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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/62 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
B65D75/62
B65D75/62 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019131014
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021014296
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉永 遼
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩之
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123967(JP,A)
【文献】特開2017-030761(JP,A)
【文献】特開2015-168453(JP,A)
【文献】特開2014-189292(JP,A)
【文献】特開2016-117525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/62
B65D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装フィルムを丸め、その左右両側端部を合掌状にシールして形成した背貼りシール部を前後方向に形成した筒状構造を有し、開口したその前後端部をシールして内容物を密封した包装体であって、
底面とこの底面に対向する上面とを有しており、この上面を二分するように前記背貼りシール部が配置されており、
上面には、背貼りシール部の前部及び後部、それぞれ、開封のきっかけとなる前側開封用ノッチ及び後側開封用ノッチが設けられる共に、この前側開封用ノッチ及び後側開封用ノッチのそれぞれから出発した引裂き線を誘導する引裂き誘導線が、前記背貼りシール部の左右にそれぞれ設けられており、
この引裂き誘導線が、前記前側開封用ノッチに近接しかつこの前側開封用ノッチから出発した引裂き線に交差する前側誘導開始線と、この前側誘導開始線に誘導された引裂き線を左右方向に広げる前側拡大誘導線と、前記前側誘導開始線と前側拡大誘導線とを滑らかにつなぐ曲線状の前側第一連結線と、前記前側拡大誘導線に誘導された引裂き線を前後方向に誘導する開口誘導線と、前記前側拡大誘導線と開口誘導線とを滑らかにつなぐ曲線状の前側第二連結線とを備え、
かつ、前記引裂き誘導線が、前記後側開封用ノッチに近接しかつこの後側開封用ノッチから出発した引裂き線に交差する後側誘導開始線と、この後側誘導開始線に誘導された引裂き線を左右方向に広げる後側拡大誘導線と、前記後側誘導開始線と後側拡大誘導線とを滑らかにつなぐ曲線状の後側第一連結線と、前記後側拡大誘導線と開口誘導線とを滑らかにつなぐ曲線状の後側第二連結線とを備え、
前記背貼りシール部と前側誘導開始線との間の距離及び背貼りシール部と後側誘導開始線との間の距離いずれも30mm以下であり、かつ、前側誘導開始線の長さ及び後側誘導開始線の長さいずれも2mm以上であり、
前記開口誘導線と上面の左右両側辺との距離が5mm以下であり、
前記底面及び前記上面の左右両側辺にヘムシール線を設ける、
ことを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記前側第一連結線及び前記後側第一連結線の曲率半径が3mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記前側第二連結線及び前記後側第二連結線の曲率半径が3mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項4】
底面と上面に加えて、これら底面及び上面の間の周囲を塞ぐ側面を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の包装体。
【請求項5】
上面の左右両側辺に設けたヘムシール線と前記開口誘導線との距離が1mm以上であることを特徴とする請求項4に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装フィルムを丸め、その左右両側端部を合掌状にシールして形成した背貼りシール部を前後方向に形成した筒状構造を有し、開口したその前後端部をシールして内容物を密封した包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
このような包装体はピロー包装体の名称で広く知られている。このような包装体を開封して内容物を取り出す方法にもさまざまな方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、背貼りシール部の前部に開封のきっかけとなる開封用ノッチを設け、このノッチから出発した引裂き線を誘導する引裂き誘導線を、前記背貼りシール部の左右にそれぞれ設けたピロー包装体が記載されている。この包装体では、背貼りシール部の開封用ノッチから出発した引裂き線が、引裂き誘導線に従って左右方向に広がり、その後に前後方向に誘導される。このため、包装体に広い開口部を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6303489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような包装体にあっては、開封用ノッチから出発した引裂き線が引裂き誘導線から逸れてしまうことがあった。このように引裂き線が引裂き誘導線から逸れた場合には広い開口部を形成することができず、そもそも開口できないこともあった。
【0006】
そこで、本発明は、開封用ノッチから出発した引裂き線が引裂き誘導線から逸れることがなく、広い開口部を確実に形成することができるピロー包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、包装フィルムを丸め、その左右両側端部を合掌状にシールして形成した背貼りシール部を前後方向に形成した筒状構造を有し、開口したその前後端部をシールして内容物を密封した包装体であって、
底面とこの底面に対向する上面とを有しており、この上面を二分するように前記背貼りシール部が配置されており、
背貼りシール部の前部に開封のきっかけとなる開封用ノッチが設けられ、このノッチから出発した引裂き線を誘導する引裂き誘導線が、前記背貼りシール部の左右にそれぞれ設けられており、
この引裂き誘導線が、前記開封用ノッチに近接しかつこの開封用ノッチから出発した引裂き線に交差する誘導開始線と、この誘導開始線に誘導された引裂き線を左右方向に広げる拡大誘導線と、前記誘導開始線と拡大誘導線とを滑らかにつなぐ曲線状の第一連結線と、前記拡大誘導線に誘導された引裂き線を前後方向に誘導する開口誘導線と、前記拡大誘導線と開口誘導線とを滑らかにつなぐ曲線状の第二連結線とを備え、
前記背貼りシール部と誘導開始線との間の距離が30mm以下であり、かつ、前記誘導開始線の長さが2mm以上であることを特徴とする包装体である。
【0008】
次に、請求項2に記載の発明は、前記第一連結線の曲率半径が3mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の包装体である。
【0009】
次に、請求項3に記載の発明は、前記第二連結線の曲率半径が3mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体である。
【0010】
次に、請求項4に記載の発明は、前記開口誘導線と上面の左右両側辺との距離が5mm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の包装体である。
【0011】
次に、請求項5に記載の発明は、底面と上面に加えて、これら底面及び上面の間の周囲を塞ぐ側面を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の包装体である。
【0012】
次に、請求項6に記載の発明は、上面の左右両側辺にシール線(ヘムシール線)が設けられており、このヘムシール線と前記開口誘導線との距離が1mm以上であることを特徴とする請求項5に記載の包装体である。
【0013】
次に、請求項7に記載の発明は、包装フィルムを丸め、その左右両側端部を合掌状にシールして形成した背貼りシール部を前後方向に形成した筒状構造を有し、開口したその前後端部をシールして内容物を密封した包装体であって、
底面とこの底面に対向する上面とを有しており、この上面を二分するように前記背貼りシール部が配置されており、
背貼りシール部の前部及び後部に、それぞれ、開封のきっかけとなる前側開封用ノッチ及び後側開封用ノッチが設けられ、この前側開封用ノッチ及び後側開封用ノッチのそれぞれから出発した引裂き線を誘導する引裂き誘導線が、前記背貼りシール部の左右にそれぞれ設けられており、
この引裂き誘導線が、前記前側開封用ノッチに近接しかつこの前側開封用ノッチから出発した引裂き線に交差する前側誘導開始線と、この前側誘導開始線に誘導された引裂き線を左右方向に広げる前側拡大誘導線と、前記前側誘導開始線と前側拡大誘導線とを滑らかにつなぐ曲線状の前側第一連結線と、前記前側拡大誘導線に誘導された引裂き線を前後方向に誘導する開口誘導線と、前記前側拡大誘導線と開口誘導線とを滑らかにつなぐ曲線状の前側第二連結線とを備え、
かつ、前記引裂き誘導線が、前記後側開封用ノッチに近接しかつこの後側開封用ノッチから出発した引裂き線に交差する後側誘導開始線と、この後側誘導開始線に誘導された引裂き線を左右方向に広げる後側拡大誘導線と、前記後側誘導開始線と後側拡大誘導線とを滑らかにつなぐ曲線状の後側第一連結線と、前記後側拡大誘導線と開口誘導線とを滑らかにつなぐ曲線状の後側第二連結線とを備え、
前記背貼りシール部と前側誘導開始線との間の距離及び背貼りシール部と後側誘導開始線との間の距離がいずれも30mm以下であり、かつ、前側誘導開始線の長さ及び後側誘導開始線の長さがいずれも2mm以上であることを特徴とする包装体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、引裂き誘導線が、開封用ノッチから出発した引裂き線に交差する誘導開始線と、この誘導開始線に誘導された引裂き線を左右方向に広げる拡大誘導線と、前記拡大誘導線に誘導された引裂き線を前後方向に誘導する開口誘導線とを有しており、背貼りシール部と誘導開始線との間の距離が30mm以下であり、かつ、前記誘導開始線の長さが2mm以上であるため、開封用ノッチから出発した引裂き線を確実に誘導開始線に誘導できる。しかも、誘導開始線、拡大誘導線及び開口誘導線は、それぞれ、滑らかにつなぐ曲線状の第一連結線及び第二連結線でつながれているので、誘導開始線に誘導された引裂き線が引裂き誘導線から逸れることがなく、広い開口部を確実に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の包装体の第1の具体例に係り、図1(a)は底面から見た包装体の斜視図、図1(b)は上面から見た包装体の斜視図である。
図2図2は本発明の包装体の第1の具体例において、その引裂き誘導線を説明するための説明図である。
図3図3は本発明の包装体の第1の具体例に係り、その製造工程を説明するための説明用斜視図である。
図4図4は本発明の包装体の第2の具体例に係り、図4(a)は包装体の斜視図、図4(b)はその引裂き誘導線を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の具体例を説明する。図1(a)は底面から見た包装体の斜視図、図1(b)は上面から見た包装体の斜視図である。
【0017】
図1(a)及び(b)から分かるように、この包装体Aは、一枚の包装フィルムを丸め、その左右両側端部を合掌状にシールして形成した背貼りシール部aを前後方向に形成した筒状構造を有し、開口したその前後端部をシールすることにより前側シール部b及び後側シール部cを形成して、内容物を密封したものである。
【0018】
包装フィルムとしては任意のフィルムを使用することができる。その代表例としては、基材フィルムの内面側にシーラント層を積層したフィルムである。
【0019】
基材フィルムとしては、機械的強度や寸法安定性を有するフィルムを好ましく使用できる。例えば、各種二軸延伸フィルムである。その材質としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアクリルニトリル、ポリイミド等が例示できる。また、これら各種材質のフィルムを積層し、その他のフィルムを積層した多層構造のフィルムであってもよく、更に、蒸着層や印刷層を設けたフィルムを基材フィルムとしてもよい。
【0020】
その他のフィルムとしては、例えば、アルミニウム箔等の金属箔を例示できる。その層構成中に金属箔を含む基材フィルムは、水蒸気や酸素ガス等のバリア性に優れている。
【0021】
次に、蒸着層としては、アルミニウム等の金属を蒸着して形成した金属蒸着層の他に、無機物を材質とする無機蒸着層を利用することができる。無機物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、酸化錫、酸化ナトリウム、酸化ホウ素、酸化チタン、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムなどの金属の酸化物が使用できる。中でも生産性、価格面から酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが好ましい。これら金属蒸着層又は無機蒸着層をその層構成中に含む基材フィルムも、水蒸気や酸素ガス等のバリア性に優れている。
【0022】
シーラント層としては、ポリオレフィン系樹脂が使用できる。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EAA)、アイオノマー、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂である。これらの樹脂を押出し機により製膜してフィルム状として使用すればよい。
【0023】
基材フィルムとシーラント層とは、接着剤を使用して積層することができる。接着剤としてはドライラミネート用接着剤が使用できる。例えば、二液硬化型ウレタン系接着剤、
ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤等である。積層方法としてはドライラミネート法にて可能である。このほか、接着性樹脂を溶融押出し製膜して、その接着力を失わない間に基材フィルムとシーラント層とを圧着して積層することも可能である。
【0024】
ところで、この包装体Aは、図示のように、底面1とこの底面1に対向する上面2、これら底面1及び上面2の間の周囲を塞ぐ4つの側面3,4,5,6を有する直方体形状であり、背貼りシール部aは上面2の中央に位置し、前後方向に延びて上面2を左右に二分している。図中、23,24は、こうして二分された上面2の左右の領域を示している。
【0025】
このような直方体形状の包装体Aは、後述するように、包装袋製袋の際にガゼット折りして背貼りシール部aと平行する両側面3,4を形成することにより製造することができる。そして、このようにガゼット折りした左右の両側面3,4を有する包装袋に内容物を充填して密封して前側シール部b及び後側シール部cを形成することにより、背貼りシール部aに交差する前後の両側面5,6が形成されて直方体形状の包装体Aが形成される。前側側面5は前側シール部bによって上下に二分されており、図では、前側シール部bによって上下に二分された前側側面5のそれぞれの領域を51,52で示している。また、後側側面6は後側シール部cによって上下に二分されており、図では、後側シール部cによって上下に二分された後側側面6のそれぞれの領域を61,62で示している。
【0026】
なお、底面1の左右側辺、すなわち、底面1と左右の両側面3,4との境界には、包装用フィルムを二つ折りしてこの二つ折り部分を互いにヒートシールしたシール線(ヘムシール線)が設けられていてもよい。上面2の左右側辺、すなわち、上面2と左右の両側面3,4との境界にも、ヘムシール線を設けることが可能である。このようにヘムシール線を設けると、そのヘムシール線が補強部となって、包装体の形状維持性(保形性)を向上させることができる。
【0027】
そして、この背貼りシール部aには、開封のきっかけとなる開封用ノッチa1が設けられている。この開封用ノッチa1は前側に片寄った位置に設けられている。この開封用ノッチa1はVノッチのほか、Iノッチでもよいし、Uノッチでもよい。また、五角形ノッチであってもよい。
【0028】
また、この背貼りシール部aを挟んでその左右両側に引裂き誘導線d,eが設けられている。引裂き誘導線d,eはいずれも、包装体Aの上面2の内部に位置しており、前記背貼りシール部aの根元axを対称軸として互いに線対称の位置と形状とを有している。
【0029】
このように引裂き誘導線d,eは、背貼りシール部aの根元を対称軸として、互いに線対称の位置及び形状を有しているため、代表して背貼りシール部aの左側に位置する引裂き誘導線dについて、その位置と形状について説明する。
【0030】
図2に示すように、この引裂き誘導線dは、5つの部分で構成されている。すなわち、まず、前記開封用ノッチa1に近接して、この開封用ノッチa1から出発した引裂き線に交差する誘導開始線d1である。この例では、誘導開始線d1は、前記背貼りシール部aに平行な直線で構成されている。開封用ノッチa1から出発した引裂き線がこの誘導開始線d1に確実に到達するように、背貼りシール部aの根元axと誘導開始線d1との間の距離X1は30mm以下であることが必要である。また、同じ理由から、誘導開始線d1の長さX2は2mm以上であることが必要である。
【0031】
次に、引裂き誘導線dの3番目の部分は誘導開始線d1に誘導された引裂き線を左右方
向に広げる拡大誘導線d3である。この拡大誘導線d3は、包装体Aの上面2の左側方向に位置する側辺2の近傍まで前記引裂き線を誘導するものであることが望ましい。
【0032】
なお、誘導開始線d1と拡大誘導線d3とは、引裂き誘導線dの2番目の部分、すなわち、曲線状の第一連結線d2によって滑らかにつながれている。この例では、第一連結線d2は円弧状である。そして、誘導開始線d1と拡大誘導線d3とを滑らかにつないで、誘導開始線d1に誘導された引裂き線を逸れることなく確実に拡大誘導線d3に導くため、この第一連結線d2の曲率半径は3mm以上であることが望ましい。第一連結線d2の曲率半径がこれより小さく、したがって急激に曲がっていると、前記引裂き線がこの第一連結線d2から逸れて、拡大誘導線d3に導くことができない場合がある。
【0033】
次に、引裂き誘導線dの5番目の部分は前記拡大誘導線d3に誘導された引裂き線を前後方向に誘導する開口誘導線d5である。この開口誘導線d5は、右側の引裂き誘導線eの開口誘導線e5と共に、包装体Aの上面2を大きく引裂いて大きな開口を形成するためのもので、このため、上面2の左側側辺2の近傍に位置することが望ましい。望ましくは、開口誘導線d5と左側側辺2との間の距離X3が5mm以下である。また、上面2の左右側辺2,2にヘムシール線が設けられている場合には、1mm以上であることが望ましい。この例では、左側側辺2から1~5mmの位置で、前後方向に延びる直線で構成されている。
【0034】
なお、拡大誘導線d3と開口誘導線d5とは、引裂き誘導線dの4番目の部分、すなわち、曲線状の第二連結線d4によって滑らかにつながれている。この例では、第二連結線d4は、第一連結線d2と同様に円弧状である。そして、この第二連結線d4の曲率半径も、第一連結線d2と同様に、3mm以上であることが望ましい。
【0035】
この引裂き誘導線d,eは、包装フィルムをハーフカットして設けることができる。例えば、前記基材フィルムを貫通して、あるいは基材フィルムを貫通することなく、この基材フィルムに設けたハーフカットである。いずれの場合にも、シーラント層に達していないことが望ましい。この引裂き誘導線d,eは実線状であってもよいし、破線状であってもよい。また、この引裂き誘導線d,eは、例えば、刃物を使用して形成することができる。また、炭酸ガスレーザー光等のレーザー光の照射によって形成することも可能である。
【0036】
この包装体Aは次のような方法で製造することができる。
【0037】
すなわち、まず、図3(a)に示すブランクA1を準備する。なお、説明の便宜上、単一の包装体Aを製造するブランクA1を図示しているが、前後方向にウェブ状に連続する包装フィルムを使用して、多数の包装体Aを製造することが簡便である。
【0038】
このブランクA1は、底面1が中央に位置し、その左側に左側側面3が連接されており、この左側側面3は、後述する折り曲げ線3xで二分されている。この図では、こうして二分された領域のそれぞれを符号31,32で示している。
【0039】
次に、左側側面3の左側には、上面2の左側半分23及び背シール線aを構成するシール領域がこの順に配置されている。
【0040】
一方、底面1の右側には右側側面4が連接されている。この右側側面4も折り曲げ線4xで二分されている。
【0041】
そして、右側側面4の右側には上面2の右側半分24及び背シール線aを構成するシー
ル領域がこの順に配置されている。
【0042】
なお、上面2の左側半分23及び右側半分24には、それぞれ、所定の引裂き誘導線d,eが設けられている。
【0043】
また、底面1の前側には、前側側面5のうち、包装体Aの下側半分51が配置されており、この領域51の左右に、前側側面5のうち、包装体Aの上側半分52,52が配置されている。そして、これら前側側面5の下側半分51及び上側半分52,52の前側には、それぞれ、前側シール部bを構成するシール領域b1,b2,b2が配置されている。
【0044】
底面1の後側は前側と線対称に構成されており、すなわち、底面1の後側に、後側側面6のうち、包装体Aの下側半分61が配置されており、この領域61の左右に、後側側面6のうち、包装体Aの上側半分62,62が配置されている。また、これら後側側面6の下側半分61及び上側半分62,62の後側には、それぞれ、後側シール部cを構成するシール領域が配置されている。
【0045】
そして、まず、このブランクA1を筒状に丸め、その左右に位置して、背シール線aを構成するシール領域を互いに合掌状に重ね合わせてヒートシールすることにより、背シール線aを形成する。
【0046】
次に、この筒状ブランクを、底面1と左右両側面3,4との間で折り曲げ、また、上面と左右両側面3,4との間で折り曲げると共に、左右各側面3,4をその中央の折り曲げ線3x,4xで谷折り(ガゼット折り)する。図3(b)はこの状態を示している。
【0047】
そして、前側シール部bを構成するシール領域b1とシール領域b2,b2とを互いにヒートシールして前側シール部bを形成すると共に、後側シール部cを構成するシール領域を互いにヒートシールして後側シール部cを形成し、最後に開封用ノッチa1を形成することにより、包装体Aに使用する包装袋を製造することができる。
【0048】
なお、このように前側シール部b及び後側シール部cを形成する際、同時にヘムシール線を形成することもできる。すなわち、底面1の左右両辺及び上面2の左右両辺2,2の近傍でヒートシールすることにより、ヘムシール線を形成して、包装体Aの保形性を向上させることができる。このようにヘムシール線を形成した場合には、このヘムシール線と前記開口誘導線d5,e5との距離が1mm以上であることが望ましい。ヘムシール線と開口誘導線d5,e5との距離がこれより短いと、開口誘導線5の引裂きが困難となる場合がある。
【0049】
以上、内容物の充填については説明を省略したが、前側シール部bと後側シール部cのいずれか一方を形成した後内容物を充填することが望ましい。例えば、ブランクA1として前後方向に連続したウェブ状の包装用フィルムを使用し、この包装用フィルムを連続的に走行させながら包装体Aを製造する場合には、前側シール部bと後側シール部cのいずれか一方を形成した後内容物を充填し、次にヒートシールすることにより、前側シール部bと後側シール部cのうち残る一方のシール部を形成すると共に、続く包装体Aの前側シール部b又は後側シール部cを形成することができる。そして、この充填密封により、折り曲げ線3x,4xでガゼット折りされた左右の両側面3,4が立ち上がると共に、前後の両側面5,6が形成されて、直方体形状の包装体Aが形成できる。なお、この状態では多数の包装体Aが前後方向に連接された状態にあるから、この連接した複数の包装体Aのヒートシール部の中央で切断することにより、個々の包装体Aとすることができる。
【0050】
内容物としては、菓子等の食品が例示できる。
【0051】
次に、この包装体Aは、開封用ノッチa1をきっかけとして引裂くことにより開封することができる。開封用ノッチa1から開始した引裂き線は、左右の誘導開始線d1,e1に確実に誘導され、第一連結線d2,e2、拡大誘導線d3,e3、第二連結線d4,e4及び開口誘導線d5,e5を通って上面2に大きな開口部を形成する。そして、このように上面2に大きな開口部を形成した場合でも、この包装体Aは、底面1の他に側面3,4,5,6を有しているから、内容物が包装体Aからこぼれることがない。そして、このため、内容物が食品の場合にも、内容物を包装体Aから別の食器に移すことなく、開口した包装体Aをそのまま食器として使用して食することが可能である。
【0052】
次に、図面を参照して、本発明の第2の具体例を説明する。図4(a)は包装体Bの斜視図、図4(b)はその引裂き誘導線を説明するための説明図である。
【0053】
この例は、2つの開封用ノッチa1,a2を設けた包装体Bである。2つの開封用ノッチa1,a2のうち、一方の開封用ノッチ(前側開封用ノッチ)a1は包装体Bの前側に片寄った位置に設けられており、他方の開封用ノッチ(後側開封用ノッチ)a2は後側に片寄った位置に設けられている。この包装体Bは、これら開封用ノッチa1,a2のどちらを使用を使用しても開封することができる。
【0054】
このように前側開封用ノッチa1から引裂いても開封できるし、後側開封用ノッチa2から引裂いても開封できるように構成するため、引裂き誘導線dは、9つの部分で構成されている。
【0055】
すなわち、まず、この引裂き誘導線dは、前側開封用ノッチa1に近接して、この開封用ノッチa1から出発した引裂き線に交差する前側誘導開始線d1、この前側誘導開始線d1に誘導された引裂き線を左右方向に広げる前側拡大誘導線d3、前記前側誘導開始線d1と前側拡大誘導線d2とを滑らかにつなぐ曲線状の前側第一連結線d3、前記前側拡大誘導線d3に誘導された引裂き線を前後方向に誘導する開口誘導線d5、前記前側拡大誘導線と開口誘導線とを滑らかにつなぐ曲線状の前側第二連結線d4とを備えている。
【0056】
また、この引裂き誘導線dは、後側開封用ノッチa2に近接しかつこの後側開封用ノッチa2から出発した引裂き線に交差する後側誘導開始線d9と、この後側誘導開始線d9に誘導された引裂き線を左右方向に広げる後側拡大誘導線d7と、前記後側誘導開始線d9と後側拡大誘導線d7とを滑らかにつなぐ曲線状の後側第一連結線d8と、前記後側拡大誘導線d7と前記開口誘導線d5とを滑らかにつなぐ曲線状の後側第二連結線d6とを備えている。
【0057】
背貼りシール部aの根元と前側誘導開始線d1との間の距離及び背貼りシール部aと後側誘導開始線との間の距離d9はいずれも30mm以下である。また、前側誘導開始線d1の長さ及び後側誘導開始線d9の長さはいずれも2mm以上である。
【0058】
また、前側第一連結線d3、前側第二連結線d4、後側第一連結線d8及び後側第二連結線d6はいずれも円弧状で、その曲率半径は3mm以上である。
【0059】
もちろん、開口誘導線d5と底面の左右両側辺との距離も5mm以下である。
【符号の説明】
【0060】
A:包装体 A1:ブランク
1:底面
2:上面 2:左側側辺 2:右側側辺
3:左側側面 3x:折り曲げ線
4:右側側面 4x:折り曲げ線
5:前側側面
6:後側側面
a:背貼りシール部 a1:開封用ノッチ ax:背貼りシール部の根元
b:前側シール部
c:後側シール部
d:引裂き誘導線 d1:誘導開始線 d2:第一連結線 d3:拡大誘導線
d4:第二連結線 d5:開口誘導線
e:引裂き誘導線
図1
図2
図3
図4