(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】人工毛髪用芯鞘複合繊維、それを含む頭飾製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 8/14 20060101AFI20231225BHJP
A41G 3/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
D01F8/14 C
A41G3/00
(21)【出願番号】P 2022504824
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020008987
(87)【国際公開番号】W WO2021176571
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】安友 徳和
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179803(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/187843(WO,A1)
【文献】特開2008-106410(JP,A)
【文献】特開平02-210024(JP,A)
【文献】特開2007-2376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00-6/96;9/00-9/04
A41G3/00;5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部はポリエステル系樹脂を主成分として含むポリエステル系樹脂組成物で構成され、鞘部はポリアミド系樹脂を主成分として含むポリアミド系樹脂組成物で構成された人工毛髪用芯鞘複合繊維であって、
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、芯鞘比率が面積比で芯部:鞘部=2:8~8:2であり、扁平二葉形の断面形状を有し、
前記ポリアミド系樹脂組組成物の溶融粘度が140Pa・s以下であり、かつ前記ポリアミド系樹脂組成物は顔料を含むことを特徴とする、人工毛髪用芯鞘複合繊維。
【請求項2】
前記ポリエステル系樹脂組成物は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上のポリエステル系樹脂を主成分とする、請求項1に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維。
【請求項3】
前記ポリアミド系樹脂組成物は、ナイロン6及びナイロン66からなる群から選ばれる少なくとも1種を主体とするポリアミド系樹脂を主成分とする、請求項1又は2に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維。
【請求項4】
前記ポリアミド系樹脂組成物の溶融粘度が60Pa・s以上120Pa・s以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維。
【請求項5】
前記顔料は、黒色の顔料マスターバッチ、赤色の顔料マスターバッチ及び黄色の顔料マスターバッチの中からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維。
【請求項6】
前記ポリアミド系樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂100重量部に対して顔料を0.005重量部以上2重量部以下含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維を含むことを特徴とする頭飾製品。
【請求項8】
前記頭飾製品が、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー及びドールヘアーからなる群から選ばれる一種である請求項
7に記載の頭飾製品。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれかに記載の人工毛髪用芯鞘複合繊維の製造方法であって、
ポリエステル系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂組組成物を芯鞘型複合ノズルを用いて溶融紡糸する工程を含み、芯鞘型複合ノズルの設定温度におけるポリアミド系樹脂組組成物の溶融粘度を140Pa・s以下にすることを特徴とする、人工毛髪用芯鞘複合繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人毛の代替品として使用できる人工毛髪用芯鞘複合繊維、それを含む頭飾製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かつら、ヘアーウィッグ、付け毛、ヘアーバンド、ドールヘアー等の頭飾製品においては、従来、人毛が使われていたが、近年、人毛の入手が困難となり、人毛に代わる人工毛髪の需要が高まっている。人工毛髪は、人毛に近い触感や外観を有することが求められ、人工毛髪に用いられる合成繊維として、アクリル系繊維、塩化ビニル系繊維、塩化ビニリデン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維等がある。中でも、人毛に近い風合いが得られ、耐久性や耐熱性に優れる人工毛髪用繊維として、ポリエステルを芯成分とし、ポリアミドを鞘成分とする芯鞘複合繊維が開発されている(特許文献1)。当該芯鞘複合繊維は、高重合度のポリエチレンテレフタレート、および高重合度のポリアミドを用い、溶融紡糸法において、液冷により急冷固化後、繊維表層結晶化促進装置を通過せしめ繊維表面に筋状の特定の凹凸構造を付与することで、繊維の強度を担保しつつ、鞘のポリアミドの有する光沢を抑制させ、上記の所望の人工毛髪用繊維を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、芯鞘複合繊維の断面が異形、例えば扁平二葉形の場合、ノズルから吐出された際に生じるダイスウェルが不均一となる(バラス効果とも称す。)ため、用いる樹脂の重合度が高いと、ノズル形状に対する繊維断面の変形が大きくなり、それに伴って芯部の断面形状もノズル形状に対して大きく変化してしまう。特に、特許文献1のように、芯鞘ともに高重合度の樹脂を使用すると、バラス効果によりノズル形状通りに芯鞘部の断面を成形することが困難となり、芯成分が露出してしまったり、繊維製造の歩留まりの観点から改善の余地があった。さらに、繊維断面の中心がずれてしまうために、意図しない捲縮性が発現してしまい、改善の余地があった。また、鞘に用いるポリアミドは、紡糸条件によっては繊維表面に球晶による筋状の凹凸が形成され、触感および櫛通りが悪化するという課題もあった。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するため、芯部の露出を抑制し、触感を人毛に近似させ、櫛通り性も高めた人工毛髪用芯鞘複合繊維、それを含む頭飾製品及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1以上の実施形態において、芯部はポリエステル系樹脂を主成分として含むポリエステル系樹脂組成物で構成され、鞘部はポリアミド系樹脂を主成分として含むポリアミド系樹脂組成物で構成された人工毛髪用芯鞘複合繊維であって、前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、芯鞘比率が面積比で芯部:鞘部=2:8~8:2であり、扁平二葉形の断面形状を有し、前記ポリアミド系樹脂組組成物の溶融粘度が140Pa・s以下であり、かつ前記ポリアミド系樹脂組成物は顔料を含むことを特徴とする人工毛髪用芯鞘複合繊維に関する。
【0007】
本発明は、また、1以上の実施形態において、前記の人工毛髪用芯鞘複合繊維を含むことを特徴とする頭飾製品に関する。
【0008】
本発明は、また、1以上の実施形態において、前記の人工毛髪用芯鞘複合繊維の製造方法であって、ポリエステル系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂組組成物を芯鞘型複合ノズルを用いて溶融紡糸する工程を含み、芯鞘型複合ノズルの設定温度におけるポリアミド系樹脂組組成物の溶融粘度を140Pa・s以下にすることを特徴とする人工毛髪用芯鞘複合繊維の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、芯部の露出を抑制し、触感を人毛に近似させ、櫛通り性も高めた人工毛髪用芯鞘複合繊維及びそれを含む頭飾製品及びその製造方法を提供することができる。
【0010】
本発明の製造方法によれば、芯部の露出を抑制し、人毛に近い触感を有し、櫛通り性が良好な人工毛髪用芯鞘複合繊維を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の1以上の実施形態の人工毛髪用芯鞘複合繊維の繊維断面を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施例4の繊維の繊維断面のレーザー顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、比較例5の繊維の繊維断面のレーザー顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、芯部にポリエステル系樹脂組成物を用い、鞘部にポリアミド系樹脂組成物を用いた扁平二葉形の断面形状を有する人工毛髪用芯鞘複合繊維において、芯鞘比率を所定の値にし、鞘に用いるポリアミド系樹脂組成物の溶融粘度を140Pa・s以下とすることで、バラス効果による繊維断面の変形を低減させ、芯部の露出を抑制し、該ポリアミド系樹脂組成物に顔料を含ませることにより、繊維表面に筋状の凹凸が形成されにくくなり、ポリアミド特有の光沢を低減でき、人毛に近い触感を有し、櫛通り性の良好な人工毛髪用芯鞘複合繊維(以下において、単に「芯鞘複合繊維」とも記す。)が得られることを見出し、本発明に至った。
【0013】
本発明の1以上の実施形態の人工毛髪用芯鞘複合繊維は、芯部と鞘部で構成され、扁平二葉形の断面形状を有する。本発明の1以上の実施形態の人工毛髪用芯鞘複合繊維において、芯部も扁平二葉形の断面形状を有することが好ましい。前記扁平二葉形は、円形及び楕円形からなる群から選ばれる二つの葉形が凹部を介して結合したものである。また、円形又は楕円形の形状は、必ずしも連続した弧を描く必要はなく、鋭角な角でなければ一部が変形した略円形又は略楕円形も含む。また、添加剤等を含むことにより繊維断面および芯部外周に生じる2μm以下の凹凸は考慮しなくてもよい。
【0014】
図1は、本発明の1以上の実施形態の人工毛髪用芯鞘複合繊維の繊維断面を示す模式図である。該実施形態の人工毛髪用芯鞘複合繊維1は、鞘部10と芯部20で構成され、繊維1及び芯部20は、いずれも二つの楕円形が凹部を介して結合した扁平二葉形の繊維断面を有する。
【0015】
本発明の1以上の実施形態の人工毛髪用芯鞘複合繊維の繊維断面において、線対称軸及び線対称軸に平行するように繊維断面の外周の任意の二点を結んだ直線のうち、最大長となる直線である繊維断面長軸の長さ(Lと称す。)と、前記繊維断面長軸に対して垂直になるように繊維断面の外周の任意の二つの点を結んだ際、最大長となる二つの点を結ぶ直線である繊維断面第1短軸の長さ(S1と称す。)が下記式(1)を満たすことが好ましい。
L/S1=1.1以上2.0以下 (1)
【0016】
また、繊維断面において、線対称軸及び線対称軸に平行するように芯部断面の外周の任意の二点を結んだ直線のうち、最大長となる直線である芯部断面長軸の長さ(Lcと称す。)と、前記芯部断面長軸に対して垂直になるように繊維断面の外周の任意の二つの点を結んだ際、最大長となる二つの点を結ぶ直線である芯部断面第1短軸の長さ(Sc1と称す。)が下記式(2)を満たすことが好ましい。
Lc/Sc1=1.3以上2.0以下 (2)
【0017】
本発明の1以上の実施形態の人工毛髪用芯鞘複合繊維の繊維断面において、芯部長軸の中心点が繊維断面長軸の中心点と一致していることが好ましく、意図しない捲縮の発現を抑制することができる。
【0018】
上述した繊維及び芯部の断面形状は、目的の断面形状に近い形状のノズル(孔)を使用することにより制御することができる。
【0019】
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、扁平二葉形の繊維断面を有することにより、円形及び楕円形からなる二つの葉径が凹部を介して結合した形状となるため、繊維表面に滑らかな凹部と凸部が存在し、平坦な面積が減少することで光の反射が低減し、人毛に近似した光沢になりやすい。さらに、繊維表面に滑らかな凹凸を有するため、繊維同士や櫛を通したときの接触面積が少なくなり、人毛に近い触感と良好な櫛通り性が実現しやすい。
【0020】
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維の芯鞘比率は面積比で芯部:鞘部=2:8~8:2の範囲である。芯鞘比率がこの範囲であることにより、触感や質感などに関連する物性としての曲げ剛性値が人毛に近くなるため、人毛と同質の人工毛髪用芯鞘複合繊維が得られる。この範囲よりも芯部が少ないと、曲げ剛性値が人毛より低くなるため、人毛と同質の人工毛髪用芯鞘複合繊維が得られず、逆に、この範囲より芯部が多いと、曲げ剛性値が大きくなり過ぎて人毛に近似しなくなる上、鞘部が極めて薄くなるため芯部が露出しやすくなる。人毛と同質の触感や風合いなどを得る観点から、前記人工毛髪用芯鞘複合繊維の芯鞘比率は面積比で芯部:鞘部=3:7~7:3の範囲であることが好ましく、4:6~6:4の範囲であることがより好ましい。
【0021】
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、人工毛髪に適するという観点から、単繊維繊度が10dtex以上150dtex以下であることが好ましく、より好ましくは30dtex以上120dtex以下であり、さらに好ましくは40dtex以上100dtex以下であり、特に好ましくは50dtex以上90dtex以下である。
【0022】
本発明の1以上の実施形態の人工毛髪用芯鞘複合繊維は、繊維の集合体、例えば繊維束としては、必ずしも全ての繊維が同一の繊度、断面形状を有する必要はなく、異なる繊度、断面形状を有する繊維が混在していてもよい。
【0023】
芯部又は鞘部に用いる樹脂組成物の溶融粘度は、ペレット状の樹脂組成物を水分量が1000ppm以下になるように除湿乾燥し、樹脂組成物のサンプル量を20ccとし、ピストンスピード200mm/min、キャピラリー長20mm、キャピラリー径1mmの条件で、繊維化時の温度、すなわち紡糸時のノズル温度を設定温度として測定した値である。顔料や難燃剤などの添加剤を含有させる場合は、予め一般的な混練機を用いて樹脂と添加剤を溶融混練してペレット化したものを用い、溶融粘度を測定する。例えば、測定機器はダイニスコ社製のキャピラリーレオメータLCR7000が挙げられる。
【0024】
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維において、人工繊維製造の紡糸時のポリアミド系樹脂組成物の溶融粘度は140Pa・s以下であり、60Pa・s以上120Pa・s以下であることが好ましい。芯鞘複合繊維は、芯鞘に用いる樹脂組成物の粘度によって芯部の断面形状が変化し、特に扁平二葉形のノズルを用いた場合、バラス効果により吐出ポリマーが繊維断面に対して均一にならないため、繊維断面がノズル形状に対して変化する。これに伴い、芯部の断面形状もノズル形状に対して変化する恐れが高いため、鞘部を構成するポリアミド系樹脂組成物の粘度を140Pa・s以下とすることにより、バラス効果を小さくすることができ、ノズル形状に相似した断面形状の芯鞘複合繊維を安定して得ることができる。また、鞘部を構成するポリアミド系樹脂組成物の粘度が140Pa・sより大きいと、バラス効果が非常に大きくなり、ノズル形状に対する繊維断面の変形が極めて大きくなるため、扁平二葉形の芯鞘複合繊維が得られにくく、例えば、芯鞘成分の剥離や芯部の露出が発生してしまう。
【0025】
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、芯部と鞘部とが同一の繊度、断面形状を有する必要はなく、異なる繊度、断面形状を有する繊維が混在していてもよい。上記人工毛髪用芯鞘複合繊維の繊維断面において、芯部と鞘部の剥離を防止するためには、芯部は繊維表面に露出せず鞘部に完全に覆われていることが好ましい。
【0026】
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維において、芯部はポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル系樹脂組成物で構成され、鞘部はポリアミド系樹脂を主成分とし、顔料が配合されたポリアミド系樹脂組成物で構成される。
【0027】
本発明の1以上の実施形態において、ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル系樹脂組成物とは、ポリエステル系樹脂組成物の全体重量を100重量%とした場合、ポリエステル系樹脂を50重量%より多く含むことを意味し、ポリエステル系樹脂を70重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましく、90重量%以上含むことがさらに好ましく、95重量%以上含むことがさらにより好ましい。
【0028】
前記ポリエステル系樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。本発明の一実施形態において、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを80モル%以上含有する共重合ポリエステルをいう。
【0029】
前記ポリアルキレンテレフタレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0030】
前記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートを主体とし、他の共重合成分を含有する共重合ポリエステルなどが挙げられる。
【0031】
前記他の共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸及びそれらの誘導体;5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸及びそれらの誘導体;1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4-ヒドロキシ安息香酸、ε-カプロラクトン、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルなどが挙げられる。
【0032】
前記共重合ポリエステルは、安定性及び操作の簡便性の点から、主体となるポリアルキレンテレフタレートに少量の他の共重合成分を含有させて反応させることにより製造するのが好ましい。ポリアルキレンテレフタレートとしては、テレフタル酸及び/又はその誘導体(例えば、テレフタル酸メチル)と、アルキレングリコールとの重合体を用いることができる。前記共重合ポリエステルは、主体となるポリアルキレンテレフタレートの重合に用いるテレフタル酸及び/又はその誘導体(例えば、テレフタル酸メチル)と、アルキレングリコールとの混合物に、少量の他の共重合成分であるモノマーあるいはオリゴマー成分を含有させたものを重合させることにより製造してもよい。
【0033】
前記共重合ポリエステルは、主体となるポリアルキレンテレフタレートの主鎖及び/又は側鎖に上記他の共重合成分が重縮合していればよく、共重合の方法などには特別な限定はない。
【0034】
前記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテル、1,4-シクロヘキサジメタノール、イソフタル酸及び5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルからなる群から選ばれる一種の化合物を共重合したポリエステルなどが挙げられる。
【0035】
前記ポリアルキレンテレフタレート及び前記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレート;ポリプロピレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル;ポリエチレンテレフタレートを主体とし、1,4-シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル;ポリエチレンテレフタレートを主体とし、イソフタル酸を共重合したポリエステル;及びポリエチレンテレフタレートを主体とし、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステルなどを単独又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
【0036】
前記ポリエステル樹脂の固有粘度(IV値と称す場合がある)は、特に限定されないが、0.3以上1.2以下であることが好ましく、0.4以上1.0以下であることがより好ましい。固有粘度が0.3以上であると、得られる繊維の機械的強度が低下せず、燃焼試験時にドリップする恐れもない。また、固有粘度が1.2以下であると、分子量が増大しすぎず、溶融粘度が高くなり過ぎることがなく、溶融紡糸が容易となるうえ、繊度も均一になりやすい。
【0037】
前記ポリエステル系樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂に加えて他の樹脂を含んでも良い。他の樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、モダアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明の1以上の実施形態において、ポリアミド系樹脂を主成分とするポリアミド系樹脂組成物とは、ポリアミド系樹脂組成物の全体重量を100重量%とした場合、ポリアミド系を50重量%より多く含むことを意味し、ポリアミド系樹脂を70重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましく、90重量%以上含むことがさらに好ましく、95重量%以上含むことがさらにより好ましい。
【0039】
本発明に用いられるポリアミド系樹脂は、ラクタム、アミノカルボン酸、ジカルボン酸及びジアミンの混合物、ジカルボン酸誘導体及びジアミンの混合物、並びにジカルボン酸及びジアミンの塩からなる群から選ばれる1種以上を、重合して得られるナイロン樹脂を意味する。
【0040】
前記ラクタムの具体例としては、特に限定されないが、例えば、2-アゼチジノン、2-ピロリジノン、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ウンデカラクタム、及びラウロラクタムなどを挙げることができる。これらのうち、ε-カプロラクタム、ウンデカラクタム、及びラウロラクタムが好ましく、特にε-カプロラクタムが好ましい。これらのラクタムは、1種で用いてもよく、2種以上の混合物で使用することもできる。
【0041】
前記アミノカルボン酸の具体例としては、特に限定されないが、例えば、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸などを挙げることができる。これらのうち、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸が好ましく、特に6-アミノカプロン酸が好ましい。これらのアミノカルボン酸は、1種で用いてもよく、2種以上の混合物で使用することもできる。
【0042】
前記ジカルボン酸及びジアミンの混合物、ジカルボン酸誘導体及びジアミンの混合物、又はジカルボン酸及びジアミンの塩で用いられるジカルボン酸の具体例としては、特に限定されないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらのうち、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸が好ましく、特にアジピン酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸が好ましい。これらのジカルボン酸は、1種で用いてもよく、2種以上の混合物で使用することもできる。
【0043】
前記ジカルボン酸及びジアミンの混合物、ジカルボン酸誘導体及びジアミンの混合物、又はジカルボン酸及びジアミンの塩で用いられるジアミンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン(MDP)、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。これらのうち、特に脂肪族ジアミンが好ましく、とりわけヘキサメチレンジアミンが好ましく用いられる。これらのジアミンは、1種で用いてもよく、2種以上の混合物で使用することもできる。
【0044】
前記ポリアミド系樹脂(ナイロン樹脂と称す場合がある)としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン6T及び/又は6I単位を含有する半芳香族ナイロン、並びにこれらナイロン樹脂の共重合体などを用いることが好ましい。とりわけ、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6及びナイロン66の共重合体がより好ましい。
【0045】
前記ポリアミド系樹脂は、例えば、ポリアミド系樹脂原料を触媒の存在下又は不存在下で加熱して行うポリアミド系樹脂重合方法により製造することができる。その重合時に攪拌はあっても無くてもよいが、均質な生成物を得るには攪拌した方が好ましい。重合温度は目的とする重合物の重合度、反応収率、反応時間に応じて任意に設定可能であるが、最終的に得られるポリアミド系樹脂の品質を考慮すれば低温の方が好ましい。反応率についても任意に設定できる。圧力について制限はないが揮発性成分を効率よく系外に抜出すためには系内を減圧とすることが好ましい。
【0046】
本発明に用いられるポリアミド系樹脂は、必要に応じてカルボン酸化合物及びアミン化合物等の末端封鎖剤で末端を封鎖してもよい。モノカルボン酸及び/又はモノアミンを添加して末端を封鎖する場合に、得られるナイロン樹脂の末端アミノ基又は末端カルボキシル基濃度は、当該末端封鎖剤を使用しない場合に比べて低下する。一方、ジカルボン酸又はジアミンで末端封鎖する場合は、末端アミノ基と末端カルボキシル基濃度の和は変化しないが、末端アミノ基と末端カルボキシル基との濃度の比率が変化する。
【0047】
前記カルボン酸化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0048】
前記アミン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミンなどの脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン、ベンジルアミン、β-フェニルエチルアミンなどの芳香族モノアミン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0049】
前記ポリアミド系樹脂の末端基濃度に特に制限はないが、繊維用途で染色性を高める必要がある場合や樹脂用途でアロイ化に適した材料を設計する場合などには末端アミノ基濃度が高い方が好ましい。また、長期エージング条件下での着色やゲル化を抑制したい場合などは逆に末端アミノ基濃度が低い方が好ましい。更に再溶融時のラクタム再生、オリゴマー生成による溶融紡糸時の糸切れ、連続射出成形時のモールドデポジット、フィルムの連続押出におけるダイマーク発生を抑制したい場合には末端カルボキシル基濃度及び末端アミノ基濃度が共に低い方が好ましい。適用する用途によって末端基濃度を調製すればよいが、末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度共に、好ましくは、1.0×10-5~15.0×10-5eq/g、より好ましくは2.0×10-5~12.0×10-5eq/g、特に好ましくは3.0×10-5~11.0×10-5eq/gである。
【0050】
また、末端封鎖剤の添加方法としては重合初期にカプロラクタムなどの原料と同時に仕込む方法、重合途中で添加する方法、ナイロン樹脂を溶融状態で縦型攪拌式薄膜蒸発機を通過させる際に添加する方法などが採用される。末端封鎖剤はそのまま添加してもよいし、少量の溶剤に溶解して添加してもよい。
【0051】
前記ポリアミド系樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂に加えて他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、モダアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、触感と外観を人毛により近似させ、カール性及びカール保持性をより向上させる観点から、芯部をポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上のポリエステル樹脂を主成分とするポリエステル系樹脂組成物で構成することが好ましく、鞘部をナイロン6及びナイロン66からなる群から選ばれる少なくとも1種を主体としたポリアミド系樹脂を主成分とするポリアミド系樹脂組成物で構成することがより好ましい。本発明の一実施形態において、「ナイロン6及びナイロン66からなる群から選ばれる少なくとも1種を主体としたポリアミド系樹脂」とは、ナイロン6及び/又はナイロン66を80モル%以上含むポリアミド系樹脂を意味する。
【0053】
本発明の1以上の実施形態において、鞘部を顔料を含むポリアミド系樹脂組成物で構成することで、繊維表面に筋状の凹凸が形成されにくくなり、ポリアミド特有の光沢を低減し、触感及び櫛通り性を良好にし得る上、所望の色を有する人工毛髪用芯鞘繊維を得ることができる。ポリアミド系樹脂は紡糸時の固化条件によっては繊維表面に球晶による筋状の凹凸が形成され、触感や櫛通りが悪化するが、ポリアミド系樹脂組成物に顔料を含ませるとともに、ポリアミド系樹脂組成物の溶融粘度を140Pa・s以下にすることにより、紡糸時の固化の際に発生するポリアミド系樹脂表面での球晶の成長が阻害され、繊維表面に筋状の凹凸が形成されず平滑な表面を有する、触感と櫛通りの良好な人工毛髪用芯鞘複合繊維が得られる。
【0054】
前記顔料としては、特に限定されず、例えば、カーボンブラックやアンスラキノン系等の一般的な顔料を使用することができる。また、顔料マスターバッチを用いることもできる。顔料マスターバッチとは、顔料と樹脂組成物とを、押出機等の混練機を用いて混練しペレット化(コンパウンディングと称す場合がある。)したものであり、一般に微粉状のため取扱いが難しいとされる顔料を、予め樹脂組成物中に分散させることで取扱いを容易にし、得られる繊維の着色斑を抑えることができる。
【0055】
さらに、多数の色が求められる人工毛髪用芯鞘複合繊維においては、生産の簡便性や顔料の在庫コスト削減の観点から、特定の数種類の顔料マスターバッチを用いて、その添加割合を調整することにより、所望の色に原着された繊維を得ることが好ましく、特に、黒色、赤色及び黄色の3種類の顔料マスターバッチのうち少なくとも一種を用いることが好ましい。さらに顔料マスターバッチを規定の割合で複数用いることで、所望の色を有する繊維を得ることから好ましい。例えば、顔料マスターバッチの黒色:赤色:黄色=10:60:30(重量部)で配合した濃度20重量%顔料をポリアミド系樹脂100重量部に対して2.0重量部添加した場合、茶色の人工毛髪用複合繊維を得ることができる。
【0056】
前記ポリアミド系樹脂組成物は、特に限定されないが、触感及び櫛通り性をより向上する観点から、ポリアミド系樹脂100重量部に対して顔料を0.005重量部以上2重量部以下含むことが好ましく、0.01重量部以上1重量部以下含むことがより好ましい。
【0057】
なお、芯部を構成するポリエステル系樹脂組成物にも顔料が含まれていてもよく、鞘部に用いたものと同様の顔料を用いてもよく、顔料の配合量も、ポリエステル系樹脂100重量部に対して顔料を0.005重量部以上2重量部以下もちいてもよい。
【0058】
本発明の1以上の実施形態において、難燃性の観点から、難燃剤を併用してもよい。前記難燃剤としては、臭素含有難燃剤やリン含有難燃剤等が挙げられる。前記リン含有難燃剤として、例えば、リン酸エステルアミド化合物、有機環状リン系化合物などが挙げられる。前記臭素系難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、臭素化エポキシ系難燃剤;ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの臭素含有リン酸エステル類;臭素化ポリスチレン類;臭素化ポリベンジルアクリレート類;臭素化フェノキシ樹脂;臭素化ポリカーボネートオリゴマー類;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(ヒドロキシエチルエーテル)などのテトラブロモビスフェノールA誘導体;トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジンなどの臭素含有トリアジン系化合物;トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素含有イソシアヌル酸系化合物などが挙げられる。中でも、耐熱性及び難燃性の観点から、臭素化エポキシ系難燃剤を用いることが好ましい。
【0059】
前記臭素化エポキシ系難燃剤は、原料としては分子末端がエポキシ基又はトリブロモフェノールからなる臭素化エポキシ系難燃剤を用いることができるが、臭素化エポキシ系難燃剤の溶融混練後の構造は、特に限定されず、下記化学式(1)に示す構成ユニットと下記化学式(1)の少なくとも一部が改変した構成ユニットの総数を100モル%とした場合、80モル%以上が化学式(1)で示す構成ユニットであることが好ましい。前記臭素化エポキシ系難燃剤は、溶融混練後に、構造が分子末端で変化してもよい。例えば、前記臭素化エポキシ系難燃剤の分子末端がエポキシ基又はトリブロモフェノール以外の水酸基、リン酸基、ホスホン酸基などに置換されていてもよく、分子末端がポリエステル成分とエステル基で結合していてもよい。
【0060】
【0061】
また、臭素化エポキシ系難燃剤の分子末端以外の構造の一部が変化してもよい。例えば、臭素化エポキシ系難燃剤の二級水酸基とエポキシ基が結合して分岐構造となっていてもよく、臭素化エポキシ系難燃剤分子中の臭素含有量が大きく変化しなければ、前記化学式(1)の臭素の一部が脱離又は付加してもよい。
【0062】
前記臭素化エポキシ系難燃剤としては、例えば、下記一般式(2)に示しているような高分子型の臭素化エポキシ系難燃剤が好ましく用いられる。下記一般式(2)において、mは1~1000である。下記一般式(2)に示しているような高分子型の臭素化エポキシ系難燃剤としては、例えば、阪本薬品工業株式会社製の臭素化エポキシ系難燃剤(商品名「SR-T2MP」)などの市販品を用いてもよい。
【0063】
【0064】
前記臭素系エポキシ難燃剤は、特に限定されないが、例えば、主成分樹脂100重量部に対して5重量部以上40重量部以下含ませることが好ましい。例えば、耐熱性と難燃性の観点から、芯部をポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上のポリエステル樹脂100重量部と、臭素系エポキシ難燃剤5重量部以上40重量部以下を含むポリエステル系樹脂組成物で構成され、鞘部をナイロン6及びナイロン66からなる群から選ばれる少なくとも1種を主体としたポリアミド系樹脂100重量部と、臭素系エポキシ難燃剤5重量部以上40重量部以下を含むポリアミド系樹脂組成物で構成することが好ましい。
【0065】
本発明の1以上の実施形態において、難燃助剤を併用してもよい。前記難燃助剤は、特に限定されないが、難燃性の観点から、例えば、アンチモン系化合物やアンチモンを含む複合金属などを用いることが好ましい。前記アンチモン系化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム、アンチモン酸カルシウムなどが挙げられる。難燃性改良効果や触感への影響から、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、及びアンチモン酸ナトリウムからなる群から選ばれる一つ以上がより好ましい。
【0066】
前記難燃助剤は、特に限定されないが、例えば、主成分樹脂100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下含ませることが好ましい。
【0067】
特に、鞘部を構成するポリアミド系樹脂組成物に難燃助剤を含有させることにより、繊維表面に適度な表面凹凸が形成され、難燃性に加え、人毛に近い低光沢な外観を有する人工毛髪用芯鞘複合繊維が得られやすい。
【0068】
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲内で、耐熱剤、安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤などの各種添加剤を含有してもよい。
【0069】
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、芯鞘それぞれの樹脂組成物を種々の一般的な混練機を用いて溶融混練した後、芯鞘型複合ノズルを用いて、溶融紡糸することにより人工毛髪用芯鞘複合繊維を作製することができる。例えば、上述したポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤などの各成分をドライブレンドしたポリエステル系樹脂組成物を、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練して芯成分とする。一方、上述したポリアミド系樹脂、顔料、臭素化エポキシ系難燃剤などの各成分をドライブレンドしたポリアミド系樹脂組成物を、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練して鞘成分とし、芯鞘複合紡糸ノズルを用いて溶融紡糸することにより作製することができる。前記混練機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが挙げられる。中でも、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。
【0070】
本発明の繊維の製造方法としては、溶融紡糸法が好ましく、例えば、ポリエステル系樹脂組成物の場合は、押出機、ギアポンプ、ノズルなどの温度を250℃以上300℃以下とし、ポリアミド系樹脂組成物の場合は、押出機、ギアポンプ、ノズルなどの温度を260℃以上320℃以下とし、溶融紡糸した後、それぞれの樹脂のガラス転移点以下に冷却し、50m/分以上5000m/分以下の速度で引き取ることにより紡出糸条(未延伸糸)が得られる。
【0071】
具体的には、溶融紡糸の際、芯部を構成するポリエステル系樹脂組成物は溶融紡糸機の芯部用押出機で供給し、鞘部を構成するポリアミド系樹脂組成物は溶融紡糸機の鞘部用押出機で供給し、所定の形状を有する芯鞘型複合紡糸ノズル(孔)にて溶融ポリマーを吐出することで紡出糸条(未延伸糸)を得る。ここで、芯鞘型複合ノズルの設定温度におけるポリアミド系樹脂組成物の溶融粘度は140Pa・s以下である必要がある。これにより、バラス効果による繊維断面の変形を低減させ、ノズル形状に相似した断面形状の芯鞘複合繊維を安定して得ることができる。
【0072】
紡出糸条(未延伸糸)は熱延伸されることが好ましい。延伸は、紡出糸条を一旦巻き取ってから延伸する2工程法と、紡出糸条を巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によって行ってもよい。熱延伸は、1段延伸法又は2段以上の多段延伸法で行われる。
【0073】
熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。
【0074】
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維に繊維処理剤、柔軟剤などの油剤を付与し、触感、風合いをより人毛に近づけてもよい。前記繊維処理剤としては、例えば、触感や櫛通り性を向上させるためのシリコーン系繊維処理剤や非シリコーン系繊維処理剤などが挙げられる。
【0075】
前記人工毛髪用芯鞘複合繊維は、ギアクリンプによる加工を施してもよい。これにより繊維に緩やかな屈曲を付与し、自然な外観が得られ、繊維間の密着性が低下することから櫛通り性も向上する。このギアクリンプによる加工では、一般的に、繊維を軟化温度以上に加熱した状態で2つの噛み合った歯車の間を通過させ、この歯車の形状を転写させることで繊維屈曲を発現させる。また、必要に応じて、繊維加工段階において、異なる温度で前記人工毛髪用芯鞘複合繊維を熱処理することで、異なる形状のカールを発現することができる。
【0076】
人工毛髪用芯鞘複合繊維は、頭飾製品であれば特に限定することなく用いることができる。例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー及びドールヘアーなどに用いることができる。
【0077】
前記頭飾製品は、本発明の人工毛髪用芯鞘複合繊維のみで構成されていてもよい。また、前記頭飾製品は、本発明の人工毛髪用芯鞘複合繊維に、他の人工毛髪用繊維、人毛や獣毛などの天然繊維を組み合わせてもよい。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0079】
実施例及び比較例で用いた測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0080】
(溶融粘度)
芯部又は鞘部に用いた水分量1000ppm以下に乾燥したペレット状の樹脂組成物の溶融粘度を、サンプル量20cc、ピストンスピード200mm/min、キャピラリー長20mm、キャピラリー径1mmの条件で、繊維化時の温度、すなわち紡糸時のノズル温度を設定温度として測定した。
【0081】
(単繊維繊度)
オートバイブロ式繊度測定器「DENIER COMPUTER タイプDC-11」(サーチ社製)を使用して測定し、30個のサンプルの測定値の平均値を算出して単繊維繊度とした。
【0082】
(芯部の露出評価)
室温(23℃)にて、繊維を束ね、繊維束がズレないように収縮チューブで固定した後、カッターで切断し、その際の芯部の露出の有無を、目視にて評価、あるいは、切断した繊維断面をレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス社製、「VK-9500」)にて観察し評価した。
【0083】
(繊維断面の形状)
室温(23℃)にて、繊維を束ね、繊維束がズレないように収縮チューブで固定した後、カッターで輪切りにし、断面観察用繊維束を作製した。この繊維束をレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス社製、「VK-9500」)にて500倍の倍率で撮影し、繊維断面写真を得た。繊維断面写真に基づいて、L/S1及びLc/Sc1を求めた。
【0084】
(触感)
専門美容師による官能評価を行い、以下の4段階の基準で評価した。
A:人毛と同等の非常に良好な触感
B:人毛に比べやや劣るが良好な触感
C:人毛に比べ劣る悪い触感
D:人毛に比べ大きく劣る悪い触感
【0085】
(櫛通り性)
カールを完全に伸ばした状態で、繊維を長さが63.5cmになるように切断し、得られた繊維長が63.5cmの繊維5.0gを束ねた。その後、繊維束の中央を紐で括り、2つ折りにして紐の部分を固定して、ヘアーアイロン加工用の繊維束を作製した。次に、180℃に加熱したヘアーアイロン(米国IZUNAMI.INC社製、「IZUNAMI ITC450 フラットアイロン」)にて、繊維束を固定している根元から毛先までを圧着しながら加熱する操作を5回繰り返し、櫛通り性評価用の繊維束を作製した。その後、髪梳き用の櫛(ドイツ製、「MATADOR PROFESSIONAL 386.8 1/2F」)にて、櫛通り性評価用の繊維束を固定している根元から毛先まで100回櫛を通し、変形あるいは分裂した繊維の数から、以下の基準にて櫛通り性を評価し、B以上を合格とした。
A:櫛を100回通して変形あるいは分裂した繊維は10本未満で、最後まで抵抗なく櫛が通るレベル
B:櫛を100回通して変形あるいは分裂した繊維は10本以上30本未満で、途中で抵抗がやや強くなるが櫛は通るレベル
C:櫛を100回通して変形あるいは分裂した繊維は30本以上100本未満で、途中で抵抗が強くなり、櫛の通らないことが1回以上20回未満の確率で発生するレベル
D:櫛を100回通して変形あるいは分裂した繊維は100本以上で、途中で抵抗が強くなり、櫛の通らないことが20回以上の確率で発生するレベル
【0086】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレートペレット(ベルポリエステルプロダクツ社製、商品名「DFG1」、PETと称す場合がある。)100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤(阪本薬品工業製、商品名「SR-T2MP」)20重量部、アンチモン酸ナトリウム(日本精鉱製、商品名「SA-A」)2重量部、黒色顔料マスターバッチ(大日精化工業製、商品名「PESM22367BLACK(20)」、顔料:20重量%、ベース樹脂:ポリエステル系樹脂)2.1重量部、黄色顔料マスターバッチ(大日精化工業製、商品名「PESM1001YELLOW(20)」、顔料:20重量%、ベース樹脂:ポリエステル系樹脂)0.8重量部、赤色顔料マスターバッチ(大日精化工業製、商品名「PESM3005RED(20)」、顔料:20重量%、ベース樹脂:ポリエステル系樹脂)0.6重量部を添加し、ドライブレンド後に二軸押出機に供給し、バレル設定温度280℃にて溶融混練を行い、ペレット化してポリエステル系樹脂組成物を得た。
【0087】
続いて、ナイロン66(東レ社製、商品名「アミランCM3001」、PA66と称す場合がある。)100重量部に対し、黒色顔料マスターバッチ(大日精化工業製、商品名「PESM22367BLACK(20)」)2.1重量部、黄色顔料マスターバッチ(大日精化工業製、商品名「PESM1001YELLOW(20)」)0.8重量部、赤色顔料マスターバッチ(大日精化工業製、商品名「PESM3005RED(20)」)0.6重量部を添加し、ドライブレンド後に二軸押出機に供給し、バレル設定温度280℃にて溶融混練を行い、ペレット化してポリアミド系樹脂組成物を得た。
【0088】
次に当該ペレット状のポリエステル系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂組成物を、それぞれ押出機に供給し、設定温度280℃の下記表1に示すノズル形状の芯鞘型複合紡糸ノズル(孔)より押出し、40~200m/分の速度で巻き取って、ポリエステル系樹脂組成物を芯部とし、ポリアミド系樹脂組成物を鞘部とし、ポリエステル系樹脂組成物とポリアミド系樹脂組成物の芯鞘比率が面積比で5:5の芯鞘複合繊維の未延伸糸を得た。
【0089】
得られた未延伸糸を85℃のヒートロールを用いて45m/分の速度で引き取りながら延伸を行い、3倍延伸糸とし、さらに連続して200℃に加熱したヒートロールを用いて45m/分の速度で巻き取り、熱処理を行い、ポリエーテル系油剤(丸菱油化工業製、商品名「KWC-Q」)を0.20%omf(乾燥繊維重量に対する油剤純分重量百分率)となるよう付着させた後、乾燥させて下記表1に示す単繊維繊度を有する芯鞘複合繊維を得た。
【0090】
(実施例2)
芯部に用いる樹脂をポリエチレンテレフタレートペレット(East West Chemical Private Limited製、EastPET 商品名「A-12」)とし、鞘部に用いる樹脂をナイロン6(ユニチカ製、商品名「A1030BRL」、PA6と称す場合がある)とし、ペレット化時のバレル設定温度を260℃、ノズル設定温度を270℃とし、芯鞘比率を面積比で8:2とした以外は、実施例1と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0091】
(実施例3)
芯部に用いる樹脂をポリブチレンテレフタレートペレット(三菱ケミカル社製、商品名「ノバデュラン5020」、PBTと称す場合がある)とし、ペレット化時のバレル設定温度を260℃とし、鞘部に用いる樹脂をナイロン6(ユニチカ製、商品名「A1030BRL」)とし、ペレット化時のバレル設定温度を260℃、ノズル設定温度を260℃とした以外は、実施例1と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0092】
(実施例4)
ナイロン6(ユニチカ製、商品名「A1030BRL」)100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤(阪本薬品工業製、商品名「SR-T2MP」)20重量部、アンチモン酸ナトリウム(日本精鉱製、商品名「SA-A」)2重量部を添加し、黒色顔料マスターバッチ(大日精化工業製、商品名「PESM22367BLACK(20)」)2.1重量部、黄色顔料マスターバッチ(大日精化工業製、商品名「PESM1001YELLOW(20)」)0.8重量部、赤色顔料マスターバッチ(大日精化工業製、商品名「PESM3005RED(20)」)0.6重量部を添加し、ドライブレンド後に二軸押出機に供給し、バレル設定温度260℃にて溶融混練を行い、ペレット化して得たポリアミド系樹脂組成物を鞘部とし、芯鞘比率を面積比で5:5とした以外は、実施例2と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0093】
(実施例5)
芯部に用いる樹脂をポリエチレンテレフタレートペレット(ベルポリエステルプロダクツ社製、商品名「DFG1」)とし、紡糸ノズルより樹脂を押出した直後に繊維を20℃の水浴で1秒間冷却した以外は、実施例4と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0094】
(実施例6)
鞘部に用いる樹脂をナイロン66(東レ社製、商品名「アミランCM3001」)とし、ペレット化時のバレル設定温度を280℃、ノズル設定温度を280℃とし、芯鞘比率を面積比で2:8とした以外は、実施例4と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0095】
(比較例1)
鞘部に用いる樹脂をナイロン6(ユニチカ製、商品名「A1030BRT」)とした以外は、実施例2と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0096】
(比較例2)
芯鞘比率を面積比で9:1とした以外は、実施例2と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0097】
(比較例3)
ナイロン6(ユニチカ製、商品名「A1030BRL」)を二軸押出機に供給し、バレル設定温度260℃にて溶融混練を行い、ペレット化して得たポリアミド系樹脂組成物を鞘部とし、紡糸ノズルより樹脂を押出した直後に繊維を20℃の水浴で1秒間冷却した以外は、実施例2と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0098】
(比較例4)
芯部に用いる樹脂をポリエチレンテレフタレートペレット(ベルポリエステルプロダクツ社製、商品名「DFG1」)とし、鞘部に用いる樹脂をナイロン66(DuPont社製、商品名「Zytel42A」)とし、芯鞘比率を面積比で8:2とした以外は、実施例6と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0099】
(比較例5)
表1に記載の断面形状とした以外は実施例4と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0100】
(比較例6)
ナイロン66(東レ社製、商品名「アミランCM3001」)100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤(阪本薬品工業製、商品名「SR-T2MP」)20重量部、アンチモン酸ナトリウム(日本精鉱製、商品名「SA-A」)2重量部を添加し、ドライブレンド後に二軸押出機に供給し、バレル設定温度280℃にて溶融混練を行い、ペレット化して得たポリアミド系樹脂組成物を鞘部とし、芯鞘比率を面積比で5:5とした以外は、実施例6と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0101】
(比較例7)
芯鞘比率を面積比で1:9とした以外は、実施例4と同様にして芯鞘複合繊維を得た。
【0102】
実施例及び比較例の繊維の芯部の露出の有無及び断面形状を上述したとおりに評価観察した。また、実施例及び比較例の繊維の触感及び櫛通り性を上述したとおりに評価した。これらの結果を表1に示した。
【0103】
【0104】
図2は、実施例4の繊維の繊維断面のレーザー顕微鏡写真である。
図2から分かるように、該人工毛髪用芯鞘複合繊維において、繊維及び芯部はいずれも扁平二葉形の断面形状を有する。
図3は、比較例5の繊維の繊維断面のレーザー顕微鏡写真である。
図3に示されているように、該人工毛髪用芯鞘複合繊維において、繊維及び芯部はいずれも略円形の断面形状を有する。
【0105】
表1から分かるように、実施例1~6の繊維は、芯部の露出が無く、人毛に似た触感を有し、櫛通り性も良好であった。
【0106】
一方、鞘部に用いたポリアミド系樹脂組成物の粘度が140Pa・sを超える比較例1及び比較例4の繊維は芯部が露出し、触感及び櫛通り性の悪化が見られた。比較例2の繊維は、鞘部の比率が低すぎるため芯部が繊維表面に露出してしまい、触感及び櫛通り性ともに非常に悪く、良好な繊維として成形できなかった。鞘部に顔料を添加しなかった比較例3及び比較例6の繊維は、紡糸時に繊維表面に球晶による筋状の凹凸が形成されたため、触感及び櫛通り性ともに悪くなった。さらに、円形の断面を有する比較例5の繊維については、繊維表面に凹凸を有しないため、不自然な外観となる上、触感及び櫛通りともに悪かった。さらに、比較例7の繊維は、芯成分の比率が低すぎるためコシが無く、人毛に近い触感が得られなかった。
【符号の説明】
【0107】
1 人工毛髪用芯鞘複合繊維(断面)
10 鞘部
20 芯部