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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20231226BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20231226BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/80
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019156015
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021035267
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】今澤 孝則
(72)【発明者】
【氏名】中尾 悟朗
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/042224(WO,A1)
【文献】特表2017-511101(JP,A)
【文献】特開2018-148638(JP,A)
【文献】特表2018-511293(JP,A)
【文献】特開2015-002643(JP,A)
【文献】特開2013-027082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置と、前記送電装置から非接触で電力伝送される受電装置とを有する非接触給電装置であって、
前記受電装置は、
受信コイルと、前記受信コイルとともに共振する共振コンデンサとを有し、前記送電装置から電力を受信する共振回路と、
前記共振回路から出力される電力を整流する整流回路と、
前記整流回路から出力される電力の出力電圧を測定して当該出力電圧の測定値を求める電圧検出回路と、
前記出力電圧の測定値を含む信号を前記送電装置へ送信する第1の通信器とを有し、
前記送電装置は、
前記受信コイルを介して前記受電装置へ電力を供給する送信コイルと、
直流電力を供給する電源と前記送信コイルとの間にフルブリッジ状またはハーフブリッジ状に接続される複数のスイッチング素子を有し、前記複数のスイッチング素子のオンとオフとが所定の周波数にて切り替えられることで前記電源から供給される直流電力を、前記所定の周波数を持つ交流電力に変換して前記送信コイルへ供給する電力供給回路と、
前記送信コイルと電磁結合可能に配置される補助コイルと、
前記補助コイルと接続され、かつ、調整可能な静電容量を持つ可変容量回路と、
前記出力電圧の測定値を含む信号を前記受電装置から受信する第2の通信器と、
前記出力電圧の測定値に応じて、前記可変容量回路の静電容量を制御する制御回路と、
を有し、
前記送電装置の前記制御回路は、前記出力電圧の測定値が所定の下限閾値未満になるか、あるいは、前記所定の下限閾値よりも高い所定の上限閾値を超えると、前記可変容量回路の現在の静電容量と変更後の静電容量との関係を表す参照テーブルを参照して、前記現在の静電容量に対応する前記変更後の静電容量となるよう、前記可変容量回路を制御する、非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属の接点などを介さずに、空間を通じて電力を伝送する、いわゆる非接触給電(ワイヤレス給電とも呼ばれる)技術が研究されている。
【0003】
このような非接触給電技術の一つとして、二次(受電)側コイルのみに共振回路を構成し、共振回路に流れる共振電流の位相情報を検出し、この位相情報に基づいて、一次(送電)側コイルに流れる駆動電流の電流位相が電圧位相よりもわずかに遅延するように駆動周波数を定めて一次コイルを駆動する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。またこの技術では、二次コイルの漏れインダクタンスと共振コンデンサのキャパシタンスと等価負荷抵抗で決定されるQ値が、Q=2/k2(kは結合係数)で定まる値以上の値に設定される。この技術によれば、一次コイルでの発熱が抑制されるとともに、一次コイルの側から見た力率の最も良い周波数が駆動周波数として自動的に選択可能となる。また、銅損とスイッチング損失がともに軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/173850号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術では、適切な駆動周波数を設定するために、Q値を高くすることが求められる。Q値を高くするためには、受電側のコイルのインダクタンスを高くする必要があり、そのために、受電側のコイルを大型化することが求められる。その結果として、装置全体が大型化してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構成で電力伝送効率を向上することが可能な非接触給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの形態として、送電装置と、送電装置から非接触で電力伝送される受電装置とを有する非接触給電装置が提供される。この非接触給電装置において、受電装置は、受信コイルと、受信コイルとともに共振する共振コンデンサとを有し、送電装置から電力を受信する共振回路と、共振回路から出力される電力を整流する整流回路と、整流回路から出力される電力の出力電圧を測定してその出力電圧の測定値を求める電圧検出回路と、出力電圧の測定値を含む信号を送電装置へ送信する第1の通信器とを有する。送電装置は、受信コイルを介して受電装置へ電力を供給する送信コイルと、直流電力を供給する電源と送信コイルとの間にフルブリッジ状またはハーフブリッジ状に接続される複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のオンとオフとが所定の周波数にて切り替えられることで電源から供給される直流電力を、所定の周波数を持つ交流電力に変換して送信コイルへ供給する電力供給回路と、送信コイルと電磁結合可能に配置される補助コイルと、補助コイルと接続され、かつ、調整可能な静電容量を持つ可変容量回路と、出力電圧の測定値を含む信号を受電装置から受信する第2の通信器と、出力電圧の測定値に応じて、可変容量回路の静電容量を制御する制御回路とを有する。
係る構成を有することにより、この非接触給電装置は、簡単な構成で電力伝送効率を向上することができる。
【0008】
この非接触給電装置において、送電装置の制御回路は、出力電圧の測定値が所定の下限閾値未満になるか、あるいは、所定の下限閾値よりも高い所定の上限閾値を超えると、可変容量回路の現在の静電容量と変更後の静電容量との関係を表す参照テーブルを参照して、現在の静電容量に対応する変更後の静電容量となるよう、可変容量回路を制御することが好ましい。
これにより、この非接触給電装置は、電力供給回路の各スイッチング素子がターンオフされるタイミングにおける、そのスイッチング素子に流れる電流の波高値を抑制できるので、各スイッチング素子のスイッチングロスを軽減することができる。さらに、この非接触給電装置は、補助コイルに流れる電流の実効値が高くなり過ぎることを抑制して、補助コイルに流れる電流による導通ロスを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一つの実施形態に係る非接触給電装置の概略構成図である。
図2】インバータ回路の他の一例を示す図である。
図3】(a)は、送信コイルと補助コイル間の結合度が送信コイルと受信コイル間の結合度よりも小さい場合における、各スイッチング素子に流れる電流の一例を示す図である。(b)は、送信コイルと補助コイル間の結合度が送信コイルと受信コイル間の結合度と等しい場合における、各スイッチング素子に流れる電流の一例を示す図である。(c)は、送信コイルと補助コイル間の結合度が送信コイルと受信コイル間の結合度よりも大きい場合における、各スイッチング素子に流れる電流の一例を示す図である。
図4】シミュレーションによる、可変容量回路の静電容量と、インバータ回路の各スイッチング素子に流れる電流及び補助コイルに流れる電流の関係の一例を示す図である。
図5】シミュレーションによる、送電装置がLC回路を有さない場合における、送信コイルと受信コイル間の結合度と、受電装置から出力される出力電圧と、インバータ回路のスイッチング素子に流れる電流の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一つの実施形態による非接触給電装置を、図を参照しつつ説明する。
本発明による非接触給電装置では、送電側の装置(以下、単に送電装置と呼ぶ)が、送電用のコイル(以下、送信コイルと呼ぶ)と電磁結合可能に配置される補助コイル及び補助コイルと接続される可変容量回路により構成されるLC回路と、可変容量回路の静電容量を制御する制御回路とを有する。一方、受電側の装置(以下、受電装置と呼ぶ)は、共振回路に含まれる、受電用のコイル(以下、受信コイルと呼ぶ)を介して送電装置から受電した電力による出力電圧を測定し、出力電圧の測定値を送電装置へ送信する。出力電圧は、送信コイルと受信コイル間の結合度に応じて変化し、かつ、その結合度に応じて、送信コイルに交流電力を供給する電力供給回路の各スイッチング素子に印可される電圧の位相に対する、電力供給回路の各スイッチング素子に流れる電流の位相の遅れ量が変化する。そこで、送電装置の制御回路は、受電装置から受信した、出力電圧の測定値に基づいて、可変容量回路の静電容量を制御する。これにより、この非接触給電装置は、電力供給回路の各スイッチング素子に印可される電圧の位相に対する、電力供給回路の各スイッチング素子に流れる電流の位相の遅れ量を適切な遅れ量にして、電力伝送効率を向上する。また、この非接触給電装置は、受電装置の共振回路のQ値を高くしなくてもよいので、その共振回路に含まれる、受信コイルを大型化しなくてもよく、その結果として、装置全体を簡単化できる。
【0011】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る送電装置を含む非接触給電装置の概略構成図である。図1に示されるように、非接触給電装置1は、送電装置2と、送電装置2から空間を介して非接触で電力伝送される受電装置3とを有する。送電装置2は、電力供給回路10と、送信コイル13と、補助コイル14と、可変容量回路15と、通信器16と、制御回路17とを有する。一方、受電装置3は、受信コイル21及び共振コンデンサ22とにより構成される共振回路20と、整流平滑回路23と、電圧検出回路24と、通信器25とを有する。本実施形態による非接触給電装置1は、送電側の共振を利用せず、送信コイル13に供給された交流電力に対して受電側の共振回路20が直列共振する方式(NS方式)に従って電力を伝送する。なお、非接触給電装置1は、送電側の共振を利用せず、送信コイル13に供給された交流電力に対して受電側の共振回路20が並列共振する方式(NP方式)に従って電力を伝送してもよい。
【0012】
先ず、送電装置2について説明する。
電力供給回路10は、交流電力を送信コイル13へ供給する。そのために、電力供給回路10は、電源11と、インバータ回路12とを有する。
【0013】
電源11は、直流電力を供給する。そのために、電源11は、例えば、商用の交流電源と接続され、その交流電源から供給された交流電力を整流するための全波整流回路と、全波整流回路から出力される脈流電力を平滑化するための平滑コンデンサとを有する。そして電源11は、商用の交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力をインバータ回路12へ出力する。なお、電源11は、バッテリのような直流電源であってもよい。
【0014】
インバータ回路12は、電源11から供給された直流電力を、所定の周波数を持つ交流電力に変換し、変換された交流電力を送信コイル13へ供給する。なお、所定の周波数は、送信コイル13と受信コイル21間の想定される結合度において受電装置3の共振回路20が共振する周波数とすることができる。本実施形態では、インバータ回路12は、4個のスイッチング素子12a~12dがフルブリッジ状に接続されるフルブリッジインバータである。また、各スイッチング素子は、例えば、nチャネル型のMOSFETとすることができる。
【0015】
すなわち、4個のスイッチング素子12a~12dのうち、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bは、電源11の正極側端子と負極側端子との間に直列に接続される。また本実施形態では、電源11の正極側に、スイッチング素子12aが接続され、一方、電源11の負極側に、スイッチング素子12bが接続される。同様に、4個のスイッチング素子12a~12dのうち、スイッチング素子12cとスイッチング素子12dは、スイッチング素子12a及びスイッチング素子12bと並列に、かつ、電源11の正極側端子と負極側端子との間に直列に接続される。また、電源11の正極側に、スイッチング素子12cが接続され、一方、電源11の負極側に、スイッチング素子12dが接続される。そしてスイッチング素子12aとスイッチング素子12bの間に、送信コイル13の一端が接続され、スイッチング素子12cとスイッチング素子12dの間に、送信コイル13の他端が接続される。
【0016】
図2に示されるように、インバータ回路12は、電源11に対して2個のスイッチング素子12a及び12bがハーフブリッジ状に接続されるハーフブリッジインバータであってもよい。この場合には、送信コイル13の一端は、コンデンサ12eを介してスイッチング素子12aとスイッチング素子12bの間に接続され、送信コイル13の他端は接地されればよい。
【0017】
なお、送電装置2は、さらに、電源11とインバータ回路12との間に、DC-DCコンバータ(図示せず)を有してもよい。
【0018】
送信コイル13は、電力供給回路10から供給された交流電力を、空間を介して受電装置3の受信コイル21へ伝送する。なお、送電装置2は、送信コイル13と電力供給回路10のインバータ回路12との間に、送信コイル13と直列に接続され、かつ、直流電力を遮断するためのコンデンサを有してもよい。
【0019】
補助コイル14は、送信コイル13と電磁結合可能に配置される。そのために、補助コイル14は、例えば、送信コイル13と同じ軸心に巻き付けられる。なお、補助コイル14の巻き数は、送信コイル13の巻き数と同じでもよく、あるいは、異なっていてもよい。そして補助コイル14は、可変容量回路15とともに、送信コイル13に供給される交流電力に作用して、電力供給回路10のインバータ回路12の各スイッチング素子12a~12dについて、そのスイッチング素子に印可される電圧の位相に対する、そのスイッチング素子に流れる電流の位相の遅れ量を適切な遅れ量にする。これにより、各スイッチング素子12a~12dがターンオフされる際のそのスイッチング素子に流れる電流の波高値が0に近付く。そのため、各スイッチング素子12a~12dによるスイッチングロスが軽減される。
【0020】
可変容量回路15は、調整可能な静電容量を持ち、補助コイル14と接続され、補助コイル14とともに、位相調整回路の一例であるLC回路(以下、単にLC回路と呼ぶことがある)を構成する。そして補助コイル14と可変容量回路15とにより構成されるLC回路、すなわち、位相調整回路は、各スイッチング素子12a~12dについて、そのスイッチング素子に印可される電圧の位相に対する、そのスイッチング素子に流れる電流の位相の遅れ量を適切な遅れ量にする。なお、補助コイル14と可変容量回路15により構成されるLC回路の共振周波数は、送信コイル13へ供給される交流電力の周波数と異なっていてもよい。すなわち、補助コイル14と可変容量回路15により構成されるLC回路は、送信コイル13に流れる交流電流に対して共振しなくてもよい。
【0021】
本実施形態では、可変容量回路15は、補助コイル14に対して互いに並列に接続される複数のコンデンサ151-1~151-n(nは2以上の整数)と、複数のスイッチング素子152-1~152-nとを有する。そしてコンデンサ151-k(k=1,2,…,n)とスイッチング素子152-kとは直列に接続される。なお、複数のコンデンサ151-1~151-nの何れかは、スイッチング素子を介さずに補助コイル14と接続されてもよい。
【0022】
複数のスイッチング素子152-1~152-nのそれぞれは、例えば、リレーあるいはnチャネル型のMOSFETとすることができる。各スイッチング素子がnチャネル型のMOSFETである場合、各スイッチング素子のドレイン端子は、対応するコンデンサを介して補助コイル14の一端と接続され、各スイッチング素子のソース端子は、補助コイル14の他端と接続される。また、各スイッチング素子のゲート端子は、制御回路17と接続される。
【0023】
複数のスイッチング素子152-1~152-nは、それぞれ、制御回路17により、オン/オフが切り替えられる。そして複数のコンデンサ151-1~151-nのうち、オンとなったスイッチング素子と直列に接続されるコンデンサがLC回路の動作に寄与する。すなわち、複数のスイッチング素子152-1~152-nのうち、オンとなるスイッチング素子の数が増えるほど、可変容量回路15の静電容量は増加する。したがって、LC回路に流れる電流の実効値が増加する。LC回路に流れる電流の位相は、送信コイル13に印加される電圧の位相に対して進んでいるため、LC回路に流れる電流の実効値が増加するほど、電力供給回路10のインバータ回路12に流れる電流の位相に対する、LC回路に流れる電流による影響が大きくなる。その結果として、インバータ回路12が有する各スイッチング素子に印加される電圧の位相に対する、各スイッチング素子に流れる電流の位相の遅れ量が少なくなる。
【0024】
通信器16は、受電装置3の通信器25から無線信号を受信する度に、その無線信号から、出力電圧の測定値を表す電圧情報を取り出して、制御回路17へ出力する。そのために、通信器16は、例えば、所定の無線通信規格に準じて無線信号を受信するアンテナと、その無線信号を復調する通信回路とを有する。なお、所定の無線通信規格は、例えば、ISO/IEC 15693、ZigBee(登録商標)、あるいはBluetooth(登録商標)とすることができる。
【0025】
制御回路17は、例えば、不揮発性のメモリ回路及び揮発性のメモリ回路と、演算回路と、他の回路と接続するためのインターフェース回路と、電力供給回路10のインバータ回路12の各スイッチング素子12a~12d、及び、可変容量回路15の各スイッチング素子152-1~152-nへの制御信号を出力するための駆動回路とを有する。そして制御回路17は、電力供給回路10から送信コイル13に供給される交流電力の周波数が所定の周波数となるように、インバータ回路12の各スイッチング素子12a~12dを制御する。なお、所定の周波数は、上記のように、送信コイル13と受信コイル21間の想定される結合度において受電装置3の共振回路20が共振する周波数とすることができる。
【0026】
本実施形態では、制御回路17は、スイッチング素子12a及びスイッチング素子12dの組とスイッチング素子12b及びスイッチング素子12cの組とを交互にオンにする。さらに、制御回路17は、送信コイル13に供給される交流電力の周波数に対応する1周期内でスイッチング素子12a及びスイッチング素子12dの組がオンとなっている期間とスイッチング素子12b及びスイッチング素子12cの組がオンとなっている期間とを等しくする。なお、制御回路17は、スイッチング素子12a及びスイッチング素子12dの組とスイッチング素子12b及びスイッチング素子12cの組が同時にオンとなり、電源11が短絡されることを防止することが好ましい。そのために、制御回路17がスイッチング素子12a及びスイッチング素子12dの組とスイッチング素子12b及びスイッチング素子12cの組のオン/オフを切り替える際に、両方のスイッチング素子の組がオフとなるデッドタイムを設けてもよい。また、インバータ回路12が、図2に示されるハーフブリッジインバータである場合には、制御回路17は、送信コイル13に供給される交流電力の周波数にて、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bとを交互にオンにすればよい。
【0027】
さらに、制御回路17は、電圧情報に表された、出力電圧の測定値に基づいて、可変容量回路15の静電容量を制御する。なお、可変容量回路15の静電容量の制御の詳細については後述する。
【0028】
次に、受電装置3について説明する。
受信コイル21は、共振コンデンサ22とともに共振回路20を構成し、送電装置2の送信コイル13に流れる交流電流と共振することで、送信コイル13から電力を受信する。本実施形態では、共振コンデンサ22は、受信コイル21と直列に接続されるが、共振コンデンサ22は、受信コイル21と並列に接続されてもよい。また、共振回路20には、受信コイル21と整流平滑回路23との間に受信コイル21と直列に接続されるコイルが設けられてもよい。そして共振回路20から出力される交流電力は、整流平滑回路23により直流電力に変換されてから、受電装置3と接続される負荷回路(図示せず)へ出力される。なお、受信コイル21の巻き数と、送信コイル13の巻き数は同じでもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。
【0029】
整流平滑回路23は、整流回路の一例であり、例えば、ブリッジ接続された4個のダイオードを有する全波整流回路と平滑コンデンサとを有し、共振回路20から出力された電力を整流し、かつ、平滑化して、直流電力に変換する。そして整流平滑回路23は、その直流電力を、負荷回路に出力する。
【0030】
電圧検出回路24は、整流平滑回路23の両端子間の出力電圧を測定する。整流平滑回路23の両端子間の出力電圧は、共振回路20の出力電圧と1対1に対応するので、整流平滑回路23の両端子間の出力電圧の測定値は、間接的に共振回路20の出力電圧の測定値となる。電圧検出回路24は、例えば、直流電圧を検出できる公知の様々な電圧検出回路の何れかとすることができる。そして電圧検出回路24は、その出力電圧の測定値を表す電圧情報を通信器25へ出力する。
【0031】
通信器25は、所定の送信周期ごとに、電圧検出回路24から受け取った電圧情報を含む無線信号を生成し、その無線信号を送電装置2の通信器16へ向けて送信する。そのために、通信器25は、例えば、所定の無線通信規格に準じて無線信号を生成する通信回路と、その無線信号を出力するアンテナとを有する。なお、所定の無線通信規格は、通信器16と同様に、例えば、ISO/IEC 15693、ZigBee(登録商標)、あるいはBluetooth(登録商標)とすることができる。
【0032】
以下、非接触給電装置1の動作の詳細、及び、電力供給回路10のインバータ回路12の各スイッチング素子のスイッチングロスを軽減するための、送電装置2の各回路素子のパラメータ設定及び各コイル間の結合度の関係について説明する。
【0033】
本実施形態では、送信コイル13と受信コイル21間の結合度が低い場合、例えば、受電装置3が送電装置2から受電不可能なほど離れている場合、送信コイル13に流れる電流の位相は、電力供給回路10のインバータ回路12の各スイッチング素子に印加される電圧の位相よりも遅れる。また、受電装置3に接続される負荷回路に流れる電流が少ない場合も同様となる。そこで、補助コイル14のインダクタンス及び可変容量回路15の静電容量は、補助コイル14と可変容量回路15により構成されるLC回路に流れる電流の位相が電力供給回路10の各スイッチング素子に印加される電圧の位相よりも進むように設定されることが好ましい。そのために、補助コイル14のインダクタンス及び可変容量回路15の静電容量は、LC回路の共振周波数が送信コイル13に供給される交流電力の周波数よりも高くなるように設定されることが好ましい。
【0034】
また、補助コイル14のインダクタンスは大きいほど好ましい。これは、補助コイル14のインダクタンスが大きいほど、LC回路に流れる電流が減少するためである。例えば、補助コイル14のインダクタンスは、送信コイル13に流れる電流のうちの共振回路20に接続される負荷回路の負荷に依存しない励磁電流成分よりもLC回路に流れる電流が小さくなるように設定されることが好ましい。すなわち、補助コイル14のインダクタンスは、送信コイル13と受信コイル21間の想定される結合度の最大値kmaxに、送信コイル13と受信コイル21とが電磁結合する場合の送電側の自己インダクタンスを乗じた値よりも大きいことが好ましい。
【0035】
さらに、送信コイル13と補助コイル14間の結合度が、送信コイル13と受信コイル21間の想定される結合度の最大値kmaxよりも高くなるように、送信コイル13及び補助コイル14は配置されることが好ましい。例えば、送信コイル13と補助コイル14とは、同じ軸心に巻き付けられ、かつ、送信コイル13と補助コイル14間の結合度が送信コイル13と受信コイル21間の想定される結合度の最大値kmaxよりも高くなる程度の間隔を空けて配置されればよい。これにより、送信コイル13に印加される電圧の位相に対する、送信コイル13に流れる電流の位相の遅れが小さくなり、その結果として、インバータ回路12の各スイッチング素子がターンオフされるときの電流の波高値を低下させることが容易となる。
【0036】
図3(a)は、シミュレーションによる、送信コイル13と補助コイル14間の結合度が送信コイル13と受信コイル21間の結合度よりも小さい場合における、各スイッチング素子に流れる電流の一例を示す図である。図3(b)は、シミュレーションによる、送信コイル13と補助コイル14間の結合度が送信コイル13と受信コイル21間の結合度と等しい場合における、各スイッチング素子に流れる電流の一例を示す図である。図3(c)は、シミュレーションによる、送信コイル13と補助コイル14間の結合度が送信コイル13と受信コイル21間の結合度よりも大きい場合における、各スイッチング素子に流れる電流の一例を示す図である。
【0037】
図3(a)~図3(c)に示されるシミュレーションにおいて、インバータ回路12は、図2に示される、ハーフブリッジインバータであるとした。また、送信コイル13のインダクタンスを91μHとし、コンデンサ12eの静電容量を220nFとした。また、補助コイル14のインダクタンスを100μHとし、可変容量回路15の静電容量を30nFとした。さらに、受信コイル21のインダクタンスを121μFとし、共振コンデンサ22の静電容量を60nFとした。さらに、受電装置3と接続される負荷回路の抵抗値Roを10Ωとした。また、図3(a)に示されるシミュレーションでは、送信コイル13と受信コイル21間の結合度k12を0.2とし、送信コイル13と補助コイル14間の結合度k13を0.1とし、補助コイル14と受信コイル21間の結合度k23を0.2とした。さらに、図3(b)に示されるシミュレーションでは、送信コイル13と受信コイル21間の結合度k12、送信コイル13と補助コイル14間の結合度k13、補助コイル14と受信コイル21間の結合度k23の何れも0.2とした。さらに、図3(c)に示されるシミュレーションでは、送信コイル13と受信コイル21間の結合度k12及び補助コイル14と受信コイル21間の結合度k23を0.2とし、送信コイル13と補助コイル14間の結合度k13を0.7とした。
【0038】
図3(a)~図3(c)のそれぞれのグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電流量を表す。さらに時刻t1及びt2は、スイッチング素子12aがターンオフされるタイミングを表す。図3(a)において、波形301は、結合度k12が結合度k13よりも大きい場合における、スイッチング素子12aに流れる電流の波形を表す。同様に、図3(b)において、波形311は、結合度k12が結合度k13と等しい場合における、スイッチング素子12aに流れる電流の波形を表す。そして、図3(c)において、波形321は、結合度k12が結合度k13よりも小さい場合における、スイッチング素子12aに流れる電流の波形を表す。
【0039】
波形301、311及び321に示されるように、送信コイル13と受信コイル21間の結合度k12に対して、送信コイル13と補助コイル14間の結合度k13が大きくなるほど、インバータ回路12のスイッチング素子のターンオフ時における電流の波高値、及び、スイッチング素子に流れる電流の実効値が低下することが分かる。このことから、結合度k12よりも結合度k13が大きくなることが好ましいことが分かる。
【0040】
図4は、シミュレーションによる、可変容量回路15の静電容量と、インバータ回路12の各スイッチング素子に流れる電流及び補助コイル14に流れる電流の関係の一例を示す図である。図4に示されるシミュレーションにおいて、可変容量回路15の静電容量以外の各回路素子のパラメータ値は、図3(a)~図3(c)のシミュレーションにおけるパラメータ値と同じとした。また、送信コイル13と受信コイル21間の結合度及び補助コイル14と受信コイル21間の結合度を0.2とし、送信コイル13と補助コイル14間の結合度を0.7とした。
【0041】
図4の各グラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電流量を表す。さらに時刻t1は、スイッチング素子12bがターンオフされるタイミングを表す。上側のグラフに示される波形401~405は、それぞれ、可変容量回路15の静電容量を30nFから順に2nFずつ増加させたときのスイッチング素子12bに流れる電流の波形を表す。下側のグラフに示される波形411~415は、それぞれ、可変容量回路15の静電容量を30nFから順に2nFずつ増加させたときの補助コイル14に流れる電流の波形を表す。
【0042】
波形401~405に示されるように、可変容量回路15の静電容量が増加するほど、スイッチング素子12bがターンオフされるタイミングにおける、スイッチング素子12bに流れる電流の波高値が低下することが分かる。一方、波形411~415に示されるように、可変容量回路15の静電容量が増加するほど、補助コイル14に流れる電流の実効値が上昇することが分かる。
【0043】
図5は、シミュレーションによる、送電装置2がLC回路を有さない場合における、送信コイル13と受信コイル21間の結合度と、受電装置3から出力される出力電圧と、インバータ回路12のスイッチング素子12bに流れる電流の関係の一例を示す図である。図5に示されるシミュレーションにおいて、補助コイル14及び可変容量回路15が省略される以外の各回路素子のパラメータ値は、図3(a)~図3(c)のシミュレーションにおけるパラメータ値と同じとした。
【0044】
図5の各グラフにおいて、横軸は時間を表す。また、図5の上側のグラフにおいて、縦軸は電流量を表し、下側のグラフにおいて、縦軸は電圧を表す。さらに時刻t1は、スイッチング素子12bがターンオフされるタイミングを表す。上側のグラフに示される波形501~505は、それぞれ、送信コイル13と受信コイル21間の結合度を0.1から0.1ずつ増加させたときのスイッチング素子12bに流れる電流の波形を表す。下側のグラフに示される波形511~515は、それぞれ、送信コイル13と受信コイル21間の結合度を0.1から0.1ずつ増加させたときの受電装置3から出力される出力電圧の波形を表す。
【0045】
波形501~505に示されるように、送信コイル13と受信コイル21間の結合度が低下するほど、スイッチング素子12bに印加される電圧の位相に対する、スイッチング素子12bに流れる電流の位相の遅れが大きくなる。そのため、送信コイル13と受信コイル21間の結合度が低下するほど、スイッチング素子12bに流れる電流の実効値が大きくなるとともに、スイッチング素子12bがターンオフされるタイミングにおける、スイッチング素子12bに流れる電流の波高値が高くなる。一方、波形511~515に示されるように、送信コイル13と受信コイル21間の結合度の変化に伴って、受電装置3からの出力電圧も変化する。
【0046】
このことから、インバータ回路12の各スイッチング素子に流れる電流の実効値を低下させ、かつ、インバータ回路12の各スイッチング素子がターンオフされるタイミングにける、各スイッチング素子に流れる電流の波高値を低下させるためには、受電装置3からの出力電圧に応じて、可変容量回路15の静電容量を変化させればよいことが分かる。ただし、補助コイル14及び可変容量回路15を含むLC回路に流れる電流による導通ロスを軽減するためには、可変容量回路15の静電容量は低い方が好ましい。
【0047】
そこで、制御回路17は、受電装置3から受信した電圧情報に表される出力電圧の測定値が所定の下限閾値未満になると、制御回路17が有するメモリに予め記憶されている、可変容量回路15の現在の静電容量と、出力電圧の測定値がその下限閾値未満となったときにおける、可変容量回路15の変更後の静電容量、すなわち、可変容量回路15の複数のスイッチング素子152-1~152-nのうちのオンにすべきスイッチング素子の組み合わせとの対応関係を表す参照テーブルを参照する。そして制御回路17は、可変容量回路15の現在の静電容量に対応する、オンにすべきスイッチング素子の組み合わせを特定する。制御回路17は、特定した組み合わせに含まれる各スイッチング素子をオンにし、その他のスイッチング素子をオフにするよう可変容量回路15を制御する。なお、可変容量回路15の静電容量ごとに、インバータ回路12の各スイッチング素子がターンオフされるタイミングにおける、各スイッチング素子に流れる電流の波高値を低下させ、かつ、各スイッチング素子に流れる電流の実効値の増加を抑制できるとともに、補助コイル14に流れる電流の実効値の増加を抑制可能なスイッチング素子の組み合わせが予めシミュレーションまたは実験により求められ、その結果に基づいて参照テーブルが作成されればよい。これにより、可変容量回路15の静電容量が変化し、その結果として、インバータ回路12の各スイッチング素子がターンオフされるタイミングにおける、各スイッチング素子に流れる電流の波高値が低下し、スイッチングロスが軽減されるとともに、各スイッチング素子に流れる電流の実効値の増加が抑制され、導通ロスの増加が抑制される。さらに、補助コイル14に流れる電流の実効値の増加が抑制され、補助コイル14を含むLC回路による導通ロスの増加が抑制される。
【0048】
同様に、制御回路17は、受電装置3から受信した電圧情報に表される出力電圧の測定値が、上記の下限閾値よりも高い所定の上限閾値を超えると、制御回路17が有するメモリに予め記憶されている、可変容量回路15の現在の静電容量と、出力電圧の測定値がその上限閾値を超えたときにおける、可変容量回路15の変更後の静電容量、すなわち、可変容量回路15の複数のスイッチング素子152-1~152-nのうちのオンにすべきスイッチング素子の組み合わせとの対応関係を表す参照テーブルを参照する。そして制御回路17は、可変容量回路15の現在の静電容量に対応する、オンにすべきスイッチング素子の組み合わせを特定すればよい。制御回路17は、特定した組み合わせに含まれる各スイッチング素子をオンにし、その他のスイッチング素子をオフにするよう可変容量回路15を制御すればよい。
【0049】
以上に説明してきたように、この非接触給電装置では、送電装置が、送信コイルに交流電力を供給する電力供給回路のインバータ回路の各スイッチング素子に印加される電圧の位相に対する、各スイッチング素子に流れる電流の位相の遅れを調整するために、送信コイルと電磁結合可能に配置される補助コイルとともにLC回路を構成する可変容量回路を有する。そして送電装置の制御回路は、受電装置から出力される電圧に応じて、可変容量回路の静電容量を制御する。そのため、この非接触給電装置は、送信コイルと受信コイル間の結合度が変化しても、インバータ回路が有する各スイッチング素子に印加される電圧の位相に対する各スイッチング素子に流れる電流の位相の遅れ量を適切な遅れ量に保つことができ、その結果として、各スイッチング素子のスイッチングロス及びLC回路の導通ロスを軽減できる。
【0050】
変形例によれば、可変容量回路15の静電容量を制御する制御回路は、インバータ回路12を制御する制御回路17と別個に設けられてもよい。
【0051】
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 非接触給電装置
2 送電装置
10 電力供給回路
11 電源
12 インバータ回路
12a~12d スイッチング素子
12e コンデンサ
13 送信コイル
14 補助コイル
15 可変容量回路
151-1~151-n コンデンサ
152-1~152-n スイッチング素子
16 通信器
17 制御回路
3 受電装置
20 共振回路
21 受信コイル
22 共振コンデンサ
23 整流平滑回路
24 電圧検出回路
25 通信器
図1
図2
図3
図4
図5