IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

特許7408793走行経路生成装置、走行経路生成方法、及び自動運転システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】走行経路生成装置、走行経路生成方法、及び自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20231225BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20231225BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20231225BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20231225BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231225BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231225BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G01C21/34
B60W30/10
G01C21/26 C
G05D1/02 Z
G08G1/00 X
G08G1/09 V
G08G1/16 C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022522523
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2021005702
(87)【国際公開番号】W WO2021229881
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2020086325
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今 健人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 仁
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154566(WO,A1)
【文献】特開2019-121109(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124534(WO,A1)
【文献】特開2004-110287(JP,A)
【文献】特開2004-219243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26~21/36
B60W 30/00~60/00
G05D 1/02
G08G 1/00~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既定エリア内の予め定められた走行可能経路に沿って並んでいるウェイポイントを含む経路基礎情報が予め記録されている記憶装置と、
車両に対する移動要求に応じて前記車両が走行すべき経路を表す計画経路情報を生成する演算装置と
を有し、
前記演算装置は、前記経路基礎情報に含まれる前記ウェイポイントのうちの一部のウェイポイントであって前記移動要求に応じた走行開始位置から走行終了位置まで並んでいるウェイポイントを、前記計画経路情報として抽出し、
前記経路基礎情報は、前記走行可能経路を表す複数のリンクと、前記複数のリンクのそれぞれの両端であるノードとを定義する第1基礎情報と、前記複数のリンクと前記走行可能経路に沿って並んでいる前記ウェイポイントとを対応づける第2基礎情報とを含み、
前記演算装置は、前記第1基礎情報を利用して前記走行開始位置から前記走行終了位置までのリンクを検索し、前記第2基礎情報を参照することによって、前記検索により得られたリンクに対応するウェイポイントを前記計画経路情報として抽出する
走行経路生成装置。
【請求項2】
既定エリア内の予め定められた走行可能経路に沿って並んでいるウェイポイントを含む経路基礎情報が予め記録されている記憶装置と、
車両に対する移動要求に応じて前記車両が走行すべき経路を表す計画経路情報を生成する演算装置と
を有し、
前記演算装置は、前記経路基礎情報に含まれる前記ウェイポイントのうちの一部のウェイポイントであって前記移動要求に応じた走行開始位置から走行終了位置まで並んでいるウェイポイントを、前記計画経路情報として抽出し、
前記計画経路情報によって示される前記経路は、交差点を含み、前記移動要求に応じた前記走行開始位置から前記移動要求に応じた走行終了位置まで連続しており、前記走行開始位置と前記走行終了位置との間に第1部分経路と第2部分経路とを含み、
前記第1部分経路は、前記交差点で交差する2つの経路のうち一方を含み、
前記第2部分経路は、前記交差点で交差する2つの経路のうち他方を含み、
前記演算装置は、前記計画経路情報として抽出された前記ウェイポイントを、前記第1部分経路に対応するウェイポイントと、前記第2部分経路に対応するウェイポイントとを分割する
走行経路生成装置。
【請求項3】
前記ウェイポイントは、道幅の範囲内に所定の間隔で連続的に配置され前記走行可能経路を表している
請求項1又は2に記載される走行経路生成装置。
【請求項4】
記経路基礎情報において、前記ウェイポイントは、前記車両の進行方向の順で並んでおり、
前記演算装置は、前記経路基礎情報において前記進行方向の順で並んでいるウェイポイントを、前記計画経路情報として抽出する
請求項1又は2に記載される走行経路生成装置。
【請求項5】
前記ウェイポイントは、一本道に複数本の列を形成している
請求項1又は2に記載される走行経路生成装置。
【請求項6】
前記計画経路情報を前記車両に送信する通信装置をさらに有している
請求項1又は2に記載される走行経路生成装置。
【請求項7】
前記経路基礎情報は、前記経路基礎情報に含まれる前記ウェイポイントのうち少なくとも1つのウェイポイントに対応づけて、前記車両が実行すべき所定の動作又は前記車両が許容される所定の動作を表す付加案内を含んでいる
請求項1又は2に記載される走行経路生成装置。
【請求項8】
前記付加案内は、前記車両の一時停止、前方の車両の追い越し、交差点における別の車両との調停に係る処理、及びフラッシャの点滅のうちの少なくとも1つの動作を、前記車両に対して案内する情報である
請求項7に記載される走行経路生成装置。
【請求項9】
前記経路基礎情報では、前記既定エリア内で定義されている座標系における座標値と、世界測地系の座標値とが前記ウェイポイントのそれぞれに対応づけられている
請求項1又は2に記載される走行経路生成装置。
【請求項10】
前記経路基礎情報は、前記既定エリア内の予め定められた前記走行可能経路を表す第1基礎情報と、前記第1基礎情報で特定される経路とウェイポイントとを対応づける第2基礎情報とを含み、
前記演算装置は、前記第1基礎情報を利用して前記走行開始位置から前記走行終了位置までの経路を検索し、前記第2基礎情報を参照することによって、前記検索により得られた経路に対応するウェイポイントを前記計画経路情報として取得する
請求項1又は2に記載される走行経路生成装置。
【請求項11】
前記走行可能経路は環状である
請求項1又は2に記載される走行経路生成装置。
【請求項12】
請求項1又は2に記載される前記走行経路生成装置と、
前記車両と、を含み、
前記車両は、駆動機構と、ステアリング機構と、前記車両が前記計画経路情報によって示される前記経路に沿って走行するように前記駆動機構と前記ステアリング機構とを制御する制御装置とを含み、
前記走行経路生成装置は、前記計画経路情報を前記車両に送信する通信装置を有している
自動運転システム。
【請求項13】
前記車両が前記走行可能経路上にあるか否かを判断し、
前記走行経路生成装置は、前記車両が走行可能経路上にない場合に、前記計画経路情報を前記車両に送信しない
請求項12に記載される自動運転システム。
【請求項14】
前記車両に対する前記移動要求は、前記車両の現在位置からユーザが乗車を希望する位置までの移動、前記ユーザが乗車を希望する位置から前記ユーザが降車を希望する位置までの移動、及び前記車両の現在位置から回送位置までの移動のうちの少なくとも1つについての要求である
請求項12に記載される自動運転システム。
【請求項15】
前記車両は、前記車両の周囲にある地物の位置を表す周辺情報を出力する外界センサと、前記既定エリアにある地物の位置を表す地図情報が記録されている記憶装置とを含み、
前記車両の前記制御装置は、前記周辺情報と前記地図情報とのマッチングによって前記車両の位置を推定する位置推定部を含み、
前記地図情報は、前記計画経路情報とは異なるタイミングにおいて前記車両に送信される
請求項12に記載される自動運転システム。
【請求項16】
前記車両は、前記車両の周囲にある地物の位置を表す周辺情報を出力する外界センサと、前記既定エリアにある地物の位置を表す地図情報が記録されている記憶装置とを含み、
前記車両の前記制御装置は、前記周辺情報と前記地図情報とのマッチングによって前記車両の位置を推定する位置推定部を含み、
前記地図情報は、前記計画経路情報の受信とは異なる通信手段によって前記車両に送信される
請求項12に記載される自動運転システム。
【請求項17】
前記経路基礎情報は、前記経路基礎情報に含まれる前記ウェイポイントのうち少なくとも1つのウェイポイントに対応づけて、前記車両に対し、前方の車両の追い越し又は車線変更の動作を案内する付加案内を含んでいる
請求項5に記載される走行経路生成装置。
【請求項18】
既定エリア内において車両が走行すべき経路を表す計画経路情報を生成する方法であって、
前記車両に対する移動要求に応じた走行開始位置と走行終了位置とを取得する取得工程と、
前記既定エリア内の予め定められた走行可能経路に沿って並んでいるウェイポイントを含み記憶装置に格納されている経路基礎情報を参照し、前記経路基礎情報に含まれる前記ウェイポイントのうちの一部のウェイポイントであって前記走行開始位置から前記走行終了位置まで並んでいるウェイポイントを、前記計画経路情報として抽出する抽出工程とを含み、
前記経路基礎情報は、前記走行可能経路を表す複数のリンクと、前記複数のリンクのそれぞれの両端であるノードとを定義する第1基礎情報と、前記複数のリンクと前記走行可能経路に沿って並んでいる前記ウェイポイントとを対応づける第2基礎情報とを含み、
前記抽出工程では、前記第1基礎情報を利用して前記走行開始位置から前記走行終了位置までのリンクを検索し、前記第2基礎情報を参照することによって、前記検索により得られたリンクに対応するウェイポイントを前記計画経路情報として抽出する
走行経路生成方法。
【請求項19】
既定エリア内において車両が走行すべき経路を表す計画経路情報を生成する方法であって、
前記車両に対する移動要求に応じた走行開始位置と走行終了位置とを取得する取得工程と、
前記既定エリア内の予め定められた走行可能経路に沿って並んでいるウェイポイントを含み記憶装置に格納されている経路基礎情報を参照し、前記経路基礎情報に含まれる前記ウェイポイントのうちの一部のウェイポイントであって前記走行開始位置から前記走行終了位置まで並んでいるウェイポイントを、前記計画経路情報として抽出する抽出工程とを含み、
前記計画経路情報によって示される前記経路は、交差点を含み、前記移動要求に応じた前記走行開始位置から前記移動要求に応じた走行終了位置まで連続しており、前記走行開始位置と前記走行終了位置との間に第1部分経路と第2部分経路とを含み、
前記第1部分経路は、前記交差点で交差する2つの経路のうち一方を含み、
前記第2部分経路は、前記交差点で交差する2つの経路のうち他方を含み、
前記計画経路情報として抽出された前記ウェイポイントを、前記第1部分経路に対応するウェイポイントと、前記第2部分経路に対応するウェイポイントとを分割する分割工程をさらに含む
走行経路生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行経路生成装置、走行経路生成方法、及び自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、予め決められたエリア内で走行する車両と、ユーザから配車要求を受け付けて、ユーザが希望する乗車位置に向けて車両を移動させる制御装置とを含むシステムが提案されている。エリア内には走行可能な経路が予め定められており、車両は制御装置から配車指令を受信したときに、ユーザが希望する乗車位置まで配車指令に従って移動する。配車指令では、乗車位置だけでなく、乗車位置から降車位置(目的地)に向かうまでの間にユーザが通過を希望する経路が特定され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/124534号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転車両は、走行すべき経路である計画経路を取得すると、LiDAR(light detection and ranging)などの外界センサを使って自車の現在位置を監視しながら、計画経路に沿って移動するように駆動装置(例えば、電動モータ)やステアリング機構を制御する。このような走行に必要な計画経路の生成は、簡便な処理で行われるのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示で提案する走行経路生成装置は、既定エリア内の予め定められた走行可能経路に沿って並んでいるウェイポイントを含む経路基礎情報が予め記録されている記憶装置と、車両に対する移動要求に応じて前記車両が走行すべき経路を表す計画経路情報を生成する演算装置とを有する。前記演算装置は、前記経路基礎情報に含まれる前記ウェイポイントのうちの一部のウェイポイントであって前記移動要求に応じた走行開始位置から走行終了位置まで並んでいるウェイポイントを、前記計画経路情報として抽出する。この装置によると、計画経路を比較的容易に生成できる。
【0006】
(2)(1)の走行経路生成装置は、前記計画経路情報を前記車両に送信する通信装置をさらに有してよい。これによると、車両においては経路検索を実行する必要がなくなるので、車両にかかる計算負荷を軽減できる。
【0007】
(3)(1)の走行経路生成装置において、前記経路基礎情報は、前記経路基礎情報に含まれる前記ウェイポイントのうち少なくとも1つのウェイポイントに対応づけて、前記車両が実行すべき所定の動作又は前記車両が許容される所定の動作を表す付加案内を含んでもよい。これによれば、自動運転車両の制御を計画経路に含まれる付加案内によって補助できる。
【0008】
(4)(3)の走行経路生成装置において、前記付加案内は、前記車両の一時停止、前方の車両の追い越し、交差点における別の車両との調停に係る処理、及びフラッシャの点滅のうちの少なくとも1つの動作を、前記車両に対して案内する情報であってよい。これによると、車両の一時停止、前方の車両の追い越し、交差点における別の車両との調停に係る処理、又はフラッシャの点滅を、計画経路に含まれる付加案内によって補助できる。
【0009】
(5)(1)の走行経路生成装置において、前記既定エリア内で定義されている座標系における座標値と、世界測地系の座標値とが、前記経路基礎情報に含まれる各ウェイポイントに対応づけられている。これによれば、ユーザが希望する乗車位置や降車位置を世界測地系の座標値で特定できる。
【0010】
(6)(1)の走行経路生成装置において、前記経路基礎情報は、前記走行可能経路を表す複数のリンクと、各リンクの両端であるノードとを定義する第1基礎情報と、前記複数のリンクと前記走行可能経路に沿って並んでいる前記ウェイポイントとを対応づける第2基礎情報とを含んでよい。前記演算装置は、前記第1基礎情報を利用して前記走行開始位置から前記走行終了位置までのリンクを検索し、前記第2基礎情報を参照することによって前記検索により得られたリンクに対応するウェイポイントを前記計画経路情報として取得してよい。これによれば、経路検索に要する計算負荷を軽減できる。
【0011】
(7)(1)の走行経路生成装置において、前記経路基礎情報は、前記既定エリア内の予め定められた前記走行可能経路を表す第1基礎情報と、前記第1基礎情報で特定される経路とウェイポイントとを対応づける第2基礎情報とを含んでもよい。前記演算装置は、前記第1基礎情報を利用して前記走行開始位置から前記走行終了位置までの経路を検索し、前記第2基礎情報を参照することによって、前記検索により得られた経路に対応するウェイポイントを前記計画経路情報として取得してよい。第1基礎情報を簡単化することによって、経路検索に要する計算負荷を軽減できる。
【0012】
(8)(1)の走行経路生成装置において、前記走行可能経路は環状であってよい。これによると、走行開始位置と走行終了位置との位置関係によることなく、車両を進行方向に動かすことで走行終了位置に到達できる。
【0013】
(9)(1)の走行経路生成装置において、前記計画経路は、前記移動要求に応じた前記走行開始位置から前記移動要求に応じた走行終了位置まで連続していてよい。前記計画経路は、前記走行開始位置と前記走行終了位置との間に、第1部分経路と前記第1部分経路に続く第2部分経路とを含んでよい。前記演算装置は、前記計画経路として抽出された前記ウェイポイントを、前記第1部分経路に対応するウェイポイントと、前記第2部分経路に対応するウェイポイントとを分割してよい。
【0014】
(10)(9)の走行経路生成装置において、前記計画経路は交差点を含み、前記第1部分経路は前記交差点で交差する2つの経路のうち一方を含み、前記第2部分経路は前記交差点で交差する2つの経路のうち他方を含んでよい。これによれば、自動運転車両が交差点を適切に走行できるようになる。
【0015】
(11)自動運転システムは、(1)の走行経路生成装置と車両とを含み、前記車両は、駆動機構と、ステアリング機構と、前記車両が前記計画経路に沿って走行するように前記駆動機構と前記ステアリング機構とを制御する制御装置とを含んでよい。前記走行経路生成装置は、前記計画経路情報を前記車両に送信する通信装置を有してよい。これによると、車両においては経路検索を実行する必要がなくなるので、車両にかかる計算負荷を軽減できる。
【0016】
(12)(11)の自動運転システムにおいて、前記車両が走行可能経路上にあるか否かを判断してよい。前記走行経路生成装置は、前記車両が走行可能経路上にない場合に前記計画経路情報を前記車両に送信しなくてよい。
【0017】
(13)(11)の自動運転システムにおいて、前記車両に対する前記移動要求は、前記車両の現在位置からユーザが乗車を希望する位置までの移動、前記ユーザが乗車を希望する位置から前記ユーザが降車を希望する位置までの移動、及び前記車両の現在位置から回送位置までの移動のうちの少なくとも1つについての要求であってよい。
【0018】
(14)(11)の自動運転システムにおいて、前記車両は、前記車両の周囲にある地物の位置を表す周辺情報 を出力する外界センサと、前記既定エリアにある地物の位置を表す地図情報が記録されている記憶装置とを含んでよい。前記車両の前記制御装置は、前記周辺情報と前記地図情報とのマッチングによって前記車両の位置を推定する位置推定部を含んでよい。前記地図情報は、前記計画経路情報とは異なるタイミングにおいて前記車両に送信されてよい。これによれば、データ量の大きい地図情報を安全に車両に送信できる。
【0019】
(15)(11)の自動運転システムにおいて、前記車両は、前記車両の周囲にある地物の位置を表す周辺情報を出力する外界センサと、前記既定エリアにある地物の位置を表す地図情報が記録されている記憶装置とを含んでよい。前記車両の前記制御装置は、前記周辺情報と前記地図情報とのマッチングによって前記車両の位置を推定する位置推定部を含んでよい。前記地図情報は、前記計画経路の受信とは異なる通信手段 によって前記車両に送信されてよい。これによれば、データ量の大きい地図情報を安全に車両に送信できる。
【0020】
(16)本開示で提案する走行経路生成方法は、既定エリア内において車両が走行すべき経路を表す計画経路を生成する方法である。前記方法は、前記車両に対する前記移動要求に応じた走行開始位置と走行終了位置とを取得する工程と、前記既定エリア内の予め定められた走行可能経路に沿って並んでいるウェイポイントを含み記憶装置に格納されている経路基礎情報を参照し、前記経路基礎情報に含まれる前記ウェイポイントのうちの一部のウェイポイントであって、前記走行開始位置から前記走行終了位置まで並んでいるウェイポイントを、前記計画経路情報として抽出する工程とを含む。この方法によると、計画経路を比較的容易に生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示で提案する自動運転システムの構成を示すブロック図である。
図2】自動運転車両の構成を示すブロック図である。
図3】自動運転車両と車両管理装置と携帯端末が実行する処理の例を示すシーケンス図である。
図4】車両管理装置70の機能を示すブロック図である。
図5A】経路基礎情報の例を説明するための図である。
図5B】経路基礎情報を構成するウェイポイントの例を示す図である。
図6】経路基礎情報から抽出される計画経路情報を示す図である。
図7】管理装置が有する輸送管理部、回送管理部、及び計画経路生成部が実行する処理の例を示すフロー図である。
図8】計画経路生成部が実行する処理の例を示すフロー図である。
図9】経路基礎情報を説明するための図である。
図10】経路基礎情報に含まれる付加案内を説明するための図である。
図11】経路基礎情報に含まれる付加案内を説明するための図である。
図12】経路基礎情報に含まれる付加案内を説明するための図である。
図13】経路基礎情報に含まれる付加案内を説明するための図である。
図14】経路基礎情報に含まれる付加案内を説明するための図である。
図15A】経路基礎情報の変形例を示す図であり、変形例に係る経路基礎情報が含む第1基礎情報を説明するための図である。
図15B】経路基礎情報の変形例を示す図であり、変形例に係る経路基礎情報が含む第2基礎情報を説明するための図である。
図16】走行開始位置から走行終了位置まで続く計画経路を第1部分経路と第2部分経路とに分割する例を説明するための図である。
図17】自動運転車両10の制御装置11が有している機能を示すブロック図である。
図18】自動運転車両10の制御装置11が実行する処理の例を示すフロー図である。
図19】経路基礎情報を作成する手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態の一例である自動運転システム1を示すブロック図である。
【0023】
図1で示すように、自動運転システム1は、車両管理装置70と、複数の自動運転車両10とを有している。車両管理装置70は、情報通信網Nを介して自動運転車両10と接続されている。また、車両管理装置70は、情報通信網Nを介して、自動運転車両10の使用を希望する携帯端末90にも接続される。情報通信網Nは、インターネット、携帯電話網、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、専用回線などを含む。以下では、車両管理装置70を単に管理装置70と称し、自動運転車両10を単に車両10と称する。
【0024】
自動運転システム1は、既定エリアB(図5A参照)内について使用されるシステムである。既定エリアBは、例えば、遊園地や、ゴルフ場、イベント会場、観光地など限定された範囲である。既定エリアBは一般車の走行が規制されているエリアであってもよい。さらに他の例では、既定エリアBは、走行ルートが予め設定された公道であってもよい。この場合、この走行ルートには一般車の走行が許容されていてよい。車両10は、管理装置70の管理下において、このエリアB内の予め定められた走行可能経路に沿って走行する。例えば、管理装置70は、ユーザが希望する乗車位置までの経路と、ユーザが希望する降車位置(目的地)までの経路とを車両10に送信する。車両10は、管理装置70から受信した経路に沿って走行する。以下では、「既定エリア」を「車両運用エリア」と称する。
【0025】
[自動運転車両の概要]
図2は自動運転車両10の構成を示すブロック図である。車両10は、演算装置12と記憶装置13とを含む制御装置11を有している。演算装置12は、CPU(Central Processing Unit)や、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを含んでいる。演算装置12は、記憶装置13に格納されているプログラムを実行し、後述する駆動機構21やステアリング機構23などを制御する。記憶装置13は、例えば、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)を含んでいる。制御装置11は、車両10に搭載されるネットワーク(例えば、CAN(Controller Area Network))を介して互いに接続される複数の装置(各装置が演算装置と記憶装置とを含む)によって構成されてもよい。記憶装置13には、プログラムに加えて、例えば自動運転車両10が自車位置を推定するためのデータ(例えば、点群データ)が保存されている。また、車両10の走行時、管理装置70から受信した経路情報が記憶装置13に保存される。
【0026】
図2で示すように、車両10は、駆動機構21と、ブレーキ機構22と、ステアリング機構23と、左右のフラッシャ24R・24Lとを有している。駆動機構21は、車輪の駆動源として、例えば電動モータを有する。この場合、車両10は電動モータに供給する電力を蓄えるバッテリを有する。駆動源はエンジンであってもよい。駆動機構21は、駆動源から車輪への動力伝達経路上に変速機や減速機を有してもよい。ブレーキ機構22は車輪に対して制動力を付与する機構であり、ブレーキ装置と、ブレーキ装置に油圧を介して接続されるコントロールバルブとを含む。ステアリング機構23は、例えば前輪を操舵するための機構であり、ステアリングシャフト、ステアリングシャフトと車輪とを連結するタイロッドと、ステアリングシャフトを回転させるアクチュエータとを含む。フラッシャ24Rは右折用の方向指示器であり、フラッシャ24Lは左折用の方向指示器である。車両10は、例えば、複数のユーザが乗車可能な車両であるが、一人乗り用の車両であってもよい。
【0027】
図2で示すように、車両10は、車両10の周囲にある地物の位置を表す周辺情報を出力する外界センサ群30を有している。外界センサ群30は、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)31と前カメラ32とを有している。また、外界センサ群30は、後カメラ33を有してもよい。外界センサ群30は、超音波ソナーや、ミリ波レーダなどを含んでもよい。また、車両10はGNSS受信機34を有している。GNSS受信機34はGNSS衛星(例えばGPS衛星)から到来する電波を受信し、その電波に基づいて車両10の位置を測位する。車両10は、シートに作用している荷重を検知するための荷重センサ35を有してもよい。車両10は、荷重センサ35の出力に基づいてユーザの乗車を検知できる。車両10は、荷重センサ35に替えて、車両10内を写すカメラを有してもよい。このカメラによって得られる映像に基づいて車両10にユーザが乗ったか否かが判断されてもよい。通信装置36は情報通信網Nを介して車両管理装置70に接続するための無線通信モジュールである。さらに、車両10は、表示装置37と、入力装置38を有してよい。表示装置37は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。入力装置38は、例えば、表示装置37に設けられているタッチセンサである。車両10は、入力装置38としてボタンやスイッチを有してもよい。
【0028】
[車両管理装置の概要]
車両管理装置70は、図1に示すように、演算装置71、記憶装置72、通信装置73を有している。演算装置71は、CPU(Central Processing Unit)や、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを含んでいる。演算装置71は、記憶装置72に記憶されているプログラムを実行し、例えば、ユーザの携帯端末90から受信した配車要求に応じて、ユーザが希望する乗車位置までの経路や、ユーザが希望する降車位置までの経路を検索・生成する。記憶装置72はHDD(Hard Disk Drive)や、RAM、ROMなど含んでいる。記憶装置72には、車両10が走行すべき経路の基礎となる情報(後述する経路基礎情報)が格納されている。通信装置73は、情報通信網Nを介して、ユーザの携帯端末90及び自動運転車両10と通信するための通信モジュールである。管理装置70は、さらに、管理者が管理装置70に対して指令を入力するための入力装置(キーボード)や、演算装置71が行った処理の結果を出力する表示装置などを有してもよい。
【0029】
[携帯端末]
携帯端末90は、図1で示すように、演算装置91、記憶装置92、表示装置93、入力装置94、GNSS受信機95、通信装置96を有している。演算装置91は、CPUを含み、記憶装置92に記憶されているプログラムを実行することによって、例えばユーザが求める処理を実行する。記憶装置92は、RAM、ROMなど含んでいる。表示装置93は液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイなどであり、入力装置94は、例えば表示装置93に重畳されるタッチセンサや、キーボード、ボタンである。通信装置96は、情報通信網Nを介して車両管理装置70に接続するための無線通信モジュールである。通信装置96による通信は無線であってもいし、有線であってもよい。携帯端末90は、例えば所謂スマートフォンであるが、必ずしもこれに限られない。
【0030】
[配車及び輸送時のフロー]
図3は、ユーザが車両運用エリアB内での移動を希望するときに、自動運転車両10と車両管理装置70と携帯端末90が実行する処理の例を示すシーケンス図である。
【0031】
車両10は、車両10の現在位置と、車両10の状態に関する情報を車両管理装置70に送信する(S101)。車両10の状態に関する情報は、例えば、車両10がユーザを輸送中(或いは待機中)であるか否かを含む。車両10の状態に関する情報には、車両10が搭載しているバッテリの残量や、異常の有無などが含まれてよい。車両10の現在位置と、車両10の状態に関する情報は、車両10の制御装置11の起動中は一定時間間隔で管理装置70に送信されてよい。
【0032】
管理装置70は、ユーザの携帯端末90から配車・輸送要求を受信する(S102)。
【0033】
「配車」とは、自動運転システム1が有している複数の車両10のうちいずれかを選択し、選択した車両10をユーザが希望する乗車位置まで移動させることである。以下では、ユーザが希望する乗車位置を「希望乗車位置」と称する。希望乗車位置の一例は、ユーザの現在位置である。希望乗車位置の他の例は、例えば、携帯端末90を通して指定する位置であってよい。「輸送」とは、乗車位置でユーザを乗せた車両10が、ユーザが希望する降車位置(目的地)まで移動することである。以下では、この降車位置を「希望降車位置」と称する。携帯端末90が管理装置70に送信する配車・輸送要求には、希望乗車位置を示す情報が含まれる。配車・輸送要求には、乗車を希望する人数や、希望降車位置(目的地)を示す情報、乗車を希望する時間などが含まれてもよい。
【0034】
配車・輸送要求を受信した管理装置70は、自動運転システム1が有している複数の車両10のなかから希望乗車位置に向かわせる車両を検索する(S103)。管理装置70は、例えば希望乗車位置に最も近い車両10を選択する。管理装置70は、乗車を希望する人数や、車両10の乗車可能人数などに基づいて、希望乗車位置に向かわせる車両を選択してもよい。
【0035】
管理装置70は、車両10の待機位置(すなわち、車両10の現在位置)から希望乗車位置まで車両10が走行すべき経路を検索し、この経路を示す情報を車両10に送信する(S104)。以下では、車両10が走行すべき経路を「計画経路」と称し、「計画経路を示す情報」を「計画経路情報」と称する。自動運転システム1において、計画経路情報は計画経路に沿って並んでいるウェイポイント(図6で示す符号W)の集合である。ウェイポイントは車両運用エリアB内における位置情報(座標値)を含んでいる。ウェイポイントと計画経路情報の生成については後において詳説する。
【0036】
管理装置70は、携帯端末90から配車要求だけでなく輸送要求を受信している場合、すなわち、希望乗車位置を示す情報と希望降車位置を示す情報の双方を携帯端末90から受信している場合、S104において、車両10の待機位置(現在位置)から希望乗車位置までの計画経路と、希望乗車位置から希望降車位置までの計画経路とを検索し、それらの情報を車両10に送信してよい。
【0037】
車両10は計画経路情報を受信すると、車両10が発進したことを示す発信通知を管理装置70に送信し(S105)、待機位置から希望乗車位置への走行を開始する(S106)。車両10のこの走行は、車両10が、待機位置から希望乗車位置まで続く計画経路情報に含まれるウェイポイントを車両10が順番に追う(すなわち、現在位置に近いウェイポイントに向かって移動する)ことで実現される。車両10は希望乗車位置に到着すると、その旨を管理装置70に送信する(S107)。管理装置70は、車両10の到着通知をユーザの携帯端末90に送信する(S108)。この到着通知は、車両10から直接的に携帯端末90に送信されてもよい。
【0038】
ユーザが車両10に乗り込み、車両10が荷重センサ35(又はカメラ)を通してユーザが乗り込んだことを検知すると、車両10は乗車完了通知を管理装置70に送信する(S109)。また、希望乗車位置から希望降車位置(目的地)までの計画経路情報を車両10がすでに管理装置70から受信しており、且つ発進指示をユーザから受けたときに(S110)、車両10は、車両10が発進したことを示す発信通知を管理装置70に送信し(S111)、希望乗車位置から希望降車位置への走行を開始する(S112)。ユーザによる発進指示は、例えば、ユーザが車両10に設けられている入力装置38に対して所定の操作を行うことで、制御装置11に入力される。車両10の走行は、希望乗車位置から希望降車位置まで続く計画経路情報に含まれるウェイポイントを車両10が順番に追うことで実現される。
【0039】
車両10は希望降車位置に到着すると、その旨を管理装置70に送信する(S113)。管理装置70は、携帯端末90に到着通知を送信する(S114)。管理装置70は、この到着通知として、車両10による輸送サービスに要した料金を携帯端末90に送信してもよい。管理装置70は、携帯端末90から降車完了通知を受けると(S115)、車両10に対して降車確認要求を送信する(S116)。車両10は、この降車確認要求を受けると、荷重センサ35の出力に基づいて全ユーザが降車したか否かを判断する。車両10は、ユーザの降車を確認すると、車両10が待機状態に遷移したことを示す待機通知を管理装置70に送信する(S116)。ここで待機状態とは、例えば、車両10が次の計画経路を受信するまで一定位置でとどまっている状態である。
【0040】
[車両管理装置が有する演算装置の機能]
以上説明した管理装置70の動作を実現するため、車両管理装置70の演算装置71は、図4で示すように、その機能として、輸送管理部71Aと、車両監視部71Dと、計画経路生成部71Eとを有している。また、演算装置71は、回送管理部71Bと、調停部71Cとを有している。これらは、演算装置71が、記憶装置72に保存されているプログラムを実行することによって実現される。
【0041】
[車両監視部]
車両10は、自車の現在位置と自車の状態に関する情報を管理装置70に送信する。上述したように、車両10の状態に関する情報は、例えば、車両10が輸送中(或いは待機中)であるか、バッテリの残量、異常の有無などが含まれてよい。これらの情報の送信は、所定の時間間隔で実行される。車両監視部71Dは、受信した車両10に関する情報を、記憶装置72に格納されている車両監視テーブル72Aに記録する。車両監視部71Dは、各車両10について新しい情報を受信する度に、車両監視テーブル72Aを更新する。
【0042】
車両監視部71Dは、車両10の現在位置に基づいて車両10がユーザの輸送に利用可能か否かを判断してもよい。例えば、車両10が車両運用エリアB内で定められている走行可能経路上にあるか否かを判断してもよい。そして、車両10が走行可能経路上にない場合、すなわち車両10の現在位置が車両運用エリアB内で定められている走行可能経路から所定の閾値より大きく離れている場合、車両監視部71Dは、車両10は使用不可と判断し、その旨を車両監視テーブルに記録してもよい。
【0043】
[輸送管理部]
管理装置70が車両10に対する移動要求(配車要求及び輸送要求)をユーザから受信したときに、輸送管理部71Aは、この移動要求に応じて車両10を動かす。まず、輸送管理部71Aは、ユーザの希望乗車位置に向かわせる車両10を選択する。輸送管理部71Aは、車両運用エリア内に規定されている走行可能経路から離れている車両10(すなわち、車両監視部71Dによって利用不可と判断されている車両10)を選択対象から除いてもよい。例えば、輸送管理部71Aは、車両監視テーブルにおいて利用不可が記録されている車両10を選択対象から除いてもよい。
【0044】
輸送管理部71Aは、選択した車両10の現在位置から希望乗車位置に向けた移動指令を車両10に対して送信する、また、輸送管理部71Aは、希望乗車位置から希望降車位置に向けた移動指令を車両10に送信する。輸送管理部71Aは、後述する計画経路生成部71Eが生成する計画経路情報を移動指令として車両10に送信してもよい。
【0045】
[回送管理部]
回送管理部71Bは、車両運用エリアB内で予め定められている回送位置に向けて車両10を移動させる指令(回送指令)を車両10に送信する。回送位置は、例えば車両10が保管される車庫である。回送位置の他の例は、車両10のバッテリを充電するための充電ステーションであってもよい。回送管理部71Bは、例えば、予め定められた時刻が到来したときに、或いは、バッテリ残量が閾値を下回ったときに、車両10に対して回送指令を送信してよい。管理装置70の例では、回送管理部71Bは、計画経路生成部71Eが生成する計画経路情報を回送指令として車両10に送信する。
【0046】
[計画経路生成部]
車両10に対する移動要求を管理装置70が受信したとき、計画経路生成部71Eは車両10が走行すべき経路(計画経路)の情報、すなわち計画経路情報を生成する。上述したように、車両10に対する移動要求の一つは、車両10の現在位置(待機位置)からユーザの希望乗車位置への移動(すなわち配車)である。車両10に対する移動要求の別の一つは、希望乗車位置から希望降車位置(目的地)への移動(すなわち輸送)である。車両10に対する移動要求のさらに別の一つは、車両10の現在位置から回送位置への移動(すなわち回送)である。記憶装置72には経路基礎情報が予め格納されている。経路基礎情報は、車両運用エリアB内で予め定められている、車両10が走行可能な経路を表す情報である。計画経路生成部71Eは、経路基礎情報の一部を計画経路情報として抽出する。
【0047】
図5A及び図5Bは経路基礎情報を説明するための図である。図5Aで示すように、経路基礎情報は、車両10が走行可能な経路L1・L2に沿って並んでいるウェイポイントWで構成される。ウェイポイントWは、走行可能な経路L1・L2に沿って概ね一定間隔(例えば、1又は数メートル間隔)で並んでいてよい。経路基礎情報は、車両運用エリアB内に定められている全ての走行可能な経路についてウェイポイントを有している。図5Bで示すように、各ウェイポイントは、走行可能経路上の位置(点)の位置情報を含んでいる。具体的には、各ウェイポイントは、車両運用エリアB内で定義されている座標系での座標値(X、Y、Z)を有している。
【0048】
経路基礎情報は、車両10が自車の現在位置を推定するために使用する情報、すなわち地図情報(車両運用エリアB内にある地物を表す情報)とは異なる。自動運転システム1の例では、車両10はこのような地図情報として点群マップを使用している。点群マップは車両10の記憶装置13に保存されている。
【0049】
管理装置70が車両10に対する移動要求を受信したとき、計画経路生成部71Eは経路基礎情報に含まれるウェイポイントのうち一部のウェイポイントを抽出し、これを計画経路情報とする。例えば、図6及び図5Bで示すように、計画経路生成部71Eは、走行開始位置を表すウェイポイント(i)から走行終了位置を表すウェイポイント(k)まで並んでいるウェイポイントを計画経路情報として抽出する。管理装置70は、輸送管理部71A及び回送管理部71Bの処理において、このようにして抽出された計画経路情報を車両10に送信する。
【0050】
車両運用エリアB内で予め定められた走行可能経路は、環状であるのが望ましい。すなわち、走行可能経路は行き止まりが無いように規定されるのが望ましい。言い換えると、経路基礎情報おいて定義される全てのウェイポイントは、車両10が前進する方向の所定範囲に隣のウェイポイントを有するのが望ましい。例えば、図5Bの経路基礎情報の最上位にあるウェイポイント(1)は、図5Aで示すように、経路基礎情報の最下位にあるウェイポイント(N)に対して車両10が前進する方向に位置し、且つウェイポイント(1)とウェイポイント(N)との距離は、他のウェイポイント間の距離と同様である。また、走行可能経路が、例えば図9で示すように一本道R1を有している場合、端部で連結された2本のウェイポイントの列L5・L6が道R1に定義されるとよい。こうすることで、走行開始位置と走行終了位置が走行可能経路のどこであっても、車両10は前進することによって走行終了位置に到達できる。
【0051】
以上説明したように、自動運転システム1においては、車両管理装置70に計画経路生成部71Eが設けられている。これによって車両10で実行する処理負担が軽減される。車両管理装置70は請求項の経路生成装置に対応している。この計画経路生成部71Eは車両管理装置70ではなく、車両10の制御装置11に設けられてもよい。
【0052】
図7は、管理装置70が実行する処理の例を示すフロー図である。この図では輸送管理部71A、回送管理部71B、及び計画経路生成部71Eが実行する処理の例が示されている。
【0053】
管理装置70が携帯端末90から配車要求を受信すると、輸送管理部71Aは、ユーザ(携帯端末90)に最も近い位置で待機している車両10を検索する(S201)。輸送管理部71Aは、車両監視テーブル72Aに記録されている各車両10の現在位置を参照し、携帯端末90から送られた位置情報(緯度、経度、高度)に基づいて、ユーザ(携帯端末90)に最も近い位置にある車両10を検索する。次に、輸送管理部71Aは、検索により得られた車両10が利用可能な状態にあるか否かを判断する(S202)。検索により得られた車両10が利用可能である場合、輸送管理部71Aはその車両10をユーザの乗車位置に向かわせる車両として選択する。一方、検索により得られた車両10が利用不能である場合、輸送管理部71Aは再びS201の検索処理を実行する。
【0054】
次に、輸送管理部71Aは、希望乗車位置を表す情報に加えて希望降車位置を表す情報を受信したか否か、言い換えれば希望乗車位置と希望降車位置の双方が指定されているか否かを判断する(S203)。管理装置70が希望乗車位置と希望降車位置とを受信している場合、計画経路生成部71Eは、S201で選択した車両10の現在位置から希望乗車位置までの経路を示す計画経路情報を生成するとともに(S204)、希望乗車位置から希望降車位置までの経路を示す計画経路情報を生成する(S205)。輸送管理部71Aは、生成された2つの計画経路情報を車両10に送信する(S206)。
【0055】
S203において、管理装置70が希望乗車位置だけを受信し、希望降車位置を受信していない場合、計画経路生成部71Eは、S201で選択した車両10の現在位置から希望乗車位置までの経路を示す計画経路情報を生成し(S210)、輸送管理部71Aは、S207で生成された計画経路情報を配車指令として車両10に送信する(S211)。
【0056】
その後、輸送管理部71Aは、希望降車位置を受信したか否かを判断する(S212)。希望降車位置を受信した場合に、計画経路生成部71Eは、希望乗車位置から希望降車位置までの経路を示す計画経路情報を生成する(S213)。輸送管理部71Aは、S213で生成された計画経路情報を輸送指令として車両10に送信する(S214)。
【0057】
回送管理部71Bは、車両10について回送指令を出すか否かを判断する(S207)。具体的には、回送管理部71Bは、現在時刻が車両10を回送位置に戻す時刻に達しているか否か、又はバッテリ残量が閾値を下回っているか否かを判断する。回送指令を出す場合、計画経路生成部71Eは、その車両10の現在位置から回送位置までの経路を表す計画経路情報を生成する(S208)。回送管理部71Bは生成された計画経路情報を回送指令として車両10に送信する(S209)。回送管理部71Bは、自動運転システム1が有している複数の車両10のそれぞれについて、S207からS209の処理を実行してもよい。以上が、輸送管理部71A、回送管理部71B、及び計画経路生成部71Eが実行する処理の例である。
【0058】
[計画経路生成部のフロー]
図8は、計画経路生成部71Eが実行する処理の例を示すフロー図である。この処理は、例えば、図7で示すS204、S205、S208、S210、及びS213において実行される。
【0059】
計画経路生成部71Eは、まず走行開始位置と走行終了位置とを取得する(S301)。
【0060】
配車の場合、走行開始位置は、輸送管理部71Aの処理において選択された車両10の待機位置(現在位置)であり、走行終了位置は希望乗車位置である。計画経路生成部71Eは、例えば、車両監視テーブル72Aを参照し、輸送管理部71Aによって選択された車両10の現在位置(すなわち、走行開始位置)を取得する。この場合、走行開始位置は、車両運用エリアB内の座標系の値(X、Y、Z)で表される。計画経路生成部71Eは図5Bで示す経路基礎情報を参照し、走行開始位置に対応するウェイポイント(走行開始位置に最も近いウェイポイント)を取得する。
【0061】
希望乗車位置は、例えばユーザの現在位置である。管理装置70は、携帯端末90がGNSS受信機95で取得した現在位置(緯度、経度、高度)を配車要求とともに受信する。図5Bで示すように、経路基礎情報は、各ウェイポイントの位置情報として、世界測地系の値(緯度、経度、高度)を有している。管理装置70は、携帯端末90から受信した世界測地系の位置情報に対応するウェイポイントを走行終了位置として取得する。これとは異なり、携帯端末90の表示装置93には、車両運用エリアBの地図と、地図上の各点の座標値とを含む地図情報が表示されてもよい。そして、携帯端末90は、表示装置93に表示されている地図上でユーザによって選択された位置の座標値(X、Y、Z)を希望乗車位置として管理装置70に送信してもよい。
【0062】
輸送の場合、車両10の走行開始位置は希望乗車位置であり、車両10の走行終了位置は希望降車位置である。希望乗車位置は、配車の場合と同様の処理で取得できる。希望降車位置は、携帯端末90においてユーザによって指定されてよい。例えば、携帯端末90は、表示装置93に表示されている地図上でユーザによって指定された位置の座標値(X、Y、Z)を希望降車位置として管理装置70に送信してもよい。これとは異なり、携帯端末90は、ユーザによって選択された、車両運用エリアB内の設備の座標値(X、Y、Z)を希望降車位置として管理装置70に送信してもよい。希望降車位置は、携帯端末90ではなく、車両10において指定されてもよい。例えば、車両10は、表示装置37に表示されている地図上でユーザによって指定された位置の座標値(X、Y、Z)を希望降車位置として管理装置70に送信してもよい。
【0063】
回送の場合、車両10の走行開始位置は車両10の現在位置であり、車両10の走行終了位置は回送位置である。
【0064】
計画経路生成部71Eは、走行開始位置に対応するウェイポイントから、走行終了位置に対応するウェイポイントまでの経路を検索する(S302)。この処理によって、図6A及び図5Bで示すように、走行開始位置に対応するウェイポイントから、走行終了位置に対応するウェイポイントまで連続する複数のウェイポイント(すなわち、計画経路情報)が抽出される。
【0065】
経路検索には、ダイクストラ法や、ベルマン-フォード法、A-starアルゴリズムなどを使用できる。これらの方法が用いられる場合、各ウェイポイントがノードとして利用され、各ウェイポイント間の距離がコストとして規定されていてよい。こうすることで、走行開始位置と走行終了位置とを結ぶ距離的な最短経路が得られる。
【0066】
他の例では、各ウェイポイントはノードとして利用され、ウェイポイント間の移動に要する時間がコストとして規定されていてもよい。こうすることで、走行開始位置と走行終了位置とを結ぶ時間的な最短経路が得られる。交差点の通過に多くの時間がかかる場合、交差点に対応するウェイポイントの間には大きなコストが規定されてよい。また、複数の上り坂の通過に多くの時間がかかる場合、この上り坂に対応しているウェイポイントの間に大きなコストが規定されてよい。
【0067】
計画経路生成部71Eは、S302の処理によって得られた計画経路情報を、これを利用する車両10(輸送管理部71Aによって選択された車両10)の状態や仕様に合わせて整形してもよい(S303)。経路基礎情報は、図5Bで示すように、各ウェイポイントについて、位置情報だけでなく、「車速」や、「ターンフラグ」など、付加案内を含んでいる。例えば、「車速」は、そのウェイポイントを通過する車両10が有することのできる車速を案内し、「ターンフラグ」は、そのウェイポイントを通過する車両10に対して右折(又は左折)のための制御(例えば、フラッシャ24R・24Lの点滅)を案内する。車両10は、このような「ターンフラグ」に依拠した制御を実行する機能を有していない場合がある。この場合、計画経路生成部71Eは、S302で生成した計画経路情報から「ターンフラグ」を除いてよい。また、車両10は、「車速」に基づく制御を実行する機能を有していない場合がある。この場合、計画経路生成部71Eは、S302で生成した計画経路情報から「車速」を除いてよい。すなわち、計画経路生成部71Eは、S302の処理によって得られた計画経路情報を、輸送管理部71Aによって選択された車両10に合わせて整形(不要な付加案内を除く)してよい。この付加案内については、後において詳説する。最後に、管理装置70は、S303の処理において整形された計画経路情報を車両10に送信する(S304)。以上が、計画経路生成部71Eが行う処理の例である。
【0068】
[付加案内]
上述したように、経路基礎情報は、位置情報を表すウェイポイントに対応づけて付加案内を含んでいてよい。付加案内は、ウェイポイントの位置情報とは異なる情報である。付加案内は、その付加案内に対応するウェイポイントに到来した車両10が実行すべき動作、又は、その付加案内に対応するウェイポイントに到来した車両10が許容される動作を示す情報である。付加案内は交通ルールに依拠していてよい。
【0069】
付加案内の一例は、図5Bで示すように、車速である。計画経路を表すウェイポイントに沿って車両10が走行しているとき、車両10の制御装置11(走行制御部12B、図17参照)は各ウェイポイントに対応づけられている車速より低い車速で走行するように駆動機構21とブレーキ機構22とを制御する。
【0070】
付加案内の別の例は、図5Bで示すように、ターンフラグである。図10はターンフラグを説明するための図であり、この図では、黒丸は「ターンフラグ:OFF(図5Bにおいて「0」)」が付与されているウェイポイントを示し、白丸は「ターンフラグ:ON(図5Bにおいて「1」)」が付与されているウェイポイントを示している。ターンフラグがONとなっているウェイポイント(図10において符号W1のウェイポイント)に車両10が到達すると、車両10の制御装置11(走行制御部12B、図17参照)は、計画経路情報に含まれるウェイポイントのうち、その後に続く1又は複数のウェイポイント(到達した位置に近い1又は複数のウェイポイント)に基づいてフラッシャ24R・24Lを点滅させるか否かを判断する。
【0071】
図10の例では、車両10がウェイポイントW1に到達したとき、制御装置11は、ウェイポイントW1に続くウェイポイントの位置と、車両10の進行方向とに基づいて右フラッシャ24Rを点滅させるか、左フラッシャ24Lを点滅させるか、両フラッシャ24R・24Lを点滅させないかを判断する。例えば、ウェイポイントW1に近いウェイポイントがW2~W5である場合、それらの位置が車両10の進行方向に対して右方にずれているので、制御装置11は車両10が右折すると判断し、右フラッシャ24Rを点滅させる。一方、ウェイポイントW1に近いウェイポイントがW2・W3・W8~W10である場合、それらの位置が車両10の進行方向に位置しているので、制御装置11は車両10が直進すると判断し、左右のフラッシャ24R・24Lを点滅させない。
【0072】
付加案内のさらに別の例は、図5Bで示すように、信号停止線フラグである。図11は信号停止線フラグを説明するための図であり、この図では、黒丸は「信号停止線フラグ:OFF(図5Bにおいて「0」)」が付与されているウェイポイントを示し、白丸は「信号停止線フラグ:ON(図5Bにおいて「1」)」が付与されているウェイポイントを示している。信号停止線フラグがONとなっているウェイポイント(図11において符号W1が付与されたウェイポイント)に車両10が到達すると、車両10の制御装置11(走行制御部12B、図17参照)は、前カメラ32を通して取得する画像に基づいて信号機の色を検知し、信号機が赤や黄に点灯している場合にはブレーキ機構22を制御して車両10を停止させる。その後、制御装置11は、前カメラ32を通して取得する画像に基づいて信号機の色が青に変わったか否かを判断し、信号機の色が青に変わった場合には駆動機構21を制御して車両10を発進させる。
【0073】
なお、車両10の制御装置11(走行制御部12B、図17参照)は、信号停止線フラグがONとなっているウェイポイントの手前で、上述した処理を開始してもよい。すなわち、制御装置11は、計画経路情報に含まれるウェイポイントのうち、現在位置に対応するウェイポイントに続く複数のウェイポイントを読み取ってもよい。そして、その複数のウェイポイントのなかに、信号停止線フラグがONとなっているウェイポイント(図11において符号W1が付与されたウェイポイント)が存在する場合に、制御装置11は、前カメラ32を通して取得する画像に基づいて信号機の色を検知してよい。そして、信号機が赤や黄に点灯している場合に、制御装置11はブレーキ機構22を制御して、信号停止線フラグがONとなっているウェイポイントに対応する位置で車両10を停止させてよい。
【0074】
付加案内のさらに別の例は、図5Bで示すように、一時停止線フラグである。一時停止線フラグがONとなっているウェイポイントに車両10が到達すると、車両10の制御装置11(走行制御部12B、図17参照)は、ブレーキ機構22を制御して車両10を停止させる。そして、制御装置11は、例えば前カメラ32を通して取得する画像に基づいて、障害物の有無を判断してもよい。この判断は数秒間継続してもよい。制御装置11は障害物を検知しなかった場合に、駆動機構21を制御して車両10を発進させてよい。
【0075】
付加案内は、さらに横断歩道停止線フラグを有してもよい。横断歩道停止線フラグがONとなっているウェイポイントに車両10が到達すると、車両10の制御装置11は、ブレーキ機構22を制御して車両10を停止させる。そして、制御装置11は、例えば前カメラ32を通して取得する画像に基づいて、障害物(人を含む)の有無を判断してもよい。この判断は数秒間継続してもよい。制御装置11は障害物を検知しなかった場合に、駆動機構21を制御して車両10を発進させてよい。
【0076】
付加案内のさらに別の例は、図5Bで示すように、追い越し可能フラグである。図12は追い越し可能フラグを説明するための図であり、この図では、黒丸は「追い越し可能フラグ:OFF(図5Bにおいて「0」)」が付与されているウェイポイントを示し、白丸は「追い越し可能フラグ:ON(図5Bにおいて「1」)」が付与されているウェイポイントを示している。追い越し可能フラグがONとなっているウェイポイントに車両10が到達すると、車両10の制御装置11(走行制御部12B、図17参照)は、前カメラ32を通して取得する画像に基づいて車両10の前方に障害物があるか否かを判断する。障害物がない場合、車両10は計画経路情報に含まれるウェイポイントに沿って走行する。ウェイポイントで規定される経路上に障害物Kがある場合、図12の矢印Tで示されるように、ウェイポイントから右方又は左方に離れ且つウェイポイントから所定距離の範囲内で走行する。つまり、追い越し可能フラグはウェイポイントから所定の距離だけ離れた位置での走行を許容する案内である。
【0077】
付加案内のさらに別の例は、図5Bで示すように、追い越し可能フラグである。図13は追い越し可能フラグを説明するための図であり、この図では、黒丸は「車線変更フラグ:OFF(図5Bにおいて「0」)」が付与されているウェイポイントを示し、白丸は「車線変更フラグ:ON(図5Bにおいて「1」)」が付与されているウェイポイントを示している。計画経路情報は、図13で示すように、「車線変更フラグ:ON」が付与されているウェイポイント」(白丸)と、その隣の車線(追い越し車線)のウェイポイント(例えば、「車線変更フラグ:ON」が付与されているウェイポイント(白丸))とが、一定区間において2列で並ぶように生成される。図13の例とは異なり、計画経路情報は、「車線変更フラグ:ON」が付与されているウェイポイント」(白丸)と、その隣の車線(追い越し車線)に対応するウェイポイントとして、「車線変更フラグ:OFF」が付与されているウェイポイントとが2列で並ぶように生成されてもよい。
【0078】
制御装置11(走行制御部12B、図17参照)は、現在位置に対応するウェイポイントに続く複数のウェイポイントを読み取る。そして、複数のウェイポイントのなかに車線変更フラグがONとなっているウェイポイント(図13において符号W1が付与されたウェイポイント)が存在する場合、制御装置11はフラッシャ24Rを点滅させるとともに、外界センサ群30(例えば、後カメラ33や、LiDAR31、ミリ波レーダなど)の出力に基づいて車両10の右後方に、自車に接近する別車両があるか否かを判断する。自車に接近する別車両がない場合、制御装置11は、ステアリング機構23を制御して、それまでの進行方向に対して右方にずれているウェイポイントW2に向かって、車両10を移動させる。
【0079】
一方、外界センサ群30の出力に基づく判断の結果、自車に接近する別車両がある場合、制御装置11は車線変更を行わずに、それまでの進行方向に沿った方向にあるウェイポイントW3・W4・・・に向けて車両10を移動させる。ウェイポイントW3・W4・・・は「車線変更フラグ:ON」が付与されているウェイポイントであるので、制御装置11は、ウェイポイントW3・W4・・・においても、ウェイポイントW1での処理と同様に、外界センサ群30の出力に基づいて車両10の右後方に、自車に接近する別車両があるか否かを判断する。自車に接近する別車両が無くなったときに、制御装置11は、ステアリング機構23を制御して、それまでの進行方向に対して右方にずれているウェイポイントに向かって、車両10を移動させる。
【0080】
図13の例においては、右側の車線に対応するウェイポイントに「車線変更フラグ:ON」が付与されている。そのため、例えば、右側の車線を走行しているときに、障害物が見つかった場合、制御装置11は、上述と反対の処理を実行してもよい。すなわち、制御装置11は、外界センサ群30の出力に基づいて車両10の左後方に、自車に接近する別車両があるか否かを判断してよい。そして、自車に接近する別車両がない場合、制御装置11は、ステアリング機構23を制御して、それまでの進行方向に対して左方にずれているウェイポイントに向かって、車両10を移動させてよい。
【0081】
[交差点調停フラグ]
付加案内のさらに別の例は、図5Bで示すように、交差点調停フラグである。図14は交差点調停フラグを説明するための図であり、この図では、黒丸は「交差点調停フラグ:OFF(図5Bにおいて「0」)」が付与されているウェイポイントを示し、白丸は「交差点調停フラグ:ON(図5Bにおいて「1」)」が付与されているウェイポイントを示している。「交差点調停フラグ:ON」は、交差点の手前のウェイポイントに付与される。交差点調停フラグがONとなっているウェイポイントW1に車両10が到達すると、車両10の制御装置11(走行制御部12B、図17参照)は、交差点への進入が許容されるか否かの問い合わせを管理装置70に送信する。車両10は管理装置70からの応答に基づいて、交差点に進入し、或いは交差点の手前で待機する。
【0082】
管理装置70の演算装置71は、その機能として調停部71C(図4参照)を有している。車両監視テーブル72A(図4参照)に記録されている車両10の位置は、所定時間(例えば、1又は数秒)ごとに更新される。車両10の交差点への進入が許容されるか否かの問い合わせを管理装置70が車両10から受信したとき、調停部71Cは車両監視テーブルを参照し、問い合わせに係る交差点に既に進入している他の車両10が存在するか否かを判断する。すなわち、調停部71Cは、問い合わせに係る交差点に規定されている所定範囲Ar(図14参照)内の位置情報を有する他の車両10が存在するか否かを判断する。交差点に他の車両10が進入していない場合、調停部71Cは交差点への進入を許容する旨の応答を車両10に送信する。反対に、交差点に進入している他の車両10が存在する場合、調停部71Cは交差点の手前での待機を指示する応答を車両10に送信する。その後、調停部71Cは、所定時間(例えば、1又は数秒)ごとに車両監視テーブルを参照し、問い合わせに係る交差点に進入している他の車両10が無くなったか否かを判断する。調停部71Cは、他の車両10が交差点から無くなったときに、調停部71Cは交差点への進入を許容する旨の応答を車両10に送信する。以上が付加案内の例についての説明である。
【0083】
交差点での走行について管理装置70及び車両10で実行される処理は、上述した例に限られない。車両10は交差点の入口で管理装置70から擬似的な通行許可票を受け取り、交差点の出口でその擬似的な通行許可票を管理装置70に返却してよい。詳細には、交差点調停フラグがONとなっているウェイポイントW1に車両10が到達すると、制御装置11は管理装置70に擬似的な通行許可票を要求する。通行許可票の発行は記憶装置72に記録されており、管理装置70の調停部71Cは記憶装置72を参照し、通行許可票を発行している車両が存在するか否かを判断する。通行許可票を発行している車両が存在しない場合には、通行許可票を要求した車両10に対して擬似的な通行許可票を発行する。すなわち、調停部71Cは車両10に対して通行を許可する旨の送信し、且つ、この車両10に通行許可票を発行した旨を記憶装置72に記録する。車両10は、交差点の出口を意味するウェイポイントに到達すると、その擬似的な通行許可票を管理装置70に返却する。すなわち、車両10は、交差点を出たことを管理装置70に通知する。調停部71Cは、擬似的な通行許可票が戻されたことを記憶装置72に記録する。以上が付加案内の例についての説明である。
【0084】
[経路基礎情報の他の例]
上述したように、計画経路生成部71Eは経路基礎情報(図5B)を参照し、公知の経路検索アルゴリズムによって走行開始位置から走行終了位置までの経路を検索する。一例においては、計画経路生成部71Eは走行可能経路を表す全てのウェイポイントをノードとして利用して、公知の経路検索アルゴリズムを実行する。
【0085】
これとは異なり、経路検索においては、経路基礎情報が含むウェイポイントは用いられなくてもよい。例えば、記憶装置72に、車両運用エリアB内の予め定められた走行可能経路を表す第1基礎情報が格納されていてよい。第1基礎情報は、経路検索のための計算負荷が軽減されるように構成された情報である。第1基礎情報は、例えば、図5A及び図5Bで示した経路基礎情報に含まれるウェイポイントよりも数の少ないノードを含む情報である。このような第1基礎情報が利用される場合、第1基礎情報から得られる経路とウェイポイントとを対応づける情報が記憶装置72に予め格納されていてよい。以下では、第1基礎情報から得られる経路と、一連のウェイポイントとを対応づける情報を第2基礎情報と称する。計画経路生成部71Eは、第1基礎情報を利用して経路検索を実行し、第2基礎情報を参照することによって、得られた経路に対応するウェイポイントを取得し、そのウェイポイントを計画経路情報としてよい。この場合、第1基礎情報と第2基礎情報とが経路基礎情報を構成している。
【0086】
図15Aは第1基礎情報の例を説明するための図である。図15Bは第2基礎情報の例を説明するための図である。図15Aで示す第1基礎情報では、複数のリンクと、リンクの両端であるノードとが定義されている。ノードは、車両運用エリアB内の走行可能経路上に存在する交差点や、分岐点、合流点のウェイポイントに対応していてよい。リンクには、その長さ(ノード間の距離)や、リンクの通過に要する時間などがコストとして対応づけられる。図15Bで示す第2基礎情報では、ウェイポイントのそれぞれにリンクが対応づけられている。第2基礎情報では、走行可能経路の全ウェイポイントのそれぞれにいずれかのリンクが対応づけられてよい。計画経路生成部71Eは、第1基礎情報を利用して経路検索を実行し、S301(図8参照)で取得した走行開始位置から走行終了位置までの経路(ノードとリンク)を特定する。そして、計画経路生成部71Eは、得られた経路(ノードとリンク)に対応するウェイポイントを、第2基礎情報を参照して取得し、得られたウェイポイントを計画経路情報とする。このような方法によっても、図6で示すように、走行可能経路を表す全ウェイポイント(経路基礎情報)のうちの一部のウェイポイントが計画経路情報として抽出され得る。また、第1基礎情報で既定されるノードの数が、車両運用エリアB内の走行可能経路を表す全ウェイポイントの数よりも少ないので、経路検索の計算負荷を軽減できる。
【0087】
なお、第1基礎情報の内容は、交差点や、分岐点、合流点に対応するノードでなくてもよい。例えば、第1基礎情報では、レーン(車線)が規定されていてよい。具体的には、レーンと他のレーンとの関係、及びレーンを通過するためのコストが第1基礎情報において規定されていてよい。レーン間の関係は、例えば、継続、交差、隣接、及び分岐を含む。継続とは、車線変更などの措置を行わなくても通常の走行で移動できるレーン同士の関係を表す。交差とは衝突の可能性をもつレーン同士の関係を表す。隣接とは、経路接続も交差もしていないが隣り合っているレーン同士の関係を表す。分岐とは、道路から駐車場への入り口など、交差点として扱うには細かすぎる枝分かれを表す。第2基礎情報では、走行可能経路の全ウェイポイントのそれぞれにレーンが対応づけられてよい。計画経路生成部71Eは、第1基礎情報を利用して経路検索を実行し、S301で取得した走行開始位置から走行終了位置までの経路(レーン)を特定する。そして、計画経路生成部71Eは、得られた経路(レーン)に対応するウェイポイントを、第2基礎情報を参照して取得し、得られたウェイポイントを計画経路情報とする。このような方法によっても、図7A及び図7Bで示すように、車両運用エリアB内の走行可能経路を表す全ウェイポイントのうちの一部のウェイポイントが計画経路情報として抽出され得る。また、第1基礎情報で既定されるレーンの数を、車両運用エリアB内の走行可能経路を表す全ウェイポイントの数よりも少なくすることで、経路検索の計算負荷を軽減できる。
【0088】
[計画経路の分割]
計画経路生成部71Eは、走行開始位置から走行終了位置まで続く計画経路を複数の経路(例えば、第1部分経路と第2部分経路)に分割してもよい。すなわち、計画経路生成部71Eは、走行開始位置から走行終了位置まで続く計画経路を表すウェイポイントを、第1部分経路に対応するウェイポイントと、第2部分経路に対応するウェイポイントとに分割し、それらを車両10に送信してもよい。
【0089】
図16は、計画経路生成部71Eのこのような処理を説明するための図である。この図の例では、計画経路は、交差点Csで交差する第1部分経路R1と第2部分経路R2とを有している。2本の部分経路R1・R2のこのような交差は、例えば、交差点Csでの右折が禁止されている場合に生じ得る。車両10は、後述するように、受信した計画経路情報のウェイポイントのなかで自車の現在位置に最も近いウェイポイントに向けて移動する。そのため、車両10が交差点Csに到達したとき、すなわち、図16において車両10がウェイポイントW1に到達したとき、複数のウェイポイントW2・W3・W4がウェイポイントW1から似た近さにあり、車両10が進行方向を誤る可能性が生じる。このような事態を避けるため、第1部分経路R1と第2部分経路R2とが交差する場合、計画経路生成部71Eは、図16(b)及び図16(c)で表されるように、計画経路を表すウェイポイントを、第1部分経路に対応するウェイポイントと、第2部分経路に対応するウェイポイントとに分割する。
【0090】
計画経路生成部71Eは、第1部分経路R1に対応するウェイポイントと、第2部分経路R2に対応するウェイポイントとを異なるタイミングで車両10に送信してもよい。例えば、計画経路生成部71Eは第1部分経路R1のウェイポイントだけを先に車両10に送信し、車両10が第1部分経路R1の終端のウェイポイントに到達したときに、第2部分経路R2を車両10に送信してよい。これとは異なり、計画経路生成部71Eは、第1部分経路R1のウェイポイントと、第2部分経路R2のウェイポイントとを実質的に同じタイミングで送信してよい。この場合、1部分経路情報と第2部分経路情報のいずれを先に参照するかが車両10の制御装置11において判断され得るように、計画経路生成部71Eは、車両10に送信する1部分経路情報と第2部分経路情報とに順番を示す情報を付してもよい。
【0091】
計画経路生成部71Eは、交差する2本の部分経路R1・R2を計画経路が含むか否かを、例えば次のように判断してよい。経路検索に上述した第1基礎情報が用いられる場合、2本のリンク(或いはレーン)が交差している場合には、その交差が第1基礎情報において示されていてもよい。経路検索の結果、交差する2本のリンク(或いはレーン)が選択される場合には、一方のリンクを第1部分経路が含み、他方のリンクを第2部分経路が含むように、計画経路をこの2つの部分経路に分割してよい。
【0092】
他の例では、交差点Csに含まれるウェイポイントに、交差点Csを表す付加情報(例えば交差点のID)が加えられてもよい。計画経路生成部71Eは、この付加情報に基づいて、交差する2本の部分経路R1・R2を計画経路が含むか否かを判断してよい。例えば、計画経路に含まれるウェイポイントのなかに同じ交差点のIDを含むウェイポイントの数が閾値を超えている場合には、計画経路が交差点Csで交差する2本の部分経路を含むと判断してよい。
【0093】
[自動運転車両で実行される処理]
図17は自動運転車両10の演算装置12が有している機能を示すブロック図である。演算装置12は、その機能として、現在位置推定部12A、走行制御部12B、異常検知部12Dとを有している。
【0094】
[現在位置推定部]
現在位置推定部12Aは車両10の現在位置を推定する。上述したように、車両10は、車両10の周囲にある地物の位置を表す周辺情報を出力する外界センサ群30を有している。外界センサ群30は、例えば、LiDAR31と、カメラ32・33とを含む。記憶装置13には、車両運用エリアBにある地物の位置を表す地図情報が格納されている。現在位置推定部12Aは、外界センサ群30を通して得た周辺情報と、記憶装置13に記録されている地図情報とのマッチングによって、車両10の現在の位置を推定する。地図情報は、例えば3次元点群マップである。周辺情報は、例えばLiDAR31を通して取得する点群データである。現在位置推定部12Aは、点群マップにおける点群データがマッチした位置の座標、すなわち、車両運用エリアB内で規定された座標系での座標値(X・Y・Z)を自車位置として出力する。
【0095】
記憶装置13に格納されている地図情報(具体的には3次元点群マップ)は、車両運用エリアB全体についての地図情報である。このため、車両10が希望乗車位置に向けた移動を開始するとき、及び、希望降車位置に向けた移動を開始するときに、管理装置70から車両10に地図情報を送信する必要がない。地図情報は一般に大きなデータ量を有する。自動運転システム1においては、車両10の移動開始時に地図情報の送信が必要とされないので、地図情報の受信に係る障害が発生せず、車両10は希望乗車位置或いは希望降車位置に向けた移動をスムーズに開始できる。
【0096】
[走行制御部]
走行制御部12Bは、管理装置70から受信して記憶装置13に格納された計画経路情報を参照しながら、駆動機構21、ブレーキ機構22、及びステアリング機構23を制御する。走行制御部12Bは、車両10の現在位置に最も近いウェイポイントに向けて車両が移動するように駆動機構21、ブレーキ機構22、及びステアリング機構23を制御する。経路基礎情報に含まれるウェイポイント(図5B参照)に車速が対応づけられている場合、走行制御部12Bはその車速の範囲内で車両10が走行するように駆動機構21等を制御してよい。
【0097】
また、図6A及び図10図14を参照して説明した付加案内が対応づけられたウェイポイントに車両10が到来したとき、走行制御部12Bは、その付加案内について予め定められている上述した動作が実行されるように、駆動機構21、ブレーキ機構22、ステアリング機構23、及びフラッシャ24R・24Lを制御してよい。
【0098】
図18は、制御装置11が走行時に実行する処理の例を説明するための図である。まず、制御装置11は管理装置70から計画経路情報を受信する(S401)。この計画経路情報は記憶装置13に格納される。次に、制御装置11(走行制御部12B)は、現在位置推定部12Aの処理によって算出される車両10の現在位置に最も近いウェイポイントを計画経路情報に含まれるウェイポイントから取得する(S402)。走行制御部12Bは、車両10の現在位置と、S402で取得されたウェイポイントとに基づいて駆動機構21、ブレーキ機構22、及びステアリング機構23を制御する(S403)。すなわち、走行制御部12Bは、車両10がS402で取得されたウェイポイントに向かうように駆動機構21等を制御する。
【0099】
また、走行制御部12Bは、S402で取得したウェイポイントに対応づけられている付加案内(例えば、上述した交差点調停フラグ)を取得する(S404)。走行制御部12Bは、付加案内に応じた動作を実行する(S405)。付加案内に応じた動作とは、例えば、上述した交差点での調停や、一時停止、フラッシャ24R・24Lの点滅などである。次に、走行制御部12Bは、車両10の位置が計画経路情報で特定される走行終了位置に到達したか否かを判断する(S406)。車両10の位置がウェイポイントで特定される走行終了位置に到達していない場合、制御装置11の処理はS402の処理に戻る。一方、車両10の位置がウェイポイントで特定される走行終了位置に到達している場合、制御装置11は走行のための処理を終了する。なお、制御装置11は、車両10が走行終了位置に到着すると、その旨を管理装置70に送信する。
【0100】
[異常検知部]
異常検知部12Dは、走行制御部12Bが車両10の制御のために算出した制御信号を監視する。そして、その制御信号が異常を呈した場合、例えば制御信号が急峻に変化した場合、異常検知部12Dは異常が生じたと判断する。この場合、演算装置12は走行制御部12Bが算出した制御信号を平滑化し、或いは制御信号の出力を停止する。
【0101】
[点群マップの更新]
記憶装置72には、マスター点群マップ72Cが格納されている(図4参照)。車両運用エリアB内に地物(例えば、建物)が新たに設けられることがある。そのため、車両10の記憶装置13に格納されている点群マップは更新されるのが望ましい。車両管理装置70の記憶装置72に格納されている車両監視テーブル72Aには、各車両10の記憶装置13に格納されている点群マップについての情報が記録されていてもよい。点群マップについての情報は、例えば、最新の更新時期や、記憶装置13に格納されている点群マップのバージョン名であってよい。この情報は、車両監視部71Dの処理において、一定時間ごとに車両10から受信され、車両監視テーブルに記録されてよい。
【0102】
図4で示すように、車両管理装置70の演算装置71は、その機能として、点群マップ管理部71Fを有している。点群マップ管理部71Fは、記憶装置72に格納されているマスター点群マップ72Cについての情報(例えば、最新更新時期及び/又はバージョン名)と、車両監視テーブル72Aに記録されている各車両10の点群マップについての情報(例えば、最新更新時期及び/又はバージョン名)とを参照する。そして、車両10の点群マップがマスター点群マップに一致していない場合に、点群マップ管理部71Fは、この車両10にマスター点群マップ(点群マップ)を送信してよい。このとき、車両10は、記憶装置13に格納されている点群マップを新たに受信した点群マップで更新してよい。
【0103】
最新の点群マップの車両10への送信は、計画経路情報の車両10への送信とは異なる時期又は場所でなされるとよい。例えば、点群マップの車両10への送信は、予め定められた場所及び/又は予め定められた時期になされてよい。上述したように、車両10は、回送管理部71Bからの回送指令(現在位置から回送位置までの計画経路情報)を受けて、車両運用エリアB内の回送位置(例えば、車庫や充電ステーション)に戻る。点群マップの車両10への送信は、車両10がこの回送位置にあるときになされてよい。また、回送管理部71Bからの回送指令(言い換えると、車両10の回送位置への戻り)は、予め定められた時期になされてよい。こうすることによって、点群マップの車両10への送信は、予め定められた時期になされることとなる。
【0104】
点群マップは、一般的に大きなデータ量を有する。そこで、点群マップの車両10への送信は、計画経路情報の車両10への送信とは異なる通信手段によってなされてもよい。計画経路情報の車両10への送信は、例えば、インターネットと、基地局などを含む携帯電話網とを経由して実現される。これに対し、点群マップの車両10への送信は、インターネットと携帯電話網とを経由することなく、例えば無線LAN又は有線LAN経由でなされてよい。
【0105】
なお、点群マップの車両10への送信は、上述した例に限られない。例えば、点群マップの車両10への送信は、計画経路情報の送信と同様に、インターネットと携帯電話網とを経由して実現されてもよい。
【0106】
[点群マップの作成]
図19は、車両管理装置70の記憶装置72に格納されている経路基礎情報の作成手順の例を示すフロー図である。
【0107】
まず、3次元点群マップを作成する。点群マップの作成では、車両運用エリアB内を車両で走行しながら、LiDARによって点群データを取得する(S501)。この車両は自動運転車両10でなくてもよい。走行時、LiDARによって点群データを取得しながら、GNSS受信機を通して位置情報も取得する。車両には、加速度センサ及び角速度センサを含む慣性計測装置(inertial measurement unit(IMU))が搭載されていてもよい。この場合、LiDARによって点群データを取得しながら、IMUの出力を利用して位置情報が取得されてよい。S501で取得した点群データと位置情報とについて3次元化処理を行い、車両運用エリアBの全体について3次元点群マップを作成する(S502)。この点群マップの座標系として、車両運用エリアB内の座標系(X、Y、Z)が用いられてよい。このようにして作成された点群マップは、上述したマスター点群マップとして利用されてよい。
【0108】
次に、LiDARによって点群データを取得しながら、車両運用エリアB内の走行可能経路を車両に走行させる。LiDARによって取得した点群データと、S502で作成した3次元点群マップとのマッチングを行うことで、車両が走行した経路(すなわち、車両運用エリアB内での走行可能経路)の位置情報を取得する(S503)。この位置情報は、図6Bを参照して説明した経路基礎情報にある、車両運用エリアB内の座標系で表されたウェイポイントの座標値(X、Y、Z)である。次に、車両が走行した経路を表すウェイポイントに対して、世界測地系の座標値(緯度、経度、高度)を設定する(S504)。各ウェイポイントの世界測地系での座標値は、車両運用エリアB内の座標系の原点の緯度・経度と、車両運用エリアB内の座標系の回転角とから算出され得る(回転角は、世界測地系における車両運用エリアB内座標系の傾きである。)
【0109】
次に、各ウェイポイントについて付加案内を付与する(S505)。例えば、S503において、走行可能経路の位置情報を取得するために車両を走行させているとき、車両の運転操作についてのログが走行可能経路の位置情報と対応づけて記録されてよい。ログは、例えば、フラッシャ24R・24Lの操作、車速、一時停止などについての情報を含む。経路基礎情報の作成者は、このログを参照しながら、各ウェイポイントについて付加案内を付与してよい。これにより、図6Aに示す経路基礎情報が得られる。
【0110】
[まとめ](1)以上説明したように、車両管理装置70は、車両運用エリアB内の予め定められた走行可能経路(図5A、L1、L2)に沿って並んでいるウェイポイントを含む経路基礎情報が予め記録されている記憶装置72と、車両10に対する移動要求に応じて車両10が走行すべき経路を表す計画経路情報を生成する演算装置71とを有している。演算装置71は、経路基礎情報に含まれるウェイポイントのうちの一部のウェイポイントであって、移動要求に応じた走行開始位置から走行終了位置まで並んでいるウェイポイント(図6)を、計画経路情報として抽出する。この管理装置70によると、計画経路を比較的容易に生成できる。
【0111】
(2)車両管理装置70は、計画経路情報を車両10に送信する通信装置73を有してよい。これによると、車両10においては経路検索を実行する必要がなくなるので、車両10にかかる計算負荷を軽減できる。
【0112】
(3)経路基礎情報は、経路基礎情報に含まれるウェイポイントに対応づけて、車両が実行すべき所定の動作又は車両が許容される所定の動作を表す付加案内を含んでいる。これによると、自動運転車両10の制御を計画経路に含まれる付加案内によって補助できる。
【0113】
(4)付加案内は、車両の一時停止、前方の車両の追い越し、交差点における別の車両との調停に係る処理、及びフラッシャの点滅のうちの少なくとも1つの動作を、車両に対して案内する情報であってよい。これによると、車両の一時停止、前方の車両の追い越し、交差点における別の車両との調停に係る処理、又はフラッシャの点滅を、計画経路に含まれる付加案内によって補助できる。
【0114】
(5)既定エリア内で定義されている座標系における座標値(X,Y、Z)と、世界測地系の座標値(緯度、経度)とが、経路基礎情報に含まれる各ウェイポイントに対応づけられてよい。これによれば、ユーザが希望する乗車位置や降車位置を、世界測地系の座標値で特定できる。
【0115】
(6)経路基礎情報は、走行可能経路を表す複数のリンクと、各リンクの両端であるノードとを定義する第1基礎情報(図15A)と、複数のリンクと走行可能経路に沿って並んでいるウェイポイントとを対応づける第2基礎情報(図15B)とを含んでよい。演算装置71は、第1基礎情報を利用して走行開始位置から走行終了位置までのリンクを検索し、第2基礎情報を参照することによって、検索により得られたリンクに対応するウェイポイントを計画経路情報として取得してよい。これによれば、経路検索に要する計算負荷を軽減できる。
【0116】
(7)経路基礎情報は、既定エリア内の予め定められた走行可能経路を表す第1基礎情報と、第1基礎情報で特定される経路とウェイポイントとを対応づける第2基礎情報とを含んでもよい。演算装置71は、第1基礎情報を利用して走行開始位置から走行終了位置までの経路を検索し、第2基礎情報を参照することによって、検索により得られた経路に対応するウェイポイントを計画経路情報として取得してよい。第1基礎情報を簡単化することによって、経路検索に要する計算負荷を軽減できる。
【0117】
(8)車両運用エリアB内で定められている走行可能経路(図5A)は環状であってよい。これによると、走行開始位置と走行終了位置との位置関係によることなく、車両を進行方向に動かすことで走行終了位置に到達できる。
【0118】
(9)計画経路は、移動要求に応じた走行開始位置から移動要求に応じた走行終了位置まで連続していてよい。計画経路は、走行開始位置と走行終了位置との間に、第1部分経路R1(図16)と第2部分経路R2(図16)とを含んでよい。演算装置71は、計画経路として抽出されたウェイポイントを、第1部分経路R1に対応するウェイポイントと、第2部分経路R2に対応するウェイポイントとを分割してよい。
【0119】
(10)計画経路は交差点Cs(図16)を含み、第1部分経路R1は交差点Csで交差する2つの経路のうち一方を含み、第2部分経路R2は交差点Csで交差する2つの経路のうち他方を含んでいる。これによれば、自動運転車両10が交差点Csを適切に走行できるようになる。
【0120】
(11)自動運転システム1は、車両管理装置70と自動運転車両10とを含む。車両10は、駆動機構21と、ステアリング機構23と、車両10が計画経路に沿って走行するように駆動機構21とステアリング機構23とを制御する制御装置11とを含んでいる。車両管理装置70は、計画経路情報を車両10に送信する通信装置73を有してよい。これによると、車両10においては経路検索を実行する必要がなくなるので、車両10にかかる計算負荷を軽減できる。
【0121】
(12)車両10が走行可能経路上にあるか否かを判断してよい。車両管理装置70は、車両10が走行可能経路上にない場合に計画経路情報を車両10に送信しない。
【0122】
(13)車両10に対する移動要求は、車両10の現在位置からユーザが乗車を希望する位置までの移動、ユーザが乗車を希望する位置からユーザが降車を希望する位置までの移動、及び車両の現在位置から回送位置までの移動についての要求である。
【0123】
(14)車両10は、車両の周囲にある地物の位置を表す周辺情報を出力する外界センサ群30と、車両運用エリアBにある地物の位置を表す地図情報が記録されている記憶装置13とを含んでいる。車両10の制御装置11は、周辺情報と地図情報とのマッチングによって車両10の位置を推定する現在位置推定部12Aを含んでいる。地図情報は、計画経路情報とは異なるタイミングにおいて車両10に送信される。これによれば、データ量の大きい地図情報を安全に車両10に送信できる。
【0124】
(15)車両10は、車両10の周囲にある地物の位置を表す周辺情報を出力する外界センサ群30と、車両運用エリアBにある地物の位置を表す地図情報が記録されている記憶装置13とを含んでいる。車両10の制御装置11は、周辺情報と地図情報とのマッチングによって車両の位置を推定する現在位置推定部12Aを含んでよい。地図情報は、計画経路の受信とは異なる通信手段 によって車両に送信される。これによれば、データ量の大きい地図情報を安全に車両に送信できる。
【0125】
(16)本開示で提案する走行経路生成方法は、既定エリアB内において車両10が走行すべき経路を表す計画経路を生成する方法である。この方法は、車両10に対する移動要求に応じた走行開始位置と走行終了位置とを取得する工程と、既定エリアB内の予め定められた走行可能経路(図5A)に沿って並んでいるウェイポイントを含み記憶装置72に格納されている経路基礎情報を参照し、経路基礎情報に含まれるウェイポイントのうちの一部のウェイポイントであって、走行開始位置から走行終了位置まで並んでいるウェイポイント(図6)を、計画経路情報として抽出する工程とを含む。この方法によると、計画経路を比較的容易に生成できる。
【0126】
なお、本開示で提案する走行経路生成装置は、上述した車両管理装置70に限られない。また、本開示で提案する自動運転システムは、上述した自動運転システム1に限られない。例えば、経路基礎情報には、一時停止フラグやターンフラグなどの付加案内が設けられていなくてもよい。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19