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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】飲食物搬送装置および走行ユニット
(51)【国際特許分類】
   A47G 23/08 20060101AFI20231225BHJP
   B65G 17/32 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A47G23/08 Z
B65G17/32 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022137710
(22)【出願日】2022-08-31
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】313006991
【氏名又は名称】株式会社オーイズミラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 勤
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025202(JP,A)
【文献】特開2019-122610(JP,A)
【文献】特開2002-080124(JP,A)
【文献】特開平10-248698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 23/08
B65G 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食物を厨房側から客席側に搬送するための飲食物搬送装置において、
厨房側から客席側まで連なるテーブル上で、厨房側を始点として客席側の終点まで延在する搬送レールと、
前記搬送レールに沿って走行可能に配置され、自己が有する動力により自走する走行ユニットと、を有し、
前記走行ユニットは、
当該走行ユニットの定位置に固定されて飲食物を載せるトレイと、
前記トレイ上の飲食物を囲う状態で、前記トレイに対して水平方向に回転可能であり、その側方より飲食物を出し入れする開口部が形成されたフェンスと、
前記フェンスを回転可能に支持する回転機構と、を有し、
前記回転機構は、前記フェンスを保持するフェンスブラケットと、当該フェンスブラケットを回転させる動力源を備えたことを特徴とする飲食物搬送装置。
【請求項2】
前記走行ユニットは、
厨房側からの指令により、前記搬送レールに沿って厨房側の待機位置から客席側へ走行して指定された客席の停止位置で停止し、続いて前記フェンスは開口部が初期角度から客席側を臨む角度に回転し、
前記トレイ上から客が飲食物を取り出すと、続いて前記フェンスは開口部が元の初期角度に戻るように回転した後、厨房側の待機位置まで走行して復帰するように制御されることを特徴とする請求項に記載の飲食物搬送装置。
【請求項3】
前記フェンスは、
前記開口部が搬送方向の後方となる厨房側を向く前記初期角度を基準として、
前記開口部を搬送方向の前方となる客席側に向かって搬送方向と直交する右側の客席に向かわせる第1角度と、同じく客席側に向かって搬送方向と直交する左側の客席に向かわせる第2角度と、に回転可能であることを特徴とする請求項に記載の飲食物搬送装置。
【請求項4】
前記走行ユニットが指定された客席の停止位置に到達したことを検知可能な位置検知手段と、
前記フェンスが、前記初期位置、前記第1角度、前記第2角度の何れかに回転したことを検知可能な回転検知手段と、
前記厨房側に設けられ、配膳先の客席の停止位置の指定と、配膳先の客席における前記フェンスの回転角度の指定と、を含む各種操作を店員が行う操作部と、
前記位置検知手段による検知に基づき、前記走行ユニットの走行を制御して指定された客席の停止位置に停止させ、かつ前記回転検知手段による検知に基づき、前記フェンスの回転を制御して指定された回転角度に停止させる制御部と、を有することを特徴とする請求項に記載の飲食物搬送装置。
【請求項5】
前記トレイ上の飲食物の有無を重量の変化により検知可能な重量検知手段を有し、
前記制御手段は、前記重量検知手段による検知に基づき、前記トレイ上から客が飲食物を取り出したと判断可能であることを特徴とする請求項に記載の飲食物搬送装置。
【請求項6】
飲食物を厨房側から客席側に搬送するための走行ユニットであって、
当該走行ユニットの定位置に固定されて飲食物を載せるトレイと、
前記トレイ上の飲食物を囲う状態で、前記トレイに対して水平方向に回転可能であり、その側方より飲食物を出し入れする開口部が形成されたフェンスと、
前記フェンスを回転可能に支持する回転機構と、を有し、
前記回転機構は、前記フェンスを保持するフェンスブラケットと、当該フェンスブラケットを回転させる動力源を備えたことを特徴とする走行ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食物を厨房側から客席側に搬送するための飲食物搬送装置および走行ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転寿司店等の飲食店においては、接客スタッフによる飲食物を配膳する業務を削減し、省スタッフによる営業を実現するために、例えば、注文を受けて用意した飲食物を厨房側から客席側へ自動的に搬送する飲食物搬送装置が採用されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
このような飲食物搬送装置は、厨房側から客席側に至る搬送路として、モーターの駆動により循環移動するコンベアを備え、コンベア上に、料理が盛られた皿の収容体が載せられて、コンベアの循環移動により料理が客席側まで搬送されていた。また、料理の収容体には、料理を覆う蓋体も設けられており、この蓋体は、開閉機構によって後端側を回転中心として前端側が上下に開閉するように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-141520号公報
【文献】特開2013-150732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の飲食物搬送装置は、飲食物を非自走式の収容体に載せてコンベアの循環移動により搬送するため、無端状となるコンベアの構成が、モーター等の駆動系も含めて、全体的に大掛かりで複雑となり、コストが嵩むという問題があった。従って、小規模な居酒屋等の飲食店では、スペース的にもコスト的にも導入が困難であった。特に、店舗の改装等に伴って、搬送路であるコンベアの長さを、後から容易に変更することもできなかった。
【0006】
また、従来の飲食物搬送装置では、料理の収容体に蓋体が設けられていたが、この蓋体を開閉するための開閉機構も複雑であるばかりでなく、蓋の開閉は一定方向のみに限られていた。従って、コンベアに対する客席の配置が、蓋が開く方向に限られるため、飲食店内の客席レイアウトの自由度にも乏しいという問題があった。しかも、コンベアを間にして左右に客席を配した場合は、左右どちらの客に対して搬送されたものかを判別し難く、取り間違いが生じる虞もあった。
【0007】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、比較的簡単な構成によりコスト低減を可能とし、小規模な飲食店でも利用することができると共に、後から容易に設計変更することもでき、しかも、飲食物を囲うことで搬送時の衛生面や安全性に配慮すると共に、取り間違いを防止することができる飲食物搬送装置および走行ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明の一態様は、
飲食物を厨房側から客席側に搬送するための飲食物搬送装置において、
厨房側から客席側まで連なるテーブル上で、厨房側を始点として客席側の終点まで延在する搬送レールと、
前記搬送レールに沿って走行可能に配置され、自己が有する動力により自走する走行ユニットと、を有し、
前記走行ユニットは、
当該走行ユニットの定位置に固定されて飲食物を載せるトレイと、
前記トレイ上の飲食物を囲う状態で、前記トレイに対して水平方向に回転可能であり、その側方より飲食物を出し入れする開口部が形成されたフェンスと、
前記フェンスを回転可能に支持する回転機構と、を有し、
前記回転機構は、前記フェンスを保持するフェンスブラケットと、当該フェンスブラケットを回転させる動力源を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る飲食物搬送装置および走行ユニットによれば、比較的簡単な構成によりコスト低減を可能とし、小規模な飲食店でも利用することができると共に、後から容易に設計変更することもでき、しかも、飲食物の衛生面や安全性に配慮すると共に、取り間違いを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の使用状態を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の使用状態を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の使用状態を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の使用状態を示す背面図である。
図5】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の使用状態を示す正面図である。
図6】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の搬送路を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の搬送路を示す平面図である。
図8】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の搬送路を示す右側面図である。
図9】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の搬送路を示す左側面図である。
図10】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の搬送路の待機位置側を示す拡大平面図である。
図11図10のXI-XI線断面図である。
図12図10のXII-XII線断面図である。
図13図12のXIII矢視図である。
図14】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の走行ユニットを示す正面図である。
図15】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の走行ユニットを示す底面図である。
図16図15のXVI-XVI線断面図である。
図17図15のXVII-XVII線断面図である。
図18】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の走行ユニットを示す平面図である。
図19図18のXIX-XIX線断面図である。
図20】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の走行ユニットを示す斜視図である。
図21】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の走行ユニットを示す背面図である。
図22】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の走行ユニットを示す動作説明図である。
図23】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の走行ユニットを示す動作説明図である。
図24】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の走行ユニットを示す動作説明図である。
図25】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置のフェンスを示す斜視図である。
図26】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置のフェンスを示す斜視図である。
図27】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置のフェンスを示す動作説明図である。
図28】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置のフェンスを示す動作説明図である。
図29】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置のフェンスを示す動作説明図である。
図30】本発明の実施形態に係る飲食物搬送装置の制御の概要を示すフローチャートである。
図31】本発明の実施形態の変形例に係る飲食物搬送装置の使用状態を示す斜視図である。
図32】本発明の実施形態の変形例に係る飲食物搬送装置の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
本実施形態に係る飲食物搬送装置10は、例えば居酒屋等の飲食店内1において、バックヤードである厨房側2で用意した飲食物を、厨房側2から客席側3に搬送するための装置である。ここで「厨房側2」とは、客に提供する飲食物を用意するエリアであり、「客席側3」とは、客が客席毎に着座して飲食するエリアである。なお、飲食物搬送装置10が搬送する「飲食物」は、例えばジョッキに注いだビール等の飲み物、唐揚げや天麩羅、寿司等の料理、蕎麦やうどん等の丼物といった様々な飲食物が該当する。
【0012】
<飲食物搬送装置10の概要>
図1から図5は、飲食物搬送装置10の運用形態の外観の一例を示している。なお、以下に説明する実施形態で示される構成要素、形状、数値等は、何れも本発明の一例であり、本発明を限定するものではない。また、各図に示した構成要素の相対的な寸法関係や形状等は、適宜設計変更されるものであり、実際のものとは異なる場合がある。また、各図において、縮尺等は必ずしも一致しない。
【0013】
図1に示すように、飲食店内1には、厨房側2から客席側3まで連なるテーブル4が配置されている。テーブル4は、例えば一定幅で長手方向に延びており、その天面がフロア上で所定高さに水平な状態で配置されている。テーブル4は、厨房側2と客席側3とが仕切り壁5によって仕切られている。客席側3のテーブル4は、長手方向に延びる両側がそのまま飲食用のカウンター4aとなり、カウンター4aに沿って客席用のイス6が配置されている。なお、以下の説明で「客席」とは、カウンター4aに配置した各イス6毎の独立した客席とする。
【0014】
図1に示すように、飲食物搬送装置10は、テーブル4上で厨房側2を始点として客席側3の終点まで延在する搬送レール13と、該搬送レール13に沿って走行可能な走行ユニット20と、を備えている。搬送レール13は、テーブル4上で仕切り壁5に開設されたゲート5aを貫通して延びている。走行ユニット20は、詳しくは後述するが、自身の動力により自走するように構成されている。
【0015】
走行ユニット20は、厨房側2側から客席側3側に向けて搬送レール13上を走行することで、走行ユニット20の搬送方向から見て左右のカウンター4aの客席に飲食物を搬送する。厨房側2に位置する搬送レール13の始点には、走行ユニット20の待機位置が定められている。また、客席側3に位置する搬送レール13の途中には、各客席毎に対応して走行ユニット20の停止位置が定められている。さらに、厨房側2のテーブル4上には、走行ユニット20の待機位置の傍らで店員が各種操作を行う後述の操作パネル50が設けられている。
【0016】
<搬送レール13について>
図6から図13は、搬送レール13の構成の一例を示している。本実施形態の搬送レール13は、搬送路11の一部として構成されている。図1図2に示すように、搬送路11は、テーブル4の左右幅方向の中央に載置される台座12と、台座12の上面の中央寄りに設けられた搬送レール13と、台座12の両側端に沿って設けられた一対のガードレール14,14と、を備えている。このような搬送路11ないし搬送レール13は、走行ユニット20の駆動系を何ら備えるものではなく、また、無端状である必要もない。
【0017】
台座12は、搬送路11の土台をなすものである。台座12は、一定幅で長手方向に延び所定の厚みを有する平板状であり、例えば非磁性の金属製の板材によって形成されている。搬送レール13は、細幅で直線状に延びた突条をなす部材であり、例えば非磁性の金属製の角柱によって形成されている。搬送レール13は、図7に示すように、台座12の左右幅方向の中央ではなく、客席側3に向かって右側端寄りに若干ずれた位置で、台座12の上面より出っ張るように設けられている。
【0018】
各ガードレール14は、搬送路11内に手を入れにくくする(走行ユニット20に手を挟まれにくくする)ためのものである。各ガードレール14は、例えば金属製のロッド材を、搬送レール13の上端よりもやや高い位置に架設して構成されている。また、客席側3に位置する台座12の終端には、所定の高さ立壁状のストッパー15が設けられている。ストッパー15の内側壁には、例えばゴム等の弾性材からなる緩衝部材を配置すると良い。なお、台座12、搬送レール13、それにガードレール14は、それぞれ所定長さのユニットを長手方向に適宜組み合わせて全長を調整すると良い。また、適宜切断して長さ調整することも可能である。
【0019】
また、搬送レール13における待機位置と各停止位置には、それぞれ後述の走行ユニット20を停止させるためのレール側マグネット16(図11に一部のみ図示)が埋め込まれている。一方、走行ユニット20には、レール側マグネット16に重なる位置で、その磁気を検知する走行側リードスイッチ24(図11参照)が設けられている。走行ユニット20が指定された客席(配膳先)の停止位置に到達し、該停止位置にあるレール側マグネット16の磁気に走行側リードスイッチ24が反応(ON)すると、走行ユニット20は当該停止位置で停止するように制御される。ここで走行側リードスイッチ24とレール側マグネット16は、走行ユニット20が指定された客席の停止位置に到達したことを検知可能な本願発明の「位置検知手段」の一例である。
【0020】
ただし、走行側リードスイッチ24によるレール側マグネット16の検知だけでは、走行ユニット20の現在位置の検知は難しい。そのため、走行ユニット20にも、走行側マグネット25(図11図15参照)を設けると共に、搬送レール13には、所定間隔おきに走行側マグネット25の磁気を検知するレール側リードスイッチ17(図11に一部のみ図示)を設けることで、走行ユニット20の位置検知の補完を図っている。ここでレール側リードスイッチ17と走行側マグネット25も、本願発明の「位置検知手段」の一例となる。
【0021】
なお、磁気を検知する各リードスイッチ17,24の構成は、一般的であるので詳細な説明は省略するが、なるべく小型のタイプを用いると良い。また、レール側マグネット16は、搬送レール13の途中に埋設できる大きさのものであり、走行側マグネット25は、走行ユニット20内における配置スペースの関係上、他の部品と干渉しないように、なるべく薄型のものが適している。
【0022】
また、図12に示すように、搬送路11における待機位置には、台座12の上面下方にワイヤレス充電器18が埋設されている。一方、走行ユニット20の内部には、後述するがバッテリー22やワイヤレス充電器23が収納されている。各充電器18,23は、例えば電磁誘導方式により無線給電するものであり、搬送路11側のワイヤレス充電器18は送信用、走行ユニット20側のワイヤレス充電器23は受信用として構成されている。すなわち、走行ユニット20が待機位置にあるとき、各充電器18,23は互いに近接して誘導電流が発生し、バッテリー22が充電されるように設定されている。
【0023】
なお、搬送レール13を除く搬送路11は、テーブル4自体の構成の一部として捉えることができ、また、搬送レール13のみならず、これを含む搬送路11全体を、搬送レールと看做すことも可能である。また、本実施形態の搬送レール13と、これを含む搬送路11は、テーブル4(カウンター4a)の形状に合わせて、長手方向に直線状に延びるように形成されており、走行ユニット20は、直線方向に往復走行する。ただし、搬送レール13は、直線状に限られるものではく、例えば走行ユニット20が走行可能な曲率の範囲内であれば、全体的あるいは局所的に湾曲するように形成して、走行ユニット20が曲線方向にも走行できるように構成しても良い。
【0024】
<走行ユニット20について>
図14から図19は、走行ユニット20の構成の一例を示している。図6に示すように、走行ユニット20は、ユニットの本体をなすベース21と、ベース21の上面側に設けられて飲食物を載せるトレイ30と、トレイ30の周囲を取り囲むフェンス40と、を備えている。もちろん、走行ユニット20は、これら以外の他の構成要素を含むものであっても構わない。
【0025】
<<ベース21>>
図14から図17に示すように、ベース21は、平面視で略正方形となる薄型の箱形状であり、例えば非磁性の金属製の板材によって形成されている。ベース21の内部には、搬送レール13に対するガイド機構、自走するための走行機構、フェンス40を回転させる回転機構等を含む各種の関連部品が内蔵されている。以下の説明では、ベース21の周囲の4側壁のうち、客席側3を向く一側壁を「前」とし、厨房側2を向く他側壁を「後」とする。同様に、搬送レール13(搬送路11)の方向に関しても、客席側3に延びる先端側を「前」とし、厨房側2に位置する基端側を「後」とする。なお、ベース21の前端の両側は、角が切り欠かれている。
【0026】
<<搬送レール13に対するガイド機構>>
図13に示すように、ベース21の底面側には、搬送レール13に対する走行ユニット20の走行姿勢を一定に保つためのガイド機構が設けられている。このガイド機構は、搬送レール13の片側の側壁に摺接するガイドプレート211と、ガイドプレート211と搬送レール13を間にして対向する前後一対のガイドローラー212,213と、前方のガイドローラー212と搬送レール13を間にして対向するテンションローラー214等を備えている。なお、図13には搬送路11の底面が表されているが、搬送レール13以外の構成は適宜省略している。
【0027】
ガイドプレート211は、搬送レール13の長手方向に延びたフランジ状であり、例えば細幅の金属材により形成されている。ガイドプレート211は、その途中に配されたテンションローラー214を間にして前後に分断されている。ガイドローラー212,213は、それぞれ定位置に鉛直軸を介して水平方向に回動可能に軸支されている。テンションローラー214は、前方のガイドローラー212と対向する位置で、ガイドローラー212に対して近接ないし離隔可能な鉛直軸を介して水平方向に回動可能に軸支されている。ここでテンションローラー214は、ガイドローラー212に近接する方向へバネ部材等により常時付勢されており、搬送レール13に押し付けられて転動する。
【0028】
走行ユニット20は、ベース21の底面側に設けられたガイド機構、すなわち、ガイドプレート211、前後一対のガイドローラー212,213、テンションローラー214によって、搬送路11のうち特に搬送レール13に対する走行時の姿勢が一定に保たれ、搬送レール13に沿って直線上に往復移動するように規制される。なお、ガイドプレート211とガイドローラー212,213との間で搬送レール13が嵌る通路は、台座12上における前述した搬送レール13の配置に合わせて、走行ユニット20の左右幅方向の中央ではなく、右側壁寄りに若干ずれた位置に延びている。
【0029】
<<走行ユニット20の走行機構>>
図15に示すように、ベース21の底面側には、走行ユニット20全体を動力により自走させる走行機構が設けられている。この走行機構は、動力源である走行用モーター221と、前後一対のシャフト222,223と、前方のシャフト222の両側に設けられた一対の駆動輪224,224と、後方のシャフト223の両側に設けられた一対の走行輪225,225等を備えている。前後のシャフト222,223の間で各ガイドローラー212,213の傍らには、走行用モーター221に給電するバッテリー22と、そのワイヤレス充電器23が設けられている。
【0030】
図25図26に示すように、前方のシャフト222は、ベース21の左右幅方向に水平に延びた状態で回転可能に支持され、両端に駆動輪224が一体に回転可能に固定されている。後方のシャフト223も、ベース21の左右幅方向に水平に延びた状態で回転可能に支持され、両端に走行輪225が一体に回転可能に固定されている。各駆動輪224と各走行輪225は、それぞれベース21の両側端より内側で、ベース21の底面にある開口より下方に一部が露出し、搬送路11の台座12上を走行する大きさに、例えばゴム等の弾性材により形成されている。
【0031】
前方のシャフト222は、走行用モーター221によって回転駆動される。走行用モーター221は、一般的な小型の電動モーターであり、減速機構を内蔵したギアボックスが予め組み込まれている。走行用モーター221の出力軸には、駆動ギア221aが一体に軸支されている。一方、シャフト222の途中には、駆動ギア221aに噛み合って動力が伝達される従動ギア222aが一体に軸支されている。なお、走行用モーター221の駆動、すなわち走行ユニット20の自走は、後述する制御基板60によって制御される。
【0032】
<<関連機器>>
また、ベース21には、超音波センサ26,27、スピーカー28、後述するフェンス40の回転機構の部品、それに制御基板60等が内蔵されている。
図14図15に示すように、ベース21の前側壁には、左右一対に並ぶ超音波センサ26,26が設けられている。また、図15に示すように、ベース21の後側壁にも、左右一対に並ぶ超音波センサ27,27が設けられている。これらの超音波センサ26,27は、送波器から対象物に向けて超音波を発信し、音波の反射や透過した音波を受波器が受信することで、対象物の有無や距離を検出するものである。
【0033】
ベース21の前側と後側に設けられた各超音波センサ26,27が、それぞれ搬送路11の進行方向上に障害物(客の手等を含む)を検知すると、その検知信号が制御基板60に出力される。この障害物の検知信号を受信した制御基板60は、走行ユニット20の走行を自動的に一時停止する制御を行うように設定されている。
【0034】
また、図15に示すように、ベース21の底面側でバッテリー22の傍らには、スピーカー28が設けられている。スピーカー28は、小型の一般的なものであり、各超音波センサ26,27による障害物の検知に基づき走行ユニット20が一時停止したときに、例えばブザー音を鳴らして障害物があることを報知するように制御される。なお、障害物の報知に関しては、他に例えば、ベース21の側壁の適所に別途設けたLEDを点灯させたり、操作パネル50側でも警報を鳴らしたり表示するように構成すると良い。
【0035】
<<トレイ30>>
図16から図19に示すように、ベース21の上面側には、飲食物を載せるトレイ30が設けられている。トレイ30は、平面視で円形のプレート状であり、例えばステンレス等の耐食性に優れる金属製の板材によって形成されている。なお、トレイ30の上面には、載せた飲食物が滑らないように、例えばゴム製のシート材等の滑り止めを必要に応じて敷設すると良い。
【0036】
図18図19に示すように、トレイ30は、ベース21の上面上にトレイブラケット31およびロードセル32を介して略水平な状態に支持されている。詳しくは、トレイ30の下面に固定されたトレイブラケット31を、ベース21の上面に固定されたロードセル32に対してネジ止めしている。ここでトレイ30は、ベース21の上面内側の収まる定位置で、水平方向に移動することはなく回転することもなく、動かないように固定されている。
【0037】
図18に示すように、トレイブラケット31は、全体的には平面視で略正方形の平板状であり、例えばステンレス等の金属製の板材によって形成されているが、前後方向に亘る一部が矩形断面に折れ曲がって下方へ突出した段状に形成されている。この段状の部位は、ベース21の前後方向と平行な中心線より平行に右側に若干ずれており、当該部位が、ベース21の上面に固定されたロードセル32上にネジ止めされている。
【0038】
ロードセル32は、荷重を電気信号に変換して検知するセンサであり、その構成は一般的であるので詳細な説明は省略する。トレイ30上に飲食物等が載せられると、ロードセル32に歪みが生じて荷重が電気信号に変換されるため、トレイ30上における飲食物の有無を検知することができる。このロードセル32における検知信号は、後述する制御基板60に送信される。ここでロードセル32は、トレイ30上の飲食物の有無を重量の変化により検知可能な本願発明の「重量検知手段」の一例である。
【0039】
また、ベース21の上面には、トレイ30の下面との間の隙間を隠す受け部材33も固定されている。受け部材33の形状および配置は、その一部のみを図示しているが、要はベース21の上面とトレイ30の下面との間の隙間を隠すことができる構造であって、他の部品と干渉しないものであれば足りる。なお、トレイ30の具体的な寸法は、例えば大ジョッキに入れたビールを4個並べて載置できる240mm程度とし、搬送可能な耐荷重は、例えば最大で5kg等に設定すると良い。
【0040】
<<フェンス40>>
図20から図26に示すように、ベース21の上面側には、トレイ30上の飲食物を囲う状態で水平方向に回転可能なフェンス40が設けられている。フェンス40には、その側方より飲食物を出し入れする開口部41が形成されている。本実施形態のフェンス40は、その水平断面がC字形となるカバー状であり、例えばアクリル等の剛性のある合成樹脂の長方形のシート材を、トレイ30の外周に沿って湾曲させた状態に成形して構成されている。フェンス40は、後述するようにトレイ30上から取り外すことができるが、取り外した後も、そのままの形状に維持される。
【0041】
フェンス40は、開口部41以外の外周外側からでも内側のトレイ30上の飲食物を視認できるように透明材質を用いると良いが、逆にフェンス40自体が視認しづらくなっても困るので、例えば半透明を含めて有色透明にすると良い。また、フェンス40の具体的な高さは、例えば直径よりも若干低くする等と適宜定め得る設計事項である。なお、フェンス40の上面側は開口しているが、上面側の少なくとも一部をフタ等により閉じるように構成しても良い。
【0042】
フェンス40は、詳しくは後述するが、走行ユニット20が指定された客席の停止位置で停止したとき、その開口部41が初期角度から客席側を臨む角度に回転する。また、トレイ30上から客が飲食物を取り出したとき、その開口部41が元の初期角度に戻る角度に回転する。このようなフェンス40の回転は、次述する回転機構によって行われるように構成されている。
【0043】
<<フェンス40の回転機構>>
図22から図29に示すように、フェンス40は、トレイ30の上面上に回転機構を介して、トレイ30の中心線と合致する鉛直軸回りで水平方向に回転可能に支持されている。回転機構は、フェンス40を保持するフェンスブラケット42と、フェンスブラケット42を回転させる動力源であるフェンス用モーター43等を備えている。フェンス用モーター43には、走行用モーター221と同様に、バッテリー22から給電されるように設定されている。なお、図20から図29の一部において、トレイブラケット31、ロードセル32、それに受け部材33等の一部の構成を図示省略している。
【0044】
図27から図29に示すように、フェンスブラケット42は、全体的には平面状であり、その中心部421より両側方向に延びる一対のアーム422,423を備えている。中心部421には、フェンスブラケット42の回転中心となる鉛直軸、すなわちフェンス用モーター43の出力軸431が、そのまま回転軸として固定されている。一方のアーム422は、中心部421を通る直径方向に延びた先端側が三股に分岐しており、各分岐の先端に、それぞれトレイ30の外周に沿って円弧状に並ぶ保持クリップ422aが設けられている。
【0045】
他方のアーム423は、一方のアーム422と対称形状ではなく、中心部421より直径方向を避けるように屈曲して延びた先端側が三股に分岐している。この各分岐の先端に、それぞれトレイ30の外周に沿って、前記保持クリップ422aと180度対向して円弧状に並ぶ保持クリップ423aが設けられている。フェンスブラケット42の一対のアーム422,423が互いに対称形状ではないのは、特に他方のアーム423が回転時に前記トレイブラケット31における段状の部位(ロードセル32との固定箇所)との干渉を回避するためである。
【0046】
各保持クリップ422a,423aは何れも、例えば内側でフランジ状に立ち上がる固定片と、その外側で固定片側に付勢されて、固定片との間にフェンス40の下端縁を挟持可能な可動片とからなる。このような保持クリップ422a,423aによって、フェンス40はフェンスブラケット42から容易に着脱可能となっている。なお、各保持クリップ422a,423aは、フェンス40の下端縁を保持できる構成であれば足り、その具体的な形状や数は、図示した例に限定されることはない。例えば、各保持クリップ422a,423aは、互いに隙間を空けて対向する突片同士の弾性変形だけでフェンス40の下端縁を挟持するように構成しても良い。
【0047】
なお、フェンス40は、取り外した後もその形状が維持されるが、他に例えば、塩化ビニル等の柔軟な合成樹脂の長方形のシート材を、トレイ30の外周に沿って湾曲させた状態として、各保持クリップ422a,423aにより保持するように構成しても良い。この場合のフェンス40は、フェンスブラケット42から取り外すと、シート本来の平面状に復元する。また、この場合のフェンス40の開口部41は、長方形のシート材の両端同士が離れた隙間として形成される。
【0048】
図25に示すように、フェンスブラケット42、すなわちフェンス40は、フェンス用モーター43によって回転駆動される。フェンス用モーター43は、一般的な小型の電動モーターであり、減速機構を内蔵したギアボックスが予め組み込まれている。フェンス用モーター43の出力軸431は、フェンスブラケット42の回転中心であり、フェンスブラケット42の中心部421に一体に固定されている。なお、フェンス用モーター43の駆動、すなわちフェンス40の回転も、後述する制御基板60によって制御される。
【0049】
本実施形態のフェンス40では、走行ユニット20が待機位置にあるとき、図22に示すように、フェンス40の開口部41は、搬送方向の後方(厨房側2)を向くように設定されており、このときの角度を初期角度(0度)とする。そして、図23に示すように、フェンス40の開口部41が、搬送方向の前方(客席側3)に向かって右側の客席に向かう角度を、第1角度(90度)とする。さらに、図24に示すように、フェンス40の開口部41が、搬送方向の前方(客席側3)に向かって左側の客席に向かう角度を、第2角度(-90度)とする。
【0050】
図27に示すように、フェンスブラケット42のアーム422,423で、互いに中心部421を間にして180度対向する箇所には、それぞれ一対となるフェンス側マグネット424,425が設けられている。一方、ベース21の上面側には、フェンス側マグネット424,425に重なる位置で、その磁気を検知する一対のベース側リードスイッチ231,232が設けられている。ここでベース側リードスイッチ231,232と、フェンス側マグネット424,425は、フェンス40が、初期角度、第1角度、第2角度の何れかに回転したことを検知可能な「回転検知手段」の一例である。
【0051】
図27から図29に示すように、一方のベース側リードスイッチ231は、フェンス40の回転中心に対して、搬送方向の前方へ向かって右側に配置されている。他方のベース側リードスイッチ232は、フェンス40の回転中心に対して、搬送方向の後方に配置されている。各ベース側リードスイッチ231,232は、ベース21の上面壁の内側で、それぞれの位置に例えば断面視で略L字状のブラケット(図26参照)等を介して固定されている。
【0052】
詳しくは、図22に示すように、走行ユニット20が待機位置にあるとき、フェンス40の開口部41は、搬送方向の後方を向く初期角度(0度)にある。このとき、図中で右側のベース側リードスイッチ231が、同じく右側のフェンス側マグネット425の磁気に反応してONとなる、すなわち検知している。また、図23に示すように、走行ユニット20が客席の停止位置で、フェンス40の開口部41が右側の客席に向かう第1角度(90度)になると、図中で下側のベース側リードスイッチ232が、同じく下側まで反時計方向(矢印A方向)に回転したフェンス側マグネット424の磁気に反応してONとなる、すなわち検知する。
【0053】
さらに、図24に示すように、走行ユニット20が客席の停止位置で、フェンス40の開口部41が左側の客席に向かう第2角度(-90度)になると、図中で下側のベース側リードスイッチ232が、同じく下側まで時計方向(矢印B方向)に回転したフェンス側マグネット425の磁気に反応してONとなる、すなわち検知する。なお、フェンス用モーター43の駆動、すなわちフェンス40の回転は、後述する制御基板60によって制御される。
【0054】
<操作パネル50について>
図1に示すように、厨房側2のテーブル4上で走行ユニット20の待機位置の傍らには、操作パネル50が設けられている。操作パネル50は、各種操作を店員が行うための本願発明の「操作部」の一例である。操作パネル50は、具体的には例えば、7インチのカラー液晶ユニット等から構成され、タッチパネル式の表示画面と、走行ユニット20側の制御基板60とは別に、これと無線通信が可能な制御基板(図示省略)等を備えている。あるいは、操作パネル50における表示ないし操作も、独自の制御基板(図示省略)ではなく、制御基板60によって制御するように構成しても良い。
【0055】
操作パネル50の表示画面上には、例えばタッチパネル式のスイッチとして、配膳先の客席を選択したり、配膳開始として走行ユニット20の走行を指令するアイコン等が表示される。このような操作パネル50における操作は、厨房側2からの指令(信号)として、走行ユニット20側の制御基板60に無線送信され、走行ユニット20の動作が制御されるように設定されている。なお、タッチパネル式の液晶ユニット自体の構成は、一般的であるので詳細な説明は省略する。
【0056】
<制御基板60について>
図15に示すように、ベース21の底面側には、飲食物搬送装置10の全体の動作を制御する制御基板60が設けられている。ここで制御基板60は、走行ユニット20の走行やフェンス40の回転を制御する本願発明の「制御部」の一例である。制御基板60は、具体的には例えば、インターフェース、各種制御の中枢的機能を果たすCPU、CPUの実行するプログラムや各種の固定的データを記憶するROM、プログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶するためのRAM等から構成されたマイクロコンピュータからなる。
【0057】
制御基板60は、操作パネル50からの指令、位置検知手段や回転検知手段等からの信号を受けて、走行用モーター221、フェンス用モーター43等の後述する動作を制御するように設定されている。また、制御基板60は、無線通信用の通信基板を備えており、操作パネル50と無線通信により信号を送受可能に構成されている。ここで無線通信とは、例えばBluetooth(登録商標)やラジオコントロール無線等が適している。走行ユニット20側の通信基板と操作パネル50側の通信基板は、互いに認識するように予めペアリングされている。
【0058】
<飲食物搬送装置10の動作>
次に、飲食物搬送装置10の動作を、図30のフローチャートに沿って説明する。
図1に示すように、走行ユニット20は、通常は厨房側2の待機位置で待機している(ステップS100)。このとき、走行ユニット20側にあるバッテリー22は、無線給電により自動的に充電される。すなわち、走行ユニット20側にあるワイヤレス充電器23が、待機位置にあるワイヤレス充電器18に上下に重なるため、各充電器間18,23に誘導電流が発生してバッテリー22が充電される。
【0059】
客席側3から料理や飲み物等の飲食物の注文を受けると(ステップS110;Y)、厨房側2では店員が飲食物を用意し、その用意が調ったものから順に注文元の客席まで飲食物を自動で搬送する操作を行う。すなわち、先ず店員は、待機位置にある走行ユニット20のトレイ30上に飲食物を載せる(ステップS120)。このとき、トレイ30を囲うフェンス40の開口部41は、厨房側2である後側を向いた初期角度にある。よって、トレイ30上には、フェンス40の開口部41を通して、厨房側2から容易に飲食物を載せることができる。
【0060】
続いて店員は、操作パネル50によって、飲食物の配膳先である客席を指定する(ステップS130)。ここでの配膳先の指定は、操作パネル50の表示画面をタッチすることで容易に行うことができる。操作パネル50における操作は、厨房側2からの指令(信号)として、走行ユニット20側の制御基板60に無線送信される。すると、走行ユニット20は、直ちに駆動して走行を開始し、指定された客席まで飲食物を搬送する(ステップS140)。走行ユニット20の走行開始時には、その旨を知らせる音声をスピーカー28から出力すると良い。
【0061】
走行ユニット20は、厨房側2からの指令に基づく制御基板60の制御により、走行機構の走行用モーター221が正転駆動し、駆動輪224が正回転して、厨房側2の待機位置から客席側3へ向かって前方へ自走する。ここで走行ユニット20は、ベース21の底面側に設けられたガイド機構、すなわち、ガイドプレート211、前後一対のガイドローラー212,213、テンションローラー214の4点によって、搬送路11のうち特に搬送レール13に対する走行時の姿勢が一定に保たれ、搬送レール13に沿って安定した状態で走行する。なお、走行ユニット20の走行速度は、例えば0.7m/s程度に設定すれば、飲食物の搬送としては比較的高速であり、しかも安全面でも問題がない。
【0062】
万一、走行ユニット20の進行方向上に障害物がある場合には、ベース21の前側壁にある超音波センサ26によって障害物が検知される。この超音波センサ26からの検知信号が制御基板60に出力され、制御基板60は、走行ユニット20の走行を自動的に一時停止させる。このように、走行ユニット20は、障害物を検知すると自動的に停止するため、障害物との衝突を回避でき安全性をよりいっそう高めることができる。
【0063】
また、ベース21の後側壁にも超音波センサ27があるため、走行ユニット20が客席側3から厨房側2に戻る復帰時も 、同様に障害物との衝突を回避することができる。なお、走行ユニット20が障害物を検知した時は、その旨を警報するブザー音をスピーカー28から出力すると良い。また、各超音波センサ26,27が障害物を検知しなくなったタイミングで、走行ユニット20の自走を再開するように制御すると良い。
【0064】
走行ユニット20の走行中は、搬送レール13上における位置が位置検知手段によって検知される。そして、走行ユニット20は、指定された配膳先の客席の停止位置まで到達すると停止する(ステップS150)。詳しくは、走行ユニット20にある走行側リードスイッチ24が、配膳先の客席の停止位置にあるレール側マグネット16の磁気を検知すると、制御基板60から走行停止の指令が出力され、走行用モーター221の回転駆動が停止する。
【0065】
また、走行ユニット20にも、走行側マグネット25が設けられ、搬送レール13には、走行側マグネット25の磁気を検知するレール側リードスイッチ17が所定間隔おきに設けられている。これにより、搬送レール13上における走行ユニット20の位置を、常に把握することができる。従って、走行ユニット20の走行を、例えば配膳先の客席より手前の位置で減速させて、配膳先の客席の停止位置で停止させる制御を行うことも可能となる。かかる減速制御によれば、走行ユニット20の停止時におけるトレイ30上の飲食物の安定性を高めることができる。
【0066】
そして、走行ユニット20が停止位置で停止すると、次いでフェンス40は、その開口部41が配膳先の客席側(搬送レール13の左右方向の何れか)を向くように回転する(ステップS160)。このようなフェンス40の回転により、客がトレイ30上から飲食物を受け取りやすくなるだけでなく、飲食物が自分に搬送されたことを容易に認識することができ、搬送レール13を挟んだ左右両側の客席での取り間違いを防止することもできる。なお、フェンス40の回転時に、注文品の到着を客席に通知する音声をスピーカー28から出力すると良い。
【0067】
フェンス40は、制御基板60の制御によって、回転機構のフェンス用モーター43が正逆回転駆動されることにより、開口部41が配膳先の客席側を向くように回転する。図1図22に示すように、走行ユニット20が待機位置にあるとき、フェンス40の開口部41は、搬送方向の後方となる厨房側2を向くように設定されており、このときの角度が初期角度(0度)となる。フェンス40は、この初期角度(0度)を基準として、図23に示すように、開口部41が右側を向く矢印Aの方向(反時計方向)、または図24に示すように、開口部41が左側を向く矢印Bの方向(時計方向)に回転する。
【0068】
詳しくは、図23に示すように、配膳先の客席が右側である場合、図中で下側のベース側リードスイッチ232が、左側のフェンス側マグネット424を検知するまで、フェンス用モーター43は矢印A方向(反時計方向)に駆動され、フェンス40は、開口部41が右側を向く第1角度となる。一方、図24に示すように、配膳先の客席が左側である場合、図中で下側のベース側リードスイッチ232が右側のフェンス側マグネット425を検知するまで、フェンス用モーター43は矢印B方向(時計方向)に駆動され、フェンス40は、開口部41が左側を向く第2角度となる。
【0069】
続いて、フェンス40の開口部41から客がトレイ30上の飲食物を取り出すと(ステップS170;Y)、ロードセル32によって検知される。このロードセル32における検知信号は、そのまま制御基板60に送信される。そして、制御基板60は、ロードセル32からの検知信号に基づき、トレイ30上から客が飲食物を取り出したと判断する。すると、制御基板60は、再びフェンス用モーター43を駆動して、フェンス40を、開口部41が後方を向く初期角度まで戻すように回転させる(ステップS180)。
【0070】
そして、走行ユニット20は、厨房側2に戻るように自走して待機位置に到達すると停止する(ステップS190)。すなわち、走行ユニット20は、フェンス40が初期角度まで戻ると、制御基板60の制御により、走行機構の走行用モーター221が逆転駆動し、駆動輪224が逆回転して、配膳先の客席の停止位置から厨房側2の待機位置へ向かって後方へ自走する。そして、走行ユニット20にある走行側リードスイッチ24が、厨房側2の停止位置にあるレール側マグネット16の磁気を検知すると、制御基板60から走行停止の指令が出力され、走行用モーター221の駆動が停止する。
【0071】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0072】
先ず、本発明は、飲食物を厨房側2から客席側3に搬送するための飲食物搬送装置10において、
厨房側2から客席側3まで連なるテーブル4上で、厨房側2を始点として客席側3の終点まで延在する搬送レール13と、
前記搬送レール13に沿って走行可能に配置され、動力により自走する走行ユニット20と、を有し、
前記走行ユニット20は、
定位置に支持されて飲食物を載せるトレイ30と、
前記トレイ30上に設けられ、該トレイ30上の飲食物を囲う状態で水平方向に回転可能であり、その側方より飲食物を出し入れする開口部41が形成されたフェンス40と、を備えたことを特徴とする。
【0073】
このような本発明に係る飲食物搬送装置10によれば、飲食物を厨房側から客席側まで円滑に自動で搬送することができる。よって、本飲食物搬送装置10の導入により、飲食店での接客スタッフによる飲食物を配膳する業務は削減され、省スタッフによる営業を実現することができる。また、飲食物を自動搬送することにより、飲食物の提供時における対面による感染リスクを回避することができる。このような飲食物の自動搬送は、搬送レール13上で飲食物を載置可能な走行ユニット20を往復走行させて実現する。
【0074】
走行ユニット20は、動力により自走するものであり、例えば搬送路側から牽引されることはない。よって、搬送レール13には、走行ユニット20を走行させる動力源を設けることはなく、無端状である必要もない。そのため、搬送レール13は、簡易に構成することができ、コスト低減が可能であり、大型の飲食店に限らず小規模な飲食店でも利用することができる。また、簡易な構成の搬送レール13は、複数繋げて全長を長くしたり、適宜切断して全長を短くする等、例えば店内の改装等に応じて後から容易に設計変更することもできる。
【0075】
走行ユニット20において飲食物を載せるトレイ30は、定位置に水平な状態で支持されており、走行ユニット20において位置が移動したり回転することはない。一方、トレイ30上の飲食物を囲うフェンス40は、その側方に飲食物を出し入れする開口部41が形成されており、開口部41の向きを客席に合わせるように、水平方向に回転させることができる。このようなフェンス40によって、飲食物を囲うことで搬送時の衛生面や安全性に配慮すると共に、開口部の向きにより飲食物の取り間違いを確実に防止することができる。
【0076】
また、本発明は、前記フェンス40を回転可能に支持する回転機構を有し、
前記フェンス40は、前記回転機構に対して着脱可能であることを特徴とする。
ここで回転機構は、フェンス40を保持するフェンスブラケット42と、フェンスブラケット42を回転させる動力源であるフェンス用モーター43等を備えている。
【0077】
このような構成により、フェンス40を回転機構から取り外して洗うことができ、衛生面で優れるだけでなく、取り扱いやすくなる。
【0078】
また、本発明では、前記走行ユニット20は、
厨房側2からの指令により、前記搬送レール13に沿って厨房側2の待機位置から客席側3へ走行して指定された客席の停止位置で停止し、続いて前記フェンス40は開口部41が初期角度から客席側3を臨む角度に回転し、
前記トレイ30上から客が飲食物を取り出すと、続いて前記フェンス40は開口部41が元の初期角度に戻るように回転した後、厨房側2の待機位置まで走行して復帰するように制御されることを特徴とする。
【0079】
このような制御により、飲食物を厨房側から客席側まで円滑に自動で搬送することができる。
【0080】
また、本発明では、前記客席側3には、前記テーブル4が長手方向に延びる左右両側に、それぞれ複数の客席が並ぶ飲食用のカウンター4aが設けられ、
前記搬送レール13は、前記左右のカウンター4aの間に沿って配置されたことを特徴とする。
【0081】
このような構成により、搬送レール13を間にして左右両側の客席に対して飲食物を搬送することができる。そして、左右両側のカウンター4aに沿って、複数の客が並んで飲食を行うことができる。
【0082】
また、本発明では、前記フェンス40は、
前記開口部41が搬送方向の後方となる厨房側2を向く前記初期角度を基準として、
前記開口部41を搬送方向の前方となる客席側3に向かって搬送方向と直交する右側の客席に向かわせる第1角度と、同じく客席側3に向かって搬送方向と直交する左側の客席に向かわせる第2角度と、に回転可能であることを特徴とする。
【0083】
このような構成により、フェンス40は、正逆回転によって最小の回転角度で回転することになる。また、フェンス40の初期角度における開口部41の向きによれば、走行ユニット20が万一急停止するような事態が生じても、トレイ30上の飲食物が客席に向かって投げ出される虞はない。
【0084】
また、本発明では、前記走行ユニット20が指定された客席の停止位置に到達したことを検知可能な位置検知手段と、
前記フェンス40が、前記初期位置、前記第1角度、前記第2角度の何れかに回転したことを検知可能な回転検知手段と、
前記厨房側2に設けられ、配膳先の客席の停止位置の指定と、配膳先の客席における前記フェンス40の回転角度の指定と、を含む各種操作を店員が行う操作部と、
前記位置検知手段による検知に基づき、前記走行ユニット20の走行を制御して指定された客席の停止位置に停止させ、かつ前記回転検知手段による検知に基づき、前記フェンス40の回転を制御して指定された回転角度に停止させる制御部と、を有することを特徴とする。
【0085】
このような制御により、飲食物を厨房側から客席側まで円滑に自動で搬送する制御を容易に実現することができる。例えば、操作部である操作パネル50による操作によって、注文先の客席まで飲食物の搬送を容易に指令することができる。
【0086】
また、本発明は、前記トレイ30上の飲食物の有無を重量の変化により検知可能な重量検知手段を有し、
前記制御手段は、前記重量検知手段による検知に基づき、前記トレイ30上から客が飲食物を取り出したと判断可能であることを特徴とする。
【0087】
このような構成によれば、トレイ30上から飲食物を取り出すだけで、客や店員が返却のためのボタンを押下する等の一切の操作を行わなくても、搬送後の走行ユニット20を厨房側2まで自動的に戻すことができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば飲食物搬送装置10の搬送レール13および走行ユニット20の具体的な形状および構成は、図示したものに限定されることはない。また、カウンター4aにおける客席数は、図示の便宜上少なくしているが、実際の座席数は、例えば最大20席(右側10席/左側10席)等と適宜設定することができる。
【0089】
また、本実施形態では、テーブル4の両側に飲食用のカウンター4aを設けたが、他に例えばテーブル4の両側または片側に、4人掛け等の別のテーブルを配置するようにしても良い。また、テーブル4を店内の壁際に設置する場合は、テーブル4の片側だけにカウンター4aあるいは別のテーブルを配置しても良い。また、テーブル4の数も1つに限定されることなく、平面視で複数のテーブル4が間を空けて平行に並ぶように配置して、テーブル4毎に、搬送レール13(搬送路11)や走行ユニット20を設けても良い。
【0090】
さらに、図31図32に示すように、1つのテーブル4に対して、上下2段となるように搬送レール13(搬送路11)を配設することも考えられる。このような構成によれば、上段の搬送レール13と下段の搬送レール13とで、それぞれ別々に走行ユニット20を走行させることができる。従って、一度に2人の客からの注文にも同時に対応することができ、飲食物をいっそう効率良く搬送することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る飲食物搬送装置は、小規模な居酒屋等の飲食店から大型の回転寿司店等の飲食店まで飲食店の規模を問わず適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1…飲食店内
2…厨房側
3…客席側
4…テーブル
4a…カウンター
5…仕切り壁
6…イス
10…飲食物搬送装置
11…搬送路
12…台座
13…搬送レール
14…ガードレール
15…ストッパー
16…レール側マグネット
17…レール側リードスイッチ
18…ワイヤレス充電器
20…走行ユニット
21…ベース
22…バッテリー
23…ワイヤレス充電器
24…走行側リードスイッチ
25…走行側マグネット
26,27…超音波センサ
28…スピーカー
211…ガイドプレート
212,213…ガイドローラー
214…テンションローラー
221…走行用モーター
222,223…シャフト
224…駆動輪
225…走行輪
231,232…ベース側リードスイッチ
30…トレイ
31…トレイブラケット
32…ロードセル
33…受け部材
40…フェンス
41…開口部
42…フェンスブラケット
421…中心部
422,423…アーム
422a…保持クリップ
423a…保持クリップ
424,425…フェンス側マグネット
43…フェンス用モーター
431…出力軸
50…操作パネル
60…制御基板
【要約】
【課題】比較的簡単な構成によりコスト低減を可能とし、後から容易に設計変更することもでき、飲食物の搬送時の衛生面や安全性に配慮すると共に、取り間違いを防止することができる飲食物搬送装置を提供する。
【解決手段】厨房側2から客席側3まで連なるテーブル4上に延在する搬送レール13と、搬送レール13に沿って走行可能に配置され、動力により自走する走行ユニット20と、を有する。走行ユニット20は、定位置に支持されて飲食物を載せるトレイ30と、トレイ30上の飲食物を囲う状態で水平方向に回転可能であり、その側方より飲食物を出し入れする開口部41が形成されたフェンス40と、を備える。
【選択図】図1
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