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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ダイヤモンド半導体の直接付加合成
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20231225BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231225BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y30/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022133241
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2019088807の分割
【原出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2022172207
(43)【公開日】2022-11-15
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】15/976,753
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504242618
【氏名又は名称】ロッキード マーティン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LOCKHEED MARTIN CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド グレン フィンドリー
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-079091(JP,A)
【文献】特開2013-067541(JP,A)
【文献】特開2015-168263(JP,A)
【文献】特開2000-273632(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0189965(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0297109(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106449809(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30-1/42
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 70/00-70/10
B29C 67/00-67/24
C30B 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
不活性金属を含むプラテン及び不活性雰囲気を含むエンクロージャを含む3次元(3D)プリンタと、
ハロゲン化溶液と負の電子親和力を有するナノ粒子とを含み、前記プラテン上に堆積するように構成された中性原料と、
前記中性原料に導入されたホウ化化合物を含み、前記プラテン上に堆積するように構成されたpドープ原料と、
前記中性原料に導入されたリン化合物を含み、前記プラテン上に堆積するように構成されたnドープ原料と、
前記ナノ粒子を誘起して前記ハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によって、中性層と、pドープ層と、nドープ層とを含むセラミックの層を形成するように構成されたレーザーと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記ハロゲン化溶液は、四塩化炭素を含み、
前記ナノ粒子は、ナノダイヤモンドを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ハロゲン化溶液は、トリクロロメチルトリクロロシランを含み、
前記ナノ粒子は、ナノダイヤモンドを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記セラミックは、多結晶ダイヤモンド半導体を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記セラミックは、炭化ケイ素半導体を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記ホウ化化合物は、三塩化ホウ素を含み、
前記リン化合物は、三塩化リンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
3次元(3D)プリンタであって、
前記3次元(3D)プリンタ内に封入された不活性雰囲気と、
不活性金属を含み、上に原料を堆積させるように構成されたプラテンと、
制御ユニットと、
を備え、前記制御ユニットは、
前記3次元(3D)プリンタのプラテン上に、ハロゲン化溶液と負の電子親和力を有するナノ粒子とを含む中性原料の第1の層を堆積させ、
レーザーを用いて前記中性原料のナノ粒子を誘起して前記ハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によって中性セラミックの第1の層を形成し、
前記3次元(3D)プリンタのプラテン上に、前記中性原料に導入されたホウ化化合物を含むp型原料の第2の層を堆積させ、
前記レーザーを用いて前記p型原料のナノ粒子を誘起して前記ハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によってpドープセラミックの第2の層を形成し、
前記3次元(3D)プリンタのプラテン上に、前記中性原料に導入されたリン化合物を含むn型原料の第3の層を堆積させ、
前記レーザーを用いて前記n型原料のナノ粒子を誘起して前記ハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によってnドープセラミックの第3の層を形成する、
ように構成されている、3次元(3D)プリンタ。
【請求項8】
前記ハロゲン化溶液は、四塩化炭素を含み、
前記ナノ粒子は、ナノダイヤモンドを含む、請求項に記載の3次元(3D)プリンタ。
【請求項9】
前記中性セラミックの前記第1の層、前記pドープセラミックの前記第2の層、及び前記nドープセラミックの前記第3の層は、多結晶ダイヤモンド半導体を形成する、請求項に記載の3次元(3D)プリンタ。
【請求項10】
前記ハロゲン化溶液は、トリクロロメチルトリクロロシランを含み、
前記ナノ粒子は、水素終端炭化ケイ素ナノ粒子を含む、請求項に記載の3次元(3D)プリンタ。
【請求項11】
前記中性セラミックの前記第1の層、前記pドープセラミックの前記第2の層、及び前記nドープセラミックの前記第3の層は、炭化ケイ素半導体を形成する、請求項10に記載の3次元(3D)プリンタ。
【請求項12】
前記ホウ化化合物は、三塩化ホウ素を含み、
前記リン化合物は、三塩化リンを含む、請求項に記載の3次元(3D)プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に3次元(3D)印刷に関し、具体的にはセラミック半導体の3D印刷に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元(3D)印刷は、物体の「蓄積」によって物体の製造を可能にする付加製造工程である。物体の形状を形成するためにバルク材から材料を除去する機械加工などの減算法とは対照的に、3D印刷は、材料の連続層を蓄積させて物体の形状を形成する。3D印刷に使用される典型的な材料としては、プラスチック、セラミック及び金属を挙げることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
いくつかの実施形態によれば、システムが、3次元(3D)プリンタと、中性原料と、pドープ原料と、nドープ原料と、レーザーとを含む。3次元(3D)プリンタは、プラテン及びエンクロージャを含む。プラテンは、不活性金属を含む。エンクロージャは、不活性雰囲気を含む。中性原料は、プラテン上に堆積するように構成される。中性原料は、ハロゲン化溶液と、負の電子親和力を有するナノ粒子とを含む。pドープ原料は、プラテン上に堆積するように構成される。pドープ原料は、中性原料に導入されたホウ化化合物を含む。nドープ原料は、プラテン上に堆積するように構成される。nドープ原料は、中性原料に導入されたリン化合物を含む。レーザーは、ナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によって、中性層と、pドープ層と、nドープ層とを含むセラミックの層を形成するように構成される。
【0004】
他の実施形態では、付加製造法が、ハロゲン化溶液と負の電子親和力を有するナノ粒子とを含む第2の中性原料にホウ化化合物を導入してpドープ原料を形成するステップを含む。この方法は、第3の中性原料にリン化合物を導入してnドープ原料を形成するステップをさらに含む。方法は、3次元(3D)プリンタのプラテン上に第3の中性原料の第1の層を堆積させるステップをさらに含む。方法は、レーザーを用いて第3の中性原料のナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によって中性セラミックの第1の層を形成するステップをさらに含む。方法は、3次元(3D)プリンタのプラテン上にpドープ原料の第2の層を堆積させるステップをさらに含む。方法は、レーザーを用いてpドープ原料のナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によってpドープセラミックの第2の層を形成するステップをさらに含む。方法は、3次元(3D)プリンタのプラテン上にnドープ原料の第3の層を堆積させるステップをさらに含む。方法は、レーザーを用いてnドープ原料のナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によってnドープセラミックの第3の層を形成するステップをさらに含む。
【0005】
さらに他の実施形態では、3次元(3D)プリンタが、不活性雰囲気と、プラテンと、制御ユニットとを含む。不活性雰囲気は、3次元(3D)プリンタ内に封入される。プラテンは、不活性金属を含む。プラテンは、上に原料を堆積させるように構成される。制御ユニットは、3次元(3D)プリンタのプラテン上に中性原料の第1の層を堆積させるようにさらに構成される。中性原料は、ハロゲン化溶液と、負の電子親和力を有するナノ粒子とを含む。制御ユニットは、レーザーを用いて中性原料のナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によって中性セラミックの第1の層を形成するようにさらに構成される。制御ユニットは、3次元(3D)プリンタのプラテン上にp型原料の第2の層を堆積させるようにさらに構成される。p型原料は、中性原料に導入されたホウ化化合物を含む。制御ユニットは、レーザーを用いてp型原料のナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によってpドープセラミックの第2の層を形成するようにさらに構成される。制御ユニットは、3次元(3D)プリンタのプラテン上にn型原料の第3の層を堆積させるようにさらに構成される。n型原料は、中性原料に導入されたリン化合物を含む。制御ユニットは、レーザーを用いてn型原料のナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によってnドープセラミックの第3の層を形成するようにさらに構成される。
【0006】
いくつかの実施形態の技術的利点として、負の電子親和性ナノ粒子及びハロゲン化溶液から成る中性原料、pドープ原料及びnドープ原料の交互層を用いて、最終的なセラミックを形成するために窯又は炉を用いた加熱を必要とする生素地中間物(greenware intermediary)を伴わずにセラミック半導体を形成する点を挙げることができる。いくつかの実施形態は、ダイヤモンド半導体の形成を含むことができる。他の実施形態は、炭化ケイ素セラミック半導体の形成を含むことができる。当業者には、以下の図、説明及び特許請求の範囲から他の技術的利点が容易に明らかになるであろう。さらに、上記では特定の利点を列挙したが、様々な実施形態は、列挙した利点の全部又は一部を含むことも、或いは全く含まないこともできる。
【0007】
以下、開示する実施形態、並びにその特徴及び利点をさらに完全に理解できるように、添付図面と共に行う以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】いくつかの実施形態による3Dプリンタの例を示す図である。
図2A】いくつかの実施形態による、負の電子親和性ナノ粒子の例であるアダマンタンダイヤモンドイドの化学構造を示す図である。
図2B】いくつかの実施形態による、ハロゲン化溶液の例である四塩化炭素の化学構造を示す図である。
図2C】いくつかの実施形態による、ホウ化化合物の例である三塩化ホウ素の化学構造を示す図である。
図2D】いくつかの実施形態による、リン化合物の例である三塩化リンの化学構造を示す図である。
図2E】いくつかの実施形態による半導体の例を示す図である。
図3】いくつかの実施形態による付加製造法を示す図である。
図4】いくつかの実施形態による、図1の3Dプリンタを制御するために使用できるコンピュータシステム例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態及びその利点は、様々な図面の同様の及び対応する部分に同じ数字を使用する図1図4を参照することによって最も良く理解される。
【0010】
セラミックを3D印刷する現行技術では、プレセラミックポリマー又はセラミック粒子にバインダを加えたものを使用して生素地中間物を形成する必要がある。多くの場合、この生素地中間物は、窯を用いて加熱して焼入れ(thermolyze)又は焼結して最終的なセラミックにする必要がある。生素地中間物を窯内で加熱すると収縮が生じ、製品の設計中にはこれを予測しておかなければならない。
【0011】
窯内での加熱を必要とする生素地中間物を排除するために、本開示の実施形態は、ハロゲン化溶液中の負の電子親和性ナノ粒子を誘起して電子を放出させることによってセラミックを3D印刷し、還元されたハロゲン化合物が核生成(nucleates)して直接セラミックを形成することを含む。負の電子親和性ナノ粒子及びハロゲン化溶液を用いてセラミックを3D印刷することにより、窯内での焼成を必要とする生素地中間物を伴わずにセラミックを形成することができる。負の電子親和性ナノ粒子及びハロゲン化溶液を用いた3D印刷では、ナノ粒子がセラミック生成物に直接組み込まれるので、触媒又はバインダの形の汚染物質を避けることもできる。本開示の実施形態は、任意の形状の3Dセラミックを室温又はそれ未満の温度で形成することを含むこともできる。
【0012】
ダイヤモンドは、多くの固有の特性を有する元素である炭素の1つの形態である。ダイヤモンドは、既知の最も硬い材料の1つであり、融点及び沸点が高く、優れた熱導体であるとともに電気絶縁体でもある。ダイヤモンドから形成された物体は、これらの特性を利用することができる。例えば、ドリルビット、のこぎり又はナイフなどの、ダイヤモンドから形成されたツールは、ダイヤモンドの硬度に起因して、従来の材料で形成されたツールよりも高い耐久性を有することができる。ダイヤモンドは、ダイヤモンドナノ粒子の形態の粉末として、及びプレセラミックポリマーの熱分解から、などの様々な方法で生産することができる。
【0013】
本開示の教示は、負の電子親和性ナノ粒子及びハロゲン化溶液を用いた3次元(3D)印刷技術を使用すれば、様々なセラミックで形成された様々な有用な形状の物体の作成を可能にできることを認識している。具体的には、負の電子親和性ナノ粒子(例えば、水素終端ナノダイヤモンド)及びハロゲン化溶液(例えば、四塩化炭素)を用いた3D印刷技術を使用すれば、様々な形状のダイヤモンド物体の作成を可能にすることができる。例えば、負の電子親和性ナノ粒子(例えば、ナノダイヤモンド)及びハロゲン化溶液(例えば、四塩化炭素)を用いた3D印刷を使用すれば、ほとんど全ての形状を有するダイヤモンドドリルビットの作成を可能にすることができる。他の例として、負の電子親和性ナノ粒子(例えば、ナノダイヤモンド)及びハロゲン化溶液(例えば、四塩化炭素)を用いた3D印刷を使用して、ブレーキパッドインサート、航空電子工学ボックス(avionics boxes)、軽量装甲(lightweight armor)、ダイヤモンド透析フィルタ、真空マイクロエレクトロニクス、又はその他のいずれかの適切な物体を印刷することもできる。
【0014】
さらに、ナノダイヤモンド又は四塩化炭素とは別に又はこれに加えて異なる負の電子親和性ナノ粒子及びハロゲン化溶液を使用することにより、印刷された物体の特性を様々な設計目的に合うように変化させることもできる。例えば、本開示の実施形態は、ダイヤモンド物体を形成することに加えて、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ハフニウム、炭化バナジウム又は炭化タングステンなどの他の炭化物で形成された物体を形成することもできる。
【0015】
本開示の教示は、負の電子親和性ナノ粒子及びハロゲン化溶液から成る中性原料、p型原料及びn型原料の交互層を使用して、窯内での加熱を必要とする生素地中間物を形成する必要なくセラミック半導体を3D印刷できることを認識している。例えば、本開示に従って3D印刷することができるセラミック半導体は、半導体ダイヤモンド及び/又は半導体炭化ケイ素を含む。
【0016】
さらに、本開示の教示は、負の電子親和性ナノ粒子及びハロゲン化溶液を使用して、窯を用いた加熱を必要とする生素地中間物を形成する必要なく最終的なセラミックを3D印刷することができると認識している。また、本開示の教示は、負の電子親和性ナノ粒子の使用が、3D印刷の完成後に回収又は抽出する必要がある触媒又はバインダを使用する必要なく、最終的なセラミックに組み込まれた疑似触媒として機能できることも認識している。以下、負の電子親和性ナノ粒及びハロゲン化溶液を用いた3D印刷方法及びシステムについて説明する。
【0017】
図1図4を用いてシステムをさらに詳細に説明する。図1には、いくつかの実施形態による3Dプリンタシステム100の例を示す。図2Aには、いくつかの実施形態による負の電子親和性ナノ粒子の例であるアダマンタンダイヤモンドイド200の化学構造を示す。図2Bには、いくつかの実施形態によるハロゲン化溶液の例である四塩化炭素205の化学構造を示す。図2Cには、いくつかの実施形態によるホウ化化合物の例である三塩化ホウ素を示す。図2Dには、いくつかの実施形態によるリン化合物の例である三塩化リンを示す。図3には、いくつかの実施形態による、負の電子親和性ナノ粒子及びハロゲン化溶液を用いた付加製造法を示す。図4には、いくつかの実施形態による、図1の3Dプリンタを制御するために使用できるコンピュータシステムの例を示す。
【0018】
図1に、3Dプリンタシステム100の例を示す。3Dプリンタシステム100は、3Dプリンタ110及びレーザー120を含む。3Dプリンタ110は、プラテン130及びエンクロージャ140を含む。プラテン130は、不活性物質のプレートである。例えば、プラテン130は、プラチナを含むことができる。プラテン130上には、プラテン130と反応することなく原料180の層を堆積させることができる。原料180は、アダマンタンダイヤモンドイド200などの負の電子親和性ナノ粒子と、四塩化炭素205などのハロゲン化溶液とを含む。エンクロージャ140は、プラテン130を取り囲んで不活性雰囲気150を封入する。不活性雰囲気150の例としては、窒素又はアルゴンガスが挙げられる。エンクロージャ140は、不活性3D印刷環境を維持することができる。
【0019】
レーザー120は、プラテン130上に堆積した原料180をラスター走査して、アダマンタンダイヤモンドイド200などの負の電子親和性ナノ粒子から溶媒和電子を誘起するように構成される。レーザー120は、UV範囲の波長を放出することができる。レーザー120は、可視光範囲の波長を放出することもできる。レーザー120は、原料180内の負の電子親和性ナノ粒子を誘起して、四塩化炭素205などのハロゲン化溶液中に電子を放出させることができる。これらの電子は、原料180のハロゲン化溶液を還元して、二原子ハロゲンガス又はその液体と、炭素原子などの原子とを形成することができる。炭素原子は、ダイヤモンドなどのセラミック内に核生成することができる。レーザー120は、特定の波長又は波長範囲に設定することができる。例えば、レーザー120は、213~223nmの波長に設定することができる。別の例として、レーザー120は、532nmの波長に設定することもできる。この波長又は波長範囲は、負の電子親和性ナノ粒子からの電子の放出を促すのに必要な波長とすることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、3Dプリンタシステム100が、制御ユニット160を含むことができる。制御ユニット160は、3Dプリンタ110に命令を与えることによって物体の印刷を制御するコンピュータシステムを含むことができる。制御ユニット160は、3Dプリンタ110の外部に存在することも、或いは3Dプリンタ110に組み込むこともできる。制御ユニット160のいくつかの実施形態については、以下で図5に関してさらに詳細に説明する。
【0021】
いくつかの実施形態では、3Dプリンタシステム100が、エンクロージャ140内の不活性雰囲気150をフラッシュしてエンクロージャ140内に放出された副生成物を回収するように構成されたフラッシュ機構190を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、エンクロージャ140内にハロゲンガス副生成物が放出されることがある。フラッシュ機構190は、エンクロージャ140の不活性雰囲気150からハロゲンガス副生成物をフラッシュして、このハロゲンガス副生成物を安全に貯蔵することができる。このように、フラッシュ機構190は、ハロゲンガス副生成物が不活性雰囲気150を汚染しないことを確実にすることができる。また、このように、フラッシュ機構190は、ハロゲンガス副生成物が3D印刷システム100から外部雰囲気内に放出されないことを確実にすることもできる。
【0022】
フラッシュ機構190は、外部雰囲気内へのハロゲンガスの放出を防ぐようにしてエンクロージャ140からハロゲンガスを除去するために必要なあらゆる従来のフラッシング法を使用することができる。例えば、フラッシュ機構190は、エンクロージャ140にアルゴンガスを流した後に、フィルタ又は圧縮器などを用いてハロゲンガスを回収するためのいずれかの従来の機構に連続して流すことを伴うことができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、3Dプリンタシステム100が、原料180を排出するように構成された排出機構170を含むことができる。例えば、物体の3D印刷が完了すると、プラテン130上に原料180が残ることがある。排出機構170は、プラテン130上に残った原料180を貯蔵タンク内に排出することができる。排出機構170は、プラテン130から原料180を除去するのに必要なあらゆる従来の排出方法を使用することができる。
【0024】
原料180は、四塩化炭素205などのハロゲン化溶液を含む。例えば、ハロゲン化溶液は、ハロゲンとしての臭素又は塩素を含むことができる。室温又は付加製造温度において液体であるハロゲン化溶液を使用することが望ましいと考えられる。例えば、多結晶ダイヤモンドセラミックを形成する実施形態では、四塩化炭素又は四臭化炭素が室温で液体になり得る。ハロゲン化溶液の選択における他の検討事項としては、二原子ハロゲン副生成物を回収できる容易さを挙げることもできる。いくつかの実施形態では、ハロゲン化溶液の他の原子がセラミック生成物を構成する原子と一致することが望ましいと考えられる。例えば、多結晶ダイヤモンドセラミックを形成する際には、ハロカーボンがハロゲン化溶液として望ましいと考えられる。
【0025】
多結晶ダイヤモンドセラミックを形成する実施形態では、あらゆるハロカーボンをハロゲン化溶液として使用することができる。このような実施形態では、図2Bに示すような四塩化炭素205を使用することができる。別の例として、このような実施形態では、ハロゲン化溶液中に四臭化炭素を使用することもできる。窒化ホウ素セラミックを形成する他の実施形態では、ハロゲン化溶液中に(ジクロロアミン)ジクロロボラン(NCl2BCl2)を使用し、負の電子親和性ナノ粒子としてナノ粒子窒化ホウ素を使用することもできる。
【0026】
金属炭化物セラミックを形成するさらに他の実施形態では、四塩化炭素205に金属又は半金属ハロゲンを添加することができる。例えば、炭化ケイ素セラミックを形成する実施形態では、炭素及びシリコンを含むトリメチルトリクロロシラン(すなわち、CCl6Si)などのハロゲン化溶液を使用することができる。炭化ケイ素セラミックを形成する実施形態では、ハロゲン化溶液が、四塩化炭素205に四塩化ケイ素(すなわち、SiCl4)を添加したものを含むことができる。炭化チタンセラミックを形成する実施形態では、ハロゲン化溶液が、四塩化炭素205及び四塩化チタン(すなわち、TiCl4)を含むことができる。炭化ハフニウムセラミックを形成する実施形態では、ハロゲン化溶液が、四塩化炭素及び四塩化ハフニウム(すなわち、HfCl4)を含むことができる。炭化バナジウムを形成する実施形態では、ハロゲン化溶液が、四塩化炭素205及び四塩化バナジウム(すなわち、VCl4)を含むことができる。炭化タングステンセラミックを形成する実施形態では、ハロゲン化溶液が、四塩化炭素及び六塩化タングステン(すなわち、WCl6)を含むことができる。
【0027】
さらに他の実施形態では、中性原料からnドープ原料及びpドープ原料を形成することもできる。例えば、中性原料として四塩化炭素を使用することができる。この中性原料に三塩化リン215などのリン化合物を導入することによって、別個のnドープ原料を形成することができる。また、中性原料に三塩化ホウ素210などのホウ化化合物を導入することによって別個のpドープ原料を形成することもできる。いくつかの実施形態では、3Dプリンタ110のプラテン130上に中性原料と負の電子親和性ナノ粒子の第1の層を導入することができる。レーザー120は、第1の層を誘起して溶媒和電子を放出させ、中性セラミックの第1の層を形成することができる。3Dプリンタ110のプラテン130上には、pドープ原料と負の電子親和性ナノ粒子の第2の層を導入することもできる。レーザー120は、第2の層を誘起して溶媒和電子を放出させ、pドープセラミックの第2の層を形成することができる。3Dプリンタ110のプラテン130上には、nドープ原料と負の電子親和性ナノ粒子の第3の層を導入することもできる。レーザー120は、第3の層を誘起して溶媒和電子を放出させ、nドープセラミックの第3の層を形成することができる。これをいずれかの所望の数の層が形成されるまで繰り返すことができる。例えば、合計7つ又は8つの層が形成されるまでこれを繰り返すことができる。これにより、窯内での焼入れを必要とする中間の生素地セラミックを必要とすることなくセラミック半導体を形成することができる。セラミック半導体は、半導体ダイヤモンド又は炭化ケイ素半導体を含むことができる。
【0028】
原料180は、負の電子親和性ナノ粒子も含む。所望のセラミック生成物に応じて、レーザー120などのレーザーによる誘起時に溶媒和電子を発生させるのに適したあらゆる負の電子親和性ナノ粒子を使用することができる。負の電子親和性ナノ粒子は、電子を発生させてセラミック内に核生成する疑似触媒として機能することができる。
【0029】
多結晶ダイヤモンドセラミックを形成する実施形態では、原料180の負の電子親和性ナノ粒子としてあらゆるダイヤモンドイド又は水素終端ナノダイヤモンドを使用することができる。例えば、このような実施形態では、図2Aに示すようなアダマンタンダイヤモンドイド200を使用することができる。多結晶ダイヤモンドセラミックの形成において使用できる他の負の電子親和性ナノ粒子の例としては、ジアマンタン及びテトラマンタンが挙げられる。ナノダイヤモンド又はダイヤモンドイドは、レーザー120などのレーザーによって照射されると電子を放出する。この時、還元されたハロカーボンが、ナノダイヤモンド又はダイヤモンドイド上に核生成してsp3の形態のダイヤモンドを形成する。このようにして、中間生素地を使用せずに、また中間生素地を窯内で加熱して最終的なセラミックを形成する必要なく、多結晶ダイヤモンドセラミックが形成される。
【0030】
炭化ケイ素セラミックを形成する実施形態では、負の電子親和性ナノ粒子の例が、水素終端炭化ケイ素ナノ粒子を含むことができる。窒化ホウ素セラミックを形成するさらに他の実施形態では、負の電子親和性窒化ホウ素ナノ粒子を使用することができる。
【0031】
図2Aに、多結晶ダイヤモンドを形成するいくつかの実施形態において原料180の負の電子親和性ナノ粒子として使用できるアダマンタンダイヤモンドイド200(すなわち、C1016)の化学構造を示す。
【0032】
図2Bには、いくつかの実施形態による、ハロゲン化溶液として使用できる四塩化炭素205(すなわち、CCl4)の化学構造を示す。
【0033】
図2Cには、ホウ化化合物として使用できる三塩化ホウ素210の化学構造を示す。ホウ化化合物は、原料に導入されてp型原料を形成することができる。
【0034】
図2Dには、リン化合物として使用できる三塩化リン215の化学構造を示す。リン化合物は、原料に導入されてn型原料を形成することができる。
【0035】
図2Eには、いくつかの実施形態による半導体220を示す。半導体220は、いくつかの実施形態において形成される電界効果トランジスタ(FET)などの半導体の例である。半導体220は、方法300を実行することによって形成することができる。半導体220は、ソース225と、ドレイン230と、p型基板240と、ゲート245と、ボディ250とを含む。ソース225は、nドープセラミックを含む。ドレイン230は、nドープセラミックを含む。p型基板240は、pドープセラミックを含む。ゲート245は、電流を流すのに適したいずれかの導電体で形成することができる。中性ダイヤモンド薄膜などの絶縁体が、ゲート245をp型基板240から分離することができる。ボディ250は、ソース225及びドレイン230を含むベース又は基板である。ゲート245に電流が付与されると、ソース225からドレイン230に電子又は電流が流れることができる。
【0036】
図3に、負の電子親和性ナノ粒子及びハロゲン化溶液を用いた付加製造法300を示す。方法300は、3Dプリンタ110によって実行することができる。方法300は、三塩化ホウ素210などのホウ化化合物を第2の中性原料に導入してpドープ原料を形成するステップ305から開始する。
【0037】
ステップ310において、三塩化リン215などのリン化合物を第3の中性原料に導入してnドープ原料を形成する。
【0038】
ステップ315において、3Dプリンタ110のプラテン130上に第1の中性原料の第1の層を堆積させる。
【0039】
第1、第2及び第3の中性原料は、ハロゲン化溶液と、負の電子親和力を有するナノ粒子とを含む。
【0040】
ステップ320において、レーザー120などのレーザーが、第1の中性原料のナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させて中性セラミックの第1の層を形成する。ナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させるレーザーは、二原子ハロゲンを形成することもできる。
【0041】
ステップ325において、3Dプリンタ110のプラテン130上にpドープ原料の第2の層を堆積させる。
【0042】
ステップ330において、レーザー120などのレーザーが、pドープ原料のナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させてpドープセラミックの第2の層を形成する。ナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させるレーザーは、二原子ハロゲンを形成することもできる。
【0043】
ステップ335において、3Dプリンタ110のプラテン130上にnドープ原料の第3の層を堆積させる。
【0044】
ステップ340において、レーザー120などのレーザーが、nドープ原料のナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させてnドープセラミックの第3の層を形成する。ナノ粒子を誘起してハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させるレーザーは、二原子ハロゲンを形成することもできる。
【0045】
全ての層が形成されると、方法300は、もはやステップ305に戻って再開しなくなる。例えば、方法300は、7つ又は8つの層が形成された後にはもはやステップ305に戻って再開しなくなることができる。いくつかの実施形態では、過剰な原料180をプラテン130などのプラテンから貯蔵タンク又は廃棄タンク内に排出することができる。
【0046】
方法300の実施形態では、中性セラミックの第1の層、pドープセラミックの第2の層及びnドープセラミックの第3の層がセラミック半導体を形成する。方法300によって形成できるセラミック半導体の例としては、炭化ケイ素半導体又は多結晶ダイヤモンド半導体が挙げられる。方法300の他の実施形態では、窯を使用することなくセラミック半導体が形成される。
【0047】
印刷後、物体は、物体の使用準備を整えるためのさらなる処理ステップを受けることができる。印刷後処理の例は、物体を塗装するステップと、物体を磨くステップと、物体の表面を処理して化学的に不活性化又は化学的に活性化させるステップと、複数の印刷された物体から別の物体又はデバイスを組み立てるステップとを含むことができる。
【0048】
図3に示す方法300には、修正、追加又は省略を行うこともできる。方法300は、さらに多くのステップ、さらに少ないステップ、又は他のステップを含むこともできる。例えば、ステップは、同時に又はいずれかの好適な順番で実行することができる。システム100の様々なコンポーネントがステップを実行するものとして説明したが、システム100のいずれかの好適なコンポーネント又はコンポーネントの組み合わせが方法の1又は2以上のステップを実行することもできる。
【0049】
図4に、いくつかの実施形態による、図1のシステムが使用できるコンピュータシステム400の例を示す。1又は2以上のコンピュータシステム400は、本明細書で説明又は図示した1又は2以上の方法の1又は2以上のステップを実行する。特定の実施形態では、1又は2以上のコンピュータシステム400が、本明細書で説明又は図示した機能性を提供する。特定の実施形態では、1又は2以上のコンピュータシステム400上で実行されるソフトウェアが、本明細書で説明又は図示した1又は2以上の方法の1又は2以上のステップを実行し、又は本明細書で説明又は図示した機能性を提供する。特定の実施形態は、1又は2以上のコンピュータシステム400の1又は2以上の部分を含む。本明細書では、コンピュータシステムへの言及が、必要に応じてコンピュータ装置に及ぶこともでき、この逆も同様である。さらに、コンピュータシステムへの言及は、必要に応じて1又は2以上のコンピュータシステムに及ぶこともできる。
【0050】
本開示は、あらゆる好適な数のコンピュータシステム400を想定する。本開示は、コンピュータシステム400があらゆる好適な物理的形態を取ることを想定する。限定ではなく一例として、コンピュータシステム400は、埋め込みコンピュータシステム、システムオンチップ(SOC)、(例えば、コンピュータオンモジュール(COM)又はシステム(SOM)などの)シングルボードコンピュータシステム(SBC)、デスクトップコンピュータシステム、ラップトップ又はノートブックコンピュータシステム、インタラクティブキオスク、メインフレーム、メッシュコンピュータシステム、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)、サーバ、タブレットコンピュータシステム、或いはこれらのうちの2つ又は3つ以上の組み合わせとすることができる。必要に応じて、コンピュータシステム400は、1又は2以上のコンピュータシステム400を含むことも、単体構造又は分散構造とすることも、複数箇所に及ぶことも、複数の機械に及ぶことも、複数のデータセンタに及ぶことも、或いは1又は2以上のネットワーク内の1又は2以上のクラウドコンポーネントを含むことができるクラウドに存在することもできる。必要に応じて、1又は2以上のコンピュータシステム400は、本明細書で説明又は図示した1又は2以上の方法の1又は2以上のステップを、実質的な空間的又は時間的制限を伴わずに実行することができる。限定ではなく一例として、1又は2以上のコンピュータシステム400は、本明細書で説明又は図示した1又は2以上の方法の1又は2以上のステップをリアルタイムで又はバッチモードで実行することができる。必要に応じて、1又は2以上のコンピュータシステム400は、本明細書で説明又は図示した1又は2以上の方法の1又は2以上のステップを異なる時点又は異なる場所で実行することができる。
【0051】
特定の実施形態では、コンピュータシステム400が、プロセッサ402と、メモリ404と、ストレージ406と、入力/出力(I/O)インターフェイス408と、通信インターフェイス410と、バス412とを含む。本開示では、特定の構成の特定の数の特定のコンポーネントを有する特定のコンピュータシステムを図示し説明しているが、本開示は、あらゆる好適な構成のあらゆる好適な数のあらゆる好適なコンポーネントを有するあらゆる好適なコンピュータシステムを想定する。
【0052】
特定の実施形態では、プロセッサ402が、コンピュータプログラムを構成する命令などの命令を実行するハードウェアを含む。限定ではなく一例として、プロセッサ402は、命令を実行するために、内部レジスタ、内部キャッシュ、メモリ404又はストレージ406から命令を検索(又はフェッチ)し、これらを復号して実行し、その後に内部レジスタ、内部キャッシュ、メモリ404又はストレージ406に1又は2以上の結果を書き込むことができる。特定の実施形態では、プロセッサ402が、データ、命令又はアドレスのための1又は2以上の内部キャッシュを含むことができる。本開示は、プロセッサ402が必要に応じてあらゆる好適な数のあらゆる好適な内部キャッシュを含むことを想定する。限定ではなく一例として、プロセッサ402は、1又は2以上の命令キャッシュと、1又は2以上のデータキャッシュと、1又は2以上のトランスレーション・ルックアサイド・バッファ(TLB)とを含むことができる。命令キャッシュ内の命令は、メモリ404又はストレージ406内の命令のコピーとすることができ、命令キャッシュは、プロセッサ402によるこれらの命令の検索を高速化することができる。データキャッシュ内のデータは、プロセッサ402において実行される命令の基礎となる、メモリ404又はストレージ406内のデータのコピー、プロセッサ402において実行される後続の命令によるアクセス、或いはメモリ404又はストレージ406への書き込みのための、プロセッサ402において実行された以前の命令の結果、又はその他の好適なデータとすることができる。データキャッシュは、プロセッサ402による読み込み又は書き込み動作を高速化することができる。TLBは、プロセッサ402の仮想アドレス変換を高速化することができる。特定の実施形態では、プロセッサ402が、データ、命令又はアドレスのための1又は2以上の内部レジスタを含むことができる。本開示は、プロセッサ402が必要に応じてあらゆる好適な数のあらゆる好適な内部レジスタを含むことを想定する。必要に応じて、プロセッサ402は、1又は2以上の算術論理演算ユニット(ALU)を含むことも、マルチコアプロセッサとすることも、或いは1又は2以上のプロセッサ402を含むこともできる。本開示では、特定のプロセッサについて図示し説明しているが、本開示は、あらゆる好適なプロセッサを想定する。
【0053】
特定の実施形態では、メモリ404が、プロセッサ402が実行するための命令、又はプロセッサ402の動作の基礎となるデータを記憶するメインメモリを含む。限定ではなく一例として、コンピュータシステム400は、ストレージ406又は(例えば、別のコンピュータシステム400などの)別のソースからメモリ404に命令をロードすることができる。その後、プロセッサ402は、メモリ404から内部レジスタ又は内部キャッシュに命令をロードすることができる。プロセッサ402は、命令を実行するために、内部レジスタ又は内部キャッシュから命令を検索して復号することができる。命令の実行中又は実行後、プロセッサ402は、内部レジスタ又は内部キャッシュに(中間結果又は最終結果とすることができる)1又は2以上の結果を書き込むことができる。その後、プロセッサ402は、これらの結果のうちの1つ又は2つ以上をメモリ404に書き込むことができる。特定の実施形態では、プロセッサ402が、(ストレージ406又は他の場所ではなく)1又は2以上の内部レジスタ、又は内部キャッシュ、又はメモリ404内の命令のみを実行し、(ストレージ406又は他の場所ではなく)1又は2以上の内部レジスタ、又は内部キャッシュ、又はメモリ404内のデータのみに基づいて動作する。(それぞれがアドレスバスとデータバスとを含む)1又は2以上のメモリバスが、プロセッサ402をメモリ404に結合することができる。後述するように、バス412は、1又は2以上のメモリバスを含むことができる。特定の実施形態では、プロセッサ402とメモリ404との間に1又は2以上のメモリ管理ユニット(MMU)が存在して、プロセッサ402によって要求されたメモリ404へのアクセスを容易にする。特定の実施形態では、メモリ404が、ランダムアクセスメモリ(RAM)を含む。このRAMは、必要に応じて揮発性メモリとすることができる。必要に応じて、このRAMは、ダイナミックRAM(DRAM)又はスタティックRAM(SRAM)とすることができる。さらに、必要に応じて、このRAMは、シングルポートRAM又はマルチポートRAMとすることができる。本開示は、あらゆる好適なRAMを想定する。メモリ404は、必要に応じて1又は2以上のメモリ404を含むことができる。本開示では特定のメモリについて図示し説明しているが、本開示は、あらゆる好適なメモリを想定する。
【0054】
特定の実施形態では、ストレージ406が、データ又は命令のための大容量ストレージを含む。限定ではなく一例として、ストレージ406は、ハードディスクドライブ(HDD)、フロッピーディスクドライブ、フラッシュメモリ、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープ、又はユニバーサルシリアルバス(USB)ドライブ、或いはこれらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを含むことができる。ストレージ406は、必要に応じて取り外し可能媒体又は取り外し不可(固定)媒体を含むことができる。ストレージ406は、必要に応じてコンピュータシステム400の内部又は外部に存在することができる。特定の実施形態では、ストレージ406が不揮発性固体メモリである。特定の実施形態では、ストレージ406がリードオンリメモリ(ROM)を含む。必要に応じて、このROMは、マスクプログラムROM、プログラマブルROM(PROM)、消去可能なPROM(EPROM)、電気的に消去可能なPROM(EEPROM)、電気的に書き換え可能なROM(EAROM)、又はフラッシュメモリ、或いはこれらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせとすることができる。本開示は、あらゆる好適な物理的形態の大容量ストレージ406を想定する。ストレージ406は、必要に応じて、プロセッサ402とストレージ406との間の通信を容易にする1又は2以上のストレージ制御ユニットを含むことができる。必要に応じて、ストレージ406は、1又は2以上のストレージ406を含むことができる。本開示では特定のストレージについて図示し説明しているが、本開示は、あらゆる好適なストレージを想定する。
【0055】
特定の実施形態では、I/Oインターフェイス408が、コンピュータシステム400と1又は2以上のI/O装置との間の通信のための1又は2以上のインターフェイスを提供するハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの両方を含む。コンピュータシステム400は、必要に応じてこれらのI/O装置のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。これらのI/O装置のうちの1つ又は2つ以上は、人間とコンピュータシステム400との間の通信を可能にすることができる。限定ではなく一例として、I/O装置は、キーボード、キーパッド、マイク、モニタ、マウス、プリンタ、スキャナ、スピーカ、静止カメラ、スタイラスペン、タブレット、タッチ画面、トラックボール、ビデオカメラ、別の好適なI/O装置、又はこれらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを含むことができる。I/O装置は、1又は2以上のセンサを含むことができる。本開示は、これらのためのあらゆる好適なI/O装置及びあらゆる好適なI/Oインターフェイス408を想定する。必要に応じて、I/Oインターフェイス408は、プロセッサ402がこれらのI/O装置のうちの1つ又は2つ以上を駆動できるようにする1又は2以上の装置又はソフトウェアドライバを含むことができる。I/Oインターフェイス408は、必要に応じて1又は2以上のI/Oインターフェイス408を含むことができる。本開示では特定のI/Oインターフェイスについて図示し説明しているが、本開示は、あらゆる好適なI/Oインターフェイスを想定する。
【0056】
特定の実施形態では、通信インターフェイス410が、コンピュータシステム400と1又は2以上の別のコンピュータシステム400又は1又は2以上のネットワークとの間の(例えば、パケットベースの通信などの)通信のための1又は2以上のインターフェイスを提供するハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの両方を含む。限定ではなく一例として、通信インターフェイス410は、イーサネット又は他の有線ベースのネットワークと通信するためのネットワークインターフェイスコントローラ(NIC)又はネットワークアダプタ、或いはWI-FIネットワークなどの無線ネットワークと通信するための無線NIC(WNIC)又は無線アダプタを含むことができる。本開示は、そのためのあらゆる好適なネットワーク及びあらゆる好適な通信インターフェイス410を想定する。限定ではなく一例として、コンピュータシステム400は、アドホックネットワーク、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、又はインターネットの1又は2以上の部分、或いはこれらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせと通信することができる。これらのネットワークのうちの1つ又は2つ以上のネットワークの1又は2以上の部分は、有線又は無線とすることができる。一例として、コンピュータシステム400は、(例えば、BLUETOOTH WPANなどの)無線PAN(WPAN)、WI-FIネットワーク、WI-MAXネットワーク、(例えば、グローバル・システム・フォー・モバイル・コミュニケーション(GSM)ネットワークなどの)携帯電話ネットワーク、又は他の好適な無線ネットワーク、或いはこれらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせと通信することができる。コンピュータシステム400は、必要に応じてこれらのネットワークのうちのいずれかのためのあらゆる好適な通信インターフェイス410を含むことができる。通信インターフェイス410は、必要に応じて1又は2以上の通信インターフェイス410を含むことができる。本開示では特定の通信インターフェイスについて図示し説明しているが、本開示は、あらゆる好適な通信インターフェイスを想定する。
【0057】
特定の実施形態では、バス412が、コンピュータシステム400のコンポーネントを互いに結合するハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの両方を含む。限定ではなく一例として、バス412は、アクセラレイティッド・グラフィックス・ポート(AGP)又は他のグラフィックバス、高度業界標準アーキテクチャ(EISA)バス、フロントサイドバス(FSB)、HYPERTRANSPORT(HT)相互接続部、業界標準アーキテクチャ(ISA)バス、INFINIBAND相互接続部、low-pin-countバス、メモリバス、マイクロチャネルアーキテクチャ(MCA)バス、周辺コンポーネント相互接続(PCI)バス、PCIエクスプレス(PCIe)バス、Serial Advanced Technology Attachment(SATA)バス、Video Electronics Standards Association local(VLB)バス、又は別の好適なバス、或いはこれらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを含むことができる。バス412は、必要に応じて1又は2以上のバス412を含むことができる。本開示では特定のバスについて図示し説明しているが、本開示は、あらゆる好適なバス又は相互接続部を想定する。
【0058】
コンピュータシステム400のコンポーネントは、統合又は分離することができる。いくつかの実施形態では、コンピュータシステム400のコンポーネントをそれぞれ単一のシャーシ内に収容することができる。コンピュータシステム400の動作は、さらに多くの、さらに少ない、又は他のコンポーネントによって実行することもできる。また、コンピュータシステム400の動作は、ソフトウェア、ハードウェア、他のロジック、又はこれらのあらゆる好適な組み合わせを含むことができるあらゆる好適なロジックを用いて実行することができる。
【0059】
本明細書では、1又は複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体が、必要に応じて(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は特定用途向けIC(ASIC)などの)1又は2以上の半導体ベースの又はその他の集積回路(IC)、ハードディスクドライブ(HDD)、ハイブリッドハードドライブ(HHD)、光ディスク、光ディスクドライブ(ODD)、光磁気ディスク、光磁気ドライブ、フロッピーディスケット、フロッピーディスクドライブ(FDD)、磁気テープ、ソリッドステートドライブ(SSD)、RAMドライブ、SECURE DIGITALカード又はドライブ、他のいずれかの好適な非一時的コンピュータ可読記憶媒体、又はこれらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを含むことができる。非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、必要に応じて揮発性、不揮発性、又は揮発性と不揮発性の組み合わせとすることができる。
【0060】
本開示は複数の実施形態を含むが、当業者には無数の変更、変形、改変、変換及び修正を進言することができ、本開示は、添付の特許請求の範囲に収まるこのような変更、変形、改変、変換及び修正を含むように意図される。以下に本発明の実施態様を記載する。
(実施態様1)システムであって、
不活性金属を含むプラテン及び不活性雰囲気を含むエンクロージャを含む3次元(3D)プリンタと、
ハロゲン化溶液と負の電子親和力を有するナノ粒子とを含み、前記プラテン上に堆積するように構成された中性原料と、
前記中性原料に導入されたホウ化化合物を含み、前記プラテン上に堆積するように構成されたpドープ原料と、
前記中性原料に導入されたリン化合物を含み、前記プラテン上に堆積するように構成されたnドープ原料と、
前記ナノ粒子を誘起して前記ハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によって、中性層と、pドープ層と、nドープ層とを含むセラミックの層を形成するように構成されたレーザーと、を備えるシステム。
(実施態様2)前記ハロゲン化溶液は、四塩化炭素を含み、前記ナノ粒子は、ナノダイヤモンドを含む、実施態様1に記載のシステム。
(実施態様3)前記ハロゲン化溶液は、トリクロロメチルトリクロロシランを含み、前記ナノ粒子は、ナノダイヤモンドを含む、実施態様1に記載のシステム。
(実施態様4)前記セラミックは、多結晶ダイヤモンド半導体を含む、実施態様2に記載のシステム。
(実施態様5)前記セラミックは、炭化ケイ素半導体を含む、実施態様3に記載のシステム。
(実施態様6)前記ホウ化化合物は、三塩化ホウ素を含み、前記リン化合物は、三塩化リンを含む、実施態様1に記載のシステム。
(実施態様7)前記セラミックは、窯を使用せずに形成される、実施態様1に記載のシステム。
(実施態様8)付加製造法であって、
ハロゲン化溶液と負の電子親和力を有するナノ粒子とを含む第2の中性原料にホウ化化合物を導入してpドープ原料を形成するステップと、
第3の中性原料にリン化合物を導入してnドープ原料を形成するステップと、
3次元(3D)プリンタのプラテン上に、第1の中性原料の第1の層を堆積させるステップと、
レーザーを用いて前記第1の中性原料のナノ粒子を誘起して前記ハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によって中性セラミックの第1の層を形成するステップと、
前記3次元(3D)プリンタのプラテン上に、前記pドープ原料の第2の層を堆積させるステップと、
レーザーを用いて前記pドープ原料のナノ粒子を誘起して前記ハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によってpドープセラミックの第2の層を形成するステップと、
前記3次元(3D)プリンタのプラテン上に、前記nドープ原料の第3の層を堆積させるステップと、
レーザーを用いて前記nドープ原料のナノ粒子を誘起して前記ハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によってnドープセラミックの第3の層を形成するステップと、を含む方法。
(実施態様9)前記ハロゲン化溶液は、四塩化炭素を含み、前記ナノ粒子は、ナノダイヤモンドを含む、実施態様8に記載の方法。
(実施態様10)前記中性セラミックの第1の層、前記pドープセラミックの第2の層、及び前記nドープセラミックの第3の層は、多結晶ダイヤモンド半導体を形成する、実施態様9に記載の方法。
(実施態様11)前記ハロゲン化溶液は、トリクロロメチルトリクロロシランを含み、前記ナノ粒子は、水素終端炭化ケイ素ナノ粒子を含む、実施態様8に記載の方法。
(実施態様12)前記中性セラミックの第1の層、前記pドープセラミックの第2の層、及び前記nドープセラミックの第3の層は、炭化ケイ素半導体を形成する、実施態様11に記載の方法。
(実施態様13)前記ホウ化化合物は、三塩化ホウ素を含み、前記リン化合物は、三塩化リンを含む、実施態様8に記載の方法。
(実施態様14)前記中性セラミックの第1の層、前記pドープセラミックの第2の層、及び前記nドープセラミックの第3の層は、窯を使用せずにセラミック半導体を形成される、実施態様8に記載の方法。
(実施態様15)3次元(3D)プリンタであって、
前記3次元(3D)プリンタ内に封入された不活性雰囲気と、
不活性金属を含み、上に原料を堆積させるように構成されたプラテンと、
制御ユニットと、
を備え、前記制御ユニットは、
前記3次元(3D)プリンタのプラテン上に、ハロゲン化溶液と負の電子親和力を有するナノ粒子とを含む中性原料の第1の層を堆積させ、
レーザーを用いて前記中性原料のナノ粒子を誘起して前記ハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によって中性セラミックの第1の層を形成し、
前記3次元(3D)プリンタのプラテン上に、前記中性原料に導入されたホウ化化合物を含むp型原料の第2の層を堆積させ、
前記レーザーを用いて前記p型原料のナノ粒子を誘起して前記ハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によってpドープセラミックの第2の層を形成し、
前記3次元(3D)プリンタのプラテン上に、前記中性原料に導入されたリン化合物を含むn型原料の第3の層を堆積させ、
前記レーザーを用いて前記n型原料のナノ粒子を誘起して前記ハロゲン化溶液中に溶媒和電子を放出させ、還元によってnドープセラミックの第3の層を形成する、
ように構成されている、3次元(3D)プリンタ。
(実施態様16)前記ハロゲン化溶液は、四塩化炭素を含み、前記ナノ粒子は、ナノダイヤモンドを含む、実施態様15に記載の3次元(3D)プリンタ。
(実施態様17)前記中性セラミックの前記第1の層、前記pドープセラミックの前記第2の層、及び前記nドープセラミックの前記第3の層は、多結晶ダイヤモンド半導体を形成する、実施態様16に記載の3次元(3D)プリンタ。
(実施態様18)前記ハロゲン化溶液は、トリクロロメチルトリクロロシランを含み、前記ナノ粒子は、水素終端炭化ケイ素ナノ粒子を含む、実施態様15に記載の3次元(3D)プリンタ。
(実施態様19)前記中性セラミックの前記第1の層、前記pドープセラミックの前記第2の層、及び前記nドープセラミックの前記第3の層は、炭化ケイ素半導体を形成する、実施態様18に記載の3次元(3D)プリンタ。
(実施態様20)前記ホウ化化合物は、三塩化ホウ素を含み、前記リン化合物は、三塩化リンを含む、実施態様15に記載の3次元(3D)プリンタ。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4