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特許7408706ゴム架橋体用親水化剤、ゴム組成物、ゴム架橋体及び成形物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ゴム架橋体用親水化剤、ゴム組成物、ゴム架橋体及び成形物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20231225BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20231225BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/42
C09K3/00 R
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022032130
(22)【出願日】2022-03-02
(65)【公開番号】P2022136992
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2021036409
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政義
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-048705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0096957(US,A1)
【文献】特開平05-027630(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194617(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C09K,B29D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性基及び親水性基(x)を有する化合物(A)を含有するゴム架橋体用親水化剤であって、
前記親水性基(x)がアニオン性基及びアニオン性基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記アニオン性基がスルホン酸基であり、
前記アニオン性基の塩が前記アニオン性基の有するプロトンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びオニウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオンで置換された塩であり、
前記化合物(A)がアルキルアリルスルホコハク酸(塩)であり、
前記親水化剤はゴム組成物を架橋させてなるゴム架橋体用の親水化剤であり、
前記ゴム組成物は、前記親水化剤と、原料ゴムと、加硫剤とを含有し、
前記原料ゴムはJIS K 6397:2005で規定するRグループに属するものである、ゴム架橋体用親水化剤。
【請求項2】
前記化合物(A)が疎水性基(z)を有し、該疎水性基(z)が炭素数6~40の炭化水素基である請求項1に記載のゴム架橋体用親水化剤。
【請求項3】
前記化合物(A)中の疎水性基(z)の含有量が、化合物(A)の重量を基準として、10~90重量%である請求項2に記載のゴム架橋体用親水化剤。
【請求項4】
前記化合物(A)中の親水性基(x)の含有量が、化合物(A)の重量を基準として、10~90重量%である請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム架橋体用親水化剤。
【請求項5】
前記化合物(A)中の親水性基(x)と疎水性基(z)の重量比(x/z)が10/90~90/10である請求項2~4のいずれか1項に記載のゴム架橋体用親水化剤。
【請求項6】
更に親水性基(y)及び炭素数6~40の炭化水素基を有しラジカル重合性基を有さない化合物(B)を含有し、前記親水性基(y)がアニオン性基の塩、カチオン性基の塩、水酸基及びオキシエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム架橋体用親水化剤。
【請求項7】
前記化合物(A)と前記化合物(B)との重量比(A/B)が10/90~99.9/0.1である請求項6に記載のゴム架橋体用親水化剤。
【請求項8】
前記化合物(B)中の親水性基(y)が、化合物(B)の重量を基準として10~80重量%である請求項6又は7に記載のゴム架橋体用親水化剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のゴム架橋体用親水化剤と、原料ゴムと、加硫剤とを含有するゴム組成物。
【請求項10】
前記ゴム架橋体用親水化剤の含有量が前記原料ゴムの重量に基づいて1~50重量%である請求項9に記載のゴム組成物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のゴム組成物を架橋させてなるゴム架橋体。
【請求項12】
請求項11に記載のゴム架橋体から形成される成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム架橋体用親水化剤、ゴム組成物、ゴム架橋体及び成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムに親水性を付与する方法としては、ゴムにポリエチレングリコールエステルを配合する方法(特許文献1)、有機過酸化物を配合した未加硫ゴムの表面に親水性のラジカル重合性モノマーを接触させ、ゴムの表面に親水性のラジカル重合性モノマーをグラフト重合する方法(特許文献2)が知られている。
しかしながら、特許文献1の方法では、ポリエチレングリコールエステルがブリードアウトしてしまうため経時安定性が低く、さらにゴム表面を洗浄すると親水性が低下する問題がある。また、特許文献2の方法では、処理工程が複雑であり、処理に時間がかかる問題がある。さらに、表面しか親水性が付与されないため、ゴムが削れた際に親水性が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-053160号公報
【文献】特開平09-067457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複雑な処理工程を経ずに親水性の持続性の高いゴム架橋体及び成形体を得ることができるゴム架橋体用親水化剤及びゴム組成物並びにこれを用いたゴム架橋体及びゴム成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ラジカル重合性基及び親水性基(x)を有する化合物(A)を含有するゴム架橋体用親水化剤であって、前記親水性基(x)がアニオン性基、アニオン性基の塩、カチオン性基の塩、水酸基及びオキシエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記アニオン性基の塩が前記アニオン性基の有するプロトンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びオニウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオンで置換された塩であり、前記カチオン性基の塩が第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基にプロトンが結合したカチオンと対アニオンとの塩、並びに第4級アンモニウム基と対アニオンとの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であるゴム架橋体用親水化剤;前記ゴム架橋体用親水化剤と、原料ゴムと、加硫剤とを含有するゴム組成物;前記ゴム組成物を架橋させてなるゴム架橋体;前記ゴム架橋体から形成される成形物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のゴム架橋体用親水化剤及びゴム組成物を用いれば、複雑な処理工程を経ずに親水性の持続性の高いゴム架橋体及び成形体を得ることができるという効果を奏する。
なお、本発明において、「親水性の持続性」とは、ゴム架橋体及び成形体を繰り返し洗浄したり、表面を研磨しても、ゴム架橋体及び成形体の親水性が低下しにくいことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のゴム架橋体用親水化剤は、ラジカル重合性基及び親水性基(x)を有する化合物(A)を含有するゴム架橋体用親水化剤であって、前記親水性基(x)がアニオン性基、アニオン性基の塩、カチオン性基の塩、水酸基及びオキシエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記アニオン性基の塩が前記アニオン性基の有するプロトンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びオニウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオンで置換された塩であり、前記カチオン性基の塩が第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基にプロトンが結合したカチオンと対アニオンとの塩、並びに第4級アンモニウム基と対アニオンとの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であるゴム架橋体用親水化剤である。
なお、本発明において「親水化剤」とは、水に対する濡れ性を向上させることができる剤を意味する。
【0008】
<ラジカル重合性基及び親水性基(x)を有する化合物(A)>
ラジカル重合性基及び親水性基(x)を有する化合物(A)において、「ラジカル重合性基」とは、ラジカル重合し得る炭素-炭素二重結合を意味する。化合物(A)としては、例えばラジカル重合性のビニル基(HC=CH-)、ビニリデン基及びビニレン基(-HC=CH-)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する化合物が挙げられる。化合物(A)としてさらに具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基、(無水)マレイン酸又はフマル酸のモノ又はジエステル化物における炭素-炭素二重結合{―OC(O)HC=CH-C(O)O―}、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、スチリル基等を有する化合物が挙げられる。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を、「(メタ)アクリル樹脂」とは「アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基」を、「(メタ)アクリロイロキシ基」とは「アクリロイロキシ基及び/又はメタクリロイロキシ基」を意味する。
化合物(A)1分子中の前記ラジカル重合性基の数は、成形性等の観点から、1~2個が好ましい。
【0009】
化合物(A)の有する親水性基(x)は、アニオン性基、アニオン性基の塩、カチオン性基の塩、水酸基及びオキシエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
アニオン性基は、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基及びリン酸エステル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である。
【0010】
アニオン性基の塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩及びオニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記アニオン性基の有するプロトンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びオニウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオンで置換された塩である。
カチオンは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アニオン性基の塩としては、親水性の観点から、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、更に好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩である。
【0011】
オニウムカチオンとしては、下記一般式(1)~(4)で表されるカチオン等が挙げられる。
【化1】
[一般式(1)中、R1~R4は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~20のアルコキシ基、及びスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1~20の鎖状炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、またR1~R4の2つの基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zは、窒素原子、又はリン原子を表す。]
【化2】
[一般式(2)中、R5~R7は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~20のアルコキシ基、及びスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1~20の鎖状炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、またR5~R7の2つの基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。]
【化3】
[一般式(3)中、R8は、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子を表す。R9~R12は、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子を表す。R9~R12の一部または全てが相互に結合して環を形成していてもよい。]
【化4】
[一般式(4)中、R13は、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子を表す。R14~R17は、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子を表す。R14~R17の一部または全てが相互に結合して環を形成していてもよい。]
【0012】
上記一般式(1)~(4)で表されるカチオンとしては、下記のもの等が挙げられる。
一般式(1)で表されるカチオン:
例えば、テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、イソプロピルトリメチルアンモニム、ブチルトリメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、イソプロピルトリエチルアンモニム、ブチルトリエチルアンモニウム、メチルトリプロピルアンモニウム、エチルトリプロピルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ブチルトリプロピルアンモニウム、メチルトリブチルアンモニウム、エチルトリブチルアンモニウム、プロピルトリブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、ジメチルジプロピルアンモニウム、ジイソプロピルジメチルアンモニウム、ジブチルジメチルアンモニウム、ジエチルジプロピルアンモニウム、ジエチルジイソプロピルアンモニウム、ジエチルジブチルアンモニウム、エチルメチルプロピルブチルアンモニウム、エチルメチルイソプロピルブチルアンモニウム、エチルメチルジプロピルアンモニウム、エチルメチルジイソプロピルアンモニウム、エチルメチルジブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0013】
一般式(1)で表されるカチオン(環構造):
例えば、1,1-ジメチルピロリジニウム、1-エチル-1-メチルピロリジニウム、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム、1ブチル-1-メチルピロリジニウム、1,1-ジエチルピロリジニウム、1エチル-1-プロピルピロリジニウム、1-ブチル-1-エチルピロリジニウム、1,1-ジプロピルピロリジニウム、1-ブチル-1-プロピルピロリジニウム、1,1-ジブチルピロリジニウム;1,1-ジメチルピペリジニウム、1-エチル-1-メチルピペリジニウム、1-メチル-1-プロピルピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム、1,1-ジエチルピペリジニウム、1-エチル-1-プロピルピペリジニウム、1-ブチル-1-エチルピペリジニウム、1,1-ジプロピルピペリジニウム、1-ブチル-1-プロピルピペリジニウム、1,1-ジブチルピペリジニウム等が挙げられる。
【0014】
一般式(1)で表されるカチオン(ホスホニウム):
例えば、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリブチルエチルホスホニウム、トリメチルデシルホスホニウム等が挙げられる。
【0015】
一般式(2)で表されるカチオン:
例えば、トリメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム、トリブチルスルホニウム、トリヘキシルスルホニウム、ジエチルメチルスルホニウム、ジブチルエチルスルホニウム、ジメチルデシルスルホニウム等が挙げられる。
【0016】
一般式(3)で表されるカチオン:
例えば、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジエチルイミダゾリウム、1,3-ジプロピルイミダゾリウム、1,3-ジブチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-エチル-3-ブチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-プロピルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、2-エチル-1,3-ジメチルイミダゾリウム、1,2,3-トリエチルイミダゾリウム等が挙げられる。
【0017】
一般式(4)で表されるカチオン:
例えば、1-メチルピラゾリウム、1,2-ジメチルピラゾリウム、1-エチル-2-メチルピラゾリニウム、1,2,3-トリメチルピラゾリウム、1,2,4-トリメチルピラゾリウム、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウム、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウム、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウム等が挙げられる。
【0018】
カチオン性基の塩としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基にプロトンが結合したカチオンと対アニオンとの塩、第4級アンモニウム基と対アニオンとの塩が含まれる。
対アニオンとしては、下記のもののアニオン等が挙げられる。
(1)無機酸、例えばハロゲン化水素酸(例えばHF、HCl、HBr及びHI)、硫酸、硝酸及びリン酸等;
(2)硫酸エステル、例えば炭素数(以下において「C」と略記することがある)1~30の硫酸エステル[例えばアルキルもしくはアルケニル硫酸(例えばメチル硫酸、エチル硫酸、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、パルミチル硫酸、ステアリル硫酸、オレイル硫酸、リノール硫酸およびセチル硫酸)および高級アルコール(C10~20)のエチレンオキサイド(以下、EOと略記)1~10モル付加物の硫酸エステル]等;
【0019】
(3)スルホン酸、例えばC1~30のスルホン酸〔例えばアルキル(C1~10)スルホン酸(例えばメチルスルホン酸およびエチルスルホン酸)、アルキルアリール(C7~30)スルホン酸[アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸およびアルキルナフタレンスルホン酸]、高級アルキル(C10~30)スルホン酸、高級脂肪酸エステル(C10~30)スルホン酸、高級アルコールエーテル(C10~30)スルホン酸、スルホコハク酸エステル、高級脂肪酸アミド(C10~20)のアルキル(C1~10)スルホン酸、アルキル(C1~10)ジフェニルエーテルスルホン酸およびアルキル(C1~10)ベンズイミダゾールスルホン酸〕等;
【0020】
(4)リン酸エステル、例えばC1~30のリン酸エステル〔例えばモノ-およびジアルキル(アルキルC1~30)リン酸エステル、モノ-およびジアルケニル(アルケニルC1~30)リン酸エステル、(ポリ)オキシアルキレン[EO1~14モル付加および/またはプロピレンオキサイド(以下、POと略記)1~9モル付加]アルキル(C1~30)エーテルリン酸エステル、糖リン酸エステル(例えばグルコース-リン酸エステル、グルコースアミンリン酸エステル、マルトース-1-リン酸および蔗糖リン酸エステル)およびグリセリンリン酸(例えばホスファチジン酸)等;
【0021】
(5)ホスホン酸、例えばC1~30のホスホン酸〔例えばアルキル(C1~10)ホスホン酸(例えばメチルホスホン酸およびエチルホスホン酸)、アルキルアリール(C7~30)ホスホン酸(例えばアルキルベンゼンホスホン酸およびアルキルフェノールホスホン酸)、高級アルキル(C10~30)ホスホン酸、高級脂肪酸エステル(C10~30)のホスホン酸、高級アルコールエーテル(C10~30)のホスホン酸、高級脂肪酸アミド(C10~20)のアルキル(C1~10)ホスホン酸、アルキル(C1~10)ジフェニルエーテルホスホン酸およびアルキル(C1~10)ベンズイミダゾールホスホン酸〕
(6)カルボン酸、例えばC1~30のカルボン酸、例えば脂肪族[C1~30のモノ-およびジカルボン酸、例えばギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸およびアジピン酸];脂環式[C4~30のモノ-およびジカルボン酸、例えばシクロペンタンカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸およびシクロヘキサンジカルボン酸];および芳香(脂肪)族[C7~30のモノ-およびジカルボン酸、例えば安息香酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸]等;
対アニオンとしては、親水性の観点から、無機酸及びスルホン酸から生じるアニオンが好ましく、更に好ましくはハロゲン化水素酸から生じるアニオンである。
【0022】
化合物(A)中の親水性基(x)としては、親水性及び親水性の持続性の観点から、アニオン性基及びその塩並びにカチオン性基の塩が好ましく、更に好ましくはカルボキシル基、スルホン酸基及び硫酸エステル基並びにこれらの塩(カルボン酸塩基、スルホン酸塩基及び硫酸エステル塩基)、第4級アンモニウム基の塩であり、特に好ましくはスルホン酸塩基及び硫酸エステル塩基である。
【0023】
化合物(A)において、親水性基(x)は1種を有してもよく、2種以上を有していてもよい。
化合物(A)1分子中の親水性基(x)の数は、親水性及び親水性の持続性の観点から、1~4個が好ましく、更に好ましくは1~2個である。
【0024】
化合物(A)中の親水性基(x)の含有量は、化合物(A)の重量を基準として、親水性及び親水性の持続性の観点から、10~90重量%が好ましく、更に好ましくは12~85重量%である。なお、親水性基(x)の量において、アニオン性基の場合はアニオン性基のみの重量割合、アニオン性基の塩の場合はアニオン性基から水素原子を除いたものと対カチオン{リチウム、ナトリウム、カリウム、オニウム(ただしオニウムの場合は窒素原子のみ)}との合計重量割合、カチオン性基の塩の場合は窒素原子(N)と対アニオン(対アニオンにおけるアニオン性基から水素原子を除いたもの)の合計重量割合、水酸基の場合は(-OH)の重量割合、オキシエチレン基の場合は分子中の全てのオキシエチレン基(-OCHCH-)の合計重量割合を意味し、例えば、カルボン酸Na塩の場合は、{(-COONa、67)/分子量×100}から算出される値、カルボン酸アンモニウム塩の場合は、{(―COON、58)/分子量×100}から算出される値である。
【0025】
化合物(A)としては、親水性の持続性の観点から、さらに疎水性基(z)を有するものが好ましい。
疎水性基(z)としては、好ましくは炭素数6~40の炭化水素基及び炭素数3~4のオキシアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
炭素数6~40の炭化水素基としては、炭素数6~40の直鎖炭化水素基{例えば、1価の直鎖飽和アルキル基(例えば、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デシル基、1-ウンデシル基、1-ドデシル基、1-トリデシル基、1-テトラデシル基、1-ペンタデシル基、1-ヘキサデシル基、1-ヘプタデシル基、1-オクタデシル基、1-ノナデシル基、1-イコシル基、1-トリアコンチル基、1-テトラコンチル基等)、1価の直鎖不飽和アルキル基(1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有するもの;例えば、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等)2価のアルキレン基(例えば、1,6-ヘキシレン基、1,7-へプチレン基、1,8-オクチレン基等)等}、炭素数6~40の分岐炭化水素基{例えば、1価の分岐飽和アルキル基(2-エチルヘキシル基等)、1価の分岐不飽和アルキル基、2価の分岐飽和アルキレン基、2価の分岐不飽和アルキレン基等}、炭素数6~40の脂環骨格を有する炭化水素基(例えば、シクロヘキシル基等)、炭素数6~40の芳香環骨格を有する炭化水素基(例えば、フェニル基、ベンジル基等)等が挙げられる。
炭素数6~40の炭化水素基としては、親水性の持続性の観点から、炭素数6~30の炭化水素基が好ましく、更に好ましくは炭素数8~20の炭化水素基である。
炭素数3~4のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基、オキシイソブチレン基、1,2-オキシブチレン基(オキシ1-エチルエチレン基)、1,4-オキシブチレン基(オキシテトラメチレン基)等が挙げられる。これらのうち、生産効率の観点から、オキシプロピレン基、1,2-オキシブチレン基が好ましい。
疎水性基(z)としては、親水性の持続性の観点から、炭素数6~40の炭化水素基が好ましく、更に好ましくは炭素数6~30の炭化水素基である。
【0026】
化合物(A)中の疎水性基(z)の含有量は、親水性の持続性の観点から、化合物(A)の重量を基準として、10~90重量%が好ましく、更に好ましくは20~80重量%、特に好ましくは30~60重量%である。
化合物(A)中の親水性基(x)と疎水性基(z)の重量比(x/z)は、親水性の持続性の観点から、10/90~90/10が好ましく、更に好ましくは13/87~80/20である。
【0027】
化合物(A)のHLB値は、親水性の持続性の観点から、5~130が好ましく、更に好ましくは10~80である。
HLBとは、有機性と無機性のバランスを示し、Hydrophile-Lipophile Balanceの略であり、小田法により、下記数式(1)を用いて算出される値である。(藤本武彦著、界面活性剤入門(三洋化成工業株式会社)、p212(2007))。
【0028】
HLB=10×(無機性/有機性) (1)
なお、式中の有機性、無機性とは、分子を構成する原子及び官能基ごとに定められた数値の合計値であり、上記文献中に記載された値を用いることができる。
【0029】
化合物(A)としては、例えば以下のものが挙げられる。
(1)親水性基(x)としてカルボキシル基及びその塩(カルボン酸塩基)を有するもの:例えば、ラジカル重合性基を有する炭素数3~60のモノカルボン酸[例えば、炭素数2~20のジカルボン酸{例えば、エタン二酸、プロパン酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸等}と水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体{例えば、ヒドロキシアルキル(アルキル基の炭素数1~20)(メタ)アクリレート等}とのモノエステル化物等]、並びにこれらの塩等;
【0030】
(2)親水性基(x)としてスルホン酸基及びその塩(スルホン酸塩基)を有するもの:例えば、ラジカル重合性基を有する炭素数2~60のスルホン酸[例えば、炭素数4~20の不飽和ジカルボン酸{マレイン酸、フマル酸等}と、ラジカル重合性基を有する炭素数2~40のアルコール{ビニルアルコール、アリルアルコール、ヒドロキシアルキル(アルキル基の炭素数1~20)(メタ)アクリレート等}及び炭素数6~40の炭化水素基を有するアルコール{例えば、前記疎水性基(z)を有するアルコール等}とのエステル化物の有する炭素-炭素二重結合に、スルホン化剤(例えば、亜硫酸水素塩、二ピロ亜硫酸塩等)に由来するスルホン酸基(-SOH)を付加反応した構造を有するもの{具体的には、例えば、アルキル(好ましくは炭素数6~40)アリルスルホコハク酸等}、ビニルスルホン酸、スルホアルキル(アルキル基の炭素数1~40)(メタ)アクリレート{例えば、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、2-スルホ-1-プロピル(メタ)アクリレート、1-スルホ-2-プロピル(メタ)アクリレート、3-スルホプロピル(メタ)アクリレート、1-スルホ-2-ブチル(メタ)アクリレート、3-スルホ-2-ブチル(メタ)アクリレート等}、スルホアルキル(アルキル基の炭素数1~40)(メタ)アクリルアミド{例えば、N-(1,1-ジメチル-2-スルホエチル)(メタ)アクリルアミド、((メタ)アクリルアマイド)メタンスルホン酸、2-((メタ)アクリルアマイド)エタンスルホン酸、3-((メタ)アクリルアマイド)プロパン-1-スルホン酸、2-(メタ)アクリルアマイド-2-メチルプロパンスルホン酸等}等]、並びにこれらの塩等;
【0031】
(3)親水性基(x)として硫酸エステル基及びその塩(硫酸エステル塩基)を有するもの:例えば、ラジカル重合性基を有する炭素数2~60の硫酸エステル[例えば、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(オキシアルキレン基の炭素数2~4、重合度2~20)硫酸エステル、ポリオキシアルキレン(オキシアルキレン基の炭素数2~4、重合度2~20)アルキル(炭素数1~20)プロペニルフェニルエーテル硫酸エステル{例えば、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル等}、ポリオキシアルキレン(オキシアルキレン基の炭素数2~4、重合度2~20)アルケニルエーテル硫酸エステル等]、並びにこれらの塩等;
【0032】
(4)親水性基(x)としてリン酸エステル基及びその塩(リン酸エステル塩基)を有するもの:例えば、ラジカル重合性基を有する炭素数2~60のリン酸エステル[例えば、リン酸(メタ)アクリレート{メタクリロイルオキシエチルホスフェート(ユニケミカル社製、ホスマーM)、エチレンオキサイド変性リン酸メタクリレート(ユニケミカル社製、ホスマーPE)、プロピレンオキサイド変性リン酸メタクリレート(ユニケミカル社製、ホスマーPP)、エチレンオキサイド変性リン酸アクリレート(共栄社化学社製、ライトエステルP-A)、エチレンオキサイド変性リン酸メタクリレート(日本化薬社製、カヤマーPM-1)及びカプロラクトン変性リン酸メタクリレート(日本化薬株式会社製、カヤマーPM-21)等}]、並びにこれらの塩等;
【0033】
(5)親水性基(x)として水酸基を有するもの;例えば、ラジカル重合性基を有する炭素数2~60のアルコール[例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール、ヒドロキシアルキル(アルキル基の炭素数1~20)(メタ)アクリレート等;
【0034】
(6)親水性基(x)としてオキシエチレン基を有するもの;例えば、ポリオキシエチレン(重合度2~20)グリコールモノ(メタ)アクリレート、アルコキシ(アルコキシ基の炭素数1~20)ポリオキシエチレン(重合度2~20)グリコールモノ(メタ)アクリレート等;
【0035】
(7)親水性基(x)として第1級アミノ基の塩を有するもの:例えば、ラジカル重合性基を有する炭素数2~60の第1級アミン[例えば、アミノアルキル(アルキル基の炭素数1~40)(メタ)アクリレート{例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート等}等]の塩;
(8)親水性基(x)として第2級アミノ基の塩を有するもの:例えば、ラジカル重合性基を有する炭素数3~60の第2級アミン[例えば、N-アルキル(アルキル基の炭素数1~40)アミノアルキル(アルキル基の炭素数1~40)(メタ)アクリレート{例えば、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等}等]の塩等;
(9)親水性基(x)として第3級アミノ基の塩を有するもの:例えば、ラジカル重合性基を有する炭素数4~60の第3級アミン[例えば、N,N-ジアルキル(それぞれ独立にアルキル基の炭素数1~40)アミノアルキル(アルキル基の炭素数1~40)(メタ)アクリレート{例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等}等]の塩等;
(10)親水性基(x)として第4級アンモニウム基の塩を有するもの:例えば、ラジカル重合性基を有する炭素数4~60の第4級アンモニウム[例えば、N,N,N-トリアルキル(それぞれ独立にアルキル基の炭素数1~40)アンモニウムアルキル(アルキル基の炭素数1~40)(メタ)アクリレート{例えば、N,N,N-トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレート}等]の塩等が挙げられる。
【0036】
<ゴム架橋体用親水化剤>
本発明のゴム架橋体用親水化剤は、上記化合物(A)を必須成分として含有する。ゴム架橋体用親水化剤が化合物(A)を含有することにより、原料ゴムとゴム架橋体用親水化剤とを混合(混練)してゴム組成物とした際、(A)がゴム組成物の全体に分散し、さらにゴム組成物中の原料ゴムを架橋反応させる際、化合物(A)の有するラジカル重合性基により原料ゴムに固定化され、ゴム架橋体の全体にまんべんなく親水性基(x)を導入することができ、優れた親水性及び親水性の持続性を付与することができるものであると推察される。
【0037】
本発明のゴム架橋体用親水化剤は、前記化合物(A)に加え、更に親水性基(y)及び炭素数6~40の炭化水素基を有しラジカル重合性基を有さない化合物(B)を含有してもよい。更に化合物(B)を含有することにより、ゴム架橋体の初期の親水性が更に向上することがある。これは、(B)が原料ゴム中に(A)を分散させる分散剤として働くためであると推察される。
【0038】
<親水性基(y)及び炭素数6~40の炭化水素基を有しラジカル重合性基を有さない化合物(B)>
本発明において、化合物(B)は、親水性基(y)及び炭素数6~40の炭化水素基を有しラジカル重合性基を有さない化合物である。なお、化合物(B)において、親水性基(y)がカルボキシル基である場合、炭化水素基の炭素数にカルボキシル基を構成する炭素の数は含めない。
親水性基(y)としては、アニオン性基の塩、カチオン性基の塩、水酸基及びオキシエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。なお、同一分子内にアニオン性基とカチオン性基とを有し、分子内又は分子間で塩を形成(例えば、ベタイン等)していてもよい。
アニオン性基の塩、カチオン性基の塩の具体例としては、前記親水性基(x)と同様である。
【0039】
化合物(B)中の親水性基(y)としては、親水性及び親水性の持続性の観点から、アニオン性基の塩、カチオン性基の塩及びオキシエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、更に好ましくはアニオン性基の塩及び/又はカチオン性基の塩であり、特に好ましくはカルボン酸塩基、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基及び第4級アンモニウム基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0040】
化合物(B)において、親水性基(y)は1種を有してもよく、2種以上を有していてもよい。
化合物(B)1分子中の親水性基(y)の数は、(A)との相溶性、原料ゴム中での(A)の分散性、親水性及び親水性の持続性の観点から、1~2個が好ましく、更に好ましくは1個である。
【0041】
化合物(B)中の親水性基(y)の含有量は、化合物(B)の重量を基準として、(A)との相溶性、原料ゴム中での(A)の分散性、親水性及び親水性の持続性の観点から、10~80重量%が好ましく、更に好ましくは20~75重量%である。
【0042】
炭素数6~40の炭化水素基としては、炭素数6~40の直鎖炭化水素基{例えば、1価の直鎖飽和アルキル基(例えば、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デシル基、1-ウンデシル基、1-ドデシル基、1-トリデシル基、1-テトラデシル基、1-ペンタデシル基、1-ヘキサデシル基、1-ヘプタデシル基、1-オクタデシル基、1-ノナデシル基、1-イコシル基、1-トリアコンチル基、1-テトラコンチル基等)、1価の直鎖不飽和アルキル基(1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有するもの;例えば、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等)2価のアルキレン基(例えば、1,6-ヘキシレン基、1,7-へプチレン基、1,8-オクチレン基等)等}、炭素数6~40の分岐炭化水素基{例えば、1価の分岐飽和アルキル基(2-エチルヘキシル基等)、1置換の分岐不飽和アルキル基、2価の分岐飽和アルキレン基、2価の分岐不飽和アルキレン基等}、炭素数6~40の脂環骨格を有する炭化水素基(例えば、シクロヘキシル基等)、炭素数6~40の芳香環骨格を有する炭化水素基(例えば、フェニル基、ベンジル基等)等が挙げられる。
炭素数6~40の炭化水素基としては、(A)との相溶性、原料ゴム中での(A)の分散性、親水性及び親水性の持続性の観点から、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基が好ましく、更に好ましくは直鎖アルキル基である。
【0043】
化合物(B)としては、例えば以下のものが挙げられる。
(1)親水性基(y)としてカルボキシル基の塩を有するもの:例えば、炭素数7~41の鎖状脂肪族モノカルボン酸(例えば、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸等)、炭素数8~42の鎖状脂肪族ジカルボン酸(例えば、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸等)、炭素数7~41の脂環式骨格を有する脂肪族モノカルボン酸(例えば、シクロヘキサンカルボン酸等)、炭素数8~42の脂環式骨格を有する脂肪族ジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等)、炭素数7~41の芳香環骨格を有するモノカルボン酸(例えば、安息香酸、p-メチル安息香酸等)、炭素数8~42の芳香環骨格を有するジカルボン酸(例えば、フタル酸等)等の塩等;
【0044】
(2)親水性基(y)としてスルホン酸基の塩を有するもの:例えば、炭素数6~40のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族スルホン酸(例えば、1-ヘキサンスルホン酸、1-ヘプタンスルホン酸、1-オクタンスルホン酸、1-ノナンスルホン酸、1-デカンスルホン酸、1-ウンデカンスルホン酸、1-ドデカンスルホン酸、1-トリデカンスルホン酸、1-テトラデカンスルホン酸等)、炭素数4~20の不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸等)と炭素数6~40の炭化水素基を有するアルコールとのモノ又はジエステル化物の有する炭素-炭素二重結合にスルホン化剤(例えば、亜硫酸水素塩、二ピロ亜硫酸塩等)に由来するスルホン酸基(-SOH)を付加反応した構造を有するもの{具体的には、例えば、アルキル(好ましくは炭素数6~40)スルホコハク酸等}、炭素数6~40の脂環式骨格を有する脂肪族スルホン酸(例えば、シクロヘキサンスルホン酸等)、炭素数6~40の芳香環骨格を有するスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸等)等の塩等;
【0045】
(3)親水性基(y)として硫酸エステル基の塩を有するもの:例えば、炭素数6~40のアルキル基又はアルケニル基を有する硫酸エステル(例えば、ヘキシル硫酸エステル、ヘプチル硫酸エステル、オクチル硫酸エステル、2-エチルへキシル硫酸エステル、デシル硫酸エステル、ドデシル硫酸エステル等)等の塩等;
【0046】
(4)親水性基(y)としてリン酸エステル基の塩を有するもの:例えば、炭素数6~40のアルキル基又はアルケニル基を有するリン酸エステル(例えば、ヘキシルリン酸エステル、ヘプチルリン酸エステル、オクチルリン酸エステル、2-エチルへキシルリン酸エステル、デシルリン酸エステル、ウンデシルリン酸エステル、ドデシルリン酸エステル等)等の塩等;
【0047】
(5)親水性基(y)として水酸基を有するもの;例えば、炭素数6~40の脂肪族アルコール(例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、シクロヘキシルアルコール等)、炭素数6~40の水酸基を有する芳香族化合物(例えば、フェノール、ナフトール等)等;
【0048】
(6)親水性基(y)としてオキシエチレン基を有するもの;ポリオキシエチレン(重合度2~20)ジアルキル(炭素数6~40)エーテル等;
【0049】
(7)親水性基(y)として水酸基及びオキシエチレン基を有するもの;ポリオキシエチレン(重合度2~20)モノアルキル(炭素数6~40)エーテル等;
【0050】
(8)親水性基(y)として第1級アミノ基の塩を有するもの:例えば、炭素数6~40の第1級脂肪族アミン(例えば、n-ヘキシルアミン、イソヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、イソヘプチルアミン、n-オクチルアミン、イソオクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、イソノニルアミン、n-デシルアミン、イソデシルアミン、n-ドデシルアミン、イソドデシルアミン、n-トリデシルアミン、イソトリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、イソテトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、イソヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-ステアリルアミン、イソステアリルアミン、n-ノナデシルアミン、n-エイコシルアミン、n-ドコシルアミン、n-オクテニルアミン、n-デセニルアミン、イソデセニルアミン、n-ウンデセニルアミン、n-ドデセニルアミン、n-テトラデセニルアミン、n-ヘキサデセニルアミン、n-オクタデセニルアミン及びn-オクタデカジエニルアミン等)及び動植物由来アミン(牛脂アミン、硬化牛脂アミン、ヤシ油アミン、パーム油アミン及び大豆油アミン等)等の塩;
【0051】
(9)親水性基(y)として第2級アミノ基の塩を有するもの:例えば、炭素数6~40の脂肪族炭化水素基と炭素数1~40の脂肪族炭化水素基とを有する第2級脂肪族アミン(例えば、N-メチルヘキシルアミン、N-メチルイソヘキシルアミン、N-メチルヘプチルアミン、N-メチルイソヘプチルアミン、N-メチルオクチルアミン、N-メチルイソオクチルアミン、N-メチル-2-エチルヘキシルアミン、N-メチルノニルアミン、N-メチルイソノニルアミン、N-メチルデシルアミン、N-メチルイソデシルアミン、N-メチルドデシルアミン、N-メチルイソドデシルアミン、N-メチルトリデシルアミン、N-メチルイソトリデシルアミン、N-メチルテトラデシルアミン、N-メチルイソテトラデシルアミン、N-メチルペンタデシルアミン、N-メチルヘキサデシルアミン、N-メチルイソヘキサデシルアミン、N-メチルヘプタデシルアミン、N-メチルステアリルアミン、N-メチルイソステアリルアミン、N-メチルノナデシルアミン、N-メチルエイコシルアミン、N-メチルドコシルアミン、N-メチルオクテニルアミン、N-メチルデセニルアミン、N-メチルイソデセニルアミン、N-メチルウンデセニルアミン、N-メチルドデセニルアミン、N-メチルテトラデセニルアミン、N-メチルヘキサデセニルアミン、N-メチルオクタデセニルアミン及びN-メチルオクタデカジエニルアミン等)等の塩等;
【0052】
(10)親水性基(y)として第3級アミノ基の塩を有するもの:例えば、炭素数6~40の脂肪族炭化水素基1つと炭素数1~40の脂肪族炭化水素基2つとを有する第3級脂肪族アミン(例えば、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルイソヘキシルアミン、N,N-ジメチルヘプチルアミン、N,N-ジメチルイソヘプチルアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチルイソオクチルアミン、N,N-ジメチル2-エチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルノニルアミン、N,N-ジメチルイソノニルアミン、N,N-ジメチルデシルアミン、N,N-ジメチルイソデシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルイソドデシルアミン、N,N-ジメチルトリデシルアミン、N,N-ジメチルイソトリデシルアミン、N,N-ジメチルテトラデシルアミン、N,N-ジメチルイソテトラデシルアミン、N,N-ジメチルペンタデシルアミン、N,N-ジメチルヘキサデシルアミン、N,N-ジメチルイソヘキサデシルアミン、N,N-ジメチルヘプタデシルアミン、N,N-ジメチルステアリルアミン、N,N-ジメチルイソステアリルアミン、N,N-ジメチルノナデシルアミン、N,N-ジメチルエイコシルアミン、N,N-ジメチルドコシルアミン、N,N-ジメチルオクテニルアミン、N,N-ジメチルデセニルアミン、N,N-ジメチルイソデセニルアミン、N,N-ジメチルウンデセニルアミン、N,N-ジメチルドデセニルアミン、N,N-ジメチルテトラデセニルアミン、N,N-ジメチルヘキサデセニルアミン、N,N-ジメチルオクタデセニルアミン及びN,N-ジメチルオクタデカジエニルアミン等)等の塩等;
【0053】
(11)親水性基(y)として第4級アンモニウム基の塩を有するもの:例えば、炭素数6~40の脂肪族炭化水素基1つと炭素数1~40の脂肪族炭化水素基3つとを有する第4級アンモニウム(例えば、N,N,N-トリメチルヘキシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルイソヘキシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルヘプチルアンモニウム、N,N,N-トリメチルイソヘプチルアンモニウム、N,N,N-トリメチルオクチルアンモニウム、N,N,N-トリメチルイソオクチルアンモニウム、N,N,N-トリメチル2-エチルヘキシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルノニルアンモニウム、N,N,N-トリメチルイソノニルアンモニウム、N,N,N-トリメチルデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルイソデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルドデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルイソドデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルトリデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルイソトリデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルテトラデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルイソテトラデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルペンタデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルヘキサデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルイソヘキサデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルヘプタデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルステアリルアンモニウム、N,N,N-トリメチルイソステアリルアンモニウム、N,N,N-トリメチルノナデシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルエイコシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルドコシルアンモニウム、N,N,N-トリメチルオクテニルアンモニウム、N,N,N-トリメチルデセニルアンモニウム、N,N,N-トリメチルイソデセニルアンモニウム、N,N,N-トリメチルウンデセニルアンモニウム、N,N,N-トリメチルドデセニルアンモニウム、N,N,N-トリメチルテトラデセニルアンモニウム、N,N,N-トリメチルヘキサデセニルアンモニウム、N,N,N-トリメチルオクタデセニルアンモニウム及びN,N,N-トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム等)等の塩等が挙げられる。
【0054】
(12)親水性基(y)として同一分子内に第4級アンモニウム基とカルボキシル基とを有し、塩を形成するもの:例えば、アルキル(アルキル基の炭素数6~40)ジアルキル(アルキル基はそれぞれ炭素数1~4)アミノ酢酸ベタイン{例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等}、脂肪酸(炭素数7~41)アミドプロピルジアルキル(アルキル基はそれぞれ炭素数1~4)アミノ酢酸ベタイン{例えば、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等}等が挙げられる。
【0055】
化合物(B)としては、親水性及び親水性の持続性の観点から、アニオン性基の塩、カチオン性基の塩及びオキシエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するものが好ましく、更に好ましくはカルボキシル基の塩、スルホン酸基の塩、硫酸エステル基の塩及び第4級アンモニウム基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するものである。
【0056】
化合物(B)のHLB値は、親水性及び親水性の持続性の観点から、5~60が好ましく、更に好ましくは8~30である。
【0057】
本発明のゴム架橋体用親水化剤が上記化合物(B)を含有する場合、ゴム架橋体用親水化剤中の化合物(A)と化合物(B)との重量比(A/B)は、(A)との相溶性、原料ゴム中での(A)の分散性、親水性の観点から、10/90~99.9/0.1が好ましく、更に好ましくは30/70~99.9/0.1であり、特に好ましくは30/70~98/2である。
【0058】
本発明のゴム架橋体用親水化剤が上記化合物(B)を含有する場合、ゴム架橋体用親水化剤中の化合物(A)のHLB値と化合物(B)のHLB値との差の絶対値は、親水性及び親水性の持続性の観点から、0~125が好ましく、更に好ましくは0~60である。
【0059】
本発明のゴム架橋体用親水化剤が上記化合物(B)を含有する場合、化合物(A)と化合物(B)を予め混合することで製造しても良いし、別々に原料ゴムに添加し、原料ゴム存在下で混練することによって製造することもできる。
化合物(A)と化合物(B)とを予め混合して製造する方法としては、例えば、粉体混合、溶融混合、溶媒に溶解して混合する方法等が挙げられる。
化合物(A)と化合物(B)を別々に原料ゴムに添加する方法としては、特に制限はなく、一般的なゴム添加剤と同様に行うことができ、例えば充填剤等と同じ方法でゴムに添加し、混練する等の方法が挙げられる。
【0060】
本発明のゴム架橋体用親水化剤が上記化合物(B)を含有する場合、ゴム架橋体用親水化剤中の化合物(A)に由来する親水性基(x)と化合物(B)に由来する親水性基(y)との重量比(x/y)は、親水性及び親水性の持続性の観点から、10/90~99.9/0.1が好ましく、更に好ましくは13/87~99.9/0.1であり、特に好ましくは13/87~98/2である。
【0061】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、前記本発明のゴム架橋体用親水化剤と、原料ゴムと、加硫剤とを含有する。原料ゴムは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
原料ゴムとしては、例えばJIS K 6397:2005に記載されたものが挙げられる。具体的には、
Mグループ(ポリメチレンタイプの飽和主鎖をもつゴム)に属するものとして、アクリル酸エチル又は他のアクリル酸エステル類と加硫を可能にする少量の単量体とのゴム状共重合体(アクリルゴム:ACM)、アクリル酸エチル又は他のアクリル酸エステル類とエチレンとのゴム状共重合体(AEM)、アクリル酸エチル又は他のアクリル酸エステル類とアクリロニトリルとのゴム状共重合体(ANM)、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エチレンとブテンとのゴム状共重合体(EBM)、エチレンとオクテンとのゴム状共重合体(EOM)、エチレンとプロピレンとジエンとのゴム状共重合体(EPDM)、エチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(EPM)、エチレンと酢酸ビニルとのゴム状共重合体(EVM)、四ふっ化エチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(FEPM)、すべての側鎖がフルオロ及びパーフルオロアルキル又はパーフルオロアルコキシ基であるゴム状共重合体(FFKM)、フルオロ及びパーフルオロアルキル又はパーフルオロアルコキシ基を側鎖にもつゴム状共重合体(FKM)、ポリイソブテン(IM)、主鎖が完全水素化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(NBM)、スチレンとエチレンとブテンとのゴム状共重合体(SEBM)、スチレンとエチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(SEPM);
【0062】
Oグループ(主鎖に炭素及び酸素をもつゴム)に属するものとして、ポリクロロメチルオキシラン(エピクロロヒドリンゴム;CO)、エチレンオキシドとエピクロロヒドリンとのゴム状共重合体(ECO)、エピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルとのゴム状共重合体(GCO)、エチレンオキシドとエピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルとのゴム状共重合体(GECO)、プロピレンオキシドとアリルグリシジルエーテルとのゴム状共重合体(GPO);
【0063】
Qグループ(主鎖にけい素及び酸素をもつゴム)に属するものとして、ポリマー鎖にメチル置換基とフルオロ置換基とをもつシリコーンゴム(FMQ)、ポリマー鎖にメチル置換基とビニル置換基とフルオロ置換基とをもつシリコーンゴム(FVMQ)、ポリマー鎖にメチル置換基をもつシリコーンゴム(ポリジメチルシロキサン:MQ)、ポリマー鎖にメチル置換基とフェニル置換基とをもつシリコーンゴム(PMQ)、ポリマー鎖にメチル置換基とビニル置換基とフェニル置換基とをもつシリコーンゴム(PVMQ)、ポリマー鎖にメチル置換基とビニル置換基とをもつシリコーンゴム(VMQ);
【0064】
Rグループ(主鎖に不飽和炭素結合をもつゴム)に属するものとして、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(HNBR)、イソプレンゴム(合成天然ゴム:IR)、α-メチルスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(MSBR)、アクリロニトリルとブタジエンとイソプレンとのゴム状共重合体(NBIR)、アクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(ニトリルゴム:NBR)、アクリロニトリルとイソプレンとのゴム状共重合体(NIR)、天然ゴム(NR)、ノルボルネンゴム(NOR)、ビニルピリジンとブタジエンとのゴム状共重合体(PBR)、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(PSBR)、スチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(SBR)、乳化重合で合成されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(E-SBR)、溶液重合で合成されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(S-SBR)、スチレンとイソプレンとブタジエンとのゴム状共重合体(SIBR)、カルボキシル化されたブタジエンゴム(XBR)、カルボキシル化されたクロロプレンゴム(XCR)、カルボキシル化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(XNBR)、カルボキシル化されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(XSBR)、イソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体(IIR)、臭素化されたイソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体(BIIR)、塩素化されたイソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体(CIIR);
【0065】
Tグループ(主鎖に炭素,酸素及び硫黄をもつゴム)に属するものとして、ポリマー鎖のポリスルフィド結合の間に-CH-CH-O-CH-O-CH-CH-基か又はR基(Rは脂肪族炭化水素)のいずれかをもち、-CH-CH-基をもたないゴム(OT)、ポリマー鎖のポリスルフィド結合の間に-CH-CH-O-CH-O-CH-CH-基及び-CH-CH-基(場合によっては他の脂肪族基)をもつゴム(EOT);
【0066】
Uグループ(主鎖に炭素、酸素及び窒素をもつゴム)に属するものとして、四ふっ化エチレンと三ふっ化ニトロソメタンとニトロソパーフルオロ酪酸とのゴム状共重合体(AFMU)、ポリエステルウレタン(AU)、ポリエーテルウレタン(EU);
Zグループ(主鎖にりん及び窒素をもつゴム)に属するものとして、=N-鎖をもち連鎖中のりん原子に結合したフルオロアルコキシ基をもつゴム(FZ-P)、=N-鎖をもち連鎖中のりん原子に結合したアリロキシ(フェノキシ及び置換フェノキシ)をもつゴム(PZ-P)等が挙げられる。
【0067】
原料ゴムとしては、(A)のゴムへの固定化のされやすさ、親水性及び親水性の持続性の観点から、Mグループのゴム及びRグループのゴムが好ましく、更に好ましくはRグループのゴムである。
【0068】
ゴム組成物中のゴム架橋体用親水化剤の含有量は、原料ゴムの重量に基づいて、親水性及びゴム架橋体の物性の観点から、1~50重量%が好ましく、更に好ましくは2~20重量%である。
本発明のゴム組成物が上記化合物(B)を含有する場合、ゴム組成物中の化合物(A)と化合物(B)との重量比(A/B)は、(A)の分散性及び親水性の観点から、10/90~99.9/0.1が好ましく、更に好ましくは30/70~99.9/0.1であり、特に好ましくは30/70~98/2である。
ゴム組成物中の化合物(A)の含有量は、ゴム架橋体の物性、親水性及び親水性の持続性の観点から、原料ゴムの重量を基準として、0.2~60重量%が好ましく、更に好ましくは1.6~44重量%、特に好ましくは2~40重量%である。
本発明のゴム組成物が上記化合物(B)を含有する場合、ゴム組成物中の化合物(B)の含有量は、ゴム架橋体の物性、初期の親水性の観点から、原料ゴムの重量を基準として、0.01~53重量%が好ましく、更に好ましくは0.01~41重量%であり、特に好ましくは0.1~28重量%である。
本発明のゴム組成物が上記化合物(B)を含有する場合、ゴム組成物中の親水性基(x)と親水性基(y)との重量比(x/y)は、親水性及び親水性の持続性の観点から、10/90~99.9/0.1が好ましく、更に好ましくは13/87~99.9/0.1であり、特に好ましくは13/87~98/2である。
【0069】
加硫剤としては、有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物、キノイド化合物、ビスマレイミド化合物等が挙げられる。加硫剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等が挙げられる。
【0071】
硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等が挙げられる。
【0072】
硫黄化合物としては、例えば、塩化硫黄等のハロゲン化硫黄、4,4’-ジチオジモルホリン、ジチオジカプロラクタム、アルキルフェノールジスルフィド、高分子多価硫黄、硫黄を含む加硫促進剤(例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど)等が挙げられる。
【0073】
キノイド化合物としては、1,4-ベンゾキノンジオキシム、4,4’-ジベンゾイルキノンジオキシム等が挙げられる。
【0074】
ビスマレイミド化合物としては、例えばm-フェニレンジマレイミド等が挙げられる。
【0075】
加硫剤としては、親水化の観点から、硫黄及び有機過酸化物が好ましく、更に好ましくは硫黄である。
【0076】
ゴム組成物中の加硫剤の含有量は、ゴム架橋体の物性の観点から、原料ゴムの重量を基準として、0.1~10重量%が好ましく、更に好ましくは0.5~5重量%である。
【0077】
本発明において、ゴム組成物中には、原料ゴムの分解を抑制する、加硫剤からのラジカル発生速度及び発生量を調整する等のために、ラジカル重合禁止剤や酸化防止剤を含有してもよい。
具体的には例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアレート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)フロピオネート)メタン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン等のヒンダードフェノール類;ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
ゴム組成物中の重合禁止剤及び酸化防止剤の合計重量割合は、原料ゴムの重量を基準として、0~5重量%であることが好ましく、より好ましくは0~1重量%であり、更に好ましくは0~0.5重量%である。
【0078】
ゴム組成物中には、一般的にゴム製品中に含まれる添加剤を含有してもよい。添加剤としては、充填剤、滑剤、造核剤、着色剤、離型剤、分散剤、難燃剤、粘着付与剤、カップリング剤、導電剤、帯電防止剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等が挙げられる。
充填剤としては、一般的にゴム製品に用いられるものを使用することができ、具体的には、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、モンモリロナイト、石膏繊維、ガラスバルン、シリカバルン、ハイドロタルサイト、フライアシュバルーン、シラスバルーン、カーボン系バルーン、アルミナ、ジルコニア、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、二硫化モリブデン、ガラス繊維、カットファイバー、ロックファイバー、ミクロファイバー、炭素繊維、カーボンナノファイバー、セルロースナノファイバー、芳香族ポリアミド繊維、チタン酸カリウム繊維、再生ゴム、ゴム粉末、エボナイト粉末、セラミックス、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、金属粉末、木粉等を挙げることができる。
加硫促進剤としては、一般的にゴム製品に用いられるものを使用することができ、具体的には、上述した硫黄を含む加硫促進剤に加え、ヘキサメチレンテトラミン、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ベンゾチアジルジスルフィド、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2-イミダゾリン-2-チオール、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛等が挙げられる。
加硫促進助剤としては、例えば酸化亜鉛等が挙げられる。
【0079】
本発明のゴム組成物の製造方法は、前記ゴム架橋体用親水化剤、原料ゴム、加硫剤、必要により加硫促進剤、加硫促進助剤、充填剤、ラジカル重合禁止剤、老化防止剤等の添加剤等を混練する混練工程を経て製造される。
【0080】
混練工程では、ゴム組成物中の全ての成分を一度に配合して混練してもよいし、2段階以上に分けて配合・混練を行ってもよい。
また、混練工程において加硫剤を使用する場合、架橋が進行するのを抑制する点からも、原料ゴムと、加硫剤以外の成分とを一定時間混練した後に、加硫剤を添加し、混練することが好ましい。
混練工程では、混練機として、原料の形態や得られる変性樹脂の用途等に応じてミキシングローラ、ニーダー、バンバリーミキサー、プラストミル、一軸または二軸押出機などの混練機等を用いることが好ましい(用いてもよい)。なお溶融混練変性の前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダ-などのミキサーやブレンダ-を用いて予備混合を行ってから、予備混合物を溶融混練してもよい。
【0081】
混練工程における混練温度は特に制限されないが、生産性の観点から、30~250℃が好ましく、更に好ましくは50~200℃である。
混練工程における混練時間は特に制限されないが、生産性の観点から、0.1~30分間が好ましく、より好ましくは0.1~10分間であり、更に好ましくは0.1~5分である。
【0082】
<ゴム架橋体>
本発明のゴム架橋体は、前記本発明のゴム組成物を架橋させてなるものである。
ゴム架橋体の製造方法としては、前記ゴム組成物を加熱する架橋工程を経て製造することができる。架橋工程の温度としては例えば80~250℃、好ましくは100~220℃、さらに好ましくは130~200℃である。
【0083】
<成形物>
本発明の成形物は、前記ゴム組成物を成形し、架橋したゴム架橋体から形成される成形物である。成形加工方法としては、たとえば、カレンダーロールシート成形法、ローラーヘッドシート成形法、押出シート成形法、ラム押出成形法、スクリュー押出成形法、圧縮成形法、注入成形法、射出成形法等を挙げることができる。
【0084】
本発明の成形物としては、一般的なゴム製品が挙げられ、例えば、タイヤ、ホース、防振ゴム、自動車用ベルト、シール、防舷剤、コンベヤベルト、弾性まくらぎ、ゴムパッド、ゴムマット、免震ゴム、シーリング材、防水剤、ゴム電線、ゴムケーブル、コンドーム、ゴム手袋、ゴム風船、ガスケット、パッキン、ゴムボール等を挙げることができる。
【実施例
【0085】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部を示す。なお実施例1~4、9~15、18~25、30~36、40~43は、それぞれ、参考例1~4、5~11、12~19、20~26、27~30である。
【0086】
実施例及び比較例に使用した原料の組成、記号等は次の通りである。
<化合物(A)>
(A1-1):
メタクリロイルオキシポリオキシプロピレン硫酸エステルナトリウム(有効成分41重量%)[三洋化成工業(株)製、エレミノールRS-3000]
(A1-2):
メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(オキシエチレン基の平均付加モル数:9)[日油(株)製、ブレンマーAME-400]
(A1-3):
メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩(有効成分80重量%)
[三菱ケミカル(株)製、アクリエステルDMC]
(A1-4):
こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)
[東京化成(株)製]
(A2-1):
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(有効成分50重量%)
[東亜合成(株)製、ATBS-Na]
(A3-1):
アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(有効成分38重量%)
[三洋化成工業(株)製、エレミノールJS-20]
(A4-1):
ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム(オキシエチレン基の平均付加モル数:10)[第一工業製薬(株)製、アクアロンHS-10]
(A5-1):
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(オキシエチレン基の平均付加モル数:15、オキシブチレン基の平均付加モル数:6、有効成分20重量%)
[花王(株)製、ラテムルPD-104]
(A6-1):
アシッド・ホスホキシ・ポリオキシプロピレングリコール・モノメタクリレート(オキシプロピレン基の平均付加モル数:6)[ユニケミカル(株)社製、ホスマーPP]
<化合物(B)>
(B1-1):
2級アルカンスルホン酸ナトリウム(アルキル基の炭素数14~16)
[ランクセス社製、メルソラートH95]
(B1-2):
ステアリン酸ナトリウム
[富士フィルム和光純薬(株)製]
(B1-3):
ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム(有効成分47重量%)
[三洋化成工業(株)製、ビューライトSSS]
(B2-1):
トリメチルステアリルアンモニウムクロリド
[東京化成工業(株)社製]
(B3-1):
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン基の平均付加モル数:11)
[三洋化成工業(株)製、エマルミンNL-110]
(B4-1):
ミリスチン酸アミドプロピルジメチルアミノベタイン(有効成分34重量%)
[三洋化成工業(株)製、レボンMY-30W]
【0087】
<実施例1>
ガラス製反応容器に、メタクリロイルオキシポリオキシプロピレン硫酸エステルナトリウム(有効成分41重量%)(A1-1)100部[(A1-1)[純分]41部]、2級アルカンスルホン酸ナトリウム(B1-1)41部、イオン交換水50部を仕込んだ後、攪拌し均一にした。離型紙を敷いたバットに全量仕込み、60℃に設定した減圧乾燥機で溶媒を除去し、親水化剤(X-1)80部を得た。
【0088】
<実施例2~20>
実施例1において、表1の原料組成(部)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、各親水化剤(X-2)~(X-20)を得た。
【0089】
<実施例21>
ガラス製反応容器に、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)100部、メタノール100部を仕込んだ後、攪拌し均一にした。水浴で冷却しながら、攪拌下、水酸化ナトリウム水溶液(有効成分40重量%)43.9部を30分かけて投入した。離型紙を敷いたバットに全量仕込み、60℃に設定した減圧乾燥機で溶媒を除去し、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)のナトリウム塩(A7-1)を含む親水化剤(X-21)108部を得た。
【0090】
<比較例1、2>
(B1-1)又は(B3-1)をそのまま用いて、比較のための親水化剤(比X-1)、(比X-2)を得た。
【0091】
実施例1~21及び比較例1~2で得られた親水化剤(X-1)~(X-21)、(比X-1)~(比X-2)の重量比(A/B)、(A)のHLB値と(B)のHLB値との差の絶対値、(A)中の親水基(x)の量、(A)中の疎水基(z)の量、(B)中の親水基(y)の量、及び親水化剤中の親水基の重量比[(x)/(y)]を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
<実施例22~43、比較例3~5>
表2に示す配合組成(部)に従って、ベンゾチアジルジスルフィドと硫黄以外の原料をバンバリーミキサーを用いて混練した。
次に、8インチロール混練機を用いて、ベンゾチアジルジスルフィドと硫黄を混練し、ゴム組成物を得た。
このゴム組成物についてプレス加硫を170℃×10分間の条件で行って、50×50×厚さ10mm及び150×150×厚さ2mmの各ゴム成形物を作製した。
得られた各ゴム成形物について、後述の評価方法によって評価を行った。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
<評価方法>
<1>親水性(接触角の測定)
接触角計(協和界面科学(株)製、「PD-W型」)を用いて25℃でのゴム成形物(上記で作製した厚さ2mmのもの)の水に対する接触角(液滴法にて測定した静的接触角)(°)を測定した。接触角が小さいほど水に対する濡れ性が高く、親水性に優れていることを意味する。
<2>親水性の持続性(水洗後の接触角)
試験片(上記で作製した厚さ2mmのもの)をスポンジで拭きながら流水で1分間洗浄し、窒素ブローを30秒間実施して表面の水を十分除去し、40℃の循風乾燥機で30分乾燥した後、<1>と同じ方法で接触角(°)を測定した。水洗後の接触角が低いほど、親水性の持続性に優れていることを意味する。
<3>親水性の持続性(表面研磨後の接触角)
試験片(上記で作製した厚さ2mmのもの)を耐水研磨紙#1000を用いて流水下で5分間研磨した後、窒素ブローを30秒間実施して表面の水を十分除去し、40℃の循風乾燥機で30分乾燥した後、<1>と同じ方法で接触角(°)を測定した。表面研磨後の接触角が低いほど、親水性の持続性に優れていることを意味する。
<4>機械物性(硬さ)
上記厚さ10mmのゴム成形物を試験片とし、JIS K 6253に従ってデュロメータ硬さを測定した。
<5>機械物性(引張強さ)
上記厚さ2mmのゴム成形物を用いて、ダンベル状3号形試験片を作製し、JIS K 6251に従って引張強さ(MPa)を測定した。
【0096】
なお、表2において使用した各原料は以下のとおり。
原料ゴム(G-1):天然ゴム[TSR CV-60]
ステアリン酸:日油(株)社製、登録商標、NAA-173K
カーボンブラック:[旭カーボン(株)社製、旭#35]
酸化亜鉛:[正同化学工業(株)社製、酸化亜鉛2種]、
ベンゾチアジルジスルフィド:[三新化学工業(株)社製、サンセラー DM]
硫黄:[細井化学工業(株)社製、微粉硫黄S]
【0097】
表2の結果から、本発明の親水化剤を使用したゴム架橋体は、比較例の親水化剤を使用したゴム架橋体に比べて、親水性が高く、水洗浄や表面研磨しても親水性を維持しており親水性の持続性が高いことがわかる。さらに、硬さ及び引張強さ等の機械物性にも優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の本発明のゴム架橋体用親水化剤を使用したゴム成形物は、親水性の持続性に優れていることから、タイヤ、ホース、防振ゴム、自動車用ベルト、シール、防舷剤、コンベヤベルト、弾性まくらぎ、ゴムパッド、ゴムマット、免震ゴム、シーリング材、防水剤、ゴム電線、ゴムケーブル、コンドーム、ゴム手袋、ゴム風船、ガスケット、パッキン、ゴムボール等の各種のゴム製品及び部材として極めて有用である。