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特許7408692エチレンプラント蒸気発生回路の機械を駆動する方法、及び一体化されたエチレン・パワープラントシステム
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  • 特許-エチレンプラント蒸気発生回路の機械を駆動する方法、及び一体化されたエチレン・パワープラントシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】エチレンプラント蒸気発生回路の機械を駆動する方法、及び一体化されたエチレン・パワープラントシステム
(51)【国際特許分類】
   F01D 15/08 20060101AFI20231225BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20231225BHJP
   F02C 3/22 20060101ALI20231225BHJP
   F02C 6/00 20060101ALI20231225BHJP
   F02C 6/18 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
F01D15/08 C
F01K23/10 A
F02C3/22
F02C6/00 E
F02C6/18 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021572503
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2020065644
(87)【国際公開番号】W WO2020245370
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】19178729.0
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504191741
【氏名又は名称】テクニップ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】ウード,ピーター
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0305274(US,A1)
【文献】特表2007-522270(JP,A)
【文献】国際公開第98/29653(WO,A1)
【文献】特開昭59-199792(JP,A)
【文献】特開昭62-148591(JP,A)
【文献】特表2017-512278(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3415587(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0081594(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 15/08
F01K 23/10
F02C 3/22
F02C 6/00
F02C 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンプラント蒸気発生回路の機械、例えばプロセス圧縮器を駆動する方法であって、
- 分解炉から高圧蒸気として熱を回収する工程、
- プロセス圧縮器などの機械を駆動するように構成されている少なくとも1つの蒸気タービンに前記高圧蒸気を供給する工程、
- 前記高圧蒸気の少なくとも一部を凝縮器で凝縮する工程、及び
- 凝縮された蒸気をボイラ給水として前記分解炉に送り戻す工程
を有し、
パワープラント回路の廃熱回収ボイラから高圧蒸気として熱を回収する工程、
前記パワープラント回路から前記エチレンプラント蒸気発生回路の少なくとも1つの蒸気タービンに前記高圧蒸気の少なくとも一部を供給する工程、及び
前記エチレンプラント蒸気発生回路の分解炉からの過剰燃料を、補助燃焼のために前記パワープラント回路の廃熱回収ボイラに供給する工程
を更に有する、方法。
【請求項2】
前記廃熱回収ボイラに、前記パワープラント回路の少なくとも1つのガスタービンから排気ガスを供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エチレンプラント蒸気発生回路の分解炉からの過剰燃料を、燃焼のために前記パワープラント回路の少なくとも1つのガスタービンに供給する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのガスタービンは、前記エチレンプラント蒸気発生回路のプロセス圧縮器などの機械を駆動するように構成されている、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
- 前記パワープラント回路の廃熱回収ボイラから、前記パワープラント回路の、発電すべく発電機を駆動するように構成されている少なくとも1つの蒸気タービンに高圧蒸気の少なくとも一部を供給する工程、
- 前記高圧蒸気の少なくとも一部を前記パワープラント回路の凝縮器で凝縮する工程、及び
- 凝縮された蒸気をボイラ給水として前記廃熱回収ボイラに送り戻す工程
を有する、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
エチレンプラント蒸気発生回路と、電力を発生させるように構成されているパワープラント回路とを備えている一体化されたエチレン・パワープラントシステムであって、
前記エチレンプラント蒸気発生回路は、
- 炭化水素供給原料を分解ガスに変換するための分解炉であって、ボイラ給水から高圧蒸気を発生させるように構成されている前記分解炉と、
- 前記高圧蒸気で駆動されるように構成されている少なくとも1つの蒸気タービンと、
- 前記少なくとも1つの蒸気タービンによって駆動されるように構成されている少なくとも1つのプロセス圧縮器と、
- 高圧蒸気の少なくとも一部を凝縮するように構成されている少なくとも1つの凝縮器と、
- 凝縮された蒸気をボイラ給水として前記分解炉に送るように構成されている少なくとも1つのポンプと
を有しており、
前記パワープラント回路は、高圧蒸気として熱を回収するように構成されている廃熱回収ボイラを有しており、
前記エチレン・パワープラントシステムは、前記エチレンプラント蒸気発生回路と前記パワープラント回路との間に第1の連結部を更に備えており、前記第1の連結部は、前記エチレンプラント蒸気発生回路の少なくとも1つの蒸気タービンを駆動すべく前記廃熱回収ボイラから前記少なくとも1つの蒸気タービンに前記高圧蒸気の少なくとも一部を導くように構成されており、
前記エチレン・パワープラントシステムは、前記エチレンプラント蒸気発生回路と前記パワープラント回路との間に第2の連結部を更に備えており、前記第2の連結部は、前記エチレンプラント蒸気発生回路から前記廃熱回収ボイラの少なくとも1つの燃焼器に過剰燃料の少なくとも一部を導くように構成されている、エチレン・パワープラントシステム。
【請求項7】
前記パワープラント回路は少なくとも1つのガスタービンを更に有しており、前記少なくとも1つのガスタービンからの排気ガスが前記廃熱回収ボイラによって回収されるように、前記少なくとも1つのガスタービンは前記廃熱回収ボイラに連結されている、請求項6に記載のエチレン・パワープラントシステム。
【請求項8】
前記エチレンプラント蒸気発生回路と前記パワープラント回路との間に更なる連結部を更に備えており、前記更なる連結部は、燃焼のために前記エチレンプラント蒸気発生回路から前記少なくとも1つのガスタービンに過剰燃料の少なくとも一部を導くように構成されている、請求項7に記載のエチレン・パワープラントシステム。
【請求項9】
前記エチレンプラント蒸気発生回路は、前記パワープラント回路の少なくとも1つのガスタービンによって直接駆動されるように構成されている少なくとも1つのプロセス圧縮器を有している、請求項7又は8に記載のエチレン・パワープラントシステム。
【請求項10】
前記パワープラント回路は少なくとも1つの蒸気タービン及び少なくとも1つの発電機を更に有しており、
前記パワープラント回路は、前記廃熱回収ボイラから前記パワープラント回路の少なくとも1つの蒸気タービンに高圧蒸気の少なくとも一部を供給するように構成されており、
前記少なくとも1つの蒸気タービンは、発電のために前記少なくとも1つの発電機を駆動するように構成されている、請求項6~9のいずれか1つに記載のエチレン・パワープラントシステム。
【請求項11】
前記パワープラント回路は、高圧蒸気の少なくとも一部を凝縮するように構成されている凝縮器と、凝縮された蒸気をボイラ給水として前記廃熱回収ボイラに送り戻すように構成されているポンプとを更に有している、請求項10に記載のエチレン・パワープラントシステム。
【請求項12】
前記分解炉は、放射部、対流部及び冷却部を有する高効率分解炉であり、
前記冷却部は、供給原料を前記放射部に送る前に予熱するように構成されている少なくとも1つの移送ライン交換器を有しており、
前記対流部は、煙道ガスから飽和蒸気を発生させるように構成されているボイラコイルを有しており、前記ボイラコイルは、好ましくは前記対流部の底部に設けられている、請求項6~11のいずれか1つに記載のエチレン・パワープラントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンプラント蒸気発生回路の機械、例えばプロセス圧縮器を駆動する方法、及び一体化されたエチレン・パワープラントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエチレンプラント回路、特に蒸気発生回路は、例えば米国特許第4479869 号明細書に開示されているような少なくとも1つ、一般的には6以上の従来の分解炉システムを備えている。このような分解炉システムは一般に対流部を有しており、対流部内で炭化水素供給原料を予熱する及び/又は部分的に蒸発させ、希釈蒸気と混合して供給原料-希釈蒸気の混合物を供給する。
【0003】
この分解炉システムは、少なくとも1つの放射コイルを火室に有する放射部を更に有しており、放射部内で、対流部からの供給原料-希釈蒸気の混合物を熱分解によって高温で生成物成分及び副生成物成分に変換する。
【0004】
この分解炉システムは、少なくとも1つの急冷交換器、例えば移送ライン交換器を有する冷却部を更に有しており、冷却部は、熱分解副反応を止めて生成物に有利な反応の平衡を維持するために、放射部からの生成物又は分解ガスを迅速に急冷するように構成されている。移送ライン交換器からの熱を高圧蒸気の形態で回収することができる。そのため、分解炉内でボイラ給水から発生するこの高圧蒸気を発電のために使用してもよい。
【0005】
このため、蒸気発生回路は、少なくとも1つ、好ましくは複数の蒸気タービン、及び前記蒸気タービンによって駆動される様々な種類の機械、例えば圧縮器及びポンプを更に備えている。これらの蒸気タービンは様々なタイプが可能であり、例えば分解ガス圧縮器又はプロピレン若しくはエチレンの冷凍圧縮器などの大型機械のための、例えば凝縮蒸気タービン、又は、例えば比較的小型の機械のための背圧タービンが可能である。
【0006】
蒸気発生回路は、一又は複数の凝縮器、例えば真空状態で通常作動する表面凝縮器と、凝縮された蒸気を収集して、ボイラ給水として分解炉システムに送り戻すように構成されている少なくとも1つのボイラ給水ポンプとを更に備えている。この蒸気発生回路は、凝縮器及びボイラ給水ポンプ間に凝縮物ポンプ及び脱気器を更に備えてもよく、その場合、凝縮物を補給水と混合し蒸気と共に揮散させ、凝縮物及び補給水から空気を除去する。その後、脱気器で収集されたボイラ給水を分解炉に送ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような従来の分解炉の代わりに、高効率分解炉が開発されており、分解炉の熱回収機構を変更することにより、火室効率を大幅に高めて燃料消費量及びCO2 排出量を減らすことができる。このような高効率分解炉のための様々な種類の熱回収プロセス、例えば、空気予熱、完全な酸素-燃料燃焼又は部分的な酸素-燃料燃焼を伴うプロセスが、例えば欧州特許出願公開第3415587 号明細書に開示されている。対流部の代わりに一次移送ライン交換器で供給原料-希釈蒸気混合物を加熱して二次移送ライン交換器で高圧蒸気を発生させることに加えて、高効率分解炉の変更された熱回収プロセスは、高圧蒸気過熱バンクの上流側で対流部に設けられたボイラコイルで高圧蒸気を発生させるように構成されている。ボイラコイルは、分解ガスの代わりに煙道ガスを使用して高圧蒸気を発生させて、過熱バンクを高温から保護する。
【0008】
しかしながら、このような高効率分解炉は、加熱工程を対流部ではなく一次移送ライン交換器で行って、供給原料-希釈蒸気混合物を最適化された放射コイル入口温度に過熱することが依然として可能である一方、高圧蒸気の発生を著しく低下させる場合もある。高効率分解炉は、例えば、従来の分解炉で発生する蒸気のおよそ1/3 しか発生させない場合があり、この量は、蒸気タービンがプロセス圧縮器、例えば分解ガス圧縮器又はプロピレン若しくはエチレンの冷凍圧縮器を駆動するのに十分ではない場合がある。高圧蒸気の発生が低下することにより、例えば機械の一部しか駆動できないため、一又は複数の圧縮器を電気モータによって駆動する必要があるかもしれず、そのため、必要な電力を、エチレンプラントの近くに設けられ得るパワープラントによって供給する場合がある。或いは、必要な電力を、風力タービン及び/又はソーラーパネルなどの再生可能エネルギーによって更に供給する場合がある。
【0009】
しかしながら、高出力可変速駆動モータは、例えば年間1500キロトン以上のエチレンを発生させる世界規模のエチレンプラントには、必要な規模の点で使用できない場合がある。これらのプラントは、最大規模の圧縮器のために、例えば60MWを超える最大可能出力を有する電気駆動部を必要とする場合がある。これは、市場で実際に入手可能な電気駆動部の限界を押し上げることになる。加えて、高効率分解炉は、燃料、例えばメタン及び水素を更に節約することができ、このため、輸出する必要がある燃料の量が増加する。水素は、例えば水素化に使用される場合があるが、メタンは一般に燃焼し、このプロセスはCO2 を依然として大気中に放出する。
【0010】
本発明の目的は、前述した問題の一又は複数を解決又は緩和することである。特に、本発明は、発電電力の二酸化炭素排出量、つまり、発電電力の1kW当たりに放出されるCO2 の量を削減することができる、エチレンプラント回路の機械を駆動する改善された方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明の第1の態様によれば、請求項1の特徴によって特徴付けられている、エチレンプラント蒸気発生回路の機械、例えばプロセス圧縮器を駆動する方法を提供する。特に、機械を駆動する方法は、分解炉から高圧蒸気として熱を回収する工程、プロセス圧縮器などの機械を駆動するように構成されている少なくとも1つの蒸気タービンに前記高圧蒸気を供給する工程、高圧蒸気の少なくとも一部を凝縮器で凝縮する工程、及び凝縮された蒸気をボイラ給水として分解炉に送り戻す工程を有する。
【0012】
本方法は、パワープラント回路の廃熱回収ボイラから高圧蒸気として熱を回収する工程と、発明的な方法では、パワープラント回路からエチレンプラント蒸気発生回路の少なくとも1つの蒸気タービンに高圧蒸気の少なくとも一部を供給する工程とを更に有する。パワープラント回路からエチレンプラント蒸気発生回路の少なくとも1つの蒸気タービンに高圧蒸気を供給することにより、追加の電気モータの必要なく少なくとも1つの蒸気タービンがプロセス圧縮器などの機械を駆動することができるように、高効率分解炉の使用によるエチレンプラント蒸気発生回路における高圧蒸気の発生の低下が補償され得る。
【0013】
更に、エチレンプラント蒸気発生回路の分解炉からの過剰燃料を、補助燃焼のためにパワープラント回路の廃熱回収ボイラに供給する。上述したような高効率炉では、火室に供給される全ての燃料が使用されるわけではない。高効率炉の変更された熱回収機構のため、燃料の最大30%を節約することができる。この過剰燃料は高効率分解炉から出る分解ガスに存在し、そのため、燃料が回収され得るように、例えば低温蒸留によって分解ガスから分離されてもよい。その後、回収されたこの過剰燃料は、廃熱回収ボイラ内の温度を上昇させるべく更なる燃焼のためにパワープラント回路の廃熱回収ボイラに供給されてもよい。過剰燃料は、例えばメタンを含んでもよい。メタンの燃焼により、CO2 が大気中に放出される。しかしながら、廃熱回収ボイラ内の燃焼はパワープラント回路の一部であるため、燃焼の熱を電力に変換する効率を高めることにより、ある量のメタンによって発生する電力の量を大幅に増加させることができ、これにより、発生する電力の二酸化炭素排出量、つまり、発生する電力の1kW当たりに放出されるCO2 の量を削減することができる。
【0014】
廃熱回収ボイラに、好ましくはパワープラント回路の少なくとも1つのガスタービンから排気ガスを供給してもよい。パワープラント回路の少なくとも1つのガスタービンは、例えば燃焼室及び空気圧縮器を有してもよい。空気が、空気圧縮器を介して燃焼室に供給されてもよく、燃料ガスが更に燃焼室に供給されてもよい。過剰な空気を含む煙道ガス又は排気ガスが、比較的高い温度でガスタービンから出ることができ、廃熱回収ボイラに送られてもよい。
【0015】
エチレンプラント蒸気発生回路の分解炉からの過剰燃料を、燃焼のためにパワープラント回路のガスタービンに供給してもよいことが有利である。上記に説明したように、過剰燃料は高効率分解炉から出る分解ガスに存在してもよく、そのため、燃料が回収され得るように、例えば低温蒸留によって分解ガスから分離されてもよい。その後、回収されたこの過剰燃料を、パワープラント回路の廃熱回収ボイラだけでなく、燃焼のためにパワープラント回路のガスタービンにも、或いはガスタービンに供給してもよく、その結果、本方法の二酸化炭素排出量が更に削減される。
【0016】
パワープラント回路の一部である少なくとも1つのガスタービンは、好ましくはエチレンプラント蒸気発生回路のプロセス圧縮器などの機械を駆動するように構成されてもよい。上述した特徴の全て、特にパワープラント回路の廃熱回収ボイラから蒸気発生回路の少なくとも1つの蒸気タービンに高圧蒸気を供給して、過剰燃料を火室からパワープラント回路のガスタービンの燃焼室及びパワープラント回路の廃熱回収ボイラに供給し、パワープラント回路のガスタービンによりエチレンプラント蒸気発生回路のプロセス圧縮器を駆動する特徴により、エチレンプラント蒸気発生回路とパワープラント回路との間に全ての相互接続部分を形成することができ、パワープラント回路と組み合わせてエチレンプラント蒸気発生回路の機械、例えばプロセス圧縮器を駆動する方法を提供することができ、このため、先行技術の方法及び回路に対して約50%より多い電力を発生させて二酸化炭素排出量をおよそ1/3 削減することができる。
【0017】
本方法は、パワープラント回路の廃熱回収ボイラから、パワープラント回路の、発電すべく発電機を駆動するように構成されている少なくとも1つの蒸気タービンに高圧蒸気の少なくとも一部を供給する工程、高圧蒸気の少なくとも一部をパワープラント回路の凝縮器で凝縮する工程、及び、凝縮された蒸気をボイラ給水として廃熱回収ボイラに送り戻す工程を更に有してもよい。
【0018】
本方法は、高効率分解炉を有するエチレンプラント蒸気発生回路に特に適し得る。火室効率は、吸熱反応である熱分解により炭化水素供給原料を分解ガスに変換するために少なくとも1つの放射コイルに吸収される熱と、燃焼ゾーンでの燃焼プロセスによって放出される熱との、25℃の低位発熱量に基づく比として定義され得る。この定義は、API 規格560 (Fired Heaters for General Refinery Service)で定義されているような燃料効率3.25の公式に相当する。この効率が高いほど、燃料消費量は少なくなるが、対流部で予熱する供給原料に利用可能な熱も下げる。高効率分解炉では、火室は、火室効率が40%より高く、好ましくは45%より高く、より好ましくは48%より高いように構成され得る。従来の分解炉の通常の火室効率は約40%である。この火室効率を超える場合、煙道ガスで利用可能な熱が不十分であるので、供給原料を最適温度まで加熱することができず、火室効率を約40%から約48%に高めることにより、対流部で利用可能な熱の割合を約50~55%から約42~47%に下げる。高効率分解炉は、対流部での熱の利用可能性のこの低下に対処することができる。火室効率を約40%から約48%に高めることにより、燃料の約20%を節約することができる。
【0019】
高効率分解炉で炭化水素供給原料を分解するための熱回収機構の変更例は、第1の供給原料予熱工程及び第2の供給原料予熱工程を有し得る。第1の供給原料予熱工程では、炭化水素供給原料を分解炉の高温の煙道ガスによって予熱し、第2の供給原料予熱工程では、炭化水素供給原料を分解炉の放射部に送る前に、移送ライン交換器を使用して分解炉の分解ガスの廃熱によって炭化水素供給原料を更に予熱する。ボイラ水を分解炉の蒸気ドラムから分解炉の対流部のボイラコイルに供給してもよい。ボイラ水を高温の煙道ガスによって加熱してもよく、好ましくは蒸発させてもよく、水及び蒸気の混合物を前記蒸気ドラムに戻してもよい。このようにして、放射部に送る前に供給原料の最適温度に達するために排出物の熱を供給原料の予熱に部分的に流用する一方、加えて高圧蒸気を発生させるために煙道ガスの熱を流用する。より多くの熱を、飽和高圧蒸気の発生に流用するより供給原料の加熱に流用することができるため、供給原料の加熱を高めるのに有利になるように高圧蒸気の発生が低下し得る。
【0020】
高圧蒸気を、二次移送ライン交換器を使用して分解炉の分解ガスの廃熱により発生させてもよい。火室効率、ひいては冷却部の有効熱量に応じて、高圧蒸気を発生させるように構成されている二次移送ライン交換器は、放射部からの分解ガスを更に冷却すべく主移送ライン交換器の後に直列に配置され得る。主移送ライン交換器は、供給原料を放射部に送る前に加熱するように構成されている一方、二次移送ライン交換器はボイラ水を部分的に蒸発させるように構成され得る。
【0021】
本発明の更なる態様によれば、請求項6の特徴によって特徴付けられている、一体化されたエチレン・パワープラントシステムを提供する。このようなシステムは、前述した利点の一又は複数を有し得る。
【0022】
本発明を、例示的な実施形態の図面を参照して更に説明する。対応する要素は対応する参照符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】エチレンプラント蒸気発生回路及びパワープラント回路を示す概略図である。
図2】本発明に係る一体化されたエチレン・パワープラントシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、エチレンプラント蒸気発生回路及びパワープラント回路の概略図である。エチレンプラント蒸気発生回路1 は、炭化水素供給原料を分解ガスに変換するための分解炉3 を備えている。分解炉3 は、ボイラ給水5 から高圧蒸気4 を発生させるように構成されている。
【0025】
蒸気発生回路1 は、前記高圧蒸気4 で駆動されるように構成されている少なくとも1つの蒸気タービン6 と、少なくとも1つの蒸気タービン6 によって駆動されるように構成されている少なくとも1つのプロセス圧縮器7 、例えば分解ガス圧縮器、プロピレン冷凍圧縮器、エチレン冷凍圧縮器又は他の圧縮器とを更に備えている。
【0026】
蒸気発生回路1 は、高圧蒸気4 の少なくとも一部を凝縮するように構成されている少なくとも1つの凝縮器8 と、凝縮された蒸気をボイラ給水として分解炉に送るように構成されている少なくとも1つのポンプ9 とを更に備えている。凝縮器8 は、例えば真空下で作動する表面凝縮器、又は中圧凝縮器、又は当業者に知られているあらゆる他の凝縮器であってもよい。
【0027】
従来の分解炉の場合、蒸気タービン6 がプロセス圧縮器などの機械を駆動するのに十分な高圧蒸気4 を発生させることができる。しかしながら、分解炉3 が、欧州特許出願公開第3415587 号明細書に開示されて図示されているような、熱回収機構が変更された低排出分解炉である場合、低排出分解炉は、蒸気タービン6 が少なくとも1つの圧縮器7 を駆動するために必要な十分な量の高圧蒸気4 を発生させることができない。そのため、エチレンプラントのこのようなプロセス圧縮器7 の一又は複数を電気モータ10によって駆動する必要があるかもしれない。そのため、前記電気モータ10を駆動するための電力をパワープラント回路2 によって供給する場合がある。
【0028】
従来のパワープラント回路2 は、空気圧縮器13と共に燃焼室12を有する少なくとも1つのガスタービン11を備えてもよい。空気14が、空気圧縮器13を介して燃焼室12に供給されてもよく、燃料ガス15が燃焼室12に更に供給されてもよい。加圧された燃焼室12内で、燃料ガス15を比較的多い過剰な空気を用いて燃焼することができる。前記燃焼によって発生する煙道ガスを、ガスタービン11、例えば背圧タービンのブレードにより周囲圧力まで下げることができる。これらのブレードに作用する力を使用して発電機16を駆動してもよく、発電機16は、電気機械を駆動すべく、例えばエチレンプラント内のプロセス圧縮器を駆動するように構成されている電気モータ10を駆動すべく電力を発生させるように構成されている。過剰な空気を含む煙道ガス又は排気ガス17は、比較的高い温度でガスタービン11から出ることができ、廃熱回収ボイラ18に送られてもよい。
【0029】
前記廃熱回収ボイラ18は追加の燃焼器を有してもよく、追加の燃焼器内で燃料19を燃焼して過剰な空気を減らし、排気ガス17の温度を上昇させてもよい。廃熱回収ボイラ18で回収される熱を使用して、高圧蒸気20を発生させることができ、この高圧蒸気を使用して蒸気タービン21、例えば凝縮蒸気タービンを駆動する。そのため、前記蒸気タービン21は、ガスタービン11によって駆動される発電機16による発電と並行して発電すべく発電機22を駆動することができる。蒸気タービン21により駆動される発電機22によって発生する電力は、電力網に送られることができ、又は、エチレンパワープラント回路の電気機械、例えば電気モータ10を駆動するために更に使用されてもよい。凝縮器23、例えば蒸気タービン21の表面凝縮器内で蒸気を真空下で凝縮してもよい。凝縮された蒸気は任意に、好ましくは凝縮物ポンプを使用して脱気器にまず送られてもよく(この工程は図示されていない)、その後、パワープラント回路を閉じるべく、ボイラ給水25としてボイラ給水ポンプ24によって廃熱回収ボイラ18に送り戻されることができる。
【0030】
図2は、本発明に係る一体化されたエチレン・パワープラントシステムを示す概略図である。このような一体化されたシステムは、プロセス圧縮器7 などの少なくとも1つの機械を駆動するためにボイラ給水5 から高圧蒸気4 を発生させるように構成されているエチレンプラント蒸気発生回路1'と、電力を発生させるように構成されているパワープラント回路2'とを備えている。
【0031】
エチレンプラント蒸気発生回路は、炭化水素供給原料を分解ガスに変換するための分解炉3 、特に高効率分解炉を有している。分解炉3 は、ボイラ給水5 から高圧蒸気4 を発生させるように構成されている。
【0032】
エチレンプラント蒸気発生回路は、前記高圧蒸気4 で駆動されるように構成されている少なくとも1つの蒸気タービン6 と、少なくとも1つの蒸気タービン6 によって駆動されるように構成されている少なくとも1つのプロセス圧縮器7 と、高圧蒸気4 の少なくとも一部を凝縮するように構成されている少なくとも1つの凝縮器8 、例えば中圧凝縮器又は真空下で作動する凝縮器と、凝縮された蒸気をボイラ給水5 として分解炉3 に送るように構成されてループを閉じる少なくとも1つのポンプ9 とを更に有している。
【0033】
パワープラント回路2'は、高圧蒸気20として熱を回収するように構成されている廃熱回収ボイラ18を有している。
【0034】
発明的な方法では、システムは、エチレンプラント蒸気発生回路1'とパワープラント回路2'との間に第1の連結部27を更に備えており、第1の連結部27は、前記少なくとも1つの蒸気タービン6 を駆動すべく廃熱回収ボイラ18からエチレンプラント蒸気発生回路1 の少なくとも1つの蒸気タービン6 に高圧蒸気20の少なくとも一部を導くように構成されている。
【0035】
図1のパワープラント回路2 と同様に、一体化されたシステムのパワープラント回路2'は、少なくとも1つの蒸気タービン21及び少なくとも1つの発電機22を更に有することができる。パワープラント回路2'は、廃熱回収ボイラ18からパワープラント回路2'の少なくとも1つの蒸気タービン21に高圧蒸気20の少なくとも一部を供給するように構成されてもよく、少なくとも1つの蒸気タービン21は、発電のために少なくとも1つの発電機22を駆動するように構成されてもよい。
【0036】
パワープラント回路2'は、高圧蒸気20の少なくとも一部を凝縮するように構成されている凝縮器23と、凝縮された前記蒸気をボイラ給水25として廃熱回収ボイラ18に送り戻すように構成されているポンプ24とを更に有することができる。パワープラント回路2'は少なくとも1つのガスタービン11を更に有することができ、少なくとも1つのガスタービン11からの排気ガス17が廃熱回収ボイラ18によって回収されるように、少なくとも1つのガスタービン11は廃熱回収ボイラ18に連結される。
【0037】
発明的な方法では、排気ガス17の温度を上昇させるべく廃熱回収ボイラ18内における更なる燃焼のための燃料がエチレンプラント蒸気発生回路1'とパワープラント回路2'との間で第2の連結部(不図示)を介して供給されて、過剰燃料26の少なくとも一部をエチレンプラント蒸気発生回路1'から廃熱回収ボイラ18の少なくとも1つの燃焼器に導くことができる。特に、エチレンプラント蒸気発生回路1'の高効率分解炉3 から放出される分解ガスは、例えば低温蒸留によって分解ガスから分離され得る燃料ガスを依然として含んでもよい。そのため、エチレンプラント回路からの前記過剰燃料26は、廃熱回収ボイラ18の少なくとも1つの燃焼器に供給され得ることが有利である。
【0038】
エチレンプラント蒸気発生回路1'とパワープラント回路2'との間の更なる連結部(不図示)が、燃焼のためにエチレンプラント蒸気発生回路1'から少なくとも1つのガスタービン11、特にガスタービン11の燃焼室12に過剰燃料26の少なくとも一部を導くように構成され得る。
【0039】
エチレンプラント蒸気発生回路1'は少なくとも1つのプロセス圧縮器7'を更に有してもよく、少なくとも1つのプロセス圧縮器7'は、蒸気タービン6 又は電気モータ10によって駆動されてもよい図1の少なくとも1つのプロセス圧縮器7 とは対照的に、パワープラント回路2'の少なくとも1つのガスタービン11によって直接駆動されるように構成される。
【0040】
本願に繋がるプロジェクトは、助成金協定第723706号に基づき欧州連合ホライズンH2020 プログラム(H2020-SPIRE-2016)からの資金を受けている。
【0041】
明瞭化及び簡潔な説明のために、特徴は、同一の実施形態又は個別の実施形態の一部として本明細書に記載されているが、本発明の範囲は、記載された特徴の全て又は一部の組み合わせを有する実施形態を包含し得ることが認識される。示された実施形態は、異なっていると記載されている例とは別に、同一の要素又は同様の要素を有すると理解され得る。
【0042】
特許請求の範囲では、括弧内のあらゆる参照符号は、請求項を限定すると解釈されないものとする。「備えている」という文言は、請求項に記載されている特徴又は工程以外の他の特徴又は工程の存在を除外しない。更に、「1つの(a)」及び「1つの(an)」という文言は、「1つのみ」に限定すると解釈されないものとするが、代わりに「少なくとも1つ」を意味すべく使用され、複数を除外しない。ある手段が互いに異なる請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが利点のために使用され得ないことを示さない。多くの変形例が当業者には明らかである。全ての変形例は、以下の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲内に含まれると理解される。
【符号の説明】
【0043】
1,1’ エチレンプラント蒸気発生回路
2,2’ パワープラント回路
3 分解炉
4 高圧蒸気
5 ボイラ給水
6 蒸気タービン
7,7’ プロセス圧縮器
8 凝縮器
9 ポンプ
10 電気モータ
11 ガスタービン
12 燃焼室
13 圧縮器
14 空気
15 燃料
16 発電機
17 排気ガス
18 廃熱回収ボイラ
19 燃料
20 高圧蒸気
21 蒸気タービン
22 発電機
23 凝縮器
24 ポンプ
25 ボイラ給水
26 過剰燃料
27 第1の連結部
図1
図2