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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/08 20060101AFI20231225BHJP
   B64D 37/04 20060101ALI20231225BHJP
   B64D 45/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A62C3/08
B64D37/04
B64D45/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022540888
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 GB2020053158
(87)【国際公開番号】W WO2021136922
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】20275001.4
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】2000055.0
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】390038014
【氏名又は名称】ビ-エイイ- システムズ パブリック リミテッド カンパニ-
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS plc
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】アール、シメオン・ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ギャラガー、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ、クリストファー・チャールズ・ローリナオン
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01413514(EP,A1)
【文献】特開平07-257493(JP,A)
【文献】特開平02-249563(JP,A)
【文献】特開昭53-125394(JP,A)
【文献】特公昭53-024642(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0273239(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0297714(US,A1)
【文献】米国特許第04013190(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第02256067(EP,A1)
【文献】英国特許出願公告第01341693(GB,A)
【文献】英国特許出願公告第01453836(GB,A)
【文献】英国特許出願公告第01380420(GB,A)
【文献】英国特許出願公告第00531610(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/08
B64D 37/04
B64D 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクシステムであって、
燃料タンクと、
前記燃料タンク内の火炎前面の伝播を妨げるための前記燃料タンク内の格子であって、流体が通過することを可能にする複数の開口を規定する格子とを備え、ここにおいて、前記格子は、前記燃料タンク内のジョイントに隣接して構成され、前記格子は、前記燃料タンク内の前記ジョイントに隣接する領域ではより細かく、前記ジョイントから離れた領域ではより粗い、燃料タンクシステム。
【請求項2】
前記格子は、約50%から95%の気孔率を有する、請求項1に記載の燃料タンクシステム。
【請求項3】
格子は規則的である、請求項1又は2に記載の燃料タンクシステム。
【請求項4】
格子は不規則である、請求項1または2に記載の燃料タンクシステム。
【請求項5】
前記格子によって規定される前記開口は、約3mm×3mm×3mmから約20mm×20mm×20mmである、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
【請求項6】
前記格子は3D印刷されている、請求項1からのいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
【請求項7】
前記格子は、
ナイロン、
PEEK、
PET/PETG、
ポリカーボネート、
ポリプロピレン、
PLA、
ABS、
ASA、
焼結プラスチック、および/または
焼結金属、のうちの1つ以上を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
【請求項8】
前記格子は、静電荷を消散させるために導電性物質でコーティングされている、請求項1からのいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
【請求項9】
前記格子は、前記燃料タンクの外板に接着される、請求項1からのいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
【請求項10】
前記格子は、前記燃料タンクに構造的支持を提供するように構成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
【請求項11】
前記格子は、前記燃料タンクの2つの側面の間にわたるように構成されている、請求項10に記載の燃料タンクシステム。
【請求項12】
前記格子は、前記燃料タンクの全体にわたるように構成されている、請求項10又は11に記載の燃料タンクシステム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の燃料タンクシステムを備える航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改善された火炎防止を有する燃料タンクシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アーク放電及びスパークは航空機において危険な問題である。燃料及び燃料蒸気を貯蔵する燃料タンク内でアーク放電又はスパークが発生するかもしれず、これは、スパーク、溶融材料及び/又は高温ガスが燃料タンク内に放出される危険があり、その結果、可燃性燃料が点火する危険がある。
【0003】
点火源の発生を防止することは極めて困難であることがある。この理由の1つは、点火スパークが発生するかもしれない多数の起こりえる理由があることである。
【0004】
これらの点火源は、航空機への落雷の間に生じるかもしれない。
【0005】
燃料タンク内に火炎前面が形成される可能性を低減する従来の方法は、燃料タンク内に発泡体を含めることである。燃料は発泡体を通って流れることができ、発泡体は火炎前面からエネルギーを吸収して、火炎が伝播及び発達するのを防止することができる。しかしながら、発泡体の存在は、燃料のために利用可能な容積を著しく減少させる。さらに、発泡体は、燃料タンクのための構造的支持を提供しない。
【0006】
代替的に又は追加的に、従来の燃料タンクは、リブ又はスパーを使用して、燃料タンクの構造的支持を提供することができる。これらは重く、燃料タンク内の容積を占める可能性があり、その結果、燃料タンク内の燃料の容積が減少する。
【0007】
この問題に対する解決策を提供するためにかなりの努力がなされてきたが、これまでのところ、技術的効率性、信頼性、製造の容易さ及び安価さの点で完全に満足できるものは提供されていない。
【発明の概要】
【0008】
本開示の第1の態様によれば、燃料タンクと、燃料タンク内の火炎前面の伝播を妨げるための燃料タンク内の格子又は3次元メッシュ構造、以下、格子と呼ぶ、であって、流体が通過することを可能にする複数の開口を規定する格子と、を備える燃料タンクシステムが提供される。
【0009】
燃料タンク内への格子の提供は、燃料タンク内で多くの容積を占める発泡体を設ける必要なく、火炎前面の伝播を防止又は低減する機構を提供する。したがって、燃料タンクは、より多くの燃料を保持することができる一方で、高い安全係数も有する。
【0010】
格子はまた、燃料タンクのための構造的支持を提供することができ、したがって、容積を占めるであろう燃料タンク内の内部構造の要件を除去する。格子はまた、燃料タンク内での燃料のスロッシングを低減することができる。
【0011】
一例では、格子は、約50%から95%の気孔率を有する。約50%から95%の気孔率を提供することにより、従来の材料と比較してより多くの燃料又は流体が格子を通過することが可能になる。そのため、燃料タンク内の燃料/燃料蒸気のインピーダンスが小さくなる。
【0012】
一例では、格子は規則的である。これは、格子の製造の容易さを改善する。
【0013】
別の例では、格子は不規則である。不規則な格子を設けることにより、燃料タンク内の耐荷重性が増大した形状を可能にすることができる。さらに、不規則な形状を提供することは、より多くの燃料が燃料タンク内に提供されることを可能にする。
【0014】
一例では、格子によって規定される開口は、約3mm×3mm×3mmから約20mm×20mm×20mmである。
【0015】
このサイズの開口は、火炎の伝播を制限するために設けられる。
【0016】
一例では、格子は燃料タンク内のジョイントに隣接して構成される。点火源は燃料タンク内のジョイントで発生する可能性が最も高いので、これらのエリアに隣接して格子を設けることがより効果的である。
【0017】
一例では、格子は、燃料タンク内のジョイントに隣接する領域においてより細かく、ジョイントからさらに離れた領域においてより粗い。上述したように、点火源は燃料タンク内のジョイントで発生する可能性が最も高いので、ジョイントからさらに離れて格子を粗くすることは、燃料タンク内により多くの燃料を保持することができることを意味する。換言すれば、局所的な難燃性が提供される。
【0018】
一例では、格子は3D印刷される。
【0019】
一例では、格子は、ナイロン、焼結プラスチック、又は焼結金属を含む。格子は、ナイロン、PEEK、PET/PETG、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PLA、ABS、ASA、焼結プラスチック、及び/又は焼結金属のうちの1つ以上を含む。
【0020】
格子は、静電荷を消散させるために導電性物質でコーティングされてもよい。
【0021】
一例では、格子は燃料タンクの外板に接着される。これは、格子の製造を容易にする。
【0022】
一例では、格子は、燃料タンクに構造的支持を提供するように構成される。
【0023】
格子は、燃料タンクの2つの側面の間にわたるように構成されてもよい。
【0024】
格子は、燃料タンクの全体にわたるように構成されてもよい。
【0025】
一態様によれば、先行する請求項のいずれか一項に記載の燃料タンクシステムを備える航空機が提供される。
【0026】
一例では、燃料タンクと、燃料タンク内の火炎前面の伝播を妨げるための燃料タンク内の格子又は3次元メッシュ構造、以下、格子と呼ぶ、であって、使用する際に流体が通過することを可能にする複数の開口を規定する格子と、を備える燃料タンクシステムが提供される。
【0027】
流体は、燃料又は燃料蒸気を含んでもよい。
【0028】
本開示の1つの態様に関連して説明する特徴は、本開示の他の態様に組み込んでよいことを認識すべきである。例えば、本開示の装置は、方法を参照して本開示で説明される特徴のいずれかを組み込むことができ、逆もまた同様である。さらに、さらなる特徴、及び態様が、以下の説明、図面、及び請求項から明らかになるであろう。前述及び以下の説明から理解できるように、本明細書に記載されるありとあらゆる特徴、及びそのような特徴の2つ以上のありとあらゆる組み合わせ、及び範囲を定義する1つ以上の値のありとあらゆる組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が相互に矛盾しないという条件で、本開示内に含まれる。加えて、任意の特徴もしくは特徴の組み合わせ、又は範囲を定義する任意の値は、本開示の任意の実施形態から具体的に除外されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付の図面を参照して、単なる例として、本発明の実施形態を説明する。
図1図1は燃料タンクを含む航空機の実例的な例である。
図2図2は、可能な点火源を示す燃料タンクの一部の実例的な例である。
図3A図3Aは、燃料タンク及び格子を含む燃料タンクシステムの例を示す。
図3B図3Bは、格子の例をより詳細に示す。
図4図4は、燃料タンク及び格子を含む燃料システムの別の例を示す。
図5A図5Aは、燃料タンク及び格子を含む燃料システムの別の例を示す。
図5B図5Bは、格子の例をより詳細に示す。
図6図6は、燃料タンク及び格子を含む燃料システムの別の例を示す。
図7図7は、燃料タンク及び格子を含む燃料システムの別の例を示す。
【0030】
便宜上及び経済性のために、同じ参照番号が、同一又は類似の要素にラベル付けするために異なる図において使用される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
一般に、本明細書の実施形態は、火炎前面が燃料タンク内で伝播するのを抑制するための燃料タンクシステムに関する。
【0032】
図1は、燃料タンク102を備える航空機100の実例的な例を示す。ここでは航空機100が示されているが、本発明は、自動車、船舶、宇宙船、飛行船及び列車など、燃料タンク102を使用する他のタイプのデバイスにも適用可能であることが容易に理解されよう。
【0033】
航空機100は、胴体104に結合された翼部材106を含む。航空機100の空気力学的バランスをとるために、水平尾翼108及び垂直尾翼(又は垂直安定板)110が胴体104の後部に結合されてもよい。航空機100は、1つ以上のエンジン(図示せず)を含み、1つ以上のプロペラを含んでもよい。
【0034】
航空機100は、炭素繊維積層外板構造からなってもよい。換言すれば、外板は航空機の本体を形成する。他の実施形態では、本体は、チタン、チタン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金などの軽金属から実質的に作られる。
【0035】
図2は、燃料タンク102の一部の例を示す。この例では、燃料タンク102は、燃料タンク102の限界又は境界として機能し、燃料又は燃料蒸気/空気混合物を空気から分離する外板112を備える。燃料タンク102は、燃料タンク102の外板112を支持する内部構造114を備えてもよい。燃料タンク102は、ジョイント130で内部構造114に結合されてもよい。換言すれば、ジョイント130は、燃料タンク102の外板112と燃料タンク102内の内部構造114との間の結合位置である。内部構造114は、外板112に当接して外板112に構造的支持を提供し、燃料タンク102を正しい形状に保つように作用する、壁又は柱などの支持部材を備えてもよい。
【0036】
内部構造114は、ボルトなどの固定具116を、場合によっては、ナット及びワッシャ118の構成を介して外板112に結合されてもよい。だぼ又はねじのような他の固定具116を使用してもよい。
【0037】
いくつかの例では、外板112は、炭素又は炭素繊維複合材を含む。一例では、内部構造114は、アルミニウム又はチタンから形成されてもよい。
【0038】
図2には、多数の可能な点火源が示されている。1つの可能な点火源はアーク120である。電気アーク120又はアーク放電は、長期の放電を生成するガスの電気的絶縁破壊である。電流は、空気などの通常は非導電性の媒体を通して形成され、プラズマを生成し、プラズマは可視光を生成することができる。非常に高い電流レベルが比較的小さな空間を通過し、その結果、非常に高い温度が短時間で発生する。非常に高い温度は、燃料タンク102内の燃料蒸気に点火する可能性があり、その後、火炎前面を発達させる可能性がある。
【0039】
アーク120は、例えば、製造欠陥に起因して、燃料タンク102内の様々な構成要素間に形成されるかもしれない。
【0040】
燃料タンク102内で火炎前面が発生する別の考えられる原因は、熱スパーク122である。これは、燃料タンク102内の接合部付近に金属などの燃焼材料の小片が生成されるときに生じる。燃焼材料は、プラズマ及び腐食した材料が燃料タンク内に漏出する、ボルトと構造との間のアークに起因して、又は局所的な幾何学的形状による高磁場に起因して、生成されるかもしれない。
【0041】
高温ガスプルーム124は、燃料タンク102内の火炎前面の別の原因であり得る。高温ガスプルームは、例えばボルトと構造との間のアークに起因して熱源から放出されるガスによって発生し、プラズマ及び腐食した材料が燃料タンク内に逃げる。高温ガスは、熱膨張に起因して膨張し、燃料タンク102のより低温の領域に放出されてもよく、又はガスが高圧下にあることによって膨張し、それによって燃料蒸気を点火してもよい。
【0042】
エッジグロー126は別の可能な点火源であるかもしれない。エッジグロー126は、材料内の局所領域を高温に加熱させる材料の製造欠陥に起因するかもしれない。
【0043】
燃料タンク102の外板112にホットスポット128が発生するかもしれない。ホットスポット128は、航空機100への落雷などに起因するかもしれず、航空機100内に局所的な加熱を生じさせるかもしれない。
【0044】
上記の例は、燃料タンク102内の燃料蒸気又は燃料の点火源の単なる例であり、他の点火源が燃料蒸気又は燃料を点火させるかもしれない。
【0045】
燃料タンク102内の燃料蒸気は、点火源が与えられた場合に燃料の蒸気が点火する閾値温度である引火点を有する。燃料蒸気はまた、点火源が除去された後に材料の蒸気が燃焼し続ける最低温度である燃焼点を有する。引火点では、燃焼を維持するのに十分なほど迅速により多くの蒸気が生成されないかもしれないので、燃焼点は引火点よりも高い。
【0046】
燃料蒸気が上述の点火源のいずれかにさらされる場合、燃料蒸気は、温度が引火点及び燃焼点を超えるかもしれないので、燃焼するかもしれない。燃焼時には、燃料タンク102内に火炎前面が発生する。
【0047】
図3Aは、燃料タンク102と、燃料タンク102内の格子132とを含む燃料タンクシステム150の例を示す。格子132は、燃料タンク102内の火炎前面の伝播を妨げるためのものである。
【0048】
一例では、格子132は、燃料タンク102の内部容積の実質的に全体にわたって配置される。他の例では、格子132は、燃料タンク102内のジョイント130に隣接する領域にのみ配置される。なぜなら、この領域は、点火源が発生する可能性が最も高い領域だからである。
【0049】
図3Bは、格子132の例を詳細に示す。格子は、複数の開口136又は空隙を規定する接続要素134を備えるメッシュ状構造の形をしている。複数の開口136は、燃料又は燃料蒸気などの流体が通過することを可能にする。格子132は、接続要素134のフレームワークであるとみなすことができる。
【0050】
格子132の存在は、燃料蒸気中に生じるかもしれない火炎前面の伝播を抑制する。格子132は、火炎前面からエネルギーを吸収することによって火炎前面の伝播を抑制し、それによって火炎前面の温度を低下させる。換言すれば、格子132は、火炎前面の温度を燃料蒸気の燃焼点より低く低下させる。吸収されたエネルギーは、火炎前面の位置から離れて格子132を通して分配されることができる。格子132は、大きな表面積を有するので、火炎前面から高レベルのエネルギーを吸収するのに適している。さらに、発泡体とは異なり、格子132は経時的に劣化又は変形しない。
【0051】
格子132の存在は、燃料タンクシステム150の効率を改善する。また、燃料タンクシステム150の軽量化を図ることができる。
【0052】
接続要素134は、約3mmから20mm、より好ましくは4mmから10mm、より好ましくは5mmの長さを有してもよい。さらに、接続要素134は、約0.5mmから1.5mm、より好ましくは1mmの幅又は直径を有してもよい。一例において、接続要素134は、接続要素134の長さの20%未満の幅又は直径を有してもよい。
【0053】
図3A及び図3Bに示す例では、格子132は、直交構成又は接続要素134を備える。すなわち、接続要素134は、平行及び垂直構成で構成される。しかしながら、後述するように、他の構成も可能である。
【0054】
この例では、接続要素134は、格子132又は3Dグリッドを形成する。複数の空隙はそれぞれ、約3mmから20mm、より好ましくは4mmから10mm、より好ましくは5mmの幅、高さ、及び深さを有する。複数の開口のこれらのサイズは、火炎前面から十分な熱が吸収されることを可能にしながら、燃料が通過するのに十分なサイズの空隙を燃料タンク102内に提供する。
【0055】
物体の気孔率は、以下の式によって定義される:
(空隙の容積/全容積)×100。
【0056】
図3Bに示される構成の例、及び接続部材134が1mmの幅を有し、複数の開口が5mmの幅を有する例では、格子内の1つの矩形ブロックの総容積は、6mm×6mm×6mm=216mmになる。
【0057】
格子132の1ブロック内の接続部材134の総容積は、(1×1×6)+(1×1×5)+(1×1×5)=16mmである。
【0058】
したがって、この例では、空隙の総容積は、216mm-16mm=200mmである。
【0059】
したがって、この例の格子132の気孔率は、(200/216)×100=93%である。
【0060】
一例では、格子132は、約50%から95%の気孔率を有する。別の例では、格子は少なくとも70%の気孔率を有する。一例では、格子132は、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の気孔率を有する。一例では、格子132の気孔率は約95%である。
【0061】
50%を超える気孔率を有する格子132を提供することは、特に発泡体を利用する従来の燃料タンクと比較したときに、燃料又は燃料蒸気が著しく妨げられることなく燃料タンク102を通って流れることができることを意味する。したがって、燃料タンク102は、火炎前面が伝播するのを阻止する安全な方法で、より多くの燃料を貯蔵することができる。格子132は、燃料タンク102の全容積のうちの少量しか占めないので、燃料タンク102の容積の大部分は、燃料を貯蔵するために使用することができる。
【0062】
格子132は、規則的な繰り返しパターン、すなわち図3Bに示すようなパターンを有してもよい。一例では、格子132は、接続部材134が立方体又は準立方体形状に構成されるように構成される。格子132は、連続反復構造を有してもよい。
【0063】
図4は、燃料タンク102と格子132とを含む燃料タンクシステム150の代替例を示す。この例では、格子132は、ジョイント130の領域においてより細かいメッシュを含み、ジョイント130からさらに離れた領域において比較的粗いメッシュを含む。すなわち、複数の空隙のサイズは、ジョイント130に比較的により近いほどより小さく、ジョイント130からさらに遠い距離では比較的より大きい。
【0064】
これは、ジョイントの付近ではジョイントからさらに離れた領域に比べて火炎前面が生じやすいためである。したがって、ジョイント130からさらに離れて比較的より粗い格子132を作製することは、より多くの燃料又は燃料蒸気が燃料タンク102内に配置されることを可能にする。
【0065】
図4に示される格子132の代替として、格子132は、格子132がジョイント130からさらに離れて移動すると、徐々に粗くなってもよい。換言すれば、格子は不規則であってもよく、複数の開口136のサイズは、ジョイント130から離れる距離とともに着実に増加する。したがって、ジョイント130からさらに離れた燃料のためのより多くの利用可能な容積が存在する。
【0066】
一例(図示せず)において、格子132は、実質的にトラス形状であってもよく、すなわち、矩形及び/又は三角形の開口136を形成する複数の接続部材134から形成されてもよい。一例では、複数の接続部材134は複数の四面体を形成する。
【0067】
一例では、格子132は、燃料蒸気が位置してもよい燃料タンク102の領域に位置する。
【0068】
格子132の存在は、火災/故障を防止するための追加の安全機構を航空機100内に追加する。したがって、本開示による燃料タンクシステム150は、民間認証のための冗長性を提供する。
【0069】
図5Aは、格子132の代替構成を備える燃料タンクシステム150を示す。この例では、格子132は、反復する不規則な形状を有する。例えば、接続部材134は、実質的に正弦波形状を有してもよい。代替格子132の例が、図5Bに示される。
【0070】
図4に示される例と同様に、この格子132は、ジョイント130により近いほど比較的細かく、ジョイント130からさらに遠いほど比較的粗くてもよい。すなわち、開口136のサイズは、ジョイント130の位置からさらに増加してもよい。
【0071】
不規則な形態をとる格子132は、火炎前面からエネルギーを吸収するので、燃料タンク102内の火炎前面の伝播を妨げる。換言すれば、火炎前面が生じると、熱エネルギーが燃料蒸気から格子132に移動し、それによって燃料蒸気の温度を低下させる。燃料蒸気の温度を低下させることは、火炎前面が伝播しにくくなり、それによって燃料タンクシステム150の安全性が高まることを意味する。
【0072】
一例では、格子132は、3D印刷されてもよい。3D印刷は、格子132の正確な正しい形状が作成されることを可能にする。上記で開示されたように、格子132は、ジョイント130からより遠い開口と比較して、ジョイント130により近いより小さい開口136を有してもよい。3D印刷は、必要とされる複雑な形状を作成するための便利な方法を提供する。
【0073】
一例では、格子は、ナイロン、PEEK、PET/PETG、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PLA、ABS、ASA、焼結プラスチック、及び/又は焼結金属のうちの1つ以上を含む。ポリマーベース材料は、充填されなくてもよく、又は炭素もしくは金属を充填してもよい。他の例では、格子132は、3D印刷で使用される他の材料から形成されてもよい。
【0074】
この材料は、火炎前面から熱を吸収することもでき、それによって火炎前面の伝播を妨げる一方で、3D印刷における使用に特に適している。
【0075】
一例では、格子132の接続部材134はコーティングを有してもよい。コーティングの目的は、格子132をわずかに導電性にすることである。わずかに導電性であるコーティングを提供することは、格子の表面上の静電帯電のリスクを低減する。わずかに導電性のコーティングは、この静電荷を消散させることができる。
【0076】
図6は、格子が接着剤138を介して外板112に結合されている燃料タンクシステムの一例を示す。接着剤138はまた、格子132を燃料タンク102の内部構造114に接着するために使用されてもよい。接着剤138は、格子132が燃料タンク102に対して固定され、燃料タンク102内の所望の位置に保持されるようにする。この例では、接着剤138を使用して内部構造114を燃料タンク102の外板112に結合することもできるので、固定具116ならびにナット及びワッシャ118の構成は除去されている。しかしながら、他の例では、接着剤138は、固定具116、ナット及びワッシャ118の構成などの追加の固定具構成に加えて使用されてもよい。
【0077】
燃料タンクシステム150を通る火炎伝播の可能性を低減することに加えて、格子132は、燃料タンク102に対する構造的支持体として機能することができる。
【0078】
図7は、内部構造114の一部が除去された例を示す。この例では、格子132は、内部構造114の代わりに燃料タンク102を支持するための構造荷重を受ける。この例では、格子132は、燃料タンク102の2つの側面の間にわたり、燃料タンクの2つの側面と結合されてもよい。換言すれば、格子132は、構造梁のように作用し、圧縮/引張力及び曲げモーメントを受けてもよい。別の例では、格子132は、構造上の柱又は壁に類似して、燃料タンクの全体にわたって延在し、燃料タンク102の上部から燃料タンク102の底部まで荷重を伝達することができる。この例における格子132は、接着剤138を介して燃料タンク102の外板112に結合されてもよい。
【0079】
格子132が構造荷重を支持することができるので、燃料タンク102内の内部構造114は、低減されることができるか、又は完全に除去されることができる。したがって、燃料タンク102内の使用可能な容積は、格子132の存在により増加する。
【0080】
内部構造114が取り外されている図7に示される例は、燃料タンクが使用中に損傷を受けるかもしれないシナリオにおいて特に有用である。格子132は、燃料タンクにわたってより均一な支持を提供し、燃料タンク102が変形した場合であっても、航空機100が動作し続けることを可能にすることができる。格子132は、燃料タンク102が比較的大きな内部容積を有する一方で、依然として高い構造強度を有することを効果的に可能にする。さらに、格子132は、ナット及びワッシャ構成118など、燃料タンク102内の他の要素を取り囲むように成形することができる。
【0081】
前述の説明において、既知であり、明らかであり、又は、予測可能である均等物である、整数又は要素が言及されており、そして、このような均等物はここで、個別に言及しているかのように組み込まれている。本発明の真の範囲を決定するために、特許請求の範囲への参照がなされるべきであり、これは任意のこのような均等物を含むように解釈されるべきである。任意選択として説明されている本発明の整数又は特徴は、独立請求項の範囲を限定するものではないと読者によって認識されるべきだろう。さらに、このような任意選択的な整数又は特徴は、本発明のいくつかの実施形態においては可能性ある利益である一方で、他の実施形態においては、望ましくなく、したがって存在しないかもしれないことを理解すべきである。
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
燃料タンクシステムであって、
燃料タンクと、
前記燃料タンク内の火炎前面の伝播を妨げるための前記燃料タンク内の格子であって、流体が通過することを可能にする複数の開口を規定する格子とを備える、燃料タンクシステム。
[C2]
前記格子は、約50%から95%の気孔率を有する、C1に記載の燃料タンクシステム。
[C3]
格子は規則的である、C1又は2に記載の燃料タンクシステム。
[C4]
格子は不規則である、C1または2に記載の燃料タンクシステム。
[C5]
前記格子によって規定される前記開口は、約3mm×3mm×3mmから約20mm×20mm×20mmである、C1から4のいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
[C6]
前記格子は、前記燃料タンク内のジョイントに隣接して構成されている、C1から5のいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
[C7]
前記格子は、前記燃料タンク内の前記ジョイントに隣接する領域ではより細かく、前記ジョイントから離れた領域ではより粗い、C6に記載の燃料タンクシステム。
[C8]
前記格子は3D印刷されている、C1から7のいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
[C9]
前記格子は、
ナイロン、
PEEK、
PET/PETG、
ポリカーボネート、
ポリプロピレン、
PLA、
ABS、
ASA、
焼結プラスチック、および/または
焼結金属、のうちの1つ以上を含む、C1から8のいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
[C10]
前記格子は、静電荷を消散させるために導電性物質でコーティングされている、C1から9のいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
[C11]
前記格子は、前記燃料タンクの外板に接着される、C1から10のいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
[C12]
前記格子は、前記燃料タンクに構造的支持を提供するように構成されている、C1から11のいずれか一項に記載の燃料タンクシステム。
[C13]
前記格子は、前記燃料タンクの2つの側面の間にわたるように構成されている、C12に記載の燃料タンクシステム。
[C14]
前記格子は、前記燃料タンクの全体にわたるように構成されている、C12又は13に記載の燃料タンクシステム。
[C15]
C1から14のいずれか一項に記載の燃料タンクシステムを備える航空機。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7