム:XBridge BEH Phenyl、2.1×30mm、1.7μm
カラム供給業者:Waters
【表4】
【0030】
方法名:C
カラム:XBridge C18、4.6×30mm、3.5μm
カラム供給業者:Waters
【表5】
【0031】
方法名:D
カラム:XBridge BEH C18、2.1×30mm、1.7μm
カラム供給業者:Waters
【表6】
【0032】
方法名:E
カラム:XBridge BEH C18_2.1×30mm_2.5μm
カラム供給業者:Waters
【表7】
【0033】
方法名:F
カラム:Sunfire C18_3.0×30mm_2.5μm
カラム供給業者:Waters
【表8】
【0034】
方法名:G
カラム:XBridge BEH C18_2.1×30mm_2.5μm
カラム供給業者:Waters
【表9】
【0035】
方法名:H
カラム:XBridge BEH C18_2.1×30mm_1.7μm
カラム供給業者:Waters
【表10】
【0036】
方法名:I
カラム:Lux(登録商標)Cellulose_3 4.6×250mm_5μm
カラム供給業者:Phenomenex
【表11】
【0037】
方法名:J
カラム:Chiralpak(登録商標)IA_4.6×250mm_5μm
カラム供給業者:Daicel
【表12】
【0038】
方法名:K
カラム:Lux(登録商標)Amylose-2_4.6×250mm_5μm
カラム供給業者:Phenomenex
【表13】
【0039】
NMR法:NMRスペクトルは、Bruker AVANCE IIIHD 400 MHz機器でTopSpin 3.2 pl6ソフトウェアを用いて記録した。化学シフトは、内標準物質トリメチルシランから低磁場百万分率(ppm)にδ単位で与える。選択データを下記様式で記録する:化学シフト(多重度、カップリング定数(J)、水素数)。略語は以下のとおりである:s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、spt(七重線)、m(多重線)、br(幅広線)。
【0040】
中間体:
中間体1.1
【化7】
1.1
【0041】
反応はアルゴン雰囲気下及び乾燥したガラス器具内で行なった。Na(4.50g、196mmol)を粉々に砕いて乾燥プロパン-2-オール(150mL)に加えた。混合物を2時間撹拌して95℃まで加熱した。Naを完全に溶かした後、イソプロピル尿素(10.0g、97.9mmol)及びシアノ酢酸エチルエステル(10.4mL、97.9mmol)を加えて混合物を一晩95℃で撹拌した。混合物を冷まし、H2O(40.0mL)を加え、濃HClでpHを6に調整した。氷冷及びN2雰囲気下で12時間撹拌を続けた。得られた沈殿物を濾過し、乾燥させて7.33gの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 170
HPLC:RT=0.23分、方法F
【0042】
中間体1.2
【化8】
1.2
【0043】
反応はアルゴン雰囲気下及び乾燥したガラス器具内で行なった。Na(20.9g、908mmol)を粉々に砕いて乾燥エタノール(600mL)に加えた。混合物を3日間撹拌し、60℃まで加熱した。Naを完全に溶かした後、エチル尿素(40.0g、454mmol)及び2-シアノ酢酸エチル(48.3mL、454mmol)を加えて混合物を4日間環流させながら撹拌した。混合物を真空中で濃縮し、H2O(200mL)を加え、濃HClでpHを7に調整した。氷冷下で30分間撹拌を続けた。得られた沈殿物を濾過し、H2Oで洗浄し、乾燥させて48.59gの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 156
HPLC:RT=1.18分、方法B
【0044】
中間体2.1
【化9】
2.1
【0045】
HCl(1mol/l、16.5mL、16.5mmol)中の中間体1.1(1.00g、5.91mmol)の混合物にH2O(6.00mL)中のNaNO2(571mg、8.28mmol)を滴加した。NaOH(4N、約4mL)を溶液のpHがpH=9に達するまで加えた。得られた沈殿物を濾過し、MeOH及びtert-ブチルメチルエーテルで洗浄し、乾燥させて0.79gの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 199
HPLC:RT=0.24分、方法F
【0046】
中間体2.2
【化10】
2.2
【0047】
HCl(1mol/l、800mL、800mmol)中の中間体1.2(48.6g、0.304mol)の混合物にH2O(280mL)中のNaNO2(29.3g、0.425mol)を滴加した。混合物を一晩室温で撹拌した。次に混合物をNaOH(60%、約15mL)で塩基性にした。得られた沈殿物を濾過し、MeOH及びtert-ブチルメチルエーテルで洗浄し、乾燥させて43.8gの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 185
HPLC:RT=0.09分、方法B
【0048】
中間体3.1
【化11】
3.1
【0049】
中間体2.1(8.04g、40.6mmol)、Pd/C(10%、1.9g)、MeOH(120mL)、H2O(80mL)及びHCl溶液(4mol/L、11.2mL、44.6mmol)の混合物を室温及び50psi(3.4×105Pa)のH2で4時間水素化した。混合物を濾過し、MeOHを蒸発させ、ACNを加え、凍結乾燥させて3.04gの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 185
HPLC:RT=0.01分、方法D
【0050】
中間体3.2
【化12】
3.2
【0051】
中間体2.2(43.3g、235mmol)、Pd/C(10%、4.95g)、MeOH(400mL)、H2O(300mL)及びHCl溶液(1mol/L、259mL、259mmol)の混合物を室温及び50psi(3.4×105Pa)のH2で1日水素化した。混合物を濾過し、MeOHを蒸発させ、ACNを加え、凍結乾燥させて47.2gの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 169/171
HPLC:RT=0.08/0.1分、方法B
【0052】
中間体4.1
【化13】
4.1.1 4.1.2
【0053】
DMF(4.00mL、49.2mmol)とDMSO(4.00mL、56.3mmol)中の中間体3.2(1.0g、4.8mmol)の混合物に5-ブロモ-3-メチルピラジン-2-カルバルデヒド(973mg、4.8mmol)を加えて混合物をマイクロ波内で45分間120℃で撹拌した。H2Oを加え、得られた沈殿物を濾過し、乾燥させて0.97gの生成物(生成物1/生成物2の50/50混合物)を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 351 中間体4.1.1
HPLC:RT=0.62分、方法C
HPLC:RT=0.60分、方法C 中間体4.1.2
【0054】
中間体4.2
【化14】
4.2
【0055】
中間体3.1及び5-ブロモ-3-メチルピラジン-2-カルバルデヒドを用いて中間体4.1と同様に中間体4.2を調製した。
MS (ESI+):(M+H)+ 321
HPLC:RT=0.75分、方法F
【0056】
中間体4.3
【化15】
4.3
【0057】
THF(8mL、99.7mmol)とDMSO(8mL、112.5mmol)中の中間体3.2(459mg、2.0mmol)の混合物に5-クロロピラジン-2-カルバルデヒド(342mg、2.4mmol)を加えて混合物をマイクロ波内で45分間125℃で撹拌した。H2Oを加え、得られた沈殿物を濾過し、乾燥させて403mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 293
HPLC:RT=0.56分、方法F
【0058】
中間体5.1
【化16】
5.1.1 5.1.2
【0059】
DMF(2.0mL)中の中間体4.1(4.1.1/4.1.2の50/50混合物、0.3g、0.85mmol)の混合物に、DIPEA(0.176mL、1.03mmol)及び1-(ブロモメチル)-4-クロロベンゼン(176mg、0.85mmol)を加えて混合物を2.5時間80℃で撹拌した。反応混合物を酸性にし、クロマトグラフィーで精製して246mgの生成物(生成物1/生成物2の50/50混合物)を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 477 中間体5.1.1
HPLC:RT=0.97分、方法F
MS (ESI+):(M+H)+ 431 中間体5.1.2
HPLC:RT=0.95分、方法F
【0060】
中間体5.2
【化17】
5.2
【0061】
DMF(2mL)、THF(1mL)及びDMSO(1mL)中の中間体4.2(358mg、1.12mmol)の混合物に、DIPEA(0.230mL、1.34mmol)及び(ブロモメチル)ベンゼン(0.133mL、1.12mmol)を加えて混合物を2.5時間80℃で撹拌した。混合物をTFAで酸性にし、クロマトグラフィーで精製して294mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 411
HPLC:RT=0.96分、方法F
【0062】
中間体5.3
【化18】
5.3
【0063】
DMF (7.88mL、96.9mmol)とTHF(7.77mL、96.9mmol)中の中間体4.3(200mg、0.68mmol)の混合物に、K2CO3(236mg、1.71mmol)及び1-(ブロモメチル)-4-フルオロベンゼン(70.4μL、0.57mmol)を加えて混合物を一晩室温で撹拌した。反応混合物をACNで希釈し、濾過し、クロマトグラフィーで精製して81mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 402
HPLC:RT=0.62分、方法D
【0064】
中間体5.4
【化19】
5.4
【0065】
DMF(7.88mL)とTHF(7.77mL)中の中間体4.3(200mg、0.68mmol)の混合物にK2CO3(236mg、1.7mmol)及び(ブロモメチル)ベンゼン(67.8μL、0.57mmol)を加えて混合物を一晩室温で撹拌した。混合物をACN(5mL)で希釈し、濾過し、クロマトグラフィーで精製して90.0mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 383
HPLC:RT=0.61分、方法D
【0066】
中間体5.5
【化20】
5.5.1 5.5.2
【0067】
DMF(2.0mL)中の中間体4.1(4.1.1/4.1.2の50/50混合物、200mg、0.57mmol)の混合物に、DIPEA(118μL、0.683mmol)及び1-(ブロモメチル)-4-フルオロベンゼン(70.4μL、0.57mmol)を加えて混合物を2.5時間80℃で撹拌した。反応混合物を酸性にし、クロマトグラフィーで精製して136mgの生成物(生成物1/生成物2の50/50混合物)を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 461 中間体5.5.1
HPLC:RT=0.91分、方法F
MS (ESI+):(M+H)+ 415 中間体5.5.2
HPLC:RT=0.89分、方法F
【0068】
中間体5.6
【化21】
5.6.1 5.6.2
【0069】
DMF(2.0mL)中の中間体4.1(4.1.1/4.1.2の50/50混合物、466mg、1.326mmol)の混合物に、DIPEA(274μL、1.592mmol)及び(ブロモメチル)ベンゼン(158μL、1.326mmol)を加えて混合物を2.5時間80℃で撹拌した。反応混合物を酸性にし、クロマトグラフィーで精製して508mgの生成物(生成物1/生成物2の50/50混合物)を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 443 中間体5.6.1
HPLC:RT=0.88分、方法F
MS (ESI+):(M+H)+ 397 中間体5.6.2
HPLC:RT=0.85分、方法F
【0070】
中間体6.1
【化22】
6.1.1 6.1.2
【0071】
無水DMF(3mL)中の中間体5.1(5.1.1/5.1.2の50/50混合物、0.245g、0.515mmol)の混合物にK2CO3(0.142g、1.030mmol)及び2-(3-ブロモプロポキシ)オキサン(0.131mL、0.773mmol)を加えて混合物を2時間80℃で撹拌した。H2Oを加え、EtOAcで抽出した。混ぜ合わせた有機層を乾燥させ、真空中で濃縮し、結果として生じた粗生成物をクロマトグラフィーで精製して269mgの生成物(6.1.1/6.1.2の50/50混合物)を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 617 中間体6.1.1
HPLC:RT=0.88分、方法D
MS (ESI+):(M+H)+ 574 中間体6.1.2
HPLC:RT=0.87分、方法D
【0072】
中間体6.2
【化23】
6.2
【0073】
中間体5.2を用いて中間体6.1と同様に(1時間、80℃)中間体6.2を調製した。
MS (ESI+):(M+H)+ 553
HPLC:RT=0.88分、方法D
【0074】
中間体6.3
【化24】
6.3
【0075】
THF(1.42mL)とDMSO(1.2mL)中の中間体7.3(85mg、0.20mmol)の混合物にK2CO3(80.8mg、0.58mol)及び2-(3-ブロモブロモプロポキシ)オキサン(49.6μL、0.29mmol)を加えて混合物を1時間90℃で撹拌した。混合物を冷却し、クロマトグラフィーで精製して65.0mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H-THP)+ 495
HPLC:RT=0.83分、方法D
【0076】
中間体6.4
【化25】
6.4
【0077】
中間体7.4を用いて中間体6.3と同様に中間体6.4を調製した。
MS (ESI+):(M+H-THP)+ 477
HPLC:RT=0.82分、方法D
【0078】
中間体6.5
【化26】
6.5.1 6.5.2
【0079】
無水DMF(3mL)中の中間体5.5(5.5.1/5.5.2の50/50混合物、135mg、0.294mmol)の混合物に、K2CO3(81.3mg、0.588mmol)及び2-(3-ブロモプロポキシ)オキサン(75μL、0.441mmol)を加えて混合物を2時間80℃で撹拌した。H2Oを加え、EtOAcで抽出した。混ぜ合わせた有機層を乾燥させ、真空中で濃縮し、クロマトグラフィーで精製し、凍結乾燥させて708mgの生成物(6.5.1/6.5.2の50/50混合物)を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 601 中間体6.5.1
HPLC:RT=0.83分、方法D
MS (ESI+):(M+H)+ 558 中間体6.5.2
HPLC:RT=0.80分、方法D
【0080】
中間体6.6
【化27】
6.6
【0081】
無水DMF(2mL)中の中間体7.6(92mg、0.212mmol)の混合物にK2CO3(58.5mg、0.423mmol)及び2-(3-ブロモプロポキシ)オキサン(53.8μL、0.317mmol)を加えて混合物を2時間50℃で撹拌した。H2Oを加え、EtOAcで抽出した。混ぜ合わせた有機層を乾燥させ、真空中で濃縮して粗生成物を得、さらに精製せずに使用した。
MS (ESI+):(M+H)+ 575
HPLC:RT=1.29分、方法F
【0082】
中間体7.1
【化28】
7.1
【0083】
ジオキサン(1.5mL)中の中間体6.1(6.1.1/6.1.2の50/50混合物、83mg、0.134mmol)の混合物に2-メチルシクロブタン-1-オール(0.5mL)及び水素化ナトリウム(55%、11.7mg、0.269mmol)を加えた。混合物を6時間100℃で撹拌した。H2Oを加え、EtOAcで抽出した。混ぜ合わせた有機層を乾燥させ、真空中で濃縮して粗生成物を得、さらに精製せずに使用した。
MS (ESI+):(M+H)+ 623
HPLC:RT=0.99分、方法D
【0084】
中間体7.2
【化29】
7.2
【0085】
DMF(1mL)中のシクロブタノール(1mL、12.8mmol)と水素化ナトリウム(11.1mg、0.25mmol)の混合物に中間体6.2(70mg、0.13mmol)を加えて反応を4.5時間110℃で撹拌した。H2Oを加え、EtOAcで抽出した。混ぜ合わせた有機層を乾燥させ、真空中で濃縮して粗生成物を得、さらに精製せずに使用した。
MS (ESI+):(M+H)+ 589
HPLC:RT=0.86分、方法D
【0086】
中間体7.3
【化30】
7.3
【0087】
THF(0.41mL、5.05mmol)中の中間体5.3(81.0mg、0.20mmol)とシクロブタノール(0.02mL、0.24mmol)の混合物を0℃に冷却してからカリウム2-メチルプロパン-2-オラート(45.4mg、0.40mmol)を加えて反応を6時間環流させながら撹拌した。混合物を冷却し、H2Oを加えて沈殿物を濾過し、乾燥させて85.0mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 437
HPLC:RT=0.69分、方法D
【0088】
中間体7.4
【化31】
7.4
【0089】
THF(0.47ml)中の中間体5.4(90.0mg、0.24mmol)とシクロブタノール(0.02mL、0.28mmol)の混合物にカリウム2-メチルプロパン-2-オラート(52.8mg、0.47mmol)を氷冷下で加えて反応を30分間室温で撹拌した。追加のカリウム2-メチルプロパン-2-オラート及びシクロブタノールを加えて混合物を一晩室温で撹拌した。追加のシクロブタノール及びカリウム2-メチルプロパン-2-オラートを加えて混合物を6時間還流させながら撹拌した。混合物を冷却した。H2Oを加えて沈殿物を濾過し、乾燥させて93.0mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 419
HPLC:RT=0.68分、方法D
【0090】
中間体7.5
【化32】
7.5
【0091】
ジオキサン(1.5mL)中の中間体6.5(6.5.1/6.5.2の50/50混合物、52mg、0.086mmol)の混合物に2-メチルシクロブタン-1-オール(0.5mL)及び水素化ナトリウム(55%、7.6mg、0.173mmol)を加えた。混合物を6時間100℃で撹拌した。H2Oを加え、EtOAcで抽出した。混ぜ合わせた有機層を乾燥させ、真空中で濃縮して粗生成物を得、さらに精製せずに使用した。
MS (ESI+):(M+H)+ 607
HPLC:RT=0.95分、方法D
【0092】
中間体7.6
【化33】
7.6
【0093】
ジオキサン(1.0mL)中の中間体5.6(5.6.1/5.6.2の50/50混合物、100mg、0.227mmol)の混合物にシクロブタノール(2.0mL)及び水素化ナトリウム(55%、19.8mg、0.453mmol)を加えた。混合物を1.5時間100℃で撹拌した。H2Oを加え、EtOAcで抽出した。混ぜ合わせた有機層を乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーで精製して92.0mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 433
HPLC:RT=1.03分、方法F
【実施例
【0094】
実施例:
実施例1
【化34】
1
【0095】
MeOH(1.0mL)とTHF(1.0mL)中の中間体7.1(83.0mg、0.133mmol)の混合物にトルエン-4-スルホン酸水和物(31.7mg、0.166mmol)を加えた。混合物を1.5時間室温で撹拌した。混合物を真空中で濃縮し、クロマトグラフィーで精製して2.1mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 540/542(Cl同位体パターン)
HPLC:RT=1.2分、方法F
【0096】
実施例2
【化35】
2
【0097】
MeOH(1.0mL)とTHF(1.0mL)中の中間体7.2(74.0mg、0.13mmol)の混合物にトルエン-4-スルホン酸水和物(30mg、0.16mmol)を加えた。混合物を1時間室温で撹拌した。混合物をクロマトグラフィーで精製して55.0mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 506
HPLC:RT=0.75分、方法D
【0098】
実施例3
【化36】
68
【0099】
MeOH(1.0mL)中の中間体6.3(65.0mg、0.11mmol)の混合物にトルエン-4-スルホン酸水和物(107mg、0.56mmol)を加えた。混合物を30分間室温で撹拌した。混合物をクロマトグラフィーで精製して45.0mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 496
RT=0.71分、方法D
【0100】
実施例4
【化37】
4
【0101】
中間体6.4を用いて実施例3と同様に実施例4を調製した。
MS (ESI+):(M+H)+ 478
RT=0.70分、方法D
【0102】
実施例5
【化38】
5
【0103】
MeOH(1mL)とTHF(1mL)中の中間体7.5(52.0mg、0.086mmol)の混合物にトルエン-4-スルホン酸水和物(20.4mg、0.107mmol)を加えて混合物を1.5時間室温で撹拌した。混合物をクロマトグラフィーで精製して8.6mgの生成物を得た。
MS (ESI+):(M+H)+ 524
RT=1.14分、方法F
【0104】
実施例6
【化39】
6
【0105】
中間体6.6を用いて実施例5と同様に実施例6を調製した。
MS (ESI+):(M+H)+ 492
RT=0.77分、方法D
1H NMR (DMSO-d6) δ 8.21 (s, 1H), 7.16-7.24 (m, 3H), 6.94-6.96 (m, 2H), 6.81, 5.71 (s, 2H), 5.19 (sept, J=7.2 Hz, 1H), 4.42 (t, J=5.3 Hz, 1H), 4.08 (q, J=7.1 Hz, 2H), 3.96 (dd, J=8.0, 6.7 Hz, 2H), 3.43-3.48 (m, 2H), 2.39-2.47 (m, 2H), 2.34 (s, 3H), 2.05-2.18 (m, 2H), 1.61-1.85 (m, 4H), 1.27 (d, J=7.0 Hz, 3H)。