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特許7408838コドン最適化されたGLA遺伝子およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】コドン最適化されたGLA遺伝子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20231225BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 15/56 20060101ALI20231225BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231225BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N7/01 ZNA
C12N5/10
C12N15/56
A61K35/76
A61K48/00
A61P3/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022564246
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-18
(86)【国際出願番号】 US2021029146
(87)【国際公開番号】W WO2021222094
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】63/114,195
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/016,207
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518402130
【氏名又は名称】4ディー モレキュラー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】キルン, デイビッド エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】コッターマン, メリッサ
(72)【発明者】
【氏名】フランシス, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】シマンスキ, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウィットルジー, ケビン
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/060454(WO,A2)
【文献】特表2018-520646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 7/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%同一な配列を含むバリアントAAVカプシドタンパク質および、(ii)ヒトα-ガラクトシダーゼA(AGA)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸であって、前記核酸はヒト細胞における発現のためにコドン最適化されており、前記核酸が配列番号1に記載のヌクレオチド配列と少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、前記核酸は、AGA活性を有するタンパク質をコードし、前記核酸は、宿主細胞において、同じ条件下の前記宿主細胞における配列番号3の野生型GLAヌクレオチド配列よりも高い発現レベルで発現される、異種核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。
【請求項2】
前記バリアントAAVカプシドタンパク質が、配列番号4として記載されるアミノ酸配列の全長と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のrAAV。
【請求項3】
前記バリアントAAVカプシドタンパク質が、配列番号4として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のrAAV。
【請求項4】
前記rAAVが、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列を有するヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項5】
前記rAAVが、5’から3’に、(a)AAV2末端反復、(b)CAGプロモーター、(c)配列番号1に記載されるヌクレオチド配列、(d)ポリアデニル化配列および(e)AAV2末端反復を含む核酸を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のrAAVを含む宿主細胞。
【請求項7】
前記宿主細胞がCHO細胞、HEK293T細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、BHK21細胞もしくはVero細胞であり、および/または前記宿主細胞が懸濁培養もしくは接着培養で成長され、または前記宿主細胞が心筋細胞もしくは骨格筋細胞である、請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のrAAVと、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項9】
ファブリー病の処置における使用のための、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が、静脈内および/または筋肉内注射により投与される、請求項9に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が、少なくとも1×1012vg/kgの前記rAAVの単回静脈内注射として投与される、請求項10に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が、1×1012vg/kg~1×1014vg/kgの前記rAAVの単回静脈内投与として投与される、請求項10または11に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
ファブリー病の処置のための医薬の製造のための、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物が、静脈内および/または筋肉内注射のためのものである、請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
ファブリー病は、GLA遺伝子(α-ガラクトシダーゼA、AGAをコードする)における変異が、低減されたまたは存在しないAGA酵素活性および結果として生じるグロボトリアオシルセラミド(Gb3)の蓄積を生じる、X連鎖障害である。Gb3は、心筋細胞および内皮細胞(腎臓/心臓/ニューロン)にとって細胞毒性であるとみなされ、有意な罹患率および短縮された平均余命を生じる。組換えAGA(ERT)の投与は、一部の組織において疾患進行を緩徐化するようである。例えば心臓における、細胞中への不十分な取込みにおそらくは起因して、重大な医療上の要求が依然として満たされていない。さらに、心血管疾患は、ファブリー病における死亡率の最も一般的な原因であり続けている(全ての既知の死亡の75%)。したがって、Gb3を低減させ、それにより、臨床転帰を改善する、GLAを細胞自律的に発現する重要な組織に標的化された永続的な処置、例えば、単回投与の静脈内遺伝子治療への切実な必要性が存在する。
【0002】
心遺伝子治療に関する1つの障害は、静脈内投与後のヒト心筋細胞の不十分な形質導入である。開発中の現行のAAVベクターは、主に肝臓に移動し、心臓組織には標的化されない。野生型AAV1は、臨床的に評価されてきたが、最終的には、偽薬と比較して、再発性心不全事象の一次エンドポイントにおける改善を生じなかった。新規心臓標的化AAVバリアントは、ファブリー病心筋症の有効な処置を提供し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要
ヒトガラクトシダーゼA(AGA)タンパク質をコードするコドン最適化された核酸分子が開示される。一態様では、本開示は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸、または配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であり、配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトAGAポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。一部の実施形態では、配列番号1のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる核酸が提供される。関連の実施形態では、核酸は、別段同一な細胞における、野生型GLA核酸配列(例えば、配列番号3)の発現のレベルと比較してより高いレベルで発現される。配列番号3(コンセンサスCDS配列番号CCDS14484.1;www.uniprot.org/uniprot/Q7X1P3)は以下に示される:
【化1】
【0004】
一部の態様では、本明細書に記載されるコドン最適化された核酸分子は、野生型GLA cDNA(GenBankアクセッション番号NM_000169.3;配列番号3)のものと比べて増加したヒトコドン適応指数を有する。一部の実施形態では、コドン最適化された核酸分子は、少なくとも約0.80、少なくとも約0.83、少なくとも約0.85、少なくとも約0.88、少なくとも約0.90、少なくとも約0.92または少なくとも約0.93のヒトコドン適応指数を有する。
【0005】
ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号3中のG/Cヌクレオチドのパーセンテージと比較してより高い、G/Cヌクレオチドのパーセンテージを含有する。他の実施形態では、核酸は、少なくとも約49%、少なくとも約51%、少なくとも約53%、少なくとも約55%、少なくとも約57%、少なくとも約57.9%である、または約57.9%である、G/Cヌクレオチドのパーセンテージを含有する。関連の実施形態では、核酸は、約49%と60%との間、約50%と59%との間、約55%と59%との間または約57%と約59%との間である、G/Cヌクレオチドのパーセンテージを含有する。
【0006】
他の実施形態では、核酸は、配列番号3と比べて、以下の1つまたは複数の最適化されたパラメーターを含む:最適なコドンの頻度;直列反復配列の最大長さにおける低減;制限酵素の除去、シス作用性エレメントの除去、および不安定化エレメントの除去。別の実施形態では、核酸は、少なくとも1つの転写制御配列、好ましくは、その核酸にとって異種の転写制御配列に、機能的に連結される。一部の態様では、転写制御配列は、例えば心筋細胞または骨格筋細胞において核酸の細胞特異的発現を生じる、細胞特異的または組織特異的プロモーターである。他の態様では、転写制御配列は、多くの細胞型において核酸の類似の発現レベルを生じる構成的プロモーター(例えば、CAG、CBA(ニワトリベータアクチン)またはCMVプロモーター)である。好ましい実施形態では、転写制御配列は、Miyazaki et al., Gene 79(2):269-77 (1989)に記載されるように、(i)サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサーエレメント、(ii)ニワトリベータ-アクチン遺伝子のプロモーター、第1のエクソンおよび第1のイントロンならびに(iii)ウサギベータ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプターを含むCAGプロモーターを含む。特に好ましい実施形態では、CAGプロモーターは、配列番号5の配列を含むか、またはそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一な配列を含む。
【化2】
【化3】
【0007】
関連の実施形態では、発現制御配列に作動可能に連結した、配列番号1のヌクレオチド配列またはそれと少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸を含む発現カセットが、本明細書で提供される。
【0008】
関連の実施形態では、配列番号1のヌクレオチド配列またはそれと少なくとも90%もしくは少なくとも95%同一なヌクレオチド配列を含む核酸を含むベクターが、本明細書で提供される。好ましい実施形態では、ベクターは、組換えアデノ随伴(rAAV)発現ベクターである。一部の実施形態では、rAAVベクターは、ネイティブカプシド(例えば、AAV血清型1、AAV血清型2、AAV血清型6またはAAV血清型8のカプシド)を含む。他の実施形態では、rAAVベクターは、ネイティブAAVカプシドと比べて改変された(例えば、1つもしくは複数のペプチド挿入ならびに/あるいは1つもしくは複数のアミノ酸置換(例えば、チロシンからフェニルアラニンへの)および/またはアミノ酸挿入もしくはアミノ酸欠失を含む)(例えば、血清型1、2、6または8のAAVカプシドと比べて1つまたは複数の改変を含む)カプシドを含む。特に好ましい実施形態では、rAAVベクターは、配列番号4またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも98%同一な配列のカプシドタンパク質を含むカプシドを含む。
【0009】
別の実施形態では、配列番号1のヌクレオチド配列またはそれと少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸を含む宿主細胞が、本明細書で提供される。一部の態様では、宿主細胞は、CHO細胞、HEK293細胞およびHEK293T細胞、HeLa細胞、BHK21細胞、Vero細胞またはV27細胞が含まれるがこれらに限定されない哺乳動物細胞である。他の態様では、宿主細胞は、心筋細胞または骨格筋細胞(例えば、筋芽細胞、骨格筋線維芽細胞、骨格筋サテライト細胞、心筋細胞、心線維芽細胞、心前駆細胞、平滑筋細胞内皮および/または横隔膜筋肉細胞)である。関連の実施形態では、本開示は、配列番号2のポリペプチドが核酸分子によって発現される条件下で宿主細胞を培養するステップを含む、配列番号2のポリペプチドの発現を増加させる方法であって、ポリペプチドの発現が、配列番号3のヌクレオチド配列(比較対象配列)を含む参照核酸を含む、同じ条件下で培養した宿主細胞と比べて増加される、方法を提供する。
【0010】
別の実施形態では、本開示は、ヒト対象において配列番号2のポリペプチドの発現を増加させる方法であって、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であり、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子、またはかかるヌクレオチド配列を含むベクターを対象に投与するステップを含み、ポリペプチドの発現が、配列番号3のヌクレオチド配列(比較対象配列)を含む参照核酸分子またはかかる参照核酸分子を含むベクターと比べて増加される、方法を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、本開示は、ヒト対象において不十分なGLA活性に関連する障害を処置する方法であって、本明細書で開示される核酸分子またはベクターを対象に投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、障害は、ファブリー病である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ファブリー病線維芽細胞には存在しないAGAタンパク質。野生型およびファブリー病に罹患した線維芽細胞のウエスタンブロット解析が示される。ファブリー線維芽細胞の溶解物は、AGAタンパク質発現(49kDa)を欠如し、これは、それらの疾患変異(W162X)を指し示す。試料を、総タンパク質に対して正規化し、ゲル上に均等にローディングした。左端は標準的なタンパク質ラダーである。hrAGA:ヒト組換えAGA、WT:野生型、AGA:アルファガラクトシダーゼ、kDa:キロダルトン。
【0013】
図2】ファブリー病に罹患した人工多能性幹細胞の特徴付け。人工多能性幹細胞(iPSC)へと再プログラミングされたファブリー病に罹患した線維芽細胞(図2A)は、非常に重要な多能性転写因子、Nanog(左、赤色)、Oct 4(中央、緑色)およびSox2(右、赤色)、DAPI(核、青色)を発現する(上パネル)。ファブリーiPSCは、3つ全ての胚葉:外胚葉、内胚葉および中胚葉へと分化し、各胚葉に対応する系列マーカー、それぞれ、β-チューブリンIII(左、緑色)、HNF-α(中央、赤色)およびα-平滑筋アクチン(左、赤色)を発現した;DAPI(核、青色)(下パネル)。スケールバー=100μm。HNF4a:肝細胞核因子4アルファ。ファブリーiPSCの核型解析は、正常なヒト男性のバンディングおよび染色体編成を示す(図2B)。
【0014】
図3】ファブリー病に罹患した人工多能性幹細胞由来の心筋細胞の特徴付け。心筋細胞への、ファブリー病に罹患したiPSCの分化は、フローサイトメトリーによって試験し、IgG対照を使用してゲートした場合、97%のcTNT陽性細胞の集団を生じた。散布図は、ゲーティングスキームを示すための代表的なプロットである(図3A)。cTNT(赤色)およびDAPI(青色)核染色による免疫細胞化学後のファブリーiPSC心筋細胞の代表的な画像(図3B)。スケールバー=100μm。cTNT:心筋トロポニンT、心筋細胞マーカー。n=3、生物学的複製。
【0015】
図4】(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む組換えAAV(rAAV)粒子による、ファブリー病に罹患したiPSC-心筋細胞の形質導入は、AGAタンパク質の発現をもたらす。免疫細胞化学(ICC)は、AAVで形質導入したファブリーiPSC心筋細胞における、心筋トロポニンT(cTnT)の発現(緑色)、アルファ-ガラクトシダーゼの発現(赤色)、およびHoechstによる核対比染色(青色)を示した(図4A)。AAVで形質導入したファブリーiPSC心筋細胞を、cTnTおよびアルファ-ガラクトシダーゼで共染色して、AGAを発現するファブリーiPSC心筋細胞のパーセントを決定した(図4B)。AAVによる形質導入後のファブリーiPSC心筋細胞のウエスタンブロット解析によって見られたAGAタンパク質のロバストな発現(図4C)。AGA:アルファガラクトシダーゼ、MOI:感染多重度、NT:形質導入されていない、Gb3:グロボトリアオシルセラミド、n=3、エラーバー±標準偏差;****NTと比較してp<0.0001、††MOI 25と比較してp<0.001、†MOI 25と比較してp<0.01、NTに対して一元配置ANOVA、チューキー事後比較。
【0016】
図5】ファブリー病に罹患したiPSC-心筋細胞における、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVによる形質導入後の、増強されたAGA活性。AAVで形質導入したファブリーiPSC心筋細胞は、AGA活性における用量依存的増加を示した。3つの生物学的複製を、各実施についてキットおよびプレートリーダー内の固有の変動性に起因して個々に定量する。技術的複製を、各実験内で実施した(図5A)。グロボトリアオシルセラミド(Gb3、ピンク色)およびHoechstによる核対比染色(青色)のICC(図5B)。AGA=アルファガラクトシダーゼ、MOI=感染多重度、NT=形質導入されていない、Gb3=グロボトリアオシルセラミド、n=3、エラーバー±標準偏差;****NTと比較してp<0.0001、***NTと比較してp<0.004、**NTと比較してp=0.005、††††MOI 25と比較してp<0.0001、†††MOI 25と比較してp=0.0001、††MOI 25と比較してp<0.004;†MOI 25と比較してp<0.02、#MOI 100と比較してp<0.02。NTに対して一元配置ANOVA、チューキー事後比較。
【0017】
図6】ファブリー病に罹患した人工多能性幹細胞由来の内皮細胞の特徴付け。図6A:フローサイトメトリーによって試験し、IgG対照を使用してゲートした場合、内皮細胞へのファブリー病iPSCの分化の21日目に、99.2%のCD31陽性細胞および87.9%のCD144陽性の集団が生じた。図6B:ベクター特徴付けにおいて使用した培養物における、免疫細胞化学によるCD31(緑色)発現。細胞をDAPI(青色)で対比染色した。スケールバー=100μM。
【0018】
図7】(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVによるファブリー病iPSC-内皮細胞の形質導入は、フローおよびウエスタンによる、外因性AGAの発現をもたらす。図7Aは、rAAVで形質導入したファブリー内皮細胞における形質導入の4日後の生存CD31/CD144集団におけるAGAタンパク質のフローサイトメトリーによる発現を例示する。図7B:rAAVによる形質導入後のファブリーiPSC由来の内皮細胞のウエスタンブロット解析によって見られたAGAタンパク質のロバストな発現。ヒストグラムでのバンドデンシトメトリー。AGA=アルファガラクトシダーゼ、MOI=感染多重度、NT=形質導入されていない、Gb3=グロボトリアオシルセラミド、n=3、エラーバー=標準偏差;****先行するMOIと比較してp<0.0001、先行するMOIと比較してp<0.05、NTに対して一元配置ANOVA、チューキー事後比較。
【0019】
図8】ファブリー病に罹患したiPSC-内皮細胞における、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVによる形質導入後の、増強されたAGA活性。図8A:AGA活性を、形質導入の4日後に、AGA活性アッセイによって定量した。rAAVで形質導入したファブリーiPSC-ECは、形質導入されていないファブリー内皮細胞よりも多くのAGA活性を有した。図8B:グロボトリアオシルセラミド(Gb3、ピンク色)陽性細胞およびDAPIによる核対比染色(青色)のICC。GLA=アルファガラクトシダーゼ、MOI=感染多重度、NT=形質導入されていない、Gb3=グロボトリアオシルセラミド、n=3、エラーバー=標準偏差;先行するMOIと比較してp<0.05または**先行するMOIと比較してp<0.001(上から下に、500、100、50およびNT)、一元配置ANOVA、チューキー事後。各々、3つの実験的複製および3つの技術的複製。
【0020】
図9】ファブリー病のマウスモデルにおける、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)配列番号5のCAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVによる形質導入後のAGA活性。図9A:単回静脈内投与後の野生型およびファブリーマウス血漿中のAGA活性。図9B:単回静脈内投与後の野生型およびファブリーマウス組織中のAGA活性。平均±標準偏差;ビヒクル-WTと比較してp<0.01、#ビヒクル-KOと比較してp<0.01。WT=野生型マウス、KO=ファブリー病マウス(ノックアウト)。
【0021】
図10】(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)配列番号5のCAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVの単回IV投与の8週間後の、正常(WT)またはファブリー(KO)マウスの組織におけるIHCによるAGAの検出。AGAについてのIHC染色(暗褐色)を示す、4つの組織(心臓、腎臓、肝臓および小腸)の代表的な画像。各組織についてのIHC染色は、ビヒクルで処置した野生型マウスまたはビヒクルで処置したファブリーマウスと比較して、ファブリー病のマウスモデルにおいて、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)配列番号5のCAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVの単回静脈内投与の後の、AGA検出における用量依存的増加を示す。IHCを、1群当たりn=3匹の動物から収集した組織に対して実施した。
【0022】
図11】血漿中のlysoGb3レベル。以前の図に記載された(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVの単回IV投与後の血漿中のlysoGb3低減。1群当たり合計n=15匹の、ビヒクルで処置したC57BL/6(WT)もしくはGLAヌル(KO)動物、または配列番号1のコドン最適化されたGLAを保有するrAAVの指し示された用量で処置したGLAヌル動物のいずれか由来の血漿において測定したlysoGb3(m/z 786)およびそのアナログ(m/z 784、m/z 802およびm/z 804)の平均総濃度。エラーバーは、標準偏差を指し示す。は、ビヒクル処置したGLAヌルと比較してP<0.01を指し示す。
【0023】
図12】組織中のGb3解析。組織を、IV注射の56日後に、ビヒクルまたは(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAV(以前の図に記載されている)の漸増用量で処置したC57BL/6(WT)またはGLA-ヌル(KO)マウスから、n=6匹(心臓)またはn=12匹(腎臓、小腸、肝臓)から収集した。棒は、測定された全てのGb3種の平均応答比を表す。エラーバーは、標準偏差を表す。は、群2(「KO-ビヒクル」)と比較した場合のP<0.005を指し示す。
【0024】
図13図13は、指定された用量の各々における、4D-310((i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)配列番号6のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAV)の単回静脈内投与後の野生型C57BL/6マウスの血漿中のGLA活性をグラフで記述する。
【0025】
図14図14は、指定された用量の各々における、4D-310((i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)配列番号6のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAV)の単回静脈内投与後の野生型C57BL/6マウスの指定された組織中のGLA活性をグラフで記述する。
【0026】
図15図15は、非ヒト霊長類への指定された用量の4D-310、ビヒクル対照またはC102.EGFP(配列番号4のカプシドタンパク質を含むカプシドおよびEGFPをコードする核酸を含むrAAV)の単回静脈内投与後の重要なファブリー組織への4D-310の生体内分布(qPCRによる)を例示する。
【0027】
図16図16は、指定された用量の各々における4D-310の単回静脈内投与後の、投与量によって整理したNHPの血漿中のAGAを例示する。
【0028】
図17図17は、指定された用量の各々における4D-310の単回静脈内投与後の、動物によって整理したNHPの血漿中のAGAを例示する。
【0029】
図18図18は、指定された用量の各々における4D-310の単回静脈内投与後の、投与量によって整理したファブリー関連NHP組織中のAGAにおける変化倍数(ビヒクル対照との比較)を例示する。
【0030】
図19図19は、5×1013vg/kgの用量における4D-310の単回静脈内投与後の、動物によって整理したファブリー関連NHP組織中のAGAにおける変化倍数(ビヒクル対照との比較)を例示する。
【0031】
図20図20は、非ヒト霊長類への4D-310の指定された用量の単回静脈内投与後の、GLA RNA発現の生体内分布(RT-qPCRによる)を例示する。
【0032】
図21】5×1013vg/kgの用量における単回IV投与後の、ビヒクル処置したまたは4D-310処置したNHPの心臓組織中のAGAのIHC検出。図21Aは、左心室中のAGA活性を示す;図21Bは、心室中隔中のAGA活性を示す。
【0033】
図22】5×1013vg/kgの用量における単回IV投与後の、ビヒクル処置したまたは4D-310処置したNHPの肝臓(図22A)および腎臓(図22B)組織中のAGAのIHC検出。ビヒクル動物における高い内因性レベルを超える、処置した動物におけるAGA活性の上方調節が示される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
定義
【0035】
「コドン適応指数」は、本明細書で使用される場合、コドン使用バイアスの尺度を指す。コドン適応指数(CAI)は、遺伝子の参照セットに関しての、所与のタンパク質コード遺伝子配列の偏差を測定する(Sharp P M and Li W H, Nucleic Acids Res. 15(3):1281-95 (1987))。CAIは、遺伝子配列の長さ(コドンで測定した)にわたる、各コドンに関連付けられた重みの幾何平均を決定することによって計算される:
【数1】
各アミノ酸について、CAIにおけるそのコドンの各々の重みは、そのアミノ酸についての、コドンの観察された頻度(fi)と同義のコドンの頻度(fj)との間の比として計算される:
【数2】
【0036】
用語「単離された」は、その元の環境(それが天然に存在する環境)から取り出された生物学的材料(細胞、核酸またはタンパク質)を指定する。例えば、植物または動物中に天然の状態で存在するポリヌクレオチドは、単離されていないが、それがその中に天然に存在する隣接する核酸から分離された同じポリヌクレオチドは、「単離された」とみなされる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「コード領域」または「コード配列」は、アミノ酸へと翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチドの一部である。「停止コドン」(TAG、TGAまたはTAA)は、典型的には、アミノ酸へと翻訳されないが、コード領域の一部とみなすことができ、しかし、任意の隣接配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどは、コード領域の一部ではない。コード領域の境界は、得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端の開始コドンおよび得られるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする3’末端の翻訳停止コドンによって、典型的には決定される。2つまたはそれよりも多くのコード領域が、単一のポリヌクレオチド構築物中に、例えば、単一のベクター上に、または別々のポリヌクレオチド構築物中に、例えば、別々の(異なる)ベクター上に存在し得る。すると、単一のベクターは、単一のコード領域だけを含有し得る、または2つもしくはそれよりも多くのコード領域を含み得るという結果になる。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「調節領域」は、コード領域の上流(5’非コード配列)、内側または下流(3’非コード配列)に位置し、関連するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性または翻訳に影響するヌクレオチド配列を指す。調節領域には、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム-ループ構造が含まれ得る。コード領域が真核生物細胞における発現を意図したものである場合、ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列が通常、コード配列の3’側に位置する。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「核酸」は、「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」と相互交換可能であり、ヌクレオチドのポリマーが意図される。
【0040】
遺伝子産物、例えばポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、1つまたは複数のコード領域に作動可能に関連したプロモーターおよび/または他の転写もしくは翻訳制御エレメントを含み得る。作動可能な関連状態では、遺伝子産物、例えばポリペプチドのコード領域は、遺伝子産物の発現を調節領域(複数可)の影響下または制御下に置くような方法で、1つまたは複数の調節領域に関連している。例えば、プロモーター機能の誘導が、コード領域によってコードされる遺伝子産物をコードするmRNAの転写を生じる場合、およびプロモーターとコード領域との間の連結の性質が、遺伝子産物の発現を指示するプロモーターの能力を妨害することも、DNA鋳型が転写される能力を妨害することもない場合、コード領域とプロモーターとは、「作動可能に関連している」。プロモーターに加えて、他の転写制御エレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサーおよび転写終結シグナルもまた、遺伝子産物発現を指示するために、コード領域に作動可能に関連し得る。
【0041】
「転写制御配列」は、宿主細胞におけるコード配列の発現を提供するDNA調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどを指す。種々の転写制御領域が、当業者に公知である。これらには、例えば、サイトメガロウイルス(イントロン-Aと併せた、最初期プロモーター)、サルウイルス40(初期プロモーター)およびレトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)由来のプロモーターおよびエンハンサーセグメントであるがこれらに限定されない、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域が含まれるがこれらに限定されない。他の転写制御領域には、脊椎動物遺伝子由来のもの、例えば、アクチン、ヒートショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギベータ-グロビン、ならびに真核生物細胞における遺伝子発現を制御することが可能な他の配列が含まれる。さらなる適切な転写制御領域には、組織特異的プロモーターおよびエンハンサーならびにリンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が含まれる。
【0042】
同様に、種々の翻訳制御エレメントが、当業者に公知である。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始および終結コドン、ならびにピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、CITE配列とも呼ばれる内部リボソーム進入部位、即ちIRES)が含まれるがこれらに限定されない。
【0043】
用語「発現」は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えば、RNAまたはポリペプチドを産生するプロセスを指す。これには、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または任意の他のRNA産物へのポリヌクレオチドの転写、およびポリペプチドへのmRNAの翻訳が含まれるがこれらに限定されない。発現により、「遺伝子産物」が産生される。本明細書で使用される場合、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、または転写物から翻訳されるポリペプチドのいずれかであり得る。本明細書に記載される遺伝子産物には、転写後改変、例えば、ポリアデニル化もしくはスプライシングを有する核酸、または翻訳後改変、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合もしくはタンパク質分解性切断を有するポリペプチドがさらに含まれる。
【0044】
「ベクター」は、核酸のクローニングおよび/または宿主細胞中への核酸の移入のためのあらゆる任意の輸送手段を指す。ベクターは、結合したセグメントの複製をもたらすように、別の核酸セグメントを結合させることができる、レプリコンであり得る。用語「ベクター」は、核酸を細胞中にin vitro、ex vivoまたはin vivoで導入するためのウイルスビヒクルおよび非ウイルスビヒクルの両方を含む。例えば、プラスミド、改変された真核生物ウイルスまたは改変された細菌ウイルスが含まれる多数のベクターが、当該分野で公知であり使用される。適切なベクター中へのポリヌクレオチドの挿入は、適したポリヌクレオチド断片を、相補的な付着末端を有する選ばれたベクター中にライゲーションすることによって達成され得る。
【0045】
ベクターは、ベクターを取り込んだ細胞の選択または同定を提供する選択可能なマーカーまたはレポーターをコードするように操作され得る。選択可能なマーカーまたはレポーターの発現は、ベクターを取り込み、そのベクター上に含有される他のコード領域を発現する宿主細胞の同定および/または選択を可能にする。当該分野で公知であり使用される選択可能なマーカー遺伝子の例には、以下が含まれる:アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどに対する耐性を提供する遺伝子;および表現型マーカーとして使用される遺伝子、即ち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンテニル(isopentanyl)トランスフェラーゼ遺伝子など。当該分野で公知であり使用されるレポーターの例には、以下が含まれる:ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)など。選択可能なマーカーは、レポーターともみなされ得る。
【0046】
使用され得る真核生物ウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクターまたはヘルペスウイルスベクターが含まれるがこれらに限定されない。非ウイルスベクターには、プラスミド、リポソーム、電気的に荷電した脂質(サイトフェクチン)、DNA-タンパク質複合体およびバイオポリマーが含まれる。
【0047】
「プロモーター」および「プロモーター配列」は、相互交換可能に使用され、コード配列または機能的RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは、それらの全体がネイティブ遺伝子に由来していてもよく、または天然に見出される異なるプロモーターに由来する異なるエレメントから構成されていてもよく、またはさらには、合成DNAセグメントを含んでいてもよい。異なるプロモーターが、異なる組織もしくは細胞型において、または異なる発生段階において、または異なる環境的もしくは生理的条件に応答して、遺伝子の発現を指示し得ることが、当業者に理解される。ほとんどの時点におけるほとんどの細胞型において遺伝子が発現されるようにするプロモーターは一般に、「構成的プロモーター」と呼ばれる。特定の細胞型において遺伝子が発現されるようにするプロモーターは一般に、「細胞特異的プロモーター」または「組織特異的プロモーター」と呼ばれる。特定の発生段階または細胞分化段階において遺伝子が発現されるようにするプロモーターは一般に、「発生特異的プロモーター」または「細胞分化特異的プロモーター」と呼ばれる。プロモーターを誘導する作用物質(agent)、生物学的分子、化学物質、リガンド、光などによる細胞の曝露または処置後に誘導され、遺伝子が発現されるようにするプロモーターは一般に、「誘導性プロモーター」または「調節性プロモーター」と呼ばれる。ほとんどの場合において、調節配列の正確な境界は完全には定義されていないので、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得ることがさらに認識される。
【0048】
用語「プラスミド」は、細胞の中枢代謝の一部ではない遺伝子を保有する場合が多く、通常は環状二本鎖DNA分子の形態である染色体外エレメントを指す。かかるエレメントは、任意の供給源に由来する、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの、直線状、環状またはスーパーコイル状の、自律的に複製する配列、ゲノム組み込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列であり得、それにおいて、いくつかのヌクレオチド配列が、プロモーター断片と選択された遺伝子産物のためのDNA配列とを適した3’非翻訳配列と共に細胞中に導入することが可能な独自の構造に繋がれまたは組み換えられている。
【0049】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、別のポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対してある特定のパーセント「配列同一性」を有し、これは、アラインされた場合に、塩基またはアミノ酸のそのパーセンテージが、2つの配列を比較した場合に同じであることを意味している。配列類似性は、いくつかの異なる様式で決定され得る。配列同一性を決定するために、配列は、ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてワールドワイドウェブ上で利用可能なBLASTを含む方法およびコンピュータープログラムを使用してアラインされ得る。別のアラインメントアルゴリズムは、Madison、Wis.、USAのGenetics Computing Group(GCG)パッケージにおいて利用可能なFASTAである。アラインメントのための他の技法は、Methodsin Enzymology, vol. 266: Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996), ed. Doolittle, Academic Press, Inc.に記載されている。配列中にギャップを許容するアラインメントプログラムが、特に目的とされる。Smith-Watermanは、配列アラインメント中にギャップを許容するアルゴリズムの1つの型である。Meth.Mol. Biol. 70: 173-187 (1997)を参照されたい。また、NeedlemanおよびWunschのアラインメント法を使用するGAPプログラムが、配列をアラインするために利用され得る。J.Mol. Biol. 48: 443-453 (1970)を参照されたい。
【0050】
用語「4D-310」は、(i)配列番号4のアミノ酸を有するカプシドタンパク質を含むカプシドおよび(ii)配列番号6として記載されるヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む組換えAAVビリオンを指す。配列番号6のヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド配列を含むCAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む。
【0051】
用語「4D-C102」または「C102」は、配列番号4のアミノ酸配列を含むバリアントAAVカプシドタンパク質を指す。
【0052】
用語「GLA」および「AGA」は、アルファ-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子およびコードされたタンパク質を指すために、本明細書で相互交換可能に使用される。
【0053】
一実施形態では、本発明は、配列番号2のポリペプチド(429アミノ酸からなり、GenBankアクセッション番号X14448.1およびU78027において利用可能なヒトAGA)をコードするヌクレオチド配列を含む改変された核酸分子を提供し、その核酸配列は、コドン最適化されている。別の実施形態では、配列番号2のポリペプチドをコードし、コドン最適化に供される出発核酸配列は、配列番号3として記載されるヌクレオチド配列を有する。好ましい実施形態では、配列番号2のポリペプチドをコードする配列は、ヒト発現のためにコドン最適化される。配列番号1は、ヒト発現のために最適化された、配列番号3のコドン最適化されたバージョンである:
【化4】
【0054】
配列番号1のヌクレオチド配列は、TAA停止コドンを含む。代替的な実施形態では、配列番号1の最初の1287ヌクレオチドを含み、異なる停止コドン(例えば、TAGまたはTGA)で終わるヌクレオチド配列。
【0055】
一態様では、本開示は、配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、または配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であり、配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトAGAポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する:
【化5】
【0056】
用語「コドン最適化された」は、種々の宿主の形質転換のための核酸分子の遺伝子またはコード領域を指す場合、DNAによってコードされるポリペプチドを変更することなしに宿主生物の典型的なコドン使用を反映するような、核酸分子の遺伝子またはコード領域中のコドンの変更を指す。かかる最適化は、少なくとも1つ、または1つよりも多くの、または有意な数のコドンを、その生物の遺伝子においてより頻繁に使用される1つまたは複数のコドンで置き換えることを含む。
【0057】
任意のポリペプチド鎖のアミノ酸をコードするコドンを含むヌクレオチド配列におけるゆれ(deviation)は、その遺伝子をコードする配列におけるバリエーションを可能にする。各コドンは、3つのヌクレオチドからなり、DNAを構成するヌクレオチドは、4つの特定の塩基に制限されるので、ヌクレオチドの64個の可能な組合せが存在し、そのうち61個がアミノ酸をコードする(残り3個のコドンは、翻訳を終わらせるシグナルをコードする)。どのコドンがどのアミノ酸をコードするかを示す「遺伝コード」は、本明細書で表1として再現される。結果として、多くのアミノ酸は、1つよりも多くのコドンによって指定される。例えば、アミノ酸アラニンおよびプロリンは、4つのトリプレットによってコードされ、セリンおよびアルギニンは、6つのトリプレットによってコードされるが、トリプトファンおよびメチオニンは、たった1つのトリプレットによってコードされる。この縮重性は、DNA塩基組成が、DNAによってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を変更することなしに広い範囲にわたって変動するのを可能にする。
TABLE-US-00001 表1 標準的な遺伝コード T C A G T TTTPhe (F) TCT Ser (S) TAT Tyr (Y) TGT Cys (C) TTC Phe (F) TCC Ser (S) TAC Tyr (Y)TGC TTA Leu (L) TCA Ser (S) TAA 停止 TGA 停止 TTG Leu (L) TCG Ser (S) TAG 停止 TGGTrp (W) C CTT Leu (L) CCT Pro (P) CAT His (H) CGT Arg (R) CTC Leu (L) CCC Pro(P) CAC His (H) CGC Arg (R) CTA Leu (L) CCA Pro (P) CAA Gln (Q) CGA Arg (R) CTGLeu (L) CCG Pro (P) CAG Gln (Q) CGG Arg (R) A ATT Ile (I) ACT Thr (T) AAT Asn(N) AGT Ser (S) ATC Ile (I) ACC Thr (T) AAC Asn (N) AGC Ser (S) ATA Ile (I) ACAThr (T) AAA Lys (K) AGA Arg (R) ATG Met (M) ACG Thr (T) AAG Lys (K) AGG Arg (R)G GTT Val (V) GCT Ala (A) GAT Asp (D) GGT Gly (G) GTC Val (V) GCC Ala (A) GACAsp (D) GGC Gly (G) GTA Val (V) GCA Ala (A) GAA Glu (E) GGA Gly (G) GTG Val (V)GCG Ala (A) GAG Glu (E) GGG Gly (G)
【0058】
多くの生物は、成長中のペプチド鎖における特定のアミノ酸の挿入をコードする特定のコドンの使用について偏りを示す。生物間でのコドン使用における差異である、コドン優先度またはコドンバイアスは、遺伝コードの縮重性によってもたらされ、多くの生物において十分に報告されている。コドンバイアスは、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳の効率と相関する場合が多く、そしてこれは、とりわけ、翻訳されているコドンの特性および特定の転移RNA(tRNA)分子の利用可能性に依存すると考えられる。細胞における選択されたtRNAの優勢は一般に、ペプチド合成において最も頻繁に使用されるコドンの反映である。したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現のために適合するようにされ得る。
【0059】
広範な種々の動物、植物および微生物種にとって利用可能な多数の遺伝子配列を考慮して、コドン使用の相対的頻度が計算されてきた。コドン使用表は利用可能であり、例えば、www.kazusa.or.jp/codon/(2012年6月18日にアクセス)において利用可能な「コドン使用データベース(Codon Usage Database)」である。Nakamura,Y., et al. Nucl. Acids Res. 28:292 (2000)を参照されたい。
【0060】
所与のポリペプチド配列をコードするのに最適化された頻度でコドンをランダムに割り当てることは、各アミノ酸についてコドン頻度を計算し、次いで、コドンをポリペプチド配列にランダムに割り当てることによって、手動で実施され得る。さらに、種々のアルゴリズムおよびコンピューターソフトウェアプログラムが、最適な配列を計算するために使用され得る。
【0061】
非ウイルスベクター
【0062】
一部の実施形態では、本明細書に記載される改変された核酸を含む非ウイルスベクター(例えば、発現プラスミド)が提供される。好ましくは、非ウイルスベクターは、配列番号1の核酸配列またはそれと少なくとも90%同一な配列を含むプラスミドである。
【0063】
ウイルスベクター
【0064】
好ましい実施形態では、本明細書に記載される改変された(コドン最適化された)核酸を含むウイルスベクターが提供される。好ましくは、ウイルスベクターは、発現制御配列に作動可能に連結した、配列番号1の核酸配列またはそれと少なくとも90%同一な配列を含む。適切なウイルスベクターの例には、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが含まれるがこれらに限定されない。
【0065】
好ましい実施形態では、ウイルスベクターは、パルボウイルスゲノムの一部分、例えば、repおよびcap遺伝子が欠失され、ならびに/または改変されたGLA遺伝子配列およびその関連する発現制御配列によって置き換えられたAAVゲノムを含む。改変されたヒトGLA遺伝子配列は、典型的には、ウイルスrepおよびcapタンパク質をコードする核酸の代わりに、ウイルス複製に適当な1つまたは2つのAAV TRまたはTRエレメントに隣接して挿入される(即ち、AAV TRまたはTRエレメントに挟まれる)(Xiao et al., 1997, J. Virol. 71(2): 941-948)。標的細胞における改変されたGLA遺伝子配列の組織特異的発現を促進する際の使用のために適切な他の調節配列もまた含められ得る。
【0066】
当業者は、導入遺伝子を含み、ウイルス複製に必要なウイルスタンパク質(例えば、capおよびrep)を欠如するAAVベクターが、かかるタンパク質がウイルスの複製およびパッケージングのために必要であるために、複製することができないことを理解する。ヘルパーウイルスには、典型的には、アデノウイルスまたは単純ヘルペスウイルスが含まれる。あるいは、以下で考察されるように、ヘルパー機能(E1a、E1b、E2a、E4およびVA RNA)は、種々のヘルパーエレメントをコードする1つもしくは複数の核酸でパッケージング細胞をトランスフェクトすることによってを含めて(including by transfecting the cell)パッケージング細胞に提供され得、および/または細胞は、ヘルパータンパク質をコードする核酸を含み得る。例えば、HEK 293は、ヒト細胞をアデノウイルス5 DNAで形質転換することによって生成され、現在、E1およびE3が含まれるがこれらに限定されないいくつかのアデノウイルス遺伝子を発現する(例えば、Grahamet al., 1977, J. Gen. Virol. 36:59-72を参照されたい)。したがって、これらのヘルパー機能は、例えば、それらをコードするプラスミドによってそれらを細胞に供給することを必要とせずに、HEK 293パッケージング細胞によって提供され得る。
【0067】
ウイルスベクターは、任意の適切な核酸構築物、例えば、DNAまたはRNA構築物であり得、一本鎖、二本鎖または二重鎖(即ち、WO2001/92551に記載されるように自己相補的)であり得る。
【0068】
パッケージングされたウイルスベクターのウイルスカプシド成分は、パルボウイルスカプシドであり得る。AAV Capおよびキメラカプシドが好ましい。例えば、ウイルスカプシドは、AAVカプシド(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、AAVrh10、AAVrh74、RHM4-1、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAV-LK03、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、および現在公知のまたは後に発見される任意の他のAAVであり得る。例えば、Fields et al., VIROLOGY, volume 2, chapter 69 (4.sup.th ed.,Lippincott-Raven Publishers)を参照されたい。
【0069】
一部の実施形態では、パッケージングされたウイルスベクターのウイルスカプシド成分は、ネイティブAAVカプシドのバリアントである(即ち、ネイティブAAVカプシドと比べて1つまたは複数の改変を含む)。一部の実施形態では、カプシドは、AAV2、AAV5またはAAV8カプシドのバリアントである。好ましい実施形態では、カプシドは、AAV2カプシドのバリアント、例えば、PCT出願番号US18/51812(WIPO公開番号WO2019/060454(例えば、配列番号43~61のうちいずれかのアミノ酸配列を含む)に記載されるものであり、その内容は、参照によって本明細書に取り込まれる。特に好ましい実施形態では、カプシドは、以下のアミノ酸配列を有するカプシドタンパク質を含む:
【化6】
【化7】
【0070】
AAV Capタンパク質の完全な相補体は、VP1、VP2およびVP3を含む。AAV VPカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むORFは、完全な相補体ではないAAV Capタンパク質を含み得、またはAAV Capタンパク質の完全な相補体が提供され得る。
【0071】
さらに別の実施形態では、本発明は、治療的in vivo遺伝子治療における使用のための祖先AAVベクターの使用を提供する。具体的には、in silicoで誘導された配列を、de novo合成し、生物学的活性について特徴付けた。この試みは、9つの機能的な推定祖先AAVの生成ならびにAAV血清型1、2、8および9の予測された祖先であるAnc80の同定をもたらした(Zinn et al., 2015, Cell Reports 12:1056-1068)。ウイルス粒子へとアセンブルすることに加えた、かかる祖先配列の予測および合成は、WO2015/054653に記載された方法を使用することによって達成され得、その内容は、参照によって本明細書に取り込まれる。特に、祖先ウイルス配列からアセンブルされたウイルス粒子の使用は、現代のウイルスまたはその部分よりも、今日のヒト集団における既存の免疫に対して感受性の低減を呈し得る。
【0072】
本発明は、本発明のパッケージングされたウイルスベクターを産生するために培養され得る「宿主細胞」によって包含されるパッケージング細胞を含む。本発明のパッケージング細胞には一般に、異種の(1)ウイルスベクター機能(複数可)、(2)パッケージング機能(複数可)および(3)ヘルパー機能(複数可)を有する細胞が含まれる。これらのコンポーネント機能の各々は、次のセクションにおいて考察される。
【0073】
最初に、ベクターは、当業者に公知のいくつかの方法によって作製され得る(例えば、WO2013/063379を参照されたい)。好ましい方法は、Grieger, et al. 2015, Molecular Therapy 24(2):287-297に記載されており、その内容は、全ての目的のために参照によって本明細書に取り込まれる。簡潔に述べると、HEK293細胞の効率的なトランスフェクションを、出発点として使用し、ここで、適格な臨床的マスター細胞バンクからの接着性HEK293細胞系を使用して、迅速かつスケーラブルなrAAV産生を可能にする振盪フラスコおよびWAVEバイオリアクターにおいて、動物性成分非含有の懸濁条件で成長させる。三重トランスフェクション法(例えば、WO96/40240)を使用して、懸濁HEK293細胞系は、トランスフェクションの48時間後に回収される場合、10ベクターゲノム含有粒子(vg)/細胞よりも高いまたは1014vg/Lよりも高い細胞培養物を生成する。より具体的には、三重トランスフェクションは、パッケージング細胞が3つのプラスミドでトランスフェクトされるという事実を指す:1つのプラスミドは、AAV repおよびcap遺伝子をコードし、別のプラスミドは、種々のヘルパー機能(例えば、アデノウイルスまたはHSVタンパク質、例えば、E1a、E1b、E2a、E4およびVA RNA)をコードし、別のプラスミドは、導入遺伝子およびその種々の制御エレメント(例えば、改変されたGLA遺伝子およびCAGプロモーター)をコードする。
【0074】
所望の収量を達成するために、いくつかの変数、例えば、成長およびトランスフェクションの両方を支持する適合性無血清懸濁培地の選択、トランスフェクション試薬、トランスフェクション条件および細胞密度の選択が、最適化される。AAV血清型1~6、8、9および種々のキメラカプシドの高純度ベクター調製物を生じる、イオン交換クロマトグラフィー法に基づく汎用的な精製戦略もまた開発された。このユーザーフレンドリーなプロセスは、1週間以内に完了し得、満たされた粒子の空の粒子に対する高い比(>90%の満たされた粒子)を生じ、臨床適用に適切な精製後収量(>1×1013vg/L)および純度を提供し、全ての血清型およびキメラ粒子に関して汎用的である。このスケーラブルな製造技術は、網膜血管新生(AAV2)、血友病B(scAAV8)、巨大軸索ニューロパチー(scAAV9)および網膜色素変性症(AAV2)のためのGMP第I相臨床AAVベクターを製造するために利用されており、これらは患者に投与されてきた。さらに、トランスフェクション後の多数の時点において培養培地からrAAVを回収することを必然的に伴う灌流方法を実行することによる、全体的ベクター産生における最低5倍の増加。
【0075】
パッケージング細胞は、パッケージング機能およびベクター機能と共に、ウイルスベクター機能を含む。ウイルスベクター機能は、典型的には、パルボウイルスゲノムの一部分、例えば、repおよびcapが欠失され、改変されたGLA配列およびその関連する発現制御配列によって置き換えられたAAVゲノムを含む。ウイルスベクター機能は、パッケージングのためのウイルスベクターの複製を生じるのに十分な発現制御配列を含む。典型的には、ウイルスベクターは、パルボウイルスゲノムの一部分、例えば、repおよびcapが欠失され、導入遺伝子およびその関連する発現制御配列によって置き換えられたAAVゲノムを含む。導入遺伝子は、典型的には、欠失されたウイルスrepおよびcap ORFの代わりに、2つのAAV TRに挟まれている。適した発現制御配列、例えば、組織特異的プロモーター、および標的細胞における導入遺伝子の組織特異的発現を促進する際の使用のために適切な他の調節配列が含められる。導入遺伝子は、典型的には、治療的ポリペプチドまたはマーカーポリペプチドを産生するために発現され得る核酸配列である。
【0076】
ウイルスベクターにおける使用のために選択された末端反復(TR(複数可))(分離可能なおよび分離可能でない)は、好ましくは、AAV配列であり、血清型1、2、3、4、5および6が好ましい。TRが所望の機能、例えば、ウイルスパッケージング、組込み、および/またはプロウイルスレスキューなどを媒介する限り、分離可能なAAV TRは、野生型TR配列を有する必要はない(例えば、野生型配列は、挿入、欠失、短縮またはミスセンス変異によって変更され得る)。TRは、AAV逆位末端反復として機能する合成配列、例えば、Samulskiらに対する米国特許第5,478,745号に記載される「二重-D配列」であり得、その全開示は、参照によってその全体が本明細書に取り込まれる。典型的には、必ずではないが、TRは、同じパルボウイルス由来である、例えば、両方のTR配列がAAV2由来である。
【0077】
パッケージング機能は、カプシド成分を含む。カプシド成分は、好ましくは、パルボウイルスカプシド、例えば、AAVカプシドまたはキメラAAVカプシド機能由来である。適切なパルボウイルスのウイルスカプシド成分の例は、パルボウイルス科、例えば、自律的パルボウイルスまたはディペンドウイルス由来のカプシド成分である。例えば、カプシド成分は、AAVカプシド、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVrh74、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAV Hu.26、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、AAV2i8、AAV2G9、AAV2i8G9、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312NおよびAAV-LK03、ならびにまだ同定されていないまたは非ヒト霊長類供給源由来の他の新規カプシドから選択され得る。カプシド成分は、2つまたはそれよりも多くのAAVカプシド由来の成分を含み得る。
【0078】
パッケージングされたウイルスベクターは、一般に、ベクターDNAのパッケージングおよび形質導入された細胞における改変されたGLA遺伝子配列の引き続く発現を生じるのに十分な、本明細書で「導入遺伝子」または「導入遺伝子発現カセット」と呼ばれる、TRエレメントに挟まれた改変されたGLA遺伝子配列および発現制御配列を含む。ウイルスベクター機能は、例えば、プラスミドまたはアンプリコンの成分として細胞に供給され得る。ウイルスベクター機能は、細胞系内で染色体外に存在し得る、および/または細胞の染色体DNA中に組み込まれ得る。
【0079】
電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、カチオン性またはアニオン性リポソーム、および核局在化シグナルと組み合わせたリポソームが含まれるがこれらに限定されない、ウイルスベクター機能を保有するヌクレオチド配列を複製およびパッケージングのための細胞宿主中に導入する任意の方法が援用され得る。ウイルスベクター機能がウイルスベクターを使用するトランスフェクションによって提供される実施形態では、ウイルス感染を引き起こすための標準的な方法が使用され得る。
【0080】
パッケージング機能は、ウイルスベクターの複製およびパッケージングのための遺伝子を含む。したがって、例えば、パッケージング機能は、ウイルス遺伝子発現、ウイルスベクター複製、組み込まれた状態からのウイルスベクターのレスキュー、ウイルス遺伝子発現、およびウイルス粒子へのウイルスベクターのパッケージングのために必要な機能を、必要に応じて含み得る。パッケージング機能は、遺伝子構築物、例えば、プラスミドもしくはアンプリコン、バキュロウイルス、またはHSVヘルパー構築物を使用して、パッケージング細胞に一緒にまたは別々に供給され得る。パッケージング機能は、パッケージング細胞内で染色体外に存在し得るが、好ましくは、細胞の染色体DNA中に組み込まれる。例には、AAV RepおよびCapタンパク質をコードする遺伝子が含まれる。
【0081】
ヘルパー機能は、ウイルスベクターのパッケージングを開始するために要求されるパッケージング細胞の活動性感染を確立するために必要なヘルパーウイルスエレメントを含む。例には、ウイルスベクターのパッケージングを生じさせるのに十分な、アデノウイルス、バキュロウイルスおよび/またはヘルペスウイルスに由来する機能が含まれる。例えば、アデノウイルスヘルパー機能は、典型的には、アデノウイルス成分E1a、E1b、E2a、E4およびVA RNAを含む。パッケージング機能は、要求されるウイルスによるパッケージング細胞の感染によって供給され得る。パッケージング機能は、遺伝子構築物、例えば、プラスミドまたはアンプリコンを使用して、パッケージング細胞に一緒にまたは別々に供給され得る。例えば、Rabinowitz et al., 2002, J. Virol. 76:791に記載されるpXRヘルパープラスミドおよびGrimmet al., 1998, Human Gene Therapy 9:2745-2760に記載されるpDGプラスミドを参照されたい。パッケージング機能は、パッケージング細胞内で染色体外に存在し得るが、好ましくは、細胞の染色体DNA(例えば、HEK293細胞中のE1またはE3)中に組み込まれる。
【0082】
任意の適切なヘルパーウイルス機能が援用され得る。例えば、パッケージング細胞が昆虫細胞である場合、バキュロウイルスがヘルパーウイルスとして機能し得る。ヘルペスウイルスもまた、AAVパッケージング方法におけるヘルパーウイルスとして使用され得る。AAV Repタンパク質をコードするハイブリッドヘルペスウイルスは、よりスケーラブルなAAVベクター産生スキームを有利に促進し得る。
【0083】
電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、カチオン性またはアニオン性リポソーム、および核局在化シグナルと組み合わせたリポソームが含まれるがこれらに限定されない、ヘルパー機能を保有するヌクレオチド配列を複製およびパッケージングのための細胞宿主中に導入する任意の方法が援用され得る。ヘルパー機能が、ウイルスベクターを使用するトランスフェクションまたはヘルパーウイルスを使用する感染によって提供される実施形態では、ウイルス感染を引き起こすための標準的な方法が使用され得る。
【0084】
当該分野で公知の任意の適切な許容性細胞またはパッケージング細胞が、パッケージングされたウイルスベクターの産生において援用され得る。哺乳動物細胞または昆虫細胞が好ましい。本発明の実施におけるパッケージング細胞の産生のために有用な細胞の例には、例えば、ヒト細胞系、例えば、VERO、WI38、MRC5、A549、HEK 293細胞(これらは、構成的プロモーターの制御下で機能的アデノウイルスE1を発現する)、B-50または任意の他のHeLa細胞、HepG2、Saos-2、HuH7、およびHT1080細胞系が含まれる。一態様では、パッケージング細胞は、懸濁培養で成長させることが可能であり、より好ましくは、細胞は、無血清培養で成長させることが可能である。一実施形態では、パッケージング細胞は、無血清培地中で懸濁下で成長するHEK293である。別の実施形態では、パッケージング細胞は、米国特許第9,441,206号に記載され、ATCC番号PTA 13274として寄託されたHEK293細胞である。WO2002/46359に開示されたものが含まれるがそれらに限定されない多数のrAAVパッケージング細胞系が、当該分野で公知である。別の態様では、パッケージング細胞は、セルスタックの形態で培養される(例えば、HEK293細胞を播種した10層のセルスタック)。
【0085】
パッケージング細胞としての使用のための細胞系には、昆虫細胞系が含まれる。AAVの複製を可能にし、培養物中で維持され得る任意の昆虫細胞が、本発明に従って使用され得る。例には、Spodoptera frugiperda、例えば、Sf9もしくはSf21細胞系、Drosophila spp.細胞系、または蚊細胞系、例えば、Aedes albopictus由来の細胞系が含まれる。好ましい細胞系は、Spodoptera frugiperda Sf9細胞系である。以下の参考文献が、異種ポリペプチドの発現のための昆虫細胞の使用、核酸をかかる細胞中に導入する方法、および培養物中でかかる細胞を維持する方法に関するそれらの教示について、本明細書に取り込まれる:Methods in Molecular Biology, ed. Richard, Humana Press, N J (1995);O'Reillyet al., Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual, Oxford Univ. Press(1994);Samulski et al., 1989, J. Virol. 63:3822-3828;Kajigaya et al., 1991,Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 88: 4646-4650;Ruffing et al., 1992, J. Virol.66:6922-6930;Kimbauer et al., 1996, Virol. 219:37-44; Zhao et al., 2000, Virol.272:382-393;およびSamulskiら、米国特許第6,204,059号。
【0086】
本発明に従うウイルスカプシドは、当該分野で公知の任意の方法を使用して、例えば、バキュロウイルスからの発現によって、産生され得る(Brown et al., (1994) Virology 198:477-488)。さらなる代替法として、本発明のウイルスベクターは、例えば、Urabeet al., 2002, Human Gene Therapy 13:1935-1943によって記載されるように、rep/cap遺伝子およびrAAV鋳型を送達するためにバキュロウイルスベクターを使用して、昆虫細胞において産生され得る。
【0087】
別の態様では、本発明は、昆虫細胞におけるrAAV産生の方法を提供し、ここで、バキュロウイルスパッケージングシステムまたはベクターは、これらの遺伝子を、バキュロウイルスベクターのポリヘドリンコード領域中に操作し、宿主細胞中へのトランスフェクションによってウイルス組換え体を産生することによって、AAV RepおよびCapコード領域を保有するように構築され得る。特に、AAVのためにバキュロウイルス産生を使用する場合、好ましくは、AAV DNAベクター産物は、AAV ITRへの変異を使用することのない、自己相補的なAAV様分子である。これは、機能的Rep酵素活性の欠如による、自己相補的なDNA分子を生じる昆虫細胞における非効率的なAAV repニッキングの副産物であるようである。宿主細胞は、バキュロウイルス感染した細胞であり、またはバキュロウイルスヘルパー機能をコードするさらなる核酸がその中に導入されており、またはその中にこれらのバキュロウイルスヘルパー機能を含む。これらのバキュロウイルスのウイルスは、AAV成分を発現し得、引き続いて、カプシドの産生を促進し得る。
【0088】
産生の間に、パッケージング細胞は、一般に、ウイルスベクターの複製およびパッケージングを生じるのに十分なヘルパー機能およびパッケージング機能と共に、1つまたは複数のウイルスベクター機能を含む。これらの種々の機能は、遺伝子構築物、例えば、プラスミドまたはアンプリコンを使用して、パッケージング細胞に一緒にまたは別々に供給され得、細胞系内で染色体外に存在し得る、または細胞の染色体中に組み込まれ得る。
【0089】
染色体外に取り込まれたもしくは細胞の染色体DNA中に組み込まれた1つもしくは複数のベクター機能を有する細胞系、染色体外に取り込まれたもしくは細胞の染色体DNA中に組み込まれた1つもしくは複数のパッケージング機能を有する細胞系、または染色体外に取り込まれたもしくは細胞の染色体DNA中に組み込まれたヘルパー機能を有する細胞系など、細胞には、既に取り込まれた述べられた機能のうちいずれか1つまたは複数が供給され得る。
【0090】
rAAVベクターは、カラムクロマトグラフィーまたは塩化セシウム勾配などの、当該分野で標準的な方法によって精製され得る。rAAVベクターを精製するための方法は、当該分野で公知であり、これには、Clark et al., 1999, Human Gene Therapy 10(6):1031-1039;Schenpp andClark, 2002, Methods Mol. Med. 69:427-443;米国特許第6,566,118号およびWO98/09657に記載される方法が含まれる。
【0091】
処置方法
【0092】
ある特定の実施形態では、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一なもしくは100%同一なヌクレオチド配列を有する核酸、またはかかる核酸と少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物の治療有効量をファブリー病の処置を必要とする対象に投与することによる、かかる対象におけるかかる処置のための方法が提供される。一部の態様では、配列番号1と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を有する核酸は、対象におけるグロボトリアオシルセラミド(Gb3)のレベルを低減させるのに有効な量で対象に投与される。
【0093】
関連の態様では、ファブリー病の処置における使用のための、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一なまたは100%同一なヌクレオチド配列を含む核酸が提供される。
【0094】
他の関連の態様では、医薬の製造のための、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一なまたは100%同一なヌクレオチド配列を含む核酸の使用が提供される。
【0095】
他の関連の態様では、ファブリー病の処置のための医薬の製造のための、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一なまたは100%同一なヌクレオチド配列を含む核酸の使用が提供される。
【0096】
一部の態様では、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一なまたは100%同一なヌクレオチド配列は、発現制御配列に作動可能に連結される。
【0097】
好ましい実施形態では、CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸の治療有効量を、ファブリー病を処置することを必要とする対象に投与するステップを含む、またはかかる核酸を含む医薬組成物を上記対象に投与することによる、ファブリー病を処置するための方法が提供される。
【0098】
他の実施形態では、ファブリー病の処置における使用のための、CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸が提供される。一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも98%同一な、または100%同一な配列を含む。
【0099】
他の実施形態では、ファブリー病の処置のための医薬の製造のための、CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸の使用が提供される。
【0100】
関連の態様では、ファブリー病の処置における使用のための、またはファブリー病の処置のための医薬の製造における使用のための、(i)発現制御配列に作動可能に連結した、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一なまたは100%同一なヌクレオチド配列を有する核酸および(ii)ネイティブもしくはバリアントAAVカプシドを含む組換えAAV(rAAV)ビリオン、またはかかるrAAVを含む医薬組成物が提供される。
【0101】
一部の実施形態では、rAAVビリオンは、ネイティブAAV1、AAV2、AAV6またはAAV8カプシドを含む。他の実施形態では、rAAVビリオンは、AAV1、AAV2、AAV6またはAAV8と比べて1つまたは複数の改変を含むバリアントAAVカプシドを含む。好ましい実施形態では、AAVカプシドは、配列番号4の配列またはそれと少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一な配列を含む。
【0102】
好ましい実施形態では、ファブリー病の処置におけるまたはファブリー病の処置のための医薬の製造のためのrAAVの使用が提供され、rAAVは、(i)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するカプシドタンパク質を含むカプシドを含む。特に好ましい実施形態では、rAAVは、(i)配列番号6のヌクレオチド配列を含む核酸および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するカプシドタンパク質を含むカプシドを含む。一部の態様では、rAAVは、筋肉内および/または血管内(例えば、静脈内)注射によって投与される。特に好ましい実施形態では、rAAVは、単回静脈内投与として投与される。
【0103】
他の態様では、必要に応じて発現制御配列に作動可能に連結した、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一なまたは100%同一なヌクレオチド配列を有する核酸と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。一部の実施形態では、医薬組成物は、CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む。一部の実施形態では、CAGプロモーターは、配列番号5と少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも98%同一な配列を含む、または配列番号5と同一である。
【0104】
他の態様では、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と、(i)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するカプシドタンパク質を含むカプシドを含む感染性rAAVとを含む医薬組成物が提供される。関連の態様では、感染性rAAVは、(i)配列番号4のアミノ酸配列を有するカプシドタンパク質を含むカプシドならびに(ii)5’から3’に、(a)AAV2末端反復、(b)CAGプロモーター、(c)請求項3に記載の核酸、(d)ポリアデニル化配列および(e)AAV2末端反復を含む核酸を含む。特に好ましい実施形態では、感染性rAAVは、(i)配列番号4のアミノ酸配列を有するカプシドタンパク質を含むカプシドおよび(ii)配列番号6の配列またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一な配列を含む核酸を含む:
【化8】
【化9】
【化10】
【0105】
一部の好ましい実施形態では、ファブリー病を有するヒト対象には、薬学的に許容される担体と、(i)配列番号4として記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるカプシドタンパク質を含むカプシドおよび(ii)配列番号6の配列を含む異種核酸を含むrAAVベクターとを含む、医薬組成物が投与され、対象には、1つまたはそれより多くの用量のrAAVベクターが投与され、各用量は、約1×1012~約1×1015ベクター粒子/kgもしくはベクターゲノム/kg、1×1012~1×1015ベクター粒子もしくはベクターゲノム、または約1×1012、約2×1012、3×1012、約4×1012、約5×1012、約6×1012、約7×1012、約8×1012、約9×1012、約1×1013、約2×1013、約3×1013、約4×1013、約5×1013、約6×1013、約7×1013、約8×1013、約9×1013、約1×1014、約2×1014、約3×1014、約4×1014、約5×1014、約6×1014、約7×1014、約8×1014、約9×1014もしくは約1×1015ベクター粒子/kgもしくはベクターゲノム/kgを含む。一部の特に好ましい態様では、対象には、1つまたはそれより多くの用量のrAAVが投与され、各用量は、約1×1012vg/kg~1×1014vg/kg、例えば、約3×1012、約1×1013、3×1013または約5×1013ベクター粒子/kgまたはベクターゲノム/kgを含む。一部の特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、単回静脈内注射を介して、ファブリー病を有するヒトに投与され、単回静脈内注射は、ヒト対象におけるファブリー病を処置するのに有効である。他の実施形態では、医薬組成物は、単回筋肉内注射を介して、ファブリー病を有するヒトに投与される。
【0106】
一部の好ましい実施形態では、薬学的に許容される担体と、(i)配列番号4として記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるカプシドタンパク質を含むカプシドおよび(ii)配列番号6の配列を含む異種核酸を含むrAAVベクターとを含む、医薬組成物が提供され、この医薬組成物は、1×1010~1×1017ベクター粒子もしくはベクターゲノム、1×1013~1×1016ベクター粒子もしくはベクターゲノム、または約1×1013、約2×1013、3×1013、約4×1013、約5×1013、約6×1013、約7×1013、約8×1013、約9×1013、約1×1014、約2×1014、約3×1014、約4×1014、約5×1014、約6×1014、約7×1014、約8×1014、約9×1014、約1×1015、約2×1015、約3×1015、約4×1015、約5×1015、約6×1015、約7×1015、約8×1015、約9×1015、約1×1016、約5×1016もしくは約8×1016ベクター粒子もしくはベクターゲノムを含む。
【実施例
【0107】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を例示しており、本発明の範囲を限定することを決して意図しない。本発明は、その好ましい実施形態に関して記載されてきたが、その種々の改変が、本出願を読んだ当業者に明らかとなる。
(実施例1)
GLA cDNA配列のコドン最適化
【0108】
内因性GLA分泌シグナルを含むヒトGLAオープンリーディングフレームcDNA配列(GenBankアクセッション番号NM_000169.3;配列番号3)を、ヒト発現のためにコドン最適化した。最適化アルゴリズムは、コドン使用バイアス、GC含量、CpGジヌクレオチド含量、陰性CpG島、mRNA二次構造、RNA不安定性モチーフ、潜在スプライシング部位、未成熟ポリアデニル化部位、内部カイ部位およびリボソーム結合部位、ならびに反復配列が含まれるがこれらに限定されないパラメーターを含んだ。
【0109】
ヒトにおけるコドン使用バイアスを、コドン適応指数(CAI)を0.75から0.93にアップグレードすることによって変化させた。平均GC含量を、ネイティブ配列における48.6%から、最適化された配列における57.9%へと最適化して、mRNAの半減期を延長させた。mRNAのリボソーム結合および安定性に影響を与えるステム-ループ構造を、最適化された配列において破壊した。さらに、負のシス作用性部位をスクリーニングし、欠失させて、ヒト細胞における遺伝子の発現を最適化し、いくつかの制限酵素部位を欠失させた。
【0110】
配列番号1として本明細書で示される、得られたコドン最適化されたヌクレオチド配列は、改善されたコドン使用、変更されたGC含量、より良いmRNA安定性、および負のシス作用性エレメントの改変を含む。
(実施例2)
コドン最適化されたGLA cDNA配列は、ファブリー病を有する患者由来の心筋細胞においてより高いレベルで発現される
【0111】
ヒトin vitroモデル系を生成して、ヒトファブリー病患者に由来する罹患ヒト心筋細胞における配列番号1のヌクレオチド配列を有するヒトGLA核酸の発現、および疾患表現型の機能的修正を評価した。
【0112】
材料および方法
【0113】
線維芽細胞の細胞培養および人工多能性幹細胞系への再プログラミング
【0114】
非罹患線維芽細胞または男性のヒトファブリー病の線維芽細胞を、Coriell Instituteから得、15%ウシ胎仔血清(FBS、Hyclone)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ThermoFisher)を含むイーグル改変必須培地(EMEM)中で培養した。再プログラミングのために、細胞を、0.05%トリプシンを使用して継代し、6ウェル組織培養プレート中に1cm当たり2.5×10細胞の密度でプレーティングした。細胞を、正常酸素圧条件において37℃、5%COで保った。
【0115】
罹患線維芽細胞の細胞再プログラミングを、製造業者の指示(Simplicon RNA Reprogramming Kit、EMD Millipore)に従って、Oct4-Klf4-Sox2-Glis1ポリシストロン性転写物の単一のRNAトランスフェクションによって実施した。10日目に、およそ5×10~1×10の再プログラミングされた細胞を、ヒトiPSC Reprogramming Boost Supplement II(EMD Millipore)を補充したB18Rタンパク質(200ng/mL)含有するマウス胚線維芽細胞(MEF)順化培地において、成長因子低減Matrigel(Corning)上に再プレーティングした。20日目に、変更された形態(morphology)および小さいコロニーを形成する能力によって認識される、再プログラミングされた細胞を、mTeSR-1培地(Stem Cell Technologies)に移した。およそ200細胞またはそれよりも大きいコロニーを手動で単離し、mTeSR-1培地中でMatrigelコーティングされたプレート上にプレーティングした。ファブリー-iPSC系を、単一のコロニーから拡大増殖させた。ファブリー-iPSC系を、mTeSR-1維持培地中でMatrigel上で培養し、Gentle Cell Dissociation Reagent(Stem Cell Technologies)を使用して、4~5日毎に70~80%コンフルエンスで継代培養した。3つ全ての胚葉へのランダムな分化を確実にするために、iPSC胚様体(EB)を、懸濁培養中で1週間形成させ、次いで、1.4μL/100mL培地のベータ-メルカプトエタノール(Thermo Fisher Scientific)と共に1×GlutaMax、1×非必須アミノ酸を含有するDMEM中20%のノックアウト血清代替物中で、さらに4週間にわたって接着条件において分化させた。心分化において使用したiPSCクローンを、会社のプロトコールに従って、標準的な核型決定のためにCell Line Geneticsに提出した。
【0116】
ファブリー病に罹患したiPSC心筋細胞の分化
【0117】
ファブリーiPSCを、成長因子低減Matrigel(GFR Matrigel、Corning)でコーティングされた3つの12ウェルプレート中に、mTeSR-1中25,000細胞/cmで播種した。コンフルエンシーに達した時点で、培養物を、インスリンなしのB27補助物質を含むRMPI 1640(RB-、ThermoFisher)中でのWnt経路の逐次のGSK3βおよびPorcupine阻害に供した。6日目に、細胞に、RMPI 1640プラスB27補助物質(RB+、ThermoFisher)を与えた。15日目までに目に見える拍動を呈したファブリー病に罹患した心筋細胞を、RB+中で、GFR Matrigelでコーティングされた12ウェルプレート中に、1:2の比で継代した。継代後、ファブリー心筋細胞を、以前に公開された分化パラダイム(Lian et al., PNAS, 109(27):E1848-57)に従って、グルコース欠乏を介して精製した。最初の拍動は、継代の7日後に出現した。精製の2週間後、ファブリー病に罹患した心筋細胞を、細胞特徴付けのため、ならびに、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)配列番号5のCAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む組換えAAV(rAAV)粒子による形質導入のために使用した。
【0118】
ファブリー病に罹患したiPSC心筋細胞の形質導入
【0119】
心筋細胞を、実験プレート中への継代の14日後に、rAAVで形質導入した。形質導入の当日、3つのウェルを回収して、細胞計数を得た。細胞を、細胞計数およびウイルス力価に基づいて、25、100、250の感染多重度(MOI)で形質導入した。ビヒクルを、最も高い体積で添加した。細胞を、ウイルスと共に48時間インキュベートし、次いで、培地交換を受けさせた。培地を、形質導入の6日後の回収まで、一日おきに(every day other day)交換した。
【0120】
免疫細胞化学(ICC)
【0121】
iPSCおよび胚葉ICC
【0122】
iPSCまたは30日齢のプレーティングしたEBを、マグネシウムもカルシウムも含まないリン酸緩衝食塩水(PBS-/-)で1回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで室温で15分間固定した。次いで、細胞を、PBS-/-で3回洗浄し、PBS-/-中0.2%のTriton X-100中の2%ウシ血清アルブミンおよび5%ヤギ血清を用いて30分間ブロッキングした。Nanog、Oct-4、Sox-2またはβ-チューブリンII、HNF-αおよびα-SMA一次抗体を、室温で2時間インキュベートし、その後、ヤギ抗マウスまたはヤギ抗ウサギAlexaFluor(ThermoFisher)二次抗体を室温で1時間インキュベートした。細胞をDAPIで対比染色して核を可視化し、Zeiss Axiovert.A1倒立顕微鏡で撮像した。
【0123】
心筋細胞ICC
【0124】
感染の6日後に、細胞をPBS-/-で1回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで室温で15分間固定した。次いで、細胞を、PBS-/-で3回洗浄し、PBS-/-中0.2%のTriton X-100中の2%ウシ血清アルブミンおよび5%ヤギ血清を用いて30分間ブロッキングした。アルファガラクトシダーゼAに対する一次抗体(Abnova)および心筋トロポニンTに対する一次抗体(cTNT、R&D)を、ブロッキング溶液中で細胞と共に室温で2時間インキュベートし、その後、ヤギ抗マウスAlexaFluor-555(ThermoFisher)二次抗体と共に室温で1時間インキュベートした。さらに、コンジュゲートされたCD77(Gb3)-AlexaFluor647(BD)を、ブロッキング緩衝液中で、固定された細胞と共に1時間インキュベートした。細胞を3回洗浄し、DAPIまたはHoechst 33342で対比染色して核を可視化し、Zeiss Axiovert.A1倒立顕微鏡で撮像した。
【0125】
ウエスタンブロット
【0126】
感染の6日後に、細胞を0.05%トリプシンを用いて浮き上がらせ(lifted)、300×gで5分間ペレット化した。溶解物を、RIPA緩衝液プラスプロテアーゼ阻害剤を使用して作製した。溶解物を、氷上で15分間インキュベートし、21,000×gで15分間遠心分離した。上清を収集し、ビシンコニン酸アッセイ(BCA)を実行して、タンパク質濃度を決定した。濃度を正規化し、ゲルに均等にローディングした。SDS-PAGEを、4~12%ポリアクリルアミドゲルを使用して、200ボルトで30分間泳動した。タンパク質を、0.2μmニトロセルロースメンブレンに移し、抗アルファガラクトシダーゼA(Atlas)抗GAPDH(Stem Cell Technologies)抗体でプローブし、その後、種特異的西洋ワサビペルオキシダーゼ二次抗体で一晩プローブした。高感度化学発光基質を使用して、タンパク質バンドを発色させ、バンド検出を、BioRad ChemiDoc MP上で捕捉した。
【0127】
AGA活性アッセイ
【0128】
AGA活性アッセイを、アルファ-ガラクトシダーゼ合成蛍光分析基質(BioVision、K407)を用いて実施した。AGA活性アッセイを、以下の変更点を伴って、製造業者のプロトコールに従って実施した。細胞を、0.25%トリプシンを使用して解離させ、300×gで3分間遠心分離した。細胞を、アルファ-ガラクトシダーゼ緩衝液で溶解し、氷上で10分間インキュベートした。試料を、12,000×gで4℃で10分間遠心分離し、上清を-80℃で貯蔵した。次の日、試料を氷上で解凍し、BCAアッセイを介したタンパク質定量を実施して、解析の間のタンパク質濃度正規化を可能にした。AGA活性アッセイ反応物を、室温で1時間インキュベートし、適した体積の停止緩衝液を使用して停止させた。AGA活性アッセイ反応物を、AGA標準曲線の最高濃度にゲインを設定して、Cytation3プレートリーダー(BioTek)上で360励起/445発光において即座に読み取った。
【0129】
表2.抗体のリスト
【表2】
【0130】
結果および考察
【0131】
ファブリー病に罹患した人工多能性幹細胞の誘導および特徴付け
【0132】
GLA遺伝子における変異(AGAタンパク質活性の非存在を典型的には生じる十分に記載された病原性変異であるW162X)を有するファブリー患者線維芽細胞を、Coriell Instituteから得た。再プログラミングの前に、AGAタンパク質レベルを、ウエスタンブロットを介して検出して、疾患表現型を確認した。正常線維芽細胞系および組換えヒトAGAタンパク質を、AGAタンパク質レベルについての陽性対照として使用した。ファブリー病に罹患した線維芽細胞は、野生型(WT)線維芽細胞と比較して、AGAタンパク質の欠如を呈した(図1)。この疾患特徴の確認の後、再プログラミングを開始した。
【0133】
ファブリー患者線維芽細胞を、Simplicon RNA Reprogramming Kitを使用して再プログラミングして、ヒトファブリー病細胞モデルを創出した。線維芽細胞を、RNAレプリコンを含有する多能性因子でトランスフェクトし、小さい幹細胞コロニーが出現するまで、製造業者の指示に従って培養した。人工多能性幹細胞(iPSC)コロニーを、クローン的に拡大増殖させ、多能性転写因子発現について特徴付けた。再プログラミングされたファブリーiPSCコロニーは、3つの非常に重要な多能性転写因子であるNanog、Oct4およびSox2の陽性発現および適度な局在化を示した(図2A、上パネル)。多能性タンパク質を発現することに加えて、iPSCは、各胚葉へと分化することができるはずである。ファブリーiPSCから形成された胚様体の自発的分化の後、3つ全ての胚葉が、外胚葉はβ-チューブリンIIIによって、内胚葉はHNF-αによって、中胚葉はα-平滑筋アクチンによって検出された。ファブリーiPSCが、再プログラミングの間に起こり得る染色体異常を含有しないことを確実にするために、核型解析を実施した。異常は検出されなかった(図2B)。
【0134】
ファブリー病に罹患した人工多能性幹細胞由来の心筋細胞の特徴付け
【0135】
ファブリーiPSCを心筋細胞へと分化させて、臨床的に適切な細胞型におけるファブリー病のモデルを開発した。生成された心筋細胞は、分化のおおよそ7日後に拍動し始め、エンドポイント解析まで拍動し続けた(データは示さず)。フローサイトメトリーおよび免疫細胞化学をファブリーiPSC心筋細胞に対して実施して、心特異的マーカー(cardiac specific maker)である心筋トロポニンT(cTNT)を使用して純度を試験した。分化により、97%のcTNT陽性細胞が生じ(図3A)、これは、免疫細胞化学染色によって確認された(図3B)。
【0136】
ファブリー病に罹患したiPSC-心筋細胞における、配列番号1のコドン最適化されたGLA遺伝子を保有するrAAVによる形質導入は、AGAのロバストなタンパク質発現をもたらす
【0137】
ファブリーiPSC心筋細胞を、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)配列番号5のCAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAV粒子の形質導入の前に、実験プレートへの播種後14日間培養した。ファブリーiPSC心筋細胞を、25、100または500のMOIで形質導入した。用量を、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結したEFGP遺伝子を含む核酸を含むrAAVを使用した以前の形質導入効率データから決定した。細胞を、形質導入の6日後に回収した。重要なことに、形質導入されていないファブリーiPSC心筋細胞は、ICC、フローサイトメトリーおよびウエスタンブロットによって、AGAタンパク質の欠如を呈し、これにより、かかる細胞は、配列番号1のコドン最適化されたGLA遺伝子の導入後のAGAの発現レベルおよび活性を試験するための適切な疾患モデルになった。形質導入されていない細胞の免疫細胞化学(ICC)は、AGAタンパク質発現の欠如を示したが、rAAVで形質導入した細胞は、ロバストなAGA染色を呈した(図4A)。
【0138】
細胞を、フローサイトメトリーのためにも回収し、生存能、AGAおよびcTNTについて染色した。AGAの発現を有した成熟心筋細胞(cTNT陽性)を指し示す二重陽性集団を定量した(図4B)。顕著な用量依存的AGAタンパク質発現応答が、成熟心筋細胞において、rAAVによる形質導入後に観察された。わずか25のMOIが、67%のcTNTおよびAGA二重陽性細胞(cTNT+/AGA+)をもたらし、これは、rAAVが、ファブリーiPSC心筋細胞をロバストに形質導入することができ、コドン最適化された導入遺伝子ペイロードを発現することができることを指し示している。100のMOIは、89%のcTNT+/AGA+をもたらし、250のMOIは、二重陽性集団を93%まで増加させた。
【0139】
総タンパク質を、ウエスタンブロットのために形質導入されたファブリーiPSC心筋細胞から抽出して、細胞溶解物中の総AGAタンパク質を試験した。形質導入されていない細胞は、疾患表現型の指標であるAGAタンパク質を欠如した。rAAVで形質導入したファブリーiPSC心筋細胞は、抗AGA抗体を用いてプローブした後、49kDaの正確なサイズに、強いAGAタンパク質発現を示した(図4C)。
【0140】
ファブリー病に罹患したiPSC-心筋細胞におけるrAAV形質導入後の、増強されたAGA活性
【0141】
形質導入されたファブリーiPSC心筋細胞を、アルファ-ガラクトシダーゼ緩衝液で溶解し、そのアルファ結合の切断性に関してアルファ-ガラクトシダーゼ活性を定量するために使用した。ファブリーiPSC心筋細胞試料を、アルファ-ガラクトシダーゼ特異的合成基質と共に1時間インキュベートして、切断された基質の量を蛍光分析的に定量した。データにより、ファブリーiPSC心筋細胞における、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)配列番号5のCAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVの形質導入後の、AGA活性における用量依存的な増加が明らかになった(図5A)。
【0142】
ファブリー病の顕著な特徴となる病理学は、細胞のGb3蓄積である(Waldek etal., Life expectancy and cause of death in males and females with Fabrydisease: findings from the Fabry Registry. Genetics in Medicine : OfficialJournal of the American College of Medical Genetics, 11(11), 790-796 (2009))。形質導入されていないファブリーiPSC心筋細胞には、Gb3免疫染色および蛍光顕微鏡検査を介して観察された実質的なGb3の細胞蓄積が存在した(図5B、左上パネル)。25ほどの低さのMOIでのrAAVの形質導入は、Gb3免疫染色における減少を介して可視化されるGb3蓄積を大幅に低減させた(図5B)。
【0143】
結論
【0144】
Gb3を低減させ、それにより、臨床転帰を改善する、GLAを細胞自律的に発現する重要な組織に標的化された永続的な処置、例えば、単回投与の静脈内遺伝子治療薬への、切実かつ差し迫った必要性が存在する。実験データは、配列番号4のカプシドタンパク質を含むカプシドを有するAAVを介した、配列番号1のコドン最適化されたGLA遺伝子の送達が、ファブリー病の重要な臓器、特に心組織を効率的に標的化することを実証している。ファブリー病に罹患したiPSC心筋細胞におけるこのAAVの形質導入は、基底レベルを十分に上回って、迅速な細胞自律的な用量関連のAGAタンパク質発現および活性を細胞内で生じた。AGA活性における増加は、その蓄積がヒトにおけるファブリー病の病理発生の中核を成すとみなされるGb3のクリアランスを生じた。
(実施例3)
コドン最適化されたGLA cDNA配列は、ファブリー病を有する患者由来の内皮細胞において、より高いレベルで発現される
【0145】
材料および方法
【0146】
内皮分化
【0147】
ファブリーiPSCを、分化の前に、6ウェルプレート中で維持し、3~4日毎に継代培養した。2つの12ウェルプレートを、成長因子低減Matrigel(Corning)で事前コーティングした。ファブリーiPSCを、mTESR1中で80~100%コンフルエンシーになるまで成長させた。適した密度に達した時点で、培養物を、逐次のGSK3βおよびVEGF活性化に供し、その後、以前に公開された分化パラダイム(Chalet Meylan, L., Patsch, C., & Thoma, E. (2015). Endothelialcells differentiation from hPSCs. Protocol Exchange.https://doi.org/10.1038/protex.2015.055)に従って、StemPro-34培地中で拡大増殖させた。6日目に、内皮細胞を、磁気細胞選別によって精製し、CryoStor10(Stem Cell Technologies)中で5×10アリコートで凍結させた。内皮細胞を、VEGF165(Peprotech)、1×Glutamax(Thermo Fisher)および1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco 15140-122)を補充したStemPro-34 SFM(1×)培地中で、フィブロネクチンコーティングされたプレート上に1cm当たり2.6E+4細胞で解凍した。内皮細胞を、Accutase細胞剥離溶液を使用して解凍した5日後に、1:2分割した。
【0148】
内皮細胞形質導入
【0149】
内皮細胞を、播種の4日後に、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVで形質導入した。形質導入の24時間後、培地を吸引し、新たなStemPro-34 SFM(1×)培地を添加した。培地を一日おきに交換した。3つのウェルを回収して、細胞計数を得た。細胞を、細胞計数およびウイルス力価に基づいて、50、100、500および1000の感染多重度(MOI)で形質導入した。体積が最も高いMOIの体積と等価になるように、ビヒクルを添加した。細胞を24時間インキュベートし、次いで、培地交換を受けさせた。培地を、形質導入の4日後の回収まで、一日おきに交換した。
【0150】
免疫細胞化学のために、10μMのGb3(Matreya、LLC.)を、ウイルスと共に1日前に、形質導入後のすべての飼料(feeding)に添加して、ファブリー病に関連するGb3の蓄積を促進した。
【0151】
免疫細胞化学(ICC)
【0152】
ファブリーiPSC内皮ICC
【0153】
細胞培養に対するある特定の改変を行って、rAAVによる形質導入に応答したGb3検出を可能にした。最初に、細胞を、フィブロネクチン-コーティングされたガラスチャンバースライド(LabTek)上で培養した。細胞に、2日前に、形質導入の際に、およびウイルスのウォッシュアウトの際に、10μMのGb3をローディングした。感染の4日後に、細胞を、マグネシウムもカルシウムも含まないリン酸緩衝食塩水(PBS-/-)で1回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで室温で1時間固定した。次いで、細胞をPBS-/-で3回洗浄し、PBS-/-中0.2%のTriton X-100中の2%ウシ血清アルブミンおよび5%ヤギ血清を用いて30分間ブロッキングした。AGAに対する1:100希釈した一次抗体(Abnova H00002717-B01P、カスタムPhycoerythroitinコンジュゲート)を、ブロッキング溶液中で細胞と共に室温で2時間インキュベートした。細胞を、DAPIで対比染色して核を可視化し、Zeiss Axiovert.A1倒立顕微鏡で撮像した。さらに、コンジュゲートBDクローンb5b CD77-Alexa-647(BD 563632)およびMiltenyi CD31-FITCを、ICCブロッキング緩衝液中の1:100の抗体と共に固定培養物を1時間インキュベートすることによって使用した。
【0154】
ウエスタンブロット
【0155】
形質導入の4日後に、細胞をAccutaseを用いて浮き上がらせ、300×gで5分間ペレット化した。溶解物を、RIPA緩衝液(Thermo)プラスプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を使用して作製した。溶解物を、氷上で15分間インキュベートし、21,000×gで15分間遠心分離した。上清を収集し、ビシンコニン酸アッセイ(BCA)を実行して、タンパク質濃度を決定した。濃度を正規化した。SDS-PAGEを、4~12%ポリアクリルアミドゲルを使用して、200Vで30分間泳動した。タンパク質を、0.2umニトロセルロースメンブレンに移し、抗AGA(Atlas、HPA000237、1:200)および抗GAPDH(Stem Cell Technologies、5174、1:5000)抗体でプローブし、その後、種特異的西洋ワサビペルオキシダーゼ二次抗体で一晩プローブした。高感度化学発光を使用して、タンパク質バンドを発色させ、バンド検出を、BioRad ChemiDoc MP上で捕捉した。バンド定量を、Image Lab、Microsoft ExcelソフトウェアおよびGraphPad Prism8を使用して解析した。
【0156】
AGA活性アッセイ
【0157】
AGA活性アッセイを、アルファ-ガラクトシダーゼ合成蛍光分析基質(BioVision、K407)を用いて実施した。AGA活性アッセイを、以下の変更点を伴って、製造業者のプロトコールに従って実施した。簡潔に述べると、使用済みの培地を収集し、液体窒素を使用して瞬間凍結した。細胞を、トリプシン0.05%を使用して解離させ、300×gで3分間遠心分離して、上清を除去した。次いで、細胞をAGA緩衝液で溶解し、氷上で10分間インキュベートした。試料を、12,000×gで4℃で10分間遠心分離した。上清を収集し、-80℃で貯蔵した。次の日、試料を氷上で解凍し、BCAアッセイを介したタンパク質定量を、AGA活性アッセイに加えて実施した。AGA反応時間は1時間であり、試料を、Cytation3プレートリーダー(BioTek)上で360励起/445発光において読み取り、ゲインを、AGA標準曲線の最高濃度に設定した。
【0158】
表3-抗体のリスト
【表3】
【0159】
結果
【0160】
ファブリー病に罹患した人工多能性幹細胞由来の内皮細胞の特徴付け
【0161】
ファブリーiPSCを内皮細胞へと分化させて、ファブリー病において冒される細胞型の適切なモデルを生成した。生成された内皮細胞を、6日目にCD144についてのMACSによって精製した。フローサイトメトリーおよび免疫細胞化学を、ファブリーiPSC内皮細胞に対して実施して、内皮特異的マーカー(endothelial-specific maker)であるCD31を使用して純度を試験した。分化は、99.2%のCD31陽性細胞を生じ(図6A)、これは、形質膜における免疫細胞化学染色によって確認された(図6B)。
【0162】
ファブリー病iPSC-内皮細胞における、配列番号1のコドン最適化されたGLAを保有するrAAVによる形質導入は、ロバストなAGAタンパク質発現をもたらす
【0163】
ファブリーiPSC内皮細胞を、50、100、500および1000のMOIにおける、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVの形質導入の前に、解凍から11日間にわたって培養した。用量を、CAGプロモーターの制御下にEGFPを保有する、別段同一なrAAVを使用して、形質導入効率データから決定した。細胞を、形質導入の4日後に回収した。フローサイトメトリーは、AGA陽性細胞における用量依存的増加を示し(図7A)、形質導入されていない細胞の免疫細胞化学(ICC)は、AGAタンパク質発現の欠如を示したが、rAAVで形質導入した細胞は、ロバストなAGA染色を呈した(図8B)。
【0164】
タンパク質を、ウエスタンブロッティングのために、形質導入されたファブリーiPSC由来の内皮細胞から抽出して、総AGAタンパク質を試験した。形質導入されていない細胞は、ICCによって実証されたように、AGAタンパク質を欠如した。しかし、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVで形質導入したファブリーiPSC内皮細胞は、抗AGA抗体を用いてプローブした後、49kDaの正確なサイズに、強いAGAタンパク質バンドを示した(図7B)。バンド密度を決定した(図7B)。rAAVによる形質導入は、形質導入されていない細胞と比較して、両方のMOIについて、総AGAタンパク質を有意に増加させた。
【0165】
ファブリー病に罹患したiPSC-内皮細胞における、(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVによる形質導入後の、増強されたAGA活性
【0166】
形質導入されたファブリーiPSC内皮細胞を、AGA緩衝液(Biovision、LLC.)で溶解し、AGA活性を定量するために使用した。ファブリーiPSC内皮細胞試料を、AGA特異的合成基質と共に1時間インキュベートして、切断された基質の量を蛍光分析的に定量した。データは、rAAVで形質導入したファブリーiPSC内皮細胞が、ファブリーiPSC内皮細胞と比較して増強されたAGA活性を有したことを明らかにしている。図8Aおよび8Bを参照されたい。
【0167】
結論
【0168】
ファブリー病に罹患したiPSC内皮細胞における、CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のコドン最適化されたGLAヌクレオチド配列を保有するrAAVの形質導入は、基底レベルを有意に上回る、迅速な細胞自律的な用量依存的AGAタンパク質発現および細胞内活性を生じた。コドン最適化されたGLA導入遺伝子の発現を介したAGA活性における増加は、その蓄積がヒトにおけるファブリー病の病理発生の中核を成すとみなされるGb3のクリアランスを生じた。
(実施例4)
ファブリーマウスモデルの血漿および組織における、配列番号1のコドン最適化されたGLAから発現されたAGAの発現および機能的解析
【0169】
材料および方法
【0170】
in vivo研究設計および試料収集
【0171】
10~11週齢のファブリーモデルB6;129-Glatm1Kul/J(Jackson Labs番号003535)(本明細書で以下GLA-ヌルと呼ぶ)または正常C57BL/6マウスは、0.005%Pluronic F-68を含有するダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)中の(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含むrAAVの1×1012、1×1013もしくは5×1013vg/kg、またはビヒクルのみの、単回静脈内尾静脈注射を1日目に受けた(表4を参照されたい)。死亡率、臨床観察、体重、飼料消費、AGA活性およびGb3基質蓄積についての生物分析の解析、ならびに肉眼的剖検所見を評価した。さらに、マウスのサブセット(1群当たりn=3匹)由来の組織を処理し、免疫組織化学(IHC)によってAGAの発現および局在化について試験した。
【0172】
血液試料(1日目、15日目および29日目)または取得可能な最大限(56日目のみ)を、血漿中のα-ガラクトシダーゼA(AGA)活性および/またはGb3基質蓄積の決定のために、二酸化炭素吸入(56日目のみ)後に、上顎静脈または大静脈を介して全ての動物から収集した。血液試料を収集し、血漿へと処理し、試料を検査するまで、-60℃~-90℃で貯蔵した。血漿を、1日目、15日目および29日目の投与の前に、ならびに56日目の研究終結時に、AGA活性について解析した。血漿Gb3およびlysoGb3レベルを、56日目に解析した。心臓、腎臓、肝臓および小腸の試料もまた、研究終結時に収集し、AGA活性およびGb3基質レベルについて解析した。各群中の動物のサブセット由来の選択された組織(心臓、肝臓、腎臓および小腸)の代表的な試料を収集し、10%中性緩衝ホルマリン(組織の20~30倍の体積)中で即座に保存した。組織を、室温でおよそ48時間(±1時間)固定し、次いで、70%エタノールに移した。
【0173】
表4 ファブリーマウス用量範囲および有効性研究のための処置群のスキーム
【表4】
【0174】
血漿および組織活性解析
【0175】
AGA酵素活性を、検証されたアッセイを使用して、4-メチルウンベリフェロンの産生を介して検出および定量した。簡潔に述べると、試料を、4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシドを含有する活性緩衝液中に希釈し、室温で1時間インキュベートした。蛍光発光を、366励起/450~475発光での蛍光検出を備えたプレートリーダーを使用して定量し、標準曲線と比較した。組織試料内の総タンパク質を、BCAアッセイを使用して定量した。
【0176】
血漿基質解析
【0177】
血漿中のlysoGb3(m/z 786)およびそのアナログ(m/z 784、m/z 802およびm/z 804)、ならびにGb3およびそのアイソフォーム(C16:0、C18:0、C22:0、C24:1およびC24:0)を、記載されたように(Boutin & Auray-Blais, 2014, Analytical Chemistry, 86(7),3476-3483. //doi.org/10.1021/ac404000d;Provencal et al. 2016, Bioanalysis,8(17), 1793-1807. https://doi.org/10.4155/bio-2016-0116)解析した。簡潔に述べると、用量の56日後に採取した血漿試料(42日の試料を、保存しアーカイブしたが、解析はしなかった)を、内部標準としてのグリシン化された(glycinated)lysoGb3(Matreya LLC;State College、PA)でスパイクし、混合モード強カチオン交換(MCX)カートリッジ(Waters Corporation、Milford、MA)を使用する固相抽出によって精製した。収集された相を、窒素ストリーム下で乾燥させ、50%アセトニトリル/0.1%ギ酸中で再構成し、BEH C18カラムを使用するAcquity I-Class超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)システム(Waters Corporation、Milford、MA)に注入し、lysoGb3を、Xevo TQ-S(Waters Corporation)三重四重極タンデム質量分析計を使用して、スパイクインした内部標準(グリシン化-lysoGb3)と同時に検出した。
【0178】
Gb3解析のために、血漿試料を、内部標準としてのGb3(C18:0D3)(Matreya LLC;State College、PA)でスパイクし、tert-ブチルメチルエーテルによる液-液抽出によって精製した。試料を、水酸化カリウムで鹸化し、酢酸で中和し、遠心分離し、有機層を収集し、窒素のストリーム下で乾燥させた。試料を再構成し、Zorbax Bonus-RP Guardカラムカートリッジ(4.6×12.5mm、Agilent Technologies)を使用するAlliance HPLC 2795システム(Waters Corporation、Milford、MA)に注入した。次いで、分析物を、Quattroマイクロ三重四重極タンデム質量分析計(Waters Corporation)を使用して、スパイクインした内部標準と同時に検出した。
【0179】
組織基質解析
【0180】
ファブリー病の処置のために重要な組織中のGb3アイソフォームおよびアナログ(C16:0、C18:0、C20:0、C22:0およびC24:1)を、記載されたように(Provencal et al. 2016, Bioanalysis, 8(17), 1793-1807.https://doi.org/10.4155/bio-2016-0116)解析した。簡潔に述べると、強化チューブ中の凍結した心臓、腎臓、肝臓、小腸および脾臓の組織試料を解凍し、5つのセラミックビーズを各チューブに添加し、試料を、Bead Disruptor 12ビーズミルホモジナイザー(Omni International;Kennesaw、GA)を使用してメタノール中でホモジナイズした。次いで、溶解物を、上記のように、血漿試料と同じ様式で抽出および解析した。全ての組織を、1群当たりn=12匹の動物から収集したが、他の6匹の動物からのAGA活性解析を可能にするための組織サイズの制限に起因して、1群当たりn=6匹の動物から収集した心臓は除く。各処置群からの残り3匹の動物を、免疫組織化学解析に使用した。
【0181】
データは、Gb3内部標準(Gb3(C18:0D))のピーク面積によって除算した、試料分析物の質量分析計ピーク面積の比である応答比として表される。各組織について、6種全てのGb3アイソフォーム/アナログの総応答比を試験した。この比の性質に起因して、この応答比に帰せられる単位は存在しない。
【0182】
統計分析
【0183】
統計分析は、Charles River Laboratories-Mattawan(Mattawan、MI)の生物統計学グループが実施した。データ解析を、全てのlysoGb3およびGb3アイソフォーム/アナログの集計値に対して実施して、データが広範囲にわたるAGA基質を捕捉していたことを確実にした。血漿lysoGb3データセットおよび組織Gb3データセットの両方における全ての「検出されない」(N.D.)値は、データ解析の目的のために、ゼロの値を有するとして対処した。感度解析を、それらのN.D.値の代わりにLLOD(検出下限)値を使用して実施した。
【0184】
群分散の均一性および残差の正規性を評価するための検査を、0.01有意水準で実施した。Gb3データ解析のために使用した実験単位は、個々の動物であった。
【0185】
生データを、各時間間隔内で表にし、平均および標準偏差を、群単位で各エンドポイントについて計算した。各エンドポイントについて、処置群を、以下に概説する解析を使用して対照群と比較した。一部のエンドポイントについてのデータを、必要に応じて、指定された解析を実施する前に、対数変換またはランク変換のいずれかによって変換した。
【0186】
表5 計算した統計的比較
【表5】
【0187】
変動性を実証するエンドポイントおよび/またはパラメーター(各収集間隔内の)について、全ての群について標本サイズが3またはそれよりも大きい場合、システムは、データがおよそ正規であるかどうか、または対数変換を使用すべきかランク変換を使用すべきかを考えるために、残差の正規性および分散の均一性を検査した。ルビーン検定を使用して、群分散の均一性を評価し、シャピロ-ウィルク検定を使用して、残差の正規性を検査した。
【0188】
生データに対して、ルビーン検定が有意でなく(p≧0.01)、シャピロ-ウィルク検定が有意でなかった(p≧0.01)場合、正規分布を使用した。ルビーン検定が有意であった(p<0.01)か、またはシャピロ-ウィルク検定が有意であった(p<0.01)かのいずれかの場合、分散の正規性および均一性を、データに対して対数変換を使用して検査した。
【0189】
対数変換されたデータに対して、ルビーン検定が有意でなく(p≧0.01)、シャピロ-ウィルク検定が有意でなかった(p≧0.01)場合、対数正規分布を使用した。ルビーン検定が有意であった(p<0.01)か、またはシャピロ-ウィルク検定が有意であった(p<0.01)かのいずれかの場合、ランク変換をデータに対して使用した。
【0190】
適した変換されたデータを使用する一元配置分散分析を使用して、処置の効果について各エンドポイントを検査した(Edwards & Berry, 1987, Biometrics, 43(4), 913-928)。
【0191】
処置効果が有意であった(p<0.05)場合、線形対比を、上記のような処置群のペアワイズ比較のために構築した。これらのペアワイズ比較の結果を、EdwardsおよびBerryの方法(Edwards & Berry, 1987, Biometrics, 43(4), 913-928.)を使用する多重比較のための調整後に、0.05および0.01有意水準で報告した。全ての検定は、特に指し示さない限り、両側検定であった。
【0192】
結果および考察
【0193】
血漿および組織AGA解析
【0194】
上記rAAVの((i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む)単回IV投与は、評価した全ての時点において、血漿AGA活性における一貫した用量依存的増加を生じた(図9A)。これらの増加は、研究の8週間の持続時間にわたって維持された(図9A)。
【0195】
研究終結時に、AGA活性における増加が、ビヒクル処置したマウスと比較して、腎臓および小腸において検出され、より高いレベルが、5×1013vg/kgの高用量で心臓において記録された(図9B)。肝臓では、高いAGA活性レベルが、1×1013vg/kgで処置したマウスおよび5×1013vg/kgで処置したマウスの両方において観察された(図9B)。これらのデータは、上記rAAVの((i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む)単回IV投与が、特に、1×1013およびそれよりも高い用量で、血漿中でのAGA活性の有意な発現を生じることを示唆している。有意な発現は、心臓および肝臓でも、投与の8週間後まで見られた。組織中のAGA発現を視覚的に確認するために、心臓、腎臓、小腸および肝臓を収集し、固定し、パラフィン包埋し、上記のようにAGAについてのIHCに供した。AGA発現における用量依存的増加が、試験した全ての組織において観察された(図10)。
【0196】
血漿lysoGb3解析
【0197】
上記rAAVの((i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む)単回IV投与は、投与の8週間後に、血漿中の総lysoGb3レベルの全てのレベルにおいて、用量依存的かつ有意な(P<0.01)低減を生じた。lysoGb3の4つの異なるアナログを試験し、それらの質量電荷比(m/z)によって表した:m/z 786、m/z 784、m/z 802およびm/z 804。全てのアナログの集計変化を一緒に試験すると、lysoGb3は、rAAVの全ての用量レベルにおいて、実質的に低減された。
【0198】
野生型マウスは、血漿中で検出されたわずか2.11±0.26nMのlysoGb3を呈するが、ビヒクル処置したファブリーマウスは、477.37±88.5nMよりも大きい、血漿中での有意なlysoGb3蓄積を有する(図11)。1×1012vg/kgのrAAVの単回の低いIV用量は、ファブリーマウス血漿中のlysoGb3の濃度を、58%よりも大きく、197.5±124.5nMまで低減させた(P<0.01)。1×1013vg/kgのrAAVの中間用量は、19.1±13.46nMまでの、ファブリーマウスにおける血漿lysoGb3の96%の低減を生じた(P<0.01)。rAAVの用量を5×1013vg/kgまでさらに増加させることで、10.57±13.85nMへの、lysoGb3における類似の低減が生じた(P<0.01)。全てのアナログの集計した変化からのデータは、以下の表6にまとめられる:
【0199】
表6 IV注射後56日目の血漿lysoGb3レベル
【表6】
【0200】
血漿中のGb3およびGb3アナログもまた試験したが、血漿中では、lysoGb3が、臨床疾患について基質のより適切な形態であるので(Boutin & Auray-Blais, 2014, Analytical Chemistry, 86(7),3476-3483. //doi.org/10.1021/ac404000d)、lysoGb3データのみを本明細書で考察する。
【0201】
組織Gb3解析
【0202】
試験した全ての組織は、野生型C57BL/6と比べて、GLA-ヌルファブリーマウスにおいて有意に多い量のGb3を呈し、これにより、ファブリー病表現型に関連するAGA基質の予期された蓄積が確認された。全ての組織中で、全ての用量レベルにおいて、rAAVの単回IV投与による処置後に、Gb3の用量依存的低減が存在する。心臓、腎臓、肝臓および小腸からの具体的な結果は以下に記載される。脾臓もまた収集および解析したが、脾臓は、ファブリー病にとって臨床的に非常に重要ではないので、それらの結果は本明細書では考察しない。組織Gb3データは、Gb3内部標準(Gb3(C18:0D))のピーク面積によって除算した、試料分析物の質量分析計ピーク面積の比である応答比として表される。
【0203】
心臓Gb3解析
【0204】
野生型C57BL/6マウスは、心臓において2.9±0.2の応答比を呈するが、GLA-ヌルファブリーマウスは、285.5±56.5において、測定された有意な基質蓄積を示す(P<0.01)。rAAVの単回IV注射は、ファブリーマウスにおいて、Gb3の用量依存的クリアランスを生じる(図12)。1×1012vg/kgの低用量は、心臓のGb3含量を、30.1±30.5まで、89.4%低減させた。1×1013vg/kgのrAAVの中間用量レベルは、Gb3レベルを、96%よりも大きく、9.9±3.7まで低減させた。5×1013vg/kgの高用量は、4.4±2.2まで、98%よりも多くのGb3を取り除いた。これらの結果は、1群当たりn=6匹の動物の平均を表す。心臓における全てのGb3低減が、群2(ビヒクル処置したGLA-ヌル)と比較して、統計的に有意(P<0.01)であった。
【0205】
腎臓Gb3解析
【0206】
ビヒクル処置した野生型C57BL/6マウスは、25±4.1の応答比を示すが、GLA-ヌルファブリーマウスは、373±71を示す。rAAVの単回IV投与は、Gb3の用量依存的かつ統計的に有意な(P<0.01)クリアランスを生じ、それぞれ1×1012、1×1013または5×1013vg/kgによる処置の56日後に、28.3%、74.4%および90.7%の低減を示した。中間用量および高用量レベルでの腎臓中でのGb3低減は、群2(ビヒクル処置したGLA-ヌル)と比較して統計的に有意(P<0.01)であった。低用量の1×1012vg/kgは、有意には到達しなかったものの(P=0.0537)、治療用生成物は、この低用量レベルであっても、Gb3における傾向のある低減を呈している(図12)。
【0207】
肝臓Gb3解析
【0208】
野生型C57BL/6およびGLA-ヌルファブリーマウスの肝臓溶解物中の、応答比で測定したGb3レベルは、それぞれ2.9±0.5および377±75であった。肝臓Gb3蓄積は、低用量のrAAVによってであっても、ほとんど完全に取り除かれた(図12)。1×1012vg/kgの用量は、26±24までの、Gb3の93.1%の低減を生じた。1×1013vg/kgまたは5×1013vg/kgの中間用量および高用量は、ほぼ完全な(>99%の)基質クリアランスを生じ、それぞれ2.6±0.5および2.5±0.3の野生型レベルに戻った。
【0209】
小腸Gb3解析
【0210】
小腸は、GLA-ヌルファブリーマウスにおいて、Gb3のはるかに高い蓄積を示し、1164±276の応答比を示したが、わずか3.4±0.3が、野生型C57BL/6マウスの小腸において検出された。rAAVの単回IV投与は、ビヒクル処置したGLA-ヌルのクリアランスと比べて、全ての用量レベルにおいて用量依存的かつ有意な(P<0.01)クリアランスを生じた(図12)。1×1012、1×1013または5×1013vg/kgの用量レベルは、それぞれ、Gb3における33.6%(772±148)、73%(314±190)および94.8%(60±59)の低減を生じた。
【0211】
表7 コドン最適化されたGLAを保有するrAAVによるIV処置の56日後に収集した組織におけるGb3低減の概要
【表7-1】
【表7-2】
【0212】
結論
【0213】
ファブリー病は、臓器および組織におけるGb3およびlysoGb3基質分子の蓄積によって引き起こされる。この研究は、配列番号1のコドン最適化されたGLAを保有するrAAVの単回用量の、マウスモデルにおけるファブリー病のための処置としてAGAを発現しGb3を異化する能力を評価した。この研究の結果は、血漿および試験した全ての組織中のGb3およびlysoGb3における有意な低減を実証している。1×1012vg/kgの低用量は、心臓および肝臓の両方において高度に活性であり、各臓器において89%よりも大きい基質低減をもたらす。この低用量は、小腸において33.4%の基質低減を生み出し、腎臓における低減は、腎臓でのデータにおいて変動性が見られたものの、その結果が統計的有意性に到達しないような低減であった。1×1013vg/kgの中間用量は、心臓における96%よりも大きい基質低減、肝臓のほぼ完全な(>99%の)クリアランス、腎臓における74.4%の低減および小腸の73%の低減を生じ、これは、検査した全ての組織において、高度に活性かつ有意な用量である。5×1013vg/kgの高用量は、心臓における98%よりも大きい基質クリアランス、腎臓における90%よりも大きいクリアランス、小腸におけるほぼ95%のクリアランス、および肝臓における99%よりも大きいクリアランスを生じた。検査した全ての用量は、ファブリーマウスモデルにおいて活性かつ有効であり、一部の場合には、野生型レベルまたはその近傍のレベルまで、蓄積したAGA基質レベルを低減させた。
(実施例5)
野生型マウスの血漿および組織における、配列番号1のコドン最適化されたGLAから発現されたAGAの発現および機能的解析
【0214】
実験的にナイーブなC57BL/6雄性マウス(投与の開始時に8週齢)における、静脈内注射による(i)配列番号4のカプシドタンパク質を有するカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のコドン最適化されたGLAを含む配列番号6の核酸を含むrAAV(4D-310)の単回投与非GLP急性忍容性研究を実施した。単回IV注射(尾静脈を介する)後の最大耐用量(MTD)を決定した。
【0215】
研究設計は、以下の表8に提供される:
表8:
【表8】
【0216】
血液試料を、血漿中のGLA活性の決定のために、上顎血管を介して全ての生存動物から、1日目(投与前)に、ならびに15日目、29日目および43日目の同じ時刻に収集した。
【0217】
死後研究評価を、30日目に安楽死させた1匹の動物、および予定された最終的な剖検時(投与の約6週間後)の全ての生存動物に対して実施した。心臓、肝臓(左側葉)、腎臓(左)および小腸(十二指腸、回腸および空腸の匹敵するサイズの区域)を、全ての動物から単離し、GLA活性について評価した。
【0218】
投与後、全ての処置した血漿試料は、対照動物のGLA活性を有意に上回るGLA活性を有した(1.0×1013vg/kgの用量についてはビヒクル対照を超える1200倍の増加、5.0×1013vg/kgの用量についてはビヒクル対照を超える5000倍の増加、および1.5×1014vg/kgの用量についてはビヒクル対照を超える26,000倍の増加を例示する図13を参照されたい)。さらに、各々のより高い用量は、より低い用量(複数可)を有意に上回る血漿GLA活性を有した。同じ傾向(用量応答性)が、収集した全ての組織において観察された(図14を参照されたい)。集合的に考えると、このデータは、各用量での4D-310の単回IV投与の後の、GLAの明らかな発現および得られたGLA活性を実証している。特に、ファブリー病の処置のために最も適切な組織には、十二指腸、心臓、回腸、空腸、心臓、腎臓および肝臓組織があり、GLAバイオリアクターとして機能する肝臓におけるGLAの発現が伴う。
【0219】
4D-310処置した動物の血漿中のGLA値の概要は、以下の表9に提供される:
表9:
【表9-1】
【表9-2】
【0220】
この研究では、4D-310関連の肉眼での観察は存在しなかった。この研究では、全身性のまたは局所的な毒性の、4D-310関連の臨床観察は存在せず、体重における4D-310関連の変化も飼料消費に対する影響も観察されなかった。この研究では、4D-310関連の死亡している状態は存在しなかった。
【0221】
雄性マウスへの1.0×1013、5×1013および1.5×1014vg/kgの単回静脈内投与後に評価したいずれのパラメーターに対しても、4D-310関連の有害効果は存在しなかったので、無作用量(NOEL)および最大耐用量は、検査した最高用量である1.5×1014vg/kgであると決定された。
(実施例6)
全身性投与された4D-310(配列番号1のコドン最適化されたGLAを有する核酸を含む)の毒性および生体内分布
【0222】
14日および91または92日の観察期間が後に続く、尾静脈を介した単回静脈内注射を介してC57BL/6(wt)マウスに投与された4D-310の潜在的毒性および組織生体内分布を調査した。研究設計は、以下の表10に提供される:
表10:
【表10】
a 各剖検の日に、動物を以下のように指定した:臨床化学パラメーターおよび顕微鏡試験のために5匹/群;血液学パラメーターのために5匹/群;抗カプシドおよび抗ペイロード抗薬物抗体解析のために5匹/群;GLA活性解析ならびに組織および全血qPCRおよびRT-qPCRのために7匹/群。
b 追加の動物/処置群に、可能な代替として投与した。代替として使用されない場合、追加の動物は92±1日目の間隔で安楽死させ処分した。
【0223】
以下のパラメーターおよびエンドポイントを、この研究において評価した:死亡率、臨床観察、体重、および飼料消費、検眼鏡試験、臨床病理学パラメーター(血液学および臨床化学)、抗カプシドおよび抗ペイロード抗薬物抗体解析、GLA活性解析、生体内分布解析(組織および全血のqPCRおよびRT-qPCR)、肉眼的剖検所見、臓器重量ならびに病理組織学的試験。
【0224】
4D-310関連の死亡率も、全身性のまたは直接的な局所的毒性の臨床的兆候も存在せず、体重、飼料消費、検眼鏡試験、臨床病理学パラメーター、臓器重量または肉眼的剖検所見に対するいずれの影響も存在しなかった。
【0225】
全ての4D-310(これは、配列番号4の4D-C102カプシドタンパク質を含む)処置した動物は、決定されたスクリーニングカットポイントを上回ることに基づいて、抗4D-C102カプシド抗体について陽性とスクリーニングされた。しかし、全ての4D-310処置した動物が陽性とスクリーニングされてはいるが、16/30個の試料のみが、確認カットポイントに対する評価後に陽性と確認された。これら16個の確認された陽性試料は、以下の用量レベル内訳を有した:1.0×1013vg/kgにおいて7/10、5.0×1013vg/kgにおいて5/10、および1.5×1014vg/kgにおいて4/10。抗カプシド抗体応答に対する見かけの用量相関は存在しなかった。
【0226】
ある割合の動物は、4D-310による投与後に研究において抗カプシド抗体を発達させたが、明らかな用量相関は存在しなかった。全ての対照動物をスクリーニングしたところ、抗4D-C102カプシド抗体について陰性であることが確認された。全ての処置した動物が陰性であることが見出されたので、4D-310処置は、抗アルファガラクトシダーゼA抗体の形成を生じなかった。4D-310による処置は、対照群と比較した場合に、研究の持続時間を通じて存在した、血漿GLA活性における用量依存的かつ統計的に有意な増加を生じた。ほとんどの処置群はまた、統計的に有意な様式で、前の用量群よりも高かった。
【0227】
用量および時点の両方について観察されたベクターゲノムのレベルが最も高いのは、心臓、肝臓、肺、腎臓および注射部位である。全ての群の脳および脊髄において検出された4D-310ベクターDNAの濃度は、以前に言及された組織と比較して、全体的により低かった。最も高いレベルの4D-310ベクターDNAが肝臓試料において検出された生体内分布解析と同様に、ベクター由来の遺伝子発現が、肝臓試料において最高濃度で観察され、次が心臓、肺および注射部位試料であった。
【0228】
肝臓試料内では、4D-310発現は、1μgの総RNA当たり44,662,881コピーを有する心臓試料と比較して、1μgの総RNA当たり645,293,620コピーで、およそ14倍高かった。精巣試料は、同じ時点および用量レベルにおける生体内分布解析において検出されたわずか1,884コピーの4D-310ベクターDNAと比較して、1μgの総RNA当たり平均2,888,001コピーで、異常に増加したレベルの遺伝子発現を示した。これは、4D-310発現が、他の5匹の動物間でのわずか446,541コピーの平均に対して15,095,299コピーであった、動物4043に直接帰せられ得る。さらに、動物4043は、生体内分布解析の間に検出された1,443コピーの4D-310ベクターDNAの個々の計数のみを有し、研究の持続時間を通じて臨床的/獣医学的所見を有さなかった。したがって、動物の全体的健康への影響は存在しなかったので、異常に高いレベルの遺伝子発現は、非有害とみなした。
【0229】
全体的なベクター由来の4D-310遺伝子発現は、全ての組織において記録され、最高濃度は、肝臓、心臓、肺および注射部位試料において記録された。4D-310の肉眼での所見は存在しなかった。≧5.0×1013vg/kgにおける最小限から軽度の注射部位血管周囲/血管炎症を除き、4D-310関連の顕微鏡所見は存在しなかった。この所見は、92±1日目の動物では存在せず、可逆的とみなされた。
【0230】
1μgの組織ベクターDNA当たりの平均コピーの概要は、以下の表11にまとめられる。
表11:
【表11】
【0231】
最も高いレベルの4D-310ベクターDNAが肝臓試料において検出された生体内分布解析と同様に、ベクター由来の遺伝子発現が、肝臓試料において最高濃度で観察され、次が心臓、肺および注射部位試料であった。肝臓試料内では、4D-310発現は、1μgの総RNA当たり44,662,881コピーを有する心臓試料と比較して、1μgの総RNA当たり645,293,620コピーで、およそ14倍高かった。
【0232】
全体的なベクター由来の4D-310遺伝子発現は、全ての組織において記録され、最高濃度は、肝臓、心臓、肺および注射部位試料において記録された。1μgの組織ベクターRNA当たりの平均コピーの概要は、以下の表12にまとめられる。
表12:
【表12】
【0233】
結論として、4D-310の単回静脈内投与の後、評価したいずれのパラメーターでも、有害効果は記録されなかった。結果として、局所的および全身性の毒性についての無有害作用量(NOAEL)は、検査した最高用量レベルである1.5×1014vg/kgであった。
【0234】
(実施例7)
非ヒト霊長類への4D-310のIV投与についての研究
【0235】
4D-310および4D-C102.CAG-EGFP(4D-310と同じカプシドおよびCAGプロモーターに作動可能に連結したEGFPをコードする異種核酸を有するrAAV)の毒性、薬力学および生体内分布を、ヒト臨床試験の前に、単回静脈内(注入)投与後にカニクイザルにおいて評価した。研究設計は、以下の表13に示される:
表13:
【表13】
【0236】
カニクイザルに、配列番号4のカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド内に各々含まれる2つの異なる導入遺伝子:GLA(配列番号1のもの)(群2~4)もしくはEGFP(群5)のいずれか、または単回のビヒクル対照(群1)を投与した。顕著に明瞭な安全性プロファイルが、4D-310(配列番号1のコドン最適化されたGLAおよび配列番号4のカプシドを含む)処置した動物で観察された。高トランスアミナーゼ血症が、EGFP投与した動物のみにおいて観察された。
【0237】
全ての動物に、試験物品投与の2週間前に開始して研究終結まで、免疫抑制薬を投与した。この抑制レジメンは、臨床診療と合わせることを意図したものであった。簡潔に述べると、-15日目から28日目まで、酢酸メチルプレドニゾロン(40mg/kg)を、群2、3および4の全ての動物に、筋肉内注射を介して毎週1回投与した。用量を、29日目から42日目にかけて20mg/kgに半減させ、43日目から56日目にかけて再度10mg/kgに半減させた。免疫抑制投与は、予定された最終的な剖検の週には要求しなかった。-14日目から29日目まで、酢酸メチルプレドニゾロン(40mg/kg)を、群1および5の全ての動物に、IM注射を介して毎週1回投与した。免疫抑制を、研究獣医の裁量で、(最大80mg/kg/週まで)増加させ、または減少させた。16日目に、群5の1匹の雄は、さらなる用量(40mg/kg)を受けた。
【0238】
ビヒクルおよび試験物品を、4D-310については0(ビヒクル)、3.0×1012、1.0×1013、5.0×1013vg/kgの、および4D-C102.CAG.EGFPについては5.0×1013vg/kgの用量レベルでのIV注入を介して、研究の間に1回投与し、3mL/分の速度で投与した。投与の最初の日を、各個々の動物について1日目と指定した。
【0239】
IV経路は、ヒト対象における4D-310の意図した投与経路である。用量レベルを、マウスにおける別々の用量設定安全性/有効性研究に基づいて選択し、1×1012vg/kg~1.5×1014vg/kgの用量は、全て安全であることが示された。
【0240】
GLA血漿試料収集のために、血液試料(およそ3mL)を、以下の表14のスケジュールに従って、GLA解析のために大腿静脈を介して全ての動物から収集した:
表14:
【表14】
X =試料が収集された
【0241】
抗AAV評価のために、血液試料(およそ5mL)を、以下の表15のスケジュールに従って、大腿静脈を介して全ての動物から収集した:
表15:
【表15】
X =試料が収集された
【0242】
qPCR解析のための組織試料(脾臓(50~80mg/試料)以外の各組織試料について、100~180mg)を収集し、2つの試料に分割し、液体窒素で瞬間凍結させ、分析するまで凍結貯蔵した。DNA組織の収集および評価は、以下の表16に従った:
表16:
【表16-1】
【表16-2】
a 全ての収集を完了するのに不十分な臓器/組織の場合、DNA解析のための一次試料を優先した
b 両方の半球について、標準的なBolon etal., 2013のブロッキングスキームに従った(2セットの標準的なブロック)。右半球のみを、顕微鏡評価のためのスライドへと処理した。
(p) =近位; (d) =遠位; (L) =左側; (R) =右側。
【0243】
群1~4由来のDNA1組織を、qPCRによってベクター生体内分布について解析した。群5由来のDNA2組織を、qPCRによってベクター生体内分布について解析した。
【0244】
以下の表17に従って、種々のカニクイザル組織における4D-310の遺伝子発現を決定するためのRT-qPCR解析のための組織試料(利用可能な場合、各組織試料について100~180mg)を収集し、2つの試料に分割した:
表17:
【表17-1】
【表17-2】
a 全ての収集を完了するのに不十分な臓器/組織の場合、IHC、タンパク質、DNAおよびRNA解析のための一次試料が優先される
b 両方の半球について、標準的なBolon etal., 2013のブロッキングスキームに従う(2セットの標準的なブロック)。右半球のみを、顕微鏡評価のためのスライドへと処理する。
(p) =近位; (d) =遠位; (L) =左側; (R) =右側。
【0245】
RNAを、4D-310に特異的なRNA配列の検出および定量のために、組織試料から抽出し、定量し、次いで、RT-qPCRによって解析した。簡潔に述べると、RT-qPCR解析のために収集した試料を、1.5mLのRNALaterを事前に充填したラベル付きの2mL微量遠心低温管中に完全に浸した。試料を、湿った氷上に置き、RNALater中で少なくとも24時間にわたって最大で1週間まで冷蔵貯蔵し(2℃~8℃)、次いで、遺伝子発現解析(RT qPCR)まで、RNALaterを除去して凍結貯蔵した(-60℃~-90℃)。群1~4の動物由来の全てのDNA1試料を、ドライアイス上で、解析のためにCovance Laboratories、Greenfield、Indianaに発送した。群5由来の全てのDNA2試料を、解析のために試験施設の生物分析実験室に移した。
【0246】
群1~4由来のRNA1組織を、RT-qPCRによってGLA遺伝子発現について解析した。群5由来のRNA2組織を、RT-qPCRによってGFP遺伝子発現について解析した。
【0247】
タンパク質組織収集 - 試料(利用可能な場合、各組織試料について100~180mg)を、液体窒素(LN2)中で急速凍結させ、凍結貯蔵した(-60℃~-90℃)。タンパク質1組織を、以下の表18に従って、GLA活性について解析した:
表18:
【表18-1】
【表18-2】
a 全ての収集を完了するのに不十分な臓器/組織の場合、IHC、タンパク質、DNAおよびRNA解析のための一次試料を優先した。
b 両方の半球について、標準的なBolon et al., 2013のブロッキングスキームに従った (2セットの標準的なブロック)。右半球のみを、顕微鏡評価のためのスライドへと処理した。(p) =近位; (d) =遠位; (L) =左側; (R) =右側
【0248】
タンパク質2組織を、ELISAによってGFPについて解析した。
【0249】
組織学および免疫組織化学(IHC)のために、各指定された組織の試料を収集および処理した。試料を、中性緩衝ホルマリン中で24~48時間固定し、必要に応じて最大で72時間にわたって70%EtOHに移し、組織学およびIHCのためのブロックステージへと処理した。組織の形態学/解剖学的完全性を保存するための試みを行った。各指定された組織からのホルマリン固定パラフィン包埋ブロックのサブセットを、スポンサーに発送した。スライドを、IHC評価のために調製および染色した。
【0250】
抗ガラクトシダーゼアルファ(GLA)免疫組織化学(IHC)アッセイを、Roche Discovery抗体RUO(カタログ番号05266319001)中に希釈した10ug/mLの最終濃度で、組換えウサギ抗ヒトモノクローナル抗ガラクトシダーゼアルファ抗体(AbcamクローンEP5858、カタログ番号ab168341)を使用して実施した。GLA IHCを、Roche Discovery ChromoMap DAB RUO(カタログ番号05266645001)、Roche Discovery Anti-Rabbit HQ RUO(カタログ番号07017812001)およびRoche Discovery Anti-HQ HRP RUO(カタログ番号07017936001)検出試薬を使用して、Roche Discovery ULTRA自動染色機プラットフォーム上で実施した。
【0251】
GLA IHCアッセイ抗原回復を、Roche Cell Conditioning 1(CC1)抗原回復溶液(カタログ番号950-124)を使用して100℃で32分間実施した。GLA IHC一次抗体およびウサギIgGアイソタイプ対照抗体(Cell Signaling Technology Rabbit(DA1E)mAb IgG XPアイソタイプ対照カタログ番号3900)を、室温で32分間インキュベートした。GLA IHCアッセイ二次抗体およびHRPポリマー検出試薬を各々、室温で16分間インキュベートした。スライドを、Roche Hematoxylin(カタログ番号05266726001)を使用して8分間、およびRoche Bluing Reagent(カタログ番号05266769001)を使用して8分間、室温で対比染色した。Roche Discovery ULTRA機器から取り出した後、スライドを、Dawn液体石鹸を含むDI水中でリンスして、残留油を除去する。次いで、GLA IHCスライドを、段階的エタノール/キシレンを介して脱水し、Leica XLおよびCV5030染色機/カバースリッパー機器を使用してカバースリップする。次いで、GLA IHCスライドを、Mikroscan SL2機器および関連するQ2イメージングソフトウェアを使用して、高解像度全スライド画像に変換した。GLA IHCスライドは、有資格の病理学者が評価した。代表的な画像を、QuPathおよびImageScopeソフトウェアを使用して捕捉した。
【0252】
以下のパラメーターおよびエンドポイントを、この研究において評価した:死亡率、臨床的兆候、体重、体重変化、眼科学試験、臨床病理学パラメーター(血液学、凝固および臨床化学)、肉眼的剖検所見、臓器重量および病理組織学的試験。さらに、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)およびアルファ-ガラクトシダーゼA(GLA)についてのDNA(qPCR)、RNA(RT-qPCR)およびタンパク質(血漿および/または組織)分布を実施して、試験物品の生体内分布および相対的遺伝子発現効率を評価した。予備的免疫組織化学(IHC)評価もまた実施した。
【0253】
結果
【0254】
死亡率 - 全ての動物が予定された剖検まで生存した。
【0255】
詳細な臨床/獣医学的観察 - 明らかな4D-310関連の臨床的兆候も4D-C102.CAG-EGFP関連の臨床的兆候も存在しなかった。
【0256】
体重および体重増加 - 体重においても体重増加においても、4D-310関連の変化も4D-C102.CAG-EGFP関連の変化も存在しなかった。わずかな増加および/または減少が、処置期間の間に全ての群の動物において観察され、この種についての正常変動内とみなされた。
【0257】
眼科学試験 - 4D-310関連の影響も4D-C102.CAG-EGFP関連の影響も、検眼鏡試験において記録されなかった。記録された観察は、この齢および種の動物について予期された病理学を代表しており、試験物品関連とはみなされない。
【0258】
血液学 - いずれの用量レベルにおいても、血液学エンドポイントに対する4D-310関連の影響も4D-C102.CAG-EGFP関連の影響も存在しなかった。
【0259】
凝固 - 凝固エンドポイントに対する明らかな4D-C102.CAG-EGFP関連の影響は存在しなかった。
【0260】
qPCR GLA(DNA)_生体内分布解析
【0261】
各試料中に存在する4D-310ベクターDNAの量を、qPCRで解析した2つのスパイクしていない複製の平均から計算した。結果を、解析した1μgDNA当たりに存在する4D-310のコピーとして報告する(任意の希釈倍率および0.2μg/μLを下回る濃度で調整した)。群1は、ビヒクル/対照群である。ビヒクル処置した動物(動物ID1001)由来の全ての検査した試料は、GLA DNAについて<LOD(検出限界)であることが見出された。3.0×1012vg/kgの4D-310を投与した動物では、GLA DNAは、以下で言及する試料を除く検査した全ての組織試料について、1μgの総DNA当たり51.72(動物2003の空腸)コピーから6,309,088.75(動物2002の肝臓右葉)コピーまでの範囲で、陽性検出された。動物2001および2003の左精巣、ならびに動物2002および2003の腰髄は、<LOQであることが見出された。残りの組織が利用可能でないことに起因して、動物2002の心臓、左心房についての結果は報告されていない。動物2002の頸動脈についての結果は、スポンサーの依頼により実行した失敗した抽出からのDNAを解析することによって得た。1.0×1013vg/kgの4D-310を投与した動物では、GLA DNAは、検査した全ての組織試料において陽性として見出された。得られた検査結果は、1μgの総DNA当たり178.65(動物3002の空腸)コピーから3,379,109.30(動物3001の肝臓左葉)コピーまでの範囲である。動物3002および3003の肝臓右葉および肝臓左葉の元の検査結果は、>ULOQ(定量上限)であることが見出され、これらの組織試料から抽出したDNAを、さらなる1:10希釈を実施して再検査した。
【0262】
5.0×1013vg/kgの4D-310を投与した動物では、GLA DNAは、検査した全ての組織試料において陽性として見出された。得られた検査結果は、1μgの総DNA当たり168.86(動物4003の精巣)コピーから21,116,311.46(動物4001の肝臓右葉)コピーまでの範囲である。動物4001、4002および4003の肝臓右葉および肝臓左葉の元の検査結果は、全て>ULOQであることが見出された。これらの組織試料から抽出したDNAを、さらなる1:50(4001について)、1:20(4002について)および1:25(4003について)希釈を実施して再検査した。
【0263】
非ヒト霊長類への3×1012vg/kgのIV投与後の重要なファブリー組織への4D-310のqPCR分布は、図15に示され、肝臓への用量応答的な生体内分布が達成された。これらのデータは、IV送達された4D-310が、心臓および腎臓を含む、ファブリー病病理学の重要な組織に首尾よく局在化することを実証している。これらのデータはまた、可溶性治療タンパク質の全身性の発現のための標的としての肝臓における用量応答的な発現を支持している。
【0264】
GLA血漿定量
【0265】
1日目(投与前)、15日目、29日目、43日目および剖検の日に3.0×1012~5.0×1013vg/kgの4D-310を投与した動物由来の合計50個の血漿試料を、適格な方法を使用してGLA活性について解析した。較正標準および品質管理試料からの結果は、報告された全ての濃度について、この方法の許容される性能を実証した。
【0266】
GLAレベルは、投与の前(1日目)には、全ての動物にわたって同等であった。15日目までに、血漿GLAレベルは、3.0×1012vg/kgの4D-310で3匹の動物中1匹において(最大で23.6倍)、1.0×1013vg/kgの4D-310で3匹の動物中3匹において(最大で8.1倍)および5.0×1013vg/kgの4D-310で3匹の動物中3匹において(最大で152.2倍)増加した。血漿GLAレベルは、15日目から剖検の日まで、概して類似(15日目の値のおよそ2.5倍以内)であった。このデータは、以下にまとめられる:
【表20-1】
【表20-2】
【0267】
図16は、用量によってグループ分けした、4D-310の単回静脈内投与後のNHPの血漿中のAGAを示す(ビヒクル処置した対照と比べて、血漿AGAレベルにおける54.7倍の増加が、5.0×1013vg/kgの用量において観察された)。動物番号2002における高いAGAレベルは、低用量群平均を、中間用量群平均よりも高いものにした。他の点では、用量依存性が観察された。評価した全ての用量群における4D-310の送達は、内因性AGAレベル(ビヒクル)を上回る血漿AGAレベルを生じ、これは、首尾よい遺伝子送達および4D-310産物からの遺伝子発現を実証している。
【0268】
図17は、4D-310の単回静脈内投与後の個々の動物における血漿AGAレベルを示す。動物2002は、予想外に高い血漿AGA活性を有する - この動物は、肝臓において高いDNA、RNAおよびタンパク質を有する。4D-310の送達は、全ての個々の動物について、内因性AGAレベル(ビヒクル)を上回る血漿AGAレベルを生じ、これは、首尾よい遺伝子送達および4D-310産物からの遺伝子発現を実証している。
【0269】
GLAタンパク質組織生体内分布解析
【0270】
ホルマリン固定しパラフィン包埋した(FFPE)細胞ペレットおよび組織における、抗原回復条件、一次抗体および検出条件を含むアッセイ条件のマトリクスを用いて複数の市販のGLA抗体をスクリーニングすることによって、抗ガラクトシダーゼアルファ(GLA)免疫組織化学(IHC)アッセイを開発した。GLA IHCアッセイの特異度および感度を、野生型HEK293Tおよび4D-310トランスフェクトしたHEK293T細胞および4D-310処置したファブリーマウス組織の評価によって決定した。
【0271】
4D-310処置したホルマリン固定しパラフィン包埋した(FFPE)非ヒト霊長類(NHP)組織試料を、GLA IHC発現について評価した。品質管理のため、および実行間での一貫した結果を確実にするために、対照細胞ペレットを、各実験実行に含めた。ウサギIgGアイソタイプ抗体対照を、GLA IHCアッセイの特異性を確実にするために、各組織試料について含めた。
【0272】
低レベルの内因性GLA発現が、ビヒクル処置した組織において観察された。GLA IHC発現における増加が、全ての用量レベル(3×1012、1×1013および5×1013)で、4D-310処置したNHPの心臓組織において観察された。GLA発現における増加は、5×1013の用量レベルでは、4D-310処置したNHPの肝臓組織のみにおいて観察された。IHCによる、より低い用量レベルでの検出は、ビヒクル処置した動物において見られた発現に基づくと、高い内因性肝臓発現によって混乱する可能性があった。NHPの骨格筋でも横隔膜でも腎臓でも大動脈でも頸動脈でも小腸でも、組織試料においてGLA IHC染色における増加は観察されなかった。結果は、外部の有資格の病理学者が検証し、細胞型を同定した。
【0273】
4D-310を投与した動物での研究終結時に、ビヒクル対照に対する、GLA発現における増加は、肝臓、頸動脈、心臓(左心室自由壁および左心房を含む)、肺、大動脈、骨格筋のサブセット(三角筋、大胸筋および横隔膜を含む)、腎臓および脳(左半球)に限定された。GLAの最も高い発現は、肝臓(最大で21.1倍)、頸動脈(最大で15.5倍)、左心室自由壁(最大で12.2倍)および肺(最大で10.1倍)において見られた。より低いレベルのGLA発現(<10倍)が、大動脈(最大で7.4倍)、三角筋(最大で4.3倍)、横隔膜(最大で3.7倍)、大胸筋(最大で3.4倍)、腎臓(2.5倍)、大腿二頭筋(2.5倍)、脳(最大で2.4倍)、左心房(2.2倍)において記録された。GLAにおける上昇は、時折用量応答的であったが、常にではなかった。これらの変化は、4D-310関連とみなされた。全ての他の組織は、対照の2倍未満であり、したがって、上昇したGLA発現を有するとはみなされなかった。4D-310を投与した動物からの相対的GLA組織発現の概要は、以下の表19で見出すことができる:
表19:
【表19】
【0274】
図18~19から理解できるように、NHPへの4D-310の静脈内送達は、ビヒクルのみで処置した対照NHPと比較して、ファブリー関連組織中のAGA発現における有意な増加を生じた。したがって、4D-310の送達は、治療的に適切な組織における首尾よい遺伝子送達および4D-310産物からの遺伝子発現を生じた。上昇したAGA発現が、高用量動物の心臓において示される(図19)。
【0275】
RT-qPCR(RNA)遺伝子発現解析
【0276】
群1(ビヒクル/対照)の動物由来の検査した全ての試料は、予期されたように、4D-310について<LODであることが見出された。
【0277】
群2の動物(それらは、3.0×1012vg/kgの4D-310を受けた)では、4D-310 RNAは、以下の試料を除く検査した全ての組織試料について、 μgの総RNA当たり630.68(動物2001の精巣左)コピーから19,744,452.23(動物2002の肝臓左葉)コピーまでの範囲で陽性検出された:(1)動物2001の三角筋遠位、横隔膜左、横隔膜右、大胸筋および大腿二頭筋遠位ならびに脳小脳、空腸、頸動脈、胸髄、腰髄および肺は、<LODであることが見出された、(2)動物2001の脳、脳幹は、<LOQであることが見出された、(3)動物2002の三角筋遠位および大腿二頭筋遠位は、<LODであることが見出された、(4)動物2002の三角筋近位、大胸筋近位、大腿二頭筋近位、空腸、DRGの残り全て右および胸髄は、<LOQであることが見出された、(5)動物2003の横隔膜左、横隔膜右、大胸筋近位、大胸筋遠位、大腿二頭筋遠位、坐骨神経および腰髄は、<LODであることが見出された、(6)動物2003の三角筋近位、大腿二頭筋近位、脳右半球、脳小脳、DRGの残り全て右および精巣左は、<LOQであることが見出された。これらの試料について測定された陰性の総RNA濃度に起因して、動物2002の坐骨神経および腰髄について、1μgの総RNA当たりのコピーの結果は報告されていない。
【0278】
群3の動物(それらは、1.0×1013vg/kgの4D-310を受けた)では、4D-310 RNAは、検査した全ての組織試料において陽性として見出された。得られた検査結果は、以下を除く検査した全ての組織試料の、 gの総RNA当たり765.27(動物3003の空腸)コピーから10,387,886.08(動物3002の大動脈)コピーまでの範囲である:(1)動物3001の三角筋近位、三角筋遠位、横隔膜左、大胸筋近位、大胸筋遠位、上腕三頭筋(Triceps Branchii)近位、上腕三頭筋遠位、大腿二頭筋近位、大腿二頭筋遠位、坐骨神経および腰髄は、<LODであることが見出された、(2)動物3001の横隔膜右は、1μgのRNA当たりの利用可能なコピーの結果を有さなかった、(3)動物3001の脳、脳幹および肺は、<LOQであることが見出された、(4)動物3002の横隔膜右、大胸筋近位、空腸、坐骨神経、肺および腰髄は、<LODであることが見出された、(5)動物3002の大腿二頭筋遠位および脳脳幹は、<LOQであることが見出された、(6)動物3003のDRGの残り全て右は、<LOQであることが見出された。
【0279】
群4の動物(それらは、5.0×1013vg/kgの4D-310を受けた)では、4D-310 RNAは、検査した全ての組織試料において陽性として見出された。得られた検査結果は、以下を除き、1μgの総RNA当たり930.51(動物4001の上腕三頭筋近位)コピーから127,602,838.22(動物4002の心臓、心室中隔)コピーまでの範囲である:(1)動物4001の脳小脳、空腸および坐骨神経は、<LODであることが見出された、(2)動物4001についての頸動脈は、<LOQであることが見出された、(3)動物4001の脳左半球、脳右半球、脳脳幹、DRGの残り全て右および肺は、陰性の総RNA濃度を有し、したがって、これらの試料について、1μgのRNA当たりのコピーの結果は利用可能でない、(4)動物4002の横隔膜左および大腿二頭筋近位は、<LODであることが見出された、(5)動物4002の空腸および坐骨神経は、<LOQであることが見出された、(6)動物4003の大腿二頭筋遠位および坐骨神経は、<LODであることが見出された、(7)動物4003の三角筋近位、大胸筋近位および空腸は、<LOQであることが見出された。
【0280】
存在する場合、手動で精製されたRNA試料の使用とQIAcube HTシステムを使用して精製されたRNA試料の使用との間の差異を同定するための橋渡し評価は、両方の方法が、その方法の正確さに対しても精度に対しても影響を有さず、類似の結果を生じたことを実証した。異なるQC型間でのアッセイ間の正確さは、全てのQCレベルについて、2%と20%との間のQty%CV値を生じたが、アッセイ間の精度Qty%RE結果は、全てのQC濃度にわたって、-6%から-2%までの範囲であった。
【0281】
静脈内注入のおよそ52日後、最も高いレベルのベクター由来の遺伝子発現を示す組織は、左心室自由壁および心室中隔心臓試料、肝臓左葉および肝臓右葉、頸動脈血管ならびに右心室心臓試料であった。左心室自由壁および心室中隔心臓試料は、分析した10ngの総RNA当たり5.48×10コピーおよび5.46×10コピーの平均を生じたが、6つ全ての肝臓試料にわたる平均濃度は、3.59×10コピーであった。頸動脈血管および右心室心臓試料は、それぞれ、3.33×10コピーおよび1.78×10コピーを生じた。残りの組織試料の大部分は、最小限のベクター由来の遺伝子発現からベクター由来の遺伝子発現なしまでを生じ、検査した試料の3/4よりも多くが、定量限界(the limit or quantitation)であったまたはそれを下回った。ウイルスベクターの存在についてのみ検査する生体内分布結果を遺伝子発現結果と比較した場合、著しい対照が明らかである。生体内分布データからは、肝臓試料中の検出されたベクターのレベルは、左心室自由壁試料についての8.69×10コピーおよび心室中隔試料からの9.12×10コピーと比較して、1μgの試料DNA当たり5.75×10コピーで、60倍よりも大きく高かった。逆に、観察された遺伝子発現のレベルは、肝臓試料と比較して、2つの心臓試料においておよそ1.5倍高かった。頸動脈血管および右心室心臓試料は、肝臓試料中の約128倍および約69倍高いベクターレベルで、類似の結果を示したが、遺伝子発現レベルは、血管試料と肝臓試料との間ではおよそ等しく、右心室心臓試料と比較して肝臓試料において、2倍高いだけであった。ベクターDNAは、全ての動物の非転写肝臓試料中で検出された。ベクターDNAのこの混入は、標的配列遺伝子発現のおよそ1%~12%を占める。ベクター混入は、解析した残りの試料のいずれにおいても検出されなかった。ハウスキーピング遺伝子Hprt1の発現レベルは、各動物の個々の組織にわたって一貫しており、RNA試料の全体的完全性が確認された。
【0282】
図20から理解できるように、NHPへの4D-310の指定された用量の各々の単回静脈内投与は、共にファブリー病を処置するための重要な臓器である心臓および肝臓において観察された一貫した発現で、GLA RNA発現をもたらす。
【0283】
肉眼的病理学
【0284】
4D-310関連の肉眼での所見も4D-C102.CAG-EGFP関連の肉眼での所見も存在しなかった。5.0×1013で4D-C102.CAG-EGFPを与えた全ての試験物品動物(test article animals)および単回のビヒクル対照動物における肉眼での所見は、四頭筋(両側または片側)中の白色の異物からなった。4D-C102.CAG-EGFPを与えた動物のうち1匹(動物番号5003)は、四頭筋中に片側膿瘍もまた有した。これらは、対照および4D-C102.CAG-EGFP処置した動物において起こったので、おそらくは手順関連であった。3.0×1012の低用量の4D-310を与えた1匹の動物(動物番号2002)は、右後脚/肢中に、皮下組織の浮腫を有した。後者の変化は、片側の局在化した変化であったので、直接的には試験物品関連でない可能性があった。肉眼的変化は、プロトコールに従い、顕微鏡的には評価しなかった。
【0285】
病理組織学
【0286】
明らかな4D-310関連の顕微鏡所見も4D-C102.CAG-EGFP関連の顕微鏡所見も存在しなかった。いくつかの所見が、動物の組織において見出されたが、明らかな試験物品相関は存在しなかった。4D-310および4D-C102.CAG-EGFP処置した動物ならびにビヒクル対照において記録された所見は、心臓、種々の骨格筋、および坐骨神経を含む種々の組織の外膜における単核細胞の最小限の浸潤物からなった。さらに、最小限の単核浸潤物は、4D-310処置した動物の脳の髄膜において存在したが、4D-C102.CAG-EGFP処置動物においてもビヒクル対照動物においても存在しなかった。4D-310処置したサルにおいて記録された他の所見には、種々の骨格筋における最小限の筋線維変性または再生(典型的には限局性)、肺における最小限の肺胞マクロファージ凝集、および肝細胞の最小限の(多巣性)空胞形成が含まれた。これらは、典型的には、低い発生率のものであり、発生率においても分布においても重症度においても、用量関連の傾向は存在しなかった。さらに、これらの最小限の変化は、種についての背景所見として存在し得、したがって、試験物品関連とはみなされなかった。これらの所見のいずれも、有害とはみなされない。心臓冠状溝、大動脈外膜および骨格筋外膜を含む、4D-310処置した動物の種々の組織の脂肪組織において、脂肪壊死が起こり、発生率においても重症度においても、明らかな用量相関は存在しなかった。重症度は、最小限から中等度であり、用量関連ではなかった。脂肪壊死は、本発明者らの実験室において高用量メチルプレドニゾロン処置の結果として記録されてきた、または偶発的な背景変化として記録され得る。メチルプレドニゾロン処置は、試験物品の免疫原性応答を制御するために使用した。
【0287】
散在性ニューロンの神経細胞体のオートファジー(細胞質希薄化)が、4D-310の各用量において、1匹の動物の後根神経節において記録された。重症度は、最小限から軽度であったが、用量関連ではなかった。この変化は、カニクイザルにおける背景所見であり(Butt M. et al., 2019)(Pardo I. et al., 2019)、試験物品関連とはみなされない。全ての他の顕微鏡観察は、偶発的とみなされ、試験物品関連とはみなされなかった。これらの観察は、種についての公知の背景所見であり、低い発生率のものであり、対照および試験物品処置した動物について類似の発生率および重症度のものであり、ならびに/または用量応答相関を有さなかった。
【0288】
毒性学 - 4D-310または4D-C102.CAG-EGFPのIV投与に関連する変化は、臨床病理学に対する影響に限定された。5.0×1013vg/kgの4D-310および4D-C102.CAG-EGFPの単回IV投与の後、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)活性における、それぞれ最小限から際立った増加までが存在した。4D-C102.CAG-EGFPを投与した動物では、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)活性、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)活性および総ビリルビン濃度における、並行した最小限から中等度の増加が存在した。これらの変化は、14日目に最も顕著であったが、後の区間では部分的から完全に解消した。これらの変化は、4D-310および4D-C102.CAG-EGFP関連であるとみなされ、肝細胞効果および/または肝胆道効果を指し示した。顕微鏡相関物は、終結時には観察されなかった。
【0289】
また、5.0×1013vg/kgの4D-C102.CAG-EGFPでは、21日目の平均尿素窒素濃度における一過性の最小限の減少、および35日目に始まるアルブミン濃度における最小限から軽度の減少が存在し、これらは、4D-C102.CAG-EGFP関連とみなされた。上で考察した肝細胞効果は、これらの変化に寄与し得る。≧3.0×1012vg/kgの4D-310では、7日目にクレアチンキナーゼ(CK)活性における一過性の最小限から軽度の増加が存在し、これは、4D-310関連とみなされ、軽微な筋肉効果を指し示した。顕微鏡相関物は、終結時には観察されなかった。
【0290】
GLAの薬力学および生体内分布 - 循環(血漿)GLAタンパク質は、15日目(検査した最初の投与後時点)に始まって終結まで、いくらか用量応答的な様式で上昇した。15日目までに、血漿GLAレベルは、3.0×1012vg/kgの4D-310で3匹の動物中1匹において(最大で23.6倍)、1.0×1013vg/kgの4D-310で3匹の動物中3匹において(最大で8.1倍)および5.0×1013vg/kgの4D-310で3匹の動物中3匹において(最大で152.2倍)増加した。血漿GLAレベルは、15日目から剖検の日まで、概して類似(15日目の値のおよそ2.5倍以内)であった。4D-310を投与した動物での研究終結時に、GLA DNAは、検査したほとんどの組織において、いくらか用量応答的な様式で見出された。3.0×1012vg/kgの4D-310を投与した動物では、1ugのDNA当たりのベクターコピーは、51.72から6.3×10までの範囲であり、組織の小さいサブセットが、検出不能なレベルのGLA DNAを有した。1.0×1013vg/kgの4D-310では、GLA DNAは、178から3.4×10までの範囲の、1ugのDNA当たりのコピーで、アッセイした全ての組織において見出された。同様に、5.0×1013vg/kgの4D-310では、GLA DNAは、168から21.1×10までの範囲の、1ugのDNA当たりのコピーで、アッセイした全ての組織において検出可能であった。
【0291】
翻訳を、肝臓、頸動脈、心臓(左心室自由壁および左心房を含む)、肺、大動脈、骨格筋のサブセット(三角筋、大胸筋および横隔膜)、腎臓および脳(左半球)を含む組織のサブセットにおける検出可能なGLAタンパク質によって確認した。図21A~Bおよび22A~Bを参照されたい。GLAの最も高い発現は、肝臓(最大で21.1倍)、頸動脈(最大で15.5倍)、左心室自由壁(最大で12.2倍)および肺(最大で10.1倍)において見られた。より低いレベルのGLA発現(<10倍)は、大動脈(最大で7.4倍)、三角筋(最大で4.3倍)、横隔膜(最大で3.7倍)、大胸筋(最大で3.4倍)、腎臓(2.5倍)、大腿二頭筋(2.5倍)、脳(最大で2.4倍)、左心房(2.2倍)において記録された。GLAにおける上昇は、時折用量応答的であったが、常にではなかった。
【0292】
EGFPの薬力学および生体内分布 - 5.0×1013vg/kgの4D-C102.CAG-EGFPを投与した動物での研究終結時に、EGFP DNAは、検査したほとんどの組織において見出され、最も高いレベルのベクター由来の遺伝子発現を示す組織は、左心室自由壁および心室中隔(心臓)、肝臓左葉および肝臓右葉、頸動脈血管、ならびに右心室(心臓)であった。観察された遺伝子発現(RNA)のレベルは、肝臓試料と比較して、2つの心臓試料においておよそ1.5倍高かった。頸動脈血管および右心室心臓試料は、肝臓試料中の約128倍および約69倍高いDNAベクターレベルで、類似の結果を示したが、遺伝子発現レベルは、血管試料と肝臓試料との間ではおよそ等しく、右心室心臓試料と比較して肝臓試料において、2倍高いだけであった。GFPタンパク質の翻訳は、アッセイしたほとんどの組織において観察され、一般に、生体内分布および遺伝子発現データと一致した。GFPの最も高い発現(際立った増加)は、心臓(最大で8,956,503倍)、血管(最大で22,991倍)および肝臓(最大で5,194倍)において見られた。それぞれ、上に247倍、989倍および347倍の、中等度のGFP発現が、腎臓、三角筋および横隔膜筋肉において記録された。脳、神経、舌、脊髄、二頭筋および三頭筋(bicep and tricep muscles)において、最小限の発現が観察された。併せて考えると、5.0×1013vg/kg(4D-310について検査した最高用量、および4D-C102.CAG-EGFPについて検査した唯一の用量)までの、4D-310または4D-C102.CAG-EGFPの単回のIV注入は、種々の組織、最も顕著には、肝臓、心臓および血管において、測定可能なベクターDNA、遺伝子発現(RNAおよびタンパク質)を伴って、雄性カニクイザルにおいて、十分に耐容性が示された。いずれの有害な変化も欠如していることに起因して、5.0×1013vg/kgの用量レベルは、この研究の条件下で、4D-310または4D-C102.CAG-EGFPの両方について無有害作用量(NOAEL)であると決定された。
【0293】
結論
【0294】
5.0×1013vg/kg(4D-310について検査した最高用量、および4D-C102.CAG-EGFPについて検査した唯一の用量)までの、4D-310または4D-C102.CAGEGFPの単回静脈内注入は、種々の組織、最も顕著には、肝臓、心臓および血管において、測定可能なベクターDNA、遺伝子発現(RNAおよびタンパク質)を伴って、雄性カニクイザルにおいて、十分に耐容性が示された。いずれの有害な変化も欠如していることに起因して、5.0×1013vg/kgの用量レベルは、この研究の条件下で、4D-310および4D-C102.CAG-EGFPの両方について無有害作用量(NOAEL)であると決定された。
【0295】
ベクターゲノム、RNAメッセージおよび機能的タンパク質は、特に、高い(5×1013vg/kg)用量で、心臓において観察された。ベクターゲノムおよびRNAメッセージは、相関するようであった。RNAメッセージおよびAGA活性もまた相関するようであった。ファブリー関連組織におけるAGA活性データを、IHCによって確認した。EGFPを用いて測定したRNAメッセージおよびタンパク質のレベルは、GLAを用いて測定したレベルよりも低かった。
【0296】
本発明の材料および方法は、好ましい実施形態に関して記載されてきたが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなしに、本明細書に記載される方法にバリエーションが適用され得ることが、当業者に明らかである。当業者に明らかな全てのかかる同様の代替物および改変は、本発明の精神、範囲および概念の内であるとみなされる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトにおける発現のためにコドン最適化されたヒトα-ガラクトシダーゼA(AGA)タンパク質をコードする核酸であって、配列番号1として記載されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれと少なくとも95%同一なヌクレオチド配列を含み、別段同一な細胞における、配列番号3の野生型GLAヌクレオチド配列の発現のレベルと比較してより高いレベルで発現される、核酸。
(項目2)
前記ヌクレオチド配列が、少なくとも約0.80、少なくとも約0.83、少なくとも約0.85、少なくとも約0.88、少なくとも約0.90、少なくとも約0.92、少なくとも約0.93、または約0.80~約0.99、もしくは約0.85~約0.99、もしくは約0.88~約0.99、もしくは約0.90~約0.99、もしくは約0.93~約0.99のコドン適応指数を有する、項目1に記載の核酸。
(項目3)
配列番号1として記載されるヌクレオチド配列を含む、項目1に記載の核酸。
(項目4)
項目1から3のいずれか一項に記載の核酸と、前記核酸配列に作動可能に連結した、前記核酸配列にとって異種である発現制御配列とを含む、発現カセット。
(項目5)
前記発現制御配列が構成的プロモーターである、項目4に記載の発現カセット。
(項目6)
前記発現制御配列が、筋肉細胞における前記核酸の優先的な発現を指示するプロモーターである、項目4に記載の発現カセット。
(項目7)
項目1から3のいずれか一項に記載の核酸または項目4から6のいずれか一項に記載の発現カセットを含むベクター。
(項目8)
組換えアデノ随伴(rAAV)ベクターである、項目7に記載のベクター。
(項目9)
前記rAAVベクターが、血清型1、2、6もしくは8のAAVカプシド、またはそれらのバリアントを含む、項目8に記載のベクター。
(項目10)
前記rAAVベクターが、AAV2カプシドまたはそのバリアントを含む、項目9に記載のベクター。
(項目11)
前記AAV2カプシドバリアントが、配列番号4の配列を含む、項目10に記載のベクター。
(項目12)
前記rAAVベクターが、5’から3’に、(a)AAV2末端反復、(b)CAGプロモーター、(c)項目3に記載の核酸、(d)ポリアデニル化配列および(e)AAV2末端反復を含む核酸を含む、項目11に記載のベクター。
(項目13)
前記rAAVが、配列番号6として記載される配列またはそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一な配列を含むかまたはそれからなるヌクレオチド配列を含む、項目12に記載のベクター。
(項目14)
項目1から3のいずれか一項に記載の核酸または項目4から6のいずれか一項に記載の発現カセットまたは項目7から13のいずれか一項に記載のベクターを含む宿主細胞。
(項目15)
哺乳動物細胞である、項目14に記載の宿主細胞。
(項目16)
CHO細胞、HEK293T細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、BHK21細胞もしくはVero細胞であり、および/または懸濁培養もしくは接着培養で成長され、および/または心筋細胞もしくは骨格筋細胞である、項目14または15に記載の宿主細胞。
(項目17)
ファブリー病を処置するための医薬の製造における、項目1から3のいずれか一項に記載の核酸または項目7から13のいずれか一項に記載のベクターの使用であって、好ましくは、前記核酸またはベクターが、対象におけるグロボトリアオシルセラミド(Gb3)のレベルを低減させるのに有効な量での投与のためである、使用。
(項目18)
ファブリー病を処置するための医薬の製造における、(i)配列番号4の配列を有するカプシドタンパク質を含むカプシドおよび(ii)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む感染性rAAVの使用であって、好ましくは、前記核酸が、配列番号6と記載されるヌクレオチド配列またはそれと少なくとも80%同一な配列を含むかまたはそれからなり、必要に応じて、前記rAAVが、約10 12 ~約10 14 ベクターゲノム(vg)/kg、または約1×10 13 、3×10 13 もしくは5×10 13 vg/kgの、1つまたはそれより多くの用量で投与され、好ましくは、前記rAAVが、単回静脈内注射による投与のためである、使用。
(項目19)
前記核酸またはベクターが、静脈内および/または筋肉内注射による投与のために製剤化されている、項目17または18に記載の使用。
(項目20)
哺乳動物におけるAGAの減少したレベルによって媒介される疾患または状態を処置するための医薬の製造における、項目1から3のいずれか一項に記載の核酸または項目7から13のいずれか一項に記載のベクターの使用。
(項目21)
哺乳動物においてAGAのレベルを増加させるための医薬の製造における、項目1から3のいずれか一項に記載の核酸または項目7から13のいずれか一項に記載のベクターの使用。
(項目22)
発現制御配列に必要に応じて作動可能に連結した、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%同一なヌクレオチド配列を有する核酸と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
(項目23)
CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む、項目22に記載の医薬組成物。
(項目24)
少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と、(i)CAGプロモーターに作動可能に連結した配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するカプシドタンパク質を含むカプシドを含む感染性rAAVとを含む、医薬組成物。
(項目25)
前記核酸が、配列番号6として記載されるヌクレオチド配列またはそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一な配列を含むかまたはそれからなる、項目24に記載の医薬組成物。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図16
図17
図18
図19-1】
図19-2】
図20
図21
図22
【配列表】
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