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特許7408909多機能性ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】多機能性ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/00 20060101AFI20231226BHJP
   C07F 9/53 20060101ALI20231226BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08F4/00
C07F9/53 CSP
C08F2/50
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021512711
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 IB2019056596
(87)【国際公開番号】W WO2020049378
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】102018000008431
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516358093
【氏名又は名称】アイジーエム レシンス イタリア ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】マリカ モローネ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ カザルーチェ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ ノルチーニ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ポストル
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-128562(JP,A)
【文献】特表2015-532275(JP,A)
【文献】特表2017-522364(JP,A)
【文献】特表2016-510314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00
C08F 2/50
C07F 9/53
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の光開始剤。
式(I)
【化1】
[ここで、
mは3~8であり;
Gは、アルコキシル化ポリヒドロシ残基(ここで、その残基が由来するポリヒドロキシ化合物は、少なくともm個のヒドロキシ基を有する)であり;
R1は、C1-C18アルキル基(任意に、1以上の酸素原子及び/又はイオウ原子及び/又は1以上の置換又は未置換のイミノ基によって中断されている);C6-C12アリール基;C5-C12シクロアルキル基;酸素原子及び/又は窒素原子及び/又はイオウ原子を含有する5又は6員の複素環基から選ばれ(前記基の各々は、独立して、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、複素環基、及び/又はヘテロ原子によって置換されていてよい);
R2は、水素又はC1-C4アルキル基であり;及び
Yは、O又はSである。]
【請求項2】
式(I)において、mは3~6である請求項1に記載の光開始剤。
【請求項3】
式(I)において、R1が、フェニル、2,6-ジクロロフェニル、2,4,6-トリクロロフェニル、2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2,6-ジエチルフェニル、2,6-ジメトキシフェニル、2,6-ジエトキシフェニル、α-ナフチル、2,6-ジニトロフェニル、2,6-ジメチルシクロヘキシル、2,6-ジエチルシクロヘキシル、2,6-ジメトキシシクロヘキシル、2,6-ジエトキシシクロヘキシル、2,6-ジクロロシクロヘキシル、3級-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、及び2-エチルヘキシルから選ばれるものである請求項1又は2に記載の光開始剤。
【請求項4】
式(I)において、R2が水素又はメチルである請求項1~3のいずれかに記載の光開始剤。
【請求項5】
式(I)において、Gがエトキシル化及び/又はプロポキシル化されている請求項1~4のいずれかに記載の光開始剤。
【請求項6】
a)少なくとも1つのエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%(固形物含量(水又は溶媒を除く));及び
b)少なくとも1つの請求項1の式(I)で定義される光開始剤0.1~35質量%(固形物含量(エチレン系不飽和化合物、水又は溶媒を除く))
を含んでなる光硬化性組成物。
【請求項7】
a)少なくとも1つのエチレン系不飽和化合物70~98.9質量%(固形物含量(水又は溶媒を除く));及び
b)少なくとも1つの請求項1の式(I)で定義される光開始剤0.2~15質量%(固形物含量(エチレン系不飽和化合物、水又は溶媒を除く))
を含んでなる請求項6に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
さらに、c)他の光開始剤を、組成物の0.5~15質量%(固形物含量(エチレン系不飽和化合物、水又は溶媒を除く))の量で含んでなる請求項7に記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
さらに、d)光増感剤を、組成物の0.05~12質量%の量で含んでなる請求項7又は8に記載の光硬化性組成物。
【請求項10】
光重合性組成物及びインクを光硬化する方法であって、
I)a)少なくとも1つのエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%(固形物含量(水及び溶媒を除く));b)少なくとも1つの請求項1の式(I)で定義される光開始剤0.1~35質量%(固形物含量(エチレン系不飽和化合物を除く))を含んでなる光重合性組成物を調製する工程;
II)工程I)の組成物を光源にて光重合する工程
を含んでなる方法。
【請求項11】
光重合を、200~600 nmの波長において放射する光源を使用して行う請求項10に記載の方法。
【請求項12】
光重合を、365~420 nmの波長において放射するLED光源を使用して行う請求項10に記載の方法。
【請求項13】
さらに、光重合する前に、基材又は他の支持手段に光重合性組成物を塗布する工程を含んでなる請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれかに記載の方法に従って得られた製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光開始剤として有用な多機能性ビスアシルホスフィンオキシド、及び前記光開始剤を含んでなる組成物に係る。
【背景技術】
【0002】
ビスアシルホスフィンオキシドは、放射線硬化性組成物における光開始剤として広く使用されている。それらは、高い反応性及び無黄変性を有し、及びおよそ350-420 nmの長波長UVにおいて小さい吸収帯を有しており、これにより、これら化合物は、LEDランプに適するものとなる。全てのこれらの特性のため、ビスアシルホスフィンオキシドは、広範囲の用途、例えば、木材塗装、3D印刷、複合材料、医療機器、グラフィックアート、保護コーティングに適するユニークな種類の光開始剤となっている。
【0003】
ビスアシルホスフィンオキシドの重大な制限の1つは、それらの溶解性及び光硬化性組成物との適合性である。事実、このような光開始剤の使用は、しばしば、望ましくない結晶化効果を伴い、最終コーティングにおいて、光学的透明度及び反応性のロスを生ずる。近年、光硬化性組成物において、改善された溶解性を有する新規のビスアシルホスフィンオキシドを合成するため、多大の努力がなされてきており、いくつかの例が、米国特許第7687657号及び同第8633258号に報告されている。
【0004】
さらに、放射線硬化性組成物が、食品包装、玩具、又は歯科用途に使用される場合、光開始剤及び硬化コーティングを周囲媒体へ拡散させる(移動)分解生成物の量が重要な課題である。低分子量化合物は、通常、完全にはポリマーネットワークには組み込まれず、硬化された組成物から抽出又は拡散されがちである。それ故、硬化された組成物から移動又は抽出される傾向が減じられた光開始剤を考案することに連続して努力がはらわれている。
【0005】
これらの課題を克服する1つのアプローチは、エチレン系不飽和モイエティーを含有する光開始剤を使用することであり、例えば、米国特許第7687657号、米国特許出願公開第2013/0328028号、同第2015/0197651号、国際公開第2017/086224号及び同第2017/145484号は、(メタ)アクリル化官能性を有するビスアシルホスフィンオキシドの誘導体を開示している。エチレン系不飽和基は、硬化プロセスの間に、光開始剤が重合体構造に組み込まれることを可能にする。残念なことには、エチレン系不飽和基の存在は、これらの系の熱及び保存安定性を制限する。
【0006】
他のアプローチは、増大された分子サイズの光開始剤を使用することであり、これらは、硬化生成物中に封入される可能性が増大されており、移動可能及び/又は抽出可能な生成物のレベルを低減させる。この解決法は、米国特許第9701700号、国際公開第2017/086224号及び同第2018/047484号に開示されている。
【0007】
しかし、当業者は、これらの種類の光開始剤が、ともに、反応性を失う傾向を有すること認識している。このため、所望の硬化速度を達成するためには、しばしば、かなりの量の活性物質を必要とし、これにより、粘度を、放射線硬化性組成物の多くの用途、例えば、インクジェット印刷について望ましくないレベルまで増大させることになる。残念なことには、非アクリレート官能性物質の濃度10~12%以上では、前記化合物は、可塑剤として挙動し始めるか、或いは、硬化した膜の架橋密度を、機械的特性が損なわれるレベルまで減ずる。
【0008】
他のアプローチは、米国特許第9701700号に開示されているように、同一の化合物において、大きい分子サイズ及エチレン系不飽和の利点を組み合わせることである。その明細書には、エチレン系不飽和を含有する高分子量ビスアシルホスフィンオキシド以外に、高分子量を有するビスアシルホスフィンオキシドも記載されている。特に、(a)アシル基における広範囲の可能な置換及び(b)結合基R*[C(2)HR9-C(1)(R9)2-]n(ここで、C(1)はリンに結合する原子であり、及びR*はポリオール残基である)を示すビスアシルホスフィンオキシドが記載されている。ポリオールモイエティーに関して、実施例では、ポリオール残基がトリメチロールプロパンであるビスアシルホスフィンオキシドのみが示されている(実施例25a)。前記ビスアシルホスフィンオキシドは、有効であるとしても、当明細書において以下で検討するように、いくつかの欠点を示す(例えば、溶解性)。
【0009】
上述したように、ビスアシルホスフィンオキシドの溶解性及び光硬化系との適合性は、なお、重要な課題であり、これは、移動又は抽出される傾向が低減され、放射線硬化性組成物との適合性が改善された他のビスアシルホスフィンオキシドが、引き続き求められていることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明者らは、改善された溶解性、高い反応性及び安定性、及び非常に低い移動及び/又は抽出の傾向を有する、新規の一連のビスアシルホスフィンオキシド光開始剤を見出した。これに加えて、実施例25aの化合物(米国特許第9701700号)と比較する場合、式(I)の化合物は、新規の化合物の分子量が常に大きいとしても、完全に予測されることのない、より大きい反応性を示した。
【0011】
新規の多官能性ビスアシルホスフィンオキシドは、反応性に影響を及ぼすことなく(アルコキシル化されていない系に匹敵するか、又はそれより優れた反応性を有する)、製剤において、溶解性を増大させることができるアルコキシル化残渣を含有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1態様によれば、本発明は、式(I)
【化1】
[ここで、
mは2~10であり;
Gは、アルコキシル化ポリヒドロシ残基(ここで、その残基が由来するポリヒドロキシ化合物は、少なくともm個のヒドロキシ基を有する)であり;
R1は、C1-C18アルキル基(任意に、1以上の酸素原子及び/又はイオウ原子及び/又は1以上の置換又は未置換のイミノ基によって中断されている);C6-C12アリール基;C5-C12シクロアルキル基;酸素原子及び/又は窒素原子及び/又はイオウ原子を含有する5又は6員の複素環基から選ばれ(前記基の各々は、独立して、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、複素環基、及び/又はヘテロ原子によって置換されていてよい);
R2は、水素又はC1-C4 アルキル基であり;及び
Yは、O又はSであり;
ただし、Gが、
【化2】
(ここで、nは100である)であり、mが2であり、R2が水素であり、及びYがOである場合、R1は、2,4,6-トリメチルフェニル基(メシル基)ではない。]
の光開始剤に係る。
【0013】
他の態様によれば、本発明は、光硬化性組成物に係り、該組成物は、
a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%、好ましくは、70~98.9質量%(固形物含量(水又は溶媒を除く));及び
b)少なくとも1の式(I)(上述のように定義される)の化合物0.1~35質量%、好ましくは、0.1~20質量%、さらに好ましくは、0.2~15質量%(固形物含量(エチレン系不飽和化合物、水又は溶媒を除く))
を含んでなる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好適な具体例によれば、mは、3~8、最も好ましくは、3~6である。
【0015】
Gは、例えば、ポリヒドロキシ化合物のアルコキシル化によって得られる各種のアルコキシル化ポリヒドロキシ残基である。
【0016】
好適な具体例によれば、Gは、アルコキシル化ポリヒドロシ残基(ここで、残基が誘導されるポリヒドロキシ化合物は、m個のヒドロキシ基を有する)である。
【0017】
このようなアルコキシル化ポリヒドロキシ化合物は、当分野においてよく知られており、アルコキシル化ポリヒドロキシポリエーテル(脂肪族又は芳香族の両方);アルコキシル化ポリヒドロキシポリエステル;アルコキシル化ポリヒドロキシポリアミド;アルコキシル化ポリヒドロキシポリイミド;アルコキシル化ポリヒドロキシポリカーボネート;アルコキシル化スチレンアリルアルコールコポリマー;アルコキシル化ポリオール(オリゴマー性又はポリマー性);及びそれらの混合物から選ばれる。
【0018】
好ましくは、Gは、オリゴマーポリオール又はポリマーポリオールから誘導される。
【0019】
好適なポリオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリエタノールアミン、トリメチルオールプロパン、ジメチルオールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、糖アルコール(例えば、ソルビトール及びキシリトール)、及びこれらの混合物が含まれる。
【0020】
Gにおいて、前記オリゴマーポリオール又はポリマーポリオールは、アルコキシル化、例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化及び/又はブトキシル化される。
【0021】
アルコキシル化ポリヒドロシ残基の他の好適な例は、上述のアルコキシル化ポリアミン及びポリアルコキシル化ジアミン、例えば、エチレンジアミン及び1,3-プロピレンジアミンである。
【0022】
アルコキシル化残基において、好適なアルキレンオキシドに対して反応性の各基は、0~15個のアルコキシユニット、好ましくは、1~10個のアルコキシユニット、さらに好ましくは、2~5個を有することができ、ただし、式(I)の化合物には、少なくとも1個のアルコキシユニットが存在する。
【0023】
好ましくは、Gは、2000ドルトン以下、さらに好ましくは、1000ドルトン以下、最も好ましくは、800ドルトン以下の数平均分子量を有する。
【0024】
好適な具体例では、Gは、エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたポリオール由来のものである。
【0025】
他の好適な具体例では、Gは、エトキシル化及び/又はプロポキシル化エチレングリコール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化プロピレングリコール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化1,2-ブタンジオール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化1,3-ブタンジオール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化1,4-ブタンジオール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化2,3-ブタンジオール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化1,6-ヘキサンジオール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化1,2-ヘキサンジオール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化1,5-ヘキサンジオール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化2,5-ヘキサンジオール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化ネオペンチルグリコール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化グリセリン;エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリメチロールプロパン;エトキシル化及び/又はプロポキシル化ジトリメチロールプロパン;エトキシル化及び/又はプロポキシル化ペンタエリスリトール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化ジ-ペンタエリスリトール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化ソルビトール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリエタノールアミンから選ばれる。
【0026】
最も好適な具体例では、Gは、エトキシル化及び/又はプロポキシル化グリセリン;エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリメチロールプロパン;エトキシル化及び/又はプロポキシル化ジ-トリメチロールプロパン;及びエトキシル化及び/又はプロポキシル化ペンタエリスリトール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化ジ-ペンタエリスリトール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化ソルビトール;エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリエタノールアミンから選ばれる。
【0027】
ここに記載の式(I)において、
C1-C18アルキルは、好ましくは、直鎖状又は分枝状の飽和アルキル(アリール、アルキル、アルコキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環基で置換される)であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2級-ブチル、3級-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチルペンチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、1,1-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、α,α-ジメチルベンジル、ベンズヒドリル、p-トリルメチル、1-(p-ブチルフェニル)エチル、p-クロロベンジル、2,4-ジクロロベンジル、p-メトキシベンジル、m-エトキシベンジル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、6-ヒドロキシヘキシル、2-メトキシエチル、2-メトキシプロピル、3-メトキシプロピル、4-メトキシブチル、6-メトキシヘキシル、2-エトキシエチル、2-エトキシプロピル、3-エトキシプロピル、4-エトキシブチル又は6-エトキシヘキシル、2-メトキシカルボニルエチル、2-エトキシカルボニルエチル、2-ブトキシカルボニルプロピル、1,2-ジ(メトキシカルボニル)エチル、2-ブトキシエチル、ジエトキシメチル、ジエトキシエチル、1,3-ジオキソラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル、2-イソプロポキシエチル、2-ブトキシプロピル、2-オクチルオキシエチル、クロロメチル、2-クロロエチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、1,1-ジメチル-2-クロロエチル、2-メトキシイソプロピル、ブチルチオメチル、2-ドデシルチオエチル、2-フェニルチオエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-アミノエチル、2-アミノプロピル、3-アミノプロピル、4-アミノブチル、6-アミノヘキシル、2-メチルアミノエチル、2-メチルアミノプロピル、3-メチルアミノプロピル、4-メチルアミノブチル、6-メチルアミノヘキシル、2-ジメチルアミノエチル、2-ジメチルアミノプロピル、3-ジメチルアミノプロピル、4-ジメチルアミノブチル、6-ジメチルアミノヘキシル、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルエチル、2-フェノキシエチル、2-フェノキシプロピル、3-フェノキシプロピル、4-フェノキシブチル、及び6-フェノキシヘキシルが含まれ;
【0028】
C1-C4アルキルは、直鎖状又は分枝状、飽和、未置換のアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2級-ブチル又は3級-ブチルであり;
【0029】
C6-C12アリールは、未置換、又はアリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環基によって置換されていてもよく、例えば、フェニル、トリル、キシリル、4-ビフェニル、2-、3-、又は4-クロロフェニル、2,6-又は2,4-ジクロロフェニル、2,4,6-トリクロロフェニル、2-、3-、又は4-フルオロフェニル、2,6-又は2,4-ジフルオロフェニル、2,4,6-トリフルオロフェニル、2-、3-、又は4-メチルフェニル、2,6-又は2,4-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-、3-、又は4-エチルフェニル、2,6-又は2,4-ジエチルフェニル、2-、3-、又は4-イソプロピルフェニル、2-、3-、又は4-3級-ブチルフェニル、ドデシルフェニル、2-、3-、又は4-メトキシフェニル、2,6-又は2,4-ジメトキシフェニル、2-、3-、又は4-エトキシフェニル、2,6-又は2,4-ジエトキシフェニル、ヘキシルオキシフェニル、α-ナフチル、β-ナフチル、メチルナフチル、イソプロピルナフチル、クロロナフチル、エトキシナフチル、2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2,6-ジメトキシフェニル、2,6-ジクロロフェニル、4-ブロモフェニル、2-又は4-ニトロフェニル、2,4-又は2,6-ジニトロフェニル、4-ジメチルアミノフェニル、4-アセチルフェニル、メトキシエチルフェニル、及びエトキシメチルフェニルが含まれ;
【0030】
C5-C12シクロアルキルは、未置換、又はアリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環基によって置換されていてもよく、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、2,5-ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、2,6-ジメチルシクロヘキシル、2,6-ジエチルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、2,6-ジメトキシシクロヘキシル、2,6-ジエトキシシクロヘキシル、ブチルチオシクロヘキシルクロロシクロヘキシル、2,6-ジクロロシクロヘキシル及び2,5-ジクロロシクロヘキシルが含まれ;又はC5-C12シクロアルキルは、飽和又は不飽和の、未置換又は置換されたビシクロ系、例えば、ノルボルニル又はノルボルネニル、トリシクロ系、例えば、アダマンチルであり;
【0031】
酸素及び/又は窒素及び/又はイオウ原子を含有する5~6員の複素環基としては、例えば、フリル、チオフェニル、ピリル、ピリジル、インドリル、ベンゾキサゾール、ジオキソリル、ジオキシル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ジメチルピリジル、メチルキノリル、ジメチルピリル、メトキシフリル、ジメトキシピリジル、ジフルオロピリジル、メチルチオフェニル、イソプロピルチオフェニル、及び3級-ブチルチオフェニルが含まれる。
【0032】
好ましくは、R1は、フェニル、トリル、キシリル、2-、3-、又は4-クロロフェニル、2,6-又は2,4-ジクロロフェニル、2,4,6-トリクロロフェニル、2-、3-、又は4-メチルフェニル、2,6-又は2,4-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-、3-、又は4-エチルフェニル、2,6-又は2,4-ジエチルフェニル、2-、3-、又は4-イソプロピルフェニル、2-、3-、又は4-3級-ブチルフェニル、2-、3-、又は4-メトキシフェニル、2,6-又は2,4-ジメトキシフェニル、2,6-又は2,4-ジメトキシフェニル、α-ナフチル、β-ナフチル、メチルナフチル、4-ブロモフェニル、2-又は4-ニトロフェニル、2,4-又は2,6-ジニトロフェニル、4-ジメチルアミノフェニル、4-アセチルフェニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2,5-ジメチルシクロペンチル、2,6-ジメチルシクロヘキシル、2,6-ジエチルシクロヘキシル、2,6-ジメトキシシクロヘキシル、2,6-ジエトキシシクロヘキシル、2,6-ジクロロシクロヘキシル、2,5-ジクロロシクロペンチル、アダマンチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2級-ブチル、3級-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチルペンチル、デシル、ドデシル、2-又は3-フリル、2-又は3-チオフェニル、2-又は3-ピリル、及びジメチルピリルから選ばれる。
【0033】
さらに好ましくは、R1は、フェニル、2,6-ジクロロフェニル、2,4,6-トリクロロフェニル、2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2,6-ジエチルフェニル、2,6-ジメトキシフェニル、2,6-ジエトキシフェニル、α-ナフチル、2,6-ジニトロフェニル、2,6-ジメチルシクロヘキシル、2,6-ジエチルシクロヘキシル、2,6-ジメトキシシクロヘキシル、2,6-ジエトキシシクロヘキシル、又は2,6-ジクロロシクロヘキシル、3級-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、及び2-エチルヘキシルから選ばれる。
【0034】
最も好ましくは、R1は、フェニル、2,6-ジクロロフェニル、2,4,6-トリクロロフェニル、2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2,6-ジメトキシフェニル、及び3級-ブチルから選ばれる。
【0035】
好ましくは、R2は、水素、メチル、及びエチルから選ばれ、さらに好ましくは、水素又はメチルであり、最も好ましくは、水素である。
【0036】
Yは、好ましくは、Oである。
【0037】
式(I)による好適な多官能性ビスアシルホスフィンオキシドを表1に記載するが、単に説明のためのものであり、これらに限定されない。ポリマー多官能性残基の場合、記載されたポリマー多官能性ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤が分子量分布を有することは、当業者には明らかである。構造において、a、b、c、d、e、及びfは整数であり、それらは、独立して、0~15の範囲であり、ただし、それらの少なくとも1は0でない。
【0038】
【表1】

【0039】
式(I)の化合物は、当業者には公知の一般的な方法に従って、例えば、国際公開第2006/056541号に記載の方法に従って調製される。代表的な式(I)の化合物の例示的合成法を後述の実施例に報告する。
【0040】
本発明によれば、式(I)の化合物は、エチレン系不飽和化合物b)を含んでなる光硬化性組成物を調製するために使用される。
【0041】
不飽和化合物b)は、1以上のオレフィン系二重結合を含有する。それらは、低分子量(モノマー)又は高分子量(オリゴマー)を有することができる。
【0042】
二重結合1個を有する低分子量モノマーの好適な例は、アルキル又はヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレート、例えば、メチル、エチル、ブチル、2-エチルヘキシル又は2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート及びメチル又はエチルメタクリレートである。また、ケイ素又はフルオレンにて修飾した樹脂、例えば、シリコーンアクリレートも興味深い。これらのモノマーの他の例は、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、アルキルスチレン及びハロゲノスチレン、ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、ビニルエーテル、例えば、イソブチルビニルエーテル、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、又は塩化ビニリデンである。
【0043】
2個以上の二重結合を有するモノマーの例は、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、4,4'-ビス-(2-アクリルオキシエトキシ)-ジフェニルプロパン、トリメチルオールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート又はテトラアクリレート、ビニルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルスクシネート、ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレート、又はトリス-(2-アクリロイルエチル)イソシアヌレートである。
【0044】
高分子量(オリゴマー)多不飽和化合物の例は、アクリル化エポキシ樹脂、アクリル化又はビニルエーテル-又はエポキシ基含有ポリエステル、アクリル化ポリウレタン、又はアクリル化ポリエーテルである。不飽和オリゴマーの他の例は、通常、マレイン酸、フタル酸、及び1以上のジオールから調製され、分子量約500~3000を有する不飽和ポリエステルである。このような不飽和オリゴマーは、プレポリマーとも呼ばれる。
【0045】
本発明の実施に特に好適な化合物b)の例は、エチレン系不飽和カルボン酸及びポリオール又はポリエポキシドのエステル、及び鎖又は側鎖にエチレン系不飽和基を含有するポリマー、例えば、不飽和ポリエステル、ポリアミド及びポリウレタン及びそれらのコポリマー、アルキド樹脂、ポリブタジエン及びブタジエンコポリマー、ポリイソプレン及びイソプレンコポリマー、側鎖に(メタ)アクリル基を有するポリマー及びコポリマー、さらに、このようなポリマーの1以上の混合物である。
【0046】
前記エステルの調製に有用な不飽和カルボン酸及び無水物の例示的な例は、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイヒ酸、及び不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸及びオレイン酸である。アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
【0047】
エステル化されるポリオールは、芳香族、脂肪族、及び脂環式ポリオール、好ましくは、脂肪族及び脂環式ポリオールである。
【0048】
芳香族ポリオールは、例えば、ノボラック及びレゾールとともに、ヒドロキノン、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ジ(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。エステル化されるポリオールは、前記ポリオール、特に、芳香族ポリオール及びエピクロロヒドリンに基づくものを含む。ポリマー鎖又は側基にヒドロキシル基を含有するポリマー及びコポリマー、例えば、ポリビニルアルコール及びそれらのコポリマー、又はポリメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル又はそれらのコポリマーも、ポリオールとして好適である。さらに好適なポリオールは、ヒドロキシル末端基を有するオリゴエステルである。
【0049】
脂肪族及び脂環式ポリオールの例としては、好ましくは、炭素原子2~12個を含有するアルキレンジオール、例えば、エチレングリコール、1,2-又は1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-、又は1,4-ブタンジオール、ペタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、好ましくは、200~1500の分子量を有するポリエチレングリコール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-、1,3-、又は1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、グリセリン、トリス(β-ヒドロキシ-エチル)アミン、トリメチルオールエタン、トリメチルオールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びソルビトールが含まれる。
【0050】
さらに、好適なエチレン系不飽和化合物b)は、不飽和カルボン酸及びアミノ基2~6個、好ましくは、2~4個を有する芳香族、脂肪族、及び脂環式のポリアミンから得られる不飽和ポリアミンである。このようなポリアミンの例は、エチレンジアミン、1,2-又は1,3-プロピレンジアミン、1,2-、1,3、又は1,4-ブチレンジアミン、1,5-ペンチレンジアミン、1,6-へキシレンジアミン、オクチレンジアミン、ドデシレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソプレンジアミン、フェニレンジアミン、ビスフェニレンジアミン、ジ-(β-アミノエチル)エーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、及びジ(β-アミノエトキシ)-及びジ(β-アミノプロポキシ)エタンである。他の好適なポリアミンは、側鎖に追加のアミノ基を含有するポリマー及びコポリマー、及びアミノ末端基を含有するオリゴアミドである。
【0051】
このようなポリアミドの特殊な例は、メチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、及びN-[(β-ヒドロキシエトキシ)エチル]アクリルアミドである。
【0052】
本発明の実施には、不飽和ポリウレタン、例えば、飽和又は不飽和ジイソシアネート及び不飽和又は飽和ジオールから誘導されたものも好適である。ポリブタジエン及びポリイソプレン及びそれらのコポリマーも有用である。好適なコポリマーとしては、例えば、オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン及びヘキセン、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン、及び塩化ビニルが含まれる。
【0053】
化合物b)として、側鎖に不飽和(メタ)アクリレート基を有するポリマーが使用できる。それらは、一般的には、ノボラック系のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物;(メタ)アクリル酸と、エステル化されたビニルアルコール又はヒドロキシアルキル誘導体とのホモ-又はコポリマー;及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸とエステル化された(メタ)アクリレートとのホモ-又はコポリマーである。
【0054】
本発明の光硬化性組成物は、成分a)及びb)に加えて、さらに、光開始剤c)及び/又は添加剤d)を含有できる。
【0055】
更なる成分c)は、組成物の0.5~15質量%(固形物含量(エチレン系不飽和化合物、水又は溶媒を除く))、好ましくは、1~10質量%の量で存在できる。
【0056】
好適な他の光開始剤c)の例は、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテル及びベンジルケタール、例えば、ベンジルジメチルケタール、ケトスルホン、例えば、 1-[4-[(4-ベンゾイル-フェニル)-チオ]-フェニル]-2-メチル-2-[(4-メチル-フェニル)-スルホニル]-プロパン-1-オン(Esacure 1001、IGM Resins B.V.)、3-ケトクマリン、例えば、EP2909243又は国際公開第2017/216699号に記載されたもの、フェニルグリオキシレート及びその誘導体、二量体フェニルグリオキシレート、ペルエステル、例えば、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ペルエステル、例えば、EP126541に記載されたもの、アクリルホスフィン光開始剤(モノ-アシルホスフィンオキシド、ビス-アシルホスフィンオキシド、トリス-アシルホスフィンオキシド、及び多官能性モノ-又はビスアシルホスフィンオキシドの中から選ばれる)、ハロメチルトリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール;フェロセニウム化合物又はチタノセン、例えば、ジシクロペンタジエニル-ビス(2,6-ジフルオロ-3-ピロロ-フェニル)チタン;O-アシルオキシムエステル光開始剤と組み合わされたオルト-クロロヘキサフェニルビスイミダゾールである。
【0057】
α-ヒドロキシケトン及びα-アミノケトンの例は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-フェノキシ]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンである。
【0058】
O-アシルオキシムエステル光開始剤の例は、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル] 1-(O-アセチルオキシ)、又は英国特許第2339571号に記載されたものである。
【0059】
アシルホスフィン光開始剤の例としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(2,4-ジペンチルオキシフェニル)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸グリセロールエトキシル化トリエステル(Omnipol TP、IGM Resins B.V.)が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
ハロメチルトリアジン系光開始剤の例は、2-[2-(4-メトキシ-フェニル)-ビニル]-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-(4-メトキシ-フェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-メチル-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジンである。
【0061】
本発明による光硬化性組成物が、ハイブリッドシステム(この点について、フリーラジカル的及びカチオン的硬化システムの混合物を意味する)において使用される場合、更なる光開始剤c)として、カチオン性光開始剤も使用される。好適なカチオン性光開始剤の例は、例えば、米国特許第4,950,581号に記載されているように、芳香族スルホニウム、ホスホニウム、又はヨードニウム塩、又はシクロペンタジエニルアレン-鉄(II)錯塩、例えば、(η6-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、又は例えば、英国特許第2 348 644号、米国特許第4,450,598号、同第4,136,055号、国際公開第00/10972号及び国際公開第00/26219号に記載されたように、オキシム系光潜在性酸である。
【0062】
添加剤d)は、例えば、光増感剤、促進剤/共開始剤、熱開始剤、結合剤、安定剤、及びそれらの混合物である。
【0063】
光硬化法は、更なる添加剤d)として、0.05~12質量%、好ましくは、0.1~10質量%の少なくとも1の光増感剤を添加することによって改善される。
【0064】
光増感剤の例は、当分野において一般的に使用されているもの、芳香族カルボニル化合物、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノン及び3-アシルクマリン誘導体、テルフェニル、スチリルケトン、及び3-(アロイルメチレン)-チアゾリン、カンファーキノン及びエオシン、ローダミン、及びエリスロシン染料である。
【0065】
チオキサントンの例は、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4-ブトキシカルボニルプロピルチオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シクロ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノエチル)チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチルチオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシベンジル)チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチルチオキサントン、N-アリールチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-オクチルチオキサントン-3,4-カルボキシイミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-チオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-ポリエチレングリコールエステル、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアンモニウムクロリド、又はPCT/EP2011/069514に記載されたもの、例えば、n-ドデシル-7-メチル-チオキサントン-3-カルボキシレート、及びN,N-ジイソブチル-7-メチル-チオキサントン-3-カルボアミドである。ポリマーチオキサントン誘導体(例えば、Omnipol TX、IGM Resins B.V.;Genopol TX-1、Rahn A.G.;Speedcure 7010、Lambson Limited)も好適である。
【0066】
ベンゾフェノンの例は、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、4,4'-ジメチルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、4,4'-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-(4-メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、4-(2-ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4-(4-トリルチオ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N,N-トリメチルベンゼンメタンアンモニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアンモニウムクロリド1水和物、4-(13-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロぺニル)オキシエチル-ベンゼンメタンアンモニウムクロリドである。ポリマーベンゾフェノン誘導体(例えば、Omnipol BP、Omnipol 2702、及びOmnipol 682、いずれもIGM Resins B.V.;Genopol BP-2、Rahn A.G.;及びSpeedcure 7005、Lambson Limited)も好適である。
【0067】
3-アシルクマリン誘導体の例は、3-ベンゾイルクマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(プロポキシ)クマリン、3-ベンゾイル-6,8-ジクロロクマリン、3-ベンゾイル-6-クロロクマリン、3,3'-カルボニル-ビス[5,7-ジ(プロポキシ)クマリン]、3,3'-カルボニル-ビス(7-メトキシクマリン)、3,3'-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-イソブチロイルクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジメトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジエトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジブトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(アリルオキシ)クマリン、3-ベンゾイル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、3-イソブチロイル-1,7-ジメチルアミノクマリン、5,7-ジメトキシ-3-(1-ナフトイル)クマリン、5,7-ジメトキシ-3(1-ナフトイル)-クマリン、3-ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、7-ジエチルアミノ-3-チエノイルクマリン、3-(4-シアノベンゾイル)-5,7-ジメトキシクマリン、又はEP2909243及び国際公開第2017/216699号に記載されたものである。
【0068】
3-(アロイルメチレン)チアゾリンの例は、3-メチル-1,2-ベンゾイルメチレン-β-ナフトチアゾリン、3-メチル-2-ベンゾイルメチレン-ベンゾチアゾリン、3-エチル-2-プロピオニルメチレン-β-ナフトチアゾリンであり;他の芳香族カルボニル化合物の例は、アセトフェノン、3-メトキシアセトフェノン、4-フェニルアセトフェノン、ベンジル、例えば、国際公開第2013/164394号に記載されたもの、2-アセチルナフタレン、2-ナフトアルデヒド、9,10-アントラキノン、9-フルオレノン、ジベンゾスベロン、キサントン、2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、α-(パラ-ジメチルアミノベンジリデン);ケトン、例えば、2-(4-ジメチルアミノ-ベンジリデン)-インダン-1-オン、又は3-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-インダン-5-イル-プロぺノン、3-フェニルチオフタルイミド、N-メチル-3,5-ジ(エチルチオ)フタルイミドである。
【0069】
本発明の光硬化性組成物は、便利に、促進剤/共開始剤、例えば、EP438123及び英国特許第2180358号に記載されたように、アルコールチオール、アミン、又はヘテロ原子に近接する炭素に結合した有効酸素を有するエーテル、ジスルフィッド、及びホスフィンも含むことができる。このような促進剤/共開始剤は、一般に、0.2~15質量%、好ましくは、0.2~8質量%の量で存在する。
【0070】
アミン促進剤/共開始剤の好適な例としては、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族、複素環、オリゴマー又はポリマーアミンが含まれるが、これらに限定されない。これらは、2級又は3級アミン、例えば、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジ-シクロヘキシルアミン、N-フェニルグリシン、トリエチルアミン、フェニル-ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、キノリン、ジメチルアミノ安息香酸のエステル、ミヒラーのケトン(4,4'-ビス-ジメチルアミノベンゾフェノン)及び対応する誘導体である。
【0071】
アミノ促進剤/共開始剤として、アミン修飾アクリレート化合物が使用される;このようなアミン修飾アクリレートの例としては、米国特許第3,844,916号、EP280222、米国特許第5,482,649号又は米国特許第5,734,002号に記載された、1級又は2級アミンとの反応によって修飾されたアクリレートが含まれる。
【0072】
共開始剤として、多官能性アミン及びポリマーアミン誘導体も好適であり、いくつかの例は、Omnipol ASA(IGM Resins B.V.)、Genopol AB-2(Rahn A.G.)、Speedcure 7040(Lambson Limited)、又は米国特許出願公開第2013/0012611号に記載されたものである。
【0073】
また、本発明による硬化法は、特に、色素性組成物(例えば、二酸化チタンを含む色素性組成物)の場合、追加の添加剤d)として、熱開始剤、加熱される際にフリーラジカルを形成する化合物、例えば、EP245639に記載されているように、例えば、アゾ化合物、例えば、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、トリアゼン、ジアゾスルフィッド、ペンタジン、又はペルオキシ化合物、例えば、ヒドロペルオキシド又はペルオキシカーボネート、例えば、3級-ブチルヒドロペルオキシドの添加によって促進される。
【0074】
結合剤を、本発明の光硬化性組成物に添加することもできる。結合剤の添加は、光硬化性化合物が液体又は粘稠な物質である場合に特に有利である。結合剤の量は、5~60質量%、好ましくは、10~50質量%である。結合剤の選択は、用途、及びそのために要求される特性、例えば、水性及び有機性溶媒系における揮発性、基材への接着性及び酸素に対する感受性に応じて行われる。
【0075】
好適な結合剤は、例えば、分子量約5000から2000000,好ましくは、10000~1000000を有するポリマーである。例示的な例は、アクリレート及びメタクリレートのホモ-及びコポリマー、例えば、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマー、ポリ(メタクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アクリル酸アルキルエステル);セルロースエステル及びエーテル、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、メチルセルロース、エチルセルロース;ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、環化ゴム、ポリエーテル、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン:塩素化ポリオレフィン、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデンのコポリマー、塩化ビニリデンと、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ビニルアセテートとのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、コポリ(エチレン/ビニルアセテート)、ポリカプロラクタム及びポリ(ヘキサメチレンアジパミド)のようなポリマー、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレングリコールテレフタレート)及びポリ(ヘキサメチレングリコールスクシネート)である。
【0076】
好適な安定剤は、例えば、未成熟重合を防止する熱開始剤、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体、p-メトキシフェノール、β-ナフトール又は立体障害フェノール、例えば、2,6-ジ(3級-ブチル)-p-クレゾールである。暗所保存安定性を増大させるために、例えば、銅化合物、例えば、銅ナフテネート、ステアレート又はオクタエート、リン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフェン、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、又はトリベンジルホスファイト、4級アンモニウム化合物、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド又はトリメチルベンジルアンモニウムクロリド、又はヒドロキシルアミン誘導体、例えば、N,N-ジエチルヒドロキシルアミンを使用できる。重合の間に、大気中の酸素を排除するため、ポリマーにおいて不溶性であり、重合の開始時、表面に移動し、空気の侵入を妨げる透明な表面層を形成するパラフィン又は同様のワックス様物質を添加することができる。
【0077】
光安定剤、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾフェノン、シュウ酸アミド、又はヒドロキシフェニル-s-トリアジンタイプのUV吸収剤を添加することも可能である。このような化合物は、立体障害アミン(HALS)の使用とともに又は使用することなく、単独で又は混合物の形で使用される。
【0078】
本発明の光硬化性組成物は、更なる添加剤d)として、光還元可能な染料、例えば、キサンテン、ベンゾキサンテン、ベンゾチオキサンテン、チアジン、ピロニン、ポルフィリン、又はアクリジン染料、及び/又は放射線切断可能なトリハロメチル化合物を含むことができる。これらの化合物は、例えば、EP445624に記載されている。
【0079】
更なる慣例の添加剤d)は、用途に応じて、光学的光沢剤、フィラー、顔料、白色及び有色顔料、着色料、帯電防止剤、湿潤剤、又は流動性向上剤である。
【0080】
当分野において慣例の連鎖移動剤も、本発明による光硬化性組成物への添加が可能である。例は、メルカプタン、アミン、及びベンゾチアゾールである。
【0081】
薄く、着色されたコーティングを硬化させるためには、米国特許第5,013,768に記載されているように、ガラスビーズ又は微細ガラス繊維を添加することが好適である。
【0082】
本発明による光硬化性組成物は、着色料及び/又は白色又は有色顔料を含むこともできる。用途に応じて、無機顔料及有機顔料の両方を使用できる。このような添加剤は、当業者には知られている;いくつかの例は、例えば、ルチル又はアナターゼタイプの二酸化チタン顔料、カーボンブラック、酸化亜鉛、例えば、亜鉛白、酸化鉄、例えば、黄色酸化鉄、ベンガラ、クロムイエロー、クロムグリーン、ニッケルチタンイエロー、群青、コバルトブルー、バナジン酸ビスマス、カドミウムイエロー、及びカドミウムレッドである。有機顔料の例は、モノ-又はビス-アゾ顔料、及びその金属錯体、フタロシアニン顔料、多環式アゾ顔料、例えば、ペリレン、アントラキノン、チオインジゴ、キナクリドン、又はトリフェニルメタン顔料であり、及び、また、ジケトピロロピロール、イソインドリノン、例えば、テトラクロロイソインドリノン、イソインドリン、ジオキサジン、ベンズイミダゾロン、及びキノフタロン顔料である。顔料は、製剤において、単独で又は混合物として使用される。
【0083】
顔料は、用途に応じて、当分野において慣例の量、例えば、総質量基準で、0.1~30質量%又は10~25質量%の量で製剤に添加される。
【0084】
組成物は、例えば、極めて広い範囲の種類の有機着色料も含むことができる。例は、アゾ染料、メチン染料、アントラキノン染料、及び金属錯体染料である。通常の濃度は、例えば、総質量基準で0.1~20質量%、特に、1~5質量%である。
【0085】
添加剤の選択は、使用分野及びその分野において望まれる特性によって決定される。上記の添加剤d)は、当分野において知られており、従って、当分野における慣例の量で使用される。
【0086】
本発明の光硬化性組成物は、各種の目的に、例えば、印刷インク(例えば、スクリーン印刷用インク、フレキソ印刷用インク、オフセット印刷用インク、及びインクジェット印刷用インク)として、クリア塗装として、着色塗装として、白色塗装として(例えば、木材又は金属用)、粉体塗装として、コーティング材料として(中でも、紙、木材、金属又はプラスチック用)、構造体又は道路マーキング用日光硬化性塗料として、写真複製プロセス用、ホログラフィック記録材料用、画像記録プロセス用又は有機溶媒を使用して又は水性アルキル性媒体を使用して現像される版面の製造において、スクリーン印刷用のマスクの製造用、歯科用充填材料として、接着剤として、感圧性接着剤として、積層樹脂として、フォトレジスト(例えば、ガルバノレジスト、エッチレジスト又は永久レジスト(液体及び乾燥フィルムの両方))、光構造性(photostructurable)誘電体として、及び電子回路用ソルダーマスクとして、各種のディスプレイスクリーン用のカラーフィルターの製造における又はプラズマディスプレイ及びエレクトロルミネセントディスプレイの製造中の構造物の形成におけるレジストとして、光学スイッチ、光学格子(干渉格子)の製造において、バルク硬化(透明鋳型でのUV硬化)による又はステレオリソグラフィー法(例えば、米国特許第4,575,330号に記載されている)による三次元物品の製造において、複合材料(例えば、ガラス繊維及び/又は他の繊維と他のアジュバントを含んでいてもよいスチレンポリエステル)及び他の厚い層状構成物の製造において、及び当業者に公知の三次元印刷法、電子部品のコーティング又は封止において、或は光ファイバーのコーティング剤としての使用に適している。
【0087】
本発明の光硬化性組成物は、「3Dプリンティング」技術(「付加製造」とも称される)においても使用される。これは、デジタルデータに基づき、三次元の固体物体を作製することを可能にする公知の技術である。他の具体例によれば、本発明は、本発明の光硬化性組成物を使用することによって、3Dプリンティングを実施する及び3Dプリンティングによって物品を製造する光硬化法に係る。
【0088】
本発明の光硬化性組成物は、光学レンズ、例えば、コンタクトレンズ又はフレネルレンズの製造、医療用装置、補助器具又はインプラントの製造において、ドライフィルムペンキにおいても好適である。
【0089】
本発明の光硬化性組成物は、サーモトロピック特性を有するゲルの製造にも好適である。このようなゲルは、例えば、DE 9700064及びEP678534に記載されている。
【0090】
式(I)の化合物又は本発明の光硬化性組成物を含んでなる各種の物品は、本発明の更なる主題である。
【0091】
本発明による化合物及び組成物は、放射線硬化性粉末コーティング用のフリーラジカル光開始剤又は光開始系としても使用される。
【0092】
本発明による光硬化性組成物は、例えば、全ての種類の基材(例えば、木材、布地、紙、セラミックス、ガラス、プラスチック(例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、及びセルロースアセテート)、特に、フィルム状の基材のため、及び金属(例えば、Al、Cu、Ni、Fe、Zn、Mg、又はCo)、及びGaAs、Si、又はSiO2(保護フィルムが塗布される、又は例えば、像様露光によって、像が適用される)の基材のためのコーティング材料として好適である。
【0093】
本発明の他の態様によれば、本発明の更なる主題は、光重合性組成物及びインクを光硬化する方法にあり、該方法は、
I)a)固体含量(水及び溶媒を除く)50~99.9質量%、好ましくは、70~98.9質量%の少なくとも1のエチレン系不飽和化合物;
b)固体含量(エチレン系不飽和化合物を除く)0.1~35質量%、好ましくは、0.1~20質量%、さらに好ましくは、0.2~15質量%の少なくとも1の上記で定義した式(I)の化合物
を含んでなる光重合性組成物を調製する工程;
II)工程Iの組成物を光源にて光重合する工程
を含んでなる。
【0094】
従って、多数の広範囲の光源を使用でき、光源は、約20~約600 nmの波長で放射する。点光源及びプラットフォームラジエーター(ランプカーペット)の両方が好適である。例は、カーボンアークランプ、キセノンアークランプ、中圧、高圧、及び低圧水銀アークラジエーター(適宜、金属ハロゲン化物でドープされている)(メタルハライドランプ)、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマランプ、超光活性蛍光灯、蛍光ランプ、アルゴン白熱ランプ、フラッシュランプ、写真用投光器ランプ、発光ダイオード(LED)、電子ビーム、X線、レーザーである。ランプと、露光される本発明による基材との間の距離は、用途及びランプのタイプ及び出力に応じて変化し、例えば、2~150 cmである。
【0095】
波長365~420 nm、好ましくは、365 nm、385 nm、及び395 nmで放射するLED光源が特に好適である。
【0096】
前記光重合性組成物は、既にコーティング又はプリントされた層を含んでなる基材上に塗布される。前記光重合性組成物は、前記光源による光重合の後、プリンティング又はコーティングに好適な1以上の組成物で、オーバープリンティング又はオーバーコーティングされる。
【0097】
前記コーティング又はプリンティング手段によって、前記基材上に前記光重合性組成物を塗布し、前記光源によって光重合し、さらに、コーティング又はプリンティングすることによる物品の綿密な仕上げをし、又は仕上げすることなく得られた物品は、本発明の更なる主題である。
【0098】
驚くべきことには、式(I)の化合物は、米国特許第9701700号に記載の化合物(実施例25a)と比べて、光重合の間に、より高い反応性、良好な溶解性、及び低い黄変性を示すとの知見を得た。
【0099】
例えば、実施例3に記載の式(I)の化合物は、実施例3の化合物の分子量が約25%大きいが、同一の量で使用される場合、米国特許第9701700号の実施例25aに記載の化合物よりも優れた反応性を示すとの知見を得た。
【0100】
本発明による式(I)のビスアシルホスフィンオキシド及び光硬化性組成物の代表的な製造を、以下の実施例に報告するが、これらは説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【0101】
[実施例]
定義及び装置
Mes:メシチル(すなわち、2,4,6-トリメチルフェニル)
DME:1,2-ジメトキシエタン
1H NMRスペクトルを、Bruker Avance 400 MHz or a Bruker DMX 500 MHz又はBruker DMX 600 MHzにて記録した。
赤外スペクトルを、FT-IR 430- Jascoにて記録した。
【実施例1】
【0102】
PI-1(a+b+c=6)の合成
【化3】

20mlのシュレンクフラスコにおいて、DME(6ml)中に、HP(COMes)2(700 mg、2.146 mモル)及びトリエチルアミン(30μl、0.215 mモル)を含有する溶液を調製した。ついで、トリメチルオールプロパンプロポキシレート[6PO]トリアクリレート(322 mg、0.501 mモル)を添加し、反応混合物を、50℃において、24時間撹拌した。混合物をトルエン(10ml)にて希釈し、1N HClで洗浄した。続いて、過酸化水素水溶液(2ml)を添加し、混合物を、40℃において、1時間撹拌した。有機相を、10%NaHCO3水溶液で2回洗浄し(2×10ml)、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=97:3)によって精製して、純粋な生成物555 mgを得た(収率=68%)。
1H NMR (CDCl3, δppm):0.77-0.85 (m, 3H), 1.14-1.23 (m, 18H), 1.31-1.40 (m, 2H), 2.22 (s, 36H), 2.27 (s, ~18H), 2.46-2.54 (m, 6H), 2.59-2.65 (m, 6H), 3.18-4.0 (m, ~22H), 5.02-5.18 (m, 2H), 6.84 (s, 12H)
【実施例2】
【0103】
PI-2(a+b+c=3)の合成
【化4】

20mlのシュレンクフラスコにおいて、DME(6ml)中に、HP(COMes)2(700 mg、2.146 mモル)及びトリエチルアミン(30μl、0.215 mモル)を含有する溶液を調製した。ついで、トリメチルオールプロパン[3EO]トリアクリレート(214 mg、0.501 mモル)を添加し、反応混合物を、50℃において、24時間撹拌した。混合物をトルエン(10ml)にて希釈し、1N HClで洗浄した。続いて、過酸化水素水溶液(2ml)を添加し、混合物を、40℃において、1時間撹拌した。有機相を、10%NaHCO3水溶液で2回洗浄し(2×10ml)、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=97:3)によって精製して、純粋な生成物239 mgを得た(収率=42%)。
1H NMR (CDCl3, δppm):0.77-0.86 (t, 3H), 1.33-1.44 (q, 2H), 2.22 (s, 36H), 2.26 (s, 18H), 2.46-2.55 (m, 6H), 2.60-2.69 (m, 6H), 3.24-4.30 (m, ~18H), 6.83 (s, 12H)
【実施例3】
【0104】
PI-2(a+b+c=9)の合成
【化5】

20mlのシュレンクフラスコにおいて、DME(6ml)中に、HP(COMes)2(700 mg、2.146 mモル)及びトリエチルアミン(30μl、0.215 mモル)を含有する溶液を調製した。ついで、トリメチルオールプロパン[9EO]トリアクリレート(346 mg、0.501 mモル)を添加し、反応混合物を、50℃において、24時間撹拌した。混合物をトルエン(10ml)にて希釈し、1N HClで洗浄した。続いて、過酸化水素水溶液(2ml)を添加し、混合物を、40℃において、1時間撹拌した。有機相を、10%NaHCO3水溶液で2回洗浄し(2×10ml)、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=97:3)によって精製して、純粋な生成物502 mgを得た(収率=60%)。
1H NMR (CDCl3, δppm):0.78-0.85 (t, 3H), 1.33-1.40 (q, 2H), 2.22 (s, 36H), 2.26 (s, 18H), 2.46-2.55 (m, 6H), 2.60-2.70 (m, 6H), 3.20-4.29 (m, ~42H), 6.83 (s, 12H)
【実施例4】
【0105】
PI-2(a+b+c=15)の合成
【化6】

20mlのシュレンクフラスコにおいて、DME(6ml)中に、HP(COMes)2(700 mg、2.146 mモル)及びトリエチルアミン(30μl、0.215 mモル)を含有する溶液を調製した。ついで、トリメチルオールプロパン[15EO]トリアクリレート(479 mg、0.501 mモル)を添加し、反応混合物を、50℃において、24時間撹拌した。混合物をトルエン(10ml)にて希釈し、1N HClで洗浄した。続いて、過酸化水素水溶液(2ml)を添加し、混合物を、40℃において、1時間撹拌した。有機相を、10%NaHCO3水溶液で2回洗浄し(2×10ml)、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=97:3)によって精製して、純粋な生成物549 mgを得た(収率=57%)。
1H NMR (CDCl3, δppm):0.78-0.85 (t, 3H), 1.33-1.40 (q, 2H), 2.22 (s, 36H), 2.27 (s, 18H), 2.46-2.56 (m, 6H), 2.60-2.72 (m, 6H), 3.22-4.26 (m, ~66H), 6.84 (s, 12H)
【実施例5】
【0106】
PI-3(a+b+c+d=5)の合成
【化7】

20mlのシュレンクフラスコにおいて、DME(6ml)中に、HP(COMes)2(700 mg、2.146 mモル)及びトリエチルアミン(30μl、0.215 mモル)を含有する溶液を調製した。ついで、ペンタエリスリトール[5EO]テトラアクリレート(206 mg、0.375 mモル)を添加し、反応混合物を、50℃において、24時間撹拌した。混合物をトルエン(10ml)にて希釈し、1N HClで洗浄した。続いて、過酸化水素水溶液(2ml)を添加し、混合物を、40℃において、1時間撹拌した。有機相を、10%NaHCO3水溶液で2回洗浄し(2×10ml)、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=97:3)によって精製して、純粋な生成物203 mgを得た(収率=33%)。
1H NMR (CDCl3, δppm):2.22 (s, 48H), 2.25 (s, 24H), 2.45-2.60 (m, 8H), 2.60-2.79 (m, 8H), 3.32-4.29 (m, 24H), 6.82 (s, 16H)
【実施例6】
【0107】
比較テスト
本発明の多機能性ビスアシルホスフィンオキシドを、米国特許第9701700号の実施例25aに記載されたようにして調製した従来技術の多官能性ビスアシルホスフィンオキシド(COMP-1)と比較した。
【0108】
[実施例6.1]
比較テスト
[実施例6.1.1]
溶解度テスト
多官能性ビスアシルホスフィンオキシドの溶解度を、25℃において、30分間で、実施例3及び4の化合物をTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)に溶解することによって測定した。ついで、溶液を、室温において、24時間放置した。沈殿が生じなければ、生成物は、その濃度において溶解性であるとみなした。結果を表2に示す。
【表2】

*:比較対象

上記データから、式(I)の化合物は、比較対象(COMP-1:米国特許第9701700号の実施例25a)よりも溶解性であることが明らかである。
【0109】
[実施例6.1.2]
透明な製剤
光開始剤を、それぞれ、Ebecryl 605及びEbecryl 350(Allnex)の99.5:0.5(質量)混合物に、濃度3質量%で溶解することによって、光重合性組成物を調製した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、2つの異なる光源:
1)サンプルから25mmの距離に、角度30°で配置したLED光源(400 nm);
2)サンプルから65mmの距離に、角度30°で配置した水銀ランプ(160 W)
に露光した。
光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを獲得し、IRソフトウエアを使用して、アクリル二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピーク面積の経時的減少を測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
結果(経時的重合度%として示す)を表3に報告する。
【表3】

*:比較対象

これらのテストは、式(I)の化合物が、新規化合物の分子量が9~33%大きいにもかかわらず、同一の量で使用される際、比較対象(COMP-1:米国特許第9701700号の実施例25a)に匹敵する又はより優れた反応性を有することを確証する。
【0110】
[実施例6.1.3]
タックフリー透明コーティング
光開始剤を、PETIA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)及びEbecryl 8602(Allnex)の溶液に、濃度4%で溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。
バー塗装装置を使用して、ニス塗装したボール紙上に、厚さ6μmで、光重合性組成物を塗布した。ついで、
1)395 nmのLEDランプ(16W/cm2);
2)水銀ランプ(120 W/cm)
を使用して、光重合した。
結果を、タックフリーが達成された最大速度として、m/分で示す(表4)。
【表4】

*:比較対象

これらのテストは、式(I)の化合物が、比較対象(COMP-1:米国特許第9701700号の実施例25a)に匹敵する又はより優れた反応性を有することを確証する。
【0111】
[実施例6.1.4]
黄変性
実施例6.1.2において硬化したフィルムの黄変性を、BYKカラーガイド45/0を使用して、黄色度指数(YI)として測定した。LED光源で露光したフィルムの結果を表5に示す。
【表5】

*:比較対象

このケースでは、式(I)の化合物の黄変性は、常に、比較対象(COMP-1:米国特許第9701700号の実施例25a)よりも低い。
【0112】
[実施例6.1.5]
シアンインクジェットインク
光開始剤を、それぞれ、インクジェット印刷用のシアンインクに、濃度5.0質量%で溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、2つの異なる光源:
1)サンプルから25mmの距離に、角度30°で配置したLED光源(400 nm);
2)サンプルから65mmの距離に、角度30°で配置した水銀ランプ(160 W)
に露光した。
光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを獲得し、IRソフトウエアを使用して、アクリル二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピーク面積の経時的減少を測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
結果(経時的重合度%として示す)を表6に報告する。
【表6】

*:比較対象

これらのテストは、式(I)の化合物が、比較対象(COMP-1:米国特許第9701700号の実施例25a)に匹敵する又はより優れた反応性を有することを確証する。
【0113】
既に述べたように、これらの実施例は、式(I)の化合物が、従来技術の比較対象化合物(COMP-1:米国特許第9701700号の実施例25a)よりも、より溶解性であり、黄変性が低く、より反応性であることを確証する。驚くべきことには、式(I)の新規化合物が、それらの分子量が9~33%大きいにもかかわらず、同一の量で使用される際、比較対象化合物よりも反応性であるとの知見を得た。これは、新規化合物が、真に、より反応性であることを確証する。