(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】補助モジュール付きプラント
(51)【国際特許分類】
F01K 3/18 20060101AFI20231225BHJP
F22B 1/00 20060101ALI20231225BHJP
F22B 3/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
F01K3/18
F22B1/00
F22B3/00
(21)【出願番号】P 2022546060
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2020087930
(87)【国際公開番号】W WO2021151605
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】102020201029.3
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】スエルケン,ノルベルト
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-320921(JP,A)
【文献】特開昭52-149538(JP,A)
【文献】特表2007-503544(JP,A)
【文献】特開2003-106108(JP,A)
【文献】米国特許第04074708(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 3/18
F01K 25/00
F22B 1/00
F22B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービン(2、6)、蒸気発生器(1)、さらには復水器(8)を備えたプラント(20)であって、
前記蒸気発生器(1)が前記蒸気タービン(2、6)の入口に流体接続され、前記蒸気タービン(2、6)の出口が前記復水器(8)に接続され、前記復水器(8)が前記蒸気発生器(1)に接続され、
前記蒸気タービン(2、6)が、高圧タービン部(2)と中圧タービン
部(6)とを備え、
前記高圧タービン部(2)の出口が、低温中間過熱器管路“kZUe”(3)を介して中間過熱器(4)に流体接続され、前記中圧タービン
部(6)の入口が、高温中間過熱器管路“hZUe”(5)を介して前記中間過熱器(4)に流体接続され、
さらにブースタ(12)を備え、前記ブースタ(12)が前記蒸気タービン(2、6)に通じる蒸気管路(5)に配置されるとともに、爆鳴気反応が前記ブースタ(12)内で起こるようにされ、爆鳴気反応後に生じた反応生成物が前記蒸気タービン(2、6)に供給され、
前記ブースタ(12)が前記ブースタ(12)を予熱するための装置を含み、
前記予熱が蒸気によって行われ、
前記予熱の蒸気が、前記低温中間過熱器管路“kZUe”(3)または前記高温中間過熱器管路“hZUe”(5)から取り出され、
前記ブースタ(12)が前記高圧タービン部(2)の出口に流体接続され、
前記ブースタ(12)において、前記中間過熱器(4)からの蒸気と前記高圧タービン部(2)からの蒸気との混合物が調整される、
プラント(20)。
【請求項2】
前記ブースタ(12)において前記蒸気タービン(2,6)を流れる蒸気の温度が高められる、請求項1に記載のプラント(20)。
【請求項3】
前記ブースタ(12)において前記蒸気タービン(2,6)に流入する蒸気の状態が高められる、請求項1または2に記載のプラント(20)。
【請求項4】
前記復水器(8)内で蒸気が水に復水され、
前記水が電解槽(13)に供給され、
前記電解槽(13)は前記水を水素と酸素とに分離するように形成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のプラント(20)。
【請求項5】
前記水素および前記酸素が前記ブースタ(12)に供給される、請求項4に記載のプラント(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン、蒸気発生器、さらには復水器を備え、蒸気発生器は蒸気タービンの入口に流体接続され、蒸気タービンの出口は復水器に接続され、復水器は蒸気発生器に接続されるようにしたプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蒸気発電プラントでは、新たな蒸気が従来の方法で蒸気発生器内で生成され、蒸気タービンに導かれるが、この蒸気タービンは通常は高圧タービン部、中圧タービン部、および低圧タービン部を有する。生蒸気は高圧タービン部に流入し、次いで蒸気発生器に流入し、そこで蒸気が再加熱される。次いで蒸気は、いわゆる高温中間過熱器管路を介して中圧タービン部に流入する。中圧タービン部の後、蒸気は低圧タービン部に流れ、次いで復水器に流れ、そこで蒸気は水に戻される。次に水は蒸気発生器に流れる。このようにして1つのサイクルが閉じられる。
【0003】
中間過熱器からの蒸気で貫流されるタービン部は、中圧タービン部と呼ばれる。
【0004】
蒸気発生器からの生蒸気で貫流されるタービン部は高圧タービン部と呼ばれるが、この場合生蒸気とは、プラント内で最高の温度及び圧力を有し流れに関して中圧タービン部の上流にある蒸気である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記のサイクルを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載のプラントによって解決される。
【0007】
本発明は、水蒸気サイクルにおける蒸気中のエネルギーを増加させる観点から出発する。これは本発明によれば、プラント内にブースタを配置することによって達成される。ブースタは、水素と酸素とをコントロール下に爆鳴気反応で互いに反応させ、これにより蒸気の形の水を生成するように形成されている。次いでこの蒸気は、蒸気タービンに供給される。プラントの全体的な効率はこれにより増加する。
【0008】
有利な発展形態は従属請求項に記載されている。
【0009】
第1の有利な発展形態では、蒸気タービンに流入する蒸気の温度はブースタによって高められる。
【0010】
さらなる有利な発展形態では、蒸気タービンに流入する蒸気の熱力学的状態が高められる。
【0011】
さらなる有利な展開においては、ブースタは予熱される。
【0012】
ブースタは、予熱されていればより良好に動作することができることが判明している。
【0013】
さらなる有利な展開では、ブースタは蒸気で予熱される。
【0014】
さらなる有利な発展形態では、ブースタはプラント、特に蒸気発生器からの蒸気で予熱される。
【0015】
さらなる有利な展開において、復水器内で復水された水の一部は電解槽に供給され、電解槽は水を水素と酸素とに分離するように形成される。
【0016】
電解槽で生成された水素および酸素がブースタに供給されると有利である。
【0017】
さらなる有利な発展形態では、蒸気タービンは高圧タービン部と、中圧タービン部と、低圧タービン部とを備え、ブースタは中圧タービン部の前に配置される。
【0018】
さらなる有利な発展形態では、ブースタは高圧タービン部の出口に流体接続され、中間過熱器および高圧タービン部からの蒸気の混合物がブースタ内に配置される。
【0019】
以下では、本発明をより良く理解するために、様々な図を用いて好ましい実施例に基づいて説明する。
【0020】
上述の本発明の特性、特徴、および利点、ならびにそれらが達成される態様は、図面に関連してより詳細に説明される実施例の以下の説明に関連して、より明確になり、より明確に理解されるであろう。
【0021】
同一の構成部材または同一の機能を有する構成部材は、同一の符号で識別される。
【0022】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。図面は実施例を明確に表すことを意図するものではなく、図面は、説明のために有用である場合、概略的および/またはわずかに誇張した形で示されている。図面に直接示されている教示への追加的説明に関しては、関連する技術水準が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】従来技術によるプラントのT-S線図である。
【0024】
なお各図において、同一の符号は同一の機能を有する構成部材を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明によるプラント(20)の概略図を示す。
【0026】
蒸気発生器(1)内で水が加熱される。この場合水は蒸気状になるまで加熱される。このようにして生成された高圧の生蒸気は次いで高圧タービン部(2)に供給される。高圧タービン部(2)では蒸気のエネルギーが機械エネルギーに変換される。蒸気の温度と圧力がこの際に低下する。高圧タービン部(2)の後、蒸気は低温の中間過熱器管路“kZUe”(3)を介して中間過熱器(4)に流れる。そこで蒸気の温度が再び上昇させられる。次いで蒸気は高温中間過熱器管路“hZUe”(5)を通って中圧タービン部(6)に流れる。中圧タービン部(6)の後で蒸気は低圧タービン部(図示せず)に流れる。
図1に示す中圧タービン部(6)は、中圧タービン部と低圧タービン部とを組み合わせたものとすることもでき、この場合中圧タービン部と低圧タービン部は共通のハウジングを有する。
【0027】
低圧タービン部の後、蒸気は管路(7)を通って復水器(8)に流れ、そこで凝縮して水に戻る。得られた水は、ポンプ(9)により管路(10)を介して蒸気発生器(1)に戻される。
【0028】
発電機(11)は、トルク伝達方式で蒸気タービンに接続されるが、ここで蒸気タービンとは高圧タービン部、中間タービン部および低圧タービン部の総称である。
【0029】
本発明によれば高温中間過熱管路“hZUe”(5)内にブースタ(12)が配置されている。ブースタ(12)は、水素と酸素とを爆鳴気反応で互いに反応させるように形成されている。反応後は水が蒸気相で形成される。
【0030】
この付加的なエネルギーは、いわば中圧タービン部(6)に供給される。ここで重要なことは、ブースタ(12)により蒸気の質量流量は必ずしも増加されず、むしろ蒸気のエネルギーが増加されることである。従って蒸気発生器(1)からの蒸気はブースタ(12)からの蒸気と混合され、中圧タービン部(6)に流入する。
【0031】
ブースタ(12)は、作動開始前に予熱される。安定な反応は、ブースタ(12)を予熱することによって生じることが判明している。
【0032】
この予熱は、図示されていない装置によって行われる。
【0033】
別の実施形態では、予熱は蒸気で行うことができる。この場合蒸気は、低温中間過熱器管路“kZUe”(3)または高温中間過熱器管路“hZUe”(5)から取り出される。
【0034】
復水器(8)で水蒸気を復水させた後、水の一部は電解槽(13)に供給される。電解槽(13)は水を水素と酸素に分離するように形成されている。これはエネルギーを加えることによって行われる。
【0035】
電解槽(13)で生成された水素および酸素は、図の右上に象徴的に示されているようにブースタ(12)に供給される。これにより一つのサイクルが閉じられる。
【0036】
高温の中間過熱器管路“hZUe”(5)からの蒸気に加えて、蒸気が低温の中間過熱器管路“kZUe”(3)から取り出され、管路(14)を介してブースタ(12)に供給される。この管路(14)は、分岐点(15)で低温の中間過熱器管路“kZUe”(3)に流体接続されている。
【0037】
図2は、従来技術による蒸気発電所における水-蒸気回路の既知のT‐S線図を示す。
図2に示される文字は、
図1に示される位置に対応するが、ブースタ(12)は勿論ない。A…復水器(8)の後、B…ポンプ(9)の後、C…蒸気発生器(1)の後、D…高圧タービン部(2)の入口、E…高圧タービン部(2)の出口、F…中圧タービン部(6)の前で中間過熱器(4)の後、H…中圧タービン部(6)の後をそれぞれ示す。
【0038】
図3は、本発明によるプラントのT‐S線図を示す。
図3に示す文字は、
図1に示す位置に対応する。ここではブースタ(12)もあり、Gはブースタ(12)の後を示す。
【0039】
図3の重要な特徴は、蒸気の状態がブースタによって(FからGへ)変化することである。図から分かるように、質量流量は増加しないが、
図3中のFからGへの増加によって分かるように、温度などの蒸気パラメータは増加する。
【0040】
本発明は、好ましい実施例によって詳細に図示および説明されてきたが、本発明は、開示された例によって限定されない。また本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって他の変形形態をそこから導出することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 蒸気発生器
2 高圧タービン部
3 管路
4 中間過熱器
5 管路
6 中圧タービン部
7 管路
8 復水器
9 ポンプ
10 管路
11 発電機
12 ブースタ
13 電解槽
14 管路
15 分岐点