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特許7408684眼疾患を治療する眼内処置を実施するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】眼疾患を治療する眼内処置を実施するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
A61F9/008 120D
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021562322
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 US2020028967
(87)【国際公開番号】W WO2020215067
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】16/389,359
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521458616
【氏名又は名称】エリオス・ヴィジョン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ELIOS VISION, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ユンガー,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】エンダーズ,マルクス
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0316388(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/00
A61B 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼疾患を治療する眼内処置を実施するときに使用するシステムであって、
エキシマレーザ源であって、該エキシマレーザ源に1回に1つずつ結合可能な単回使用で使い捨ての複数のエキシマレーザプローブのうちの1つのエキシマレーザプローブに提供されるレーザエネルギーを発生する、エキシマレーザ源と、
命令を含む非一時的コンピュータ可読メモリに結合されたハードウェアプロセッサを備えるレーザ管理システムと
を備え、
前記命令は、前記プロセッサによって実行可能であり、
前記複数のエキシマレーザプローブのそれぞれを前記エキシマレーザ源に接続するごとに、前記エキシマレーザ源に結合された前記複数のエキシマレーザプローブのうちの1つのエキシマレーザプローブからのデータであって、当該エキシマレーザプローブの光ファイバコアの径を示すデータを自動的に受信して分析し、
前記複数のエキシマレーザプローブのうちの1つから送出されるレーザ放射の波長を一定のレベル維持するように、前記エキシマレーザ源から前記エキシマレーザプローブへのレーザエネルギー出力を前記光ファイバコアの径に基づいて自動的に微調整する
ことを前記レーザ管理システムに実行させるシステム。
【請求項2】
前記分析は、前記データを、データベースに記憶された較正データと相関させることを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記較正データは、前記エキシマレーザ源からのレーザエネルギー出力に関連付けられている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記較正データはローカルデータベースに記憶される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記較正データはリモートデータベースに記憶される、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記較正データは、径の範囲及び前記エキシマレーザ源から前記エキシマレーザプローブへのそれぞれのレーザエネルギー出力レベルの範囲を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
調整された前記レーザエネルギー出力は、ターゲット組織の治療のために、ターゲット組織に対するレーザエネルギーの最適レベルの伝送をもたらす、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記眼内処置はレーザ線維柱帯切開術である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ターゲット組織は、線維柱帯網及びシュレム管のうちの少なくとも一方を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ターゲット組織に伝達されるレーザエネルギーの前記最適レベルは約308nmの波長を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記較正データは複数の値のセットを含み、値の各セットは、前記エキシマレーザ源からのレーザエネルギー出力レベル、及び前記レーザエネルギー出力レベルを受光するレーザプローブの光ファイバコアの対応する径を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項12】
前記エキシマレーザ源から前記エキシマレーザプローブへの前記レーザエネルギー出力レベルは、前記光ファイバコアの径に基づいて決定され、前記レーザプローブから放出されるレーザ放射の波長値は、前記複数の値のセットの各セットについて同じである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記エキシマレーザ源から前記エキシマレーザプローブへの前記レーザエネルギー出力レベルは、約308nmの波長値を有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記データは、前記眼内処置を実施する前の初期設定の一部として受信される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記眼内処置を実施する前の初期設定の一部として、前記エキシマレーザ源から前記エキシマレーザプローブへのレーザエネルギー出力の自動的な微調整が行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記データは、オペレータに前記複数のエキシマレーザプローブのうちの1つからのレーザエネルギー出力の制御を提供する前に、前記エキシマレーザ源に結合された前記複数のエキシマレーザプローブのうちの1つのエキシマレーザプローブから受信される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
眼疾患を治療する眼内処置を実施するときに使用するシステムであって、
エキシマレーザ源であって、該エキシマレーザ源に1回に1つずつ結合可能な単回使用で使い捨ての複数のエキシマレーザプローブのうちの1つのエキシマレーザプローブに提供されるレーザエネルギーを発生する、エキシマレーザ源と、
命令を含む非一時的コンピュータ可読メモリに結合されたハードウェアプロセッサを備えるレーザ管理システムと
を備え、
前記命令は、前記プロセッサによって実行可能であり、
前記複数のエキシマレーザプローブのそれぞれを前記レーザ源に接続するごとに、前記エキシマレーザ源に結合された前記複数のエキシマレーザプローブのうちの1つのエキシマレーザプローブからのデータであって、当該エキシマレーザプローブの光ファイバコアの径を示すデータを受信して分析し、
前記複数のエキシマレーザプローブのうちの1つから送出されるレーザ放射の波長を一定のレベル維持するように、前記エキシマレーザ源から前記エキシマレーザプローブへのレーザエネルギー出力レベルを前記光ファイバコアの径に基づいて事前設定し、該レーザエネルギー出力レベルは、前記眼内処置を実施する前の初期設定の一部として事前設定される
ことを前記レーザ管理システムに実行させるシステム。
【請求項18】
前記データは、前記眼内処置を実施する前の初期設定の一部として受信される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記データは、前記複数のエキシマレーザプローブのうちの1つのエキシマレーザプローブから自動的に受信される、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記データは、ユーザインタフェースを介したユーザによる手作業を介して受信される、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記データは、オペレータに前記複数のエキシマレーザプローブのうちの1つからのレーザエネルギー出力の制御を提供する前に受信される、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイスに関し、より詳細には、レーザ光ファイバにおけるばらつきの増加を補正するために、レーザ出力を較正する手段を備えるエキシマレーザシステムに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年4月19日付けで出願された米国特許出願第16/389,359号の優先権及び利益を主張する。この米国特許出願の全開示内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
医療業界において、治療が安全かつ効果的に実施されることを保証するために、適切に連携して動作しなければならない個々の構成要素から構成される、多くの外科デバイス、機器、及びシステムが存在する。任意の所与の構成要素が、他の構成要素に物理的に適合し、それらと適切に相互作用し、意図されるように機能することを保証するために、許容可能公差内に入ることが極めて重要である。
【0004】
任意の製品の実際の生産(又は任意のシステムの動作)は、入力及び出力の何らかの固有のばらつきを伴う。測定誤差及び統計的不確実性も、全ての測定に存在する。したがって、公差は、デバイス、機器、又はシステムを設計するときの固有の側面である。時として工学公差(engineering tolerance)と呼ばれる公差の概念は、構成要素の物理的寸法、構成要素の測定値又は物理的特性、構成要素と別の構成要素との間の間隔等におけるばらつきの単数又は複数の許容可能な限界に関する。したがって、構成要素が許容可能公差から外れる(すなわち、構成要素が、小さ過ぎる、大き過ぎる、又は受け入れ可能な特性持つことができない等である)場合、全体のデバイス、機器、又はシステムは、設計通りに働くことができないことになる。
【0005】
複数の構成要素から構成される外科システムの1つの例として医療レーザシステムがある。医療レーザシステムは、一般に、レーザユニット、及び、レーザユニットから治療領域にレーザ放射を方向付ける光ファイバを有する別個のレーザプローブからなる。レーザユニットは、レーザ光を特定の波長で提供し、結果として、特定の処置を実施するように設計することができる。例えば、或る特定の処置は、第1の波長のレーザ放射の送出によって起こるターゲット組織の光凝固を必要とする場合があり、一方、他の処置は、第2の波長のレーザ放射の送出によって起こるターゲット組織の光焼灼を必要とする場合がある。さらに、これらのレーザシステムとともに使用される光ファイバは、対応するレーザユニットとともに意図されるように機能するために、特定の寸法、材料組成、及び/又は機能特性(すなわち、特定の温度及び波長における動作)を有することができる。
【0006】
現在のレーザユニットは、或る程度の公差を可能にする(すなわち、光ファイバ寸法、特性、又は条件は、レーザシステムの機能に大幅に影響を及ぼすことなく或る程度のばらつきを有することができる)が、許容可能な公差の範囲は著しく狭い。例えば、光ファイバは、一般に、ミクロンスケールで測定される非常に小さい径を有する。光ファイバの径は、光ファイバを通したレーザ放射の伝送に影響を及ぼす場合があり、したがって、光ファイバの送出先端から放出されるレーザ放射に影響を及ぼす場合がある。したがって、光ファイバの製造においてばらつきの余地は非常に小さい。光ファイバの径が許容可能公差内に入ることを確保するために高い精度が必要とされるため、結果として製造コストが増加する。さらに、所与の光ファイバが許容可能公差から外れる(すなわち、径が、大き過ぎるか又は小さ過ぎる)場合、不適合光ファイバの使用は、所望波長でないレーザ放射の伝送をもたらす場合がある。さらに、不適合光ファイバの使用は、効果的でない治療を提供するというリスクを冒し、また、場合によっては、更なる意図しない損傷及び被害(damage and harm)を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、レーザ光ファイバにおけるばらつきの増加を補正するために、レーザ源からの出力を較正するシステムを提供する。そのようなシステムにおいて、要素は、一般に、レーザ源であって、レーザ源に結合可能な複数のレーザプローブのうちの1つのレーザプローブに提供されるレーザエネルギーを発生させる、レーザ源を含む。各レーザプローブは、レーザ放射を、レーザ源からファイバを通して所望の治療領域に方向付けるように適合される光ファイバコアを含む光ファイバを含む。システムは、レーザ源を管理するレーザ管理システムを更に含む。管理システムは、任意の所与のレーザプローブの光ファイバコアにおいてばらつきがあっても、ターゲット領域に送出されるレーザ放射における一定のレベルを維持するように、レーザ源から任意の所与のレーザプローブへのレーザエネルギー出力を調整するように構成される制御システムを含む。
【0008】
より具体的には、初期設定の一部として、制御システムは、レーザ源に結合されたレーザプローブに関連付けられたデータを受信する。データは、光ファイバコアの径を含むレーザプローブの光ファイバコアの1つ又は複数の寸法を含むことができる。データは、その後、コントローラによって分析され、その分析に基づいて、レーザ源からのレーザエネルギー出力の最適レベルの決定が行われる。レーザ源からのレーザエネルギー出力の最適レベルは、光ファイバコアの特定の寸法等のレーザプローブデータの較正データとの相関に基づく。較正データは、一般に、複数の値のセットを含むことができ、値の各セットは、レーザ源からのレーザエネルギー出力レベル、レーザエネルギー出力レベルを受光するレーザプローブの光ファイバコアの径、及びレーザプローブの送出先端から放出されるレーザ放射の結果として得られる波長値を含むことができる。好ましい実施形態において、送出先端から放出されるレーザ放射の結果として得られる波長値は、光ファイバコアの径によらず一定のままである。そのような実施形態において、レーザ管理システム(すなわち、制御システム)は、光ファイバコアの任意の所与の径についてレーザ源からのレーザエネルギー出力レベルを自動的に調整して(すなわち、出力レベルを増減して)、複数のレーザプローブからの光ファイバコアの径のばらつきによらず、ターゲット領域上へのレーザ放射の放出を一定の波長に維持する。
【0009】
したがって、本発明のシステムは、複数のレーザプローブにわたる広範囲のばらつきを、そのようなばらつきを考慮するようにレーザ源の出力を単に調整することによって補正することができる。ひいては、製造プロセス中に要求される精度が低くなるため、光ファイバについての製造公差が改善し、それにより全体コストが低減する。さらに、レーザ出力の微調整によって、レーザ放射は、一定の波長に維持され、ターゲット領域が意図されるように治療され、患者の安全性が維持されることが保証される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示のエキシマレーザシステムの図である。
図2】本開示のエキシマレーザシステム、及び、レーザプローブの光ファイバにおけるばらつきの増加を補正するために、レーザ出力を較正する手段の図である。
図3】レーザプローブの光ファイバコアにおけるばらつきを考慮するための、レーザ源からレーザプローブへのレーザエネルギー出力の調整を含む、レーザ出力を較正するプロセスの図である。
図4】エキシマレーザユニットの一実施形態を示す図である。
図5】エキシマレーザシステムとともに使用するためのプローブの一実施形態を示す図である。
図6図5のラインA-Aに沿って切り取ったプローブの断面図である。
図7図5のラインB-Bに沿って切り取ったプローブの断面図である。
図8】エキシマレーザユニットに取り付けられたレーザプローブの一実施形態を示す図である。
図9】レーザプローブとエキシマユニットとの間の接続、及び、較正技法に基づく、レーザプローブに対する調整されたレーザエネルギー出力レベルの送出の拡大図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、レーザ光ファイバにおけるばらつきの増加を補正するために、レーザ源からの出力を較正するシステムを提供する。そのようなシステムにおいて、要素は、一般に、レーザ源であって、レーザ源に結合可能な複数のレーザプローブのうちの1つのレーザプローブに提供されるレーザエネルギーを発生させる、レーザ源を含む。各レーザプローブは、レーザ放射を、レーザ源からファイバを通して所望の治療領域に方向付けるように適合される光ファイバコアを含む光ファイバを含む。システムは、レーザ源を管理するレーザ管理システムを更に含む。管理システムは、任意の所与のレーザプローブの光ファイバコアにおいてばらつきがあっても、ターゲット領域に送出されるレーザ放射における一定のレベルを維持するように、レーザ源から任意の所与のレーザプローブへのレーザエネルギー出力を調整するように構成される制御システムを含む。
【0012】
したがって、本発明のシステムは、複数のレーザプローブにわたる広範囲のばらつきを、そのようなばらつきを考慮するようにレーザ源の出力を単に調整することによって補正することができる。ひいては、製造プロセス中に要求される精度が低くなるため、光ファイバについての製造公差が改善し、それにより全体コストが低減する。さらに、レーザ出力の微調整によって、レーザ放射は、一定の波長に維持され、ターゲット領域が意図されるように治療され、患者の安全性が維持されることが保証される。
【0013】
本発明のシステムは、ターゲット組織のレーザ治療が所望される眼内手技に特に良く適する。特に、本発明のレーザ源、レーザ管理システム、及びレーザプローブは、好ましくは、緑内障を治療するために使用され、レーザ線維柱帯切開術(laser trabeculostomy)を実施するときに有用である。しかしながら、本開示と合致するシステムは、他の眼疾患(すなわち、増殖性糖尿病網膜症又は黄斑浮腫(macular oedema)等の糖尿病性眼疾患、加齢黄斑変性、網膜裂孔、及び未熟児網膜症の事例、並びに、近視(short-sightedness (myopia))又は乱視等の屈折異常を補正するレーザ角膜内切削形成術(LASIK:laser-assisted in situ keratomileusis))、並びに、他の一般疾患及び他の診療領域(非眼科診療領域)を含む種々の疾患の任意のレーザ治療で使用することができることが留意されるべきである。
【0014】
図1は、レーザユニットシステム100、及び、レーザユニットシステム100に取り付けられるレーザプローブ200を備えるエキシマレーザシステムの図である。システム100は、レーザ源102及びレーザ管理システム108を備える。レーザプローブ200はファイバコア204を含む。本明細書においてより詳細に説明するように、レーザユニットシステム100の構成要素の多くを、処置が実施される環境(例えば、手術室、処置室、外来オフィス環境等)内に設けられる、可動プラットフォーム等のハウジング内に含むことができ、プローブ200は、治療中に使用するためにハウジングに接続することができる。プローブ200をハウジングに結合すると、ファイバコア202は、レーザ源102に結合され、レーザ放射を、レーザ源102からファイバを通して治療領域に方向付けるように適合される。
【0015】
レーザ源102は、エキシマレーザ104、及び、レーザ104に適切なガスの組み合わせを提供するガスカートリッジ108を備える。エキシマレーザ104は、紫外レーザの形態であり、紫外レーザは、一般に、UVスペクトル領域で動作し、ナノ秒パルスを発生させる。エキシマ利得媒質(すなわち、ガスカートリッジ106内に含まれる媒質)は、一般に、希ガス(例えば、アルゴン、クリプトン、又はキセノン)及び反応性ガス(例えば、フッ素又は塩素)を含むガス混合物である。電気刺激及び高圧の適切な条件下で、励起状態においてのみ存在することができ、UV範囲内のレーザ光をもたらすことができるエキシマ(又は、希ガスハロゲン化物(halide)の場合、エキシプレックス(exciplex))と呼ばれる擬分子(pseudo-molecule)が生成される。
【0016】
エキシマ分子内のレーザ作用は、エキシマ分子が、結合(会合性(associative))励起状態であるが、反発(解離性(dissociative))基底状態を有するために起こる。キセノン及びクリプトン等の希ガスは、非常に不活性であり、化合物を通常形成しない。しかしながら、励起状態(放電又は高エネルギー電子ビームによって誘起される)にあるとき、希ガスは、それら自身とともに(エキシマ)又はフッ素及び塩素等のハロゲンとともに(エキシプレックス)結合分子を一時的に形成することができる。励起化合物は、自然放出又は誘導放出を受けることによって、その過剰なエネルギーを解放し、2つの非結合原子に戻るように非常に迅速に(ピコ秒のオーダーで)解離する、高反発性(strongly repulsive)基底状態分子をもたらすことができる。これは、反転分布(population inversion)を形成する。本システム100のエキシマレーザ104は、XeCIエキシマレーザであり、308nmの波長を放出する。
【0017】
レーザ管理システム108はレーザ源102を管理する。特に、図2に示すように、レーザ管理システム108はコントローラ110(本明細書において「制御システム110」とも呼ばれる)を備える。コントローラ110は、オペレータ(すなわち、外科医又は他の医療専門家)に、(レーザ源102からファイバコア202への)レーザ信号の出力に対する制御を、そしてひいては、プローブ200のファイバコア202からのレーザエネルギーの伝送に対する制御を提供する。しかしながら、レーザ出力に対する制御をオペレータに提供する前に、レーザ管理システム108は較正プロセスを提供し、較正プロセスにおいて、レーザ源102からレーザプローブ200へのレーザエネルギー出力は、プローブ200の光ファイバコア202においてどんなばらつきがあっても、プローブ200からターゲット領域に送出されるレーザ放射の一定のレベルを維持するように較正される。
【0018】
図2は、レーザユニットシステム100、及び、レーザプローブ200の光ファイバコアにおけるばらつきを考慮するための、システム100とともに使用されるレーザプローブ200に対するレーザ出力の較正の図である。図3は、レーザプローブ200の光ファイバコア202におけるばらつきを考慮するための、レーザ源からレーザプローブへのレーザエネルギー出力の調整を含む、レーザ出力を較正するプロセスの図である。
【0019】
初期設定の一部として、コントローラ110は、レーザ源102に結合されたレーザプローブに関連付けられたデータを受信する。この事例において、レーザプローブ200からのデータはコントローラ110に提供される。このデータは、(システム100上に設けられるユーザインタフェースを介して)手作業で入力してもよいし、読み取り可能デバイスから又はシステム100の関連するリーダによってプローブ200上のラベルから自動的に読み取ってもよい。データは、光ファイバコア202の物理的寸法、光ファイバコア202の1つ又は複数の測定値又は物理的特性、並びに、プローブ200の他の構成要素の物理的寸法及び/又は測定値又は物理的特性を含むがこれらに限定されない、プローブ200の物理的特徴を含むことができる。1つの実施形態において、データは、光ファイバコア202の径を含む。
【0020】
データは、その後、コントローラ110によって分析され、その分析に基づいて、レーザ源102からのレーザエネルギー出力の最適レベルの決定が行われる。分析は、光ファイバコアの特定の寸法等のレーザプローブデータの較正データとの相関に基づく。較正データは、レーザユニットシステム100の一部を形成するローカルデータベース(すなわち、較正データベース112)又はリモートサーバ300によってホストされるリモートデータベース(すなわち、較正データベース302)のいずれかのデータベースに記憶される。例えば、いくつかの実施形態において、システム100は、ネットワークを通じてリモートサーバ300と通信し、データを交換することができる。ネットワークは、例えば、プライベート又は非プライベートローカルエリアネットワーク(LAN)、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、ストレージエリアネットワーク(SAN)、バックボーンネットワーク、グローバルエリアネットワーク(GAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、又は、イントラネット、エクストラネット、若しくはインターネット(すなわち、例えばワールドワイドウェブを含む、種々のアプリケーション又はサービスがその上で実行される相互接続式ネットワークのグローバルシステム)等の任意のそのようなコンピュータネットワークの集合体を示すことができる。
【0021】
較正データは、一般に、複数の値のセットを含むことができ、値の各セットは、レーザ源からのレーザエネルギー出力レベル、レーザエネルギー出力レベルを受光するレーザプローブの光ファイバコアの径、及びレーザプローブの送出先端から放出されるレーザ放射の結果として得られる波長値を含むことができる。好ましい実施形態において、送出先端から放出されるレーザ放射の結果として得られる波長値は、光ファイバコアの径によらず一定のままである。そのような実施形態において、レーザ管理システム(すなわち、制御システム)は、光ファイバコアの任意の所与の径についてレーザ源からのレーザエネルギー出力レベルを自動的に調整して(すなわち、出力レベルを増減して)、複数のレーザプローブからの光ファイバコアの径のばらつきによらず、ターゲット領域上へのレーザ放射の放出を一定の波長に維持する。
【0022】
コントローラ110は、上記で説明した動作のうちの任意の動作を実施するように構成される、ソフトウェア、ファームウェア、及び/又は回路を含むことができる。ソフトウェアは、非一時的コンピュータ可読記憶媒体上に記録されたソフトウェアパッケージ、コード、命令、命令セット、及び/又はデータとして具現化することができる。ファームウェアは、メモリデバイス内にハードコード化される(例えば、不揮発性の)コード、命令又は命令セット、及び/又はデータとして具現化することができる。「回路」は、本明細書の任意の実施形態において使用される場合、例えば、ハードワイヤード回路、1つ又は複数の個々の命令処理コアを備えるコンピュータプロセッサ等のプログラマブル回路、状態機械回路、及び/又は、プログラマブル回路によって実行される命令を記憶するファームウェアを、単独で又は任意の組み合わせで含むことができる。例えば、コントローラ104は、較正プロセスを含む本明細書において説明したレーザシステム100の種々の機能をコントローラに実施させる、プロセッサによって実行可能な命令を含む非一時的コンピュータ可読メモリに結合した、ハードウェアプロセッサを含むことができる。例えば、コントローラ110は、一般に明確に定義されており、かつ、データの2つ以上のセットを受信し、相関レベルを少なくとも或る特定の程度まで識別し、それにより、相関レベルに基づいてデータのセットを互いに関連付けるように動作可能である、カスタムの、プロプライエタリの、既知の及び/又は開発された(after-developed)統計分析コード(又は命令セット)、ハードウェア、及び/又はファームウェアを含むことができる。
【0023】
図4は、機器400内に設けられたエキシマレーザユニット100の一実施形態を示す。上記で説明したように、システム100の1つ又は複数の構成要素は機器400内に含むことができる。本実施形態において、レーザ源102(エキシマレーザ104及びガスカートリッジ106を含む)、及び、コントローラ110を含むレーザ管理システム108は、ハウジング402内に含まれる。ハウジング402は、ホイール404を有し、可搬型である。機器400は、機器400の可搬性を支援するプッシュプルハンドル405を更に備える。機器400は、ファイバコア202とレーザ源102との間の接続を確立するために、レーザプローブ200の接続端を収納する接続ポート406を更に備える。機器400は、ファイバプローブキャップホルダ408、非常停止ボタン410、及びパワースイッチ412等の、オペレータ用の種々の入力部を更に備える。機器400は、ハウジング402から延在するフットペダル414を更に備え、エキシマレーザ104からプローブ200のファイバコア202へのショットの送出に対する制御を提供するように動作可能である。機器400は、対話型ユーザインタフェースの形態とすることができるディスプレイ416を更に備える。いくつかの例において、対話型ユーザインタフェースは、患者情報、機械設定、及び処置情報を表示する。上記で説明したように、オペレータは、対話型ユーザインタフェースによってレーザプローブデータを手作業で入力し、それにより、そのようなデータをレーザ管理システム108及びコントローラ110に提供することができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、データを、読み取り可能デバイスから又はシステム100の関連するリーダによってプローブ200上のラベルから自動的に読み取ることができる。
【0024】
図5は、エキシマレーザシステム100とともに使用するプローブ500の一実施形態を示す。プローブ500は、単回使用の使い捨てユニットである。プローブ500は、一般に、プローブ500の本体から延在するとともに、機器400の接続ポート406内に収納されるように構成される接続アセンブリ504を有するコネクタ502(細長いコード)によって、レーザ源102に結合されたファイバコアを含む。プローブ500は、(ファイバコアからの)レーザエネルギーをそこから放出することができる送出先端506を更に備える。プローブ500は、隆起部又は陥凹部512を有するフィンガグリップ510を有することができる手持ち式本体508を備える。手持ち式プローブ500の本体508は金属又はプラスチックとすることができる。
【0025】
図6及び図7は、図5のラインA-A及びラインB-Bに沿ってそれぞれ切り取ったプローブ500の断面図を示す。図示するように、光ファイバコア518が、プローブ500を貫通して延び、コネクタ502の一部を形成する。保護シース516が光ファイバコア518を囲む。いくつかの例において、保護シース516は保護プラスチック又はゴムシースである。光ファイバコア518は、プローブ500の送出先端506の一部を更に形成する。金属ジャケット520が、光ファイバコア518及び光ファイバ520を囲む。いくつかの事例において、ステンレス鋼ジャケット520が、光ファイバコア518を囲み保護する。
【0026】
図8は、レーザユニットシステム100に取り付けられたレーザプローブ500の一実施形態を示す。上記で説明したように、レーザプローブ500をシステム100に取り付ける(すなわち、プローブ500の接続アセンブリ504とシステム400の接続ポート406との間で結合される)と、レーザ管理システム108(コントローラ110を備える)は、プローブ500の使用前に較正プロセスを実施する。特に、光ファイバコアの径等のプローブ500の特徴に関連付けられたデータが、レーザ管理システム108に提供される。データは、その後、コントローラ110によって分析され、その分析に基づいて、レーザ源からのレーザエネルギー出力の最適レベルの決定が行われる。図9は、レーザプローブ500とシステム100との間の接続、及び、較正技法に基づく、レーザプローブに対する調整されたレーザエネルギー出力レベルの送出の拡大図を示す。レーザ源からのレーザエネルギー出力の最適レベルは、光ファイバコアの特定の寸法等のレーザプローブデータの較正データとの相関に基づく。コントローラ110は、光ファイバコアの任意の所与の径についてレーザ源からのレーザエネルギー出力レベルを自動的に調整して(すなわち、出力レベルを増減して)、複数のレーザプローブからの光ファイバコアの径のばらつきによらず、ターゲット領域上へのレーザ放射の放出を一定の波長に維持する。
【0027】
したがって、本発明のシステムは、複数のレーザプローブにわたる広範囲のばらつきを、そのようなばらつきに考慮するように、レーザ源の出力を単に調整することによって補正することができる。ひいては、製造プロセス中に要求される精度が低くなるため、光ファイバについての製造公差が改善し、それにより全体コストが低減する。さらに、レーザ出力の微調整によって、レーザ放射は、一定の波長に維持され、ターゲット領域が意図されるように治療され、患者の安全性が維持されることが保証される。
【0028】
本明細書の任意の実施形態において使用される場合、用語「モジュール」は、上記で説明した動作のうちの任意の動作を実施するように構成される、ソフトウェア、ファームウェア、及び/又は回路を指すことができる。ソフトウェアは、非一時的コンピュータ可読記憶媒体上に記録されたソフトウェアパッケージ、コード、命令、命令セット、及び/又はデータとして具現化することができる。ファームウェアは、メモリデバイス内にハードコード化される(例えば、不揮発性の)コード、命令又は命令セット、及び/又はデータとして具現化することができる。「回路」は、本明細書の任意の実施形態において使用される場合、例えば、ハードワイヤード回路、1つ又は複数の個々の命令処理コアを備えるコンピュータプロセッサ等のプログラマブル回路、状態機械回路、及び/又は、プログラマブル回路によって実行される命令を記憶するファームウェアを、単独で又は任意の組み合わせで含むことができる。モジュールは、より大きいシステム、例えば、集積回路(IC)、システムオンチップ(SoC)、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、サーバ、スマートフォン等の一部を形成する回路として、ひとまとめに又は個々に具現化することができる。
【0029】
本明細書において説明した動作のいずれも、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると上記方法を実行する命令が、個別に又は組み合わせて記憶された1つ又は複数の記憶媒体を備えるシステムにおいて実施することができる。ここで、プロセッサは、例えば、サーバCPU、モバイルデバイスCPU、及び/又は他のプログラマブル回路を含むことができる。
【0030】
また、本明細書において説明した動作は、2つ以上の異なる物理ロケーションにある処理構造体等の複数の物理デバイスにわたって分散される場合があることが意図されている。記憶媒体は、任意のタイプの有形媒体、例えば、ハードディスク、フロッピーディスク、光ディスク、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、コンパクトディスクリライタブル(CD-RW)、及び光磁気ディスクを含む任意のタイプのディスク、読み出し専用メモリ(ROM)、ダイナミックRAM及びスタティックRAM等のランダムアクセスメモリ(RAM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、ソリッドステートディスク(SSD)等の半導体デバイス、磁気カード若しくは光カード、又は電子命令を記憶するのに適した任意のタイプの媒体を含むことができる。他の実施形態は、プログラマブル制御デバイスによって実行されるソフトウェアモジュールとして実施することができる。記憶媒体は非一時的なものとすることができる。
【0031】
本明細書において説明するように、種々の実施形態は、ハードウェア要素、ソフトウェア要素、又はその任意の組み合わせを使用して実施することができる。ハードウェア要素の例は、プロセッサ、マイクロプロセッサ、回路、回路要素(例えば、トランジスタ、抵抗器、キャパシタ、インダクタ等)、集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ロジックゲート、レジスタ、半導体デバイス、チップ、マイクロチップ、チップセット等を含むことができる。
【0032】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」をいうとき、これは、その実施形態に関して説明される特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所に語句「1つの実施形態において」又は「一実施形態において」が登場するが、これらは、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適した方法で組み合わせることができる。
【0033】
用語「非一時的な」は、特許請求の範囲から一時的な伝播信号それ自体(propagating transitory signals per se)のみを除外するものと理解され、一時的伝播信号それ自体のみでない全ての標準的なコンピュータ可読媒体に対する権利を放棄しない。換言すれば、用語「非一時的コンピュータ可読媒体」及び「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」は、米国特許法第101条の特許可能な主題の範囲から外れると、In Re Nuijtenにおいて見出されたタイプの一時的コンピュータ可読媒体のみを排除すると解釈されるべきである。
【0034】
本明細書において使用される用語及び表現は、限定ではなく説明の語として用いられ、そのような用語及び表現の使用において、示され説明される特徴(又はその部分)のいかなる均等物も除外する意図はなく、種々の変更が特許請求の範囲内で可能なことが認識される。したがって、特許請求の範囲は、そのような均等物全てを包含するように意図される。
【0035】
参照による援用
特許、特許出願、特許公報、学術誌、書籍、刊行物、ウェブコンテンツ等の他の文書の参照及び引用が、本開示の全体を通してなされた。全てのかかる文書は、本明細書によりあらゆる目的のためにその全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0036】
均等物
本発明の種々の変更及びそれらの多くの更なる実施形態は、本明細書において示され説明されるものに加えて、本明細書において引用される科学的及び特許文献に対する参照を含む、本文書の全内容から当業者に明らかになるであろう。本明細書の主題は、本発明の実施に適合することができる重要な情報、例示、及び手引きを、その種々の実施形態及びその均等物に含む。
図1
図2
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図9