(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/507 20210101AFI20231226BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20231226BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20231226BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20231226BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20231226BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20231226BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20231226BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20231226BHJP
【FI】
H01M50/507
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/291
H01M50/209
H01G11/78
H01G2/02 101E
H01G11/12
(21)【出願番号】P 2019150957
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄一郎
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016501(JP,A)
【文献】特開2013-122818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/10-50/298
H01M50/50-50/598
H01G 2/02- 2/06
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、
前記蓄電素子の側面である第一面に沿って配置された絶縁フィルムと、
前記蓄電素子の、前記第一面と交差する方向に広がる側面である第二面に対向して配置された配置部材とを備え、
前記絶縁フィルムは、前記第二面よりも前記配置部材の側に突出したフィルム端部を有し、
前記配置部材は、前記フィルム端部を収容するための凹部を有
し、
前記絶縁フィルムの厚みは、0.5mm以下である、
蓄電装置。
【請求項2】
前記絶縁フィルムは、前記フィルム端部の突出方向から見た場合に、前記蓄電素子を側方から覆う筒状である、
請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
蓄電素子と、
前記蓄電素子の側面である第一面に沿って配置された絶縁フィルムと、
前記蓄電素子の、前記第一面と交差する方向に広がる側面である第二面に対向して配置された配置部材とを備え、
前記絶縁フィルムは、前記第二面よりも前記配置部材の側に突出したフィルム端部を有し、
前記配置部材は、前記フィルム端部を収容するための凹部を有し、
前記蓄電素子は、互いの前記第一面が対向する姿勢で2つ並んで配置されており、
前記凹部は、2つの前記蓄電素子の並び方向で隣接する2つの前記フィルム端部が収容される位置及びサイズに形成されている、
蓄電装置。
【請求項4】
蓄電素子と、
前記蓄電素子の側面である第一面に沿って配置された絶縁フィルムと、
前記蓄電素子の、前記第一面と交差する方向に広がる側面である第二面に対向して配置された配置部材とを備え、
前記絶縁フィルムは、前記第二面よりも前記配置部材の側に突出したフィルム端部を有し、
前記配置部材は、前記フィルム端部を収容するための凹部を有し、
さらに、前記配置部材と前記蓄電素子の前記第二面とを接着する接着部材を備え、
前記配置部材は、前記蓄電素子の前記第二面に向けて突出するリブであって、前記凹部が形成されたリブを有し、
前記接着部材は、前記配置部材の内面と前記第二面との間であって、前記リブによって仕切られた空間に配置されている、
蓄電装置。
【請求項5】
蓄電素子と、
前記蓄電素子の側面である第一面に沿って配置された絶縁フィルムと、
前記蓄電素子の、前記第一面と交差する方向に広がる側面である第二面に対向して配置された配置部材とを備え、
前記絶縁フィルムは、前記第二面よりも前記配置部材の側に突出したフィルム端部を有し、
前記配置部材は、前記フィルム端部を収容するための凹部を有し、
前記配置部材はさらに、いずれか一方が前記蓄電素子の電極端子と接続される2つのバスバーを保持する2つの開口部と、前記2つの開口部を仕切る絶縁壁部とを有し、
前記凹部は、前記絶縁壁部の、前記蓄電素子の側の端部の延設方向に沿って延設されている、
蓄電装置。
【請求項6】
前記凹部は、前記蓄電素子に近づくほど広がる形状を有する、
請求項
1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子を備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の電池セルと、複数の電池セルを保持するハウジングと、各電池セルをハウジングに対して接着する接着部を備える組電池が開示されている。この組電池において、ハウジングは、各電池セルの一端側を収容する複数の第1収容空間及び他端側を収容する複数の第2収容空間を有する。ハウジングはさらに、複数の第1収容空間を区画する第1枠体と、複数の第2収容空間を区画する第2枠体とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の組電池では、隣り合う2つの電池セルの間において第1枠体及び第2枠体が配置される。これにより、複数の電池セルそれぞれのハウジング内における位置を規制することができる。しかしながらこの場合、隣り合う電池セルの間の距離は第1枠体及び第2枠体の厚み以上の距離になる。このことは、例えば蓄電装置の小型化の観点からは不利である。
【0005】
そこで、例えば複数の蓄電素子を備える蓄電装置において、複数の蓄電素子を隣接させて並べる構造が採用される場合がある。しかし、この場合であっても、各蓄電素子には、当該蓄電素子の容器と、例えば隣の蓄電素子の容器とを電気的に絶縁する必要があるため、例えばスペーサと呼ばれる絶縁性材料で形成された板状部材が配置される。
【0006】
本願発明者らは、上記板状部材は、強度または剛性の確保のために一般に厚みが数ミリ以上あるため、蓄電装置の小型化(エネルギー密度の向上)には十分ではないと考えた。そこで、本願発明者らは、上記板状部材の代わりに、例えば絶縁性を有するフィルム(絶縁フィルム)を採用することを検討した。その結果、蓄電素子の周辺部材と絶縁フィルムが構造的に干渉するという問題を新たな課題とした。
【0007】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、蓄電素子を備える蓄電装置であって、小型化が可能な蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子の側面である第一面に沿って配置された絶縁フィルムと、前記蓄電素子の、前記第一面と交差する方向に広がる側面である第二面に対向して配置された配置部材とを備え、前記絶縁フィルムは、前記第二面よりも前記配置部材の側に突出したフィルム端部を有し、前記配置部材は、前記フィルム端部を収容するための凹部を有する。
【0009】
この構成によれば、蓄電素子と、蓄電素子に隣接する他の部材とを絶縁フィルムによって電気的に絶縁することができる。そのため、例えばスペーサと呼ばれる比較的に厚い部材を蓄電素子と他の部材との間に配置する場合と比較すると、例えば省スペース化の観点から有利である。また、第一面に配置された絶縁フィルムの端部を第二面よりも突出した状態で配置することで、蓄電素子と他の部材との絶縁の確実性が向上される。さらに、配置部材にはフィルム端部を収容するための凹部が設けられているため、配置部材を蓄電素子の第二面に近接または接触させた場合であっても、フィルム端部と配置部材との干渉が抑制される。例えば絶縁フィルムによって配置部材が浮き上がるような事態が生じ難い。従って、配置部材を、蓄電素子に近接または接触させ、かつ、正規の位置に精度よく配置することができる。このように、本態様に係る蓄電装置は、小型化が可能な蓄電装置である。
【0010】
前記蓄電素子は、互いの前記第一面が対向する姿勢で2つ並んで配置されており、前記凹部は、2つの前記蓄電素子の並び方向で隣接する2つの前記フィルム端部が収容される位置及びサイズに形成されている、としてもよい。
【0011】
この構成によれば、配置部材に形成された1つの凹部に、隣接する2つのフィルム端部が一括して収容される。そのため、例えば、隣接する2つのフィルム端部のそれぞれを個別に収容する部位を配置部材に形成する場合と比較すると、凹部の形成が容易であり、かつ、2つの蓄電素子に対する配置部材の配置が容易である。つまり、小型化が可能な蓄電装置の構成または製造作業の簡易化が図られる。
【0012】
前記凹部は、前記蓄電素子に近づくほど広がる形状を有する、としてもよい。
【0013】
この構成によれば、フィルム端部が凹部に挿入されやすくなるため、例えば、配置部材における凹部の位置が、設計上の正規の位置から多少ずれている場合であっても、凹部にフィルム端部が収容される可能性が高い。この効果は、例えば隣接する2つのフィルム端部を凹部に収容するよう構成した場合に、より有意である。このように、本態様に係る蓄電装置は、簡易な構成で、小型化が可能な蓄電装置である。
【0014】
蓄電装置はさらに、前記配置部材と前記蓄電素子の前記第二面とを接着する接着部材を備え、前記配置部材は、前記蓄電素子の前記第二面に向けて突出するリブであって、前記凹部が形成されたリブを有し、前記接着部材は、前記配置部材の内面と前記第二面との間であって、前記リブによって仕切られた空間に配置されている、としてもよい。
【0015】
この構成によれば、配置部材のリブは、接着部材の位置を規制する壁として機能し、かつ、フィルム端部との干渉を避ける凹部を有する。そのため、例えば配置部材におけるリブのレイアウトを、フィルム端部の位置を気にせずに、配置部材と第二面との接着に適したレイアウトに決定することができる。また、例えば、配置部材を蓄電素子に対して配置した後であって、接着部材としての接着剤が硬化するまでの間に、配置部材がフィルム端部から受ける力によってずれるようなことがない。また、例えば蓄電素子の上方に配置される中蓋として機能する配置部材は、リブを有することで、例えば配置部材の強度が向上されるため、制御基板等の他の部材を安定的に支持することができる。これにより、小型化が可能な蓄電装置の信頼性または品質の向上が図られる。
【0016】
前記配置部材はさらに、いずれか一方が前記蓄電素子の前記電極端子と接続される2つのバスバーを保持する2つの開口部と、前記2つの開口部を仕切る絶縁壁部とを有し、前記凹部は、前記絶縁壁部の、前記蓄電素子の側の端部の延設方向に沿って延設されている、としてもよい。
【0017】
この構成によれば、絶縁壁部は2つのバスバー用の開口部を仕切る位置にあり、そのため、平面視において、絶縁壁部と重なる位置に絶縁壁部と同じ方向に延設されたフィルム端部が配置される。しかし、絶縁壁部の蓄電素子側の端部にはその延設方向に沿って延設された凹部が形成されているため、凹部にフィルム端部が収容されることで、フィルム端部によって配置部材の配置は阻害されない。つまり、蓄電素子の第二面に近接または接触して配置させる配置部材として、複数のバスバーを保持するバスバープレートを採用することができ、これにより、例えば複数のバスバーの位置精度が向上する。従って、小型化が可能な蓄電装置の信頼性または品質の向上が図られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蓄電素子を備える蓄電装置であって、小型化が可能な蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る蓄電装置を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る絶縁フィルムの配置例を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る絶縁フィルムとバスバープレートに設けられた凹部との対応関係を示す図である。
【
図5】実施の形態に係るバスバープレートの凹部が2つのフィルム端部を収容している状態を示す断面図である。
【
図6】実施の形態に係るバスバープレートの内面の構成を示す斜視図である。
【
図7】実施の形態に係るバスバープレートの内面の一部拡大図である。
【
図8】実施の形態に係るバスバープレートの断面を簡易的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0021】
また、以下の説明及び図面中において、複数の蓄電素子の並び方向、蓄電素子の容器の長側面の対向方向、または、当該容器の厚さ方向をX軸方向と定義する。また、1つの蓄電素子における電極端子の並び方向、または、蓄電素子の容器の短側面の対向方向をY軸方向と定義する。また、蓄電装置の外装体における本体部と蓋体との並び方向、蓄電素子とバスバーとの並び方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(以下実施の形態では、直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0022】
また、以下の実施の形態において、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交する、とは、当該2つの方向がなす角が90°であることを意味するだけでなく、実質的に直交すること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。また、以下の説明において、例えば、X軸方向プラス側とは、X軸の矢印方向側を示し、X軸方向マイナス側とは、X軸方向プラス側とは反対側を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。
【0023】
(実施の形態)
[1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、
図1及び
図2を用いて、実施の形態に係る蓄電装置1の全般的な説明を行う。
図1は、実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電装置1を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
【0024】
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。例えば、蓄電装置1は、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール及びリニアモーターカーが例示される。また、蓄電装置1は、家庭用または発電機用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0025】
図1及び
図2に示すように、蓄電装置1は、蓄電素子20と、蓄電素子20を収容する外装体10とを備える。本実施の形態では、外装体10には8個の蓄電素子20が収容されている。なお、蓄電装置1が備える蓄電素子20の数は8には限定されない。蓄電装置1は、少なくとも1つの蓄電素子20を備えればよい。本実施の形態では、X軸方向に並べられた複数の蓄電素子20と、複数の蓄電素子20を接続する複数のバスバー33とにより1つの蓄電素子ユニット24が構成されている。なお、本実施の形態では、複数の蓄電素子20のそれぞれには、
図2に図示しない絶縁フィルムが配置されている。絶縁フィルムについては、
図3等を用いて後述する。
【0026】
外装体10は、蓄電素子ユニット24を収容する本体部12と、蓄電素子ユニット24の上方に配置されるバスバープレート70の上方を覆うように配置される蓋体11とを有している。外装体10は、蓄電装置1の外殻を構成する矩形状(箱状)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体10は、蓄電素子ユニット24及びバスバープレート70等を所定の位置に固定し、これらを衝撃などから保護する部材である。外装体10は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ABS樹脂、もしくは、それらの複合材料等の絶縁部材、または、絶縁塗装をした金属等により形成されている。
【0027】
外装体10が有する蓋体11は、本体部12の本体開口部15を閉塞する矩形状の部材であり、正極側の外部端子91及び負極側の外部端子92を有している。外部端子91及び92は、接続ユニット50及びバスバー33を介して複数の蓄電素子20と電気的に接続されており、蓄電装置1は、この外部端子91及び92を介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。外部端子91及び92は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の導電部材で形成されている。
【0028】
本体部12は、蓄電素子ユニット24を収容するための本体開口部15が形成された有底矩形筒状のハウジング(筐体)である。
【0029】
蓄電素子20は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子20は、扁平な直方体形状(角形)の形状を有しており、本実施の形態では、上述のように、8個の蓄電素子20がX軸方向に配列されている。
【0030】
なお、蓄電素子20は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子20は、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。また、蓄電素子20は、固体電解質を用いた電池であってもよい。また、本実施の形態では、直方体形状(角形)の蓄電素子20を図示しているが、蓄電素子20の形状は、直方体形状には限定されず、直方体形状以外の多角柱形状、円柱形状、長円柱形状等であってもよい。さらに、ラミネート型の蓄電素子が、蓄電素子20として蓄電装置1に備えられてもよい。
【0031】
本実施の形態では、蓄電素子20は、金属製の容器21を備える。容器21は、互いに対向する一対の長側面21aと、互いに対向する一対の短側面21bと、長側面21a及び短側面21bと交差する端子面21cとを有する角形のケースである。本実施の形態において、長側面21aは第一面の一例であり、端子面21cは第二面の一例である。容器21の内部には、電極体、集電体、及び電解液等が収容されている。本実施の形態では、複数の蓄電素子20のそれぞれは長側面21aがX軸方向に向く姿勢(短側面21bがX軸方向に平行な姿勢)で、X軸方向に一列に並べられている。
【0032】
容器21の端子面21cは、容器21における、電極端子22(正極端子及び負極端子)が配置された面であり、本実施の形態では容器21が有する蓋板の外面である。2つの電極端子22のそれぞれは、容器21の内部の電極体と電気的に接続されており、端子面21cから、バスバープレート70側に向けて(上方、つまりZ軸方向プラス側に向けて)突出して配置されている。容器21の端子面21cにはさらに、容器21の内部のガスを外部に排出するためのガス排出弁23が配置されている。
【0033】
バスバー33は、バスバープレート70に保持された状態で、少なくとも2つの蓄電素子20上に配置され、当該少なくとも2つの蓄電素子20の電極端子22同士を電気的に接続する矩形状の板状部材である。バスバー33の材質は特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼等の金属若しくはそれらの組み合わせ、または、金属以外の導電性の部材で形成されていてもよい。本実施の形態では、5つのバスバー33を用いて、蓄電素子20を2個ずつ並列に接続して4セットの蓄電素子群を構成し、かつ、当該4セットの蓄電素子群を直列に接続している。また、8個の蓄電素子20の電気的な接続の態様に特に限定はなく、8個の蓄電素子20の全てが、7個のバスバーによって直列に接続されてもよい。
【0034】
バスバープレート70は、蓄電素子20の第二面(端子面21c)に対向して配置された配置部材の一例である。本実施の形態では、バスバープレート70は、バスバー33を保持する絶縁性(樹脂製)の部材である。より詳細には、バスバープレート70は、複数のバスバー33、接続ユニット50、及び、その他配線類等(
図2に図示せず)を保持し、これら部材の位置規制等を行うことができる部材である。バスバープレート70は、X軸方向およびY軸方向にのびて蓄電素子20の第二面(端子面21c)を覆う部材であり、上面と下面がそれぞれZ軸方向のプラス側とマイナス側を向いている。バスバープレート70は、上述のバスバー33並びに接続ユニット50などの電気機器及び配線類を保持できる強度を備えるように、採用する樹脂素材に応じて厚みが自由に設定でき、バスバープレート70の自重ではほとんど撓まない板状の部材である。バスバープレート70の厚みは、例えば、素材がPPEなどである場合では、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上である。つまり、バスバープレート70は、1~5mm程度の十分な厚みを有するものである。また、バスバープレート70には、複数のバスバー33のそれぞれを保持し、かつ、複数のバスバー33それぞれの一部を複数の蓄電素子20の側に露出させるバスバー用開口部70aが複数設けられている。
【0035】
バスバープレート70のY軸方向の中央部には、複数の蓄電素子20のガス排出弁23の配列に沿って、X軸方向に延びるとともにZ軸方向プラス側に突出する経路形成部19が設けられている。経路形成部19は全てのガス排出弁23をZ軸方向プラス側から覆っている。バスバープレート70の、経路形成部19とバスバー用開口部70aとの間における、経路形成部19のY軸方向プラス側及びY軸方向マイナス側の部分には、X軸方向に延びるともにZ軸方向マイナス側に向いた接着面が形成されている。つまり、バスバープレート70は、Z軸方向マイナス側の面において経路形成部19の両側に位置する接着面が、複数の蓄電素子20の端子面21cと接着部材によって接着されることで、複数の蓄電素子20に対して固定される。経路形成部19と接着部材との位置関係等については、
図8を用いて後述する。
【0036】
経路形成部19の長手方向の端部には、
図2に示すようにX軸方向プラス側及びX軸方向マイナス側の両方にそれぞれ経路出口18が設けられている。Z軸方向プラス側に経路形成部19の内面が位置し、Z軸方向マイナス側に端子面21cが位置すること、及び、経路形成部19のY軸方向の両側に接着部材が配置されるなどにより、蓄電素子20から排出されたガスの、排気経路における主だった逃げ道は経路出口18となる。そのため、蓄電素子20から排出されたガスは、経路出口18を優先的に通過して、例えば、外装体10に設けられた排気管(図示せず)等を介して外装体10の外部に放出される。経路出口18は、Z軸方向から見て、接続ユニット50と重複せず接続ユニット50から離間した位置に設けられている。よって、蓄電素子20のガス排出弁23から排出された直後のガスが接続ユニット50に向けて排出されないので、経路出口18から排出されたガスによる接続ユニット50へのダメージを低減することができる。
【0037】
このように構成されたバスバープレート70は、外装体10の本体部12に、例えば接着または熱溶着等の所定の手法により固定されている。
【0038】
バスバーカバー35及び36のそれぞれは、複数のバスバー33を上方から覆う樹脂製の部材である。バスバーカバー35及び36は、例えば、複数のバスバー33と接続ユニット50とを電気的に絶縁する役割を担っている。バスバープレート70、バスバーカバー35及び36のそれぞれの素材である樹脂としては、外装体10と同じく、PC、PP、PE、またはPSなどが例示される。
【0039】
接続ユニット50は、複数のバスバー及び制御基板等を有するユニットであり、蓄電素子ユニット24と、外部端子91及び92とを電気的に接続する。接続ユニット50が有する制御基板は複数の電気部品を有し、これら複数の電気部品により、各蓄電素子20の状態を検出する検出回路、及び、充電及び放電を制御する制御回路等が形成されている。本実施の形態では、接続ユニット50は、バスバープレート70に固定されている。
【0040】
以上のように構成された蓄電装置1において、本実施の形態では、複数の蓄電素子20のそれぞれの容器21には、
図2に図示しない絶縁フィルムが配置されており、これにより、隣の蓄電素子20の容器と電気的に絶縁されている。この絶縁フィルムの上端部は、蓄電素子20の端子面21cよりも突出しており、かつ、蓄電素子20の端子面21cに対向して配置されるバスバープレート70は、絶縁フィルムの上端部との干渉を避ける構造を有している。
【0041】
以下、
図3~
図8を参照しながら、実施の形態の蓄電装置1における絶縁フィルムとバスバープレート70との構造上の関係について説明する。
【0042】
[2.絶縁フィルム及びバスバープレートの基本構成]
まず、
図3~
図5を用いて絶縁フィルム80及びバスバープレート70の基本構成について説明する。
図3は、実施の形態に係る絶縁フィルム80の配置例を示す斜視図である。
図3では、絶縁フィルム80の形状を表すために、絶縁フィルム80を蓄電素子20から分離して図示しており、絶縁フィルム80におけるフィルム材料の継ぎ目であるフィルム接続部82のおおよその存在範囲が、ドットを付した領域で表されている。
図4は、実施の形態に係る絶縁フィルム80とバスバープレート70に設けられた凹部75との対応関係を示す図である。具体的には、
図4は、
図2のIV-IV線を通るXZ平面における絶縁フィルム80及びバスバープレート70の断面の一部が図示されており、蓄電素子20は側面図で表されている。また、凹部75の断面形状をわかりやすく示すために、バスバープレート70を蓄電素子20から上方に離した状態が図示されている。
図5は、実施の形態に係るバスバープレート70の凹部75が2つのフィルム端部81を収容している状態を示す断面図である。断面の位置等は
図4に準じている。
【0043】
図3に示すように、本実施の形態に係る蓄電素子20の容器21には絶縁フィルム80が取り付けられている。絶縁フィルム80は、容器21の一対の長側面21aに沿う一対の第一フィルム部80aと、容器21の一対の短側面21bに沿う一対の第二フィルム部80bとを有する。絶縁フィルム80は、1枚または2枚以上のフィルム材料が4つの側面(一対の長側面21a及び一対の短側面21b)に沿って配置されることで形成されている。例えば、一対の長側面21aそれぞれに沿って配置された2枚のフィルム材料の対向する端部同士を、一対の短側面21bそれぞれの外側で接続することで、容器21を側方から覆う絶縁フィルム80が形成される。
図3では、絶縁フィルム80は、1枚のフィルム材料によって形成されており、絶縁フィルム80の巻き始めと巻き終わりとが重ねられた部分であるフィルム接続部82が、Y軸方向マイナス側の短側面21bに位置している。つまり、絶縁フィルム80において、フィルム接続部82は第二フィルム部80bに含まれている。
【0044】
絶縁フィルム80を構成するフィルム材料としては、例えば厚みTが0.5mm以下の樹脂フィルムが採用される。樹脂フィルムの素材となる樹脂としては、例えば、PP、PE、PS、またはPPS等が採用される。絶縁フィルム80は、一般にスペーサと呼ばれるリジッドな板状部材と比較すると厚みが小さい。そのため、複数の蓄電素子20のそれぞれの容器21に絶縁フィルム80を取り付けた場合であっても、隣り合う2つの蓄電素子20の間の距離は比較的に小さい。その結果、複数の蓄電素子20の並び方向の長さが比較的に短くなり、これにより、蓄電装置1の小型化が図られる。しかし、その一方で、絶縁フィルム80は比較的に薄いが故に、容器21の、隣の容器21に対向する側面、つまり、容器21の長側面21aの全域を覆う状態となるようにサイズが決定される。その結果、
図4に示すように、容器21の端子面21cから突出した部分(フィルム端部81)が生じる。このように、容器21の端子面21cから突出したフィルム端部81が存在することで、隣り合う2つの容器21の端子面21c間の沿面距離が増加する等により、隣り合う2つの容器21間の電気的な絶縁の確実性が向上する。
【0045】
しかしながら、フィルム端部81は、蓄電素子20の端子面21cに沿って配置されるバスバープレート70との干渉の問題を生じさせる。具体的には、例えばバスバープレート70を、複数の蓄電素子20に対して配置する作業において、バスバープレート70がフィルム端部81から上向きの力を受けることで、正規の位置から浮き上がる可能性がある。そこで、本実施の形態では、
図4に示すように、バスバープレート70に凹部75を設け、これによりバスバープレート70とフィルム端部81との干渉を抑制することができる。
【0046】
すなわち、本実施の形態に係る蓄電装置1は、蓄電素子20と、蓄電素子20の長側面21aに沿って配置された絶縁フィルム80と、蓄電素子20の、長側面21aと交差する方向に広がる端子面21cに対向して配置されたバスバープレート70とを備える。絶縁フィルム80は、端子面21cよりもバスバープレート70の側に突出したフィルム端部81を有する。バスバープレート70は、フィルム端部81を収容するための凹部75を有する。
【0047】
この構成によれば、蓄電素子20と、蓄電素子20に隣接する他の部材(例えば隣の蓄電素子20)とを絶縁フィルム80によって電気的に絶縁することができる。そのため、スペーサと呼ばれる比較的に厚い部材を2つの蓄電素子20の間に配置する場合と比較すると、例えば省スペース化の観点から有利である。また、長側面21aに配置された絶縁フィルム80の端部を端子面21cよりも突出した状態で配置することで、2つの蓄電素子20の本体(つまり容器21)間における絶縁の確実性が向上される。さらに、バスバープレート70にはフィルム端部81を収容するための凹部75が設けられている。そのため、バスバープレート70を蓄電素子20の端子面21cに近接または接触させた場合であっても、フィルム端部81とバスバープレート70との干渉が抑制される。より具体的には、フィルム端部81とバスバープレート70とが接触しない状態にされる。または、フィルム端部81がバスバープレート70に接触している場合であっても、バスバープレート70がフィルム端部81から受ける力が非常に小さい状態となる。その結果、蓄電装置1の組み立て途中において、例えば絶縁フィルム80によってバスバープレート70が浮き上がるような事態が生じ難い。
【0048】
詳細には、比較的に薄い絶縁フィルム80は、厚み方向の力に対する抗力は小さいため、その力に沿って容易に曲げられるが、厚み方向に直交する方向の力に対する抗力は比較的に大きく、かつ、この抗力を発生するフィルム端部81は平面視において延在する。そのため、フィルム端部81の突出長さが僅かであっても、平面視において延在するフィルム端部81の全域を押し曲げて、バスバープレート70を一様に各蓄電素子20の端子面21cに近接または接触させることは容易ではない。そこで、バスバープレート70を、複数の蓄電素子20から離して配置することで、バスバープレート70と絶縁フィルム80との干渉を避けることが考えられるが、この場合は、蓄電装置1の小型化が困難になるという問題が生じる。この点に関し、本実施の形態に係る蓄電装置1では、バスバープレート70は、フィルム端部81を収容可能な凹部75を有している。そのため、バスバープレート70は、フィルム端部81との実質的な干渉を避けることができ、その結果、バスバープレート70を、蓄電素子20に近接または接触させ、かつ、正規の位置に精度よく配置することができる。
【0049】
このように、本実施の形態に係る蓄電装置1は、蓄電素子20の側面に配置する絶縁部材として絶縁フィルム80を用いることで、蓄電素子20の並び方向の省スペース化を図ることができる。さらに、バスバープレート70に凹部75を設けることで、蓄電素子20とバスバープレート70との並び方向(上下方向)の省スペース化を図ることができる。従って、本実施の形態に係る蓄電装置1は、小型化が可能な蓄電装置である。
【0050】
なお、本実施の形態では、
図3に示すように、絶縁フィルム80は容器21を側方から覆う筒状に形成されており、従って、平面視(Z軸方向プラス側から見た場合)においてフィルム端部81は、環状に配置される。バスバープレート70には、平面視で環状のフィルム端部81と干渉し得る部分それぞれに凹部75が設けられており、これにより、平面視において絶縁フィルム80の全域でバスバープレート70とフィルム端部81との干渉が抑制される。すなわち、1つの絶縁フィルム80に着目した場合、フィルム端部81は環状に配置されているために、上方からの圧力に対してより変形し難くなっている。これに対し、バスバープレート70が、環状のフィルム端部81の全域において、干渉を避けるように1以上の凹部75を有することで、変形し難くなっているフィルム端部81からバスバープレート70が押し返されるような事態は生じない。このように、本実施の形態に係る絶縁フィルム80及び凹部75に関する構成は、絶縁フィルム80が、筒状などの、平面視において湾曲または屈曲した部分を有する形状に形成されている場合に、さらに有用である。
【0051】
また、本実施の形態では、
図5に示すように、バスバープレート70の凹部75は、フィルム端部81を非接触で収容可能な大きさに形成されている。つまり、凹部75とフィルム端部81とは、一方が他方に嵌め合わされるような構造ではない。そのため、フィルム端部81の位置及び形状に対する、バスバープレート70の凹部75の位置及び形状の精度はさほど高くなくてもよい。このことは、凹部75を有するバスバープレート70の製造効率の向上、または、製造コストの抑制等に有利である。
【0052】
また、本実施の形態に係る凹部75は、例えば
図5に示すように、隣接して配置された2つのフィルム端部81を収容可能である。つまり、本実施の形態において、蓄電素子20は、互いの長側面21aが対向する姿勢で2つ並んで配置されており、凹部75は、2つの蓄電素子20の並び方向で隣接する2つのフィルム端部81が収容される位置及びサイズに形成されている。
【0053】
このように、本実施の形態では、バスバープレート70に形成された1つの凹部75に、隣接する2つのフィルム端部81が一括して収容される。そのため、例えば、隣接する2つのフィルム端部81のそれぞれを個別に収容する部位をバスバープレート70に形成する場合と比較すると、凹部75の形成が容易であり、かつ、2つの蓄電素子20に対するバスバープレート70の配置が容易である。つまり、小型化が可能な蓄電装置1の構成または製造作業の簡易化が図られる。
【0054】
ここで、
図5に示すように、凹部75の幅(開口幅)をWとした場合、凹部75の幅Wは、絶縁フィルム80(フィルム端部81)の厚みTの2倍よりも大きい。つまり、W>2Tであり、より好ましくはW>3Tである。さらに好ましくはW>5Tである。また、凹部75の深さをDとし、フィルム端部81の端子面21cからの突出長さをLとした場合、D>Lである。なお、バスバープレート70に設けられたリブ(
図6~
図8を用いて後述)に設けられた凹部75については、リブの機能(補強または接着部材の位置規制など)を低下させないという観点からは凹部75のサイズは小さいことが好ましい(例えば、W<20T)。すなわち、凹部75のサイズは、凹部75の成形のしやすさ、複数の蓄電素子20に対するバスバープレート70の配置のしやすさ、及び、リブの機能の低下の抑制等の観点から決定されてもよい。
【0055】
また、本実施の形態において、凹部75は、
図5に示すように、蓄電素子20に近づくほど広がる形状を有している。これにより、フィルム端部81が凹部75に挿入されやすくなる。そのため、例えば、バスバープレート70における凹部75の位置が、設計上の正規の位置から多少ずれている場合であっても、凹部75にフィルム端部81が収容される可能性が高い。具体的には、バスバープレート70の蓄電素子20への配置の際に、フィルム端部81の先端が凹部75の内側面に接触した場合であっても、当該内側面はフィルム端部81の突出方向に対して傾いているため、当該先端は凹部75の内方(上方)にスムーズに案内される。その結果、フィルム端部81は、実質的に、バスバープレート70を押し上げない状態で凹部75に収容される。この効果は、本実施の形態のように、隣接する2つのフィルム端部81を凹部75に収容するよう構成した場合に、より有意である。このように、本実施の形態に係る蓄電装置1は、簡易な構成で、小型化が可能な蓄電装置である。
【0056】
[3.絶縁フィルム及びバスバープレートの具体的な構成]
次に、
図6~
図8を用いて絶縁フィルム80及びバスバープレート70の具体的な構成について説明する。
図6は、実施の形態に係るバスバープレート70の内面(蓄電素子20の側の面)の構成を示す斜視図である。つまり、
図6では、バスバープレート70を、バスバープレート70が保持する複数のバスバー33とともに、通常の姿勢(
図2参照)から裏返した状態で図示している。なお
図6では、5つのバスバー33のそれぞれを区別するために、5つのバスバー33に符号33a~33eを付している。
図7は、実施の形態に係るバスバープレート70の内面の一部拡大図である。
図7では、
図6において符号VIIが付された点線の矩形領域に対応する図が示されている。
図8は、実施の形態に係るバスバープレート70の断面を簡易的に表す図である。
図8では、
図7のVIII-VIII線を通るYZ平面におけるバスバープレート70の断面、及びバスバープレート70の下方に位置する蓄電素子20の側面が簡易的に図示されている。また、蓄電素子20におけるガス排出弁23の位置をわかりやすく示すために、ガス排出弁23はハッチングが付された矩形で表されており、バスバー33の図示は省略されている。
【0057】
図6に示すように、バスバープレート70の内面側にはX軸方向に延設されたリブ72~74が設けられている。リブ72~74は、例えば、バスバープレート70の強度を向上させる機能を有する。本実施の形態において、リブ72及びリブ73はさらに、接着部材79(
図8参照)の位置を規制する部位としても機能する。具体的には、
図6に示すように、バスバープレート70には、Y軸方向の中央部においてX軸方向に延設された経路形成部19が設けられており、経路形成部19のY軸方向の両側にリブ72が立設されている。また、リブ72の、経路形成部19と反対側にリブ73が立設されており、リブ72とリブ73との間に接着面76が形成されている。接着面76は、例えばシリコーン等を材料とする接着剤である接着部材79が配置される面である。
【0058】
図6に示すように、リブ72~74は、複数の蓄電素子20の並び方向であるX軸方向に沿って延設されている。そのため、各蓄電素子20に配置された絶縁フィルム80における長側面21aに沿うフィルム端部81と、リブ72~74とは、平面視において交差する。そこで、リブ72~74のそれぞれの、フィルム端部81と対向する位置に、フィルム端部81を収容する凹部75が設けられている。
【0059】
例えば、
図6及び
図7に示すように、バスバープレート70のバスバー用開口部70aのY軸方向の一方の側にリブ74が配置され、Y軸方向の他方の側にリブ73が配置される。リブ74及び73のそれぞれには、Y軸方向に並ぶ位置に凹部75が設けられる。さらに、リブ72には、これら2つの凹部75を結ぶ直線と交差する位置に、凹部75が設けられている。これにより、バスバープレート70を複数の蓄電素子20の上方に配置した場合において、Y軸方向に延在するフィルム端部81は、これらリブ72~74と実質的に干渉せずに、複数の凹部75に収容される。その結果、リブ72~74の先端が複数の蓄電素子20の上面(端子面21c)と当接する位置にバスバープレート70を安定して位置させることができる。また、
図8に示すように、リブ72とリブ73との間に、接着部材79を介在させる空間が形成されるため、接着部材79によってバスバープレート70を複数の蓄電素子20に対してしっかりと固定することができる。
【0060】
つまり、接着部材79は、経路形成部19のY軸方向の両側において、各蓄電素子20の端子面21cとバスバープレート70の接着面76との間にX軸方向に沿って配置される。バスバープレート70の接着面76と各蓄電素子20の端子面21cとの間の空隙は接着部材79に埋められ、バスバープレート70は各蓄電素子20の端子面21cに固定される。これにより、
図8に示すように、経路形成部19と各蓄電素子20の端子面21cとの間に、各蓄電素子20のガス排出弁23から排出されるガスの排気経路がX軸方向に沿って形成される。なお、接着部材79の位置は、複数の蓄電素子20の連続した端子面21cに対して連続的に配置させてもよいし、複数の蓄電素子20の端子面21cごとに断続的に配置させてもよい。接着部材79である接着剤としては、シート状であるものまたは液状であるもの等を採用することができる。また、接着部材79は、リブ74の外側(
図7におけるリブ74のY軸方向マイナス側)に配置されてもよい。つまり、端子面21cの、ガス排出弁23以外の部分であって、かつ、経路形成部19と対向していない部分であれば、接着部材79によってバスバープレート70と接着することは可能である。
【0061】
このように、本実施の形態では、蓄電装置1は、バスバープレート70と蓄電素子20の端子面21cとを接着する接着部材79を備える。バスバープレート70は、蓄電素子20の端子面21cに向けて突出するリブであって、凹部75が形成されたリブを有する。接着部材79は、バスバープレート70の内面と端子面21cとの間であって、リブによって仕切られた空間に配置されている。本実施の形態では、
図6~
図8に示すように、リブ72とリブ73とによって仕切られた空間(リブ72とリブ73との間の空間)に、接着部材79が配置されている。
【0062】
この構成によれば、バスバープレート70のリブ72及び73は、接着部材79の位置を規制する壁として機能し、かつ、フィルム端部81との干渉を避ける凹部75を有する。そのため、例えばバスバープレート70におけるリブ72及び73のレイアウトを、フィルム端部81の位置を気にせずに、リブ72及び73と端子面21cとの接着に適したレイアウトに決定することができる。また、例えば、バスバープレート70を蓄電素子20に対して配置した後であって、接着部材79としての接着剤が硬化するまでの間に、バスバープレート70がフィルム端部81から受ける力によってずれるようなことがない。また、例えば蓄電素子20の上方に配置される中蓋として機能するバスバープレート70は、リブ72等を有することで、バスバープレート70の強度が向上されるため、制御基板等の他の部材を安定的に支持することができる。これにより、小型化が可能な蓄電装置1の信頼性または品質の向上が図られる。
【0063】
また、
図7に示す2つのバスバー用開口部70aに着目した場合、2つのバスバー用開口部70aには、2つのバスバー33a及び33bが保持されている。2つのバスバー33a及び33bのそれぞれは互いに異なる蓄電素子20の電極端子22に接続されている。バスバープレート70は、これら2つのバスバー用開口部70aを仕切る絶縁壁部71aを有している。凹部75は、絶縁壁部71aの、蓄電素子20の側の端部(Z軸方向マイナス側の端部、以下「下端部」という。)の延設方向(Y軸方向)に沿って延設されている。
【0064】
この構成によれば、絶縁壁部71aは2つのバスバー用開口部70aを仕切る位置にあり、これにより、2つのバスバー33a及び33bの電気的な絶縁の確実性が向上される。また、絶縁壁部71aは、平面視において2つのバスバー33a及び33bの間に位置するため、絶縁壁部71aと重なる位置に、絶縁壁部71aと同じ方向に延設されたフィルム端部81が配置される。しかし、絶縁壁部71aの下端部にはその延設方向に沿って延設された凹部75が形成されているため、凹部75にフィルム端部81が収容されることで、フィルム端部81によってバスバープレート70の配置は阻害されない。具体的には、
図5に示したように、隣接する2つのフィルム端部81が、絶縁壁部71aの下端部に設けられた凹部75に収容される。つまり、蓄電素子20の端子面21cに近接または接触して配置させる配置部材として、複数のバスバー33を保持するバスバープレート70を採用することができる。これにより、例えば複数のバスバー33のそれぞれを、対応する電極端子22に接続(溶接など)する際の位置決めを精度よく行うことができる。つまり、複数のバスバー33の位置精度が向上する。従って、小型化が可能な蓄電装置1の信頼性または品質の向上が図られる。
【0065】
なお、本実施の形態では、
図6に示すように、バスバー33cとバスバー33dとの間に絶縁壁部71bが配置され、バスバー33dとバスバー33eとの間に絶縁壁部71cが配置されている。これら絶縁壁部71b及び71cの下端部にもY軸方向に延設された凹部75が設けられている。従って、絶縁壁部71b及び71cの下方に位置する複数のフィルム端部81のそれぞれは、絶縁壁部71bまたは71cに収容される。
【0066】
このように、経路形成部19を有するバスバープレート70は、各蓄電素子20の端子面21cから突出したフィルム端部81との干渉を避けた状態で各蓄電素子20の端子面21cに接着されている。そのため、経路出口18を除く部分における経路形成部19の気密性を向上させることができる。従って、少なくとも1つの蓄電素子20からガスが排出された場合において、例えば、経路形成部19内の排気経路の途中からガスが漏れる可能性が低減される。
【0067】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電装置について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態または変形例に施したものも、本発明の範囲内に含まれる。
【0068】
例えば、絶縁フィルム80は、蓄電素子20の容器21の4つの側面の全てを覆わなくてもよい。例えば、絶縁フィルム80は、容器21の一対の長側面21aのうちの一方の長側面21aを覆う第一フィルム部80a(
図3参照)のみで構成されてもよい。つまり、隣り合う蓄電素子20の間には少なくとも一層の絶縁フィルム80が配置されていればよい。そのため、例えば蓄電素子ユニット24(
図2参照)のX軸方向プラス側の端部の1つの蓄電素子20を除く、7つの蓄電素子20のそれぞれに、X軸方向プラス側の長側面21aのみを覆うように絶縁フィルム80が配置されていてもよい。つまり、蓄電素子20の容器21において、電気的に絶縁すべき部材が配置される側の側面のみを覆うように絶縁フィルム80が配置されることで、絶縁フィルム80による電気的な絶縁機能は発揮される。また、この場合、絶縁フィルム80と長側面21aとは、接着剤等で接着されてもよい。これにより、例えば、蓄電装置1の組み立て工程において、蓄電素子20を、絶縁フィルム80を伴う1つの部材として取り扱うことができる。
【0069】
なお、絶縁フィルム80は、蓄電素子20の容器21の側面である一対の長側面21aおよび一対の短側面21bを1枚のシートで一周ぐるりと巻く形態で実施することが可能である。ただし、絶縁フィルム80の巻き始めと巻き終わりは絶縁フィルム80の一部が重なるため、絶縁フィルム80が重なっている部分(
図3におけるフィルム接続部82)では絶縁フィルム80の厚みが増加する。上述した実施形態では、隣り合う蓄電素子20の長側面21aどうしが隣接(対向)するように複数の蓄電素子20が配列される。そのため、絶縁フィルム80のフィルム接続部82が長側面21aに位置する場合、隣接した蓄電素子20の絶縁フィルム80の重なりに加えて、絶縁フィルム80の巻き始めと巻き終わりの重なりも合わさってしまう。この場合、隣接する2つのフィルム端部81を凹部75に収容することが困難になる可能性がある。その他、隣接した蓄電素子20の長側面21aどうしが擦れることで絶縁フィルム80の剥がれの原因となってしまう可能性がある。
【0070】
そこで、そのような課題を解決するために、上述した実施形態では、絶縁フィルム80の巻き始めと巻き終わり、つまりフィルム接続部82が容器21の短側面21bに位置するように実施することが好ましい(
図3参照)。なお、ここでは短側面21bとしたが、本質的には「隣り合う蓄電素子20の隣接(対向)していない側面に絶縁フィルム80の巻き始めと巻き終わり(フィルム接続部82)を配置する」という意味である。仮に隣り合う蓄電素子20で短側面21bが隣接(対向)するように複数の蓄電素子を配列する場合は、絶縁フィルム80のフィルム接続部82を長側面21aに配置することが可能である。また、例えば2枚のフィルム材料をつなぐことで、容器21を一周巻く絶縁フィルム80を形成する場合も同様である。つまり、2枚のフィルム材料をつなぐ場合に生じる2箇所のフィルム接続部82のそれぞれは、隣り合う蓄電素子20の隣接(対向)していない側面(実施の形態では短側面21b)に位置することが好ましい。
【0071】
また、蓄電素子20の端子面21cに対向して配置される配置部材は、バスバープレート70以外の部材であってもよい。例えば、バスバー33を保持する機能を有しない部材あって、制御回路等の電気機器が取り付けられるトレイまたは中蓋などが、配置部材として採用されてもよい。また、主として排気経路の形成を目的とする部材であって、経路形成部19を有する部材が、配置部材として採用されてもよい。いずれの場合であっても、配置部材として採用される各種の部材は、凹部75を有することで、複数の蓄電素子20の端子面21cに接触または近接して配置することができる。つまり、蓄電装置1の高さ方向の省スペース化が図られる。
【0072】
また、バスバープレート70は、経路形成部19を有しなくてもよい。例えば、バスバープレート70とは別体の部材であって、バスバープレート70よりも耐熱性または耐火性の高い材料で形成された部材が、経路形成部19として配置されてもよい。この場合、バスバープレート70の一部として、当該部材がバスバープレート70に組み込まれてもよい。言い換えると、バスバープレート70の経路形成部19に相当する部分が、他の部分とは別の材料で形成されていてもよい。また、経路形成部19の内面の少なくとも一部(例えば天井面(Z軸方向プラス側の面))に、金属等の耐熱性または耐火性の高い材料で形成された部材が配置されてもよい。つまり、全体として樹脂で形成されたバスバープレート70の、排気経路を形成する部分に、耐熱性または耐火性の高い部材を配置することで、蓄電素子20からガスが排出された場合における排気経路の持続性が向上する。その結果、蓄電素子20から排出されたガスを、設計通りに蓄電装置1の外部に排出することができる。
【0073】
また、上記説明された複数の構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子を備えた蓄電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 蓄電装置
20 蓄電素子
21 容器
21a 長側面
21b 短側面
21c 端子面
33、33a、33b、33c、33d、33e バスバー
70 バスバープレート
70a バスバー用開口部
71a、71b、71c 絶縁壁部
72、73、74 リブ
75 凹部
76 接着面
79 接着部材
80 絶縁フィルム
80a 第一フィルム部
80b 第二フィルム部
81 フィルム端部