IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・コリア・カンパニー・リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】シリコーン系組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20231225BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20231225BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G77/38
C08G81/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022533170
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 KR2021014729
(87)【国際公開番号】W WO2022196878
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0034102
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517266159
【氏名又は名称】モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・コリア・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MOMENTIVE PERFORMANCE MATERIALS KOREA CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】イ,サンジェ
(72)【発明者】
【氏名】小野 和久
(72)【発明者】
【氏名】バサブ,ロイ
(72)【発明者】
【氏名】大皷 弘二
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-178998(JP,A)
【文献】国際公開第2012/050201(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/136919(WO,A1)
【文献】特開平11-193348(JP,A)
【文献】特表2020-520395(JP,A)
【文献】特表2003-509527(JP,A)
【文献】特表2018-509503(JP,A)
【文献】特開平05-295272(JP,A)
【文献】特開2018-58946(JP,A)
【文献】特開2018-58944(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141819(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111234234(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/01;290/00-299/08
C08G 77/00-77/62;81/00-85/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系組成物の総重量を基準に、
両末端がアクリレート基からなり、1個以上のアルコキシ基を含むポリオルガノシロキサン40重量%以上;
1種以上のアクリル系単量体0.1重量%~50重量%;
1種以上の光開始剤0.1重量%~5重量%;及び
水分硬化用触媒を含むものであり、
前記シリコーン系組成物のタックフリータイム(tack free time)は、60分以下であり、
前記ポリオルガノシロキサンは、下記化学式1で表されるものである、シリコーン系組成物であって、
前記水分硬化用触媒は、スズ系化合物を含み、前記シリコーン系組成物の総重量を基準に、前記スズ系化合物の含量は、0.07重量%~0.35重量%であるか、又は、
前記水分硬化用触媒は、チタネート系化合物を含み、前記シリコーン系組成物の総重量を基準に、前記チタネート系化合物の含量は、0.1重量%~5.0重量%である、
シリコーン系組成物:
【化1】

前記化学式1において、
R1及びR2は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、炭素数1~10の置換もしくは非置換のアルキレン基であり、
R5及びR6は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
R3、R4、R9及びR10のうちの少なくとも一つは、炭素数1~10のアルコキシ基であり、残りは、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、
R7及びR8は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール基であり、
m1及びn1は、それぞれ独立して、0以上の実数である。
【請求項2】
前記化学式1は、下記化学式2又は3で表されるものである、請求項に記載のシリコーン系組成物:
【化2】

【化3】

前記化学式2及び3において、
m2、m3及びn2は、それぞれ独立して、1以上の実数である。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンの粘度は、23℃を基準に、10cps~100,000cpsである、請求項1に記載のシリコーン系組成物。
【請求項4】
前記アクリル系単量体は、イソボルニルアクリレート(Isobornyl acrylate)、ラウリルアクリレート(Lauryl acrylate)及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-Hexanediol diacrylate)のうちの1種以上を含むものである、請求項1に記載のシリコーン系組成物。
【請求項5】
前記シリコーン系組成物は、スカベンジャー(scavenger)及び接着促進剤(adhesion promoter)のうちの1種以上を含む添加剤をさらに含むものである、請求項1に記載のシリコーン系組成物。
【請求項6】
前記スカベンジャーは、下記化学式4で表される化合物を含むものである、請求項に記載のシリコーン系組成物:
【化4】

前記化学式4において、nは、1~20の実数である。
【請求項7】
前記接着促進剤は、(アミノアルキル)トリアルコキシシラン、(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシラン、 ビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、トリス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、トリス(トリアルコキシシリルアルキル)シアヌレート、トリス(トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレート、(エポキシアルキル)トリアルコキシシラン及び(エポキシアルキルエーテル)トリアルコキシシランのうちの1種以上を含むものである、請求項に記載のシリコーン系組成物。
【請求項8】
前記シリコーン系組成物は、ヒュームドシリカ(fumed silica)及び第2ポリオルガノシロキサンのうちの1種以上をさらに含むものである、請求項1に記載のシリコーン系組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のシリコーン系組成物を硬化させて製造されたものである、硬化物。
【請求項10】
請求項に記載の硬化物を含む装置。
【請求項11】
前記装置は、光電池装置(photovoltaic device)、整流器(rectifier)、トランスミッター(transmitter)、有機発光素子(organic light emitting diode)、印刷回路基板用湿気保護剤(moisture protector for a printed circuit board)、太陽電池(solar cell)、二次電池(secondary battery)又は自動車部品(automotive component)である、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年3月16日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0034102号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、紫外線(UV)照射と水分(moisture)で二重硬化が可能なシリコーン系組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、紫外線領域の光(UV)の照射による光硬化と空気中に存在する水分による縮合硬化の二重硬化方式を通じてシリコーンが硬化する組成物とその応用に関するものである。
【0004】
既存のUVの照射を通じた硬化は、UVが届かない領域に対しては、光硬化がなされなかった。これを解決するために、UVを様々な角度で数回照射する工程が行われ、工程作業のとき、UVの速い硬化性にもかかわらず、様々な角度でUVを照射しなければならず、角度調節のためのUV照射器が複雑になる現象が発生していて、相対的に工程時間が増えるというのが現状である。しかしながら、このような工程にもかかわらず、UVが照射されることができない領域は依然存在するから、硬化が十分完了しないという問題があった。また、シリコーンの特性である低い表面張力と低い屈折率のため、現業で広範囲に使用される光開始剤の使用が制限的になるしかなく、UVで硬化させる方法が限定的であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、紫外線(UV)で速やかに硬化させることができ、紫外線が照射されていない領域に対しても水分硬化方法で硬化させることができるシリコーン系組成物及びその硬化物を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の一実施態様は、
シリコーン系組成物の総重量を基準に、
両末端がアクリレート基からなり、1個以上のアルコキシ基を含むポリオルガノシロキサン40重量%以上;
1種以上のアクリル系単量体0.1重量%~50重量%;
1種以上の光開始剤0.1重量%~5重量%;及び
水分硬化用触媒を含むものである、シリコーン系組成物を提供する。
【0007】
また、本願の別の実施態様は、上記シリコーン系組成物を硬化させて製造されたものである、硬化物を提供する。
【0008】
また、本願の別の実施態様は、上記硬化物を含む装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願の一実施態様に係るシリコーン系組成物は、紫外線(UV)で速やかに硬化させることができ、紫外線が照射されていない領域に対しても水分硬化方法で十分硬化させることができる。
【0010】
また、本願の一実施態様に係るシリコーン系組成物は、両末端がアクリレート基からなり、1個以上のアルコキシ基を含むポリオルガノシロキサン;及び1種以上のアクリル系単量体を同時に含むことにより、シリコーンゴムの特性を有することができ、接着力を多様に調節することができ、水分硬化だけで表面に速いタックフリータイム(tack free time)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願について詳細に説明する。
紫外線の照射だけで硬化が可能なシリコーン材料の場合には、紫外線が届かない領域に対しては硬化がなされなかった。これを解決するために、紫外線を様々な角度で数回照射しなければならないから、硬化工程を速やかに行うことが不可能であった。また、シリコーン材料の低い表面張力と屈折率のため、光開始剤の使用が制限的であったから、紫外線に対する硬化性も良くなかった。
【0012】
実際の現場で速かに工程を進行するためには、紫外線の照射後に組成物が速く非流動性の特性を持たなければならず、これと共に光が届かない部分でも硬化が速く進行されなければならない。
【0013】
そこで、本願においては、紫外線(UV)で速やかに硬化させることができ、紫外線が照射されていない領域に対しても水分硬化方法で硬化させることができるシリコーン系組成物及びその硬化物を提供しようとする。
【0014】
本願の一実施態様に係るシリコーン系組成物は、両末端がアクリレート基からなり、1個以上のアルコキシ基を含むポリオルガノシロキサン;1種以上のアクリル系単量体; 1種以上の光開始剤;及び水分硬化用触媒を含む。
【0015】
本願の一実施態様に係るシリコーン系組成物は、まず紫外線を通じた硬化が主に行われ、水分硬化メカニズムで完結することができる。すなわち、紫外線の照射によってシリコーン系組成物は速やかに非流動性の特性を有し、その後常温で水分によって速やかに硬化が完結することができる。よって、実際の現場では紫外線を照射することで次の工程への転換が速やかに行われることができ、組成物の完全硬化のために追加的な加熱、紫外線再照射などの工程が全く必要ない。
【0016】
また、本願の一実施態様によれば、紫外線が届かない領域に対しても、水分硬化メカニズムを用いて、追加の紫外線照射工程なしに硬化を達成することができる。また、速いタックフリータイム(tack free time)で、水分硬化工程が単独で行われることもできる。
【0017】
本願の一実施態様において、上記両末端がアクリレート基からなり、1個以上のアルコキシ基を含むポリオルガノシロキサンは、紫外線硬化性官能基と水分硬化性官能基とを同時に含むポリオルガノシロキサンである。より具体的に、上記ポリオルガノシロキサンは、紫外線硬化性官能基として両末端がいずれもアクリレート基からなり、水分硬化性官能基としてポリオルガノシロキサン内に1個以上のアルコキシ基を含む。
【0018】
特に、本願の一実施態様に係るポリオルガノシロキサンは、両末端がいずれもアクリレート基からなるものであって、ポリオルガノシロキサンの両末端がアクリレート基ではないメタクリレート基からなる場合よりも、さらに硬い水準の硬さ特性を得ることができる。 また、ポリオルガノシロキサンの一方の末端がアクリレート基からなり、他方の末端がエポキシ基からなる場合には、より高い紫外線強度が必要となり、紫外線未照射領域におけるタックフリータイム(tack free time)が遅くなって、工程改善の効果を期待し難い。
【0019】
すなわち、本願の一実施態様に係るシリコーン系組成物は、両末端がアクリレート基からなり、1個以上のアルコキシ基を含むポリオルガノシロキサンを含むことにより、紫外線(UV)で速やかに硬化させることができ、紫外線が照射されていない領域に対しても水分硬化方法で十分硬化させることができる。
【0020】
本願の一実施態様において、上記ポリオルガノシロキサンは、下記化学式1で表されることができる。
【化1】
【0021】
上記化学式1において、
R1及びR2は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、炭素数1~10の置換もしくは非置換のアルキレン基であり、
R5及びR6は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
R3、R4、R9及びR10のうちの少なくとも一つは、炭素数1~10のアルコキシ基であり、残りは、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、
R7及びR8は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール基であり、
m1及びn1は、それぞれ独立して、0以上の実数である。
【0022】
本願において置換基の例示は以下に説明するが、これに限定されるものではない。
【0023】
上記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に変えられることを意味し、置換される位置は、水素原子が置換される位置、すなわち置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は、互いに同一であるか異なっていてもよい。
【0024】
本願において、「置換もしくは非置換の」という用語は、ハロゲン基;ニトリル基; ヒドロキシ基;アルコキシ基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;及びヘテロ環基からなる群より選択された1又は2以上の置換基で置換されたか、上記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換基で置換されるか、もしくはいずれの置換基も持たないことを意味する。
【0025】
本願の一実施態様において、上記アルキル基は、直鎖、分枝鎖又は環状であってもよく、炭素数は1~10であることが好ましい。具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、1-メチル-ブチル基、1-エチル-ブチル基、ペンチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、n-ノニル基、2,2-ジメチルヘプチル基、1-エチル-プロピル基、1,1-ジメチル-プロピル基、イソヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基などがあるが、これらに限定されない。
【0026】
本願の一実施態様において、上記アルコキシ基は、直鎖、分枝鎖又は環鎖であってもよく、炭素数は1~10であることが好ましい。具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、3,3-ジメチルブチルオキシ基、2-エチルブチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、ベンジルオキシ基、p-メチルベンジルオキシ基などがあるが、これらに限定されない。
【0027】
本願の一実施態様において、上記アリール基は、単環又は多環であってもよく、炭素数は6~20であることが好ましい。具体的な例としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、 ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0028】
本願の一実施態様において、上記アルキレン基は、2価基であることを除いては、上述したアルキル基が適用されることができる。
【0029】
本願の一実施態様において、上記化学式1のm1は、1以上の実数であってもよく、n1は、0であるか、1以上の実数であってもよい。
【0030】
本願の一実施態様において、上記化学式1は、下記化学式2又は3で表されることができる。
【化2】

【化3】
【0031】
上記化学式2及び3において、
m2、m3及びn2は、それぞれ独立して、1以上の実数である。
【0032】
本願の一実施態様において、上記ポリオルガノシロキサンの粘度は、23℃を基準に、 10cps~100,000cpsであってもよく、100cps~80,000cps であってもよい。
【0033】
上記粘度は、レオメーターを使用することを含む任意の適切な方法で測定されることができる。例えば、粘度は、Anton-PaarのレオメーターのスピンドルPP-25で、gap=0.5mmにセットした後、23℃の条件で20rpmで測定することができる。
【0034】
本願の一実施態様において、上記化学式1~3のm1、m2、m3、n1及びn2は、上記化学式1~3のポリオルガノシロキサンが好ましい粘度を有する値である。より具体的に、上記化学式1~3のm1、m2、m3、n1及びn2は、上記化学式1~3のポリオルガノシロキサンが、23℃を基準に、10cps~100,000cpsの粘度を有する値である。
【0035】
本願の一実施態様において、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、上記ポリオルガノシロキサンの含量は、40重量%~98重量%であってもよく、50重量%~95重量%であってもよい。上記のようなポリオルガノシロキサンの含量範囲を満足する場合に、本願のシリコーン系組成物は、シリコーンゴムの特性を有することができ、接着力を多様に調節することができ、水分硬化だけで表面に速いタックフリータイム(tack free time)を提供することができる。また、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、上記ポリオルガノシロキサンの含量が40重量%未満の場合には、シリコーン系組成物の硬化物が硬くなって非常に割れやすいという問題点が発生するおそれがあり、これによってクラック(crack)の問題が発生し、シリコーンのゴムの性質を失ってしまうようになるので、好ましくない。
【0036】
上述したように、従来にはシリコーン材料の低い表面張力と屈折率のため、光開始剤の使用が制限的であったから、紫外線に対する硬化性も良くなかった。そこで、本願の一実施態様においては、上記ポリオルガノシロキサンと光開始剤との円滑な混合のため、希釈剤であるアクリル系単量体を含む。本願の一実施態様において、上記アクリル系単量体は、希釈剤の役割だけでなく、紫外線に対する硬化性を高める役割を同時に果たす。
【0037】
上記アクリル系単量体は、上記ポリオルガノシロキサンと十分混合され得る材料であれば、当技術分野に知られているアクリル系単量体も用いることができる。特に、上記アクリル系単量体は、イソボルニルアクリレート(Isobornyl acrylate)、ラウリルアクリレート(Lauryl acrylate)及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-Hexanediol diacrylate)のうちの1種以上を含むことが好ましいが、これに限定されるものではない。上述したアクリル系単量体は、分子量と表面張力が低く、屈折率が高くないから、上記ポリオルガノシロキサンとの混合に有利であり、シリコーンのゴムの性質を発現するのに有利な材料である。また、上記シリコーン系組成物中で上記アクリル系単量体の含量を調節することにより、上記シリコーン系組成物の多くの物性の変化を図ることができる。
【0038】
本願の一実施態様において、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、上記アクリル系単量体の含量は、0.1重量%~50重量%であってもよく、より好ましくは1重量%~46重量%であってもよい。
【0039】
上記のようなアクリル系単量体の含量範囲を満足する場合に、本願のシリコーン系組成物は、シリコーンゴムの特性を有することができ、接着力を多様に調節することができ、水分硬化だけで表面に速いタックフリータイム(tack free time)を提供することができる。また、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、上記アクリル系単量体の含量が 50重量%を超過する場合には、相対的にポリオルガノシロキサンの含量が減るようになり、シリコーン系組成物の硬化物が硬くなって非常に割れやすいという問題点が発生するおそれがあり、これによってクラック(crack)の問題が発生し、シリコーンのゴムの性質を失ってしまうようになるので、好ましくない。
【0040】
本願の一実施態様において、上記光開始剤は、熱的に非活性であるが、光を受けて励起されて自由ラジカルが発生し、この自由ラジカルがシロキサンに励起エネルギーを付与して、紫外線硬化による硬化反応を開始させるものである。上記光開始剤は、反応性の観点で、芳香族炭化水素、アセトフェノン及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、o-ベンゾイル安息香酸エステル、ベンゾイン、ベンゾインエーテル及びその誘導体、キサントン及びその誘導体、キノン化合物、ハロゲン化炭化水素及びアミン類、有機過酸化物などが挙げられ、シリコーンとの相溶性、安全性の観点で、置換もしくは非置換のベンゾイル基を含有する化合物又は有機過酸化物がより好ましい。例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1,2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシ(acetoxy)エトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0041】
また、上記光開始剤は、上記ポリオルガノシロキサンとの相溶性の面で、上述したアクリル系単量体に溶解された混合物の形態で使用することができる。
【0042】
本願の一実施態様において、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、上記光開始剤の含量は、0.1重量%~5重量%であってもよく、より好ましくは、0.3重量%~3重量%であってもよい。
【0043】
上記のような光開始剤の含量範囲を満足する場合に、本願のシリコーン系組成物は、速やかな紫外線硬化を達成することができる。
【0044】
本願の一実施態様によれば、上記シリコーン系組成物は、表面の速いタックフリータイム(tack free time)を提供するために、水分硬化用触媒を含む。特に、本願の一実施態様によれば、上記タックフリータイム(tack free time)は、60分以下であってもよく、55分以下であってもよく、5分以上であってもよい。上記タックフリータイム(tack free time)が60分を超過する場合には、本願で達成しようとする速い硬化工程の目的を達成し難い。上記タックフリータイム(tack free time)を測定する方法は、後述する実験例において具体的に記載する。
【0045】
本願の一実施態様において、上記水分硬化用触媒は、スズ系化合物及びチタネート系化合物のうちの1種以上を含むことができる。
【0046】
上記水分硬化用触媒として適用できるスズ系化合物は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジメトキシド、ジメチルスズジネオデカノエート、スズオクトエート、ジブチルスズオキシド、ジオルガノ-スズビスβ-ジケトネート及びジブチルスズビス-アセチルアセトナートのうちの1種以上を含むことができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0047】
上記水分硬化用触媒として適用できるチタネート系化合物は、テトラ-tert-ブチルオルトチタネート(tetra-tert-butyl orthotitanate)、テトラ-n-ブチルチタネート(tetra-n-butyl titanate)、テトラ-イソプロピルチタネート(tetra-isopropyl titanate)、テトラ-2-エチルヘキシルチタネート(tetra-2-ethylhexyl titanate), テトラtert-ブチルチタネート(tertra tert-butyl titanate)、ポリブチルチタネート(poly butyl titanate)、ブチル-チタネートダイマー(butyl-titanate dimer)、チタンアセチルアセトナート(titanium acetylacetonate)、チタンテトラ-アセチルアセトナート(titanium tetra-acetylacetonate)、エチルアセトナートチタネート(ethyl acetoacetate titanate)、チタンドデシルベンゼンスルホネート(titanium dodecylbenzene sulfonate)、チタンホスフェート複合体(titanium phosphate complex)、チタンオクチレングリコレート(titanium octyleneglycolate)、チタンラクテートアムモニウム塩(titanium lactate ammonium salt)、チタンラクテート(titanium lactate)、チタントリエタノールアミネート(titanium triethanolaminate)、テトラステアリルチタネート(tetra stearyl titanate)、チタンイソステアレート(titanium isostearate)及びチタンアミノエチルアミノエタノレート(titanium aminoethylaminoethanolate)のうちの1種以上を含むことができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0048】
本願の一実施態様において、上記水分硬化用触媒は、スズ系化合物を含み、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、上記スズ系化合物の含量は、0.05重量%~0.5重量%であってもよく、より好ましくは、0.07重量%~0.35重量%であってもよい。
【0049】
本願の一実施態様において、上記水分硬化用触媒は、チタネート系化合物を含み、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、上記チタネート系化合物の含量は、0.1重量%~5.0重量%であってもよい。
【0050】
上記のような水分硬化用触媒の含量範囲を満足する場合に、本願の一実施態様に係るシリコーン系組成物は、紫外線が照射されていない領域に対しても水分硬化方法で十分硬化させることができる。
【0051】
本願の一実施態様において、上記シリコーン系組成物は、スカベンジャー(scavenger)及び接着促進剤(adhesion promoter)のうちの1種以上を含む添加剤をさらに含むことができる。
【0052】
本願の一実施態様において、上記スカベンジャーは、欧州公開特許第0905195号に記載されたスカベンジャー(scavenger)が適用されることができる。より具体的に、上記スカベンジャーは、下記化学式4で表される3-(Trimethoxysilyl)-1-propanamine polymer with 1,1,1-trimethyl-N-(trimethylsilyl)silanamineであってもよいが、これにのみ限定されるものではない。
【化4】
【0053】
上記化学式4において、nは、1~20の実数である。
【0054】
本願の一実施態様において、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、上記スカベンジャーの含量は、0.1重量%~5重量%であってもよく、より好ましくは、0.7重量%~5重量%であってもよい。
【0055】
本願の一実施態様において、上記接着促進剤は、メトキシ、エトキシなどのような加水分解性(hydrolysable)作用基を少なくとも一つ含むシリコーン系化合物又はシラン系化合物を用いることができる。
【0056】
上記接着促進剤は、(アミノアルキル)トリアルコキシシラン、(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシラン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、トリス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、トリス(トリアルコキシシリルアルキル)シアヌレート、トリス(トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレート、(エポキシアルキル)トリアルコキシシラン及び(エポキシアルキルエーテル)トリアルコキシシランのうちの1種以上を含むことができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0057】
より具体的に、上記接着促進剤は、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、エポキシリモニルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、β-シアノエチルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、α、ω-ビス(アミノアルキルジエトキシシリル)ポリジメチルシロキサン(Pn=1-7)、α、ω-ビス(アミノアルキルジエトキシシリル)オクタメチルテトラシロキサン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、及びN-エチル-3-トリメトキシシリル-2-メチルプロパンアミン、3-(N,N-ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどを1種以上含むことができる。
【0058】
本願の一実施態様において、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、上記接着促進剤の含量は、0.1重量%~5重量%であってもよく、より好ましくは、0.7重量%~3重量%であってもよい。上記のような接着促進剤の含量範囲を満足する場合に、より優れた接着力が発現することができる。上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、 上記接着促進剤の含量が0.1重量%未満の場合には、接着力が発現し難く、5重量%を超過する場合には、シリコーン系組成物の粘度が低くなってレオロジー自体が変わり、接着力がそれ以上増加しないので、好ましくない。
【0059】
本願の一実施態様において、上記シリコーン系組成物は、ヒュームドシリカ(fumed silica)、その他添加剤などをさらに含むことができる。
【0060】
本願の一実施態様において、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、上記ヒュームドシリカの含量は、0~15重量%であってもよく、より好ましくは1重量%~10重量%であってもよい。このような含量範囲で上記ヒュームドシリカを含む場合に、シリコーン系組成物の粘度及びチキソ性の調節に効果的になる。しかしながら、上記ヒュームドシリカの含量が、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、15重量%を超過する場合には、粘度上昇が増加してディスペンシング吐出作業性が不利になり、適切な粘度とチキソ性が要求されるコーティング材などに適用しようとする場合には、不利になるおそれがある。また、上記ヒュームドシリカの含量が、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、1重量%以上の場合には、ディスペンシング吐出後コーティング面に広がってしまうようになる現象を防止することができるので、形状が維持されなければならないパッケージに有利になる。
【0061】
上記ヒュームドシリカは、シリカの外表面が疎水化処理された疎水性ヒュームドシリカを用いることがより好ましい。より具体的に、上記ヒュームドシリカは、ハイドロフォビックヒュームドシリカを用いることができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0062】
本願の一実施態様において、上記シリコーン系組成物は、上述した両末端がアクリレート基からなり、1個以上のアルコキシ基を含むポリオルガノシロキサン以外に、当技術分野に知られている第2ポリオルガノシロキサンをさらに含むことができる。上記第2ポリオルガノシロキサンは、一般的なシロキサン構造を有しながら、紫外線硬化性官能基と水分硬化性官能基とをいずれも含まなくてもよく、紫外線硬化性官能基及び水分硬化性官能基のうちのいずれか一つの官能基のみを含んでいてもよい。上記第2ポリオルガノシロキサンは、シリコーン系組成物の機械的物性を調節する役割を果たすことができる。
【0063】
上記第2ポリオルガノシロキサンは、両末端にビニル基を含むポリオルガノシロキサン;紫外線硬化性官能基と水分硬化性官能基とをいずれも含まず、M単位(MeSiO)、D単位(MeSiO)、T単位(MeSiO)、Q単位(SiO)などを含むMQ樹脂、MTQ樹脂、MDQ樹脂及びMDTQ樹脂の中から選択されるポリオルガノシロキサン;非反応性ポリオルガノシロキサン(M-Dn-M)などを用いることができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0064】
本願の一実施態様において、上記シリコーン系組成物の総重量を基準に、上記第2ポリオルガノシロキサンの含量は、0~45重量%であってもよく、より好ましくは0~40重量%であってもよい。上記のような第2ポリオルガノシロキサンの含量範囲を満足する場合に、接着力を適切に調節することができる。また、上記第2ポリオルガノシロキサンの含量が45重量%を超過する場合には、両末端がアクリレート基からなり、1個以上のアルコキシ基を含むポリオルガノシロキサン(紫外線硬化性官能基と水分硬化性官能基とを同時に含むポリオルガノシロキサン)の含量が相対的に少なくなる。これは紫外線硬化性官能基と水分硬化性官能基とを同時に含むポリオルガノシロキサンを適用しようとする本願の目的に合わなくなる。
【0065】
また、本願の一実施態様に係る硬化物は、上記シリコーン系組成物を硬化させて製造されることを特徴とする。より具体的に、本願の一実施態様に係る硬化物は、両末端がアクリレート基からなり、1個以上のアルコキシ基を含むポリオルガノシロキサン;1種以上のアクリル系単量体;1種以上の光開始剤;及び水分硬化用触媒を含むことができる。
【0066】
本願の一実施態様に係る硬化物は、上述したシリコーン系組成物を硬化させること以外には、当技術分野に知られている方法を用いて形成することができる。より具体的に、上記シリコーン系組成物を基板上に塗布、コーティング、印刷などの方法と硬化方法を用いて形成することができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0067】
また、本願の別の実施態様は, 上記硬化物を含む装置を提供する。
【0068】
本願の一実施態様に係る硬化物は、多様な対象をコーティングして保護する用途に適用されることができる。特に、上記硬化物は、外部成分、例えば、水分あるいは湿気に敏感な素子を含む対象の保護に効果的である。上記硬化物を含むコーティング材が適用され得る対象の例としては、光電池装置(photovoltaic device)、整流器(rectifier)、トランスミッター(transmitter)、有機発光素子(organic light emitting diode;OLED)、印刷回路基板用湿気保護剤、太陽電池、二次電池、自動車部品などが挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【実施例
【0069】
以下では、実施例を通じて本明細書をより詳細に説明する。ところが、以下の実施例は、本明細書を例示するためのものであるだけで、本明細書を限定するためのものではない。
【0070】
<実施例>
<製造例1> 化学式2で表されるポリオルガノシロキサンの製造
ビスシラノール末端ポリジメチルシロキサン(5,000cps)1,000g、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン30g、ジイソブチルアミン1.6g、ギ酸0.57gびブチルヒドロキシトルエン1.0gの混合物を80℃で窒素下に5時間撹拌し、さらに110℃で2時間撹拌した後、減圧して副産物を除去した。その後、これを冷却させて、上記化学式2で表されるポリオルガノシロキサンを製造した。製造されたポリオルガノシロキサンの粘度は、23℃を基準に、約6,000cpsであった。
【0071】
<製造例2> 化学式3で表されるポリオルガノシロキサンの製造
上記ビスシラノール末端ポリジメチルシロキサンの代りにビスシラノール末端ポリジメチルジフェニルシロキサンを用いたこと以外には、上記製造例1と同様に行って、上記化学式3で表されるポリオルガノシロキサンを製造した。製造されたポリオルガノシロキサンの粘度は、23℃を基準に、約13,000cpsであった。
【0072】
<製造例3> 化学式2で表されるポリオルガノシロキサンの製造
ビスシラノール末端ポリジメチルシロキサン(700cps)1,000g、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン60g、ジイソブチルアミン3.2g、ギ酸1.14g及びブチルヒドロキシトルエン1.0gの混合物を80℃で窒素下に5時間撹拌し、さらに110℃で2時間撹拌した後、減圧して副産物を除去した。その後、これを冷却させて、上記化学式2で表されるポリオルガノシロキサンを製造した。製造されたポリオルガノシロキサンの粘度は、23℃を基準に、約1,000cpsであった。
【0073】
<比較製造例1> 両末端がメタクリレート基からなるポリオルガノシロキサンの製造
上記アクリロキシプロピルトリメトキシシランの代りにメタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いたこと以外には、上記製造例1と同様に行って、両末端にメタクリレート基を含むポリオルガノシロキサンを製造した。製造されたポリオルガノシロキサンの粘度は、23℃を基準に、約15,000cpsであった。
【0074】
<比較製造例2>
アクリレート末端ポリジメチルシロキサン(Momentive Performance Materials Inc.から購入可能)を準備した。上記アクリレート末端ポリジメチルシロキサンの粘度は、23℃を基準に、約7,500cpsであった。
【0075】
<実施例1~36及び比較例1~9>
下記表1~10に記載されたアクリル系単量体及び光開始剤を混合した後、下記表1~10に記載された構成成分をさらに配合して、シリコーン系組成物を製造した。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
【表9】
【0085】
【表10】
【0086】
上記表1~表10において、構成成分の種類は、下記の通りである。
アクリル系単量B-1:Isobornyl acrylate
アクリル系単量体B-2:Lauryl Acrylate
アクリル系単量体B-3:1,6-Hexanediol Diacrylate
光開始剤C-1:Omnirad BDK (2,2-Dimethoxy-2-phenylacetophenone)
光開始剤C-2:Omnirad 1173 (2-Hydroxy-2-methyl-1-phenylpropanone)
光開始剤C-3:Omnirad TPO-L (Ethyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phenyl phosphinate)
光開始剤C-4:Omnirad 184 (1-Hydroxycyclohexyl-phenylketone)
光開始剤C-5:Omnirad 819 (bis(2,4,6-trimethylbenzoyl)phenylphosphine oxide
水分硬化用触媒D-1:Dibutyltin bis(acetylacetonate)
水分硬化用触媒D-2:tetra-n-butyl titanate
水分硬化用触媒D-3:tetra-tert-butyl orthotitanate
スカベンジャーE:3-(Trimethoxysilyl)-1-propanamine polymer with 1,1,1-trimethyl-N-(trimethylsilyl)silanamine
接着促進剤F-1:Tris[3-(trimethoxysilyl)propyl]isocyanurate
接着促進剤F-2:メチルトリメトキシシラン
接着促進剤F-3:ビニルトリメトキシシラン
ヒュームドシリカG:エボニックRX200
第2ポリオルガノシロキサンH-1:両末端と側鎖にビニル基を含むポリジメチルシロキサン(23℃を基準に、粘度は1,000,000cps)
第2ポリオルガノシロキサンH-2: 両末端にビニル基を含むポリジメチルシロキサン(23℃を基準に、粘度は100,000cps)
第2ポリオルガノシロキサンH-3:両末端にビニル基を含み、フェニル基の含量が10%であるポリジメチルシロキサン(23℃を基準に、粘度は1,000cps)
第2ポリオルガノシロキサンH-4:アルコキシ末端MQ構造のレジンと両末端にアルコキシ基を含む粘度200cpsのポリマーがそれぞれ50wt%で構成されたポリオルガノシロキサン
【0087】
<実験例>
上記製造された実施例及び比較例のシリコーン系組成物の特性を評価して、下記表11に示す。
【表11】

【0088】
上記表11において、評価結果が「X」であるのは、硬化がなされなくて特性の評価結果を測定できないか、測定範囲から外れたものであることを意味する。
【0089】
上記結果のように、本願のスズ系化合物を含む水分硬化用触媒の含量範囲から外れる場合(比較例1及び2)には、速いタックフリータイム(tack free time)を提供できないことを確認することができる。
【0090】
また、比較例3及び4の場合には、紫外線で照射して硬化したが、その後水分硬化が行われず、ゴムの性質ではないゲル水準に製造されたものである。これは、本願のチタネート系化合物を含む水分硬化用触媒の含量範囲から外れた結果によるものである。
【0091】
また、比較例5及び6の場合には、ポリオルガノシロキサンに水分硬化性作用基を含まないので、ゴム化にならずにゲル水準に硬化した。
【0092】
また、比較例7~9の場合には、ポリオルガノシロキサンの両末端が本願のようなアクリレート基ではないメタクリレート基からなることにより、60分超過のタックフリータイム(tack free time)を示し、このような場合には、本願で達成しよとする速やかな工程展開の目的を達成することができない。
【0093】
したがって、本願の一実施態様に係るシリコーン系組成物は、紫外線(UV)で速やかに硬化させることができ、紫外線が照射されていない領域に対しても水分硬化方法で十分硬化させることができるのを確認できる。
【0094】
また、本願の一実施態様に係るシリコーン系組成物は、両末端がアクリレート基からなり、1個以上のアルコキシ基を含むポリオルガノシロキサン;及び1種以上のアクリル系単量体を同時に含むことにより、シリコーンゴムの特性を有することができ、接着力を多様に調節することができ、水分硬化だけで表面に速いタックフリータイム(tack free time)を提供することができる。
【0095】
上記表11において、特性の種類及び測定方法は下記の通りである。
【0096】
<特性(1):表面タックフリータイム(surface tack free time(min))>
横50mm、縦50mm、深さ2mmに試料を溢れるように吐出した後、へらで上面をならして深さを合わせた。すぐタイマーをセットし、5分毎に指で触って、試料がつかない時間を計った。条件は、25℃、50RH%の状態で行った。
【0097】
<特性(2):粘度(viscosity, Pa.s)>
Anton-PaarのレオメーターのスピンドルPP-25で、gap=0.5mmにセットした後、23℃の条件で20rpmで測定した。
【0098】
<特性(3):チキソトロピー(Thixotropy)>
レオメーターで10rpmの測定値と20rpmの測定値との比で求めた。
【0099】
<特性(4):UV硬化深さ(mm)>
横20mm、縦20mm、深さ10mmに試料をあふれるように吐出した後、へらで上面をならして深さを合わせた。LED365nmのUVランプを使用して、5,000mJ/cmで露出してUV硬化させた。
UV照射後、スペーサを解体し、未硬化の下部部位を拭き取った後、25℃、50RH%で3日間保持させた。マイクロメーターで測定して、硬化物の厚さを求めた。
【0100】
<特性(5):引張力(MPa)>
厚さ2mmの状態に硬化した試験片を準備した。このとき、上記試験片は、UV5,000mJ/cmの硬化条件で硬化させ、25℃、50RH%の状態で3日間保持させた。
試験片をドッグボーン(dog-bone)にカットした後、これをInstron試験機にかけて引張力を測定した。
【0101】
<特性(6):伸び(%)>
厚さ2mmの状態に硬化した試験片を準備した。このとき、上記試験片は、UV5,000mJ/cmの硬化条件で硬化させ、25℃、50RH%の状態で3日間保持させた。
試験片をドッグボーン(dog-bone)にカットした後、これをInstron試験機にかけて伸びを測定した。
【0102】
<特性(7):接着力(MPa)>
Lap shear測定法で接着力を測定し、このとき、材質はFR4, glassとした。試料の厚さは1Tになるようにした。このとき、上記試験片は、UV5,000mJ/cmの硬化条件で硬化させ、25℃、50RH%の状態で3日間保持させた。
【0103】
<特性(8):硬さ(Shore A)>
厚さ2mmの状態に硬化した試験片を準備した。このとき、上記試験片は、UV5,000mJ/cmの硬化条件で硬化させ、25℃、50RH%の状態で3日間保持させた。2mmの試験片3枚を重ねて計6mmに作った後、デュロメーターショアA(Durometer shore A)で硬さを測定した。