(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】医療機器のための接合方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20231225BHJP
B29C 65/66 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A61B17/56
B29C65/66
(21)【出願番号】P 2021538709
(86)(22)【出願日】2020-01-02
(86)【国際出願番号】 EP2020050037
(87)【国際公開番号】W WO2020141197
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】102019100016.5
(32)【優先日】2019-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャニナ アッカーマン
(72)【発明者】
【氏名】スベン バーセルメス
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ダーメン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリアス デュッチェンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ティル マテス
(72)【発明者】
【氏名】エルケ プレイル
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-226071(JP,A)
【文献】特開2018-114239(JP,A)
【文献】特開2014-155943(JP,A)
【文献】特表2003-530951(JP,A)
【文献】特開2014-014873(JP,A)
【文献】国際公開第2001/080768(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0117024(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0206210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56
A61F 2/32
A61F 2/38
B29C 65/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、前記シャフトに固定されるべきアタッチメントと、を有している外科手術用器具またはインプラントである医療機器のための接合方法であって、
内径を有する開口部が設けられている前記アタッチメントと外径を有する前記シャフトとを準備するステップと、
前記開口部の前記内径と前記シャフトの前記外径を、室温にて締まり嵌めするために寸法決めするステップと、
アタッチメントの開口部の内径が前記シャフトの外径よりも大きくなる、前記アタッチメントを加熱するステップまたは前記シャフトを冷却するステップと、
その後、前記アタッチメントの前記開口部内に前記シャフトを挿入するステップと、
その後、前記アタッチメントが前のステップで加熱されていた場合は前記アタッチメントを前記シャフト上において実質的に隙間なく収縮させるために前記アタッチメントを冷却するステップか、または、前記シャフトが前のステップで冷却されていた場合は前記シャフトを前記アタッチメントの前記開口部内で膨張させるために前記シャフトを加熱するステップであって、それにより、前記シャフトおよび前記開口部が締まり嵌めを介して接続されるステップと、
前記アタッチメントまたは前記シャフトの温度をそれぞれモニタリングするステップであって、前記開口部に近接するか、もしくは、前記アタッチメント内に挿入されるべき前記シャフトの端の外周における少なくとも第1の点、および、前記第1の点から間隔を空けて位置している
前記アタッチメントの端又は該端の近傍であるアタッチメント境界領域におけるか、もしくは、シャフト領域における第2の点において、
前記アタッチメントを加熱するステップまたは前記シャフトを冷却するステップの間温度をモニタリングするステップと、
を有する接合方法。
【請求項2】
前記アタッチメントと前記シャフトを準備する工程では、室温において、前記内径が前記外径よりも小さい、請求項
1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記アタッチメント
を加熱するステップまたは前記シャフトを冷却するステップの時間をモニタリングするステップをさらに含む、請求項1に記載の接合方法。
【請求項4】
前記アタッチメントの前記温度が、前記開口部と、前記開口部から間隔を空けて位置している
前記アタッチメントの端又は該端の近傍であるアタッチメント境界領域においてモニタリングされる、請求項
3に記載の接合方法。
【請求項5】
前記アタッチメントを加熱するステップのために誘導加熱装置が使用される、請求項
1から4のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項6】
さらに、前記シャフトの幾何学的配置、表面条件、決定寸法、熱処理条件、膨張係数、耐腐食性のうちの少なくとも1つのパラメータおよび前記アタッチメントの幾何学的配置、表面条件、決定寸法、熱処理条件、膨張係数、耐腐食性のうちの少なくとも1つのパラメータに依存して、加熱するステップ中における入熱を調節するステップを含む、請求項
1から5のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記締まり嵌めの寸法が、前記シャフトおよび前記アタッチメントが前記医療機器の動作中に分離不可能となるように軸方向におよび径方向に互いに接続されるように決定されている、請求項
1から6のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項8】
前記締まり嵌めが、20μmから55μmの間の締め代を有している、請求項
1から7のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項9】
前記シャフトがチタンで製作され、前記アタッチメントが鋼で製作されている、請求項
1から8のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項10】
前記アタッチメントの最高加熱温度が、50℃から350℃の間である、請求項
1から9のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項11】
前記アタッチメントの前記開口部内に前記シャフトを挿入する前記ステップが、直動ユニットを介して自動的に行われる、請求項
1から10のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項12】
医療機器であって、
開口部を有しているアタッチメントと、
前記開口部内に挿入されているシャフトと、
を有しており、
前記シャフトの外径および前記開口部の内径が、締まり嵌めを生じるように寸法が決定されており
前記アタッチメントが、請求項
1から11のいずれか一項に記載の接合方法によって前記シャフトに接続されている、医療機器。
【請求項13】
前記シャフトがハンドルまたは取手を構成しており、および/または、前記アタッチメントが動作端もしくはツール頭部を構成している、請求項
12に記載の医療機器。
【請求項14】
前記シャフトがチタンで製作されており、および/または、前記アタッチメントが鋼で製作されている、請求項
12または13に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
医療機器は、機能上の安全性、公差、および、特に滅菌状態/滅菌状態の維持に関して高い要求基準に従うことが前提とされる。このことは、特に、2つの構成部材が共にしっかりと接合されている機器の接続点に当てはまる。以下の内容は、取手と動作端を有している外科手術用器具、例えば、外科手術用ハンマーの接続点の一例である。しかしながら、注意されるべきこととして、同じ問題が、多種多様な他の医療機器およびその様々な接続点にも当てはまり得る。
【背景技術】
【0002】
現在の先行技術によると、取手および動作端(エフェクタ)は、例えば手で共に押圧されることにより、ならびに、横ピンまたはロックピンを介して軸方向のおよび径方向の滑りに対して不動にされることにより接合される。横ピンは、取手および動作端を経由して延びる内腔内へと押圧され、次に、研削により嵌合されなければならず、表面は、ブラシにより擦り落とされなければならない。これらの処理には、コストおよび時間がかかる。さらには、このような圧縮接続内に隙間が生成されるかまたは残存し、この隙間内において、堆積物の形成と、血液、病原菌、塵および化学処理剤などの拡散が生じ、これらを洗浄中に除去することができない。このことは不都合にも、接続点の汚染および腐食を招く。このことを回避するために、接続点はその後、溶接または接着を行うことにより覆われ得るが、このことがさらに、製造プロセスを複雑にし、より費用のかかるものにする。他の接合方法であって、当該接合方法によると、医療機器の2つの構成部材が熱負荷/熱影響下において共に接合される接合方法は、過去において本質的には顧みられることがなかったが、その理由は、接合されるべき構成部材のうちの少なくとも1つにおいて、規定された公差から外れた熱歪みが基本的に予期されたためである。
【0003】
この発明は、先行技術の不利益を低減または回避し、かつ、医療機器の2つの構成部材の、滅菌状態についての高い要求基準を満たしている安定かつ解除し得ない接続のための、費用対効果の大きな接合方法を提供する目的に基づいている。
【0004】
この目的は、請求項1に記載の接合方法と、請求項11に記載の医療機器(例えば、医療/外科手術用器具)と、請求項12に記載の医療機器(例えば、医療/外科手術用器具)を製造するための対応する接合方法の使用により解決される。この発明の有利な展開部が、従属請求項の主題となっている。
【0005】
したがって、本発明の核心は、医療機器の、特に、医療(外科手術用)器具の焼き嵌めによって共に接合されるべき2つの構成部材を接続することにある。この発明によると、好ましくは、例えば、寸法公差および/または材料特性に関して、他の構成部材に比べてより低い要求基準に従うことが前提とされる構成部材のみが本質的に熱処理されることを保証するように注意が払われるべきである。代替的にまたは付加的に、他の構成部材に比べて(例えば、より大きな質量の結果として)より大きな熱容量を有している構成部材のみが、好ましくは、本質的に熱処理されるべきである。代替的にまたは付加的に、その構造および/またはその空間的な寸法/形状により、他の構成部材に比べ、入熱の結果として示される歪み傾向がより低い構成部材のみが、好ましくは、本質的に熱処理されるべきである。代替的にまたは付加的に、他の構成部材の材料に勝る熱的な利点を有している材料から成る、例えば、収縮処理を可能にするために他の構成部材に比べてより低い温度で充分に変形する構成部材のみが、本質的に熱処理されるべきである。
【0006】
例えば、汎用の医療機器(医療器具)は、とりわけ、(細長い/細い)器具シャフトと、器具シャフトに接続されている/接続されるべき器具取手、および/または、器具シャフトに接続されている/接続されるべきエフェクタ(例えば、ハンマー頭部、つめなど)から成り得る。このような一例において、この発明によると、器具シャフトより頑丈な(より短い、より厚い、より堅固な、などの)設計を有しているエフェクタは、それが呈する熱的に誘導される歪み傾向が器具シャフトより低い構成部材であり、それ故に、その後の収縮嵌めのための熱処理に(専ら)かけられる。
【0007】
この発明の根底にある目的は、特に、例えば、チタンで製作されているシャフトと、シャフト上に締結されるべき、例えば、鋼で製作されているアタッチメント(取手、エフェクタなど)を有している医療機器、特に、外科手術用器具またはインプラントのための接合方法によって解決され、この接合方法は、以下のステップを含む。
【0008】
まず、アタッチメントが加熱され、または、シャフトが冷却され、それにより、材料に固有の膨張係数に従った熱膨張または熱収縮により、アタッチメントが膨張するか、または、シャフトが収縮し、それにより、アタッチメントの(受容)開口部の内径が挿入されるべき)シャフトの外径よりも大きい/大きくなる。
【0009】
その後、アタッチメントの開口部内にシャフトが挿入される。即ち、アタッチメントの熱膨張またはシャフトの熱収縮により、開口部はシャフト断面を基準として拡大されており/拡大され、シャフトおよびアタッチメントは、この状態で、シャフトの軸方向において互いを基準として自由に可動である。
【0010】
その後、即ち、シャフトが対応するアタッチメント開口部内に挿入された後、アタッチメントはシャフト上において本質的に隙間なく収縮させるために(積極的にもしくは受動的に)冷却され、または、シャフトはアタッチメント内で膨張させるために(積極的にもしくは受動的に)加熱され、それにより、シャフトおよび開口部は、好ましくは、動作時に予期されるべき最高周囲温度において、さらに好ましくは、室温において、締まり嵌めまたは圧力嵌め(即ち、圧縮接続)を生じる。
【0011】
この接合方法は、医療機器において初めて使用されているが、少なくとも部分的に、または、完全にさえ自動化可能であり、ユーザの側では、要求がそれほど厳しくない手動のステップ(1つの処理ステップ)が必要とされないか、または、数個のみ必要とされる。即ち、手動の労作が低減され、組み立て中に、横ピンだけではなくコスト集約的な手動のいくつかの動作がもはや必要とされなくなる。それ故に、医療機器の2つの構成部材の妥当性確認が可能であってかつ失われにくいだけではなく、簡単で、すばやく、費用対効果の大きな接続が可能になり、この接続は、滅菌状態/洗浄可能性についての厳格な要求基準も満たす。加えて、接続および機器の外観、品質、および耐荷重も改善され、それにより、これまでの解決策を用いるよりも高い(保持および/または捩り)力を伝達することが可能である。加えて、接合方法の反復精度/再現性および処理の信頼性が改善される。そのため、この処理は、様々な医療技術の接続点または界面を規格化するための基礎として働くのに好適であり、それにより、生産全体のコストを低減する。同じく、特に重要なこととして、この方法は、締まり嵌め内における高い接触力により、冷却中においてシャフトとアタッチメントとの間の隙間が本質的に徹底的に閉鎖されることと、医療機器の意図された動作中に、特に、外科手術用の環境と、その後の化学的/熱的な(滅菌)再処理における使用時に、検証可能な態様において接続点内で汚染および腐食が生じないことを保証する。
【0012】
シャフトは、アンダーカットのない、円形の断面、または、多角形の、例えば、四角形もしくは六角形の断面を有し得る。さらには、アタッチメントは、シャフト上に装着されたアタッチメントからシャフトが突出する側(外科手術用器具のケースにおいては、近位端において)を傾斜させることができ、それにより、シャフトとアタッチメントとの間の移行点において90°よりも大きな角度が形成されるようにし、洗浄および滅菌のために当該移行点へのアクセスをより容易にし、および/または、当該移行点が堆積物の形成の影響をより受けにくくなるようにする。さらには、注意されるべきこととして、シャフトおよびアタッチメントは異なる材料で製作され得る。先出の例であって、この例によると、シャフトがチタンで製作されており、かつ、アタッチメントが鋼で製作されている例においては、該当する場合に両方の構成部材を共に加熱することが可能であるが、その理由は、鋼がより高い熱膨張を有しているか、またはそれぞれ、より高い線膨張係数を有しており、それ故に、(チタン)シャフトが過度の歪み傾向を呈することのない状態で、アタッチメントの開口部の必要な膨張を接合加熱中においても達成することができるためである。
【0013】
注意されるべきこととして、医療製品の特別な要求基準および材料により、特に、このような接続点の幾何学的設計と、使用可能な温度範囲の選択が重要な態様であり、これらについては、以下により詳しく論じる。
【0014】
1つの態様によると、制御用に、好ましくは、フィードバック制御用に、パラメータが自由にプログラム可能または調節可能であり、このことは、逸脱している周囲条件に接合方法を適合させることを可能にするために、当該接合方法を制御もしくはフィードバック制御するためのものであり、または、異なる寸法および/もしくは材料を有している異なる機器を接合するためのものである。本明細書における調節可能なパラメータは、例えば、加熱出力または冷却出力、加熱時間または冷却時間、および、加熱出力曲線または冷却出力曲線である。それ故に、この発明による方法は、異なる医療機器を生産するためにこの方法を実施するための単一の機械またはステーションに適用することができる。
【0015】
好ましくは、接合方法においては、さらに、アタッチメントおよび/またはシャフトの温度、さらに好ましくは、加熱時間および/または冷却時間がモニタリングされる。この目的のため、温度センサとして、例えば、少なくとも1つの高温計を使用することができる。これにより、シャフトを適時にかつ容易に開口部内に挿入することができることと、アタッチメントおよびシャフトの滑りまたは分離さえ生じる恐れのあるこの接合方法の早すぎる終了が生じないようにすることが保証される。加えて、アタッチメント、または、該当する場合には、同じくシャフトが、アタッチメントとの接触中に過剰に加熱または冷却されることを防止することができ、それにより、加熱もしくは冷却中に、または、加熱もしくは冷却後に、対応する構成部材の機械的特性に関して不利益が生じない。高温計は、測定の開始直前に、および/または、測定中に、手でまたは自動的に、例えば、マーカーを使用して正確に配向されることが可能である。代替的に、例えば、1つ以上の高温計の代わりに、接触式温度計などを取り付けることができる。
【0016】
特に、アタッチメントまたはシャフトの温度が、少なくとも2つの点(位置)においてモニタリングされるならば有利であり、即ち、開口部に近接して、好ましくは、ちょうど開口部において(即ち、開口部の内周表面において、もしくは、開口部出口の縁のちょうど隣に、もしくは、開口部出口のちょうど縁において)、または、アタッチメント内に挿入されるべきシャフトの一方端の外周においてだけではなく、そこから間隔を空けて位置している(即ち、開口部からできる限り離れた)アタッチメント境界領域において、または、そこから間隔を空けて位置しているシャフト領域において、モニタリングされるならば有利である。これにより、処理パラメータの調整時に、関連する異なる点における温度をモニタリングおよび比較することが可能になり、それ故に、最適な処理シーケンスを設定または制御するために、加熱中に、および、該当する場合には冷却中に、アタッチメントまたはシャフト内の熱伝導をモニタリングすることも可能になる。
【0017】
例えば、シャフトを冷ます時に、シャフト上における(例えば、定点におけるか、または、接合方法中に移動させることが可能な点における)温度測定は有利である。代替的にまたは付加的に、このことは、(特に、シャフトが加熱または冷却されない場合に)互いに対応し得るシャフト温度もしくは室温との相関から、必要とされるアタッチメント最低温度、および/または、アタッチメント、および/または、シャフト、および/または、室温間の最小温度差を判定または指定するために有利である。さらには、冷却後における軸方向の応力を回避または低減するために、開口部および/またはシャフト、特に、(開口部内に受容されるシャフト区分の)シャフト先端の軸方向の行路において、温度のモニタリングが実施されるならば有利である。換言すると、(空間分解されたおよび/または時間分解された)温度プロファイルが、好ましくは、シャフトおよび/またはシャフト先端に軸方向に沿って(シャフト先端の軸方向の延長線/軸方向の行路に沿って)、および/または、開口部の内周表面に軸方向に沿って(開口部内部の軸方向の行路に沿って)判定され、この目的のために、例えば、2つ以上の温度測定用の点および/または測定点を、シャフト上において、および/または、開口部内部において、軸方向に設けて分散させることができる。
【0018】
好ましくは、アタッチメントを加熱するために、誘導加熱装置が使用され、または、シャフトを冷却するために窒素が使用される。特に、誘導熱による加熱は、開放式熱源が回避される、簡単で、安全で、速動式であって、容易に制御可能な加熱方法であり、それにより、負傷のリスクを低減する。代替的に、加熱板または抵抗ヒータなどが使用されてよい。
【0019】
この発明の1つの態様によると、この接合方法はさらに、アタッチメントおよび該当する場合にはシャフトの構成部材パラメータに依存して、加熱中における入熱を調節することを含み得る。例えば、アタッチメントおよび/またはシャフトの幾何学的配置、表面条件、決定寸法、熱処理条件、膨張係数および/または耐腐食性を、構成部材パラメータとして考慮することが可能である。特に、膨張係数および熱処理条件、即ち、医療技術において専用に使用される材料の特性を考慮することは、耐腐食性に悪影響を及ぼさないために重要である。
【0020】
シャフトおよびアタッチメントの締まり嵌めは、好ましくは、シャフトおよびアタッチメントが、動作中に分離不可能に(失われにくい態様で)、軸方向におよび径方向に互いに接続されるような様式で寸法が決定されている。このことは、機器の機能上の信頼性を保証するために重要である。シャフトおよびアタッチメントが異なる熱膨張係数を有する異なる材料で製作され得ることと、圧縮接続が少なくとも機器の動作のために意図された温度範囲内にあることが保証されるような様式で締まり嵌めが設計されることが考慮される。さらに好ましくは、例えば、点検整備のケースにおいて、シャフトおよび/またはアタッチメントの迅速かつ容易な修理または交換を可能にするために、対応する接続は、再加熱することによって可逆的に取り外し可能である。締まり嵌めが20μmから55μmの間の締め代を有していれば有用であることが分かっている。医療機器の用途に依存して、接続の強度には異なる要求基準を課すことができ、したがって、締め代を異なる態様で設計することができる。例えば、第1の低荷重の用途においては、例えば、20μmから25μmの間のより小さな締め代、第2の中程度の荷重の用途においては、例えば、35μmから40μmの中程度の締め代、第3の高荷重の用途においては、例えば、50μmから55μmの大きな締め代を設けることができる。即ち、シャフトのおよびアタッチメントの、特に、アタッチメントの開口部の幾何学的設計は、製品の用途に依存する。
【0021】
好ましくは、アタッチメントの加熱温度は、50℃から350℃の間、好ましくは、300℃から350℃の間である。これにより、シャフトまたはアタッチメントの機械的特性に弊害を及ぼすことなく、開口部を充分に膨張させることができる。
【0022】
この発明の別の態様によると、アタッチメントの開口部内へのシャフトの挿入は、直動ユニットを介して実施することができる。これにより、加熱および冷却に加え、アタッチメントの開口部内へのシャフトの挿入が、自動化または少なくとも簡略化されることを可能にし、それ故に、製造コストをさらに低減する。さらには、シャフトの挿入深さは、精密に制御可能かつ再現可能であり、ユーザによる取り扱いがさらに低減され、それ故に、人的エラーだけではなく、熱いアタッチメントに触れるユーザの負傷のリスクの両方を低減する。直動ユニットは、既に加熱ユニットもしくは冷却ユニットに存在しているアタッチメントを引き継ぐことができ、または、既に加熱中もしくは冷却中に当該アタッチメントを保持することができる。アタッチメントが加熱もしくは冷却後に加熱ユニットもしくは冷却ユニットから除去されるかまたは動かされてシャフト上に配設されると、加熱ユニットまたは冷却ユニットは次のアタッチメントを加熱する準備が既に整っており、生産サイクルを高めることができる。このケースにおいて、直動ユニットは特に利点を有するが、その理由は、医療機器が時として高度に小型化されていることに鑑みて、寸法および公差が極めて小さく、構成部材が迅速に冷めるか、または熱くなるが故に、アタッチメント内へのシャフトの挿入を極めて精密にかつ極めて迅速に実施しなければならないことがあり得るためである。このことがユーザにより手動で行われるならば、エラーの潜在性がおそらく高くなるであろう。代替的に、直動ユニットは、シャフトを保持し、かつ、シャフトを位置的に固定されたアタッチメントの開口部内に挿入/配設することができる。このケースにおいては、アタッチメントまたはシャフトを加熱された状態または冷却された状態において動かす必要が全くなく、アタッチメントまたはシャフトの冷却または加熱を開始するために、加熱ユニットまたは冷却ユニットのスイッチを切断すれば充分である。
【0023】
さらには、この発明の根底にある目的は、開口部を有しているアタッチメントと、開口部内に挿入されているシャフトを有している医療機器、特に、外科手術用器具またはインプラントであって、シャフトの外径および(冷却された)アタッチメントの開口部の内径が締まり嵌めまたは圧着接続を生じるように寸法が決定されており、かつ、アタッチメントが上述の接合方法によってシャフトに接続されている医療機器により解決される。好ましくは、シャフトはハンドルまたは取手であり、アタッチメントは医療器具の動作端またはツール頭部である。この機器の利点およびさらなる詳細に関しては、関連付けられた接合方法の先出の説明を参照されたい。
【0024】
さらには、この目的は、アタッチメントと、アタッチメントの開口部内に挿入されているシャフトを備えている医療機器、特に、医療器具またはインプラントを製造するための、先出の、好ましくは先出の説明による接合方法を使用することによって解決される。接合方法のおよび医療機器の利点および実施形態に関しては、先出の説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態に従ったこの発明による接合方法の模式図であり、
図1A~
図1Cがこの接合方法の連続したステップを示している模式図である。
【
図2】接合方法のための製造配置の一例を示す図である。
【
図3】アタッチメントの別の実施形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、医療機器1のためのこの発明による接合方法の一実施形態を示しており、医療機器1は、例示の目的のため、本明細書では例えば外科手術用ハンマーの方式で、シャフトまたはハンドル2と、簡単な円柱形または立方形のアタッチメントまたは動作端3を有している外科手術用器具として示されている。しかしながら、用途に依存して、異なる態様で形状が決定された任意の他の動作端3を選択することができる。
【0027】
図1Aは、加熱するステップS1を例示する。動作端3は、開口部4、この例においては内腔または止まり穴を有しており、誘導加熱装置5上に配置されており、誘導熱により加熱される。好ましくは、アタッチメントのまたは動作端3の温度(可能性として、時間的なおよび/または局所的な(軸方向の)温度プロファイル)が、開口部の縁に近接する点P1において、および/または、そこから間隔を空けて位置しているアタッチメントの点P2において測定される。代替的にまたは付加的に、シャフトまたはハンドル2の温度が、オプションとして、開口部4内に挿入されるべきハンドル端/シャフト端に近接する点P3において、および、そこから間隔を空けて位置しているさらなるハンドル領域/シャフト領域における点P4において測定される。動作端3の材料の熱膨張により動作端3は膨張し、このことは、開口部4の拡大も生じる。即ち、開口部4は、室温においては第1の「冷間」内径d
Kを有し、加熱された状態においては冷間内径d
Kよりも大きな第2の「熱間」内径d
Hを有している。
【0028】
動作端3が或る特定の温度まで、および/または、或る特定の加熱時間にわたり加熱された後に(ここで、例えば、点P1および/または点P2における温度の測定が可能)、ハンドル2がハンドル2の長手方向において開口部4内に挿入されるが(S2)、このハンドル2の「冷間」外径D(即ち、好ましくは、動作中において予期されるべき室温または最高周囲温度におけるものであり、ここで、ハンドル温度またはシャフト温度は、例えば、ハンドル2上の点P3および/またはP4において測定/モニタリングされることが可能)は、動作端3の冷間内径dKに対して或る特定の締め代を有しているものの、この時点において存在する熱間内径dHよりも小さい。
【0029】
その後、動作端3が冷め(S3)、これにより、開口部4もまた収縮し/狭まり、動作端3はハンドル2上において収縮する。即ち、
図1Cに示されるように、締まり嵌め/圧力嵌めにより、ハンドル2の動作端3との圧着接続が確立される。好ましくは、シャフト/ハンドル2および/または動作端3の温度は、点P1および/または点P2および/または点P3および/または点P4において相応に測定される。室温におけるハンドル2の締め代により、開口部4の内周表面は、(意図された使用中に生じる力に対して)軸方向にかつ径方向に動かせなくなり、ハンドル2の外周表面に対して押圧される。
【0030】
図2は、上述の接合方法の例示的な製造配置を示す。加熱装置5、この例においては、誘導コイルが設けられ、加熱装置5は、ステップS1において動作端3を加熱するために使用される。温度モニタリングユニット6は、例えば、高温計を介して動作端3の温度をいくつかの点において検出し(ステップS4)、温度偏差と該当する場合は入熱を判定する。制御ユニット7は、加熱時間をモニタリングし、かつ、ターゲット温度と該当する場合は温度プロファイルまたは入熱を指定するが、温度モニタリングユニットからのモニタリング信号を受信し、かつ、これらの信号に基づいて加熱装置5を制御する(ステップS5)。
【0031】
ターゲット温度に到達すると、信号、例えば音声信号または光信号が出力され、動作端3がユーザによって直動ユニット8に移送されるか、または、動作端3が直動ユニット8によって完全に自動的に引き継がれる。直動ユニット8は、ステップS2において、動作端3をハンドル2上に確実にかつ均一に押す/配設するために使用され、それにより、動作端3は、動作端3の冷却(S3)後にハンドル2上に正確に位置決めされる。代替的に、動作端3の配設は、ユーザにより手動で実施することもできる。動作端3の直動ユニット8への配設または移送がユーザにより実施される場合、制御ユニット7は、動作端3が或る特定の時間にわたりターゲット温度に保たれるような様式で加熱装置5を制御するように構成されることも可能である。その後、冷却中に、制御ユニット7は冷却時間をモニタリングすることができ、また、動作端3およびハンドル2がいつ互いに充分に密着した状態になるのか、ならびに、該当する場合、ユーザの負傷のリスクなしにいつ把持できるようになるのかを判定するために、温度モニタリングユニット6を介して動作端3の温度をモニタリングすることができる。この時点で、別の信号が出力され得る。
【0032】
図3は、アタッチメントまたは動作端3の別の実施形態の一例を示す。ここでは、互いに独立していると考えられるべきいくつかの態様が示されており、これらのいくつかの態様は、この発明による動作端3において任意の組み合わせで、または個々に実装されることが可能である。第1の態様は、動作端3の実質的に涙滴形状の断面に関しており、ここで、涙滴の先端は、シャフトまたはハンドル2に向かっている。換言すると、動作端3の断面は、シャフトまたはハンドル2に向けて傾斜している(当該断面は、動作端から近位に突出している)。これにより、洗浄および/または滅菌の目的のために、動作端3とハンドル2との間の移行部の縁へのアクセスし易さが改善される。
【0033】
第2の態様は、複数個の部分を有している動作端3に関する。このことに関し、第1のアタッチメント近位部分3a(即ち、把持されるべきハンドル近位端に近接して位置する)は、ハンドル2に対して収縮させてあるか、または収縮させることが可能であり、第2のアタッチメント遠位部分3bは、例えば、使い捨ての部分として形成され得、器具に(即ち、ハンドル2に既に接続されているアタッチメント近位部分3aに)取り付け可能であり得る。代替的に、アタッチメント遠位部分3bは、まず、アタッチメント近位部分3aに接続することができ、次に、アタッチメント近位部分3aと共にハンドル2上において収縮させることができ、ここで、設けられた界面および直径は、熱膨張およびその後の収縮中に互いに損傷を及ぼさないように、互いに精密に合致させなければならない。アタッチメント遠位部分は、ハンドル2の長手方向において遠位に閉鎖または開放されていることがあり得る。
【0034】
第3の態様は、ハンドル2の長手方向において動作端3に対して、ハンドル2の位置を規定することに関する。ハンドル2は、段または肩部2aであって、動作端3の相補的な肩部または段に長手方向において当接するように設けられている段または肩部2aを形成し得る。
【0035】
第4の態様は、アタッチメント3の開口部4を貫通穴として形成することに関する。これにより、軸方向における正確な位置決めに影響を及ぼす恐れのある開口部の壁とハンドル2の遠位端の間のポケットにおける空気の貯留を防止することができる。このケースにおいては、ハンドルの遠位端がアタッチメント3と面一になって、洗浄されなければならないであろう付加的な縁を回避するような様式で、ハンドル2がハンドル2の長手方向においてアタッチメント3内に位置決めされるならば有利である。
【0036】
注意されるべきこととして、加熱装置の代わりに冷却機器を設けることも可能であり、かつ、アタッチメントの加熱の代わりに、この冷却機器によるシャフトの冷却を提供することも可能であるような様式で、上述の実施形態を適合させることも可能であり、ここで、シャフトは、圧力嵌めを確立するために、アタッチメントの開口部内に挿入された後に加熱される。
【符号の説明】
【0037】
1:医療機器
2:シャフト(ハンドル)
2a:段/肩部
3:アタッチメント(動作端)
3a:アタッチメント近位部分
3b:アタッチメント遠位部分
4:開口部
5:(誘導)加熱装置
6:温度モニタリングユニット
7:制御ユニット
8:直動ユニット
P1:開口部に近接する(測定)点
P2:点P1から間隔を空けて位置しているアタッチメント境界領域における(測定)点
P3:アタッチメント内に挿入されるべきシャフトの端の外周における(測定)点
P4:点P3から間隔を空けて位置している、シャフト領域における(測定)点