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▶ 佐々木 了子の特許一覧

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  • 特許-クッキーの製造方法 図1
  • 特許-クッキーの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】クッキーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/06 20170101AFI20231225BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20231225BHJP
   A21D 6/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A21D13/06
A21D13/80
A21D6/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023128281
(22)【出願日】2023-08-07
【審査請求日】2023-08-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598102948
【氏名又は名称】佐々木 了子
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】食物繊維たっぷり!オートミールクッキー,クックパッド,2009年02月10日,https://cookpad.com/recipe/731650,[検索日2023年9月20日]
【文献】簡単ティークッキー(アイスボックスタイプ,クックパッド,2013年02月21日,https://cookpad.com/recipe/2128132,[検索日2023年9月20日]
【文献】小麦胚芽セサミクッキー,クックパッド,2018年08月11日,https://cookpad.com/recipe/5203771,[検索日2023年9月20日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バター又はマーガリンに砂糖及びトレハロースを加え、卵を加えて攪拌する第1工程と、
前記第1工程の終了後に水溶性の食物繊維の粉末を加えて攪拌する第2工程と、
前記第2工程の終了後に小麦粉とデンプンと小麦胚芽と食塩と膨張剤とを加えて攪拌する第3工程と、
前記第3工程の終了後の生地を焼成する第4工程と
を含むクッキーの製造方法。
【請求項2】
前記第4工程は、オーブン内で前記第3工程の終了後の前記生地を160℃~180℃で10~16分間焼成することを含む、請求項1に記載のクッキーの製造方法。
【請求項3】
前記第4工程は、鉄板上で前記第3工程の終了後の前記生地を180℃~190℃で6~7分間焼成することを含む、請求項1に記載のクッキーの製造方法。
【請求項4】
前記小麦粉は、
75質量%~85質量%の薄力粉と、
5質量%~15質量%の中力粉と、
5質量%~15質量%の強力粉と
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のクッキーの製造方法。
【請求項5】
前記第3工程の終了後の前記生地中の前記食物繊維の含有量は4.4質量%~5.3質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のクッキーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クッキーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向の高まりを受けて、食物繊維を加えて炭水化物を減らしたクッキーの開発が行われている。例えば特許文献1には、食物繊維を食用油により含浸させ、含浸された食物繊維を小麦粉と共に水を加えて混練、焼成することにより製造されるクッキーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-115434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のクッキーの製造方法では、食物繊維を食用油に含浸させている点で脂質成分が増えてしまい、健康志向のクッキーとは言えなくなってしまう。また、生地に単に食物繊維を加えるだけだと、生地中にだまができてしまい、焼成時に生地が焼き型にくっついたり、焼成されたクッキーが褐色になったりする課題があった。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、生地に食物繊維を加えても生地にだまができにくく、焼成時に生地が焼き型にくっつくことを抑制でき、焼成されたクッキーが褐色になることを抑制できるクッキーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るクッキーの製造方法は、バター又はマーガリンに砂糖及びトレハロースを加え、卵を加えて攪拌する第1工程と、前記第1工程の終了後に水溶性の食物繊維の粉末を加えて攪拌する第2工程と、前記第2工程の終了後に小麦粉とデンプンと小麦胚芽と食塩と膨張剤とを加えて攪拌する第3工程と、前記第3工程の終了後の生地を焼成する第4工程とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示のクッキーの製造方法によれば、生地の作成時に卵を加えた後に水溶性の食物繊維を加えることにより、卵の水分中に水溶性の食物繊維が溶解するので、生地にだまができにくくなる。生地にだまができにくいので、焼成時に生地が焼き型にくっつくことを抑制でき、焼成されたクッキーが褐色になることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の製造方法で製造されたクッキーの写真である。
図2】実施例4の製造方法で製造されたクッキーの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態によるクッキーの製造方法について、図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
本開示の一実施形態によるクッキーの製造方法は、下記第1工程~第4工程とから構成される。
第1工程:バター又はマーガリンに砂糖及びトレハロースを加え、卵を加えて攪拌する。
第2工程:第1工程の終了後に水溶性の食物繊維を加えて攪拌する。
第3工程:第2工程の終了後に小麦粉とデンプンと小麦胚芽と食塩と膨張剤とを加えて攪拌する。
第4工程:第3工程の終了後の生地を焼成する。
【0011】
尚、第1工程及び第3工程において使用される各原料の質量は、製造されるクッキーの製造量や、味又は堅さ等のクッキーの特徴に応じた質量でよい。第2工程で加えられる水溶性の食物繊維の質量は、第3工程の終了後の生地中の水溶性の食物繊維の含有量が4.4質量%~5.3質量%の範囲となる質量が好ましい。水溶性の食物繊維の含有量をこのような範囲にすることで、生地の焼成時に生地が焼き型にくっつくことと、焼成されたクッキーが褐色になることとを抑制できる。
【0012】
第4工程は、オーブン内で第3工程の終了後の生地を160℃~180℃で10~16分間焼成することであってもよい。また、第4工程は、鉄板上(鉄製の焼き型内)で第3工程の終了後の生地を180℃~190℃で6~7分間焼成することであってもよい。
【0013】
小麦粉の成分は特に限定はしないが、75質量%~85質量%の薄力粉と、5質量%~15質量%の中力粉と、5質量%~15質量%の強力粉とを含むものを使用することが好ましい。クッキーの割れを防止するために通常は安定剤を添加するが、中力粉と強力粉とをそれぞれ上記割合で薄力粉に混ぜることにより、安定剤を添加せずにクッキーの割れを抑制できる。また、甘味料を添加しなくても、中力粉及び強力粉を混ぜることにより、十分な甘さを感じ取ることができるようになる。さらに、水溶性の食物繊維の含有量が多いとクッキーの食感が堅く感じられるが、中力粉及び強力粉がそのような食感の解消の役目を果たすことができる。さらに、製造工場の温度や湿度によって生地の堅さが違ってくるが、中力粉と強力粉とをそれぞれ上記割合で薄力粉に混ぜることにより、生地を安定させることができる。
【0014】
上述のクッキーの製造方法によれば、生地の作成時に卵を加えた後に水溶性の食物繊維を加えることにより、卵の水分中に水溶性の食物繊維が溶解するので、生地にだまができにくくなる。生地にだまができにくいので、焼成時に生地が焼き型にくっつくことと、焼成されたクッキーが褐色になることとを抑制できる。
【0015】
第3工程の終了後の生地に、ピーナッツ、くるみ、カボチャの種、アーモンド等をトッピングして、第4工程を行ってもよい。
【実施例
【0016】
<実施例1>
(第1工程)
バター2kg、砂糖1.8kg、トレハロース300g、鶏卵24個(約1.3kg)を準備した。柔らかくしたバターに砂糖及びトレハロースを加え、さらに、鶏卵を数回に分けて加えて攪拌した。
【0017】
(第2工程)
第1工程の終了後に、水溶性の食物繊維として、株式会社林原から入手可能なファイバリクサ(登録商標)500gを数回に分けて加えて攪拌した。
【0018】
(第3工程)
小麦粉5kg、デンプン200g、小麦胚芽120g、食塩30g、膨張剤24gを準備した。小麦粉は、4kgの薄力粉と、0.5kgの中力粉と、0.5kgの強力粉とを混合したものである。第2工程の終了後にこれらを加えて攪拌した。攪拌後に1時間ほど静置した。静置後に、生地を棒状にしてから輪切りにし、質量25gかつ厚さ5mmの丸型にした。
【0019】
(第4工程)
オーブン内で丸型の生地を180℃で14分間焼成した。焼成後のクッキーの写真を図1に示す。
【0020】
<実施例2>
第1工程は実施例1と同じである。第2工程は、ファイバリクサ(登録商標)の添加量を550gとしたこと以外は実施例1と同じである。第3工程は、焼成される生地の厚さを1cmとしたこと以外は実施例1と同じである。第4工程では、丸型の生地を160℃で16分間焼成した。
【0021】
<実施例3>
第1工程は実施例1と同じである。第2工程は、ファイバリクサ(登録商標)の添加量を600gとしたこと以外は実施例1と同じである。第3工程は実施例1と同じである。第4工程では、丸型の生地を160℃で14分間焼成した。
【0022】
<実施例4>
第1工程から第3工程の攪拌までは実施例1と同じである。第4工程では、第3工程の終了後の25gの生地にピーナッツをトッピングし、生地を鉄製の焼き型に入れ、180℃で6分間焼成した。図2の写真に示されるように、焼成に用いた焼き型の形状に基づく南部煎餅形状のクッキーを製造した。
【0023】
<実施例5>
第1工程から第3工程までは実施例1と同じである。オーブン内で丸型の生地を180℃で10分間焼成した。
【0024】
<実施例6>
第1工程から第3工程までは実施例1と同じである。オーブン内で丸型の生地を180℃で15分間焼成した。
【0025】
<実施例7>
第1工程から第3工程の攪拌までは実施例1と同じである。第4工程では、第3工程の終了後の生地25gを鉄製の焼き型に入れ、190℃で7分間焼成した。
【0026】
<比較例1>
バター1.7kg、砂糖1.7kg、トレハロース300g、ファイバリクサ(登録商標)500g、鶏卵26個を準備した。柔らかくしたバターに、砂糖、トレハロース及びファイバリクサ(登録商標)を加えて混ぜ合わせ、その後に、鶏卵を数回に分けて加えて攪拌した。
【0027】
次に、小麦粉5kg、デンプン200g、小麦胚芽120g、食塩30g、膨張剤50g、甘味料であるステビア(αGスイート(T-W500)、東洋精糖株式会社)5gを準備した。小麦粉は、実施例1で使用したものと同じである。これらを更に加えて攪拌した。攪拌後に1時間ほど静置した。静置後に、生地を棒状にしてから輪切りにし、質量25gかつ厚さ5mmの丸型にした。
【0028】
このようにして製造した比較例1のクッキーの丸型の生地を鉄製の焼き型に入れ、195℃で6分間焼成した。
【0029】
<実施例1~7と比較例1との比較>
比較例1では、柔らかくしたバターに、砂糖、トレハロース及びファイバリクサ(登録商標)を加えて攪拌したところ、生地にだまができ、その後に、鶏卵と、小麦粉、デンプン、小麦胚芽、膨張剤、甘味料とを加えて攪拌したが、生地が堅くなった。この生地を焼成したところ、クッキーは褐色となり、食感にカリカリ感があり、内部に空洞が形成されていた。
【0030】
これに対し、実施例1~7の第3工程の終了後の生地にはだまは見られなかった。これは、第1工程で鶏卵を加えた後に水溶性の食物繊維を加えることで、卵の水分中に水溶性の食物繊維が十分に溶解したためであると考えられる。
【0031】
生地にだまが形成されなければ、適正な焼成温度及び焼成時間で生地を焼成することにより、焼成時に生地が焼き型にくっつくことと、焼成されたクッキーが褐色になることとを抑制できると考えられる。実施例1~3、5及び6によれば、生地をオーブンで焼成するときの温度は160℃~180℃であり、焼成時間は10~16分間であるが、このような条件であれば、生地のくっつき及びクッキーの着色が見られないことを確認できた。実施例4及び7によれば、生地を鉄製の焼き型に入れて焼成するときの温度は180℃~190℃であり、焼成時間は6~7分間であるが、このような条件であれば、生地のくっつき及びクッキーの着色が見られないことを確認できた。
【0032】
また、実施例1~3によれば、焼成される生地中の水溶性の食物繊維の含有量は4.4質量%~5.3質量%の範囲となるが、水溶性の食物繊維の含有量がこの範囲内であれば、生地のくっつきやクッキーの着色が見られないことを確認できた。
【0033】
実施例5と実施例6とでは、焼成温度は180℃で同じだが、焼成時間が前者は10分であるのに対し後者は15分である。前者の条件で焼成されたクッキーは、色及び食感がほどよい感じであったのに対し、後者の条件で焼成されたクッキーは、クッキーの表面だけではなく内部までも褐色になり、カリカリした食感となった。後者の条件で焼成されたクッキーも商品価値が損なわれるものではないが、焼成条件の違いにより見た目及び食感が異なり得ることを確認できた。尚、実施例1~5及び7のクッキーは比較例1に比べて、口の中でとろけるような食感が得られた。
【要約】
【課題】生地に食物繊維を加えても生地にだまができにくく、焼成時に生地が焼き型にくっつくことを抑制でき、焼成されたクッキーが褐色になることを抑制できるクッキーの製造方法を提供する。
【解決手段】本開示のクッキーの製造方法は、バター又はマーガリンに砂糖及びトレハロースを加え、卵を加えて攪拌する第1工程と、第1工程の終了後に水溶性の食物繊維を加えて攪拌する第2工程と、第2工程の終了後に小麦粉とデンプンと小麦胚芽と食塩と膨張剤とを加えて攪拌する第3工程と、第3工程の終了後の生地を焼成する第4工程とを含む。
【選択図】なし
図1
図2