(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】PRL3抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/40 20060101AFI20231225BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231225BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231225BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231225BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20231225BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231225BHJP
C12N 15/00 20060101ALN20231225BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20231225BHJP
【FI】
C07K16/40 ZNA
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61P1/00
A61P35/04
C12N15/13
C12N15/00
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2022033194
(22)【出願日】2022-03-04
(62)【分割の表示】P 2018565319の分割
【原出願日】2017-06-14
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】10201604834P
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ザン,チー
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-530735(JP,A)
【文献】国際公開第2015/119570(WO,A1)
【文献】特表2012-505654(JP,A)
【文献】特表2008-518619(JP,A)
【文献】Frontiers in Bioscience,2008年,Vol.13,p.1619-1633
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 16/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PRL3に結合するヒト化抗体または抗原結合性断片であって、
前記抗体は、以下のCDR:
【化1】
を含む少なくとも1つの軽鎖可変領域、
および、以下のCDR:
【化2】
を含む少なくとも1つの重鎖可変領域を有し、
前記ヒト化抗体または抗原結合性断片は、in vivoでPRL3に結合することができ、そして5pM~8pMの解離定数(Kd)を有し、
前記ヒト化抗体または抗原結合性断片が、配列番号7-15のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、および、配列番号16-25のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、を含む、
前記ヒト化抗体または抗原結合性断片。
【請求項2】
前記抗体または抗原結合性断片が6pM~7pMの解離定数(Kd)でPRL3に結合する、
請求項1記載のヒト化抗体または抗原結合性断片。
【請求項3】
前記ヒト化抗体または抗原結合性断片がCH1およびCH2ドメインを含有する、
請求項1または2記載のヒト化抗体または抗原結合性断片。
【請求項4】
アミノ酸配列KAKFYNおよび/またはHTHKTRを含むエピトープに結合する、請求項1記載のヒト化抗体または抗原結合性断片。
【請求項5】
PRL3に結合する、請求項1-4のいずれか一項記載のヒト化抗体または抗原結合性断片を含む、in vitro複合体。
【請求項6】
癌を治療する方法において使用するための薬剤製造における、請求項1-4のいずれか一項記載のヒト化抗体または抗原結合性断片の使用。
【請求項7】
癌を治療する方法において使用するための薬学的組成物であって、請求項1-4のいずれか一項記載のヒト化抗体または抗原結合性断片を含む、前記薬学的組成物。
【請求項8】
前記癌が胃癌または胃癌の転移である、請求項6記載の使用。
【請求項9】
前記癌が胃癌または胃癌の転移である、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記ヒト化抗体または抗原結合性断片が静脈内投与される、請求項6記載の使用。
【請求項11】
前記ヒト化抗体または抗原結合性断片が静脈内投与される、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記ヒト化抗体または抗原結合性断片が、治療しようとする癌とは離れた位置で投与される、請求項6記載の使用。
【請求項13】
前記ヒト化抗体または抗原結合性断片が、治療しようとする癌とは離れた位置で投与される、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記方法がヒト化抗PRL3抗体または抗原結合性断片を胃癌患者に投与する工程を含み、ここで前記患者が以前、胃癌に関する代謝拮抗剤療法を受けていなかったか、または以前、代謝拮抗剤療法を受けていなかった、請求項6記載の使用。
【請求項15】
前記方法がヒト化抗PRL3抗体または抗原結合性断片を胃癌患者に投与する工程を含み、ここで前記患者が以前、胃癌に関する代謝拮抗剤療法を受けていなかったか、または以前、代謝拮抗剤療法を受けていなかった、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記代謝拮抗剤療法が5-FUである、請求項14記載の使用。
【請求項17】
前記代謝拮抗剤療法が5-FUである、請求項15記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記患者が損なわれた免疫系を持たないことが決定されている、請求項14記載の使用。
【請求項19】
前記患者が損なわれた免疫系を持たないことが決定されている、請求項15記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PRL3に結合するヒト化抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、根本的に、転移に向かう多段階の進行につながる、無秩序な遺伝子発現の疾患であり(1)、転移は癌関連死の主な原因である(2)。証拠の集積によって、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)が転移進行を駆動する際に重要な役割を果たすことが示されている(3)。本発明者らは、1998年、3つのメンバー:PRL-1、PRL-2、およびPRL-3からなる二重特異性PTPのPRLファミリーのメンバーとして、肝臓再生ホスファターゼ-3(PRL-3;PTP4A3としても知られる)を同定した(4)。2001年、Vogelsteinのグループは、PRL-3を、転移性結腸直腸癌試料において特異的にそして非常に上方制御されるが、原発性癌および正常結腸直腸上皮においては上方制御が見られない、転移関連ホスファターゼとして特徴付けた(5)。PRL-3はまた、近年の独立包括的遺伝子発現研究において、ブドウ膜黒色腫患者における転移性再発の最も重要な予測因子として同定された(6)。臨床的には、PRL-3 mRNA発現レベルの上昇は、結腸直腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、および肺癌を含む、多数の癌タイプのより高い転移潜在能およびより劣った予後と相関することが示されてきている(7)。
【0003】
PRLは、そのプレニル化C末端を通じて、原形質膜およびエンドソームの細胞質側に局在する(8)。積み上げられつつある証拠によって、PRL-3が、細胞増殖、上皮間葉相互作用(EMT)、侵襲、運動性、血管形成、および生存を含む、悪性形質転換の多数の段階を促進することが示唆される(9)。分子的には、PRL-3は、PTENの下方制御を通じて間接的にPI3K/Akt経路を活性化し(10)、そして多数の上流受容体チロシンキナーゼの恒常的な活性化を通じて、発癌性ERKおよびSRCシグナル伝達を活性化することが示されてきている(11~13)。
【0004】
PRL-3は、2004年、PRL-3のより高いレベルが、GC侵襲性および転移の増加と相関することが見いだされた際に、最初にGC進行と関連付けられた(14)。それ以来、PRL-3は、原発性胃癌の最大70%で過剰発現されていると報告され、より高いPRL-3発現は、GC患者におけるすべての腫瘍病期で、より短い術後生存と相関した(15、16)。主に、GCの検出が遅れ、そして初期段階ではGCが無症候性の性質を持つことと併せて、治療後の再発が高率であるため(17)、GCが、年間70万を超える胃癌関連死亡を伴う、世界で3番目に高い癌死亡率と位置付けられている(2)ことから、PRL-3のこの予後診断潜在能は特に重要である。失敗率が非常に高いにも関わらず、根治手術は、GCに関する療法の標準的な型のままであり、そしてアジュバント化学療法はしばしば、切除前および/または切除後に考慮される(18、19)。にもかかわらず、化学療法を用いた際の全生存は劣ったままであり、そして他の活発に分裂している非癌性細胞の非特異的ターゲティングのため、望ましくない副作用が伴う(17)。この目的に向け、腫瘍特異的生物学的剤を用いたターゲティング療法は、癌細胞の増殖および生存に関与する特異的な分子を選択的に阻害する一方、正常細胞を温存するその潜在能力のため、抗癌薬剤開発の焦点として注目されてきている。現在の抗体療法は、抗体が一般的に、細胞に進入するには大きすぎると考えられているため、細胞外(細胞表面または分泌)タンパク質のみをターゲットとし、ホスファターゼ、キナーゼ、および転写因子などの細胞内療法ターゲットの大きな集団は、抗体療法によっては利用されないままである。GCにおいて、例えば、HER2/neu受容体アンタゴニスト、トラスツズマブ(ハーセプチン)は、細胞表面HER2/neu受容体を発現しているGCの13~20%
、特に転移性胃または胃食道接合部腺癌をターゲティングすると認可されてきている(20、21)。しかし、反応が中程度であるにもかかわらず、患者はしばしばトラスツズマブに対する耐性を発展させ(22)、その効能は妨害されている。したがって、GCに対する別のターゲティング療法が切に必要とされており、そして活発に追求されている。
【0005】
2008年、本発明者らは、細胞内PRL-1およびPRL-3癌抗原をターゲティングする抗体療法の新規アプローチを報告した(23)。この報告において、本発明者らは、抗PRL-3抗体がPRL-3を発現している(がPRL-1を発現していない)癌細胞の実験的転移を阻害する一方、抗PRL-1抗体がPRL-1を発現している(がPRL-3を発現していない)癌細胞を阻害することを示し、したがって、こうした細胞内癌タンパク質をターゲティングした際の療法的有効性に関する特異的抗体-抗原認識の厳密な必要性を確立した。その後、2011年、本発明者らは、野生型C57BL/6およびトランスジェニック自発的乳房腫瘍MMTV-PyMTマウスにおいて、さらなる内因性および外因性細胞内「腫瘍特異的抗原」を抗体療法またはワクチン接種でターゲティングして、この新規概念の実現可能性および有効性を検証した(24)。本発明者らおよびFerroneは、細胞内への抗体浸透、外在化抗原に対する抗体結合および/またはMHC結合性抗原由来ペプチドの抗体認識を含む、細胞内腫瘍抗原(TA)特異的抗体の抗腫瘍活性の3つのありうる機構を提唱した(25、26)。
【0006】
PRL-3発現腫瘍をターゲティングする際の、ネズミ、そしてより最近、キメラ(27)抗PRL-3抗体の成功後、本発明者らは、本発明者らのアプローチを、4つの重要な側面に関して、より臨床的に適切なセッティングに変換した:1)マウスまたはキメラ抗体の代わりに、PRL-3ヒト化抗体(PRL3-zumab)の使用;2)マウス癌細胞株の代わりに、ヒト癌細胞株のターゲティング;3)マウス尾静脈転移モデルの代わりに、より臨床的に適切な同所性胃腫瘍モデルの開発;および4)PRL3-zumab療法的有効性の監視のための潜在的代理バイオマーカーの同定。本発明者らは、胃腫瘍生成を遮断するヒト化抗体の新規クラスの最初の例を示す。本発明者らの知見によって、抗体療法での細胞内癌タンパク質ターゲティングの潜在能力が明らかになり、癌療法の新たな時代の先導となる。
【発明の概要】
【0007】
オフターゲット効果は、癌療法に関する主な臨床的懸念である。本発明者らは、多数のヒト癌において上方制御される発癌性ホスファターゼである、腫瘍特異的細胞内PRL-3に対して、こうした種類では最初のヒト化抗体(PRL3-zumab)を生成した。本発明者らは、胃癌(GC)に重点を置き、PRL-3 mRNAレベルの上昇が、GC患者の全生存の短縮と有意に相関する独立の証拠を提供した。PRL-3タンパク質は、新鮮凍結GC腫瘍の85%で過剰発現されたが、調べた患者マッチ正常胃組織では過剰発現されなかった。ヒトGC細胞株を用いて、本発明者らは、臨床的に適切な同所性胃腫瘍モデルを確立し、そしてPRL3-zumabが、PRL-3陽性(PRL-3+)腫瘍の増殖を特異的に遮断するが、PRL-3陰性(PRL-3-)腫瘍の増殖は遮断しないことを示した。PRL3-zumabは、5-フルオロウラシル(5-FU)との併用、または5-FU単独よりも、単剤療法としてより優れた療法有効性を有した。PRL3-zumabは、PRL-3+腫瘍組織において特に濃縮され、そしてPRL-3+腫瘍微小環境への免疫細胞補充を促進した。予期せぬことに、本発明者らは、多数のタイプのヒト癌尿の62%、およびPRL-3+腫瘍所持マウス由来の癌尿の100%で、分泌PRL-3癌タンパク質が見られるが、PRL-3-腫瘍所持マウスにおいては見られないことを見出した。さらに、尿PRL-3レベルは、PRL3-zumabでの有効な治療後、有意に減少した。尿PRL-3は、将来的に、多数の癌タイプにおいて、PRL3-zumab療法の療法的反応監視のための、潜在的に診断性でそして代理のバイオマーカーとして見なされうる。
【0008】
本発明者らはまた作用機構(MOA)を調べて、PRL-3抗体がどのようにその細胞内PRL-3抗原に結合可能であるかに取り組み、そして実際に、「細胞内癌タンパク質」が、癌において「細胞外癌タンパク質」として細胞表面に再局在化することが可能であり、したがって、細胞外癌ターゲットに対する抗体の慣用的な経路を通じて、腫瘍排除のための合理的な基礎にしたがうと結論付ける。
【0009】
これと一致して、本発明者らは、PRL3-zumabが、宿主FcγII/III受容体相互作用、完全抗体活性、および宿主免疫を増進させるための増加したM1(しかしM2増加は必要としない)マクロファージ、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞を必要として、PRL-3「細胞内」抗原を発現している腫瘍を遮断することを見出した。これらの結果は、「細胞内癌タンパク質」をターゲティングする抗体のMOAが、実際、腫瘍を排除するための古典的抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または食作用(ADCP)経路を通じた、「細胞外癌タンパク質」をターゲティングする類似の原理にしたがうことを示唆する。
【0010】
最後に、110の貴重な新鮮凍結ヒト腫瘍またはそのマッチした正常組織を用いて、本発明者らは、PRL-3が9つの異なるヒト癌タイプ:肝臓、肺、結腸、乳房、胃、膀胱、前立腺、AML、および腎臓患者腫瘍試料由来の平均≧78%で広く過剰発現されているが、マッチした正常組織では過剰発現されない、優れた腫瘍特異的癌ターゲットであることをさらに示した。したがって、PRL-3は癌の有用なバイオマーカーであり、そして癌療法のためのほぼ普遍的なターゲットでありうる。したがって、PRL-3は、固形腫瘍の有用なバイオマーカーを提供しうる。
【0011】
本発明は、PRL3に結合する抗体または抗原結合性断片に関する。重鎖および軽鎖ポリペプチドもまた開示する。抗体、抗原結合性断片およびポリペプチドは、単離および/または精製型で提供されてもよく、そして研究、療法および診断で使用するために適した組成物に配合されてもよい。特に、本発明は、PRL3に結合するヒト化抗体、および特に、PRL3アンタゴニスト抗体に関する。
【0012】
いくつかの場合、本発明の抗体は、PRL3の機能を阻害する。いくつかの場合、抗体は、PRL3のタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)機能を阻害する。いくつかの場合、抗体は、ADCCおよび/またはADCPを誘導する。いくつかの場合、抗体はFc受容体、例えばFcRIIおよび/またはFcRIIIに結合可能である。いくつかの場合、細胞への抗体の結合は、細胞への免疫細胞、例えばB細胞、NK細胞、またはマクロファージ、好ましくはM1マクロファージの補充を導く。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の原理を例示する態様および実験は、ここで、付随する図を参照して論じられるであろう。
【
図1】PRL-3は、胃腫瘍で高発現される新規癌ターゲットである。(A)FVB/野生型マウスの多様な正常組織(レーン1~15)およびFVB/MMTV-PyMTマウス由来の自発的乳房および転移性肺腫瘍(レーン16および17)におけるPRL-3のウェスタンブロット。ブロットをPRL3-zumab抗体で探査した。HSP70、装填対照。(B)SGSet1 GC患者コホートにおけるPRL-3 mRNA発現のKaplan-Meier生存分析。n=183;p=0.002、ログランク検定。(C)GC患者由来のヒト原発性胃腫瘍(T)対患者マッチ正常組織(n)の20対におけるPRL-3の完全ウェスタンブロット分析。Mr、相対分子量(kDa)。
【
図2-1】PRL3-zumabは、PRL-3
+同所性胃腫瘍を特異的に遮断する。(A)22のヒトGC細胞株における内因性PRL-3に関するウェスタンブロット。続く動物モデルのために選択した腫瘍原性PRL-3
+およびPRL-3
-細胞株をアステリスク(
*)とともに赤で示す。Mr、相対分子量(kDa)。(B)Balb/Cヌードマウスにおける実験同所性GCモデルの概略。(C)PRL3-zumab治療は、PRL-3
+ SNU-484同所性胃腫瘍増殖を阻害する。パネルa~b、実験終了時(第28日)のマウス外観。矢印は、未治療マウスにおける異常な腹部膨満を強調する。パネルc~d、黒線で囲んだ腫瘍領域を含む切除胃。バー、10mm。(D)未治療およびPRL3-zumab治療群における第28日の平均胃腫瘍体積。群あたり、n=8;p=0.01、t検定;データは平均±S.D.に相当する。(E)マウスの未治療(赤線)およびPRL3-zumab治療(黒線)群のKaplan Meier生存分析。群あたり、n=4;p=0.006、ログランク検定。p値<0.05は、統計的に有意と見なされた。
【
図2-2】PRL3-zumabは、PRL-3
+同所性胃腫瘍を特異的に遮断する。(A)22のヒトGC細胞株における内因性PRL-3に関するウェスタンブロット。続く動物モデルのために選択した腫瘍原性PRL-3
+およびPRL-3
-細胞株をアステリスク(
*)とともに赤で示す。Mr、相対分子量(kDa)。(B)Balb/Cヌードマウスにおける実験同所性GCモデルの概略。(C)PRL3-zumab治療は、PRL-3
+ SNU-484同所性胃腫瘍増殖を阻害する。パネルa~b、実験終了時(第28日)のマウス外観。矢印は、未治療マウスにおける異常な腹部膨満を強調する。パネルc~d、黒線で囲んだ腫瘍領域を含む切除胃。バー、10mm。(D)未治療およびPRL3-zumab治療群における第28日の平均胃腫瘍体積。群あたり、n=8;p=0.01、t検定;データは平均±S.D.に相当する。(E)マウスの未治療(赤線)およびPRL3-zumab治療(黒線)群のKaplan Meier生存分析。群あたり、n=4;p=0.006、ログランク検定。p値<0.05は、統計的に有意と見なされた。
【
図2-3】PRL3-zumabは、PRL-3
+同所性胃腫瘍を特異的に遮断する。(A)22のヒトGC細胞株における内因性PRL-3に関するウェスタンブロット。続く動物モデルのために選択した腫瘍原性PRL-3
+およびPRL-3
-細胞株をアステリスク(
*)とともに赤で示す。Mr、相対分子量(kDa)。(B)Balb/Cヌードマウスにおける実験同所性GCモデルの概略。(C)PRL3-zumab治療は、PRL-3
+ SNU-484同所性胃腫瘍増殖を阻害する。パネルa~b、実験終了時(第28日)のマウス外観。矢印は、未治療マウスにおける異常な腹部膨満を強調する。パネルc~d、黒線で囲んだ腫瘍領域を含む切除胃。バー、10mm。(D)未治療およびPRL3-zumab治療群における第28日の平均胃腫瘍体積。群あたり、n=8;p=0.01、t検定;データは平均±S.D.に相当する。(E)マウスの未治療(赤線)およびPRL3-zumab治療(黒線)群のKaplan Meier生存分析。群あたり、n=4;p=0.006、ログランク検定。p値<0.05は、統計的に有意と見なされた。
【
図3-1】PRL3-zumabは、PRL-3
-同所性胃腫瘍に療法的効果を持たない。(A)PRL3-zumab治療は、PRL-3
-MKN45同所性胃腫瘍増殖を遮断不能であった。パネルa~b、実験終了時(第56日)のマウス外観。パネルc~d、黒線で囲んだ腫瘍領域を含む切除胃。バー、10mm。(B)未治療およびPRL3-zumab治療群における第56日の平均胃腫瘍体積。群あたり、n=5;p=0.4、t検定;データは平均±S.D.に相当する。(C)マウスの未治療(赤線)およびPRL3-zumab治療(黒線)群のKaplan Meier生存分析。群あたり、n=4;p=0.3、ログランク検定。(D)4つのヒトGC細胞株の同所性モデルにおけるPRL3-zumab治療転帰の要約。p値<0.05は統計的に有意と見なされた。(E)MKN45-PRL3同所性胃腫瘍増殖からの第28日の平均胃腫瘍体積。N=4(未治療)または5(治療)、「p=0.00002、t検定」データは平均±SEMに相当する。
【
図3-2】PRL3-zumabは、PRL-3
-同所性胃腫瘍に療法的効果を持たない。(A)PRL3-zumab治療は、PRL-3
-MKN45同所性胃腫瘍増殖を遮断不能であった。パネルa~b、実験終了時(第56日)のマウス外観。パネルc~d、黒線で囲んだ腫瘍領域を含む切除胃。バー、10mm。(B)未治療およびPRL3-zumab治療群における第56日の平均胃腫瘍体積。群あたり、n=5;p=0.4、t検定;データは平均±S.D.に相当する。(C)マウスの未治療(赤線)およびPRL3-zumab治療(黒線)群のKaplan Meier生存分析。群あたり、n=4;p=0.3、ログランク検定。(D)4つのヒトGC細胞株の同所性モデルにおけるPRL3-zumab治療転帰の要約。p値<0.05は統計的に有意と見なされた。(E)MKN45-PRL3同所性胃腫瘍増殖からの第28日の平均胃腫瘍体積。N=4(未治療)または5(治療)、「p=0.00002、t検定」データは平均±SEMに相当する。
【
図4-1】PRL3-zumabは、5-フルオロウラシル(5-FU)との併用療法、または5-FU単独よりも、単剤療法としてより有効である。4つの治療群を用いて、PRL-3
+SNU-484同所性腫瘍を治療した:PBS対照(群1)、PRL3-zumab単剤療法(群2)、PRL3-zumab+5-FU併用療法(群3)、または5-FU単剤療法(群4)。(A)第28日の各治療群由来の切除マウス胃、同所性腫瘍領域を黒線で囲む。バー、10mm。右パネル、第28日の各群における平均胃腫瘍体積。群あたり、n=5;群1と比較した際の各群のp値を示す、t検定;データは平均±S.D.に相当する。(B)療法開始前(第0日)および実験終了時(第28日)の治療マウス群由来のギムザ染色血液スメアの代表的な画像。白血球(WBC)は青に染まる。バー、40μm。右パネル、第28日の各マウス由来の血液スメアからの平均WBCカウント。群あたり、n=5;群1と比較した際の各群のp値を示す、t検定;データは平均±S.D.に相当する。p値<0.05は統計的に有意と見なされた。(C)多様な治療措置終了時(第28日)のマウス群の血液学的プロファイル。赤で強調された値は、BALB/cヌードマウスに関する正常参照範囲からの外れ値を示す(35)。
【
図4-2】PRL3-zumabは、5-フルオロウラシル(5-FU)との併用療法、または5-FU単独よりも、単剤療法としてより有効である。4つの治療群を用いて、PRL-3
+SNU-484同所性腫瘍を治療した:PBS対照(群1)、PRL3-zumab単剤療法(群2)、PRL3-zumab+5-FU併用療法(群3)、または5-FU単剤療法(群4)。(A)第28日の各治療群由来の切除マウス胃、同所性腫瘍領域を黒線で囲む。バー、10mm。右パネル、第28日の各群における平均胃腫瘍体積。群あたり、n=5;群1と比較した際の各群のp値を示す、t検定;データは平均±S.D.に相当する。(B)療法開始前(第0日)および実験終了時(第28日)の治療マウス群由来のギムザ染色血液スメアの代表的な画像。白血球(WBC)は青に染まる。バー、40μm。右パネル、第28日の各マウス由来の血液スメアからの平均WBCカウント。群あたり、n=5;群1と比較した際の各群のp値を示す、t検定;データは平均±S.D.に相当する。p値<0.05は統計的に有意と見なされた。(C)多様な治療措置終了時(第28日)のマウス群の血液学的プロファイル。赤で強調された値は、BALB/cヌードマウスに関する正常参照範囲からの外れ値を示す(35)。
【
図5-1】細胞内PRL-3癌タンパク質は、細胞培地内に分泌されることも可能であり、そして癌尿の62%に存在するが、正常尿には存在しない。(A)示すGC細胞株のマッチした溶解物および馴化培地中のPRL-3のウェスタンブロッティング。CANX、カルネキシン。(B)研究したすべての癌患者および正常個体由来の尿試料における%PRL-3陽性の要約。(C~F)(C)正常個体およびGC患者、(D)鼻咽頭癌患者、(E)膀胱癌患者、および(F)肺癌患者の尿におけるPRL-3の代表的なウェスタンブロット。Mr、相対分子量(kDa)。
【
図5-2】細胞内PRL-3癌タンパク質は、細胞培地内に分泌されることも可能であり、そして癌尿の62%に存在するが、正常尿には存在しない。(A)示すGC細胞株のマッチした溶解物および馴化培地中のPRL-3のウェスタンブロッティング。CANX、カルネキシン。(B)研究したすべての癌患者および正常個体由来の尿試料における%PRL-3陽性の要約。(C~F)(C)正常個体およびGC患者、(D)鼻咽頭癌患者、(E)膀胱癌患者、および(F)肺癌患者の尿におけるPRL-3の代表的なウェスタンブロット。Mr、相対分子量(kDa)。
【
図5-3】細胞内PRL-3癌タンパク質は、細胞培地内に分泌されることも可能であり、そして癌尿の62%に存在するが、正常尿には存在しない。(A)示すGC細胞株のマッチした溶解物および馴化培地中のPRL-3のウェスタンブロッティング。CANX、カルネキシン。(B)研究したすべての癌患者および正常個体由来の尿試料における%PRL-3陽性の要約。(C~F)(C)正常個体およびGC患者、(D)鼻咽頭癌患者、(E)膀胱癌患者、および(F)肺癌患者の尿におけるPRL-3の代表的なウェスタンブロット。Mr、相対分子量(kDa)。
【
図6-1】有効なPRL3-zumab治療は、尿PRL-3を喪失させ、そして免疫エフェクターの腫瘍内集積および補充に機構的に関与する。(A)PRL-3
+SNU484またはPRL-3
-MKN45同所性胃腫瘍を宿する未治療またはPRL3-zumab治療マウス由来のマッチした尿および腫瘍試料におけるPRL-3タンパク質のウェスタンブロッティング。上部パネル、第28日(SNU-484)または第56日(MKN45)の切除胃。(B)多様な治療に供したマウス由来の同所性SNU-484およびMKN45腫瘍細胞凍結切片を、PRL3-zumabに関する免疫組織化学(パネルa~f;バー、20μm)、またはB細胞(パネルe~l)およびNK細胞マーカー(パネルm~r;バー、50μm)に関する免疫蛍光によって分析した。緑、それぞれ、B細胞およびNK細胞マーカーのCD45R/B220およびCD335/Nkp46染色;青、DAPI核染色。(C)PRL-3
+癌細胞に対するPRL3-zumabの提唱される作用機構を示すモデル:1)非慣用的な分泌(エクソソームPRL-3)、または壊死性PRL-3
+腫瘍細胞からの自発的な漏洩(遊離PRL-3)を通じて外在化したPRL-3抗原が、2)PRL3-zumab結合および腫瘍微小環境内での免疫複合体集積のベイト(bait)として作用し、続いて、3)抗腫瘍効果のためのエフェクターNKおよびB細胞の補充および活性化を生じる。
【
図6-2】有効なPRL3-zumab治療は、尿PRL-3を喪失させ、そして免疫エフェクターの腫瘍内集積および補充に機構的に関与する。(A)PRL-3
+SNU484またはPRL-3
-MKN45同所性胃腫瘍を宿する未治療またはPRL3-zumab治療マウス由来のマッチした尿および腫瘍試料におけるPRL-3タンパク質のウェスタンブロッティング。上部パネル、第28日(SNU-484)または第56日(MKN45)の切除胃。(B)多様な治療に供したマウス由来の同所性SNU-484およびMKN45腫瘍細胞凍結切片を、PRL3-zumabに関する免疫組織化学(パネルa~f;バー、20μm)、またはB細胞(パネルe~l)およびNK細胞マーカー(パネルm~r;バー、50μm)に関する免疫蛍光によって分析した。緑、それぞれ、B細胞およびNK細胞マーカーのCD45R/B220およびCD335/Nkp46染色;青、DAPI核染色。(C)PRL-3
+癌細胞に対するPRL3-zumabの提唱される作用機構を示すモデル:1)非慣用的な分泌(エクソソームPRL-3)、または壊死性PRL-3
+腫瘍細胞からの自発的な漏洩(遊離PRL-3)を通じて外在化したPRL-3抗原が、2)PRL3-zumab結合および腫瘍微小環境内での免疫複合体集積のベイト(bait)として作用し、続いて、3)抗腫瘍効果のためのエフェクターNKおよびB細胞の補充および活性化を生じる。
【
図6-3】有効なPRL3-zumab治療は、尿PRL-3を喪失させ、そして免疫エフェクターの腫瘍内集積および補充に機構的に関与する。(A)PRL-3
+SNU484またはPRL-3
-MKN45同所性胃腫瘍を宿する未治療またはPRL3-zumab治療マウス由来のマッチした尿および腫瘍試料におけるPRL-3タンパク質のウェスタンブロッティング。上部パネル、第28日(SNU-484)または第56日(MKN45)の切除胃。(B)多様な治療に供したマウス由来の同所性SNU-484およびMKN45腫瘍細胞凍結切片を、PRL3-zumabに関する免疫組織化学(パネルa~f;バー、20μm)、またはB細胞(パネルe~l)およびNK細胞マーカー(パネルm~r;バー、50μm)に関する免疫蛍光によって分析した。緑、それぞれ、B細胞およびNK細胞マーカーのCD45R/B220およびCD335/Nkp46染色;青、DAPI核染色。(C)PRL-3
+癌細胞に対するPRL3-zumabの提唱される作用機構を示すモデル:1)非慣用的な分泌(エクソソームPRL-3)、または壊死性PRL-3
+腫瘍細胞からの自発的な漏洩(遊離PRL-3)を通じて外在化したPRL-3抗原が、2)PRL3-zumab結合および腫瘍微小環境内での免疫複合体集積のベイト(bait)として作用し、続いて、3)抗腫瘍効果のためのエフェクターNKおよびB細胞の補充および活性化を生じる。
【
図7-1】CDRの位置を示す、ヒト化抗体配列。(A)重鎖配列、(B)軽鎖配列。
【
図7-2】CDRの位置を示す、ヒト化抗体配列。(A)重鎖配列、(B)軽鎖配列。
【
図8】ネズミ抗体クローンの配列(A)クローン#223および(B)クローン#318。
【
図10-1】PRL-3zumab配列分析。(A)CDR領域を同定し(グレーのボックス)、そして重要なドメイン配列(透明なボックス)を同定する、ヒト化配列の軽鎖配列整列。(B)CDR領域を同定し(グレーのボックス)、そして重要なドメイン配列(透明なボックス)を同定する、ヒト化配列の重鎖配列整列。
【
図10-2】PRL-3zumab配列分析。(A)CDR領域を同定し(グレーのボックス)、そして重要なドメイン配列(透明なボックス)を同定する、ヒト化配列の軽鎖配列整列。(B)CDR領域を同定し(グレーのボックス)、そして重要なドメイン配列(透明なボックス)を同定する、ヒト化配列の重鎖配列整列。
【
図11】PRL-3は、正常成人組織では発現されないが、ヒト胃腫瘍において強く発現される。(A)(a)多様な臓器由来の多数の正常ヒト組織、ならびに(B)GC患者由来のマッチした胃腫瘍および正常胃組織の、PRL-3発現に関する免疫組織化学。バー、50μm。
【
図12】PRL3-zumabは、PRL-3に特異的に結合するが、近縁のPRL-1またはPRL-2には結合しない。(A~C)PRL-1、PRL-2およびPRL-3タンパク質のヒトアイソフォームを、PRL3-zumab特異性の分析に用いた。(a)PRL3-zumabまたは抗GST抗体で探査した組換えGST-PRL1、GST-PRL2、およびGST-PRL3のウェスタンブロッティング。(b)組換えGST-PRL1、GST-PRL2、およびGST-PRL3タンパク質を用いた、PRL3-zumabに関するELISA。(c)PRL3-zumbaを用いた、GFP-PRL1、GFP-PRL2、およびGFP-PRL3を過剰発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の免疫蛍光染色。バー、40μm。
【
図13】PRL3-zumabは、マウスにおいて、PRL-3
+同所性胃腫瘍の腫瘍増殖を阻害する。8週齢の雄BALB/Cヌードマウスに、PRL-3陽性NUGC-4またはIM-95細胞株を移植して、同所性胃腫瘍を誘導した。実験終了時、可視性の腫瘍(黒で囲む)を測定し、そして体積を比較した。(a)未治療およびPRL3-zumab治療マウス由来のIM-95腫瘍を含む胃。最も右側のパネル、未治療およびPRL3-zumab治療マウスにおけるIM-95腫瘍の平均腫瘍体積を示すチャート。p=0.008、t検定;n=6、データは平均±S.D.に相当する。バー、10mm。(b)未治療およびPRL3-zumab治療マウス由来のNUGC-4腫瘍を含む胃。最も右側のパネル、未治療およびPRL3-zumab治療マウスにおけるNUGC-4腫瘍の平均腫瘍体積。p=0.003、t検定;n=4、データは平均±S.D.に相当する。バー、10mm。(C)PRL3-zumabは、in vivoでPRL3陽性胃腫瘍を抑制するが、ヒトIgGアイソタイプ対照はこれを抑制しない。未治療、ヒトIgG治療(hIgG)、およびPRL3-zumab治療マウスにおいて、8週齢雄BALB/Cヌードマウスに、PRL3陽性SNU-484腫瘍を移植した。P<0.001、一方向ANOVA;群あたり、n=4、データは平均±SEMに相当する。
***p<0.001、ターキーの事後検定(未治療対治療群)。
【
図14】術後PRL3-zumab療法は、PRL-3
+腫瘍の再発を抑制する。(A)PRL-3+ SNU-484細胞によって形成された異種移植片腫瘍を、腫瘍切除前に3週間増殖させた。続いて、マウスをプラセボ(未治療)またはPRL3-zumab(治療)群に分け、そして週2回7週間治療して、腫瘍再増殖を監視した。パネルa、3週終了時の腫瘍所持マウス外観。パネルb、腫瘍外科切除後のマウス外観、切除した腫瘍を下部パネルに示す。パネルc~d、切除および治療7週後のマウス外観。パネルe、切除部位で再発した切除腫瘍。パネルf、治療マウスにおいては腫瘍再発なし。バー、10mm。(B)マウスの未治療(n=10)および治療(n=8)群のKaplan Meier無再発生存分析。P<0.001、ログランク検定。
【
図15-1】PRL3-zumabは、胃内に移植されたPRL-3+ HCT116結腸直腸癌細胞によって形成された局所および転移性腹部腫瘍を阻害する。HCT116-luc2細胞を、マウス胃の胃漿膜下層内に移植して、胃微小環境への続発性結腸直腸癌転移を模倣した。PRL3-zumab治療は、胃微小環境におけるHCT116-luc2腫瘍の増殖を減少させた。(A)接種後3週間に渡る全体的in vivo腫瘍増殖のIVIS画像化。(B)(A)由来のマウスを、経時的に全動物IVIS強度変化に関して分析した。群あたり、n=4;p<0.001、二方向ANOVA。(C)3週終了時の切除胃における腫瘍負荷。(D)(C)由来の胃を、IVIS強度の相違に関して分析した。群あたり、n=4;p=0.01、t検定;データは平均±SEMに相当する。(E)3週終了時の腹壁内の転移性腫瘍負荷。(F)(E)由来の胃を、IVIS強度の相違に関して分析した。群あたり、n=4;p=0.0003、t検定;データは平均±SEMに相当する。
【
図15-2】PRL3-zumabは、胃内に移植されたPRL-3+ HCT116結腸直腸癌細胞によって形成された局所および転移性腹部腫瘍を阻害する。HCT116-luc2細胞を、マウス胃の胃漿膜下層内に移植して、胃微小環境への続発性結腸直腸癌転移を模倣した。PRL3-zumab治療は、胃微小環境におけるHCT116-luc2腫瘍の増殖を減少させた。(A)接種後3週間に渡る全体的in vivo腫瘍増殖のIVIS画像化。(B)(A)由来のマウスを、経時的に全動物IVIS強度変化に関して分析した。群あたり、n=4;p<0.001、二方向ANOVA。(C)3週終了時の切除胃における腫瘍負荷。(D)(C)由来の胃を、IVIS強度の相違に関して分析した。群あたり、n=4;p=0.01、t検定;データは平均±SEMに相当する。(E)3週終了時の腹壁内の転移性腫瘍負荷。(F)(E)由来の胃を、IVIS強度の相違に関して分析した。群あたり、n=4;p=0.0003、t検定;データは平均±SEMに相当する。
【
図16】エクソソーム会合PRL-3が、膀胱癌患者の尿に存在する。膀胱癌患者尿試料から精製したエクソソーム分画を、PRL3 CD63エクソソームマーカーに対する抗体で分析した。
【
図18】SGSet1患者コホートにおけるPRL-3発現の単変数および多変数Cox回帰分析。
【
図19】PRL3癌タンパク質は、癌細胞外に分泌される可能性もあり、そしてPRL3-zumabのベイトとして作用しうる。(A)血清不含培地中で48時間、胃癌(GC)細胞を培養した後の、細胞内タンパク質プール(細胞溶解物)および細胞外タンパク質プール(濃縮馴化培地)におけるPRL3タンパク質発現の分析。細胞外タンパク質分析のため、GC細胞の5つのプレート由来の馴化培地(50mL)から、まず、死亡細胞および細胞破片を除き、その後、遠心分離濃縮した(最終体積~0.2mL)。(B)多様な治療に供したマウス由来の同所性SNU-484およびMKN45腫瘍組織凍結切片を、抗ヒトIgG抗体を用いたPRL3-zumabに関する免疫組織化学によって分析した。バー、20μ<μM。
【
図20】PRL-3は、in vivoで腫瘍細胞表面上で非常に上方制御されるが、in vitroの培養癌細胞上では上方制御されない。(a)in vitro培養細胞およびex vivo腫瘍細胞の細胞表面プロファイルのサイトメトリー分析の実験概略。(b)対照(透明)、PRL3-zumab(ピンク)、またはセツキシマブ(CTX;グレー)抗体での細胞表面染色の代表的ヒストグラム。対照染色から与えられるバックグラウンドシグナルを減じた後、陽性ゲート(%pos)を決定した。(c)(b)におけるように試験した異なる抗体に関する%細胞表面陽性集団。データは平均±SEMに相当する。(d)培養細胞対腫瘍における、タンパク質の改変されたレベルを示す、EGFRおよびPRL-3に関するウェスタンブロット。GAPDH、装填対照。
【
図21-1】同所性肝臓腫瘍のPRL3-zumab抑制は、宿主FcγII/III受容体関与を必要とする。(a)同所性肝臓腫瘍モデルの概略。(b)6つのヒト癌細胞株におけるPRL-3発現のウェスタンブロット。GAPDH、装填対照。(c)同所性PRL-3+ MHCC-LM3肝臓腫瘍を所持するマウスは、プラセボ(未治療)に比較して、週2回5週間、100μg/用量のPRL3-zumab投与後(治療)、減少した腫瘍負荷を有した。バー、10mm。(d)第35日での未治療および治療群における平均肝臓腫瘍体積。p=0.0001、t検定;データは平均±SEMに相当する。(e)マウスの未治療(赤線)および治療(黒線)群のKaplan Meier生存分析。p=0.002、ログランク検定。(f)PRL3-zumab対PRL3-ミニボディのドメイン構築、および宿主免疫細胞上のFc受容体(FcR)と関与するこれらの能力を示す模式図。2.42G2モノクローナル抗体(mAb)は、FcRブロッカーとして機能し、損なわれていない(intact)IgGがFcRに結合するのを妨げる。
【
図21-2】同所性肝臓腫瘍のPRL3-zumab抑制は、宿主FcγII/III受容体関与を必要とする。(a)同所性肝臓腫瘍モデルの概略。(b)6つのヒト癌細胞株におけるPRL-3発現のウェスタンブロット。GAPDH、装填対照。(c)同所性PRL-3+ MHCC-LM3肝臓腫瘍を所持するマウスは、プラセボ(未治療)に比較して、週2回5週間、100μg/用量のPRL3-zumab投与後(治療)、減少した腫瘍負荷を有した。バー、10mm。(d)第35日での未治療および治療群における平均肝臓腫瘍体積。p=0.0001、t検定;データは平均±SEMに相当する。(e)マウスの未治療(赤線)および治療(黒線)群のKaplan Meier生存分析。p=0.002、ログランク検定。(f)PRL3-zumab対PRL3-ミニボディのドメイン構築、および宿主免疫細胞上のFc受容体(FcR)と関与するこれらの能力を示す模式図。2.42G2モノクローナル抗体(mAb)は、FcRブロッカーとして機能し、損なわれていない(intact)IgGがFcRに結合するのを妨げる。
【
図22-1】宿主FcγII/III受容体との相互作用は、NK細胞、B細胞、およびM1マクロファージの腫瘍微小環境へのPRL3-zumab誘導性補充に必須である。多様な治療に供したマウス由来の同所性MHCC-LM3肝臓腫瘍組織凍結切片を、(a)F4/80(汎マクロファージ)、(b)CD206(M2マクロファージ)、(c)CD86(M1マクロファージ)、(d)CD45/B220(B細胞)、または(e)CD335(NK細胞)に対する抗体を用いた免疫蛍光によって分析した。材料および方法に記載するように、腫瘍侵襲スコアを計算した。
*p<0.05、一方向ANOVA;データは平均±SEMに相当する。(g)第35日でのプラセボ(未治療)、PRL3-zumab単独、2.4G2 mAb、PRL3-zumab+2.4G2 mAb併用療法、ヒトIgG、またはPRL3-ミニボディで治療したマウス由来の切除肝臓の写真を撮影し、そして腫瘍体積を測定した。同所性腫瘍領域を黒線で囲む。バー、10mm。第35日での各群の平均肝臓腫瘍体積。p=0.003、一方向ANOVA;データは平均±SEMに相当する。
【
図22-2】宿主FcγII/III受容体との相互作用は、NK細胞、B細胞、およびM1マクロファージの腫瘍微小環境へのPRL3-zumab誘導性補充に必須である。多様な治療に供したマウス由来の同所性MHCC-LM3肝臓腫瘍組織凍結切片を、(a)F4/80(汎マクロファージ)、(b)CD206(M2マクロファージ)、(c)CD86(M1マクロファージ)、(d)CD45/B220(B細胞)、または(e)CD335(NK細胞)に対する抗体を用いた免疫蛍光によって分析した。材料および方法に記載するように、腫瘍侵襲スコアを計算した。
*p<0.05、一方向ANOVA;データは平均±SEMに相当する。(g)第35日でのプラセボ(未治療)、PRL3-zumab単独、2.4G2 mAb、PRL3-zumab+2.4G2 mAb併用療法、ヒトIgG、またはPRL3-ミニボディで治療したマウス由来の切除肝臓の写真を撮影し、そして腫瘍体積を測定した。同所性腫瘍領域を黒線で囲む。バー、10mm。第35日での各群の平均肝臓腫瘍体積。p=0.003、一方向ANOVA;データは平均±SEMに相当する。
【
図23-1】PRL-3は、多数のヒト腫瘍において頻繁に過剰発現される、一般的な癌ターゲットである。(a~e)(a)肝臓腫瘍、(b)肺腫瘍、(c)結腸腫瘍、(d)乳房腫瘍、および(e)腎臓腫瘍の腫瘍(T)対患者マッチ正常組織(n)対におけるPRL-3の完全ウェスタンブロット分析。(f~j)マッチ正常組織を伴わない、さらなる患者試料における(f)腎臓腫瘍、(g)膀胱腫瘍、(h)急性骨髄性白血病(AML)、(i)胃腫瘍、および(j)前立腺腫瘍の完全ウェスタンブロット分析。GAPDH、装填対照。各結果セットの右側に、相対分子量(kDa)を示す。
【
図23-2】PRL-3は、多数のヒト腫瘍において頻繁に過剰発現される、一般的な癌ターゲットである。(a~e)(a)肝臓腫瘍、(b)肺腫瘍、(c)結腸腫瘍、(d)乳房腫瘍、および(e)腎臓腫瘍の腫瘍(T)対患者マッチ正常組織(n)対におけるPRL-3の完全ウェスタンブロット分析。(f~j)マッチ正常組織を伴わない、さらなる患者試料における(f)腎臓腫瘍、(g)膀胱腫瘍、(h)急性骨髄性白血病(AML)、(i)胃腫瘍、および(j)前立腺腫瘍の完全ウェスタンブロット分析。GAPDH、装填対照。各結果セットの右側に、相対分子量(kDa)を示す。
【
図23-3】PRL-3は、多数のヒト腫瘍において頻繁に過剰発現される、一般的な癌ターゲットである。(a~e)(a)肝臓腫瘍、(b)肺腫瘍、(c)結腸腫瘍、(d)乳房腫瘍、および(e)腎臓腫瘍の腫瘍(T)対患者マッチ正常組織(n)対におけるPRL-3の完全ウェスタンブロット分析。(f~j)マッチ正常組織を伴わない、さらなる患者試料における(f)腎臓腫瘍、(g)膀胱腫瘍、(h)急性骨髄性白血病(AML)、(i)胃腫瘍、および(j)前立腺腫瘍の完全ウェスタンブロット分析。GAPDH、装填対照。各結果セットの右側に、相対分子量(kDa)を示す。
【
図24】PRL3-zumabがPRL-3+癌細胞を直接阻害可能であるかどうかを分析するin vitroアッセイ。
【
図25】同所性PRL-3+ SNU-484胃腫瘍に対する(scFv-CH3)2 PRL3-ミニボディの有効性。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の1つの側面において、抗体または抗原結合性断片を提供し、該抗体のアミノ酸配列は、アミノ酸配列i)~iii)、またはアミノ酸配列iv)~vi)、あるいは好ましくはアミノ酸配列i)~vi);
【0015】
【0016】
あるいは、配列(i)~(vi)の1もしくはそれより多くの配列の1もしくは2もしくは3アミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、その変異体を含んでもよい。
抗体または抗原結合性断片は、以下のCDR:
【0017】
【0018】
を取り込む少なくとも1つの軽鎖可変領域を含んでもよい。
抗体または抗原結合性断片は、以下のCDR:
【0019】
【0020】
を取り込む少なくとも1つの重鎖可変領域を含んでもよい。
抗体は、
図7に示すCDRを取り込む少なくとも1つの軽鎖可変領域を含んでもよい。抗体は、
図7に示すCDRを取り込む少なくとも1つの重鎖可変領域を含んでもよい。
【0021】
抗体は、
図7に示すアミノ酸配列の1つ、あるいは
図7に示すV
L鎖アミノ酸配列のアミノ酸配列の1つに、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つの軽鎖可変領域(V
L)を含んでもよい。抗体は、
図7に示すアミノ酸配列の1つに、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するV
L鎖アミノ酸配列を有し、そして以下のCDR配列:
【0022】
【0023】
を含んでもよい。
抗体は、
図7に示すアミノ酸配列の1つ、あるいは
図7に示すV
H鎖アミノ酸配列のアミノ酸配列の1つに、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つの重鎖可変領域(V
H)を含んでもよい。抗体は、
図7に示すアミノ酸配列の1つに、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するV
H鎖アミノ酸配列を有し、そして以下のCDR配列:
【0024】
【0025】
を含んでもよい。
抗体は、
図7に示すアミノ酸配列の1つ(あるいは
図7に示すV
L鎖アミノ酸配列のアミノ酸配列の1つに、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列)を含む少なくとも1つの軽鎖可変領域、および
図7に示すアミノ酸配列の1つ(あるいは
図7に示すV
H鎖アミノ酸配列のアミノ酸配列の1つに、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列)を含む少なくとも1つの重鎖可変領域を含んでもよい。
【0026】
抗体はPRL3に結合してもよい。抗体は、任意に、上述のようなアミノ酸配列構成要素を有してもよい。抗体は、IgA、IgD、IgE、IgMまたはIgMであってもよく、好ましくはIgGである。1つの態様において、PRL3に結合する、本明細書に記載するような抗体または抗原結合性断片を含む、任意に単離された、in vitro複合体を提供する。
【0027】
本発明の1つの側面において、以下のCDR:
【0028】
【0029】
を含む、単離重鎖可変領域ポリペプチドを提供する。
本発明の1つの側面において:
重鎖が、HC-CDR1配列(配列番号1)、HC-CDR2配列(配列番号2)、HC-CDR3配列(配列番号3)に、それぞれ、少なくとも85%の全体の配列同一性を有するHC-CDR1、HC-CDR2、HC-CDR3を含み、そして軽鎖が、LC-CDR1配列(配列番号4)、LC-CDR2配列(配列番号5)、LC-CDR3配列(配列番号6)に、それぞれ、少なくとも85%の全体の配列同一性を有するLC-CDR1、LC-CDR2、LC-CDR3を含む
重鎖および軽鎖可変領域配列を含む、抗体または抗原結合性断片を提供する。
【0030】
いくつかの態様において、配列同一性の度合いは、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つであってもよい。
【0031】
本発明の別の側面において、任意に単離され、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗体または抗原結合性断片であって:
重鎖配列が、
図7に示す重鎖配列に少なくとも85%の配列同一性を有し、そして;
軽鎖配列が、
図7に示す軽鎖配列に少なくとも85%の配列同一性を有する
前記抗体または抗原結合性断片を提供する。
【0032】
いくつかの態様において、配列同一性の度合いは、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つであってもよい。
【0033】
いくつかの態様において、抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドは、配置HCFR1:HC-CDR1:HCFR2:HC-CDR2:HCFR3:HC-CDR3:HCFR4にしたがって、CDR間に可変領域重鎖フレームワーク配列をさらに含む。フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来であってもよい。
【0034】
いくつかの場合、抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドは:
【0035】
【0036】
より選択される重鎖配列を有する。
本発明の1つの側面において、任意に、本明細書に記載するような重鎖可変領域ポリペプチドと組み合わされた、単離軽鎖可変領域ポリペプチドであって、以下のCDR:
【0037】
【0038】
を含む、前記軽鎖可変領域ポリペプチドを提供する。
いくつかの態様において、抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドは、配置LCFR1:LC-CDR1:LCFR2:LC-CDR2:LCFR3:LC-CDR3:LC
FR4にしたがって、CDR間に可変領域軽鎖フレームワーク配列をさらに含む。フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来であってもよい。
【0039】
いくつかの場合、抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドは:
【0040】
【0041】
より選択される軽鎖配列を含む。
いくつかの場合、抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドは:
【0042】
【0043】
より選択されるアミノ酸配列の2、3、4、5、6、またはすべてを含む。
抗体は、
図7に示すアミノ酸配列の1つ、あるいは
図7に示すアミノ酸配列の1つに、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つの軽鎖可変領域(V
L)および/または重鎖可変領域(V
H)を含み、そして以下のCDR配列:
【0044】
【0045】
を含み、そして以下の配列:
【0046】
【0047】
の少なくとも1つを含有してもよい。
抗体は、
図7に示すアミノ酸配列の1つ、あるいは
図7に示すアミノ酸配列の1つに、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つの軽鎖可変領域(V
L)および/または重鎖可変領域(V
H)を含んでもよい。
【0048】
抗体は:配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24または配列番号25、あるいはアミノ酸配列配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24または配列番号25に、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列より選択される少なくとも1つの軽鎖可変領域(VH)を含んでもよい。
【0049】
好ましくは、抗体は:配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21または配列番号22、あるいはアミノ酸配列配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21または配列番号22に、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列より選択される軽鎖可変領域(VH)を含む。
【0050】
抗体は:配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、または配列番号15、あるいはアミノ酸配列配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、または配列番号15に、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列より選択される少なくとも1つの軽鎖可変領域(VL)を含んでもよい。
【0051】
好ましくは、抗体は:配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12、あるいはアミノ酸配列配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12に、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%
、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を有するアミノ酸配列より選択される軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0052】
抗体は、以下のCDR配列:
【0053】
【0054】
を含み、そして以下の配列:
【0055】
【0056】
を含有し;そしてPRL3に結合可能であり、そしてPRL3の生物学的機能をアンタゴナイズ可能であってもよい。
いくつかの態様において、抗体または抗体結合性断片は、ヒト定常領域をさらに含んでもよい。例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の1つより選択されるものである。
【0057】
いくつかの態様において、抗体または抗体結合性断片は、ネズミ定常領域をさらに含んでもよい。例えば、IgG1、IgG2A、IgG2BおよびIgG3の1つより選択されるものである。
【0058】
抗体は好ましくは、全抗体、あるいはFcドメインを含む抗体または抗体断片である。抗体または抗体断片には、CH1およびCH2ドメインの一方または両方が含まれてもよい。好ましくは、抗体にはCH2ドメインが含まれる。抗体は、CH1およびCH2ドメインの両方を含有してもよい。好ましくは、抗体はFab’、F(ab)’2断片ではなく、そして/またはscFvではなく、そして/またはミニボディではない。好ましくは、抗体はIgG免疫グロブリンである。
【0059】
いくつかの側面において、治療しようとする個体は、免疫適格性である。個体は、免疫適格性であることが決定されていてもよい。個体は、NK細胞および/またはB細胞を産生することが決定されていてもよい。個体は、NK細胞、および/またはB細胞を、例えばサイトカインの投与を通じて、あるいはNK細胞および/またはB細胞の産生および/または活性化を減少させることが知られる剤の投与を停止することによって、NK細胞お
よび/またはB細胞の産生および/または活性化を刺激するよう治療されていてもよい。
【0060】
本発明の別の側面において、組成物、例えば薬学的組成物または薬剤を提供する。組成物は、本明細書に記載するような抗体、抗原結合性断片、またはポリペプチド、および少なくとも1つの薬学的に許容されうるキャリアー、賦形剤、アジュバントまたは希釈剤を含んでもよい。
【0061】
本発明の別の側面において、本明細書に記載するような抗体、抗原結合性断片、またはポリペプチドをコードする単離核酸を提供する。核酸は、
図7に示す配列、または遺伝暗号の結果として縮重しているコーディング配列をコードするか、あるいは該配列と少なくとも70%、任意に、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの同一性を有するヌクレオチド配列を有してもよい。
【0062】
抗体はPRL3に結合してもよい。抗体は、アミノ酸配列KAKFYNおよび/またはHTHKTRを含むエピトープに結合してもよい。抗体は、両方の配列に結合可能であってもよい。
【0063】
本発明の1つの側面において、本明細書記載の核酸を含むベクターを提供する。本発明の別の側面において、ベクターを含む宿主細胞を提供する。例えば、宿主細胞は、真核細胞、または哺乳動物、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、もしくはヒトであってもよく、あるいは原核細胞、例えば大腸菌(E. coli)であってもよい。本発明の1つの側面において、本明細書に記載するような抗体、または抗原結合性断片またはポリペプチドを作製するための方法であって、抗体、または抗原結合性断片またはポリペプチドをコードするベクターの発現に適した条件下で、本明細書に記載するような宿主細胞を培養し、そして抗体、または抗原結合性断片またはポリペプチドを回収する工程を含む、前記方法を提供する。
【0064】
本発明の別の側面において、療法において、または医学的治療法において使用するための、抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドを提供する。本発明の別の側面において、T細胞機能不全障害の治療において使用するための、本明細書に記載するような抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドを提供する。本発明の別の側面において、T細胞機能不全障害の治療において使用するための薬剤または薬学的組成物の製造における、本明細書に記載するような抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドの使用を提供する。
【0065】
本発明の別の側面において、PRL3を含有するかまたは含有すると推測される試料を、本明細書に記載するような抗体または抗原結合性断片と接触させ、そして抗体または抗原結合性断片およびPRL3の複合体の形成を検出する工程を含む方法を提供する。
【0066】
本発明の別の側面において、被験体において、疾患または状態を診断する方法であって、in vitroで、被験体由来の試料を、本明細書に記載するような抗体または抗原結合性断片と接触させ、そして抗体または抗原結合性断片およびPRL3の複合体の形成を検出する工程を含む、前記方法を提供する。
【0067】
本発明のさらなる側面において、in vitroで、PRL3を検出するための、本明細書に記載するような抗体または抗原結合性断片の使用を提供する。本発明の別の側面において、in vitro診断剤としての、本明細書に記載するような抗体または抗原結合性断片の使用を提供する。
【0068】
本発明の方法において、抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドを、本明細書に記載
するような組成物として提供してもよい。
本発明の任意の側面において、抗体は、好ましくは、他のPRLホスファターゼ、例えばPRL1またはPRL2よりも、PRL3に特異的に結合する。
【0069】
抗体はIgGであってもよい。抗体は、約140~160kDa、好ましくは約150kDaの分子量を有してもよい。
いくつかの態様において、抗体はPRL3-ZUMABであってもよい。
【0070】
本明細書にやはり開示するのは、癌の治療のための薬剤製造のための、本明細書に開示するようなヒト化抗体または抗原結合性断片の使用である。
他の側面において、癌を治療する方法において使用するためのヒト化抗体または抗体結合性断片を提供する。抗体は、腫瘍形成を阻害し、そして/または腫瘍転移を阻害するために有用であってもよい。抗体は、腫瘍サイズを減少させるために有用であってもよい。治療される個体は、治療されていない個体に比較して、または治療前の同じ個体に比較して、例えば、特定の腫瘍の腫瘍サイズにおける1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれより多い減少、または腫瘍数の減少、あるいはその両方を示してもよい。
【0071】
やはり提供するのは、本明細書に開示するような、ヒト化抗体または抗体結合性断片を投与する工程を含む、癌を治療する方法である。
癌は、PRL3発現または過剰発現癌であってもよい。癌は胃癌であってもよい。
【0072】
ヒト化抗体または抗体結合性断片を、静脈内投与してもよい。該抗体を、治療しようとする癌と離れた位置で投与してもよい。
いくつかの方法において、患者は、以前、化学療法、特に代謝拮抗剤療法、例えば5-FUを投与されていない。いくつかの場合、患者は以前、こうした療法を受けておらず、または癌のために、例えば胃癌のためにこうした治療を受けていない。いくつかの場合、抗体は別の剤と同時投与されない(すなわち抗体単剤療法)。いくつかの場合、抗体は5-FUと同時投与されない。
【0073】
いくつかの方法において、患者は、損なわれた免疫系を持たないことが決定されている。特に、患者は、正常範囲内の白血球カウントを有することが決定されていてもよい。特に、患者は、白血球減少症を持たないことが決定されていてもよい。患者は、正常範囲内の好中球、リンパ球、単球、赤血球または血小板カウントを有することが決定されていてもよい。患者は、対照、例えば損なわれた免疫系を持たないことが知られている個体由来のカウント、または確立された正常値と有意には異ならない白血球、好中球、リンパ球、単球、赤血球または血小板カウントを有してもよい。例えば、患者は、血液マイクロリットル当たり、約4,500~約10,000の間の白血球を有すると決定されてもよい。
【0074】
いくつかの側面において、本発明は、ヒト化抗PRL3抗体または抗体断片での治療のための患者を選択するための方法であって、患者由来の尿試料において、PRL3の存在を決定する工程を含む、前記方法を提供する。いくつかの場合、方法は、患者由来の尿試料において、PRL3のレベルを決定する工程を含む。いくつかの場合、患者は、胃癌、鼻咽頭癌、膀胱癌、肺癌、乳癌または前立腺癌を有してもよい。
【0075】
いくつかの場合、個体は、PRL3過剰発現癌の家族歴を有するか、またはPRL3過剰発現癌を発展させる可能性を有すると同定されている。いくつかの場合、個体は、PRL3過剰発現癌を有し、そしてその癌の転移のリスクがあると見なされる。
【0076】
別の側面において、本明細書において、PRL3の細胞局在を決定する工程を伴う方法を提供する。細胞表面上の細胞PRL3の比率の増加は、個体が癌を有することを示しうる。本明細書において、細胞におけるPRL3の細胞局在を決定する工程を含む方法であって、細胞表面でのPRL3の発現が細胞が癌性であることを示す、前記方法を提供する。
【0077】
方法には、細胞表面上のPRL3の存在または増加が、個体が癌を有することを示しうる、癌の診断法が含まれる。いくつかの場合、細胞におけるPRL3の量は、非癌性対照試料と同じであるが、PRL3の局在が、非癌性対照と比較した際に変化していてもよい。
【0078】
他の方法には、細胞が癌性であるかどうかを決定するための方法であって、細胞表面でのPRL3の存在を決定する工程を含む、前記方法が含まれる。対照細胞に比較した際のPRL3のレベルまたは比率の増加は、個体が、癌性であるかまたは癌性になるであろうことを示しうる。
【0079】
方法は、試料におけるPRL3の細胞局在に基づいて、抗癌療法のための個体の選択を伴ってもよい。いくつかの場合、方法は、こうして選択された個体への抗癌療法の投与を含む。
【0080】
いくつかの場合、方法は、2またはそれより多い時点に採取された、患者由来の2またはそれより多い試料におけるPRL3の細胞局在を決定する工程を含んでもよい。細胞表面上のPRL3量の変化は、個体における癌の増加または減少を示しうる。経時的な細胞表面PRL3の増加は、個体が癌を発展させているか、または癌が悪化していることを示しうる。経時的な細胞表面PRL3の減少は、癌が減少しているか、または療法が癌の治療を生じたことを示しうる。細胞表面でのPRL3レベルの増加または不変は、さらなるまたは代替の抗癌療法が必要であることを示しうる。したがって、細胞表面でのPRL3レベルを、さらなるまたは代替の抗癌療法のために個体を選択するために使用してもよい。
【0081】
細胞表面での2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍多いPRL3の増加は、個体が癌を有し、そして/または細胞が癌性であるか、あるいは個体を治療のために選択すべきであることを示しうる。細胞表面でのPRL3のレベルを対照に比較してもよい。
【0082】
試料は血液試料または血清試料であってもよい。試料は尿試料であってもよい。癌は腫瘍試料または腫瘍周囲の組織の試料であってもよい。方法は、試料を得る工程を含んでもよいし、または個体から以前得た試料に対して、方法を行ってもよい。
【0083】
診断および検出の方法を、in vitroまたはex vivoで行ってもよく、そしていくつかの場合、方法は、個体から試料を得る工程を含まない。
説明
抗体
本発明記載の抗体は、好ましくは、任意に、5pM~8pM、好ましくは6~7pmの範囲、好ましくは約6.3pMのKdで、PRL3(抗原)に結合する。いくつかの場合、抗体は、およそ7x10-5s-1のオフ速度を有する。例えば、約1x10-5s-1および1x10-6s-1の間である。
【0084】
いくつかの態様において、本発明記載の抗体は、PRL3に結合するが、PRL1またはPRL2に結合しない。
本発明記載の抗体は、単離型で提供されてもよい。
【0085】
「抗体」によって、本発明者らは、断片またはその誘導体、あるいは合成抗体または合成抗体断片も含める。
モノクローナル抗体技術に関連した今日の技術を考慮すると、抗体は、大部分の抗原に対して調製可能である。抗原結合部分は、抗体の部分(例えばFab断片)または合成抗体断片(例えば一本鎖Fv断片[ScFv])であってもよい。選択した抗原に対する適切なモノクローナル抗体は、既知の技術、例えば、“Monoclonal Antibodies: A manual of techniques”, H Zola(CRC Press, 1988)に、そして“Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications”, J G R Hurrell(CRC Press, 1982)に開示されるものによって調製可能である。キメラ抗体は、Neubergerら(1988, 8th International Biotechnology Symposium Part 2, 792-799)によって論じられる。
【0086】
モノクローナル抗体(mAb)は、本発明の方法において有用であり、そして抗原上の単一のエピトープを特異的にターゲティングする抗体の均質な集団である。したがって、PRL3に結合するmAbは、癌の治療に有用でありうる。
【0087】
FabおよびFab2断片などの、抗体の抗原結合性断片もまた提供してもよく、遺伝子操作した抗体および抗体断片もまた提供してもよい。抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ドメインは、抗原認識に関与し、この事実は、初期のプロテアーゼ消化実験によって最初に認識された。さらなる確認は、齧歯類抗体の「ヒト化」によって見出された。齧歯類起源の可変ドメインを、ヒト起源の定常ドメインに融合させて、生じる抗体が、齧歯類親抗体の抗原特異性を保持するようにしてもよい(Morrisonら(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 6851-6855)。
【0088】
本発明記載の抗体および抗体結合性断片は、ヒト化されている。ヒト化抗体は、そのタンパク質配列が、ヒトにおいて天然に産生される抗体変異体に対する類似性を増加させるように修飾されている、非ヒト種由来の抗体である。「ヒト化」プロセスは、通常、ヒトに対する投与のために開発されたモノクローナル抗体に適用される。「ヒト化」プロセスは、特異的抗体を開発するプロセスが、非ヒト免疫系、例えばマウスにおける生成を伴う際に必要である可能性があり、これはこうした抗体が、ヒト患者に投与した際に免疫原性でありうるためである。ヒト化は、分子のFab部分における選択的アミノ酸の置換を伴いうる。あるいは、ヒト化は、ヒト抗体足場への、適切なCDRコードセグメントの挿入を伴ってもよい。
【0089】
抗原特異性は可変ドメインによって与えられ、そして定常ドメインからは独立であることは、すべて1またはそれより多くの可変ドメインを含有する抗体断片の細菌発現を伴う実験から知られる。これらの分子には、Fab様分子(Betterら(1988) Science 240, 1041); Fv分子(Skerraら(1988) Science 240, 1038); VHおよびVLパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを通じて連結される、一本鎖Fv(ScFv)分子(Birdら(1988)
Science 242, 423; Hustonら(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5879);ならびに単離Vドメインを含む単一ドメイン抗体(dAb)(Wardら(1989) Nature 341, 544)が含まれる。特異的結合部位を保持する抗体断片合成に関与する技術の一般的な概説は、Winter & Milstein(1991) Nature 349
, 293-299中に見出されるはずである。
【0090】
「ScFv分子」によって、本発明者らは、VHおよびVLパートナードメインが、例えば柔軟なオリゴペプチドによって共有結合されている分子を意味する。
Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体断片は、すべて大腸菌において発現可能であり、そして大腸菌から分泌可能であり、したがって、多量の前記断片の容易な産生が可能になる。
【0091】
全抗体、およびF(ab’)2断片は「二価」である。「二価」によって、本発明者らは、前記抗体およびF(ab’)2断片が2つの抗原結合部位を有することを意味する。対照的に、Fab、Fv、ScFvおよびdAb断片は一価であり、1つの抗原結合部位しか持たない。また、当該技術分野に周知であるようなファージディスプレイ技術を用いて、PRL3に結合する合成抗体を作製してもよい。
【0092】
非修飾親抗体に比較して、抗原に対する抗体のアフィニティが改善されている修飾抗体を生成する、アフィニティ成熟プロセスによって抗体を産生してもよい。当該技術分野に知られる方法、例えばMarksら, Rio/Technology 10:779-783(1992); Barbasら Proc Nat. Acad. Sci. USA 91:3809-3813(1994); Schierら Gene 169:147-155(1995); Yeltonら J. Immunol. 155:1994-2004(1995); Jacksonら, J. Immunol. 154(7):331 0-15 9(1995);およびHawkinsら, J. Mol. Biol. 226:889-896(1992)によって、アフィニティ成熟抗体を産生してもよい。
【0093】
本発明記載の抗体は、好ましくはPRL3に対する特異的結合を示す。ターゲット分子に特異的に結合する抗体は、好ましくは、他のターゲットに結合するよりもより高いアフィニティで、および/またはより長い期間、ターゲットに結合する。1つの態様において、非関連ターゲットに対する抗体の結合の度合いは、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるような、ターゲットに対する抗体の結合の約10%未満である。
【0094】
本発明記載の抗体は、好ましくは、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦100pMの1つの解離定数(Kd)を有する。抗体のそのターゲットに対する結合アフィニティは、しばしば、解離定数(Kd)の観点で記載される。結合アフィニティは、当該技術分野に知られる方法によって、例えば抗体のFab型および抗原分子で行う放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって、測定してもよい。
【0095】
本発明記載の抗体は、該抗体が結合する抗原の生物学的活性を阻害するかまたは減少させる「アンタゴニスト」抗体であってもよい。PRL3の遮断は、PRL3のホスファターゼ活性を阻害するかまたは減少させてもよい。いくつかの場合、抗体は、PRL3に結合するが、必ずしもその活性に影響を及ぼさない。
【0096】
特定の方法において、抗体はPRL3-ZUMAB、またはPRL3-ZUMABの変異体である。PRL3-ZUMABは、以下のCDR配列を含む:
【0097】
【0098】
CDR配列はKabat定義によって決定される。
本明細書に記載するようなCDRを有する抗体分子の構造は、一般的に、CDRが、再編成免疫グロブリン遺伝子によってコードされる、天然存在VHおよびVL抗体可変ドメインのCDRに対応する位置に位置する、抗体分子またはそのかなりの部分の重鎖または軽鎖配列のものであろう。免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置は、Kabat, E.A.ら, Sequences of Proteins of Immunological Interest. 第4版 US Department of Health and Human Services. 1987、およびその改訂版を参照することによって決定可能である。いくつかの学術的および商業的オンライン供給源が、このデータベースを検索するために利用可能である。例えば、Martin, A.C.R. Accessing the Kabat Antibody Sequence Database by Computer PROTEINS: Structure, Function and Genetics, 25(1996), 130-133、および関連するオンライン供給源、現在は、ワールドワイドウェブアドレス、bioinf.org.uk/abs/simkab.htmlを参照されたい。
【0099】
本発明記載の抗体は、PRL3-ZUMABまたは配列番号1~6の1つのCDRを含んでもよい。本発明記載の抗体において、6つのCDR配列の1または2または3または4は多様であってもよい。変異体は、6つのCDR配列の1または2において、1または2のアミノ酸置換を有してもよい。
【0100】
抗PRL3-ZUMABクローンのV
HおよびV
L鎖のアミノ酸配列を
図7に示す。
軽鎖および重鎖CDRはまた、いくつかの異なるフレームワーク領域と組み合わせて特に有用でありうる。したがって、LC-CDR1~3またはHC-CDR1~3を有する軽鎖および/または重鎖は、代替フレームワーク領域を所持しうる。適切なフレームワーク領域が当該技術分野に周知であり、そして例えば、本明細書に援用されるM. Lefranc & G. Le:franc (2001) ”The Immunoglobulin FactsBook”, Academic Pressに記載される。
【0101】
本明細書において、抗体は、
図7のV
Hおよび/またはV
Lアミノ酸配列の1またはそれより多くに、高い割合の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むV
Hおよび/またはVL鎖を有してもよい。
【0102】
例えば、本発明記載の抗体には、PRL3に結合し、そして
図7に示すアミノ酸配列の1つのV
H鎖アミノ酸配列に、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の1つの配列同一性を
有するアミノ酸配列を含む、V
H鎖を有する抗体が含まれる。
【0103】
本発明記載の抗体は、検出可能に標識されるか、または少なくとも検出可能であってもよい。例えば、抗体を、放射性原子または着色分子または蛍光分子または任意の他の方法で容易に検出可能な分子で標識してもよい。適切な検出可能分子には、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、酵素基質、および放射標識が含まれる。結合部分を検出可能標識で直接標識してもよいし、または間接的に標識してもよい。例えば、結合部分は、それ自体標識されている別の抗体によって検出可能な、非標識抗体であってもよい。あるいは、第二の抗体が該抗体に結合したビオチンを有してもよく、そしてビオチンに対する標識ストレプトアビジンの結合を用いて、第一の抗体を間接的に標識する。
【0104】
多様な抗体断片を本明細書に記載するが、抗体は、好ましくは、抗体結合性断片(Fab)、および結晶化可能断片(Fc)を含有する、全抗体である。抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖からなってもよい。抗体は、可変断片(Fv)を含み、これは、抗体の抗原特異性、および定常ドメインを提供する。
【0105】
本発明記載の抗体断片には、好ましくはCH2ドメインが含まれる。抗体のCH2ドメインは、エフェクター機能を仲介し、そして抗体安定性を保持する際に重要な役割を果たす。したがって、本発明の抗体断片は、好ましくは、Fab’、F(ab)’2、scFvまたはミニボディではない。
【0106】
本発明記載の抗体および断片は、好ましくは、Fcγ(Fc-ガンマ)受容体、好ましくはFcγII(CD32)およびFcγIII(CD16)受容体と相互作用可能である。
【0107】
検出法
本明細書記載の抗体または抗原結合性断片を、PRL3に対する抗体または抗原結合性断片の結合を伴う方法で用いてもよい。こうした方法は、抗体または抗原結合性断片およびPRL3の結合した複合体の検出を伴ってもよい。こうしたものとして、1つの態様において、PRL3を含有するかまたは含有すると推測される試料を、本明細書に記載するような抗体または抗原結合性断片と接触させ、そして抗体または抗原結合性断片およびPRL3の複合体の形成を検出する工程を含む方法を提供する。
【0108】
サンドイッチアッセイ、例えばELISAなどのイムノアッセイを含む適切な方法形式は、当該技術分野に周知である。該方法は、抗体もしくは抗原結合性断片、またはPRL3、あるいは両方を、検出可能標識、例えば蛍光、発光または放射標識で標識することを伴ってもよい。
【0109】
この種の方法は、PRL3の検出およびまたは定量化を必要とする疾患または状態の診断法の基礎を提供しうる。こうした方法を、in vitroで、患者試料に対して、または患者試料のプロセシング後に行ってもよい。試料をひとたび収集したら、診断のin
vitro法が実行されるために、患者が居合わせる必要はなく、そしてしたがって、方法は、ヒトまたは動物の身体に対して行わないものであってもよい。
【0110】
こうした方法は、患者試料に存在するPRL3の量を決定することを伴ってもよい。該方法は、診断に到達するプロセスの一部として、標準または参照値に対して、決定した量を比較する工程をさらに含んでもよい。他の診断試験を、本明細書に記載するものと組み合わせて用いて、診断または予後診断の正確さを増進するか、あるいは本明細書に記載する試験を用いることによって得られる結果を確認してもよい。
【0111】
PRL3の試料における検出を、患者における癌性状態の診断、癌性状態に対する素因の診断の目的のために、あるいは癌性状態の予後を提供する(予言する)ために、用いてもよい。診断または予後は、存在する(以前診断された)良性または悪性であってもよい癌性状態に関連してもよく、推測される癌性状態に関連してもよく、あるいは患者における癌性状態(以前未診断であってもよい)に関してスクリーニングすることに関連してもよい。
【0112】
任意の組織または体液から試料を採取してもよい。試料は:ある量の血液;フィブリン塊および血球を除去した後に得られる、血液の液体部分を含んでもよい、個体の血液由来のある量の血清;組織試料または生検;あるいは前記個体から単離された細胞を含んでもよいし、またはこれらに由来してもよい。
【0113】
本発明記載の方法は、好ましくはin vitroで行われる。用語「in vitro」は、培養中の細胞を用いた実験を含むよう意図され、一方、用語「in vivo」は、損なわれていない多細胞生物を用いた実験を含むよう意図される。
【0114】
療法適用
本発明記載の抗体、抗原結合性断片およびポリペプチド、ならびにこうした剤を含む組成物を、医学的治療の方法において使用するために提供してもよい。治療を、治療を必要とする疾患または状態を有する被験体に提供してもよい。疾患または状態は、転移性癌を含む癌であってもよい。
【0115】
抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドの投与は、好ましくは、「療法的有効量」であり、これは、個体に利益を示すために十分な量である。投与する実際の量、ならびに投与速度および時間経過は、治療する疾患の性質および重症度に応じるであろう。治療の処方、例えば投薬量の決定等は、開業医および他の医師の責任の範囲内であり、そして典型的には、治療しようとする障害、個々の患者の状態、送達部位、投与法、および医師に知られる他の要因が考慮されるであろう。上述の技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第20版, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins刊行に見出されうる。
【0116】
本明細書記載の方法および組成物は、治療を受けていない個体に比較して、治療が適用された個体において、測定可能な判断基準での改善を適切に可能にする。
この目的に向けて、癌の進行または患者の健康を反映する、いくつかの判断基準を設計してもよい。有用な判断基準には、腫瘍サイズ、腫瘍寸法、腫瘍の最大寸法、腫瘍数、腫瘍マーカー(例えばアルファ-フェトタンパク質)の存在、転移の度合いまたは数等が含まれてもよい。
【0117】
したがって、例えば、治療される個体は、適切なアッセイまたは試験によって測定した際、腫瘍サイズまたは数の減少を示しうる。治療された個体は、治療されていない個体に比較して、例えば、特定の腫瘍の腫瘍サイズにおける1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれより多い減少、または腫瘍数の減少、あるいはその両方を示してもよい。
【0118】
用語、増殖性障害は、本明細書において、細胞周期の制御を必要とする、いかなる障害も含むよう、最も広い意味で用いられる。特に、増殖性障害には、悪性および前新生物障害が含まれる。本明細書記載の方法および組成物は、腺癌、例えば:小細胞肺癌、ならびに腎臓、子宮、前立腺、膀胱、卵巣、結腸および乳房の癌の治療または診断に関して特に
有用である。例えば、治療可能でありうる悪性疾患には、急性および慢性白血病、リンパ腫、黒色腫、肉腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、リンパ管内皮肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、リンパ管肉腫、滑膜腫、中皮腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、扁平細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、絨毛癌、腎細胞癌、肝腫瘍、胆管癌、セミノーマ、胚性癌、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴覚神経腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫および網膜芽細胞腫が含まれる。
【0119】
本文書の目的のため、用語「癌」は、以下の任意の1またはそれより多くを含んでもよい:急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、膀胱癌、血液癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、女性生殖器系癌、男性生殖器系癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児横紋筋肉腫、小児肉腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸および直腸癌、結腸癌、子宮内膜癌、子宮内膜肉腫、食道癌、眼の癌、胆嚢癌、胃癌、胃腸管癌、毛様細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキン病、下咽頭癌、カポジ肉腫、腎癌、喉頭癌、白血病、白血病、肝臓癌、肺癌、悪性線維性組織球腫、悪性胸腺腫、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄腫、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経系癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞新生物、原発性CNSリンパ腫、前立腺癌、直腸癌、呼吸器、網膜芽細胞腫、唾液腺癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織肉腫、胃癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、泌尿器系癌、子宮肉腫、膣癌、血管系、ワルデンストレーム・マクログロブリン血症およびウィルムス腫瘍。
【0120】
治療は、癌の症状の軽減を生じてもよいし、または癌の完全な治療を生じてもよい。治療は癌の進行を遅延させてもよいし、または癌の症状の悪化を防止してもよい。
薬学的に有用な組成物および薬剤の配合
本発明記載の抗体、抗原結合性断片およびポリペプチドは、臨床的使用のための薬学的組成物として配合されてもよく、そして薬学的に許容されうるキャリアー、希釈剤、賦形剤またはアジュバントを含んでもよい。
【0121】
本発明にしたがって、薬学的に有用な組成物の産生のためにも方法を提供し、こうした産生法は:本明細書に記載するような抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドを単離し;そして/または本明細書に記載するような単離抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドを、薬学的に許容されうるキャリアー、アジュバント、賦形剤または希釈剤と混合する工程より選択される1またはそれより多い工程を含んでもよい。
【0122】
例えば、本発明のさらなる側面は、T細胞機能不全障害の治療において使用するための薬剤または薬学的組成物を配合するかまたは産生する方法であって、本明細書に記載するような抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドを、薬学的に許容されうるキャリアー、アジュバント、賦形剤または希釈剤と混合することによって、薬学的組成物または薬剤を配合する工程を含む、前記方法に関する。
【0123】
癌
癌は、任意の望ましくない細胞増殖(または望ましくない細胞増殖によって現れる任意の疾患)、新生物または腫瘍、あるいは望ましくない細胞増殖、新生物または腫瘍に対するリスクまたは素因の増加であってもよい。癌は、良性または悪性であってもよく、そして原発性または続発性(転移性)であってもよい。新生物または腫瘍は、細胞の任意の異常な成長または増殖であってもよく、そして任意の組織に位置していてもよい。組織の例には、副腎、副腎髄質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、盲腸、中枢神経
系(脳を含むまたは除く)、小脳、子宮頸部、結腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば腎上皮)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝臓、肺、リンパ、リンパ節、リンパ芽球、上顎骨、縦隔、腸間膜、子宮筋、鼻咽頭、網(omentume)、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹膜、胸膜、前立腺、唾液腺、S状結腸、皮膚、小腸、柔組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃腺、気管、子宮、外陰部、白血球が含まれる。
【0124】
治療されうる腫瘍は、神経系または非神経系腫瘍であってもよい。神経系腫瘍は、中枢または末梢神経系のいずれから生じてもよく、例えば神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、神経線維腫、上衣腫、シュワン腫、神経線維肉腫、星状細胞腫および乏突起神経膠腫であってもよい。非神経系癌/腫瘍は、任意の他の非神経組織で生じてもよく、例には、黒色腫、中皮腫、リンパ腫、骨髄腫、白血病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、肝細胞腫、類表皮癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸癌、卵巣癌、膵臓癌、胸腺癌、NSCLC、血液学的癌および肉腫が含まれる。
【0125】
特に好ましい側面において、癌はPRL3を発現している癌である。いくつかの場合、癌はPRL3を過剰発現している癌である。すなわち、癌は、PRL3の過剰発現と関連付けられるか、または過剰発現によって引き起こされる。PRL3は、癌において機能性である必要はないが、その代わり癌細胞の標識またはアーチファクトでありうる。特に好ましい側面において、癌は、胃癌、鼻咽頭癌、膀胱癌、肺癌、乳癌または前立腺癌である。癌は、急性骨髄性白血病、結腸癌または卵巣癌であってもよい。いくつかの場合、癌は転移性癌である。
【0126】
同時または連続投与
治療しようとする状態に応じて、組成物を単独で、あるいは他の治療と組み合わせて、同時にまたは連続してのいずれかで投与してもよい。
【0127】
本明細書において、本発明の抗体、抗原結合性断片またはポリペプチド、および抗感染剤または化学療法剤(療法剤)を同時にまたは連続して投与してもよい。
いくつかの態様において、本発明の抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドでの治療には、化学療法が付随してもよい。
【0128】
同時投与は、抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドおよび療法剤の一緒の投与、例えば両方の剤を含有する薬学的組成物(組み合わせ調製物)、あるいは互いの直後の、そして任意に同じ投与経路を通じた、例えば同じ動脈、静脈または他の血管への投与を指す。
【0129】
連続投与は、抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドあるいは療法剤の1つの投与に続く、所定の時間間隔後の他の剤の別個の投与を指す。2つの剤が同じ経路で投与される必要はないが、いくつかの態様ではこれに当てはまる。時間間隔は、任意の時間間隔であってもよい。
【0130】
化学療法
化学療法は、薬剤または電離放射線(例えばX線またはγ線を用いた放射療法)での癌の治療を指す。好ましい態様において、化学療法は、薬剤での治療を指す。薬剤は、化学実体、例えば小分子薬剤、抗生物質、DNA挿入剤、タンパク質阻害剤(例えばキナーゼ阻害剤)、あるいは生物学的剤、例えば抗体、抗体断片、核酸またはペプチドアプタマー、核酸(例えばDNA、RNA)、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質であって
もよい。薬剤を、薬学的組成物または薬剤として配合してもよい。配合物は、1またはそれより多い薬剤(例えば1またはそれより多い活性剤)を、1またはそれより多い薬学的に許容されうる希釈剤、賦形剤またはキャリアーと一緒に含んでもよい。
【0131】
治療は、1より多い薬剤の投与を伴ってもよい。治療しようとする状態に応じて、薬剤は、単独で、あるいは他の治療と組み合わせて、同時にまたは連続してのいずれかで投与されてもよい。例えば、化学療法は、2つの薬剤の投与を伴う併用療法であってもよく、これらの1つまたはそれより多くが、癌を治療するよう意図されてもよい。
【0132】
化学療法は、1またはそれより多い投与経路、例えば非経口、静脈内注射、経口、または腫瘍内経路によって投与されてもよい。
化学療法は治療措置にしたがって投与されてもよい。治療措置は、医者または医師によって準備されてもよく、そして治療を必要とする患者に合わせてあつらえてもよい、化学療法投与のあらかじめ決定されたタイムテーブル、計画、スキームまたはスケジュールであってもよい。
【0133】
治療措置は:患者に投与する化学療法のタイプ;各薬剤または放射線の用量;投与間の時間間隔;各治療の長さ;あるとすれば任意の治療休止日の数および性質等の1またはそれより多くを指してもよい。併用療法に関して、各薬剤をどのように投与するかを示す単一の治療措置を提供してもよい。
【0134】
化学療法薬剤および生物製剤は以下から選択してもよい:
・アルキル化剤、例えばシスプラチン、カルボプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イホスファミド;
・プリンまたはピリミジン代謝拮抗剤、例えばアザチオプリンまたはメルカプトプリン;・アルカロイドおよびテルペノイド、例えばビンカアルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン)、ポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、タキサン、例えばパクリタキセル(タキソールTM)、ドセタキセル;
・トポイソメラーゼ阻害剤、例えばI型トポイソメラーゼ阻害剤、カンプトテシン、イリノテカンおよびトポテカン、またはII型トポイソメラーゼ阻害剤、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド;
・抗腫瘍抗生物質(例えばアントラサイクリン抗生物質)、例えばダクチノマイシン、ドキソルビシン(アドリアマイシンTM)、エピルビシン、ブレオマイシン、ラパマイシン;
・抗体に基づく剤、例えば抗TIM-3抗体、抗VEGF、抗TNFα、抗IL-2、抗GpIIb/IIIa、抗CD-52、抗CD20、抗RSV、抗HER2/neu(erbB2)、抗TNF受容体、抗EGFR抗体、モノクローナル抗体または抗体断片、例には:セツキシマブ、パニツムマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、アブシキシマブ、ダクリズマブ、ゲムツズマブ、アレムツズマブ、リツキシマブ(マブテラ(登録商標))、パリビズマブ、トラスツズマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ニモツズマブが含まれる;
・EGFR阻害剤、例えばエルロチニブ、セツキシマブおよびゲフィチニブ;
・抗血管新生剤、例えばベバシズマブ(アバスチン(登録商標))。
【0135】
さらなる化学療法薬剤は:13-シス-レチノイン酸、2-クロロデオキシアデノシン
、5-アザシチジン5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アブラキサン、アキュタン(登録商標)、アクチノマイシン-D、アドリアマイシン(登録商標)、アドルシル(登録商標)、アフィニトール(登録商標)、アグリリン(登録商標)、Ala-コート(登録商標)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、ALIMTA、アリトレチノイン、アルカバン-AQ(登録商標)、アルケラン(登録商標)、オール
トランスレチノイン酸、アルファインターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミフォスチン、アミノグルテチミド、アナグレリド、アナンドロン(登録商標)、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、アラネスプ(登録商標)、アレジア(登録商標)、アリミデックス(登録商標)、アロマシン(登録商標)、アラノン(登録商標)、亜ヒ酸、アスパラギナーゼ、ATRA アバスチン(登録商標)、アザシチジン、BCG、BCNU、ベンダムスチン、ベバシズマス、ベキサロテン、BEXXAR(登録商標)、ビカルタミド、BiCNU、ブレノキサン(登録商標)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、ブスルフェックス(登録商標)、カルシウムロイコボリン、カンパス(登録商標)、カンプトサル(登録商標)、カンプトテシン-11、カペシタビン、カラックTM、カルボプラチン、カルムスチン、カソデックス(登録商標)、CC-5013、CCI-779、CCNU、CDDP、CeeNU、セルビジン(登録商標)、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、シトロボルム因子、クラドリビン、コルチゾン、コスメゲン(登録商標)、CPT-11、シクロホスファミド、シタドレン(登録商標)、シタラビン シトサール-U(登録商標)、シトキサン(登録商標)、ダコゲン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノマイシン、ダウノルビシン、ダウノルビシン塩酸、ダウノルビシン・リポソーマル、ダウノキソーム(登録商標)、デカドロン、デシタビン、デルタ-コルテフ(登録商標)、デルタゾン(登録商標)、デニロイキン、ディフチトックス、デポシトTM、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、デキサゾン、デクスラゾキサン、DHAD、DIC、ジオデックス、ドセタキセル、ドキシル(登録商標)、ドキソルビシン、ドキソルビシン・リポソーマル、ドロキシアTM、DTIC、DTIC-Dome(登録商標)、デュラロン(登録商標)、エリガードTM、エレンスTM、エロキサチンTM、エルスパー(登録商標)、エンシット(登録商標)、エピルビシン、エポエチンアルファ、エルビタックス、エルロチニブ、エルウィニアL-アスパラギナーゼ、エストラムスチン、エチヨルエトポフォス(登録商標)、エトポシド、リン酸エトポシド、ユーレキシン(登録商標)、エベロリムス、エビスタ(登録商標)、エキセメスタン、ファスロデックス(登録商標)、フェマラ(登録商標)、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラ(登録商標)、フルダラビン、フルオロプレックス(登録商標)、フルオロウラシル、フロキシメステロン、フルタミド、フォリン酸、FUDR(登録商標)、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツヅマブ・オゾガマイシン、グリーベックTM、グリアデル(登録商標)ウェハー、ゴセレリン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ハーセプチン(登録商標)、ヘキサドロール、ヘキサレン(登録商標)、ヘキサメチルメラミン、HMM、ヒカムチン(登録商標)、ヒドレア(登録商標)、酢酸ヒドロコルト(登録商標)、ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、リン酸ヒドロコルトン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブ、イブリツモマブ・チウキセタン、イダマイシン(登録商標)、イダルビシン、イフェックス(登録商標)、IFN-アルファ、イホスファミド、IL-11、IL-2、メシル酸イマチニブ、イミダゾールカルボキサミド、インターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ-2b(PEGコンジュゲート)、インターロイキン-2、インターロイキン-11、イントロンA(登録商標)(インターフェロンアルファ-2b)、イレッサ(登録商標)、イリノテカン、イソトレチノイン、イキサベピロン、イキセンプラTM、キドロラーゼ、ラナコート(登録商標)、ラパチニブ、L-アスパラギナーゼ、LCR、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイケラン、ロイカインTM、リュープロリド、リューロクリスチン、リュースタチンTM、リポソーマルAra-C、液体プレド(登録商標)、ロムスチン、L-PAM、L-サルコリシン、リュプロン(登録商標)、リュプロンデポ(登録商標)、マツラン(登録商標)、マキシデックス、メクロレタミン、メクロレタミン塩酸、メドラロン(登録商標)、メドロール(登録商標)、メゲース(登録商標)、メゲストロール、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メスネックスTM、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メチルプレドニゾロン、メチコルテン(登録商標)、マイトマイシン、マイトマイシン-C、ミト
キサントロン、M-プレドニゾール(登録商標)、MTC、MTX、ムスターゲン(登録商標)、ムスチン、ムタマイシン(登録商標)、ミレラン(登録商標)、ミロセルTM、ミロターグ(登録商標)、ナベルビン(登録商標)、ネララビン、ネオサール(登録商標)、ニューラスタTM、ニューメガ(登録商標)、ニューポゲン(登録商標)、ネキサバール(登録商標)、ニランドロン(登録商標)、ニルタミド、ニペント(登録商標)、ナイトロジェンマスタード、ノバルデックス(登録商標)、ノバントロン(登録商標)、オクトレオチド、酢酸オクトレオチド、オンコスパー(登録商標)、オンコビン(登録商標)、オンタック(登録商標)、オンキサルTM、オプレベルキン、オラプレッド(登録商標)、オラゾン(登録商標)、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセルタンパク質結合型、パミドロネート、パニツムマブ、パンレチン(登録商標)、パラプラチン(登録商標)、ペディアプレド(登録商標)、PEGインターフェロン、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスティム、PEG-イントロンTM、PEG-L-アスパラギナーゼ、PEMETREXED、ペントスタチン、フェニルアラニンマスタード、プラチノール(登録商標)、プラチノール-AQ(登録商標)、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレロン(登録商標)、プロカルバジン、PROCRIT(登録商標)、プロロイキン(登録商標)、カルムスチンインプラントプリネトール(登録商標)を含むプロリフプロスパン20、ラロキシフェン、レブリミド(登録商標)、リューマトレックス(登録商標)、リツキサン(登録商標)、リツキシマブ、ロフェロン-A(登録商標)(インターフェロンアルファ-2a)、リューベックス(登録商標)、ルビドマイシン塩酸、サンドスタチン(登録商標)、サンドスタチンLAR(登録商標)、サルグラモスチン、ソリュ-コルテフ(登録商標)、ソリュ-メドロール(登録商標)、ソラフェニブ、SPRYCELTM、STI-571、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、スーテント(登録商標)、タモキシフェン、タルセバ(登録商標)、タルグレチン(登録商標)、タキソール(登録商標)、タキソテール(登録商標)、テモダール(登録商標)、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、TESPA、サリドマイド、タロミド(登録商標)、テラシス(登録商標)、チオグアニン、チオグアニンタブロイド(登録商標)、チオホスホアミド、チオプレックス(登録商標)、チオテパ、TICE(登録商標)、トポサール(登録商標)、トポテカン、トレミフェン、トリセル(登録商標)、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレアンダ(登録商標)、トレチノイン、トレキサールTM、トリセノックス(登録商標)、TSPA、TYKERB(登録商標)、VCR、ベシチビックスTM、ベルバン(登録商標)、ベルケード(登録商標)、ベペシド(登録商標)、ベサノイド(登録商標)、ビアデュルTM、ビダザ(登録商標)、ビンブラスチン、硫酸ビンブラスチン、ビンカサールPfs(登録商標)、ビンクリスチン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、VLB、VM-26、ボリノスタット、VP-16、ヴモン(登録商標)、キセロダ(登録商標)、ザノサール(登録商標)、ゼバリンTM、ジネカード(登録商標)、ゾラデックス(登録商標)、ゾレドロン酸、ゾリンザ、ゾメタ(登録商標)より選択されてもよい。
【0136】
投与経路
本発明の側面にしたがった抗体、抗原結合性断片、ポリペプチドおよび他の療法剤、薬剤および薬学的組成物を、限定されるわけではないが、非経口、静脈内、動脈内、筋内、腫瘍内および経口を含む、いくつかの経路による投与のために配合してもよい。抗体、抗原結合性断片、ポリペプチドおよび他の療法剤を、液体または固体型で配合してもよい。ヒトまたは動物の体の選択した領域への注射による投与のため、液体配合物を配合してもよい。
【0137】
好ましい側面において、抗体を全身投与する。静脈内投与が特に意図される。
いくつかの場合、抗体を癌性細胞から離れた、または癌性細胞の既知の位置からは離れた位置で適用する。こうした場合、抗体は、体内を癌性細胞まで移動してもよく、例えば腫瘍まで移動してもよい。
【0138】
いくつかの側面において、抗体を癌性細胞の位置で投与し、例えば腫瘍に直接適用するか、または腫瘍切除部位に適用する。投与は切除術中に行ってもよいし、または切除術後に行ってもよい。腫瘍は原発性癌または転移性癌であってもよい。
【0139】
投与を、腫瘍切除部位で腫瘍再増殖を防止する意図で行ってもよいし、または切除した腫瘍以外の位置で、癌性細胞が形成されるのを防止する意図で行ってもよい。
投薬措置
抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドの多数回の用量を提供してもよい。用量の1つまたはそれより多くまたは各々には、別の療法剤の同時または連続投与が付随していてもよい。
【0140】
多数回用量は、あらかじめ決定した時間間隔によって分かれていてもよく、これは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または31日、あるいは1、2、3、4、5または6ヶ月の1つであるように選択されてもよい。例えば、用量を、7、14、21または28日ごとに1回投与してもよい(プラスまたはマイナス3、2、または1日)。
【0141】
キット
本発明のいくつかの側面において、部分のキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、あらかじめ決定された量の抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドを有する少なくとも1つの容器を有してもよい。キットは、薬剤または薬学的組成物の形で、抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドを提供してもよく、そして明記する疾患または状態を治療するため、患者に投与するための使用説明書とともに提供されてもよい。抗体、抗原結合性断片またはポリペプチドを、腫瘍へのまたは血液への注射または注入に適切であるように配合してもよい。
【0142】
いくつかの態様において、キットはさらに、あらかじめ決定した量の別の療法剤(例えば抗感染剤または化学療法剤)を有する少なくとも1つの容器を含んでもよい。こうした態様において、キットはまた、2つの薬剤または薬学的組成物が特定の疾患または状態に対する組み合わせ治療を提供するように、これらを同時にまたは別個に投与可能であるように、第二の薬剤または薬学的組成物も含んでもよい。療法剤はまた、腫瘍または血液への注射または注入に適切であるように配合されてもよい。
【0143】
被験体
治療しようとする被験体は、任意の動物またはヒトであってもよい。被験体は好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。被験体は、非ヒト哺乳動物であってもよいが、より好ましくはヒトである。被験体は男性または女性であってもよい。被験体は患者であってもよい。被験体は治療が必要な疾患または状態を有すると診断されていてもよいし、あるいはこうした疾患または状態を有すると推測されていてもよい。
【0144】
被験体または患者選択
いくつかの側面において、患者は、ヒト化抗PRL3抗体または抗体断片での治療に関して選択されている。いくつかの場合、患者は、PRL3を発現している癌を有すると決定されている。いくつかの場合、癌はPRL3を過剰発現している癌である。いくつかの場合、患者は、例えば患者が正常白血球カウントを有することによって示されるように、機能するかまたは活性である免疫系を有すると決定されている。いくつかの方法において、患者は損なわれた免疫系を持たないことが決定されている。特に、患者は、正常範囲内の白血球カウントを有すると決定されていてもよい。特に、患者は、白血球減少症を持た
ないことが決定されていてもよい。患者は、正常範囲内の好中球、リンパ球、単球、赤血球または血小板カウントを有すると決定されていてもよい。患者は、対照、例えば損なわれた免疫系を持たないことが知られている個体由来のカウント、または確立された正常値と有意には異ならない白血球、好中球、リンパ球、単球、赤血球または血小板カウントを有してもよい。例えば、患者は、血液マイクロリットル当たり、約4,500~約10,000の間の白血球を有すると決定されてもよい。
【0145】
いくつかの化学療法剤は、白血球カウントの減少と関連しており、したがって、いくつかの場合、患者は、化学療法を受けていない場合、または特に過去に化学療法剤を投与されていない場合にのみ、治療のために選択される。いくつかの場合、患者は過去に、その癌のための化学療法治療を受けていない。いくつかの場合、患者は、代謝拮抗剤化学療法を受けていない。いくつかの場合、患者は、チミジル酸シンターゼ阻害剤療法を受けていない。いくつかの場合、患者は5-FU療法を受けていない。
【0146】
本明細書に提供するデータは、腫瘍または癌細胞内で見られるPRL3が、患者の尿内で、検出を可能にするために適したレベルで存在しうることを示す。さらに、本発明者らは、癌発展の非常に初期の段階で、PRL3が尿中で検出可能であることを見出した。したがって、いくつかの場合、患者は、患者から得られる体液試料、例えば尿、唾液、血液または血漿、あるいは母乳を含む任意の他の体液試料中のPRL3の検出または定量化に基づいて、治療のために選択される。好ましくは、体液は尿である。癌タンパク質の存在または非存在は、イムノアッセイ、例えばELISAまたはウェスタンブロットに基づく方法を伴ってもよい。いくつかの場合、PRL3は、試料中のエクソソームにおいて検出される。
【0147】
本明細書に開示する方法によって検出可能な癌には、胃癌、膀胱癌、肺癌、乳癌、胃癌、鼻咽頭癌、前立腺癌(例えば前立腺腺癌または前立腺肥大、特に前立腺肥大)が含まれる。癌は、試料供給源から離れていてもよい。癌は、例えば、試料または生検にアクセスするのが困難であり、そして/またはアクセスが侵襲性であるものであってもよい。したがって、本明細書に開示する1つの側面において、患者は、患者から得られる体液試料中のPRL3の検出を通じて、癌を有すると診断され、そして次いでヒト化抗PRL3抗体での治療のために選択されてもよい。癌は固形癌であってもよい。本明細書に示すように、PRL3は、広範囲の癌と関連する。
【0148】
本明細書に説明するように、検出は、PRL3の細胞位置を決定する工程を含んでもよく、ここで、細胞表面PRL3の増加は、個体が癌を有するか、または細胞が癌性であることを示してもよい。
【0149】
PRL3の細胞位置の決定のための方法は、当業者によって容易に認識されるであろう。いくつかの場合、イムノアッセイを用いて、個体由来の試料においてターゲット(例えばPRL3)を検出する。イムノアッセイは、検出可能な分子と組み合わせて、ターゲット分子に対する特異的アフィニティを持つ抗体を用いる。いくつかの場合、抗体を検出可能分子にコンジュゲート化する。検出可能分子は、標識と称されてもよい。検出可能分子は、抗体がターゲット分子に結合した際に、検出可能シグナルを生じる。検出可能シグナルは、定量化可能シグナルであってもよい。いくつかの場合、アプタマーを抗体の代わりにまたは抗体とともに用いる。適切な方法には、免疫組織化学、例えばin situハイブリダイゼーション、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)またはフローサイトメトリーが含まれる。方法は、結合剤、例えばPRL3に結合する抗体またはアプタマー、例えばPRL3zumabを利用してもよい。方法は、細胞表面PRL3が結合剤によって結合され、結合剤の検出が可能になるように、試料を結合剤に曝露する工程を含んでもよい。
【0150】
タンパク質発現
細胞において本発明記載のポリペプチドを産生するために適した分子生物学技術は、当該技術分野に周知であり、例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, ニューヨーク:Cold Spring Harbor Press, 1989に示されるものがある。
【0151】
ポリペプチドはヌクレオチド配列から発現されてもよい。ヌクレオチド配列は、細胞中に存在するベクターに含有されてもよいし、または細胞のゲノム内に取り込まれていてもよい。
【0152】
「ベクター」は、本明細書において、細胞内に外因性遺伝物質をトランスファーするためのビヒクルとして用いられるオリゴヌクレオチド分子(DNAまたはRNA)である。ベクターは、細胞において、遺伝物質を発現させるための発現ベクターであってもよい。こうしたベクターには、発現しようとする遺伝子配列をコードするヌクレオチド配列に機能可能であるように連結されたプロモーター配列が含まれてもよい。ベクターにはまた、終結コドンおよび発現エンハンサーも含まれてもよい。当該技術分野に知られる任意の適切なベクター、プロモーター、エンハンサーおよび終結コドンを用いて、本発明記載のベクターからポリペプチドを発現させてもよい。適切なベクターには、プラスミド、バイナリーベクター、ウイルスベクターおよび人工染色体(例えば酵母人工染色体)が含まれる。
【0153】
本明細書において、用語「機能可能であるように連結される」には、選択されたヌクレオチド配列および制御ヌクレオチド配列(例えばプロモーターおよび/またはエンハンサー)が、制御配列の影響または調節下で、ヌクレオチド配列の発現を達成するような方式で、共有連結される(それによって発現カセットを形成する)状況が含まれうる。したがって、制御配列がヌクレオチド配列の転写を達成可能であるならば、制御配列は、選択されたヌクレオチド配列に、機能可能であるように連結されている。適切な場合、生じた転写物は、次いで、望ましいタンパク質またはポリペプチドに翻訳されてもよい。
【0154】
本発明記載のペプチドを産生するため、ポリペプチドの発現に適した任意の細胞を使用してもよい。細胞は、原核細胞または真核細胞であってもよい。適切な原核細胞には大腸菌が含まれる。真核細胞の例には、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞が含まれる。いくつかの場合、いくつかの原核細胞は、真核細胞と同じ翻訳後修飾を可能にしないため、細胞は原核細胞ではない。さらに、真核細胞では非常に高い発現レベルが可能であり、そして適切なタグを用いると、真核細胞からタンパク質を精製することがより容易でありうる。培地へのタンパク質の分泌を増進させる特定のプラスミドもまた、利用してもよい。
【0155】
関心対象のポリペプチドを産生する方法は、ポリペプチドを発現するように修飾された細胞の培養または発酵を伴ってもよい。培養または発酵は、栄養素、空気/酸素および/または増殖因子の適切な供給を提供され、バイオリアクター中で実行されてもよい。細胞から、培地/発酵ブロスを分配し、タンパク質内容物を抽出し、そして個々のタンパク質を分離して、分泌されたポリペプチドを単離することによって、分泌されたタンパク質を収集してもよい。培養、発酵および分離技術は、当業者に周知である。
【0156】
バイオリアクターには、その中で細胞を培養可能である1またはそれより多い容器が含まれる。バイオリアクター中の培養は、連続して生じてもよく、リアクター内への反応物の連続流動、およびリアクターからの培養細胞の連続流動が伴う。あるいは、培養はバッチで生じてもよい。バイオリアクターは、培養中の細胞のために最適な条件が提供される
ように、pH、酸素、容器内へのおよび容器外への流速、ならびに容器内の攪拌などの環境条件を監視し、そして調節する。
【0157】
関心対象のポリペプチドを発現する細胞の培養後、好ましくはそのポリペプチドを単離する。当該技術分野に知られる、細胞培養からポリペプチド/タンパク質を分離するための任意の適切な方法を使用してもよい。培養から関心対象のポリペプチド/タンパク質を単離するため、まず、関心対象のポリペプチド/タンパク質を含有する培地から、培養された細胞を分離する必要がある可能性もある。関心対象のポリペプチド/タンパク質が細胞から分泌される場合、分泌されたポリペプチド/タンパク質を含有する培地から、遠心分離によって細胞を分離してもよい。関心対象のポリペプチド/タンパク質が細胞内に集積する場合、遠心分離前に、例えば超音波、迅速凍結融解または浸透圧溶解を用いて、細胞を破壊する必要があるであろう。遠心分離は、培養細胞を含有するペレット、または培養細胞の細胞破片、ならびに培地および関心対象のポリペプチド/タンパク質を含有する上清を生じるであろう。
【0158】
次いで、他のタンパク質および非タンパク質構成要素も含有しうる上清または培地から、関心対象のポリペプチド/タンパク質を単離することが望ましい可能性もある。上清または培地からポリペプチド/タンパク質構成要素を分離するための一般的なアプローチは、沈殿による。異なる溶解度のポリペプチド/タンパク質は、硫酸アンモニウムなどの沈殿剤の異なる濃度で沈殿する。例えば、低濃度の沈殿剤では、水溶性タンパク質が抽出される。したがって、増加する濃度の沈殿剤を添加することによって、異なる溶解度のタンパク質が区別可能である。続いて、透析を用いて、分離されたタンパク質から硫酸アンモニウムを除去してもよい。
【0159】
異なるポリペプチド/タンパク質を区別するための他の方法が当該技術分野に知られ、例えばイオン交換クロマトグラフィおよびサイズクロマトグラフィがある。これらを沈殿の代替法として用いてもよいし、または沈殿に続いて行ってもよい。
【0160】
関心対象のポリペプチド/タンパク質が、ひとたび培養から単離されたら、タンパク質を濃縮する必要がある可能性もある。関心対象のタンパク質を濃縮するためのいくつかの方法が当該技術分野に知られ、例えば限外濾過または凍結乾燥がある。
【0161】
本発明の側面にしたがった薬剤および薬学的組成物を、限定されるわけではないが、非経口、静脈内、動脈内、筋内、腫瘍内、経口および鼻を含む、いくつかの経路による投与のために配合してもよい。薬剤および組成物を注射用に配合してもよい。
【0162】
投与は、好ましくは「療法的有効量」であり、これは、個体に対して利益を示すのに十分な量である。投与される実際の量、ならびに投与速度および時間経過は、治療中の疾患の性質および重症度に応じるであろう。治療の処方、例えば投薬量の決定等は、開業医および他の医師の責任の範囲内であり、そして典型的には、治療しようとする障害、個々の患者の状態、送達部位、投与法および医師に知られる他の要因を考慮に入れる。上述の技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第20版, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins刊行に見出されうる。
【0163】
配列同一性
アミノ酸またはヌクレオチド配列同一性パーセントを決定する目的のための整列を、当業者に知られる多様な方式で達成してもよく、例えば公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えばClustalW 1.82. T-coffeeまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを用いてもよい。こうしたソフトウェアを用いる場
合、好ましくは、デフォルトパラメータ、例えばギャップペナルティおよび伸長ペナルティに関するものを用いる。ClustalW 1.82のデフォルトパラメータは:タンパク質ギャップ・オープンペナルティ=10.0、タンパク質ギャップ伸長ペナルティ=0.2、タンパク質マトリックス=Gonnet、タンパク質/DNA ENDGAP=-1、タンパク質/DNA GAPDIST=4である。
【0164】
本発明には、記載する側面および好ましい特徴の組み合わせが含まれるが、こうした組み合わせが明らかに許容されえないかまたは明らかに回避される場合を除く。
本明細書に用いるセクション見出しは、構成上の目的のみのためであり、そして記載する主題を限定するとは意図されないものとする。
【0165】
本発明の側面および態様はここで、例として、付随する図を参照しながら例示されるであろう。さらなる側面および態様は、当業者には明らかであろう。本文書に言及するすべての文書が本明細書に援用される。
【0166】
本明細書全体に渡って、続く請求項を含めて、背景が別であることを必要としない限り、単語「含む(comprise)」、ならびに変形、例えば「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」は、言及する整数または工程、あるいは整数または工程群の包含を意味するが、いかなる他の整数または工程、あるいは整数または工程群も排除しないことが理解されるであろう。
【0167】
本明細書および付随する請求項において、単数形「a」、「an」、および「the」には、背景が明らかに別であると示さない限り、複数の指示対象が含まれることに留意しなければならない。範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、そして/または「約」別の特定の値までとして表されてもよい。こうした範囲を示した場合、別の態様には、1つの特定の値から、そして/または他の特定の値までが含まれる。同様に、値を近似値で表した場合、先行する「約」を使用することによって、特定の値が別の態様を形成することが理解されるであろう。
【0168】
対照
いくつかの場合、方法は、1またはそれより多い対照試料に対して、個体由来の試料における癌タンパク質の細胞位置を比較する工程を伴う。
【0169】
比較は、対照試料の分析が、個体由来の試料の分析と同時にまたは連続して行われることを必要としない可能性もある。その代わり、比較は、対照試料から以前得られた結果、例えばデータベースに保存されている結果と行うことも可能である。
【0170】
対照試料は、癌の開始前、または癌に関連する症状の観察前に、または抗癌療法の投与前に、個体から得られた試料であることも可能である。
対照試料は、別の個体、例えば癌を持たない個体から得た試料であってもよい。該個体は、1またはそれより多い特性、例えば性別、年齢、病歴、民族、体重または特定のマーカーの発現にしたがって、個体にマッチしていてもよい。対照試料は、身体の位置から得られていてもよいし、あるいは個体から得た試料と同じ組織または試料タイプのものであってもよい。
【0171】
対照試料は、いくつかの異なる個体または組織に渡る代表値を提供する、試料のコレクションであってもよい。
いくつかの場合、対照は、参照試料または参照データセットであってもよい。参照は、特定の治療のための既知の度合いの適切性を持つ被験体から以前得られた試料であってもよい。参照は、参照試料の分析から得たデータセットであってもよい。
【0172】
対照は、ターゲット分子が存在するかまたは高レベルで発現されていることが知られる陽性対照、あるいはターゲット分子が存在しないかまたは低レベルで発現されていることが知られる陰性対照であってもよい。
【0173】
対照は、治療から利益を得ることが知られる被験体由来の組織試料であってもよい。組織は、試験している試料と同じタイプのものであってもよい。例えば、被験体由来の腫瘍組織の試料を、治療に適していることが知られる被験体、例えば治療に以前反応した被験体由来の腫瘍組織の対照試料に比較してもよい。
【0174】
いくつかの場合、対照は、試験試料と同じ個体から得られたが、被験体が健康であることが知られていた時点、例えば被験体が癌に罹患していないことが知られた時点に得られた試料であってもよい。したがって、被験体由来の癌性組織の試料を、非癌性組織の試料に比較してもよい。
【0175】
いくつかの場合、対照は細胞培養試料である。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
PRL3に結合するヒト化抗体または抗体結合性断片。
[態様2]
抗体または抗体結合性断片がCH1およびCH2ドメインを含有する、態様1のヒト化抗体または抗体結合性断片。
[態様3]
アミノ酸配列KAKFYNおよび/またはHTHKTRを含むエピトープに結合する、態様1記載のヒト化抗体または抗体結合性断片。
[態様4]
アミノ酸配列i)~iii)、またはアミノ酸配列iv)~vi)、あるいは好ましくはアミノ酸配列i)~vi);
【化1】
あるいは、配列i)~vi)の1もしくはそれより多くの1、2もしくは3アミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、その変異体を有する、先行する態様のいずれか一項記載のヒト化抗体または抗体結合性断片。
[態様5]
以下のCDR:
【化2】
を取り込む少なくとも1つの軽鎖可変領域を有する、先行する態様のいずれか一項のヒト化抗体または抗体結合性断片。
[態様6]
以下のCDR:
【化3】
を取り込む少なくとも1つの重鎖可変領域を有する、先行する態様のいずれか一項のヒト化抗体または抗体結合性断片。
[態様7]
PRL3に結合する先行する態様のいずれか一項記載の抗体または抗原結合性断片を含む、任意に単離されたin vitro複合体。
[態様8]
図7に示すような重鎖および軽鎖可変領域配列を含む、抗体および抗原結合性断片。
[態様9]
癌治療のための薬剤製造における、先行する態様のいずれか一項記載のヒト化抗体、抗原結合性断片の使用。
[態様10]
癌を治療する方法において使用するための、先行する態様のいずれか一項記載のヒト化抗体または抗体結合性断片。
[態様11]
癌を治療するための、患者に対する態様1記載のヒト化抗体または抗体結合性断片を投与する工程を含む方法。
[態様12]
癌が胃癌または胃癌の転移である、態様11記載の方法。
[態様13]
ヒト化抗体または抗体結合性断片を静脈内投与する、態様11記載の方法。
[態様14]
ヒト化抗体を、治療しようとする癌とは離れた位置で投与する、態様11記載の方法。
[態様15]
ヒト化抗PRL3抗体を胃癌患者に投与する工程を含み、ここで患者が以前、胃癌に関する代謝拮抗剤療法を受けていなかったか、または以前、代謝拮抗剤療法を受けていなかった、態様11記載の方法。
[態様16]
代謝拮抗剤療法が5-FUである、態様12記載の方法。
[態様17]
患者が損なわれた免疫系を持たないことが決定されている、態様11記載の方法。
[態様18]
細胞においてPRL3の細胞局在を決定する工程を含むin vitro法であって、細胞表面でのPRL3発現が、細胞が癌性であることを示す、前記方法。
[態様19]
細胞表面でのPRL3発現が、対照細胞と比較して、2倍増加している、態様18の方法。
[態様20]
PRL3が細胞表面で発現されている場合、個体が癌を有することが決定されるか、または個体が抗癌療法のために選択される、態様18の方法。
【実施例】
【0176】
実施例1 PRL3-zumabの生成
PRL3-zumab構築物を、以前特徴付けられたネズミ抗PRL-3抗体クローンから操作した。本発明者らは、米国の2つの独立の開発業務受託機関(CRO)を手配し、Queenら(60)に記載される方法の占有修飾法を用いて、ヒト化またはクローニングした。
【0177】
簡潔には、マウス抗体の重鎖(IgG1)および軽鎖(カッパ)の相補性決定領域(CDR)を、「アクセプター」ヒト配列フレームワーク上に移植し、ここでフレームワークは、CDRを除く可変領域のセグメントと定義される。ヒトアクセプターフレームワークの選択は、各鎖に関する最も近いヒト相同体を発見するため(典型的には65~70%配列同一性)、ヒトフレームワーク配列のデータベースに対して、マウスフレームワーク配列を整列させることによって行った。
【0178】
マウス配列由来のCDRを移植することに加えて、マウス配列由来の約3アミノ酸位(CDRに加えて)もまた、ヒトアクセプター配列内に移植した。これは、元来のネズミ抗PRL-3抗体のCDRを保持し、該CDRは、マウスおよびヒトPRL-3両方の間で保存されているが、PRL-1またはPRL-2には保存されない、C末端領域内のエピトープを特異的に認識する。
【0179】
本発明者らは、Sapidyne Instruments Inc.(700 W Diamond St Boise, Idaho 83705)に依頼し、PRL-3抗原へのPRL3-zumabアフィニティ結合を試験した。動力学排除アッセイ(Drakeら、2004)を用いた結合アフィニティ分析によって、精製PRL3-zumabが精製ヒトPRL-3への、6.29pMのKdでの緊密な結合剤であると特徴付けられ、オン速度(Kon)およびオフ速度(Koff)は、それぞれ、1x107M-1s-1および7x10-5s-1であった(表1)。
【0180】
【0181】
表1:KinExA PRL3-zumab結合アフィニティ分析の要約。
実施例2:胃癌を治療するためのPRL3-zumabの使用
材料および方法
組織および細胞溶解物の調製
多数の正常マウス臓器をFVB/野生型マウスから採取する一方、乳房腫瘍および転移性肺腫瘍を、乳腺特異的ポリオーマウイルス・ミドルT癌遺伝子のトランスジェニック過剰発現によって駆動される、転移性乳癌のよく確立された自発的モデルであるアイソジェニックFVB/MMTV-PyMTマウス系統(28)から切除した。組織に関しては、切除試料(5mm3)を、プロテアーゼ-ホスファターゼ阻害剤カクテル(Pierce)を含有するRIPA溶解緩衝剤(Sigma)中に懸濁し、そして組織ホモジナイザー(Polytron)で完全に破壊した。13,000xg、4℃で40分間遠心分離することによって、溶解物を清澄化した。細胞株に関しては、5x106細胞を、プロテアーゼ-ホスファターゼ阻害剤を含有するRIPA溶解緩衝剤中に懸濁し、そして上述のように清澄化した。ビシンコニン酸アッセイキット(Pierce)を用いて、タンパク質濃度を概算した。2xLamelli緩衝剤を添加した後、試料を煮沸して、そしてウェスタンブロッティングのために直ちに用いるか、または使用するまで-20℃で保存した。
【0182】
ウェスタンブロッティング
200μgの溶解物を、12%SDS-ポリアクリルアミドゲルの別個のウェル中で分離し、そしてニトロセルロース膜にトランスファーした後、ブロッキングし、そして1:1,000希釈の示す一次抗体で4℃で一晩探査した。TBS-T緩衝剤(20mM Tris pH7.6、140mM NaCl、0.2%Tween-20)で徹底的に洗浄した後、膜を、1:5,000希釈のそれぞれのセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート化二次抗体と、1時間インキュベーションし、TBS-Tで洗浄し、そして化学発光基質(Pierce)を用いて視覚化した。
【0183】
細胞培養
22の研究したヒトGC細胞株は、以下の供給源から得られた:MKN7、MKN74、NUGC-3、OCUM-1(Health Science Research Resources Bank); YCC-1、YCC-3、YCC-7、YCC-17細胞(Yonsei Cancer Centre); AGS、CRL-5822、KATO-III、SNU-1、SNU-5(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ATCC); HGC27、NUGC-4、OE19(Sigma-Aldrich); MKN28、MKN45(理化学研究所バイオリソース研究センター); IM-95、SCH(JCRB細胞バンク); SNU-484、SNU-719(Korean Cell Line Bank)。CHO細胞をATCCから購入した。GFPタグ化PRL-1、PRL-2またはPRL-3融合タンパク質を安定発現するCHO細胞
の生成は、以前記載されている(23)。ヒトユビキチンCプロモーターの制御下のルシフェラーゼ2遺伝子(pGL4 luc2)を含有するランチウイルス(lantivirus)を、親HCT116細胞(ATCC)に安定形質導入することによって、ルシフェラーゼ発現HCT116-luc2ヒト線癌細胞(Caliper Life Sciences)を確立した。10%熱不活性化ウシ胎児血清(Hyclone)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Life Technologies)を補充したRPMI-1640培地(Gibco)中で細胞株を培養し、そして5%CO2を補充した37℃インキュベーター中で維持した。
【0184】
PRL-3 mRNA発現の分析
本発明者らは、Affymetrix Human Genome U133 Plus 2.0 Genechipアレイ上にプロファイリングされた200の初代胃癌標本からなる、Gene Expression Omnibus(GEO)データベース由来の公的に入手可能なGCマイクロアレイデータセット(GSE 15459)を分析した。「affyPLM」Rパッケージ(v2.15)を用いて、データ前処理を行った。外れ値を排除し、下流分析のために利用可能な総数185の腫瘍試料を生じた(SGset1;患者特性を
図17に提供する)。転帰測定として全生存を含む、生存分析を行って、それぞれの遺伝子の「低い」、「中程度の」および「高い」発現を有する腫瘍(n=183;2試料は生存データを欠く)を比較し、すなわち「低い」および「高い」発現群は、それぞれ、33.3パーセンタイルより低く、そして66.7パーセンタイル発現レベルより高い試料に対応し、一方、中央のパーセンタイルは、「中程度」と分類された。
【0185】
組換えGST-タグ化タンパク質の調製
組換えGST-PRL-1、GST-PRL-2、およびGST-PRL-3融合タンパク質の調製は、以前記載される通りであった(53)。
【0186】
ELISA
以前記載されるようにELISAアッセイを行った(53)。簡潔には、GST-PRL-1(20ng)、GST-PRL-2(20ng)またはGST-PRL-3(1ng、20ng)で一晩コーティングされた96ウェルプレートを、PBS-0.05%Tween-20中の3%ウシ血清アルブミンでブロッキングした後、200ng PRL3-zumabと37℃で2時間インキュベーションした。徹底的に洗浄した後、HRPコンジュゲート化抗マウス抗体(Pierce)を37℃で1時間添加した。Turbo-TMB基質(Pierce)を用いて、比色現像を行い、そして2M H2SO4での酸性化によって停止した。プレート読み取り装置(Dynatech)を用いて、450nmで吸光度を測定した。
【0187】
動物モデルおよび治療
Biological Resource Centre(A*STAR、シンガポール)から得た8週齢の雄Balb/Cヌードマウスを、この研究におけるすべての動物モデルに用いた。マウスを2.5%アバーチン(100μl/10g体重)でi.p.麻酔した。同所性胃癌モデル:麻酔したマウスの腹部を、剣状胸骨(xiphoid sternum)の0.5cm下から始まり1cmの正中線切開によって、層状に開いた。外科用ピンセットによって腹部切開から胃を取り出し、そして漿膜下層内に癌細胞を注入した。続いて、胃を戻し、そして腹部を層状に縫合した。各細胞株に関して、同所性胃腫瘍を誘導するために必要な細胞数、および実験期間を、予備的実験後に確認した:SNU-484腫瘍に関しては3x106細胞、またはIM-95、NUGC-4およびMKN-45腫瘍に関しては5x106細胞。治療措置を、胃漿膜下層中に癌細胞を接種した2日後に開始した。マウスに、100μL PBS中の100μgのPRL3-zumab(Wuxi Pharmatech)を、総数8回(SNU-484およびNUGC-4腫瘍
)または10回(IM-95およびMKN45腫瘍)、静脈内(i.v.)投与した。PBSを「未治療」マウスにおける対照として用いた。個々の腫瘍の増殖速度は異なるため、実験期間は以下の通りであった:SNU-484およびNUGC-4腫瘍に関しては4週間、MKN-45腫瘍に関しては8週間、そしてIM-95腫瘍に関しては12週間。公式:体積=0.4x腫瘍の長さx腫瘍の幅x腫瘍の幅を用いて腫瘍体積を計算した。異種移植片腫瘍モデル:150μlのPBS中の3x106 SNU-484細胞を、麻酔したマウスの両脇腹に注入した。3週間後、生じた腫瘍(5~10mm)を麻酔下で外科切除し、そしてマウスを2群に分けて、腫瘍除去後、週2回、PRL3-zumab(100μL PBS中、100μg、i.v.)またはPBS(100μL)のいずれかを投与した。腫瘍再発を、未治療および治療群両方において、切除後7週まで、毎週分析した。腫瘍増殖を両群で注意深く監視した。続発性胃転移モデル:3x106 HCT116-luc2細胞を、記載するように、麻酔したマウスの胃漿膜内に直接移植した。マウスを治療(PRL3-zumab、100μL PBS中、100μg)または未治療(100μL PBS)群に分け、そして移植後1、2および3週でのin vivoの腫瘍増殖を、150mg/kgルシフェリン(Caliper Life Sciences)の腹腔内注射後15分間、2%イソフルオラン麻酔下で、IVIS画像化によって監視した。
【0188】
マウス血液試料の分析
マウス血液スメアのWBC染色:ガラススライド上の新鮮なマウス血液滴から薄層のスメアを作製した後、スライドを37℃で1時間ベイクしてから、修飾ライト・ギムザ染色液(Sigma)に1分間浸し、その後、脱イオン水で3分間洗浄した。乾燥後、WBCが青く染まった染色スライドを顕微鏡下で観察した。各スライド中、10の視野をカウントし、そして等式WBC/μl=(カウントしたWBCの総数/視野の数)x2000を用いて計算することによって、光学顕微鏡(Olympus)下で、総WBCの概算を行った。全血カウント:Quest Laboratories(シンガポール)によって、マウス試料の血液学的分析を行った。
【0189】
抗体
HSP70(カタログ番号EXOAB-Hsp70A)抗体を、System Biosciences, Incより購入した。カルネキシン(カタログ番号2679)抗体をCell Signalingより購入した。CD63(カタログ番号sc-15363)抗体をSanta Cruz Biotechnologyより購入した。GAPDH(クローンMAB374)抗体をMilliporeより購入した。B細胞マーカー(CD45/CD220、クローンRA3-6B2)およびNK細胞マーカー(CD335/Nkp46、クローン29A1.4)をBD Pharmingenより購入した。
【0190】
免疫蛍光画像化
細胞スライドの調製:細胞をガラスカバースリップ上に直接植え付け、そして48時間増殖させた。PBSCM(PBS pH7.0、1mM MgCl2、1mM CaCl2)で2回洗浄した後、細胞を3%パラホルムアルデヒド中、室温(RT)で20分間固定し、洗浄し、そしてPBS-0.1%サポニン(Sigma)で15分間透過処理した。組織切片スライドの調製:SNU-484およびMKN45同所性胃腫瘍の新鮮凍結標本から、クリオスタット(Leica)を用いて、-18℃で、10μmスライドを切片作製した。スライドを4%パラホルムアルデヒドで20分間固定し、PBS-0.05%Tween-20で洗浄し、そしてPBS-FDB(PBS pH7.0、2%BSA、5%ヤギ血清、5%ウシ胎児血清)中、RTで1時間ブロッキングした。続いて、スライドを、1:200希釈の示す一次抗体とRTで4時間インキュベーションし、洗浄し、そして対応する蛍光色素コンジュゲート化二次抗体(Life Technologies)と2時間インキュベーションした。洗浄したスライドに、DAPI含有退色防止マウン
ト試薬(Vector Laboratories)をマウントし、そしてマニキュア液を用いて密封した。LSM 510共焦点顕微鏡(Zeiss AG)を用いて、共焦点画像化を行った。
【0191】
PRL3-zumabに関する免疫組織化学
10μm厚の凍結切片スライドを、4%ホルマリンで20分間固定し、そして1%H2O2-PBSと暗所で5分間インキュベーションした。次いで、洗浄したスライドを、10%ヤギ血清および1%BSA(Sigma)を含有するPBS中、RTで1時間ブロッキングした。続いて、穏やかに振盪しながら、スライドをPBS-0.05%Tween-20中で4回洗浄し、そしてヤギ抗ヒト標識ポリマー-HRP(Dako)と2時間インキュベーションした後、徹底的に洗浄して、そして基質-色素原溶液(Dako)と暗所で10~20分間インキュベーションした。明視野顕微鏡(Olympus)を用いて、マウントしたスライドを調べ、そして代表的な画像を捕捉した。
【0192】
統計分析
ヒト研究に関して、ログランク検定を用いて、PRL-3 mRNA発現群に基づいて、全体のGC患者の生存のKaplan-Meier分析の有意性を評価した。COX比例ハザード回帰を用いて、単変数および多変数分析を行った。マウス研究に関して、ログランク検定を用いて、「未治療」および「治療」マウス群間の全生存のKaplan-Meier分析の有意な相違を評価した。スチューデントのt検定を用いて、同所性腫瘍体積の統計的に有意な相違を計算した。SPSSソフトウェアv19.0(IBM)を統計計算に用いた。すべての例において、p値<0.05は有意と見なされた。
【0193】
結果
PRL-3は腫瘍特異的ターゲットである
抗癌ターゲティング療法の開発に関連する困難は、望ましくないオフターゲット効果を回避するように、腫瘍において独占的に発現されるが、正常組織においては発現されない「腫瘍特異的抗原」の同定である。本発明者らはまず、内因性PRL-3のウェスタンブロッティングによって、すべての主な臓器由来の正常ネズミ組織をスクリーニングした。これらの完全ブロットにおいて、PRL-3の予測される分子量に対応する単一の~20kDa内因性タンパク質が検出された(
図1A)。本発明者らは、いかなる非特異的バンドも観察せず、PRL-3抗体が他の分子と交差反応しないことが確認された(27)。PRL-3タンパク質は、正常結腸において弱く検出された(
図1A、レーン2)が、乳房および肺組織(
図1A、レーン14~15)を含めて、調べた他の14の主な正常ネズミ組織においては検出不能であった(
図1A、レーン1、3~15)。対照的に、PRL-3は、MMTV-PyMTマウス(28)由来の自発的発展乳房および肺腫瘍においては豊富に発現された(
図1A、レーン16~17)。重要なことに、PRL-3タンパク質はまた、免疫組織化学によって調べた15の主な正常ヒト臓器においてもまた、検出不能であった(
図S1A)。さらに、患者マッチ組織試料において、PRL-3は、非癌性胃組織において検出不能であった(
図11B、パネルa)が、胃腫瘍切片においては高発現され(
図11B、パネルb)、やはり腫瘍特異的上方制御を示した。癌における高頻度のPRL-3過剰発現に関する公開された文献(29)、およびPRL-3条件的ノックアウトマウスが全般的に正常であるという近年の観察(30)と併せて、癌性組織における、しかし正常組織にはない、PRL-3の特異的発現は、PRL-3が適切な腫瘍特異的ターゲットであることを実証する。
【0194】
PRL-3癌タンパク質は、調べた胃腫瘍の85%で過剰発現される
過去10年に渡って、いくつかの研究によって、上昇したPRL-3発現が、胃癌の負の予後因子であることが立証されてきた(14、31、32)。本発明者らはさらに、185のGC患者の独立コホート(臨床特性を
図17に提供する)において、上昇したPR
L-3 mRNAレベルの臨床的有意性を研究した。Kaplan-Meier生存分析によって、腫瘍における上昇したPRL-3 mRNAレベルは、より短い全生存と関連することが明らかになった(p=0.002;
図1B)。多変数Cox分析において、高PRL-3 mRNA発現はまた、より高い腫瘍悪性度と有意に関連した(
図18)。次に、本発明者らは、シンガポール国立大学病院に入院しているGC患者由来の20のマッチした新鮮凍結生検組織試料対(腫瘍対隣接正常組織)を用いて、PRL-3タンパク質のレベルを調べた。ウェスタンブロットは、明らかに、17/20(85%)の胃腫瘍(T;
図1C)における内因性PRL-3過剰発現を示したが、マッチした正常胃組織(n;
図1C)のいずれでも過剰発現を示さず、PRL-3の腫瘍特異的発現が実証された。特に、PRL-3タンパク質は、これらのブロットにおいて、20~25kDaの間の広いバンドとして出現し、ヒト腫瘍試料におけるPRL-3が潜在的に翻訳後修飾される(~20kDa)ことが示唆されるが、これはまだ定義されていない。総合すると、本発明者らの臨床データは、ヒトGCにおける一般的な現象として、PRL-3癌タンパク質過剰発現を特徴付け、これは、疾患重症度と相関し、ターゲティング療法のための候補としての適切性を再確認する。
【0195】
新規PRL-3ターゲティングヒト化抗体、PRL3-zumabの生成
本発明者らは、以前、ヌードおよび野生型C57BL/6マウスの両方において、細胞内PRL-3を発現している腫瘍に対する、ネズミおよびキメラPRL-3抗体の高い有効性を示した(24、27)。これらの研究において、PRL-3モノクローナル抗体を投与されたマウスは、連続して体重が増加し、そして正常な活動を示し、オフターゲット副作用が最小限であることが示唆された。これらの初期の知見を、ヒトにおける臨床的適用に変換するため、本発明者らは、「PRL3-zumab」と称するヒト化モノクローナル抗PRL-3抗体を生成した。ウェスタンブロッティング、ELISA、および免疫蛍光分析によって、その前身と同様、操作されたPRL-3-zumabは、PRL-3を特異的に認識し、そしてPRL-3相同体、PRL-1またはPRL-2とは交差反応しなかった(
図12A~C)。続いて、本発明者らは、本報告に記載するすべてのさらなる実験のために、PRL3-zumabを用いた。
【0196】
PRL3-zumabは、PRL-3陽性(PRL-3
+)同所性胃腫瘍の増殖を特異的に遮断するが、PRL陰性(PRL-3
-)同所性胃腫瘍の増殖を遮断しない
マウス腫瘍モデルにおいて、天然(同所性)位置で増殖しているヒト癌細胞は、高い忠実性でヒト疾患を複製する。より重要なことに、療法に対する腫瘍反応は、癌細胞が皮下対同所性位置に移植されているかに応じて、劇的に変化することが示されてきており(33)、抗腫瘍剤の療法的有効性をアッセイするための、正しいモデルを選択する必要性が強調される。胃腫瘍に対してPRL3-zumabの有効性を調べるために適切な前臨床同所性マウスモデルを確立するため、本発明者らはまず、PRL-3タンパク質発現状態に関して22のヒトGC細胞株パネルをスクリーニングし、そして続いて、マウスの胃の漿膜下層内でのその腫瘍形成能を試験した。PRL-3タンパク質は、分析した22のヒトGC細胞株のうち、13(59%)で検出された(
図2A)。しかし、培養中でよく増殖し、そして管理可能な時間枠(<2ヶ月)内に同所性腫瘍を形成するGC細胞株は一部のみであった。これらの判断基準に基づいて、3つのPRL-3
+細胞株(SNU-484、NUGC-4およびIM-95)および1つのPRL-3
-細胞株(MKN45)を、同所性GCモデルを開発するために選択して、PRL3-zumabの抗腫瘍有効性を評価した。これらの株由来の細胞を胃の漿膜下層内に接種し、そして続いて、
図2Bに概略するプロトコルにしたがって治療した。実験終了時、マウスから胃を採取し、そして胃腫瘍負荷に関して分析した。
【0197】
本発明者らはまず、SNU-484 GC細胞株に対するPRL3-zumab治療の効果を研究し、該細胞株は、PRL-3タンパク質を高発現し(
図2A、レーン1)、培
養中で迅速に増殖し、そして3~4週間以内に再現可能に胃腫瘍を形成することから、優れたPRL-3
+同所性胃腫瘍モデルとして働いた。実験経過に渡って、未治療マウスは、顕著な腹部膨満(
図2C、パネルa、矢印)を発展させ、そして身体活動および食物摂取の減少を示す一方、PRL3-zumab治療マウスは、全般的に正常に見え(
図2C、パネルb)、そして通常の食物摂取パターンで正常な身体活動を維持した。切除に際して、同所性腫瘍形成は、未治療群に比較して、PRL3-zumab治療群で可視性に減少していた(
図2C、パネルc~d)。腫瘍体積を測定すると、未治療群(4.08±1.52cm
3;p=0.01;
図2D)に比較して、PRL3-zumab治療群(0.23±0.25cm
3)の腫瘍負荷の有意な20倍の減少が明らかであった。腫瘍負荷の減少と一致して、Kaplan-Meier分析は、PRL3-zumab治療マウスにおいて、未治療マウスに比較して、有意により長い生存期間を明らかにし、生存期間中央値は、それぞれ、7対4.5週であり(p=0.006;
図2E)、PRL-3
+ SNU-484胃腫瘍を所持するマウスが、PRL3-zumab抗腫瘍療法に有効に反応することが確認された。この知見を検証するため、2つのさらなるPRL-3
+ GC細胞株、IM-95およびNUGC-4を用いて、同所性GCマウスモデルを生成した(
図2A、それぞれレーン2および22)。SNU-484同所性腫瘍と同様、PRL3-zumab治療は、PRL-3
+ IM-95細胞(p=0.008;
図S13A)またはPRL-3
+ NUGC-4細胞(p=0.03;
図S13B)のいずれによって形成される胃腫瘍の増殖も有意に抑制した。
【0198】
顕著に対照的に、PRL-3
- GC細胞株であるMKN45(
図2A、レーン4)によって形成される胃腫瘍は、PRL3-zumab治療に反応を支援さず、顕著な腹部膨満(
図3A、パネルa~b)および同所性腫瘍形成(
図3A、パネルc~d)が、治療群および未治療群の両方由来のマウスに存在した。治療群(0.17±0.20cm
3)および未治療群(0.13±0.19cm
3)の間には、平均同所性腫瘍体積の相違は見られなかった(p=0.4;
図3B)。Kaplan-Meier生存分析は、未治療群および治療群の間で、全生存に有意な相違を明らかにせず、未治療群の生存中央値9.25週に対して、PRL3-zumab治療群では10週であった(p=0.3;
図3C)。これらの4つの細胞株から得られる同所性腫瘍のPRL3-zumab治療の結果(
図3Dに要約)は、本発明者らが以前、PRL-3抗体療法に関して提唱した基本的な原理(24)を補強し、PRL-3
+腫瘍のみがPRL3-zumab療法に反応する一方、PRL-3癌タンパク質発現を欠く腫瘍は反応しなかった。
【0199】
PRL3-zumabは、5-フルオロウラシル(5FU)との併用療法または5-FU単独よりも、単剤療法としてより有効である。
5-FUは、胃癌の一次治療として用いられる化学療法薬剤である(17)ため、本発明者らは、PRL3-zumabが、同所性腫瘍増殖を阻害する際に、5-FUと併用して、より有効でありうるかどうかを研究した。本発明者らは、4つの治療プロトコルを試験した:PBS対照(群1)、PRL3-zumab単剤療法(群2)、PRL3-zumab+5-FU併用療法(群3)、または5-FU単剤療法(群4)。治療プロトコルにしたがって、PRL3-zumab(100μg/用量)または5-FU(30mg/kg/用量)の週2回の用量を、個々に、または併用して、同所性PRL-3
+ SNU-484胃腫瘍を所持するヌードマウス群に静脈内投与した。実験経過中、本発明者らは、5-FU治療マウス(群3および4)において、全体の動物活動の減少を観察した。腫瘍体積の分析は、PRL3-zumab単剤療法(群2)が、最高の療法効率を有し、平均腫瘍体積は0.67±0.59cm
3で最低であり、次にPRL3-zumab+5-FU併用治療(群3; 1.49±0.27cm
3)、5-FU単剤療法(群4; 1.76±0.52cm
3)、そして最後にPBS対照(群1; 3.98±0.60cm
3;
図4A)が続くことを示した。これらの結果は、PRL3-zumabを、化学療法剤、5-FUを伴わずに用いた場合、胃腫瘍を減少させる際により有効であることを示唆す
る。
【0200】
以前、本発明者らは、PRL-3抗体療法の有効性において、宿主免疫系が重要な役割を果たすことを強調した(24)。白血球(WBC)数の非特異的な減少を引き起こす、5-FU治療の既知の副作用(34)を考慮して、本発明者らは、観察される療法的有効性の減少が、この現象のためでありうるかどうかを調べた。全血スメアにおいて、本発明者らは、対照(群1)またはPRL3-zumab単剤療法(群2;
図4B)に比較して、5-FU治療(群3および4)後の末梢WBCカウントが5倍減少していることを見出した。これらの結果を検証するため、本発明者らは、実験終了時(第28日)、マウス試料の完全血液カウントを行って、異なる治療措置の血液学的影響を分析した。PRL3-zumabを投与されているマウスは、BALB/cヌード系統に関して正常範囲内の全般的な血液学的プロファイルを有した(35)が、PRL3-zumabと併用して5-FUを、または5-FUを単独で投与されているマウスは、赤血球および血小板カウントの顕著な減少とともに、減少した好中球、リンパ球、および単球カウントを示した(
図4C)。総合すると、本発明者らの結果は、5-FU治療の結果としての免疫機能の減少が、5-FUと併用して用いた際のPRL3-zumab有効性の減少の原因となる可能性があることを示唆し、そしてPRL-3抗体療法が、より強い免疫系を必要とするという、本発明者らの以前の知見を裏付ける。
【0201】
術後PRL3-zumab療法は、PRL-3
+腫瘍の再発を抑制する。
手術は、GC治療の基礎であるが、患者の80%近くが、大部分は局所領域の再発のため、そして/またはより低い度合いで、遠位転移のため、短い期間内に死亡する(36)。PRL3-zumabがPRL-3
+ GC増殖をin vivoで抑制する能力を考慮して、本発明者らは、PRL3-zumabが、腫瘍再発を抑制するための術後アジュバント治療としてもまた有効性を有するかどうかを調べた。PRL-3
+ SNU-484 GC細胞を用いて、本発明者らはまず、3週間の経過に渡って、ヌードマウスの両脇腹に、異種移植片腫瘍(幅5~10mmの間)を確立した(
図19、パネルa)。次いで、生じた固形腫瘍を、注意深い手術を通じて完全に除去し(
図19、パネルb)、そして対照抗体(未治療)、またはPRL3-zumab(治療)の週2回注射のため、マウスを2群に分けた。次いで、局所腫瘍再発を毎週監視した。術後7週までに、未治療群は、切除部位に巨大な局所腫瘍を発展させた(
図19、パネルc)。対照的に、同じ期間に渡って、PRL3-zumab療法を受けているマウスの切除部位には、可視性の腫瘍増殖は観察されなかった(
図19、パネルd)。これは解剖に際して確認され、未治療群からは巨大固形腫瘍が採取可能であった(
図19、パネルe)が、PRL3-zumab治療群では、切除部位に固形腫瘍はまったく見られなかった(
図19、パネルf)。総合すると、これらの結果は、PRL3-zumabが術後局所腫瘍再発を抑制する際に有効性を有することを示し、アジュバント療法としてのこの薬剤の臨床的変換のためのありうる手段が示唆される。
【0202】
PRL3-zumabは、胃における続発性PRL-3
+腫瘍転移の増殖を抑制する
胃における転移の存在は、まれな状態であり(37~39)、ほぼ常に劣った予後と関連する(40、41)。PRL3-zumabが転移性腫瘍形成を遮断可能であるかどうかに取り組むため、本発明者らは、PRL-3
+ HCT116-luc2結腸直腸癌細胞を用いて、マウスの胃漿膜下層内に外科的に注入する、胃への結腸直腸癌転移の実験モデルを開発した。本発明者らは、HCT116-luc2細胞を、主に2つの理由で用いた:1)結腸癌からの胃転移がヒトにおいて記載されており(38、39、42)、そして2)HCT116-Luc2は、恒常的にホタル(firefly)ルシフェラーゼを発現し、in vivo画像化系(IVIS)を用いた腫瘍増殖の監視が可能になる。2つの別個の実験的複製において、PRL-3
+ HCT116-luc2腫瘍は、未治療マウスにおいて、迅速に増殖したが、PRL3-zumab治療マウスは、同じ期間に渡
り、はるかに減少したPRL-3
+ HCT116-luc2腫瘍増殖を有した(
図14A)。切除に際して、未治療マウスの胃に、重い腫瘍負荷が観察された(
図14B、パネルa、a’)。対照的に、PRL3-zumab治療マウスは、はるかにより低い胃腫瘍負荷を有した(
図14B、パネルb、b’)。さらに、未治療マウスにおいて、腹壁への広範囲の転移性播種が見られた(
図14B、パネルc、c’)が、これもまた、治療マウスでは非常に減少した(
図14B、パネルd、d’)。総合すると、これらの結果は、PRL3-zumabが、胃微小環境中およびその周囲のPRL-3
+ HCT116-luc2結腸直腸癌腫瘍の増殖および転移を減少させうることを示唆した。
【0203】
細胞内PRL-3癌タンパク質は、癌の尿の62%から分泌されることが可能であり、尿中に存在するが、正常尿には存在しない
多様な癌モデルにおいて、PRL3-zumabの抗腫瘍有効性が立証されており、本発明者らは次に、PRL3-zumab療法のためにPRL-3
+癌患者を同定する単純な方法を探した。以前、本発明者らは、抗PRL-3抗体が、in vitroで、PRL-3
+腫瘍細胞によって内在化されうることを報告した(23)。しかし、「細胞内」PRL-3抗原の抗体認識がどのように、そしてどこで起こるかは不明であった。本明細書において、本発明者らは、PRL-3タンパク質が、in vitroで、対応するPRL-3
+癌細胞株から分泌されそして濃縮培地中で検出されることが可能であるが、PRL-3
-癌細胞株からは検出されないという、以前は認識されていなかった天然の現象を報告する(
図5A、レーン1~4)。死んだ細胞または細胞破片による非特異的混入を排除するため、本発明者らは、もっぱら溶解物中にあり(
図5A、レーン5~8)、馴化培地中にはない(
図5A、レーン1~4)ER局在タンパク質、カルネキシン(CANX)を対照として検出した。
【0204】
PRL-3は、マイクロアレイおよび組織学的研究に基づいて、有望な癌バイオマーカーとしての潜在能力を有する(7)ため、本発明者らは一歩進んで、健康な個体および癌患者の両方からの尿試料を分析することによって、「分泌される」PRL-3がバイオマーカーとして臨床的に適切でありうるかどうかを調べた。健康な個体由来の総数15の尿試料、および癌患者由来の199の尿試料をウェスタンブロットによって分析して、PRL-3タンパク質を検出した。有望なことに、PRL-3は異なるタイプの癌を持つ患者由来の尿試料の平均62%(199のうち123)で容易に検出され(
図5B)、それでも正常尿試料においては完全に存在しなかった(
図5C、レーン1~7)。特に、尿PRL-3タンパク質は、胃癌患者の最大14/16(88%)(
図5C、レーン8~23)、鼻咽頭癌患者の12/17(70%)(
図5D)、膀胱癌患者の30/67(45%)(
図5E)、肺癌患者の56/85(66%)(
図5F)、乳癌患者の8/10(80%)、そして前立腺癌患者の3/4(75%)(データ未提示)で検出された。これらの214の尿試料からの本発明者らの結果は、PRL-3を一般的な癌特異的尿タンパク質と同定する。
【0205】
PRL-3タンパク質は、ER/ゴルジ経路を通じた古典的な分泌のための配列ペプチドを持たないため、本発明者らは、該タンパク質が、非古典的なエクソソーム分泌を通じて分泌されうるかどうかを考慮した。エクソソームは、細胞膜および/エンドソーム由来小胞であり、50~150nmで、多くの生物学的液体および細胞培地に存在する(43)。本発明者らは、対照エクソソームマーカーとしてテトラスパニンCD63を用いて、異なるタイプの癌を持つ患者由来の尿試料のエクソソーム分画を行った(44)。驚くべきことに、本発明者らは、膀胱癌患者由来の尿において、もっぱらエクソソームPRL-3を検出した(
図16)が、他のタイプの癌からは検出しなかった(データ未提示)。したがって、尿PRL-3は、少なくとも2つの型、可溶性「遊離」型(多数の癌患者由来の尿)およびエクソソーム関連型(膀胱癌患者由来の尿のみ)を含む、癌特異的マーカーとして存在する。
【0206】
尿PRL-3は、PRL3-zumab療法の療法反応監視のための潜在的な代理バイオマーカーでありうる
PRL-3は、癌患者由来の尿試料において頻繁に検出可能であるため、本発明者らは、尿PRL-3がin vivoの本物のPRL-3
+腫瘍の存在を反映するかどうか疑問を持った。この関係を実証するために、臨床的にマッチした腫瘍-尿試料を得ることが困難であるため、本発明者らは、その代わり、PRL-3
+ SNU-484およびPRL-3
- MKN45同所性胃マウスモデルを用いて、マッチした腫瘍-尿対でのPRL-3の発現を比較した。さらに、各同所性モデルを未治療、またはPRL3-zumab(治療)の2群に分け、PRL3-zumab療法および尿PRL-3発現の間の関連を解明した。未治療PRL-3
+ SNU-484腫瘍所持マウスにおいて、PRL-3タンパク質は、尿試料中、非常に豊富であった(
図6A、奇数レーン1~9)。しかし、尿PRL-3はPRL3-zumab治療後、すべてのマウスでもはや検出不能であり、これはPRL-3の腫瘍内発現の減少と一致した(
図6A、偶数レーン2~10)。重要なことに、PRL3-zumab治療マウスからの尿PRL-3シグナルの喪失は、各場合で、胃腫瘍縮小と対応し(
図6A、上部パネル)、尿PRL-3がPRL3-zumab療法有効性の代理バイオマーカーとして有用でありうることを示唆した。対照的に、本発明者らは、PRL3-zumab療法を行うか行わないかに関わらず、PRL-3
- MKN45同所性腫瘍を所持するマウスにおいて、尿PRL-3を検出しなかった(
図6A、レーン11~12)。したがって、尿PRL-3は、PRL-3
+癌を所持するマウスでは特異的に検出されたが、PRL-3
-癌のマウスでは検出されず、そして腫瘍負荷の減少と並行して、PRL3-zumabでの治療に際して減少する。
【0207】
PRL-3+腫瘍における、PRL3-zumab治療後のBおよびNK細胞浸潤増加
臨床的抗体発展において考慮する重要な点は、in vivoでの腫瘍および正常(または非抗原発現)組織の間の抗体の生体分布である(46)。これを考慮して、本発明者らは、本発明者らの同所性モデルにおいて、腫瘍部位でのPRL3-zumabの分布を調べた。PRL3-zumab治療後、本発明者らは、PRL-3
+ SNU-484腫瘍内でPRL3-zumabの濃縮を検出した(
図6B、パネルb~c)が、PRL-3
- MKN45腫瘍では検出しなかった(
図6B、パネルf)。対照として、未治療マウス(
図6B、パネルa)または5-FU単独(
図6B、パネルd)ではシグナルは見られなかった。これらの結果は、PRL-3発現腫瘍の微小環境におけるPRL3-zumabの特異的集積を示した。免疫エフェクター細胞による抗体の認識は、免疫グロブリン受容体(FcR)を通じて起こり、該受容体が抗体のFc部分に結合し、これらのエフェクター細胞の補充および活性化を生じる(47)。腫瘍組織におけるPRL3-zumabの集積が、免疫細胞の浸潤を生じるかどうかを決定するため、細胞内抗体療法の有効性に関して非常に重要であると示唆される2つのFcR所持免疫細胞タイプであるB細胞およびNK細胞に対する特異的抗体を用いて、PRL-3
+ SNU-484胃腫瘍切片に対して免疫蛍光を行った(26)。PRL-3
+ SNU-484同所性腫瘍切片において、未治療腫瘍切片(
図6B、パネルgおよびm)と比較して、浸潤B細胞およびNK細胞の数は、PRL3-zumab治療腫瘍において、可視的により多かった(
図6B、パネルhおよびn)。驚くべきことに、本発明者らは、一貫して、PRL3-zumabおよび5-FUでの併用療法に供したマウス(
図6B、パネルiおよびо)、ならびに5-FU治療マウス(
図6B、パネルjおよびp)において、BまたはNK細胞浸潤が欠けていることを観察し、これはおそらく、5-FU投与に際して、リンパ球集団が減少するためであった(
図4C)。PRL-3
- MKN45腫瘍切片においては、PRL3-zumab治療にもかかわらず、B細胞またはNK細胞浸潤の相違は観察されなかった(
図6B、パネルk~lおよびq~r)。これらの知見に基づいて、本発明者らは、PRL3-zumabおよびPRL-3抗原が相互作用して、in vivoで療法的効果を誘発する新規機構を提唱する(
図6C):1)PRL-3抗原は、非慣用的な分泌を通じて(エク
ソソームPRL-3)外在化するか、あるいは壊死性またはアポトーシス性PRL-3
+腫瘍細胞から自発的に漏洩(遊離PRL-3)し、ベイトとして作用し、2)これにPRL3-zumabが結合し、そして免疫複合体が腫瘍微小環境内に集積し、続いて、3)抗腫瘍効果のため、エフェクターNKおよびB細胞が補充され、そして活性化される。
【0208】
PRL-3+腫瘍のPRL3-zumab抑制に関するありうる作用機構
自己免疫病理に関する研究によって、自己抗体が特異的細胞内抗原に結合し、そして抗原提示細胞の細胞質および核区画内に集積可能であることが示されてきている(47)。同様に、本発明者らは、抗PRL-3抗体が、in vitroで、PRL-3+腫瘍細胞によって内在化可能であることを観察している(4)。しかし、抗体取り込み様式は、ほとんど定義されないままである。ここで、本発明者らは、細胞内PRL-3抗原が特異的結合および腫瘍抑制のために抗体と関与しうる2つの新規知見を明らかにする:1)細胞内PRL-3癌タンパク質は分泌されうる。腫瘍細胞において、いくつかの古典的「細胞内」タンパク質が、分泌および/または細胞表面再局在を通じて外在化され、それによって抗体を用いた療法介入に対してアクセス可能となることが報告されてきている(48、49)。本発明者らは、3つのPRL-3+細胞株:SNU-484、NUGC-4、IM-95、および1つのPRL-3-細胞株、MKN45において、PRL-3細胞内および細胞外PRL-3発現を比較することによって、PRL-3がPRL3-zumabのターゲット抗原として、同様に外在化可能であるかどうかを調べた。PRL-3発現を、対照としての非分泌ER係留タンパク質、カルネキシンと比較した。PRL-3タンパク質は、PRL-3+ GC細胞の細胞内タンパク質分画(細胞溶解物)(
図6A、レーン1~3)、ならびにPRL-3+ GC細胞の細胞外タンパク質プール(濃縮馴化培地)(
図6A、レーン5~7)の両方で検出されたが、PRL-3- GC細胞株では検出されなかった(
図6A、レーン4、8)。対照的に、カルネキシンは、PRL-3+およびPRL-3- PRL GC細胞両方で、もっぱら細胞内プールに存在した(
図6A、レーン1~4)が、細胞外プールには存在しなかった(
図6A、レーン5~8)。この観察は、死んだ細胞または細胞破片による非特異的混入を排除し、そしてPRL-3を新規分泌タンパク質として特徴付ける。2)外在化PRL-3は、PRL3-zumab結合のベイトとして働きうる。本発明者らは次に、治療した同所性GCマウス由来の腫瘍切片を調べ、そして腫瘍微小環境内のPRL3-zumab分布を分析した。対照として、未治療マウス(
図6B、一番左のパネル)にはシグナルはまったく見られなかった。治療後、PRL3-zumabは、PRL-3+ SNU-484腫瘍の微小環境内で濃縮されたが、5-FU単剤療法を受けているもの、またはPRL-3- MKN45腫瘍では濃縮されなかった(
図6B)。これらの結果は、PRL-3+腫瘍の微小環境においてPRL3-zumabが特異的に集積するが、PRL-3-腫瘍には集積しないことを示した。
【0209】
考察
本研究は、最小限の副作用で、癌ターゲティング免疫療法のための利用可能な分子ターゲットとしての、腫瘍特異的細胞内癌タンパク質の以前は認識されていなかった潜在的可能性をさらに示す。本発明者らの結果は、PRL-3を優れた腫瘍特異的癌ターゲットと特徴付け、そしてヒト胃癌細胞株を用いて同所性腫瘍モデルを生成して、臨床的に適切なセッティングで、PRL3-zumabの特異的抗腫瘍有効性を立証した。PRL3-zumabは、同所性PRL-3+胃腫瘍の増殖を特異的に阻害し(しかしPRL-3-腫瘍の増殖は阻害せず)、PRL-3+胃癌の治療のためのPRL3-zumabの適切性を確立した。さらに、分泌尿PRL-3を、診断および治療反応監視のためのバイオマーカーとして使用してもよい。
【0210】
ヒトGC細胞株を用いて、臨床的に適切な同所性GCモデルを生成するため、本発明者らは、免疫不全ヌードマウスを使用し、重度免疫無防備マウス系統、例えばNOD/SC
ID、BALB/c-RAB2nullまたはその派生系統(48)は使用しなかった。これらの後者の系統は、損なわれていない内因性免疫系をほとんどまたはまったく持たず、研究知見を免疫適格性ヒト患者に当てはめるにはギャップが生じるためである。より臨床的に適切なマウスモデルを使用することで、また、体内での複雑な相互作用を再現不能であり、そしてin vivo毒性の予測が劣っている培養プレート中のin vitro薬剤スクリーニング(49)の限界も克服する。実際、抗PRL-3抗体は、免疫無防備SCIDマウスにおいて(24)、またはin vitroでPRL-3+癌細胞に直接添加した際に(27)、抗癌有効性を欠くことが示されてきており、治療成功のためには、免疫エフェクターと療法剤の相互作用が重要であることを示す。ここで、本発明者らは、原発性および転移性胃腫瘍増殖におけるPRL3-zumabの療法的有効性、ならびに癌再発を防止するための術後アジュバント療法のための価値を立証した。さらに、本発明者らは、PRL3-zumab治療に際して、PRL-3+腫瘍微小環境において、PRL3-zumabが集積し、そしてBおよびNK細胞の浸潤が増加することを示すことによって、これらの知見を拡張し、PRL3-zumabの抗腫瘍活性におけるこれらの重要な免疫エフェクターの関与を強化した。PRL-3は、近年、NKG2DリガンドであるULBP2の分泌を促進し、NK細胞による腫瘍認識および細胞溶解の減少を生じることが示された(50)。この知見は、PRL3-zumab治療マウスで観察される、NK細胞のPRL-3+腫瘍微小環境への浸潤増加に、NK細胞溶解活性増加が相乗的に付随し、PRL-3+腫瘍のより効率的な免疫ターゲティングを生じうることを示唆する。
【0211】
分泌型のPRL-3の発見は、PRL-3
+腫瘍部位への免疫細胞補充およびPRL3-zumabの抗腫瘍有効性に必要な特異的抗体-抗原相互作用に説得力を与える。興味深いことに、可溶性PRL-3が多数の癌患者由来の尿で検出されているが、本発明者らは、膀胱癌患者の尿においてのみ、エクソソーム関連PRL-3を検出し、他の悪性腫瘍患者の尿においては検出しなかった。これに関するありうる説明は、腎糸球体濾過によって課される物理的排除限界であり、これによって、尿排出のため、ボウマン嚢内には、血漿から70kDaより小さいタンパク質の通過しか可能ではない(45)。本発明者らの結果は間接的に、PRL-3がin vivoで、少なくとも2つの型で、腫瘍細胞から分泌可能であることを示す:1)まず、多数のタイプの癌の尿に存在する可溶性の濾過可能な型として。こうした「遊離PRL-3」は、腫瘍壊死、アポトーシス、または腫瘍細胞溶解中に体液内に漏洩し、そして20~25kDaの小さい分子量であるため、糸球体を通過し、そして尿中に排出される可能性がある。2)次に、もっぱら膀胱癌患者の尿に見られる「エクソソームPRL-3」として。これは、膀胱尿系に妨害されずにアクセスする膀胱癌細胞が、こうしたPRL-3含有エクソソームを尿プール内に直接脱落させることが可能であるためである。しかし、他の癌組織(例えば胃、肝臓、肺)からの循環エクソソームは、糸球体濾過を通過不能であり、なお、PRL-3
+癌細胞由来の出芽エクソソームは、in vivoでPRL3-zumab認識のため、腫瘍領域内の係留ポイントとして働きうる(
図6C)。
【0212】
近年、多数のFDA認可癌薬剤が、劣ったターゲット選択性を有することが示された(51)。本発明者らの研究において、400を超える臨床癌試料を、腫瘍組織および/または癌尿におけるmRNAレベルまたはタンパク質レベルのいずれかでのPRL-3発現に関して研究した。平均して、PRL-3癌タンパク質は、調べた多数のタイプの癌(胃、肝臓、肺、鼻咽頭、腎臓、乳房、結腸、膀胱)の62%で過剰発現された。こうした高いPRL-3腫瘍陽性を伴い、腫瘍特異的PRL-3に対するPRL3-zumabターゲティング療法は、個別化医療に向かう刺激的な段階である。オフターゲット副作用を最小限にしながら(PRL-3は、大部分の正常成人組織において検出可能なレベルでは発現されない)、療法的利点を最大化することによって、PRL3-zumabは、正確な抗癌薬剤として、臨床的検証および開発が正当であると示される。
【0213】
本発明者らは、本明細書において、PRL3-zumab癌療法に関する5つの重要な知見を要約する:1)PRL3-zumabは、PRL-3腫瘍特異的抗原を特異的に認識する。PRL3-zumabは非常に特異的であり、>75%のアミノ酸配列同一性を共有する2つの相同体(PRL-1またはPRL-2)と交差反応しない。さらに、PRL3-zumabは、腫瘍組織中のPRL-3抗原を特異的に認識するが、正常組織中のものは認識せず、毒性が低くそしてオフターゲット副作用が最小限であることが示唆される。2)PRL3-zumabは、PRL-3+同所性胃腫瘍の増殖を特異的に阻害し、そして術後PRL-3+腫瘍再発を防止する。腫瘍内でのPRL-3タンパク質発現は、療法反応に絶対に必要であり、このことは、腫瘍阻害のために、特異的抗原-抗体認識が必要であることを示す。3)PRL3-zumabは、化学療法との併用療法よりも、単剤療法としてより有効である。総合すると、化学療法誘導性免疫抑制(34)によって、PRL3-zumabの療法的有効性が減少するため、本発明者らの結果は、PRL3-zumab治療転帰が宿主免疫系に依存することを示す。4)PRL3-zumabは、多数のPRL-3陽性癌において、広い有用性を有するはずである。本発明者らの結果は、ここで、PRL3-zumab有効性の症例研究として、多数のGCモデルに重点を置くが、PRL-3はまた、腫瘍転移および劣った予後の多数の癌タイプとも広範囲に関連付けられており、より高いPRL-3発現は、より短い全生存と関連する(7)。PRL3-zumabが、その効果を、PRL-3抗原の認識に際してのみ発揮するという原理に基づいて、免疫学的に無防備ではない患者において、すべてではなくても大部分のPRL-3陽性癌をターゲティングする際に、有用性を有することが想定され、癌療法全体において、新規療法手段が開かれる。5)尿PRL-3は、癌診断および療法反応監視のための、潜在的な新規バイオマーカーでありうる。本発明者らは、多数のヒト癌患者の平均62%で、尿PRL-3を検出した。マウスモデルで観察される腫瘍および尿PRL-3発現の間の緊密な相関は、尿PRL-3発現が、多様なヒト悪性腫瘍において、PRL-3ターゲティング癌療法(PRL3-zumabを含む)の前向き診断バイオマーカーとして有用性を有しうることを示した。さらに、本発明者らのデータは、尿PRL-3が代理バイオマーカーとしておそらく機能可能であり、臨床家がPRL3-zumab療法的有効性を判断するための迅速でそして単純な定性的方法を提供することを示唆する。尿PRL-3のバイオマーカーとしての価値は、さらなる実証を必要とするであろうが、こうしたPRL3-zumabに関する「コンパニオン診断」の開発に関する潜在能力は、初期臨床試験におけるロバストな仮説試験を可能にすることによって、薬剤開発プロセスを加速するであろう(52)。
【0214】
本明細書において、本発明者らは、PRL-3+ヒト癌を遮断する細胞内癌ターゲットに対する最初のヒト化抗体として、PRL3-zumabを示す。総合的に、本発明者らの結果は、本明細書において、そして別の箇所において(23、24、27)、細胞内癌抗原が、抗癌効果のための療法的抗体に対してアクセス不能であるという定説に挑戦する。本発明者らは、他の細胞内癌タンパク質もまた、ターゲティング免疫療法として働く巨大な潜在能力を有しうることを示唆する。無数の候補腫瘍特異的細胞内癌抗原が、ここで、将来の臨床試験のための利用可能な分子ターゲットとしての潜在能力に関して考慮されるはずである。
【0215】
参考文献
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
実施例3:PRL3zumab作用機構の研究
この研究において、本発明者らは主に、「シード・アンド・ソイル(seed and
soil)」肝臓同所性腫瘍モデルを用いて、PRL-3抗体が、その細胞内PRL-3抗原とどのように結合可能でありうるかに取り組む、分子作用機構(MOA)に重点を置いた。本発明者らは、異なる側面から研究して、実際に「細胞内癌タンパク質」が、in vitroよりもin vivoでより高い率で、「細胞外癌タンパク質」として細胞表面に再局在化し、したがって、細胞外癌ターゲットに対する抗体慣用的経路を通じて、腫瘍排除のための合理的基礎にしたがうという重要な結論に到達する。それと一致して、本発明者らは、機構的に、PRL3-zumabが、PRL-3「細胞内」抗原を発現している腫瘍を遮断するには以下が必要であることを見出した:1.FcγII/III遮断剤の両方が治療有効性を無効にするため、宿主FcγII/III受容体相互作用。
2.完全抗体活性、Fc断片(CH1およびCh2ドメイン)を欠くミニボディは、治療有効性を退ける。3.M1(しかしM2はそうではない)マクロファージ、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞を増加させて、宿主免疫を増進させる。これらの結果は、「細胞内癌タンパク質」をターゲティングする抗体のMOAが、実際に、腫瘍を除去するための古典的な抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または食作用(ADCP)経路を通じて、「細胞外癌タンパク質」をターゲティングするのと類似の原理にしたがうことを示唆する。最後に、110の貴重な新鮮凍結ヒト腫瘍またはそのマッチした正常組織を用いて、本発明者らはさらに、PRL-3が、9つの異なるヒト癌タイプ:肝臓、肺、結腸、乳房、胃、膀胱、前立腺、AML、および腎臓患者腫瘍試料の平均≧78%で広く過剰発現されるが、マッチした正常組織では発現されないことを示した。これらの知見は、大部分の「治療が困難な」癌に対するターゲティング免疫療法の次のフロンティアとして、PRL3-zumab臨床試験を正当化する。
【0221】
材料および方法
細胞株。ヒトHCC細胞株Hep3B2.1、HepG2、Huh-7、PLC、SNU449を、American Type Cell Culture(米国バージニア州マナサス)から購入した。ネズミHCC細胞株Hep53.4をCLS Cell Lines Service GmbH(ドイツ・エッペルハイム)より購入した。すべての細胞株を、組換え培地中で培養した。MHCC-LM3ヒトHCC癌細胞株を、ルーチンにKam-Man Hui博士の研究室(シンガポール国立癌センター)で維持した。
【0222】
ウェスタンブロッティング。患者組織に関して、5mm3片を、プロテアーゼ-ホスファターゼ阻害剤カクテル(Pierce)を含有するRIPA溶解緩衝剤(Sigma)中に懸濁し、そして組織ホモジナイザー(Polytron)で完全に破壊した。13,000xg、4℃で40分間遠心分離することによって、溶解物を清澄化した。細胞株に関しては、5x106細胞を、プロテアーゼ-ホスファターゼ阻害剤を含有するRIPA溶解緩衝剤中に溶解し、そして上述のように清澄化した。組織溶解物(40μg)または細胞溶解物(200μg)を、12%SDS-ポリアクリルアミドゲル中で分離し、そしてニトロセルロース膜にトランスファーした後、ブロッキングし、そしてネズミ抗PRL-3 34または抗GAPDH抗体(クローンMAB374、Milipore)で4℃で一晩探査した。TBS-T緩衝剤(20mM Tris pH7.6、140mM NaCl、0.2%Tween-20)で徹底的に洗浄した後、膜を、1:5,000希釈のそれぞれのセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート化二次抗体と、1時間インキュベーションし、TBS-T緩衝剤で洗浄し、そして化学発光基質(Pierce)を用いて視覚化した。
【0223】
動物モデルおよび治療。Biological Resource Centre(A*STAR、シンガポール)から得た8週齢の雄Balb/Cヌードマウスを、この研究におけるすべての動物モデルに用いた。マウスを2.5%アバーチン(100μl/10g体重)で麻酔した。麻酔したマウスの腹部を、剣状胸骨のすぐ下から始まり1cmの正中線切開によって、層状に開いた。肝臓の左葉を腹部切開から取り出し、そして3x106 MHCC-LM3肝臓癌細胞を漿膜下層に接種した。肝臓を腹腔に戻し、そして腹壁を層状に縫合した。治療措置を癌細胞接種後5日目に開始した。腫瘍増殖/体積実験に関しては、治療したマウスに、各100μgのPRL3-zumab、ヒトIgGアイソタイプ対照(カタログBE0092;Bio X Cell)、またはPRL3-ミニボディを週2回5週間、i.v.投与した。示す場合、100μgの抗CD16/32抗体(クローン2.4G2;Bio X Cell)の同時投与によって、同時治療を行った。すべての抗体を、注射のため、100μL(最終)のPBSに希釈した。式:体積=0.4x腫瘍の長さx腫瘍の幅x腫瘍の幅を用いて最終腫瘍体積を計算した。生存研究に関しては、治療マウスに、100μl PBS中で希釈した100μgのPRL3-zuma
bを週2回、全部で10回、i.v.投与した。未治療マウスに、等体積のプラセボ(緩衝剤のみ)を対照としてi.v.投与した。マウスが、身体活動の減少を示し、そして具合が悪そうであった場合、安楽死させ、そして生存分析において、「死亡」事象と記録した。
【0224】
細胞単離。腫瘍細胞。同所性MHCC-LM3肝臓腫瘍を採取し、そして製造者の指示にしたがって、MACS組織解離キット(130-095-929;Miltenyi Biotec)を用いて穏やかに解離させた。該キットは、重要な細胞表面エピトープを保持しながら、高収量の腫瘍細胞を得るために最適化されている。単離された腫瘍細胞を続いてカウントし、RPMI中に再懸濁し、そして氷上で分析まで維持した。培養細胞。T-75フラスコ中の完全RPMI培地(10%FBSおよび1%抗生物質を補充したRPMI)中で、80%集密で指数関数的に増殖している、MHCC-LM3 PRL-3+肝臓癌細胞を、PBSで1回洗浄し、そして非酵素細胞解離緩衝剤(C5914;Sigma)で5分間インキュベーションして、接着細胞を取り外して懸濁状態にした。細胞をPBSで1回洗浄し、カウントし、完全RPMI培地中に再懸濁し、そして分析まで氷上で維持した。
【0225】
細胞表面標識およびフローサイトメトリー分析。4x105細胞を、総体積100μl中、2μgのセツキシマブ(抗EGFR、キメラAb)、ハーセプチン(抗HER2、ヒト化Ab)、PRL3-zumab(抗PRL-3、ヒト化Ab)のいずれかと、4℃で30分間インキュベーションした。いかなる一次抗体も添加されていない別個のチューブが、陰性対照として働いた。インキュベーション後、1mL PBSを各試料に添加し、遠心分離し、そして細胞ペレットを、1.5μLの抗ヒトFITC抗体を含有する100μL PBS中に再懸濁した。4℃で15分インキュベーションした後、細胞を以前のようにPBSで洗浄し、そして最後に、200μL PBSに再懸濁した。細胞を細胞ストレーナーに通過させて、単細胞懸濁物を得て、そして直ちに、FACS Divaソフトウェアを用いて、2レーザー(488nmおよび633nm)を備えたBD FACSCanto IIフローサイトメーター上で捉えた。データをFCS3ファイルとして保存し、そしてFlowing Softwareバージョン2.5.1を用いて分析した。FSCおよびSSCに基づいて、生存細胞をゲート処理した。FSCおよびSSC幅を用いて、単細胞をゲート処理した。単一抗体染色細胞(二次のみ)および未染色対照細胞を補償のために用いた。
【0226】
組換えGSTタグ化タンパク質の調製およびELISA。組換えGST-PRL-1、GST-PRL-2およびGST-PRL-3融合タンパク質の調製およびELISAアッセイは、以前記載されている(59)。簡潔には、示す抗原量でコーティングされた96ウェルELISAプレートを、3%ウシ血清アルブミンでブロッキングした後、0.5ngまたは1ngのPRL-3ミニボディと、37℃で2時間インキュベーションした。徹底的に洗浄し、そして二次抗体とインキュベーションした後、Turbo-TMB基質(Pierce)を用いて比色現像を行い、そして2M H2SO4での酸性化によって停止した。プレート読み取り装置(Dynatech)を用いて、450nmで吸光度を測定した。
【0227】
免疫蛍光画像化。MHCC同所性肝臓腫瘍の新鮮凍結標本から、クリオスタット(Leica)を用いて、16℃で10μmスライドを切片作製した。スライドを4%パラホルムアルデヒドで20分間固定し、PBS-0.05%Tween-20で洗浄し、そしてPBS-FDB(PBS pH7.0、2%BSA、5%ヤギ血清、5%ウシ胎児血清)中、RTで1時間ブロッキングした。続いて、スライドを、1:200希釈の示す一次抗体と4℃で一晩インキュベーションし、洗浄し、そして対応する蛍光色素コンジュゲート化二次抗体(Life Technologies)と2時間インキュベーションした。
洗浄したスライドに、DAPI含有退色防止マウント試薬(Vector Laboratories)をマウントし、そしてマニキュア液を用いて密封した。LSM 800共焦点顕微鏡(Zeiss AG)を用いて、共焦点画像化を行った。腫瘍カプセル(正常および腫瘍組織のつなぎ目)に隣接した腫瘍領域における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の代表的な画像(n=3)を得た。免疫細胞(緑)およびDAPI陽性細胞(青)の総数をImage Jソフトウェアによって分析し、そして免疫細胞対DAPIの比を取ることによって、TILの割合を決定した。3つの画像の結果の平均が、1試料のデータに相当する。
【0228】
結果
PRL-3「細胞内癌タンパク質」は、in vivoで、「細胞外癌タンパク質」と同定されうる
PRL-3抗体は、PRL-3発現異種移植片腫瘍、転移性肺腫瘍、および同所性胃腫瘍に対して、有効性を示した。細胞内癌タンパク質に対するこれらの非慣用的抗体療法を理解するため、PRL3抗体は、免疫細胞上のFcγRと、細胞内PRL-3をどのように架橋可能であるのかを考える必要がある。ありうる仮説は、PRL-3自体の何らかの部分が、in vivoで、さっとひっくり返って、細胞表面で暴露されて、サイクリング効果を誘発し、それによって、他の細胞表面(細胞外)抗原と同様、直接PRL3-zumabが結合することを可能にしうるというものである。これを試験するため、本発明者らは、穏やかな酵素的解離を用いて、固形肝臓腫瘍から単細胞懸濁物を調製し、そしてフローサイトメトリーアプローチを用いて、in vitro培養細胞に対して、これらのex vivo腫瘍細胞の細胞表面発現を比較した(
図20a)。これらの非透過処理細胞プールのサイトメトリー分析によって、これらの間の主な抗原特異的相違が明らかになった。抗上皮増殖因子受容体(EGFR)キメラ抗体であるセツキシマブは、多量の増殖因子を人工的に添加した培養細胞に比較して、ex vivo腫瘍でEGFR表面発現の劇的な低下を示し、一方、PRL-3に関しては逆が当てはまった(
図20bの代表的なフローヒストグラム)。定量化によって、培養細胞(CC;
図20c、カラム3対4)に比較して、ex vivo腫瘍細胞(T)において、表面EGFR染色の3倍の減少が明らかになった。対照的に、PRL3-zumab染色で分析した際のPRL-3発現は、ex vivo腫瘍細胞ではおよそ7倍増加しており、ここで、in vivoの癌細胞は、低酸素ストレスおよび血清枯渇下にあり、こうした条件は、培養細胞条件(CC;
図20c、カラム5対6)に比較して、癌細胞が細胞内PRL-3タンパク質を外在化させる能力を増進させうる。フローサイトメトリーで見られるこれらの変化が、これらの抗原の総細胞レベルの変化のためでありうるかどうかを検証するため、本発明者らは、平行して、溶解物のウェスタンブロッティングを行った。以前のサイトメトリー観察と一致して、培養細胞と比較して、EGFRの総レベルは、ex vivo腫瘍細胞において、顕著に下方制御されていた(
図20d)。対照的に、PRL-3発現は、元来の細胞に比較して、腫瘍で明らかに増加していた(
図20d)。しかし、総PRL-3レベルの増加は、PRL-3表面レベルの増加に比較してはるかに小さいため、本発明者らは、後者の観察は、主に、細胞内PRL-3の再局在化に起因しうると結論付ける。これを実証するため、培養MHCC細胞およびMHCC腫瘍の透過型電子顕微鏡検査(TEM)を行い、ここで、MHCC細胞に比較して、MHCC腫瘍の細胞膜の細胞外小葉上に、細胞膜の細胞内小葉に対する有意な相違を伴わず、抗PRL-3免疫金染色の顕著な増加が観察された。
【0229】
PRL3-zumabは、マウスにおいて、「シード・アンド・ソイル」同所性肝臓腫瘍モデルのFc依存方式で、療法的有効性を示す
次いで、in vivоでのこれらのより高いレベルの「細胞外」PRL-3抗原は、PRL-3抗体によって認識されて、免疫細胞を補充し、そして伝統的な細胞外癌タンパク質に対する抗体療法の古典的なADCCおよびADCPにしたがうことも可能であった
。ヒト癌細胞(「シード」)が、天然の位置(「ソイル」)中で増殖を可能にされる同所性腫瘍モデルは、高い忠実性でヒト疾患を複製する。本発明者らは、近年、PRL3-zumabが、ヒト胃癌細胞によって形成されたPRL-3を発現している同所性胃腫瘍を抑制可能であることを報告した(8)。さらに、本発明者らは、PRL3-zumabがまた、切除後、PRL-3を発現する腫瘍の再発も遮断可能であることを示した。
【0230】
本研究において、臨床的に適切な療法HCC療法反応16をよりよく再現するため、本発明者らは同所性HCCモデルを確立して、PRL3-zumabが天然微小環境内の肝臓腫瘍を抑制する能力を試験した(
図21a)。PRL-3タンパク質発現状態に関してスクリーニングした、一団の6つのヒト(1つはマウス?)肝臓癌細胞株において(
図21b)、PRL-3+ MHCC-LM3細胞のみが、妥当な時間枠内(6週間)に、ロバストに肝臓腫瘍を形成し、そして続く治療実験のために選択された。同所性胃腫瘍6と同様、同所性肝臓腫瘍形成は、未治療マウスに比較して、PRL3-zumab治療マウスにおいて、可視性に減少した(
図21c)。腫瘍体積の測定は、未治療マウスに比較して、治療マウスにおいて、平均腫瘍負荷の有意な7倍の減少を明らかにした(
図21d;
0.30±0.36vs2.41±1.20cm3、P=0.0001)。治療がマウス生存に対してより長い期間の効果を有するかどうかを研究するため、本発明者らは、マウスをPRL3-zumabで4週間治療し、治療を停止し、そして病的な特性(「死亡」事象)が現れるまでにかかった時間を監視した。この治療スケジュールにしたがって、治療マウスは未治療マウスに比較して、有意により長い全生存を有し、中央値生存期間は、それぞれ12週対8週であった(
図21e; Kaplan-Meier生存分析、P=0.002)。総合すると、本発明者らの知見は、この臨床的に適切なHCCモデルにおいて、PRL3-zumabが、臨床的有効性を保持し、有意な腫瘍負荷減少およびより長い生存が伴うことを確立した。
【0231】
関与する分子機構(単数または複数)を理解するため、本発明者らはまず、in vitroアッセイを行って、PRL3-zumabがPRL-3+癌細胞を直接阻害可能であるかどうかを分析した。in vivoでのPRL-3+腫瘍の顕著な抑制にもかかわらず、in vitroでは、PRL3-zumab治療は、50mg/mLの高用量であってさえ、PRL-3+もPRL-3-癌細胞増殖も阻害しなかった(
図24)。対照的に、シスプラチン治療は、PRL-3+およびPRL-3-細胞両方の用量依存性の非特異的細胞殺傷を生じた(
図24)。この知見は、PRL3-zumabが、他の療法抗体と同様に、抗腫瘍効果のために特定の宿主因子を必要とする15ことを再確認した。慣用的な抗体療法において、免疫細胞上のFc受容体(FcR)は、抗原-抗体複合体の定常(Fc)領域に結合し、抗体依存性細胞仲介性細胞傷害(ADCC)または食作用(ADCP)を通じて、ターゲット抗原/細胞クリアランスのためのエフェクター経路の補充および活性化を生じる17。PRL3-zumabの作用機構における宿主FcRの関与を調べるため、本発明者らは2つの相補的実験を設計し(
図20f)、すなわち1)PRL-3+同所性肝臓腫瘍を接種したマウスの、PRL3-zumab、ならびにFcγIIおよびFcγIII受容体の結合部位を遮断することによる、IgG FcR仲介免疫クリアランスの強力な阻害剤である抗CD16/32抗体(2.4G2 mAb)18での同時治療、ならびに2)Fc受容体への結合に必須であることが示されたCH1およびCH2ドメインを欠く操作(scFv-CH3)2 PRL3-ミニボディでの損なわれていないPRL3-zumabの置換19、20。2.4G2 mAbを用いて、FcγII/III受容体を遮断すると、PRL3-zumab治療有効性の完全な喪失が起こり、未治療、2.4G2 mAb、またはアイソタイプマッチ対照(IgG)治療マウス(
図20g)から有意に異ならない平均腫瘍体積を生じた(
図20g)。同様に、(scFv-CH3)2 PRL3-ミニボディで治療した肝臓腫瘍もまた、療法反応を欠いた(
図20g)。顕著なことに、(scFv-CH3)2 PRL3-ミニボディの療法的有効性の類似の欠如はまた、同所性PRL-3+ SNU-484胃腫瘍に対しても明ら
かであり(
図25)、これが組織特異的欠点ではないことを例示した。さらに、PRL3-zumabのCH1およびCH2ドメインの欠失は、ウェスタンブロッティング、ELISA、および免疫蛍光によって明らかであるように(データ未提示)、結果として、PRL-3へのミニボディの結合に影響を及ぼさず、療法的効果の喪失は、抗体ミニチュア化による潜在的な抗原結合欠陥のためではないことが示された。総合すると、本発明者らの結果は、PRL3-zumabのFcドメインおよび宿主FcγII/III受容体の間の相互作用が、PRL3-zumabの抗腫瘍効果に必須であることを確立した。
【0232】
PRL3-zumabは、in vivoで、癌細胞を殺傷するため、PRL-3発現腫瘍微小環境へ、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、およびM1マクロファージを補充する。
【0233】
Fc-FcR相互作用はADCCおよびADCPを通じた腫瘍細胞クリアランスにおいて重要である。NK細胞はADCCの主なエフェクターである一方、マクロファージはADCPのエフェクターであり、後者は癌を治療するために認可された大部分の抗体の根底にある主な作用機構として、ますます認識されてきている21。腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、腫瘍形成中にダイナミックな相対する役割を果たす可能性もあり、免疫刺激および殺腫瘍活性(M1マクロファージ)から免疫抑制および転移促進活性(M2マクロファージ)まで多様である22。PRL3-zumabが腫瘍微小環境内にマクロファージおよび他の免疫細胞の浸潤および集積を促進するかどうかを決定するため、異なるマクロファージサブタイプに特異的な多様な抗体を用いて、PRL-3+ MHCC肝臓腫瘍切片に対して、免疫蛍光を行った:M1マクロファージ(CD86)、汎マクロファージ(F4/80);M2マクロファージ(CD206)、B細胞(CD45/B220)、およびNK細胞(CD335)。興味深いことに、CD86+M1マクロファージにおける有意な増加が明らかであり(
図21c;F(5,12)=7.127、p<0.0053)、一方、F4/80+マクロファージおよびCD206+ M2マクロファージの集積に関しては、群平均間で有意な相違は観察されなかった(
図2a、b)。同様に、すべての治療群に渡って、B細胞(
図21d;F(5,12)=40.14、P<0.001)およびNK細胞(
図21e;F(5,12)=7.386、P<0.0046)における有意な集積もまた、観察された。顕著なことに、PRL3-zumabおよび2.4G2 mAbでの併用療法は、このPRL3-zumab誘導性集積において、逆転が生じ(
図2c~e)、PRL3-zumabが、FcR依存性方式で、これらの細胞の特異的集積を促進することを確立した。総合すると、本発明者らの結果は、PRL3-zumabおよびFcγII/III受容体の間の相互作用が、殺腫瘍M1マクロファージ、B細胞、およびNK細胞の補充に必須であり、そしてこれらは、in vivoでの抗腫瘍有効性と緊密に相関したことを示した。
【0234】
新規癌ターゲットであるPRL-3は、多数のヒト癌において頻繁に過剰発現され;PRL3-zumabは、これらの多数のPRL-3陽性ヒト癌を治療する喫緊の満たされていない必要性を満たすであろう。
【0235】
本発明者らは以前、新規胃癌ターゲットとしてのPRL-3の価値を立証し、ここでPRL3発現が新鮮凍結胃腫瘍組織の85%で検出されたが、患者マッチ正常胃組織では検出されなかった6。上昇したPRL-3転写物発現は、多くの他の腫瘍タイプ2において記載されているため、本発明者らは、特に侵襲性悪性腫瘍で、満たされていない医学的必要性がある9つの異なる癌タイプ由来の得がたい110の新鮮凍結患者腫瘍試料におけるPRL-3タンパク質発現を、広く特徴付けようと試みた。本発明者らの臨床協力者による、ランダムに割り当てられたこれらの新鮮凍結試料において、本発明者らは、16/20の肝臓腫瘍(80%;
図23a)、9/10の肺腫瘍(90%:
図23b)、7/10の結腸腫瘍(70%;
図23c)、9/10の乳房腫瘍(90%;
図23d)、13/1
8の腎臓腫瘍(72%;
図23e、f)、19/28の膀胱腫瘍(68%;
図23g)、6/12のAML試料(50%;
図23h)、5/6の胃腫瘍(83%;
図23i)、および4/4の前立腺腫瘍(100%;
図23i)において、ロバストなPRL-3発現を検出した。肝臓、肺、結腸、乳房および腎臓腫瘍に関しては、本発明者らは、新鮮凍結、患者マッチ非癌性組織を同じ臓器から何とか得て、これによって、PRL-3発現の特異性に関する貴重な洞察が可能になった。顕著なことに、PRL-3は、対応するマッチした腫瘍において高発現されているにもかかわらず、マッチした正常組織のいずれでも検出されなかった(
図4a~e)。要約すると、これらの結果は、PRL-3が、多様な9つの腫瘍タイプ(表1)において、平均≧78%で発現されており、そして多数の癌タイプ、特に喫緊の満たされていない医学的必要性があるものにおいて、優れた癌ターゲットとしてのPRL-3を強調する。PRL3-zumabは、新規癌療法の喫緊の必要性に役立つであろう。
【0236】
【0237】
表1:異なる腫瘍タイプに渡るPRL3発現の概要
考察
本研究は、本発明者らの以前の研究に基づき、ありうる抗体が、どのように「細胞内癌タンパク質」をターゲティングしうるか、そして多数のPRL-3陽性ヒト癌タイプに対して、PRL3-zumabの将来の療法的価値をさらに詳しく分析するための分子作用に関する決定的な証拠を提供する。PRL-3の本発明者らの知見は、110のランダムに分析した新鮮凍結ヒト癌試料において、>78%の頻度で存在し、そして同所性胃腫瘍モデル(参照)に関する本研究および以前の研究において、同所性肝臓および肺腫瘍におけるPRL3-zumabの有意な療法的利益を示す腫瘍関連癌タンパク質であるというものであり、本発明者らは再び、他の癌一般に加えて、喫緊の満たされていない医学的必要性を伴う、これらの急性悪性腫瘍に関するブレイクスルー免疫療法候補としてのPRL3-zumabを立証する。
【0238】
根底にある機能的肝不全を含むHCCの病理生理学的複雑性は、HCCの医学的治療を困難なものにしてきた。移植後のHCCの再発もまた、臨床的に関連する問題のままであり続けている。HCC進行に関与する特異的分子変化を同定する以前の努力は、現実的なヒットをほとんど生じず、これは特に、HCCの病因が多様であるためであり:90%を超えるHCCが肝硬変から生じ、これはさらに、アルコール依存症、B型またはC型肝炎、あるいは肝臓における脂肪の集積を含む多様な要因によって引き起こされる。HCCの
不均一性に関する証として、過去6年の間に、進行した肝癌に対する新規の分子ターゲティング剤の少なくとも5つの主な第III相試験が失敗している32。ソラフェニブは、進行したHCCの死亡率の改善を示した元来の療法であり、2.8か月の延長された生存中央値を持つ12。しかし、進行したHCCおよび肝臓機能不全患者(Child-Pugh B患者)におけるソラフェニブの治療は、より劣った生存転帰を生じた33。したがって、HCC患者に対して、高い療法的有効性および低い毒性の両方を持つ新規分子ターゲティング薬剤を発見する差し迫った必要性がある。ここで、PRL-3過剰発現が、ランダムに分析した肝臓癌患者試料の80%で検出されており、PRL-3タンパク質がこの病的疾患の共通のマーカーでありうるという最初の臨床的証拠を提供した。注目すべきことに、大部分の主なヒト臓器はPRL-3発現を欠く6ため、PRL3-zumabは、非ヒト霊長類毒性研究においてよく許容されることが示され、36mg/kgの高い副作用非観察レベル(NOAEL)用量を伴った(未公表の観察)。本明細書で報告する同所性マウスモデルにおけるPRL3-zumabの抗腫瘍有効性は、PRL-3+ HCC患者において、安全で有効な治療様式として、PRL3-zumabの初期試験を始めるための強い裏付けを与える。
【0239】
抗体が細胞内癌タンパク質をどのように認識可能であるかに取り組むため、本発明者らは以前、癌細胞によって抗体が取り込み可能であるとするものを含む、作用機構(MOA)の3つのありうるモデルを提供した(CBT、2008)。本研究において、本発明者らは、どのように「細胞内癌タンパク質」が外在化されて「細胞外癌タンパク質」になり、したがって癌細胞殺傷効果の古典的経路にしたがうかに関する証拠を提供することによって、MOAを強固にし、これは、腫瘍においてPRL-3が特異的にそして一貫して上方制御されるが、正常組織においては上方制御されないことによって支持された、PRL3-zumabの安全でそして効率的な抗腫瘍効果に関する機構的説明となる。実際、腫瘍関連細胞内抗原の細胞表面再局在は、療法的介入の新規機会を提供する。炎症、腫瘍壊死、腫瘍細胞殺傷溶解物、アポトーシスもまた、細胞内タンパク質が、in vivoで腫瘍微小環境に漏洩し、そして免疫反応を誘発することに寄与している可能性もある。PRL-3に加えて、実際、他の細胞内タンパク質の腫瘍関連細胞表面再局在もまた記載されてきており、これには熱ショックタンパク質70(HSP70)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、グルコース制御タンパク質78(GRP78)、アクチン、サイトケラチン、ビメンチン、ヌクレオリン、ヌクレオソーム、エストロゲン受容体アルファ変異体(ER-α36)、および胎児房状膵臓タンパク質(FAPP)が含まれる(5)。癌における抗体に基づく療法に適した新規抗原ターゲットを同定する際に、かなりの努力が行われてきているため、本発明者らの結果は、ここで、悪性進行中に、古典的な「細胞内」細胞質および核タンパク質の細胞表面再局在が、より注意を払うに値する一般的な腫瘍特異的現象であり、そして癌罹患率および死亡率を減少させる、ますます革新的でそして合理的な薬剤設計の基礎を形成することを再確認する。
【0240】
本発明者らは、人工的条件が細胞タイプを限定し、10%FBS培地ではin vivoの複雑さを模倣不可能である細胞培養系において、in vivo腫瘍細胞殺傷事象を反映する困難さを理解する。本発明者らは、薬剤は、おそらく薬剤自体の毒性のため、プレート中の癌細胞を殺すと理解する。にもかかわらず、in vitroでのPRL-3+癌細胞のPRL3-zumab治療が細胞増殖のいかなる抑制も生じないにもかかわらず、これらの細胞から得られる腫瘍は、in vivoで、PRL3-zumabによって潜在的に抑制されうることを示す。
【0241】
本発明者らの知見は、本明細書において、この現象に関する2つの説明を提供する。まず、「細胞外PRL-3」の量は、in vitroで、ADCCを実行するには培養系中でわずかであるが、腫瘍細胞上ではPRL3-zumab仲介性癌細胞殺傷効果を誘発するために十分なレベルまで非常に上方制御される。次に、in vivo系とは異なり
、in vitro系は、PRL3-zumabによる免疫仲介性腫瘍細胞殺傷の誘導に必須の複雑な宿主因子を再現するのに失敗する。
【0242】
これらの結果は、in vivo環境は、ターゲットタンパク質の薬剤としての可能性およびその療法反応に影響を及ぼす重要な役割を果たす確かな証拠を提供し、これは、単純化された培養条件に基づくアッセイにおいて、見過ごされがちな現象である。このようにして、本発明者らは、Fc-宿主FcγR相互作用がPRL3-zumabの抗腫瘍効果に必須であり、宿主細胞におけるFcγRの遮断がPRL3-zumab抗腫瘍効果の完全な喪失を生じ、これは、ADCCおよびADCPに関与することが重要であるB細胞、NK細胞およびM1マクロファージの浸潤減少と一致することを見出した。マクロファージは、腫瘍浸潤免疫細胞の主な集団の1つであり、そして一般的に、腫瘍増殖および転移に好適である。これは主に、進行した癌で観察されるように、M1からM2表現型への分化を誘導することによって、腫瘍進行中のマクロファージ極性化事象が腫瘍エスケープを促進するためである。M1細胞は、高い微生物殺傷活性、免疫刺激機能および腫瘍細胞傷害性を有する。近年のメタ分析研究は、増加した腫瘍殺傷性M1浸潤ならびに肺23および胃24癌患者における好ましい生存の間に、有意な相関を同定している。重要なことに、PRL3-zumab治療は、M1マクロファージ集積に特異的な増加を生じたが、M2増加は生じなかった。これが、抗腫瘍表現型に向かうM1/M2極性化、またはM1マクロファージ補充の特異的促進を反映するかどうかに関しては、さらなる研究が必要である。興味深いことに、PRL3-zumabによるM1腫瘍殺傷活性のこの増進は、他の最先端TAMターゲティング抗腫瘍戦略、例えばNF-κBおよびSTAT1経路のターゲティング、ならびにM1 TAM極性を促進するサイトカイン(例えばGM-CSF、IFN-g、IL-12)での治療25とならんでランキングされる。M1マクロファージに加えて、PRL3-zumabはまた、FcγR依存性方式で、NK細胞およびB細胞の浸潤ならびに抗腫瘍効果も促進した。NK細胞は、ADCCの主なエフェクターとしてよく知られているが、抗腫瘍反応におけるB細胞の機能的役割に関してはほとんど知られていない。以前、本発明者らは、抗PRL-3 mAbが、B細胞成熟および活性化が不全である遺伝子操作マウス系統(muMTマウス)において、PRL-3+腫瘍を抑制するのに失敗したのを見出した際、B細胞に関する抗腫瘍役割を暗示した。研究によって、腫瘍関連B細胞は、癌免疫監視に寄与し、そして転移を抑制しうることが示されている。原発性ヒト乳房および卵巣腫瘍内へのより多いB細胞浸潤は、より優れた予後と相関することが見出されている。化学療法は、抗腫瘍B細胞活性化および腫瘍内集積を、より優れた抗腫瘍反応と相関する方式で、促進することが示されてきている。逆に、B細胞枯渇は、T細胞依存性抗腫瘍細胞傷害性反応を損ない、そして腫瘍増殖を促進する。興味深いことに、高用量の化学療法を受け、続いて自己移植を受けたリンパ腫患者の後ろ向き分析において、高用量化学療法措置中のB細胞の枯渇は、固形腫瘍の有意により高い発生を生じることが注目された。総合すると、本発明者らは、B細胞が、一般的な抗腫瘍療法の機構的有効性において、重要であるがしかし過小認識されている役割を有すると仮定する。
【0243】
本研究における、重要な免疫細胞補充とともに、抗体およびFc受容体のFc機能の重要な証拠から、本発明者らは、PRL3-zumabの作用機構が、主に、細胞表面PRL-3の結合に関与し、その後、トラスツズマブおよびリツキシマブなどの他の受容体ターゲティング抗体と同様の、古典的ADCCまたはADCPを通じた抗腫瘍クリアランスが続くことを提唱する。本発明者らの「細胞内癌タンパク質」をターゲティングする非慣用的な抗体は、「細胞内および細胞外癌タンパク質」がどちらも、ADCCおよび/またはADCPを通じた免疫仲介性腫瘍細胞殺傷にしたがうため、抗体療法とともに利用される潜在的な癌特異的療法ターゲットの多数の細胞内の財宝に関するさらなる研究を保証する。パイオニアとなる本発明者らの新規癌治療は、癌患者にまもなく利益を与える、癌免疫療法の新たな時代を待ち望むであろう。
【0244】
実施例2に対する参考文献
【0245】
【0246】
【0247】
【配列表】